07/07/30 第12回厚生科学審議会感染症分科会結核部会議事録 第12回 厚生科学審議会感染症分科会結核部会 議事録 日 時:平成19年7月30日(月)13:57〜15:58 場 所:三田共用会議所3階 B〜E会議室 1.開 会 2.議 事  (1)議 題    1)潜在性結核感染症に対する公費負担について    2)結核に係る入退院基準等について  (2)報 告    1)結核の接触者健診手引きについて    2)平成12年度全国結核緊急実態調査時における薬剤感受性試験結果について    3)結核研究所あり方検討委員会報告について  (3)その他 3.閉 会 ○三宅補佐 では、定刻前でございますが、今日出席していただく委員の方は全員そろ っていただきましたので、始めさせていただいてよろしいでしょうか。 では、これより、「第12回厚生科学審議会感染症分科会結核部会」を開催いたします。 委員の皆様方には御多忙中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございま す。 私は、健康局結核感染症課の三宅でございます。しばらくの間、再度進行役を務 めさせていただきますのでよろしくお願いいたします。 それでは、本部会の開催に当たりまして、三宅結核感染症課長よりごあいさつを申し 上げます。 ○三宅課長 結核感染症課長の三宅でございます。本日は、委員の皆様におかれまして は、御多忙の中にもかかわりませず、本「第12回厚生科学審議会感染症分科会結核部会」 に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。 前回、5月に開催をいたしました結核部会におきましては、結核の届出の基準につい て貴重な御意見をいただきました。その結果に基づきまして、6月15日に一部改正され た基準が適用されているところでございます。おかげさまで大変わかりやすく基準をお 示しすることができました。誠にありがとうございます。 また、結核対策が感染症法に統合されましたけれども、厚生労働省といたしましては、 結核が国内の主要な感染症であることには変わりがないということで、DOTSの推進 等を図るなど、更に一層の対策の推進をしていく必要があると考えて取り組んでいると ころでございます。 そういった中で、本日は、潜在性の結核感染症に対する公費負担についてということ が1点。もう1点、結核に係る入退院基準等につきまして、結核施策の措置に必要な事 項につきまして、先生方に専門的かつ大局的な御見地から貴重な御意見をいただきまし て、方針を示していければと考えてございます。 簡単でございますけれども、本日の会議はそういうことでございますので、どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○三宅補佐 開会に先立ちまして、委員の出欠状況の報告をさせていただきます。 本日の出欠状況につきましては、飯沼委員、高橋委員から御欠席の御連絡をいただい ております。 現在の部会委員総数12名のうち、10名の御出席をいただいており出席委員が過半数 に達しておりますので、本日の部会が成立いたしますことを御報告いたします。 次に、今回初めて出席させていただく事務局の職員を紹介させていただきます。法令 の安里補佐でございます。 ○安里補佐 安里と申します。7月から結核感染症課に座っておりまして、法令担当の 補佐をしております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○三宅補佐 蛭川補佐です。 ○蛭川補佐 蛭川と申します。同じく、7月から結核感染症課にやってまいりまして、 結核の担当をさせていただいています。よろしくお願いします。 ○三宅補佐 ここで、カメラ撮りの方は終了させていただきますので、御協力のほどお 願いいたします。 続きまして資料の確認をさせていただきます。本日は、大分、資料数が多うございま す。 大きく分けまして、資料、報告資料、参考資料の3つの分類であります。まず「資 料一覧」を見ていただきますと、その一覧があります。 資料1が「潜在性結核感染症の扱いについて(案)」。 資料2−1が「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における結 核の入退院基準等について」。 資料2−2が「結核の入退院基準、就業制限基準の概略について(図解)」。これに つきましては、既に送付させていただいたものとは若干異なって、差し替えをさせてい ただいております。 次が、報告資料でございます。 報告資料1、分厚い「結核の接触者健康診断の手引きについて」。 報告資料2が「結核研究所あり方検討委員会報告書の概要について」。 参考資料でございます。 参考資料1−1「初感染結核に対するINHの投与について」という通知。 参考資料1−2「さらに積極的な化学予防の実施について」という結核学会の予防委 員会の報告、提言でございます。 4ページが、参考資料1−3、加藤先生による研究成果「潜在性結核感染症に対する イソニアジド投与に関する研究」でございます。 10ページが、参考資料1−4、感染症の届出基準の一部改正についての通知でござい ます。 次に、参考資料2−1もまた続けさせていただきます。 1ページ目が「欧米における結核の入退院」加藤先生の提出資料でございます。 5ページ目が、参考資料2−2「結核の入院と退院の基準に関する見解(日本結核病 学会治療・予防・社会保険合同委員会)」の報告でございます。 7ページ目が、参考資料2−3「独立行政法人国立病院機構における結核患者の退院 基準について」でございます。 12ページ目が、参考資料2−4「結核予防法第29条第1項の規定に基づく入所命令 等に関する取扱い基準について」でございます。 参考資料2−5が、また別刷りになっておりまして「感染症の予防及び感染症の患者 に対する医療に関する法律(抄)」でございます。この(1)につきましては、結核に関し て既に準用規定を中に入れ込んで読みやすくしたものでございます。 参考資料2−5の(2)の方が、それを主体に読み替え前の法律そのまま、そしてそれを 準用するとどうなるかということで、上の段に読み替え後のものを示しております。 資料、以上でございます。 どなたか、御落丁等ございましたら、事務局の方にお申し出ください。 それでは、後の進行につきまして、坂谷部会長の方によろしくお願いいたします。 ○坂谷部会長 それでは、皆様、本日よろしくお願いをいたします。 本日の会議の進行でございますが、お手元の議事次第に沿って進めてまいりますので、 委員の皆様方には、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたしたいと思います。 まず、議題1)「潜在性結核感染症に対する公費負担について」でございます。事務 局より説明をお願い申し上げます。 ○蛭川補佐 蛭川です。資料1について御説明します。 まず、座席表の次のページの一番最初にある「資料1」通知の(案)をそのまま載せ ておりますけれども、これをごらんいただきたいと思います。 これは、潜在性結核感染症への公費負担の通知です。これに関して御説明します。 この経緯としましては、前回の結核部会で、これまでの初感染結核を届出基準に含め てきたのと同じように、いわゆる無症状病原体保有者のうち医療が必要な者を、潜在性 結核感染症として届け出ることとするという話、このことに関連しまして、実地の担当 者の方々からよく受ける質問があります。 それは、これまで、初感染結核の方に対して、イソニアジドという薬を投与していた のですけれども、これと同じように、今回の潜在性結核感染症の患者の治療に対しても、 公費の負担がなされるのかどうかということ。こういうことを、よく実地の方々から御 質問を受けるところです。 資料1の通知に関しましては、こうした質問に対するお答えになると考えております。 この場で改めて御検討いただければと思っております。 通知の内容に関して簡単に御説明します。前回、潜在性結核感染症について、結核と いう疾病であるとして、届出の対象にしたところです。このことは通知の2段落目のと ころに書いてあります。 