07/09/10 第17回がん検診に関する検討会議事録 第17回がん検診に関する検討会 議事録 第17回がん検診に関する検討会議事次第               日時:平成19年9月10日(月)9:56〜11:50               場所:全国都市会館 第1会議室               紹介先:老健局老人保健課保健指導係(内線3946) 1 開 会 2 議 題  (1)肺がん検診の現状等について  (2)肺がん検診に関する事業評価、精度管理の在り方について  (3)その他 3 閉 会 ○古元課長補佐 先生方、おはようございます。定刻より若干早く、5分前でございますが、先 生方皆さんおそろいいただきましたので、これより第17回がん検診に関する検討会を開催させて いただきます。  まず初めに、安達がん対策担当審議官からごあいさつ申し上げます。 ○安達大臣官房審議官 おはようございます。本日は、お忙しいところをお集まりいただきまし てまことにありがとうございます。私、この8月1日に新たにがん対策担当の審議官というポス トが厚生労働省にできまして、それを拝命いたしました安達と申します。併せまして国立がんセ ンターの運営局長も務めさせていただいております。  先生方には、この検討会の委員を初め、さまざまな場面で保健医療の推進・向上にいろいろと 御尽力、御協力いただいておりますことに、この場をかりて御礼申し上げます。  私事でございますが、このがん検診に係るのは15年ぶりでございますが、この間、平成10年に はがん検診のいわゆる一般財源化等が行われたわけでございますし、また昨年はがん対策基本法 が成立し、がん対策基本計画も先般策定されたということで、いよいよ受診率の向上に向かって アクセルを踏んでいかなければいけない状況になっております。厚生労働省におきましても、こ れまで一般財源化とともに、老人保健課長の通知という形で取り組んでまいりましたこのがん検 診につきまして、来年度からは、健康増進法の中できちんと位置づけて取り組むということにし ております。  先生方には、この老人保健課の課長通知のときから、個々のがん検診につきまして一つひとつ 御評価、また精度管理の在り方について御検討いただき、現在のがん検診の体制がつつがなく進 む基礎をつくっていただいているわけでございますが、肺がん検診についても、今年中に一応の 取りまとめをしていただけるとうかがっております。現在行っておりますがん検診につきまして、 来年度以降も引き続きここでの検討結果を踏まえて着実に進めていきたい、また、より一層の受 診率の向上に努めていきたいと考えておりますので、是非、引き続きよろしく御指導、御鞭撻を いただきたいと思います。  どうぞよろしくお願いいたします。 ○古元課長補佐 今回は、前回に引き続きまして、肺がん検診について御検討していただきたく 予定としております。  まず、委員の出欠につきまして御報告させていただきます。  本日は、森山委員より、都合により御欠席との御連絡をちょうだいいたしております。  また、本日は、中山大阪府成人病センター調査部疫学課長に参考人としてお越しいただいてお ります。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、垣添座長に本日の進行をどうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添座長 皆さんおはようございます。大変お忙しい中を早朝から全国からお集まりいただき ましてありがとうございます。また、中山参考人には、重ねまして、御出席いただきましてあり がとうございます。  それでは、これから肺がん検診のことを更に続けて検討してまいりたいと思います。よろしく お願い申し上げます。  では、事務局から、まず、資料の確認をお願いいたします。 ○古元課長補佐 お手元の資料につきまして御確認させていただきます。  まず、がん検診に関する検討会座席図がございまして、続きまして、議事次第が1枚ございま す。委員名簿が1枚ございまして、その次、「資料一覧」というのがございます。そこから、資 料1、2、3、4、5と、本日は5種類の資料を机上配付させていただいております。それに加 えまして、前回検討会の議事録及び、本日中山参考人より御提出いただきました参考資料といた しまして、「らせんCTによる肺がん検診の肺がん死亡減少効果検討のための個人単位ランダム 化比較試験研究計画書」、こちらは参考資料ということで、委員限りではございますが机上配付 させていただいておりますので、御参照いただければと思います。  資料等に不足、落丁等がございましたら、後ほどでも結構でございますので、事務局まで御連 絡いただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添座長 それでは、議事に移らせていただきます。  まず最初に、議題の1「肺がん検診の現状等について」ということで、西井委員より「岡山県 における肺がん検診の現状」について御報告をお願いいたします。 ○西井委員 おはようございます。岡山県健康づくり財団付属病院の西井です。  肺がん検診を20年以上やってまいりまして、岡山県は全国でもトップクラスの受診率を誇る先 進県でしたが、いろいろと問題点が出てきておりまして、そのあたりをお話したいと思います。 最近、検診受診率が非常に下がってまいりました。カバー率も落ちてきて困っている現状です。 なぜこのようなことが起こっているのかその問題点と、どうしたらいいかということも含めて御 報告させていただきます。  これは、先ほども審議官の方からお話がありましたがん対策基本法で、がんの死亡率を減少さ せるためには、治療法の改善ももちろん必要ですが、やはりがんの早期発見が非常に重要であろ うということは、どなたでもわかると思います。受診率50%という高い数字が目標として挙げら れておりますが、我々もがん対策基本法に基づく岡山県の対策を今考えております。  これは、岡山県のこの5年ほどの間の検診の受診者数を示しております。岡山県の検診の大体 3分の2は当財団で行っておりますので、我々のところが減少しているということは、県全体の 受診者数が減っているということが言えると思います。年齢別に見ますと、特に若い世代、40歳 から64歳までの世代の受診者の落ち込みが大きいということが憂慮されている点です。  それを抜粋して表にしてみますと、平成16年から17年にかけても、それからその後の18年につ いても、やはり65歳以上の方の減少率は少ないのですが、40歳から64歳までの、いわゆる働き盛 りというか社会の基盤をなしているような方たちの検診受診率が非常に落ちてきているのが明ら かです。  国の施策、県の施策、我々財団で行ってきたいろいろなことと検診の受診数、それから肺がん 発見数とかを示しておりますが、老人保健法で肺がんが取り上げられた昭和62年に一気に増えま して、その後また大きく落ち込み、いろいろなイベントがあるたびに落ち込んでいます。平成10 年、一般財源化が大きな影響を及ぼしまして、また受診率が落ちました。それから、その後も 徐々に減っておったのですが、平成17年、結核予防法が大改正され、先ほどありましたように、 64歳までは結核検診の対象でない、65歳以上が結核検診の対象だということが法律にうたわれた ため、あそこで一気に若い方の受診が減ってしまいました。平成18年には、ついに結核予防法が 廃止されまして、また一段と受診者数が落ちたという結果になっております。  もう一つ、資料の方にも詳しく書いておりますが、最近、肺がん検診だけでなく、胃がん、大 腸がんなど5がんの検診をすべて同時にやるという総合検診化がはやっています。建前としては、 住民の利便性を向上させるためというのが導入理由です。  ところが、総合検診化に移行した市町村の受診率の減少率は、移行していない、今までのやり 方をやっているところに比べてはるかにひどくなってきています。岡山県の全市町村の減少率が 8.3%だったんですが、これを見ていただけばわかるように、総合検診化に移行した市町村の減少 率は非常に大きいものとなっております。だから、決して総合検診化が住民の利便性にかなって いるとは思えないというのが私の感想です。  検診は非常に暗いイメージですが、ここに示しておりますように、岡山県に瀬戸内市という、 やや東の方にある市ですが、そこで今までの政策を転換して、市町村合併に伴って大きな自治体 になったのを契機に、小さな町や村ではできなかったような、もっと検診に対する前向きな取り 組みをやろうという動きが出ています。  具体的には、こういうリーフレットですが、簡単な乳がんと子宮がんのパンフレットをつくり、 平成18年、19年度は住民に配布しました。これだけなんですけれども、それで非常に受診率が伸 びました。  マンモグラフィは年々増えてきておりますので、もちろん自然増もあると思いますが、それ以 上に受診率が高くなっています。子宮頚がん検診に関しては、肺がん検診と同じように毎年減っ ていたのが、こういうふうな単年のイベント・啓蒙活動を行っただけで、減少が増加に転じたと いうような結果が出ております。  肺がんに関しても、自治体の考え方一つで、あまり予算をかけなくても、ちょっとしたキャン ペーンを行えばまた増えるのではないかと期待を持っています。  今までの話をまとめてみますと、一番目には検診受診者が非常に減って、昭和52年に比べれば 半分以下になっています。  結核予防法の改正、廃止の影響が非常に大きいと考えています。特に40歳から64歳、結核検診 の対象から外れた年代は受診率が減少したことに影響しています。65歳以上で問題なのは、今日 は述べておりませんが、精検受診率が低下してきていることです。これは結核予防法では、結核 の疑いの場合、実際には肺がんの疑いもかなり含まれていましたが、公費で精密検査が行われて おりまして精検受診率が非常に高かったのです。ところが健康保険化されて自己負担が伴うよう になったために、非常に精検受診率が低下しております。精検指定医療機関についても、結核予 防法では、市町村と精検指定医療機関が契約を結んで行うという制度であったんですが、現在は 健康保険上の精密検査になっておりますので医療機関が自由化され、受診の把握が難しくなって おります。  もう一つ問題なのは、今回のお話とは違いますが、岡山県での計算では、結核予防法の公費で 行った精密検査に比べて、健康保険化されたために医療費がかなり増えていることです。一般の 医療機関で精密検査ということになると、結核予防法では項目外であったCTまで全例に撮らざ るを得ないと思います。今後、検診が存続していくためには、検討すべき問題ではないでしょう か。  それから、受診機会の減少については、市町村の予算不足、人手不足のため、検診がほとんど 検診事業者へ丸投げされている問題です。そのため会場数や日数が非常に減ってしまい、それで 受診者が減少する。減少したから更に会場数を減らす。こういう悪循環になっているのです。  これには市町村合併の影響が大きいと言われています。瀬戸内市のように前向きにやっている ところもありますが、ほとんどの市町村では、合併されますと、個人負担金は合併市町村の最も 高い料金に合わせて、サービスは最も低い市町村に合わせるというのが現状になっています。