07/08/24 平成19年度第1回雇用政策研究会議事録 平成19年度第1回雇用政策研究会          日時 平成19年8月24日(金)          10:00〜          場所 厚生労働省職業安定局第1会議室 ○蒔苗雇用政策課長補佐 ただいまから「雇用政策研究会」を開会します。はじめに職 業安定局長からご挨拶申し上げます。 ○太田職業安定局長 おはようございます。本日付けで職業安定局長を仰せつかりまし た太田でございます。よろしくお願いいたします。本日は大変お暑いところ、またご多 忙のところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。雇用政策研究会の開 催にあたり一言ご挨拶申し上げます。  ご案内のとおりこの研究会は、大変長い歴史と伝統のある研究会でして、前進の研究 会は昭和40年代からあるわけですが、いまのような形になったのは、昭和59年に梅村又 次先生が座長で発足してからと聞いております。職業安定局長が随時参集をお願いする という形を取っておりまして、学識経験者の方々に専門的な立場からご検討をいただい て、労働市場の構造変化等に対応した的確な雇用対策の推進に、多大なるご貢献をいた だいてきたところでございます。  私事で恐縮ですが、私もちょうど10年前に、3年間、雇用政策課長を務めさせていた だきました。本当に雇用情勢はどんどん悪くなる時期で、その中で研究会の事務局を務 めさせていただいて、先生方にさまざまなご指導をいただき、貴重な、得がたい経験を させていただきまして、改めて感謝申し上げるところでございます。  最近の研究会では、一昨年の7月に「人口減少下における雇用・労働政策の課題」に ついて報告書をまとめていただき、政策の方向性をお示しいただいたわけでございます。 私どもとしては、この報告書で示されたさまざまな対策に取り組むとともに、先の国会 で雇用対策法を改正して、人口減少下における就業の促進を図ることを法律の目的に追 加するなど、この研究会の提言内容を踏まえて、雇用対策の基本法の大幅な改正も行い ました。  また、今回の雇用対策法の改正では、昭和42年以来、9回にわたって策定してきた雇 用対策基本計画を廃止いたしまして、今後の雇用対策の中期的な方向につきましては、 いわゆる中期ビジョンとして厚生労働大臣が定めるということになりまして、その内容 についての検討が必要となっているという状況でございます。  そこで今回、新たに樋口美雄先生に座長をお願いして、これまで労働経済分野中心の 委員構成を、経営学あるいは社会保障等幅広い分野の先生にも新たにご就任いただいて、 今般、新たな構成の下で雇用政策研究会を開催することとしたところでございます。  具体的な検討内容は後ほど事務局から説明させていただきますが、人口減少下におけ る我が国の経済・社会がどのように変わっていくのかということを見据えた上で、今後 我が国が目指すべき雇用労働の姿、形についてご検討をいただいて、その姿を視野にお いた当面4〜5年程度の雇用政策を、どうやって展開していくのかということについて、 基本的な考え方をまとめていただきたいと考えております。  なかなか予測困難な時代ですが、将来を見据えて適切な雇用政策を展開するため、是 非活発なご議論をお願いするものでございます。検討の結果につきましては、本年11月 末を目途に報告書として取りまとめていただいて、厚生労働大臣が定める中期ビジョン に反映させたいと考えておりますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。どうもあり がとうございました。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 ただいま局長からご説明しましたとおり、今回、委員に就任 された方々は樋口座長をはじめ、お手元に座席表と委員名簿をお配りしておりますが、 委員名簿のとおりでございます。本来であれば個々の先生方をご紹介させていただくの ですが、本日は省略させていただきます。それでは初めに、樋口座長から一言ご挨拶を いただきたいと思います。 ○樋口座長 慶応大学の樋口でございます。いま太田局長からお話がありましたように、 この研究会は非常に歴史が長く、前回までは小野先生が長く座長を務めておられました。 私が務められるかどうかわかりませんが、司会役を行っていきたいと思いますので、是 非よろしくご協力のほどお願いいたします。  太田局長からもお話がありましたように、社会保障人口部会から昨年発表された数字 は非常にショッキングなものでした。50年後の人口は9,000万人を割るというのが中位 数という形で発表されています。あるいは生活においても女性の生涯未婚率が、現在は 6%であるのが、50年後には24%になるだろうと言われております。労働市場だけでは なく、国民の生活が大きく変わっていくという中で、まず、雇用政策として何を考えて いかなければいけないのかということについて、皆さんと一緒に討議をしていきたいと 思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、当研究会の開催要領及び議事の公開について、事務局から説明をお願いい たします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 説明に入ります前に、局長はこのあとちょっと所用がありま すので、ここで退席させていただきます。 ○太田職業安定局長 恐縮ですが退席させていただきます。よろしくお願い申し上げま す。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 まず資料No.2として、本研究会の開催要領を簡単にまとめて おります。先ほど局長からも説明がありましたとおり、この研究会では、雇用に関する 展望あるいは雇用政策の方向性について検討していただくほかに、厚生労働大臣が定め る中期ビジョンの内容についてご検討をお願いしたいと考えております。運営につきま してはそこに書いてありますように、別途研究会において申し合わせた場合を除いては 公開、という扱いにさせていただきたいと思います。その別途、というのが資料No.3「 議事の公開について」というものになります。前々回の研究会のときからこの「公開」 という扱いにしておりますが、検討内容が労働市場に影響を与えるものに至る場合には、 座長の判断によって非公開とすることも可能となっております。以上です。 ○樋口座長 ただいまの説明についてご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。  よろしいでしょうか。それでは事務局の原案どおり行うということでお願いしたいと 思いますので、確認よろしくお願いいたします。  続きまして今回当研究会で議論する論点及び今後の進め方について、関連の資料も含 めて事務局から説明をお願いいたします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 資料No.4、5、6、7について、通して説明させていただきます。  まず資料No.4ですが、今回この研究会で議論していただく点を、一応叩き台というこ とで、1枚の紙にまとめさせていただいております。大きく2つありまして、1つ目が、 今後の我が国雇用労働社会の目指すべき姿等、ということで、1つめのポツとして、人 口減少の中で日本経済全体が持続可能な成長を続けるために目指すべき雇用労働社会、 という観点からその姿についてご議論いただきたいと思っております。その際に一応の 念頭としようとしておりますのが2030年時点での就業率等、さまざまな労働関係の数値 等についてもご議論いただければと思っております。その際、雇用労働だけではなくて、 産業構造あるいは労働分配率等々を含めたマクロの条件についてもご議論をお願いした いということです。  2点目は、こういった目指すべき姿を踏まえまして、2030年を視野に置きながら、そ の中期ビジョンというのは大体4〜5年程度のビジョンを考えておりますので、当面の雇 用対策として4〜5年程度の雇用政策の方向性についてのご検討をお願いしたいと思いま す。大きく3つに分けております。さまざまな場で議論されておりますが、1点目がいわ ゆる全員参加型社会、と言いますか、意欲と能力を持った方が働くことができる社会と いうことでして、代表的な高齢層、女性、若年者問題、それぞれについてどんな取組み が重要かということについてです。2点目がそういった意欲と能力、みんな働くという こと以上に、働ける人みんなが生産性あるいは能力をアップしていこうということでし て、3つほど書いてあります。1つは職業生涯の各時点に応じたと。若いとき、結婚した あと、高齢期、いろいろな時点に応じた職業能力向上への取組みについて。2点目が、 国際競争力の向上を図らなければいけないので、それに対応するような高度な人材の確 保・育成策について。あるいは地域、あるいは中小企業等を支える人材といった観点か らもご議論いただきたいということです。  3点目は少子化対策にも資する働き方の見直しに向けた対応。最近、ワーク・ライフ・ バランスということでいろいろな場で議論されておりますが、こういった点についても ご議論いただきたいと思っております。3つ書いてありまして1つ目が、仕事と生活の調 和に向けた取組み、2つ目が企業内における少子化対策への取組み支援、3つ目が公正か つ多様な働き方ができる労働環境の整備。大体こういうことについてご議論いただけれ ばと思っております。  資料No.5に今後のスケジュール、研究会の日程を一応、先生方の日程を確認して最終 回まで仮押えさせていただいておりますが、全体で7回にわたって開催したいと思って おります。本日は第1回目として、雇用政策の方向についてフリーディスカッションを していただいて、第2回、第3回におきましてはいま資料No.4でご説明した2の(3)ワーク・ ライフ・バランスの所について、先行的にご議論をいただければと思っております。そ れ以降、第4回におきましてはそれ以外の部分、若者とか女性、高齢者、あるいは外国 人問題、いろいろな点について2回ほど各論、ご議論いただいたあと第6回において中期 ビジョンの骨子案、そして11月末におまとめいただければというスケジュールで考えて おります。  資料No.6と7には本日ご議論いただく際の参考資料として、一般経済あるいは雇用情 勢に関する資料を集めております。まず資料No.6ですが、これは主に数値的な資料でし て、目次をご覧いただきますと、Iが一般経済の動きと雇用情勢、IIが中長期的な点か ら人口構成の変化とか、あるいはバブル以降急速に進んできた雇用形態の多様化、二極 化の動きのデータ、3番目がその他社会の変化となっております。  1頁目からご覧ください。まずは大前提で、経済成長率の推移を1980年代から取って おります。2000年から経済成長が続いておりますが、一時期に比べると全体的な成長率 はだいぶ低下してきているということです。2頁目は労働生産性の上昇率の推移で、こ れも長期的に見ると低下傾向にある。