そういう状況ですので、次は3段落目に書いてあることですけれども、診査会が医療 の必要性を認めるのであれば、潜在性結核感染症に対しても、結核患者への治療として 公費負担が行われるということを説明した通知となっております。 なお、今回の通知によりまして、これまでの初感染結核の対象というのは29歳以下と 限定していたのですけれども、今後は、その年齢制限はなくなって必要ないものとなり ますので、このように年齢制限を取り払うということに関しては、これまで学会の先生 方からも御意見をいただいているところですので、その趣旨について、結核研究所の加 藤先生に背景を御説明いただきたいと思っております。 加藤先生、よろしくお願いします。 ○加藤委員 それでは、御説明申し上げます。 参考資料の2ページ、参考資料1−2をごらんください。 これは、平成17年2月に日本結核病学会予防委員会と有限責任中間法人日本リウマチ 学会が共同で出しました共同声明「さらに積極的な化学予防の実施について」でござい ます。左の上の上段の背景から御説明します。 我が国では、予防内服、これは現在では潜在性結核感染症と呼ぶようになりましたが、 この治療は初感染結核として、若年者を対象として行ってきましたけれども、日本の結 核の発病者が中高年に集中していることを踏まえまして、これらの積極的な発病対策を 行う必要があると述べております。 中段の下の方の「記」に、引き続いて、治療法について若干書かれています。これま で、イソニアジドの6か月投与が行われていますけれども、この声明の中では、9か月 治療についても言及されております。これについては、医療基準の改定ということに関 わりますので、その際に議論していくことと考えます。 右段の方に「化学予防の適応となる者」と書いてございます。1、2、3と書かれて いる順に見てまいります。 「1.喀痰結核菌塗抹陽性患者と最近概ね6カ月以内に接触があり,感染を受けたと 判定された者」。これは従来の初感染結核に該当する者と思います。 「2.胸部X線上明らかな陳旧性結核の所見がある者であって,ツベルクリン反応が 強い陽性で,結核の化学療法を受けたことがない者」。これは、明らかな既に感染を受 けた人のことをいっております。 3番目として、医学的な発病リスク要因を持った者ということで、具体的には、3.1 としまして、HIV及び著しい免疫抑制状態にある者。 3.2 では、免疫抑制剤を使用している者。 3.3 は、発病リスクは高いが著しい免疫抑制ではない者ということで挙げております。 これらは、いずれも従来の29歳といった年齢制限を越えるものについても含まれている ものであります。 更に、諸外国の状況を見てみます。4ページをごらんください。 これは、平成14年に厚生労働科学特別研究として、私が「潜在結核感染症に対するイ ソニアジド投与に関する研究」ということでお引き受けした報告書から抜粋したもので あります。 アメリカでは、従来、BCGよりも化学予防を予防対策として優先させてきた歴史が ありますけれども、2000年に改訂されたCDCとATS(アメリカ胸部疾患学会)によ る合同ガイドラインでは、従来「いつか病気になるかもしれない人への予防策」という 意味であった「化学予防」という考え方から「潜在的な病気である結核感染状態(Late nt tuberculosis infection,LTBI)を治療する」ということで、より積極的な姿勢で 活動性結核の予防に臨んでいるという考え方であります。 具体的な対象者については、次の5ページをごらんください。 「A.選択的ツ反応検査」ということで、対象に含まれるものが書かれております。 (1)として、結核感染により発病リスクが高い者。HIVとか、免疫抑制剤を受け ている者等々が書かれています。 (2)として、上記以外でリスクが高いと思われる者。高蔓延国からの移住者とか、 薬物静脈注射常用者等々が書かれています。 (3)として、それ以外の人でもツ反径が大きい者は、この潜在性結核感染症の予防 対象にするといった考え方になっています。 イギリスにつきましては、同じ資料の8ページの中段をごらんください。 4)は98年の英国胸部疾患学会のガイドラインですけれども、最近、2006年に出さ れましたイギリスのガイドラインの中では、潜在性結核感染症の治療ということで、1. 6 の中に書いてございます。 スクリーニングによって検診で見つかった人で、36歳以下。 いかなる年齢であってもHIVを持っている人。 また、年齢にかかわらず、医療従事者。 1歳〜15歳のたまたま検診で見つかった人。 こういう人が対象になっています。今、ごらんになっていただいたように、アメリカ、 イギリスとも、いずれにせよ新たな感染者のみならず、年齢にかかわらず、発病リスク がある人には、積極的に潜在性結核感染症の治療を行う。こういった考え方になってご ざいます。 以上でございます。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。蛭川補佐、加藤委員からの報告は済みました けれども、この件に関しまして、この議案に関しまして、御質問、御意見がございます でしょうか。よろしくお願いいたします。よろしゅうございますか。 それでは、御意見がありませんので、部会としてこれで了承いたしたいと思います。 御賛意いただけますか。いかがでございましょうか。 (「異議なし」と声あり) ○坂谷部会長 異議なしでございますね。ありがとうございます。それでは、この件、 原案どおり了承することにいたします。ありがとうございます。 次に、議題2)「結核に係る入退院基準等について」でございます。事務局より御説 明を願う前に、この案と比較対照とするためにも、欧米におきます結核の入退院基準、 結核病学会の結核の入退院の医学的な基準に関する見解及び独立行政法人国立病院機構 の結核患者の退院に関する医学的な基準について、お二人、加藤委員と重藤委員より御 説明を願いたいと思います。 まず、加藤先生よろしくお願いします。 ○加藤委員 それでは、私は「欧米における結核の入退院について」御説明申し上げま す。 参考資料2−1をごらんください。 「欧米における結核の入退院」とタイトルをつけさせていただいています。これは、 私どもの結核研究所が、厚生労働科学研究新興・再興感染症研究事業の一環として、低 蔓延状況下における結核対策を検討するための資料を得るため、2004年にはロンドン、 2005年にはイギリスのリーズ、2006年にはアメリカのサンフランシスコ及びCDC、2 007年にはオランダのハーグ市の保健センターを訪問する機会があった際に、それぞれ 現地の担当者から直接、入退院の状況について聴取した内容でございます。 1番ではロンドンです。 イギリスには結核を専門に取り扱う専門制度としての専門ナースがありますが、2004 年の時点で、ロンドンの結核専門の方から聴取した内容でありまして、塗抹陽性患者で も入院期間は通常2週間ということであります。 退院に当たっては、結核専門ナースが周囲への感染予防について健康教育を行ってい るということであります。 なお、イソニアジドの耐性の集団感染があった事例があったということですけれども、 こういったグループからの感染が疑われる場合は、入院期間を延長しているということ で、必ずしも一律に2週間の入院というわけではないようでございました。 次にイギリスのリーズというのは、ロンドンから電車で2時間ほど行った北の方にあ る町です。ここの教育病院の呼吸器科医師から聞いた内容としまして、結核患者が入院 するのは、患者の状態が悪いときと多剤耐性の場合ということです。ここでは、塗抹陽 性であっても、外来治療が原則である。結核患者の中で入院するのは、せいぜい5〜10 %以下ということでありました。 サンフランシスコの方に参ったときには、結核対策を担当していて、クリニックも担 当している医師から聴取した内容です。 サンフランシスコでも、結核患者は原則として外来治療ということでございます。な お、多剤耐性の患者さん、これは今後の検討課題かもしれませんけれども、自宅隔離と いうことであります。 なお、文献上、アメリカでの2000年の調査の結果について調べたものでありますけれ ども、アメリカの結核患者の67.2%が、一度は入院していると推計されておりまして、 その平均入居期間は、14.2日/中央値9日と報告されています。 