病院における薬剤師の業務及び人員配置に関する検討会報告書

平成19年8月10日
病院における薬剤師の業務及び人員配置に関する検討会


目  次

1 はじめに

2 病院薬剤師のあるべき業務と役割

(1)医療・薬物治療の安全確保と質の向上のための業務

1)医療の安全確保のための薬歴に基づく処方鑑査の充実

2)患者情報に基づく服薬指導と薬学的ケアの実施(病棟における医薬品関連業務への参画)

3)入院患者の持参薬管理

4)注射剤の処方せんに基づく調剤の実施

5)がん化学療法への参画

6)手術室、集中治療室等における病院薬剤師による医薬品の適正管理

7)高齢者に対する適正な薬物療法への参画

8)精神科領域薬物療法における患者の服薬遵守の向上

9)チーム医療への参画による安全性の確保と質の向上(感染制御チーム、緩和ケアチーム、褥瘡対策チーム、栄養サポートチームへの参画)

10)個々の患者に応じた薬物療法への参画(院内製剤業務の実施と薬物血中濃度の測定・解析による薬物療法の最適化)

11)夜間・休日における病院薬剤師の業務の実施

(2)医療の安全確保のための情報に関する業務

1)医療安全確保のための情報の共有化

2)医薬品の採用に必要な情報の収集と提供

(3)その他取り組むべき業務

1) 教育・研修への積極的な関与

2) その他

3 あるべき業務と役割を踏まえた人員配置のあり方

(1)人員配置に関する実態
(2)業務の多様化・複雑化、薬学教育6年制等による環境の変化
(3)人員配置のあり方

4 おわりに

参 考:実態調査の結果を基にしたグラフ(図1〜11)
別 紙:検討会名簿

1 はじめに

病院における薬剤師(以下「病院薬剤師」という。)の人員配置標準については、長らく調剤数(調剤数80に1人)を基準としてきたが、平成8年に医療審議会において、調剤技術の進歩とともに、服薬指導や薬歴管理等の病棟業務の増大という状況を踏まえ、入院患者数等を考慮した考え方に改めるべきとの指摘がなされ、平成10年11月より入院患者数と外来患者に係る取扱処方せん数(原則として、入院患者の数70に1人、外来患者に係る取扱処方せんの数75に1人)が標準とされた。

平成10年当時の人員配置標準の見直し時には、3年後を目途に見直しを行うこととされ、平成13年に「病院における薬剤師の人員配置基準に関する検討会」が開催されたが、「平成10年に定められた基準を、ただちに変更する必然性は認められない」とされ、今後の薬剤師の需給、業務内容や配置状況、薬剤師養成における臨床教育の充実等の進展を踏まえ、3年後を目途に人員配置標準の検討を開始すべきとされていた。

こうした経緯を受け、平成17年12月にとりまとめられた社会保障審議会医療部会の「医療提供体制に関する意見」において、病院薬剤師の人員配置標準について検討会を設置し、これまでの経緯等を踏まえた具体的検討を行うよう指摘があり、今般、本検討会において、病院薬剤師のあるべき業務と役割を検討し、そのあるべき業務と役割を踏まえた人員配置のあり方について検討を行った。

2 病院薬剤師のあるべき業務と役割

病院薬剤師の業務は、患者に対して適切かつ安全な薬物療法が行えるよう、調剤のみならず、チーム医療に積極的に参画し、病棟における服薬指導等を行うことが必要であり、これらの業務は医療技術の進展等により高度化・多様化している。

一方で、病棟での業務が増えてきていると言われているものの、その業務実態に関する詳細なデータは存在しなかった。

このため、本検討会では、病院薬剤師の業務の実態・配置状況について、まず実態調査を実施し、その結果を踏まえた上で、今後の病院薬剤師のあるべき業務と役割を整理することとした。

あるべき業務については、(1)「医療・薬物治療の安全確保と質の向上のための業務」、(2)「医療の安全確保のための情報に関する業務」、(3)「その他取り組むべき業務」の3点に大きく分類し、それぞれに求める主な業務に関する業務内容、実施状況、あるべき姿等について整理した。

なお、調剤所の医薬品管理、服薬指導、院内処方せんによる調剤等、すべての病院で実施がなされていることが当然である業務に関しては、記載していないが、こうした基本的な業務についても、一層の質の向上が求められる。また、本報告書に記載したそれぞれの業務は、病院の規模やその機能に応じ、当該業務の必要性や重要性等は、当然に異なることに注意が必要である。