過去10年平均を取ってみると、大体1.6%ぐらい の労働生産性の上昇率になっております。3番目はその労働生産性についての国際比較。 諮問会議に出された資料ですが、日本の労働生産性が諸外国と比べると、2005年時点で は最低水準にあるということ。日米の比較をしますと、1990年代まではアメリカの生産 性の水準にだいぶ追いついてきているわけですが、1990年代になると横ばいで、現時点 では大体7割程度ということです。  4頁はそういった経済成長の成果を、具体的にどうやって配分しているかという労働 分配率の記述ですが、これについてもバブル崩壊後は一旦上昇したわけですが、その後 は低成長の中で、高水準を維持しながらも2001年以降は低下傾向が続いております。直 近の2005年には、若干、従業員の増加による人件費増等もあり、少し上昇気味になって おります。5頁にいって、労働分配率は低下傾向にあるわけですが、一方で企業の利益 を売上高営業利益率、売上高経常利益率で見ますと、2000年以降、利益のほうはグーっ と上がってきているという現状にあります。ここまでが一般経済の資料です。  6頁は雇用情勢の資料、失業率と求人倍率の長期のグラフです。今回の景気拡大は平 成14年から始まったわけですが、景気の谷であった平成14年1月のときには求人倍率は 0.50倍、そのころは失業率が5%を超えていた。その後は景気の回復に伴って、失業率 は若干遅行指標ですので、一旦5.5%まで上昇しましたが、それ以後は下がってきて、 直近の今年6月には失業率3.7%と、大体平成10年ぐらいの水準まで一応回復してきて いるということです。求人倍率で見ると6月は1.07倍ということで、数の上ではだいぶ 改善が進んでいるわけですが、ご存じのように1.07倍のうち、正社員の求人倍率は0.57 倍ということで、雇用の中身という部分はまだまだこれからというところです。7頁は、 求人倍率が1倍を超えていることもあって、労働者のいわゆる過不足感についてもやは りこのところ高まっていまして、今年の2月の調査においては常用労働者の不足感が一 時期、パートタイムの労働者を上回っております。5月の調査では両方一致しておりま す。以上が雇用の状況です。  8頁目からは今後中長期のデータで、最初は今後の日本の人口構成の変化についてで す。平成18年の中位推計のデータですが、これを見ますと、2005年の実績から見て2030 年、2055年に向けて、主に65歳以上の比率がどんどん高まってきて、2005年には約2割と いう65歳以上人口が、2030年には32%、2055年には41%と高齢化が進行してきます。9頁 にいって、そういった高齢化の進展とともに、いわゆる団塊の世代の高齢化というのが もう1つ大きなことで、今年2007年に団塊の世代の方々、1947年生まれから1949年生ま れの方々の最初の1年目の方が60歳に到達し、今回、中期ビジョンの検討をお願いする 2012年、いまから5年後にはもう65歳に達するという状況にあります。  10頁は、いまの人口推計等を受けて、前回の雇用政策研究会において推計を行った労 働力人口の見通しのグラフです。これは2004年時点の実績をもとに推計を行って、「労 働市場への参加が進まないケース」と「労働市場への参加が進むケース」と書いてあり ますが、進まないケースというのは、2004年の性・年齢別の労働力率が変わらないとし た場合には、2015年には2004年から410万人労働力人口が減ってしまう。これを各種 の対策を講じることによって300万人戻して、110万人の減にとどめる。さらに先の2030 年には、2004年に比べると1,000万人の減。何もしなければ1,000万人の減というとこ ろを、各種対策で半分戻そうという数字で、これについてもいまJILPTのほうで、昨年 末の人口推計を踏まえて少し修正を検討していますので、次々回ぐらいに資料をお出し したいと思っております。  11頁以降にはバブル崩壊以降の、大きな雇用の多様化と二極化の動きについての資料 をいくつか用意しております。11頁は産業構造の変化を反映した産業別就業者の割合の 推移で、これはよくご存じのとおり農業あるいは製造業が低下して、サービス業や卸売・ 小売業などが増加傾向にあるという数字です。12頁は、雇用の質の問題というのを先ほ どお話しましたが、いわゆる正規雇用者とそれ以外、パート、派遣、契約社員等の方々 の構成比がどんどん変わってきている。近年、正規雇用者は低下傾向で推移してきたわ けですが、2006年に入って四半期で見ますと、1〜3月から今年の1〜3月まで5四半期連 続で、正規雇用者も前年差では増加に転じている。ただし、それ以外のパート、派遣、 契約社員等も増えておりまして、こちらが増えた結果として今年の1〜3月には、33.7% は正社員以外ということになっております。  13頁はパート、派遣、契約社員、いわゆる正社員以外の方の働き方について、もう少 し細かく見たグラフです。その中でいちばん大きいのは、ご存じのとおりパートが800 万人を超えておりまして、その次がアルバイト、そして、ここのところ大きく増えてい るのが派遣あるいは契約社員といったところです。14頁は、そういった中で年齢構成別 にそのパート、派遣、契約社員を見るとどうかというグラフ。「就業構造基本調査」を 使っている関係でデータは少し古くて、1992年から2002年までを見た数字です。20代を 中心にこういった正社員以外の働き方の比率が高まっているということです。「フリー ター」の方々の数も、2003年がピークで217万人ということでしたが、ここのところ景 気回復等もありまして、2006年には187万人まで約30万人減少しております。「ニート」 の方々の数字についてはずっと横ばいでしたが、2006年には約2万人の減少となってお ります。なお、フリーターにつきましては、改善度合が進んだのは主に15〜24歳の部分 でして、25歳以上34歳までいわゆる「年長フリーター」という方々については、改善に まだ遅れが見られております。  16頁はこういったパート、派遣、契約社員等の働き方が、社会にどういった影響を与 えるかというグラフで、1つは、正社員とそうでない者の働き方との間で、職業能力開 発の機会に差があるという問題があり、こういったことも反映して有配偶率、結婚がで きる、できないというところにも影響が出てくるというデータです。17頁は若年層にお ける収入格差の動向。こういった働き方の多様化が進む中で、若者の間でも収入格差が 開いているというグラフです。これも就業構造基本調査を使っているので若干古い数字 ですが、10年前と比べて、150万円未満の低収入の方々の割合が増加するとともに、一 方で500万円以上の高収入の方も増加して二極化、収入格差が拡大しているということ です。18頁は、雇用形態・勤続年数別の賃金カーブ、男女別に見たものです。正社員は 勤続年数に応じてグーっと上がっていくわけですが、正社員・正職員以外の方々の場合 は、男女ともに勤続年数が長くなるにつれて、賃金の格差が広がるということです。  19頁は労働時間について見た資料です。労働時間の二極化というタイトルを付けてお りますが、35時間未満で働く方々と60時間以上で働く方々、両極端の割合が高まってい る。これは一時期、平成16年がピークで平成18年の直近のデータではその二極化の度合 はだんだん薄まってはきておりますが、まだまだこういった高止まりの状況を続けてい る。特に長い時間の所で見ますと、30代の男性で週60時間以上の者が、平成5年と比べ ると1.4ポイント高くなっているということです。20頁はいまの数字と同じですが、週 60時間以上働く30代男性、子育て世代の割合を、1993年からのデータで見たものです。 2004年がピークで23.8%、それが2005年、2006年と低下を続けております。  21頁からはその他の社会変化として、まず21頁に用意しましたのは、外国人労働者 の国内における数です。合法的に働いている方々は平成7年に33万人だったものが、平 成17年には倍増して72.5万人。内訳はそこに書いてありますように、専門的・技術的 分野の方々が8.8万人から18万人、いわゆる日系人を中心に身分に基づいて在留されて いる方々が21万人から36万人、技能実習等の特定活動を行っている方々が8.5万人とい う状況です。不法在留者数の推移を見ますと、平成7年と比べてだいぶ減少はしている ものの、平成17年現在で約19万人いるということです。  22頁は共働き世帯の推移で、1997年以降、共働き世帯がそうでない世帯を上回って推 移してきているということです。23頁は未婚率の推移と夫婦出生児数の推移。晩婚化の 進行等によって未婚率が20代、30代で高まっているというデータです。24頁は意識調査 で、仕事と余暇のどちらに生きがいを求めるかというものですが、一貫して上がってい るのは、仕事と余暇を両立させたいという指向が上昇傾向にあります。最後25頁には、 こういった変化を受けて、この雇用のあり方をどう考えていくかということが大きい論 点になるわけですが、参考までに「長期雇用についての企業側の方針」というのを付け ております。左下の2004年の日経団連の調査を見ますと、帯グラフになっていますが、 いちばん多いのは、今後は「長期雇用労働者中心だが、パート・派遣等の比率を拡大す る」という所になっております。右下は労働政策研究・研修機構の調査ですが、2006年 のデータで、大体企業の7割程度は「長期雇用はできるだけ多くの従業員を対象にして 維持する」と答えております。以上が主なデータの説明です。  資料No.7として、こうした社会の変化に対応して最近さまざまな所で各種提言、取組 み等がありますので、こういった資料を用意しております。目次をご覧いただきますと、 大きく分けて1つ目が、厚生労働省としてどんなことをしてきたかという取組みについ てと、政府全体で雇用政策の方向性をどう考えるかということについて、進路と戦略と か、骨太、再チャレ等を付けております。3つ目は、ワーク・ライフ・バランスに関す る各種報告というのも、最近さまざまな場でなされていますので、こういったものの資 料を付けております。これについて簡単にご説明します。  1頁目は、先の国会は労働国会と言われておりまして、厚生労働省からも雇用関連法 案をかなり多数出したわけですが、これを整理して、大きく分けて1つ目が雇用対策。 主に就業率の向上を図るための施策として雇用対策法、地域法の改正。2つ目が正規雇 用への移行促進。雇用の質の問題に対応する施策ということで、若年者を中心として雇 用対策法の改正による施策、あるいはパート労働者を正社員に転換しようという部分の パート法の改正等をしております。労働者の安心・納得という部分では、パート法の改 正で均衡待遇の確保ということをやったわけですが、その他、今回出しておりました労 働契約法あるいは最賃法については継続審議になっております。  2頁目は仕事と生活の調和、少子化対策ということで、1つ目は長時間労働を是正する という観点から、時間外労働に対する割増賃金率の引上げ。これは労働基準法の改正で すが、これも継続審議になっております。