07/09/20 平成19年9月20日薬事・食品衛生審議会指定薬物部会議事録 指定薬物部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年9月20日(木) 13:30〜 ホテルはあといん乃木坂「フルール」 2.出席委員(9名)五十音順    板 倉 ゆか子、 合 田 幸 広、 小 沼 杏 平、◎佐 藤 光 源、   ○鈴 木   勉、 妹 尾 栄 一、 曽 良 一 郎、 花 尻 瑠 理、    和 田   清 (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(3名)五十音順    鍋 島 俊 隆、 藤 岡 淳 子、 八 木 剛 平 3.行政機関出席者    熊 本 宣 晴(監視指導麻薬対策課長) 他 4.備考    本部会は、公開で開催された。 ○監視指導・麻薬対策課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会指定薬物部会 を開催します。私、先月24日付けで新たに監視指導・麻薬対策課長を拝命しました熊本 と申します。よろしくお願いします。  本日は大変お忙しい中、お集まりを賜りましてありがとうございます。当部会の委員数 12名のうち、板倉委員が若干遅れるとの連絡が入っていますので、合わせますと9名出 席いただけるようです。定足数に達していますことをあらかじめ報告申し上げたいと思い ます。  今般の薬事・食品衛生審議会の委員の改選に伴い、去る1月24日に薬事・食品衛生審 議会の総会が開催されたところです。その総会におきまして各部会長の選出が行われ、本 指定薬物部会におきましては佐藤光源先生に部会長をお願いすることとされていますの で、報告を申し上げたいと思います。  議事に入ります前に委員の方々のお名前を五十音順に私の方から紹介したいと思いま す。国民生活センター総務企画部調査役の板倉ゆか子委員、医薬品食品衛生研究所生薬部 長の合田幸広委員、医療法人せのがわKONUMA記念広島薬物依存研究所長の小沼杏坪委員、 東北福祉大学大学院教授の佐藤光源部会長、星薬科大学教授の鈴木勉委員、東京都医学研 究機構東京都精神医学総合研究所副参事の妹尾栄一委員、東北大学大学院教授の曽良一郎 委員、医薬品食品衛生研究所生薬部第三室長の花尻瑠理委員、精神・神経センター精神保 健研究所薬物依存研究部長の和田清委員。なお、鍋島委員、藤岡委員、八木委員におかれ ましては所用により欠席という連絡をいただいています。それでは佐藤部会長に御挨拶を お願いしますとともに、以後の進行をよろしくお願いします。 ○佐藤部会長 佐藤でございます。今、課長がお話になりましたように、昨年に薬事法の 一部改正がございまして、この指定薬物部会が始まったわけでございます。第1回は31 品目の指定がなされたということで、新しい薬物乱用対策が始まり、それにおいてはこの 指定薬物部会が非常に大事な役割を担うということになりますので、今日もいくつかの物 質が検討されますが、よろしく御審議のほどお願いします。  部会を進行させていただきます。部会長代理を決めさせていただきます。薬事・食品衛 生審議会令第7条で、部会長があらかじめ指名することとなっていますので、私と致しま しては鈴木勉先生に部会長代理をお願いしたいと考えています。いかがでしょうか。あり がとうございます。それでは鈴木先生、部会長代理席にお移りください。議事に入る前に 事務局から配付資料の確認についてお願いします。 ○事務局 事前に送付させていただいた資料について、確認させていただきます。資料No. 1は「指定薬物(案)一覧」です。これは諮問書に付いている物質です。物質名1〜5まで 一覧という形で1枚紙となっています。資料No.2は化学構造式が書いてあるものです。1) 〜5)まで、それぞれベンゼン環などがある「指定薬物(案)構造式」となっています。資 料No.3は「各薬物の中枢神経等への作用について」です。A4横のエクセルの表で5枚ほ どのものです。資料No.4は新聞の切り抜きです。A4縦のものでイラン人逮捕、「2C- I」という記載のあるものです。  参考資料として四つお送りさせていただき、さらに本日、参考資料No.5として当日配付 させていただいています。参考資料No.1は「指定薬物に関する薬事法上の規定」というこ とで、指定に関する該当条文を付けています。参考資料No.2は「違法ドラッグ(いわゆる 脱法ドラッグ)対策」ということで、カラーの横の1枚紙です。薬事法改正によってどの ように制度が変わったのかの概略です。参考資料No.3は参考で現在は麻薬、それから昨年、 先生方に審議いただいて指定した31の指定薬物のうちから、今回の物質に類似した構造 を持つ物質の構造式を一覧にしたものです。参考資料No.4は「すべての物質に共通する正 規用途(案)」ということで、昨年指定した1〜3のほかに薬事法上の検査を追加していま す。ここにミスがあって申し訳ありませんが、参考としてこのような正規用途があるとい うことです。