これは論文のデータありまして、全アメリカの入院の約20%のサンプル調査とされて おります。 更に、オランダのハーグに参ったときには、オランダでも結核患者は原則外来治療と いうことで、患者の病状によって入院が必要、入院することがあるということでありま した。 なお、オランダにおける2003年のサーベイランス報告によるデータを入手しま した。2003年のときに、全治療期間中、入院している患者の割合が全体の45%というこ とです。平均の入院期間は約4週間ということであります。 この調査で、入院期間が判明したのは40%ということで、代表性に多少問題がある可 能性が若干残されています。参考までに、日本の2005年のサーベイランス上の平均入院 期間は、3.9か月ということでして、オランダに比べて約4倍の長さという状況になっ ています。 次に、同じ資料の2ページをごらんください。 これは、私ども結核研究所の伊藤主任研究員が、欧米の8か国9地域の入退院の基準 等に関する文献とか、インターネットの情報を検索した結果であります。 本日の議題の入退院基準というのは、感染症法19条及び20条に基づく入院というこ とであります。この資料で述べている「(3)入院基準(他社への感染症を考慮した隔 離基準とは異なる)」あるいは「(4)退院基準(一般)」というのは、こういった法 的な基準に関する入院基準ではなくて、患者の状況を含めての議論であります。 恐らく、ここの(2)で示されている「陰圧室隔離解除基準」というのが、本日の退 院基準の議論に適合する内容かなと思います。 まず(1)に書いてあるのは、退院の議論の前提になる感染性に関する見解でありま す。この98年のUKというのはイギリスです。97年のフランスのこの基準の中では、2 週間見当ということですけれども、アメリカとか2006年のイギリスには具体的な感染性 に関する見解という記載はありません。 (2)の「陰圧室隔離解除基準」ということですけれども、これはアメリカ、ニュー ヨーク、カナダ、イギリス、フランス、イタリアについてこの記載がございますけれど も、おおむねこれは3つの条件が挙げられています。 1つ目として、治療の継続期間がおおむね2週間以上であること。 2つ目として、臨床的に改善が見られること。これは恐らく、多剤耐性のないことを 示す所見と考えられます。 3つ目として、塗抹陰性化ということです。この陰性化を見る条件としまして、連続 3回の塗抹陰性化というところが条件になっているところがほとんどであります。 次に、下の方に、入院についての基準。これは先ほど申し上げましたとおり、他者へ の感染性を考慮した隔離基準とは異なっております。 これにつきましては、入院については基本的に外来治療が可能という記載が見られて おりまして、感染性があっても、外来治療が行えるということが書かれています。 基準の内容としまして、いろいろ細々ございますけれども、大まかなところを申し述 べますと、重症とか合併症といった患者の病状。 2つ目として、確実な治療が困難な場合。 3つ目として、外来治療が可能である自宅隔離といったことが難しい状況といったこ とがおおむね挙げられていると思います。 その3ページの一番下の方に「(4)退院基準」ということが書かれています。この 退院基準については、今の入院基準の逆です。 確実な治療が行える状況にあること。 本人が感染予防処置ができるなど、周囲の感染予防が可能なことが条件になっている ということであります。 更に「(5)多剤耐性の場合」の中では、多剤耐性についての退院基準に書かれてい る。 「(6)退院先にハイリスク者がいる場合の退院」といったことが基準に述べら れたのが、アメリカあるいはイギリスに若干ある。このようなところが解説でございま す。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。続きまして、重藤委員から国立病院機構の基 準につきまして、御説明願います。 ○重藤委員 学会の方もです。 ○坂谷部会長 ごめんなさい。学会の基準に関する見解及びですね。 ○重藤委員 はい。日本では、ただいま、加藤委員が御説明くださいました外国の状況 と比較して、非常に入院期間が長いという現状がありまして、そういうものを適正化す るためにも見解を出さなければいけないということでまとめたのが、この基準、見解で す。 従来、日本では、退院できる基準として、培養を重視して、培養陰性確認2回という ような基準が全国的に浸透していたんですが、それではちょっと長過ぎるということで、 以下のようにまとめました。 ただし、医学的に治療困難な患者や、治療を規則的に継続することが困難な患者が増 加しているということも考慮しまして、いろいろな条件を付けて入れております。 まず、入院の基準ですけれども、3つ条件を挙げております。 まず、感染性が高い。周囲に感染させるおそれが高い状態。 2番目に、現時点では感染性は特に高くはない。感染性だけでは入院の必要性は高く ないけれども、入院治療でなければ、将来、感染性が高くなるであろうと予想される状 況も入れております。 第3には、結核治療のために医療提供が外来では困難な場合。特に、日本におきまし ては、高齢者が非常に多いということで、このような患者さんは多くなります。 入院の基準の問題としては、2番目になると思うんですけれども、現時点での感染性 は特に高くはないけれども、入院治療でなければ、近い将来、感染性。特に、薬剤耐性 結核となる可能性が高い場合で以下のような治療途中の再排菌であるとか、以前の治療 で不規則治療があって、更に薬剤耐性があったもの。もしくは、更に薬剤耐性が増える であろうもの。可能性があるもの。こういう状況も入れております。特に、こういう状 況の場合には、以前の結核予防法で入所命令の対象にしてほしいというような事項を入 れております。 それから、退院につきましては、入院の基準から外れた場合ですけれ ども、まず感染性が消失したと考えられる。 2番目が、退院後の治療の継続性が確保される。この2つともを満たされた場合とし ております。 感染性が消失しただけで、退院した後の治療の継続性が確保できませんと、もうほぼ 必ず感染性になると考えられる。その場合には、薬剤耐性の可能性が高いということで、 この第2番目の条件を非常に重視しております。 この見解を出しました時点で、DOTSという方向性ははっきりしておりましたけれ ども、現実になかなか完璧に保障されないということで、特にこの条件は重視しており ました。 6ページです。 「感染性が消失したと考えられる」条件としまして、これは菌の検査結果だけに頼ら ず、総合的な判断というのを入れております。この場合の条件としまして、薬剤感受性 を考慮した適切な治療が行われているということ。特にこれは2週間以上ですね。 かつ、喀痰の抗酸菌検査で塗抹の陰性化。陰性化がはっきり得られなくても、菌量が 減少していて、総合的に改善していると判断される場合。こういう場合も退院可能とし ております。 ただし、一段下ですが、退院後の生活の場が、病院施設など集団生活である場合。ま た新たに乳幼児、免疫不全状態の者と同居する場合というのは、感染性の消失というの は厳しくとりまして、確実に菌陰性化した。塗抹検査で連続2回陰性、または培養、陰 性ということを確認する必要があるとしております。 多剤耐性の場合には、この条件は適応できないということで、培養、陰性2回という ことを挙げております。 2番目の「退院後の治療の継続性が確保できる」ということは、DOTSに載るかど うかということになると思います。DOTSの体制がきちんとできていて、外来DOT Sもしくは外来DOTSを含めた地域DOTSが可能であって、その患者さんに適合す る場合という条件の下になります。 以上が、学会の基準、見解です。 参考資料2−3にまいります。 こちらが、国立病院機構における結核患者の退院基準。こちらは入院してからの話に なりますから、退院基準しかありません。 国立病院機構における退院の基準というのは、まず、学会における見解を待ちまして、 それを基にしまして、わかりやすくより具体的にという形で出しております。 9ページです。 基本的な方針は、今、申しましたとおり「1)結核病学会案に沿ったものとする」。 「2)結核病学会案をより具体的でわかりやすくする」ということでつくっておりま す。 