あと、雇用保険法における育児休業給付の拡 充とか、再掲になりますが雇対法とパート法の改正をしております。3頁は違う観点か ら整理した資料です。同じようにこういった6法案があります。  4頁目は、先ほど局長の挨拶の中にもありましたが、雇用対策法の改正を今回やって おりまして、これはまさに前回の雇用政策研究会の報告書の提言をもとに、人口減少下 における就業の促進を図ることを法の目的として追加させていただいております。その ほかに国が講ずべき施策として法の中に、これまで明確に記述がなかった部分について、 例えば青少年あるいは女性、障害者、外国人等についても、国が講ずべき措置としてき ちんと明記しております。もう1点は雇用対策基本計画を廃止して、今後この中期ビジ ョンをということです。その他ここに書いてありますように、若者のフリーターの方々 の正社員化に対する対応とか、あるいは募集採用に係る年齢制限の禁止という規定、あ るいは外国人の方々に関する適正な雇用管理面での強化、あるいは地域対策ということ を盛り込んでおります。  5頁目が本研究会でご議論いただく中期ビジョン。位置づけみたいなポンチ絵です。 雇用対策基本計画を今回廃止して、新たに地域の実情に応じて機動的、効果的な雇用施 策の展開を図るために、ビジョンを今回検討していただいて、それをもとに各年度、「 地方方針」を作るための全国的な指針を国において作成して、それを踏まえて都道府県 労働局のほうで都道府県の知事等、地域の関係者の方々といろいろ意見交換を行って、 機動的な雇用対策を地域レベルできちんとやっていくという仕組みをやっております。 こういったものを作成する際の道しるべと言いますか、前段について中期ビジョンのほ うで検討いただきたいということです。6、7、8頁にそういった中期ビジョンあるいは 地方方針に関する根拠規定を付けております。  9頁は、今回廃止することになりました第9次の雇用対策基本計画について一応参考ま でに。後ほど ご覧いただければと思います。10頁が前回2005年7月の雇用政策研究会 でご提言いただいた、当面10年程度の10の提言です。若者、女性、高齢者、あるいは福 祉から就労、地域、職業能力開発、外国人、今回の雇対法改正の中にすべて盛り込んだ 事項です。11頁は今年の8月、今月の上旬に公表しました雇用労働政策の基軸・方向性 に関する研究会。これは諏訪委員に座長をしていただいて取りまとめた研究会です。こ ちらのほうは、さまざまなこれまでの変化に対応して、その時々の対応は厚生労働省と してとってきたわけですが、もう少し、きちんと腰を据えて、今後の雇用労働政策基軸 というのは何かということについてご検討いただいた内容です。そこに書いてあります ように今後懸念される問題、それに対する政策課題。上の右側の箱にありますが、4つ 整理しておりまして、1つは雇用の不安定化、格差拡大に対してやはり労働者の生活の 安定・向上が大事であろうという問題意識とか、経済活力の低下を防ぐために一人ひと りの生産性の向上とか、国際競争力の確保というのが前提として大事であろうというこ と。一方で、健康被害の拡大とか少子化という問題も起こっているので、これに対して は働き方を見直すという意味で、ワーク・ライフ・バランスの確保というのが大事であ ろう。4つ目、労働力人口の減少に対しては、意欲と能力のある方々が働けるように就 業率の向上を図ろうということ。  その下の箱に大きな基軸が3つ、さまざまな雇用労働政策を展開する中で、どういう 観点を置いて検討すべきかということについて3つ書いてあります。大前提としては、 国際競争力の強化あるいは経営上の効率化と、一方で労働者の職業安定と自己実現、こ の両方の調和を図っていくために、適切に市場メカニズムを活用しながら、そこに書い てありますように「公正な働き方」というのを、きちんと確保していくべきだろうとい うのが1点。2点目は雇用の安定も非常に大事であるけれども、雇用の安定は安定として 重要視しつつ、一方で流動化等も進んできている部分もありますので、能力開発による 職業キャリアというものを発展、安定させていくという視点もやはり大事であろうとい うこと。3点目は、雇用形態の多様化等も進んでおりますので、その中で労働者のほう が自主的に選択できるという、自主的な意味での多様性の確保というのが大事であろう という観点から、多様性の尊重として、多様な選択を可能とすることによる能力発揮と 競争力確保。こういった3つの視点、基軸を踏まえて今後、雇用労働政策を展開する必 要があるであろうという報告書です。キャッチフレーズとして「上質な市場社会」。こ れまでの市場社会はやや効率化というところに重点を置いておりましたので、それより もう少し上の段、質の高い市場社会を目指していこうという報告書です。  12頁は政府全体の雇用政策の方向性ということで、内閣府の諮問会議で決定している 「日本経済の進路と戦略」、いわゆる昔で言う「経済計画」を受けて現在作っているも の、今年の1月に安倍内閣になって新たに作った進路と戦略です。これは、基本的には 5年ぐらいを視野に置いたものとなっておりますが、毎年度改定するということで、昔 のような経済計画とは若干違っております。その中にもさまざまな成長力の強化とか、 再チャレ等に関する施策が書いてありまして、13頁のほうにありますが、例えば高齢者 について言いますと、「人生80年」時代に対応して高齢者の方々も多様な形で就労でき て、70歳現役が可能な社会を構築するとか、ニート・フリーターの方々の就労の仕組み を構築して、2010年までにフリーターをピークの8割まで減少させるなど、さまざまな 行為に関する記述あるいは目標が書かれています。  15頁は、今年6月に検討された、いわゆる昔で言う「骨太の方針」です。経済財政改 革の基本方針、「美しい国」へのシナリオということで、ここでは成長力の加速プログ ラム、雇用に関する部分でいきますと、底上げ戦略の部分とか労働市場改革というとこ ろが盛り込まれております。以下、17頁は再チャレ支援の概要、18頁は成長力の加速プ ログラムで、労働生産性は過去10年で1.6%ぐらいの平均でしたが、これを5年間で5割 増、2.4%程度にするためのいろいろな施策について、「成長力底上げ戦略」とか「サ ービス革新戦略」「成長可能性拡大戦略」といったさまざまな戦略が打ち出されており ます。  22頁に、成長力加速プログラムの3つの柱がありましたが、その関係をポンチ絵にし たものが載っております。底上げ戦略、サービス革新戦略、成長可能性拡大戦略をする ことによって、5年間で5割増しという施策をやっていこうということです。最後23頁に はワーク・ライフ・バランスに関する各種提言を整理しております。この7月にワーク・ ライフ・バランスに関する推進官民トップ会議というのが、官房長官をトップにして関 係大臣あるいは労使の代表、次の24頁にメンバー表を付けておりますが、関係閣僚のほ か、経団連の会長をはじめとした団体の代表、及び有識者の方々を中心に設置されてお ります。佐藤博樹委員と樋口美雄座長もメンバーになっていらっしゃいます。25頁にこ のワーク・ライフ・バランスに関する現在の政府部内での検討体制、スケジュールのポ ンチ絵を付けておりますが、いま申し上げました官民トップ会議の下に、今後、内閣府 のほうで設置すると聞いておりますが、「働き方を変える、日本を変える」行動指針、 いわゆるワーク・ライフ・バランスに関する作業部会というのが設定されて、そこで内 容について検討されていくということです。右側のほうに赤い枠囲みで入っております が、ワーク・ライフ・バランスに関してはすでに政府部内の検討会等でまとめられてい る部分がありまして、1つは諮問会議の中の(労働市場改革専門調査会)あるいは少子 化という観点から「子どもと家族を応援する日本」重点戦略会議、もう一方で男女共同 参画会議の中では(ワーク・ライフ・バランスに関する専門調査会)、こうした提言が なされております。  26頁以下にそれぞれの3つの検討会への資料の概要を付けております。ちょっと説明 が長くなりましたので詳しい説明は省きますが、26、27頁が諮問会議における労働市場 改革専門調査会での第1次報告、28〜31頁までが「子どもと家族を応援する日本」重点 戦略会議における検討の資料、最後32、33頁が男女共同参画会議のワーク・ライフ・バ ランスに関する専門調査会の報告の検討内容です。以上ちょっと長くなりましたが、こ れらいろいろなデータ、あるいは政府部内の関係の研究会等における報告をもとに、今 日、先ほどご説明しました資料No.4の論点ペーパー等に沿って、皆様のお考えをいただ ければと思います。よろしくお願いします。 ○樋口座長 ありがとうございました。大量の資料を短時間でまとめていただき、あり がとうございました。それではフリーディスカッションに移りたいと思います。ただい まの説明について、ご質問ご意見がありましたら、どなたでも結構ですのでお願いしま す。では、まず諏訪委員から口火を切っていただけますか。 ○諏訪委員 資料No.4の1で「目指すべき姿」を書かれて、2で「あり方」を書いていま す。ということは、この研究会では目指すべき姿を議論するとともに、そこへ向けての 当面の課題を、ここにある(1)(2)(3)のようにしていくということであろうと思うのです。 これを見ると、どれも向かう方向の議論はあるのですが、そこへどうやって到達するか ということの手法、どういうやり方を使うのかという部分の議論を、一体ここではする のかしないのかということ、それから、そういう手法を使ったら実現可能性というか、 その目標にどれぐらい近づくかという一種の評価というか、メジャーリングというか、 その辺はどのようにお考えなのか教えてください。 ○小川雇用政策課長 基本的には、向かう方向についての議論、及び当然その手法につ いてもご議論いただければと思います。今回、回数も時間も限られているので、どこま で突っ込んだことができるかわからないけれども、基本的にはその方向性とともに、手 法についてもご議論いただければと考えています。 ○樋口座長 もう1つご質問として出た、その指標というか達成度をチェックしていく 戦略の中の手法というか、それはどのように。 ○小川雇用政策課長 まず達成度ないしは目標値の設定であると思うのですが、それに ついても、もちろん実際に測れるところも測れないところもあります。どういう指標と いうか、その達成度を測るものを作るかとかありますけれども、そこも含めてご議論い ただければと思います。 ○清家委員 今の諏訪委員のお話と関連して、少し具体的な政策の話をします。1つこ こでも重要なポイントとして、誰もが意欲と能力に応じて働くことのできる社会の実現 に向けた対応というのを挙げておられます。特に高齢者の就業については、先ほど蒔苗 さんのお話の中にもあったように、当面は団塊の世代の人たちが、特にこの計画の2012 年ぐらいに向けて、まず60歳定年を迎え、最終的に65歳になっていくわけです。この人 たちを改正高齢法の趣旨に則って、少なくとも65歳までしっかりと能力を活用してもら うようにすることが大切だと思います。  