参考資料No.5は昨年、審議いただいて指定薬物に指定した物質の一覧です。 物質名と俗称が記載されています。落丁などがありましたら事務局までお願いします。 ○□□委員 よろしいですか。それでは議事に入りたいと思います。本日の議題は指定薬 物の指定です。指定薬物に関する規制は本年4月1日より、該当部分の改正薬事法が施行 されたところです。まずは指定薬物に関する規制について、事務局より簡単に説明をお願 いします。 ○事務局 参考資料No.1とNo.2を並べて御覧ください。参考資料No.2を中心に御説明した いと思います。昨年と一緒の説明になりますので恐縮ですが、まず違法ドラッグというこ とで、麻薬に類似した成分や中枢神経系作用が疑われる物質が、あたかも法律による規制 を受けていないかのごとくに合法ドラッグとして売られていたということです。これは今 までも薬事法で取締りをしたところですが、よく御存じのとおりビデオクリーナーや試薬 など、偽装して販売する事例が多くなってきたということで、昨年の薬事法改正によって 対応を強化したところです。それが黄色の丸のところです。麻薬指定にしようとすると、 実際は動物試験などで1年、2年はあっという間に過ぎてしまいますから、規制が後手に 回ってしまうということで、迅速に対応ができるようにこの改正がなされたというところ です。  下のブルーの囲みの中ですが、物質を指定して規制するということで、薬事法の中には こういうふうに物質を指定して規制対象とすることにはなっていなくて、薬事法は医薬品 に該当するかどうか、その目的性から判断しているところから、物質を指定するというの は今回、指定薬物という制度で初めてだと思います。幻覚等を有する一定の物質を厚生労 働大臣が指定し、その物質については、二つ目の○ですが、製造などを原則禁止するとい うことです。医療や産業用の用途に供する場合は取締りの対象から除外しますが、原則禁 止することによって流通を防止する、このような薬物の入手を防止するということです。 三つ目の○ですが、指定薬物である疑いがある物品の検査命令等をかける権限で、これは 都道府県、厚生労働省ができるということです。四つ目の○で、これも昨年の重複になり ますが、違反行為に対する罰則を強化したところです。  本日、御審議をお願いするのは、物質を指定して差し支えないかどうかということで、 今回、5物質が候補物質として挙がっているところですが、一番上の○の「幻覚等を有す る一定の物質を厚生労働大臣が指定」というところです。幻覚や中枢神経系の興奮、抑制 などの作用を有する蓋然性があるかどうかという薬事法の規定に基づき、蓋然性、つまり 可能性があるかどうか御専門の立場から御審議いただき、指定すべきかどうか答申をいた だければと考えているところです。  これは報告になりますが、参考資料No.5を御覧ください。昨年は実は32物質と1植物 を御審議いただき、32物質、1植物とも指定薬物に指定して差し支えないと御審議いた だいたところです。32のうち、1物質は実は俗称でメチロンと言われる物質ですが、こ の物質については依存性薬物検討会の方で麻薬の指定の該当性を検討していただいたと ころ、指定薬物より規制の厳しい麻薬に該当するという御見解をいただき、直接「麻薬」 に指定しているところです。残りの31物質と1植物が、本年2月28日に厚生労働省令で 指定薬物に指定され、本年4月1日の薬事法の施行と同時に、この31物質と1植物が規 制の対象となっているところです。 ○□□委員 指定薬物の指定の際には、薬事・食品衛生審議会の意見を聞くことになって いますので、今回、五つの物質について指定の諮問がなされています。事務局から諮問の 内容について説明をお願いします。 ○事務局 資料No.2と資料No.3を御覧ください。大変見にくくて恐縮ですが、資料No.2が 構造式、資料No.3が各薬物の中枢神経等への作用という形で、昨年度と同様にまとめてい ます。  資料No.2を御覧ください。1)は俗称でDOIと呼ばれる物質です。化学名は 1-(4-Iodo-2,5-dimethoxyphenyl)propan-2-amineという物質です。この物質が実際に、 違法薬物として出回っている恐れがあります。資料No.2に示したこれら5物質が全部そう であるという検査結果があります。  資料No.3の1ページ目を御覧ください。DOIの中枢神経系への作用はどうかというこ とですが、この物質に関してはたくさんの文献があります。今回は、二つの文献を専門家 の方と相談して選ばせていただきました。(1)では興奮作用としてDOI訓練のマウスで弁 別試験をしたところ、麻薬であるLSDは用量依存的にDOIの薬物、これはレバー法を 用いた試験でマウスに感じた薬物の感触、刺激効果を判別させるという試験ですが、LS Dに似た作用を持っていると推定される結果が出ているところです。  (2)は動物というよりは部分的な薬理作用ですが、LSDと同様にラットの脳の梨状葉皮 質の介在ニューロンの5-HT2Aレセプター、セロトニンレセプター、脳内伝達物質のレセ プターに対するパーシャルアゴニストであると、部分的な作動薬ということが報告されて います。