07/08/28 第102回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第102回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成19年8月28日(火) 9:30〜 2 場所  厚生労働省共用第9会議室(18階) 3 出席者    委員  公益代表 : 鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表:市川(佳)委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表:市川(隆)委員、山崎委員、輪島委員   事務局  大槻職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        田中派遣・請負労働企画官、松原需給調整事業課長補佐、        松浦需給調整事業課長補佐、佐藤需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働力需給制度部会について       (2)その他           ○清家部会長  それでは、定刻で皆様お揃いでございますので、ただいまから第102回労働力需給制 度部会を開催いたします。  本日は、最初に公開で、「労働力需給制度について」をご審議いただきます。また、 その後、一般労働者派遣事業の許可の諮問、有料職業紹介事業及び無料職業紹介事業の 許可の諮問に係る審議を行いますが、許可の審査につきましては資産状況等の個別の事 業主に関する事項を取り扱うことから、これについては「公開することにより、特定の 者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある」場合に該当するために、非公 開とさせていただきますので、傍聴されている方にはあらかじめ始まる前にご退席いた だくことになることをご了承いただきたいと思います。  議事に入ります前に、当部会の委員に交代がありましたのでご紹介させていただきま す。長年お務めいただきました成宮委員の後任として、全国中小企業団体中央会専務理 事の市川隆治さんにご就任いただいております。  それでは、市川さん、一言ご挨拶をお願いいたします。 ○市川(隆)委員  ご紹介いただきました、この7月に全国中小企業団体中央会の専務理事を拝命いたし ました市川隆治と申します。派遣労働制度をはじめ、このような労働需給制度関係につ いては必ずしも明るくない状況でございますので、勉強いたしまして少しでも貢献をさ せていただければと思っておりますので、皆様よろしくお願いいたします。 ○清家部会長  ありがとうございました。それから、事務局である職業安定局にも異動がありました ので紹介させていただきます。8月24日付けで鳥生職業安定局次長の後任として大槻職 業安定局次長、坂口需給調整事業課長の後任として鈴木需給調整事業課長、篠崎課長補 佐の後任として松原課長補佐が就任されました。  それでは、事務局の異動者を代表して、大槻次長から一言ご挨拶をお願いいたします。 ○大槻次長  おはようございます。この度職業安定局次長を拝命いたしました大槻でございます。 労働力需給制度部会の皆様には、どうかよろしくお願いを申し上げます。  さて、最近の雇用情勢につきましては、厳しさが残るものの、回復をしていると言わ れているところでありますが、その厳しさの中に、依然として若者の失業問題などがい ろいろとございます。雇用情勢にも地域差が見られ、また、正社員の有効求人倍率が全 体の有効求人倍率に比べてかなり低いといったことが問題として指摘をされているとこ ろであります。このような状況に的確に対応していくためには、ハローワークの需給調 整機能の強化は当然なことといたしまして、広い意味で労働力需給調整機能が有効かつ 効果的に機能することが重要であると思います。このような中で労働力需給制度につい ては、当部会において平成15年改正法の施行状況について議論を熱心にいただいてきた ところであります。委員の皆様にはご多忙の中、引き続きいろいろな意味でご負担をお かけすることとなるかと思いますが、どうか部会におけるご審議に格別のご尽力とご協 力をお願い申し上げまして、簡単ですが、ご挨拶とさせていただきます。 ○清家部会長  どうもありがとうございました。それでは議事に入ります。最初の議題は、「労働力 需給制度について」です。事務局において、前回議論した今後の検討課題のスケジュー ル案を作成していただいていますので、この点について事務局から資料の説明をお願い いたします。 ○田中企画官  私から、資料の説明をいたしますが、それに先だちまして資料の確認をさせていただ きたいと思います。お手元の資料1、「9月以降のスケジュール(案)」、その参考とし て「労働者派遣制度に関する検討課題」、資料2で、「日雇い派遣労働者の実態に関す る調査及び住居喪失不安定就労者の実態に関する調査の概要」、資料3として、「緊急 医師確保対策関係資料」の3点になっていますが、皆様よろしいでしょうか。  それでは、資料1と参考に基づいて今後の検討課題のスケジュール案について説明い たします。労働者派遣制度に関する検討課題については、先月の当部会で、参考にある ように検討課題をまとめていただいたところですが、これに基づいて9月以降の検討の スケジュール(案)を作成しています。9月については、検討課題Iの派遣労働者の雇 用の安定についてということで、(1)登録型の派遣労働、(2)日々雇用の派遣労働、 (3)常用雇用型の派遣労働、(4)派遣受入期間・派遣労働者への雇用申込義務の4点 についてご議論をいただくスケジュールです。10月については、IIの労働力需給調整機 能の強化についてとして、(1)事前面接等の派遣労働者の特定を目的とする行為、(2) 紹介予定派遣。IIIの派遣元事業主・派遣先事業主の講ずべき措置。IVの適正な労働者派 遣事業の運営の確保というスケジュールとしています。  9、10月とも、2回程度のご議論をいただくような形でいかがかと考えています。11月 以降については9、10月までの議論を踏まえた総合的な議論をしていただくというよう な検討スケジュール案を作成しているところであります。説明は、以上です。 ○清家部会長  ありがとうございました。ただいま、事務局から説明いただきました今後の検討スケ ジュール(案)について、ご意見、ご質問等がある方はよろしくお願いいたします。  ただいまのスケジュール案について特段ご意見、ご質問等がないようでしたら、いま の事務局案に沿って今後進めさせていただきますが、よろしいでしょうか。                 (異議なし) ○清家部会長  ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。  次に、事務局から日雇い派遣労働者の実態に係る調査結果の報告がありますので、よ ろしくお願いたします。 ○田中企画官  続きまして資料2に基づいて「日雇い派遣労働者の実態に関する調査」について報告を させていただきます。この調査については今日付けで、厚生労働省発表ということで公 表したものです。日雇派遣労働者については、住居がなくインターネットカフェ等で寝 泊まりしながら不安定な雇用形態で就業する者等々の1つの形態として、さまざまな指摘 がなされていたところから、厚生労働省では、このような1日単位とか、1カ月未満の短 期の雇用契約で働く派遣労働者の実態を把握をするために、派遣元の事業主を通じた「 日雇い派遣労働者の実態に関する調査」を実施しました。これと併せて、ネットカフェ 等の店舗に寝泊まりしている方の実態調査をすることで、これは、ネットカフェ等の店 舗と店舗利用者を通じたネットカフェ利用者の概数調査、それに、実際に店舗で寝泊ま りをしている方に対しての調査、生活就業実態調査、全部で3本の調査をまとめて実施 して、今回発表することになったものです。当部会の関係としては、1番最初の「日雇 い労働者の実態に関する調査」が主な関連事項になると思いますが、3本まとめて記者 発表していますので、その資料に基づいて概要を説明させていただきます。  この調査結果で把握できたことは3点あります。1点目として、短期派遣労働者、1カ 月未満の雇用契約で働く派遣労働者ですが、このような労働者には若年者が多いこと、 特に男性層は正社員になることを希望する者も多く見られるというような実態がありま す。2点目は、ネットカフェに寝泊まりする方ですが、住居喪失者については約5,400 人と推計されて、年齢構成としては20歳代の若い層と50歳代の層の2つの山が見られ ることが把握できています。3点目は、このような住居を喪失した方の中で短期派遣労 働者の方については、この調査において一定数は見られたわけですが、むしろ、住居を 喪失されている方については、このような短期派遣労働者ばかりではなく、短期の直用 労働者と失業者といった方のほうが多いことが把握できています。  調査の概要ですが、1頁目の下の囲いの部分を見ていただきますと、まず「日雇い派 遣労働者の実態に関する調査」です。これについては、事業主のほうの調査と労働者の 調査の大きく2本立てになっています。