その際に、2012年までにやるかどうかは別として、今のところはその手段として、65 歳までの雇用確保措置を講ずることを雇い主にお願いして、それは定年の延長でもいい し、あるいは継続雇用制度を作るということでもよくて、継続雇用制度も原則は希望者 全員なのですが、労使合意のもとに基準を設けてもよいとなっています。  最終的に、2013年には基礎年金部分の支給開始年齢が65歳に引上げられますので、そ の辺りを目途に、変えたばかりですぐにまた新しい議論というのはよくないかもしれま せんけれども、この高齢者の能力を活用するという方法として、例えば定年の引上げや そういうシミュレーションを、そうなった場合に労働供給あるいは労働需要がどうなる かをやってみるとか、そういうことが必要なのではないかなと思います。  もう1つは、先ほど再チャレンジの中にもあったように、65歳までは基本的に現役で 仕事をするスキームを作ることに加え、それ以降少し多様な形になるかもしれないけれ ども、70歳ぐらいまで、これもやはり働く人、仕事能力のある人の能力を活用できる仕 組みを作っていくことが求められていますので、そこの何らかのシミュレーションをや ってみるのがいいのではないかと思います。それについては、ここは別に法律の改正を 議論するところではないので、法律の内容についてはそれほど細かく議論することはな いかと思いますが、例えば改正高齢法がこういうような形に変わると、これは労働供給 側、労働需要側もそうですけれども、どのように人々のビヘイビアが変わっていくかと か。あるいはその再チャレンジ政策の中で、70歳までの就業を促進するということにつ いて、具体的にどういう施策を作るかというのは、またこれからの議論の部分になると 思います。その辺についても、何らかの法制度の改正を仮定して、シミュレーションを やってみることもいいのではないかと思います。  この改正高齢法とか再チャレンジ政策と同時に、この間の人口推計の変更とか環境の 変化を受けて、高齢者化対策大綱の改定が行われようとしています。2002年の大綱を新 たに変えようとしていますので、政策大綱と整合的な政策のあり方とか、逆に言うとそ ういう政策大綱見直しに対して、基本的な情報を提供するという種類のシミュレーショ ンなど、そういうものが必要なのではないかと思います。  もう1つは、団塊世代のところ、あるいは今の計画の2012年ぐらいまでのところとい うのは、そういう意味ではやることは決まっていると思うのです。実はその後、つまり 団塊以降のところです。団塊世代までは縦断調査などを見ても、就労意欲も非常に高い し、団塊の世代の人たちは、高度成長期に就職して、非常に高い技能や仕事能力を蓄積 されていますので、この人たちの意欲や能力を活用するというのは、そんなに簡単では ありませんが比較的可能性としてはあると思うのです。  問題はその後も高い就労意欲をどういうふうに維持するかです。そこで先ほど言った ような定年制度の見直しとか、ここの範疇からはずれるかもしれませんが、在職老齢年 金なども含めた年金制度の見直しの議論といった話も、当然出てくるだろうと思います。  それからもう1つ重要なのが、労働需要側のビヘイビアにいちばん影響するのは、高 齢者の労働力としてのクオリティですから、その意味では能力開発というのが決定的に なります。特に超長期的に見れば、今のニートやフリーターの人たちが、中年期高齢期 になってきたときに、その人たちの能力を活用するという将来の話をする場合、実は今 からの能力開発が非常に重要な論点になってきます。そういう意味では、団塊以降の話 としては、能力開発が非常に重要な政策変数になってくると思うのです。これはなかな かシミュレーションするのは難しいかもしれませんが、一定の前提を置いたシミュレー ションをする。  もう1つついでに言いますと、高齢者の雇用について日本は国際的に見ると非常に高 い水準にありますが、女性の高齢者の就労率はそれほど高くありません。高齢期の女性 の就労率を高めるために、いろいろな論者が言っているのですが、若壮年期からの女性 の就労率を高めていくことが、同時に重要なわけです。そういう視点の、高齢期になっ てからの就労の促進とか、能力の活用といったことを考えるためにも、それ以前のとこ ろからの能力開発あるいは女性の就労促進が重要であるという視点を打ち出すことが、 必要ではないかと思います。 ○小川雇用政策課長 非常に幅広いご意見を伺いましたけれども、たとえば定年延長の 効果や法制度の改正を織り込んだシミュレーションなど、高齢者の今後の就業率の推計 におけるシミュレーションについては、たぶん第3回でいろいろとお出しすると思いま す。そのとき、たとえば定年年齢を引き上げた場合なども織り込んで、シミュレーショ ンをお出ししようと思っていますので、よろしくお願いします。  それから在職老齢年金、要するに社会保障制度が当然高齢者の就業行動に大きな影響 を与えることは、間違いないわけです。それについては前回の研究会でも少し触れたと 思いますが、今回もそういう問題意識について考えながら、提言の中に盛り込んでいこ うと考えています。  女性の高齢者の問題ですけれども、清家委員がおっしゃったように若年層中年層の就 業率が低い、つまりM字の底が低いから結局高齢になっても働かない場合がありますの で、それについては当然M字の底を引き上げていく観点から、次回ワーク・ライフ・バ ランス関係を議論していただくときに、まとめて議論いただければと考えています。  高齢者の能力開発とか、中年層から高齢期に備えて能力開発をしていく問題について も、恐らく4回目か5回目の各論の中で議論していただければと思います。 ○佐藤委員 2つあります。1つは2の(3)の「少子化対策にも資する働き方の見直しに向 けた対応」のところです。ワーク・ライフ・バランスは、次回以降議論するということ なのですが、これは働き方の見直しと書いてありますから、企業に取り組んでいただく ということですね。そのことの前に付いている「少子化対策にも資する」ということが 気になるのです。国や自治体が少子化対策に取り組むというのは、すごくよくわかるの ですが、では企業が少子化対策に取り組む必要があるのかどうか。  企業内における少子化対策と書いてあるのですが、企業の視点で見ると、企業がやる ことは少子化対策ではなくて、私は両立支援だろうと思っています。少子化対策と両立 支援は事実上違います。基本的に両立支援は、子育て期も仕事を続けたい人の継続就業 を支援するものです。要するに、子育てだけをしたい人を支援するわけではない。そう いう人には極端にいうと辞めてもらっていいのです。  企業がやるべきなのは、少子化対策ではなく両立支援です。女性の就業というのを、 辞めて子育てしやすくすることを企業が支援するのではなく、子育て期も辞めないで続 けることを支援するわけですから、私は両立支援だと思います。結果として、そのこと が子育て支援にもなる。  それともう1つは、少子化対策というと子育て支援になってしまうので、子育て支援 では企業内での取組みが進みません。社員は子育て期の人だけではないわけです。企業 が両立支援として進めることが、結果として少子化対策に結び付く子育て支援、子育て しながら働き続ける仕組みができるのではないかという気がします。その意味で「少子 化対策にも資する」との表現は問題かと思います。そこを両立支援、ワーク・ライフ・ バランスというものを前面に出したほうが、企業に取り組んでいただくのにはよいので はないかと思います。  特に女性が妊娠・出産で、育児休業取得の前に辞めてしまっているわけです。続ける ということが大事で、辞めて子育てしてもらうというわけではないので、そこを少し考 えたほうがいいというのが1つです。  もう1つは「誰もが意欲と能力」というところにも関わるかもしれませんが、資料で すとこの10年ぐらい非正社員化の動向というものがすごく大きくて、厚生労働省の政策 としても、そこをどうするかに取り組んできたわけです。1つは正社員化ということで すが、正社員化のみでいいかどうかを考えたほうがいいのではないか。  私は働く人々が能力や意欲を活かせて、安定したキャリアを形成できる仕組みを作る ことは大賛成なのですけれども、イコール正社員化となってしまうのはどうかと思うの です。正社員化と言いながら、他方で政策として均等処遇とか均衡処遇と言っている。 パート労働法の改正ができたけれども、パートであっても処遇が均等であれば正社員に ならなくてもいいわけです。能力開発の機会があれば。派遣でもそうです。  正社員化は実はマイナーな話であって、大事なのは能力が活かせる働き方か、処遇の 均衡が実現できているか、キャリアは安定しているかといったことであり、他方で、正 社員になっても能力開発の機会のない人はたくさんいるわけです。正社員でもキャリア 形成の機会のない人もたくさんいるわけで、平均的に見れば、正社員と非正社員の能力 開発機会は、違いがあるのですが、分布を見ると実は重なっているわけです。正社員の 3〜4割は能力開発機会がない。他方、パートや非正規のほうが、能力開発機会が高いと いう人がたくさんいるわけです。  どういう働き方をする社会を作るかというと、私は正社員化というのはやめたらいい と思います。多様な働き方と言っているのですから、多様な働き方でもキャリア形成の 安定化なり能力開発機会の提供なり、均等処遇ができればいいわけです。その辺を議論 していただければというのが、2つ目です。 ○小川雇用政策課長 まず2の(3)の「少子化対策にも資する」ですが、事務局の気持ち としては佐藤委員がおっしゃったように、両立支援をすればそれが回り回って少子化対 策にも資する、というつもりで、少子化対策に資するという書き方をしたわけですが、 心としては両立支援をやっていくということですので、よろしくお願いします。  それから正規、非正規というか、非正規社員をどうするかはすごく悩ましい問題で、 事務局としても議論をしてなかなか結論が出ないところでもあるのですが、結局佐藤委 員がおっしゃるように、たぶん正社員化だけしろという話ではないのだろうと思います。 一方、資料18頁を見ると、非正規社員の場合、勤続をいくら積んでも賃金が上がってい かない現状がありますが、これをどうするのか。  もちろん、いちばん望ましいのは、多様な働き方をしながら均衡公正な処遇を受ける ことが望ましい社会で、必ずしも正社員ピンポイントに限ることではないと思うのです が、それをどうやって担保できるかについて、これをご議論いただければと思います。 ○鶴委員 2点ばかり申し上げたいと思います。1点目は先ほどお話が出たように、どう いう形で政策対応をやっていくかということで、たぶんお話にあったように割と強制的 な形で法制度を変えるとか整備する話と、もう1つはもっと労使の自治というか分権化 した仕組みをもっと活用する。そういうところで法律は決まっても、ヨーロッパのよう にオプトアウトのようなものを、うまく活用していく考え方があると思うのです。  あまり細かい話はともかくとして、それぞれの分野によって違うのでしょうけれども、 どういう方向性で考えるのかということが重要になるのだと思います。