07/10/02 歯科医師臨床研修推進検討会 第4回議事録 歯科医師臨床研修推進検討会(第4回) 日時:平成19年10月2日(金)15:00〜17:15 場所:厚生労働省専用第21会議室 ○ 鳥山課長補佐  ただ今から「第4回歯科医師臨床研修推進検討会」を開催します。ご出席の皆様方に おかれましては、ご多忙のところご出席いただきまして誠にありがとうございます。  本年8月の人事異動に伴いまして医政局長が交替しています。開会に当たりまして、 外口医政局長よりご挨拶申し上げます。 ○ 外口医政局長  8月24日付の人事異動で、医政局長に就任しました外口です。どうぞよろしくお願い します。  本日は委員の皆様方におかれましてはお忙しいところご出席いただきまして、ありが とうございます。また、平素から厚生労働行政につきましてご尽力を賜っております。 改めて厚く御礼申し上げます。  さて、ご承知のように平成18年4月から必修化が開始されました歯科医師臨床研修 制度は2年目を迎えています。本年3月には約2,600名が歯科医師臨床研修を修了し、 修了者本人の申請によりまして順次歯科医籍への修了登録が行われています。  今後もこの制度の充実を図るために、問題点の抽出、群方式の推進などに関しまして 委員の先生方のご意見を踏まえて検討会としての取りまとめを行っていただきますが、 平成22年6月までに予定されている見直しに反映させてまいりたいと思っています。  厚生労働省としましては、この歯科医師臨床研修の充実に努めてまいる所存ですので、 今後とも一層のご支援を賜りますようお願いしまして、挨拶とさせていただきます。ど うぞよろしくお願いします。 ○ 鳥山課長補佐  医政局長は所用のため、途中で退席させていただきますのでご了解ください。また、 本日よりオブザーバーとして文部科学省高等教育局医学教育課にご出席をお願いしてい ます。  さて、本日は歯科医師臨床研修に係るヒアリングの参考人として、5名の方々にご出 席をいただいています。後ほど改めてご紹介をさせていただく予定です。  議事に移ります。以降の議事進行を石井座長、よろしくお願いします。 ○ 石井座長  早速、お手元の議事次第に従いまして進めたいと思います。歯科医師臨床研修に係る ヒアリング、歯科医師臨床研修に係る論点整理、今後の予定となっています。  最初に配付資料の確認と議事の進め方について、事務局からお願いします。 ○ 杉戸専門官  事務局から資料の説明並びに本日の議事の進め方についてご説明します。  お手元の資料は議事次第、本日の座席表、本検討会の委員名簿、本日お集まりいただ いています参考人の方々の名簿、それ以降資料1-1から資料1-5までとして、5名の方々 の提出いただいている資料を付けています。さらに、最後の1枚は資料2として、本検 討会の論点整理メモ(案)となっております。  資料2について、前回から若干の変更があります。「4.その他の課題」の一番下が「歯 科医師臨床研修における地域保健・地域医療の役割」となっていますが、「保健所の役割」 という形だったものを前回の議論を踏まえまして、座長と相談の上、変更しています。  本日の議事の進め方ですが、ご発表いただく方はお一人20分の見当で予定していま す。大体目安としまして、ご発表が15分ぐらい、そのあと個別の質疑応答を5分ぐら いを予定しています。時間のご協力をよろしくお願いします。全員がご発表になりまし たあと、委員と本日ご参加の方々を交えまして、フリーディスカッションという形を取 ります。  事務局から、本日お集まりいただいています参考人の方々のご紹介をします。お手元 の4枚目の資料の参考人名簿をご覧ください。また、本日は五十音順でご発表いただき ます。  医療法人 金尾好章歯科医院長 金尾好章先生です。  大阪府済生会中津病院 歯科口腔外科部長 瀧田正亮先生です。  東京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科レジデント 則武加奈子先生です。  福岡歯科大学総合歯科学講座・総合歯科学分野 教授 廣藤卓雄先生です。  NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 事務局長 山口育子さんです。  なお、本日の参考人の方々については、委員の先生方から推薦いただきました方々を、 座長と相談いたしまして決めさせていただいています。 ○ 石井座長  参考人の皆さん、本当にありがとうございます。本日は先ほど局長からの話もありま したし、十分ご存じだと思いますが、スタート5年以内での臨床研修制度の見直しとい うことですので、それに向けてのご意見をいただきたいということです。  早速、金尾参考人から15分ほどでお話をお願いしたいと思います。 ○ 金尾参考人  ただいま紹介いただきました和歌山から来ました医療法人 金尾好章歯科医院の金尾 です。この中で医療法人とはいえ、個人の医院で協力型施設として本日は参考人でお呼 びいただいているのは私のところだけです。かなりマイナーな説明になるかもわかりま せんが、協力型施設の末端はこういう現場だということで、参考にしていただけたらと 思います。 (スライド発表開始)  これは、お手元のレジメにコピーしていただいていますので、私の診療室の履歴だと 思って、後ほど自分の診療室で少し力点を置いているところをゆっくりと説明させてい ただきたいので、飛ばしながらいきますのでお手元の資料を見ていただけたらと思いま す。  小児歯科、歯列矯正を主にしているものですから、低年齢からの口腔の成長発育に関 わる診療体制というのをもともと心掛けています。患者は0歳から20歳までの方が7 割近く来ていますので、その方たちが大きくなってまた母親になりといった、非常に若 い年齢の患者が多い診療室だということで、理解していただけたらと思います。もう1 つは、予防を中心とした患者サイドに立った診療を心掛けているということで、後ほど 出てきますがドリルフリーゾーンと言いまして、全くタービンとか抜歯鉗子とか麻酔を 使わない診療室をあえて別階に設けていまして、そこで研修歯科医も十分に考え、診断 した上で治療計画を立てるといったことを心掛けています。  これは別の資料から持ってきましたが、和歌山は県庁所在地に40万人の人口に270 軒がありまして、私の診療室は赤のマークですが、ほんの100m以内にこれだけ密集し ています。JR和歌山駅から私の診療室まで、歩いて約5分ぐらいです。ですから、い かに診療室が多いかということで、本当に地方都市の田舎ですが、歯科医院だけは銀座 です。5分も歩けば、こんなビルも何もない田舎なので、所詮本当に地方都市です。  診療室の待合い室です。これは2階の一般の診療室です。お母さん方とか長くやって いますと、どうしても老人の方も見えますので、そういった方々はここで診ています。  これは小児の診療室で、年齢が低いとどうしても泣く子も多いので個室の診療室にし ています。全く壁の個室だと非常に閉鎖的ですので、ガラスで仕切った個室を3つ設け ていまして、こういったところで小さい子供の診療をやっています。  先ほどお話しました2階の診療室の上に「ドリルフリーゾーン」という予防歯科健診 室というのを設けています。ここはベテランの歯科衛生士がいろいろとマネジメントを しています。診療室の中身はこうですが、新人の歯科医師があえてここで2カ月、3カ 月間は、新しく来た患者や定期検診に訪れた患者の口腔内を見せてもらって、例えばC1 を削るかどうかをゆっくりと考えていただく。いろいろな機器を使って診断していただ く。あるいは唾液検査をしていただいて、その方のリスク検査をする階にしています。  禁煙外来もしています。これも、どこの施設でも変わらないことだと思いますので、 お手元のレジメを見ていただけたらと思います。  うちの診療室のスタッフです。非常勤が結構います。私も小児歯科学会の専門医では ありますが、同じような専門医であったり矯正の認定医の方に出入りしていただくこと によって、また違った情報を得る。新しいスタッフを迎えたときには院長だけではなく て、ほかのスタッフにも勤務医にもいろいろとご指導をいただくような形を取っていま す。臨床研修指導歯科医としては、今のところ私1名です。昨年までは2名いたのです が、開業しましたので1名です。また、歯科衛生士の教育にとても力を入れていまして、 非常勤ではありますが、フリーランスで関西で活躍されている方を月2回ぐらい招いて、 新人の歯科医師や歯科衛生士の教育に携わっていただいています。これもお手元の資料 を見ていただけたらと思いますが、カリオロジー、ペリオドントロジー等の病因論に基 づいたリスクコントロールの実践を心掛けています。  ここは、少しうちの医院としては力を入れているところです。どうしてもこの歯科医 師という仕事が、とかく手先の器用さ。例えば5年生、6年生の院内実習、診療しなが ら実習していくという課程も1つの数値目標がきっとあると思います。各大学違うでし ょうけれども、あると思います。この上に立って、早く症例をこなしていく、早くきれ いに仕上げていくものが優秀といっては何ですが、こういった数値目標というのは1学 年が100名以上もある歯科大学では、当然成績を付ける、卒業の目安にするといったこ とで大変大事なことだとは思います。これが、卒業して歯科医師になってからも、研修 歯科医になってからも、どうも抜けきらないところに少し論点を持っていきたいなと思 っています。  研修歯科医の指導項目を見ますと、卒業前の5年生、6年生のときのカリキュラムは いろいろと違うので、どのような相違があるかは詳しくは調べていないですが、どうも 似ているのではないかという気がします。ですから、研修歯科医になったということは 歯科医師になっているわけですから、この1年間でいろいろな初めてのことを体験して いくことは大事なことであり、早く削ってみたい、抜いてみたい、デンチャーなりを入 れてみたいということに接していくことはとても大事な体験なので、それを研修施設で していくことは当然のことだと思います。しかし、そういう数値目標を追いかけるだけ ではなくて、考えながら処置していくことがどうも足りないような気がします。まずカ リエスとか歯周病に関しては、発症前にコントロールできる歯科医がこれからの時代に 求められると思いますので、こういったことを研修歯科医あるいは若い勤務医と一緒に 勉強させながらしていくのが、研修施設としては大事ではないだろうかなと考えていま す。  もう1つは、たくさんの知識と高度な技術を身に付けて卒業してくるわけですが、ど うもこれを患者の前で的確にわかりやすく説明する能力が少し難しいようです。頭の中 に入っている内容は非常に高度なものが入っていると思いますので、ここら辺を患者に よりわかりやすく上手に説明する。それが研修歯科医として、すごく診療室で認められ るというか認知される、その地域で認められていくことになろうかと思いますし、そう いったことが欠けていきますと研修施設そのものがその地域から少し浮き上がってきた りしますので、院長としては非常に力を入れているところです。チェアサイドにあるパ ソコンを使ったり、もともと既存の媒体を使用したりと、患者のモチベーションを高め られるいろいろな方策は練っていますが、いきなり患者の前では難しい説明になろうか と思います。これも、手元の資料を読んでいただけたらと思います。  メンタルヘルスの対応にいきます。これは院内の研修歯科医にできるだけ参加してい ただくようにしていまして、例えば土・日もセミナーへ出掛けていくときも本来は休み にしなければいけないのですが、1日ぐらい代休をあげるから参加しようではないかと して、スタッフは同僚だから、同僚がやっていることを一緒に研修歯科医もしていこう ということで、ほかの医院の見学も含めて私たちと一緒に出掛けるように心掛けていま す。これも同じようなことです。  評価方法については、私は日本大学松戸歯学部附属病院の研修要綱に従っていますの で、このとおりです。  勤務環境もレジメにあるとおりです。  月2回矯正歯科の専門医の先生が来ていますが、この専門医の指導の下で矯正の基本 的なことを教わっています。