事業の調査としては、東京と大阪の労働局の管 内で日雇派遣などの短期派遣を多く取り扱っていると考えられる派遣元事業主のうちか ら選んで調査をしており、この調査対象は10社となっています。派遣元事業主の調査で 把握できたことは、1日当たりどの程度の短期派遣労働者の数があるかということですが、 調査対象10社で、合計約5万3,000人でした。このうちの雇用契約が1日単位の日雇派遣 労働者の数は大体約5万1,000人という調査結果が出ています。このような派遣労働者へ の連絡の方法ですが、携帯電話のメールがほとんどの事業主で利用されています。また、 どのような業務に多いかということですが、倉庫・搬送、それから製造などの事業主が 多いという状況になっています。  (2)の「短期派遣労働者」の実態ですが、これについては派遣元事業主を通じて給与 の支払いをする時などに労働者の方に調査票を渡していただきその場で回収をするとい う方法を取ったものです。回収した方のうち1カ月未満の短期派遣労働者を抜き出し集計 をしたもので、サンプル数が698人分になります。このうち、1日単位の日雇いの派遣労 働者については84%でありました。男女比を見ると、男性のほうが58%と多い状況にな っています。年齢構成は、35歳未満の若年層が68.8%でかなり若年層が多い状況になっ ています。  このような方がどのくらい働いているかということですが、1カ月の平均就業日数は 14日で月収は13.3万円という結果となっています。そのような方が短期派遣として働く 理由を複数回答で聞いていますが、これについては「働く日時を選ぶことができて便利 である」「収入の足しにする」というような回答が多くなっていますが、「正社員とし ての就職先が見つかるまでのつなぎとして」という回答も24.7%あり、それなりに多い 数字になっています。今後の希望する働き方ですが、全体を見ると「現在のままでよい」 とするほうが「正社員になりたい」と希望する方よりも多くなっていますが、内容をよ く見ると、男性の25〜39歳層では、「正社員」を希望する方が多くなっています。一方、 女性については、すべての年齢層で「現在のままでよい」という回答が多いという状況 が見られたところです。また、このような方がネットカフェ等をオールナイトで利用す ることがあるかという質問に対して、「ある」という方が37.9%おられましたが、この 中で「住居がない」「住居に帰れない」といった事情があるためにネットカフェで寝泊 まりしていると回答された方は1.7%見られるわけですが、多い数字ではないという実態 になっています。  ここまでは日雇い派遣労働者の実態ですが、併せてII以降で、ネットカフェの状況調 査もしていますので参考までに紹介させていただきます。住居喪失不安定就労者の実態 に関する調査ですが、ネットカフェをオールナイトで利用する方ですが、全国で1日当た り約6万900人と推計しています。これについての利用の理由は、「夜通しでパソコン等 を利用するため」「仕事や遊びで遅くなって帰宅がおっくう」というような理由が多く あり、いわゆる、ネットカフェで「住居がないのでここで寝泊まりをするために利用す る」住居喪失者については7.8%という実態になっています。このような住居喪失者が、 全国でどのくらいおられるのかという概数を推計すると、週半分以上常連的に利用され る住居喪失者は約5,400人で、その中で「非正規労働者」については約2,700人ですが「 短期派遣労働者」は約600人で、「短期直用労働者」の方が約1,200人という推計になっ ています。このほか、「正社員」の方が約300人、「失業者」が約1,300人、「無業者」 が約900人と推計されています。先ほど、冒頭にも申し上げましたが、年齢構成では20 歳代と50歳代に2つの山が見られるところであります。  これらの住居を喪失をされた方の生活就業の実態ですが、住居を喪失している理由と しては「仕事を辞めて家賃等が支払えなくなった」「仕事を辞めて寮や住み込み先を出 た」「家族との関係が悪く住居を出た」といったことが多くなっています。住居を喪失 されておられるわけですが、住居の確保に当たっての問題として、「アパート等の入居 に必要な初期費用をなかなか貯蓄できない」「アパートに入居しても家賃を払い続ける ための安定収入がなく不安」「必要な保証人を確保できない」といった理由が挙げられ ています。  求職活動に当たっての問題としては、「日払いでないと生活費が続かない」「履歴書 に書く住所がない」といったことが挙げられています。日雇派遣労働者の実態、住居喪 失をされた方の実態についての調査をまとめたところですが、これについては冒頭申し 上げましたように、今日付けで公表しているところであります。以上、報告をさせてい ただきました。 ○清家部会長  どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご説明及び本日配付されてお ります資料等をご参考に、ご質問、ご意見等がございましたらよろしくお願いいたしま す。鎌田委員、どうぞ。 ○鎌田委員  「日雇い派遣労働者の実態に関する調査」の定義なのですが、4頁目で概念について、 派遣労働者のうち1日単位の雇用契約で働く者、以下「日雇派遣労働者」という、1カ月 未満の雇用契約で働く者、以下「短期派遣労働者」というと2つに分けているのです。 あくまでも調査のための概念なのでしょうが1カ月未満の雇用契約で働く者というのは、 例えば反復更新していても短期派遣労働者と考えるのでしょうか。それとも、本当にこ れだけの定義で1カ月未満で働く、雇用契約期間が1カ月未満であれば短期と一応とらえ ておくということなのでしょうか。 ○田中企画官  今回の調査では、派遣労働者の雇用形態で有期雇用、1日単位か1カ月未満かという聞 き方をしていますので、そのような意味では雇用契約の期間がどうであったかというこ とでこの調査では定義をしています。 ○清家部会長  よろしいでしょうか。 ○鎌田委員  はい。 ○清家部会長  どうぞ。 ○鈴木課長  補足いたしますと、今回の調査の目的自体は日雇派遣と言われる方の実態を把握する ことなのですが、日雇派遣というのは、そもそも反復継続しても1日単位で契約をして 継続することに問題があるというのが当初の問題意識ですから、全体として反復継続し ても、もともとの単位当たりの契約が1日単位もしくは1週間とか2週間とかという細切 れになっているものも問題にしていますので、この場合は反復契約は数えずに1回の契 約単位で計っているということでございます。 ○清家部会長  ほかにいかがですか。長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員  今回この日雇派遣を調査するために、日雇派遣とか、短期派遣労働者という使い方を したのだろうと思いますが、この日々雇用というか、1日単位の雇用契約で働く者、日 雇派遣労働者というふうに今回調査の中で規定しているのですが、この調査の実態から、 こういう働き方を日雇派遣労働者というのかということについては、どんなふうに考え ていらっしゃいますか。何か、この実態を見ると、これは日雇派遣労働者なのか、少し 疑問もあるのですが。たまたま、派遣会社から行っていたから、派遣と言っているのか。 ○鈴木課長  この調査自体は派遣会社10社と労働者を対象にやっております調査ですので、当然こ れは派遣法に基づく派遣の対象だということを派遣会社には十分理解していただいて調 査をしております。したがいまして、派遣会社からそこの派遣労働者へお渡しいただい ておりますので、私ども、これは誤差は若干あるとは思いますが、日雇いで派遣形態で 就労している方に調査票が渡って、それを回収しているという認識でございます。した がいまして、これは日々の請負とか直用というのではなくて、日雇いでの派遣形態の形 だと考えます。これを通常言われるところの日雇派遣の方々かなと、この調査では考え ております。 ○清家部会長  長谷川委員、よろしいですか。 ○長谷川委員  まあ、そうでしょう。調査報告としてはわかりました。 ○北村委員  調査の方法なのですが、1頁目に(1)(2)(3)とありますが、これは3種類の調査を 別々になさったということですね。ということは、該当する対象者が必ずしも重なって いるとは限らないということですね。派遣業者を通じてということなのですが、先ほど の課長のお話では、1日で契約して反復する者は含むということですか。契約の形態が1 日ということですね。 ○鈴木課長  契約の形態が1日で、それが反復更新して継続されていても、この場合は1日単位とい うことです。 ○北村委員  そうすると、派遣業者から派遣の社員に対して調査票が渡されて、それをまた派遣業 者を通して回収するわけですね。 ○鈴木課長  そういう形態でやっております。 ○北村委員  わかりました。 ○清家部会長  よろしいですか。ほかに何かございますか。輪島委員。 ○輪島委員  1つ確認ですが、これはもう発表したということなのでしょうか。発表済みということ ですか。 ○鈴木課長  この場に出したことをもって発表という形にさせていただいております。 ○輪島委員  いまのとおり、3つの調査を一緒くたにプレスの中に出していて、いかにも関連性があ るかに見えるように調査をしたような気がするのですが、初めて見たので何とも言いよ うがないのですが、これによって、2頁の短期派遣労働者の実態で、日雇派遣が84.0% で、平均就業日数が14日、1カ月の中で14日という意味合いですね。課題は反復継続して ずっとそういうふうになっているのかどうかということがどれぐらい長くになっている のか、ここではあまりよくわからない。  それと、この調査はこの調査ですが、いわゆる日雇労働者とどう比較するのかという のは出てこないので、日雇労働者も倉庫、運送、製造する業務に就いていたりすれば、 要は日々で働く雇用の形態が日雇いのところと、日雇いの派遣のところの何が違うのか というのは、ここからは見えないので、それについて別途日雇いの実態とそれを併せて、 日雇派遣とを比べてみないと議論はできないと思います。今日の議題は調査の概要の発 表なので、そこはそうなのかと思いますが、そこはどういうふうにするのかを事務局に お伺いしたいと思います。 ○鈴木課長  輪島委員がおっしゃったように、この調査の結果が出ましたので、ご報告を申し上げ ているという趣旨でして、これ以降、先ほどご了承いただきました日程に従いまして議 論していく中で、この調査と他の調査も併せて、例えばこの日雇い派遣でありましたら、 実態が浮彫りになるような資料がございましたら別途調整いたしまして、お出しして、 ご議論いただきたいと思っております。  ただ、日雇いの実態というのがどこまで出るかというのは、ちょっと難しいところが あろうかと思いますが、この調査だけではなく、ほかのと比較してご議論いただくとい う趣旨でございます。調査全体の考え方なのですが、最初に企画官からも申し上げまし たとおり、この調査自体、いわゆるインターネットカフェで寝泊まりされるような方が いらっしゃって、この実態を把握すべきだというのが当初の発想でございます。  それを把握するためには、そういった方たちが多く就労する日雇い派遣の側、それか らインターネットカフェの側、両面から調査をしてはどうかということで、この調査を、 ある意味同時期に企画いたしまして実施しました。ただ、結果から見ますと、あまりイ ンターネットカフェ難民と言われるような住居喪失者の方と日雇い派遣というのは重な らないという逆の結果が出たような感じがいたしますが、どちらにしても、本部会の議 論の中心でございます登録型派遣制度につきましては、日雇い派遣のほうの事業主、労 働者調査が参考になるのではないかということから、その部分だけでもお使いいただけ たらという趣旨でお出ししておりますので、必ずしもこの部会での議論に十分かどうか というと、不十分かもしれませんが、今後の資料の出し方ということで工夫させていた だこうかと思っておりすます。 ○清家部会長  輪島委員、よろしいですか。長谷川委員。 ○長谷川委員  11頁のインターネットカフェ、要するに漫画喫茶の利用者ですが、3,246店舗に対する 第1次調査の電話調査をやり、それでオールナイト利用者の総数を把握したわけですね。 第2次調査が最初の3,246店舗から87店舗の1,664人になったということですが、第1次か ら第2次調査というのは、どういうような関連性があるのか、ちょっと説明してほしい のですが。 ○田中企画官  第1次は全数調査で取りまして、第2次ではこれで一定程度を把握をした上で、すべて の所で、またアンケート調査を取るということになると、なかなか難しいところもござ いますので、多い所を選んで、スクリーニングを1次調査でかけて、2次調査で取ったと いうことです。 ○長谷川委員  3,246の所で、一度で利用者のアンケートを取ったほうが、かえって取れたのではな いですか。 ○田中企画官  調査のやり方にもよると思いますが、1次調査では、平日、月曜日から木曜日、毎日 どれぐらいいるかというようなことを見ていただいて、ある程度店舗の方にもご負担を かけながらやっていることですので、調査を実施するに当たっての、できること、でき ないことというようなことを考えて、こういうような形でさせていただいたということ です。 ○長谷川委員  何でかというと、第2次調査の87店舗の1,664というのは2,000を切っているでしょう。 2,000を切った調査はどうなのかなと思ったのです。調査サンプルとしては3,000ぐらい あると本当はいいわけです。だから、3,246店舗で調査をやったほうがよかったのでは ないかと思います。この第2次調査の87店舗で1,664というのは、調査の対象としてサン プル数がちょっと少ないのではないかと思いました。やらないよりはやったほうがまし だから、いいのですが。 ○鈴木課長  確かに店舗数が多くて、調査対象が多いほうがいいのは当然ですが、時間的問題や協 力された方々の労力の問題等々ございまいして、比較的多く、このアンケートにご協力 いただけるだろう店舗を選んで調査をしたところ、結果として、87店舗・1,664人とい うことでございましたので、この中でももうちょっと取れたらよかったかもしれません が、時間と予算の限られた中での調査ということで、ご理解いただきたいと思います。 ○清家部会長  よろしいですか。 ○輪島委員  この調査は1頁目の日雇派遣の実態調査の関係で、この10社を選んだ条件は、4頁目に あるように、たぶん日雇派遣をやっているであろうと予想される所を選んだということ ですね。そうなると、例えば普通のいわゆる26業務とか、自由化業務の中で1日単位で 行っている派遣労働者というのもいるわけですね。  次回以降ですが、先ほど日雇労働者とこの日雇派遣、それから普通の、いわゆるいま の派遣制度の中で1日単位で行っている人を把握ができるのかどうか。それと、ここが どう違うのかというのも、わかるのであれば出していただきたいというお願いです。 ○鈴木課長  必ずしもぴったり同じものということになるかどうかわかりませんが、ご要望に添え るような資料を用意いたしたいと思います。 ○清家部会長  ほかにご質問はいかがですか ○市川(佳)委員  12頁に住居喪失不安定就労者の推計というのが一覧表になっているのですが、例えば 住居喪失者が全国で5,400人ぐらいいると推計されるということですが、それについて は、何で5,400人なんだというのは、推計は11頁にある計算式で割り出したということ でよろしいのですか。  そうしますと、その方たちが短期派遣なのかとか、短期直用なのかというのは次の生 活・就業実態調査のこのサンプル、362人の方から推計して大体このくらいいらっしゃ るということでしょうか。 ○田中企画官  2次調査の中で現在の仕事の形態というのを聞いておりますので、そういう形で出し ております。 ○市川(佳)委員  そこから全部推計していって、この1,664人のお答えから推計して、それを全国に当 てはめてみると、大体このぐらいになるという推計ですか。 ○田中企画官  統計的に推計の処理をしました。これは、統計的には信頼性があるというようなやり 方で推計をしております。 ○市川(佳)委員  もう1つの生活・就業実態調査というのは、サンプルが362人、それをまとめたものが 14頁にあります。ネットカフェで住居喪失者を見つけて調査票を配るというのは、やは り362人でも大変だったのですか。 ○田中企画官  これは対面のアンケート調査で聞いておりますので、やはりなかなかいろいろな事情 があって渋る方もおられますので、実際に調査をして、回収をしていくということを考 えると、なかなか数を増やしていくというのは難しいのではないかと思います。 ○清家部会長  よろしいですか。ほかにございますか。 ○市川(隆)委員  拝見した印象論になりますが、これを是非経年的に調査を行っていただきますと、例 えば景気の変動とか、あるいは失業率の変動とか、そういったところとどういう相関関 係になるのかとかがわかると、また一層面白い結果になるのではないかと思います。 ○清家部会長  事務局のほうから、何かありますか。 ○鈴木課長  これは取りあえずの調査ということで、日雇い派遣の実態等を、これまで調べたこと がなかったので調査させていただいたということでございます。ここにつきましては、 これをまた同じ形でやるのか、別の形でやるのか等まだ決まっておりませんので、その 辺りご意見も踏まえまして検討していきたいと思います。 ○清家部会長  市川委員、よろしいですか。ほかに何かございますか。 ○北村委員  私が見落としているのかと思って、いま焦って見ているのですが、第1の調査のほう は回収率が労働者は60%と出ているのですが、第2の調査では、これはオールナイト利 用者だと認定された人のうちの、どの程度がきちんとした答えを出しているのかという アンケートへの応答の数はどこかにあるのですか。  というのは、先ほど、ご指摘があったとおり、非常にこういうのは難しいと思うので す。「アンタどうしてここに寝てるの」みたいな話ですから。どの程度が信頼できる答 えが得られているかというと、おそらく、かなり低いのではないかと私は想像しますが、 そのパーセンテージはどこかに数字で出ているのですか。 ○田中企画官  第2次調査のアンケート、87店舗・1,664人の母数がどうだったかということですか。 ○北村委員  アンケート対象者というのは、回答者なのかということですか。 ○鈴木課長  第2次調査はネットカフェに来られたお客さんに対して、店員の方がアンケートをお 願いして、そこで応じていただいた方から回収するという格好を取っておりますので、 そもそもいくら撒いて、それをいくつ回収したという形ではないのです。店頭で会って、 「アンケートをお願いできますか」と言って、アンケートを受け取って書いてもらった 数だけ集計していますので、もともとの配布部分というのが存在しませんので、したが って回収数というのが考えられないのです。そういう趣旨とご理解ください。 ○北村委員  実数として、1,664人あったということですか。 ○鈴木課長  そういうことで、それに何人に声をかけたかというのは、これはそもそも取っており ませんから、回収率というのが計算できないのです。申し訳ございません。 ○北村委員  そうすると、かなりそこで店員さんの熱意であるとか、これはヤバイから声をかける のはやめようとかいうバイアスがあったことは、ある程度想定できるわけですね。 ○鈴木課長  その場で見ていたわけではありませんのでわかりませんが、確かに声をかけにくいよ うなタイプのお客様もいらっしゃいますので、なかなか難しいこともあったかもしれま せん。そういうことが背景にあるということをご理解いただいた上でこの調査の結果を 見ていただければと思います。 ○清家部会長  よろしいですか。それでは、ただいまの調査結果のご報告については、以上といたし まして、今後委員各位からもいろいろご意見がございましたので、さらにこの調査を今 後の議論の中でも活用いたしますが、追加的にこれを補強するような資料も必要に応じ てお願いするということでよろしいですか。 (異議なし) ○清家部会長  そのようにさせていただきたいと思います。では、もう1つの議題ですが、「緊急医師 確保対策について」でございますが、これについては、まず事務局から、この経緯のご 説明をお願いいたします。 ○田中企画官  緊急医師確保対策ですが、資料3をご覧ください。緊急医師確保対策につきましては、 本年5月末に政府・与党において取りまとめられたものです。この対策には緊急的な医 師の派遣システムの構築が盛り込まれておりますが、これを実施していく上で、医療分 野における適用除外業務を規定しております労働者派遣法施行令の改正といったような 措置が必要になると考えられますことから、本部会において議論をしていただきたいと 考えております。具体的な内容、状況等につきましては、医政局から説明いたします。 ○中村企画官  医政局総務課企画官をしております中村と申します。本日はどうぞよろしくお願いい たします。お手元に資料3をご用意いたしましたので、ご覧をいただければと思います。 1頁、「緊急医師確保対策について」ということで、いまご紹介いただきましたが、5月 31日に政府・与党としてまとめられた医師確保対策について、ここにご紹介しておりま す。医師確保対策でございますが、従来からへき地での医師確保ということについて非 常に問題があって、さまざまな対策を長期にわたって行ってきたわけですが、この数年、 特に地域の中核的な病院、あるいは都心部の病院においても、特定の診療科なり病院に おいて、医師不足問題というのが非常に大きな問題になってきている状況があります。  そうした中で、私どもとしましても、医師確保対策について、様々な取組を進めてい るわけですが、そうした医師不足、どうしてそんな状態が起きているのかということに つきましては、ちょっと頁が前後して恐縮ですが、次の2頁「医師不足問題の背景」と いうことで、大学の問題、あるいは病院勤務医の過重労働の問題、それから最近特に医 師国家試験に合格される方の3分の1は女性の医師ということになっておりまして、そう した女性の医師が出産、育児によって、離職をされるような傾向があるというようなこ と、それから医療事故の関係として、医師が訴訟リスクに曝されるようなことが非常に 高まっているということがあります。  こうしたことを背景に医師不足問題というのが起きているのだろうということで、こ うした背景のそれぞれについて、どのような対策を講じていくのかということが今、非 常に大きな問題になっているわけです。1頁に戻っていただきまして、5月31日に政府・ 与党において取りまとめられた緊急医師確保対策ですが、大きく6項目あります。本日 のご議論と特に関係いたしますのは、1番の「医師不足地域に対する国レベルの緊急臨 時的医師派遣システムの構築」ということです。従来、地域の病院でお医者さんが足り ないという場合には、一般的には大学のほうに医師の紹介なり斡旋をお願いして、大学 のほうから医師を送り出していただくというようなことでしたが、そうした機能がかな り弱ってきているという中で、私ども昨年の医療法改正におきまして、各都道府県に医 療対策協議会というものを設けていただきまして、地域の自治体、病院関係者、大学の 関係者であるとか、様々な方に医療対策協議会に入っていただくことによって、地域の どのような病院において、どのような医療機能に不足を来たしているかということにつ いて、都道府県にかなりイニシアティブを取っていただく形で、医療機能の確保を図っ ていただくということをお願いしているわけです。  こうした取組を進めているわけですが、なかなかそうしたことを言っても、県のレベ ルの調整では難しいというような状況もあるわけでして、この5月31日に取りまとめら れた緊急医師確保対策では、国レベルでもそうした対策を講じるべきであるというよう なことが新たな仕組みとして打ち出されているということでして、全国的な病院団体、 日赤、済生会にもご協力をいただいており、また我が省の関係では国立病院機構という ものがございます。それぞれの団体自身も非常に医師不足の病院を抱えているわけです が、そうした中で、より厳しい状態にある病院に自分のところでお勤めになっている医 師を緊急臨時的に出していただくのをお願いするというようなことを、今回の緊急医師 確保対策の中で打ち出したということでして、短期的な対策としては非常に注目を浴び ている取組です。  以下2から6までありますが、病院の勤務医の労働条件が非常に厳しいということで、 来年度の予算の中でも、少しそうした病院を支援するような取組も講じていきたいとい うようなことを思っております。3番「女性医師の働きやすい職場環境の整備」という ことで、院内保育所という取組を従前から進めておりますが、そうした点についても、 少し要件を緩和するであるとか、予算的にも充実をしたいというようなことをやってい るところです。それから、研修医の是正の問題や、5番「医療リスクに対する支援体制 の整備」、特に産科不足、お産を取り扱われる医療機関の不足というものが大きな社会 問題になっているところでして、そうした方が精一杯努力されても、残念ながら一定の 割合で脳性マヒのお子様がお生まれになるといった場合に、そうした場合について、一 定の補償金を用意すると。これは医療機関側の過失の有無を問わず、そうした場合にま ずはお出しするというような仕組みができないだろうかというような取組、あるいは医 療事故でお亡くなりになったようなケースの場合に、果たしてその原因が何であったか ということをその病院の内部的な調査に委ねるのではなくて、第三者的に、客観的な調 査をする仕組みを設けて、そこできちんと真相の究明をし、再発防止につなげていくと いった取組を進めています。  そのことによって、医療に対する信頼を高めて、今、医師や医療機関が医療紛争に巻 き込まれるリスクを抱えている状態をできるだけ改善したい、そうした取組を進めてい るということです。  6番目、実は昨年夏にも打ち出したのですが、大学の医学部について、暫定的な定数 増を図っていくという取組を進めているところです。昨年夏の段階では、特に医師不足 が深刻な10県を全国から選びまして、医学部の定数増を最大10人まで拡大をするという ことを容認すると打ち出したわけですが、今回の緊急医師確保対策の中では、各都道府 県で奨学金を用意していただいて、奨学金に基づいて、卒業後に少し各都道府県が指定 する医療機関で働いていただく、というようなことを条件に医学部に入っていただく場 合には、残的的な定数増を図るというような取組を進めるということが6番目に盛り込 まれております。6番につきましては、これから入学される医学生の話ですので、効果 が出るまでにはかなり時間がありますが、1番の短期的対策から6番の長期的対策まで、 様々な取組を講じることとされているというのが全体的な背景でございます。  3頁、こうした医師の状況、各都道府県におきまして、かなり対人口比で見ましても 差があるというのが実情です。二次医療圏というのは、各都道府県の中で、一定のまと まった医療圏を各都道府県が設定しているものですが、特に県庁所在地を中心とする二 次医療圏と比較的郡部等を中心とする二次医療圏とでは、同じ県内でもかなり医師数に 差があるという状況が見て取れるわけです。こうした状況を踏まえて、各都道府県にお いてイニシアティブを取って、医師の配置をしっかり考えていただきたいというような ことをお願いしている状況があるわけです。  4頁、診療科別に見たときに医師の数が増えている診療科、あるいは減っている診療 科があるという資料でして、下のほうにありますのは、産婦人科なり外科です。小児科 につきましては、医師数としては小児科を標榜する医師が増えている状況があります。