中枢神経系への作用があることが推測されるのではないかという資料です。  2)はMDBP,piperonyl piperazineと文献では出ている物質です。 1-(3,4-Methylenedioxybenzyl)piperazineという物質です。資料No.3の2ページ目を御 覧ください。これも文献が一つあり、弱いながらもシナプスへのセロトニン再取込阻害作 用を持つことが広く知られている物質です。また、ラット脳内においてMDMA投与後に 起こるセロトニン量の低下が、本物質の投与で有意に減弱されたというような報告があ り、その一方で、より強力なセロトニン uptake inhibitor、再取込阻害剤である desipramineとMDMAの同時投与では、そのセロトニン量の低下は抑制されなかったと 報告されていて、何らかの機序があってこの物質は中枢神経系へ作用しているのではない かということがこの文献から読み取ることができます。ほかにはメジャーな作用を示す文 献は見当たりません。  3)は2-Aminoindanという物質で、ベンゼン環に五員環がついてアミンがついていると いう物質です。こちらもかなりの数文献があり、アンフェタミンと生理的食塩水とを、2 レバー法によって弁別するようにトレーニングされたラットに対して、この物質を投与し たところ、ラットはアンフェタミンを投与されたと思ってレバーを叩く。つまりアンフェ タミンの作用と類似した作用を、ラットの体内で引き起こしている可能性がある。アンフ ェタミンは覚醒剤ですので、その類似作用があるのではないかと、やはり中枢神経系への 作用があるのではないかという報告です。  4)と5)については一緒に説明させていただきます。これは昨年、指定薬物の指定の可 否も審議させていただき、麻薬に直接指定されたメチロンの構造がよく似た物質です。ど こが似ているかというと4)ですが、一番右側に折れ線が二つあってエチル基になってい るところですが、それが一つ少ないメチル基のものがメチロンですので、炭素の鎖が一つ 長くなったという物質です。5)も炭素の鎖が長くなったところは違うのですが、NHCH2CH 3と右下にあります。CH2CH3がエチル基になっていますが、これがメチル基のものがメチ ロンで構造的に類似しているというものです。  文献については、専門家の先生に検索していただいたのですが、中枢神経系の作用を示 す文献は見当たりませんでした。そこで、昨年同様、コンピューター・シミュレーション をしていただいて作用が推測できるかどうかを御検討いただきました。それは国立衛研に お願いして、その結果が4ページ、5ページですが、コンピューター・シミュレーション のQSARモデルを作り、覚醒剤であるアンフェタミンの弁別ラットの試験結果を用い、 そこから構造類似の物質のデータを用いてコンピューター・シミュレーションしたとこ ろ、アンフェタミンよりはやや弱いということは考えられるのですが、類似の作用を持つ のではないかということが推測されたところです。  また、モノアミン再取込阻害ということで、ドパミンの中枢神経系への作用についても、 二つのQSAR結果において、2物質とも麻薬化合物より活性は低いということですが、 類似の作用を持つ可能性が示唆されているところです。実際、他の文献で、こちらには今 回記載はしておりませんが、このようにメチル基をエチル基にして炭素の鎖を長くするよ うな物質については、鎖を長くするごとに徐々に作用が減弱していくのですが、作用自体 は大体残っているという文献報告も別途あります。本日御紹介した文献については配付資 料というわけではありませんので、今現在机の上に2部、ファイルを準備しています。必 要に応じて御覧いただければと思います。 ○□□委員 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお伺いしたい と思いますが、一つずつ取り上げていきたいと思います。資料No.3のDOIのところで最 初の指定薬物候補ですが、いかがでしょうか。これはLSDへ般化したということと、セ ロトニン2Aレセプターに対する作用がパーシャルアゴニストであると、この二点です ね。いかがでしょうか。 ○□□委員 これは、いま中枢紳経系だけの御説明がありましたけれども、多分、指定薬 物の薬事法上の規定を見ると、保健衛生上の危害を発生するおそれがあるということが書 かれていて、それは中枢神経系への作用プラス、実際にこういうものが流通しているかど うかということもあるのだろうと思います。それを考えると日本も当然、こういうのが流 通していることを確認していますし、海外でも流通しているからこそ、こういうデータが 出てくるので、指定薬物に是非、緊急に指定すべきものだと私は考えています。 ○□□委員 ほかに御意見はございますか。これはよろしいですか。LSD類似であると いうこともあります。では2番目のMDBPについて、御意見はいかがでしょうか。