07/08/28 第12回「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」議事録について         第12回 医療用医薬品の流通改善に関する懇談会 日時 平成19年8月28日(火) 13:00〜 場所 ホテルはあといん乃木坂B1「フルール」 (照会先)医政局経済課 担当・内線 諏訪(2524)   代表 5253−1111 直通 3595−2421  ○渡邉流通指導官   ただいまから、第12回「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」を開催いたします。 委員の交代について事務局からご報告いたします。寺尾委員が辞任され、新たに日本製薬 工業協会流通適正化委員会常任運営委員の平田雄一郎様に委員に加わっていただきました。  本日の委員の出欠状況についてご報告いたします。日本医師会の飯沼様、日本歯科医師 会の稲垣様、明治大学大学院の上原様、医薬工業協議会の鈴木様、全国自治体病院協議会 の宮川様から欠席のご連絡をいただいております。なお、医薬工業協議会の鈴木様の代理 として、流通適正化委員会副委員長の関諭様にご出席いただいております。また、全国自 治体病院協議会の宮川様の代理として、経営指導部長の小林暢広様にご出席いただいてお ります。  次に、事務局の異動についてご報告いたします。8月24日付人事異動で医政局長が交代 し、新たに外口が医政局長に就任しております。本来であればご挨拶申し上げるところで ございますが、本日は他の用務と重なったため、誠に恐縮でございますが欠席させていた だいております。次回、改めてご挨拶させていただきます。  本日の資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席図、懇談会名簿。資料1「平 成19年度価格妥結状況調査結果概要(7月取引分)」は1頁から4頁までです。資料2-1 「医療用医薬品の流通改善について(緊急提言)(案)」は1頁から3頁までです。資料2- 2「医療用医薬品の流通改善に当たって取引当事者が留意すべき事項」は4頁から12頁ま でです。資料3「モデル契約書改正(案)」は1頁から10頁までです。  以後の議事進行につきましては嶋口座長にお願いいたします。 ○嶋口座長  早速議題に入ります。本日の議題は2つあります。1つ目は「価格妥結状況調査結果に ついて」です。厚生労働省においては、昨年末に長期にわたる未妥結・仮納入の改善を図 るために指導通知を発出するとともに、定期的に価格妥結状況調査を実施し、必要に応じ て取引当事者双方に対して改善指導を行ってきております。今回、平成19年度第1回価 格妥結状況調査の結果がまとまったとのことですので、まず事務局から資料1「平成19 年度価格妥結状況調査結果の概要(7月取引分)」について説明をお願いいたします。 ○千葉首席流通指導官  平成19年度価格妥結状況調査結果概要(7月取引分)です。今年も卸連加盟会社62社 の協力により、価格妥結状況調査を行いました。回収率100%ということで、すべての加 盟会社から回答をいただいております。調査概要としては、すべての医療機関・薬局を対 象にして、本年7月1ヶ月間の取引高における妥結状況を薬価ベースで調査したものです。  調査結果ですが、最初に医療機関・薬局区分別妥結状況です。医療機関において全体の 妥結率は70.5%になっています。その内訳として、病院においては54.5%、さらにその内 訳として200床以上の病院については46.4%、その他200床未満の病院については82.8% となっております。診療所は96.9%と、ほぼ妥結済みという状態になっております。  薬局については20店舗以上の店を有するチェーン薬局と、その他の薬局と分類してい ます。20店舗以上を有するチェーン薬局については48.6%。20店舗未満のチェーンを含 む、その他の薬局という分類においては87.7%、平均で80.2%の妥結率になっております。  2頁に、医療機関設置主体別/取引卸別価格妥結状況調査の結果を示しております。こ ちらの詳細は省略させていただきます。参考までに、昨年度1年間の価格妥結状況調査の 結果概要も添付しております。集計が終わったばかりですので、詳しい分析等はまだ十分 ではないかもわかりませんが、全体の妥結率としては、昨年7月の価格妥結状況調査の結 果と比較すれば、妥結率としてはかなり伸びているということが言えるところですが、 例えば、200床以上の病院、あるいは20店舗以上のチェーン薬局では、まだ50%に至って いない状況になっております。  一方、今回価格妥結状況調査に協力していただいた卸からの情報として、例えば2頁の 医療機関設置主体別の妥結状況の中で、16番の共済組合・その他連合会が68.3%になっ ております。こちらは、従前薬価改定2年目の段階では、このような高い妥結率を示した ことがないということで、共済組合関係では積極的に早期妥結に向けた取組が行われたと いう話を聞いております。また、チェーン薬局についても、私ども本年5月から6月にか けて、主要なチェーン薬局とヒアリングをさせていただきましたが、こういう中には早期 に妥結している所もあると伺っております。  いずれにしても、7月段階では、従来から未妥結先といわれている公的医療機関、大学 病院、チェーン薬局において、まだまだ妥結率が向上しているとは言えない状況にあるの ではないかと受け止めているところです。私からは以上です。 ○嶋口座長  7月の妥結状況では、例年2年目でもなかなか妥結していなかったという医療機関、特 に国家公務員共済などがありました。もう1つはチェーン薬局では妥結率がだいぶ高まっ てきたということで、事務局によるこれまでの指導効果が出てきたのではないかと推察さ れます。ただ、取引当事者である卸側委員のほうから、このデータとはちょっと違う形で の感触との意見があるとの事ですので、それをお聞かせ願いたいと思います。その後に、 一般のメンバーからの議論をしてみたいと思います。卸連の伊藤委員から、平成17年と の比較についてコメントをしていただけますか。 ○伊藤委員  私どもも、価格の早期妥結を目指して鋭意努力をしてまいりました。昨年度と比較いた しますと、やはり昨年度の段階においては、卸側が提示する価格と、医療機関あるいは調 剤薬局から希望される価格に非常に乖離があったのかということです。したがって、未妥 結という状況がなかなか改善されないということではありましたが、厚生労働省からの指 導等もあり、今年に入ってからいろいろな形、昨年度の終わりからですが、双方お互いに 歩み寄る形をとってきて、現在に至っている状況かと思っております。  まだまだ全体として見ると、妥結していない先もあります。そこについては鋭意努力し、 なんとか薬価調査時において、妥結率が前回のときよりも高くなるような形で努力してま いりたいと考えている次第です。 ○嶋口座長  いまの伊藤委員のご発言にもありますように、7月の価格妥結状況調査結果の講評とし ては、以前に比べると厚生労働省による指導効果が現れているという印象で、少しはよく なっているかと思います。ただ反面、依然として未妥結の状態の所が数多く存在している ことも事実でありますので、そういう意味からいうと、引き続きこれからも指導が必要な 状況にあるのではないかという感じがいたします。  そういう意味でも、本日の議題であります「留意事項のとりまとめ」というのが意味を 持ったと思うのです。この辺りのデータについて、委員の皆様方からご質問なり、ご意見 なりがありましたらお願いいたします。特に医療機関、あるいは調剤薬局チェーンの立場 からご意見はございますでしょうか。 (特に発言なし) ○嶋口座長  そのとおりだということでしょうか。本日は意見が少なそうな感じがいたしますので指 名させていただきます。日本保険薬局協会の代表でいらっしゃる柏木委員はいかがでしょ うか。 ○柏木委員  報告はそのまま受け止めさせていただきたいと思っています。卸側の報告に基づいたデ ータということですが、感覚的には平成18年度、つまり今年の3月までに妥結した所は、 今年は薬価改定がありませんでしたから、そのままという受け止め方を私どもはしており ます。  現実に私自身も、自社においては昨年11月に妥結してから、今年度はそのままその価 格でいくという解釈をしております。調剤のチェーン店各社も、そういう理解で受け止め ておりますと。価格交渉を、去年までの価格はおかしいから改めてもう一回やり直したい ということで、卸側からこのリストが出てきたのか、その辺はちょっと理解ができません。 今年の3月末までに妥結したのは、そのまま今年度は踏襲するという認識をほとんどの薬 局が持っているということですから、妥結したままという形で受け止めていただいたほう がいいのではないかと思っております。 ○嶋口座長  医療機関を代表して大塚委員から何かありますか。 ○大塚委員  医療機関が薬剤を購入する場合に、売差がマイナスになっているということの原因をは っきりさせる必要があるということで、私は医療機関の方々に薬剤購入のあり方はどうか ということで少し調べてみました。メーカーから卸に薬剤が渡る、いわゆる正味仕切価格 が、薬価から消費税5%と、調整幅2%を引いた、要するに薬価の93%で医療機関に渡っ ています。  それから、診療所とか、小さいスケールの病院はそのままで妥結している。系列病院と か、比較的大きい病院は、薬剤の管理とか人件費というものが薬価算定式の中に含まれて いないものだから、どうしても採算性に乏しいということ。