また、フリーランスで活躍している歯科衛生士に歯周病の 初期治療を歯科衛生士と歯科医師がどうやって組んでいくか、アプローチをしていくか といったことも歯科衛生士からでも学ぶことは研修歯科医にとっては多くあると思いま す。  私の医院では、3階の研修室を使ってこういう実習も兼ねてやっています。これはIT 化で、どこの医院でもいまはしていることだと思います。  これは以前の研修歯科医です。  一昔前と違いまして、デジタルカメラがかなり普及しましたので、口腔内写真撮影と いうのが1つのルーチンワークになってきました。初診患者はもちろんのこと、定期検 診で訪れた方、小児の患者、矯正患者、ほとんどの患者の口腔内写真を撮るようにして います。ですから同じような規格写真を撮るということで、相互実習をしたり定期的に 専門家をお招きして、研修歯科医も含めて実習を行っている風景です。これは、フリー ランスの歯科衛生士による歯周病の初期治療におけるスライドです。  これは、私どもの資質向上ということになりますが、若い歯科医が診療室へ来ていた だけるということは、そこの院長だけではなく、そこのスタッフも大きな刺激になると 思います。ですから、できるだけ負けないように研鑽していく。若い先生方も、手はな かなか動かなくても、非常に新しい知識を持ってきますので、負けないように勉強して いく。あるいはヒヤリハット等の安全管理も、院内に置いているそういった機器をメー カーを呼んで実習していくことも、年に1回ですが研修歯科医が来ている間にするよう に心掛けています。  ここから先は、本来本日持ってくるべきスライドではないかもしれないですが、研修 歯科医をできるだけ医院の外へ連れ出そうというのを1つのモットーとしています。例 えば保育所や小学校の歯科検診に連れ出して、一緒に検診させる。また、ここ数年、コ ーチングというのがすごく医療の世界で流行だと思いますが、つい先日行われたコーチ ングセミナーに松戸歯学部から来られている研修歯科医を一緒に参加させるといったこ とを、できるだけ心掛けています。  もう1つ、別のレジメにも意見書として書かせていただいたのですが、6年間の教育 を受けたあとに若い先生方の頭の中には、歯科医師になった喜びというのが少し少ない ような気がします。それは誰が悪いということではなくて、あまりにも歯科という業種 がここのところ元気がなくなってきたのが学生にも十分に伝わっている。そういったこ とで、院内生を終え、国家試験に合格して、私の時代だったらこれで一区切りがついた と思ってとても喜んだのですが、今は研修歯科医になって研修施設へ入ってくる。それ が全く違った内容の教育を受けるわけではありませんので、非常に将来を不安に思いな がら、先輩たちに「これからの歯科医は大変だぞ」ということをすごくいろいろな形で 植え付けられていると言っては過言かもしれませんが、そういったニュアンスで、頭の 中がどうも整理がつかないままに研修施設に来てしまうことがある。歯科医になったか ら有頂天になれということではありませんが、自分たちの仕事をもっともっと誇りに思 って、きっと良い結果が生まれるのだ、努力すれば、良い結果が生まれるということを、 研修施設で教えていきたいなと考えています。  もう1つのレジメにも書かせていただきましたが、歯科の業界がいろいろなところで 行き詰まりになっているわけではありません。大学病院では最新の技術が取り入れられ、 研究が進み、一般開業医でも素晴らしい診療所がたくさんあります。そういったところ を少しでも若い研修歯科医に紹介していくことによって、まだまだこの世界が有望で価 値のある仕事だということを研修歯科医に教えないと、私は研修施設の意味がないよう な気がします。歯科医師になって、自分で再リセット、再スタートができる仕事、自分 でコントロールしながら将来設計ができるということで、またこの自由業の楽しいとこ ろもあります。  研修歯科医の皆さんに、もっと歯科というものを大好きになってもらいたい。仕事を 好きになってもらいたいというのが私たちの施設のモットーです。これは歯科衛生士や 歯科助手、スタッフにも常に言っていることですが、勤務する限りは、あるいはこの仕 事に就く限りは、好きな仕事で少しでも楽しく仕事ができることと、嫌だなと思いなが らする仕事ではかなり内容やその価値観の差が出てくるのではないだろうか。少しでも 楽しい仕事に目標を置けるようにということで、研修歯科医そのものの自分の歯科医と いうのはこれからどういう形のものであるか。  未来形を探るというのが、この1年間の研修歯科医の期間で行うことだと思います。 最初に申し上げたように、数値目標は確かに大事ですが、そういったことだけを念頭に 置いて1年間を過ごしてしまうのは非常にもったいない1年だと思います。ですから、 私の施設ではこれからは、例えば大学への報告も、できることであれば記述式のレポー ト、院外へ出たときもレポートを書かせてみるほうが、何人の患者を診たとか、何本の 歯をどうしたといったことよりもとても大事なことではないかなと感じています。  もう1つは、どこに行ってもチーム診療ということが言われていますが、スタッフと 同僚と一緒に協力し合いながら患者を助けていく、診ていく視点が大事かなと思います。  最後のスライドになりますが、手厚いおもてなし。Hospitalの語源だそうですが、医 療の基本的な精神を養える環境づくりが研修施設の大事なところかなと思います。  少々長くなって申し訳ありません。 ○ 石井座長  どうもありがとうございました。今の発表にご意見、ご質問をどうぞ。 ○ 住友委員  現在、研修歯科医は何名来られていますか。 ○ 金尾参考人  現在は1名です。過去に来ているのをあわせて、今来ているので8名が来ました。 ○ 住友委員  いつも1名ずつぐらいですか。 ○ 金尾参考人  2名か1名です。 ○ 住友委員  期間はどのぐらいですか。 ○ 金尾参考人  期間は、今は日本大学松戸歯学部のプログラムCというのをやっていますので、8カ 月来ています。3年前までは4カ月、4カ月のステージで来ていました。 ○ 住友委員  8カ月と4カ月の違いは感じられますか。 ○ 金尾参考人  4カ月でも、それなりに体験していただけるのですが、診療室のシステムやその場に 慣れるのに2カ月ぐらいかかるような気がします。実際に働いてもらっているわけでは ありませんが、3、4カ月を過ぎると、途端に私たちから見て助けてもらっているところ もありますので、若い勤務医として来ているようなところもあります。ですから、十分 に研修歯科医本人もこの診療室の中では役立っているのだ、やることがあるのだ、診療 することがあるのだということで、ある分は満足していただいているのではないかと思 います。 ○ 住友委員  8名の中で、先生のところに就職された方はいらっしゃいますか。 ○ 金尾参考人  1名だけ非常勤で来ています。私の診療室は日本大学松戸が千葉県にありまして、私 は和歌山なので、こんな遠いところまで研修歯科医で皆来ていただくのですが、そうい う地理的なこともありまして、私も来ていただいたからには就職していただこうとは考 えていませんので、あえて遠くへ来て体験するという方もいらっしゃいました。 ○ 住友委員  別のことで、スライドにプログラム責任者1名と書いているのは、指導歯科医1名の 意味ですよね。あれは間違いのスライドだと思いますが、これは5年先には協力型にも プログラム責任者というのを置くのがいいのかなと、そう思いました。ありがとうござ いました。 ○ 石井座長  ほかにありますか。 ○ 瀧田参考人  松戸と和歌山ということで、地域性でかなりギャップがあると思います。そうすると、 例えば保険のレセプトの作成上とかで戸惑いなどの問題は生じてこないでしょうか。 ○ 金尾参考人  研修歯科医が診療した内容をですか。 ○ 瀧田参考人  そうです。 ○ 金尾参考人  基本的には研修歯科医だけで診療するということはありませんので、研修歯科医が診 療した内容を上級の歯科医あるいは勤務医あるいは院長が必ずチェックしていますので、 カルテの内容やそういったことは問題ありません。 ○ 瀧田参考人  最後に保険レセプトを作成して1つの診療行為が終わる。そうすると、上級の指導医 に指導を受けて診療行為を行ったあと、自ら担当した患者のレセプトを自分で確認する ことも研修項目にあると思いますが、そうすると地域性でかなり関東と近畿とが違った りの問題が出てきますが、どのように対応されていますでしょうか。 ○ 金尾参考人  正直申しまして、そこまでまだ突き詰めていません。診療の内容から考えますと、例 えば複雑な全国都道府県によって若干疑義解釈が違うとか、そういったことでしょうか。 ○ 瀧田参考人  はい。 ○ 金尾参考人  そこまで突き詰めた診療には、研修歯科医は関わっていませんので、レセプトの内容 やカルテの内容の研鑽を積む機会はあります。 ○ 石井座長  できるだけ、研修のシステムの見直しに関わるようなことについての意見の交換にし たいと思います。どうもありがとうございました。  続きまして、瀧田さんお願いします。 ○ 瀧田参考人  中津病院の瀧田です。私は総合病院口腔外科の立場から報告をします。金尾先生と同 じ臨床研修施設と言えども、かなり毛色が変わった形になるかと思いますが、お聞きく ださい。 (スライド発表開始)  本院における歯科医師臨床研修の沿革と現況です。平成11年4月から単独型の歯科 医師臨床研修施設に指定されまして、年度ごとに指導歯科医、研修枠の拡充といったこ とできました。平成19年度も含めますと、研修修了歯科医延べ12名、指導歯科医が3 名となっています。本院の場合は、歯科医師臨床研修委員会が独自に運営されています が、中津病院臨床研修管理運営委員会の統括委員会の下で運営されている状況です。  研修環境の概要です。この中で最も特徴的なのは、病院規模として大阪市内都心部、 JR大阪駅に隣接した総合病院で、24の診療科、778床の病床で、特に重要だと思うの は62の各種委員会が非常に充実していることです。感染予防委員会とか事故対策安全 委員会とか、いろいろな委員会が相互に臨床研修をバックアップしている。医科歯科共 に非常に研修医は、恩恵を被っているような院内環境が重要だと痛感しています。  研修プログラムとしては、単独型として研修期間1年で2名受け入れ、また、協力型 として1名、研修期間8カ月で、これは大阪大学歯学部附属病院からの研修歯科医の受 け入れという形です。指導様式は主治医、指導歯科医とマン・ツー・マンでの研修指導 を取っていますが、当然に主治医は診療しながらの指導ですので、外来患者数、入院患 者数、手術件数といった診療科の規模に研修状況が影響を受けます。  管理型施設と協力型施設との連携という点です。まず、大阪大学歯学部附属病院の歯 科医師臨床研修指導歯科医講習会へ参加する。臨床研修を事務局として担当しているの は、いずれの研修施設でも人事課ですから、大阪大学と本院の人事課との連携の構築、 大阪大学歯学部附属病院の臨床、研修システムの参考と応用というのが私たちが考えて いる協力型への参入の1つの目標、すなわち本来の教育医療機関と連携することによっ て、多面的な充実化を考えていこうと考えています。スライド表の一番下は管理型施設 と協力型施設、または協力型施設間との連携の活用という案ですが、総合病院ですから いろいろな委員会、いろいろな勉強会やカンファレンスが多機能を持って充実していま す。院内からも院外からもどんどん参加をして、相互に機能を活用していく方が研修効 果がより高まるのではないかと考えている次第です。  中津病院における歯科医師臨床研修の指導体制です。現在は3名の指導歯科医がいま すが、一口に指導歯科医といっても臨床経験が28年、24年、11年とかなり開きがあり ます。それぞれ口腔外科出身ですので、どうしても口腔外科主体の臨床研修になりがち です。この臨床経験の差というのが現実に出てきますので、統括的に研修指導責任者が 随時介入指導を行う形で対応しています。  臨床研修内容と評価方法です。