なぜそういうこ とを言うかというと、労働時間などの問題を考えるときに、一部の正規のところで非常 に長 時間労働が問題になっている。これは非常に大きな問題で、取り組まなければいけない 問題だと思うのですが、90年代からずっと続いている、十把ひとからげ的に労働時間の 目標を決めて削減していくというのは、数値目標設定みたいなことでいいのだろうかと いう感じを持っています。  OECDなども、フレキシビリティということで労働時間の問題を捉えてきているのです。 数値目標となると、先ほど申し上げた十把ひとからげ的な強制的な対応、フレキシビリ ティとかワーク・ライフ・バランスとなると、もう少しそれぞれの企業とそれぞれのと ころで違うやり方があってもいいのではないか。そういうものをどうするか。また法制 の体系の中でも何か組み立て方があると思うのですが、そこが関係してきます。  2点目としては、この2の1,2,3は全部非常に重要な課題ですし、これまでのいろ いろな研究会とか諮問会議で、何が問題でどういうことをやらなければいけないのかと いう議論は、相当出尽くしている。その中で私のような素人が見ると、一つひとつのい ろいろな問題がどう連関して、もっと根源的なところに潜んでいる労働問題というもの はないのか、上滑りな議論になっているのではないかという個人的な印象を持っていま す。  1つ私が思うのは、佐藤委員の議論にもありましたけれども、正社員化ということで はないのかもしれないということです。私もそういう部分があって、1つは長期的なコ ミットメントというところが今は非常に薄くて、よく金融の世界ではショートターミズ ムという経営者の短視眼的思考と言われるのですけれども、労使ともに非常にコミット メントが弱くなるとか、非常に短期的な見方になっていて、そこにいろいろな問題が出 てきている印象を受けています。それをどうロングタームなコミットメントに持ってい くのか。  これは昔の終身雇用とか年功賃金ということではないのだと思うのです。新たな形で そういうことをやるということで、職業能力の向上とか意欲や能力、それからワーク・ ライフ・バランスが、全部つながっていると思うのです。将来予測可能性みたいなとこ ろがあってこそ、全部の問題が解決していく。だからそういう本源的なことが、一体何 なのかということも、これだけ議論が相当いろいろ出てきているので、もう一度考え直 してもいいのではないかと思っています。 ○小川雇用政策課長 まず前段の政策対応をどう考えるかということで、おっしゃると おり強制的に法制度で縛るものと、労使との一企業内での話し合いで決めていくことと、 たぶん両方あるのだろうと思います。基本的にこの研究会は労使がいるわけではなく、 有識者の先生方での研究会ですから、一定の方向性をみんなに示して後は基本的に労使 で考えていただくことと思いますが、当然法律につながっていくこともあるでしょうし、 1に「姿」というのがありますから、「姿」を提示してそれを基にして労使で考えてい ただいて、こういう「姿」がこれではまずいねということであれば考えていただく。我 々としても、説得ないしは働きかけることがあるのかなと思います。  まさに根源的な問題というか、そういうことは何かということですが、さらに長期的 なコミットメントが薄れている。要するに、やや短期的になっているのではないかとい うご指摘があるわけで、ある意味では1990年代前半ぐらいだったら日本の経済システム は長期勤続を前提として企業内労働者を中心として、またその資本市場においても間接 金融優位で、特にクォータリーレポートを気にしない。要するに、アメリカとの対比に おいて日本の経営というのは長期的視野に立った経営ができたということを言われてき たわけですが、それが最近は若干変わってきていて、むしろ当時ある意味で批判的に見 られていたアメリカ型に近くなってきて、まさにクォータリーレポートに気を遣いなが ら短期の利益極大化に走りすぎているのではないかという批判もあるわけです。そうい ったものは、どう考えていくか。元に戻して間接金融に融資しても、それはそれでまた 難しいわけです。あとは我々としては、おおもととしては労働省の話ですから、長期的 なコミットメントを考え、自分が会社に10年いると思えば、若しくは従業員が10年いる と思えば一生懸命企業内でも能力開発投資をするとか、自分もそのために頑張るという こともあるかもしれませんが、それがわからなければ、明日辞めるかもしれない社員に 対して能力開発投資をする義務はないということもありますから、どうやって長期的雇 用というか、どの範囲で長期的雇用を考えていくかでかなり根源的な問題かもしれませ んので、それはまさにご議論をいただければと考えています。 ○樋口座長 鶴委員のいまの問題提起で、強制的な法制度でやるべきか、それともそれ ぞれ個別の労使の工夫なり努力によってというのは、テーマによって、対象によってか なり違ってきて、そこのところが逆にいままでは混乱してしまっている。例えば最低限 の生活権に関するところは労使の自治ではなくて、法整備もしっかりやらなければいけ ないところがある。それ以上については労使に任せるとか、そこのところの議論があま りなされてこなかったのかなという印象ですが、いかがですか。 ○鶴委員 いま私もRietiの中で少しそういう問題を勉強しているところですが、 本当におっしゃるように傾向としては、何から何まで、わりとこれまで法制度で一律的 にみんな当てはめようと。そのガイドラインでやっても、なかなかうまくいかないので、 なんとかみんなそれに従ってもらうように強制的に、というのがあらゆる所に来ている のです。それがワーク・ライフ・バランスとか、いろいろな雇用の多様化みたいなもの が出てきたときに、非常に通用しなくなっているなと。  もう1つは、これまでいろいろな政策決定プロセスでも労使それぞれの代表の方々が いろいろ議論するけれども、雇用や企業も多様化している中で、代表というのはいった い何なのかということすらも、だんだん非常に難しくなってきているような大きな変化 がいろいろあると思います。そうしたときに、いま樋口座長がおっしゃったように最低 限の安全とか労働基準法の中でも、いちばん根幹の部分のところはビシッときちんとし て、それは最低限守ってもらいますと。それ以上、企業によっていろいろ工夫ができる ようなところというのは、ある程度うまく任せていけるような、それを促進させるよう な全体的な法体系のあり方とか、それぞれの労働法でもみんなややバラバラ、連関がど うなっているのかなと。素人が見てもそういう感じもありますので、そういうことを少 し考える必要性がもしかしたらあるかもしれないなと。少し大きな話ではありますが。 ○樋口座長 最低賃金を個別労使で決められたのでは困るわけで、社会的なところも必 要だろうし。 ○鶴委員 だから、その最低限のところの話を私は。 ○白木委員 これは問題意識の問題かと思いますが、日本のこれからの雇用政策を考え る場合、1990年代に進んだことも少し考える必要があるのではないかと思います。1990 年代はどちらかといいますと、労働の需給バランスが崩れる中で、経営側の立場が非常 に強くなったというのが進展したのではないかと思います。言い換えますと、内部労働 市場がとても強くなって強固になって、正社員とそれ以外の差があまりにも開きすぎた ことが起こったのではないか。その中で起こったことはどういうことかといいますと、 正社員の囲い込みがあって、労働者もそれに合わせなければいけないことから、いろい ろな問題が起こったと思います。例えば長時間労働の問題。長時間労働があるが故に若 者は疲弊して能力開発も進まないとか、いろいろな問題が起こりまして、外国人労働者 も良い人がなかなか日本の企業に来てくれないことも、この問題に非常に関連している のではないかという問題意識を持っています。したがって、これから需給バランスが改 善する中で、企業の雇用システムがどうあるべきかということを踏まえて、それに対す る対策でこういう方に誘導したほうがいいのではないかとか、そういう議論を一般的に はすべきかなという感じがしています。以上です。 ○樋口座長 何かありますか。 ○小杉委員 いろいろお伺いしまして、3つお話したいと思います。  1つは佐藤委員がおっしゃっていたことにすごく関係するのですが、将来2030年とい うことを考えれば公正であることが大事だし、能力開発がきちんとできることが大事だ し、そういう仕組みを考えたときに正社員にありきではないだろうと。確かに現状の問 題を考えたときには格差が非常に大きい中で、いまいるこの人たちをどうするかという ときには正社員に行くときにも政策があるだろうから、短期的な部分と2030年の目指す べき姿というのは分けて議論したほうがいいのではないかと思います。  分けて議論したときの話ですが、そこではワーク・ライフ・バランスがあるべき姿と して、いちばん大きく出てくると思います。ここでのワーク・ライフ・バランスは女性 の就業し続けること、みたいなところにかなり特化されていますが、そういうことでは ないだろう。人生の長いそれぞれのキャリアの中で、生活と就業をどうマッチさせてい くか。それを各個人がきちんと納得できるような形で、構成できる社会を築かなければ ならないのではないか。そこで、いまの働くこととそれ以外の日常生活みたいなところ のワーク・ライフ・バランスだけではなくて、そこの能力開発、何かものを身に付けて いきたい、ということをしっかり議論の中に入れておくべきだと思います。ワーク・ラ イフ・バランスの1つの観点は能力形成である。これをどうするか。そういう幅広い中 で、ワーク・ライフ・バランスは考えるべきだし、キャリアという長い視点の中で考え るべきだと思います。ですから、人生のある時期においてはワーク・ライフ・バランス がある部分は偏って、ある部分は小さくなる。そういう設計で考えていくべきだと思い ます。  そこで出てくるのがここで若者に特化させていただきますが、若い時期のワーク・ラ イフ・バランスは何かというと、学ぶことと、新しい生活を始めることと、働くことの バランスで、この中の学ぶことの中には就業してからの企業内での訓練という話だけで はなくて、学校教育段階からが入る。既に高校によっては、高校に入るとすぐにアルバ イトを始める子が圧倒的多数だという学校がいくつもあって、これは教育社会学で最近 時々言われていることの1つですが、実はパートタイム生徒という実態がある。フルタ イムの学生のように言われていますが、現実には週20時間ぐらい労働している高校生が たくさんいるわけです。その辺から、学校教育の段階での就労と能力形成をきちんと議 論していくべきではないかと思います。  さらに、ある程度の年齢が経った段階での生涯職業能力開発、文科省の言葉では生涯 学習ですが、文科省の生涯学習審議会の中でも、いま職業能力形成というのは生涯学習 の中では重要だということを改めて言われている段階になっています。そこで、能力形 成をする機会をどう設計していくかというときに、いま視野に入っている部分の、公共 や企業内だけではなくて、学校教育をそこで、能力開発の機会としてどう重視させてい くか。