(1)医療・薬物治療の安全確保と質の向上のための業務

1)医療の安全確保のための薬歴に基づく処方鑑査の充実

今回の実態調査から薬歴に基づく処方鑑査の実施状況をみると、ハイリスク薬(抗がん薬、免疫抑制薬等)については薬剤師数が多いほど実施割合が高くなっていた(図1)。

処方鑑査は病院薬剤師が行うべき業務であるが、少なくとも、事故発生により患者に重大な影響を及ぼすおそれのあるハイリスク薬が処方されている患者については、過去の副作用発生状況の確認や薬剤名違い等による重大な事故を回避するために、薬歴に基づいた処方鑑査を実施すべきである。

2)患者情報に基づく服薬指導と薬学的ケアの実施(病棟における医薬品関連業務への参画)

今回の実態調査では、薬剤管理指導業務の届出施設の割合は、薬剤師数が2〜4人の施設においても69.9%を占めていた。一方、全病棟又は一部病棟に薬剤師が常駐している施設は12.2%、全病棟に薬剤師が定期的に訪問している施設は43.9%であり、今後更なる実施の推進が求められる。

病棟における患者情報に基づく服薬指導、薬物治療のモニタリング、医薬品管理、医療スタッフ等への情報提供など医薬品に関連する業務に参画するため、各病棟に病院薬剤師が常駐又は定期訪問することは、医療の安全と質の向上の観点から重要である。

3)入院患者の持参薬管理

入院患者の持参薬に関する情報不足による死亡事故も発生しており、持参薬との重複投与、相互作用などを回避する必要がある。また、入院患者が一般用医薬品の服用やいわゆる健康食品を摂取しているケースがあり、これらについても確認が求められる。

今回の実態調査では、全て又は一部の入院患者に対する持参薬管理については、薬剤師数の増加に伴って実施割合が高くなっていた(図2)。

病院薬剤師は、持参薬の確認とそれらに関する情報収集・評価を行い、必要な情報を医師等に提供し、服薬管理することにより、医療事故の防止を図るべきである。

4)注射剤の処方せんに基づく調剤の実施

今回の実態調査によれば、処方せんによる注射剤調剤の実施率は、病床規模や薬剤師1人あたりの入院患者数に関わりなく、ほぼ70%の施設で実施されていた(図3)。

医療事故情報収集等事業の報告書によれば、形状、ラベル、名称や薬効の類似した薬剤や規格の取り違え、投与速度等の指示の受け間違い等の多くのインシデント・アクシデント事例が報告されていることからすれば、病院薬剤師が患者ごとに注射剤の処方情報を把握することにより薬物療法の一層の適正化が図られると考えられ、また、注射剤の取り違え等の防止を図るために、注射剤の処方せんに基づく調剤は、全ての患者について、実施が求められる。

5)がん化学療法への参画

今回の実態調査では、薬剤師が10人以上配置されている病院では、抗がん薬の無菌調製実施率は、がん患者が入院にしている施設の58.2%であったが、2〜4人になると14.1%しか実施されていない状況であった。未実施の理由としては、人手不足と安全キャビネット等の設備の未整備を挙げた施設が多かった。

有効ながん化学療法を安全に行うためには、薬剤師による処方鑑査、抗がん薬による治療計画(レジメン)の登録・管理、適切な支持療法への支援、抗がん薬の無菌調製、さらに患者が安心してがん化学療法が受けられるよう治療内容の説明、副作用対策等がなされるべきであり、病院薬剤師ががん化学療法に積極的にチーム医療の一員として参画し、その専門性を発揮すべきである。

6)手術室、集中治療室等における病院薬剤師による医薬品の適正管理

手術室、集中治療室等では、麻薬、麻酔薬、毒薬等の特別な管理が必要な薬剤が大量に使用され、かつ、緊急対応が求められる環境下で使用されるという特殊性がある。

今回の実態調査からは、薬剤師数が多くなるほど手術室、集中治療室への常駐又は定期訪問、セットによる医薬品管理を行っている割合が多くなっていた(図4、図5)。また、手術室に病院薬剤師が定期的に訪問することのメリットとしては、事故防止が61.9%、適正使用の促進が52.7%、経費節減が30.8%、請求漏れ防止が19.9%の施設で挙げられた。集中治療室に病院薬剤師が定期的に訪問することのメリットとしては、事故防止が56.8%、経費節減が33.5%、請求漏れ防止が20.9%の施設で挙げられた。

