07/10/01 第1回腎疾患対策検討会資料及び議事録 第1回 腎疾患対策検討会                           平成19年10月1日(月) 経済産業省別館1031号会議室 ○日下課長補佐  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回腎疾患対策検討会を開催させ ていただきます。記者の方等につきましては、議事が開始次第、撮影の方は御遠慮くだ さい。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにあ りがとうございます。  それでは、会に先立ちまして、健康局長の西山より、皆様に一言ごあいさつをさせて いただきたいと思います。 ○西山健康局長  御紹介いただきました健康局の西山でございます。今日は月曜日の朝10時からとい うことで、非常にお忙しいと思いますが、お集まりいただきましてありがとうございま す。  今日の資料にもございますように、疾病対策課の方で腎疾患対策の協議会を開くとい うことで、私も本当に長年いろいろなことで、腎臓疾患をこれからどうしたらいいもの だろうかと思っていましたが、こういう検討会を立ち上げていただいて、要するに今ま での私どもがやってきた施策を、一度先生方の目でしっかりレビューしていただこうと、 こういう趣旨だと思います。ちょっと会場が狭くて申しわけなかったですが、そういう ことで数回にわたって御議論いただくと思います。ひとつよろしくお願いしたいと思い ます。  後でまた話があると思いますが、現在、我が国における腎疾患対策としては、健診に よる腎機能検査、人工透析医療に対する医療機器の整備や保険適用、あるいは医療従事 者の教育研修、2次感染防止対策、それからもう一方では災害のときの透析医療機関の 確保というようなことで施策を進めてまいりました。恐らく凹凸がたくさんあると思い ますので、またさらに国民の方々にどうやってその予防について普及啓発していくかと いうことが大きなテーマだと思います。特に、糖尿病患者さんが腎障害を起こすと。こ れはもう専門の先生方は言うまでもないですが、そうなってしまった後には、我が国で は腎移植は少ないために、腎透析という形で今20万人以上治療を受けておられる。私 どもの職員の中におりますが、やはり週3回の透析ということで、ADLに対して非常 に影響を与えてくるわけですから、御本人にとっても大変だろうということであります。  データだけ簡単に申し上げますが、腎不全で透析をされている方は毎年1万人以上ふ えていると。昨年末で、先ほど20万人と言いましたが、26万人を超えています。腎不 全による死亡率ですが、現在日本人の死因の第8位となっております。こうした中で、 WHOも、それから米国もそうですが、いわゆるCKD(Chronic Kidney Disease)と いう慢性腎臓病への対策が非常に大きな課題となってきております。昨日、私は東京で、 世界糖尿病デーというのに参加してあいさつしたのですが、これは国連でHIVと糖尿 病だけですね。対策を講じなければいけないということで、加盟190数カ国が合意して、 どういうわけかHIVと糖尿病ですけれども、恐らく腎臓病、腎不全もこういうことが 必要になってくる時代が来ると思います。私どもとしても、腎疾患の研究については戦 略研究ということで、今年度から進めたいわけですので、またその成果についても御披 露させていただきたいと思います。  いずれにしても時間が限られておりますが、先生方の忌憚のない御意見を賜りたいと 思っております。私はちょっとまだばたばたしていて、まことに恐縮ですがこれで退席 させていただきますが、ひとつ先生方にはよろしくお願いしたいと思います。どうもあ りがとうございます。 ○日下課長補佐  それでは、本検討会の委員の御紹介をさせていただきたいと思います。まず飯野委員 です。 ○飯野委員  飯野靖彦です。日本医大の腎臓内科です。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  内田委員です。 ○内田委員  日本医師会の内田でございます。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  斎藤委員です。 ○斎藤委員  東海大学医学部腎・代謝内科の斎藤でございます。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  椎葉委員です。 ○椎葉委員  富山県厚生部長の椎葉です。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  菱田委員です。 ○菱田委員  浜松医科大学内科の菱田でございます。腎臓学会の理事長、それから今、慢性腎臓病 対策協議会の理事長もさせていただいて、今日もこの会議に臨ませていただいておりま す。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  松尾委員です。 ○松尾委員  松尾です。名古屋大学の腎臓内科でございます。現在、日本腎臓学会の慢性腎臓病対 策委員会の委員長をしております。よろしくお願いいたします。 ○日下課長補佐  松村委員です。 ○松村委員  NPO法人腎臓サポート協会の代表をしております松村満美子でございます。よろし くお願いいたします。 ○日下課長補佐  宮本委員です。 ○宮本委員  全国腎臓病協議会の宮本です。私自身もで透析26年目になります。よろしくお願い いたします。 ○日下課長補佐  本日は、寺岡委員が20分程度おくれるというご連絡をいただいております。また、 辻委員、廣瀬委員は、本日御欠席の御連絡をいただいております。本日は、総委員11 名中9名の御出席をいただいており、本検討会は成立することを申し添えます。  それでは、本日は第1回に当たりますので、まず座長の選出を行いたいと思います。 座長についてどなたか御推薦はございますでしょうか。 ○飯野委員  よろしいでしょうか。菱田明先生を推薦いたします。慢性腎臓病対策協議会の理事長 でありますし、日本腎臓学会の理事長として今までCKDについていろいろリーダー的 な役割を演じておりますので、今後とも座長として動かしていただきたいと思います。 ○日下課長補佐  皆様、いかがでしょうか。 (異議なし) ○日下課長補佐  それでは、座長は菱田先生とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。 それでは菱田先生、座長席へよろしくお願いいたします。 ○菱田座長  それでは、座長に指名されましたので、座長を務めさせていただきますが、皆様方の 御協力を得て実りある会ができることを期待しております。よろしく御協力をお願いい たします。 ○日下課長補佐  それでは、まず資料の確認をさせていただきたいと思います。  資料1 腎疾患対策検討会開催要領  資料2 腎疾患を取り巻く現状について  資料3 腎疾患対策におけるこれまでの取り組み  資料4 松尾委員提出資料  資料5 腎疾患対策検討会の検討範囲について  資料6 腎疾患対策検討会の検討事項(案)について  以上、不足しているものや乱丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。 ○菱田座長  資料はよろしゅうございますか。では、これより議事に入ります。まず初めに、事務 局から資料の説明をお願いいたします。 ○日下課長補佐  それでは、まず資料1をごらんください。「腎疾患対策検討会開催要領」でございます。 本腎疾患対策検討会の目的ですが、慢性腎臓病(CKD)対策、特に末期腎不全への進 行を阻止する観点から、この検討会で検討を行っていただくということを目的として開 催しております。本検討会については、必要に応じて、外部専門家を交えた作業班を開 催することができます。この会議については公開です。ただし、公開とすることにより、 個人情報の保護に支障を及ぼすおそれがある場合、あるいは知的財産権その他個人もし くは団体の権利利益が不当に侵害される場合については、非公開とすることができるも のとします。資料1については以上です。  引き続きまして、資料2をごらんください。「腎疾患を取り巻く現状について」という 資料でございます。まず、1枚目の上側、「慢性透析患者数の推移」についてのグラフで す。これは1968年以降、透析患者が徐々に増加をしておりまして、一部1990年に下が っておりますが、これはアンケート調査の回収率が悪かったということで、実際には下 がることなく徐々に上がっておりまして、昨年末は、先ほど局長からも御説明がありま したが、264,473名ということで、年間約1万人以上のペースで増加をしているという 現状にあります。  下の棒グラフに移っていただきたいのですが、「透析導入患者の年齢と性別」です。青 色が男性、赤色が女性ですが、青色の男性についてはピークが70〜75歳の間にござい ます。また、女性については男性よりも若干右側にシフトしておりまして、75〜80歳の ところにピークがございます。  次のページにお移りください。上側のグラフは、新規に透析導入された患者の年別の 主要原疾患の推移でございます。この調査を開始されました1983年当時は、慢性糸球 体腎炎が約60%、糖尿病性腎症が15%程度でございました。この構造が徐々に変わっ てまいりまして、現在、直近の2006年のデータではこれが逆転しまして、新たに導入 される患者については糖尿病が最も多く約40数%、次いで慢性糸球体腎炎が30%弱と いう状況にあります。また、高血圧を原因とします腎硬化症も徐々にふえているという 状況にあります。これは新規に透析導入された患者についてですので、現状がどうかと いいますと、まだ慢性糸球体腎炎による透析患者の方が若干上回っているという状況に ございます。  下側の表に移っていただきたいのですが、この表は「我が国の主要な死因」です。2005 年のデータによりますと、先ほどこれもまた局長から御説明がありましたが、腎不全に ついては16.3%ということで、またこれも徐々に上がっておりまして、順位自体は変 わっておりませんが、死亡率も若干上がっているという状況にございます。  次のページをおめくりください。「人工透析の費用」についてです。人工透析にかかる 費用については、1人年間約500万円と言われております。これに単純に昨年末の透析 患者数26万人を掛け合わせますと、この医療費は1.3兆円規模に上るという状況にあ ります。この透析患者が仮に腎臓移植を受けた場合にどうかというのが下でございます が、1年目は移植の費用がかかりますので、どういう手術だったかによるとは思います が、約400〜500万円がかかります。2年目以降については、およそ180万円程度かか り、年々若干ですが下がっていくという状況にございます。  引き続きまして下側のグラフでございます。上の折れ線グラフにつきましては、最初 にお示しした慢性腎不全による透析患者の推移でございます。これに対し腎移植の数を お示ししたのが下の棒グラフでございます。平成元年から、下の濃い紫色が死体腎移植 で、上の薄い青色が生体腎移植でございます。脳死下での腎移植について、平成11年 以降ございますが、数が少ないのでほぼグラフ上には出てきておりません。トータルの 数で申しますと、これはすべてを足し合わせたものですが、平成元年の808をピークに 徐々に落ち始めまして、平成17年には994と過去最高の状況にあります。平成18年に ついてはまだ生体腎移植のデータが出そろっておりませんが、死体腎移植については 197と、久しぶりに提供数が上昇しているという状況にございます。