07/09/07 第1回「児童部会社会的養護専門委員会」議事録 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 第1回社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会 日時:2007年9月7日(金) 10:00〜12:15 場所:厚生労働省共用第7会議室(5階) 出席者:  委員   柏女委員長、相澤委員、今田委員、大塩委員、大島委員、奥山委員   木ノ内委員、榊原委員、松風委員、高田委員、豊岡委員、西澤委員   藤井委員、藤野委員、山縣委員、吉田委員  厚生労働省   大谷雇用均等・児童家庭局長、高倉総務課長、藤井家庭福祉課長 議題:  1. 開会  2. 委員長の選任について  3. 今後の進め方について  4. 「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」    中間とりまとめについて  5. 児童養護の当事者参加推進団体より意見聴取  6. 検討項目に関する議論  7. 閉会 資料:  資料1 社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会の設置について  資料2 社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会の検討スケジュール  資料3 今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会      中間とりまとめ(概要)  資料4 今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会      中間とりまとめ(本文)  資料5 検討項目(案)  資料6 社会的養護の概要と実施状況等  資料7 平成20年度家庭福祉対策関係予算概算要求の概要  資料8 その他参考資料 ○藤井家庭福祉課長  それでは、まだおみえでない委員もいらっしゃいますけれども、定刻を過ぎましたの でただ今から「第1回社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会」を開催させてい ただきます。委員の皆さま方におかれましては、お忙しい中、またこのような天候の中 をお集まりいただき、本当にありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  まず本委員会の開催に当たり、私どもの雇用均等・児童家庭局長からごあいさつ申し 上げることになっていましたが、その局長も天候の関係で遅れていますので、後ほど局 長が到着次第、ごあいさつをさせていただきます。  それでは議事に入る前に、まず委員の皆さま方のご紹介をさせていただきます。本日 は五十音順でお座りいただいています。右の方から、相澤仁全国児童自立支援施設協議 会顧問、国立武蔵野学院施設長です。 ○相澤委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  お隣は、今田義夫全国乳児福祉協議会制度対策研究委員会委員長、日本赤十字社医療 センター附属乳児院施設長です。 ○今田委員  今田です。どうぞよろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  そのお隣は、大塩孝江全国母子生活支援施設協議会副会長・倉明園施設長です。 ○大塩委員  大塩でございます。どうぞよろしくお願いします。   ○藤井家庭福祉課長  そのお隣はまだおみえではありませんが、大島祥市全国自立援助ホーム連絡協議会監 事、ベアーズホーム施設長です。そのお隣は、奥山眞紀子国立成育医療センターこころ の診療部長です。 ○奥山委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  そのお隣は、柏女霊峰淑徳大学教授です。 ○柏女委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  木ノ内博道全国里親会理事、前千葉県里親会会長です。 ○木ノ内委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  榊原智子読売新聞記者です。 ○榊原委員  どうぞよろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  まだおみえではありませんが、松風勝代大阪府家庭支援課長です。それから、高田治 全国情緒障害児短期治療施設協議会幹事、横浜いずみ学園施設長です。 ○高田委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  左にいきまして、豊岡敬東京都福祉保健局参事、足立児童相談所長です。 ○豊岡委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  そのお隣はまだおみえではありませんが、西澤哲山梨県立大学教授です。そのお隣は、 藤井美憲全国児童家庭支援センター協議会副会長、愛泉こども家庭センター施設長です。 ○藤井委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  そのお隣は、藤野興一全国児童養護施設協議会副会長、鳥取こども学園施設長です。 ○藤野委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  そのお隣は、山縣文治大阪市立大学教授です。 ○山縣委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  最後になりましたが、吉田恒雄駿河台大学教授です。 ○吉田委員  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  なお、本日青山学院大学文学部教授の庄司順一委員はご欠席です。  続いて、事務局の出席者を紹介します。私の左側におりますのが高倉総務課長です。 ○高倉総務課長  よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  私は家庭福祉課長の藤井です。どうぞ、よろしくお願いします。なお、高倉総務課長 は他の公務があり、中座をお許しいただきたいと思います。  それでは議事に移りたいと思います。まず委員長の選任についてですが、事前に各委 員とも相談をさせていただいた上で、柏女委員に委員長をお願いしたいと思いますが、 よろしいでしょうか。  それでは柏女委員に委員長をお願いすることとし、以降の議事運営をお願いします。 ○柏女委員長  おはようございます。この社会的養護専門委員会の委員長にご指名をいただきました。 大役に身の引き締まる思いがしています。社会的養護の充実のためにより良い成果を上 げていきたいと思っていますので、ぜひ皆さま方のご協力をお願いしたいと思います。 それでは、座って議事をつかさどります。お願いします。  今ほど、少しお話をさせていただきましたけれども、社会的養護の問題は本当に待っ たなしの状況になっています。この児童部会では確か平成15年だったと思いますが、 社会的養護専門委員会において、今後のあり方についてご検討・ご提言をいただきまし た。それを踏まえて検討を進めていましたけれども、さらに進展させていく必要がある というということで、今般この専門委員会が設置されました。ぜひ皆さま方のご意見を いただきながら進めていきたいと思います。  今、雇用均等・児童家庭局長がおみえになりましたので、ごあいさつをいただいた方 がよろしいでしょうか。よろしくお願いします。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  おはようございます。雇用均等・児童家庭局長の大谷です。台風の関係で足が乱れて 遅くなり、大変失礼しました。  本日は大変ご多忙の中、社会的養護専門委員会の就任をお引き受けいただき、また、 このようにご出席を賜り大変感謝しています。冒頭に、この専門委員会設置の経緯につ いて一言申し上げます。  近年、社会的養護については対象児童の増加や虐待等により、子どもの抱える課題の 多様化・複雑化はますます顕著になってきています。そのような状況を踏まえて、本年 2月から「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」を開いて、担当 課長の下で9回にわたりご検討いただき、5月に中間とりまとめをいただきました。今 日の委員の中には、そこでも大変貢献いただいた方々もいらっしゃって、厚く御礼を申 し上げます。  また議員立法として提出され、本年5月に成立した改正児童虐待防止法の附則におい て「政府は、児童虐待を受けた児童の社会的養護に関し、里親及び児童養護施設等の量 的拡充に係る方策、児童養護施設等における虐待の防止を含む児童養護施設等の運営の 質的向上に係る方策、児童養護施設等に入所した児童に対する教育及び自立の支援の更 なる充実に係る方策その他必要な事項について速やかに検討を行い、その結果に基づい て必要な措置を講ずるものとすること」と規定されました。このような状況を踏まえて、 社会保障審議会児童部会において、この専門委員会を設置することになった次第です。  社会的養護の拡充に関しては、政府としてもしっかり取り組んでいかなければならな い課題として認識しています。先日開催された第28回の社会保障審議会児童部会にお いても、委員の方々の関心も高く、この専門委員会で社会的養護についてのさまざまな 課題について、よく検討いただきたいというご発言がありました。これから本専門委員 会において、児童の社会的養護の拡充に向けた具体的施策について議論をいただくわけ ですが、委員の皆さま方から専門的意見や現場での経験に基づく忌憚(きたん)ない率直 なご意見をいただけるものと期待していますので、どうかよろしくお願い申し上げます。 以上、誠に簡単ではありますが、冒頭のごあいさつとさせていただきます。どうも、遅 れて失礼しました。よろしくお願いします。 ○柏女委員長  どうもありがとうございました。それでは早速、議事に入りたいと思います。今日お 手元にお配りした資料について、事務局の方で確認をお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  それでは、お手元の資料を確認いただければと思います。資料1が「社会保障審議会 児童部会社会的養護専門委員会の設置について」、資料2が「社会保障審議会児童部会 社会的養護専門委員会の検討スケジュール」、資料3が「今後目指すべき児童の社会的 養護体制に関する構想検討会中間とりまとめ」で、横長の概要版です。資料4が「今後 目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会中間とりまとめ(本文)」です。資 料5が本専門委員会の「検討項目(案)」、資料6が「社会的養護の概要と実施状況等」、 資料7が「平成20年度家庭福祉対策関係予算概算要求の概要」、資料8が「その他参考 資料」です。また、児童養護における当事者参加推進団体である「日向ぼっこ」からご 提出いただいた資料「厚生労働省・児童家庭局家庭福祉課『今後目指すべき社会的養護 体制に関する構想検討会中間とりまとめ』(07年5月18日発表)への意見書」を付けて います。以上です。不足等がありましたら、お申し出いただければと思います。 ○柏女委員長  よろしいでしょうか。皆さん、ありますでしょうか。  それでは、今日の議事の進行について諮りたいのですが、今日は第1回目ですので、 まず本専門委員会において議論を始めるに先立ち、本専門委員会の設置の趣旨と今後の スケジュールおよび本年5月にまとめた「中間とりまとめ」について、先ほど藤井家庭 福祉課長からもお話がありましたが、事務局から簡単にご説明をいただきたいと考えて います。  二つ目として、その後、児童養護の当事者参加推進団体である「日向ぼっこ」から、 この「中間とりまとめ」についてのご意見を賜りたいと思います。そして「中間とりま とめ」およびこれらのご意見を踏まえながら、この専門委員会でこれから検討するに当 たって、たたき台となる検討項目を事務局に整理していただいていますので、事務局か らその説明をいただこうかと思います。その後、大体1時間強になると思いますけれど も、委員の方々のご討議をいただければと思っています。なお時間の関係上「日向ぼっ こ」の方に対するご質問なども、討議の中で併せて行いたいと思っています。会の回数 はあまり多く設定されていません。今日は12時までとご案内させていただいているの ですが、討議の時間を多く取りたいと思い、できれば12時15分ぐらいまで、15分ほ ど延長させていただきたいと考えています。もちろん、電車の時間があるという方は先 に手を挙げて思いの丈を話していただいて、12時にお帰りいただくということで結構で すので、そのようにお願いします。今日は以上のような流れで、進めさせていただいて よろしいでしょうか。ありがとうございます。  それでは事務局より本専門委員会の設置の趣旨および今年5月にまとめた「中間とり まとめ」について、簡単にご説明をお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  それでは、ご説明します。まず資料1をご覧ください。「社会保障審議会児童部会社 会的養護専門委員会の設置について」とあります。この児童部会は8月21日に開かれ、 この専門委員会の設置が決まりました。  