未妥結ということを、言葉を 変えて言えば、値引き交渉だと。それで、年度末の決算までには値引きをしてもらわなけ れば、医療機関とか調剤薬局等が立ち行かないということで、今度は早期未妥結と。未妥 結の早期解消ということは言葉を変えれば、早期値引きというふうに考えざるを得ないと いう実態があります。  中間とりまとめでも、薬剤の管理とか、調整幅を見直すという言葉が入っております。 したがって、割戻しという、いわゆる一定の取引高に応じてパーセントが大体決まってい るようですので、これを卸のほうに反映させることはできないか、ということを私は提案 したいと思っております。そうすることにより、卸の自立性、自主性が高まる。そういう ことで、早期の価格妥結にも貢献するのではないのだろうか、というようなことを考えて おりますので、ひとつ検討をお願いいたします。 ○嶋口座長 いまのご意見に関連したものがありましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○嶋口座長  いま大塚委員からもお話がありましたが、これは未妥結・仮納入の問題だけではなくて ほかの問題にも少しかかわりがあり、どちらかというと2つ目の議題のほうで、関連的な ご意見がありましたら改めてお出しいただきたいと思います。  そこで2つ目の議題は「留意事項」等についての審議になります。前回7月4日に開催 された懇談会において、公的保険制度下での取引として、全体適正化を図る観点から、取 引当事者双方が取引において留意すべき事項を、当懇談会として取り上げていくというこ とにいたしました。  留意事項のとりまとめに当たっては、仕切価と割戻し・アローアンスのあり方など、メ ーカーと卸売業者の取引のあり方について問題点を検証する必要があることから、メーカ ー、卸、有識者の委員で構成する作業部会を設置して検討を行いました。作業部会につい ては、去る7月25日に非公開で開催したところですが、作業部会の結果を踏まえて「留 意事項」という原案をとりまとめてありますので、ここでご議論していただきます。  また、関連してモデル契約書についても、もう一回見直しをしてみようということでそ れを行ったわけですが、それについても本日ここで議論してみたいと思います。一遍に全 部というのはなかなか大変ですので、項目を分けて審議していきたいと思います。特に資 料2-1「医療用医薬品の流通改善について(緊急提言)(案)」の本文について、これは 終わりのほうで説明していただくことにして、すぐ後の「留意事項」のほうから審議して いきます。まず、資料2-2「医療用医薬品の流通改善に当たって取引当事者が留意すべき 事項」のうち、最初の「メーカーと卸売業者の取引における留意事項について」を、作業 部会の審議概要の報告と併せて事務局から説明していただきます。 ○千葉首席流通指導官  最初に、7月25日に開催された、メーカー・卸の川上の取引を中心とした問題点の検証 と、改善策を検討するための作業部会の議事概要を簡単にご紹介させていただきます。  まず、仕切価のあり方についてです。仕切価のあり方、あるいは現状についてメーカー 側、卸側の委員からそれぞれ意見が述べられました。主な意見として、メーカー側からは 仕切価は企業戦略として重要な位置付けになっていて、設定に当たっては多くのメーカー で薬価を前提とし、市場動向や卸の利益をも考慮して設定されていること。また、卸への 提示についても、薬価告示後、ほとんどのメーカーで速やかな提示をしている。割戻しに ついても、やはり多くのメーカーにおいて、早い段階で卸に提示をしている。このような 状況において、卸においては早い段階で正味仕切価の予測が可能な状況にあるという意見 がありました。  また、メーカー側から見た場合に、卸との取引に当たり、割戻しを加えた正味仕切価で の取引とされている現状から、一次仕切価で売差マイナスというような評価がされている わけですが、こういうことについては、できれば正味仕切価ベースでの評価をしていただ きたいという意見を頂戴しております。  一方卸側からは、仕切価については薬価告示後に提示されているわけですが、多くのメ ーカーでは一方的な提示にとどまっている。仕切価交渉は行われていないということ。そ れから、仕切価設定が薬価改定時にしか行われない。このため、事実上市場実勢価の下落 分というものについて、アローアンスの見直しなどという形で修正を行っているという意 見がありました。  また、割戻し・アローアンスに対する意見として、メーカー側からは割戻し・アローア ンスの仕払基準の簡素合理化というものは概ね進展してきている。これについては中間と りまとめでも、このような評価をいただいているところです。  また、多くのメーカーにおいて、基準の明確化が進んできているということで、この割 戻し・アローアンスについては薬価告示前も含め、早い段階で卸側に提示している。した がって、割戻し・アローアンスとともに、売差マイナスの補填というような形での運用は 行われていないということです。また、指摘されておりますような、年度末における仕切 価修正的なアローアンスの運用ということが、過去には存在していたということですが、 現在はそのような実態はないものと考えているという意見を頂戴しております。  これに対して卸側からの意見として、割戻しの支払基準は確かに改善してきているもの の、変動幅の括りが大きいことから、販売時点での価格の把握が難しいケースがある。そ れから、期中において割戻しのテーブルが変更されるなど、支払基準の一貫性がないケー スもあるという意見が出されました。  このように、仕切価、割戻し、アローアンスの運用の実態に対するメーカー側、卸側の 見解の食い違いというようなところが見られたわけです。一次売差マイナスの拡大傾向で すとか、割戻し・アローアンスの比率の拡大といった傾向が、ユーザー側から見た場合に 川上の取引の不透明感を抱かせるもととなっていること、ひいては未妥結・仮納入の要因 の1つとなっていること、また割戻し・アローアンスの運用がメーカーによって必ずしも 一緒ではなく、いろいろなケースがあるということについての認識がある程度共有化され たかと理解しているところです。  その上で、メーカー側、卸側双方とも売差マイナス改善に向けた仕切価や、割戻し・ア ローアンスの運用上の改善方策等について検討が行われた結果、ほぼ次のような改善方針 で留意事項をとりまとめることについて、意見の集約ができたところです。  仕切価に関する改善方針として、仕切価、割戻し・アローアンスの提示時期を明示する とともに交渉を行う。例えば、全卸共通的な割戻しなどは仕切価に反映する。新薬や後発 品の薬価収載時、あるいは薬価改定後2年目の契約時、こういった市場動向が変化したよ うな状況においては、仕切価や割戻しの修正について協議することなどを留意事項に盛り 込むこととされたところです。  それから、割戻し・アローアンスに関する改善方針として、割戻し・アローアンスの適 正な運用が重要であるということの確認。それから、仕切価修正的なアローアンスは、仕 切価や割戻しに振り返ること、年度末における誤解を受けるようなアローアンスの運用は 廃止すべきことなどを留意事項に盛り込むこととされたところです。  このほか、メーカーや卸側から調整幅、あるいは薬価差の定義といったものについて、 中医協の場で検討する必要があるのではないか。あるいは単品総価契約を是とすることに ついては、銘柄別薬価制度の趣旨からいかがなものか。できれば、あるべき姿としての単 品単価契約を基本とした留意事項としていただきたいこと。こういった意見が行政側に寄 せられました。こうした意見や要望についても、緊急提言の前文部分や、留意事項案に反 映させていただいております。以上が作業部会の概要です。 ○嶋口座長  メーカーと卸売業者間の取引における留意事項ということで説明していただきました。 これは作業部会でいろいろ検討した結果の留意事項となっております。そこで、一次売差 がマイナスであるということ、その分を割戻し・アローアンスの拡大で補っているという 辺りは改善する必要があるのではないか、という形でとりまとめられております。これに ついて、委員の皆様方からご意見なりご質問なりをいただきたいと思います。 ○千葉首席流通指導官  その前に、留意事項案を簡単にご説明させていただきます。川上の(1)の部分だけご 説明させていただきます。 ○嶋口座長  わかりました。いまは留意事項のところをやる前に、参考のところをお話いただいたわ けですか。 それでは、一応確認でお願いいたします。 ○千葉首席流通指導官  参考までに読まさせていただきます。 ○嶋口座長  資料2-2の4頁ですね。 ○千葉首席流通指導官  はい。メーカーと卸売業者の取引における留意事項について。(1)課題。一次売差マ イナスと割戻し・アローアンスの拡大傾向の改善。  (2)留意事項。(ア)仕切価等の速やかな提示等。メーカーは、卸売業者が早期に正 味仕切価を把握できるよう、割戻し・アローアンスの基準については薬価内示後に、一次 仕切価については薬価告示後にそれぞれ速やかに提示し、卸売業者間との交渉に努める。  (イ)適正な仕切価水準の設定。一次売差マイナスが常態となっているような取引を改 善する観点から、割戻し・アローアンスのうち一次仕切価に反映可能なものは反映させる ことが望ましい。仕切価水準の設定に当たっては、取引当事者による市場環境の変化を踏 まえた協議が行われることが望ましい。 (ウ)割戻し・アローアンスの整理・縮小と基準の明確化。