しかしながら、透 析患者に比べまして、数としては少ない状況にございます。  次のページに移ります。こういう国内の状況にありながら、米国における末期腎不全 の発生率及び変化率はどうかというのをお示ししたのがこのグラフでございます。これ は米国の腎臓統計システムから用いさせていただいたデータでございまして、この棒グ ラフは慢性腎不全の発生数でございますが、2002年以降増加は余りございません。青色 の棒については、前年度からの比でございまして、徐々にですが下がっておりまして、 2002年以降変化がほとんどない状況にあるということでございます。  下側のグラフでございますが、また原因別に腎不全患者の発生数を見たのがこのグラ フでございます。左側が発生数、右側が発生率を示します。発生数については、慢性糸 球体腎炎を除きまして徐々に上昇し続けていますが、右側の発生率におきましては、糖 尿病性腎症や高血圧症による発生率が徐々に低下をしているという状況にあります。こ れが日本におけるものとの発生率の違いの原因であると考えております。  資料2の説明については以上でございます。  続きまして資料3に移らせていただきたいと思います。「腎疾患対策におけるこれまで の取り組み」ということで、主に行政における取り組みについて御説明をさせていただ きたいと思います。  まず「1.腎不全対策の主な歴史」ということでございますが、昭和42年に人工透 析の医療保険の適用が開始され、さらに昭和47年に人工透析に更生医療の適用が開始 となりました。昭和53年に腎移植についての医療保険の適用が開始となり、その後、 昭和55年に「角膜及び腎臓の移植に関する法律」が施行されております。昭和59年に は、人工透析に対しまして、長期高額疾病患者に対する高額療養費の支給制度対象とな りました。また、昭和59年には、透析装置の不足地域に対する整備費の補助制度を創 設いたしました。また、平成元年には厚生省腎不全研究班を設置し、研究を開始してお ります。昭和55年の「角膜及び腎臓の移植に関する法律」以降、法律については動き がなかったのですが、平成9年に「臓器の移植に関する法律」ということで、腎臓・角 膜も含めた臓器の移植に関する法律が成立しております。  「2.腎疾患対策の現状」というところに移らせていただきたいと思います。国内に おける腎疾患対策については、主に4つございます。1つ目が健診、2つ目が人工透析、 3つ目が臓器移植対策、4つ目が研究ということで、この4本柱で進んでまいりました。  健診については老人保健法に基づく基本健康診査や、労働安全衛生法に基づく職場健 診、学校保健法に基づく学校検診の実施などが行われておりまして、こういった場で仮 に尿蛋白等異常が出れば、再検査等にひっかかるというような状況にございます。  2番目の人工透析対策でございます。まず(1)医療提供体制の整備ということでは、医 師や看護師等の透析医療従事者に対する研修を実施しております。これは日本腎臓財団 が実施します「透析療法従事職員研修」で実施しております。また、透析装置の不足地 域に対しまして、整備事業をしておるところでございます。  (2)患者負担の軽減ということでは、先ほど歴史のところでも申し上げましたが、長期 高額疾病患者の高額療養費支給の対象として、1カ月の自己負担の上限を1万円、高額 所得者に対しては2万円ということで実施をしております。また、身体障害者福祉法に 基づく措置として、更生医療や育成医療の対象ともなっております。  (3)2次感染防止対策としては、「透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に 関するマニュアル」ということで、厚生科学研究の研究事業の中で得られた成果を、各 自治体等に通知しているところでございます。また、場合により、血液透析に関連した 院内感染事例の報告があったような場合については、2次感染防止のための事例に応じ て調査を行ったり、再発防止に対する措置を行ったりしております。  (4)災害時の対策については、厚生労働省の防災業務計画の中に定められておりまして、 人工透析に係る医療体制について確保するということになっております。この中でも記 載されておりますが、透析医療機関において、水や医薬品が仮に各自治体で不足した場 合に援助することとなっております。また、実際に地震等大規模な災害が発生したとき については、被災都道府県等の医療機関に、人工透析提供体制の確保を求める通知を出 しているところでございます。  引き続きまして、臓器移植対策について御説明をさせていただきたいと思います。最 初に臓器移植の実施状況についてですが、ここにお示しさせていただいているのは、「臓 器の移植に関する法律」が施行されて以降の、各臓器ごとの移植の実施状況でございま す。関係がございますのは、上から4番目の腎臓の移植の実施の数でございます。平成 9年に施行されて以来、腎臓の提供者はわずか852名という状況にあります。これに対 しまして、待機をされている患者さんは11,657名という状況にあります。  その移植の内訳については下のグラフにございますが、直近の例でございますけれど も、2005年のデータで生体腎移植が834名、死体腎移植が160名。先ほども御説明さ せていただきましたが、死体腎移植については最近伸びを見せておりまして、昨年の死 体腎移植は197名と、最近では一番多い数となっております。ただ、慢性腎不全で透析 を受けられて移植をお待ちになっている患者さんにとっては、とても数が足りない状況 にありまして、年々こういった生体腎移植の数が伸びているという状況にございます。  こういった状況にかんがみまして、ドナー対策を今行っているところでございますが、 主に国民に対する普及啓発と、医療機関等に対する普及啓発を行っておるところでござ います。  国民に対する普及啓発活動といたしましては、臓器提供の意思表示カードやシールの 配布、政府広報機関や公共機関等を活用した普及啓発、中学校等に対して各種パンフレ ットの作成や配布、そしての3月から運用を開始しておりますが、臓器提供意思登録シ ステムの整備等を行っております。  医療機関等に対する普及啓発としては、都道府県コーディネーターによる医療機関へ の協力要請や、医療関係者に対する研修、マニュアル作成の協力等の実施を行っており ます。また、臓器移植ネットワークによる臓器提供病院への支援等を行っているところ でございます。また、これらとは別に、医療保険の被保険者証の意思表示記入欄、これ は個人持ちになるということなので、今後推進されると思います。これについては平成 15年から健康保険法施行規則を改正しておりまして、記入は可能になっておりますが、 まだ100%というわけではございませんが、徐々に実施している自治体もふえていると 聞いております。また、これは研究でございますが、厚生科学研究においてドナーアク ションプログラムを実施しておりまして、仮に院内で臓器提供の意思がある場合に、ど ういった形でその意思を尊重するかというような研究を行っているところでございます。  最後に研究の推進というところで、現在進行中の研究について御説明をさせていただ きたいと思います。最初の腎疾患重症化予防のための戦略研究ですが、先ほど局長から も説明があったと思いますが、戦略研究ということで、今年度からCKD対策のための 実施をさせていただいている研究でございます。また、CKD対策ではございませんが、 進行性腎障害に関する調査研究や新規腎障害分子等の新しい研究、あるいは透析施設に おけるブラッドアクセス関連事故防止に関する研究、C型肝炎の透析施設における2次 感染防止の研究、ES細胞からの腎臓細胞誘導法といった再生医療関係のもの、重症化 防止を目的とした幹細胞移植による残存腎機能再構築、こういった研究事業を現在進行 しているところでございます。  資料1〜3の説明は以上です。 ○菱田座長  ありがとうございました。資料4以降はまたその後の議論の中で見ていただくとして、 資料1で、この会が末期腎不全への進行を阻止する観点から検討をすることを目的とし て開催するということの説明をいただき、資料2の中では腎疾患の現状、問題点につい てお話しいただき、資料3で、行政の取り組みで今まで何をしてきたかということを御 説明いただいたと思います。今までの資料の説明の中で、何か御質問はございますか。  もしよろしければ、また後で出てきましたら質問していただくとして、引き続きまし て、今、日本腎臓学会や透析医学会、小児腎臓病学会が一緒になって慢性腎臓病対策協 議会というものをつくって、慢性腎臓病対策を進めておりますが、その動きについて松 尾委員の方から御説明をお願いしたいと思います。 ○松尾委員  それでは、早速資料の説明をさせていただきたいと思います。本日の資料はこういう 内容になっております。これに沿ってお話をさせていただきたいと思います。あらかじ めお断りしますが、提出させていただいた資料と順番が若干異なっておりますので、前 のスクリーンを見ながら話を聞いていただければと思います。  これはWHOのホームページから取ってきたものです。昔は全世界の死亡者の原因と いうのは、感染症あるいは周産期母児異常といったものが多かったのですが、近年慢性 病が非常にふえてきている。2005年において全世界で5,800万人の方が亡くなっておら れますが、そのうちの3割は心臓血管病、その他がん、慢性呼吸器病、糖尿病、その他 の慢性病ということで、6割以上の方が慢性病で亡くなっているということでございま す。ということで、慢性病が今非常に注目をされているということでございます。  この慢性病でございますが、所得が一番低いグループの国では、依然として感染症、 周産期母児異常が死因のトップでありますが、それ以外の国ではすべてこの慢性病がト ップでありまして、しかも所得が高くなればなるほど、慢性病で亡くなる方の割合が高 くなっているということでございます。WHOでは、慢性病を予防することは非常に有 効な投資であるということで、今世界的にキャンペーンをやっております。  日本では、ちょっと古いデータですが、心臓疾患、脳血管疾患を合わせまして大体 28.7%の死亡。トップはがんでございますが、これは高血圧は除いておりますので、高 血圧を含めますと心血管障害による死亡というのはがんと同じぐらい、約3割を占めて いるということでございます。一方、腎不全そのもので亡くなる方は、先ほどお話があ りましたように2%ぐらいでございます。  しかし、腎不全、腎臓病というのは非常に重要であるということがわかってまいりま した。その理由は慢性腎臓病が公衆衛生上、高いプライオリティーを獲得するための3 つの条件を備えているからでございます。一つは数が非常に多いということございます。 大変たくさんの国民を冒すということでありまして、しかしこれだけではプライオリテ ィーは高くない。その結果、医学的にも社会経済的にも重大な脅威になっているという ことが必要でございます。さらにこれに加えまして、通常我々が用いる方法で、その進 行度に応じた目標をきちんと立てて、治療ができることが明確になっているということ が非常に大事であります。この3つがそろって、初めて国の医療政策上重要な課題とな ると考えております。  こういった条件を満たすので、CKDをやはり全国民的な、あるいは社会を挙げての 取り組みにしないといけないということで、その概念がアメリカの方でつくられました。 今この概念が世界じゅうで猛烈に広まって、国際的にも統一して対策を打っていこうと いうふうになっております。