07/08/29 平成19年8月29日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年8月29日(水) 10:00〜    厚生労働省講堂 2.出席委員(15名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 川 西   徹、○首 藤 紘 一、 鈴 木 洋 史、    千 葉   勉、 土 屋 文 人、◎永 井 良 三、 中 澤 憲 一、    成 冨 博 章、 西 澤   理、 野 田 光 彦、 長谷川 紘 司、    村 勢 敏 郎、 村 田 美 穂、 本 橋 伸 高 (注) ◎部会長 ○部会長代理 他 参考人1名   欠席委員(4名)    五十嵐   隆、 澤 田 純 一、 林   邦 彦、 松 井   陽  3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、    中 垣 俊 郎(審査管理課長)、    松 田   勉(安全対策課安全使用推進室長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全監理官)、 村 上 貴 久(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会を開催 させていただきます。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうござい ます。当部会委員数19名のうち15名の御出席をいただいておりますので、定足数に達し ておりますことを御報告いたします。本日は、五十嵐委員、澤田委員、林委員、松井委員 から御欠席の連絡をいただいております。  続きまして、本部会の審議の充実のために、本日から新たに委員として御参加いただき ます委員を御紹介申し上げます。国立循環器病センター臨床心理部長の成冨博章先生、国 立国際医療センター臨床検査部長の野田光彦先生、国立精神・神経センター武蔵病院第二 病棟部長の村田美穂先生、このほか、本日御欠席ですが、国立成育医療センター病院長の 松井陽先生に御参加いただくこととしております。  また、事務局に人事異動がありましたので御紹介します。医薬品医療機器総合機構上席 審議役の村上貴久です。  それでは、部会長の永井先生、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 それでは、まず、事務局から配付資料の確認と資料作成、利益相反等に関 する申出状況の御報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会 委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1〜11をあらかじめお 送りしております。このほか、資料12として「審議品目の薬事分科会における取扱い等 の案」、資料13として「専門委員リスト」を配付しております。  次に、平成13年1月23日の薬事分科会申合せ、及び本年4月23日の薬事分科会申合 せに基づく、資料作成、利益相反等に関する申出については、次のとおりです。  議題1「シグマート注」については、退室委員はなし、議決には参加しない委員は千葉 委員。議題2「レベミル注」等については、退室委員は成冨委員、議決には参加しない委 員は野田委員。議題3「コンサータ錠」については、退室委員はなし、議決には参加しな い委員は本橋委員。議題4「アートセレブ脳脊髄手術用洗浄灌流液」については、退室委 員はなし、議決には参加しない委員は千葉委員、西澤委員。議題5「プラビックス錠」に ついては、退室委員はなし、議決には参加しない委員は成冨委員、西澤委員、野田委員。 議題6「エラプレース点滴静注」については、退室委員、議決には参加しない委員、共に なし。議題7「塩酸サプロプテリン」についても、退室委員、議決には参加しない委員、 共になし。議題8「FTY720」については、退室委員は永井委員、議決には参加しない 委員は鈴木委員、千葉委員、成冨委員、野田委員、村田委員。なお、議題8「FTY720 を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」は、座長を首藤部会長代理にお 願いいたします。  本日の議題6ですが、大阪市立大学大学院医学研究科准教授の田中あけみ先生に、参考 人として議論に参加いただくこととしておりますので、御報告いたします。 ○永井部会長 本日は、審議事項が8議題、報告事項が3議題です。それでは、早速、審 議に入ります。議題1について、総合機構から概要の御説明をお願いします。 ○機構 議題1、資料1、医薬品シグマート注2mg、同注12mg、同注48mgにつきまして、 医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。  本剤は、cGMP産生亢進作用とATP感受性カリウムチャネル開口作用を有する血管 拡張薬であるニコランジルを有効成分とする注射剤です。今般、中外製薬株式会社より、 「急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)」の適応追加についての申請がなされたも のです。ニコランジルは、狭心症の治療薬として開発され、1983年9月に錠剤(シグマー ト錠)が「狭心症」の効能で承認され、1993年7月に注射剤(シグマート注)が「不安定狭 心症」の効能で承認されています。また、注射剤は、海外では韓国でのみ「不安定狭心症」 の効能で2000年に承認されておりますが、本申請効能については、2007年7月現在、承 認されている国はございません。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料13に記載されております委員が指 名されました。  本品目の審査の概略について、説明させていただきます。  臨床試験成績について、第I相試験2試験、前期第II相試験2試験、後期第II相試験1 試験及び第III相試験2試験が国内で実施され、評価資料として提出されました。  有効性について、急性心不全患者(慢性心不全の急性増悪期を含む)に対して申請用量で ある「本剤200μg/kgを5分間投与後、200μg/kg/時持続静脈内投与」で6〜48時間投 与された、前期第II相試験、後期第II相試験及び第III相(長時間投与)試験において、いず れも有意な肺動脈楔入圧の低下が認められております。また、第III相プラセボ対照二重盲 検比較試験では、急性心不全患者(慢性心不全の急性増悪期を含む)44例(本剤群20例、 プラセボ群24例)を対象に、本剤200μg/kgを5分間掛けて静脈内投与後、200μg/kg/ 時で2時間持続静脈内投与された結果、主要評価項目である肺動脈楔入圧の投与直前値に 対する最終観察時の変化率は、プラセボ群の0.1%に対し本剤群は-14.5%と有意な低下 を認め、副次評価項目である心係数についても、有意な増加を示したことから、本薬の急 性心不全に対する有効性は認められたものと判断しました。  安全性について、有害事象は本剤が投与された全195例中124例(63.6%)に認められ、 主なものは、血圧低下、頭痛、血小板減少等であり、重篤な有害事象は血圧低下が2例認 められております。血圧低下については、本剤の作用機序を踏まえると注意すべき有害事 象であるものの、患者の臨床症状及び血行動態を十分に観察しながら投与し、異常が認め られた場合には本剤の投与を中止し適切な処置を実施する旨を添付文書に注意喚起して おり、適正に使用されれば、本剤の承認の可否に影響するような重大な問題とはならない と判断いたしました。  以上の臨床試験成績より、急性心不全治療における本剤の短期的な有効性及び安全性は 検討されており、臨床的意義は示されているものの、急性心不全治療薬においては、短期 的な血行動態の改善のみならず長期予後についても重視される昨今の状況を踏まえ、本剤 の製造販売後において、長期予後に及ぼす影響を検討する市販後臨床試験の実施が必要で あると判断いたしました。  市販後臨床試験の実施に当たり、まず、製造販売後調査として、1,000症例を対象に3 年間の調査期間で、血圧低下、血小板減少、頭痛、肝機能等の調査を実施し、安全性を確 認するとともに、投与後30日、6か月の死亡率等の生命予後に関する情報も収集し、そ れらの調査結果を踏まえ、長期予後を確認する市販後臨床試験を計画することを予定して おります。また、申請された用法・用量が既承認の「不安定狭心症」と異なることから、 申請者には、臨床現場の医師、薬剤師、看護師に各適応に対する用法・用量の周知を徹底 していただくとともに、適正使用の推進及び医療事故防止のために積極的な情報提供を行 なっていただく予定です。  以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会において、御審議いただくことが適当であると判断いたしました。  本剤の再審査期間は、4年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会で は報告を予定しております。  