特に、日本の高等教育の、非常に偏った若者しか相手にしない高等教育ではない 高等教育のあり方というのも視野に入れなければならないのではないか。その辺は少し 文科省のほうに動きがありますので、そこまで視野に入れて高等教育がどうあるべきか ということ。それがいま再チャレンジ政策でいろいろ動きがありますが、その辺まで視 野に入れた議論が必要ではないかと思います。以上です。 ○小川雇用政策課長 まずワーク・ライフ・バランスについて、別に我々は女性の就業 とか、それに絞って考えているわけではなくて、まさに仕事、生活の調和、若しくは「 ライフ」は「生命」かもしれませんが、きちんと健康を守りながら働くようにする。そ ういうことも含めて幅広く考えていますし、例えば今後労働力人口が減っていく中で、 仕事のやり方を変えていって、いままでよりもっと効率的にやらないと回っていかない だろう。そういうことも含めて、ワーク・ライフ・バランスによって生産性も高まるだ ろうということも含めて考えなければならないだろうとは考えています。  まさに能力開発については、論点のメモで(2)の最初のポツにありますように職業生涯 の各時点に応じた職業能力向上への取組みですから、もちろん若い人間を含めてどうや って職業能力を開発していくか。生涯にわたって職業能力を開発するのにどうやってい くかも含めてご議論をいただければと考えています。学校教育でどこまでこれができる かはわかりませんが、それも1つの論点ではあろうかなと思っています。 ○黒澤委員 いまの小杉委員のおっしゃったことと全く同じことを申し上げようと思っ ていたので、同じようなことになってしまうかもしれませんが。この「あり方」につい て(1)から(3)に分けてくださったのは議論の叩き台ということだと思いますが、これの根 底に流れている共通項としてはワーク・ライフ・バランスというものがあると捉えてい いのではないか。だからこそ次回、その次の議題も少子化対策のマルについてとお書き になったのではないかと考えるわけですが、そういう形で今後も議論していってはどう かと思います。そして、まさにワーク・ライフ・バランスの中で重要なのが能力開発で あって、少子化というか子育てと仕事の両立だけではなくて、生涯にわたる能力開発を 若いとき、30代の働き盛りのとき、そして40代、50代においてもそれぞれに仕事をし ながら、企業だけではなく、自分のエネルギーと時間とお金を割いて自己啓発をすると いう選択が、もっと自由になされるような状況を目指すことは非常に重要だと思います。  もう1つはワーク・ライフ・バランスの中でも、フルタイムで働いている人たちにお いてのワーク・ライフ・バランスだけではなくて、生涯を通じてバランスをいかにとる かについても考えなければならないと思います。例えば子育てなり介護なり能力開発を したいときは、パートというか、短時間の労働、つまり働き方を少し変えて働き続けた り休業したり、しかしながらそれが終わればまた戻ってフルタイムなりの働き方に変え ることができる。米国では、特に育児をしている人たちが短期間だけパートの仕事に移 行することをブリッジ・ジョブと言いますが、それはパートとフルの行き来が可能であ るという意味において非常に意義がある仕事の呼び方だと思いますが、そういった観点 からのワーク・ライフ・バランスということも非常に重要な観点なので、是非議論して いただければと思います。  日本人はとにかく、小さいころは勉強しすぎで現役のときは働きすぎで、高齢になる と暇すぎといわれますが、そういう状況を平準化するというのは生産性の向上という意 味においても大変重要なことであると思います。いま小杉委員がおっしゃいましたが、 特に若年の人が仕事に忙殺されて企業内での訓練というものができていない。業務をこ なす職業能力を高める意味では企業内訓練が最も効率的な学習の仕方かもしれませんが、 自分たちが学んだことを高等教育なりで棚卸しして、論理的に考え直し、ブラッシュア ップしていくことは先進諸国ではなされていることですから、そういう意味での、ライ フサイクルを通したワークライフバランスという観点も非常に重要だと思います。以上 です。 ○小川雇用政策課長 黒澤委員がおっしゃった、まさにブリッジ・ジョブですね。子育 て期間中だけは一旦短時間正社員的なものに切り替えて、終わったら復職するというの はアメリカではよくある話なので私も聞いてはいますが、なぜ日本ではいないかという 話になってくると、賃金制度の問題とか昇進管理の問題とか、企業内の人事管理がなか なかうまくそれにはまらない。若しくは仕事のやり方で、そういうことがうまくいかな い、ということだろうなと思うわけです。おそらく、そういうことも含めて考えること がワーク・ライフ・バランスなのかなと思いますので、それについてもいろいろとご意 見を賜ればと思います。 ○阿部委員 私がお話したいのは大きく2つあります。その1つはこれから今後の就業構 造の予測というのが出てくると思いますが、私を含めて先生方には是非その就業構造の 数字だけを見て、今後の雇用政策を議論しないでいただきたいということです。なぜか というと、今年の経済財政白書で丁寧に分析されていましたが、いまの日本のGDP、GNP を支えているものというのが主に海外の輸出部門で競争している企業であって、内需関 連企業というのはそれほど成長率は高くないです。にもかかわらずこの図でもわかりま すが、資本金10億円以上の労働分配率はそんなに高くないです。では、なぜ高くないか というと、たぶん想像するに海外で稼いだ金を海外にもう1回戻しているのが、いまの 日本企業だと思います。そこで何をやっているかというと、結局いままで国内で散々ノ ウハウを蓄積してきたものを海外に出している。それは白木委員がよくご存じで、海外 の現地子会社と関連会社にどんどんノウハウを提供していって、そこで稼いだから戻し て、また海外に投資するというのをいまの日本企業はやりつつある。ただ、もう一方で 内需関連企業はそういうことをやる。そうやって考えると、就業構造は製造業はまだま だ多いですが、その中身は相当に違ってきていて、それを見逃してしまうと違う雇用政 策になっていく、というふうになってしまうのではないかと思います。ですから、働く 職業の質というか仕事の質というのが、いまどう変わってきているかというのをもう少 し丁寧に見ていきたいなと思っていますし、先生方にもそうしていただければなと思い ます。私がJILPTの会議にも出ていまして、皆さんへの情報提供役にもなりますが、就 業構造の予測といったところでは数字をそう見ていただければと思います。  それに関連してくると、知識社会型での働く人々がこれから増えていきますし、その 人たちが牽引力になっていくだろうと思います。そのときに諏訪委員が座長だった研究 会で「上質な市場社会」の実現ということで「公正の確保」「安定の確保」「多様性の 尊重」と、言葉自体の目新しさはあまりないと言うと怒られるかもしれませんが、以前 からこういったものがあったわけです。ただ、その中身を考えないといけないと思いま して、「安定の確保」というのは従来のままで、企業に固定化するという意味での安定 なのかというのは、これから知識社会の中では変わってくるのではないかと思いますし、 「公正」であっても「多様性」であってもそうだろうと思います。私は諏訪委員の研究 会に別にいちゃもんを付けようとは思いませんが、ここでは少しそういった観点からも、 同じ言葉であっても実は内実が違うというところをはっきり出していったほうがいいの ではないかと思います。怒られるかもしれませんが、以上です。 ○諏訪委員 これは事務局でも、まさにそういう意味での議論をしています。当面は雇 用の安定も重視しなければいけない。しかし、長い目で見ると職業の安定こそが重要だ と。変化する社会の中で、職業キャリアが安定的に発展していくような意味での安定と いう意味です。 ○樋口座長 事務局から何かありますか。 ○小川雇用政策課長 なかなか難しいご指摘だと思いますが、基本的に阿部委員のほう から知識社会型の働き、知識人というか、そちらのほうも大事だということもあったわ けですが、一方で日本のGDPを支えている輸出産業を支えているある意味では製造業分 野であることも事実なわけで、その製造業分野がしっかりしていかなければ1億2,000万 人が食っていけないだろうというときに、では製造業分野をどうするかということも当 然考えなければならないでしょう。海外との関係において例えば中国などに投資した場 合において、要するに競争力の根源部分を本当に投資しているのか。例えば液晶でも、 前工程を作るところは日本でやって、後工程の加工部門は上海とか何かでやっていると いう例も聞いたことがありますし、そういうふうに国際間の分業をしているのではない かという気もしますので、そこはどこまでこの研究会で突っ込めるかわかりませんが、 そこは念頭に置いてやらないといけないかなという気がします。 ○阿部委員 製造業の部分が、もちろん大きな役割を担っているのは否定しません。た だ、いまは昔の製造業ではなくなってきているというところが重要で、たぶん製造業の 現業部門でも相当の知識を生産していて、それを輸出しているというのがいまの日本の 製造業の姿ではないかと思います。そこをどう考えるかというところがポイントではな いかと思っています。 ○森永委員 皆さんと違った視点のお話をします。私は経済企画庁にいた時代から、完 全雇用の達成というのが政府の最大の責務だとずっと教わってきたのですが、どうも完 全失業率が下がるとか、有効求人倍率が上がるということでは捉えきれなくなってきて いるのだと思います。例えば、政府は2002年1月が景気の底だと言って、それ以来景気 が拡大してきたと。完全失業率は5.5%から4%を切るところまでになったし、有効求人 倍率は0.5から1倍を大きく超えるところまで来た。  ところが、ここの5年間の景気拡大の中で雇用情勢が良くなったかというと、全く良 くなっていない。むしろ悪化しているのだと思います。それは何かというと、例えば名 目GDPで捉えると2002年1〜3月期、底だった時期から今年の1〜3月期までの丸5年間を取 ると、名目GDPは22兆円増えているのです。だから我々は、成長の成果を22兆円も手に したのです。ところが、普通だったら労働分配率を7割として15兆円ぐらいは労働者の ところに行かないといけないのに、この5年間で雇用者報酬がどう動いたかというと5兆 円も減っているのです。景気が拡大しているのに労働者の生活がどんどん悪くなってき ている。しかも、5兆円が減った中で5兆円家計が増税されていて、社会保険料で4兆円 弱増えている。14兆円も手取りが減っているのです。だから、所得が減っているわけで すから内需関連が増えるはずがないのです。  なぜこんなことが起こってしまったかというと、雇用者報酬が減った最大の要因は非 正社員化がどんどん進んだからだと思います。特に20代前半に集中的に現れていますが、 非正社員が3倍に増えています。この人たちの年収がどのぐらいあるかというと、本当 に100万円代前半です。