中津病院臨床研修プログラム・必須項目の所定の件数 で、評価しています。特に項目Aというのが診査、診断、適応症に関するもの。通常の 歯科保存、補綴、口腔外科外来基本処置に関するもの。指導管理として、口腔衛生指導 や歯周疾患管理指導によるもの。これは1997年医歯薬出版(株)から出ていました歯科医 師臨床研修マニュアルの到達度B、すなわち指導歯科医とともにならできるといった到 達度B以上のものを件数として挙げて、所定の件数で年間の評価をするようにしていま す。B、C、Dは一応体験ということで項目に挙げていますが、B項目としては、入院症 例は主治医とともに担当します。C項目としては、傷病に対する一般的診断書のほか、 死亡診断書や麻薬処方箋の書き方です。これは、学部教育でも死亡診断書、麻薬処方箋 の書き方については勉強していますが、卒後途絶えてしまう傾向があります。もちろん 研修歯科医が書くことはないですが、学部教育で習ったものを生かすという意味で入院 症例を担当する際に、必要な場合にはこういうものも主治医とともに作成するトレーニ ングを受けてもらうことにしています。D項目としては、歯科保健社会活動として、私 は府立中津養護学校の歯科校医をしていますので、年1回の検診に同行してもらってい ます。それから、日常的な勉強会やカンファレンスとして診療科のカンファレンス以外 に、全体のCPCとか救急カンファレンスとかNSTのカンファレンスとか、いろいろな ものに積極的に参加してもらっています。日本口腔外科学会地方会への学会発表。これ は4月に採用されて、発表が大体6月、7月なので短期間ですが、診療行為の延長上に 症例を整理したり記録を整理して発表するというものも1つの努力目標として挙げてい ますので、これもD項目に入れています。平成19年度から救急のACLSの受講といっ たものも予定しています。  メンタルヘルスへの対応ということで、最も気を付けていることは、スライドの一番 下に示しますように「食と精神症状」が密接に関連していることから、食事はゆっくり 咀嚼し、味わって摂るよう日頃から指示している。というのは、食事がうまく摂れてい ない状態で、非常にストレスの加わる状況での過酷な診療勤務というのは、一旦、精神 症状が非常に不安定になってしまうとなかなか元に戻らないことをよく経験します。例 えば精神不安やうつ状態は、脳内の神経伝達物質セロトニンが不足と言われており、精 神科ではセロトニン再取込抑制剤を処方されますが、セロトニンの前駆物質はトリプト ファンであり、必須アミノ酸のトリプトファンが日常的に食事とともにきちんとおいし く摂れて、消化管から吸収されていれば、精神的には落ち着いたコンディションで勤務 ができるのではないかということを強く指導しています。余談ですが、昼の食事の時間 が非常に忙しいときでも、とにかく患者を待たせても食事だけはきちんと摂ってこいと いうことを言っています。  そういうことが前提で、スライド一番上の項目は指導歯科医対研修歯科医が1対1の 指導・研修体系ですので、研修歯科医の異常は比較的早く察知することができることを 示しています。大事なことは、その中で研修歯科医を孤独にさせない。研修意欲の向上・ 維持と到達度の確認、問題解決の手法というのは指導歯科医だけが独り善がりでやって はいけませんので、常に指導歯科医と研修歯科医間、あるいは指導歯科医同士で同一視 点で共有するように心掛けることに注意しています。  患者とのトラブルの防止については、患者−主治医間の人間関係が構築している患者 から診療に介入させることで行っています。例えばあってはならないことですが、研修 歯科医による歯科治療中、ストッピングの熱いのが唇に触れても、信頼関係が構築でき ている場合には、苦情にはいたりません。人間関係が構築している患者から随時介入し ていくことにしていますので、初診の時点から問診を十分に取って、治療状況の中から 人間関係が成立している患者に対して少しずつ治療を担当させて、トラブルの防止を図 っています。  大規模病院の中で注意しなければならないのは、医科の研修医の方々もそうですが他 の職員、若い看護師とのトラブルです。お互いに非常にストレスのかかる状況下では、 一般診療所とは違ったストレスが多くかかってきます。いろいろな事故の問題、アクシ デントの問題が病院では多い。非常に過酷な状況下での勤務となりますので、いろいろ な職種の方がいろいろなストレスを持って、ストレスを持った者同士が往々にしてトラ ブルを起こす。言葉の問題や態度の問題と些細なことから問題になることがあります。 こういうものに対しては、日頃からカンファレンスや院内の集まりというものに積極的 に同席させて、相手の立場に立った考え方ができるように心掛けて、スタッフ同士のト ラブルの防止に注意しています。一度起こった場合の解決には、院内の関連委員会の協 力が非常に有効であるといったことも経験しています。  研修歯科医の勤務環境は、社会保険、労働保険は医科の研修医と同様に、院内規定に 従って確保されています。学会、研究会への参加も支給がある状況です。  指導歯科医の資質の向上策です。日常的指導項目については、指導歯科医個々で年度 ごとに担当研修歯科医に合わせた指導目標を立てることにしています。これは言葉を換 えて言えば、研修歯科医というのは、到達度にかなり個人差があります。出身大学によ ってもかなり個人差があるということで、逆に個人差のある研修歯科医に対して指導す る上で、何を学ぶかということが指導歯科医自身の資質の向上につながるのではないか と考えて、技術指導の面や対患者、対スタッフのコミュニケーションの指導、診療録の 作成等を含めて個別に対応している状況です。もう1つは、学術指導を通じて指導する ことも資質の向上につながるのではないか。研究発表や学会発表、論文発表というのは 診療のカルテの延長上にレポートの作成があると考えていますので、公的なところで自 分たちが研修した内容、診療に携わった医療行為をきちんと発表する習慣を付けるよう 心掛けて、指導歯科医と一体となった資質の向上を考えます。  歯科医師臨床研修への導入と修了後の対応です。卒前教育との連携。今までは9名、 現在研修中の者も含めて12名ですが、一番感じることは出身大学によってかなり到達 度の違う方々が一緒に入ってこられる。そうすると採用される時点、研修がスタートす る時点である一定の到達度の確認といったものが必要なのではないか。到達度の低い方 が具合が悪いという意味ではなくて、到達度に合わせて無理のない研修を組む以上は、 そのあたりを十分に学部教育の担当の方々と連携を取る必要があるのではないかと考え ています。今までは、一枚の推薦状だけでお受けしていたわけですが、ある程度のコア カリキュラムのリストというものが歯科医師の臨床研修指導マニュアルにも載っていま すので、できたらそういう標準的なものを通じて、どの程度の到達度にあるかというこ とが事前にわかれば研修指導もしやすくなるのではないかと思っています。  研修希望者には、学部5年次の時点から頻繁に病院見学を行っていただいて、研修に 必要な知識を学生の段階から理解して、自分がこの病院で研修を受けようとすると何が 足らないのかを学生時代から認識していただくのも一つの方法ではないかと考えていま す。  スライド欄外の*です。病院ボランティアの活動も進めています。ボランティアの希 望者にはボランティア委員会というのが院内にありまして、そこで夏休みなりを利用し て研修体験をしていただいて、ボランティアの目から中津病院あるいは中津病院の研修 というものを理解していただく。研修に来られた方にはよくお渡しする病院誌、中津病 院年報を提示して、病院の規模なり診療状況に関するデータを一通り見てもらうことを しています。  後期研修の受入れについては、今までの研修歯科医全員が1年間で修了ではあまりに も不足すぎるという訴えが強いので、医科と同様に後期研修の受入れを人事課あるいは 臨床研修管理運営委員会主導で検討していただいています。現在は1年間の研修を終え られた方の中で、継続希望のある方には、修練医や病診連携登録医として籍を置いてい ただき、時間のあるときに一緒に診療をする。例えば彼らからの紹介患者を、手術や入 院治療をともに行うことで補っているのが現状です。学会活動についても、研修が修了 してからも継続する者も少なくありません。  結語として、私たちの過去7年間、延べ12名の歯科医師臨床研修医に対して、比較 的十分に研修歯科医の方とうまく向き合って研修指導する環境があったのですが、12名 の臨床研修歯科医を受け入れてきた施設として研修に関する特性、特徴というものを述 べさせていただきました。  一つ論点として挙げたいのは、研修施設によってかなりカリキュラムや内容到達度に 格差が生じてくる可能性があるのではないか。これは歯科における臨床研修施設の問題 とともに、それ以上に医科との格差もますます広がるようなことが危惧されます。私た ちの病院では、医科についてはそれぞれ指導医が兼任でやっていたのですが、なかなか 兼任ではうまくいかないということで、専任の臨床研修担当者を設置して臨床研修実地 指導に当たるように、コーディネートする形で検討されています。歯科医師臨床研修に ついても、かなり考えていかないとその点が難しいのではないかと思います。  付記です。過去の臨床研修歯科医がファーストオーサーとして書いた論文、主に中津 年報掲載論文です。これは院内誌ですが、医中誌に登録されます。その中で、研修が終 わって年に一編か二編はケースレポートを書くようにということでやってきて、これは 臨床研修にかかわるガン患者に関するもの以外にも、野宿生活者の歯科治療や在宅訪問 医療に関するものなど、いろいろなものが含まれています。  私の用意させていただいた資料は以上です。 ○ 石井座長  どうもありがとうございました。ご質問、ご意見はありますか。 ○ 丹沢委員  先生のご発表いただいたことの中で、学会等の関連がかなり強い形で学会のいろいろ な講習会を利用するなどがあります。私どものところでは1、2年生は研修歯科医です から学会には入ってもらいますが、その理由は実は学会の保険制度を利用する、医療事 故とかの賠償保険制度を利用するということで使っています。逆に学会活動は初期研修 とは少し違うものですから、アドバンストなものという捉え方で、特に1年生は学会に 参加させたり講習会などに参加させることがなく、2年生の後半でしたい者はするで、 うちの場合は3年以降は継続して研修できるものですから、そこでやりたい人はやる。 初期研修と学会との関連とか、もう1つ考えさせられたのは医療事故のときの補償制度 に学会を使うのがいいのかなと感じたのですが、そこはどんな感じで取り入れられたの でしょうか。 ○ 瀧田参考人  私自身の考え方として院内の研修会やカンファレンスも学会発表も、格差を付けるこ となく同等扱いにしています。発表する以上は、どのような会であれ、手順や内容を正 してやるべきであると考えています。全員、医療事故の保険に関しては日本口腔外科学 会に入会してもらって、その学会から入るようにしています。そうすると、保険加入の ためだけに学会に入会するのはもったいない。そうであれば、例えば、総会では多少無 理があるので、地方会のような地域的なところで発表させ、発表する内容も、身近な一 例報告を行うようにしており、研修歯科医として理解しておかなければならない通常の 歯性感染症の重篤なものや歯科治療に関連した誤嚥例、あるいは研修歯科医の立場から 見た口腔外科の臨床といったものを主に発表させています。  もう1つは、大学でも3年目、4年目で初めて学会発表したり論文発表しても、あと が続かない方がいる。私の考え方は一生で最初で最後かもしれないから、この1年は臨 床研修のそれに則って最後と思って学会発表してきなさいとすると、研修歯科医は非常 に集中できるようです。自分が勉強しないといけない。あるいは質問されて答えられな いのは恥ずかしいと思う。そこから臨床研修が始まるように、患者に対しても真剣にな ってくる態度がうかがえます。ひとつひとつのケースについても疎かにしない。