07/08/10 第24回中央最低賃金審議会議事録 第24回中央最低賃金審議会議事録 1 日 時  平成19年8月10日(金)10:00〜10:30 2 場 所  中央労働委員会講堂 3 出席者   【委員】 公益委員  今野会長、石岡委員、鬼丸委員、勝委員、中窪委員、              藤村委員   労働者委員 石黒委員、勝尾委員、加藤委員、田村委員、中野委員、              吉越委員        使用者委員 池田委員、岡田委員、川本委員、原川委員   【事務局】厚生労働省 青木労働基準局長、氏兼勤労者生活部長、              前田勤労者生活課長、植松主任中央賃金指導官、              吉田副主任中央賃金指導官、吉田課長補佐 4 議事次第  (1)中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について  (2)平成19年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申) 5 議事内容 ○今野会長  ただ今から、第24回中央最低賃金審議会を開催いたします。本日は、横山委員と吉 岡委員が御欠席です。また、勝委員は、そのうちいらっしゃると思います。  本日の議題は、平成19年度地域別最低賃金改定の目安についてです。平成19年度 の地域別最低賃金額改定の目安については、去る7月13日に厚生労働大臣から当審議 会に対して諮問が行われましたが、その後、目安に関する小委員会において熱心に御 検討いただきました。その結果、先日の小委員会において報告が取りまとめられまし たので、小委員長を務めました私から報告させていただきたいと思います。  本年度の目安審議については、去る7月13日の総会において諮問があり、目安に関 する小委員会に付託されました。その後、小委員会においては、7月20日、7月25日、 7月31日、8月7日に会議を開催し、委員の皆様に熱心に御議論いただきました。特 に例年と異なり、第3回と第4回の2回にわたって、小委員会報告を取りまとめるべ く、公益委員と労使各側委員との個別打合せを数回にわたり開催し、明け方まで議論 していただきましたが、労使の意見の一致を得ることができませんでした。しかしな がら、結果として、公益委員見解を中央最低賃金審議会に示すよう本審議会に報告す ることとされ、お手元に配付してあります報告を取りまとめた次第です。それでは、 小委員会の報告を事務局に朗読していただきたいと思います。 ○吉田副主任中央賃金指導官  読み上げます。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。平成19年8月7日。  1、はじめに。平成19年度の地域別最低賃金額改定の目安については、中央最低賃 金審議会に対して「現下の最低賃金を取り巻く状況を踏まえ、成長力底上げ戦略推進 円卓会議における賃金の底上げに関する議論にも配意した」調査審議を求める諮問が なされた中で、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等につい てそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽したところである。  2、労働者側見解。労働者側委員は、成長力底上げ戦略推進円卓会議における合意に 「従来の考え方の単なる延長線上ではなく、雇用に及ぼす影響や中小零細企業の状況 にも留意しながら、パートタイム労働者や派遣労働者を含めた働く人の「賃金の底上 げ」を図る趣旨に沿った引上げが図られるよう十分審議されるように要望する」とあ ることを重く受け止め、セーフティネットとしての機能が発揮できるようにしなけれ ばならないと主張した。  高卒初任給の水準あるいは一般労働者の平均賃金の50%の水準は、時間給換算で900 円を上回るものであり、また、連合が行っているマーケットバスケット方式による最 低生計費の水準に見合う時間給は法定労働時間働いた場合で850円となるところであ り、中期的な引上げを展望して、今年度については、平均的にみて50円程度の引上げ を図るべきと主張した。  また、影響率が年々低下していることも、問題視してきたところであり、現在の1.5% 程度ではほとんど社会的存在価値がないと指摘するとともに、生計費、各種賃金指標 の現行水準、環境の変化等の動向を踏まえ、中央最低賃金審議会に対する諮問の内容、 成長力底上げ戦略推進円卓会議の合意内容の趣旨を踏まえ、働く人の賃金の底上げを 図るとともに、最低賃金水準の抜本的な引上げを行うよう最後まで強く主張した。  3、使用者側見解。使用者側委員は、日本経済は回復基調にあるが、地域間、産業間、 さらに同じ業種においても企業間で景況観、業況に大きなばらつきが見られると主張 した。日銀の「地域経済報告」等でみても経済が拡大しているのは一部の地域に限ら れ、有効求人倍率や失業率に地域間で相違がみられると指摘した。  また、全体として利益率が上昇している中で資本金1億円以上の企業とそれ以外と の間での利益率の差が拡大しており、原油を始めとした原材料価格が上昇する一方で、 仕入れ価格を販売価格へ転嫁できないことから、中小零細企業の経営は厳しい状況に あること、さらには倒産件数が増加していることを指摘した。  