「設置の趣旨」をご覧いただくと「社会的養護を必要とする子どもの増加や虐待等に よる子どもの抱える背景の多様化・複雑化を踏まえ、児童の社会的養護の拡充に向けた 具体的施策を検討するため、社会保障審議会児童部会に『社会的養護専門委員会』を設 置する」ということです。2番目に専門委員会の「構成等」とありますが「専門委員会 委員は別紙」ということで、2枚目にありますように、本日ご紹介した委員の皆さまに お願いしています。  続いて、資料2をご覧いただくと「社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会の 検討スケジュール」と、簡単な一枚紙を付けてあります。当面は4回程度を予定してい ます。本日は第1回で、本日の議事概要については、先ほど柏女委員長よりお話があっ た通りですので省略させていただきます。いずれにしても、本日と次回9月25日に予 定されている第2回の、2回の会議において、検討項目全体に関する議論をひとわたり お願いできればありがたいと思っています。それから第3回目には、そういった議論を 踏まえて、できれば事務局の方でとりまとめ案を提示して議論いただき、第4回は11 月になろうかと思いますが、とりまとめをいただいて、12月に児童部会へ報告いただく といった格好で進めていただければありがたいと思っている次第です。  続いて、資料3です。先ほど大谷雇用均等・児童家庭局長からもお話がありましたが、 本年2月に私ども家庭福祉課で「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検 討会」を立ち上げて「中間とりまとめ」にまで至っています。その「中間とりまとめ」 について、資料3で簡単に説明させていただきます。1枚めくっていただくと「検討の 経緯」とあります。先ほど申しましたように、本検討会を2月に設置して、真ん中にあ りますが、現在の社会的養護の課題を整理して、今後目指すべき社会的養護体制のあり 方と、またそれを実現するための具体的方策についてご検討いただきました。2月から 9回開催し、5月18日に「中間とりまとめ」をいただきました。その検討会には、右に ありますように柏女座長を中心とした8名の方にお願いしたわけですが、8名の方全員 には引き続きこの専門委員会の方にも加わっていただいて、継続的な議論もしていただ けるような体制になっています。  2ページから「中間とりまとめ」の概要がありますが、時間の関係で5ページを開い ていただけますか。そこに「現行の社会的養護体制の充実に向けた具体的な施策」とし てまとめていただいた部分を、ごく簡単にまとめています。「社会的養護の質の向上に向 けた具体的施策」として、(1)〜(6)の項目を立てています。「(1)家庭的養護の拡充」として 「里親委託の推進、小規模グループ形態の住居・施設の検討、施設におけるケア単位の 小規模化・地域化をさらに推進」というご指摘をいただいています。「(2)地域資源の役割 分担と機能強化及び地域ネットワークの拡充」ということで、地域全体で子どもの養育 を支える地域ネットワークを拡充するために、どんな方向でやっていけばいいかという ようなご提言をいただいています。「(3)施設機能の見直し」ということで「家庭的養護の 拡充を進めていく中で、個々の子どもの課題を的確に捉えて子どもに対して最も適切な 支援を実施できるような施設体系のあり方の検討」、また当面の対応として各施設の機能 強化の方向などについてご提言をいただいています。「(4)年長児童の自立支援」というこ とで「就労や進学の支援など年長児童の自立支援のための取組の拡充」。「(5)社会的養護 を担う人材の確保と資質の向上」ということで「支援の質の向上を図るために、これを 担う職員の確保及び専門性の確保のための方策の検討」というご指摘をいただいていま す。「(6)科学的根拠に基づくケアの方法論の構築」は「子どもに必要な支援に関するアセ スメント手法や支援の実践方法の確立のための研究助成のあり方について検討」として います。  その下の二つ目の○ですが「児童の権利擁護の強化とケアの質の確保に向けた具体的 施策」です。「施設内虐待の防止を図るため、子どもの権利擁護とケアの質の確保を図る 仕組みの検討」ということです。  最後に「社会的養護を必要とする子どもの増加に対応した社会的養護体制の拡充方策」 ということで、こちらはどちらかというと量的な整備についてご提言をいただいていま すが「都道府県等において整備目標も含めた整備計画を策定し、これに基づいた計画的 な整備を行う仕組みの検討」というご指摘をいただいています。この「中間とりまとめ」 も一つの材料として踏まえていただき、本専門委員会でさらに具体的な施策についての 議論をいただければ、事務局としては大変ありがたいと思っている次第です。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。ご質問については、議論の中でということに一括させてい ただきます。引き続いて、今日は「日向ぼっこ」から廣瀬さゆりさん、市川太郎さん、 染谷直知さんにお越しいただいていますので、この「中間とりまとめ」への意見書につ いてのご説明をお願いします。恐縮ですが、時間の関係から15分程度でお願いしたい と思います。よろしくお願いします。 ○意見発表者(「日向ぼっこ」代表廣瀬氏)  では時間の都合がありますので、早速本題から進めさせていただきます。  お手元の資料の「はじめに」から。5月に発表された「今後目指すべき社会的養護体 制に関する構想検討会中間とりまとめ」に対して、あらためて社会的養護が公的責任で あることに触れられている点や、施設を退所した後の子どもの相談先として施設の実家 機能の役割の充実が打ち出され、退所後の子どもたち自身が集う場の取り組みを盛り込 まれたことは支持できますが、具体性に欠ける点や表現に引っ掛かりを感じる点がある ことは否めません。私たち「児童養護における当事者参加推進団体・日向ぼっこ」はい まだ少人数の当事者団体に過ぎません。社会的養護の下で生活した人の中には集団を恐 れ、日の当たる場所に出ることに恐怖を感じているなど、声にならない声を持っている 人もたくさんいます。「日向ぼっこ」が当事者の意見のすべてではないことに皆さんに事 前にお伝えした上で、今後政策決定に当事者の声が反映されるよう、その道を切り開く べく、社会的養護の当事者として今回の「中間とりまとめ」に対する意見をこれから示 させていただきます。  私たち「日向ぼっこ」はまだ1年半ですけれども、活動を通じて、養護施設に限って 施設生活は改善・充実していて、インケア中の子どもたちが施設に対して不満を持って いるということは少なくなっているのではないかと感じています。しかし退所後、抱え る生きづらさが大き過ぎるが故、その原因が施設で育ったことと必要以上に結び付けら れてしまっている現状を感じています。一般の家庭がパーフェクトではないように、施 設もどの子どもにとってパーフェクトになることは難しいと思います。改善するべきは、 社会的養護の対象だった人たちが措置解除後に、必要以上に孤立感や生きづらさを感じ ないように済むようにすることだと思います。その実現には社会的養護の対象だった人、 要するに当事者が何に傷付き、何に絶望しているかを知ってもらう必要があると感じて います。意見書の提出は、その意味を持っています。これから示す内容は、政策を審議 される皆さんにしてみれば、ささいなことと感じられるかもしれません。しかし、その ささいなことがないがしろにされてしまうことが差別や偏見の何よりの原因であり、そ れが当事者たちの孤立や生きづらさにつながっています。そんな理解を皆さんに持って いただいた上で、これからの意見や感想を聞いていただければ幸いです。  では本日の資料の4「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会中間 とりまとめ(本文)」と併せてお聞きください。  1章「今後の社会的養護の基本的方向」の2ページ目の5行目「虐待の世代間連鎖」 に関して、中にはこの表現そのものが虐待の世代間連鎖論を支持するととらえる人もい るのではないでしょうか。「虐待の世代間連鎖」が「被虐待児は長じて虐待をする」「虐 待者はかつての被虐待児である」という単線的な言説を通じて、マスコミなどによる相 乗効果もあり世情に流布されていますが、こうした言説が被虐待児へのエンパワーメン トにつながらないことは自明であります。むしろ虐待体験を乗り越えリジリアンスを発 揮した事例を紹介しつつ、その回復プロセスこそ注目すべきではないでしょうか。例え ば『被虐待児へのエンパワーメント・アプローチ-子どもとリジリアンスの視点から-』 を著している下西さんは「虐待の伝播」という言葉を使用しています。こうした実例は、 被虐待経験がある当事者から学ばなければ真相を把握することはできないのではないの でしょうか。その意味からも当事者の声の重要性があります。しかし、虐待を受けた人 が子育てに苦労し自分自身も虐待行為をしてしまう現状があるのは事実であり、この痛 ましい現状を報告書などに盛り込む必要性を感じている人は当事者の中にもいます。改 善すべきは、その人自身が被虐待児であることに必要以上にとらわれなければならない 現状があるということです。「虐待」という言葉はセンセーショナルでスティグマティッ クな響きが感じられます。「不適切な関わり」「マルトリートメント」などの表記も考え られないでしょうか。「虐待」に限定せず、同じく連鎖性のある「『社会的養護』の世代 間連鎖」もしくは「養護の再生産」といった表現に変更するのはどうでしょうか。  次に(2)、3ページの「子どもの状態と支援体制のイメージ」に関して。子どもの背景 や発達状態・環境(社会資源・人的資源含む)が示されず、心理的側面のみで支援体制が 導かれている点に疑問を感じています。特別な専門的ケアを受けることで子ども自身が 「自分は病気」ととらえる弊害がないか、疑問が生じます。心理的ケアを受けた子ども の実態をどう受け止めているのか、この場では無理だとしてもいつかの機会に伺えれば と思います。また私たち「日向ぼっこ」もさらに当事者の声を集約し発信していきたい です。  次に4ページの27行目「児童養護施設職員による虐待事件」に関して。児童養護施 設における施設内虐待の発生は非常に深刻な問題です。しかし一方で、他の社会的養護 の方法においても虐待事件の発生は十分考えられることから、児童養護施設だけでなく、 社会的養護全体で虐待が発生しないための方策が必要です。また家庭的養護においても 同様のことが言えます。施設内虐待事件の多発や再発防止に関して「中間とりまとめ」 は専らケア職員の専門性不足を指摘しているかのような印象があります。しかし、問題 をケア担当者の問題として収束してはならないのではないでしょうか。むしろ施設運営 管理上の課題にも着目するべきではないでしょうか。すなわち、施設の上部組織・意思 決定機関である法人組織・理事・評議委員会のあり方、施設長の資格要件のあいまいさ、 不祥事や人権侵害事件を発生させた場合の運営管理者の失格要件などにも言及し、社会 福祉法人の社会的責任の重さやトップの人権感覚、職業倫理上の課題にまで踏み込む姿 勢が問われているように思います。「施設運営の不透明性」という抽象的な指摘では不十 分な事態が進行しています。その危機感が強く求められています。  その意味で、施設内虐待事件や子どもに対する人権侵害事例をさらに真摯(しんし)に 検証し、その発生のメカニズムや構造的課題を明らかにするなど、子どもの権利擁護の 立場で施設が自ら抱え込んでいる触れられたくないタブーにもあえて踏み込む姿勢が必 要ではないでしょうか。例えば施設内虐待事件が発生した施設の多くが、施設長や一部 の配下の職員に人事権やケア方針などの決定の際、権限や権力が集中し過ぎていて、ワ ンマン・独裁運営管理になりやすい体質が憂慮されます。また世襲制や同族経営が多い 民間社会福祉法人経営と事件発生の関係性などの課題は、触れてはならない聖域として タブー視されてはいないでしょうか。「社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会」 には、こうした課題にもあえて踏み込んで検証する勇断を期待したいです。  次に5ページの8行目「児童養護施設等の施設におけるケア単位の小規模化・地域化」 に関して。「地域化」がどの程度の内容を示すのかがわかりにくいです。地域小規模児童 養護施設・地域分散型グループホームの充実や施設の地域への開放・連携などが考えら れますが「地域化」とは何か具体的な説明がほしいです。有識者の皆さんには福祉の地 域化の流れは当然かもしれません。しかし利用者の立場からいうと、自分の生活の場が 具体的な説明がなく地域化されることを不安がります。  次に5ページの17行目「治療・専門的ケア機能の強化」。治療・専門的ケア機能の強 化が医療モデル化の方向へと過度に進み過ぎると、専門家依存や薬漬け、医療への囲い 込み現象が生じてしまうのではないでしょうか。本来的な施設養育において蓄積されて きた生活モデルこそ、主とする姿勢を忘れないでほしいです。治療・専門的ケア機能の 実態をどう把握されているのかを伺いたいです。  5ページの22行目「自立支援のための取組」。子どもによっては必ずしも上級学校へ の進学のみが適切とは限らない場合があります。例えば学校の成績は振るわないが手先 が器用でいわゆる技能職など「ものつくり職人」などへの道が適している場合もありま す。子どもには自己の特性を生かした進路選択を、子どもと一緒に模索してほしいです。 かつて児童養護施設の中卒児童の就職受け入れ先として機能していた、住み込みかつ職 業指導を兼ねた職親制度、すなわち保護受託者制度は利用者の減少などから2004年12 月の「児童福祉法」改正時に廃止されてしまいました。