今後、手術室や集中治療室等における医薬品の安全な使用と適正な管理に対しては、病院薬剤師が積極的に取り組むべきである。

7)高齢者に対する適正な薬物療法への参画

高齢者は複数の疾患の合併により多剤併用が多くなる。また、腎機能・肝機能の低下などによって薬物の体内動態も変動し、副作用が生じやすく、さらに、視覚・聴覚機能の低下により、服用方法を遵守できない場合もある。

今回の実態調査では、服薬困難な患者に対する適切な剤形選択、嚥下補助剤の選択等の服薬支援の実施状況は薬剤師数が2〜4人では58.9%であるが、10人以上では74.3%となっているなど薬剤師の人数が多いほど実施率が高いことが示された(図6)。

今後高齢化社会を迎えるにあたり、患者の状態等にあわせた最適な薬物療法の実施に、服薬支援業務等により病院薬剤師が積極的にチーム医療の一員として参画し、その専門性を発揮すべきである。

8)精神科領域薬物療法における患者の服薬遵守の向上

今回の実態調査からは、薬剤師が精神科の患者やその家族に対して適切な服薬指導を行うことで、患者が薬物療法の必要性を理解するなど、服薬遵守の向上が期待されることが示された(図7)。

精神科領域の薬物療法では、患者の積極的な参加による服薬遵守の向上が治療上極めて重要であり、患者‐医療従事者間の信頼関係の構築により達成されるものである。病院薬剤師が薬物療法に関する情報を適切に患者やその家族に説明するとともに、医師、看護師等に対しては服薬指導により得られた情報も含め提供し、情報を共有すべきである。

9)チーム医療への参画による安全性の確保と質の向上(感染制御チーム、緩和ケアチーム、褥瘡対策チーム、栄養サポートチーム等への参画)

感染制御チ−ムでは、抗菌薬の使用状況、感染症発生状況等を把握し、適正な抗菌薬の使用を推進するなど、院内感染防止対策に参画すべきである。また適切な消毒薬の使用や管理等の業務にも取り組むべきである。

緩和ケアチームでは、がんや後天性免疫不全症候群の患者に対して、薬剤師は疼痛緩和のための麻薬の施用状況の確認、麻薬に関する正しい知識や管理法の説明も含めた服薬指導、副作用対策等を実施すべきである。

褥瘡対策チームにおいては、褥瘡の病態に合った薬剤の選択と適切な治療材料等について助言を行うなど、早期治癒と発生予防に取り組むべきである。

栄養サポートチームでは、適切な輸液選択などへの支援、嚥下・摂食障害患者への投与方法の検討等の業務に参画すべきである。

今回の実態調査からは、薬剤師の人数が多いほど、それぞれのチームに参画している割合が高いことが分かった(図8)。

病院薬剤師が医薬品の専門家として、これらチームを始めとする病院内の各チームに参画し、質の高い、安全な医療の提供に貢献すべきである。

10)個々の患者に応じた薬物療法への参画(院内製剤業務の実施と薬物血中濃度の測定・解析による薬物療法の最適化)

治療上必要であるが市販されていない場合や、患者の状態等により市販の医薬品では十分な対応ができない場合などにおいては、院内で製剤化されている。このような院内製剤業務は、個々の患者に最適な薬剤を提供し、薬物治療の効果を最大限に引き出すためにも、薬学的知識と技術を持った薬剤師が実施すべきである。

今回の実態調査からは、薬剤師数が多い施設ほど院内製剤業務の実施割合が高いことが示された(図9)。

また、薬物療法の有効性と安全性を担保し、個々の患者の処方へ反映させるために薬物血中濃度の測定と解析による投与設計を行うことは、適正な薬物療法を行う上で有効である。病院薬剤師は、医師の指示の下で実施される薬物血中濃度の測定と解析に関与することにより、最適な薬物療法の実施に、チーム医療の一員として取り組み、その専門性を発揮すべきである。