非 常に嘆かわしいのですが、これが現実です。  個別検診化を導入している自治体もかなりありますが、問題点がないわけではありません。例 えば、既に実施しているO市の場合は合併により大きな市になりました。幾つもの町が合併して入 ってきまして大きくなったのですが、そのために、都市中心部では医療機関がたくさんあるので どこででも個別に検診を受けられるのですが、新しく町村部から入ってきた地区では、医療機関 が少ないために、近くで検診を受けられなくなった事例もあります。町村であったころは個別検 診化しておりませんでしたので、そういうところは検診車が近くまでやってきていたので、便利 だったと言われています。合併してからは、検診を受ける医療機関を自分で見つけて検診に行か なければいけないと困っておられました。また受診率を落とす原因になるのではないかと心配し ています。  入札導入による検診事業者のレベル低下というのも、問題ではないかと考えます。  何とかならないかと少し対策を考えてきました。やはり検診対象者というのが、大分県の方か らの発表にもあるようですけれども、把握が非常に難しい。対象者を把握できなければ検診の勧 奨もできませんので、そこをもっと一生懸命やるべきだろう。自治体の首長の考え方によって、 検診への予算措置や担当者の育成に差が出てきます。先ほどの瀬戸内市の場合などは、トップの 考え方が検診に対して非常に前向きなために、その部門に予算が配分されたいい事例ですが、こ ういうことは少ないのが現状です。何とかトップの考え方を変えていただきたいと思っています。  それから、先ほどお話しした総合検診化をこのまま推し進めていけば、受診率がどんどん下が っていくのではないかと懸念しております。総合検診化すると大きなグループで検診に行かなけ ればいけません。大きな会場が必要になるので、各地区で中心になる健康増進センターみたいな ところでしかできなくなります。前のように、近くの公民館まで来て検診をしてくれたというよ うなことがなくなっています。自営業で忙しい方やお年寄りや体の不自由な方は受診ができにく くなったというご意見をいただきました。総合検診化と同時に、住民の利便性を考えて近くで受 けられる検診ももう一回復活させてはどうかと思います。  岡山県では、夜間検診といって、昼間仕事をされている方たちや農家の方たちのために夜間に 検診を行っておりました。それも現在は廃止されておりますけれども、もう一度そういうような ことの復活を考えたらどうかと思います。検診日数も増加させて細かいものをやれば、何とかも う少し受診率をアップできるのではないか。国の掲げている50%を目指すためには、こういうこ とをやらなければ、何もしなければ絶対達成することはできないのではないかと思います。  3番目として、御存じのように、入札制度が今、市町村のあらゆるところで行われておりまし て、これは今の入札のやり方ではやむを得ないことだと思いますが、入札したために検診事業者 のレベルが非常に落ちてきている。これは岡山県だけなのかもわかりません、他県はわかりませ んが、二重読影や比較読影をしていないような検診機関があります。それが非常に安い値段で落 札していく。我々のように良心的に正しい検診をやろうと思えば、やはり複数の医師が読影しな いとだめなのですけれども、1人の医師しか登録されていないような施設が検診を落札していく というようなことになっています。しかも読影医が呼吸器の専門医でない。それをとめる方法は ないのかもわかりませんけれども、はっきり言えば、「安かろう、悪かろう検診」になっている、 「悪貨が良貨を駆逐」して誠実にやる検診機関はすべて淘汰される、逆の淘汰がされてしまうと いうようなことになってしまうと思います。  だから、何も新しい法律をつくってどうこうしろというのではなくて、厚生省時代につくられ ております「肺がん検診マニュアル」、これが、やはり肺がん検診の我々のバイブルだと思いま すけれども、そこに明記してある発見率や精検率の報告を義務づけるとか、追跡調査をしなさい とか、4番に書いてありますが、受診率、検診カバー率を市町村は出しなさい、発見率を出しな さい、精検完了率の公表をしなさい、そういうことをやれば、それができない検診事業者とかそ れをできないような検診事業者に依頼している市町村は非常に強い非難を受けると思いますので、 検診の現場から退場してくれるのではないかと考えております。  読影医師についても、乳がん検診のようにできれば資格化した方がいいと思うのですけれども、 せめて登録制にして、どこどこの検診機関はどういう先生が読影しているというのをやはり公開 すべきだと思います。受ける住民側も、どういう先生が読んでいるのかを知らずに受けるという のはあまりではないかと考えております。その辺を一つ提案として挙げたいと思います。  5番目は、非常に難しい問題なのですが、現在こういう入札制度が行われているために、検診 機関が毎年変わるということがどうしてもあり得ます。毎年の入札が行われていますので。そう なった場合に、前年の検診成績とかフィルムがないものですから、比較読影ができないと非常に 困っています。公的機関が住民の情報管理をすることができれば、どこの検診機関が落札しても、 去年のデータも知ることができますし、受けられる住民の方が非常に利益を得られるのではない かと思います。今後も入札制度がなくなることはないと思いますので、考慮してはどうかと考え ております。かかるお金の問題もありますし人員の問題もありますが、何とか検診受診率を50%、 肺がん発見率ももっと高めようと思ってこういうことを考えてまいりました。  どうもありがとうございました。 ○垣添座長 西井先生、どうもありがとうございました。  肺がん検診の岡山県における状況、かなり暗い話が多かったかと思いますが、今の御発表に関 して御質問あるいは御発言がありましたらお受けしたいと思います。  私からですが、5つのがんを一括して検診をやるというのは、私は今まで、個別にやると受診 者に大変不便ではないかと思っていましたが、それがかえって受診者が減るというのは、会場の 問題だけですか。 ○西井委員 例えば、意識として自分は結核検診とか肺がん検診だけを受けたいと思う方たちも おられるのは事実なので、そういう方たちは、総合検診化すると、今の制度上、選択できないた め受けにくくなっていると思います。総合検診化をやってもいいと思うのですが、それ以外に、 やはりそれを補う単独の検診も、小さな施設とかを利用して追加で行えば、住民のニーズに応え られるのではないでしょうか。例えば、胃がんは○○先生に診てもらっているので、私は肺の方 が心配だから肺がん検診だけ受けたいんですという方もおられます。総合検診化すると、それだ けを受けるということが制度上難しくなりますので、住民の方たちの御意見がありましたのでご 紹介しました。 ○垣添座長 どうぞ、内田委員。 ○内田委員 私は川崎市で開業していて、がん検診も一部受けているんですけれども、川崎の場 合は受診券を住民に送りますが、そのときに、各専門機関で、これはここで、これはここでとい う選択ができるんですね。例えば、婦人科検診は産婦人科に当然行ってもらいますし、胃がん検 診とか肺がん検診なんかだとほかの内科の先生のところで受けるとか、そういうシステムができ ているんです。ですから、総合的に受けようと思えば受けることもできるし、医療機関ごとに検 診の項目が変わってくるということが可能なんですが、そういうシステムは取れないんでしょう か。 ○西井委員 岡山県の場合も、岡山市など都市部では、個別にどこの医療機関で受けてもいい制 度になっていますが、郡部に行くと、そこまで医療機関がないものですから、結局は、検診車を 何台か持っていって、ある会場でまとめてそこで受けるシステムが主流になっています。もちろ ん開業医の先生方で検診を受けることはできるのですが、その先生たちが、自分たちで機材とか がまだないので、がん検診は我々のところでは今のところやっていませんという感じで、市町村 が中心になって会場を設定してやっていることが多いのです。岡山市の場合は、先生が今おっし ゃられたように、専門の医療機関がたくさんありますので、そういうところに個別に行って受け ることが可能なシステムになっています。 ○垣添座長 今のお話ですと、どちらも取れるという形になっていないと下がるということなん でしょうかね。  費用の面はどうなんでしょうか。総合検診になると。 ○西井委員 自己負担分が、例えば肺がんだけだったら1,500円で済むのが、総合検診化すると 7,000円ぐらい払って帰らなければいけない。そういうようなことになってくるとちょっと二の足 を踏むというか、その辺は難しい問題ですけれども、市町村側とすれば、まとまってやった方が 費用は少なくて済むとは思いますけれども、受けられる住民の側からは、1回に出すお金が増え るために、ちょっとそれがハードルになっているところはあると思います。 ○垣添座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、内田委員。 ○内田委員 やはり今のお話を聞きますと、財源の問題が非常に大きいという感じがします。一 般財源化されて市町村の負担ということになりますと、今もお話が出ていましたし、ここにも書 いてありますけれども、むしろ受診率を抑制しようという動きが出てくる。それから、精度管理 についても非常に問題が出てくるという話ですから、ここの仕組みを何か工夫しないと、がん検 診は今、基本法をつくって基本計画も立てましたが、ここの仕組みが何とかならないと受診率の 向上には全くつながらないし、精度管理という点でも非常に問題が大きいということをずっと感 じているんですが、その点に関しまして、審議官から何か御意見があったら是非お伺いさせてい ただきたい。 ○安達大臣官房審議官 費用面の問題というのが、現場においてはおっしゃるように逆の効果を 与えているところがあるのかもわからないですが、一方で、一般財源化の話は平成10年に一応の 考え方が整理され、一般財源化した後、かなり受診率が下がるのではないかという予想もあった わけですが、結果的にはほとんど下がらないまま、これは各現場、現場での皆さんの御努力の結 果だと思うんですが、そういう状況にあった。  更に、50%という目標を考えた場合、例えば、何らかの補助金で何とかできるのであれば昔で きていたはずなんです。50%という非常に高い目標を設定した時点で、お金の問題ももちろん一 つあるかとは思うんですが、やはりこのがん検診についての考え方というものを、根っこのとこ ろを何とかしないことには、とても50%は達成できないのではないかと思っております。  次に、補助金方式を復活させることに関しては非常に厳しいと考えています。平成10年に一度 一般財源化したものをもう一度抱き起こすためには、何らかの、よほどわかりやすい、かつ国民 が納得するような説明をしないことには、従前のような補助金方式は困難と思います。  一方で、今回基本法ができ、がん対策の市町村ごとでのモデル事業的な予算はできました。