こういう人たちが劇的に増えている中、これを放っておくと何 が起こるかというと、例えば日本経団連のアンケートで、非正社員でずっとやってきた 人を正社員で採りますかと聞くと、98%の企業が採らないと言っています。実は雇用も ないし、小杉委員がやった調査の中で、就業構造基本調査の2002年のを再集計して20代 後半男性の年収別結婚率を出すと、年収1,000万円ある人は72%が結婚しています。と ころが、フリーター層の100万円代前半の年収の人は15.3%で、6人に1人も結婚してい ないのです。  私は、少子化対策のための仕事と子育ての両立支援というのは、はっきり言うと意味 がないと思っています。なぜかというと、原因は生涯完結出生率が2.0で落ちていない わけです。落ちているのは結婚率です。今回蒔苗さんが用意してくれた未婚率は正確で はなくて、未婚の人と離死別と国勢調査では、答えたくないという人が大量にいます。 これを合わせると30代前半で49.4%、要するにほぼ半数の人が非婚なのです。これは1 年に1%ずつ上がっていますから、いまは日本の30代前半の52%ぐらいが非婚なのです。 要するに、結婚できなかったら日本は子供を生まないわけですから、どうしたら結婚で きるようになるのかというのを本当に考えないと、社会が壊れてしまうのです。  恐ろしいことが起きていて、私は個人的な趣味でアキバ系のシングルの人たちとたく さん付き合っていますが、完全に絶望なのです。本当にひどいことが起こっていて、人 間の女性と付き合うことに対して諦めてしまっているのです。その先に進むと、人間の 女性に対して全然脳波が反応しなくなるのです。この状態を放置したら、私は日本は確 実につぶれると思います。どうしたらいいかというと、この10年間のアメリカ型金融資 本主義の追求というのが大きく間違えていたのだと思います。ずっと安定して生活でき る。将来に、安心して小さな幸せが欲しいというぐらいしかみんな思っていないのです。 その中でA社が何をやったかというと、コスト削減のためにどんどん非正社員に低賃金 で働かせて、人件費単価を下げて利益を増やしてきた。だから、この5年間で企業のほ うは所得を劇的に増やしたのです。その結果何が起こったかというと、景気拡大のこの 5年間で企業が払った配当金の額が3倍になっています。法人企業統計で見ると、大企業 の役員の報酬は倍になっているわけです。要するに、自分たち勝ち組だけ大儲けをして 大金持ちになって、その皺寄せを全部働く人に持っていった。これは賃金を低下させた だけではなくて、もう1つは労働者から生き甲斐を奪ったという大きな犯罪をしたのだ と思います。  議事録が公開されるので名前だけ伏せておきますが、ある新興IT企業のいま裁判にな っている人ですが、その人と話をしたのです。私は、彼にこう言ったのです。「いきな り採った人間を3カ月後に査定入りして給料を下げたり、パソコンから事務用品まで全 部労働者の自腹にしたり、夜中までコキ使ったり、そんなひどい労働条件を放置してい たら、あなたの会社は労働者がやめて将来駄目になっちゃいますよ」と言ったら、彼は 「いいんだよ、やめたきゃやめれば。やめたら、またマーケットから採ってくればいい んだから」。これが、いまの企業家の悪い思想なのです。要するに、労働者をパーツだ と思っているのです。そのパーツ、道具だと思っているというのは、いままで人間だっ たのです。Aさん、Bさんだったのを単なる道具だと思って、その思想背景には新古典派 の経済学の生産関数があって、彼らは労働力と資本があって、それを組み合わせれば付 加価値が生まれると思い込んでいるとんでもない間違いをしているのです。そんなこと はないのです。付加価値は、現場が毎日毎日一生懸命に努力して、日々の改善をして付 加価値を作り上げるわけです。どうもいままで日本の雇用政策の中で、それを支援する ようなことをこの10年間はやってきてしまったのではないかなと。厚生労働省に反旗を 翻すと何されるかよくわかりませんが、私は製造業の派遣労働を解禁したのは間違いだ ったと思う。今回のパート労働法も例えば同一の仕事に同一賃金は当たり前の話なのに、 どういう人を対象にしますかというとパートタイマーなのに雇用の期限の定めがなくて 転勤にも応じて、普通の労働者と全く同じような昇進も全部受け入れる。そんなパート がいるわけはないのです。だから普通に書けばいい。同じ仕事だったら同じ賃金。長時 間労働が問題だというのだったら、監督署に言って経営者なり人事部長をバンバン逮捕 すればいいわけです。そういうことをきちんとやれば、私はまともな国というかまとも な労働市場になっていくと思います。とにかく真面目に一生懸命に働いた人が飯が食え ないし結婚もできないという労働市場を作ってしまったというのは大きな問題で、これ をいますぐ改めないと日本は壊れてしまうと思います。 ○樋口座長 事務局としては答えにくいことだろうと思います。何かあれば。 ○小川雇用政策課長 まさに答えにくいです。森永委員がおっしゃったような変化とい うのはここ10年間ぐらいで起こってきたわけですが、一方で結局のところバブル崩壊後 の不景気の中で同時に国際競争が高まる中、強まっていく中で、まさに日本の国際競争 を維持していくためにある程度コストカットをしてきたという企業側の論理もある。ま た一方でそれがなければ日本で製造できないから海外へ行くしかないよねということを 言いつつ、そういったことを進めていったというまさに経営判断の問題だとは思います。 それをけしからんとか、けしからないというのは価値判断になってしまうので、それは 置いておきますが、それが続いたときに森永委員がおっしゃったように日本国全体がお かしくなってしまっては一方で困るわけでしょうけれども、そこら辺はどうやって折り 合いをつけていくのかということではないかと。若干私見も入ってきますが、そこをど う考えていくのかなということで、おっしゃるようにスパッと言えれば気持がいいので しょうけれども、そうもいかない。経営側との折合いをつけつつ、企業側の軸と全体の 整合性を考えながら最適な方法を模索していくのかなと考えていますし、こういったこ とも研究会でご議論いただければと考えています。 ○蒔苗雇用対策課長補佐 その辺は事務局としても同じ思いで、今日の論点ペーパーの 1の「日本経済が持続可能な成長を続けていくための目指すべき雇用労働社会」はまさに そういう意味で、先ほどお話に出ましたように、やめたら採ってくればいいというので すが、全体で見ると採る人がいなくなるわけです。そこは短期的に良いことであっても、 長期的に見ると持続可能かどうかは大事なことですので、そういったことを踏まえてや りたいということで、今回二極化という資料を出したのはそういう趣旨です。まさに、 そういう点について2にありますように、「当面4〜5年程度」何をやるべきかというの は中期ビジョンですので、必要な対応についていろいろご意見をいただければと思いま す。 ○樋口座長 これでファーストラウンドは終わったので、セカンドラウンドはどなたで も。 ○清家委員 いま森永委員がとても良いことをおっしゃって、これもシミュレーション というか分析の視点で重要だなと思うのは、いま雇用の規制の緩和と非正規雇用の増加 についてのお話が出てきたわけです。個人的には、派遣労働ですと厚生労働省の需給制 度部会でやっていまして、私はそこの部会長をやっていますが、数年前は樋口座長も部 会長をやっていましたので、樋口座長と私も戦犯みたいな思いがあります。ただ、例え ば派遣労働などが増えた背景というのはもちろん規制の緩和もあるけれども、森永委員 もご承知のとおりIT化の進展や国際競争のあり方がドラスティックに変わってしまった という部分もある。いままではどこまでが規制緩和によって、そういうものが進んだの か、あるいは、どこまでがテクノロジーの技術変化とか国際市場環境の変化によって進 んだのかというのは、あまり識別されて議論されていなかったと思います。そういう意 味では是非良い機会なので。それは厚生労働省等が進めている政策の評価というところ にもつながるわけですから。おそらく規制緩和の影響もあるし、それ以外のものもある ので、どこまでが政策変更によって非正規労働者が増えたかとか、どこまでがそれ以外 の要因によって増えてきているのかというのを識別できるように。テクニカルには完全 に識別するのはなかなか難しいけれども、ある程度識別できるような分析なりシミュレ ーションは是非やったほうがいいと思います。これは派遣労働に限らず、いま議論にな っているそのほかの問題についても言えることなのではないかと思います。 ○佐藤委員 私は、森永委員ほど、日本の企業の人材活用がひどくなっているとは否定 的に見ていない。コスト削減要因だけでパート社員や有期契約社員が増えたかというと そう単純ではなくて、コストも1つの要因だけれども、いちばん大きい要因は企業の市 場環境や技術構造についての予測可能性の低下だろうと思います。つまり、不確実性が 増大した結果、長期雇用は大事で長期に育成しなければいけない人材というのもわかっ ているけれども、長期雇用や長期の人材育成がしにくくなっている。先ほど正社員化の 必要性を指摘されましたけれども、正社員で全部採れということでは、採ったら解雇し なければいけない、減らさなければいけないことに企業が直面するわけです。真面目に 社員の雇用を考えれば、長期に育成する人を絞らざるを得ない。つまり、社員の雇用に 関して真面目に考える企業でも正社員を絞り込むことを取らざるを得ない市場環境にあ るのではないか。そういう意味では派遣だ、非正規だというのを法律で何かやったから 増えたというよりは、企業の人材活用、つまり正社員をある程度絞り込んで、必要な都 度とか不確実性リスク対応を組み込むために非正規を活用するという人材活用の変化の 要因が大きいと思います。ですから、多くは景気が回復してもコスト要因がなくなって も、不確実性増大要因は変わらないですから、そういう意味では企業がその都度、雇用 リスクを削減しながら人材活用することはなくならないと思います。ですから、私は雇 用政策上、派遣や有期の活用が持続するという前提とした上で、この人たちのキャリア 形成の安定とか能力開発機会の確保を考えなければいけないのではないか。 ○森永委員 ただ、もし佐藤委員のおっしゃるとおりだとしたら、パートタイマーや派 遣の中に正社員並みの給料をもらう人というのはもっとたくさん出てこないとおかしい と思いますが、そうなっていないのです。佐藤委員はわりと質の良い企業を見ていらっ しゃると思いますが、世の中には悪い企業がたくさんあって、いちばんとんでもない企 業になると外国人を持ってきて技能実習だといってずっと魚を捌かせて、日本人と給料 を比べると何倍も違うということをやっている企業もたくさんあるわけで、労働者の同 一労働・同一賃金という権利がいろいろな場面で守られていないのだと思います。 ○諏訪委員 そこは全く異議がなくて、そのとおりだろうと思います。それから1990年 代の議論のときには、現実が非常に厳しい状況の中で緊急避難的に対応しなければいけ ない部分がたくさんあって、それが定常状態になったら是正していかなければいけない のに、その是正が遅れていたということは否めません。