11)夜間・休日における病院薬剤師の業務の実施

夜間・休日の時間帯に医薬品に関連する医療事故が増加する傾向にあり、夜間・休日においても病院薬剤師が勤務する体制を整備し、医薬品使用の安全確保を図るべきである。

今回の実態調査によれば、薬剤師数が10人以上の施設では65.6%が夜間の宿直体制をとって24時間対応しているのに対し、5〜9人以下の施設では6.4%に落ち込んでおり、24時間対応するには最低でも10人程度の薬剤師が必要であることが示された。

救急指定施設をはじめ、重症度の高い患者の多い施設においては、24時間対応できる体制を整備し、それ以外の病院においても、病院の規模や機能を踏まえた必要性に応じ、オンコール等により、医薬品の使用に関して病院薬剤師が責任をもって夜間・休日に対応できる体制の確保に努めるべきである。

(2)医療の安全確保のための情報に関する業務

1)医療安全確保のための情報の共有化

今回の実態調査によれば、医薬品に関連する医療安全確保のための情報の共有化を図るための医師の回診への同行や、病棟でのカンファレンスへの参加については、薬剤師数が多いほど回診同行やカンファレンスへの参加が多い結果であった(図10)。

医薬品を安全かつ適正に使用するためには、病院薬剤師が製薬企業や厚生労働省等からの医薬品に関する情報を収集し、また、服薬指導や回診同行、カンファレンス等で得た患者情報を解析・評価し、医師、歯科医師、看護師等に提供し、情報を共有化することで、適切な薬物療法の実施にチーム医療の一員として参画すべきである。

2)医薬品の採用に必要な情報の収集と提供

新規医薬品の採用にあたっては、国内外の治験成績、承認審査報告書及び添付文書等の情報を収集・評価し、さらに既存の治療法との費用と効果の比較等の薬剤経済学的な検討も行い、それらを基に薬事委員会での資料を作成するなど、病院薬剤師が適正な医薬品の採用に関与すべきである。

今回の実態調査では、薬剤師が10人以上いる施設では、新規医薬品の採用時に薬剤師が評価・作成した資料に基づき薬事委員会等で審議している施設が86.3%と高いことが示された(図11)。

また、後発医薬品の採用に関しても、品質、安定供給及び情報提供等の観点を重視した採用基準を薬剤師が中心となって作成することが重要となる。後発医薬品の生物学的同等性試験結果等の品質確保に関する情報提供や市販後の使用成績調査等の検証については、国や製薬企業が当然実施すべきことであるが、病院薬剤師もこうした情報について説明し、医療関係者や患者が抱えている後発医薬品への不安感等の払拭に、貢献していくことが求められる。

(3)その他取り組むべき業務

1)教育・研修への積極的な関与

今回の実態調査では、薬剤師数が10人以上いる施設では88.0%が実習生を受け入れているが、2〜4人の施設では15.3%という結果であり、その環境が十分に整備されていない現状が推察される。

人材育成の観点から薬学教育6年制での長期実務実習の受け入れ、また、がん薬物療法、感染症薬物療法等に精通した薬剤師養成等の卒後教育の充実への取り組みなども病院薬剤師が積極的に取り組むべき社会的使命であり、今後更なる努力が求められる。

また、病院薬剤師は医薬品の適正な管理・取り扱いに関する研修の企画立案など、院内の職員が常に医薬品に関連する最新情報を共有するための教育研修の実施に取り組む必要がある。

2)その他

この他にも病院薬剤師に取り組みが求められる業務として、小児や妊産婦に対する最適な薬物療法への参画、治験コーディネーターを始めとする治験への参画、地域の医療機関・薬局・訪問看護ステーション等との連携による退院後の在宅療養への関与などが挙げられる。

3 あるべき業務と役割を踏まえた人員配置のあり方

(1)人員配置に関する実態

病院において勤務している薬剤師数については、平成17年の病院報告によれば、常勤換算で40,119.6人であり、100床当たり2.5人である。また、医療法第25条に基づく立入検査の結果では、平成17年度の適合率は90.7%であり、前回の検討会当時である平成13年の85.4%より改善は見られているが、北海道・東北地域では86.2%、近畿地域では96.3%であるなどの地域格差が見受けられる。

一方で、今回の実態調査において、現在の薬剤師数に関する認識の項目で、「業務を遂行するのに十分な数が確保されている」と回答した施設は10.9%のみであり、病院の病床規模とは反比例する傾向が見られた。また、業務を遂行するのに十分な人数には、あと1〜3人不足が35.5%、あと4〜10人不足が32.4%と回答しており、多くの施設では薬剤師が不足しているとの認識であった。