そ ういったものも活用しながら、個々の都道府県あるいは自治体ごとにさまざまな取り組みをして、 現にこれこれ、こういうことをやれば、こういうふうに成果が上がるんだという具体のものを持 っていかないことには、今の段階で、お金がないから無理なんですよというのでは、多分お金は ついてこないだろうと思います。実績なりわかりやすい実例を積み上げていく必要があると思っ ております。 ○垣添座長 それは、例えばモデル事業として、ある地域で、例えば乳がんなら乳がんに特化し てかなり成果を上げた、受診率も非常に上げたというようなことに対して、国から地方へ財源が 移ったということはありますけれども、それに対して何か補助金をつけるとかそういうことは。 ○安達大臣官房審議官 今回都道府県に対するモデル事業の予算がつきまして、今年度はそれぞ れの都道府県の基本計画ができておりませんので、最大2分の1の補助率ですが、来年度以降は 10分の10の補助もできるような予算がついておりますので、そういったものを活用しつつ、少し ずつ実例を積み上げていくのかなと思っております。 ○垣添座長 10年、しかも特に5年である程度のめどをつけないといけないというタイムスケジ ュールがありますから、余りゆったりとはしておれないですよね。  その、翌年度以降10分の10がつくという予算の総額は、要求レベルでどのくらいですか。 ○安達大臣官房審議官 来年度の要求ベースで2分の1、10分の10の補助率を合わせて、13億 4,000万円を要求しております。 ○垣添座長 わかりました。ありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。どうぞ、斎藤委員、それから佐川委員。 ○斎藤委員 2つお聞きしたいんですが、一つは、受診率向上対策の中で対象者の把握が非常に 重要であるということをおっしゃっていましたが、具体的にどういう問題点をお感じか教えてい ただきたいのと、もう一つは、今いろいろ複雑な状況があって、特にメタボリックシンドローム の特定健診導入に対して現場が準備していると思うんですが、それががん検診をやる環境に影響 していないかどうか、そういったことを教えてください。 ○西井委員 対象者の把握は非常に難しいです。今日、大分県の方からもデータが出ると思いま すが、以前は市町村担当の保健師とか事務の方たちが、自分たちの知識をフル動員して、ほかの 検診を受けていない人はほとんど対象者に組み入れていくというようなことをやられていました。 しかし、そういうマンパワーがもうなくなっていますので、過去に受けたことのある人たちは対 象者だろうというようなことで選んでいるところも出ています。それが一番楽な方法です。コン ピュータの中に入っている名前や受診地とか住所まで全部わかりますので、その方たちに受診券 を配れば一番楽だ。そうなると新しい人たちは入ってこなくなりますので非常に困るということ があるのです。市町村の中も、住民課とか、そういう保健対策をやっているところとは別のとこ ろで、個人情報の問題があって、なかなかそういう情報の共有が難しくなってきているというこ とがありまして、対象者の把握が、言うのはやすく非常に難しいというのが現状です。  極端な例では、市の広報に検診があります、対象者は健保本人ではなく、こういうような人た ちは対象ですよというようなことしか出さずに、来た人だけを受けさせるとか、そういう方法を 取っているところもあるようです。この方法が一番お金がかからず、自分たちで対象者を把握す る必要がないのです。そういうことをやっていると本当に受診率がどんどん下がってしまうと思 います。ちょっと手間はかかっても、細かく拾い上げていくのが一番ではないかと思います。  岡山県の場合は、愛育委員会という組織がありまして、そういう人たちが掘り起こすように、 あそこの家にはこんな人たちがおって、受けなければいけない人たちがいるんだというようなこ とを以前はやっていたんですけれども、今は個人情報の問題がありますので、愛育委員の方がそ ういうことに手助けすることができなくなっています。  それと、特定健診の問題は、岡山県でも来年度から実施されますが、検診サイドから言えば、 できれば別日程でやってもらいたいというのが本音のところです。もし一緒にということになる と余計に、今の総合検診化のもっと進んだような状態になってきまして、指導とかそういうこと を受けたくないというような人たちは、がん検診も受けないということになってしまうので、で きればメタボリックとがん検診はまた別ですよという、2つの大きな柱があるんだという形で走 らせてもらえればと思います。対象者も同じではありませんから。効率の面から言うと、先生が おっしゃったように、両方同時にやってしまおうというのが市町村側の希望ですが、それは決し て受診率向上には結びつかないのではないか。全く別の考え方のものを一緒にするというところ が、がん検診にはちょっとなじまないのではないかと思っています。平成20年度から始まってみ て、また具体的な検討をやってみたいと思っております。 ○垣添座長 ありがとうございました。  佐川委員どうぞ。 ○佐川委員 コメントみたいな形で2つほどなんですが、1つは、先ほど審議官がおっしゃった 一般財源化のときの話なんですけれども、私も20年ぐらい検診をやってきているわけですが、や はり一般財源化のときにがっと落ちるのではないかと非常に危惧したんです。それは事実で、危 惧した割には余り落ちなかった、それも事実なんです。ほっと一息というか少し安心していたん ですが、実は、やはりその間に着々とボディブローのように市町村に効いてきていて、それが平 成の大合併で一気に出た。要するにシステムを変えなければならないときにがっと低い方にそろ ったという形で、あの段階で全国から、要するに良心的な検診機関の悲鳴が上がったという形に なったんです。ですから、一般財源化が効いていないということは全然なくて、やはりあれが一 番のものだろうなと。  実際、受診率の話で言っても、とにかく受診率を上げようとすればするほど赤字になる、こう いう仕組みというか、この枠組み自体を何とかしなければならんというか、そういうものを放置 していること自体が非常にまずいことだろうとは思います。それが1つ目のコメントです。  2つ目は、西井委員がおっしゃった読影医の登録というか公開、そういった流れというのは非 常にいいことなのかなと。こういう時代ですので、基本的に、とにかく規制というよりは情報公 開。情報公開の中でいろいろ淘汰していくという形が望ましい。ただ、適切な情報を公開しない と淘汰はされない。むしろ、さっき西井委員がおっしゃった逆の淘汰が働くという形になります ので、そういった情報を公開する中で質を担保するというか差別化するというようなことがあっ ても、これはお金もかかりませんのですぐにでもできるのではないかという気がします。  以上です。 ○垣添座長 ありがとうございました。  どうぞ、坪野委員。 ○坪野委員 この肺がんに限らず市町村による検診の対象者の定義が、来年度からがん検診が、 健康増進法に基づく省令改正で市町村の努力義務になることによって、どういうふうに整理され るのかということを伺います。というのは、我々は検診の対象者を無意識のうちに地域と職域と 分けて、職域の人を除いて残りの地域の人が住民検診の対象者だと思っています。ただ、これを 法的に考えてみると、今、事業所にがん検診の実施は義務づけられていないわけですよね。個人 も努力義務にすぎなくて、市町村は今まで通知だけでやっていたわけですけれども、今度かつて の老健事業のような形で、努力義務として一応法律上の責務が生じることになります。そのとき の検診の対象者というのは、個人とか職域で受けている人たちをオートマチックに除外できるか ということを疑問に思っています。つまり市町村が行う検診の法的な責務の範囲を考える限り、 それは職域であろうが個人で受けている人であろうが全部が対象者に入って、つまり対象年代の 住民全体がその検診の対象者になるべきなのではないかと思っているものですから、そこについ てどう整理されるのか聞かせたいただきたいと思います。 ○鈴木老人保健課長 現在は、基本的にバスケットクローズというか、市町村の場合には、例え ば医療や職域で実施した場合や人間ドックで受診した場合を除く人たちが対象者になっています。 ○坪野委員 それは、どこかに文言上にそういう規定があるんですか。 ○鈴木老人保健課長 来年度以降についても、私の理解では、それは変わらないと思うんです。 それが、例えば市町村に住んでいる人全員になったりということはなくて、やはりほかの機会で 受診が可能な人を除いたそれ以外の人。ただ、「それ以外の人」というのが、おっしゃったよう に、職域で義務化になっているわけではないので、職域だからといって除外されるわけでないと いうのは確かだと思います。だから、対象者を厳密に限定するのは難しいところだと思います。 ○安達大臣官房審議官 先ほど佐川委員からお話があった点ですが、そもそも一般財源化という のがボディブローで効いているんだというのは、そのとおりだと思います。  ただ、検診をやればやるほど損をするということが受診率を下げているのではないかというお 話、まさにそれが、市町村長がそういう認識でいるから、受診率が充分上がらないのではないか と思います。。つまり受診率が上がるということは、本来ならその市町村にとって非常にいいこ となはずなんです。それなのに受診率が上がって金が出ていく、だから困ったことだという認識 に首長さんたちがなっているところが、そもそもの問題なのではないかと思っています。 ○垣添座長 それは認識の問題ではないのではないですか。現実に受診率を上げようとして努力 すればするほど赤字になるというのは、やはり市町村にとっては大きな重荷でしょう。 ○安達大臣官房審議官 それを重荷と考えるかどうかだと思うんですね。市町村も一般財源化と はいえ、一般財源化ということは、別にただでやれという話ではなくて、基本的にきちんと交付 税措置も含めて市町村の予算の中で何にどういうふうに金を使っていくかという優先順位の問題 ですので、もし受診率向上が市町村にとって非常に有益だということであれば、自分たちの予算 の中から、交付税措置された予算の中から優先的に取り組んでいくはずなので、そういう仕組み でやっていきましょうというのが、一般財源化したときの基本的な考え方だったと思うんです。 ○垣添座長 わかりました。  では、時間の関係で次の議題に移らせていただきます。  前回の検討会で十分に議論することができなかった「肺がんCT検診の有効性評価研究につい て」、中山参考人から資料に沿って御説明をお願いいたします。 ○中山参考人 よろしくお願いします。  それでは、お手元の資料2をごらんくださいませ。前回お話をしましたようなCT検診の有効 性評価研究に関して、もう少し具体的なことをまとめてまいりました。  今後、もしCT検診の有効性評価研究をやるとすれば、2つのアイデアが具体的には挙げられ るかと思います。一つは「後ろ向き研究」、もう一つは「前向き研究」ということでございます。  後ろ向き研究の場合に、実施するとすればコホート研究、つまりCT検診を受けていない対照 群を設けた後ろ向き研究が考えられます。