まずCKD(Chronic Kidney Disease)、文字どおり慢性 腎臓病というネーミングです。慢性に経過する腎臓病の総称でありまして、この定義は 後で述べますように非常に簡単でございます。一つは蛋白尿など、腎障害を示す所見と いうか検査異常です。もう一つは腎機能が低下している。このどちらかがあれば慢性腎 臓病と呼ぶということでございます。こういう単純な定義にすることによって、腎臓専 門医以外の医師、あるいは市民、マスコミ、行政、だれにもわかりやすい定義とステー ジ分類を用いるということを一つの目的にしております。  そしてまた、腎機能はいろいろな評価法があるわけでございますが、腎臓の働きの本 質からいいましてGFR、糸球体ろ過量というふうに日本語で訳しておりますが、これ をもって評価するということも国際的なアグリーメントになっております。  それから、このCKDを治療する際の目標は2つございます。一つは、当然透析や移 植に至る末期腎不全の患者さんを減少させるということがございます。先ほど話が出て いるとおりでございますが、もう一つは、この慢性腎臓病というのは非常に併発症が多 いです。特に心臓血管障害が多いということで、これを軽減するという、この2つの大 きな目標があるということでございます。そして、これらを達成するために社会を挙げ ての取り組みが必要になるということでございます。  これは、現在国際的に定義されております慢性腎臓病(CKD)の定義とステージ分 類でございます。定義の方でございますが、腎障害の存在が明らかで、これはいろいろ な腎障害を示す異常があるのですが、特に蛋白尿というのが強調されております。単純 に言ってしまうと、蛋白尿があること。それからもう一つは、GFRであらわした腎機 能が、ml/min/1.73m2という単位に換算して60未満である。このどちらかが3カ月以 上続けば、慢性腎臓病と言います。CKDの進行度でございますが、これはもう単純に 腎機能を15ないし30刻みでわかりやすいように刻んでいきましょうということで、特 に60を切ったあたりから心臓血管病等、あるいは死亡のリスクが高くなるということ で、ステージ2と3の間は特に大事だと思われます。ステージ1、2というのは腎臓の 働きがいいか、あるいは軽く低下しているけれども、蛋白尿、その他の異常が存在する というものでございます。  実際この蛋白尿と腎機能がどれぐらい大事かということで、これは沖縄の井関先生た ちのデータですが、検診時に蛋白尿が−から3+までのいろいろな方を層別化して、そ してフォローアップしたものです。10年以上フォローアップしているのですが、これを 見ておわかりいただけますように、蛋白尿が1+以上、特に2+以上出ている人は、フ ォローしていきますと腎不全に至る可能性が非常に高くなるというデータです。  それから、我々が最近行いましたデータでも、蛋白尿が出ている人と出ていない人を 比べますと、年をとりますとみんな腎機能が悪くなるわけですが、その加齢による腎機 能の低下速度は2倍になるということです。  また、腎臓の働きで、先ほどGFR60以上が腎機能がおおむね正常か軽度で、それ以 下は中等度以上の低下というふうに申し上げましたが、それは外国人のデータでござい まして、日本人で見てみますと、60〜70の人の低下速度を1としますと、50を切って きたときに2倍以上の低下のスピードになっているということでございます。特に40 歳代で40を切っている方は、正常の人の7倍近く早く加齢によって腎機能が低下して いるというデータを我々は得ております。これをもとに、後で出てきます診療ガイドで は、専門医を受診するときの紹介する一つの条件として、GFR50未満というのを挙げ ております。  これは昨年アムステルダムで行われました国際学会のデータでございます。ここには WHOの方も出席されておられまして、今後はこの慢性腎臓病(CKD)にも力を入れ たいということを相当強調しておられましたが、ここで出されましたCKDの先ほどの ステージ3以上、GFRが60未満の人の推定有病率は、大体全人口の3〜5%という ふうなことが言われております。今全世界の人口は66億人ですから、これを単純に当 てはめますと2〜3億人。この数はどれぐらいの数かといいますと、糖尿病患者さんが 全世界で2000年のときに1億5,000万人、2030年にはこれが2.4倍になりますので3 億7,000万人になると言われておりますが、これに優に匹敵する数になります。  日本ではどうかといいますと、今GFRを計算するもとの式はアメリカ人をもとにつ くられた式でございまして、それに日本人係数というのを単純に掛けて計算しますと、 GFR60未満の人は1,900万人、これは20歳以上の方ですから、約1億人の人口がご ざいますが、19%もいるということです。先ほど言いましたように、もしこれを腎機能 の低下速度等々から見て50というふうに切りますと、20歳以上の人口の420万人、約 4.1%ということで、先ほどアムステルダムで示されました3〜5%の中に入ってくる、 こういうことでございます。いずれにしましても、このCKDは、少ない目に見積もり ましても全国民の25人に1人、これはあくまでGFRが50を切っている人の数ですが、 25人に1人というとんでもない数になるわけでございます。  一方、透析患者さんの推移ですが、1980年から2010年まで、世界で透析患者数は13 倍、日本でも8倍以上にふえています。物すごい伸びであります。糖尿病の患者さんは 30年間で2.4倍ぐらいと言われておりますので、それをはるかにしのぐスピードでふえ ています。日本でも先ほど示されましたデータのとおりこのようにふえています。全国 民の500名に1人が現在透析を受けているということで、これが2010年には400名に 1人の方が透析患者ということになります。  そして、毎年毎年約3万5,000〜3万6,000名の方が透析に導入されるわけですが、 その原疾患としましては、昔は圧倒的に慢性腎炎でした。先ほどお話に出ましたように、 1970年代の中盤から労働安全衛生法、そして学校保健法により健診が義務づけられる。 そして、1990年代の初めに老人保健法によって40歳以上の住民健診も始まったという ことで、早期発見、早期治療に努めたということ、あるいは治療法もよくなったという こともありまして、慢性糸球体腎炎の患者さんの実数は、2000年をピークに減少を始め ておりますが、糖尿病性腎症、あるいは加齢、高血圧、動脈硬化などで起こってくる腎 不全の数はまだどんどんふえているという現状でございます。  これは慢性腎炎で一番多いIgA腎症で、下は腎機能、こちらの方はいい方、こちらは 悪い方ですが、早く治療すればしっかり治る率が高い、後になればなるほど遅いという ことで、早期発見・早期治療が非常に重要ということを示しています。今、腎炎につい ては少なくともこういったことが日本ではかなりなされているというふうに考えており ます。  これは末期腎不全の発生率ですが、日本は世界で4番目でありまして、そして透析患 者さんの有病率、すなわち、人口あたりどれぐらい透析患者さんがいるか、これはもう ずっと断トツトップであります。ですから、日本はこれを見る限り透析大国ということ になるわけですが、これは必ずしも悪いことではなくて、透析患者さんの寿命は日本は 世界一でございますし、アメリカではいまだ非常に短いということでございます。これ は、国をはじめ患者の皆さん、医師の皆さんが透析医療に非常に力を入れた結果である ということもいえるわけですが、一方で発生もどんどんふえているということです。  これは先ほど出ましたアメリカのデータで、アメリカでは減り始めている。それから、 日本と並んで非常に腎不全の多い台湾でも減り始めているということでありまして、日 本だけがまだふえていっているということです。  これは腎機能別に、原因のいかんを問わない死亡、入院、あるいは心血管事故の数を 見たものですが、GFRが低下するに従って、どんどんこういったものがふえていく。 それで、これらのデータから見えてくるのは、腎機能が悪くなるということは万病のも とであるということがいえるのだろうと思います。  先ほどはサンフランシスコ地区のアメリカ人のデータでございましたが、日本人も同 じようなデータが出ています。蛋白尿(マイナス)で腎機能がそれほど悪くない人、こ れの心血管障害の死亡を1としますと、両方あると男性で2倍、女性で4倍というふう に高くなります。いずれか一方あっても有意に死亡率は高くなります。  それから、このCKD+というのは腎機能が悪い人ですが、腎機能が悪いのと高血圧 が合併しますと、心臓血管障害の発症率が高くなる。糖尿病が合併しても高くなります が、おもしろいことに喫煙をするとこれがぐっと伸びるということで、腎臓の悪い方が 喫煙をすると、心臓障害の発症が非常に高くなるというデータも出ております。  また、これは脳卒中の新規発症ですが、腎機能が悪くなるほど脳卒中の発症率もふえ るということで、日本人も同じようなデータが出ています。  これはアメリカのデータですが、米国の一般住民をずっとフォローアップしていきま す。そうすると、この腎臓障害で亡くなった人と心臓血管障害で亡くなった人の割合を 見ますと、圧倒的に腎不全に至るよりも、その前に心臓血管障害で亡くなってしまうと いうことですね。むしろ透析患者さんは生存者であるというふうな考え方もできるとい うことでございます。  それから、コストでございますが、こちらは患者さんのサイズ、こちらはコストでご ざいます。割り算をしますと、1人当たりどれぐらいお金がかかったかというのがわか るわけです。これはアメリカのメディケアのデータでございますが、慢性腎臓病は透析 まで余りお金がかからないように思うのですが、実は非常にお金がかかるということが データで示されています。透析・移植になると当然たくさんお金がかかるわけでござい ます。  ということで、アメリカでは2000年から2010年の10年間に、“Healthy People 2010” ということをCDC、あるいはNCHSというところで推進しています。これは病気克 服のためのロードマップをつくるというプロジェクトでございまして、28分野がこの中 に含まれています。そのうちの一つの分野にCKDが取り上げられて、ロードマップを 作成して、それに従って対策を打っているというのが現状です。日本でも幸いなことに、 から厚生労働省の方で、戦略的アウトカム研究のテーマということで取り上げられまし て、これは5年間で成果を出せば、それがやがては医療政策の中に位置づけられて、保 険診療に組み込まれるものではないかと期待しております。  時間が長くなりますので、ここからは少しはしょっていきたいと思いますが、あくま でこの慢性腎臓病対策というのは腎不全を減らすということと、心血管イベントによる 死亡、あるいはそういった発症を減らす、これが大きな問題であります。そのときには、 4つ問題があります。腎臓学会では2004年11月に、私が委員長を務めます慢性腎臓病 対策委員会が立ち上がりましたときに、この4つの目標を立てました。  一つは、日本では疫学的なデータが全然なかったので、これをしっかりしましょう。 そのときに、GFRを簡単に推算する式が必要だということで、これも同時につくりま しょうということをやっています。これは現在進行中でございまして、今後は日本人に おける腎障害進行、あるいはCKDの発症のリスク要因の分析、それからどういった対 策を講じれば効果的に腎不全や心血管障害を減らせるのかといった費用対効果の分析、 こういったものをしっかり行って、そして総合的なCKD対策を立てるということが一 つです。  