通常、割戻しは売上高の修正 として経理処理されるものであり、また、アローアンスは販促費として経理処理されるも のであることから、メーカーにおいては、一層の基準の明確化と適正な運用に努めること が望まれている。高率なアローアンスは、できるだけ整理・縮小するとともに、仕切価修 正的なアローアンスは割戻しや一次仕切価に反映することが望ましい。期末におけるアロ ーアンスの見直し等は、あらかじめ仕切価や割戻しへの反映を行うことにより、こうした 運用は廃止することが望ましい。以上です。 ○嶋口座長  メーカー・卸双方に対するヒアリングの中から出てきたものをベースにして、これから はこういう辺りを留意すべきではないかという1つの案です。(ア)(イ)(ウ)という3 つの側面について話をしていただきましたので、早速これについて議論したいと思います。 ご意見がありましたらお願いいたします。 ○大塚委員  過日の委員会で、私は卸の委員の方に、現在の仕切価格はどうなっているのかというこ とをお尋ねしたことが、委員の方の記憶にあると思います。要するに、卸の利益を見込ん で仕切価格は決定していないという報告を記憶しています。先ほどの事務局からの報告で は、卸が利益を含んだ価格で仕切価格が設定されるということとはちょっと違和感があり ます。  先ほども言いましたように、薬価の93%で仕切価格が作られ、それが医療機関にそのま ま販売されている。そうすると、薬価調査の場合に、薬価が下がる根拠がありません。現 在の薬価の算定基準である薬価調査が、毎年一定の期間、今年は9月ですか、そのような 調査期間の場合には全く薬価が下がらないような仕切価格で取引がされている。それ以外 の月に値引交渉、いわゆる妥結が行われていくという実態です。ここで薬価算定方式が制 度疲労化しているということは明らかなのです。ですから、これは中医協のほうでも、薬 価算定方式を考えなければいけないと思っております。 ○嶋口座長  卸サイドからの確認ということで聞いてもよろしいですか。 ○大塚委員  はい。 ○松谷委員  いま大塚先生からお話がありましたが、消費税と調整幅2%で約93%だというお話でし たが、そんなことはありません。ほとんど競争のないような商品については93%に近いも のもあれば、商品によってその仕切価率は違っておりますので、平均が93%というのは現 実的にはあり得ない数字だと私どもは実感しております。  ただ、先ほど先生がおっしゃいました、メーカーが卸のマージンまで考えた仕切価をと いうことは、確かに卸のマージンを含めた仕切価及び割戻しを作っているのも確かです。 その中の認識のずれというのは、メーカーが考えているそれぞれの商品の販売価格での薬 価差と、医療機関が期待している商品の薬価差との間のずれというものが非常に大きいも のですから、値ごろ感としてそれぞれメーカーが、この市場でこの商品をこれぐらいで売 ろうと思っている価格と、医療機関が買おうと思っている価格との差が、特に前回は大き かったということではないかと思っています。  もう1つ、薬価調査のときだけ仕切価を高くして、ほかのときに値引きをしているとい う発言がありましたけれども、現在そんなことは決してありません。いま薬価調査という のは、本調査の時期もありますけれども、そのほかに経時変動調査というのも、年に何回 か行われております。薬価調査月が今年は9月とおっしゃいましたけれども、それもまだ 決まっておりません。薬価調査がいつ行われるか、ということを卸がつかんでいるわけで もないし、メーカーがつかんでいるわけでもない。そういうことによって仕切価を動かし ているということは、いまの時点ではありません。これが現実だと私は認識しております。 ○大塚委員  ただいま松谷委員からお話がありましたけれども、メーカーから卸に仕切価格について の通達が、複数のメーカーから渡っている資料は持っています。それを見ますと、先ほど 私が言いましたように、消費税と調整幅を外した価格で、卸価格を決定するというような ことが記載されております。ですから、そういうことはありません、と言うこと自体がち ょっと納得しかねます。 ○松谷委員  93%になっているものは、品目としては販売金額の中でいったら本当に少ない率です。 メーカーによっていろいろ違いますし、平均で言うのもあれですけれども、とにかく私ど もが前回いただいている仕切価というものは93%ではない、平均でそれより下であるとい うことは事実です。 ○嶋口座長  水掛け論になっているところがありますが、メーカーの立場から禰宜さんいかがですか。 ○禰宜委員  いま松谷委員からお話がありましたように、薬価改定がありましたら、それに基づいて 市場環境等、また卸の利益等も考慮し、一次仕切価を提示させていただいております。い まお話がありましたように、そのまま5%あるいは2%を足して100%になるような仕切 価というものは提示していないと思っております。 ○嶋口座長  これは、これ以上ここで議論しても結論が出る問題ではないような気がします。そうい う2つの意見があった、ということを事務局のほうで受け取らせていただきたいと思いま すがいかがでしょう。 ○松谷委員  そのことについて客観的な数字でいうと、ここで発表しておりますように、前々年度の 一次売差が2%強のマイナスだったということは、この表ではっきり出ております。その 時点での薬価差というのは8%あったということが、薬価調査の結果として出ております。 そこで判断していただきますと、仕切価が薬価及び調整幅2%で収まっているのであれば、 一次売差がマイナス2.何%になって、薬価差が8%出るということは、仕切価がもっと低 いところにあるから、こういう形になっているのだという計算ができると思うのです。 ○嶋口座長  この問題は今後の検討課題のご意見として受け止めておきたいと思います。ほかにメー カーと卸の間の一次売差マイナスと、割戻し・アローアンスの拡大傾向の改善についての 3つの留意事項についてのご意見はありますか。この辺りは千葉首席流通指導官からお話 がありましたように、メーカー、卸間の作業部会の中で議論され1つの方向として出され たものです。メーカー、卸以外の立場から質問がありましたらお出しください。 (特に発言なし) ○嶋口座長  事前に資料がお手元に行っているので、ひょっとしたらその辺りは十分読み込んだ上で こんなものだろうとなっているのかもしれませんが、この場で是非言っておきたい意見が ありましたら、ご遠慮なくおっしゃっていただきたいと思います。 ○江口委員  ジェネリック医薬品販社協会ですが、メーカーと問屋に質問をさせていただきます。7 月に追補収載の商品が出てまいりますけれども、その7月に出る商品に対するアローアン スというか、特別な値引きを行うような格好での販売が、例えば5月、6月にされている のではなかろうかと思うような感じを我々は受けることがあります。この仕切価というの は、1年を通して張っているのだろうと思うのですけれども、そういう追補収載前の営業 政策として何かしていることがあるのか、それが薬価調査にどういう影響を与えているの かを考えたりするのですが、いかがでしょうか。 ○禰宜委員  たぶん、アローアンスのことをお話されているのではないかと思っております。いまの 私の立場として、メーカーのそれぞれの戦略をここでどうこう言うことは控えさせていた だきたいと思っております。 ○松谷委員  留意事項の(イ)の2つ目のポツに、「仕切価水準の設定に当たっては、取引当事者に よる市場環境の変化を踏まえた協議が行われることが望ましい」と書いてあります。この 「市場変化」というのを私どもが認識していますのは、薬価が変わらない時点でも、新薬 が年4回収載されますし、いまジェネリックが年2回収載されるということで、市場環境 が変わったときには、その変わった中で卸とメーカーとの間で協議をしながら、それなり の政策を出していくということを含んだ言葉だと私は理解しております。  そういう意味では、何か大きな市場変化があったときには、特約店とメーカーとの間で は、そのことを協議するのは当然だと思います。ジェネリック・メーカーもそういうもの を対比しながら、また新しい価格政策をとるのは、市場経済としては当然なことだと理解 しております。 ○江口委員  公定価格と言いながらも自由経済の中ですので、戦略的な面、戦術的な面、いろいろな 格好での対応をするというのは当然だと思います。私がいま質問いたしましたのは、追補 収載前後にそういうことが起こる可能性もあると。価格そのものがいじられている可能性 がある、ということは間違いないのではないかと理解しております。 ○渡辺委員  渡辺ですけれども、いま江口委員がおっしゃったような政策的な意図はないと思います。 新製品というのは、医薬品卸にとっては将来の財産だということで、その普及の仕方につ いて、特別安い価格が出ていることはないと思います。得意先の皆様方もそうだと思いま すけれども、異常な価格があると、従来品の価格との比較をしますので、そういうことは ないと思います。 ○嶋口座長  これは、メーカーと卸の取引における留意事項ということで、再三流改懇の中でも議論 されてきたり、データが示されているとおりです。どうも一次売差マイナスが常態化して いる。その分を割戻し・アローアンスの拡大で補っているという傾向がだいぶあるので、 これは改善しなければいけないだろう。そこでメーカー、卸双方の作業部会の中で、なん とか改善するとしたら、この辺りが1つの落としどころかということで出てきたものが (ア)(イ)(ウ)となっていると思います。 ○武田経済課長  私から一言、二言申し上げたいと思います。先ほど千葉からご説明いたしましたように、 非公式のメーカー、卸の話合いをさせていただきました。