既に私が主任研究者をやっておりますジャパン・ラン グ・スクリーニング・スタディというのがありますけれども、この研究は、非常に初期に開始さ れたCT検診の受診者を対象としておりますもので、1回しか検診を受診していない方をかなり 多く含んでいることから、繰り返し検診を評価できないという問題がございました。もし、今後 コホート研究を新たに行うとすれば、例えば、今既に全国で行われているCT検診の受診者を新 たに登録する、もしくは既に行われているジャパン・ラング・スクリーニング・スタディに追加 するというようなことが考えられると思います。  この研究の長所といいますのは、もう既に検診自体は行われていますので、結果が得られるま での期間が非常に短いということと予算がほとんど要らないということでございます。  しかし、短所というのは非常にたくさんございまして、後ろ向き研究という形をとりますと、 こういう研究自体に参加しているという同意を本人から得ておりませんので、「疫学研究に関す る倫理指針」に示されているような形式を踏めば実際に研究はできますが、追跡調査が非常に難 しいということがございます。特に、個人の同意がなくても追跡調査は可能であるということに 関しては、都道府県、市町村が必ずしもすべて理解しているわけではございません。各市町村の 担当者にすべてもう一度説明を研究者がしなければいけないという非常に困った環境になってお ります。また、死亡小票の閲覧に関しましても、統計法の改正が今年の春にございまして、人口 動態統計の目的外使用が非常に困難な状況になってしまいました。したがって、本研究を後ろ向 きで実施することに関しては、現実的には非常に障壁が多いと考えられます。  死因とか死亡日を特定するのであればがん登録を使えばいいではないかというお話もあると思 いますけれども、コホート研究の場合は、特に全死因死亡について確認しなければならないと考 えられます。例えば肺がんを対象とするなら肺がん死亡だけを評価指標とする研究も行われてい ますが、前立腺がんのPSAの評価をしたイタリアのフローレンスの研究等に関しましては、全 死因死亡を把握すると、全死因死亡でも検診を受けた方が低かった。すなわち検診を受ける者と 受けない者を比較した場合には、検診を受けた者には、その病気のみならず、すべての病気で死 亡しにくい、そういう偏りが生じることが知られております。がん登録はがんの死亡しかわかり ませんから、それ以外の心臓あるいは感染症、事故等に関する死因、死亡日すべてを把握する手 だてとしては、やはり人口動態統計の使用、それから市町村の窓口での住民票異動の確認という 2つのことが絶対に必要ですので、もしこの研究を採用されるということであれば、国の全面的 なバックアップが必要と言わざるを得ません。  次をめくってください。次が前向き研究でございますが、前向きのランダム化比較試験、無作 為化比較試験というものに関しましては、基本的な長所として、研究の質が高いということ、そ れから得られた結果が非常に理解しやすいということでございます。  一方、短所としては、予算と時間がかかるということでございます。既にCT検診の評価に関 するランダム化比較試験の研究計画としましては、平成11年度に鈴木隆一郎を主任研究者とした 研究計画立案班がございます。  お手元にございます付票2「【変法2】試験期間を短縮したデザイン」、これは幾つかのラン ダム化比較試験のデザインをしたのですが、当時立案した、幾つかの研究計画の中で厚生労働省 の老人保健課において一番評価が高かったのがこの研究デザインでございます。幾つかの研究デ ザインがありますけれども、例えばサンプルサイズを小さくした場合、それは50歳から64歳と非 常に限定した年齢階層であり、研究期間は最低で10年で、両群合わせて1万2,700人必要と推定し ています。  この10年というのは非常に長いという意見が当時もございましたので、試験期間を短縮し、50 歳から69歳に対象者を広げ、研究期間として最短で5年というような研究計画をつくりましたけ れども、両群合わせて2万7,000人が必要とされています。  お手元に配りました「【変法2】試験期間を短縮したデザイン」のところを見てくださいます と、費用計算もすべてやっております。サンプルサイズももちろん計算しております。一番最後 のページのところが実際の費用に関するところですが、これは、実際にリクルートするところに 関しましてはCRCに委託することを想定していましたので、当時、実際に見積もりを立ててい ただいて、それをもとにした費用でございます。非常に高い費用がかかりまして、2万7,000人を 24施設でリクルートするというような形を考えますと、このデータセンターの運営費用だけで約 11億円という予算がかかるという推定でございまして、また実際に行われる検診の診療費用等も 含めますと非常に高い費用がかかるというような計算になっております。もちろんこれは、例え ばデータセンターの運営費用が現在はもう少し安くなっているかもしれませんし、診療費を削る というようなこともございますが、実際にやろうとすれば、相当費用がかかるということは事実 でございます。  もとの資料に戻っていただきますと、確かにRCTは質の高い研究ではございますけれども、 やはり費用と時間がかかるということで、欧米でもそれほど積極的に大規模RCTにすぐ行くと いうような状況ではございません。CT検診に関しても、諸外国で大規模なRCTを非常にたく さん行うような動きがありましたけれども、実際のところは、RCTができるかどうかというこ とのフィリジビリティテストとして、mini-RCTを先にやって、その結果を見てから考えようと いうような形で、mini-RCTが幾つか行われています。  私が考えますに、日本の現状、それから諸外国に比べて死亡率が低くてサンプルサイズが非常 に大きくなるというような状況から考えますと、いきなりRCTをやるというのもなかなか難し い問題がございますので、まずはmini-RCTをやって、実際に国内でそういうものが可能である かどうかを検証すればいいかと思っております。  検討課題は以下に示すようなものでございますが、実際にリクルートは可能であるのか。コン プライアンス、実際に割りづけられたとおりに検診の受診に来る人が80%以上を占めるのか。検 診を受診しない対照群がCT検診を受けてしまうコンタミネーションは5%程度以下に押さえら れるのだろうか。要精検率というのは予想された範囲内に押さえられるのだろうか。診断のプロ セス・方法は標準的なものが行えるのだろうか。それから、追跡調査が漏れなくきちんと行える かどうか。こういうことを検証課題に示せばよろしいかと思います。  実際に治療に関するRCTは既に国内でもたくさん行われていますけれども、そういう方たち は、自分の病気に対して情報を集めようとしますので、例えばインターネットや病院のポスター などでリクルートすることが考えられますが、この研究は健常者を対象とする研究ですのでその ようなリクルートは無理だと考えられます。やはりリクルートセンターを設けるということを図 りますので、電話での形ということでできるかどうかということです。実際にアメリカでやって おりますPLCOなどでは電話での募集をやっておりますけれども、実際に電話をかけて登録さ れる割合はわずか1%ぐらいと言われています。アメリカでもそういう状態ですから、日本で一 体どのぐらい電話をかけなければいけないのかということは、検証していかないとだめだと思い ます。  それから、スクリーニングの精度ということですが、米国で行われたmini-RCTでは、対照群 である単純レントゲン検診というのがアメリカ自体で行われていませんけれども、アメリカでの 要精検率は8%ということで、日本の4倍になっています。そういうことで、実際に研究として 行いますと、何でもかんでも見つけてしまおうということで要精検率がウナギ登りになるという ことがございますので、こういうこともコントロールする必要があると思います。  それから、追跡調査ということは、基本的には後ろ向き研究のような住民票や死亡小票を用い ない方法が考えられるわけですけれども、そういった電話や郵便とかを用いた本人への個別連絡 で実際に追跡が可能であろうかということが問題です。例えば10%が追跡不能となった場合には、 研究としては非常に質が悪くなってしまいますので、そういった場合には、やはり住民票などの 調査で補完する必要がありますので、これは、やはり後ろ向き研究と同じように、住民票請求・ 閲覧できる、死亡小票閲覧できるというような枠組みが必要だと思います。  私から提示させていただいた内容はここまでなんですが、やはりどちらの研究をやるにいたし ましても、いろいろ追跡調査等に関しての枠組み、それから国のバックアップということが非常 に重要になってまいりますので、その点についても御議論いただきたいと思います。  以上です。 ○垣添座長 どうもありがとうございました。  いかがでしょうか。  この2,000人規模のmini-RCTは、予算的にはどのくらいのものですか。 ○中山参考人 予算的にはそれほど大きな額はかからない、恐らく1億円ぐらいでできるのでは ないかと思います。 ○垣添座長 どうぞ、金子委員。 ○金子委員 この話は、前回もちょっと話したんですけれども、本当にRCTがこのCT検診に 必要かどうかということがまず非常に問題だと思うんです。そもそもRCTをやらなくてはいけ ないというのは、大体が抗がん剤とか、余り効果がはっきりしないものに対して、本来は二重盲 検といいますか、要するに医者も患者も、どちらの薬を使っていいのかわからないというような 状態でやらなくてはいけないと思うんですが、今までの有効性は確かに証明できていないですけ れども、我々実際に臨床の場からすると、CT検診で見つかってきた肺がんは圧倒的に小さいわ けですから、どう考えてもこれが悪いはずはないと思うわけです。そういうものがあるにもかか わらず、それを受けてはいけない人を設定することは非常に問題があるのではないか。  もう一つは、薬の場合は、飲んでいる患者も、使っている患者も、どっちの薬かわからないわ けですけれども、CT検診の場合は――CT検診に限りませんが、ほかの検診でも、受けている か受けていないかというのは決定的に対象者はわかるわけですね。そうすると、そこでかなりバ イアスがかかってしまうのではないか。  それから、例えばCTが物すごく値段が高かったりして一般の人が受けられないというような 状態ではだめですけれども、今もうこれだけ人間ドックも普及していますから、かなりの人が受 けられる状態になっています。そうすると、「あなたは受けてはいけない」と言っても、先ほど、 中山先生からコンタミネーションのことも出ていましたけれども、逆にリクルートされて、しか もあなたは受けてはいけないと言われたら、かえって心配になって受けてしまう人もいるのでは ないかと思うわけで、その辺で、薬のRCTと同じ考えをそもそもこういう検診の場に持ち込む 必要があるのかどうか非常に疑問を感じております。  これだけコンピュータも非常に発達した時代ですので、しかもいろいろな施設から年齢別のデ ータとか予後とか出てきているわけですね。