これを再度現代的で新たな職親 制度として復活できないでしょうか。併せて2005年1月から施行されている職業指導 里親制度との関連と実績について、いつか伺いたいです。  また就職即措置解除とするには不安や課題を抱えている場合、一定期間の措置を継続 し、施設で過ごしながら働くことや近くのアパートで一人暮らしをするなど、社会的自 立のための助走期間が必要で、余裕を持って支援していく仕組みを検討してほしいです。 就労や進学だけが自立支援ではなく、子どもが社会で自立して生きていくためのサポー トは援助者が子どもと出会った時点から始まるものです。その意識は全施設・全援助者 共通であってほしいと願います。  次に5ページの22行目「進学の支援」。何とか高校に入学させて進学率を上げること に躍起になるのではなく、卒業こそ大事にしてほしいです。進学率よりも卒業率こそ重 要視すべきではないでしょうか。施設に居たくないからという理由で高校を中退する子 どもが居るという現実の改善に取り組んでほしいです。高校卒業の大切さや意味を、援 助者が子どもに伝え切れていない現状があるように感じます。「児童福祉法」では18歳 まで施設にいていいと定められているにもかかわらず、一部の施設では、いまだに高校 に行かないなら施設を出ていかなくてはならないという根拠のない慣習があるのではな いでしょうか。あるのならば、こういった不公平を解消しなければなりません。子ども の最善の利益を真剣に考えるのであれば、援助のしやすさ、要するに施設や職員の都合 よりも子どもが得られるものに重点を置くべきです。例えば高校を卒業する、学歴が充 実する、就職先が拡大する、生活の安定につながる。中卒後の専門的技能習得を見据え た進路決定がきちんとなされていれば、就職が安定し、生活が安定します。  次に2章目の7ページ6行目「施設におけるケア単位の小規模化の推進方策」。小規 模化が絶対的な理想のように掲げられています。確かに、子どもにとって一般的な育ち に近い養育が保障されるのは望ましいことです。しかし、その力量を備えた養育者の下 で養育されていなければ、子どもから「その通り」という声は聞こえないでしょう。マ ンパワーの向上・標準化の伴わない小規模化は、ただでさえ大人優位の児童福祉施設を ますます閉鎖的・独善的にさせると言っても過言ではありません。要するに大切なのは 施設形態論ではなく援助者の質です。  小規模化リスクをこれから挙げます。aは小規模化による個別対応が可能になるが、 子ども・援助者共に密な人間関係の中で逃げ場を失います。援助者の一方的支配下に置 かれやすい面が生じるのです。密な人間関係から生じる過度な緊張から、家庭内暴力(身 体的・心理的含む)現象に近似した小規模施設内暴力現象が生じる恐れがあります。反 面、援助者は力量が明確になり孤立化、密室化、自信喪失、バーンアウトに追い込まれ やすいです。また小規模化は、援助者の労働強化につながりやすいです。そのことが、 ひいては子どもに対する八つ当たりなどにつながると考えられます。bはケア職員の専 門性の確保とスーパーバイズの仕組みに言及がありますが、施設長と主任クラスのスー パービジョンの力量こそ課題ではないでしょうか。cは個別対応とケアのあり方に関し て、個別対応を実現するための適切な職員配置は可能であろうか。集団処遇とは異なる 個別ケアの手法を学ぶ研修、スーパービジョン体制の確立が求められています。dはケ アの密室化への備えとして、処遇の公開性・社会化・報告・連絡・相談体制の強化、第 三者評価・オンブズマン制度の導入、意見表明権の保障・苦情解決の仕組みの実質化な どが求められます。  次に7ページの「社会的養護を必要とする子どもの支援プロセスのイメージ図」に関 して。サービス評価の視点が欠けています。支援プロセスのイメージにサービス評価機 関も入れるべきです。支援プロセスを(1)子育て支援・相談(虐待予防等)、(2)専門相談・ 通告・調査、一時保護・アセスメント、(3)里親・施設等への措置、(4)措置中のフォロー、 アセスメント、ケアの再検討、(5)退所後の支援という流れで示してありますが、それぞ れの支援のあり方を検証する場合には、社会的養護以前から退所後支援という、入口か ら出口という一方向からの視点ではなく、退所後の実態(出口)から入口を見るという双 方向からの検証や評価が必要ではないでしょうか。退所後の支援を中心となって行う機 関が示されていない現状では、退所後の子どもたちが不安定になるのは目に見えている のではないでしょうか。2004年の「児童福祉法」改正でアフターケアは義務付けられた のであるし、既に里親・施設によっては尽力されている場合もあります。せめて里親・ 施設、自立援助ホームは退所後の支援の担い手として表してほしいです。「民間団体」と 同様に「児童養護の当事者団体」の表記がいつか自然になされるよう、私たち「日向ぼ っこ」は努力したいです。  7ページ19行目「関係機関等の役割分担と機能強化及び地域ネットワークの確立」に 関して。連携をとるのが望ましいことは痛いほど理解できます。しかし指揮を取るべき 機関を明確にしなくては実現できないのではないでしょうか。どの機関も手一杯の現状 です。まずは行政が取りまとめを行うべきなのではないでしょうか。  次に9ページ28行目「施設機能の見直し」に関して。そもそも措置される施設種別 が子どもの最善の利益に鑑みて適しているかどうかを再検討する必要があります。  次に10ページの4行目「家庭に対する支援を強化することが重要」と、5段落目にあ る「母子生活支援については」。親・家族への支援に特化した部署・機関が必要です。施 設退所後のつまずきの一因に親・家族の問題に再び翻弄(ほんろう)されることが挙げら れます。例えば母子生活支援施設が、母子に限らずそれを担うことが期待されます。現 行の法制度で難しいのであれば「児童福祉法」の見直しに踏み込み、「子ども家庭福祉法」 あるいは「青少年福祉法」となるものの立法を模索する必要があるのではないでしょう か。現行「児童福祉法」などの改正を議論するに当たっては、18歳以上20歳未満の、 法の谷間を解消しなくてはなりません。  次に10ページ29行目「社会的養護の最終的な目標は」。「自立」には「中間とりまと め」で指しているであろう自助的自立のみならず、他者との相互扶助で成り立つ依存的 自立があることも、子どもたちには伝えてほしいです。また、援助者自身が自立した大 人であるのかを振り返る機会を持ち、子どもたちが半ば自立を強制されている現状をあ らためて考えてほしいです。  11ページ22行目「人材確保とその質の向上」について。「施設職員の資格要件の現状 と課題として、保育士の資格は「児童福祉法」第18条の6「保育士の資格」、第18条 の4「保育士の定義」、第18条の5「欠格事由」が定められています。しかし児童指導 員の資格は「児童福祉施設最低基準」の第7章「児童養護施設」第43条で「児童指導 員の資格」が規定されているに過ぎません。施設長の資格要件の規定は明確ではありま せん。「社会福祉法」第61条「社会福祉事業経営の準則」に事業経営者としての経営責 任の規定はありますが、資格要件も失格要件の規定も明らかではありません。施設長お よび法人理事長は単に施設経営のみならず、施設運営の最高責任者であります。現状で は、施設によっては権限ばかりが強く、権力のけん制バランスの仕組みが構築されてい ません。大いなる課題ではないでしょうか。福祉における人材確保が言われる場合には、 専らケアワーカーに集中しています。施設長などの管理運営責任者の力量や資質も、も っと問われるべきではないでしょうか。  12ページ1行目「職員が長く勤められるよう」と、他の社会福祉分野も経験する必要 があるという言及に関して。社会福祉分野に限定せず、ぜひ子どもが将来就くであろう 就職先なども念頭に一般企業などでも就労経験をしてほしいです。  12ページ4行目「ケアの方法論・的確なアセスメント方法の確立、ケア単位の小規模 化に伴う科学的評価などの確立」に関して。人間教育や施設養育論・福祉の対象への過 度な科学主義の導入による弊害も、考慮に入れる必要があるのではないでしょうか。福 祉と教育の分野にはその対象者との信頼関係・相互関係性の構築が求められるという観 点から、科学主義がなじまない面もあります。科学主義は対象を合理化し普遍化する肯 定的側面がありますが、その反面、対象を物象化し非人間化し、人間の尊厳を冒しかね ない要素が潜んでいます。科学性の追及と人間性の実現という相反する要素についての バランス感覚を大切にしてほしいです。  全体を通して、社会的養護の評価のものさしは当事者の満足度であるべきですが「中 間とりまとめ」からはその当事者の視点が見受けられません。援助者や研究者が唱える ニーズばかりに耳を傾けるのではなく、今後はもっと、実際に子どもたちはどう感じて いるのか、何に困っているのか、どうしてほしいのかといった当事者の声を構想検討の 材料にしていただきたいです。  終わりに、さまざまな意見をさせていただきましたが、私たち「日向ぼっこ」も児童 養護の当事者団体としてできることに精一杯努めたいです。10年、20年後の社会的養 護の下、施設で生活する子どもたちの多くが施設での生活を負い目に感じることなく、 自らの人生を切り開けるように。  私たちの意見は以上です。ありがとうございました。 ○柏女委員長  どうもありがとうございました。短い時間で恐縮でしたが、お許しをいただきたいと 思います。委員の方々から、これに対するご質問等もあるとは思いますけれども、この 後の討議のときにまとめてお願いできればと思っています。ただ「日向ぼっこ」の廣瀬 さんが最後におっしゃっていたように、今日おみえの皆さん方も日ごろからかかわりの ある方がほとんどですので、当事者の方々からそうした声を受け取っていらっしゃると 思います。そうした声を踏まえながら、ご発言をいただければと思います。どうもあり がとうございました。  それでは続いて、資料5「検討項目(案)」について事務局よりご説明をお願いします。 よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  それでは資料5について、ご説明します。本専門委員会での「検討項目(案)」として、 事務局でまとめてみたものです。基本的に先ほどの検討会の「中間とりまとめ」を踏ま えて、「中間とりまとめ」でご指摘いただいた、それぞれの項目をより具体化する方向で 整理してみたものです。  まず「I社会的養護の見直しの方向性」とあります。「社会的養護を必要とする子ども の数の増加、虐待等子どもの抱える背景の多様化等が指摘される中、社会的養護体制は このような状況に適切に対応することが強く求められている。このため、社会的養護体 制に関する制度等について必要な見直しを行うとともに、質・量とも本格的な整備を促 進するための具体的方策について検討を行う」という記載にしてあります。  それから「II具体的な論点」ということで、それぞれ記してあります。まず一つ目の 柱として「子どもの状態に応じた支援体制の見直し」。「(1)家庭的養護の拡充」は「家庭 的な環境の下、地域の中でその個別性を確保しながら養育を行い、子どもが社会へ巣立 っていくことができるよう支援するという観点から、里親委託を促進するとともに小規 模グループ形態の住居・施設のあり方や児童養護施設等の施設機能を強化するための方 策について検討する」。  その中で、まず「(1)里親制度の拡充」です。ここは「中間とりまとめ」でも比較的具 体的な提言をいただいていて、また後ほどご説明しますが、実は幾つかの施策を既に私 どもの20年度の概算要求にも盛り込んでいます。ここでは「里親制度の拡充」として 二つの柱を掲げています。一つ目が「里親委託を促進するための制度的な枠組みについ てどのように考えるか」という論点を掲げています。具体的には検討会でも「中間とり まとめ」でもご指摘いただいていますように、養育里親と養子縁組を前提とした里親を きちんと区別してはどうか。その上で養育里親の社会的養護体制の中での位置付けを明 確化する。さらに、その養育里親の制度的枠組みの充実、整備する。例えば認定登録制 度は現在省令で記されていますが、こういったもののあり方、あるいは研修の義務化な どについてご検討いただければということです。また専門里親についても委託可能な児 童の範囲あるいは研修のあり方も論点だろうと思います。また、そういった制度的な整 備と併せて里親手当についても、里親による養育を社会的に評価するような額へ引き上 げていけばどうかというようなことです。  それから二つ目の柱「里親を支援する拠点の創設及びその役割について、どのように 考えるか」ということです。これも「中間とりまとめ」で具体的なご指摘もいただきま したけれども、乳児院あるいは児童養護施設等の施設、あるいはNPOというものを念 頭に置いて、ここは里親支援機関を創設してはどうかということ。それから里親支援機 関の役割として、養育里親の育成または研修、あるいは普及啓発活動、子どもを受託し た後の支援の実施等の役割、具体的にどのような役割をお願いすればいいのか、こうい ったことが論点になると思います。  ここで、資料7をご覧いただけますでしょうか。先ほど少し申しました私どもの平成 20年度の概算要求ですが、里親関係についてのみ簡単にご説明させていただきたいと思 います。先ほど申しましたように「中間とりまとめ」も踏まえて、幾つか概算要求をお 願いしています。  「1.社会的養護体制の拡充」として「(1)里親制度の拡充」です。「社会的養護体制の 見直しの一環として、養育里親と養子縁組を前提とした里親と区別するとともに、専門 里親が受託する児童の対象を拡大するなど里親制度の見直しを行うとともに、里親手当 の改善や里親支援体制の充実を図る」としてあります。