5 頁、先ほど申し上げた国レベルでの緊急臨時的医師派遣システムということです。左側 に都道府県の中の取組がありますが、先ほど申し上げましたように医療対策協議会を設 けて、県内での調整を中心にやっていただくということですが、それでもどうしても何 ともならないというような場合には、国の方へ要請をいただくということです。国の方 では、医政局において地域医療支援中央会議というのを設置いたしておりまして、全国 的な病院団体の代表にお入りいただいているような組織ですが、そこで各県のいわば緊 急度合等を判断していただいた上で、全国規模の病院グループであるとか、あるいは国 として募集をした医師をご紹介するというような形で、短期的に地域での医療の確保を 図っていこうというような取組を進めているわけです。  6頁に既に第1陣の実績をお出ししております。5月31日に緊急医師確保対策が取りま とめられて、6月中に第1陣ということで、この6病院に派遣をいたしているわけです。 派遣といいましても、一般的な用語で使わせていただいていますので、実際には日赤の 中の人事異動で異動されていたり、あるいは実際にその病院から退職をして、新たな病 院で採用されているような形態であるとか、あるいは実際に今お認めいただいておりま す労働者派遣事業のへき地への医師派遣というスキームを活用しての派遣、こういった ことを使って現に動き出しているという状況にあるわけです。7頁、医師の確保につい ての経緯を整理しております。9頁、今回の緊急医師確保対策につきましては6月に閣議 決定された経済財政改革の基本方針2007、いわゆる骨太の方針の中にもそのまま取り込 まれているわけでして、政府としても、その具体化を図っていくということが課題とし て設定されているということです。  10頁、平成18年4月にへき地への医師の労働者派遣、あるいは産前産後休業中等をはじ めとする休業の場合の代替的な医療従事者の派遣というものが解禁されたわけでして、 臨時的にいくつか調べたところですが、最初の四角にありますのは、これは都内派遣会 社6社からの聞き取りですが、どのような実態にあるかということを調べたものです。 登録者としては、医師、看護師、それぞれこれだけありますが、実績としてはへき地に ついては、派遣会社からの派遣という形では、調べた限りではなかったということです。 産休等の代替業務については、医師についてはありませんが、看護師についてはかなり 使われているというような状況がありました。  併せて、へき地を有する都道府県について、いくつかの病院を抽出していただく形で 調べていただきましたが、残念ながら今回調べた限りでは、へき地への派遣という形で 医師を派遣しているという状況は見つけることはできませんでした。そうした背景等を ご説明した上で、11頁をご覧ください。今申し上げましたように国レベルで実際に医師 不足でお困りになっている地域において特に中核的な病院に医師を臨時的・緊急的に派 遣するようなシステムを進めていくべきであるということです。  それから(2)にあるのは従前から進めておりました、都道府県における各地域の中で 医療機関の医療機能を十分調整していただいた上で、比較的県庁所在地を中心とする地 域に、若い医師にとっても魅力があって、医師確保という点では比較的お困りでもない 病院から、その地域における医師不足でお困りの病院に医師を供給していただくという ようなことを進めているわけですが、そうした場合に、今、へき地への派遣ということ であれば、労働者派遣法に基づいて、派遣形態での供給ができるわけですが、それ以外 の場合にはできないという状況になっているわけです。  この点について、医師確保対策のいわば選択肢を拡大するという観点からも可能とな らないだろうかということで、緊急対策の中でも盛り込まれたというものです。この点 についてのご議論を是非お願いしたいということが、本日私どもがご説明している趣旨 でございます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。以下参考資料としまして、「労 働者派遣制度における適用除外業務」、それから関係の条文をお付けしております。あ りがとうございました。 ○清家部会長  それでは、ただいまのご説明及び本日配付されております資料等をご参考に、委員の 皆様からご質問、ご意見等をいただきたいと存じます。どなたからでも、どうぞよろし くお願いいたします。 ○山崎委員  10頁の派遣の第1回の実績が「医師0」というのですが、これは要請があってもそうだ ったのですか。それとも、要請がなかったのですか。必要がなかったのですか。 ○中村企画官  要請の分は承知しておりませんが、一般的に医療機関、医師不足でお困りの所が医師 を確保するというときには、大体その病院の職員として採用されるケースがこれまでは 一般的だったのです。そうした中で、この派遣という仕組みがまだ十分普及するに至っ ていないというのが実情ではないかと思っております。 ○山崎委員  お医者様はそんな所に行きたくないのかなと。だからゼロなのかなと思ったのですが、 考えたら、「いや、うちはそんなのいらない。そんな派遣を使わなくてもいいんだよ」 とおっしゃったのか、そこの辺りがちょっとどうなのかと思いまして。ただ、いままで ご説明いただいたこと、医師確保対策の問題関係、私はこれはすごくいいことだと思い ますので、現場の病院の先生方とかが真剣に本当にこれに対して考えて、真摯な行為を 取っていただけたらすごくいいのではないかと思います。 ○清家部会長  ほかにありますか。 ○長谷川委員  私はこの制度には反対です。それだけは、まず言っておきます。言葉の使い方をきち んと吟味しておいてほしいのですが、緊急臨時的医師派遣システムで派遣と言っていま すが、これは出向ですよね。要するに、出向で行っているわけです。本当に医者がへき 地で必要ならば、先ほど医政局の方がおっしゃったように、都道府県に大学病院がある のだから、大学病院の定員を増やしてプールしておけばいいんですよ。そして、そこか ら出せばいいのです。それは、日赤も済生会もそうです。そういう所に、プールしてお いてそこから派遣すれば、私は何ら問題はないと思います。  もう1つ、派遣法に対して甘い幻想は抱かないでほしいのです。どうしてかというと、 この派遣元で派遣労働者の教育訓練をしっかりやっている所は、そんなにたくさんある わけではありません。私たちは派遣法のヒアリングでもやりましたが、例えばSEの派遣 会社で登録派遣ではなく、どちらかというと常用派遣を専らやっている会社は、熱心に 教育訓練もやっています。そういうのは、意外と珍しいのです。ほとんどの所は教育訓 練をやっているかというと、登録するときにどれぐらいのスキルがあるかというぐらい で、あとは放り投げられているわけです。ですから、派遣労働者のスキルアップがされ ていないと指摘されているのも、そういうことなのです。  医師は、日々患者と向き合っていなければ、技術の上達はないですよ。ものすごく速 い勢いで変化しているのですから。例えば、産休や育休で看護師が職場から出て戻って くるときに、その変わりようが大変だといいます。ですから医師というのは、やはり人 間の生命を預かるような専門的なものは、いまの派遣法の中の派遣のシステムに乗って くるというのは少し問題があると思います。どうしても医師が足りないから何か使えな いかと思って派遣法の仕組みを使いたい気持はわからないわけではないですが、これは 問題です。ですから、医師の派遣というのは、非常に慎重にやってきたわけですよ。  いま我が国の病院が医師不足だというのは承知しています。特に産科は。女性は、や はり嫌なわけですよね。夜中の3時頃にお産が始まったとか言われれば、自分の家を全 部放り出して行かなければいけませんから、もっと日勤帯でできるような所に行ってい るというのも、それは実態でよく聞いています。しかし、やはりそこを緊急的にどうし ても乗り切るとすれば、ここは思い切って予算措置をして、各都道府県の大学病院や、 いま言った全国展開しているような病院に予算措置をしてプールして、そこから出すこ とがいいと思います。そこに何年か行ったら戻ってきますよと。  あともう1つは、特に小中学校の教師のへき地に行く人が少なくなったときに、教育 界は管理職になる1歩手前には必ずへき地に赴任させたのです。へき地に行って戻って こなければ、管理職になれない、教頭になれないとか校長になれないというシステムを 作って、みんな行くようにしたわけです。みんな、2、3年ぐらい行ったわけです。医師 の場合も何かそれに近いようなシステムを、新しく作ることが必要だと思います。いま 言われたように、奨学金制度を作るというのもそうだと思います。ですから、もっと創 意工夫をして、いま非常に問題になっている派遣法を安易に使うということは、私は考 え直していただきたいと思います。 ○清家部会長  事務局から何かありますか。 ○中村企画官  まず、いくつかご指摘をいただいたわけですが、もともと医政局の立場で申し上げて も労働者派遣法に基づいて、医師なり医療スタッフを派遣することには慎重なスタンス を取ってきたことは、委員の先生方もご存じのとおりだろうと思っています。