一方で、全日本中あるいは世界中の肺がんのデータ、 あるいは罹患率のデータとかが出ているわけですから、必ずしもRCTにこだわらないで、もっ ともっと新しい方法が何かないのかということです。これももうちょっと研究していただく必要 があるのではないかと常々話しているわけですけれども、その辺はどうでしょうか。 ○垣添座長 これと、仮にRCTをやったとしても、いろいろコンタミネーションその他の問題 が起きてくるのではないか、あるいはデータのバイアス性とかそういうことが出てくるのではな いかという反対のお立場からだと思います。何か中山参考人。 ○中山参考人 後半の方のコンタミネーションが多いのではないかということに関しては、私の 提案しましたmini-RCTの評価指標の中に入っておりますから、それはそれで検証したらいいと 思います。  それから前半の、臨床的に有効であるに違いない、そのはずだということに関しましては、が ん検診に関する国際的な評価の手法として、先生がおっしゃいますのは専門家の意見ということ であって、データではありませんので、ランクとしては非常に低いものです。それをもって国の 施策を決めることは、非常に問題があると私は考えます。 ○金子委員 ですから、それ自体がおかしいわけで、なぜアメリカがそう言ったから、それを日 本が守らなくてはいけないかということがあるわけです。それは、確かにアメリカのデータがそ ういうふうになっているのはよく知っていますけれども、では、アメリカの言うことが全部正し くて、日本でやっている専門家の意見は間違っているのかということは、問題なのではないかと 思うんです。  やはり、我々が実際、本当に感じている、日常、自覚症状で来る患者さんで、助かる人はほと んどいないわけです。先生もよく御存じだと思いますけれども、ほとんど、9割方の人は、自覚 症状、血痰が出た、呼吸困難が来たということで自覚症状で来た患者さんの9割は、もう5年後 には生きていないわけです。ところが検診で来た方は、胸部の単純写真で見つかった人でも、大 体5割は5年後に生きている、CT検診の場合は8割が生きている。確かに、オーバーダイアグ ノーシスもあるにしても、逆にほっぽっておいたら亡くなる方もあるわけで、CT検診を受けな がら治療を拒否して亡くなる人も実際に何人か見ていますので、やはり肺がんというのは怖い病 気なわけです。ですから早く見つけなくてはいけないわけで、現実に見つけずに亡くなっている 方がある。そして、自覚症状で来た方はほとんど亡くなってしまうということを考えれば、やは り検診は効果があるわけで、その効果があるものを受けるなという群を設定すること自体が、倫 理的に間違っているのではないかと感じているわけです。 ○垣添座長 どうぞ、佐川委員。 ○佐川委員 私はちょっと違う考えなんですけれども、それは置いておいて、恐らくあと数年以 内に2つのランダマイズトライアル、CT検診に関するものの結果が報告されると思います。ヨ ーロッパで1つ、アメリカで1つ。今まで見ている感じだと、必ずしもポジティブには出ない可 能性が結構高い。それは、日本のバックグラウンドというか日本で見つかる肺がんと違うタイプ の肺がんが結構見つかっているんです。要するに、その分布がちょっと違うということは事実な んですけれども、それはそれとして、RCTでネガティブという結果が出るのではないかと私は 想像しているんです。最悪のシナリオなわけですけれども。  それで、ネガティブが出たときにどういうことが起きるのかと言えば、やはりだめですという 結果でしかないわけです。そうなればやめることを勧告せざるを得ない。そのときに唯一、いや そんなことはないんだと言えるとすれば、そのとき日本の研究が始まっている状態であれば、日 本で見つかるものは違うんだから、日本は日本できちんとしたデータを出す。そのときのデータ は、やはりRCTに対抗するんですからRCT以下のものではだめなんですよね。だから、やは りやるんだったら今やるしかないと私は思っています。 ○金子委員 ですから、RCTがいいのはもちろんわかるんですけれども、では、RCTだけな のか。これだけコンピュータが発達した時代ですから、RCTにちょっとぐらい劣るかもしれま せんけれども、膨大な日本じゅうのデータを蓄積したら、むしろRCTよりももっと精度の高い 研究も、数がやはり一番問題ですよね。だから、RCTがどうしたと何千人というデータをやる のではなくて、日本全国のデータをもっときちんと集積して、何万、何十万のデータを持ってい けばRCTに対抗できるのではないかということを提案したいと思っています。 ○垣添座長 斎藤委員。 ○斎藤委員 これは、がん検診全般に共通する問題なので一言コメントしたいんですが、早期発 見できるので有効だろうという非常に楽観的なお考えを述べられました。日本では早期発見でき ればよいという理由で有効性評価をきちんとやらないでやってきた経緯がありますが、それが通 用しないということは、もういくつも例があるわけです。一番最たるものが神経芽細胞腫の検診 で、同じような理由で続けてきたわけですが、これは国際的な討論の場に出て行きますと、日本 の犯した失敗みたいなことでよく例に出てきて恥ずかしい思いをします。  先ほど臨床試験と比べられましたが、やはり臨床と検診とは対象が違いますので、混同しない ことが重要です。検診の有効性をきちんと証明することが不可欠で、楽観的に見切り発車で早期 発見できるからいいだろうということは、もうやめるべきということをあらためて言っておきた いと思います。  今、前立腺がん検診のガイドラインづくりもやっていますが、同じような問題が生じておりま して、この対象が検診の健常者である、それから臨床の患者さんではないというようなことは、 もう一度強調しておきたいと思います。 ○垣添座長 ありがとうございました。  この中山参考人から提案のミニランダマイズスタディというのをやることに関して、何かほか に御意見ありますか。  どうぞ、佐川委員。 ○佐川委員 何であれ、そういう枠組みでやっていかないとだめだろうと思うんですね。とにか く、これはあと一言厚生労働省の方に言いたいんですけれども、今までは何でもやり放題だった わけです。日本の検診というのは、検診すること自体がいいことだという雰囲気がありましたか ら。もちろん、各現場で頑張っている人は本当に頑張っているわけです。頑張らないと検診なん かできませんので。ただ、これがいいかなと思えばそれでやってこれたわけです。でも、今はだ んだん、それではまずい、先ほども議論がありましたけれども、やはり有効性評価をきちんとし て、確立しているものでなければ推奨できないという形で進めているわけです。それは、もう厚 生労働省も恐らくその考えだと思うんです。有効性評価が確立していないものは推奨できないん ですから、基本的に、やるなと言うとちょっと語弊がありますけれども、そういうことなわけで す。  そうすると、今後どういうことが起きてくるかと言えば、新しいものは何もできないんです。 今まではいろいろやったものがありましたからケースコントロールとかができたわけです。でも、 これからはやれないわけですからケースコントロールなんてできないんです。ということは、最 初に導入するときにRCTをやらなければだめなんです。だから、予算がたくさんかかるとか言 っていますけれども、これをしなければ日本では新しい検診はもう何もできないんです。推奨で きないんですから、勝手にやることを推奨しないんですから。だから、そこのハードルをもう、 要するに既にかじは切ってしまったんです。EBMに基づく、有効性評価に基づく検診の進め方 というのをやろうと決めた段階で、新しいものを導入するときにはそういうやり方でしか導入で きない。あとは外国でやっているのをただ見ていて、あそこでいいと言っていたから、ではやろ う、そういうやり方しかできないわけです。それが嫌だったら自分でやるしかないんです。そこ のところはもう既に変わってしまっている、RCTをやるしかないんだという状況になってしま っていることを御理解いただきたいと思います。  以上です。 ○垣添座長 どうぞ、大内委員。 ○大内委員 mini-RCTが必要かどうかについては、今動いています第3次の対がん総合戦略研 究の中のがん対策のための戦略研究で、乳がん検診における超音波検査の有効性評価というのが 動いています。片群5万人ずつ両群で10万人、2回受診ですので20万人ということになりますが、 その中でここに書いてある、まさに「検診大国でありながらまだ一度もがん検診に関するRCT を実施したことがない」というのが我が国です。その件について、先ほど中山先生からいろいろ 指摘がありましたように、いろいろな意味で、例えば今後のフォローアップの問題、それから参 加される被験者の方々の同意取得の問題、あるいは個人情報保護に関する――個人情報というの は、恐らく個人情報の利用と保護と言った方が正確だと思うのですが、そこに引っ張られてなか なか多くの課題があります。  例えばここに記載されている(1)から(6)について、mini-RCTについて検討すべきことについて は、がん戦略研究の「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較検査」でま さに今検証しようとしていることで、今年から具体的にランダム化比較試験が始まっています。 もし、この戦略研究の中で、フィジビリティを含めて見通しが立ってくれば、今議論があったよ うな、日本においてもがん検診を目標にして、しかもがん検診は死亡率減少効果というEBMに 基づいて行うという方向に今動いていますので、その枠組みとしてランダム化比較試験を走らせ ることが可能かという一つの光が見えてくるかもしれません。  このmini-RCTというのに私が余り賛成できないのは、しっかりとした肺がん検診として何が ふさわしいのかということを、今すぐとは言わないで、10年後、20年後、私たちの子孫の方々が 享受できるようなデータをつくっていくような仕組みをつくることと考えます。今すぐこの検診 が必要だという金子先生の御意見もわかります。私も臨床医ですから。しかし、何かを導入する 場合、必ず利益と不利益がございますので、その不利益の検証もしないままこれがいいというの は、私も賛成できません。従来から言っていますように、やはり死亡率減少効果を検証するとい う立場で進めていかないと、日本はいつまでたってもまともなデータが出せないということです。  今までの検診のシステム、例えば、私は乳がん検診においてマンモグラフィ導入について相当 苦労しましたが、マンモグラフィ検診のエビデンスは、これは欧米でつくられております。日本 では、そのやり方をどのように工夫すればいいかということを考えればいいわけですから、ここ でエビデンスをつくったわけではないのです、システムをつくっただけです。これから例えば肺 がん検診にCT検査を入れるとすれば、それは死亡率減少効果を証明するしかないんです。それ と不利益があるかないか。ですから、お金の問題は次だと思います。  それから、基本的なことをまずここで議論していただきたいのは、この肺がん検診のあり方を 何に基づいて行うのか。今までのように、乳がん、子宮がんとか胃がん、大腸がん、これはすべ て死亡率減少効果に基づいてコメントしてきましたので、そのスタンスを確認していただきたい と思います。 ○垣添座長 今の大内委員の御指摘に関しては、過去4つのがんの検診に関して同じ考え方で進 めてきて、やはりエビデンスに基づいて死亡減少効果と不利益の部分を検討して、肺がんに関し てもその結論を出したいということであります。  祖父江委員。 ○祖父江委員 このmini-RCTを計画するということについてのコメントですけれども、私も、 大内先生の戦略研究の中で乳がん検診のRCTに多少かかわらせていただいて、短期的な点での エンドポイントを感度に置いていますが、そうしますと、感度というものですら、サンプルサイ ズとしては10万人というような数が必要になってきます。マンモグラフィとマンモグラフィに超 音波を上乗せする、この両群の差を見るということでかなり厳しい比較の設定になっていますの でそのようになってしまいます。このような想定ですとハードルがかなり高いので、RCTをす るということについて、まだ日本では余り経験がないので、まずはフィジビリティを見るという ことに焦点を絞って、フィジビリティに関してのエンドポイントを幾つか設定して、それに対し ての答えが出ればいいという形でのサンプルサイズを設定して、恐らく数千人でいいのでしょう けれども、そういう形でのRCTをやるということは、是非とも一度やってみる価値があること だと思います。 ○垣添座長 つまり、これまでの4つのがんに比べて、肺がんというのはこの検討会の結論を出 すときに大変難しい状況にあるので、単に今まで言われていることを踏襲するだけではぐあいが 悪いのではないか。今、大きな問題になっているヘリカルCTを肺がん検診に導入するか否かに 関して、やはり何らかの意見をつけて、エビデンスがないのはわかっていますけれども、それに 関する見解をつけて結論にする必要があるのではないかと私は思っているものですから、この mini-RCTを例えばもし皆さんが了解するなら、それで取りあえずフィリジビリティスタディを やるということを提案するという一つの結論として、それを付してこれのまとめにするというこ とにしていいかどうかということなんです。やるんだったらもっと本式にやるべきなのか、それ が大内委員の御指摘だと思いますが、現実的に考えると、もう少し小さいサイズで考えざるを得 ないのではないかという意見とありますが。  大変難しい問題ですから、ちょっと置いておいて、先に進ませていただきます。時間の関係も ありますので、申し訳ありません。  「大分県の肺がん検診受診率の状況について」、これは前回宿題事項になっておりましたので、 これは事務局からですか、よろしくお願いします。 ○古元課長補佐 ありがとうございます。それでは、お手元の資料3をお開きいただきたいと存 じます。  表紙1枚おめくりいただきまして「大分県における肺がん検診受診率の状況について」。これ は、前回の検討会におきまして、大分県における肺がん検診の受診率が64.8%と非常に高い、ま た一方で、がん発見率が非常に低い、こういったデータが示されました。これにつきまして委員 の先生方より、大分県の状況を確認するようにという宿題をいただいておりました。県の方と御 相談させていただきまして、担当課である健康対策課の方から出していただいた資料が、本日の 資料でございます。  まず1番、「肺がん検診受診率が高率であることについての見解」ということでございます。 大分県は、その背景といたしまして、結核罹患率が日本一高かったという背景がございました。 そういうことで、結核住民検診に力を入れてきた、そういった成果であろうというのが1番の見 解でございます。  ただ、1番の(4)をごらんいただきますと、実は、平成17年度の地域保健・老人保健事業報告に おきまして、事業報告の数字が間違って登録されていた。そのため受診率が非常に高目に見えて いるということがございました。正確には、そちらに書いてございますとおり、受診率64.8%で はなく51.6%ということでございます。  4ページをお開きいただけますでしょうか。4ページの別添2でございます。数字が間違って おりましたのは大分市の数字でございまして、大分市、一番右側の欄でございますが、一番下、 「胸部エックス線検査及び喀痰細胞診」というところの一番上、受診者数ですが、前回の資料で は大分市は「3万2,377人」が胸部エックス線検査及び喀痰細胞診であった。これ正確には、ここ は「377人」ということで、受診者数を3万2,000人多く見積もっていたということでございます。 その結果、受診率が高目に出てしまった。と申しましても、修正後の検診受診率は50%を超えて いるという状況でございます。  1ページに戻りたいと存じます。大きい2番、「がん発見率が低率であることについての見 解」ということで、こちらにつきましても、数字が間違っておりました関係で、がんの発見率が 大変低い数値で出ておりましたが、おおむね全国平均のオーダーにまとまるという状況でござい ます。ただ、大きい2の(3)をごらんいただきまして、がんの発見率が低い理由としては、大分県 はそもそも受診率が毎年高いということで、リピーターが多くいらっしゃるのではないか。これ は推測の域を出ないところではございますが、そのために発見率が低目に出てしまっているので はないかといった御意見でございました。  簡単ではございますが、以上でございます。 ○垣添座長 算定が間違っていたということでありますが、どうぞ、斎藤委員。 ○斎藤委員 一つ、精度管理上の観点から指摘したいと思います。  入力ミスだったということなんですが、これは、同時並行で行われている事業評価に関する委 員会の方で私が御報告申し上げたことですが、今までの老健事業報告は幾つかの問題点があった わけです。その中でも、報告の正確さという点では時期の問題等々あったわけです。それから、 事業評価の観点からいくとフィードバックがされないということがあったんですが、例えばこう いうミスは、あちらの委員会でお示ししましたが、フィードバックするようなシステムがあると 簡単にわかることです。これを地元に返せば、これがおかしいということがわかるわけです。で すから、ちょっとこじつけがましいんですが、そちらの委員会で報告しましたシステムを使って いただいて、自動集計ができる、そしてそれがフィードバックされることによって確認できる、 こういうことが重要なのではないかと思います。  コメントです。 ○垣添座長 御指摘のとおりではないかと思います。  ほかに、この点に関して何か御意見ありましょうか。  では、先に進みます。  続いて、「肺がん検診に関するその他の論点について」、事務局から御説明お願いします。 ○古元課長補佐 ありがとうございます。続きまして、資料4をお手元に御用意いただきたいと 思います。  1ページおめくりいただきまして「肺がん検診に関する論点」でございます。前回の胃がんの 検診などにおきましても、例えば、肺がん検診の対象となる年齢について議論がございました。 対象年齢であるとか受診間隔、また、3番目のエックス線暴露など、検診受診者に対する不利益、 大きな検査やコストの高い検査を対策型検診に位置づける際の考え方について、こういった3点 の論点につきまして自由に御発言、御議論いただければと思いまして当資料を用意させていただ きました。  御参考までに、1ページをおめくりいただきまして3ページでございます。この下に表形式と しておりますが、2番「がん検診の概要」の表でございます。現在、肺がん検診につきましては、 先生方御承知のとおり、対象者40歳以上、年に1回、内容としては、問診、胸部エックス線検査 及び喀痰細胞診ということになっております。この内容につきまして、対象年齢、受診間隔等に つき御議論をいただければと存じます。  なお、後ろに罹患率であるとか死亡率、そういった基礎的な資料を添付しておりますので、適 宜、御参照いただければと存じます。  どうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添座長 これもまた大変難しい話ですが、1ページ目の、まず肺がん検診の対象となる年齢 と受診間隔について、もう少し議論いただければと思います。つまり後ろにあるようなデータに 基づいて、ここの検討会として何か新たな提案ができるかどうかということです。これまでの胃 がんや大腸がんに関して言うと、エビデンスが十分でないからということで年1遍とか、対象年 齢も変わらないまま来ておりますが、肺がんに関していかがでしょうか。  どうぞ、金子委員。 ○金子委員 肺がんに関して、御承知のように、喫煙歴によってがんの発生率が物すごく違うわ けですね。肺がん検診の場合には、問診というのは最初にドックにもあるんですが、実際判定す る場合において、この問診というのがほとんど生かされていないと思います。レントゲン写真と 喀痰細胞診で判定されてしまっていて、問診のところに何が書いてあろうと、実際現場で読影に 携わっていた者の感じとしては、ほとんどここは無視されております。  なぜ問診をやっているかというと、喀痰細胞診をやるかやらないかの振り分けのために問診が 使われているわけです。ところが、今言ったみたいに喫煙歴によってすごく肺がんの率が違うわ けですから、やはり有効に資源を使うという意味でも、たばこを吸わない人に毎年毎年この検診 を本当にやる意味があるのかどうかというところも問題だと思うんです。やはり問診によって、 喫煙歴の有無によって検診間隔をある程度変えていってもいいのではないかとも考えています。 ○垣添座長 それは、新しい提案としてこの検討会で言えるだけの何か証拠はありますか。 ○金子委員 証拠と言いますと。 ○垣添座長 つまり、今まで過去の検討会は、根拠に基づいて、例えば2年に1遍にするとかと いうことをやってきたわけですね。だから、それに相当するようなエビデンスというものがあれ ば大変画期的だと思いますが、いかがでしょうか。 ○金子委員 今すぐにはちょっとないと思うんですけれども、もちろん逆に喫煙者の方から、肺 がんの罹患率から見れば圧倒的に喫煙者が多いというのは出ていますが、非喫煙者と喫煙者の側 からどのぐらい肺がんが出てくるかという率は、ちょっと今ないのではないかと思っています。 ○垣添座長 佐川先生どうぞ。 ○佐川委員 金子先生がおっしゃったのは、CT検診なんかではちょっと言われてき始めている ことはあるんです。非喫煙者の場合、毎年CTを受けなくてもいいのではないかというお話があ って、数年に1回とかですね。喫煙者の場合は、やはりどんどん出てくるのでそうもいかないだ ろうという話はちょっと出てきた。ただ、いわゆるエビデンスということで言うと、発見肺がん のいろいろな検討というレベルのケースシリーズとかというレベルにとどまっているような状況 です。  現在までの胸部エックス線、喀痰細胞診のものに関しては、検診間隔という点で言うと、以前 日本で行われたケースコントロールスタディで、リーセンシーアナリシスという、何年前までの 検診が有効であるか、ここの場でも大腸がんとかで話題が出ていると思うんですが、そういった ものがなされていまして、取りあえず前の年の検診というか、その年の検診は有効だけれども、 その前の年の検診は有効でないという結果が出ていますので、肺がんの場合は、取りあえず胸部 エックス線、喀痰細胞診という枠組みの中でやっているものは、2年に1回というわけにはいか ないということがわかっています。  