御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。ただ今の説明に対して、御討論をお願いいたし ます。  これは、カリウムチャネルオープナーとNOドナーのような二つの作用を持った薬だと 思うのですが、右室梗塞のある患者さんには使わないと、禁忌にはもう書いてありますね。 よく現場では間違える、右室梗塞をきちんと診断しないと、つい血管拡張薬を使って、非 常に重篤なショックになってしまうことがあるのですが、これは前提としてかなり説明さ れているということですね。ただ、不安定狭心症の場合よりは少しドースが多いというこ とで、逆に不安定狭心症のときに過量にならないような注意が必要だろうということだと 思います。いかがでしょうか。 ○土屋委員 先ほどの話としては、調製濃度が違うための注意喚起をするようなものを準 備することになっていますが、それは具体的にどのような感じになっているのですか。何 かあるのでしょうか。病棟に薬剤師がいる場合はそれほど問題ないと思うのですが、現実 としてはそういう病棟はむしろ少ないことから言うと、適応症によってこういう違いがあ ることをかなりしっかり言っておかないといけないし、処方監査のときにも病名等を確認 するなど、取扱いについての手順書をきちんとしていくことは病院側もあるのですが、そ こで行われる教育用のものなどはどうなっているのか、少し心配だったものですから。 ○機構 用法・用量が異なること、調製濃度が違うことについては、専門協議でも検討さ れております。新しい効能については調製濃度が違うこと、投与速度が違うことを周知い ただき、不安定狭心症とは違う投与方法であるという情報提供を徹底することを申請者に はお願いしているところです。  投与について、具体的な調製方法や投与方法をまとめたリーフレットやポケットカード 等は作っていただくということで、どのような観点からの医療事故防止対策があるかは、 今後申請者とも検討していき、適切な対応がほかにある場合は、それも含めて、製造販売 後に実際に投与されるまでに周知徹底していくことを検討しております。 ○土屋委員 現場的に言うと、医師、看護師がパーセントによる計算に極めて弱いことが、 過去にいろいろと調査を行ったところ分かっています。例えば、1アンプル100mg/5mL というパーセント計算はほとんどできないことが分かっているので、換算表などは、そう いうことができないことを前提にきちんと設計しておかないと、これくらいの計算はでき るだろうということを前提にすると、思わぬところでエラーになると思いますので、資料 の作り方は十分注意をしていただきたいと思います。 ○機構 ありがとうございます。今後も検討させていただきます。 ○永井部会長 最近の若い医師や看護師は%の濃度計算を分かっていません。パーセント については徹底して気を付けていただきたいと思います。ここの記載は、変えた方がいい ですね。 ○土屋委員 理論としては合っているのですが、現実としてはほとんど。何ccで溶くな ど具体的なことを書かない限りは、計算で求めるのは無理です。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。ほかに御意見がなければ、議決に入ります。千葉委 員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加は御遠慮いた だくことといたします。それでは、承認可としてよろしいでしょうか。御異議がなければ、 承認可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。ありがとうございました。  では、議題2に入ります。成冨委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき まして、この審議の間、別室で御待機いただくことにします。 ── 成冨委員退室 ── ○永井部会長 では、総合機構から概要の御説明をお願いします。 ○機構 それでは議題2、資料2、医薬品レベミル注、同注フレックスペンの製造販売承 認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。  本剤は、遺伝子組換え技術により製造されるインスリン デテミル(遺伝子組換え)を有 効成分とし、インスリンを結晶化させるという従来の方法ではなく、インスリンに脂肪鎖 を付加し、血漿中のアルブミンとの結合を利用することにより、作用の持続化を図ったイ ンスリン アナログであります。本剤は溶解型のインスリン製剤であることから、投与前 の攪拌・再懸濁を必要とせず、投与ごとの薬剤量の均一性が保たれるとされています。  本剤は、海外では、2003年11月にスイスで承認されたのを始め、2007年5月1日現在、 米国及びEUを含む世界82か国にて承認され、46か国において販売されております。  なお、国内の販売名につきましては、医療事故防止の観点から、有効成分の含量に関す る情報が追記され、「レベミル注300」及び「レベミル注300 フレックスペン」に変更さ れております。  本品目の専門協議では、資料13に示す方々を、専門委員として指名させていただいて おります。  本剤の品質、安定性、薬理、薬物動態及び毒性について、提出された資料に特段問題と なる事項はございませんでしたので、臨床試験成績について述べさせていただきます。  本剤の有効性については、Basal-Bolus療法施行中の1型及び2型糖尿病患者を対象と した比較試験、及び経口血糖降下剤を服用中の2型糖尿病患者を対象とした比較試験にお ける、主要評価項目である「HbA1c」において、NPHヒトインスリンに対する非劣性が検 証されたこと、また、Basal-Bolus療法施行中の小児1型糖尿病患者を対象とした比較試 験における「HbA1c」改善効果がNPHヒトインスリンと同程度であったことから、本剤の 有効性は示されていると判断いたしました。  安全性については、低血糖、注射部位反応、アナフィラキシー反応等の発現はNPHヒ トインスリンと同程度であったことから、特段の問題はないと考えておりますが、長期投 与時の安全性も含めて製造販売後に引き続き検討する必要があると考えております。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、本剤の「インスリン療法が適 応となる糖尿病」に対する適用を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会 で審議されることが妥当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることか ら、再審査期間は8年が適当であると判断しております。なお、原体及び製剤は劇薬に該 当し、また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しており ます。薬事分科会では報告を予定しております。  御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは、御質問、御意見をお願いします。 ○野田委員 夕食前投与に関して、1日1回投与の場合の記載が少ないように思うので す。インスリン依存状態の1型の方等において、この薬剤は作用持続時間が17〜20時間 ということで、夕食前に1回投与すると、午後の時間帯でのBasalインスリンの補充が不 十分になる可能性があると思うのですが、この点はいかがでしょうか。 ○永井部会長 もう一度ポイントを説明していただけますか。 ○野田委員 1日1回、就寝前又は夕食前に投与するとなっていますが、1型等のインス リン依存状態の方で、1日1回、夕食前に投与すると、持続時間が17〜20時間なので、 例えば午後7時に打った場合、正午〜午後3時くらいの間で効力が切れてくる。Basal- BolusでBolusで打っている昼のインスリンも、午後3時か4時くらいには効果が切れて くるので、午後4時〜午後7時くらいの間にはインスリンが枯渇した状態が起き得ると思 うのです。  これを読んでみたのですが、夕食前投与の妥当性については、1日2回注射の場合は記 載があるのですが、1日1回注射の記載が全くなかったのではないかと思うのです。した がって、1日1回の場合、夕食前の安全性をどの程度担保し得るのかが少し気になります。 夜間の低血糖に関する記載はあるのですが、夕食前にインスリンが枯渇することに関する 記載がなかったように思いました。 ○機構 今回の用法・用量については、1日1回、また1日2回投与も可能となっており ます。1日2回投与については、海外の臨床試験で朝食前投与と夕食前投与の組合せ、ま た朝食前投与と就寝前投与の組合せで効果に変わりがないということで、夕食前投与は妥 当と確認しております。もし足りない場合には、むしろ1日2回ということで、患者の状 態に応じて投与回数を変えることも可能と考えております。 ○野田委員 病態に応じて対応するのはどの薬剤でも当然だと思うのですが、夕食前ない し就寝前と、二つ併記していいのかなと、少し疑問に思ったのです。1日1回、夕食前投 与する場合はかなり慎重に行う必要があると、特に1型のようなインスリン依存の方の場 合は、その点を注意喚起する必要があるのではないかと思いました。 ○永井部会長 これは、添付文書の記載ということですか。 ○野田委員 はい。 ○機構 それについては、こちらで検討させていただきます。 ○野田委員 いずれにしても、何らかの追加の文言が必要ではないかと思います。 ○永井部会長 そこは、よく検討してください。  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。御意見がなければ、議決に入ります。 野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加は御遠 慮いただくことといたします。承認可としてよろしいでしょうか。よろしければ、承認可 として、薬事分科会に報告とさせていただきます。ありがとうございました。  では、議題3に入ります。総合機構から概要の御説明をお願いします。 ○機構 議題3、資料3-1及び3-2、医薬品コンサータ錠18mg、同錠27mgの製造販売承 認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  なお、本申請は原薬等登録原簿制度を利用しており、資料3-2は原薬に関する報告書及 び資料概要となっております。  本剤は浸透圧を利用した放出制御システム(OROS)を用いて、速放性と徐放性を併せ 持つ塩酸メチルフェニデートを有効成分とする1日1回投与の製剤であり、本申請は注意 欠陥/多動性障害(AD/HD)を効能・効果とするものであり、現時点で本邦では、AD/ HDを効能・効果とする薬剤は承認されておりません。本剤は2006年7月現在、米国、 英国等世界66か国でAD/HDに対して承認されております。  本申請の専門委員としては、資料13に記載されております9名の委員を指名いたしま した。  審査内容について、説明させていただきます。  品質、薬理、薬物動態、毒性については、特に大きな問題はないと考えております。な お、本剤の作用機序は、ドパミントランスポーターに結合することにより、シナプス間隙 にあるドパミンを増加することで神経系の機能を正常化すると考えられております。  次に臨床成績について説明させていただきます。  国内第III相試験では、Wash-in期にプラセボを投与し、用量調整期で本剤の1日用量を 決定した後、二重盲検期に移行し、本剤又はプラセボを投与することとした用法・用量で 試験をしており、主要評価項目であるWash-in期と二重盲検期のADHD RS-IV-Jのトータ ルスコアの変化量は、親評価で本剤群-15.6±10.8、プラセボ群-8.0±9.7、教師評価で本 剤群-12.6±10.5、プラセボ群-3.6±9.3であり、親評価及び教師評価、共にプラセボ群 と比較して本剤群でスコアの有意な低下が認められました。また、長期投与試験において、 投与開始1年後の治験開始時からの親評価におけるADHD RS-IV-Jトータルスコア変化量 は-16.8±12.4であり改善の維持が認められております。  安全性については、本剤投与により食欲低下、体重減少等が認められており、長期投与 時には休薬期間を設定するなど注意が必要と考えており、長期投与時の安全性について は、製造販売後に検討する予定となっております。また、本剤については依存性、乱用等 との関連性も考えられ、適正使用を徹底することが重要であると考えており、本剤納入前 に本剤の適正使用に関する説明会の受講を義務付けること、関連学会と協力してセミナー 等を行うこと、患児、保護者、教師等に対する教育資料を配付することなどが計画されて おり、「本剤の投与が、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の診断、治療に精通し、本剤の リスク等についても十分に理解している医師の下のみで行われるよう、製造販売に当たっ て必要な措置を講じること」との承認条件を付与することが適切と判断しております。  以上の審査を踏まえ、上述の承認条件を付した上で、本剤の小児期における注意欠陥/ 多動性障害(AD/HD)に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本 第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能医薬品及び新 用量医薬品であることから、再審査期間は4年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来 製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科 会には報告を予定しております。  以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。いわゆるリタリンと同一成分で、AD/HDの 適応を目的とした申請です。 ○本橋委員 今までAD/HDにリタリンが適応外で使用されていたので、それに代わる 薬として非常に歓迎したいと思うのですが、この薬はリタリンと比べて耐性形成や依存性 の形成が違うといったきちんとした証拠があるのでしょうか。例えば、こういった投与法 だとトランスポーターに対する影響が少し違うのだとか、そのような基礎的な研究がなさ れているかをお尋ねしたいと思います。  もう一つは、リタリンはマスコミでも大きく取り上げられていますが、社会的に乱用の 問題があり、日本では特にかなり安直に、特定のクリニックの先生などがたくさん使って いる状況もあります。学会等も当然関係しないといけないと思うのですが、乱用の問題も 含めて、今後、適正に使用するために、この薬が手始めに、先ほど講習会をやるなどがあ りましたが、処方できる医者を限定すると捉えていいのかどうかを教えていただきたいと 思います。 ○機構 本剤の基礎的な耐薬性、依存性等の関連ですが、徐放化したというところで、違 いがあるかに関しては、具体的に細かい検討はなされていません。ただ、本剤の特性とし て、水を吸収するとゲル化して、成分自身を抽出しづらいことから、乱用しづらい薬剤と 考えています。  適正使用の観点ですが、本剤に関しては、承認条件において、注意欠陥/多動性障害に 精通し、本剤のリスク等を十分把握している医師の下で使用されるよう、必要な措置を講 じることということから、申請者の方でも、講習会、若しくは環境的にも講習会に出られ ない先生の所にはMRを行かせて講習を行った上で、薬を提供することができるというこ とをやっていこうということで、適正使用に関しては、説明会をきちんとやるというよう な対応を考えております。 ○審査第三部長 薬の納入に関しても、メーカーの方でガイドラインを作ることにしてい ますが、そういう内容を十分理解した医療機関に限って納入するという対応を取っていく ことにしております。 ○土屋委員 今の件ですが、現実としては院外処方をしている所もあるのです。これが院 外になるかどうか、逆に院外にしないと決めると、ほかの薬も全部院内にしなくてはいけ ないという保険のルールがあるので、そのような意味で、医療機関をある程度把握される ということはあるのですが、現実には院外処方箋になることも考えた上でいくと、その辺 りをどのように担保していくのかは、一つ課題があるかと思います。  それから、添付文書を見ると、この薬は識別記号が付いているように書いてあるのです が、この記号は本体に印刷されているのでしょうか。「粉砕不可」等の情報は、もちろん PTPシートできたら伝わるようになっているのですが、もしユニットドーズになってい て、バラで入ってくると、その情報がよく分からないまま粉砕してしまうことが全くない とは言えないので、識別がつくのかどうかをお聞きしたいのです。 ○機構 院外処方に関しては、薬剤師会とも協力しながら、確認させていただこうと考え ております。記号については、ここにサンプルがあるのですが、錠剤に直接記号を付すと いうことで対応されているのが現状です。 ○土屋委員 それから、添付文書で、色・剤形について「黄色のカプセル型の錠剤」など と言わなくても、「黄色の錠剤」でいいのではないかと思うのです。カプセルにもいろい ろな格好がありますし、そもそもカプセルのような格好をしていても、こういうものは普 通みんな錠剤と言っています。下手をすると、カプセルなど、そういう話が出てくるとい けないので。 ○機構 ありがとうございます。誤解のないように対応させたいと思います。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。ないようでしたら、議決に入ります。本橋委員 におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただ くことにいたします。承認可としてよろしいでしょうか。御異議がなければ、承認可とし て、薬事分科会に報告とさせていただきます。ありがとうございました。  では、議題4について、総合機構から概要の説明をお願いします。 ○機構 資料4、医薬品アートセレブ脳手術用洗浄灌流液について、医薬品医療機器総合 機構より御説明いたします。  本剤は、株式会社大塚製薬工場が開発した頭蓋内の洗浄灌流液であり、ヒト正常脳脊髄 液の成分である電解質並びにブドウ糖を含有し、pHをヒト正常脳脊髄液に近い約7.3と した製剤です。