これ がセロトニンの再取込阻害作用ということです。 ○□□委員 資料の訂正か、確認をお願いしたいと思いますが、よろしいですか。 ○□□委員 どうぞ。 ○□□委員 資料に、「5-HT uptake inhibitorであるdesipramine」と書いてあるの ですが、これは前の方が正しいとするとclomipramine、あるいはdesipramineであれば NE uptake inhibitorだと思いますので、ここは後ほど御確認いただければと思います。 ○事務局 事務局で確認させていただき、必要に応じて修正をしたいと思います。 ○□□委員 その点は同じimipramineなので、弱いながらもセロトニンのreuptake inhibitorの作用はあるかもしれませんが、ちょっと調べて確認してください。ほかには 何かございますか。 ○□□委員 これも、多分1番と同じように流通も非常にはっきり確認されていますし活 性もある。日本だけでなく海外でも流通していますから。これも指定薬物とするのに全く 問題なく、早急にすべきものではないかと思います。ちょっと気になるのは、資料No.3の 化合物名が実際の資料No.2の化合物名とは違っています。No.2もちょっと気になるところ はあるのですが、正しいかなとは思っています。No.3のものはたぶんNo.2に合わせて書か れなかったのかなとは思いますけれども。 ○事務局 失礼しました。確認して修正したいと思います。 ○□□委員 この化合物だけでなく全般的に、No.3はちょっと違うかなというところで す。 ○事務局 化合物名の欄の部分が俗称と違っているということで、確認させていただきた いと思います。 ○□□委員 これで読めなくはないので、違っているという言い方は難しいかもしれない ですが。今までのやっているルールとは違うルールで付けられているなということです。 ○□□委員 その点は事務局、よろしくお願いします。ほかには何かありますか。これは 流通していて、その物質がセロトニンの再取込阻害作用があることが分かったので、まず 指定薬物としようということですね。よろしいですね。  それでは3番目の2-Aminoindanです。これはアンフェタミン様の刺激作用の弁別の般 化が起こるということですが、これも何かございますか。これは流通していてアンフェタ ミン類似の作用があるということで指定薬物に指定するということで、よろしいですね。  4番目のbk-MBDBですが、これも流通していて、麻薬に指定されたメチロンと同様のも のという説明がありました。よろしいですか。何か御意見はございますか。 ○□□委員 これが多分、4番目と5番目は実際の論文がないという状況があるので、少 し議論になるところだろうと思います。流通を見ますと、メチロンタイプのものが一番隠 れて激しくやっている。今一番逃げてやっているのがこれです。要するに一番新しい違法 ドラッグで、これまであまり出ていなかったのですが。メチロンが麻薬となって今度は構 造類似体が違法ドラッグとして流通しているというものです。そのために論文が出るよう な余裕がたぶん世界的にもないので、こういう状態でしかない。  ただし、QSARで活性を予測しまして、これは製薬会社などが使うかなり高級なソフ トですが、これでやると一応、メチロン様の活性はあるだろうということは出ています。 多分蓋然性があるかどうかというところが、法律上問題になると思いますけれども。事実、 この指定薬物という制度を作った最初のところを振り返れば、要するに、こういうものこ そ指定薬物に指定しないと広く出回ってしまって、保健衛生上のいろいろな問題が起こる のではないかと思っています。ですから私は、これは積極的にこういう制度ができたから こそ指定していくべきものだろうと考えています。 ○□□委員 今、どれが議論になっているのですか。 ○□□委員 資料No.3の4、5です。 ○□□委員 問題があって、出回ってからでは遅いということはあると思いますが、私自 身は素人ということもあり、QSARのモデルを使ってというのがどの程度根拠があるの かというのが、ちょっと分からない部分がありますので、もう少し、例えばどの程度の立 証性があるのかというようなことについて、御説明いただけるとありがたいなと思いま す。指定できるならしたいという気持はあるのですが、それなりの根拠というのが分かり ませんと、後から科学的に判断したかどうかということで問題が起きるということもあり ますので、できればそういうところでよろしくお願いしたいと思います。 ○□□委員 これは今後の審議にも関わることでありますので、コンピューター・シミュ レーションというのがどの程度実証性があるのか、これは事務局からお願いします。 ○事務局 報告書に二つしか準備していなくて申し訳ありません。これはQSARという コンピューター・シミュレーションソフトで、類似物質の立体構造と薬理活性ですが、こ れは既に報告されているものです。これをデータとして入力し、この物質についてはどう だろうかということの類推をします。