ただし、喫煙歴で分けていないので、非喫煙者どうの、喫煙者どうのというのはちょっとわか らないんですけれども、その段階で、いわゆる大腸がんとか乳がんとか、そういったところと違 うのは、やはり前の前の年の検診は全く意味がない、オッズ比が1界わいで何の死亡率減少効果 もないという結論が出ています。ですから当面、今あるエビデンスということになると、ほかの がんよりは確かに毎年でないとだめですねということは言えると。 ○垣添座長 金子委員の御指摘は魅力的ではありますが、残念ながら、今この検討会の意見とし て取り入れるには、少しエビデンスが不足であるということでしょうか。  ほかに。どうぞ、祖父江委員。 ○祖父江委員 検診間隔については今の佐川先生の意見と同意見で、肺がん検診に関しては、他 の検診と比べて有効性が持続する期間が短いということで、恐らく年1回というところは外せな いと思いますけれども、対象者の年齢に関しては、以前からほかの検診でも申し上げていますよ うに、有効性の観点からというよりも、実際に運営していく上での受診率向上あるいは精度管理 といったものを推進していく上で、対象とする年齢を絞った方がいいのではという観点から、そ の対象者の上限を設定する、あるいは下限を設定するということはいいのではないかと思います。  必ずしも受診率を50%に上げることが、高齢者の場合、その利益につながるかというと、そう ではない人たちもかなりいることが当然予想されますし、高齢者の場合、中高年に比べると不利 益が多くなることも考えられます。精度管理をする上でも、年齢層を絞った方がさまざまな精度 管理指標の数値を設定しやすいということもあります。そういう観点から、肺がんの場合、上限、 下限どの程度が適当かというのは、罹患率あるいは有効性の点から絞っていくべきだと思います が、ほかのがん検診と同じ、有効性だけではなく、ほかの観点から、今言ったような観点から対 象年齢を絞ることが考えられるということを提案したいと思います。 ○垣添座長 具体的にはどういうふうに絞るわけですか。 ○祖父江委員 今の40歳以上というのが、罹患率の面から見ると、ほかのがんの罹患率と比べて 40歳、50歳の罹患率はちょっと低い。むしろ肺がんの場合は60歳からどんどん上がっていくとい うことがあるので、そういった意味で下限をもう少し上方に修正する。今のがん対策の全体目標 は75歳未満の死亡率を減少させることになっていますので、そこに焦点を当てた形でいくと、検 診による死亡率を下げる年齢層としては、やはり70歳未満のあたりに対象を絞った方がいいので はないかというようなことを考えます。 ○垣添座長 そうすると60歳から75歳、そのあたりでしょうか。 ○祖父江委員 60歳から69歳ですね。 ○垣添座長 69歳、なるほどね。  ほかに。どうぞ、大内委員。 ○大内委員 今、祖父江委員からは罹患率は若年層では低いのではないかということですが、死 亡率の観点から言いますと、今日の資料にはありませんが、平成18年度の厚生労働省からの人口 動態統計概数を見ますと、男性では肺がんが40歳からずっと1位。女性では乳がんですけれども。 その観点からいって、私はやはり40歳以上が対象になるのではないかと思いますが、この辺は祖 父江委員と意見が違うのかも知れません。 ○垣添座長 どうぞ。 ○鈴木老人保健課長 今、大内先生からおっしゃっていただいた年齢階級別のがん死亡率を各が ん部位ごとに見たのは、12、13ページに男性、女性が載っております。これをごらんいただきま すと、各がんともやはり年齢が高くなるほど高くなる。まさに今、大内先生に御指摘いただいた ように、恐らく40歳もしくは45歳ぐらいから、肺がんが死亡率としては一番高いということには なっていると思うんです。  祖父江先生の御指摘ですけれども、私どもの考えとしては、基本的にどの年齢層、例えば40歳 にするのか30歳にするのか、上を設定するか設定しないかということについては、やはりRCT 等で死亡率減少効果が示せる限界の年齢ということで今まで一応結論をいただいておりました。 今回、もし罹患率の観点から見て例えば上限なり下限を設定することになると、いわば新たな考 え方の導入ということになりますので、もちろん、例えば特にこの年代の受診率を上げるために ターゲットとする年代をここにするという議論であれば、まさにおっしゃるとおりだと思います が、この班で御指摘いただく対象者をここにしますということになりますと、それから外れる人 については、例えば市町村において、来ていただいても市町村の補助は出ませんとか、自分で全 額負担いただくことになりますということになると思います。明確な死亡率減少効果によるデー タがあるという前提であれば、それはもちろん科学的にそうなるということになると思うんです が、少し罹患率なり死亡率だけを見て、対象年齢を今の段階で絞ることについては、もう少し、 では他のがんとの関係としてはどうか、それから市町村が対象とする年齢層を切るのか、それと も主にターゲットとして受診率等を考える、そういう重点年齢層をどう考えることにするのかと いうところについて、やはり御議論が必要かと思います。 ○垣添座長 どうぞ、祖父江委員。 ○祖父江委員 鈴木課長がおっしゃる重点的に対策として対象とする年齢を設定するという考え が私の言いたいところなんですけれども、ほかの精度管理の委員会でオーストラリアの例をお示 ししましたが、オーストラリアの乳がん検診は、40歳以上はすべて無料で受けられるんですが、 厳密な精度管理あるいは受診率向上という施策をとっているのは50から69歳。そういう観点で、 施策を講じる上での対象年齢と、対策として財政的にというか自己負担という観点でカバーする 年齢層と分けて考えるのも一つの方策であると思います。 ○垣添座長 どうぞ、佐川委員。 ○佐川委員 今の分けて考えるというのも非常にいい方法だと思うんです。というか、例えば対 象を変えるというのは結構難しくて、結局、罹患とか死亡とかで切るしかないだろうと思うんで す。有効性評価に関しては、そう何回もできるようなものではありませんので、ある、こういう 見解がありましたということしかちょっと言えなくて、では何歳にしたらどうなのというのはす ぐできるものではないんです。ですから、有効性評価だけで年齢を切っていくのはほとんど難し い感じがするんです。  そうすると罹患、死亡で決めるしかないんですが、罹患も死亡も動きますし、各がん検診であ る程度整合性が取れないと説明ができない。例えば、40歳を50歳に上げると、必ず40歳から50歳 の間で検診を受けなかったから死んだという人が3年ぐらいたつと出るわけです。そうすると、 私は検診がなくなったから死んだんだということで、遺族が新聞社にキャンペーンを張って大変 なことになるということを考えますと、重点目標はここだ、でも一応、検診としてはある程度カ バーしているけれども、例えば40歳をターゲットにして若い人を集めようとするのではなくて、 60代目がけていろいろなキャンペーンを張るとか、そういうやり方というのは非常にいいかなと 思います。 ○垣添座長 今ここでこの検討会として十分なエビデンスなく例えば対象年齢を変えるというの はなかなか難しいことで、過去4つのがんに関してもそういう流れで来ていますからそれはした くない。だけれども、今、祖父江委員あるいは佐川委員から御指摘の重点年齢層というのを文章 として記載することはいいのではないか。つまり、従来どおり、40歳以上で年1遍というのは守 っておいて、ただし、例えば受診率とかいろいろなそういう評価の対象としては、今提案の例え ば60歳から69歳に絞って対策型の検診として考えるといったことを文章で書くのは許されるので はないかという気がしますが、いかがでしょうか。  どうぞ、坪野委員。 ○坪野委員 死亡率減少効果以外のファクターを入れて重点年代を設定するというアイデアその ものはいいと思うんですけれども、やはりそれはアドホックにやるべきではなくて、全部同じ考 え方を適用すべきだから、別に機会を設けた方が整合性が取れているのではないかと思います。 それから、対象年代と重点年代というのは、これも今の法制度が市町村に対して何を義務づけて いるのかの観点で考えないと、それほどきれいに別物として理解してもらえるかどうかというと ころも相当慎重に考える必要があると思うんです。  市町村はこれ以上お金は出せない、だけれども50%の目標率を実現しなければいけないという ときに、その重点年代が事実上の対象年代として解釈されるというか、そのような意味合いで使 われてしまう危惧も相当あると思います。基本的なアイデアは僕は賛成ですけれども、運用のさ れ方等は相当慎重に考えるべきなので、まとめてやった方がいいのではないかと思います。 ○垣添座長 御指摘大変ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。  どうぞ、大内委員。 ○大内委員 坪野委員の御意見、私も大賛成ですが、このがん検診検討会は、そもそも2003年12 月からだったと思います。乳がん、子宮がんからスタートしまして、それぞれ議論する対象を決 めて始まっています。その後、胃がん検診、大腸がん検診と来たわけですが、全体の、例えば今 の祖父江先生からの御意見、私も賛成ですが、対象者を40歳以上とするにしても、重点的にやる べきです。あとは、諸外国でよく出てくるのは、この前、祖父江委員ががん検診の事業評価に関 する検討会でオーストラリアの例を出されましたけれども、ほかにも、アメリカ、カナダ、ヨー ロッパ諸国、ほとんどが検診対象の上限を設定しています。日本は設定していません。費用対効 果とかいろいろな観点から、あるいは罹患率の最も高いところとか、どこを重点的に行うべきか という議論は、まだされていないと思います。それを全体のがん検診を含めて、次のステップの ために議論された方がいいと思います。  恐らく、肺がん検診の議論が終わると、ほぼ一通り5大がん検診の議論は終わると思いますが、 次のステップとして、その年齢階級も含めたいろいろな検討を行っていただければと思います。 ○垣添座長 ありがとうございます。やはり今の段階で中身を、対象年齢とか受診間隔を修正す るような意見はなかなか取り入れにくいと私も考えますので、これは従来どおり、40歳以上、1 年ごととしておいて、全部の、肺がんまで5つのがんの検討が終わった段階で、全部のがんに共 通する問題を少し議論するということ、これは事務局にも是非、今後の課題として御考慮いただ ければ大変ありがたいと思います。  そのような整理でよろしゅうございましょうか。その際に、重点目標とかということも含めて 議論したいと思います。  この3番目のエックス線暴露とか高額な検査とか、このことに関して、先ほどのヘリカルCT の話がもう一度戻ってまいりますが、ランダマイズスタディをもし日本でやるとしたら、本式に やるべきなのか、あるいは少しフィリジビリティスタディのような形でやるべきなのかというこ とも含めて、もうちょっと議論いただけますでしょうか。  どうぞ、佐川委員。 ○佐川委員 一応、ここの文言で書いてあるままですと、「不利益が大きな検査やコストの高い 検査を……位置づける際の考え方について」ということであれば、もうこれは、まず有効性があ ることを証明した上で、有効性があれば、あとはコストベネフィットとかいろいろな検査の検討 ができますので、そういったものがある程度見合うということの2段階になるのではないでしょ うか。有効性があるともないともわからない状態ではどうしようもないということになります。  それから、一応「エックス線暴露など」と書いてあるので、向こうに一般の方もいらっしゃる みたいですので、普通の胸部エックス線写真で言うと自然放射線の何十分の1ということなので 問題にならない。CTの場合は、低線量CTであれば、回数が限られればそんなに問題にはなら ない量ではある。ただ、精密検査とかそういったものもありますので余り軽視はできないという のが事実だと思います。  以上です。 ○垣添座長 ほかにいかがでしょうか。  我が国としてヘリカルCTの肺がん検診に関するランダマイズスタディを提案するとしたら、 こういう考え方あるいはこういうプロトコルということをこの報告書のどこかにつけられるかど うかという点ですけれども、いかがでしょうか。  どうぞ、大内委員。 ○大内委員 中山先生から出されましたこの資料、らせんCTのランダム化比較試験計画書、変 法2ですけれども、これが策定されたのは2001年でしたか。 ○中山参考人 2000年です。 ○大内委員 2000年ですね。そのときの試算について、費用負担及び必要経費等を見ますと、例 えば中央データセンター、CROに対して11億円でトータルで24億円という額になっています。 実は私は今、戦略研究を推進する立場になって大変苦労しております。戦略研究は4年間残って いますが、その中で使えるお金はせいぜい8億円です。それで20万人を検診対象者としています ので、この肺がん検診2万7,000人で24億円というのは、実は今の超音波乳がん検診の被験者1人 当たりで約20倍の費用になっています。それで、実際に運用してみまして、恐らくCROはそれ ほど高くないだろう。ですから、決してこの24億円かかるかどうか、私はちょっとわからない。 これはもう一度検討していただいて、そういうことも含めてmini-RCTでなくて、きちんとした EBMを創出するための研究ということでもう一度お考えいただいた方がよろしいのではないか ということを提案します。 ○垣添座長 どうぞ、鈴木課長。 ○鈴木老人保健課長 今御指摘いただいた資料の一番最後のところの総費用見積もり、たしか24 億3,300万円と書いています。これは8年間の費用ですので、年額にするとその8分の1というこ とにはなると思います。 ○大内委員 いや、戦略研究も今から4年間合計で8億円、年間2億円です。対象者数はらせん CTのランダム化比較試験計画書の10倍以上です。2万7,000人ではなくて20万人ですので、その ことをお考えいただきたいと思います。実際には、戦略研究の方は予算が余りにも低いのです。 ○垣添座長 ただ、CROが2000年当時の評価に比べて安くなっているのは事実でしょうね。  どうぞ、鈴木課長。 ○鈴木老人保健課長 1点だけちょっと御確認させていただきたいんですが、この資料の附2− 3のところに「対象者の適格基準」というのを書いてございますが、この研究では、先ほどの話 ではございませんけれども、年齢を50から69歳の男性、しかも喫煙中もしくは過去10年以内の喫 煙者ということで、ある意味で発症、それからリスクの観点からかなり絞り込むデザインになっ ていると思います。要は、これから私たちが進む道を考える際に、例えば40歳以上でも50歳以上 でもいいですが、女性や非喫煙者も含めたすべての人を対象にして考えていくのか、それとも一 定の喫煙との関係が考えられて、発症率の高い人たちに集中して考えていくのかというのが一つ の大きな分水嶺だと思いますので、そこのところをちょっと御議論いただきたいと思います。 ○垣添座長 中山参考人、何か御意見おありですか。 ○中山参考人 前回の会議でも御説明させていただきましたが、私が主任研究者をやっておりま す研究におきましては、基本的には、非喫煙者あるいは女性という縛りで見ますと、CTの方が、 取りあえず死亡率減少効果が見られるような傾向にあります。まだ確定していませんが、そうい う傾向がございます。しかし、喫煙者に関しましては、そういう傾向が見られていない。それは 効果がないのか、それとも検診の受診回数が1回しかない人が多いからか、その辺がわからない というところがございますので、それを補完する意味で男性の喫煙者に限定したものを出してお りますから、日本の住民全体に対する施策として考える場合には、非喫煙者に対しては今までの コホート研究でやり、喫煙者に対しては、その効果の差が小さい可能性があるので、こういうR CTできちんと見るというスタンスを考えています。 ○垣添座長 祖父江委員どうぞ。 ○祖父江委員 今の中山先生のお話は、RCTには喫煙者に対象者を限ると。それはむしろ反対 で、今、全世界で行われているヘリカルCTの評価研究はすべて喫煙者あるいは過去喫煙者を対 象にしていて、一方で日本から出ている観察的な研究では、どうも外国と違う、日本のデータで 効果がありそうだと思われるのは、むしろ非喫煙女性のヘリカルCTの成績の方です。ですから、 そのことを世界に向かって発信するためには、是非とも非喫煙女性のRCTを、日本からその研 究成果を出すべきだと僕は思います。  ただ、フィリジビリティのところに関して言うと、エンドポイントをフィリジビリティだけに 求めるということであれば、それはどっちも含めた方がいいと思います。 ○垣添座長 今、祖父江委員が御指摘の非喫煙の女性を対象にすべきだというのは、喫煙の男性 とかと別なスタディとしてということですか。あるいは先ほど鈴木課長が言われた、すべてを含 めた形のRCTということです。 ○祖父江委員 すべて含めたという意味です。 ○垣添座長 どうぞ、佐川委員。 ○佐川委員 恐らくそうなってくるとサンプルサイズが変わってきますよね。死亡率がちょっと 下がりますのでね。 ○祖父江委員 いや、それでもやはり含めてやるべきだと僕は思います。 ○垣添座長 どうぞ、金子委員。 ○金子委員 祖父江先生の意見に全く賛成なんですけれども、ただ、女性の肺がんは発見率が非 常に多いですが、死亡率も低いし増大傾向も非常に遅いですから、相当長期にやらないと結果が 出ないと思います。5年、10年ではなくて、本当に20年、30年のスパンで見ていかないと証明で きないから。ただ、やはりやる価値はあると思うんです。それが日本のデータをよくしていると ころの一番のところだと思います。  だから、今、中山先生が提案されたような喫煙者男性に絞ってしまうと、さっき佐川先生がお っしゃったように、欧米のフィリジビリティスタディと同じように、なかなか有効性は出ないの かなという気がします。あるいは1年に1回ではだめで、年2回とかかなりしつこくやっていか ないと、効果はなかなか難しいかと思います。 ○垣添座長 ありがとうございました。  それでは、この検討会としては、肺がんの検診としてヘリカルCTを導入することに関しては、 ランダマイズスタディが必要である。ただし、そのプロトコルに関しては、今たくさんの御意見 をいただきましたから、今この時点で決めることはできませんので、これは事務局で預かってい ただいて、更に専門家と御相談いただいて、このまとめの中には書き込めるかどうかわかりませ んけれども、とにかくそういうランダマイズスタディを今後展開するということにとどめるか、 あるいはその中身まで書き込めるかということをちょっと御検討いただければと思います。  そういうことで先に進ませていただこうと思います。議題2「肺がん検診に関する事業評価、 精度管理の在り方について」、佐川委員から御説明いただきたいと思います。 ○佐川委員 資料5の方をごらんください。一応、昨年の検討会において、肺がん以外のものに 関しては既に御報告あるいは閲覧されているかと思うんですけれども、肺がん検診に関してはチ ェックリストというのが作成されておりませんでしたので、厚労省の斎藤班の方でそれを作成い たしましたので御報告申し上げます。  資料5のページをめくっていただきまして、「肺がん検診チェックリスト」ということで、検 診機関用と、あと、めくりますと市町村用、更に都道府県用というのがついております。これは、 原則、ほかのがん検診のものと同じような枠組みというか、大体質問項目とかそういったものは 大きな差が出ないようにしつつ、肺がん検診に特化するような形で作成しております。これを用 いることによって、自分たちの行っている検診がある程度適切であるかどうかということを評価 することができることになります。  細かなところは御説明申し上げませんが、肺がん検診の場合、喀痰とエックス線という2つの 検査がありますので、そこに関して別個にデータを抽出して検討するような書き方になっており ます。それでないと各検査の精度がわかりませんので、そういったことになっております。あと、 大体はほかのがん検診と同じような形になっております。  それから、最後のページにありますのが仕様書ですけれども、これに関しては、昨年の検討会 でも報告はされておるんですが、再掲いたしました。一応、各検診機関は、市町村との契約のと きにこのような仕様書を出すべきだというひな型のようなものですけれども、この仕様書に載っ ているような内容をそのままチェックリストで評価するというような、対応するような形のもの になっております。  以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。  斎藤委員、何かありますか。 ○斎藤委員 事務局に確認ですが、肺がんの仕様書はこの間出た中間報告書に載っていましたか。 たしか肺がんの分だけは載っていなかったと思うんです。再掲ではなく新規ですね。確認ですけ れども。 ○古元課長補佐 まだ載っておりません。平成19年6月に出していただいた報告書には、まだ載 っておりません。 ○垣添座長 ほかに何か御意見ありましょうか。  では、今御提案のようなチェックリストに関して進めていくということでよろしゅうございま しょうか。ありがとうございます。  それでは、そろそろ時間も迫ってまいりましたけれども、本日の議論を踏まえまして、次回に は本検討会の報告書案を事務局の方で準備していただけると思っています。  中山参考人及び委員の皆さんにおかれましては、お忙しい中、プレゼンテーションあるいは非 常に積極的な御意見をいただきましてまことにありがとうございました。そろそろ閉じたいと思 いますが、最後に事務局から何かありましたらどうぞ。 ○古元課長補佐 ありがとうございました。  次回検討会の日時、場所などにつきましては、各委員の日程を調整させていただきました上で、 改めて御連絡させていただきたいと存じます。  本日は、お忙しい中、まことにありがとうございました。 ○垣添座長 では、終わらせていただきます。ありがとうございました。 (終了) 照会先:老健局老人保健課 連絡先:03-5253-1111 担当者:課長補佐 古元(内線3942)   保健指導係 大塚(内線3946)