配合成分の安定性の問題から、二槽バッグ製剤としております。  本剤は、国内のみの開発であり、2007年7月現在、海外での承認申請、承認取得及び 販売は行われていません。また同種同効薬はなく、頭蓋及び脊髄腔内の洗浄灌流液は、国 内外ともに市販されていません。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、配付資料に記載されております委員が指 名されました。  次に、機構における審査の概略を御説明いたします。  品質、毒性、薬理及び薬物動態については、審査の過程において申請者から適切な対応 がなされ、特に問題はないと判断いたしました。  臨床試験成績について説明させていただきます。国内第III相試験は非盲検非対照試験と して実施され、脳神経外科手術患者、すなわち穿頭・開頭手術患者及び神経内視鏡手術患 者を対象に、手術時の洗浄又は灌流を目的とし、本剤の最大投与量は4000mLを目安とし て使用されました。有効性については、穿頭・開頭手術患者では、術野の洗浄、術野から の空気の排除、及び手術凝固装置の性能評価を行い、神経内視鏡手術患者では、清明な視 野の確保、灌流液のべとつき感、及び手術凝固装置の性能評価を行い、その上で総合判定 を行った結果、穿頭・開頭手術及び神経内視鏡手術のいずれにおいても本剤使用時に手術 が問題なく終了することが確認され、機構は、本剤の有効性は示されたと判断しました。  安全性については、臨床試験で認められた有害事象の多くが、脳外科手術時に認められ るものと考えられ、本剤との因果関係が否定されなかった悪寒等の有害事象は重篤なもの ではなく、添付文書において適切に情報提供がなされたことから、製造販売後の十分な情 報収集は必要ですが、臨床使用における問題はないと判断しました。また、臨床試験にお いては、脊髄疾患の手術時の洗浄については検討されていないものの、脳と脊髄の組織学 的類似性、毒性試験結果、並びに脳脊髄液は頭蓋内と脊柱管内とで互いに交通しており、 非臨床試験による検討では、本剤が脊髄腔にも移行していることが確認されていたことを 踏まえると、第III相試験では、本剤が脊髄腔にも移行していたとも考えられることから、 脊髄疾患の手術に本剤を用いたとしても、安全性上の大きな問題が生じる可能性は低いと 考えられ、さらに、現状では脊髄疾患の手術でも脳手術と同じ洗浄液が使用されていると の臨床調査結果、及び製造販売後に十分調査することを踏まえた上で、脊髄疾患の手術時 の洗浄も適応とすることは可能であると判断しました。  なお、使用時の隔壁未開通での投与防止、既承認の二槽バッグ製剤との取り違え防止を 目的とした一次包装等による対応に加え、臨床現場への適切な情報提供活動が必要である と判断しております。  また、販売名につきましては、脊髄疾患の手術時の洗浄も適応としたことから、アート セレブ脳脊髄手術用洗浄灌流液に変更する予定であります。  以上のような検討を行った結果、本薬を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。なお、原体及び 製剤は、毒薬又は劇薬のいずれにも該当せず、製剤は生物由来製品及び特定生物由来製品 に該当しないと判断し、再審査期間は6年とすることが適当であると判断しております。 薬事分科会へは報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。委員の方々から御質問、御意見がありましたら お願いします。 ○成冨委員 脳外科手術は結構長いものがあって、12時間や、ときには24時間近く続く ものがありますが、その間にpHが上がってくる可能性は検討されておりますか。 ○機構 原則として、本剤は、使用直前に外装を破っていただくことになっております。 こちらの外装は、二酸化炭素の透過防止となっているので、この外装を外さない限りは pHの上昇はほとんど起こらないと考えております。ですから、使用直前にここを開封し ていただくことは、添付文書でも注意喚起をしております。  それから、例えば脳手術では、シバリング等の防止ということもあって、加温すること も原則として注意喚起をしているのですが、加温すると中に溶存している二酸化炭素の放 出が速くなるので、pHの上昇が速くなることもあって、そのときに何時間まで使用でき るかも含めて、添付文書(案)で注意喚起をしております。 ○成冨委員 もう一つ、4,000mLまでが限度となっていますが、結構4,000mLを超す例が あるようです。4,000mLを超すと何かまずいことが起きるから、4,000mLになっているの でしょうか。 ○機構 こちらで4,000mLを記載しているのは、臨床試験ではほとんどの患者が4,000mL までの使用で手術が終了したこともあって、4,000mLを目安とすることにしております。 ただ、先ほど御指摘いただいたように、手術時間が長期に及ぶと使用量が増えてくること もあります。第III相試験では最高8,000mL使用されていますが、8,000mL使用された症例 で、特段有害事象が認められたわけでもないので、手術の状況に応じて適切に使用してい ただければということです。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○土屋委員 二点ありまして、一つは名称です。医薬品の名前を付けるときに、医薬品と しての品位を保つものという一番わけのわからない基準があるのですが、以前、スルーパ スなどは駄目で、医薬品として不適切であるなどというのがありました。セレブシロップ というものもあるのでいいのですが、アートセレブという名前は品位としては大丈夫だと いう判断なのでしょうか。 ○機構 名称については、類似名称は確認しております。内容については、「セレブ」は 「cerebrospinal」から取られていて、決して「celeb」ではありません。 ○土屋委員 品位を判断するのは一番難しいことですから、機構の方がそれでよいとおっ しゃるならいいのですが。 ○永井部会長 LとRが違うのです。 ○土屋委員 後発品でセレブシロップというものもあるのでいいのですが、もしそれを可 とするならば、私は輸液との取扱いの対策は間違っていると思うのです。今回のもので注 意しなくてはいけないのは、これが輸液ではなくて洗浄灌流液だということを強調しなく てはいけないのです。ところが、「アートセレブ脳脊髄手術用洗浄灌流液」などと長い名 前になったときに、今の表記を見ると、アートセレブを小さくして脳脊髄手術用洗浄灌流 液を大きくし、その上にまたそのものが大きく書いてあるのです。このようなことをする と、目が散って肝心な所にいかなくなって、禁点滴静注は目立つでしょうが、今必要な、 こういうもののこういうバッグで、オペガードがありますが、脳外科領域では初めてです から、こういうものが洗浄灌流液であるという知識を付けさせなければいけないのです。 そのためには、「アートセレブ」という名称は、灌流液であることを刷り込ませることが 大事なのです。  そうすると、アートセレブを小さくして、脳脊髄手術用洗浄灌流液と漢字が並んでいる 2段の間に入れても、ほとんど意味がないのです。長くても販売名を書かなければいけな いと言うなら、アートセレブを大きく書いて、脳脊髄手術用洗浄灌流液という正式な名前 は小さく書いて、なおかつ灌流液であることをきちんと示す。前から言っていますが、禁 静注や、この間も禁経口などがありましたが、正しい使い方を教えずに、やってはいけな いことばかりを書いているのです。この場合にはまだ知識がないのですから、脳外科手術 でこのようなものがあることを知らせることが大事だということから言うならば、この表 示は原理原則が逆になっていると思うのです。  それから、このインジケーターを見ると、いかにもインジケーターと分からない。せっ かくバッグが白なのに、インジケーターの字が抜けてしまっているので、知っている人は 知っているけれども、知らない人は知らないと。禁のマークなのかと思えるような。そう いう意味で、表示が極めて不適切で、今回新しいものができたときに、強調すべきは、ブ ランド名ならブランド名を強調する。オペガードはブランド名を強調しているのです。そ ういう形で、第1段階としては、洗浄灌流液というものがあることを知らせる意味のエラ ー防止、それでの取り違え防止と、開通・未開通を防ぐという二つがあるわけで、それに 対してこの表示はよろしくないと思います。これをやると目が散ってしまって、アイカメ ラなどで調べたら、ここにはほとんど目がいかないと思うので、せっかく対策を取るのな ら、きちんとそういう対策を取るべきだと思います。 ○機構 御指摘ありがとうございました。アートセレブと洗浄灌流液を同じくらい大きく して、脳脊髄手術用を小さくということですか。 ○土屋委員 この上に紺色で白抜きで「脳脊髄手術用洗浄・灌流液」と書くのなら、その 下のアートセレブをもっと大きく、その後の脳脊髄手術用洗浄灌流液はもっと小さく表示 する。本当に大事なのは、洗浄灌流液を大きく表示して、正しい用途をきちんと示してい く。この袋もそうですが、脳手術用とは書いてあるけれども、灌流液とは書いていない。 