ちょうど直線上にグラフで活性と構造の類似を見て いくと、ちょうど点状に乗っていくというような推測をするコンピューターの手法を用い て、その線状に似たようなものと、類似の活性があるのではないかということを推測する ソフトです。詳しい先生がおられたら補足をお願いできればと思います。 ○□□委員 私は必ずしも専門家ということではないので、きちんと説明できるか分かり ませんが、今回用いたQSARモデルというのは、日本語に訳すと定量的活性相関と言わ れているものです。特に製薬会社などがメディシナルケミストリーというもので、いろい ろな構造から、活性の相関を計算するときに使うモデルとなっています。今回用いたのは 2DのQSARというもので、立体構造的にではなく平面的な構造ということで、構造の いろいろな物性について、128の因子について今まで文献で報告されている構造類似化合 物のさまざまな活性値と、構造的な128の因子などをコンピューターでシミュレーション し、どのような構造が最もいろいろな活性に寄与しているかを計算させました。  今回、既存の構造類似化合物の活性というのは、必ずしもそれが適しているか適してい ないかという問題もありますが、今回そのような文献を使ったときに、一応、既存の麻薬 の化合物よりはやや弱いながらも、計算上、類似の活性が予測されたということです。 ○□□委員 こういうのは医薬品開発をするときにそのターゲットがあって、そういうも のを積極的に医薬品として開発を進めるかどうかの判断のために、もともと開発されたソ フトです。当然、その活性に関して100パーセント保証するものではありません。しかし、 かなりの確率で少なくともその活性はある一定の延長上には、強度の問題は誤差はあるだ ろうけれども、活性はあるだろうという具合に通常はとられます。  指定薬物の場合に、もともとの麻薬で活性のあるものは非常に活性が強いので、わずか な量でも活性が出ます。我々はよく他の違法薬物を取り扱っているときに、例えば活性が 麻薬より10倍様弱いものでも、10倍量入れれば同様の効果が得られることになります。 麻薬が1mgで効くものであれば、10倍量の10mgは十分剤形の中に入ります。多分100倍 量くらい、活性が弱くても十分人が1回で飲める量にすることができますので、活性の強 度というのは量を増やすことによって十分カバーできます。そういう意味から言うと、こ のQSARモデルで活性が若干弱いと言っても、相手が麻薬と比較していますので、麻薬 が例えば活性が100倍違ったとしても、十分に1回の常用量になる量の剤形というのです か、タブレットが作れるわけです。  そういう意味を考えた点と、もう一つは、現実的に今の流通を非常に奥の深いところま で含めて見ると、β-ケトタイプのものが一番流通している。多分流通しているからとい うのも、ここから先は憶測にしかすぎませんが、それは何らかの活性があるからそういう のが売れて流通するのだろうと考えると、指定薬物への指定というのが良い選択ではない かと思っています。活性が弱いというのが、それで人が摂ったときに常用量として摂って も出ないようなものについては、こういうもので活性をよくしてもしようがないのです が、これは十分に常用量で摂れば、人に対しての活性が出るだろうという域で活性が出て います。 ○□□委員 いかがですか。  ○□□委員 いまの□□先生のお話で大体分かったのですが、乱用実態を当局の方で調べ ておられると思いますので、その辺り、御報告いただければありがたいと思います。 ○事務局 これら5物質とも実は厚生労働省、それから各都道府県の方でやっている違法 薬物の取締りのときに買上調査というのをやっています。実際に怪しそうな物を買って来 て、国立衛生研究所生薬部でそれを分析していただき、その結果、どのような物質がある かということを調べているというものです。そのときに構造を決定したら、今回出てきた 5物質が検出されたというものです。ですから、先ほど□□先生からお話がありましたよ うに、これらの物質はいずれも日本で乱用されている可能性が非常に高いというもので す。 ○□□委員 指定薬物制度ができて、「乱用」というか形が変わりまして、表で売ってい るショップではこういう物は出てきませんが、今、会員制度になり、会員になって入って 買うとこれが出てくるのです。ですからそういうユーザーを固定して、そういうものに対 してこれが一番売られているということです。通常、窓口で、アダルトショップなどに行 って買って来るときには、こういう物は今の段階ではもう入っていません。 ○□□委員 ほかにございますか。 ○□□委員 御説明ですとコンピューターのシミュレーションを使って、活性は麻薬のメ チロンと類似のものであるということですが、いくら活性があっても、もし毒性が強けれ ば乱用の対象にはならないわけなので、その辺りが動物実験を経てから、こういう指定の 対象にしたほうがいいのではないかと、そのような感じが私にはするのですけれどもね。 