条件としましては、先ほど言いました感染性の消失と退院後の治療の継続性の確 保という2点を重視しております。 10ページです。 わかりやすくというために、まず、基準を2つにわけております。「一般的な退院基 準」ともう一つ真ん中から下ですが、「一般病床への移動、施設への入所等の場合」。 と出ております。 下の方は、感染性について厳しく見ないといけない。上の方は、ほぼ自宅に帰る場合 ということですから、感染性に関しては少し緩く見ているということです。 「一般的な退院基準」としまして。 副作用なく、標準化学療法が副作用なく2週間以上実施されていること。 症状が改善されている。 多剤耐性の可能性がほぼないであろうと推定できること。もしくは検査で確認されて いること。 退院後のDOTS等のシステムにより、服薬継続が保障されていることということに なります。 一般病床への移動等の場合には、4)ですが、異なった日の検査において、連続2回 塗抹陰性または連続2回培養陰性を確認することとしております。 これは、よりわかりやすく患者さんにお渡しするパンフレットとしては、上の方をA 基準、下の方をB基準と分けて、入院してしばらくしたころに、患者さんにお渡しして 説明しているという状況です。 基準につきましては以上です。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。加藤委員より欧米における現状ですね。重藤 委員から学会及び病院機構の基準、我が国における現状ということで、御説明いただき ました。 時間が若干ありますので、お二方の委員に何か御質問ないでしょうか。ほかの委員。 川城委員。 ○川城委員 加藤先生にちょっと教えてもらいたいんです。とても外国のことを視察さ れて、とても興味あるんです。 まず、多剤耐性結核についてはどんな考え方をしているんですか。日本ではかなりい ろいろ経緯があって難しいんですけれども、外国ではどんな対応の仕方をしているかを ちょっと教えてください。 ○加藤委員 イギリスの方では、リーズというところの病院に実際に見てきたんです。 多剤耐性については非常に厳しい基準、対応でして、基本的に入院治療といった考え方 で、私、ちょうど行ったときに聞いた話では、4年間陰圧個室に入院している人がいる。 こういったことでありました。 一方、アメリカの方は、ここにも書いてございますとおり、自宅隔離ということで、 必ずしも入院しているわけではありません。これは、実は3月に私どもが行った国際セ ミナーのときに、サンフランシスコの結核対策部長のDr. Masae L. Kawamuraという方 がいらして、フロアからそういう質問が出たんですけれども、そのときには、多剤耐性 の患者によって、医療従事者の感染の危険がある発言が聞かれまして、私どもは非常に 驚いたものです。いずれにしても、アメリカでは、必ずしも入院しているわけではない と聞いております。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。 どうぞ、川城委員。 ○川城委員 加藤先生にお聞きしたいんです。諸外国、先進国では、非常に入院期間は 短いですね。というと、日本と比べてやはり知りたいのは、排菌状態でも一般社会にい るということで、要するに、DOTSあるいは社会のそういう人たちに服薬を確実にさ せるためのシステムというのは日本と比べてはるかにいいんでしょうか。 ○加藤委員 服薬者については、イギリスに、例えば、いわゆる毎日服薬確認するDO Tはすべてやっているわけではなくて、DOTの対象になるのは、日本版DOTSのA タイプのような、再発であるとかあるいはホームレスとか、そういった服薬中断のリス クの高い人については、毎日服薬確認というようなことでして、必ずしも全部DOTで 行われているというわけではないのです。 もう一点、先ほどの多剤耐性に関連して思い出したのですが、イギリスに行ったとき、 多剤耐性の場合をどういうふうに考えているのか。2週間で耐性かわかるだろうかとい う質問をしました。BTSのガイドラインをつくっていた先生が対応してくださったん ですが、一部の疑いは、そのリファンピシンの耐性遺伝子を見る検査、これは日本でも 今、できますが、それを行っているという答えだったんですけれども、どうも全部の患 者をそれで見ているわけではないようです。 それで、先ほどちょっとお話しましたように、TBナースに、「では感染の可能性は 完全に否定するわけではないだろう」いう話をしましたところ、先ほど言ったように、 「退院に当たって、感染予防についての健康教育をしている」とのことでした。 こういう話ですので、先ほどもちょっと議論になっているとおり、感染性がなくなる まで退院できない。あるいは感染性のあるうちは入院しなければいけないといった考え 方を基本的に持っていない。それが日本と違うところだろうと思います。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。今の感染治療後の感染性が なくなったかどうかということに関して、それぞれの資料、先生のお話を聞きますと、 陰圧個室の解除の基準というのは、菌の量であるとかを重視していますけれども、一般 的な感染性の部分の推移に関しましては、欧米では日本ほど菌の動きというのは重視し ていないというか、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。 ○加藤委員 そのように見えます。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。よろしゅうございま すか。三宅補佐。 ○三宅補佐 済みません。今更ですけれども、資料の2ページ目「2.欧米の入退院基 準」で、「(2)陰圧室隔離解除基準」で3、4、5と、その退院の基準、入院の基準 になっていますが、この陰圧室という考え方というのは、まず入院のときは陰圧に入れ て、しばらくしたら普通のところに入れる。そういうふうに欧米では決まっているんで すか。 ○加藤委員 それについては、具体的にそういうふうな話を聞いていたのはリーズです。 リーズでは、結核患者は原則として陰圧個室に入院ということであります。 ただ、陰圧個室といっても、結核病床の陰圧個室という考え方ではなくて、一般感染 症病棟の中に陰圧個室があるということですので、結核のみならず、空気感染する疾患 については、この陰圧個室に入院させるということであります。 実際は、私も行ったリーズ教育病院というのは2床しかなかったものですから、病床 が足りないようなときには、一般の個室に結核患者を入院させることもあるとのことで す。感染性等を考えた場合、結核以上に厳密な隔離が必要な疾患というのは、勿論、あ ると思いますので、そういった疾患を優先する場合には、必ずしも陰圧個室ではないこ ともあるような運用をしているようですけれども、原則としては、結核患者は空気感染 するということで陰圧個室と聞いてまいりました。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。よろしゅうございますか。いかがですか。ほ かはないでしょうか。先生方、ありがとうございました。 それでは、本題に戻りまして2)「結核に係る入退院基準等について」の事務局案で ございますが、御説明を願いたいと思います。 ○平山専門官 よろしくお願いします。結核の入退院基準等につきましては、資料2− 1と資料2−2の差し替えを基に説明していきます。 初めに、加藤先生からも御説明がありましたように、結核に対する化学療法の進歩と、 その有効性に対する認識の深まりによって、結核患者の隔離を目的とした入院治療の方 針については、世界的に考え方が改められてきています。 また重藤先生からの御説明のように、我が国における結核患者の医学的な入院基準、 退院基準については、これまで結核病学会や独立行政法人国立病院機構から示されてい るところであります。 こうした状況を踏まえまして、感染症法における結核患者の入退院、及び就業制限に ついて具体的な基準案を、加藤先生、重藤先生と検討しております。本日の部会にて、 更なる検討をお願いします。 まず「2.