そうした 中で、やはり患者や国民に対して、適切な医療をいかに確保するかを考えたとき、従来 からのチーム医療ということを考えたときに、果して派遣は馴染むのかどうかというこ とから慎重な対応を取ってきたわけです。現に、医師が足りず診療科そのものが閉鎖を されるような状態が生じているとか、あるいは残った医者に非常にしわ寄せがいってい るような状態があります。そうしたことを、いかに解消していくのかということから、 ある意味様々な医師確保対策を進めていくツールの1つとして、ツールという言い方は 申し訳ないのかもしれませんが、2年前にもへき地への派遣を解禁していただいたと承 知しているところです。  今回お願いをしたいと思っている分については、へき地以外のエリアについて、いま 認められない状態になっていることについて、国レベルの調整や都道府県レベルの調整 で、実際に医師を雇われている医療機関が自分のところのスタッフを臨時的に医師不足 でお困りの医療機関に派遣をするというような場合を、典型的には想定しているわけで す。そうしたことによって、医師不足で実際に診療の閉鎖等を余儀なくされている、あ るいはその恐れがあるというような所での医療の確保という点から、そうした取組なり 対応、方法というものを医政局の立場で排除するということについては、いかがなもの かということで今回考えているものです。  それから、実際に医療機関でお勤めの医師に少し行ってやってもらえないかというよ うなことをお願いするときに、やはりどうしても身分が切り替わることについては非常 に抵抗感をお持ちのケースが多いのではないかということで、仮に労働者派遣法に基づ く派遣が可能になるということであれば、身分を元の病院に残したまま派遣先の医療機 関でお勤めいただくことも可能になるのではないかということを考えています。 ○市川(佳)委員  ちょっとよくわからないのですが、それは労働者派遣法の派遣なのですか。つまり、 例えば済生会でも日赤でもいいのですが、その医師をどこか必要な所にというときには、 つまり済生会が派遣元事業主になるわけですか。 ○中村企画官  そういうことを想定しています。 ○長谷川委員  しかし、そんなことをしなくても、済生会で出向で対応すれば問題ないのではないで すか。それで、勤務時間などの労働条件などは出向先にするとかとすればいいわけです よね。処遇はどうするのかわかりませんが、それで出向協定を結んで2、3年後には戻す と。そのほうが本人はずっと安心できるのではないですか。派遣にされたほうが、もっ と不安定になると思いますよ。ですから、派遣がいいという発想が少しおかしいのです。 いまでも出向でできるのですから、出向のほうがいいですよ。本人もそのほうがいいの ではないですか。  最初は行ってくれと言われたけれども嫌だなと、もしかしたらこれで解雇されるかも しれないと思うかもしれない。でも出向なら戻ってくるわけで、片道キップはないわけ ですから。もう1回医政局はきちんと検討しなければ、駄目だと思いますよ。やはり基 本的には医療はチームですからチームワークをどうするのかということがあるのですが、 自分たちのグループから出すのなら出向で全然問題がないと思います。どうして出向で はなくて派遣法を使いたいのか、全く意図がわかりません。 ○北村委員  実際には、医師免許を持っていながら第一線から退いて家庭にいる女性は、結構多い と聞いています。そういった人たちを、もう一度労働現場に出して足りない分を補うと いう点では、結構かもしれないという気がします。ただその場合、一体どこがその人の 質を担保するのかと。昨日まで3年間うちにいたのだけれども、医師免許があるから出 てくるというのでは、いかにも危ないと思います。先ほど指摘があったように、教育の 磨き直しなどの責任の所在はどこにあるのかというのが、1つだと思います。  それから、先ほどの質問の関連なのですが、もし大手の病院からへき地や医師不足が 言われている所に人材を出すような場合に、大病院にとってのインセンティブは何なの でしょうか。ただ好意で、大変だからうちでも足りないけど出してあげるよというとこ ろに依存していいのか。もし派遣となると派遣料金を取るわけですよね。ということは、 医師を受け入れる側としては派遣料金が乗った人材を雇うことになるわけですよね。そ うでないと、送り出す側にはインセンティブがないと。  おそらく、これはとりあえず人材を抱えている大手の病院に限定するという考えなの か、それとも医師専門の派遣業者のようなものにまで広げることを考えているのか。  というのは、実態では、もう既にかなり医師紹介業みたいなものはあるわけです。そ の辺りとの関連で、どのように設計図を描いているのかを教えていただければと思いま す。 ○清家部会長  では、事務局から併せて回答をいただきます。 ○中村企画官  まず、今ご指摘いただいた1点目です。確かに、医師の場合は非常に専門職ですし、 かつ医療現場の技術の進歩は非常に早いというようなことがあります。ご指摘いただい た女医の関係で申し上げますと、例えば。 ○北村委員  女医に限らず、どこが担保するのでしょうか。 ○中村企画官  1点目として基本的には、戻られるときに各病院での責任があると思います。特に女 性の医師確保対策という点では、復職研修をされるような場合に、それに対して補助制 度を作るようなことも、国の政策としても行っているという状況があります。  2点目は、確かに医師を送り出す側の病院から見れば、自分のところの非常に大切な 医療スタッフを一時的に失うことになるわけですので、そこについてのデメリットはあ るわけです。したがって、なかなか国レベル、県レベルで医師の派遣をお願いしても、 実際にそれをご理解いただくには難しい状況です。そうした中で、実際に派遣をされる 場合には、当然それに伴う、いわば収入の源になるような部分があると思いますので、 そうした点については派遣元と派遣先の間での協定ということで、収入の補填が行われ るというケースもあろうかと思っています。  それから、今回の見直しですが、先ほど申し上げたように国が実際に今回制度化して いる緊急臨時的な医師派遣システム、あるいは各都道府県が医療対策協議会という医療 法に基づく制度に基づいて、実際に医師の調整を行ったようなケースに限定しての解禁 ということを念頭においているわけです。具体的な制度設計については、現地において 職業安定局と相談をしているところですので、また機会を改めて説明したいと思ってい ます。 ○清家部会長  最初に質問があった、出向制度があるのにどうして派遣制度が必要かということにつ いては、いかがですか。 ○中村企画官  おっしゃるように、もともとお勤めの病院を辞めて新しく働かれる病院で採用される というのが、これまで一般的に行われている制度であったと承知をしています。  例えば、今ある病院でお勤めの医師に行ってくれというような話をしたときに、身分 がその病院の職員でなくなることについて、個々の医者の考えもあろうかと思いますが、 キャリアアップということを考えたときに、非常に難色を示されるケースもあると、実 際問題として伺っています。辞めてまで行くのは嫌だという話は私どもとしてもわかる ところでして、そうしたいわゆる辞めずに行ける、身分がつながったままで行けるよう な方法として、この労働者派遣事業というものが活用し得るのではないかということが、 元々の動機ではないかと思います。 ○清家部会長  病院の場合はわかりませんが、たぶん、ご質問の趣旨は民間企業等ですと派遣ではな くて、籍を元の会社に置いて、別の会社に出向することがありますよね。 ○鈴木課長  いわゆる、労働者派遣と出向の関係かと思います。ご質問は、たぶん在籍出向の形で 派遣元の病院に籍を置いて出向するという格好ですが、これは派遣法の世界では、出向 については例えばグループ間の人事異動等出向ができる、派遣と出向の境界線を限って いますので、この形態はそのようなグループ間の人事交流等ではなく、このような医師 不足の要因に対して、この場合基本的に想定しているのは大病院かと思いますが、大病 院に籍を置いたうえでそちらに派遣されて、そこで指揮命令を受けて勤務に就くという 形かと思いますので、出向ではなく派遣になるという判断から、これは今回派遣法の範 囲を拡大できないかなということです。 ○市川(佳)委員  ちょっとうまく言えないのですが、医療の問題というのは医師が不足しているところ に国が責任をもってやると、つまり市場原理ではないところの話なんですよね。言って みれば、社会保障というか社会制度なんですから。市場競争で任せておいてはいけない ので、そこに何らかの社会政策に手を入れて、どこに住んでいても国民の一定程度の安 心を確保しましょうという、競争原理とは違う話だと私は認識しています。ですから、 こういうへき地や足りない所にしようという政策をするんですよね。  そういう種類の政策に最も労働市場の中で商売的な労働者派遣というものを使うとい うことが、本当にいいのかというもう1つの疑問はあるのです。例えばこれを見ても、 へき地では実績ゼロじゃないですか。いまやろうとしていることは、社会保障政策なん ですよ。そこを、国がどうやって責任をもって手当するかという話であって、労働者派 遣法を使ってやればいいという、それで済む問題なのかなという感じです。