それから診療システムの構築としましては、先ほど写真が出てきましたが、「CKD診 療ガイド」、これはようやく9月に完成いたします。これを使いまして、腎臓の専門医以 外の先生方、あるいは患者さん、あるいは医療関連企業等々と協力をいたしまして、も ちろん行政もその中に含まれますが、CKDの診療システムをつくり上げたいというこ とです。恐らくその中心になるのが地域連携パスになるのだと考えております。  そして一方、こういった腎臓病が非常に重要であるということを社会に働きかけるた めの啓発活動というのも重視しておりまして、そのヘッドクオーターといたしまして、 日本慢性腎臓病対策協議会を立ち上げました。これでは、腎臓学会、透析医学会、小児 腎臓病学会がコアになりまして、26の団体の賛同を得まして、そしてまた厚生労働省の 後援も得まして、3月に1回目の啓発キャンペーンを行いました。その結果、我々が予 想した以上にマスコミで取り上げられまして、急速にCKDという概念が広がっており ます。そして、今この協議会を確立して、それを中心に社会に働きかけをしているとい うことでございます。  それからもう一方、今このCKDの概念が欧米を中心に進んできましたが、必ずしも 欧米の基準が日本人やアジア人に合っているとは限らないということで、今年、菱田先 生が浜松で日本腎臓学会50周年の記念学術会議をやられましたが、そのときにアジア で共同してCKD対策をやっていこうということで、初めての国際会議を持ちました。 今後これを継続して続けていく、日本がイニシアチブをとってCKD対策を進めていく、 というようなことを考えております。  以上がCKDの概念と取り組みの現状ということでございます。ちょっと資料が多過 ぎまして、説明し切れなかったところがあるのですが、またディスカッションの中でい ろいろ御質問いただければと思います。  以上です。 ○菱田座長  松尾先生、ありがとうございました。松尾委員の発表につきまして、何か御質問等は ございますでしょうか。今、松尾委員からは、慢性腎臓病対策がなぜ重要なのかという ことと、また現在この対策についてどのような取り組みが行われているかというような 説明がありました。こういったことを踏まえながら、今後慢性腎臓病、腎不全をなくす ためにどのようなことが必要かということを、今日御検討いただくということでござい ますので、また後ほど松尾委員の発表につきまして、御質問、御意見等がありましたら 言っていただくということにしたいと思います。  それでは、引き続き事務局より資料5の説明をお願いします。 ○日下課長補佐  それでは、資料5をごらんください。「腎疾患対策検討会の検討範囲」という1枚紙で ございます。この表はCKDのステージ分類で、「CKD診療ガイド」より抜き出させて いただいた表でございます。  まず、白いところはハイリスク群ということで、糖尿病、高血圧、メタボリック症候 群、家族歴などがあって、なおかつGFRが90以上あるということで、リスクファク ターを有する状態であるということでございます。これからGFRが徐々に悪くなって いく状態を、ステージ1〜5に分類しております。ステージ1は腎障害は存在するけれ ども、GFRは正常または増加している状態ということで、GFRが90以上。ステー ジ2、CKD2は、腎障害が存在しGFR軽度低下ということで、GFRが60〜89の 状態。CKD3が、GFR中等度低下ということで、GFRが30〜59。ステージ4にな りますと、GFRが高度低下しておりまして、GFRが15〜29の状態。CKD5にな りますと、これは腎不全の状態でありまして、GFRが15未満という状態にあります。  この表の中の、ハイリスクはまた別物として、ステージの1〜3については自覚症状 が乏しくて、本人が腎臓が悪くなっている状況に気づいていないことが多くあります。 また、糖尿病や高血圧などのほかの疾患で治療をされていても、腎臓自体を治療されて いるということは余りありませんで、そのCKDというのは見逃されやすいという状況 にあります。  そこで、今回の検討会の検討すべき目標ですが、腎機能に異常が見られた後に重症化 を防止し、慢性腎不全による透析導入への進行を阻止することとしてはどうかと考えて おります。 ○菱田座長  資料5の説明をいただいたわけですが、腎臓病対策全般といいますと、健診での発見 から、透析患者さんの予後改善という問題まで含めて、いろいろ広いかと思います。今 事務局からの説明としては、この末期腎不全に至るハイリスク群に対しての対策を主に 御検討いただきたい、こういうような御説明でございますが、それでよろしゅうござい ますよね。何か質問はありますか。 ○飯野委員  これは多分透析患者さんを減らすというのが最初にありますね。例えばここのステー ジ3だと、先生はよく御存じだと思いますが、透析に入る人はせいぜい1.5%ぐらいで す。100人に1人です。その対策をして、プロダクトが出るかどうかですね。これをや ってみてもちろんいいとは思うのですが、その成果が上がるか。成果をどう評価するか ですね。そこが問題であるかなという気がしますが。 ○菱田座長  今の飯野委員の御意見は、対象をこのように広くした場合の具体的な目で見える成果 としてあげられるか、問題があるという御意見だと思います。実は私もこの検討会が何 をやるところであるかということについては、十分理解していなかったところがあるの ですが、先ほど事務局からのお話をお伺いしていて、その辺のところを最初にお話しす べきだったのかもしれません。この検討会としては、今年度中に意見をまとめるという 日程的な予定をされています。この検討会で検討されたものがどのように生かされるか ということについては、21年度の厚生労働省の施策として、どのようなことをやってい くことがこの慢性腎臓病対策として必要であるかについて、政策を立案されるとか、具 体的には予算立てをされるところに生かされるというようにお伺いしています。それで よろしゅうございますよね。  そういうような目的で開かれておりますので、慢性腎臓病対策を進める上で、最もキ ーになる政策として何を取り上げることが重要か、というような観点で御意見をいただ ければいいのかなと思います。そういうふうに考えた上で、今の飯野委員の御心配の部 分は、一つの指摘として聞いていただければと思います。 ○松尾委員  よろしいでしょうか。さっき説明をはしょったのですが、この議論をするときに若干 整理するために、スライドを見ていただくと、わかりやすいかと思うのですが、一番こ ちら側に全人口がございまして、この中に先ほど話がありましたハイリスク群の方がい ます。これは糖尿病、高血圧、メタボリックの方です。この人たち、それから一般の健 常者の中に、この慢性腎炎というのはまだ原因がはっきりしておりませんが、リスクが なくても腎炎になる人がいます。この人たちは健診などで蛋白尿が見つかるわけですが、 まずここのステージが一つのターゲットです。この辺は、今度来年から特定健診が始ま りますので、それとの絡みでどんな方を保健指導するのか、あるいは受診勧告するのか、 勧告したときにどんな治療をしていくのか、ということが一つのポイントになるのでは ないかと思います。  それから、CKDのステージ1、2になった方は、しっかりリスク要因を取ってあげ ると正常に戻る確率が非常に高いということで、これはいろいろなデータが出ておりま すので、早く見つけて早く治療する。これが次のポイントになります。  それからさらに進んで、CKDステージ3というふうになりますと、ここからは心血 管障害の危険がだんだんふえてまいりますので、原因治療とともにこういった合併症を 予防するような対策が必要になります。この段階であっても、CKDステージ3という のは実は数も非常にたくさんありまして、範囲も広いのですが、このうちのまだ比較的 軽い人はやはりしっかりと治療、予防することによって、若いステージの方に戻すこと ができると考えております。  さらにステージ4に進みますと、これはもういよいよ腎不全ということになってきま す。そうすると、腎不全の合併症が起きてきますので、それまでの治療に加えて、さら に腎不全の合併症治療ということが必要ですし、それからそろそろ早目に腎代替療法、 血液透析にするのか腹膜透析にするのか、あるいは移植にするのかといったような教育 が、もうこの辺からは必要になってきます。あるいはもう少し進んだ人は透析の導入の 準備が必要ということになります。心臓血管障害の危険がさらに増しますので、こうい った治療もさらに必要ということになってきます。そして、末期腎不全になって、斎藤 明先生も見えますけれども、これはもう既に対策がいろいろとられております。  ここまでこういったことをずっとやっていきますと、仮にこれで透析に入ったとしま しても、合併症の発症率、心臓血管障害の死亡が大幅に軽減できるということももうは っきりしておりますので、こういう一連のCKDのステージの流れと、それからそのと きに必要な治療の大まかな概念がございますので、これを参考にしてディスカッション していただけたら非常にありがたいと思います。 ○菱田座長  ありがとうございました。今の資料5の検討課題、大まかなところはわかっていただ いたかと思いますが、このところのさらに議論を進めていく上では、むしろ資料6の御 説明をいただいた上で議論していただくのがよろしいかと思いますので、資料6につい ても説明をいただけますか。 ○日下課長補佐  それでは資料6をごらんください。今まで御説明させていただいたことを前提といた しまして、ここの腎疾患対策検討会で検討いただく事項について、事務局の方でその案 を作成したものでございます。  1〜6がございますが、まず1番目、一般国民に対する腎疾患に関する普及啓発。2 番目、医療提供体制ということで、受診勧奨やかかりつけ医と専門医の連携等。3番目、 診療水準の向上ということで、ガイドラインの作成・普及等について検討してはどうか。 4番目、人材育成ということで、研修会や講習会を実施してはどうか。5番目、研究開 発の推進ということで、もう少し研究についても推進すべきではないか、ということが ございます。また、この1〜5にお示ししました以外で検討すべき事項があれば、6番 目のその他というところで御指摘いただければと思います。  以上です。 ○菱田座長  ありがとうございました。今御説明いただいたように、腎疾患対策で特に末期腎不全 へ進行していくハイリスクの人たちに対して、どのような対策が必要かということにつ いて、今ここに掲げてありますような5つの視点から皆様方の御意見をいただくのが一 つの方法かなということで、事務局として用意していただきました。もちろんこれらの 範疇に入らないものは6ということで出していただいて結構ですが、もし今までのとこ ろで特に問題がございませんでしたら、これらの項目立てについて、それぞれ自由に意 見を言っていただいて、最後の方にまた説明がありますが、それを今後の作業部会等で いろいろ意見としてまとめていただきながら、また皆様方に御議論いただくような形で 話を進めていくという予定になっております。今日の会は12時までの予定でございま すので、あと50分ぐらいの予定で、皆様方からこのそれぞれの項目について御意見を いただければと思いますが、そのように進めさせていただいてよろしゅうございますか。  それでは、いろいろな問題がある中で、最初に一般国民に対する腎疾患に関する普及 啓発という問題。このターゲットをだれにして、どのような形で行こうか、いろいろな ことがあるかと思いますが、御意見をいただければと思います。はい、飯野委員。 ○飯野委員  やはりここは非常に重要なところだと思いますが、先ほども言いましたように、評価 とかそういう面を含めないと、単に普及啓発といっても何を目的でやるか。例えば今松 尾先生がおっしゃったように、腎疾患の透析を減らす、あるいは心血管イベントを減ら す、そういうものをターゲットにするのかどうかですね。それで、もしそういうものを 減らすとすれば、やはりメタボリック・シンドロームや生活習慣病が非常に深くかかわ ってくるわけです。ですから、そこまでこの一般国民の健康をいい状態に持っていくた めに、そういうふうに生活習慣を変えていく、そういう方策をつくるかどうかです。そ れはいろいろな学会とも関連しますし、ここだけでできるのかですね。ここだけでどう いうことができるか。そういうことも考えながらやっていく必要があると思います。 ○菱田座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。斎藤委員。 ○斎藤委員  今おっしゃったように、やはり生活習慣病に対する自覚をどういうふうに促すかとい うことは、極めて重要な問題だと思います。最近確かにメタボリック・シンドロームと いうのが、言葉として国民に広く普及しているということが一つの前進でもあり、果た して概念的にどのぐらい正確に伝わっているかというのは別問題だと思いますが。  いずれにいたしましても、今よく皆さん国民が見ているテレビなどで見ますと、チャ ンネルをずっと調べてまいりますと、グルメの旅ですとか、あるいは料理の番組ですと か、そういうのと、国民の健康、あるいは生活習慣病に対するいろいろなことを関知す る、そういう流れとのバランスを見てみますと、圧倒的にグルメの方が強いですね。だ から、あたかも国は余りやっていないのではないかと。いろいろな国民の欲求を満たす べく、そういう番組を取り上げていくというものの方が、もう本当に圧倒的に多いわけ です。この辺を何とかしないと、本当には国民の健康を国民自身が守っていくというの はできないのではないかと思いますので、それらをどういうふうに進めていくかという ようなことは、やはり一つの検討項目だろうと思います。 ○菱田座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○寺岡委員  飯野先生が言われたことは非常に大切なことですが、余り大上段に振りかぶると何も 始まらないので、まず私は第一段階として、普及啓発の一番のターゲットは、どれだけ の人が自分のデータを知るかということだと思います。自分のGFRがどれだけで、A 1Cがどれだけで、血圧がどれだけで、高脂血症がどれだけで、蛋白尿があるかないか。 ということは、さっき先生がおっしゃっていた健診を受診するかどうか。受診すれば自 分のデータがわかるわけですから、まず受診率がどうだというのが、一つの明確な普及 啓発の成果としてあらわれると思います。  その次に、今度それが治療に進むかどうかというところですね。その治療に進むかど うかというところと、あとコンプライアンスの問題がありますから、この辺は非常にデ ータとしては出しにくいところではないかと思いますが、これも恐らく無作為に抽出し たアンケートである程度やればできるのではないか。最終的なアウトカムとしては、末 期腎疾患がどれだけ減るかということですが、これは恐らくデータが出るのは5〜10年 ぐらいかかるでしょうね。  ですから、まず普及啓発の最初のターゲットとしては受診率がどれぐらいで、どれだ けの人が自分のデータをとりあえず知っているかどうか。その次に、その中のどれだけ の人が治療をしているかどうかという辺が、一つの大きな短期的な評価項目になるので はないかと思います。 ○菱田座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。松尾委員。 ○松尾委員  今、寺岡先生が言われたのは非常に重要であります。去年のアムステルダムの会議で、 このCKDに関しては、ABCDEを知りましょうという運動を進めましょうというこ とが提唱されました。それは何かというと、AはアルブミンのAですから蛋白尿です。 Bは血圧、Cはコレステロール、Dは糖尿病があるかないか、EはeGFRということ です。残念ながら特定健診ではクレアチニンが入りませんでしたので、eGFRは計算 できないのですが、そのほかでいろいろ検査をやっている人もいると思いますので、こ ういったデータを国民自身が知るということです。  それからもう一つ、CKDになりやすい人は、先ほどから話が出ていますように、ハ イリスク群というのがあるわけです。自分は糖尿病や高血圧がある、あるいはメタボが ある、家族で透析をやっている人がいる、尿酸が高い、いろいろCKDになりやすいリ スク因子というのを、「CKD診療ガイド」にも書いておいたのですが、こういった人は 少なくともこのABCDEは知りましょうというような、そういう具体的なキャンペー ンをやれば非常にいいと思います。 ○菱田座長  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○松村委員  今メタボリック・シンドロームがこれだけ普及したというのは、マスコミの力が非常 に大きかったと思います。さっき斎藤先生がおっしゃいましたように、マスコミに働き かけて、またマスコミの方たちに意識を持っていただくのが、非常に大切だと思います。  つい最近、NHKの「ためしてガッテン」という番組が、この10月24日に「大変怖 い腎臓病」ということで、飯野先生のところに取材が行って、そこからまた私のところ にも取材が来て、何かそれを映像化して一般の国民に見せられるものができないかとい うので、今知恵を絞っているのでございますが、やはりNHKですとか地上波のテレビ 番組、それから新聞社、この間、新聞社からも取材を受けたのですが、書いてくださる のはとてもうれしいのですが、小さい難しい記事を書くと皆さん読んでくださらないの で、皆さんの読んでくださるような記事の書き方を工夫してちょうだいというお願いを したのでございますが、やはりマスコミへの働きかけというのは非常に重要ですし、効 果が高いと思います。 ○菱田座長  ありがとうございました。皆様方の御意見で、この啓発活動は非常に重要であるとい うこと。そしてまた、今のようなマスコミ等を通じてという部分も非常に重要だという ことがありましたが、厚生労働省の施策にそれをつなげていただくという観点からは、 またいろいろな議論が必要な部分があるのかなと私は思っております。  一つは、対象を一般的な国民にするのか。それとも、ある意味では働いている世代の 人たち。もしくは子供に腎疾患を持っている親をターゲットの中心にするなど考える必 要があるかと思います。いろいろな市民公開講座などをやりますと、どちらかというと かなりお年寄りの人たちが来られる。この人たちもGFRが低いわけですから、当然関 心が高いわけですが、この方は比較的進行が遅い。むしろ重要なのは、ひょっとしたら もっと若い人たちかもしれない。そうすると、ターゲットの中心をどうするかというこ とを考える必要があろうかと思います。  また、先ほども飯野先生が、この中だけで何ができるかというようなお話をされまし たが、メタボリック・シンドロームを扱っておられるような糖尿病学会、高血圧学会の 人たち、それから腎臓の専門分野、こういう人たちが別々にやるのか。それとも、これ を統一してやるようなことを国がある程度リードされるのか。こういうような問題も必 要かなと思います。  それからまたマスコミ以外に、現場でそういう指導をしていただくような保健師さん とか栄養士さんとか、こういう人たちを通ずる啓発活動というのをどう進めるのか。ま たそれをどのように援助していくのかというようなことも重要な問題かな、と思いなが ら話を聞かせていただきました。この部分は後の議論とも重なるかもしれませんので、 次の課題のところに進めさせていただくということでよろしゅうございますでしょうか。  その次は、医療提供体制(受診勧奨、かかりつけ医と専門医の連携等)ということを 掲げておりますが、この辺に関しまして何か御意見をいただけますでしょうか。どうぞ。 ○斎藤委員  受診勧奨ということに関しても、これはまず検査との関連が非常に高いわけですから、 その辺を勧めることと相まつと思うのですが、もう一つ、かかりつけ医と専門医の連携 という問題が極めて重要で、これがどのぐらい実質的にできるかどうかが、国民的な視 点に立った運動になるかならないかのほとんど中心ではないかなと思います。私などが 患者さんを診ていて感じることは、やはり一度は学校健診等でクリニックへ行っておら れるのですが、変わらないね、変わらないね、という一般的な話だけで、さりとてお薬 があるわけでもないという中で行かなくなってしまうという問題が一つありまして、そ れはやはりかかりつけの先生方が腎臓病を、今のグレードをどういう位置づけでもって、 何を一番気をつけなければいかんかというようなことが十分把握されないまま、患者さ んを診ておられたということがおありで、これは我々専門医がつくるガイドラインに基 づいて、それを広めるということが極めて重要だろうと思います。  もう一つは、私は前の日本透析医学会の理事長を仰せつかっていたわけでございます が、私の東海大学に来られる末期になりかけた腎臓病患者さんの状況でいいますと、恐 らく6割が外からの紹介で、4割ぐらいが自分の患者さんグループの中からそういう方 が発生すると。そうした場合にどうかと申しますと、恐らく7割ぐらいの方はもう遅い。 いろいろインフォームド・コンセントできない。こういう移植があります、腹膜透析が あります、血液透析があります、というお話ができない。もう早く何らかの手を打たな ければいけないという段階で、お話ししている暇がない。しかも、かかりつけ医からは 透析と、要するに血液透析の話しか聞いていないというような方が圧倒的です。だから、 やや早目に送っていただいて、一応そういう話をして、移植とまでいかないにしても、 じゃ、CAPD、腹膜透析にいきましょうというような選択ができる方が、恐らく2〜 3割はおられるかなという感じですが、そこでやはりかかりつけ医の先生方と専門医と の提携ということができていないことが、インフォームド・コンセントを十分できずに、 結局血液透析ばかりがどんどんふえていく結果にもなっているというようなことから考 えますと、このかかりつけ医の先生方で1〜3のCKDのグレードを今回やるのは、僕 は戦略的には絶対に正しいと思いますが、ただその連携さえきっちりできれば、4〜5 に向かうところも自動的にうまくいくということであろうと考えております。そういう 意味で、このことは本当に大事な問題として、ただどうやっていくかという具体的なと ころが、専門医の側にもこういうふうにやるんだというところでは、まだまだ始まった ばかりで不十分かなという感じがいたしますので、これは両者で十分なお話し合いをす ることが非常に大切かなと思います。 ○菱田座長  ありがとうございました。ほかに。どうぞ。 ○飯野委員  斎藤先生のところでこの間講演させていただいて、そこの医師会の会長さんが非常に 熱心なんですね。医師会によっては、非常にCKDに対して動いている方がたくさんい らっしゃいます。ですから、そういうところをある程度モデル地区みたいにして、全体 的に動かしていくというのも一つ重要な方策だと思います。 ○菱田座長  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○松村委員  今先生方がおっしゃったそれを、腎臓サポート協会で、千葉県の開業医の先生と専門 医との連携をとりながら患者を診ていただくために、開業医の先生方にCKDのことを わかっていただく冊子をつくって配ろうとしております。