覚醒剤類似のものであればマウスでも使って入れてみて、実際にロコモーションのアクテ ィビティが高まるなど、何かそのようなことがちょっとでもあれば、それはそれなりに指 定する意味もあると思いますが、実際に生物学的な実験を経ていないということが何かち ょっと引っかかるのですけれども、いかがでしょうか。 ○□□委員 もう1度念を押しておきますけれども、今回の五つの物質は、買上調査など で乱用実態があること、そして分析してみるとこういう成分であることで、今審議してい るのですが、できたら次回から、乱用実態やなぜこうした物質が審議対象となったのかを 書いておいていただくと、分かりやすいと思います。そのことは次回までにお考え願いた いと思います。 ○□□委員 従来の指定の場合には、要は乱用者がいろいろなネットに自分の経験を報告 したり、そのようなことがあれば、これは乱用される危険があるということがはっきり分 かるので、指定する根拠もはっきりしているという感じなのですが、その辺りが今回の資 料はあまり提示されていないものですから、ちょっと心配しているのです。 ○□□委員 これのたしか4番だったと思いますが、これは実は中国の試薬のサイトにも 最初売っていて、そこから買っているような感じがあったのですが、もうそこのサイトに アクセスしても売られていません。サイトの非常に深いところに会員になって入ると、こ ういう物を売っているということは見えますけど、非常に難しいなと思うのは、昔は違法 ドラッグと言っても、まだ罰せられない意識がかなりあったので割とオープンにしていた のですが、今は非常に深いところに入っていかないと本当の実態が。それで我々も実はい ろいろなテクニックを使って、そういうところに入っていますので、これは公開ですよね。 ですからなかなか難しいなというのもあることは事実です。 ○□□委員 乱用の実態があった物質であり、コンピューターのシミュレーションによる と、常用量で、あるいは大量摂取すれば同様の薬理作用の危険が生じる蓋然性が高い。そ の蓋然性について無視できないということですね。  指定薬物の指定は先ほど課長も言われたとおり、乱用に対して迅速に対応するというの が一番の目的であり、その上で麻薬指定にすべきかどうかを含めて、この物質の衛生上あ るいは毒性などについて、さらに検討を進めていくということです。それが法改正の趣旨 であったと思いますが、それを踏まえて□□先生、いかがでしょうか。まだ科学的な試験 までやった上で指定するべきではないかという御意見だったと思います。 ○□□委員 分析してbk-MBDBが検出される、あるいはその物自体は手に入れることはで きるのですか。 ○□□委員 物自身は、最初に錠剤というのですかね、そういうものになっているものは 我々も物として確保しています。それとは別に指定薬物になる可能性があるということ で、こちらで急遽合成をしています。ただ、合成も順番がありますので、なるべくこうい う指定薬物にされそうなものからやっています。ただし、量がどのくらいできるかという のは、グラムはできると思いますけれども、それが10g単位でできるかどうかはちょっ と別問題です。こういうものは指定薬物にされてから次のステップに進む可能性があるな らば、その段階で合成したものを使ってある程度の活性を見ていただいて、それで次のス テップに進むのだろうということを考えています。 ○□□委員 東北大学の□□です。私自身は、このQSARのシミュレーションが実際に どのようなものかは存じ上げないのですが、このアンフェタミンの標的分子のモノアミン のトランスポーターの構造から、その機能を推定するということはかなりできるようにな ってきたところがあるようですので、ここでIC50がどれくらいだったのか、それが1 オーダーか2オーダーかということでお話されていたので、それが確認されればそのシミ ュレーションということもサイエンティフィックに考えても、よろしいのではないかと思 います。 ○□□委員 そのエビデンスはございますか。 ○□□委員 こちらのほうはQSARモデルで計算したところ、もちろん用いた実測活性 値が基本の実測活性値の数にもよりますけれども、一応、用いた麻薬類と同じオーダーの IC50値などが推測されています。  話は別になるのですが、私どもは実際にこういう製品などを買い上げて調査、分析して いますと、このbk-MBDB、bk-MDEAという4番と5番の二つの化合物ですが、メチロンが 麻薬に指定されるまでは今まで何百と製品を分析して、全く出ていない化合物だったので す。今回、メチロンが麻薬に指定され、指定薬物指定直前に買い上げた製品から新たに検 出された化合物です。  また文献的に見ても、世界的なインターネット等を見ても、このbk-MBDBとbk-MDEAの 方は、まだ世界的にそれほど認知されていないためか、実際に論文という形ではこの合成 物を作った特許の合成は出てくるのですが、そのもの自体の論文というものがまだ全く発 表されていない段階なので、これから実験しなければいけない化合物だと思います。