さらに、国際経済情勢、為替や株価の動向、グローバル化、ICT化の中で、中小企業 においては、先行きに不透明感・不安感が強いと主張した。  加えて、賃金改定状況調査の第1表等において、賃金改定を凍結し、又は引下げを 実施した事業所を合計すると半数を超えている状況にあり、こうした企業の支払能力 の実態に配慮することが必要であると主張した。  以上の点を踏まえれば、今年度の目安審議については、中央最低賃金審議会に対す る異例の諮問の内容を踏まえることはやむを得ないとしても、中小零細企業の厳しい 実態や地域間の多様性などを認識した上で、企業の存続や雇用に及ぼす影響を十分考 慮することが必要である。したがって、今年度の目安は賃金改定状況調査の第4表の 数値をベースに議論すべきであり、大幅な引上げは適当でないと最後まで強く主張し た。  4、意見の不一致。本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめる べく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定める に至らなかった。  5、公益委員見解及びこれに対する労使の意見。今年度の目安審議については、公益 委員としては、これまでの中央最低賃金審議会における審議を尊重しつつ、「現下の最 低賃金を取り巻く状況を踏まえ、成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上 げに関する議論にも配意した」調査審議が求められたことに特段の配慮をした上で、 上記の労使の小規模企業の経営実態等への配慮、及びそこに働く労働者の労働条件の 改善の必要性に関する意見等にも表れた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員によ る見解を下記1のとおり取りまとめた。  今年度の目安額の算定については、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料とする。 (仮に、同調査の賃金上昇率0.7%により各ランク同率の引上げを行うとすれば、Aラ ンク5円、Bランク5円、Cランク5円、Dランク4円となる。)とともに、地域別最低 賃金と実際の賃金分布との関係にも配慮しつつ、様々な要素を総合的に勘案したもの である。なお、Cランク及びDランクについては、同一ランク内においても、地域によ って経済実態に相違があることを考慮し、本年度の目安審議における特殊事情も踏ま え、目安額をゾーンで示すこととしたものである。  本小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、下記1 を公益委員見解として同審議会に示すよう総会に報告することとした。  また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、 併せて総会に報告することとした。  なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容 となっているとし、不満の意を表明した。また、労働者側の一部及び使用者側の一部 は、下記1の公益委員見解を地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することは適 当でないとの意見を表明した。  さらに、本小委員会としては、政府が労働生産性の向上に向け、「中小企業生産性向 上プロジェクト」の施策の具体的な実施に全力をあげて取り組むことを要望する。  記、平成19年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。  1、平成19年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額と する。平成19年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。ランク。都道府県。金額。 A、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、19円。B、栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三 重、滋賀、京都、兵庫、広島、14円。C、北海道、宮城、福島、茨城、群馬、新潟、石 川、福井、山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡、9〜10円。D、青森、 岩手、秋田、山形、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、 鹿児島、沖縄、6〜7円。  