入院基準について」(1)としまして、感染症法上は「まん延を防止する ため必要があると認めるとき」は患者に対して入院勧告等を行うことができるとなって おります。 そこで、入院基準における「(2)検討課題」としましては、喀痰塗抹検査が陽性で あれば、排菌量が多く、感染性が高いため、入院すべきであるといえます。 また、喀痰塗抹検査では陰性でありますが、喀痰培養検査もしくはPCR検査等が陽 性である場合は、微量排菌状態でありまして、感染性が完全に否定できないことからこ の状態をどう扱うかが問題となってきます。 いずれの場合におきましても、診断後、数週間の治療を徹底することによって、感染 性を低下させることが感染拡大の防止に重要であるとしました。 このような検討を基に、次のような「(3)入退院基準案」を作成しております。 感染症法第19条、20条における「まん延を防止するために必要があると認めるとき」 とは、症状を有する結核患者が以下の(1)または(2)の状態にあるときとしております。 (1)が、肺結核または咽頭、喉頭、気管支結核等で喀痰塗抹陽性の所見が得られた場合。 (2)としまして、喀痰塗抹陰性であるが、喀痰、胃液、気管支鏡検査で培養もしくは核 酸増幅法が陽性であり、以下のiかiiに該当する場合。 iが、呼吸器等の症状から感染防止のために入院が必要と判断される場合。 iiとしまして、以下のような外来治療中に排菌量の増加が見られた場合や、不規則治 療や治療中断により再発した場合により、近い将来、感染性が高くなると判断される場 合としております。 「3.退院基準について」。感染症法上の取扱いでは、退院については「病原体を保 有していないこと又は当該感染症の症状が消失したこと」が確認されたときは「退院さ せなければならない」としております。 それにおける検討課題としましては、強制的な措置は最小限にとどめるべきという原 則をかんがみ、退院基準を改めて示す必要があります。なお、慢性的に経過する結核の 疾患特性から以下の項目を勘案して「退院させることができる基準」と「退院させなけ ればならない基準」の2つの基準を検討することとしました。 その「検討の際に留意する項目」としましては、 (1)感染性の判断をどうするか。 (2)入院治療の評価に必要な最低限の基準期間をどうするか。一般的に約2週間の標準 治療にて症状の改善と排菌量の低下がみられることから、評価するための期間を治療開 始から2週間としてはどうか。 (3)退院後の治療継続が担保できているかどうか。 (4)同居者などに結核の高感受性者がいるかどうかということを考慮しております。 それを踏まえまして、退院の基準案を作成しております。 「1)退院させなければならない基準」は、感染症法第22条及び第26条に基づき「(1) 病原体を保有していないこと又は(2)当該感染症の症状が消失したこと」が確認された場 合は「退院させなければならない」となっております。 結核は、治療により病原体が完全に消失することが期待できないために、(1)「病原体 を保有していない」という状態は考えられないことから、(2)「症状が消失したこと」が 「退院させなければならない」基準となると考えております。 それを踏まえて、以下のように規定しました。 せき、発熱、結核菌を含むたん等の症状が消失した場合。 なお、結核菌を含むたんの消失は、異なった日の喀痰検査において連続3回の培養ま たは核酸増幅法が陰性結果が得られたことで確認することとしております。 資料では培養と核酸増幅法が「共に」となっておりますが培養または核酸増幅法が陰 性に修正させてください。 「2)退院させることができる基準」としまして、入院基準におきます「まん延を防 止するため必要がある」と認められない場合は、感染症法第19条、第20条に基づく入 院勧告の対象とはならないため、退院させることができると考えております。 以下の(1)、(2)及び(3)を満たした場合を、蔓延を防止するために必要があると認められ なくなったと既定しました。 「(1)最低2週間の標準的化学療法が実施され、咳、発熱、喀痰等の臨床症状が消失し ている」。 「(2)異なった日の検査において、連続3回の塗抹陰性または培養、核酸増幅法の陰性 の結果が得られている」。 「(3)患者が治療継続及び感染拡大防止の重要性を理解しており、退院後の治療継続、 感染拡大防止ができると確認されている」と規定しました。 「4.就業制限基準について」。 これにつきまして、感染症法上の取扱いですけれども、感染症法では「まん延を防止 するため必要があると認めるとき」は、省令で定める事項を通知することができ、蔓延 させる「おそれがなくなるまでの期間」は定められた業務に従事してはならないとされ ています。 また、省令では「接客業その他の多数の者に接触する業務」に「その病原体を保有し なくなるまでの期間又はその症状が消失するまでの期間」就業制限を行うとされており ます。 「(2)就業制限基準案」としまして、 「1)就業制限の開始時期は、塗抹陽性又は培養、核酸増幅法が陽性の場合とする」。 「2)就業制限の解除時期は、退院させなければならない基準と同様とする」と規定 しました。 5番目としまして「5.今後の検討課題」を挙げさせていただいております。 「○長期の入院患者に対する対応」としまして、入院中に十分な検討による治療を行 った後も、薬剤耐性や薬剤の副作用や合併症等により治療が奏功せず、排菌が持続する 等の理由で退院基準に該当しない患者が存在しております。そのような患者でありまし ても、以下のような要件に合致する場合には退院させてもよいのではないかと思われ、 今後その適否について検討することとします。 「退院を検討する要件(案)」としましては、 「(1)病態が安定している」。 「(2)治療継続が可能な場合、その必要性について患者が十分に理解し、同意している ことが確認できている」。 「(3)患者が感染拡大防止のための措置の必要性を十分に理解し、同意していることが 確認できている」。 「(4)感染拡大防止を可能とする、退院後の住環境が十分整備されている」。 「(5)保健所との、訪問を含めた定期的な連絡を行うことができる」というようなこと を考えられております。 この検討につきまして、具体的にどのように行うかですが、それにつきましては、長 期入院患者の実態調査を行うとともに、詳細な検討を進めていきます。 また、長期入院患者や治療困難例への対応に関しまして、多剤耐性菌保有者の入院基 準を拡大すべきか、治療や入院に非協力的な患者にどう対応していくかといった論点に ついても同時に検討していくこととしています。 以上であります。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。事務局からの御説明が済みました。この件に 関しまして、御質問、御意見等ございましたらよろしくお願いしたいと思います。いか がでしょうか。重藤委員、何かありますか。 ○重藤委員 3ページの「(3)退院の基準案」のところです。 「1)退院させなければならない基準」及び「2)退院させることができる基準」に おきまして、核酸増幅法というのが入れてあるんですけれども、今、現実の医療現場で、 退院をさせる場合に、核酸増幅法というのは余り使っておりません。学会の基準にも核 酸増幅法を入れていないということですね。 核酸増幅法の使い方につきまして、平成12年だったと思うんですけれども、学会から 見解が出ております。この中で治療経過を見るためには原則として使用しないと記載さ れております。 実際問題、例えば、3回核酸増幅法をしますと、保険が通過しないといいますか、い わゆる削られる状況にあります。そのような2つの点から、これは問題が要検討ではな いかと思います。 以上です。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。3ページの(3)のところの1)の一番最後の 方から2行目のところ。2)の(2)の最後のところもそうですね。 そうかなという御意見が出ましたけれども、いかがでしょうか。加藤先生、よろしい ですか。 ○加藤委員 確かに、学問的には核酸増幅法は治療経過を見ないとということにはなっ ているのはおっしゃるとおりだと思います。 ただ、消失した陽性であっても死菌のことがあるので、そういう意味では経過は見れ ないということはあるんですけれども、なくなったということは言ってもいいのかなと いう気は若干します。