まさ に指定薬物としては、メチロンの代わりに、出た段階で指定することによって、これ以上 の広がりを防ぐことができるのではないかと思っていますので、是非、指定薬物として規 制していただきたいと考えています。 ○□□委員 この話は、□□委員からの貴重な御指摘によるものですが、今後の審議に関 わりますので、このQSARの信頼性、どこをもって指定薬物にするか、その根拠になり 得るエビデンスが問われると思います。例えばIC50などの値で指定薬物にするという ような論拠はやはり必要ではないかと思います。 ○□□委員 数字は出してきています。私は今分からないですが、花尻さんから。 ○□□委員 あくまでも既存の実測活性値を用いた論文の活性値の影響もかなり受ける のですが、bk-MBDBの場合はラットsynaptosomeにおけるモノアミン再取込阻害における 実測値IC50なのですが、その場合ではMDMAが、他の類似の麻薬化合物とは1オー ダーが異なっていますが、やや弱いながらも類似の活性がこちらの式では予測されていま す。 ○□□委員 具体的な数字は。 ○□□委員 例えばbk-MBDBですが、アンフェタミンで弁別したラットを用いて構造類似 麻薬化合物の実測活性値ED50について見たQSARモデルの場合、これはあくまでも 計算値ですが、例えばメチロンが2.3であって、bk-MBDBが5.99、bk-MDEAが6.71μmol/L となっています。  また、このsynaptosomeにおけるモノアミン再取込阻害におけるIC50値ですが、メ チロンが2.9μmol/Lに対し、bk-MBDBが13.9、bk-MDEAが16.9となっています。あくま でもこれは今まで出ている論文の値を数値として計算させた値なので、元の論文の値にか なり影響されると思いますが、そのような形の値となっています。 ○□□委員 いまのIC50は、ドパミンのトランスポーターのほうの値ですか。 ○□□委員 ラットのsynaptosomeにおける、ドパミンのモノアミンreuptakeに対する IC50値のQSARモデルとなっています。 ○□□委員 いかがですか。具体的に数値が出てきましたので。 ○□□委員 数倍から10倍まではいかない。5、6倍くらいのところまで弱いのですね。 ですから10分の1の活性よりは強い。 ○□□委員 あと先ほど□□先生が言われたように、物があるのであれば実際に実験をや ってデータを出すことが必要だと思いますし、そういう状況になくて、それで早く規制を しないといけない場合には、このようなモデルを使ってやることもいいと思います。その ように段階的に考えていかなければならないと思います。 ○□□委員 私も今のデータを拝見して、麻薬に指定されているリン酸コデインの100倍 差は普通に麻薬でもないわけなので、100倍でなくて10倍のレベルということであれば、 たとえコンピューター・シミュレーションによるデータであっても、この指定薬品に指定 していいのかなと、そういうふうな感じで今おります。 ○□□委員 ほぼ御発言も出尽したかと思いますが。どうぞ。 ○□□委員 指定薬物に指定するかどうかの基準として、いわゆる行動薬理中心に動物実 験まで導入して、客観的なデータが出たときにとなってくると、場合によっては指定薬物 を通り越して一気に「麻薬」という場合も出てくるわけです。そうなると指定薬物に指定 することの意味が変わってくるので、段階を踏んでということで、必ずしもそういう動物 実験のデータが絶対不可欠だという縛りを付けるのは、難しいかなと思います。そういう ことで今回の4番、5番ですが、可能性が非常に高いというレベルで考えていいのかなと いう気がします。 ○□□委員 大体、御意見をいただいたと思います。指定薬物に関する法改正の趣旨は、 先ほどから何回も言いますように、乱用の蓋然性があるものを早く指定し、その後で十分 検討して「麻薬」にすべきものは「麻薬」に指定するといった迅速な対応が必要というこ とでした。今、乱用されているこの5物質について、これを指定薬物にするかどうかとい うのは非常に適切な議題だと思います。そしてその蓋然性については、データとしても約 10分の1くらいでは多少弱い可能性がありますが、麻薬に類似する作用があるというこ とが分かったわけですので、これは指定薬物に指定するという方向で議論があったと思い ます。そういうことで今日、御審議いただいたこの五つの候補薬物について、指定薬物に 指定するということでよろしいですか。それでは、薬事法第2条第14項に規定する指定 薬物として、指定することが適当であるというふうに決議させていただきます。ありがと うございました。事務局から本件に関わる今後の手続、スケジュールについてお願いしま す。 ○事務局 今後のスケジュール等を御説明させていただきます。本件につきましては薬事 分科会長に報告の上、必要な措置を対応させていただきます。具体的には指定薬物として 厚生労働省令で指定する手続を進めていくということです。決議内容については次回の薬 事分科会が10月3日に予定されていますが、そちらで報告させていただく予定です。