わから ないことは、自分で調べたり人に聞いたり論文を読んだりするという態度が非常に芽生 えてくるというところを私は評価しています。確かに先生がおっしゃられますように、 純然たる大学あるいは講座でそういう指導をするのはポイントが違う可能性があります が、修了した者の意見を聞くとあのとき学会発表をさせてもらってよかったというのを いつも言われますので、これからも可能な限り続けたいと思っています。 ○ 石井座長  もう1点どうぞ。 ○ 花田委員  教えていただきたいのですが、医師臨床研修と歯科医師臨床研修のカリキュラムの交 流ということは考えていらっしゃいますか。 ○ 瀧田参考人  根本的に、医科と歯科はカリキュラムの内容が異なりますので、総論的なところで医 療管理に関するもの、医療事故の予防や感染予防に関しては同一枠で、同じカンファレ ンスに出席しています。ですから、少し遅れたりすると臨床研修歯科医に「今から始め るから来なさい」という連絡があったり、ほかの科で剖検される場合でもお呼びがかか ったり、CPCにも参加させていただいている。そういうところで交流しながら、同じ臨 床研修の枠内で研修を受けてもらっている状況です。各科回りとか、そういう交流はあ りません。 ○ 石井座長  どうもありがとうございました。先ほどの金尾先生と確かに視点が違って、特に研修 目標や評価についての視点が、お二人は大変示唆に富んだものだったと思います。  今度は、臨床研修経験者として則武参考人からお願いします。 ○ 則武参考人  東京医科歯科大学から参りました則武加奈子と申します。私は2006年3月に東京医 科歯科大学歯学部を卒業しまして、2006年4月から2007年3月まで東京医科歯科大学 歯学部附属病院歯科臨床研修プログラムにて、歯科医師臨床研修を山梨県立中央病院及 び東京医科歯科大学歯学部附属病院でさせていただきました。現在は歯科医師臨床研修 を終えまして、東京医科歯科大学歯学部附属病院にて後期研修である歯科レジデント及 び、東京医科歯科大学大学院インプラント・口腔再生医学分野の社会人大学院をしてい ます。  本日は歯科医師臨床研修を終えてということで、初めに昨年4月から9月の山梨県立 中央病院での研修、次に10月から3月の東京医科歯科大学での研修についてお話しま して、最後に現在の後期研修についても簡単に触れたいと思います。 (スライド発表開始)  私が研修しました平成18年度東京医科歯科大学歯学部附属病院の臨床研修プログラ ムには、ご覧のとおり2つのプログラム6つのコースがありまして、私はこの中でプロ グラム1のコースAを選択しました。コースAは4月から9月を協力型研修施設で研 修し、10月から3月までは管理型である東京医科歯科大学歯学部附属病院で、表にあり ます総合研修と選択研修を行うプログラムです。なお、こちらにあります全身管理研修 については、協力型施設が開業医などで病床を持たない場合には管理型で行いますが、 私のように協力型が口腔外科などで病床を持っている場合は協力型で行います。  そのため、前半を協力型研修施設である山梨県立中央病院、後半を管理型研修施設で ある東京医科歯科大学歯学部附属病院で研修することとなりました。  まず、山梨県立中央病院での研修について述べていきます。研修の概要です。山梨県 立中央病院は山梨県甲府市にあり、病床数669床、1日平均外来患者数998.9人という 山梨県の基幹病院であり、私が研修した口腔外科は私を含めて歯科医師数3名でありな がら、1日平均外来患者数22.8名、病床数8〜12床、年間手術数108件と大変症例に 恵まれた研修施設でした。  次に、管理型施設との連携体制についてご説明します。研修歯科医は、研修記録と1 週間のフィードバックを毎週東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科臨床研修センターへ FAXで提出します。指導歯科医に関しては、年に2回研修管理部会に出席します。  指導体制です。2名の指導歯科医の下、ほぼマン・ツー・マン体制での指導が受けら れました。また、総合病院であったので他科の医師やコメディカルによるサポートもあ り、充実した指導体制だったと思います。  実際の研修内容です。研修の内訳はおおよそご覧の円グラフのようになっています。 具体的な研修内容を項目別に見ていきますと、座学としては院内学術集会での発表や論 文抄読などがあります。診療補助は、全身麻酔下での全手術症例の介助、悪性腫瘍など で顎義歯が必要になった方の治療の補助などがあります。実習としては、AED講習会や 救急蘇生実習などがありました。  自験について、さらに詳しく見ていくと、初診患者の問診では、医療面接、診断、血 液検査、レントゲンなど、臨床検査データの見方、患者への治療内容の説明などです。 外来小手術では、抜歯、骨折の顎間固定、顎関節治療、埋伏歯抜歯の治療などがありま す。病棟業務では、入院患者の全身管理、他科とのコンサルテーション、ICUや救急で の患者管理など、大変有意義な研究内容でした。少々わかりにくいのですが、右下にあ りますのが抜歯などは自験数で、全身麻酔の手術に関しては私が介助に入った件数です。  ご覧いただいている表は、1週間の研修の流れです。平日の午前中は外来での初診患 者の問診や病棟診察を行い、午後は外来で抜歯などの小手術を行いました。水曜日は手 術日で、全身麻酔下での手術を行いました。色別で、例えば黄色は病棟業務などとお考 えください。  自験のその他として、病院内学術集会や山梨県口腔外科集団会で症例発表をする機会 にめぐまれました。また、発表した症例は病院年報に掲載されました。  評価方法です。評価は、指導歯科医による日々の診療の中でのステップごとでの評価 がありました。研修が進むごとに徐々に仕事を任せられる機会が増えていきました。指 導歯科医は、研修修了時に規定のチェックシートに評価を記入し、管理型へ提出します。  勤務環境はご覧のとおりです。山梨県立中央病院には医科の研修医の先生もいらっし ゃるのですが、医科の研修医の先生と同じ条件で働かせていただきました。  山梨県立中央病院での研修を通じて学んだことをまとめます。まず、診断の難しさと 大切さ、そして患者への説明の重要性を痛感しました。そして、患者の全身管理のコン トロールやCTやMRIなど画像診断、血液検査データなどの読み方を学びました。また、 救急患者来院時の処置と対応や他科とのコンサルテーションなど、大変貴重な研修をさ せていただいたと思っております。  続きまして、東京医科歯科大学での研修について説明します。東京医科歯科大学歯学 部附属病院は東京都文京区にあり、常勤歯科医師数365名、うち指導歯科医師数166名、 ユニット・チェア数314台、病床数60床、1日平均患者数1,741.1人となっています。  私が選択したプログラム1、コースAでは、先ほどお示しした表のように総合研修と 選択研修を行いますが、総合研修は第2総合診療室という研修歯科医のための診療室で 行います。第2総合診療室では、歯科総合診療部から3名、保存科から5名、補綴科か ら3名、口腔外科から1名の教員が、常時、診療室内で自分の患者を診察しながら、研 修歯科医の指導をしてくださいます。また、不定期ではありますが、学外の臨床教授の 先生6名および非常勤講師の先生3名も、指導に当たってくださいます。  指導ライターの下で研修歯科医に配当された患者に、治療方針の立案から患者への説 明、実際の治療を自ら行います。第2総合診療室の1日平均来院患者数が約200名、平 均患者配当数が約30名、ユニットが41台設置されています。また、選択研修は矯正科 や小児歯科など、選択研修診療科の中から、研修歯科医が希望する診療科を選択し、研 修します。また、私は山梨県立中央病院のほうで行いましたが、全身管理研修は高齢者 歯科、歯科麻酔科、障害者歯科の中から選択で1科を回ります。  第2総合診療室での診療風景の様子です。研修歯科医専用の技工室があり、研修歯科 医専属の技工士が指導に当たってくださいました。  研修内容です。先ほどと同様、研修の内訳を円グラフで示しました。具体的には、座 学は毎週金曜日に行われた研修歯科医セミナーや各科による特別講義、ポートフォリオ の作成などがあります。診療補助は、第2総合診療室で治療されているライターの先生 のアシストが上げられます。診療補助とは言っても、アシスト中にライターの先生の患 者を治療させていただく機会も多くありました。  選択研修は、私は歯科アレルギー外来とインプラント外来での研修を希望し、研修し ました。歯科アレルギー外来では、初診患者の問診、金属やレジンなど、歯科材料のア レルギー検査であるパッチテストなどの検査、インプラント外来では、インプラントの 手術の補助やその後の補綴治療の診療補助をさせていただいたりするなど、こちらも充 実した研修ができました。  自験は、配当患者数が26名、ケース数としては右下にある表のようになっておりま す。また、配当患者にセットする技工物を自ら技工したり、第2総合診療室の受付など、 当番業務もあります。  先ほどと同様、1週間の流れを表で示します。  評価方法です。第2総合診療室ではケースノルマがあり、レジン充填10点、義歯作 成60点などのような得点が定められており、各ケースを1例ずつおよび総得点数が500 点以上が半年間のケースノルマでした。ちなみに、半年間の研修で私の獲得点数は780 点でした。また、選択研修科での評価や1週間のフィードバック・ポートフォリオの提 出や指導歯科医による面接もありました。また、他のコースで1年間第2総合診療室で 研修をする研修歯科医には、症例発表のノルマも課されています。  勤務環境はご覧のとおりです。  東京医科歯科大学での研修を通じて学んだことをまとめます。まず、1口腔単位での 診断、治療方針の立て方を学べたことが挙げられます。そして、患者への治療内容等の 説明の仕方の重要性を学びました。もちろん、自らの配当患者を実際治療することで、 保存、補綴の基本的治療の手技をより自信を持って行えるようになりました。また、大 学病院ならではの歯科アレルギー外来、インプラント外来といった(特殊)専門外来で の治療の方法を学べたこと、口腔内写真などの資料採得方法など、こちらも大変貴重な 研修ができたと感じております。  次に、現在私が行っている後期研修について、簡単に説明します。東京医科歯科大学 歯学部附属病院は、歯科医師臨床研修を終えた卒後2年目の歯科医師に対して歯科レジ デント制度が設けられ、A、B、Cの3つのコースがあります。私はコースCの専門科 研修Bを選択し、インプラント外来での研修を行っています。  現在の1週間の流れはご覧のとおりです。外来では、グループの先生に付いて、イン プラントの診断、治療、手術などを研修しています。診療補助だけでなく配当患者もあ り、治療方針を立案したり、実際の治療を行っています。社会人大学院生でもあるので、 朝と夜は勉強会や研究など、忙しい毎日をおくっています。  最後に、研修歯科医を終えて感じたことをまとめます。私は今回研修したプログラム にとても満足しています。しかし、現在のシステムではコアカリキュラムの部分が見え づらいようにも思います。各研修施設、プログラムに差がありますので、自分が本当に コアカリキュラムを達成できたのか、不安を感じることもあります。しかし、研修修了 後の進路やその先の方向性は人それぞれですので、研修歯科医各々にとって学びたいも のが必ずしも同じものではないはずです。よって、研修プログラムはコアを確実に習得 し、かつ幅広い選択肢があるプログラムであってほしいと願います。  発表は以上です。ご清聴ありがとうございました。 ○ 石井座長  ご質問・ご意見はありますか。 ○ 丹沢委員  千葉大の丹沢です。先生は、かなり性格の違う研修施設でやって、トータルの研修自 体はすごく良い研修をされたのだと思うのです。それで、最後にいろいろお話されまし たね。いろいろな性格、素質や特色のあるコースなどというのは、実際にやられて、ご 自分が歯科大学だけ、あるいは歯科診療所だけでの研修をやった場合、あるいは国営化 施設みたいなところでやられていますが、そういうところだけでやった場合と、こうや って組み合わせた場合と、どんなところが良かったなどということがもしあったら、2、 3で結構ですからお願いします。 ○ 則武参考人  いろいろな研修プログラムがあって、マッチング制度で自分が希望して採っていただ ければ、希望する研修施設に行けると思うのですが、本当に先ほど申したとおりで、例 えば私は今後インプラントを専門に勉強をしようと思っていたので、必修研修では口腔 外科に行って、全身管理の勉強などをしっかり勉強したかったという思いが強いのです。 他の例では、友人で今後期研修で口腔外科に行っている人は、逆に来年、口腔外科をた くさん学べるのだから、必修研修では保存、補綴、一般歯科をしっかりやりたいと言っ て、なるべく一般歯科が多いようなプログラムを選んでいるような人もいます。やはり その次がみんな違うので、必ずそれを見据えて自己責任というか、自分でこういう1年 にしたいということを考えて、それが希望どおりかなったら、非常に良い臨床研修にな るのではないかと思います。お答えになっているかわからないですけれども。 ○ 石井座長  今のにつながっているのですが、先ほど瀧田さんからありましたが、いろいろな意味 の研修格差があるのではないかと思います。それについて、どうですか。研修歯科医相 互で話をして、今の時点で格差についてはいかがでしょうか。 ○ 則武参考人  例えば同じ半年間、協力型に行っても、開業医に半年行くのと、私のように口腔外科 に半年行くのとでは、もちろん研修できる内容にはたくさん差があって、例えば10月 に大学に帰ってきたときに、お互いすごく良い刺激になりました。私は半年間、口腔外 科だけだったので、一般歯科に関してはあとから挽回しなければいけないという思いが 多少ありましたし、やはり人それぞれ経験してきたものは同じものではないと思います。 ○ 石井座長  それについて、差があってどうだなどということはあまりないですか。あるいは、実 際はすごく違うなどということはありましたか。 ○ 則武参考人  結局、全員が同じところで同じ研修をすることはできないと思うので、私は差があっ ていいと思うのです。なので、逆にどのように1年過ごしたいかという自分の思いとう まくマッチするようなことが、むしろ大事なのではないかと思います。 ○ 石井座長  歯科は好きな職業ですかね。 ○ 則武参考人  はい。 ○ 石井座長  歯科医となった喜びというのは。 ○ 則武参考人  毎日楽しくやらせていただいております。 ○ 住友委員  住友です。日本歯科医学教育学会の学生プログラムのときに出られましたよね。 ○ 則武参考人  はい。 ○ 住友委員  この方は、たぶん必修化になる前のときから、学生の時代から臨床研修にかかわって、 後期研修までかかわっている、必修化の歴史みたいな方だと評価しているのです。先ほ ど言ったプログラムとカリキュラムと言っていいのか、コアの部分と言っておられた、 そのコアというのは、何をもってコアとして認識されているのでしょうか。 ○ 則武参考人  このスライドでもうまくまとめきれなかったのですが、結局、必修化になったという ことは、何かこういうことができるようになってくださいというものが仮にあるとした ら、それが何なのかというのが、今いちよくわからない。 ○ 住友委員  我々がこれを作ったといいますか、検討したのは例示なのです。基本習熟コースと基 本習得コース、そしてそこにユニットを足して、それを一応コアとして、この研修に提 示しているのです。それがもし活かされていないとすると、今例示しているものの見直 しというのは、5年後に絶対的に必要になる。先ほどの瀧田先生の話も聞いていて、や はりコアがあるのですが、そのコアの活用度がどうも低いのではないか。それゆえに、 ちょっと違う研修のスタイルをしていてもいいのです。それはあくまでもオプション的 にやるのがいいという形でのコアの例示だったのです。ですから、そこがちょっと違う かなという気がしています。 ○ 石井座長  どうもありがとうございました。  次は大学としての臨床研修です。廣藤参考人、よろしくお願いいたします。 ○ 廣藤参考人  福岡歯科大学という地方の私立大学、単科大学の歯科医師臨床研修の現況について、 お話をさせていただきます。福岡歯科大学総合歯科講座の廣藤と申します。よろしくお 願いします。 (スライド発表開始)  福岡というところは、九州の北の方、ちょうど韓国に近いところです。医局旅行も、 先日、プサンに行ってきました。福岡は、歯科大学・歯学部が3つあります。医学部・ 医科大学が4つあります。非常に多いところで、うちの近くにも九州大学、福岡大学と いったところがあります。そういったところで、歯科医師の臨床研修を行っています。 それゆえ、開業医も非常に多いです。うちの病院からは、直線にして4kmぐらいですか、 ヤフードームがちょうど見える、福岡市の若干西のほうに当たります。  研修施設の概要としては、歯科医師数176名、医師数12名、内指導歯科医師数が76 名、研修歯科医師数が71名、定員115名です。マッチングで115名、全部埋めていま すが、実際4月に来られる方が70名、40何名かはドロップアウトされているというこ とです。ユニット・チェア数は123台、病床数が50床です。下に書いてありますが、1 日当たりの外来の平均患者数が492名、うち歯科外来患者数が425名ということですか ら、患者数では東京医科歯科大学の4分の1ぐらい、指導歯科医が半分以下、チェア数 も3分の1ぐらいという規模になります。  診療部門としては、医科歯科総合病院ですが、歯科医科とはつけてくれませんでした。 歯科は15診療科があって、医科が5診療科です。特に歯科医師の臨床研修ですので、 歯科のほうで研修をしております。研修方式は、平成18年度、平成19年度は複合研修 方式、要するに管理型プラス協力型の臨床研修施設ということです。管理型として福岡 歯科大学医科歯科総合病院、協力型臨床研修施設として平成19年度は106施設、全部 開業医です。県内外の開業医を協力型施設として持っております。平成20年度からは、 複合型95名と単独型20名と、プログラムに単独型を追加しております。  研修内容としては、基本的に複合研修方式で、実際、研修しながらセミナー等を加え ていく。そうすることによって、歯科医療の基本的な知識・技術の実践的研修を行って いきます。初診患者については、指導歯科医の下で的確な診断および治療計画の立案に ついて、研修を行っています。一般歯科診療に必要な知識と技術に合わせて、歯科医師 としての倫理観、道徳、さらには法律を身に付けて、全身的疾患と歯科診療との関連を 含めた医学部的な知識を理解させるための臨床セミナーを開講しています。研修歯科医 は、原則として全テーマを受講しなければなりません。歯科診療を安全に行うために必 要な救急処置に関する知識や態度・技術を身に付けております。  先ほどもお話しましたが、研修の最初の講義・実習として、4月のオリエンテーショ ンが1カ月間あります。協力型臨床研修施設は、基本的に院外に5カ月間、全員出しま す。あと学内に6カ月間です。病院の規模上、なかなか研修専門を置けないので、一応、 総合歯科系、歯科保存科系、歯科補綴科系、この3つを合わせて総合歯科系になってい ます。口腔外科・麻酔科系も合わせて、成長発達歯科系のいずれかで6カ月ということ です。その中に1週間の全身管理研修や1カ月未満の訪問歯科診療を含んでおります。  これが年間のプログラムです。4月は基本的にオリエンテーションです。院外研修は 前期・後期とし、現在、ちょうど前期に行った人たちが9月30日に戻ってきて、10月 1日からまた大学病院での研修を開始しております。大学病院で前期研修した者が、10 月から院外研修施設、開業医のところに研修に行っています。基本的に院内は5グルー プ系に分かれております。あとは院外です。  研修歯科医の院外研修先区分として、県内・県外、全部で106施設あります。そのう ち出向先県内が24で、県外が19、前期・後期合わせて、合計43施設で71名の研修歯 科医が研修を行います。今年は県内が47名で県外が24名という形になっております。 研修先に関しては、4月に研修管理委員会を開いたときに、全員集まってもらって、そ こでの話と、国家試験終了後に2カ月間の時間が空きますから、そのときになるべく見 学して見てこいという話をしております。  これは年間研修内容で、先ほどと同じスライドですが、4月にプログラムが集中して、 研修セミナーで患者には触われませんから、シミュレーションシステムによる基本的診 療技能の修得、初診患者に対する診断と治療計画についての研修、保険を含めたカルテ 記載実習、一次救命処置に関する実習を行います。3月に関しては、うちは1年間の歯 科医師臨床研修で後期研修はありませんので、3月にプログラム研修修了後の準備期間 ということで、各診療科において研修、その後大学に残るか、あるいは院外に出るかで す。そのほかにも、定員15名の希望者ということで、海外の研修コースも持っており ます。  これは臨床セミナーで、80分講義を年間23回計画して、基本的に4月にやりますが、 それ以後2カ月間隔で5回やります。「本学教授陣ならびに地域歯科医療のエキスパー トから厳選して」と書いてありますが、そういった講師を起用して、生涯研修の動機づ けとするとともに、これは2カ月ごとの第3金曜日の午後、全部集めます。セミナーに 参加する形で、一度全員集めて、相互の意思の疎通を図っております。そういったこと も1つの目的としております。  うちは特別診療室を持っておりません。3階大診療室というのが、先ほど言った総合 歯科系、補綴科系、保存科系を合わせた診療室で、64台の診療チェアがあります。研修 歯科医、あるいは学生実習、臨床実習もここで行っております。1日の患者数は、ここ で300名ぐらい、新患が20名ぐらいといったところで、歯科医師臨床研修を行ってい ます。こういう形で、研修歯科医が研修を行っております。  どうしても患者数が少ないということで、横にシミュレーション室を併設しておりま すので、ここで常時このシミュレーションを使っております。基本的に学生実習では5 年生の臨床前実習に半年間、午前だけ使いますから、それ以外は全部、研修歯科医が指 導歯科医と一緒にここでトレーニングを積んで、実際の診療でカバーできない分を練習 しております。午後、あるいは診療時間が午前9時から午後6時までですから、それ以 後の午後6時から午後9時まで、この部屋を開放しております。  院外研修先には、5カ月間、必ず院外に出ていきます。一般的な歯科診療、地域医療 などを含めて研修を行っております。ちょうど9月いっぱいで終わった前期院外コース の歯科医が戻ってきましたが、大体が喜んで帰ってきています。「よくしてもらった。良 い勉強ができた」というような思い出話をしてくれます。  連携に関して、うちは評価方式を平成19年度はポートフォリオという方式に変えて います。その評価シートによって、臨床研修歯科医の達成度がある程度把握できますの で、情報を共有しております。お互いに帰ってきたときに、基本習熟コース、あるいは 基本習得コースの進捗度がどこまでかがわかるというのが、それを見ることによって判 断できますから、院外・院内とも、こういった形で連携をしております。あと、大学の 指導歯科医というより、あとで出てくる委員会のメンバーが協力型研修施設を訪問して、 研修環境の状態を把握しています。これは突然行きます。県外にも行きます。臨床研修 に関するアンケートを双方にやり取りしている。先ほど言いましたが、2カ月に一度、 研修歯科医を全部大学に戻しますから、そのときにどうだった、こうだった、あるいは 研修の仕組みから逸脱していないかも含めて、いろいろ話をするようにと促しています。 「もし逸脱する場合は遠慮なく言ってくれ。君たちには全然マイナスの要素はない」と いうことで、こちらから院外研修施設に注意をしたり、あるいはやり取りをしたりとい うことをやっております。  管理に関しては、やはりしっかりやっております。全体の管理として、歯科医師の臨 床研修管理委員会というのがあって、協力型院外施設106名を含めた管理委員会で、基 本的に年に2回行っております。