大変真摯なお話をしていただけ たと思っております。留意事項にいたしますと、わずか1頁ですけれども、両当事者の真 剣な話合いの結果を反映していきたいと思っております。  いま出た話で、システム的な話と、個々の取引当事者の話といくつか出てきています。 例えば、仕切価が一定のところに線を引かれているのではないか。後発品が出てきたとき に、政策として価格を引く例があるのではないか。これは、おそらく個々の取引当事者で 違いがあるということですので、この場でこれ以上議論するのはなかなか難しい面が非常 に多いかなと思います。  一方、私どもいまここで問題にし、これから改善を願っておりますのは、なにより業界 全体として未妥結状態が非常に長引くというような問題意識です。先ほど大塚先生がおっ しゃいましたように、まさに早期に妥結できない理由の1つとして、例えば仕切価が高い、 又は卸に価格の自主決定権がない。メーカーが割戻し・アローアンスというところに……、 それが年度末まで行っているからではないかと。  私どもの問題意識もまさにそこです。したがって、ここで書いております私ども事務局 の趣旨としては、一次売差マイナスということから、可能な限り割戻し・アローアンスで 機械的に計算できるものは、最初の段階で卸の利益も見込んで、卸の価格自主決定権が与 えられるような形になるべく切り換えていただきたい。それから、年度末にならなければ 価格が妥結できないようなメーカー・卸間の取引が仮にあるのであれば、そこはなるべく 改善をしていただきたいということです。そこの点について、双方が真摯に話合い、歩み 寄りをしてこのような留意事項になったわけです。何卒その趣旨をご理解いただければと 思います。 ○嶋口座長  ありがとうございました。いままでの議論は、メーカーと卸売業者の取引における留意 事項だったのですが、次は卸売業者と医療機関、あるいは薬局の取引における留意事項に 移ります。最終的な留意事項は5頁にありますが、その背景、前提を含めて事務局から説 明をお願いいたします。 ○千葉首席流通指導官  5頁から6頁にかけて、卸売業者と医療機関/薬局との取引における留意事項を記載し ておりますのでご紹介させていただきます。  課題としては、長期にわたる未妥結・仮納入の改善と総価契約の改善ということです。  留意事項の(ア)経済合理性のある価格交渉の実施。1つ目のポツで、卸売業者と医療 機関/薬局との価格交渉は、個々の契約当事者間において経済合理性を尊重して行われる べきであり、この場合の価格形成の条件としては、例えば、購入量、配送コスト、支払条 件(支払サイト等)、包装単位の大小、信用状況等が挙げられる。なお、医療機関/薬局 から特別なサービス等を求めた場合には、別途受益者負担が発生するケースもあることに 留意する必要がある。  こちらのほうでの経済合理性の要件については、中間とりまとめで、このような要件を 提示しているところです。ただ、その際に1点欠けておりましたのは、「包装単位の大小」 といったものについては、従前から取引における際に考慮する項目として挙げられており ました。特に平成3年の中医協建議の中で、こういった包装単位の大小というものにも考 慮するということが取り上げられておりましたので、今回新たに追加しております。  また「医療機関/薬局から特別なサービス等を求めた場合には、別途受益者負担が発生 するケースもあることに留意する」という部分については、いわゆる経済合理性のある価 格交渉を行い、妥結した以降、例えば当初の契約になかったようなサービスを、医療機関 /薬局から卸に求めるようなことがあれば、それはそれで受益者負担という観点からの話 合いがあってしかるべきだろうということで、こういう表現をしております。  2つ目のポツは、卸売業者は医療機関/薬局に対して経済合理性のある価格提示を行う よう努める。これについては、従来から卸といえども経済合理性のある見積提示をしてい ないのではないかという意見も多々ありましたので、こういう項目を挙げております。  3つ目のポツは、卸売業者は、早期妥結を図るため実質的な価格提示を早い段階で行う よう努める。これも、従来からご指摘のあるところです。  4つ目のポツは、医療機関/薬局と卸売業者は、相手方からの価格交渉の求めに対して 真摯に対応する。これも、従来から指摘されているところですので、こういう項目を入れ ております。  (イ)医薬品の価値と価格を反映した取引の推進。1つ目のポツは、卸売業者と医療機 関/薬局との価格交渉においては、銘柄別薬価制度の趣旨を尊重した単品単価交渉を行う ことが望ましい。これは、原理原則を挙げております。  2つ目のポツは、総価契約を行っている場合には、卸売業者から医療機関/薬局に対し、 銘柄別取引を推進するための提案を積極的に行うことが望まれる。これについては、私ど ものヒアリングの過程で、例えば調剤薬局においては、銘柄別の単品単価交渉ということ になると、担当者も少なくてなかなか現実としてそういうことはできません、という話を よく聞いておりました。卸のほうから、単品単価交渉ができるようなソフトなりの提供と いうか、そういうものを開発し、そういうものでの交渉が行われるようなことが積極的に 行われてもいいのではないかという趣旨でこういう項目を掲げました。  3つ目のポツは、総価契約を行う場合であっても、すべての品目を対象とするのではな く、可能な限り個々の医薬品の価値と価格を踏まえた取引を進めることが望ましい。実際 に総価契約がかなりの割合で行われているわけです。また、総価契約は必ずしも不適切な 取引ではないという中間とりまとめでの評価もあります。そうは言っても、なるべく個々 の医薬品の価値と価格を踏まえた取引を進めるということが、公的保険制度下での取引と しては求められるところですので、こうした項目を掲げました。  加えて、価値と価格を踏まえた取引を進める観点からは、例えば以下のような医薬品に ついては、総価除外品目として取り扱うことも考えられるとして、ア)法律で特殊な保管 管理や取引の方法が規定されていることにより、流通過程に特別なコストがかかっている 医薬品。イ)希少疾病用医薬品や競合品のない新医薬品、又は採算割れにより安定供給に 支障を及ぼすおそれのある医薬品など他に代替品がなく医療上重要な医薬品。  以上のようなものを掲げておりますが、ア)の法律で特殊な保管管理や取引の方法が規 定されていることにより、流通過程に特別なコストがかかっている医薬品というものにつ いては、皆様方もご想像できるかと思いますが、例えば血液製剤とか、麻薬製剤といった ものを念頭に置いているところです。また、イ)については、採算割れにより安定供給に 支障を及ぼすおそれのある医薬品、局方品などにはそういったものはかなりあるというこ とですが、そういうものも念頭に置いています。  次の頁です。(ウ)長期にわたる未妥結・仮納入とは、原則として6ヶ月を超える場合 を指す。最初のポツですが、薬価調査の信頼性の観点からの早期妥結の期間としては、金 融商品取引法により上場企業に義務付けられる四半期報告に対応した時期での妥結が望ま しい。2つ目のポツで、医療機関/薬局は、卸売業者との価格交渉では早期妥結が見込め ない場合には、多様な取引方法を検討することが望まれる。この2つの項目を掲げていま す。  最初の項目ですが、長期にわたる未妥結・仮納入について、これまでは何ヶ月という期 間を正式に打ち出したことはないわけですが、今回薬価調査の信頼性という観点、あるい は実際に半年にも及ぶ価格交渉をやって、それ以上長くやる意味合いというか、そういう 意味で半年が限界ではないか。そういう薬価調査の信頼性の観点、あるいは交渉としての 限界の観点から、6ヶ月を超える場合を、長期にわたる未妥結・仮納入としたということ です。  その上で、なおかつ薬価調査の信頼性を一層高めるという観点と、卸売業者においては、 上場企業が増えてきているという観点も考えて、金融商品取引法により義務付けられる四 半期報告に対応した時期、こういった段階での妥結がより望ましいということで、このよ うな表現にしました。  2つ目のポツで「多様な取引方法を検討することが望まれる」という表現をしています が、これは昨年9月に公正取引委員会から、医療医薬品の流通実態調査に関する報告書が 出されたわけです。その中で、共同購入とか、品目の絞り込み、あるいはメーカーとの直 接取引といったことを検討することが望ましいとされていたと思います。こういったこと も念頭に置いて、卸と、医療機関/薬局との交渉に限界が生じて、妥結ができない状況で あれば、医療機関/薬局におかれては、先ほど言ったようなケースについて、ご検討され ることがその時点で必要なのではないかということで、このような表現を掲載させていた だいています。  (エ)です。モデル契約書に基づく契約締結の一層の推進です。最初のポツで、取引の 両当事者が対等な立場に立って公正な取引が行われることを目的として作成された、モデ ル契約書に基づいた契約を行うことが望ましい。2つ目のポツで、双方ともモデル契約の 趣旨を尊重し、特に合理的な理由のない遡及値引きは行わないことが望ましいということ で、モデル契約書に基づく契約のより一層の推進という観点で、この2項目を掲載してい ます。 ○嶋口座長  ただいまの説明は、卸売業者と医療機関あるいは薬局の取引における留意事項、という ことでのまとめです。特に未妥結・仮納入の改善、総価契約の改善という辺りが悩ましい ところです。自由競争の建前から言えば、当事者がそれでやっているのだからしょうがな いという見方もあるし、公的医療保険制度という枠の中では、いろいろと問題が多いとい うことで、こういう議論になります。