「里親手当の改善」として「里親 委託を積極的に推進するため、里親制度の見直しと併せて、里親手当・専門里親手当に ついて、その改善を図る」としてあります。これは養育里親と養子縁組里親を分けた、 その養育里親についてだけということにしてありますが、その手当の拡充を図るという ことです。  それから、その二つ下に「里親支援機関による里親の支援(新規)」とあります。「里親 制度を充実し、里親委託を推進するため、新規里親の掘り起こし、子どもを受託してい る里親への支援等の業務を総合的に実施する事業を創設する」ということです。予算上 は、こういった事業そのものを児童相談所が引き続き自ら行うこともできるような格好 にしてありますが、そうではなくて乳児院等の施設あるいはNPOに委託していくこと もできるような予算組みにしています。  恐縮ですが、資料5に戻っていただいて、1枚目の一番下の「(2)小規模ケア形態の推 進」です。ここでは小規模住居におけるグループ形態での養育、これも「中間とりまと め」でご指摘をいただいていますが、これについて以下の観点からどのように考えるか。 現在、幾つかの地方自治体において、里親が5〜6人の子どもを受託して行っている、 いわゆる「里親ファミリーホーム」については、なかなか里父、里母の2人だけでは養 育や家事等の手が十分ではないとの指摘があります。また特に小学校高学年以上の子ど も等については、里親との1対1の関係をつくることが難しいような場合もあります。 このような場合は、小規模なグループでのケアが適していることもあるのではないかと いった指摘もあります。こういったことを踏まえて、小規模グループ形態の住居におい て、家庭的な養育環境の下で適切な支援の質の担保を図りつつ、一定人数の子どもを養 育する事業の制度化についてどのように考えるか。いわば里親と施設の中間に位置する ような養育形態になると思いますが、こういったやり方についてどのように考えるかと いうことが大きな論点ではないかと思います。具体的には、そういった小規模住居にお ける養育事業の制度化についてどう考えるか。また社会福祉事業への位置付けや、質の 担保等のための仕組み等についてどう考えるか。また人員配置や支援体制、あるいはど ういう方がこういった事業を実施できるということにするか。例えば里親だけではなく て、元施設職員等あるいは既存の施設や法人などもあり得るのかもしれません。そうい ったところで、どういう方にこの事業を行っていただけるようにするかというところが 論点になると思います。  それから「(2)施設機能の見直し」です。「多様化・複雑化する子どもの課題に的確に 対応するため、以下の観点から施設機能の充実・施設体系のあり方についてどのように 考えるか」「子どもの状態に応じた心理的ケア、治療的ケアの充実・強化」あるいは「パ ーマネンシーケア(継続した生活環境や人間関係に基づくケア)の強化」「ケア単位の小規 模化の推進」。要はこういったことに資するような施設体系の見直し等について、どのよ うに考えるかということが論点になると思います。具体的には「子どもの状態や年齢に 応じたケア体制の見直し・強化のための方策」「個別的なケアの実施の方策、ケア単位の 小規模化の推進の推進策」「適切なケアを行うための科学的根拠に基づくケアの方法論の 構築」「チームケアの推進とそのための体制整備」「関係機関との適切な連携体制の整備」 「施設による家庭支援や里親支援等の強化策」というところだと思います。  「2.社会的養護に関する関係機関等の役割分担と機能強化及び地域ネットワークの確 立」です。まず一つ目に「児童相談所のアセスメント機能の強化」を掲げています。児 童相談所のアセスメント機能の充実強化、あるいは里親施設に措置された後の継続的な アセスメントと、これに基づくケアを提供するための体制についてどのように考えるか ということです。具体的には「措置する際のアセスメントのあり方」「施設や里親への措 置・委託中の援助方針・自立支援計画の作成と見直しのあり方及びその際の施設等との 役割分担」それから「措置解除を検討する際の保護者や地域の支援体制に関する適切な 評価方法及び施設等との役割分担」などが論点になると思います。  それから「(2)家庭支援機能の強化」を挙げています。在宅におけるその家庭の支援体 制の強化や、親子分離を行った場合の子どもと保護者のかかわりに関する支援策につい てどのように考えるか。具体的には児童相談所あるいは市町村の要保護児童対策地域協 議会、施設あるいは児童家庭支援センター、こういった関係機関の役割分担と連携のあ り方、また施設における家庭支援の強化方策。現在でも予算上、施設において家庭支援 の事業が行えるようになっていますが、そういったことをどのように強化していくのか といったことです。  「3.自立援助ホームの見直し等自立支援策の拡充」とあります。「就労や進学の支援等 年長児童の自立支援のための取組をどのように拡充をしていくか」ということです。こ の辺りもそれぞれ「中間とりまとめ」でご指摘をいただいたことですが、一つは「自立 生活援助事業(自立援助ホーム)の見直しによる自立支援の強化・充実」です。例えば対 象児童の範囲、特に18歳以上の子どもについてどのように考えるのか。それから、子 どもの利用形態のあり方。単なる措置だけではなくて、子どもの意向も反映できるよう に、例えば都道府県との利用申し込みの仕組み等も考えられるのかどうか。あるいは財 政支援のあり方。今は1施設幾らという補助金で対応していますが、このままでいいの かどうか。そういったことが論点だろうと思います。  二つ目の「施設を退所した子ども等に対する相談等行う拠点事業の創設」これは実は 概算要求にも打ち出しているのですが、施設以外の相談拠点を設ける、あるいは先ほど ご意見をいただいた「日向ぼっこ」のような介護者グループの相互支援というか、そう いったことを応援するような予算要求も併せてしています。こういった事業も含めて、 この自立支援をどのように進めていけばいいのか。こういったことが論点になると思い ます。  「4.人材確保のための仕組みの拡充」ということで、三つほど柱を掲げています。一 つは「施設長・施設職員の要件の明確化」です。二つ目がいわゆるスーパーバイザーの 配置とか養成のあり方。ここでは具体的な検討項目として、自立支援計画等の作成・進 行管理、また職員の指導等を行う基幹的職員の配置、あるいはその基幹的職員に必要な 要件、また研修体制の整備といったことを掲げています。(3)は「国あるいは県の研修体 制の拡充」。具体的には「都道府県が人材育成を計画的に進めるための仕組みの導入」こ れは具体的には後ほど大きな6番で出てきますが、都道府県の整備計画、社会的養護の 整備計画を作っていただくときに、社会的養護に関する人材の育成に関する事項を位置 付けることなどが考えられるのではないかと思っています。それから「国による人材育 成に関する指針の作成、研修体制の拡充等」とあります。具体的には「都道府県による 計画作成のための指針の作成、都道府県で人材育成を担う指導者に対する研修の実施、 人材育成のためのカリキュラム作成等」が論点としてあるだろうと思います。  「5.措置された子どもの権利擁護の強化とケアの質の確保のための方策」です。施設 内虐待の防止等、措置された子どもの権利擁護の強化に関して、これも三つほど柱を掲 げています。一つは「措置された子どもの権利擁護を図るための体制整備」というとこ ろです。具体的には「子どもが意見を表明できる機会の確保」をどのようにして図って いくのか。それから第三者機関の設置等」とありますが、例えば下の(3)に「施設内虐待 を受けた子どもによる都道府県等への届出」とあります。こういった子どもがアプロー チする対象として児童相談所はもちろんですが、児童相談所と都道府県だけでいいのか という議論があります。従ってそういった児童相談所、あるいは都道府県という当事者 ではない第三者機関の設置等、そういった体制の整備が必要かどうかというところも論 点になると思います。  それから(2)が「監査体制の強化等ケアの質の向上のための取組の拡充」です。都道府 県における監査体制の強化ですが、例えば県が、今でももちろん当然監査をしています が、どうしても会計監査の方に重点が置かれてしまうところがあるようですので、養育 の中身までチェックしようと思えば、第三者を加えた監査チームを編成するなどの体制 整備が必要ではないかということが論点になると思います。また「国による監査マニュ アルの見直し、標準化」「養育に関する都道府県、施設、里親の責任の明確化と体制整備」 こういったことが論点かと思います。  それから「(3)施設内虐待に対する対応」として、具体的な検討項目として掲げている のは、いわゆる「高齢者虐待防止法」を参考にして、具体策を並べてみているところで す。こういった施策は他の分野で行われていますので参考にしつつ、措置された子ども の施設内虐待等に対する対応として、どのような具体策が必要かということを議論いた だければと思います。  最後に「6.社会的養護体制の計画的な整備」として「要保護児童に対し適切な支援を 行い得るような社会的養護の提供量を確保するという観点から、都道府県において計画 的にその整備を行う仕組みの構築についてどのように考えるか」ということです。具体 的には「都道府県における整備計画の策定とその内容」「都道府県が整備計画を作成する ための国による指針の策定とその内容」こういったところかと思います。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。それでは討議に移りたいと思いますが、先ほど事務局の方 からスケジュールの説明があり、今回と次回、合わせて2回で検討項目について議論す ることを予定しています。項目は6項目あり、ちょうど議論の時間が1時間残りました ので、できれば今日は検討項目の1番と2番の部分について主に議論いただき、次回は 残りの部分と再度全体を総括的に議論するという段取りで進めていきたいと思うのです が、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、特に ご意見がないようですので、このような段取りで進めていきたいと思います。  それでは、まず主として検討項目の1番・2番からご意見をお願いします。それから 先ほどの「日向ぼっこ」からのご意見に対する質問についても、併せてお願いをできれ ばと思います。1番と2番を区切らずに、そのままどちらでも結構ですので、ご意見を ちょうだいできればと思います。どなたからでも結構です。ありがとうございます。お 願いします。 ○奥山委員  1番2番というよりも、まず全体論というところで少しお話しさせて下さい。次回私 がいないので、少し意見を出させていただきたいと思います。一つは、私も何回かこう いう委員会に参加させていただいたのですけれども、いつもモヤモヤしながら終わって いるのです。その理由は、問題点は明らかになっていて、この子どもたちを何とかしな いといけないということも分かっているのに、結局いつもお金がないということで、そ れは無理だという意見を出さざるを得ない状態になっているのです。それが何か、理想 を小さくされたのが理想像だというような結論になって終わっているのが、いつもモヤ モヤしている原因なのではないかと自分で思うのです。国のお金がないのも事実でしょ う。ただ、お金がないということをどこかに書いていただきたい。本当は必要なのだけ れども出せないのだと。だからこの範囲でやるのだということを、少し明記していただ かないと、いつも私たちが「これが理想だ」と言っているように見えてしまうのが非常 に不満だったということに気付いて、そこを少し言わせていただきたいということがあ ります。  最初に出てきているように、量と質の問題が待ったなしの状態です。例えば虐待が発 見される子どもの数というのは倍倍に伸びていっているという状態にありながら、例え ば社会的養護にかかるお金が1.5倍になったら「よくやった」という感じになってしま うのはなぜなのだろうと思うのです。本当に20倍、30倍に問題が増えているのに、予 算が1.5倍で多くなったと思うという、そこのところの乖離(かいり)がとても気になる ところです。例えば見直しの方向性のところで、もう少しそこの危機感をきちんと出し た方が良いと思います。  それから全体なのですけれども、いろいろな制度の問題と予算上の問題あるいは県の 問題、法人の問題などがこの中にちりばめられていると思います。そこを少し明確化し た方がいいと思います。国がつくる制度、そして国がつくる制度に対して国がどう責任 を取っていくのか。それから県がやるべきこと、そして県がそれにどう責任をとるのか ということ。例えば1番・2番から話が飛んでしまうので申し訳ないのですが、施設内 虐待(里親虐待を含めて)といった社会的養護の中にいる方たちが権利侵害を受けてい るという問題に関して、制度による問題点というのも必ずあるはずです。私は、逆に言 えば制度の問題点は5〜6割以上に、大きいのではないかと思います。とすれば、国が きちんと検証すべきだと思います。制度に問題があるかどうかの検証は、国が制度を担 っているのですから国がやらざるを得ない問題だと思っています。そして、県は県でき ちんと監査をしているという立場の中からの検証が必要でしょうし。実際に制度のどこ に問題があって、どういう状態で、何が問題だということを、検証抜きに考えるのは困 難です。今は待ったなしなので制度を変えなければならないのは仕方がないのですが、 危機管理としてやらなければいけないことと、全体を見た中できちんと検証をしていく ということの双方を明確にしてやっていかなければいけないと思います。  