4月と3月といったところに、いわゆる採用、あるい はどのようにやっていくか、その年の大きな方針、修了の判定ということです。中断の ときには、メンバーを選んで対応できるような仕組みにしております。  これは結構動きが大変ですので、学内に臨床研修運営の計画の立案および実施につい ての協議をするため、委員会として歯科医師臨床研修委員会というのをしております。 これは委員長と委員はほとんど先ほどの管理委員会の学内のメンバーと重複しておりま すが、研修プログラムの責任者は総合歯科長が、他の診療科の委員が副プログラム責任 者を担当しております。  これがそのメンバーです。学内のメンバーで、自分がプログラム責任者になっており ます。原則、毎月1度、こういう委員会を開いております。  この下に実働部隊として、実際に動いてくれる、やってくれる先生方の実務担当者会 があります。この実務担当者会も毎月1度、それも研修委員会の前に委員会を開いて、 その問題点などを研修委員会に上げて、研修委員会で判断して、科長会という診療科の 長の会も毎月1回ありますが、それをその科長会にかけるようにしております。研修歯 科医の問題点に関しては、全部この科長会に周知して、病院の意思統一を図っておりま す。  これは指導体制で、上級医の関与ということで、科長会のメンバーの下に指導歯科医 を置いておりますが、指導歯科医は5年以上の臨床経験を有する者であって、病院長が 認定した者ということで、現在76名おります。  評価法です。研修プログラムとその評価ということで、基本的にポートフォリオ評価 法を利用しております。平成18年度はコンピューターを用いた評価法でやっておりま したが、現場サイドからの意見をいろいろ反映して、ポートフォリオ評価法を用いて、 より密接に人と人とのコンタクト、コミュニケーション、指導歯科医と研修歯科医との コンタクトをとるような方針ということで、この評価法を始めました。臨床セミナー、 所属診療科、院内外での基本習熟コースおよび基本習得コースの診療研修について、診 療日誌を毎日つけていただく。委員会に関しては毎日見るのは大変かもわからないとい うことで診療週誌、1週間に一度の週誌という形にしております。症例カンファレンス、 抄読会などへの出席、これは聴講録や配付資料ということでやっております。  これはセミナーのときのポートフォリオですが、講義内容、あるいは本セミナーの内 容を達成するために具体的な計画などということを、こういったことに書いてもらうと。 下のほうにA、B、C、D、Eという評価がありますが、セミナーを担当した先生にそう いった評価をしていただくということです。何かコメントを書いていただく。これをす るようになってから、あまり寝なくなりました。  それと、ポートフォリオというのは、当然行く前に年度の計画目標をしっかり立てて、 院外なり院内のときも、その目標を立てる。その目標に対して、どうだという評価をこ ちらが下します。診療研修は、日誌で毎日書いてもらう。書いたあと、必ず指導歯科医 と話をしてもらうということです。院内は毎日、院外は開業医では週誌か日誌で、どち らでもよろしいということです。空きスペースに指導歯科医が形成的評価を記入するよ うにしております。  基本的に実際どこまで行ったか。院外・院内、5カ月・5カ月出しますから、どこま で行ったかはっきりわかりませんので、院内で基本習熟コース、あるいは基本習得コー スがどこまで行ったか、あるいは院外で、それぞれの自己評価、あるいは指導歯科医評 価をきちんとしてもらいます。例えば基本習熟コースであれば、院内で自己評価です。 医療面接、総合診療計画、高頻度治療に関して自己評価していただく。あとは指導歯科 医の評価です。例えば前期、大学内にいた人は、これを持って院外に行きます。ここで 見ると「未体験」、「見学」、「体験」、「習得」とありますので、それを見て院外の先生に この人はどこまで行っているかを判断していただく。それを見た上で、基本習熟コース であれば習得してもらうというのが目標ですので、補った足らないところも院外のとこ ろで出す。やり取りをすると、どこまで行っているかわからないという評価が多かった ので、これとポートフォリオの様式を見ていただいて、その人がどこまで行っているか を判断するようにしております。  メンタルヘルスで対応ということで、なるべくポートフォリオ評価法をすることによ って、コミュニケーションを充実し、指導歯科医と研修歯科医とのコミュニケーション を充実しようとしています。それとは別に、指導歯科医、研修歯科医、それぞれの会合 の機会も増やして、先ほど言ったように綿密な実務担当者会や研修委員会を開いており ます。最終的には、うちは心療内科を持っておりますので、心療内科との連携というの も考えております。  これは職務環境ですが、基本的に常勤、研修手当は12万円、勤務体系は同じです。 大体8時半から17時15分まで。研修歯科医の宿舎および病院の部屋の有無としては、 宿舎はありませんが、病院内の部屋はあります。社会保険、労働保険に入っています。 健康管理は、健康診断を毎年1回実施。歯科医師賠償責任保険は加入しております。外 部への研修活動は、学会、研究機関の参加は可としておりますが、これは委員会に提出 して許可をもらわなくてはいけません。指導歯科医と必ず一緒に行くということです。 学会等は当然出ません。  指導歯科医の機能向上と資質の向上としては、臨床研修指導歯科医講習会を開いたり しております。先ほど言いましたように、歯科大学・歯学部が県内に3つあり、3つの 施設が連携を組んでおりますから、指導歯科医講習会をうまくずらして動かして、そう いったところもお互いに手助けができるような体制でやっております。  これは1例として、平田先生などに来ていただいて、講演をしていただきました。  定期的な病院内の講習会の開催は、今病院機能評価に向けて動いておりますので、か なり充実した講習会をやっております。院内感染防止や医療事故防止です。指導歯科医 の会合と検討会、情報の共有化をなるべく図る。先ほど言いましたように、実務者会議 などで問題点を抽出して、それを必ず指導歯科医のほうにもフィードバックしておりま す。  大学ですので、卒前教育との連携という形がありますが、これは一応、基礎実習、登 院前実習、診療参加型実習、歯科医師臨床研修と流れを考えてやっています。総合歯科 系は登院前実習からかかわってきますが、この段階で先ほど言ったシミュレーション実 習をやる。臨床実習はシミュレーションを使いません。全部、診療参加型ということで、 患者との診療ということになります。また、歯科医師臨床研修になってきて、外来患者 の診療と、足らないところをシミュレーションで補うという形をとっております。  統合型臨床シミュレーションシステムがありますので、これを第5学年と研修歯科医 が常時使っております。研修歯科医になると、空いている時間、夜6時から9時までと いう形で、このシミュレーション室で練習、研鑽を積んでおります。  うちは研修期間1年ですから、後期研修自体はありません。研修修了後は、医員、大 学院、研究生、院外診療施設、開業医のところで働くという形をとると思います。医員 の数をちょっと増やしてもらいましたので、それが若干、後期研修という形になるのか もわかりません。  自分はここまで準備していたのですが、大学側から、問題点も出してこいということ でしたので、ここで少し述べさせてもらいます。指導体制と評価、現実的にはやはり指 導歯科医が足らないということと、評価法が統一していないということです。結構、指 導歯科医間によってばらつきがある。これは歯科医師臨床研修の責任とも関係するかも わかりませんが、研修の中断というのも常に頭の念頭にある。うちは現実に今年も1件、 中断が起こっております。あるいは、外から中断した人を受け入れる体制も、うちは現 在起こっていますので、そういったところについても少し考えなくてはいけないかとし ております。先ほどレセプトの話などがありましたが、結局、自分たちがそれよりも大 変かと思うのは、うちは県外で研修などを行います。後期に研修に行く人は2月まで行 っているわけです。2月に行って福岡県に帰ってきて、また県外に行く場合、保険医の 登録などをどうするかという動きが結構大変みたいです。これは県でされるみたいです ので、特に県外などで移動する場合は大変です。補助金の申請や給料の格差。給料の格 差も、先ほど東京医科歯科大学さんは30万出してくれていましたが、それから見ると ちょっとあれかなという気はします。そういうせいか、国立系の研修歯科医希望者は、 受験はしてくれるのですが、まだ国立系の人が来たことはないですね。  以上です。 ○ 石井座長  何かご質問はありますか。 ○ 鴨志田委員  協力型の施設をやっております鴨志田と申しますが、聞き漏らしていたらごめんなさ い。2つです。先生のところは複合型が多いということなのですが、群内マッチングは 具体的にどうされているのかというのが1点です。それから、大学の指導歯科医の先生 が協力型を訪問する、それも突然に訪問するというようなシステムを組んでいらっしゃ るので、その辺の結果について、差し支えない範囲で、管理型としてはどのような感想 を持っていらっしゃるのか。 ○ 廣藤参考人  群内マッチングは、先ほど少しお話しましたが、4月に一度、研修管理委員会を全部 集めます。一応、施設の先生方も集まりますから、そのときに研修歯科医として入った 人を全部集めて、そこで話合いをまず1つするということ。その前に当然何らかのアプ ローチが必要ですので、国家試験が終わったあと2カ月間ありますから、その間に研修 施設を訪問するようにさせています。資料は全部配付しておりますから、施設の先生方 にも連絡がつきますので、そこを見学してきなさいというようにしております。  突然、協力型を訪問するということは、結構いろいろと面白い問題も起こってきたり するのですが、基本的に全部は回りません。40何施設行っています。なるべく行ってい るところに行くようにしておりますから、全部は回れませんが、なるべく福岡近辺、あ と自分たちは高校訪問などということで県外に行くことがありますから、そのときに先 生たちが行って見てくるという形をしております。一応そこで先生と話し、あるいは研 修歯科医と話をする。中には忙しく、あるいは休みというときもあるのですが、そうい った形で、突然という方式でやっていっています。その結果、いろいろな問題点も起こ ってきたこともありますから、そういうときはすぐ中で話をして、対応できるようにし ております。あるいは、研修歯科医の様子も含めてですね。 ○ 石井座長  手短にどうぞ。 ○ 俣木委員  俣木です。1点確認なのですが、年間研修プログラムのAグループとBグループで、 Aグループは院外研修5月から10月と6カ月ですね。6カ月・4カ月となっていますが、 これは何か意味があるのでしょうか。 ○ 廣藤参考人  プログラムは1つです。A、Bというのは便宜上分けているだけであって、どっちも5 カ月です。4月と3月は、必ず大学内にいます。 ○ 俣木委員  では、5カ月ずつなのですか。 ○ 廣藤参考人  院外研修先には、必ず5カ月ということです。 ○ 俣木委員  では、5月から9月なのですか。 ○ 廣藤参考人  すみません。5月から10月になっていました。 ○ 俣木委員  AとBで期間が違うから。 ○ 廣藤参考人  すみません。5月から9月までです。それで、10月1日には戻ってきて、入れ替わっ ております。 ○ 俣木委員  了解しました。 ○ 石井座長  どうもありがとうございました。  最後に、山口参考人、よろしくお願いします。 ○ 山口参考人  COMLの事務局長をしております山口と申します。私は患者の立場ということですの で、技術的なことや研修の具体的な内容については言及できません。ただCOMLは、 1990年から患者の主体的医療参加ということと、患者と医療者のコミュニケーションを どう築いていくかということで活動してまいりました。特に活動の柱、日常の柱として、 電話相談を受けており、この17年間で総数は42,000件にのぼっています。