こういう制 度でやろうとしていることは、いわゆる儲け主義の話ではない、市場原理とは違うとこ ろの話でやっていることを、いちばん市場原理に近いような労働者派遣法を使ってやる というのは、絶対に無理がくると思います。チーム医療だという話もありますが、いま ここで必要としているのは社会政策であって、競争原理に馴染むことではないのだから、 もっと違う知恵を出してやったほうがいい。それは、派遣法を変えなければできないこ となのかと。私は本末転倒だと思います。 ○長谷川委員  在籍出向の場合は、済生会なら済生会グループの中でとかそういうことで、それから 離れた都道府県に出す場合に、おそらく在籍出向で出せるかという議論の経過か何かが あって、在籍出向では無理があるということで派遣を使おうとしたのか、ちょっとその 辺はわかりません。要するに今回の緊急臨時医師派遣システムだけでは限界があるとい うことと、何で在籍出向では駄目で派遣法を使おうとしたのかの説明が明確ではないの で、そこをもう少し丁寧に説明していただけますか。 ○清家部会長  では、事務局からお願いできますか。 ○鈴木課長  最初の質問からなのですが、確かにここ数年間の派遣事業については経済の自由化等 とセットで議論されましたので、派遣形態というものがいわゆる市場原理云々というこ ととセットで議論されたことは否めません。もともとの発想は、派遣というのはこれは 需給調整システムの1つであると。需給調整システムとして、雇用主と指揮命令者が分 離する、ある意味不安定な形ですから、一定の場合に限ろうというのがもともとの派遣 法の発想です。そこに本来、市場原理に任せてやるのがいいのだという発想はなかった はずです。  派遣法だから、市場原理に任せるシステムだから、いわゆる公的なシステムの中に組 み込むのは少し違うのではないかと。それは市場原理の走らないような制度的な担保を 取ったうえで、全体の仕組みとして公益目的に合うような形で制度が設計できれば、そ れはそれで派遣という形態を使っていいのかなと考えています。  それから、長谷川委員の質問ですが、在籍出向というのはこれは職業安定法上、二重 の雇用という格好で労働者供給になります。これを業として行いますと、安定法の第44 条違反になりますので、その形にならないように、例えばグループ内の人事交流などに 限り、これは業にはならないということで、解釈上安定法第44条の関係で調整している わけです。今回の医師派遣の形を取りますと、これを反復継続してやった場合は業とし てやるという解釈になり得る可能性がありますので、政府のシステムとしてやることで あれば、派遣元で雇って派遣先で指揮命令をする派遣の形を正式に認めたうえで、その 形でやったほうが法律的な整合性が取れるという判断で、今回ご提案を申し上げている とご理解いただきたいと思います。 ○清家部会長  よろしいですか。  市場原理についてですが、たぶん市川委員や長谷川委員が質問された市場原理という のは、例えば先ほどの10頁の派遣元会社からの聞き取り調査の結果だけですが、以前こ こで議論してそんなものが役に立つのかという意見が、労使双方からあったへき地への 派遣の実績がゼロという結果が出ているわけです。あるいは、都道府県への調査につい ても、現在のところ実績がないということで、市場原理というのは要するに派遣制度と いう仕組みを使って、これは配給システムではないですから、そういうシステムで人が 欲しいという医療事業者があり、あるいはそういうシステムを通じてその条件なら行き ましょうという医療従事者がいたときに、成り立つ仕組みだという趣旨だと思います。  つまり、例えば今回新しい制度を作るとしても、これは派遣制度を作るということで あって、行きたくない医者を強制的に派遣するわけではありません。要するに、医者が 行くという条件を整備しなければ、それは機能しないということです。先ほどからの話 でも、どういうインセンティブを付けるのかという委員側の質問には、まだ具体的な仕 組みについてはあまりお答えがありません。  ここで派遣制度について議論するのはいいのですが、市場メカニズムというのは別に 金儲けをするというだけではなくて、市場というのは要するに強制力をもった配給制度 ではないので、需要側のニーズというか、そういう仕組みを通じて需要側がより便利に その仕組みを使って人が獲得できる、あるいは供給側もその仕組みがあると、いままで は行きたくなかったのだけれども行きたくなるというようなことについての、何らかの 実証が、示されてないのではないですかという質問だろうと思います。 ○松浦補佐  雇用労働法制の実務上の話だけ、少し説明させていただきたいと思います。  出向と労働者派遣の関係で言いますと、やはり先ほど課長から説明をさせていただき ましたように、派遣のシステムというのは需給調整システムのことです。不特定の派遣 先に対して、やはり労働者を行かせて、そこで役務を提供させることになると、1つひ とつ雇用法制上の契約関係等を整理しながらやっていかないと、なかなか成立しないも のがあります。それに比べて出向などは、グループ関係などで非常に特別な関係が前提 として両者の間にあって、これはこれで行くのだと、これでうちの労働者をきちんと保 護しないと承知しないぞというような関係で、出向などはいろいろ取決めがあるわけで す。  そういう特殊な事情を1つひとつやっていくようなグループや能力開発などのケース とは違って、まだわからない不特定多数の派遣先に、誰か労働者を効率的に需給調整を する必要があるというような仕組みを取る場合には、やはりこういった労働者派遣のシ ステムを使用して、先ほど課長が申し上げたように労働者保護上のいろいろな責任関係 を明確に法律上振り分けて、適用していくことが必要なのではないかということです。  それから、医者が不足の地域をどうするかという問題についてはまた別で、私は雇用 実務上の説明ですので、以上です。 ○清家部会長  よろしいですか。 ○長谷川委員  まさに、そういうことだったのです。ですから、今回、医師の不足している所、必要 としている所に在籍出向ではできないというのは、自分たちのグループから外れた所に 派遣しなければいけないので、派遣法を使おうということでしょうと。しかし、私はむ しろいまの医師不足は、単純な問題ではないと思っているんですよね。医師の養成の仕 方から始まって、要するに医師がある都市部に集中化していて、ある地方には不足して いるとか、いろいろな要素があるわけです。  例えば、女性の医師が3分の1になって深夜の労働はできなくなったとか、さまざまな 要因があります。ですから、ここは医政局がきちんと分析をして、そのためにどのよう な手当をしたほうがいいのかを検討して、今回出された緊急臨時的医療派遣システムを もっと充実させることが先決でしょうと。そのうえで派遣を使うということを考えない と、派遣法で解禁していざ出発したら、必ずいま起きているようなことが起きてきます よと。ですから、一時的には能力の形成された人たちがいろいろな病院に派遣されてい くかもしれませんが、ここの派遣元がずっと養成をするかどうかというのはわからない ですよ。  1985年に派遣法ができて、今日的にそれがもたらしているさまざまな問題点について、 この間ずっと議論してきたことがありますので、そう簡単に医師の派遣は、前回のへき 地のようには認めることはできません。医師不足の問題は、もっと違う角度から議論し てほしいと思っています。医政局は、もう1回仕切り直してくださいということを言っ ているのです。 ○鎌田委員  今回で話は終わるのではなくて、もう少し続くのではないかと思います。それで、お そらく具体的な提案というか、よくわからないことがありますので、私の意見というの ではなくてちょっと整理をしていただきたいと思っていることがあります。  まず、先ほどから長谷川委員がおっしゃっていることを法制的な側面から言いますと、 医師の派遣といいますか、プールして必要な病院に送るというシステムを、派遣法に乗 せないで考えていくことが1つあると思います。提案の趣旨はそうではなくて、派遣法 に何らかの形で乗せるということだと思うのですが、その場合でもよくわからないのが、 1つは要するに省令で定める医師の業務について制限がかかっているものを、いくつか のもので例外がありますが、適用対象業務のその部分だけをいじって提案するというこ とになるのか。そうすると、先ほど来お話になっているように、ある意味登録している 一般の派遣会社でも医師派遣可能ということになりますね。運用の上で制限するとか、 いろいろなメカニズムを作るというのはいずれ運用上であると思いますが、ただ派遣法 上の問題としては、乗せるとなればそういう乗せ方ですよね。つまり、一般の派遣会社 でもできますよということですよね。  そのようになるのか、あるいはそうではなくて、いまの派遣法の中ではないのですが、 建設や港湾などでは別法でプールシステムを作っています。確かに、医師は正面から法 律で定めた適用除外業務ではないので、その辺りが少しネックになると思います。にも かかわらず、何らかの形で医師のプールシステムというものを派遣法の中に組み込むよ うな提案を考えるのか、私の理解では3つあると思うのです。1つは、全く派遣法に乗せ ないという考え方です。これは、おそらくご提案の趣旨と少し違うのかと思います。