ですから、何となく留意事項というものでも「望ま しい」とか、精神的な表現になっている部分があるのですが、それでも1つの方向を出し ていただいたということです。ご意見をいただきたいと思います。 ○宮川委員(代理小林様)  全国自治体病院協議会の宮川の代理の小林と申します。いくつか意見を申し上げます。 1つは留意事項の(ア)の2つ目、3つ目のポツで、「経済合理性のある価格提示」「実質 的な価格提示を早い段階で」とあります。これはかねてよりご議論のあったところなので、 理念としては、まさにそのとおりだと思います。しかしながら、私どもぎりぎりの経営を している病院側、ユーザーにとりまして、これの実質的な担保といったものを提示いただ けないと、ここは理解しにくいのではないかと思います。  ついては、先ほどご議論のあった川上の部分の留意事項、それから川下の部分の留意事 項、この2つの間をめぐって溝が未だ埋まっていないという印象は拭えない。これは正直 なところです。したがいまして、川上の留意事項から、川下の留意事項の2つのポツに至 るまでの間の納得性であるとか、公信力であるとか、そういった担保をご提示いただかな いと。際どい商取引をめぐっての扱いですので、ユーザーの方々からもこの辺のご意見を いただければと思います。  川上はよくやっているのだから、川下は黙って従いなさいという論調に読み取れるとし たら、お互いに不幸なことです。長期未妥結を是正しようと思っても、問題は解決しにく いのではないかと思います。これは言及し出すときりがないのですが、次の第3番目の項 目の(4)の「信頼を得るための取組が求められていること」と訓辞的に書いてあります が、こことも密接に関連する切り口なのだろうと思います。これが1つです。  いまの(ア)の4つ目のポツで、お互いが「真摯に対応する」とあるのです。まさにそ のとおりなのですが、これまで病院を含めて、あたかも不真面目な対応をしていたのかと いうような言われ方をしても、とても困った話ですので、少なくとも書き振りは改めてい ただいたほうがいいかなと思います。  それから、合理的な理由のない値引きということで(エ)ですが、「合理的な理由のな い遡及値引き」とあります。病院側は一生懸命に自分たちの経営を守って、基盤を固めよ うとしてぎりぎりの選択をしているわけです。ここで「合理的な理由のない遡及値引き」 と言われても、納得しかねる部分もあるので、その辺についての具体性とか、表現に工夫 をいただければありがたいと思います。  それから、先ほど大塚先生からお話がありましたが、「薬価調査の時期」と言及があり ました。私もそう思いまして、薬価調査が9月とか10月であって、それが適正に薬価制度 の価格決定メカニズムに反映されないということであるなら、別の時期あるいは年度末と いったところも含めてやることがなぜ悪いのか。価格改定に時期的に遅いのか、あるいは 間に合わないのかということも含めて、読んだ人間がなるほど、中医協の言うことはもっ ともなのだということを、わかりやすく報告書なり留意事項に書かれている、提言の部分 でもいいと思いますが、そういったことが必要なのではないかと思いました。 ○武田経済課長  先ほど手を挙げときに薬価調査の話をしようと思ったのですが、委員の先生方のお顔を 拝見すると、第2の論点だけを見て忘れてしまいましたので、先ほどの話と引き続き薬価 調査の時期の話が出ましたので、その点についてコメントをさせていただきます。  先ほど松谷委員から発言がありましたが、今年の薬価調査の時期については決定されて いません。これは取引に予断を与えるようなことがあってはならないということで、ぎり ぎりまで公表しないという扱いになっています。9月ということが出たのは、前回一昨年 の薬価調査は9月取引分を調査しています。そういう意味で、一昨年と同じであれば9月 取引分ということが、あたかも決定されたかのようなことで言われていると思います。  そういうことで、今年については時期は申し上げられませんが、前回のことで言うと、 次回の薬価改定、通例でいきますと来年4月ですが、来年4月までの薬価改定につきまし て、年末の予算編成時期に薬価乖離幅を把握する必要があるのです。基本的に一定期間が 経ちますと、薬価差が拡大する傾向がある、またはなるべく正確な数字を把握するために は、いちばん近い時期の数字を把握するなどによりまして、12月の時点において判断でき るいちばんぎりぎりの時期ということで、前回は9月取引分でして、かつては6月取引分 とか、もう少し前のときもあります。IT化の進展によりまして、より近い数字を捉えるこ とが可能になったということです。  先ほど、前後に取引価格を変えている例がありはしないかという話がありましたが、こ れも松谷委員から話がありましたように、現在は薬価調査時点の前後の価格を、かなり大 規模なスケールで価格調査をしておりますので、その前後の時点で価格が下がり、9月取 引分だけ価格が高いということになれば、当然その実質正価は9月ではなく、前後のほう が実質正価に近いという判断をせざるを得ないので、結果的には、変な操作をしますとか えって厳しい市場価格調査になる可能性があります。そういう意味で、実態としてそうい う例があるのかもしれませんが、結果として、それは私どもとしては把握をし、反映をさ せておりますので、苦労を多くして何とかということですので、その点は申し上げておい たほうがいいかと思いました。  それから、薬価調査の観点で言いますと、未妥結分ということがあります。いまの話と 少しずれるかもしれませんが、未妥結分については薬価調査から除外ということでして、 そういう観点から公平な価格調査、公平な薬価改定という観点から、いちばん公的保険制 度下においては、未妥結というのがいろいろな意味で弊害が多いということだと思います。  ただいま、病院経営の観点からのお話がありましたが、病院経営の観点から正当化でき るものと、それをもってしても長期の未妥結、しかも公的保険制度下において、公平な価 格改定を逸脱するような取引ということは、この場で何度も議論をしておりますが、そう いった観点ですので、是非その議論に当たってはご配慮いただければありがたいと思いま す。 ○嶋口座長  先ほどの宮川委員代理からの問題提起に対して、ご意見をいただきたいと思います。案 の作成者である事務局からお願いいたします。 ○千葉首席流通指導官  先ほどの宮川委員の代理の小林様からのご質問の中で、経済合理性のある価格交渉の実 施のうち、4つ目のポツについて「医療機関や卸売業者は交渉を真摯に対応するというこ とが、あまりにも不真面目な状況が滲み出ているのではないか」というお話がありました。 表現の仕方については、さらに検討していきたいと思いますが、こういう表現をした背景 には、9頁をご覧ください。私どもは昨年来、卸売業者、医療機関、調剤薬局とのヒアリ ング等において、あるいはこの流改懇においてもそうですが、いろいろとご意見を頂戴し た中に、ユーザーからは卸売業者に対して、(1)の最初のポツですが、長期にわたる未 妥結・仮納入の要因として、卸売業者の提示価格が年度末に近づくほど安くなるという、 卸売業者の価格に対する不信感を挙げられています。  あるいは(2)の、医療機関や薬局の価格交渉において、医療機関/薬局の中には、他 のユーザーへの値引きの状況を見てから交渉を始めるいわゆる“様子見”を行うところも 多く、実質的な価格交渉がなかなか開始されない。このようなご指摘があったものですか ら、早期妥結の大前提としまして、こういうような双方の対応の悪さを指摘して、それで 終わりにするということではこの問題は解決しないということで、あえてこういった「真 摯な対応」という表現をさせていただいたところです。  もう1点ですが、6頁です。(エ)のモデル契約書に基づく契約締結の一層の推進の中で、 「特に合理的な理由のない遡及値引きは行わないことが望ましい」というところについて もご意見があったところです。ここでいう「特に合理的な理由のない遡及値引」、逆に言 えば合理的な理由があれば遡及値引きもあっていいだろうという前提でして、経済合理性 のある取引という観点から、それなりに合理性があるかないかをご判断いただくというこ とが大事だろうと思います。  ただ単に、同じ系列の病院で、病床数も違う、取り扱っている薬品も違う、取引条件も 違うという中で、単に全品総価、あるいは取引としての最終値引率だけでもって、年度末 に遡及値引きを要求するということは、あってはいけないのではないかと考えて、このよ うな記載をしたところです。 ○嶋口座長  留意事項だけの文言を見ますと、「何でこんな当たり前のことを」とか「以前は違うの に、こんなことを改めて言ったら、むしろ以前はもっと悪かったと誤解を招くではないか 」というご意見ももっともだと思いますが、いまご説明いただきましたように、実はヒア リングをベースにしたところからも、このような意見が出ていたというご指摘だったと思 います。 ○宮川委員(代理小林様)  いま大変詳しい説明をいただいたのですが、肝心な2ポツと3ポツの「価格提示を行う よう努める」「早い段階で行うよう努める」の部分です。本来は、これは努めるのではな くて、行うようにしなければならないというのが基本だと思うのです。法律用語の、でき る規定と同じ趣旨に理解すればいいと、こちらで善意で解釈をしていますが、とは言って も、1番目の川上の部分の留意事項と、川下の留意事項の連結という思想でここの部分を 説明されないと、ユーザー側は、字が書いてあるね、卸売はちゃんと提示してくれたので すかという、そこの担保が読み取れない、切実にそう思ったので、ご質問申し上げた次第 なのです。 ○嶋口座長  この議論は、いわゆる川下といわれる卸売と医療機関や薬局の関係で議論をしているよ うですが、メーカーと卸売、いわゆる川上との関連も十分に反映しなければいけないとい うご意見でしょうか。 ○宮川委員(代理小林様)  どう言っていいのでしょうか、川上の留意事項では、いろいろとアローアンスであると か、割戻しであるとか、非常に専門的な部分を吟味されるわけです。そこが基本になって 川下の価格が決められてくるわけで、その間の経緯なりを、ユーザー側が目隠しされたま まで、このように川上ではきちんとやっているのだから、これに従いなさい、これは言い 値ですというような言い方などをされた日には、これは大変だと。現実にはそうではない、 それこそ真摯に対応していただけると思いますが、その辺を書き振りとして、2つの留意 事項間の関連性をもう少し明確に出していただいたほうがいいのではないかと思います。 ○ 嶋口座長  事務局から何かありますか。 ○武田経済課長  おっしゃる趣旨につきましては、私どもとしては、今回一体のものとして緊急提言の原 案を出しておりますので、文章的に工夫できるかどうかは考えさせていただきます。  また、そういう意味で言いますと、川上、川下の間に立つ当事者、卸売業者ですので、 後ほどそれぞれの取引当事者の持つべき基本認識も出てきますが、メーカーに言われたと おりの値段しか提示できませんということですと、これは価格の自主決定権という話にも なります。まさにそこの辺りが、卸の取引当事者としての自立性、主体性の確立というこ とだと思いますので、いまご指摘いただいた川上、川下の関係、または卸売業者の自主性 の確立という、その点についての文章上の表現については検討させていただきたいと思い ます。 ○大塚委員  話の流れを聞いたり、今日の事務局からの提案を見ていますと、メーカーはグローバル な関係で育成しなければならない。メーカーと卸には固い絆があるということです。ただ、 川下の価格決定に関しては、未妥結の問題も解消せよということで、かなり強い態度で臨 まれている。  医療機関あるいは調剤薬局の本当の利益をきちんと検証して、本当に利益がどれほどあ るのか、あるいはぎりぎりなのかと。私どもの病院で細かく分析しておりますが、ほとん ど利益は出ていません。おそらく私立大学でも、薬剤からの利益はあまり出ていないと思 います。そういうところをしっかりと検証していただいて作業を進めないと、言葉のやり 取りだけで決められる問題ではないと思っております。 ○嶋口座長  いまの大塚委員のご指摘は、実際には医療機関や薬局チェーンは経営的に大変なのだと いうご指摘で、その辺りをもう1回見極めた上で考えていただきたいというご意見でした。 まだ議論があるかもしれませんが、また後で戻っても結構だと思いますので、次の議題に 入ります。  次は「取引当事者それぞれが持つべき基本認識」それから「国の役割」について、事務 局からご説明をお願いします。この問題については、資料2-1で、冒頭で私からお伝えし ましたように、医療用医薬品の流通改善における緊急提言案の本文と関連することですの で、併せてご説明をしていただきます。 ○千葉首席流通指導官  資料2-1の1頁です。「医療用医薬品の流通改善について(緊急提言)」について3頁ほ どにわたりますが、本文という形で今回の緊急提言の趣旨を書いていますので、まずそち らをご紹介します。  1.医療用医薬品は、国民の医療を支える基盤を成すものであることから、公的保険制 度下で診療報酬の償還価格としての公定価格(薬価)が定められている反面、一般消費財 同様に市場における自由な競争の下に取引される商品であるという特殊性を有している。 このため、過去には薬価算定方式のあり方とも関連して、薬価差を前提とした取引が行わ れ、不適切な景品やサービスの提供、値引補償など不公正とされる取引が行われるととも に、過大な薬価差の存在、複雑な価格形成、未妥結・仮納入、総価山買いなど公的保険制 度下での不適切な取引慣行が指摘されていた。  2.公的保険制度下における医療用医薬品の流通改善を図る観点から、厚生省(当時) においては、昭和58年3月に「医療用医薬品流通近代化協議会」(以下「流近協」という) を設置して流通近代化の推進方策を検討してきた。  昭和62年には、取引当事者間におけるモデル契約書の策定等を行いその普及を図ると ともに、平成2年には、自由な競争の確保、過大な薬価差の是正、透明性・公平性の確保、 流通改善に資する薬価基準制度の見直しなどを内容とする「医療用医薬品の流通の近代化 と薬価について」をとりまとめ、行政や取引当事者の取組を要請している。  また、ほぼ時を同じくして公正取引委員会が、平成3年1月に「流通・取引慣行に関す る独占禁止法上の指針(案)」を公表している。こうした行政側の取組を背景に、メーカ ーが値引補償を廃止するという新たな流通改革を打ち出したことにより、不適切な取引慣 行の是正に向けた取組も大きく前進することが期待された。  3.以後、各取引当事者による流通改善への取組が進められたことにより、値引補償の 廃止、薬価差の縮小、モデル契約の推進など一定の成果がみられたところであるが、未妥 結・仮納入や総価山買い、過度なリベートなどがなお未解決の問題として残っていたこと から、平成7年2月には流近協のメッセージを発信し、継続した流通改善の取組を求めて きた。  4.平成16年6月に流近協の取組を引き継ぐ形で、厚生労働省においては、医政局長の 私的懇談会として「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(以下「流改懇」という) を設置して、その後の医薬分業の進展、卸売業の再編、IT化の進展等を踏まえた流通慣行 の現状分析と流通改善方策の検討を開始し今日に至っている。  流改懇での現状分析では、割戻し・アローアンスの支払基準の簡素化・合理化の進展や 薬価差の縮小などが確認されたものの、長期にわたる未妥結・仮納入や総価取引(総価山 買いに代わる新たな呼称)が購入量の大きい医療機関・薬局で継続していることや、グル ープやチェーンによる一括購入等に伴う新たな課題が検証されたことから、平成16年12 月に「中間とりまとめ」を行い、三度、取引当事者による取組を求めている。  5.その後、長期にわたる未妥結・仮納入や総価取引については、中央社会保険医療協 議会(以下「中医協」という)においても薬価調査の信頼性を確保する観点から改善すべ き問題として取り上げられ、平成17年12月には「長期にわたる取引価格の未妥結及び仮 納入は、薬価調査の信頼性を確保する観点からも、不適切な取引であることから、その是 正を図ることとする」との方針が示されたほか、平成19年5月には、未妥結・仮納入や 総価取引等の流通改善方策のとりまとめが当流改懇に求められている。  6.今日、最新の科学を駆使した新薬開発が世界中で進められているが、我が国の医療 現場や国民・患者からは、欧米に遅れることなく世界最高水準の医薬品にアクセスできる 環境整備が強く求められている。そのため、厚生労働省が中心となり省庁横断、官民共同 による「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」(平成19年4月26日)をと りまとめている。  もとより、医療用医薬品が開発され、医療機関に供給されて患者に使用されるまでには、 長い開発期間と膨大な開発費用が費やされていること、そして、市場において価値と価格 が反映された取引が行われることにより新たな医薬品開発の原資に充てられるという循環 的サイクルで成り立っているものである。  7.昭和58年に流近協が設置されて以来既に20数年が経過した今日においても、薬価 調査の信頼性を損ねるおそれのある取引として未妥結・仮納入や総価取引が、中医協から 是正を求められる事態にあるということは、医療の基盤を成す医療用医薬品の循環的サイ クルが機能しなくなる事態をも危惧されるところである。公的保険制度下で医療用医薬品 を取り扱う取引当事者には、改めてこうした循環的サイクルにより医療用医薬品が保険医 療の向上に貢献していることを強く認識し、取引に当たることを望むものである。  8.当流改懇では、こうした状況を踏まえ、今般、公的保険制度下における取引全体の 適正化を図る観点から、流通上の諸課題についてその実態を再度検証し、先に公表した「 中間とりまとめ」に基づく流通改善の取組をより効果的に推進するための、「医療用医薬 品の流通改善に当たって取引当事者が留意すべき事項」を別添のとおりとりまとめた。つ いては、改めて、メーカー、卸売業者、医療機関/薬局の各取引当事者に対し、当該留意 事項の意義を十分に踏まえた取組を期待する。  付記として、流通上の問題点を是正する上では、単に取引当事者の努力に委ねるのみで なく、薬価算定方式における調整幅のあり方や公的保険制度下における卸売業者の位置付 けなど、医療保険制度、薬価制度の面からも流通改善に資する見直しが検討されることが より有効な改善策になるとの意見がある。  次のポツです。各取引当事者が本留意事項を踏まえた取組を実施するに当たっては、医 療用医薬品といえども、その価格、取引条件、販売施策等は自由で公正な競争の下、各取 引当事者の判断と自己責任で決められることが基本であることに留意するとともに、事業 者団体等が本留意事項を周知する際には、特にこの点に十分配慮するようお願いする。以 上が本文でございます。  資料2-2の6頁、「取引当事者それぞれの持つべき基本認識」「国の役割」についてご紹 介いたします。