そういう患 者の声、届いた声の中から、本日は「患者が歯科医師臨床研修に望むこと」とタイトル を付けてお伝えしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 (スライド発表開始)  まず、患者の認識ということですが、一般的に医科の研修医ということに関しては、 相談の中でも「研修医が主治医になって」というように、「研修医」の存在がよく出てま いります。ですので、大学病院に限らず、少し大きな病院に行けば研修医がいるものだ という認識は、一般の患者の中に結構周知されているのではないかと思います。ただ、 歯科になるとどうなのかと考えたときに、まず歯科の相談の中で「研修歯科医」という 言葉が出てきたことが、今までありません。歯科治療を受ける中で、患者の気持の中に 研修歯科医という存在が身近な存在としてあまり認識されていない、という印象を持っ ています。もしかしたら、研修してらっしゃること自体を知らないのではないかとも思 います。義務化されていること自体も知らないのではないかと思うのが現状です。  その理由は何かと考えたら、大方の患者が歯科治療を受けるときには、町の中にある 診療所に行きます。だから、教育や研修がどこで行われているかというと、大体大学な のだろうと漠然とだと思いますが、考えているのが現状ではないかと思います。ところ が、実は義務化されていて、一般病院であるとか、先ほどからご発表がありましたよう に診療所が協力型施設になっているということを、一般的な患者はほとんど認識してい ない。本日はこれを前提にお話をさせていただきたいと思います。  まず、歯科の相談ということですが、昨年1年間、2006年は全体の相談が約3,600 件ありました。そのうち、歯科の相談が185件です。これは全体の約5%に当たるので すが、5%という数は、そんなに少ないわけではありません。医療不信やドクターへの 苦情が20数%占めており、例えば看護師への苦情が約4%ですので、それよりは歯科の 相談のほうが多いという比率になります。特に情報開示の相談は1%しかありませんの で、そういう意味では、歯科の相談というのはわりと日常的に入ってくる相談です。  実は、最初に電話を受付けるスタッフが「歯科のご相談です」と回すと、私も含めて 相談スタッフは、歯科ということでちょっと引くというのが日常の光景なのです。それ はなぜかというと、非常に対応に苦慮するような相談が多い。数日前に私が受けた相談 でも、「1年間に40〜50軒の歯科医院を回りました」などと、ちょっと想像がつかない ようなことをおっしゃったり、あるいは非常に長時間を要する相談があるのです。歯科 の相談で覚悟するのは1時間以上を要するということです。一般的な相談の平均時間が 40分ですので、それを考えると平均的に長くなるという感じです。  どういう内容があるかというと、一番多いのはトラブルです。特に説明不足というこ とで、こんな治療をされるとは思わなかったという結果に対して納得できない。中には、 気が付いたら数本抜かれていた、抜くなどということを知らなかったという、ちょっと 常識で考えても、なぜそんなことがあとでないとわからないのだろうというような信じ られない相談も少なくはありません。できるだけ削りたくないと言っておいたのに、削 られてしまったという相談も多いです。特にインプラントなど保険外の治療で「一生も ちます」などという広告に誘導されて、インプラントは一生ものだと思っている方は非 常に多いです。それが数年で駄目だということになってしまったときに、「こんなはずじ ゃなかった」ということで、相談してこられます。  医科より多いのが医療費の相談です。特に最近は領収書の発行、大まかな内訳が義務 化されましたが、そうではない自由診療の場合、インプラントや矯正治療ということに なってくると、全くその内訳がわからない。特に前払い50万円などというように払っ たときに、何に対しての50万円なのかということを認識しないまま払って、あとでト ラブルになる。特に途中で中断したときに、まだ途中なのだから清算してくれと交渉す る。その内訳がわからないので、いったい何をいくら返すかということも、話合う中で トラブルになるということが相談としては多く届きます。  その次に、信頼できる歯科医を探したいのですが、たくさん診療所はあるけれども、 いったい何を頼りに探せばいいのか。数が多すぎてわからない。どこにも情報がない。 特に信頼できる歯科医院を見つけるには、どこに情報があるのだというような相談があ ります。特に歯科の場合、削ってしまっているとか、何かかぶせたということになると、 治療の痕跡が残りますので、途中まで行って転院が可能なのだろうかということで、た くさん転々とする方がいる一方で、代わりたくても代わる決断ができないという方もい らっしゃいます。  そして、私たちが一番苦慮するのが、「咬合せがうまくいかない。全身の体のバランス が崩れた。これは歯のせいだ」とおっしゃって、それが精神的にもダメージを受けてき て、ひいては家族関係が悪化したとか、非常にいろいろな問題でドロドロとしたような 内容になる相談が多いです。その中で、歯科の問題で一番大きいのは、周りとのギャッ プです。ご本人にとっては非常に大きな問題。ところが、周りは「歯ぐらい」というよ うな、命に直結しないということで軽視されてしまう。例えばトラブルになって、弁護 士のところに駆け込んだとしても、弁護士はあまり歯科を扱いたくないという傾向にあ りますので、弁護士も振り向いてくれない。そうなると、もう誰もわかってくれないと いうことで、かかってくる相談も長時間化するような傾向にあります。  そういう相談の中から、患者が歯科医療に何を望んでいるのか、ということを少しま とめてみました。当たり前ではありますが、確かな技術があります。これは特に咬合せ に違和感がないようにしてもらいたい、あるいは長持ちしてほしいというところに希望 が集約しているように思います。特に削る、かぶせる、高さが合わない、差し歯、入れ 歯という問題に関して、しっくりこないとやはり食事も満足に摂れない、話もしにくい ということもありますので、歯科医療には技術というのが一番求められていると思いま す。  その次に事前の説明なのですが、やはり今だに治療台に座ってから、あるいは寝てし まってから説明をされることによって、「じゃあ、今から麻酔かけます」と治療が始まっ てしまうので、口を開けていると、「ちょっと待ってください」が言えない。私は個人的 には言えると思うのですが、言えない方が多いのも現状だと思います。ですので、やは りきちんと治療の前に、横たわる前に対面で説明をするということが、今歯科治療に求 められているのではないかと思います。  先ほども金尾参考人のご発表の中でありましたが、次に必要なのはホスピタリティで す。結局は高圧的ではない、無愛想ではない対応なのではないかと思うのですが、患者 が歯科治療を受けに行って、快適さを求めている。  それから、医療費に関しても、最近は指導料・管理料のことについて聞いてこられる 方が多いです。私は医療費のことは16年以上、医科で追ってきたのですが、歯科はど うも難しくて理解できないのですが、最近やはり歯科の医療費の相談も増えています。 特に「指導料・管理料というのは何の費用ですか」ということまで聞かれます。この辺 りの説明ということもこれからは必要になるのではないかと思います。  当たり前ですが、衛生面も気になる面で、患者さんはよく見ていらっしゃって、消毒 がどうも不完全な気がするということは訴えてこられるところです。  先ほどからご発表の方のスライドを拝見していると、大きなお部屋でもきちんと仕切 りがあるという空間が目立ちましたが、一般的にはまだまだ隣の人が丸見えという空間 で治療をされていて、見るのも嫌だし見られるのも嫌だしと訴えられます。そういう面 で、プライバシーの保護ということも求めておられると思います。  役割が確立したチーム医療ということで、歯科医師と歯科衛生士・歯科技工士、そう いう方がいったいどういう役割を担っているのかというのは、患者がわかっているよう でわかっていない。どこまでが歯科衛生士ができて、どこからが歯科医師なのかという 役割を明確に患者に伝えていただきたい。そういうことを望んでいるということで言う と、歯科治療に対しても、患者の要求は非常に高くなってきていますし、厳しい目が注 がれているのではないかと感じています。  歯科医師臨床研修ということなのですが、まず「患者の立場として」ということで、 求めることをまとめてみます。研修歯科医というのはもう学生ではなく、社会人として 第一歩を踏み出す場だということだと思います。どの職場でもそうなのですが、初めて 働く場というのは、そこでの当たり前がその人の働くスタイルになるように思うのです。 ですので、研修期間ということは、受入施設が自分たちが社会人1年生を送り出してい る、その人に当たり前の常識を植え付けている期間なのだということの自覚が必要なの ではないかと思いました。  先ほどの金尾参考人のように、すごくいろいろなことを考えて受け入れていらっしゃ る協力型施設はいいのですが、診療所になってくると、1人のドクターの診療スタイル というか、そういう独自のスタイルで診療していらっしゃることが多いと思います。そ うすると、患者から見たときに、受け入れ施設の一定レベルが確保されているのだろう か。その一定レベルというのが、いったい何を尺度に測られているのかということに、 少々不安を感じます。それをどう保つのかという問題です。  それから、非常に忙しい歯科診療で、同時に2人か3人の人を、あっちを治療して次 の患者というような場面も見受けますので、そういう中で指導するという余裕があるの だろうかということです。  そして、今年の夏、歯科OSCEのワークショップで、OSCEを運営する側の方たちの ワークショップに協力という形で出させていただいて、それは研修とは違いますが、2 日間の講習に出れば、もう外部評価委員になられるということをお聞きしました。参加 者によっては積極性、認識、役割意識といったものが非常にまちまちなので、歯科臨床 研修の場合も指導歯科医が果たして講習を受けるだけで大丈夫か、自覚や意識が培える だろうかといったことに、患者の立場としては少々不安を感じるところがあります。  歯科医師臨床研修に備えてほしい資質ということですが、本日お伺いするに当たり、 過去3回の議事録を読んだところ、その中に医療人としてのマナーを研修の中で培って ほしいという発言があったのですが、医療人である前に社会人であるのではないかと思 いました。社会人としての態度、マナーといったものは誰が教えるのだろうかと思いま した。  りんくう医療センターの市立泉佐野病院の医科の研修医は、2年目の地域医療枠1カ 月の中の1週間をCOMLで研修しています。横で電話相談を聞いてもらったり、ディ スカッションに参加してもらったりしているのですが、院外に出たことによって、言葉 遣い、社会性、常識といったものができていないということを初めて自覚したと言う人 が多く、社会人である以上はその辺りの常識をきちっと踏まえてほしいというのが求め るところではあります。その下にある「技術と態度」とは、言うまでもなく、当たり前 に備えてもらわないと困ることですが、結局お手本となる指導歯科医というのが研修で は問われてくるのではないかと思います。  最後に、研修歯科医がいるということ、歯科の研修が義務化されているということに 対して、最初に言ったように、ほとんどの国民は知らないという現実があります。研修 歯科医がいると言うと、最初のうちは研修歯科医などに治療してほしくないといった患 者の思いがあるかもしれませんが、医科では当たり前になっていますから、研修医が主 治医ということを患者は受け入れ始めています。そのような意味では、言うと嫌がるか らということではなく、研修が必要であること、どんなことを研修歯科医はしているの かということをきちっと伝えていく透明性が必要ではないか。