要するに、最初はそういう知識をつけて、こういうものが二つあるから取り違えないよう にしようという知識の欠如に対する話と、ダブルバッグであることを失念しているエラー を防止するという二つのエラー防止が必要なので、それが分かるような表示をすべきだと 思います。 ○機構 ありがとうございました。持ち帰って検討したいと思います。 ○永井部会長 ほかに御質問、御意見はありませんか。よろしければ、議決に入ります。 千葉委員、西澤委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への 参加を御遠慮いただくことにいたします。承認可としてよろしいでしょうか。よろしけれ ば、承認可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。  続いて、議題5について、総合機構から説明をお願いします。 ○機構 議題5、資料5、医薬品プラビックス錠25mg、同75mgにつきまして医薬品医療 機器総合機構から説明させていただきます。  本剤の有効成分硫酸クロピドグレルは、チエノピリジン骨格を有する抗血小板薬であ り、本邦では、2006年1月に心原性脳塞栓症を除く虚血性脳血管障害後の再発抑制に関 する効能・効果で承認されております。今般、サノフィ・アベンティス株式会社により、 国内臨床試験成績等に基づき、「経皮的冠動脈形成術(以下、PCI)の適用が考慮される 急性冠症候群患者(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)における血管性イベントの抑制」 を予定効能・効果として、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされたものです。  なお、本剤は、海外においては、これら非ST上昇急性冠症候群に係るアテローム血栓 性イベントの抑制に関する効能・効果で、2002年2月以降、米国、欧州各国を含む80以 上の国又は地域で承認されており、ST上昇心筋梗塞に係るアテローム血栓性イベントの 抑制に関しても、2006年8月の米国を始めとして、幾つかの国又は地域で追加承認され ております。また、本剤の早期承認に関する要望書が、日本循環器学会等から提出されて おります。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料13に記載されております委員が指 名されました。  本品目の審査の概略について、国内臨床試験成績の評価を中心に説明させていただきま す。  PCI施行予定の非ST上昇急性冠症候群患者を対象としたアスピリン併用下の国内 第III相試験において、有効性の主要評価項目とされた「投与開始28日目までの死亡、急 性心筋梗塞、血行再建術の施行のいずれかの発現率」について、本剤により、類薬のチク ロピジン塩酸塩(以下、チクロピジン)と同程度の抑制効果が認められております。  安全性の主要評価項目とされた「投与開始28日目までの重大な出血、28日目までの治 験薬との因果関係が否定できない白血球、好中球及び血小板の減少のいずれか、28日目 までの治験薬との因果関係が否定できない肝機能検査値の上昇、28日目までの治験薬の 投与中止に至った治験薬との因果関係が否定できない皮膚障害、消化管障害、出血、肝機 能検査値異常、白血球数、好中球及び血小板数の有意な減少のいずれかの発現率」につい て、チクロピジンに対する本剤の優越性は示されず、出血のリスクが本剤群でチクロピジ ン群よりも高い可能性も示唆され、現時点では、日本人急性冠症候群患者において、本剤 の安全性がチクロピジンと比較して優れたものであるとする成績は得られておりません。 しかしながら、PCI施行に伴う合併症である急性及び亜急性冠閉塞の予後は不良である こと、及びPCI施行時には、確実な血小板凝集抑制効果が求められ、本剤のローディン グドーズにより、必要な抗血小板効果が早期に得られるメリットも考えられることから、 PCIが適用される患者に本剤を投与する場合においては、本薬の安全性は、臨床的に許 容される範囲内であると考えました。  以上の成績も踏まえ、本剤によるリスク・ベネフィットのバランスを考慮し、本剤投与 が適切と考えられる対象患者、投与中注意すべき事項等については、注意喚起を添付文書 で行っており、適正に使用されれば、本剤の承認の可否に影響するような重大な問題はな いと判断し、製造販売後に適切な情報収集を行う必要はありますが、本剤を「PCIが適 用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)」の効能・効果で承認して差 し支えないと判断しました。  製造販売後には、調査予定症例数3,000例、観察期間24週間の使用成績調査、及び調 査予定症例数200例、観察期間1年間の特定使用成績調査により、本剤の有効性及び安全 性が確認される予定です。  本剤の再審査期間は既承認効能の再審査期間(平成18年1月23日から8年間)終了まで の残余期間とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定して おります。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 御質問、御意見をお願いします。 ○鈴木委員 こちらは肝臓で代謝活性化されて効いてくる薬剤だと思うのですが、昨年の 「blood」というジャーナルに、CYP2C19の多型によって効果が全然違うというデータが 出ているのです。これは添付文書、あるいはインタビューフォームの中などに、CYP2C19 の多型を一部考慮して効果を見ないといけないなどの記載があった方がいいのではない かと思うのですが、いかがでしょうか。 ○機構 CYPの多型により本薬の有効性及び安全性にどの程度の違いが出てくるかは、 まだ明確にはなっていないのですが、今回の対象疾患の場合は、確実な抗血小板抑制作用 を発揮させないと本薬投与の意味がなく、エビデンスがある初回投与300mgとそれに引き 続く持続投与75mg以外の投与法をお勧めできる根拠はないと判断しているので、その辺 はどこまで情報提供すべきなのか、先生お聞かせ願えないでしょうか。 ○鈴木委員 これは、欧米人では2C19のヌルの方々は2%程度です。ところが、日本 人では15%くらいのフリークエンシーがある。小さくて申し訳ないですが、○で書いた のは2C19の*1、*2のヘテロの方ですが、ほとんど薬理効果がない。これは欧米の方 々のデータです。日本人ではヘテロというのは30%くらいいるのでしょうか。そういう ことを考えると、人によって効き方は随分違ってくる可能性があると思います。ただ、こ の論文はまだ一つしか出ておらず、その後日本人でどうなるかとか、あるいは欧米人の追 跡調査などは出ていないので、これからそういうエビデンスの集積を待たないといけない のかと思いますが、可能であればインタビューフォームなどに少し注意喚起を促してもい いのかなと思いました。 ○機構 ありがとうございます。それに関する情報とその後の収集状況についても、申請 者と相談して今後の対応を考えさせていただきたいと思います。 ○鈴木委員 よろしくお願いします。 ○永井部会長 そのほかにいかがでしょうか。この用量が日本人には少し多い可能性もあ るわけですが、そこに関する注意喚起はいかがなのでしょうか。 ○機構 その点についても、類薬であるチクロピジンの用量が国内外で異なることもあ り、実際に日本人では出血性の副作用がたくさん出るのではないかという議論も学会等で はなされております。しかしながら、日本人での有効性及び安全性がこの用量でしか検討 されていないことから、確実な抗血小板作用が期待される今回の効能では、これ以下の用 量を承認できるところではないと考えております。一方、脳出血の発現を避けたい既承認 の効能では、安全性の方が逆に問題となるので、現在、1回50mgと75mgの安全性及び有 効性を比較する市販後臨床試験が行われており、この辺の結果も踏まえて新たな情報を提 供できればと思いますが、現時点では、出血に注意しなくてはいけないということ、海外 では安全と言われているけれども、日本人では意外とそうでもなさそうだというところを 積極的に情報提供していくことができる範囲ではないかと考えております。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○成冨委員 先生がおっしゃるように、投与量が少し多いなという気がして、特に初回投 与量300mgというのは、我々脳でやっている人間からすると、こんなにやって大丈夫なの かなという気がするのです。初回投与量300mgというのは、外国から持ってきたものだろ うと思いますが、本当にこんなに必要なのでしょうか。これは早く血中濃度を立ち上げる ためにやっているのだろうとは思いますが、最初から75mgないし150mgくらいで十分で はないかという気もするのですが。 ○機構 この300mgという数字ですが、投与2時間後に十分な血小板凝集抑制作用が得ら れる用量です。確かに、200mgで十分な可能性がないわけではありませんが、これについ ては試験されていませんので、現時点でこれを推奨することはできません。