具 体的に答申のために必要な手続の後、パブリックコメント、諸外国に新たな規制を追加す るということのWTO通報などの事務的な措置を行い、省令の公布は、その手続に2、3 か月かかりますので、年末近くになるかと思いますが、また御連絡を差し上げたいと思い ます。  事務局の御説明が不十分で申し訳ございませんが、これらの物質は蓋然性ということ で、縛っている内容、規制する内容は、御存じのとおり所持、使用について罰則するもの ではありません。「麻薬」になると所持、使用についても罰則があるということで段階を 踏んだ規制ということです。  あと毒性の件ですが、実際にこういうような薬物を新たに試していて、急性中毒で担ぎ 込まれる事例も結構報告されていたところです。毒性があるから乱用されにくいというこ とは確かにあるのかと思いますが、むしろ毒性があるものであれば「指定薬物」と、薬理 作用があるのだということで取締りの対象としていけたらと、事務局としては考えている ところです。  最後に補足ですが、正規用途についてはパブリックコメントの結果などを踏まえ、可能 な限り適正に使用されるように、具体的に申し上げますと例えば3番のAminoindanです が、これは化学物質の原料として用いられているという情報もあります。昨年指定した物 質の中で亜硝酸エステル系の物質、6物質ですが、これが他の物質を合成するための原料 として使われていて、そのような正規用途について規制する目的のものではありませんの で、そちらについては正規に使用していただくことになっています。このAminoindanな どについても、そのような対応を取らせていただきたいと考えています。 ○□□委員 正規用途について一点だけ質問させていただきたいのですが、例えばDOI という化合物は、セロトニンレセプターの研究をする際に研究者がかなり用いている化合 物だと思います。例えばDOIのI-125放射性ラベル体などは、そのような形で試薬と して売られている化合物ですので、大学以外の研究機関がそういう物を用いている場合は どうすればいいかということも、一応、考慮していただければと考えています。 ○事務局 参考資料No.4に正規用途(案)というのがあります。これは不完全なもので申し 訳ないのですが、1.に「教育又は学術研究のために用いる場合」とあり、公的な機関で あれば試験研究として用いることは差し支えないというか、正規用途で規制の対象外とな っているところです。いま□□先生から御指摘のあった他の研究機関、民間の研究機関な どについては、支障が生じないように正規用途として対応させていただきたいと考えてい ます。研究と言うと、自己投与することも研究だと、乱用の研究だと言う人も実はいて、 そこの文言などについては専門家の先生と御相談させていただきながら、きっちり対応し たいと考えています。 ○□□委員 よろしいですか。ほかにございますか。では報告事項をお願いします。 ○事務局 資料No.4を御覧ください。これは先生方に御審議いただいた31物質を指定さ せていただいた成果というか、その後、実際にどのような違反事例があったかということ です。1枚目ですが、覚醒剤やいろいろな薬物を売っているイラン人が結構日本にいます が、2C-Iという指定薬物を持っていたので逮捕されたというものです。覚醒剤なども 同時に持っていました。2枚目と3枚目ですが、これは東京都がアダルトショップといい ますか、そういう店でサルビノリンAという物質を検出し、物を見たらサルビアの粉末で、 植物体の粉末であったということで逮捕したという記事です。実際、この指定薬物制度が できて、先生方にこの薬物を指定していただく前までは、かなりそういう怪しいショップ などで堂々とこのような物質が売られていたのですが、お陰様でこの指定薬物の制度が開 始され、そのような店の店頭で売られることは非常に少なくなったというか、ほとんどな くなったということです。これは地下に潜ったと言われるとそうなのかもしれませんが、 実際、一般の人が手に取る可能性が減ったということ、それだけ違法な薬物にアクセスす る可能性が減っているということで、それは非常に大きなことであると思っています。 ○□□委員 何か御質問、御発言はございますか。よろしいですか。それでは報告いただ いた事項については御確認いただいたこととします。本日の議題は以上です。事務局から 連絡事項がありますか。 ○事務局 次回の指定薬物部会の開催は、いまのところ未定です。また新たな物質などが 見つかった場合などに開催させていただきたいと思います。そのときには追って日程調整 をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○□□委員 今日は熱心な御審議をいただきまして、ありがとうございました。以上をも ちまして、平成19年度第1回の薬事・食品衛生審議会指定薬物部会を閉会とさせていた だきます。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐 江原(内線2779)