もっと正確に言うと緊急避難で 装置を作るときも、それが定常状態になったらどうするのだとか、それが持つマイナス 点をどうするのだということを併せて政策的に打ち出せればよかったけれども、それは 現実の問題として非常に難しかったのです。その点については、問題点があればどんど ん直せばいいので、神様ではないから一遍に完全なことができないのが人間ですから、 ジグザグで世の中は進むので、いまの時点で適切に対応するようにしていかなければい けない。しかし、と同時に角を矯めて牛を殺したり、洗い水と一緒に赤ん坊を流してし まうような議論というのはなかなか難しい。森永委員がそんなことを言っているわけで は全然ないわけで、問題はそこをいまの時点でどうしていくかというのはここ4、5年の 問題だし、しかしそれが同時に20年以上先の2030年ぐらいを考えたときに、そのときの 社会をあまりに変なふうにさせないようにどうするかということは小杉委員のおっしゃ るとおりで、別の視点で考えなければいけない。そういう一種の複眼が難しいのかなと 思います。  先ほど清家委員がおっしゃられた、できるだけ何の要因で出てきているかの一種の企 業の度合いを見るのは非常に重要だと思いますが、もう1つは今回はどこまでやれるか は別ですが、1990年代の政策をもし振り返る必要があるとしたら、ああいう政策を仮に 執らなかったらどうなっただろうかというシミュレーションも大事だろうと思います。 例えば失業率がどれぐらい上がっただろうかなどのいろいろな問題です。そこがなかな か難しいところでして、これも万人が説得するような後追い検証はできませんが、そう いう意味で我々はまだその尾を引いているけれども、1つの時期が仮に一応越えて次の 段階に入ったとしたら、前の時期は何だったのかというのは正確に姿を捉えておかない と、同じようなことがまた次のときに起きる可能性もあるわけですから、失敗の轍をま た踏まないようにするためにも重要なのではないかなと個人的には思っています。 ○鶴委員 いまのお話の関連で、政策効果かコスト削減か不確実性か。いま諏訪委員に おまとめいただいたように、コスト削減や不確実性はある意味では緊急的な状況で、そ こはいまは変わってきているので、私が先ほど申し上げたコミットメントとかキャリア の将来予測可能性とかがもっとはっきりするような姿が出てこないと、森永委員がおっ しゃったように絶望という状況が変わっていかないのだろうなというのを非常に感じま す。政策といろいろな環境というのも非常に絡んでいて、そういう緊急的な環境の中で 政策ではそちらに押し進めよう、失業率があまり上がったら困るよねというのも当時の 政策の人たちの中であったわけです。ただ私は振り返ってみると、非正規の規制緩和と いうのは相当進めすぎた部分もあるのかなという感じも持っていまして、それはヨーロ ッパも1990年代に同じようなことをやっています。いちばん典型例はスペインですが、 相当やりすぎてしまって4割近くまで非正規的な部分が増えて、そこでいろいろな問題 が出てきて、ヒューマンキャピタルの部分での問題、ターンオーバーが非常に大きいと かで、制度を少し直す。彼らは正規の雇用の保護が非常にきついので、そこはいじれな いから、という日本と似た状況があったわけです。そういう意味で諸外国の例を見ると、 日本の評価をどうするのかというところも少し見えてくる部分があって、資料で「33」 とか「34」、3分の1ですよね。どれぐらいが果たして適正、均衡的なのか。均衡的とい うのは非常に難しいと思います。状況が変わったあれですが、先ほどの佐藤委員のお話 のようにある程度確保しなければいけないのか。そこが、どこぐらいまでだったらマク ロ経済的に非常にいいのか、それとも行き過ぎなのかとか、そういうことも少し考えな いといけないのかなという印象を持っています。 ○諏訪委員 もう1点いいですか。私は若者の雇用の問題は、我々が1980年代までの固 定観念を持ちながら若者政策に関して中途半端に対応したことが大きかったろうと思い ます。というのは、日本は1980年代まで若者の失業問題というのはほとんど問題になら ない国で、若者は学校から企業へ非常にスムーズに動いている典型的な国の1つだった わけです。したがって、若者問題に関してはほとんど雇用政策の対応策をやってこなか った。現場に任せてきてしまった。  ところが、それが小杉委員がよくご指摘するとおりで、いろいろな問題点が出ている のに対応が緊急避難的な対応で、とりわけ、いま組織内にいる人たちはなんとか雇用を 安定させるという形で対策が取られ、若者らに皺寄せが行ってしまったわけです。その 皺寄せに対して適切に早く対応しなければいけなかったのに、なかなかできなかった。 日本で、ここまで若者の雇用問題が深刻になるのは、おそらく1990年代前半ごろにはま だほとんどの人が認識していなかったのではないかと思います。ごく一部の先見的な方 を除けば、大体が1990年代の後半になって気が付いて議論をし始めている。しかし、そ れへの対応策、政策手段その他が現実的に限られていて、気付いても適切な対応ができ なかったということは大きかったと反省されます。そう考えると、同じような失敗がお そらくほかの部分でも今後とも繰り返す可能性があるので、最初に方向性だけではなく て政策の手段とか、現実の効果みたいなものを方向性や目標に向けてどれぐらい成果を 上げたか、あるいは、それが鶴委員も先ほどおっしゃっていたように、全体として見た 場合には本当に部分最適ではなくて、全体でうまく最適になったかどうかというのをど う見ていくかというのが、これからの雇用政策を考える上では欠かせないのではないか と思っています。 ○森永委員 ついでなので本筋ではないのですが、そのときに若年の雇用が危いという のをJILPTが最初に警告を発したのです。政府は全然わからなかった状況で。いまの日 本のいちばんおかしいところは、そういうまともな研究機関の予算をどんどんカットし たり、こんなのは要らないとか、そういうことを言うところがおかしなところだと思い ます。そうですよね。 ○小杉委員 ありがとうございます。 ○樋口座長 ほかにいかがですか。清家委員何かありますか。 ○清家委員 森永委員のおっしゃるとおりだと思います。 ○樋口座長 よろしいでしょうか。私に代わって諏訪委員がまとめてくださったので、 改めてまとめることもないかと思います。今日いろいろお話を聞かせていただいて、い くつか気になる、私の印象に残ったところについてお話をしたいと思います。  1つは、今後の雇用政策を考えるというのがこの雇用政策研究会の目標ですが、それ を評価していく上では過去も振り返らなければ駄目だということが言われたのではない かと思います。ある意味では、どういった日本社会を築いていくかという目標値という のは、わりと皆さん合意できるところがあるのではないかと思うわけですが、それに至 るプロセス、具体的政策として何をやっていくのかというところも是非議論してほしい ということが皆さんから出されてきたのかなと思います。その際は、是非数値等のチェ ックも必要ですし、あるいは量的な面だけではなく質の面について考えていかなければ いけないだろうというお話だったのではないかと思います。その政策は有効性を担保し ていく上でいろいろなやり方があるということですが、法制度によって強制的にやって いくのか、それとも、個別労使における自主性といったものを尊重してやっていくのか。 これはいろいろなテーマによっても分かれてくるところだろうと思いますが、そこのと ころについても議論をしたいというご意見があったのではないかと思います。  今日聞いて、いくつかキーワードがあったかなと思います。それは何かというと、1 つは個人の持つ時間というのは有限であるという視点に立って、キャリアの選択や自分 たちの生活の選択といったものをどう考えていくのか。もう1つは多様化、二極化とい う言葉も出てきたわけで、それは働き方の多様化、二極化という問題もありますし、企 業の多様化、二極化といったところも大企業、中小企業での議論というのもありますし、 さらには最近ですと地域の問題というようなところで、今後雇用政策の進め方について もだいぶ変えて、地域というところがキーワードになってくる。そういった視点から考 えていく必要があるのだろうということだったと思います。  雇用政策とは、いったい何だろうかという原点に戻ってきます。これは非常に難しい 話ですが、従来はこの雇用政策研究会が扱っているテーマというのは、労働省が管轄し ている政策といったものを雇用政策と言い換えましょうというようなところが、かなり あったのではないかと。ところが最近の社会の変化を考えていくと、そういった狭い守 備範囲ではなかなか社会を変えられないとか、働き方を変えられないというようなとこ ろも起こってきている。社会保障の問題や税の問題もあるでしょうし、能力開発、文科 省との人材の育成の問題であるというところもあるわけです。これは、あくまでも安定 局が主宰する会議であるわけで、直接的な守備範囲は狭い意味での雇用政策かもしれま せんが、ほかへも発信しているというようなことが必要になってくるのではないかと思 いました。  しばしば従来の経済計画と雇用計画ということで考えると、まず経済計画が作られて、 その下で雇用政策をどうするのだというところで雇用計画が作られてきたわけです。い まの世の中はどちらかというと逆に働き方からフィードバックして、全体の経済に与え る影響、社会に与える影響というものが非常に強くなってきているわけですから、そう いったものを認識しながら進めていくようなことが必要かなと。だから、非常に大きな 議論も必要になっていると思いますので、そういったところも含めてこの研究会で進め ていくことができればと思います。ただ、何しろ回数が限定されていますので、事務局 にもいろいろご苦労をいただくかと思いますが、先生方にもご協力のほどをよろしくお 願いします。  今回配付されました資料No.4は雇用政策研究会で議論していただく論点。これは案で すので、今日出ました委員からの考え方、ご意見を踏まえましてもう一度修正し、織り 込むべきところは織り込んでいただくということで、事務局に検討していただきたいと 思います。  時間もそろそろ来ていますので、次回の日程等について事務局からお願いします。 ○蒔苗雇用対策課長補佐 次回の第2回は先ほどもご説明しましたように、9月10日(月) 10時からで、場所は5階の共用第7会議室です。論点としては、ワーク・ライフ・バラン スを先行してということでお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○樋口座長 何かありますか。是非、諏訪委員が中心になってまとめた雇用戦略のこと がありますので、そのプロセスを議論していく上では雇用戦略という話になってくると 思いますので、それを事務局でもお願いします。  本日は、以上で終了します。どうもありがとうございました。 (照会窓口)    厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係    TEL:03-5253-1111(内線5732)