ただ、十分な 血小板凝集抑制を得ることがPCI後の場合には重要と考えるので、初回投与量は300mg とし、あとは市販後の情報から妥当性を判断するべきと考えております。 ○永井部会長 これは適応が不安定狭心症と非ST上昇型の急性心筋梗塞ということで すから、そういうときにはそうかもしれないのですが、漫然と使われると、非常に多い可 能性がありますね。それについては今後様子を見ながら、適宜注意喚起をすることでよろ しいですか。 ○機構 長期の使用に関する特定使用成績調査、及び使用成績調査の中から得られる長期 投与時の情報から、その都度、適切な情報提供をしていければと考えています。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○村田委員 心筋梗塞を起こす患者さんは、脳内の血管障害を伴うこともかなり多いと思 うので、可能であれば、以前に脳出血のヒストリーがある、あるいは微少な出血のヒスト リーがあるという人には、かなりの注意が必要であるということを入れていただけるとい いかと思います。今出血がある人は当然使わないと思いますが。 ○機構 実際に出血している患者、及び過敏症のある患者は禁忌となっており、使用上の 注意の慎重投与で、既承認時からの記載がありますが、確かに脳出血の既応については記 載がありません。 ○村田委員 それは虚血性脳血管障害のときの話ですね。それは多くは使われないのでい いのですけれども、もちろん初めて見えた心筋梗塞の患者さんは無理かもしれませんが、 今までフローしている方でしたら、時々は頭のCTなどを撮ることもあると思うので、そ ういうことでリスクが分かっている人に関しては、気を付ける必要があるということを示 しておいた方が、市販後に問題になることが少ないかと思います。 ○機構 分かりました。ありがとうございます。申請者と相談して、その辺は十分な注意 喚起になるように検討させていただきたいと思います。 ○永井部会長 そのほかにいかがでしょうか。よろしければ、議決に入ります。成冨委員、 西澤委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への 参加を御遠慮いただくことにいたします。承認可としてよろしいでしょうか。それでは、 承認可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。  では、議題6に入ります。総合機構から説明をお願いします。 ○機構 それでは議題6、資料6、医薬品エラプレース点滴静注液6mgの製造販売承認 の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。  本剤は、グリコサミノグリカン(GAG)に属するヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸を分 解するリソソーム酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)と同じアミノ酸配 列を有するイデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)(以下、本薬)を有効成分とする注射剤で あり、ムコ多糖症II型患者に体重1kg当たり0.5mgを週1回点滴静脈内投与するもので ございます。  ムコ多糖症II型はハンター病とも呼ばれ、I2Sの先天的欠損又は酵素活性低下によ り、GAGが体内のリソソームに蓄積し、臓器機能障害を引き起こし、やがて、呼吸不全 や心不全などにより若齢で死亡するとされている疾患でございます。  ムコ多糖症II型の現在の主な治療法は対症療法や造血幹細胞移植などであり、欠乏して いる酵素を本剤投与により補充することは、現時点で病態に即した唯一の治療法として、 その導入が待たれているところでございます。  2006年10月27日に開催された第10回未承認薬使用問題検討会議において、本疾患の 患者数は非常に少なく、生命を脅かす疾患であり、早期の治療開始が予後を左右する可能 性があることから、早期承認が望まれるとして、日本人患者4名を含む海外臨床試験成績 により承認申請を行うことが妥当であるとの検討結果が示されました。さらに、2006年 12月に希少疾病用医薬品に指定され、今般、ムコ多糖症II型に対する治療薬として製造 販売承認申請が行われました。  なお、海外では、2006年7月に米国で承認されたのを始めとして、2007年7月現在、 EU、スイス及びカナダで承認されております。  本品目の専門協議では本日の配付資料13に示しますような方々を専門委員として指名 させていただいております。  本剤の品質、薬理、薬物動態及び毒性について、提出された資料に特段問題となる事項 はございませんでしたので、臨床試験成績について述べさせていただきます。  有効性については、日本人4例を含むムコ多糖症II型患者96例を対象とした海外プラ セボ対照二重盲検比較試験において、主要評価項目である「6分間歩行試験の歩行距離と %FVCの53週時の変化量の順位和から構成される2成分合成スコア」あるいは「尿中 GAG変化量」について、毎週投与群及び隔週投与群とプラセボ群との間に有意差が認め られたことから、本剤のムコ多糖症II型に対する有効性が示唆されたものと考えておりま す。  また、安全性については、提出された資料の範囲では大きな問題はないものと考えてお りますが、海外の治験症例数も多くないことから、その評価には限界があるものと考えて おります。特に、抗体産生が本剤の有効性及び安全性に及ぼす影響について現時点で不明 確であること、投与関連反応(Infusion-related adverse reaction:IRAR)が多くの 症例で認められており、重篤なIRARの頻度等に関する情報が少ないことから、本剤投 与は原則として本疾患に精通した医師により行われ、必要に応じて抗ヒスタミン剤及び副 腎皮質ホルモン剤の事前投与、投与速度の減速、一時的な投与中止等を行うことが必要で あると考えます。また、製造販売後には本剤が投与された全症例を対象に安全性及び有効 性に関する調査を行い、情報を集積した上で、本剤の適正使用に係る措置を講ずる必要が あるものと考えます。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、製造販売後の全例調査の実施 を条件に承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが妥当 と判断いたしました。  本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年とすることが適当である と判断しております。原体及び製剤、共に劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断 しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い 申し上げます。 ○永井部会長 ありがとうございました。この件については、参考人として大阪市立大学 大学院医学研究科准教授の田中あけみ先生においでいただいております。田中先生から何 か御意見をいただけますでしょうか。 ○田中参考人 製剤に関して特にコメントはございませんが、国内で患者さんは恐らく 300人くらいと思われております。私自身4名の患者さんを治療中ですが、特に副反応等 は認めておりません。ただし、国内で使われているのは、現在は軽症型の方ばかりで、一 応、変異酵素タンパクを持っている患者さんばかりなので、重症型の方は恐らく変異酵素 タンパクがないでしょうから、アレルギー反応というのは、重症型の方にリスクが高くな るだろうと思います。十分に注意書きはされておりますので、問題はないかと思います。 以上です。 ○永井部会長 ありがとうございました。御質問、御意見がありましたらお願いいたしま す。いかがでしょうか。田中先生にお聞きしたいのですが、これは最初は専門医が使うこ とになるかと思いますが、あとは地元の病院か診療所で治療を受けることになると思いま す。そのときに特に使い方等で気を付けるような点というのはございますか。 ○田中参考人 週1回の投与になるので、患者さんにとっても地元でやっていただくこと が適当かと思いますが、アレルギー反応に注意するというのは一般の医者のできることだ と思うので、大きな問題はなかろうかと思っております。 ○永井部会長 御意見等はございませんか。よろしいでしょうか。それでは、参考人の田 中先生にはここで御退席いただくことにいたします。ありがとうございました。 ── 田中参考人退席 ── ○永井部会長 それでは、議決に入ります。この薬剤について、承認可としてよろしいで しょうか。よろしければ、承認可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。あり がとうございました。  では、議題7に入ります。事務局から概要の説明をお願いします。 ○事務局 それでは、塩酸サプロプテリンを希少疾病用医薬品として指定することの可否 について、資料7に基づいて説明します。1枚めくっていただいて、事前評価報告書を御 覧ください。医薬品医療機器総合機構が事前評価を取りまとめています。