ど こまで考えておられるかわかりませんが、要するに派遣法の中に適用対象業務の医師の 業務だけ外すという形で乗せて、あとは運用でやるという。ただ、法例上はたぶん外す だけですよね。そのようにするのか、あるいは港湾や建設のように特殊なシステムを派 遣法の中に何らかの形で考えるのか、それができないというのならできないのかもしれ ませんが。  つまり、どういうスタンスで議論していいのかというものがよく分からないので、そ の辺りのことを整理していただければと思います。そのときに、在籍出向と派遣の区分 の問題も少し整理をしていただければと思います。 ○清家部会長  事務局、いかがですか。 ○鈴木課長  本日は概略の説明という位置づけですので、案の提示までいっていません。次回以降 具体的な案を示して、ご議論いただく形にしたいと思いますが、私どもとしては、法律 の改正までは考えていませんので、現行の法の範囲内で何らかの措置を講ずる。具体的 な案は現在調整中ですので、また次回以降説明したいと思います。 ○鎌田委員  法律のというのは、省令も含めてということでしょうか。 ○鈴木課長  いわゆる法改正は考えていませんので、政令以下の部分でということです。 ○古市委員  皆さんがそれぞれ意見を表明していますので、あえて言わなくてもいいかなとも思っ ていたのですが、やはり派遣法を医師不足の対策のさまざまなメニューの中の1つに入 れようというのが、例えばへき地医療で導入をして、へき地の医師不足解消が非常にう まくいったので、それをもう少し広げたいというような提案であれば議論のしようがあ ると思いますが、メニューが6つあるのでメニューを増やしただけというようなことに なるのではないかという気が強くします。  皆さんおっしゃっていますが、医療にアクセスできるようにするという社会保障の問 題ですから、ここはもう一工夫といいますか、そういう立場で本筋のところで問題解決 をするという提案がしかるべきではないかと思います。 ○輪島委員  全体的に今後の議論だと思います。まず、今後の提案の具体的な中身をもう少しきち んと出してほしいということと、2頁目に医師不足と書いてありますが、医師が全体的 に不足しているのではなくて、需要と供給が不足しているのであって、医師不足ではな いのではないかと思います。そういうところから2頁目に入ってくるのかどうかも含め て、きちんと議論ができるようにしてほしいと思います。  それから、先ほど長谷川委員もおっしゃいましたが、災害地域に自衛隊を派遣する派 遣と、労働者派遣法の派遣は違うので、この資料の中は全部混在しているのでわからな いと思います。先ほどの提案で、病院が派遣元になって派遣の仕組みをするという提案 のようですが、私は基本的には民間企業も含めて全部医師の派遣ができるようになれば いいと思います。その点で疑問があるのですが、病院が派遣をするということになると、 これまでの徒弟制度のような、派遣してあげる、育成してあげるという中で、本当に労 働者性が確保できるのかどうかはよくわかりません。研修医問題もありますが、その点 をきちんと病院が事業主として派遣ができるように担保できるのかどうかというものも、 ご説明いただきたいと思います。  それから、10頁に、登録者医師が2,174人とありますが、この仕組みがいまどうなっ ているのか。実際に派遣の実績はないようですが、登録者というのは、労働者として働 いていない医師がいるのかどうかというようなこともよくわかりませんので、ご説明を いただきたいと思います。先ほど補佐から説明があった在籍出向と安定法第44条の労働 者供給事業になると。その業になるかどうかということですが、済生会などいろいろグ ループでない医院や病院に派遣する、供給をすることになるのが課題になるのかもしれ ません。  要は、労働力を供給することと職業紹介をすることと、業として派遣業と理解するの かどうかというと、そこまでで言うと業にはならないのではないかと。市川委員がおっ しゃったように、社会制度としての医師の紹介というような形が本当に派遣法上の業と してでなければ、安定法上、業ということが課題になって、派遣法でやらなければいけ ないのかどうかということがよくわからないので、その辺りも法文上どのようになるの かの整理をしてほしいと思います。 ○鈴木課長  最後の部分については、派遣と出向の関係が若干複雑になっていますので、次回にま た資料をお出ししてご説明します。 ○中村企画官  医師不足の問題に関しては、もう少しデータをお示ししたいと思います。 ○市川(隆)委員  へき地に医師が行かないというのは、生活が不便あるいは給料が安いということなの だろうと思います。そうすると、そういう所に派遣制度で派遣をする場合には、部会長 がおっしゃったように、インセンティブが相当ないと実際にはワークしない仕組みにな るのではないかなと思います。相当給料を上げるとか、そういうことになってくるので はないかと思います。そうすると、受入先としても相当なコスト負担になって、本当に ワークをする仕組みになるのかどうか、若干疑問を感じています。  医師の側で、解禁されれば、このシステムに乗って是非へき地に行こうという人が実 際にいるのかどうか、その辺りの、参加してもいいという人の数がどれぐらいあるのか というアンケート調査などが、前提として必要になってくるのではないかという気がし ます。それと、そもそも派遣法の労働力の需給の適正な調整を図るという法律目的です が、先ほどは法改正は考えていないという話でしたが、医師という国家資格を持った専 門職の方々を労働力ということで捉えられるものかどうか、その辺りの法目的から少し 疑義が出てくる話ではないかという気がしないではありません。  個人的には、もちろんへき地に医師を派遣する仕組み、うまくワークする仕組みがで きればいいと思います。この派遣法を使うというところに法目的からして無理があって、 そうであればむしろ医師法の体系その他、医療の体系の中で、新しく法律を作るといっ た手当をして、仕組みを考えるべきではないのかなという気がしました。 ○清家部会長  事務局から、何かお答えはありますか。 ○中村企画官  まず、へき地に実際に行ってもいいという医師がどれぐらいいるかということは、な かなかデータも取りづらいところがあります。現実問題として聞けば、かなりの方は消 極的なのだろうと思います。ただ、若い医師にアンケートをすると、地域医療にかなり 興味があるということですので、そうしたデータを少し探して、お示しできるものは示 したいと思っています。 ○鈴木課長  最後の部分についてお答えします。確かに、医師は非常に高度な専門職でして、医療 を担うということで公益性が非常に高いわけです。それが、通常の労働者と同じような 需給調整システムでいいのか悪いのかというのは確かにありまして、議論の対象になろ うかと思います。  今回に限って言いますと、現行の派遣法でも医師の一定の派遣は認められているとい うことで、派遣法の現行の体系ではとりあえず需給調整の対象になると。それを踏まえ た上で、緊急医師確保対策という中で、その枠組みを使えるかどうかをご議論いただき たいということです。今回の議論は一応そこに限定させていただいた上で、また見直し 検討等いろいろ課題がありますので、全体の話の中でもそういう話が出るのか出ないの かということもありますが、そちらのほうでご議論いただけたらと思います。 ○清家部会長  ほかに何かありますか。よろしいですか。そうしましたら、ただいまいろいろとご質 問があった部分も含めて、次回もう一度説明をいただきたいと思います。いま委員の方 々からいろいろご意見がありましたように、必要な所に医者が行っていないというのは、 労働者派遣法があるからそのようになっているということではないわけです。逆に言い ますと、いろいろな理由があって必要な所に必要な医者が行っていないわけですから、 労働者派遣法が改正され、ここで政令の見直しか何かわかりませんが何かやると、その 問題がなぜ解決するのかということを次回ご説明いただかないと、委員の皆様方は納得 されないと思いますので、その辺りを是非しっかりとお願いしたいと思います。それで は、この件につきましてはこれまでとしたいと思います。  次に、一般労働者派遣事業の許可の諮問に移りたいと思いますが、冒頭に申し上げま したように傍聴されている方については、ここでご退席いただきますようお願いします。 また、大槻職業安定局次長につきましても、所用により退席されると伺っています。                 (傍聴者、大槻次長退席) ○清家部会長  事務局から何かございますか。 ○田中企画官  次回の部会の日程ですが、9月19日水曜日、13時30分から18階の共用第9会議室を予定 しているので、よろしくお願いいたします。 ○清家部会長  ただいま企画官からご説明がありましたように、次回の部会は9月19日水曜日の13時 30分から開催させていただきますので、日程の確保等をよろしくお願いいたします。  以上をもって第102回労働力需給制度部会を終了いたします。なお、本日の署名委員 は、雇用主代表市川委員、労働者代表長谷川委員にお願いいたします。委員の皆様にお かれては、お忙しいところをどうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)