まず「取引当事者それぞれの持つべき基本認識」として、(1)医療用医 薬品が開発され、医療機関に供給されて患者に使用されるまでには、長い開発期間と膨大 な開発費用が費やされていること、そして、市場において価値と価格が反映された取引が 行われることにより、新たな医薬品開発の原資に充てられるという循環的サイクルで成り 立っていることへの理解とその上に立った取引の推進が求められること。  (2)医療用医薬品は医療の一環として位置付けられるものであり、生命関連商品とし て、他の商品以上に価格形成、取引条件等についての透明性、公平性の確保が求められて いること。  (3)メーカーは、公的保険制度下での医薬品の適正な流通を確保する上で、卸売業者 の自主性、自立性を尊重した取引に努めることが求められていること。  (4)卸売業者は取引当事者としての自立性、主体性を確立し、メーカーとの取引及び 医療機関/薬局との取引において信頼を得るための取組が求められていること。  (5)公的保険制度下においては、現行薬価制度の信頼性を確保する観点から、早期妥 結及び単品単価契約が求められていること。  (6)一年にも及ぶ価格交渉は、機会費用の発生などの観点からも経済合理性を欠いた 取引であること。  (7)薬局は、医薬品を専門に扱う医療施設であり、医薬品の価値と価格を尊重した取 引を行うことが期待されていること。  次に「国の役割」です。(1)公的保険制度下における医療用医薬品の取引といえども、 本来的には自由経済下における取引当事者の自由かつ公正な取引に委ねられるべきもので あることを最大限尊重すること。  (2)その上で、民間の取引といえども、長期にわたる未妥結・仮納入のように薬価調 査の信頼性を確保する観点からも不適切な取引であるとして、中医協から指摘されている ような取引慣行が存在する場合には、全体の適正化の観点から取引当事者双方に対し、改 善に向けた理解促進に努めること。  (3)特に、現行薬価制度に対する国民の信頼を損うおそれのある取引については、本 留意事項に基づいた取引が行われているかどうかについて定期的な実情把握調査を行い、 必要に応じ調査結果に基づく指導を行うとともに、その状況を当懇談会に報告するなど、 更なる改善に向けた取組を推進すること。以上です。 ○嶋口座長  ということで、医療用医薬品の流通改善についての緊急提言と、国の役割の部分のご説 明をいただきました。緊急提言というのは、皆様もご承知のように、中医協から、医療の 面で流改懇の中で1つの考え方を示してその方向を出してもらわないと、彼らがまた次の 議論を検討するに当たって不明なところが多い。したがって、何とか9月いっぱいまでに ということで、夏休みを返上して、事務局あるいはメーカー、卸、当時全体の流改懇の中 で議論してきた、その1つの方向ということを示されたものです。それが「緊急」となっ たわけです。  この本文には、これまでの医療用医薬品の流通改善の取組の経緯と、今回のとりまとめ の趣旨が述べられたわけです。これからここに述べられていることについて、ご意見ある いは質問等がございましたら、出してください。 ○門林委員  日本病院薬剤師会の門林です。先ほどの緊急提言もそうですが、留意すべき事項の中に も何度か出てくる言葉があります。それは「価値と価格が反映された取引」というフレー ズです。私たちは、価値を反映した価格が薬価基準ではないかと思いますから、これは薬 価基準と理解されるのかなと思います。  先ほどの留意事項の中でもボリュームを見ますと、川上のほうの留意事項はあのような ものを3点、川下のほうは非常に事細かに書いています。これは何かと申しますと、これ は薬価基準そのものも機能としてどこまでを求めているのか。特に、川下の最終価格が非 常に重要な意味を持っているので、そこをしっかり把握したいと思っていることはわかる わけです。それならば「医薬品の価値と価格を尊重した」という表現でいいのか、それを どう捉えられるか、いろいろな意味を含んでいると思いますが、特にこのことを申し上げ た理由がありましたら、教えていただきたいと思います。 ○嶋口座長  7頁の(7)でよろしゅうございますか。 ○門林委員  2頁の真ん中ほどにございます。「市場において価値と価格が反映された取引」と。も う1つ付け加えさせていただきますと、市場の中で医薬品の価値の判断というのは、非常 に難しゅうございます。個人にとっては値段の安い薬でも、非常に重要な意味を持ってい ますし、医療機関でも重要な意味を持ちます。ですから、価値の判断というのはどういう ことなのか。これは医療の中の実態を考えますと難しい問題がありますので、そういうこ とをお聞きしたいと思います。 ○嶋口座長  そのことについて、事務局からご意見はございますか。 ○千葉首席流通指導官  価値と価格については、確かに薬価そのものはそういう観点から定められているわけで す。そういった趣旨を踏まえた取引を行っていただきたい、銘柄別薬価制度という趣旨か ら、そういうことですが、実態はそうでないケースが多いということになりますと、薬価 制度あるいは薬価調査の信頼性という観点が担保されない。  一方で「尊重」というような表現ではなく「薬価による取引」と書き込むのはベターか もしれませんが、ここは自由な市場での取引ということの大前提がありますので、強く踏 み込むことが難しいところでして、こういった表現にしていることをご理解いただきたい と思います。 ○嶋口座長  三村先生、価値と価格のところについてご意見があると思うのですが、いかがでしょう か。 ○三村委員  表現は曖昧なのですが、これ以上は明確に提示しづらい、そういう意味からは適切な表 現だと思っております。  今回、総価の問題の中で、例えば除外品目の中にという、わざわざこういったような形 の品目を明示していただいていますが、これもある意味では医薬品の価値という捉え方で、 トレーサビリティとか、患者に対して投与した後にもさまざまな形で管理される、そうい ったことをきちんと薬剤部でもやっているとか、そういったことまで含めて、薬剤の価値 を考えるべきであるという原則論があると思います。そこまで含めて考えてみますと、こ ういう場では「価値と価格」という言葉でお書きになるということは、私は決して悪いも のではないと思っています。 ○宮川委員(代理小林様)  3頁のご説明で、2つのポツが「付記」ということで、書き方、表現の仕方として、随 分劣後に置かれたイメージの2つの文章があるのですが。「意見がある」だとか、こうい った表現をしていますが、これは最も根本的な問題であると認識しています。先の中間と りまとめなどでも、これは引き続き検討していくのだとされていたと認識しておりまして、 差し当たり9月末までにまとめろというご指示がある中での差し当たっての位置付けなの か。なぜこういう付記というところに書かれてしまったのかということが、緊急提言なら、 提言の根幹部分として扱ってもいいようなものも含まれているのではないかと思います。  2つ目のポツは5行書いていますが、日本語として、どこをどう読み取ればいいのかわ かりにくいので、噛み砕いてご説明していただきたいと思っております。 ○嶋口座長  いまのご質問に対してですが、付記の最初のポツについて意見があるというのは、緊急 提言として出したけれども、その辺りについてはこのような意見がありますという程度で、 ここはもう少しはっきり出したほうがいいということですね。2つ目については、文章上 意味が読みにくかったということですね。 ○千葉首席流通指導官  ただいまのご質問の最初のポツのところにつきましては、まずは取引に当たって是正す べき流通慣行を、改善できるところは改善していただきたいという趣旨が表に出た関係上、 付記とさせていただいたわけですが、実際には、こういった保険制度あるいは薬価制度の 観点からの検討についても、今回も強くご意見として出ておりますので、付記ではなく、 1つの項目として取り扱うことはできるかと思っております。  2つ目のポツのほうですが、こういった行政サイドが流通に関する指導なり、メッセー ジなりを発するに当たりまして、自由な取引を制約することがあってはならないというこ とが大前提にあるわけです。ただ、こういう懇談会の場で、取引当事者が合意したかのよ うな運用をすることがありますと、ある種のカルテル、談合のようなことが引き起こされ る可能性も否定できませんので、あえてそもそも論として、医療用医薬品といえども、そ の価格、取引条件、販売施策等は、自由で公正な競争の下、各取引当事者の判断で、自己 責任で決められることが基本だということを念押しをさせていただいて、加えて、取引当 事者のみならず、事業者団体が会員各位に周知徹底する際に、先ほど言ったような誤解を 招く、あるいは官制談合になるような表現、用い方をしてはならないということを、ここ で述べさせていただいているということです。 ○宮川委員(代理小林様)  意味はわかりました。それならば「各当事者が取組を実施するに当たっては」という文 章と「事業者団体等が周知する際には」ということで、上の内容を特にこの点のときに引 用しているので、非常にぎこちなさを感じたというのが感想です。だったら、なおさら中 間とりまとめの中で、公的医療保険制度の下、市場メカニズムが効率的かつ適切に機能す るような自由かつ公正な競争を確保することが必要であると、中間とりまとめで認識を示 されているので、そういったものを緊急提言の中に引用するという手法があってもいいの ではないか。そうすると、いまおっしゃった説明がもっと際立ってくるのではないかと思 います。 ○嶋口座長  特に事務局が苦慮して文書を書くときに、いつも自由で公正な競争ということと、それ から公的医療保険制度ということの2つが重しになっています。流通改善のあり方につい て、自由論争を建て前とする公正取引委員会の立場からみれば、これは当事者間の問題で、 国がああだこうだというものではないでしょうと指摘されることもあります。それがその 都度出るものですから、このような回りくどいような話になっている。その点はご理解い ただければありがたいと思います。でも、貴重なご意見をありがとうございました。他に 何かございますか。 ○大塚委員  公取からスケールメリットについての話がありましたが、この点についてあまり提言の 中では入っていないということです。それから、先ほど説明のあった6頁の(2)の価格 形成とか、取引条件についての透明性、公平性の確保が求められている、要するにやって いないのは不適正であると思います。求められるというよりも、公平性、透明性が確保さ れていないというのが適切です。一方、川下の医療機関の取組については、薬価調査の信 頼性を確保する観点から、未妥結・仮納入は不適切とされている。  この薬価算定の基礎になっている薬価調査を市場実勢価格、加重平均値というのは、こ れ以外には方法がないという考え方で構築されております。これも改めなければいけない と思います。だから、川下は不適切であり、川上は求めるという考え方自体が、どうも納 得できないということです。 ○嶋口座長  この辺りについては、川上と川下の接点にいる卸の立場から、何かご意見はございます か。  いまの大塚委員のご意見ですと、川上よりも川下が問題だというのが、今回の提言の基 調になっている感じがするというご意見ですね。そうすると、卸の立場としては、そのよ うな印象が川下側からはあるのだけれども、いかがですかという質問と伺っていいと思う のですが、何かございますか。 ○松谷委員  これは一部医療機関から、川上の流通が不透明であるということは、過去にいろいろな 会議でも我々はお伺いしているわけです。いまの保険制度の中で言いますと、医療機関は 「保険医療機関」となって、これは医療保険の中で療担規則等に入るもので、保険薬局も 「保険薬局」という形で、公的な1つの組織であると、保険上ではそのような取扱いにな っています。  それなら、卸というのは「保険卸」として、保険の中で卸のマージンであるとか、いろ いろなものが公定される諸外国のいくつかの卸であれば、これは公的保険者としての卸と いうことになるのですが、現在の医療保険制度の中でいうと、卸業者及びメーカーは、保 険卸でもなければ保険メーカーでもないということで、その意味でいうと、卸業者とメー カーとの取引は完全な民の取引であるということです。この民の取引をそのまま全部裸に することは我々の置かれている立場で言えばできないことと理解をしています。  皆さんにそれなりの理解をしていただくために、透明性の一層の確保に努めなければい けないということですが、扱っている商品が保険医療に使う薬価基準を持っている商品で すが、扱う業者としては保険卸ではないという現実が、ひとつこのように分かれているこ とではないかと。  一部、日本型参照価格とかいろいろなものが議論されたときは、その卸のマージンを公 定マージン制にしたらどうかということになったときに、マージンに公定制が出てきたら、 また保険卸になるということで、それは実現しなかったわけです。川上取引を、すべてを 明らかにするには、メーカーも卸も、保険の中に入るのかということにもなるのではない かと、こんなふうに考えています。 ○江口委員  2頁の6番などを読みますと、我々ジェネリック医薬品販社協会としては、新薬、確か に価値あるものを作りだしていくということは、いちばん重要なことではないかと思うの ですが、我々が扱っているジェネリックの場合は低薬価のものですし、その価値がどうい うものであるかということになりますと、先ほどの話にもありました「高いものがいい」 というばかりではない面もあるのではないかと思うのです。  価値とは何ぞやということになりますと、日本の健康保険制度を維持していくには、や はり価格は安くとも価値あるものがあるのではないかと思うのです。そういうものの価格 をどのような格好で、新薬と全く一緒のような格好での価格設定をしていいのか。できれ ば、ある程度の安いものについては別の意味での、薬価調査の結果とは別の意味での、ア ローアンスと言うのでしょうか、そういうものを与えていただくことによって、ジェネリ ックの普及がなされるのではなかろうかと私は考えているわけです。  新薬とジェネリック、その価値というもの、どこで価格を決定するか、大変難しいこと だと思うのですが、薬価そのものの計算様式の変化もあっていいのではないか。ここに6 番がありますので、この次ぐらいに、健康保険制度そのものの観点から考慮したところで の薬価というのが、存在していいのではないかと私は考えております。以上です。 ○嶋口座長  貴重な意見をありがとうございました。  意見は少ないかなと思ったら、後半になってたくさん出てきて、ちょっと時間が押して きましたが、最後のほうで、モデル契約書について、必要に応じて見直しを行うことにな っていまして、「モデル契約書改正(案)」というのが資料の3にあります。これについて 事務局から説明をお願いしたいと思います。 ○千葉首席流通指導官  それでは資料3をご覧ください。「モデル契約書改正(案)新旧対照表」で説明させて いただきます。今回の留意事項原案の作成過程において、改めてモデル契約書のほうで未 妥結・仮納入あるいは総価取引といった観点からの見直しをする箇所がないかどうか検討 をしたところ、いくつかそういった見直しが必要な箇所が見られましたので、ご提案をさ せていただきます。  まず、卸売業者と医療機関等間のモデル契約ですが、モデル契約書の中に、第5条とし て価格に関する項目があります。現在は「商品の価格は、予め別に定めるものとし、原則 として商品受渡し後の商品価格の変更は行わないものとする」という記載がありますが、 銘柄別の取引を推進するという観点から、「商品の価格は」の次に「品目毎に」という文 言を追加して、「品目毎に予め別に定めるものとし」という表現にしたほうがいいのでは ないかと考えております。また、早期妥結を促すという観点から、「前項の規定により、 商品の価格を定める場合には、甲乙とも誠実に交渉を行い、早期に決定するものとする」 という項目を追加してはどうかと考えました。  メーカーと卸売業者間のモデル契約の見直しでは、やはり卸売業者と医療機関等とのモ デル契約と同様に、価格の第5条の事項について、同様の見直しをしたらどうかと考えて おります。また、第11条に「割戻金」という項目がありますが、現在は「割戻金を支払 う場合は、予め別にその品目及び算定基準を定めるものとする」というように、その記載 はメーカーサイドで措置をするというような段階でとどまっていますが、メーカーと卸と の間で交渉することを促す上でも、そういった算定基準を定めたあと、乙である卸に通知 するという文言を加えてはいかがかということで、こういった改正案にさせていただいて おります。以上です。 ○嶋口座長  自由競争が建前ですので、この公的医療保険制度の中でやるには強制はできないから、 こういうモデル契約書というのをお互いに取り交わして、それを互いに遵守していくこと が重要だろうということで、モデル契約書というのが以前作られたわけです。今回の一歩 進んだところで、ちょっとこの辺りを改正しておいたほうがいいかなというご提案です。 何かご質問、ご意見がありましたらお願いします。  よろしいでしょうか。それではこれについては特に意見がありませんので基本了解と致 します。これまでいろいろな意見がありましたが、ここですべて終わったではなくて、ま た、この直後でも結構だと思いますが、事務局のほうにいろいろな意見ということをそれ ぞれのお立場から出していただいて、それをまた事務局のほうで十分考慮しながらベター にしていきたいと思っております。  どうしても相異なる利害者が1つの委員会を構成して議論すると、メーカー一人勝ちと か、あるいはユーザー一人負けとか、卸・メーカ二人勝ちとか、そういう議論が出てくる のですが、あくまでも、少しでも医薬品流通全体としてよくなるような形を求めるという ことですので、是非委員の皆様方大所高所から、そういうお立場でお考えいただければと 思っております。  今日はここで時間がきましたので、議論を打切りにさせていただきますが、またご意見 がありましたら事務局のほうにお出しいただきたいと思います。それでは 事務局のほう で、今後の進め方についてご意見をお願いしたいと思います。 ○渡邉流通指導官  今日の議論を事務局のほうで整理した上で9月下旬、日程調整を事前にさせていただい ておりまして、9月28日(金)の15時から開催する次回の流改懇において、今日の議論 を整理した上で、最終案ということでお諮りするということにさせていただきたいと思っ ております。 ○嶋口座長  日程については、まだ確定ではないと理解させていただいてよろしいですか。 ○渡邉流通指導官  一応今日、最終的に確認させていただきましたので、これで確定したいと思っておりま すが、場所はまだ決めておりませんので、追って正式にご案内させていただきたいと思っ ております。 ○嶋口座長  わかりました。では9月28日(金)の午後3時、連絡がいっているのではないかと思 いますが、一応予定に入れていただければありがたいと思います。それでは以上で本日の 会合は終わりにしたいと思います。お忙しいところありがとうございました。