対象患者数、医 療上の必要性、開発の可能性の三点について御説明します。  品目の名称は塩酸サプロプテリン。対象疾病はテトラヒドロビオプテリン反応性フェニ ルアラニン水酸化酵素欠損に基づく高フェニルアラニン血症における血清フェニルアラ ニン値の低下。申請者はアスビオファーマ株式会社です。  まず、対象患者数についてです。テトラヒドロビオプテリン反応性高フェニルアラニン 血症は、先天性代謝異常疾患である高フェニルアラニン血症のうちフェニルアラニン水酸 化酵素欠損症に分類され、さらにテトラヒドロビオプテリンの投与により血中のフェニル アラニン値が正常化する疾患です。なお、高フェニルアラニン血症には、フェニルアラニ ン水酸化酵素欠損症のほか、テトラヒドロビオプテリン欠乏症もありますが、後者につい ては既に承認を取得しております。  厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課が公表した先天性代謝異常等検査実施状況 では、高フェニルアラニン血症として発見された患児は年間約20名であり、このうちテ トラヒドロビオプテリン反応性高フェニルアラニン血症と診断された患児は5名前後と なっております。また、昭和52〜平成17年度では481名の高フェニルアラニン血症患者 が発見されております。以上のことを踏まえると、対象患者数は100〜140名程度と推定 され、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人以下を満たすものと判断しております。  次に、医療上の必要性についてです。対象疾患を含む高フェニルアラニン血症は、体内 のフェニルアラニンが代謝されずに蓄積することにより不可逆的な知能障害、精神発達遅 延や痙攣、多動などの神経症状を呈する疾患です。  治療としては、フェニルアラニン制限食が唯一と考えられてきましたが、制限食を嫌い 血中フェニルアラニン値を適正に維持できない患児も多くなっております。  これまでの研究から、対象疾患については、テトラヒドロビオプテリンの投与により、 食事療法を緩和又は中止しても血中フェニルアラニン値を適正に維持できることが明ら かになっており、厚生労働科学研究費の研究班でも、テトラヒドロビオプテリンの2塩酸 塩である本剤が対象疾患の治療に不可欠な医薬品である旨が報告されております。さら に、日本小児科学会や日本先天代謝異常学会から本剤の対象疾患に対する早期承認が要望 されております。以上より、本剤は、テトラヒドロビオプテリン反応性高フェニルアラニ ン血症治療薬として医療上の必要性があるものと考えております。  三つ目に、本剤の開発の可能性についてです。国内では平成12年に当時の厚生省の委 託事業である特殊ミルク共同安全開発事業において、9例の患者に対して治療効果を検討 するための長期投与が行われ、本剤単独投与の6例中5例、食事療法を併用した3例全例 で血中フェニルアラニン値が適正に維持され、患者の発育状況は良好で、重篤な副作用や 精神発達遅延等は認められなかったと報告されております。  また、欧州では平成17年8月に希少疾病用医薬品に指定されているほか、米国では本 年5月に本剤が承認申請されており、米国の承認申請に用いられた海外第III相試験成績を 本剤の国内承認申請でも利用することについて、米国の開発会社と基本的な合意が得られ ていると申請者から説明されております。したがって、本邦においても本剤の開発の可能 性はあると考えられます。  以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の三点を考えると、本剤については 希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しております。御審議のほどよろしくお願 いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。御質問、御意見をお願いいたします。いかがで しょうか。これは、補酵素が欠損していなくても、補酵素を補充することにより、代謝が 改善するということなのでしょうか。 ○事務局 そうです。このビオプテリンというものは、もともと生体内にある物質で、そ れを投与することで、フェニルアラニンの代謝が進むことになっております。ですから、 酵素欠損症の患者に対しても、ビオプテリンを投与して改善する患者に対して効くという 薬です。 ○永井部会長 いかがでしょうか。御質問等がなければ、議決に入ります。この件につい て、指定可としてよろしいでしょうか。それでは、指定可として、薬事分科会に報告とさ せていただきます。  続いて、議題8に入ります。この審議については、首藤部会長代理に進行をお願いした いと思います。 ○首藤部会長代理 それでは、議題8に入りますが、永井委員が少しの間御退室です。 ── 永井委員退室 ── ○首藤部会長代理 まず、事務局から概要を説明してください。 ○事務局 それでは、FTY720を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、 資料8に基づき説明いたします。資料の一番上のタブにある報告書を御覧ください。医薬 品医療機器総合機構が事前評価を取りまとめておりますので、対象患者数、医療上の必要 性、開発の可能性の三点について御説明します。  品目の名称はFTY720。対象疾病は多発性硬化症の再発予防及び進行抑制。申請者は三 菱ウェルファーマ株式会社、ノバルティスファーマ株式会社です。  まず、対象患者数についてです。2004年度の厚生労働科学研究の難治性疾患克服研究 事業では、診断基準に合致するものが9,900人となっております。また、多発性硬化症に 対する特定疾患医療受給者証の交付を受けた件数は、2004年で10,756件となっておりま す。推定患者数は1989年に実施された疫学調査時の3,700人に比較して増加しておりま すが、現時点でも、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人以下を満たすものと判断し ております。  次に、医療上の必要性についてです。多発性硬化症は、中枢神経の髄鞘やオリゴデンド ロサイトを標的とした自己免疫疾患と考えられており、中枢神経症候が時間的、空間的に 多発することを特徴とする炎症性脱髄疾患です。  現在、治療薬は、インターフェロンβ-1bは再発予防及び進行抑制に対して、インタ ーフェロンβ-1aは再発予防に対してそれぞれ注射薬が承認されておりますが、中和抗 体の発現、副作用としての初期のインフルエンザ様症状やインターフェロンβ-1bにお ける注射部位症状などの問題もあり継続投与を断念せざるを得ない患者もおります。ま た、自己注射製剤なので患者の負担も大きくなっております。本剤は、スフィンゴシン1 リン酸受容体のmodulatorであり、末梢血中リンパ球数を減少させることにより、炎症部 位へのリンパ球浸潤を低下させ、自己免疫性T細胞反応を抑制することが予想される新し い作用機序を有する薬剤として期待されております。経口投与の利便性からも、本剤は多 発性硬化症の治療に貴重な選択肢を与えるものと考えられております。  三つ目に、本剤の開発の可能性についてです。海外において本剤を6か月間投与した第 II相試験が実施され、再発率やMRI検査において有効性が認められ、現在第III相試験が 実施中です。国内でも、プラセボ対照二重盲検比較試験や継続投与試験が進められており、 本邦においても本剤の開発の可能性はあると考えられます。  以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の三点を考えると、本剤については 希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しております。御審議のほどよろしくお願 いいたします。 ○首藤部会長代理 説明ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見はご ざいませんか。 ○鈴木委員 私は誤解しているのではないかと思っているのですが、この薬は末梢の白血 球の数を減らすという、それが作用メカニズムですよね。「申請書及び資料」の中を見る とそのような記載があり、実際に動物でもリンパ球の数が減っていると書いているので す。一方で、ヒトで例えば66、67ページの有害事象、臨床検査値の発現率、これはむし ろ安全性から見ているのですが、こういうところで見ていくと、それほどリンパの数は影 響されていないイメージを持ちます。これは、投与をやめれば元に戻るとか、重篤な副作 用が出るほどには影響していない、そういう見方でよろしいのでしょうか。 ○事務局 最終的に、この薬剤を投与していて安全性の評価というのは、今、治験の中で データを集めて正確に解析をしていくのだと思いますが、現時点のデータとしてこのよう な形で示しております。 ○鈴木委員 そうすると、ヒトで臨床成績としてきちんとした効果があることが分かっ て、それは、67ページにあるように、総白血球数で見て減っていて、これが薬理効果と 考えてよろしいわけですね。 ○事務局 臨床検査値でそういうものが出てきているので、そういうものも恐らくその効 果の一つなのかなと思います。