その専門医と開業医とが年じ ゅうキャッチボールのように、日ごろのケアは開業の先生にお願いをして、専門医が月 に1遍診るというような、そういうシステムづくりができないかというので、開業の先 生方に提案しようと考えています。今日その冊子は持ってまいりませんでしたが、千葉 でそれをやってみる試みをしたいと考えております。 ○菱田座長  ありがとうございます。この問題は、慢性腎臓病のことを一生懸命やっていますと、 腎臓病の問題だけではなくて、糖尿病もそうでしょうし循環器疾患も同じ問題をかかえ ていると思いますが、その辺を医師会の立場から、何か内田委員の方から御意見はござ いますでしょうか。 ○内田委員  患者さんの利便性と状況の日常的な把握といったところからすると、この連携という のは非常に重要ですし、また時に応じて専門医によるしっかりした判断といいますか、 病状の診断とその検査等の把握といったものも必要であります。この連携を進めるとい うのは極めて重要であると思いますが、一般的に言うと、開業の先生方のCKDに対す る理解というのは、現状では非常におくれているところがあるのではないかと思います ので、今の松村委員の方からも御発言があったように、先進的に取り組まれている地域、 あるいは東海大学の地元でもそういうお話があったということですが、そういう先進的 な取り組みというところを皆さんで共有できるようなシステムというのもつくっていく 必要があると思います。 ○菱田座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。医療の提供体制という点からは、 慢性腎臓病が発見された方が、適切な医療が受けられるような仕組みと。その中で専門 医とかかりつけ医との連携をつくっていくことが非常に重要だということが、各先生の 方から強調されたと思います。はい。 ○松尾委員  この医療提供体制は3点問題があると思うのですが、1つ目は、その次に出てきます やはり標準的な治療や、治療を行った結果アウトカムを何で評価するのかというような、 そのガイドラインをしっかりつくるということが重要だと思います。  2つ目は、このかかりつけ医と専門医の連携といった場合に、地域格差がものすごく ありまして、東京などは恐らく腎臓専門医がたくさんいると思いますが、某県に行きま すと腎臓専門医が全県で数人と、そういった県もあるわけです。そうすると、かかりつ け医が専門医に紹介しようと思っても、どこにいるんだという話になりますから、私は あちこちで講演に呼ばれて行っているときに、この連携の問題については、これは決ま った連携の仕方があるわけではなくて、地域の実情に応じて病診連携体制というか、地 域医療の連携体制を考えてくださいと。そのときに大事なことは、腎臓の専門家が行っ て、「こういう基準で紹介してください」とか「こういう基準で治療してください」と言 っても、多くの地域でまず不可能なのです。ですから、これはかかりつけ医の先生の視 点で、しかもその地方に合ったようなものをつくらないといけないので、私はちょっと 俗な言い方ですが、「草の根の地域連携システムをつくってください」というふうに今お 願いしているのです。そのためには、日本医師会、あるいは県医師会、市町村の医師会、 この協力が絶対に必要であるということであります。ですから、ある県では、専門医に かかるのが年に1回なのが、東京に行くと3カ月に1回ぐらいというふうになるかもし れません。それから、検査の頻度も少し変わってくるのかもしれませんが、そういった ものをつくっていただきたいというのが2つ目です。  3つ目は、これもその次に出てくるのですが、そのための組織的な勉強会、講習会、 それからできればそういう病診連携、できれば本当は具体的に連携パスがあると一番い いと思うのですが、それを各地でつくっていただいて、それに基づいて症例検討を進め ていくのが非常にいい方法ではないかなと思います。コメディカルの方も含めてですね。 ということです。 ○菱田座長  ありがとうございました。どうぞ、内田委員。 ○内田委員  医師会の役割というものを大変大きく評価していただいてありがたいですが、私はこ れまで医師会の中で研修会をいっぱい見てきたのですが、大体こういう講演会などをや って関心を持って参加される方というのは非常に限られていて、しかも同じメンバーと いうことがしばしばあるんですね。ですから、やはりうちも一般国民に対する普及啓発 と絡めた形で、一般の開業医の先生たちにもしっかり普及啓発していかなければいけな い。それはそのガイドラインの話ももちろんありますし、連携パスの話もありますし、 研修会等といった話もありますが、やはりメタボで一番うまくいった点は、メタボとい う言葉のインパクトが非常にあったということと、腹囲をはかるという簡単な方法で自 分でその状況を自覚できるという、そういうツールがあったというのが非常に大きかっ たんですね。ですから、腎臓病に関しましても、ぜひそういうものを皆さんで工夫して、 例えばマスコミなどに訴える、インパクトのある訴え方をしていくことが非常に重要な のかなと思います。  健康日本21でさんざん項目を挙げて細かくいっぱい数値を挙げましたが、あれはも う全くインパクトもなくて普及しなかった。あのことを知っている方が国民の恐らく1 割いっていないですよね。そういう状況で、あれだけお金をかけたにもかかわらず、ほ とんど成果を上げていないという状況もありますので、やはり費用効果といいますか、 その辺のところをしっかり見定めて、ターゲットを明確にしてスローガンといいますか、 わかりやすいものを、国民に対しても開業医の先生方に対しても訴えるようなものが何 かできればなと思います。 ○菱田座長  ありがとうございました。どうぞ、飯野先生。 ○飯野委員  一つ、専門医について格差ですね。松尾先生が言うとおりで、今の段階ではやはりそ の地域に合った体制をとっていくしかないと思いますが、これは今後のことを検討する わけですから、さらに僕は腎臓学会でこの地域格差をなくすような取り組みをどうした らいいか。僕は東大の医療政策人材養成講座に出ていて、そういう専門医の偏在につい てどういうふうにするかという論文を書いたのですが、やはりこれは学会、あるいは厚 労省かどうかわかりませんが、動かさないと動かないですよね。ですから、何かこの検 討会のドラスチックに変えるようなアイデアを出していって動かさないと難しいかなと いう気がします。 ○菱田座長  寺岡委員。 ○寺岡委員  医療供給体制のところでは、松尾先生のおっしゃったことですべて言い尽くされてい るだろうと思います。私も賛成です。ただ、ここで本当にお話しすべきことかどうかわ かりませんが、問題はそれを患者さんの側がどういうふうに受けとめるかということが 一つあると思います。すなわちコンプライアンスの問題。薬だけではなくて。例えば患 者さんによくお話しして、血圧も起きたときにすぐはかるとか、夜寝るときにはかると か、そういうのを紙に書いて持ってくるように、その意義がわかった方はずっとそれを 続けられていますよね。そういった方は、私ども専門医でなくても大体血圧のコントロ ールはうまくいく。それと同じように、やはり患者さん御自身がかかりつけ医、あるい は専門医との連携の中で、そういう供給された医療に対してどう対応するかというとこ ろを刺激していくか。やはり患者さんの問題意識しかないと思います。ですから、先ほ どの普及啓発にも入るかもしれませんが、やはりかかりつけ医と専門医が幾ら連携して その医療を供給しても、患者さんの側がそれにどう対応するかという視点が欠落してい るといけませんので、そこをどうするか。これはやはり供給体制の中でも、その意義と いうものを訴えて、患者さんの問題意識というものを刺激していって、常に患者さんの 側から自発的にそういうデータを持ってくるというようにすれば進むのではないかと思 います。  それから、先ほど飯野先生がおっしゃいましたように、もちろん最終的には地域格差 をなくさなければいけないのですが、一般の医師ですら地域格差はなかなかあれですか ら、早急にはできないと思います。しかし、恐らくそういうデータさえあれば、そうい うデータのやりとりはメールとかインターネットとか、がんでやっていますよね。ああ いうふうな形で、例えばいろいろな学会でそういう問い合わせをするようなシステムを つくっておけば、ある程度解決できるのではないかと思います。過渡的な方法かもしれ ませんが。 ○菱田座長  ありがとうございます。まだ御意見があるかと思いますが、次に進ませていただいて もよろしいでしょうか。 3番目の議論の柱として、診療水準の向上ということがあるかと思います。これにつ いては腎臓学会が診療ガイドを出し、普及しつつありますので進んでいるかと思います が、いかがでしょうか。これも診療水準といった場合には、多分専門医のレベルの診療 水準ではなくて、かかりつけ医の先生方や、非ステロイド系の抗炎症剤を多く使われる 整形外科の先生方の腎臓病診療レベルの話だとか、その対象もいろいろだろうと思いま す。診療水準の向上のためにどこに対してどのようなことが求められているかというよ うなことで、御意見をいただければありがたいと思いますが。どうぞ。 ○椎葉委員  素人ですからちょっとあれかもしれませんが、例えば診療水準に関しまして、今GF Rというのは開業の先生方でも算出できるものなのでしょうか。 ○菱田座長  はい。今現場にはかなりそういったツールが広く行き渡っていますし、それから多分 来年の暮れぐらいまでをめどに腎臓学会としては努力したいと思っていますが、開業医 の先生方がクレアチニン検査を出されますと、GFRで結果が返ってくる、そういうよ うなシステムをやりたいと思っています。病院によっては既に取り入れられているとこ ろもあります。そういうものが普及しますので、この問題は解決の方向へ進むかと思っ ております。 ○椎葉委員  あと、医療提供体制と診療水準は密接に絡むのですが、医療提供体制は県がこれから いろいろ医療計画の中でいいものをつくっていく予定ですけれども、今回の国の医療計 画では4疾病・5事業ということで、脳卒中なり心臓病なり糖尿病なりがんといった、 そういう特定の疾患がターゲットに挙がっているのですが、今日のお話を聞いていると 腎臓も大変大事な疾患なので、できればこの検討会のアウトカムの中に、医療計画の中 に入れるなど、そういった試みも検討していただけないかなという感じがいたします。 ○菱田座長  ありがとうございます。どうぞ、内田委員。 ○内田委員  日本医師会の方では、糖尿病対策推進会議というのにかかわっているのですが、この 会議は糖尿病学会と日本医師会と糖尿病協会という患者さんも入った3つの団体で、今 回歯科医師会が入って、その後、健保連と国保中央会も入ってもらおうと思っているの ですが、こういう保険者と医療提供者と患者さんという方たちが入ってそういう団体を つくっています。糖尿病に関しては、もう様々な専門書も出ていますし、専門家もいい 取り組みをされているのですが、この推進会議の中でこういう「糖尿病治療のエッセン ス」というのを、開業医向けの非常に薄っぺらな冊子をつくって、さらにそれを両開き の下敷き1枚にまとめて、最も簡便にした状況で、医療の現場で診療所の患者さんを前 にして、ちょっと目を通して参考にできるようなガイドラインというのをつくっており ます。