もう一つは、どうしても国の制度は固く固くできていますよね。ですから、自由度が かなり少ないのではないかと思うのです。新しい試みがなかなか発展してこないという ことは、どうしても否めないことなのだと思うのです。それで突然、この前の熊本のよ うに「赤ちゃんポスト」といって皆大騒ぎしてしまうという状況が出てくるわけです。 いろいろな考え方があるということをもう少し拾い集める制度、それからこの分野に関 しては、単にアイデアだけを拾い集めるのではなくて、それをやってみて検証するとい うこともどうしても必要になりますから、そのための予算が必要です。それをやってみ て「やっぱりいいよ」ということをきちんと出していけるような自由度、自由な枠組み もやはりないと進みません。どんどん古くなってしまうと思うのです。今の、この制度 自体が悪いわけではないと思うのです。昔はよかった制度だと思います。ただ時代とと もに変化してこなかった制度だという問題点が非常に大きいと思います。時代の移り変 わりのスピードがあまりにも速くなっていますので、時代に合わせて変化できていくよ うなものを組み込める制度でないと、今一番いいと思われる制度をつくったところで、 数年後には古くなるということが起きてくるのではないかと思います。ですから、そこ のところをもう少し組み込んでいかなければいけないのではないかと思います。どちら かというと細かいところは後で。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございました。この議論の入り口にもかかわる、とても大切な視点をご指 摘いただいたように思います。  1点目のお金の関係については、児童分野は高齢者分野に比べて財源が少な過ぎるの ではないかということは、今までも報告書の中に盛り込まれています。そういう前例も あり、もしそういうことが可能であれば、この報告書は国に対する提言になりますので、 その中にも盛り込んでいくことは可能ではないかと思いました。  それから制度の問題について、現状を検証するということですので、これについては 国の方も検証する、それから都道府県も検証していく。地方自治体も検証する。あるい は施設も自分たちの運営方法について検証するというようなことを、それぞれの段階で やっていくためのシステムづくりということも考えていかなければならないかなと思い ながら伺いました。  三つ目に、国の自由度の少なさですが、これについてもまさにその通りだと思います。 そのために、例えばAM(Asset Management)の資金や民間の資金あるいは、そうした先 駆的なものに対する取り組みもあるのですが、今、奥山委員がおっしゃったような、な お国としてのいわばプロジェクト予算というか、外国でやっているようなブロックグラ ントのような資金を出すということもあっていいのかなということで、全体にかかわる とても大切なご指摘をいただいたと思います。  それに関連することでも結構ですし、細部に入っていただいても構いません。では藤 野委員の後に吉田委員ということでお願いします。 ○藤野委員  児童養護施設の立場で。この間、平成17年度の数字ですが、社会的養護が全体で 47,337人です。その内児童養護施設が30,830人、乳児院が3,077人、情短施設が1,030 人、母子生活支援施設が7,116人、里親が3,293人等となっています。社会的養護の措 置児童の65.1%が児童養護施設入所児童です。しかも措置ですから、強制的に親子分離 をして3万人の子どもたちが入所しているわけです。そういう中で、最近児童虐待防止 法あるいは「児童福祉法」が改正されて、措置権がますます強化されています。待った なしで児童養護施設等は満杯状態で、大変な状況を迎えている。その中で、施設の最低 基準という部分は30年近く手が付けられていない。確かに加算という格好では付いて きていますが、やはり根本的なところに手が付いていない状況があるわけです。それを どうするのかということなのですが、私は今の、例えば最低基準を見たら、乳児1.7、1・ 2歳児4、学童6対1となっています。児童養護施設の養育は24時間、365日の対応で すから、職員の交替制勤務の実情では、現在の職員配置基準の4倍、例えば学童ですと、 養護施設の場合6対1で6×4=24だから、1人の職員が24人の子どもを見なさいとい う数字なのです。しかも、それが養護施設に関して言えば62.1%が被虐待児ですから、 そういう子どもを1対24という数字で見なさいということを実際にやっているのです。 さらに20.2%は知的障害児や発達障害児等が入ってきていますから、数字を見ても大変 な数字なのです。  そういう中で、私はこの間少し実態調査をしたのですけれども、例えば大舎の施設と 小舎の施設で、1日子どもにどのくらい触れ合ったのだろうという数字を見たら、大体 1日グループホームのような小舎の場合で3.何時間という数字が挙がっていました。大 舎の場合ですと、1時間あるかないかという。職員が子ども一人にあたれる時間で、雑 用している時間も含んでいるので、子どもと接する時間はほんのわずかです。先ほど「日 向ぼっこ」の方も大舎であろうが小舎であろうが、要は本当にきちんと人間の尊厳を守 ってくれる職員と出会うかどうかと言われましたが、この間の実態調査を見ても、例え ば施設の職員の平均勤続年数というか、20〜24歳の職員が中心にケアをしているという 施設もあるのです。そんな状況の中で、これを公的養育と言えるのかどうかと思うので す。ですから、ぜひともこの委員会で、そこのところを何らかの形で打破していただき たいと思っています。  そこで里親制度の拡充ということで、当面の来年度概算要求を見ましたら、そこが大 きなポイントになっています。それはそれでいいのですが、里親というのはその4万7 千のうちの2,300です。かなりわずかな部分です。財源問題もあろうかとは思いますが、 3万人以上の子どもたちがいる児童養護施設を見捨てないでいただきたいのです。例え ば打破の方向として、小規模ケアの推進というのがここに挙がっていました。ところが 実態からいうと、例えば地域小規模児童養護施設を造っていただきました。これは2対 1の職員配置を実現していただいたのです。ところが小規模児童養護施設は、今の施設 の外に定員を増やさないと認めてもらえないということなのです。あるいは小規模ケア の推進ということで、大舎の中で小規模なケアの部分をつくっていただきました。これ も施設で1カ所しか認めないということなのです。そうすると3万人を預かっている 我々としては、子どもを預かっている立場からすると、今入っている子どもの人権が守 られていないと本当に感じるわけです。それを何とかしたいと思ったら、外出しで定員 を増やしても変わらないわけです。変革できないわけです。本当にそれを変えようと思 えば、やはり中でそれを変えていく以外ないと思っているのです。そういう意味で、ぜ ひ私は現状をきちんと分析してもらって、そこから一つ一つ打破していく方策を、ぜひ とも盛り込んでいただきたいと思うのです。そういう意味では、例えば小規模ケアの問 題にしても、実際には児童養護施設558施設の内70数%は大舎制なのです。子どもの 数からすると90%は超えます。しかも小舎といっても12人の子どもを見る小舎から6 〜7人まであるわけです。そういう意味で、特に小規模ケアに関しては、幾つでも認め ますよと。70%の大舎が小舎に切り替えていこうと思えば、幾つでも認めますよという ことがないと進まないだろうと思います。それから、もう一つ里親制度のことについて は。 ○柏女委員長  すみません。多くの方にご発言いただきたいので、手短にお願いできればと思います。 ○藤野委員  はい、すみません。里親制度については、私は全国児童養護施設協議会でも、この里 親支援拠点の創設というのに、ぜひ児童養護施設が名乗りを挙げてほしいと内部では言 っています。児童養護施設と里親と本当に共同作業としてやらないと、かなりしんどい と思います。というのは、里親は保護者に対する対応など、かなりしんどいと思います。 それともう一つは最終的な里親のフォローというか、そういうことが必要だろうと思い ます。時間がありませんので、その辺のことをぜひよろしくお願いしたいと思います。 ○柏女委員長  どうもありがとうございます。それでは続いて、吉田委員、お願いします。 ○吉田委員  先ほどの奥山委員と同じように、全体的なところで方向性だけ少し意見を述べさせて いただきたいのです。社会的養護のあり方を考えるときに、本当の意味での社会的とい うところを前面に出す必要があるだろう。言い換えれば、特に児童養護がイメージにあ るのですが、それぞれの施設の裁量の幅が大きいのではないだろうか。今、措置制度が 取られている中で、子どもがどこに措置されているかによって生活の質が変わってくる というのは、子どもの視点からするとやはりおかしいのではないだろうか。そういう点 では、どこに行ってもこれだけはきちんと確保されるという意味での養護を実現すべき だろうと、そういう点で社会的というところを全面的に出すべきだと思います。特に子 どもの利益を代弁すべき親に期待するということが難しいという場面があるわけです。 そうした中では何らかの形で、従来に比べて監督権限なり規制なりがあってもいいので はないか。現在の社会福祉の流れと機を一にする必要はない。社会的養護の特殊性とい うことをきちんと押さえて、議論をしていくべきではないかということ。この点は前の 構想検討委員会でも出た、あかつき事件の最高裁判決にあるように、公権力の行使とし て児童養護が行われているという認識に最高裁が立っているわけでありますので、それ に基づいて考えれば、今後、先ほどもありました監査や基準も含めて裁量の幅が大き過 ぎるのではないかという観点から議論したいと思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございます。他にいかがですか。木ノ内委員、どうぞ。 ○木ノ内委員  先ほどの里親の支援について施設を活用してほしいということですが、地域にもよる のでしょうが、非常に田舎の、外れた方に施設があって都市部にないということがあっ て、その辺が難しいと思います。  質問したいのは少し違って藤井課長に質問したいのですが、概算要求等でかなり具体 的な里親制度の拡充について出ていますので、多分制度の全体像がかなり見えているの だろうと思います。そこで質問なのですが、里親制度の拡充の中で、養育里親と養子縁 組里親を区別するということがあります。従来の養子縁組というのは里親ではなくて制 度から外れていましたので、ここで養子縁組里親というのは、養子縁組希望の里親なの か、あるいは養子縁組をしていても里親として認めるのかというような質問が一つあり ます。一つは、養子縁組を希望する里親であっても、養子縁組希望里親が養育しながら 実は養育里親の方に目覚めていくというケースが非常に多いので、ここの入り口論でい ろいろと言っていくのが難しいのですけども。もう一つは、養子縁組を希望した場合で も、ある期間里親として活動するということがあります。特別養子縁組の場合で、ある 期間を里親として活動するのか。この辺のところの養育里親と養子縁組里親の明確な区 別が、今のところまだ少しはっきりしていないのではないかと思います。  もう一つは、この2枚目のファミリーホームの件で、施設の小舎制の問題と里親の中 でも通常の養育里親とファミリーホームとの区別というか、その辺はどのようにお考え なのか。これから議論をしていく余地の区分とも関連しますので、お聞かせ願いたいと 思っています。 ○柏女委員長  それでは、今の点について事務局の方から、現在事務局でご検討のところ、あるいは 養子縁組に関係して考えているところをご説明いただいて、その後、この委員会に委ね られている細部の部分を少しお話しいただければと思います。 ○藤井家庭福祉課長  いずれも具体的なところは、まさにこの委員会でご審議いただければと思いますが、 私どもの基本的な考え方として、前者の養子縁組を前提とした里親と養育里親の違いと いう意味では、子どもと養子縁組をした後については、里親という位置付けではないの だろうと思っています。ですから、ここでいう養子縁組を前提とした里親というのは、 基本的には養子縁組を前提としていわゆる交流期間、民法上は半年以上交流することに なっています。現在の里親制度ですとその期間も里親という位置付けで、それも今の私 どもの省令でいきますと養育里親という位置付けで、社会的養護の一環としての里親と 一緒になったような形になっていますので、そこを分けるということです。そういう意 味では、かなり里親ご本人の意思というか、主観的な意思にかかわるところではありま すけれども、そういった6カ月以上の期間における養子縁組を前提とした里親と、そう ではない、もっと長期間や短期も含めた社会的養護の一環としての養育をしていただけ る里親というのを分けていこうという趣旨です。 それから、予算要求上は手当を分けるというところしか、率直に言えば出てきません。 養育里親について、そういった意味での手当を大幅に引き上げる。逆に養子縁組を前提 とした半年以上の期間の里親については、むしろ手当をやめるというような整理をして います。ただ、先ほどもご説明したように、私どもとしては、手当の引き上げもそうい った養育里親に対する制度的な枠組みの整備とセットだろうと思っていますので、その 制度的な枠組みの整備について具体的にどのようにしていけばいいのかというところは、 本専門委員会で議論いただければありがたいと思っています。  