現時点で推測されるのは、そういうこともあるのだろうと 思います。 ○鈴木委員 ありがとうございます。 ○首藤部会長代理 本件の議決に入りたいと思いますが、鈴木委員、千葉委員、成冨委員、 野田委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への 参加を御遠慮いただくことになっています。本件について、希少疾病用医薬品の指定を承 認してよろしいでしょうか。御異議がないようですので、本件は承認して、薬事分科会に 報告といたします。  次は、報告事項ですが、間もなく永井先生がお戻りになると思います。 ── 永井委員入室 ── ○永井部会長 それでは、報告事項に移ります。順次説明をお願いします。 ○機構 報告事項について順次説明いたします。  議題1「医薬品シアノキットの輸入承認について」報告いたします。資料9の1枚目の 裏表を御覧ください。本剤は、ヒドロキソコバラミンを有効成分とし、シアンイオンと直 接結合することにより、シアン中毒の解毒作用を有する薬剤です。  今般、メルク株式会社から、1ページの7番、臨床機関の所ですが、「適応外使用に係 る医療用医薬品の取扱いについて」(平成11年2月1日付け研第4号、医薬審第104号、 厚生省健康政策局研究開発振興課長及び医薬安全局審査管理課長通知)に基づき、「シア ン及びシアン化合物による中毒」の効能・効果の追加等について輸入承認の申請がなされ たものです。本剤は、取扱区分としては、新効能医薬品、新用量医薬品になります。  医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いた しました。  続きまして、議題2「医薬品カロナール錠200他55品目の製造承認事項一部変更承認 について」報告いたします。資料10の1枚目の裏表を御覧ください。これらの薬剤は、 アセトアミノフェンを有効成分とする非ピリン系の解熱鎮痛薬です。  今般、昭和薬品化工株式会社他20社から、2ページの8番、備考の所ですが、「薬事 ・食品衛生審議会で事前評価を受けたアセトアミノフェンの小児薬物療法に関する承認申 請について」(平成19年3月28日付け薬食審査発第0328001号、医薬食品局審査管理課 長通知)に基づき、「小児科領域における解熱・鎮痛」の効能・効果の追加、それに関す る用法・用量の追加に関して、承認事項一部変更承認申請がなされたものです。  医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いた しました。  続きまして、議題3「医療用医薬品の再審査結果について」続けて三つ報告いたします。  まずは、資料11-1の医薬品・再審査・確認等・結果通知書「メバロチン錠5他4品目」 を御覧ください。これらの品目の承認された効能・効果である、「高脂血症、家族性高コ レステロール血症」について実施された、市販後の使用成績調査、特別調査の結果に基づ いて、再審査申請が行われたものです。  資料の10ページ、総合評価の所ですが、医薬品医療機器総合機構の審査の結果、薬事 法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しない、すなわ ち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と 判定したものです。  続きまして、資料11-2の医薬品・再審査・確認等・結果通知書「ローヘパ注500他2 品目(他2品目は製剤原料)」を御覧ください。当該品目の承認された効能・効果である、 「血液体外循環時の灌流血液の凝固防止(血液透析)」について実施された、市販後の使用 成績調査の結果、特別調査の結果に基づいて、再審査申請が行われたものです。  資料の5ページを見ていただくと、総合評価が載っておりますが、医薬品医療機器総合 機構の審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれ にも該当しない、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要は ない「カテゴリー1」と判定したものです。  最後に、資料11-3の「スベニールバイアル関節注25mg」及び「スベニールディスポ関 節注25mg」を御覧ください。これらの品目につきまして、「慢性関節リウマチにおける 膝関節痛」を対象に実施された、市販後の使用成績調査の結果、特別調査の結果、及び承 認条件「市販後調査において、第II相試験で得られた用量-反応関係が再現されることの 確認、及び本剤の長期使用時における安全性の確認を目的とした市販後臨床試験を実施 し、結果を再審査申請資料として報告すること」に基づいて実施された市販後臨床試験の 成績等に基づいて、本再審査申請が行われました。  資料の8ページになりますが、総合評価として、医薬品医療機器総合機構の審査の結果、 薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しない、す なわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」 と判定したものです。以上です。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問等がござい ましたらお願いします。 ○土屋委員 ただ今のシアノキットですが、添付文書を見ると、登録商標はないようです が、これは登録商標なのか。シアノキットというのをブランド名と見ているということだ と思いますが、それはどうなのでしょうか。 ○機構 シアノキットをブランド名としてみなしております。 ○土屋委員 登録商標は取れていないのですか。 ○機構 そこは確認しておりません。 ○土屋委員 「キット」という言葉をブランド名にする、もし取れているのなら、商標登 録をしておいた方が。現場としては「キット」という名前はキットだろうと普通は思うの で、そうではないということで、もし「シアノキット」というものを今度はブランド名と して見るならば、これは935通知に違反している名前の付け方かなという気がするので す。935通知はブランド名と剤形と含量の三つを書きなさいということを言っているわけ ですから、「キット」が剤形などではなくブランド名だとするならば、これは「シアノキ ット注射用」で「セット」など、そのような名前、ほかの例からいけば「シアノキットの 注射用セット」で、逆にセットとして見たときには、配合剤扱いのような格好になるのか なということで、規格を入れないという判断になるのではないかと思います。ですから、 もともと本質に誤解を与えるようなブランド名は避けることとありますが、それを認めた として、今度は少なくとも935通知に合致した形の構成にしておかないとまずいと思いま す。  それと同じことが、「包装」の1製品中うんぬんと書いてある組成・性状の所も、きち んと剤形を入れた形で書いていくことが必要ではないかと思います。それから、注射針が 2本入っているけれども、実際は両方使うのではないということについての注意喚起で、 どういう場合にこちらを使ってということもきちんと書いておく。普通はセットやキット などというと使い切ることを考えてしまうので、その辺の表示なども必要ではないかと思 います。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○審査第一部長 どうもありがとうございました。商標の取得状況については確認は取れ ておりませんが、少なくとも世界的にこの「シアノキット」という名称で商品を提供して いる、かつフランスやアメリカでは承認を取得しているということからかんがみますと、 我が国でも商行為をやる以上は商標登録をしているものと予想はしております。ただ、確 認をさせていただくとともに、935通知の誤解のないようにという販売名の付け方は先生 の御指摘ですので、その部分での諸手当を今後引き続き申請者に指導してまいりたいと思 います。  それから、シアン中毒の場合には一刻を争うものですので、このものについては、ヒド ロキソコバラミンの瓶だけではなく、注射筒、生理食塩水等を一つのパックにして、それ を取り出すことによって迅速に対応していただくという観点から、ひとまとめにしてもら うものですが、逆にその使い方を誤らないようにということについても併せて、今日の御 指摘を踏まえて、申請者側に指導してまいりたいと思います。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ほかにございませんでし たら、報告いただいたことについては御確認いただいたということで、進めさせていただ きます。  本日の議題は以上です。事務局から連絡事項をお願いします。 ○事務局 どうもありがとうございました。次回の部会は、既に御案内のように、10月 22日(月)午後4時から開催させていただく予定ですので、よろしく御出席をお願いいた します。以上です。 ○永井部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうござ いました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2746)