こういうのを参考にしていただいて、腎臓病に関しましても、専門的なところで のガイドラインといいますか、分厚いマニュアルがあっていいと思いますが、開業医の 先生が患者さんが来たときにちょっと目を通してチェックできるような、こういうエッ センスといった形での冊子をつくっていただければ、非常に有効ではないかと思います。 ○菱田座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。  診療水準の向上というようなところで私が考えるのは、腎臓病や循環器、糖尿病など の立場からの対策を1つにまとめる動きを作る必要があるかと思います。慢性腎臓病対 策が重要だとやりますと、患者さんに対して例えば腎臓病手帳を発行しましょうという ような話が出てくるわけですが、糖尿病の先生方は糖尿病手帳、循環器の人たちは高血 圧手帳を作るという形で、患者さんが3つの手帳を渡される可能性がでてきます。一方、 診療するサイドのかかりつけ医の先生方のところにも、それぞれから診療ガイドが配布 されるというような状況になっています。こういったものをまとめる必要があるかと思 います。腎臓学会としても糖尿病学会や高血圧学会、循環器学会と合同委員会をつくり まして、そういう問題を作業しようとしていますが、この点を国としてリードしていた だく、後押ししていただけるようなことになると、こういう問題が非常にスムーズに進 むのではないかというのを1点、私は感じます。  もう一つは、これは医療費の問題、保険医療のシステムと非常に密接に絡みまして、 難しい問題があるのかもしれませんが、腎臓の領域においては、ACE inhibitor、A RBといった、アンジオテンシンの作用を抑制する薬が有効であるというエビデンスは たくさん出ているわけですね。しかしながら、それらは保険診療の中では高血圧の方、 もしくは一部糖尿病性腎症の方について処方できる状況になっているわけですが、国全 体の透析医療、慢性腎疾患の医療費を減らすためには、もっと広く使える状況を作って いただくことが重要だと思います。これはエビデンスと実際の診療との間にギャップが 生じている。製薬会社の方からすれば、改めて治験をして適応をとるというのはかなり のお金がかかるというところから、必ずしも十分していただけない。一方で、学会等は そういうエビデンスを出してはいますが力になっていない。こういうギャップを埋める ところで国がリーダーシップをどうとっていただくかということも重要かなと思ったり もしております。  時間の問題がございますので、次の人材育成というところに移らせていただきたいと 思います。どのような人材が必要なのか、どのようにして育成するのかという問題かと 思いますが、いかがでしょうか。  これは少し私の方から。今までの中で、かかりつけ医への教育の問題、その他の教育 資材の問題、いろいろなことが出ていましたが、浜松で慢性腎臓病対策を進めている中 で感じたことを述べさせていただきます。医師会との合同の委員会をつくったりして、 実際に議論をしてくる中で、「腎臓が問題ですよ」と健康診断で言われた方がどこで診療 を受けたらいいか分かり易くしようということで、そういう方を受けてくださる診療所 のリストをつくりたいので、「手を挙げていただけませんか」という提案をしました。い わゆるかかりつけ医の先生方全部が受けられる体制を作ることが必要なのか。「私はこう いった方診ますよ」というような先生方が専門的に勉強され中心的にやっていただくと いうことになりますと、専門医のところに直接来なくても、かなりの部分で吸収できる かなと思ったりします。専門医と非専門医という2段階ではなくて、中間にあたる人た ちがどういう形で教育され、それを評価されるかということが重要かと思いますが、そ ういうシステムが必要ではないかなと思います。特に専門医のいないところは必要かと 思いますが、厚生労働省としてシステムとして少し考えていただくのも必要かと考えま す。最初に私の意見で申しわけありませんが、この点については少しそんなことを考え ます。  ほかにどうでしょうか。どうぞ、飯野先生。 ○飯野委員  菱田先生が言われたとおりですが、一つはやはり今医者の数も足りないし、立ち去り 型サボタージュではないですが、負担がどんどん多くなるわけですね。ですから、役割 分担というのがこれから日本の医療では非常に必要になってくると思います。ですから、 こういうCKDに関しても、保健師さんとかそういうパラメディカルの方を中心に動く システムというのを構築するのが、一つのいい点ではないかなという気がします。 ○菱田座長  ありがとうございます。いかがでしょうか。腎臓学会もコメディカルの育成委員会と いうのをつくって、いろいろと講習会等をやっているのですが、なかなか難しいですね。 集まりが悪いという部分もあります。それもやはりその方々がそれに参加し一生懸命勉 強することを、日常の業務の中で評価されることがないということをよく聞きます。栄 養士さんたちから聞きますと、栄養士さんが一生懸命患者さんに栄養指導をすること自 体は、病院にとっては赤字になってしまうというようなことをおっしゃる人もおられた りして、それがどの程度本当なのか。私は経営面でのことは詳しくないのでわかりませ んが、まずそういう意識を持っておられるとすると、なかなかそういうことに参画して いただけないかなと思いますし、また我々がそういう講習会を土曜日に開いたりします と、土曜日でもまだ病院の業務があるとなかなか出してくださらない。日曜日の休日、 自分の休みを使ってしかそういうものに参加できないというような実情がありますので、 飯野先生が言われたように、重要な部分を重要と位置づけて、もしその人たちが参加を する、育成するということでしたら、それなりの制度的な保障が多分必要なのかなと思 ったりします。どうぞ。 ○内田委員  私はがん対策の方も関係しているので、国立がんセンターの会議にも出ているのです が、その中でがんセンターに情報センターというのがつくられていまして、それは医療 従事者向けと患者さん向けの様々な情報を提供しているシステムで、非常に充実してき ています。そこまではやはり費用という問題もありますし、スタッフという問題も出て くるとは思うのですが、ぜひ学会なりどこかで、そういうネットを通じての勉強ができ るようなシステムというのを、医療従事者向けの、様々な職種がありますから、それぞ れに向けた情報を提供するようなシステムというのを検討していただければと思います。 今研修会、講習会をやってもなかなか人が集まらない。時間と場所と費用といろいろな 条件がありますから、いろいろな治療に関する、あるいは患者さんに関する情報でもい いですし、そういうものを共有できるような場があると非常に安心です。 ○寺岡委員  私も先ほどそのことについてちょっとお話ししたのですが、恐らく今の状況で地域格 差を埋める一番いい方法だと思います。がんに関しましてはかなり充実してきておりま すが、恐らく各学会で協力すれば、そんなに高価な額はかからないと思うんですね。も ちろん補助金などでサポートしていただければ一番いいのですが、私はそれによって地 域間格差はかなり埋まると思います。  結局なぜそういうところを見るかというと、我々現場の医師から見ますと、自分で患 者さんを抱えて困ったときに見るわけですから、そういう動機づけがやはり一番いいで すので、そういったときにそういうものがあるのとないのと大違いですので、ぜひ各学 会で連携してそういうものをつくっていただきたい。  それから、先ほど先生が最初に言われたことは非常に重要で、手帳を5冊も6冊も持 っていても何の役にも立ちません。私は全部1冊の手帳にまとめるべきだと思います。 糖尿病がなければないということがここに書いてあれば、それがまたその方にとっての 危険因子がないという非常に大きな一つの情報になりますので、ぜひ各学会でそういう 統一した手帳をつくっていただければ。それを患者さんが常に見ながら、自分のデータ を見て自覚するということが、まず最初の取っかかりではないかと思います。それを持 ってまたかかりつけのお医者さんのところへ行けば、そこでまたお医者さんも非常にわ かりやすいわけですね。ぜひそういうものをつくっていただきたい。 ○菱田座長  ありがとうございます。松尾委員。 ○松尾委員  来年から特定健診が始まって、これは主に40歳から74歳のメタボを対象にやるわけ ですが、これをせっかくやるのですから広い視野で行って頂きたい。私もこのCKD対 策のプロジェクトをやり始めた最初のときに考えたのは、やはりそれぞれの進行のリス ク因子というのは、糖尿病も高血圧も腎臓も結構ダブっているもので、やはりこれはぜ ひ一つにすればいい。そうでないと、かかりつけ医の先生たちもガイドラインを6冊も 7冊も持って、一々見ていかなければならない。患者さんは1人なのに、という感じに なりますから、これはぜひまとめて欲しい。そういう観点でいうと、糖尿病は糖尿病療 養指導士という制度が、詳しく知りませんが、できていますね。これがもし腎臓指導士 とか高血圧の指導士とか縦割りでできますと、非常にむだなものになるなという気がす るので、指導をする療養士のことをぜひ。考えて頂きたい。  それとの絡みで、国民の皆さんが特定健診をやるときに、多分お金を大分かけてやら れるのでしょうから、少し生活習慣病全般という観点で、データを活用して、そういっ た中にもぜひ組み込んでやっていただければと思います。 ○内田委員  今のことに関連してよろしいですか。私はまたこれも担当しているのですが、特定健 診は現場でメタボに本当に絞り込んだ健診になっているのですね。逆に、ほかの項目は できるだけそぎ落とすという形での取り組みになっております。なおかつ見直しが5年 後で、5年後まではデータを集める上でも、今の検査項目で動かさないということが決 まっているので、これに上乗せをして検査を加えるというのは、むしろ市町村行政と交 渉していただかないとなかなか難しい話だと思います。現状では、腎疾患関係では蛋白 尿だけになっておりまして、詳細な健診というのは心電図と貧血の検査と眼底検査とい うのが入っているのですが、そこのところに例えばGFRを加えるとか、そういうふう な取り組みを今後ぜひ検討していかなければいけないと、今日のお話を聞いてそういう ふうに思っております。だから、当座すぐに変えろというのはなかなか難しい。 ○菱田座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。それで は、最後の検討事項ということで、研究開発の推進という点からの御意見をいただきた いと思いますが、いかがでしょうか。  先ほど松尾先生のお話にありましたように、慢性腎臓病対策というのは、今あるレベ ルの医療行為でもって十分効果を上げうる。したがって、それらの治療の普及をしなけ ればいけないということで、大きく取り上げられているというふうに言いましたが、一 方でまだまだ解決されなければならない研究その他の部分が多いか思います。いかがで しょうか。松尾先生、何かございますか。 ○松尾委員  研究開発といいますと大きく分けて実証的なというか、介入研究も含めた臨床疫学的 な研究と、基礎的な研究ですね。先ほど出てきました腎の再生の研究などあるのですが、 多分ここで求められているのは、例えばそういう診療システムなどをつくったときにど れぐらい効果があるのか。それも例えば費用対効果はどうなのかというようなことを具 体的に実証していく研究というのが、やはり求められるのかなと思います。そういう意 味では、戦略研究が今度立ち上がりましたので、ぜひそこでいいプランをつくっていた だいて、お金に限りがあるので、恐らく全然お金は足りないと思いますが、コアになる ことは間違いないのでつくっていただく。