また、後者の養育里親とファミリーホームの違いは、私どものイメージとしては、例 えば養育里親は、今は6人までいけるのですが4人までと区切り、5人、6人という多 人数の子どもを養育していただく形態については小規模なグループケアということで、 ファミリーホームのような、いわゆる事業化された世界に移行していただくというよう なイメージを持って、この検討項目案は整理させていただいています。もちろん、そこ も当然ご意見をいただきながら、この専門委員会で審議いただければありがたいと思い ます。 ○柏女委員長  ありがとうございます。木ノ内委員、よろしいですか。では、それを踏まえてのご意 見ということで。 ○木ノ内委員  現在の運用でいうと、養子縁組を希望する里親もあえて養子縁組里親という名称では なく養育里親として登録して、それで養子縁組の体制が整えば養子縁組をして養育里親 をやめる、あるいは登録はやめずに養子縁組をしながら里親活動もするというケースが 多いのですけれども、運用面でイメージがよくわからないのです。里親希望の人が手を 挙げて里親登録をするのですが、その人があえて養子縁組里親と言わずに「私は養育里 親をやりたいのです」と言っても良いわけですよね。養育里親をやりながら措置された 子どもの様子を見て「では養子縁組をしましょう」というのは、むしろ観念というか考 え方としては、養子縁組里親と養育里親の間を行ったり来たりする可能性があるのでは ないかと思うのです。こういう部分の運用がなかなか見えてこないと思っているのです。 以上です。 ○藤井家庭福祉課長  確かに、そこは運営上の課題があると思います。例えば、東京都では養育家庭と言っ ていますが、東京都は既に社会的養護を前提とした養育家庭と養子縁組を前提とした里 親と完全に分けて登録をして手当の額も違えていたりしますので、そういった東京都の 例なども参考としながら、そこの実際の具体的な運用面のやり方みたいなことは、ここ でもご意見をいただければありがたいと思いますし、私どもも検討させていただきたい と思います。 ○柏女委員長  よろしいですか。それでは、他にはいかがですか。では大塩委員、西澤委員、山縣委 員の順番でお願いします。 ○大塩委員  失礼します。母子生活支援施設の大塩です。今日の議論は、この検討項目の2番まで でしたね。 ○柏女委員長  できれば。次回お休みなので、今回ぜひ出しておきたいということがあれば別ですが。 ○大塩委員  里親とはあまり直接的な関係がないものですから、2番についての意見というかお願 いなのです。ここに「児童相談所のアセスメント機能の強化」ということで書いてあり ますが、母子生活支援施設は母親と子どもたちが生活をする施設で、母親にケアをし、 子どもたちにケアをし、そして母親と子どもたちの関係性への支援をする施設なのです。 ところが、実際には全くアセスメントをされなくて入所されているということがほとん どなのです。今日から困られて入所ということになりますので、もちろん受けますけれ ども、入所された後で、DV被害や虐待や経済的困窮があり、それから知的障害なり発 達につまずきを抱える子どもたちだったりと、入所されてからさまざまな状況がわかっ てきます。そこで福祉事務所のアセスメント機能の強化を、きちんとしていただきたい ということ。それから社会的養護の中では、母子生活支援施設で生活をする子どもたち も社会的養護を受けている子どもたちですから、必要があれば入所後につなぎますけれ ど、きちんと入所時点でつないでいただきたいと思います。  それから、医療面での支援も大変必要です。母親たちはいろいろな病気を持って入っ てこられます。入所時には医療機関で健康診断を受けますが、それさえも自費なのです。 お金がない中で母親たちが自分で健康診断を受けなければいけないということがありま す。検査項目も結核・梅毒・検便の3点なのです。でも、今は肝炎などのいろいろな問 題もありますので、もう少し血液検査をきちんとしていただくなどしていただきたいと 思っております。集団生活になりますので。その辺もきちんと条件整備していただきた いと思っていることです。  それから、2番の「(2)家庭支援機能の強化」というところで「在宅における支援体制 の強化」とうたってあるのですが、母子生活支援施設が行っている仕事がまさにこれだ と思います。在宅における母子の方に対する支援を母子生活支援施設の生活の場面でし ているということですから、まさに家族支援を行っているということです。そこを少し PRさせていただきたいと思って発言させていただきました。 ○柏女委員長  どうもありがとうございました。とても大切な点、やや前回の社会的構想検討委員会 の検討で薄かった部分について、貴重なご指摘をいただいたと思います。ありがとうご ざいます。  では西澤委員、どうぞ。 ○西澤委員  本来言う話の前に今、大塩委員の話を聞いて思ったのですが、母子生活支援施設は市 町村で、社会的養護の主体が都道府県というその格差の問題というか、そこにあると思 うのです。福祉事務所にアセスメントといっても、自治体によって福祉事務所の方の濃 淡がものすごく違うではないですか。母親のアセスメントをどうするのかというのはわ かりませんが、子どもに関して言うならば、やはり児童相談所がきちんとかむようなシ ステムというのをつくった方がいいのかなと思って聞いていました。  本来私の言いたかったことの一つですが、先ほどの廣瀬さんの指摘にもあったように、 施設機能のところで心理的ケア、治療的ケアというと、どうしても心理士がどうの、医 師がどうのという世界になっていく。というのは、こちらがそう思っていなくても受け 取る側がそう受け止めるのです。ですから、やはり生活モデルというところ、生活の中 での子どものケアをまず第一義に、それを中心にするのだというのはきちんと書いてい かなければいけないのではないかと思うのです。その上でのケアの方法論の構築で、ケ アの方法論というのはあくまでも専門性を持った施設の日常生活でのケアということで すから、そういったものを構築してほしいと思います。  それから一つ質問というか、あまりに細かいのですが、パーマネンシーケアというの はどこから来た言葉なのかというのが最近少しわからなくなっています。ここでは「継 続した生活環境や人間関係に基づくケア」となっていますが、本来のパーマネンシープ ランというのはソーシャルワークの問題で、要は児童相談所等が子どもを分離したり何 らかの措置を行うときに、その子どもが成人するときまでを見通してプランを立てて、 その中の一部で子どもを施設に措置するといったものをパーマネンシープランニングや パーマネンシープログラムと呼んだのだと思うので、継続して同じ生活環境で人間関係 の中でケアをするというのは、そういう概念をここで立てたのだったのならそれでいい のですが、その辺の整理が少し必要かなと思っています。  それから、先ほどの吉田委員と話が少しずれてしまうところがあるかもしれないので すが、ケア単位の小規模化を一気に進めることは多分できないだろうと思うのです。そ うすると先ほど藤野委員も言われていましたけれども、今の施設がだんだん小規模化し ていくのを導いていく施策というか、それを一気には変えられないので、そちらの方向 に向かって全体が進んでいくのだと。これは、先ほどの奥山委員の話とも一致するとこ ろなのですが、多分小規模化を抑制している一番ネックになるのは、職員の配置数だと 思うのです。あるいは先ほど廣瀬さんの話で、規模の問題よりは職員の質の問題と言わ れましたが、質の問題もそうですが数も必要なのです。そう考えると、今の500何10 カ所の養護施設の職員数を一気に増やすわけには当然いかないのですから、小規模化を 促進するための手だてというのを何らか盛り込んでいく。その中に、例えば私の試算だ と大体諸外国を見ても、学齢期の子どもだと1対1の配置が必要なのです。それができ ないのは、先ほど奥山先生が言ったことというか、財政上の問題で。そうなると、本来 これは理想なのだと。一つの意見としては1対1が適切であるという意見もある。けれ ども今これはできないので、これだけのおためごかしをしましたというようなことを書 いていただいたらどうかと思っています。  それから、すみません。私も次回来られないので少し越えてしまうのですが、施設内 虐待のことについて、それは施設内だけではなく里親あるいは他のところでもというこ とも当然ありましょうが、とにかく社会的養護における虐待というシステム虐待のよう なものがあるということが初めてこういう委員会で出てきたというのは、法改正の附帯 決議というか、附則を受けてのことだと思うのです。これは一定の評価をしたいと思う のですが、やはり今まで議論していない分、極めて議論が薄いのです。高齢者虐待防止 の手だてに基づいて書かれたというような対応に関しても、実際にはこのようには多分 いかないだろうと思うのです。ただ、国としては、ここでは都道府県が中心なのだとい うスタンスでそれはよくわかるのですが、都道府県レベルも非常に迷っている。各地で 施設内虐待の対応について、非常に温度差がある。そういった都道府県の対応の実態は こうなのだということは、これは国が所管してもよいのではないかと私は思っているの で、そういう意味で、都道府県で今まで明らかになった施設内虐待の事件にどう対応し たかといったことを、総合的にメタ分析をされるということも、国としてはやるべきと ころの一つではないかと思っています。少し次回の話題のところまでいってしまいまし たが、すみません。そういうところです。 ○柏女委員長  ありがとうございます。パーマネンシーケアうんぬんの用語については、また追って 整理をするということで、ここでの議論は止めておきたいと思います。  それから、今、西澤委員からご指摘があった次回お休みされる方が後半をということ は非常に大事なのですが、これは提案なのですけれども、次回お休みされる方もいらっ しゃるということで、ペーパーで出していただいて、次回報告をしていただくというこ とで考えたいと思いますが、よろしいですか。それは事務局の方にも諮りたいのですが、 よろしいですか。 ○藤井家庭福祉課長  はい。 ○柏女委員長  それでは、この場ではどうしても今回との議論の場との関係で言っておきたいという こと以外は、次回までにご意見としてペーパーでご提出をいただくようにお願いできれ ばと思います。  それでは山縣委員、お待たせしました。よろしくお願いします。 ○山縣委員  時間をいただいてありがとうございます。各委員の共通している部分については、特 に異論はありませんので、重ならないところ、あるいは若干重なる部分もありますけれ ども、里親に関連して2点、施設に関連して2点、それから最後の地域に関連して1点 だけの5点を少しお話しさせてください。  まず1点目ですけれども、養子里親と養育里親の分離に基本的には賛成なのですが、 木ノ内委員と藤井家庭福祉課長がおっしゃいましたように、実務的にはかなり難しい問 題がある。その一つの例として私が知っている範囲でいうと、子どもが大きくなったら 子どもの意思によって養子にするかどうかを決めるのだと。それまでは養育里親ででい くのだと。そういう姿勢というのは、私は非常に大切なのではないかと思っています。 子どもの意思を尊重して決定していくという意味で、その辺があまり中途半端にならな いような考え方をしたいなと、してほしいなと思っています。  2点目は里親支援機能、あるいはこれも次回に若干重なっているのですが「退所後の 支援」というところで「支援機関を」というのがあります。すでにこれについては、NPO 等による新しいものがありますから、新たな支援機関というのも考えられると思うので す。あるいは今日の「日向ぼっこ」のようなものがもう少し組織化されて、実力をつけ られたら可能性も出てくると思うのですが、まず私は児童家庭支援センターにそういう ことをぜひ期待したいと思います。今日の話の中ではあまり出ていないのですが、今の 児童家庭支援センターは児童養護施設と併設を原則にしています。それを逆にむしろ独 立型を相当前に出すことによって、施設側もかなり努力していただいて、最低中核市ぐ らいには一つぐらい。さらにもう少し小さい所にきめ細かに配置できるようなことを、 各施設所の方々に力を貸していただけないだろうかと考えています。  3点目、今度は施設の話になりますが、私はこの流れで小規模化ということに基本的 には賛成しているのですが、この中の一部にもありますように、単なる小規模化ではな く複数機能、明確な機能を付随した小規模なものを造ることによって、施設全体の中で はっきりと分かれている、機能分化ができているようなものがイメージできないのだろ うかと考えてみたらどうかと思います。  4点目です。これは最低基準に関連するところなのですが、最低基準の低さについて は恐らくほとんどの委員に異論がないところだと思います。そこをどうクリアするかと いうとき、あるいは小規模化を誘導する最低基準のあり方を考えたときに、例えば保育 所では基本の職員配置は定員によってほとんど変わらないわけですけれども、人数によ って運営費の差を付けているというやり方をしています。そういうものが小規模化の誘 導に結び付けるやり方になるのかどうかというのは、もう少し丁寧に検討してみてもよ いのかなと思っています。  最後になりますけれども、家庭支援、地域の話、地域支援ということです。今ここに ある項目だけを少し拾って揚げ足を取るような形で失礼なことになりますけれども、前 回の委員会の中間まとめまでの議論では、ここは市町村の役割、市町村の仕事の期待と いうのを相当大きく書いていたと思います。そこをもう1回浮上させて、予防的部分や アフターケア部分あるいは里親の開拓や里親のフォローといったところは、できるだけ 身近な市町村レベルでの強化というところを検討したらどうかと思います。  