2(1)、目安小委員会は本年の目安審議に当たっては、平成16年12月15日に中央 最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する 全員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が 確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基にするとともに、「現下の最低賃金を取 り巻く状況を踏まえ、成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する 議論にも配意した」調査審議が求められたことに特段の配慮をした上で、諸般の事情 を総合的に勘案して審議してきたところである。  目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議 に際し、上記資料を活用されることを希望する。  (2)、目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低 賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。以上です。 ○今野会長  ありがとうございました。今回は、「現下の最低賃金を取り巻く状況を踏まえ、成長 力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論にも配慮した」調査審 議が求められた中で、小規模企業の経営実態やそこに働く労働者の労働条件の改善の 必要性をどのように考えるか、といった点などで、労使の主張が相反するという中で の目安審議となりました。しかし、関係者の皆様の御努力により、ただ今報告いたし ました小委員会報告を取りまとめることができましたので、関係者の皆様には、私か ら改めて御礼を申し上げたいと思います。  なお、最後に付け加えたい点がございます。報告にもありましたが、小委員会とし ては、政府が労働生産性の向上に向け、「中小企業生産性向上プロジェクト」の施策の 具体的な実施に全力をあげて取り組むということを要望するところでありますので、 本審議会における答申においても、この趣旨を盛り込んでいただければと考えており ます。  以上で私からの報告は終わらせていただきます。この報告及び説明について何かご ざいましたらお願いいたします。 ○池田委員  まず、今回の審議に当たりまして、労働側の要求に私どもの苦しい事情を斟酌して いただいたことを感謝いたします。目安委員会でも申し上げましたが、私は商工会議 所から出ている委員ですが、加重平均で14円という大幅な引上げを示した公益委員見 解には反対であることを再度申し上げたいと思います。デフレが解消されていない現 状、厚生労働省の賃金改定状況調査(全国平均5円以上)から判断しましても、大幅 な引上げを行う根拠はないわけでありまして、今回、急激な大幅な引上げを行うこと により、労使が一体となって生き残りのための必死の努力を続けている中小零細企業 の経営に大きな影響が及び、結果として倒産や解雇につながることを大変危惧してい ることを申し述べたいと思います。  今回の最低賃金の大幅な引上げや今後の最低賃金法の改正などにより、中小企業は、 これまで以上に厳しい状況に直面することになります。そのために中小企業の自助努 力だけではなく、これを支援する政策がぜひとも必要であります。このような観点か ら、先ほど委員長がおっしゃった目安に関する小委員会報告に、「本小委員会としては、 政府が労働生産性向上に向け、「中小企業生産性プロジェクト」の施策の具体的な実施 に全力をあげて取り組むことを要望する」と伝えたことは大変重要でありまして、感 謝申し上げます。  なお、この点を大臣に入れていただくに当たりましては、最低賃金の大幅引上げの 影響が特に大きいのは規模の小さい企業であるため、小規模企業を含めた中小企業全 体の労働生産性の向上を目指すことを明確にしていただきたいと思います。また、本 年秋には地域別最低賃金が改定されることから、中小企業生産性向上プロジェクトに 早急に取り組んでいただきたいため、それが分かるような表現にしていただくようお 願いいたしたいと思います。 ○今野会長  他にございますか。 ○原川委員  今、池田委員がおっしゃった要望の件ですが、私ども全国中央会も、これをぜひ答 申文に入れていただきまして、厚生労働大臣の方にお願いしていただきたいと思いま す。 ○今野会長  他にございますか。よろしいですか。池田委員と原川委員から今要望が出ましたの で、その要望の趣旨を答申に盛り込むこととしたいと思いますが、いかがですか。よ ろしいですか。                 (異議なし) ○今野会長  他にないようですので、当審議会としての答申を取りまとめたいと思います。よろ しいですか。それでは、事務局から答申案を配付してください。 (答申案配付) ○今野会長  皆さん、回りましたか、よろしいですか。それでは、事務局から朗読してください。 ○吉田副主任中央賃金指導官  では、朗読いたします。  平成19年8月10日、厚生労働大臣柳澤伯夫殿、中央最低賃金審議会会長今野浩一 郎、平成19年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)(案)。平成19年7月 13日に諮問のあった平成19年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり 答申する。  