そのときに、私はしつこいように医療連携と 言うのですが、例えばこういうCKDが大事です、蛋白尿とクレアチニンが大事です、 と言うと、そこらじゅうで蛋白尿とクレアチニンをはかる。非常にむだになるというこ とも一方であるので、それをむだにしないようにするにはどういうシステムでやったら いいのか。どれぐらいの頻度で自分のデータを知ればいいのかというようなことを含め て、やはりそういう、うまく言えないですが、社会的な側面というか、疫学的な側面も 含めた研究の推進というのがぜひ必要かなと思います。 ○菱田座長  ほかに。斎藤先生。 ○斎藤委員  やはり私も臨床的な、疫学的な研究というのがまず一番大事だろうと思います。先ほ ど先進的な地域というか県と申しましょうか、そういうところでまず実際やって成果を 得て、それを普及させると。そういう手法がいいのではないかというようなことが出て きたと思うのですが、やはりそのような形をとられて、できればそこは中途半端でなく、 理想的な臨床研究デザインをつくれるだけの予算を投入するという形でやる。ただ、都 市圏と農村部を2つに分けて、きちっと典型的な地域パターンで県を選ぶというような ことでやられると、その次のステップとしてすごくやりやすいと私も思います。 ○菱田座長  どうぞ。 ○内田委員  たびたび発言して申しわけありませんが、ちょうど予算の話が出てきたので、ちょっ と事務局の方に確認したいのですが、この検討会は様々な具体的な提案も含めて出てく ると思うのですが、具体的なスケジュールと予算化ということについてどういうふうに お考えなのか。 ○日下課長補佐  スケジュールにつきましては、まず今年度中にこの検討会としての報告書等を取りま とめたいと思います。取りまとめた中で、中には予算化が必要なものと、既存の中でも できるものがございますので、それをまた整理しまして、全部やれと言われましてもこ れはできないものもございますので、その中で優先順位をつけながら、21年度の予算の 中で盛り込めるものがあれば盛り込んでいこうと考えております。 ○菱田座長  ほかにいかがでしょうか。今出てきたのは、慢性腎臓病対策を具体的に進めるために、 どのようなシステムづくりができるかという研究の重要性を言われましたけれども、ま たもう少し基礎的な部分の研究も大事だと思います。例えばCKDステージ3の人たち、 GFRが30〜60の人たちは心血管系事故のリスクが高い、透析になるリスクが高いと なっていますが、100%なるわけではありません。その中で悪化する人たちを、簡単な マーカーで見つかるということになれば、より治療のターゲットを絞りやすくなります。 そういった研究も、実はこの慢性腎臓病対策をより効率的に進めるためには必要な部分 かなと思います。  それから、今まで慢性腎臓病対策として、尿蛋白が陽性、GFRが低い人たちの予後 が悪いということで、糖尿病、慢性糸球体腎炎を念頭に置いてやってきたわけですが、 日本においても腎硬化症がどんどん増加してきている。この人たちはGFRは確かに低 いですが、尿蛋白はそれほど多くはない。腎硬化症は透析の原疾患としてまだ10%弱ぐ らいしか占めておりませんので、当面は大きなものではないですが、欧米等を見ていま すともっと高い比率を占めていますので、日本で将来の透析の患者さんを減らすという 点での原疾患対策としては、腎硬化症についての研究も非常に重要か思います。今は腎 不全へ進むためのマーカーと言いましたけれども、どういう人が心血管系事故が多いか という危険因子を明らかにする研究、こういったものも非常に重要な位置を占めていく のではないかなと思います。  もしここのところまで御意見がよろしければ、あとその他も含めて全体的なことで皆 様方の御意見をもう少し言っていただいて、おしまいにしたいと思いますが、いかがで しょうか。宮本委員、何かございますでしょうか。 ○宮本委員  よろしいですか。失礼します。先ほど言いましたように、私自身も今透析をしていま すが、もう20年とか30年前になりますので、私自身が透析導入になったのも、かかり つけ医から専門医への十分な連携というのはなかった。私どもの会の会員さんでも透析 導入に至る経緯を聞くと、やはり圧倒的多数は最終的にもう腎臓内科の専門医に行った 時点で、斎藤先生が言われるように透析導入の時期であったと。そこにはもう血液透析 か腹膜透析かという選択の余地もなくて、圧倒的多数が血液透析という現状になってい ると思います。  だから、私どものときはもう腎臓病になれば治らないというのがはなから先入観のよ うに植えつけられて、いずれは透析になりますよというような治療でしたが、今の治療 研究や予防の仕方というのは、松尾先生が言われるように、ステージが上がっていても、 そこから有効な治療をすることによって戻るということもあります。だから、やはり日 常的に診療していただくかかりつけの先生が、現在の腎臓病に対する治療レベルや予防 の仕方ということについての平均的な知識を持っていただくということが、私は非常に 大事ではないかと思いますし、ある意味そういう腎臓内科の専門医の方が今は地域的に、 それこそ私ども兵庫県内でも決して多い方ではないですけれども、そういう専門医の育 成ということも十分に考えていただきたいというところがあります。  そもそも私ども全腎協は透析患者の会ですが、結成以来私どものような透析になる患 者さんを減らしてほしいということも、片方の大きな柱に掲げて活動してきましたし、 法人化以降はそういう一般の、今でいう慢性腎臓病対策の啓発というのも全腎協並びに 各県で取り組んできたのですが、これがなかなか十分浸透してきていないというのも現 状で、今まさにここ数年CKD対策というのが大きく取り上げられてきている中で、や はり飯野先生が言われるように、ある意味ドラスチックな腎臓病対策というのを積極的 に打ち出していただくと、より一層対策が充実するのではないかと思います。  私も兵庫県で行政を交えてCKD対策の取り組みをしたいということで、早速7月に は松尾先生にお願いをして、一般県民の皆さんのシンポジウム的なものを行いましたが、 申しわけないですが県行政もなかなか理解がない。なかなか積極的に協力をしてもらえ ないし、先ほど言ったようなスローガン的なものを腎臓病対策について掲げないと、一 般の県民の皆さん、国民の皆さんもなかなか注目をしてくれないという状況があると思 います。一つは、こういう検討会を設けていただいたこと自体がドラスチックの始まり かとも思いますので、よりこの場で検討していただければありがたいと思います。 ○菱田座長   ほかに。たくさん意見をいただきましたが、言い残したことということで何かござい ますでしょうか。どうぞ。 ○寺岡委員  余り本質的なこととは関係ないことですが、私はいつも飯野先生に毒づいているので すが、CKDという概念はそれはいいのです。非常にいいのですが、結局ベースに進行 性の疾患があってGFRが60未満、あるいは50未満ということだったらいいのですが、 ただ単にGFRを50、あるいは60で切って、それ以下のものはCKDであるという考 え方はちょっと危険なのではないか。  といいますのは、例えばGFRが70ぐらいの人で、何か外傷とか腎がんで腎摘をし たと。そうするとこれは割ってしまうわけですね。これはCKDかというとそうではな いですよ。ですから、その辺が非常に不安を与えたり。例えば我々の分野ですと臓器を 提供する生体腎移植で、GFRが70ぐらいの人まではすることになっていますが、そ れで提供した後は50ぐらいになってしまうわけです。そうすると、もう生体腎移植の 臓器提供者の30%はCKDになってしまうというような誤った考え方。あるいはこれは マスコミが飛びつきそうな話ですが、その辺を、あくまでもやはりベースにそういう進 行性の疾患があることを前提にするということを、何らかの形でニュアンスとしてつけ ていただければと思います。 ○菱田座長  一言釈明しますと、CKDが問題になるのは、もともとのベースの疾患があって、そ れが進んでいって腎不全に進むという部分は一つあるのですが、GFRが低い人たちは 心血管系疾患が多いという一つの客観的な医学的なデータがあるわけですね。だから、 そういう意味で今先生の言われた方も、ひょっとしたら心血管系疾患のリスクになるか もしれないという形で今対策を進めています。GRFが低い人たちで、予後の悪い人は どういう方かという日本人でのエビデンスを今後出していかないと、先生の言われるよ うな不安をあおることになるということで、腎臓学会としてはぜひそれに取り組みたい と思っております。 ○寺岡委員  ぜひお願いします。というのは私たちもちょっと怠慢で、移植学会として生体腎移植 のドナーの追跡は余りやっていないんですよね。これはきちっとやらなければいけない。 ですけれども、アメリカのデータからいいますと、同じ年齢でエージマッチにして、そ れで提供した人と提供しない人では提供した人の方が長生きしているのです。これは腎 臓が1個だから長生きするわけではなくて、やはりきちっとその前に検査をして、病気 を除外しているということ。その後も定期健診をずっとやっているということが大きい と思います。これはかなりの差で長生きをしている。ですから、やはりその後定期健診 をしているということが重要で、定期健診の契機となる意味でも、CKDが幾つ以下と いうことは非常に意義があると思います。 ○菱田座長  飯野委員、では最後に。 ○飯野委員  最後に済みません。前から考えている提案ですが、腎移植も含めて東京はたくさんの 施設があると。各県に1つずつ腎疾患治療総合センターみたいな、センター化するよう な、そういうものを設けるべきではないか。ある程度ソーシャライズしたような形の医 療というのは、今の日本の医療に必要ではないか。それの先駆けになるのではないか。 がんセンターはありますが、そういう腎疾患の総合治療センターを各県に置くとかです ね。中心的な診療施設でいいのですが、そういうのも一つの解決策かなと思っています。 ○菱田座長  ありがとうございました。時間が参りましたので、今日の検討会の議論を終わらせた いと思いますが、今日たくさんの意見をいただきました。その意見をまとめて、そして また次の議論のたたき台をつくっていただくというような作業班をつくるということに したいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。 (了承) ○菱田座長  それでは、そういうことをお認めいただいたということで、作業班をつくらせていた だくことにして、その委員の選任に関しましては、座長の方に一任いただくことでよろ しゅうございますか。 (了承) ○菱田座長  ありがとうございました。そのような形で今後進めさせていただきます。  それでは、最後に事務局から今後のスケジュールについてお教えください。 ○日下課長補佐  先ほども少し御説明をさせていただきましたが、年度内に本検討会としての一定の方 向性を取りまとめさせていただきたいと思っております。次回については、まず方向性 のたたき台を作成するための作業班を開催させていただきまして、そのたたき台ができ 上がり次第、また先生方の御日程を調整させていただいた上で、御案内をさせていただ きたいと思います。 ○菱田座長  それでは、本日の検討会はこれで閉会とさせていただきます。御出席の皆様、お忙し い中御出席いただきましてありがとうございました。また、本当に活発な議論が出て、 今後のやるべきことが非常に明確になったのではないかと思います。それではこれで閉 会とさせていただきます。どうもありがとうございました。 <了> 1