さらに、平成17年度の採用の困難性に関する調査項目では、常勤薬剤師の採用について、採用困難が19.7%、非常に困難が34.1%との回答であり、容易に採用できたとの回答があった施設は9.6%のみであった。

このように、医療法の人員配置標準については、9割以上の病院で満たしているものの、地域格差が見られ、また、業務の遂行に十分な人員に達していないとの認識の病院が多いものの、採用については困難であるとの実態が明らかとなった。

(2)業務の多様化・複雑化、薬学教育6年制等による環境の変化

今回の実態調査において、各業務について、小規模な病院や薬剤師数の少ない病院でも実施している病院がある一方で、大規模な病院や薬剤師数の多い病院でも実施していない病院があるなど、業務の内容は多様化・複雑化しており、その病院の規模や機能にもより、求められる業務は異なるものである。

さらに、オーダーリングシステム・電子カルテ等のIT化の推進による業務の効率化(今回の実態調査によれば、オーダーリングシステムの入院外来処方への導入率は31.8%)、医薬分業の進展(平成17年度の分業率は54.1%)、平成18年度から始まった薬学教育6年制への移行等、病院薬剤師を取りまく環境が変化してきていることも人員配置を考える上で考慮すべきである。

(3)人員配置のあり方

病院薬剤師の役割の重要性が高まってきていることについては、本検討会においても、改めて認識されたところではあるが、今回の実態調査の結果と本報告書で提言した病院薬剤師のあるべき業務と役割を踏まえた人員配置のあり方を検討すると、

ア)現行の人員配置標準を満たしている病院は多いが、地域格差が見受けられること、

イ)勤務している薬剤師数は不足しているとの認識が多いが、一方で採用が困難な状況があること、

ウ)業務の内容は多様化・複雑化しており、その病院の規模や機能により求められる業務は異なること、

エ)薬学教育6年制が平成18年よりスタートしたばかりであり、薬科大学・薬学部の新設あるいは薬事法の改正等の影響も踏まえた、今後の薬剤師の需給動向を見定めるべきであること、

等といったことを考慮すると、現行の人員配置標準をただちに見直す必要性までは認められないものの、当該病院の規模や機能に応じて、個々の病院で必要な医薬品関連の業務が実施されるのに十分な薬剤師数を確保していくことが重要であると考える。

4 おわりに

今回提言したあるべき業務を始めとする業務の実施状況、薬学教育6年制の状況、日進月歩である医薬品に関連する技術・IT化の進展等を注視し、それらの状況の変化に応じて、必要が生じた時期に、改めてあるべき業務とそれらを踏まえた人員配置のあり方について検討するべきである。

また、これら業務を実施することにより、患者の医療安全と薬物療法の質の向上が期待される病院薬剤師の業務については、診療報酬上の適切な評価がなされるべきとの指摘もあった。

最後に、チーム医療への参画や定期的な服薬管理等の病棟業務を通じて、患者からも病院薬剤師の業務が理解され、患者の信頼の下に「顔の見える薬剤師」と呼ばれるよう努力を求める。


(参 考)


(別 紙)

病院における薬剤師の業務及び人員配置に関する検討会
名  簿

(敬称略、五十音順)

(◎…座長、○…座長代理)

  伊賀 立二      社団法人日本病院薬剤師会会長
  内山 文博   社団法人日本歯科医師会専務理事(平成19年3月まで)
  大井 洋   東京都福祉保健局医療政策部医療安全課長
  倉田 雅子   納得して医療を選ぶ会
齋藤 康   千葉大学大学院医学研究院教授
  鈴木 満   社団法人日本医師会常任理事
  手束 昭胤   社団法人全日本病院協会副会長
  豊田 堯   社団法人日本医療法人協会会長
  廣瀬 千也子   社団法人日本看護協会常任理事
  堀内 龍也   群馬大学大学院医学系研究科教授、医学部附属病院薬剤部長
三村 優美子   青山学院大学経営学部教授
  村上 恵一   社団法人日本歯科医師会専務理事(平成19年6月から)
  村上 信乃   社団法人日本病院会副会長
  山崎 學   社団法人日本精神科病院協会副会長
  山本 信夫   社団法人日本薬剤師会副会長

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