保険診療のこともあれば、やはり余り適当ではないという御意見 も十分理解できると思います。 ○坂谷部会長 現場でやっているところもあるでしょうし、混乱が起きないように何か ちょっとコメントがいるかもしれません。原則的には、核酸増幅法というこの文言はな くてもいいかなということですけれども、ほかの委員、いかがでしょうか。御異存ない でしょうか。御異存ないようですね。これは1つ、ちょっとこのまま置いておいて、三 宅補佐。○三宅補佐 一応確認です。核酸増幅法だと早く検査結果が出る。ほかのだと 少し出にくい、少し時間がかかるということで、少しでも早く人権的な制限を解除する ためには早い方がいいなという考えもあったわけですが、学問的に受入れられないのだ ったら、勿論、そんなことをする必要はないんですけれども、やはり医学的な観点から 見るとこれはない方がいいだろうということでよろしいですか。 ○坂谷部会長 と私は思います。 ○重藤委員 させなければならない基準とさせることができる基準をどのように考える かによると思うんです。ただ、ここに載せられていると、これは早く退院したい患者さ んからすれば、しなければならないになりますね。 ○三宅補佐 「又は」ですから、どれでもいいわけですね。 ○重藤委員 どれでもいいですけれども、早く確認する方法として、こういうものがあ りますよと言ったら、菌の話だけで言えば、当然、どんどん早くしてほしいということ になります。 ですから、その場合には、保険をというか、医療費の裏付けは当然いると思いますし、 その辺りですね。させることができる基準には、私はもう入っていてもいいのかなとは 思うんです。ほかの条件もいろいろありますので、菌の検査結果だけで決めるわけでは ないです。 ○坂谷部会長 いかがでしょうか。今の御意見では、1)のところにこう書いてあれば、 国の基準でこれで認めるということだから、これをしなさいということかと、こういう ことで、これがどんどんされるというのは、医学的にも医療経済学的にもいかがなもの か。こういうことですね。 ○三宅補佐 そうすると「又は」でどれを選んでもいいけれども、ここに「又は」をど れか1つのオプションとして核酸増幅法が入っていても、一番これが高いけれども早い から、みんなそちらに流れるのではないかということですか。 ○重藤委員 流れるというか、現実問題、なかなか塗抹陰性にならない患者はすごく多 いんです。ですから、核酸増幅法を3回して非常に早く退院になる人というのは、それ ほど数はないのではないかと思います。とすると、先ほどの医療経済学的に、そんなに 意味があるのかなとも思うんです。 ですから、私が危惧するのは、ここにこう書いてあるからどんどんしなければならな い。しなかったらこれに違反したではないかということにならないかどうか。 ○坂谷部会長 重藤委員、先ほど少しDOTSのことをおっしゃいましたけれども、と いうことで、これは違った日に、例えば3回、この検査をやると現状では間違いなく削 られるんです。施設の持ち出しになるんです。 ○三宅補佐 今、3ページの1)は正確にはどうなっているんですか。連続3回の塗抹 陽性または核酸増幅法なんですか。修正で、培養ではなくて塗抹陽性ですか。培養また は核酸増幅法がともに「及び」を「又」に直したのが事務局案。 ○平山専門官 はい。 ○三宅補佐 そうすると、連続3回の培養又はという1)は、我々、今までは確かに培 養を3回連続か核酸増幅法を3回連続だと思っているんですけれども、培養2回、核酸 増幅法1回、全部で合計3回やって全部陰性だったというのはありにするんですか。ど ちらの方があっているのですか。 ○坂谷部会長 いかがでしょうか。 ○重藤委員 確かに、現実的に、今そう言われれば、例えば培養を2回陰性確認できた 段階でもう一回、核酸増幅法を追加してそれを3回目にするということは可能だと思い ます。 ただ、それをどのように記載するか言葉が非常に難しいなと思います。 ○三宅補佐 そうしたら、例えば、連続3回の培養または核酸増幅法(ただし、少なく とも1回は培養にて陰性を確認すること)とか、そういう書き方になると思うんです。 培養、培養、PCR。培養、PCR、PCR。それか培養、培養、培養か、PCR、 PCR、PCR。どれでも連続3回ならばいいということですか。 ○坂谷部会長 もっともな御意見です。 ○重藤委員 ですから、培養というのは、後から出ますので、すぐに追加してすぐに結 果が出ませんね。ということで、確かにこれは非常に遅くなります。初めの計画どおり 2週間ごとにしていたら、次の3回目は2週間先でしか確認できないということが起き ますから、例えば、3回目の核酸増幅法で代用するというのは、私も否定しません。 ○坂谷部会長 どうぞ。 ○丹野委員 現実的な話をしますと、培養を8週間、それを2回確認は大変かなと思い ます。少なくとも1回は確認し、その後は、PCRでもいいのかなと思います。人権等 を考えると、そういう方法はいいという気はしますね。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。 ○三宅補佐 そこでまた追加の質問です。培養、この3回連続の陰性というのは、陰性 結果が出たから、もう一回、次の試験をということはやらなくても、3日連続ぽんぽん ぽんとやってもいいですよね。だめですか。 ○丹野委員 この文言からいきますと「異なった日」ということだから、何も8週間待 って、そのときからということではないと、審査する時も思っているんです。 ○重藤委員 入院時は3回。あとは、例えば、月に4回したら、もう普通の塗抹培養で も保険は削られるということです。 例えば、3回陰性なので、どうも結核らしいけれども、もう2回追加してみようとい ったときに削られますね。ということは、退院させたいのだけれども、どんどんちょっ と追加して、3回目に1回陽性が出てしまったという場合に、ちょっと間をあけてまた 3回しますね。そうしますと6回ですね。1か月のうちに6回もあり得るんですが、確 実に削られてしまいます。ですから、保険診療の方の考慮をしていただかないと、現場 は動きません。 ○坂谷部会長 ほかの委員、いかがでしょうか。加藤委員、川城委員、何か御意見ない ですか。加藤委員。 ○加藤委員 今の培養とPCRの組み合わせで考えてみると、PCRというのは、死菌 でも陽性になることがありますから、培養、陰性、陰性でPCRをやったばかりに陽性 になってしまう。それは余り合理的ではないわけですね。 ですから、培養、陰性、陰性、もう一回陰性であれば、その間の陽性は死菌だと見る のが普通ですので、そこは書き方の工夫がいるかなと思います。 ○坂谷部会長 どうぞ。 ○丹野委員 今の加藤先生の話ですと、入院基準のところもちょっと心配になってきま す。塗抹陽性はいいんですけれども、塗抹陰性で培養もしくはPCR陽性という場合に、 今、先生おっしゃったように、PCR陽性は死菌の場合もあり得るとすると入院基準と いうのはちょっと不安です。 ○重藤委員 入院の場合には、まだ治療が入っていないわけですから、出れば生きた菌 であろうということで、治療途中の核酸増幅は死菌の場合が多い。ですから、使い方と して、入院時には進めるけれども、治療経過を見るためには進めないというのはそうい うことです。 ○丹野委員 もう一つ、入院の基準で培養が陽性というのも配したんです。培養で陽性 が出るまでの間、先ほど言ったように、8週間ずっとどうなるのかな。 ○重藤委員 ですから、順調に治療が進みそうな方であれば、それこそ今更、入院する 必要はないと考えられるけれども、2ページですが、以下のiかiiに該当する場合には、 やはり確実に治療、もしくはちょっと遅まきながらも何らかの薬剤耐性があった場合、 感染が起きる可能性も考えて入院が望ましい。特に薬剤耐性、治療中断があったり、外 来治療中に菌量の増加が見られたというのは、特に薬剤耐性の可能性が高いということ です。 ○丹野委員 今、勧告をすることになるので、そうしますと、先生からの届出を見て、 菌は今のところ陰性だけれども、こういう条件が書いてあれば入院勧告をするというこ とになりますか。 ○重藤委員 なると思います。 ○丹野委員 わかりました。 ○三宅補佐 全部陰性でいいんですか。 ○重藤委員 というのは、培養というのはすぐ出ないからです。 ○三宅補佐 少なくとも陽性が出るまでは。 ○丹野委員 それまでほっとく。 ○重藤委員 ほっとくというか、それは勧告をかけるかどうかというのは、法的なもの ですね。医学的に見て、した方がいいですよと進めることはしますね。 ○丹野委員 現実にはそうですけれども、こちら側とすると、72時間に勧告をしなけれ ばいけないという中で、実はちょっと一例があって、ある病院で3日間検痰したんです ね。  2日目までの菌陰性結果で保健所には届出が出されたのですが、専門の病院に送るこ とになり、転院当日に3日目の喀痰で塗末陽性だったので看護記録等には記載し、専門 病院に入院になった患者さんがいました。その後転院先の病院からしばらくして入院届 が出され、なぜ勧告をしないのかという問いで保健所としては初めて菌陽性結果の情報 が入ったのです。 そういうすき間ができることがあるのかなと。保健所が届出医療機関にもう一回聞け ばよかったのかもしれないんですけれども、届出の用紙で陰性と書いてあれば、これは 当然、勧告は必要ない。入院したと聞いても、感染を抑えるための入院ではなくて、個 人的な入院だろうという意識があったのです。 先生の方で、これはおそれがあるので入院勧告してくださいというようなことを言っ てもらえればいいのかなと。 ○重藤委員 いいですか。だから、2ページの1行目「以下のiかiiに該当する場合」 でなければ、やはり塗抹が陰性であれば、すぐに入院勧告がかかるわけではない。 ○坂谷部会長 もう一度、元へ戻って、退院の基準案のことで話が始まっていますから、 3ページの核酸増幅法を入れる、残すか削るかの話に戻ります。 ですから、これは退院させなければならない基準ですね。だから、患者はずるずる入 っておきたい。あるいは医療側が入れておきたいというようなことがあっても、こうい う事実が判明したときには、もう退院させなければならない。こういうことの材料に使 うための判断基準ですね。 だから、入院の希望があって、もっと入っておきたい、家族が入れておきたいという ようなことがあっても、こういう事実を提示すれば、少なくとも37条によるところの延 長というのはもうない、こういうための基準に使うわけで、別にそれがおしりをたたく ようなことでなくても、ここまで延長したからもういいだろうというぐらいでいいわけ でして、ということなんですね。 ○丹野委員 その基準でやることについては、保健所としては、問題ないんですけれど も、迷ってしまうということがないようにしていただけるといいと思います。 今も、直近の菌検査で陰性確認できた場合には、退院という形でやっておりますので、 そこが3回培養陰性なり、PCRでもいいですし、何しろ3回陰性確認できていればい いという基準であれば、それに基づいて保健所は対応できると思いますので、それはど ちらでもいいと思っています。 ○坂谷部会長 そうですね。それから、重藤先生。三宅補佐の方から話があった、3回 は3回とも培養でなくてもいいだろう。先ほど、議論はもう済んだかもしれませんけれ ども、2回ないし1回は培養。それで、残りの1回か2回はPCR。ただその場合に、 培養がマイナスになったからといって、PCRもマイナスかと思ってやると、陽性だと いうことが逆に多いんですね。だから、それは比較的かえって逆。現場ではそうなんで すよ。 というようなことがありますけれども、確かにそういう使い方をされる方もあります から、ここにはPCRを残して、平山専門官がおっしゃった培養または核酸増幅法が陰 性結果が得られたことで確認することとするが一番いいかもしれませんね。 ○三宅補佐 そうしましたら、これをもう少し通知等で落とすときに、言葉を考えたい のですが、確認ですが、培養または核酸増幅法がともに連続3回陰性だと。それは組み 合わせもOKなこと。少なくとも1回は培養であること。そういう条件を付けた方がよ ろしいですか。 ○坂谷部会長 内容的には全くおっしゃるとおりだと思います。 ○三宅補佐 では、あとは法令等を協議して。 ○坂谷部会長 加藤委員何か。 ○加藤委員 先ほど、私が申し上げたように、例えば、2回培養陰性の間の1回PCR 陽性というのは、意味がない所見の可能性があるわけですね。だから、3回培養陰性で 1回の陰性はPCRで置き換えてもいいというような、何かそういう言い方でしょうか ね。 ○重藤委員 はい。私もそう思います。 2回培養陰性で、3回目をPCRで代用してもいいというのであれば、何か現場でも スムーズに考えやすいんですけれども、間に入ってしまったPCRを1回陽性があった 場合に、ではこう書かれると無視できない。私たちは、これは死菌だよと思うんですけ れど、これでいくと無視できないですね。 させなければならないという基準と考えれば、別にそれでなくてもさせることができ る基準に該当すればいいといえばいいんです。 ○坂谷部会長 菅沼委員。 ○菅沼委員 ちょっと御質問ですが、そうしますと、培養2回陰性でPCRが陽性、死 菌であろうけれども、出た場合は、3回陰性が出ないと退院ができませんね。すると、 最後のPCRでプラスに出るとまた延長ということになりませんか。 ○坂谷部会長 いや、そのとおりです。だから、入院をさせておきたければそうすれば いいんです。本当にそうなんですよ。 だから、そのときに、本来は時間がこのごろですと、ムジットで液体培養になります から、8週間もかからなくて6週間ほどで最終結果が出ますけれども、だけど本来はも う一度培養でやる方が、6週間延びますけれども確実です。 ○重藤委員 結局、まだDOTSの受入れができていないような、退院すると治療脱落 の危険性が私たちから見て高いような人は、なるべく退院させたくないということです ね。その方が長い目で見て確実に菌を陰性化できる。 そういう人が、もう2週間待って培養陰性出たらねということで、その間にいろいろ 体制を整える。これは大丈夫というか、体制も整っていてちゃんと治療も継続できると いう人は、させることができる基準でどんどん退院していただいて結構です。させなけ ればならない基準はということだと思うんですが、そうではないでしょうか。 ○坂谷部会長 川城委員。 ○川城委員 今のこの議論の最初の部分に戻ってしまうかもしれないんだけれども、さ せなければならないところの基準は、培養3回連続陰性。それが出たときはさせなけれ ばならない。そこにはPCRはもう書かない。というのは、どうして書き込んだのでし たか。先ほど、専門官が説明してくれたような気がするんですけれども、抜いたら一番 シンプルでわかりやすいのではないですか。 ○三宅補佐 先ほど、私が理由として挙げたのは、やはり人権の解除の人権制限を解除 するところをなるべく早くという時間的なものを考えて、今の御議論を聞くと、かえっ て長くなるという話もあります。 ○川城委員 もう一つ、学会のPCRの使い方の勧告の中では、他人には使わないとい うことになっているんです。それは先ほどの死菌問題です。ということだから、シンプ ルに培養3回連続陰性。このときは帰さなければならないよというのはいかがでしょう か。だめですか。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。 ○三宅補佐 事務局、一応、我々の考えを述べただけで、培養3回という話の方がより 学問的または全体的に考えてよろしければ、そちらの方が勿論いいと考えております。 ○坂谷部会長 重藤委員、いかがですか。 ○重藤委員 私も、結局のところ、その方がすっきりしてわかりやすいし、学会の今ま での考え方とも矛盾しない。 ○坂谷部会長 保健所さんはいかがですか。 ○丹野委員 保健所もそのようにしていただいた方が見やすいし、PCRだと、先生方 おっしゃるように、診査会でも死菌かね、みたいな話が出てきますので、むしろその基 準の方がすっきりすると思います。 ○坂谷部会長 加藤委員もよろしゅうございますか。 ○三宅補佐 まとめさせていただきますと、1)は、異なった日の喀痰検査おいて連続 3回の培養がともに陰性結果が得られたことで確認するというのが「1)退院させなけ ればならない基準案」。 自動的に多分2)の方は、連続3回の塗抹陰性または培養の陰性の結果が得られてい るということで、ここも核酸増幅法を抜くということでしょうか。