それに対して国民に協力 してください、立派な歯科医を育てるためだということを言っていただければ、当たり 前になってくると、協力してくれる患者も少なくないのではないかと思います。  制度としてのアピールもそうですが、特に受入施設では研修歯科医がいること、研修 歯科医はどのようなことで直接患者に関与するかということ、研修歯科医はどこまで担 って、研修歯科医が行ったことの責任は誰が負うのかということ、また、研修歯科医が したことにお金を払わないといけないのかという患者も中にはいるので、免許を持って いる以上は医療費の対象になるということも併せて、できれば文書と口頭で患者に知ら せてほしいと考えます。  以上、かい摘んでお伝えいたしました。 ○ 石井座長  ご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○ 丹沢委員  貴重なご意見をありがとうございます。かなり建設的な意見だと思いました。最後に 言われた研修歯科医の制度、あるいは協力型の施設、管理型の施設といったところに対 して、このようなことをと望んでいることは、おそらく、今までのいろいろな経験を基 に出されていると思いますが、研修が始まってからこの1年半ぐらいで、研修歯科医や 研修制度に対して具体的な苦情などの相談に乗られたことはありますか。もしあれば、 お聞かせください。 ○ 山口参考人  歯科に関しては一切ありません。たぶん、知られていないからだと思います。 ○ 丹沢委員  知られていないという感じのほうが強いのですね。わかりました。おっしゃっている ようなことをやれば、かなり予防できるのではないかという感じがしました。 ○ 石井座長  他になければ、時間も押してきておりますが、少し全体としての議論をしたいと思い ます。  お手元の資料2には、この検討会でこれまでに議論してきた内容の論点整理がしてあ ります。今参考人の皆様からいただいたご意見もこの中にかなり入っていると思います。 これについてのブラッシュアップも必要ですので、これを睨みながらこれまでのヒアリ ングについて議論すべき点があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○ 花田委員  福岡歯科大学の研修の中に、15名の海外での研修というのがあって、非常にユニーク だと思ったのですが、評価やライセンスの問題について伺いたいと思います。 ○ 廣藤参考人  研修とは名ばかりで、当然診療はできません。カリフォルニアを中心としてロマリン ダ大、UCLA、南カ大の歯学部での見学が主体の研修です。ただ、見学だとおもしろく ないというので、今度のグループからは向こうで実習をしようということになり、当然 診療ではないと思いますが、実習、あるいは見学するにしても診療室に入り、より近い ところで見学させようという仕組みに変えようとしております。診療のほうはライセン ス等の問題がありますから。 ○ 花田委員  そのあたりに関する厚生労働省側の見解というのは何かあるのでしょうか。必ずしも 先進国だけではなく、途上国でもいいと思うのです。歯科のニーズがたくさんあって、 そこに研修歯科医が行くといった仕組みをつくるとしたら、法律的な壁やいろいろなも のがありそうな気がするのですが、その辺を教えていただければと思います。 ○ 鳥山課長補佐  研修をしてきており、歯科医業を行うわけですから、それぞれ諸外国における歯科医 師の免許資格制度が当然適用されますし、国々によって制度が違うのですが、一般的に は日本国の歯科医師免許をもって、外国での歯科医業を直ちに行える国というのは、私 どもが承知している限りは、まず無いと思っております。 ○ 花田委員  日本における修了認定はどのようになっていますか。期間が短ければ問題はないです が、差障りというか海外研修というプログラムはどのぐらい取り込むことが可能ですか。 ○ 杉戸専門官  制度的にはプログラムの中にそのような研修もあるということが明記してあること、 または、いわゆる協力型などに出る3カ月などとは別枠で考えなければいけないもので はないかと考えます。ただ、どれぐらい行っていいかというのは、休止扱いの日数とも 関わってくると思います。従いまして、個々、個別の事例になってくると思いますから、 今は一定見解は示せないのではないかと考えております。 ○ 花田委員  わかりました。 ○ 石井座長  他に何かあればお願いいたします。 ○ 江里口委員  本日のヒアリングをずっと聞いていて、研修歯科医のあり方について、歯科と医科と の根本的な違いを大きく見たような感じがいたします。90%ぐらいは開業医(GP)に なるのに対して、コアカリキュラムをそのままボトムアップするためにやる研修なのか、 逆に、これから何かに興味を持ち、1つのものを専門化するのか。例えば口腔外科なら ば口腔外科を、この研修期間のときにどーんとやって、それからGPになって、それを 伸ばしていきながら、自分の将来像として専門分野としてやっていく。つまり、大学に ずっと残るということではなくて、これを一番興味を持ってやるのだというのがいいの か。私は口腔外科出身ですから、GPになる前にいろいろなことを見て口腔外科医にな ったほうがいいのか、専門でずっといってしまったほうがいいのか。逆に、一般医科の 方はほとんどが専門医になるわけですから、今回のような臨床研修は、2年間でいろい ろな科目をやって幅広くというのが国民に対する医療の充実だということで行われたわ けですが、歯科の場合は、本日のプレゼンを聞くと非常に考えさせられたところがあり、 歯科はこれからどのような道を行けばいいのか、ちょっと先が見えなくなってしまった と感じています。 ○ 花田委員  今の意見と全く同じなのですが、則武先生が受けたのは大変いいカリキュラムだと思 います。これからの歯科というのは、病診連携を強めていく必要があると思いますので、 臨床研修歯科医がそのような経験を持つことが望ましいのではないかと思うのです。た だ、現実とのギャップはかなりあるだろうと思います。 ○ 丹沢委員  口腔外科でありながら、できるだけ卒後研修をやってもらいたいと思ってやっている 立場から述べると、先ほどあったいろいろなプログラムがあっていいということを活か せる卒後初期研修プログラムをどのように充実させるか、つまりミニマム・リクアイヤ メント的な基準づくりが過去にされてきたわけで、そのようなものが円滑に実行された 上でのバラエティがあっていいのではないかということを本日はちょっと感じたのです が、特色があるのは非常に結構なことだと思います。ただ、初期研修は初期研修でやる と、皆さんもそのように思っていらっしゃると思います。 ○ 葛西委員  今の意見に関連して、私は矯正ですから、歯科では特殊、専門性が高いと言われてい ますが、基本的には1年間臨床研修をやってから矯正のほうに残ってくれという方針で おります。というのは、やはり包括的な診療が多くなってきていますので、矯正だけで きればいいというのではなく、口腔内全体を考えられる歯科医師であってほしいからで す。臨床研修で一生懸命勉強してから専門性に来てほしいという認識です。  もう1つ、俣木先生から東京医科歯科大のコアの部分と選択性の部分がありましたが、 インプラントとアレルギー外来は選択制を取っていましたが、割合の問題だと思うので す。コアが3日で、選択が2日ですね。 ○ 則武参考人  はい。私の場合はそうです。 ○ 葛西委員  なるほど。あの選択制でいくと、月曜日と木曜日に選択制が入るから、2日対3日で すね。 ○ 則武参考人  私は他の研修医に比べて、選択をかなり多く取っておりました。 ○ 葛西委員  多く取り過ぎるとコアが見えなくなってしまうのかなという心配があるので、どの程 度の比率がいいのかもちょっと考えさせていただきたいと思います。 ○ 則武参考人  プログラムでそのような比率を強制されているわけではなくて、どのような比率にし たいかも自分で決められるシステムになっていました。 ○ 石井座長  最後に、特にお二人に伺いたいのですが、診療中の病院にとって研修歯科医はリスク ですか。このような質問は最初のヒアリングのときからあり、常にそのような議論があ るのです。 ○ 金尾参考人  正直言って助けられている部分もあります。ある方はリスクと言うかもしれませんが、 施設として自分が登録した限りは、養っていくというか育てていくのが施設の役割でも あるし、それもまた楽しみだと思っておりますから、決してリスクとは思っておりませ ん。 ○ 瀧田参考人  教育的な面から病診連携ということを考えると、後継者の育成という点では病院にと って非常にプラスな面だと思います。医科もそうですが、病院としては財産と考えてお ります。また、研修歯科医を指導することによって、見えてなかったものが見えてくる、 それを患者にフィードバックできると考えております。 ○ 石井座長  もう1点、先ほど山口参考人から研修歯科医というものの露出度と言いますか、一般 国民の認識が足りないので透明性が必要だという指摘がありましたが、それを踏まえて いかがですか。 ○ 金尾参考人  私の診療室では、通常の勤務医以外に研修歯科医誰々という名前を表示するようにし たのですが、それでも患者にとってはなかなかわかりにくいので、最初に患者を診ると きに、研修歯科医の誰々ですと自己紹介をしてもらっております。また、例えば私の患 者の治療で、どこか途中の部分だけを診てもらうときには、研修歯科医の誰々ですが、 この部分は大丈夫といったニュアンスの内容を話してから診るようにしてもらっており ます。ただ、正直言って、治療の内容と今まで来院していた患者といった形で、やはり 患者を選んでおります。誰彼なしに順番に診てもらっているわけではありません。 ○ 瀧田参考人  私も同様ですが、医科も含めて研修歯科医に対する風当たりは非常に強いです。ただ、 ネームプレートに「研修歯科医」ときちっと明示しておりますので、患者もそのような ことを了承しながら受けていると思います。金尾先生も言われていましたが、一応人選 して、了解の得られる患者から一緒に介入させるという形で考えております。 ○ 石井座長  今のところ、気を付けてやっているからということかもしれません。どうもありがと うございました。いろいろといただいたご意見を基に事務局と取りまとめを行っていき たいと思います。  議事が1つ残っておりますが、今後について事務局からお願いいたします。 ○ 杉戸専門官  最後のフリーディスカッション等でいただいたご意見を踏まえて、座長と資料2に修 正等を加えていきたいと思っておりますが、最終的には論点整理メモ(案)を踏まえ、 本検討会としての取りまとめを作成していただきたいと思っております。 ○ 石井座長  論点整理メモ(案)を踏まえて取りまとめるということになると、ボリュームは非常 に多いですし、本日ヒアリングでいただいたご意見も取り込んで取りまとめにいきたい と思っております。さらに、医道審議会の歯科医師分科会の歯科医師臨床研修部会から も、検討すべき事項が提示されていると伺っておりますので、今後はワーキンググルー プを作り、具体的なことはそこでフットワーク良くやっていきたいと思っておりますが、 よろしいですか。 (異議無しの声) ○ 石井座長  ありがとうございました。メンバーは私と事務局とで相談して決めていきたいと思っ ております。また、ワーキンググループの進捗状況については、適宜委員の皆様にお知 らせすることとしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  議事は以上ですが、事務局から何かあればお願いいたします。 ○ 杉戸専門官  今座長からありましたように、今後しばらくはワーキンググループのほうで作業を進 めていただきたいと思います。その進捗状況を踏まえて、本委員会の開催日時等をご連 絡いたしますので、よろしくお願いいたします。 ○ 石井座長  時間を延長しまして申し訳ありませんでした。以上で終了いたします。どうもありが とうございました。 照会先:厚生労働省医政局歯科保健課 歯科医師臨床研修専門官 杉戸、神田 代表 03−5253−1111 (内線4141)