記。1、平成19年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見 の一致をみるに至らなかった。  2、地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解 (別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃 金審議会に提示するものとする。  3、地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議 会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発 揮されることを強く期待するものである。  4、政府において、小規模企業を含めた中小企業全体の労働生産性の向上に向け、「中 小企業生産性向上プロジェクト」の施策の具体的な実施に全力をあげて早急に取り組 むことを要望する。  なお、別紙1、別紙2につきましては、先ほど読み上げたものと同じですので、朗読 を省略させていただきます。 ○今野会長  ありがとうございました。この答申案について何かございますか。よろしいですか。 この答申案のとおり答申を取りまとめたいと思いますが、いかがでしょうか。よろし いですか。                 (異議なし) ○今野会長  それでは、そのようにさせていただきます。次に、ただいまの答申を青木局長にお 渡ししたいと思います。 (答申文手交) ○今野会長  それでは、青木局長から御挨拶をお願いいたします。 ○青木労働基準局長  平成19年度の地域別最低賃金額改定の目安につきまして、ただ今答申をいただきま して、厚く御礼申し上げます。 今年の目安審議におきましては、大臣からもお願いを申し上げ、諮問をさせていただ きました。成長力底上げ戦略推進円卓会議における議論にも配意した審議をお願いし、 小委員長からの報告にもございましたように、小委員会で4回にわたり検討を重ねて いただきました。しかも、今年は、通常より短い期間で答申をまとめていただきまし た。委員の皆様方のこれまでの間の御協力に改めて感謝申し上げます。今後、この答 申を各都道府県労働局に伝達いたしまして、各地方最低賃金審議会における地域別最 低賃金額の改定審議が円滑に進められるよう対応してまいりたいと思っております。 本日はどうもありがとうございました。 ○今野会長  何かございますか。 ○川本委員  最後に目安小委員会の委員として一言申し上げてもよろしいですか。今、青木局長 からもお話がありましたとおり、例年、この目安審議につきましては、5月に諮問を受 け、6月から7月にかけて審議を詰め、7月の下旬頃に答申という運びになっています が、今回は7月13日に諮問を受け、その中で非常に短期間であったということ、ある いはその中で労使の意見の隔たりも非常に大きかったという中で、2回にわたる徹夜審 議も含めて4回審議をさせていただき、本日を迎えたということです。この間、私ど も日本経団連推薦委員、あるいは全国中央会推薦委員は、公益委員見解の取りまとめ に向け、今回の諮問に即して社会的視点も踏まえつつ、一方で厳しい経済環境にあり ます地域、そしてそこの中小零細企業の存続と雇用への影響も考え、各ランクの目安 額に傾斜を付けていただきたいというようなことを主張させていただいた次第です。 公益委員の御努力により、労使各側、主張は大きく異なりましたが、公益委員見解を 示すことに歩み寄り、労使各側の一部委員から反対がありましたが、公益委員見解が まとまり、本日の答申に至ることができました。改めて、公益委員の御尽力に厚く御 礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。 ○今野会長  他にございますか。 ○加藤委員  今、川本委員から御意見がございましたが、私どもからも、同様に御礼の挨拶をさ せていただきたいと思います。労使の意見の隔たりが大変大きい厳しい審議になった わけですが、4回にわたる目安小委員会の中で目安を取りまとめるべく御努力をいただ きました公益委員の皆様に、労働側としても一言御礼を申し上げておきたいと思いま す。大変ありがとうございました。 ○今野会長  他にございますか。 ○池田委員  今回の審議会は非常に短期間で、かつ、成長力底上げ戦略推進円卓会議の要請で、 今までとは違う異例な形で行われたわけですが、今後の最低賃金の在り方、審議会の 在り方を考えたとき、来年も同じような形になりますと、それほど支払能力のない中 小企業は大変です。今後、十分検討されて、1日も早くもとの審議会の形に戻るように、 審議会委員の1人として要望するものであります。 ○今野会長  他にございますか。よろしいですか。それでは、これで第24回中央最低賃金審議会 を終了いたします。本日の議事録の署名ですが、吉越委員と岡田委員にお願いいたし ます。それでは終わります。ありがとうございました。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)