私も次回出られませんので、委員長がおっしゃったようにレポートを提出させていた だきたいと思います。ありがとうございました。 ○柏女委員長  どうもありがとうございました。でも、今何か言っておくことがあれば。よろしいで すか。 ○山縣委員  今言うと、次が。 ○柏女委員長  わかりました。ポイントを突いたご提言を五ついただいて、ありがとうございました。  では豊岡委員、よろしいですか。 ○豊岡委員  先ほど児童相談所の機能の話しが出ましたが、私は直接関係していますので、少し発 言させていただきます。まさに児童相談所のアセスメントが大事だというのはおっしゃ る通りですし、私どももそういうつもりでやってはいますけれども、正直申し上げてす べて万全にできているかというとまだまだアセスメント様式が開発途上であったり、す べてのケースに十分できているとは言い難い状況だと認めざるを得ません。ただ、少な くとも一人一人の将来を見越した、あるいは結構長期的なスパンでどうしようとしてい るのかということを、施設にも親にも示すような自立支援計画や援助方針とをつくって いかなければいけないと思って、日々できるだけ、やれる範囲ではやっているつもりで います。児童相談所と施設との協働の中で児童自立支援計画の見直しなどもやっていま すけれども、本当は定期的にできるだけの時間と人があればいいなと思っています。で も本当にこれをやろうとすると、またそれはそれで大変です。私どもの児童相談所だけ で300人以上措置をしていますから、この子どもたちの自立支援計画の見直しをするだ けでも、前期と後期の2回やれば600になりますので、これはもう大変な量になります。 その他の業務もあり、忙しいということが言いたいのではなくて、それだけ大変である けれども取り組みつつあると。そしてまた、これを確立していく必要があると思ってい ますので、そこは異論のないところです。先ほど出ました母子生活支援施設との協力と いうのも、まさにご指摘の通りだと思っています。  それから、家庭支援機能の強化というところで、東京都は市区町村に子ども家庭支援 センターというものを設けていますので、ある意味家庭支援というのは市区町村と協力 してやっていかなければいけないだろうと思っています。児童相談所は虐待の問題でい うと、どうしても母子分離を図る立場、する立場になってしまいますので、児童相談所 が後で支援を続けるというのは、これはまた非常に難しい問題もあるのです。片方で分 離をしつつ、なおかつまた今度はフォローに回らなければいけないということで、所内 では担当を代えるような形で工夫はしていますけれども、どうしても同じ機関の支援に なっていますので、児童相談所の機能としてその点は難しいところだと言えると思いま す。ただ、市区町村の力をうまく活用していく、それから連携をしていくというのは重 要だと思っています。  それから里親関係です。東京都ではもう既に養育里親と養子縁組里親ということで分 けて対応してきていますけれども、社会的養護ということで言えば、当然養育家庭や里 親がもっとクローズアップされていいのだろうと思いますし、養育家庭が担っている責 任というのも私はあると思っています。養育家庭制度をぜひ強化していきたいというこ とで、東京都でもいろいろと里親の新規開拓というのに力を入れています。現在東京で は約400の登録家庭がありますけれども、すべてに委託できているわけではないです。 私たちも何とか、家庭も増やしたいし委託も増やしたいというところでさまざまな工夫 をしていますけれども、やはりある程度数がいくと、その登録家庭の伸び悩みというの でしょうか、新規の開拓はどうしても難しいです。そこに困難なところがあります。そ ういう意味で、里親手当の問題やさまざまに新しい試み(支援機関の創設)で国の制度 としてできるという部分では、都の制度を参考にしていただける部分もあると思います し、意見も申し上げていきたいと思っています。 ○柏女委員長  どうもありがとうございました。実情も含めてご提案をいただきました。  それでは、ご発言いただいていない方を優先ということで今田委員、奥山委員、木ノ 内委員ということでお願いします。 ○今田委員  ありがとうございます。乳児院の立場から、少々。第1点はアセスメントの問題です。 ご承知のように乳児院は一時保護を踏まないで入所する方もいらっしゃいます。アセス メントが全くない段階で入所を迎えるという形で、非常な情報の少なさに本当に養育上 困難があるということをご理解いただきたいということが一つ。それを解決するために どうしたらよいかということになってきますと、やはり乳児院そのものに、一時保護機 能というものを人員的な面で行っていただきたいというのが一つの希望としてあります。 これだけいろいろな方が入所してくると、感染症やそういったことも考えていかなけれ ばいけないという末恐ろしい状況なのです。先ほど少し出ましたHVやHIVも当然そう でしょうけれども、これはやはり子ども同士の感染も無論ですし、職員の感染も当然考 えなければいけないといった、今アセスメントが非常にプアだということは我々も困っ ている部分です。  それからもう一つは、特にそのアセスメントの段階で、昨今養育の難しい親が、当然 どの施設でも多いのでしょうが、特に我々の乳児院では増えてきて、それが大きな問題 になってきていて、職員のバーンアウトの一つの原因にもなっているということがあり ます。その場合に、特に親の精神疾患というものについての情報が極めてプアで、昨今 の個人情報の保護法等の絡みもあるのでしょうが、病名すらなかなか入ってこないとい うこともあります。それによってこちらもある程度の対応を当然考えざるを得ないとい うことになっていて、そういうことの情報がなかなか難しいということがあると思いま すけれども、現実はなかなか現場としてこれは、ということがあります。怒鳴られたり、 突き飛ばされたりということは結構各施設であり、ののしられること等によってバーン アウトしてしまう職員が本当に増えてきているということが一つ。  もう一つは措置解除のところで、施設がどのぐらいかかわれるかといった問題ですが、 現実はなかなか、どうしてもかかわりが希薄というか、意見がなかなか通らないという 面もありますので、児童相談所によってなのですが、ここの部分をどうぞ十分配慮いた だければということが一つです。  児童相談所が忙しいのは当然わかっているのですが、特に私の居る施設を挙げれば、 病児がかなり多いのです。病虚弱児というか、重度心身障害児と言った方がいい子ども をたくさんお預かりしているわけです。そういう障害が多ければ多いほど、なかなか児 童相談所からのご連絡がないということがあって、今の年齢による養育要因の緩和があ りましたが、見ていると、やはりこれは乳児院でお預かりするよりも次のステップ、例 えば療育センターだったり、そういう施設の方が子どもにとってクオリティーが高いと いうことがわかれば、そうしていただきたいというのがあるのですが、現実にはなかな かそれは難しいです。どうしても5〜6歳まで、学童に達するまでお預かりするという ことがあり、そういうケースについて、ますます情報が少なくなるということがありま すので、円滑に子どものためを思えば、子どものためにどの施設が一番いいのかという ことを考えれば、こういう面も現場として一緒に困窮しているということをご理解いた だければと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。それでは、奥山委員、木ノ内委員という順番でお願いしま す。 ○奥山委員  2点だけ。機能の見直しというところで、どうしても施設機能というと一番大きい養 護施設というのが頭に浮かぶのだろうと思うのですが、先ほど出てきた母子生活支援施 設や、今の乳児院のお話もあるのですけれども、もう一つ、情緒障害児短期治療施設を どうするのかという問題があります。それから児童自立支援施設のほとんどが公立でい いのかというような問題もあります。その辺も検討しなければいけない問題だろうとい うことを提起したいということが一つです。  もう一つは、こちらの方が本当に言いたかったことなのですが、先ほど山縣委員が家 庭支援機能の中の市町村の役割ということをおっしゃって、その通りだとは思うのです が、2番の「児童相談所のアセスメント機能の強化」とありますが、先ほど豊岡委員が おっしゃったように、もう児童相談所は精一杯の状態で、どういうアセスメントがいい のかを進めていけないほどの状態です。先ほど出た感染症の問題を一つ取っても、麻疹 (ましん)などは大変な問題になります。麻疹はすぐ亡くなりますから。実例として親は 麻疹にかかっていましたといっても実はかかっていなくて、集団の中で感染してしまっ たということもあるわけです。それがこの世界の話です。ですから子どもの命を助ける という意味でも、感染症のことも含めてアセスメントは必要なのだろうと思います。さ らに、本当に心理的なアセスメントに関して児童相談所が全部抱えるべきなのかという のは、考えなければいけないのではないかと思います。アウトソーシングということも 考えてもいいのではないかと思います。  それからもう一つ、家庭支援機能も市町村だとか、ここに挙がっているところだけで はなくて、例えば民間の保育園でセラピューティックデイケアのような形で、治療的な デイケアの併設をしていくといったこともできる体制が必要でしょう。今は医療機関が 保育園にかかわるということも出てきていて、その中でそういうものを発展させるとい う方向もあるでしょう。先ほどアイデアということを言いましたけれども、特にこの家 庭支援機能の中には民間の力というものをもう少し入れていくということを考えていた だいた方がいいのではないかと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。それでは木ノ内委員。 ○木ノ内委員  まず豊岡委員の方から出ていました、登録里親が多い割に委託が少ないということに ついてなのですが、登録里親イコール委託可能な里親であるとは考えないケースが非常 に多いのです。スーパーバイズの役割をしている里親もいます。あるいは今の段階で引 き受けられない事情があるなどということもあり、登録里親イコール委託というように、 イコールでは考えないでいただきたいということが一つです。  それから、先ほど乳児院の話がありましたように、最近は里親の下へも乳児の委託が 増えています。やはり情報が少ないとか、そういう部分でもう少しきちんとしたルール を。例えば離乳段階を迎えているのにというように、具体的に生活の中で困ることが非 常に多いということがあります。  前回の検討会で出たのかどうかわからないのですが、最近里親子の中で事故が多いの です。確かに養育の難しい子どもが増えているというのは事実なのでしょうけれども、 そういう意味で言うと里親の方にスキルがないということもあるのかもしれません。し かし、子どもが学校で友だちにけがをさせる。あるいは車を傷付けるということが一番 多いです。要は、これから里親を増やそうというときに事故が多いということに対して 不安が広まってしまったら、里親希望者は増えないだろうと思うのです。現在、全国里 親会で里親保険というものをつくってやっているのですが、4,000万円近い補償金を取 られた事故が去年だけで2件ありました。これは死亡につながったような事故、あるい は重症な後遺症という場合があったのですが、そういうことを含め、あと細かな事故も 含めてです。  実は、問題なのは、中学生以上は自己責任が問われて保険が出ないというケースが非 常に多いことです。そういうことで、里親子に事故が多いという現状に対して、どう考 えたらいいのか。その辺に対するフォローを、一つは研修などもありますし、保険とい うこともあるのかもしれません。あるいは最低でも報告の義務というようなことで、き ちんとどういう現状なのかをつかむということで、里親子に事故が多いのだということ を認識していただきたいと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。先ほど豊岡委員、今田委員のご発言に対して、木ノ内委員の 方から弁明のようなことがありましたけれども、その辺は恐らく両者ともご案内だと思 いますので、その辺についてのご意見は少し省略させていただきたいと思います。  他にはいかがでしょうか。相澤委員、藤井委員、松風委員、藤野委員の順で、大体こ れで時間になってしまうかもしれませんので、恐縮ですが手短にお願いできればと思い ます。 ○相澤委員  それでは、手短にポイントだけ。一つは里親の関係で、里親というか先ほど養子縁組 の話が出ましたけれども、養子縁組斡旋事業についてきちんとした縛りをかけた方がい いのではないかと。やはり、これは子どもに対してとても大きな影響のある出来事です ので、その一点を追加してはいかがと思います。  もう一つは、児童自立支援施設のあり方の検討会でも少し触れていましたけれども、 例えば専門里親の職業化とか、里親の専門職化ということについても検討してみてはい かがかと思います。  それから小規模ケア形態の推進ということですが、これも先ほど山縣委員が言われま したように、いろいろな機能を持った小規模の形態をつくられたらいいのではないかと。 乳幼児ホームとか心理治療型のホームなどをつくっていかれたらどうかと。それを、例 えばいろいろな施設が運営していけるようなしくみにしていくことが、将来的には施設 再編や施設機能の見直しといったものに結び付いていくのではないかと考えます。  それから施設機能の見直しということですが、これもなかなか予算的な問題が、先ほ どから出ていますけれども、特に施設における夜間の職員配置は非常に薄くて、子ども のニーズに応えていない状況にあると。家庭生活であれば、夜は一家だんらんのときで、 情緒的な安定を図るときであるし、触れ合いを持つべき時間帯ですし、支援の効果が期 待できる時間帯で、それに対する職員の配置を手厚くするようなことを考えていただけ ればと思います。そういう意味では、今回、概算要求の中で幼稚園等を活用できるとい うようなことが出てきましたので、そういうところで人手を夜間の方に回すとか、そう いうことの検討ができればいいかと考えています。  それから地域ネットワークの確立ということで、先ほども市町村をもっと活用すべき だということでした。ここでは具体的な施策を考えるということですが、実際に入所以 前からずっと、本人や子どもや家庭と継続的にかかわってくださるようなキーパーソン がやはり必要だと思います。そういう人たちとつながりをつけていくことが、退所して からの関係性を継続していくことになるわけで、そういう関係性の質を担保する上にお いても、入所以前からそういうものを考えていく。入所したときから地域のサポートシ ステムを考えていくようなことについて、検討すべきではないかと。そういう意味で具 体的に言えば、例えば主任児童委員などを拡充して支援をすることができないのか、そ ういうことについても検討されてはどうかと思います。以上です。 ○柏女委員長  具体的なご提言を含めて、ありがとうございました。それでは松風委員、お願いしま す。 ○松風委員  大幅に遅れて来て、申し訳ありませんでした。話の今までの経緯が十分把握できてい ませんので一致しない点があるかもしれませんが、そこはお許しください。  私は、里親制度の拡充について意見を申し上げたいと思います。養育里親と養子縁組 里親の区別については、非常に賛成したいことだと思っています。私は地方自治体で、 里親をいかにして増やすかということに日々頭を悩ませています。里親になろうかと思 っていただく方々の層を広げることが非常に重要であるということと、先ほどからお話 しされています里親の専門家、または里親への手当の大幅な増により里親の社会的評価 を高めるといったようなこと、これは双方、非常に重要なことですが、一方で矛盾する ところもあります。というのは、里親としての責任が非常に重くなりますと、やってみ ようかと思う人が非常に少なくなるということです。ですからこれは、やってみようと 思う方には少し責任の軽い形でやっていただく。それはどういうことかというと、施設 に入所している子どもについての里親、現在は週末里親というように言われていますが、 これは制度的にも位置付けていませんし、かつ経済的な保障も責任の所在についても不 明確です。施設に入所している状況の中で、里親家庭と行き来できるようなタイプの里 親という一つのカテゴリーがあってもいいのではないかと思います。その中で、自分の 家にすべて引き取って生活全体を見ていく。要するに生活への責任を持つといったよう な里親、今の養育里親がそれに当たると思いますが、里親認定のあり方についての段階 化を図るといったようなことと、最初のボランタリーな里親と言われている部分をもう 少し制度として位置付けていくといったようなことが必要ではないかと考えています。  それから里親支援機関の創設についてですが、これも児童相談所の機能に、いわゆる 里親開拓とその調査、マッチング、その後の指導・支援といったようなことがすべて集 約して求められている中で、その支援部分を切り離そうということについては非常にい いことではないかと思うのですけれども、ここで非常に重要なのは責任の所在をどこに するか。この支援機関の責任と責任の所在と責任の範囲をどうするかということを明確 にしないと、直接、里親の生活の中に入って子どもの生活を見、かつ、その養育につい て指導・支援していくわけですので、一つ間違えると事故につながったり、または虐待 を見過ごすというようなことが起こってきます。この責任の所在をどうするのか、その 結果も児童相談所が担うということになると、児童相談所は混乱を引き受けるというこ とにつながる恐れもあるわけで、その辺りを明確にしておくということが非常に重要だ と思います。  それからもう一つは、アセスメントの件です。児童相談所のアセスメント機能の強化 は非常に重要だと思っていますが、この前の検討会のときに大阪での取り組みとして、 アクションプランの取り組みを紹介させていただきました。これは入所前のアセスメン トと入所後のアセスメントについて、入所後のアセスメントについては施設の方々を協 同して行うというものです。児童のアセスメントを考えるときに、短期間のアセスメン トというのは無理があるのではないかと思います。一遍にその子どもの心理状態や家族 関係を把握するということは非常に困難です。入所してからの子どもの変化、家族関係 の変化等を継続的に見ていくことで、より正確なアセスメントができるのではないかと 考えています。どこか一元的にアセスメントを期待するということではなくて、もちろ ん児童相談所のアセスメントは入所決定またはその後の処遇決定に結び付く、非常に重 要なアセスメントですので、それはそれで非常に重要ですけれども、子どもへのケア、 家族へのケアについてのアセスメントは、協同して行う体制づくりをしていくことが重 要ではないかと思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございます。それでは藤井委員、お願いします。 ○藤井委員  お時間をありがとうございます。2点ほどまとめてお話をさせていただきます。1点 は、施設内虐待というのは次回になるということですのであまり触れられないのですが、 職員から子どもに対してのものというのは専門性や倫理の問題からいっても、あっては ならないこととしてわかるのですけれども、子ども同士の問題というのは、これからも っと続いていくのかということが非常に緊急課題として一つあると思います。これは子 ども同士で、性的なものも含めて実際に起こっている状態があるのです。これに対して、 やはり子どもたちを守るという立場からの議論が必要だと思います。  社会的養護の体制を見直していくときに、適切に対応して具体的な量と質を提供でき るように、今回の具体的な施策を考えていくということですが、適切に対応するという ところで、私たちがそもそも虐待という問題について、もう少し整理してかからなけれ ばいけないことがあると思うのです。その中身は、児童相談所は虐待という問題に関し て、専門特化して人員配置も増えてという状況があるのですが、児童養護施設はいつの 間にか入所の理由が「虐待」が6割くらいになっていましたという実態があると思うの です。ここは受け皿を確保するという緊急課題があって、実質的にどこで受けられるか といったときに、児童養護施設しかなかったというところからスタートしていると思い ます。その体制そのものがそもそも違うのかと、枠組みの変換が必要かと思います。こ れからそれを担う所はどこかと考えると、一番専門的なのは情緒障害児短期治療施設な のだろうと思います。ただ、短期ということがありますので、情緒障害児短期治療施設 と児童養護施設がどのように連携をとっていくのかというところが、これからの大きな 課題だと思っています。  それから児童家庭支援センターの立場で話をさせていただくと、先ほど山縣委員等か ら児童家庭支援センターのお話が出ていましたけれども、児童相談所と各市町村の窓口 が連携して地域の相談を受ける体制になっているのですが、実質的にきちんと機能して いる市町村が少ないというのも実態なのです。ここの問題にしっかりと対処しないと、 現実的に市町村の窓口がきちんとした相談体制を整えるのに、あと何年かかるのかとい う問題があるのです。そういった状況の中で、児童家庭支援センターというのが地域密 着型で、地域の相談を受け付けられる、具体的に支援ができる。児童施設を抱えていま すから一時的に預かることも可能である。緊急的な対応をすることも可能ですので、そ の児童家庭支援センターの位置付け、それから今後の方向性といったものをもう少し有 効に活用できる方向で生かしていただければと思います。児童家庭支援センターの中で は、民間型の児童相談所を目指してもいいのではないかという意見も出ているという状 況がありますので、ぜひこの機会にいろいろと、その辺も検討いただければと思います。 よろしくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございます。藤野委員。 ○藤野委員  もう時間がないようですので、次回に。というのは、施設機能の見直しのところの議 論をもう少ししてほしいなと。私もそのことについて提案したいこともあるので、1、2 が今日で終わったということではなくて、次回は2のところから、私もレポートを出し たいと思っていますので、よろしくお願いします。 ○柏女委員長  わかりました。ありがとうございます。では、一言お願いします。 ○榊原委員  ここは福祉の制度を議論する場ですが、見回して気が付くのは、制度やサービスの提 供者ばかりでの議論になっているという点です。今日せっかく「日向ぼっこ」の方から 意見を伺ったという点を大切にした議論を、これからしていった方が良いのではないか ということを申し上げたいと思います。高齢者福祉にしても、障害者福祉にしても、子 育て支援にしても、最近は福祉制度の議論をするときに必ず利用者、受け手の方の声に も耳を傾けるというのが常識になっている中で、視点が提供者側だけに偏らないという ところは、重々戒めながら議論していく必要があるだろうと思いました。  その点で、里親を広げていくことについて、私は基本的に賛成なのですけれども、で は里親を広げていくことでこうした児童福祉の受け手である子どもたちの幸福度、福祉 が増すのかということのチェックが必要だろうと。今、ご指摘のあった里親の子どもに 事故が増えているというのは、その点で一つの大きな警鐘であろうと思います。施設の 中では何が足らなくて、それが里親ならばきちんと担保できるのか。特に日本の一般家 庭での子どもの養育力がこれだけ落ちている中で、里親の数を急速に増やすということ は逆に要保護児童にとってのリスクを高めることにもならないか。そうしないためには、 里親の方たちが子どもを受託した後の支援をどう受けられるのかなど、子どもの育つ環 境を質的に向上させる担保を確保する手だてが必要だと思います。   ○柏女委員長  どうもありがとうございました。最後にとても大切な視点をご指摘いただいたと思い ます。もう時間をかなり過ぎています。よろしいでしょうか。  先ほど藤野委員からもご発言がありましたけれども、今日は第1番、第2番の論点を 中心に議論し、次回は3〜6番までを議論した後、全体を総括的に議論していきたいと 思っていますので、ぜひ今日の施設の機能の再編成等のところについても、またご意見 をちょうだいできればと思います。  議論をしていて時間が足りないということを本当に実感しています。そういう意味で は、この報告は12月ということでスケジュールが決まっていますので、報告自体にあ る程度めりはりを付けなければならないかなということを、お話を伺いながら感じてい ました。制度改正も含めて緊急に対応しなければいけないことと、先送りということで はありませんが、しっかりと議論をしていかなければならないこと、そうしためりはり を付けた報告書のスタイルにすることも大切なのかなと思いました。  もう1点は、特に施設の関係の委員の方からご意見が出ていました、制度改正をしな くても既存のシステムを改善することによって解決できる問題が幾つもあるのではない かと。既存の今の仕組みをきちんと評価すべきだというご意見もあったように思います。 そうしたこともできるのであれば、これは事務局の作業ということになってしまうかも しれませんが、既存のシステムの幾つかの矛盾点あるいは改善点を検討していくことも 大切になるのではないかと思いました。  それから先ほど榊原委員から、提供者のサービスを提供者の声だけではなく、利用者 の声を丁寧に拾い上げていくことが必要だというご意見もありました。今日は施設関係 の方々を中心とした団体にご発言をいただきましたけれども、実は8月末には里親ファ ミリーホームの全国大会が開かれ、その分科会で子どもたちの分科会が持たれ、子ども たちの声の報告もされています。また里子たちの全国ネットワークなどもあるわけです から、そうした子どもたちの声、利用者の声なども引き続き丁寧に拾い集めながら、こ の議論を進めていければと考えています。  今日は「日向ぼっこ」の方々には、お忙しいところおいでいただいて、ありがとうご ざいました。  それでは、最後に今後の予定について、事務局から連絡をお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  それでは、次回は9月25日16時からを予定しています。場所は厚生労働省17階の 専用第18〜20会議室です。小さい会議室をつなげたような部屋ですが、そちらの方で お願いします。 ○柏女委員長  他に委員の方からはよろしいでしょうか。それでは、今日はこれで終了とさせていた だきたいと思います。次回やむを得ぬ事情で欠席をされます方は、ペーパーでお出しい ただくというご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。また、今日の分野では 次回もう一度検討がありますので、ぜひご意見もまとめて、次回心置きのないようにご 発言をいただければと思います。今日は本当に足元の悪い中お集まりをいただき、あり がとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 連絡先 03−5253−1111(内線7888) 35