そして、これについ ては、組み合わせを認めるということでしょうか。 ○重藤委員 いいですか。塗抹陰性であったら拡散増幅はもうしない方がいいと思いま す。塗抹が入っていれば拡散増幅は必要ないです。 ○坂谷部会長 今のは先生、どこのことをおっしゃっているのですか。 ○重藤委員 (3)の2)の(2)で、塗抹陰性または培養核酸増幅法の陰性ですけれども、 この場合の核酸増幅法陰性というのは、塗抹陰性で全部カバーできている。かえって、 核酸増幅を入れると敏感で陽性にどんどん出かねない。出るであろうと思います。 ○坂谷部会長 (2)も核酸増幅法は取るということですね。三宅補佐、よろしゅうござい ますか。 ○三宅補佐 はい。いいと思います。あと、何かあれば。 ○安里補佐 済みません。もう一度だけ確認をしたいんですが、退院させなければなら ない基準の方で、今、3回連続培養でいこうというお話になりましたが、2回培養の後、 PCRで陰性になる方もいらっしゃるんですか。であれば、例えば、連続3回培養にす る。ただし、3回目については核酸増幅法を選んでもよいという形で、現場の裁量を増 やしておいた方が、早めに確実に出られる方が出られたりとか、そういうことはあるん でしょうか。 ○坂谷部会長 いかがですか。 ○安里補佐 それで、確認で言いますと、連続3回という言い方を、例えばPCRでプ ラスが出たときにカウントしませんというのを付けまして、例えば、PCRは今おっし ゃられたように、死菌でもプラスになることがあるということを考えると、2回連続培 養になったときに確認でPCRをやって、プラスになりました。そのときは、次、培養 でやって、もう一回マイナスになればそれでいいですよとか。 もう一回、PCRでマイナスになってもいいのかどうかはちょっとこの場でお聞きし たいんですが、そういう形で、もし1日でも早く出られる方がいるのであれば、そうい うその要件を残しておきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。 ○坂谷部会長 なるほど。 ○重藤委員 医学的には、問題ないと思います。 ○坂谷部会長 文章上、そういうふうに書けますか。 ○安里補佐 はい。書きぶりは工夫します。書き方はいかようにもできますので、そち らはまた事務局の方で案を作成しましてお持ちしたいと思うんですが、基本的には連続 3回の培養とする。ただし、3回目については、核酸増幅法に変えてもいいというとこ ろにまた例外を付けなければいけませんが、書き方を誤解がないように工夫をして、ま た御相談をさせていただければと思っています。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。ということに決したいと思います。ですから、 少し、また追加の作業が要りますけれども、専門家とともに作業をしていただきたいと 思います。ほかの委員の方々もよろしゅうございますか。 (「異議なし」と声あり) ○坂谷部会長 ありがとうございました。それでは、この件に関しまして、そのほかの 質問いかがでしょうか。 ○菅沼委員 4ページの「退院を検討する要件(案)」の(3)感染拡大防止の措置という ことは、具体的にはどういうことかということと、退院後の住環境が十分整備されてい るということも、具体的にはどういうことかというのを御説明いただけますでしょうか。 ○坂谷部会長 事務局、いかがでしょうか。 この件に関しましては、今日は、一般的な退院基準についてのみ合意をいただきまし て、「5.今後の検討課題」に関しましては、まさしく今後の検討課題ということで、 ここに書かれている要件(案)のみについて検討するということではなくて、例えば、 こういうことについて検討を続けてやりましょう。こういうことでございますけれども、 せっかく御質問が出ましたから、事務局の方から。 ○三宅補佐 まさにこれからこれをどういうふうに表現するのか、どのような条件にす るのかを詰めていっていただくことを考えております。 ○坂谷部会長 よろしゅうございますか。ありがとうございました。そのほかいかがで しょうか。どうぞ。 ○菅沼委員 入院基準についてもよろしいでしょうか。 ○坂谷部会長 はい。 ○深山委員 専門のところは、いつ退院していただくかが問題になると思うんですけれ ども、一般のところで、やはり入院のところが非常に問題になってきます。 現状では、入院勧告を行うことができるとか、入院すべきであるというようなことで、 余り強制力がなくて、明らかに感染性があるにもかかわらず、全然、耳を貸さずにいな くなってしまう方がときどきおられるんですね。 そういう方に対しての強制力が、現在では余りないので、重藤先生がおっしゃったよ うに、近い将来には、場合によっては強制力を発揮できるような内容にしていっていた だけたらいいなと思います。要望です。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。何か事務局の方から御意見ありますでしょうか。 ○三宅補佐 長期の入院患者に対する対応の今後の検討課題のところの1つといたしま して、まさに治療にいやに非協力的な患者にどう対応していくかといった論点も同時に 検討を行いたいと考えております。ありがとうございます。 ○坂谷部会長 それでよろしゅうございますか。検討課題のひとつに入れてございます。 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。 ○丹野委員 済みません。確認という意味でもあるんですけれども、今まで、入院させ る方は喀痰で陽性ということだったんですけれども、これで言いますと、胃液とか気管 支鏡検体でも塗抹陽性でいいということでよろしいでしょうか。 ○坂谷部会長 そうですね。 ○三宅補佐 そうですね。こちらの差し替えの資料2−2を見ていただくとわかりやす いと思うんですが、塗抹の陽性であれば、そのまま入院勧告だろう。塗抹が陰性である か、または培養、塗抹が陰性であるけれども、培養または核酸増幅法であれば、この症 状があったり、近い将来に感染性が高くなるという更に要件を課した上で、入院勧告を 行うんだろうと考えております。 また、それのお答えにプラスして何かありますか。 ○丹野委員 ということで、今まで胃液であると、喀痰ではないということで対応して いたんですけれども、それもいいということでよろしいんですか。 ○安里補佐 今の基準案の書き方は、喀痰塗抹陽性にしていますので、胃液で陽性の場 合が入らない書き方になっているんですが、これで何か問題がありましたら、この場で 言っていただければと思います。 ○坂谷部会長 いかがですか。1ページの一番下ですね。「(2) 喀痰塗抹陰性であるが、 喀痰、胃液、気管支鏡検体で培養もしくは核酸増幅法が陽性であり、以下のiかiiに該 当する場合」とこういうことですね。 ○安里補佐 はい。そうです。済みません。最初の喀痰で陰性だった人は、胃液の検査 で陽性になれば入れるというのが今の1ページの(2)に書かれている内容になっておりま す。 ○丹野委員 というのは、今まで、喀痰で塗抹陽性の方が対象ということで保健所では 対応していたんです。 ○坂谷部会長 重藤委員。 ○重藤委員 感染性が高い一番上は、喀痰の塗抹陽性ですね。その他、喀痰でない気管 支液からの塗抹陽性、胃液からの塗抹陽性は、喀痰の塗抹は陰性の人の場合ですね。喀 痰塗抹陰性で胃液の塗抹が陽性の場合には、とにかく塗抹陰性に入る。この表で2番目 の枠に入る。 ですから、その他で塗抹陽性は、やはり喀痰は塗抹陰性、その他、菌陽性ということ で、勿論、治療中に改めて菌量が増えたとか菌が検出された場合には、入院対象になる ということだと思います。 ○坂谷部会長 1ページの最後の行、(2)の1行目及び2ページの1行目だけではなくて、 その次のiかiiを併せ持っている場合ということであります。単純に胃液陽性というこ とだけではなくて、いかがでしょう。 ○丹野委員 そうしますと、届出の中に胃液で陽性だけれども、コメントとしてこうい う状況であるということがあれば、入院の対象になるということですね。 ○坂谷部会長 そういうことですね。 ○重藤委員 ですから、画像上、空洞があってせきも激しい。でも、なかなか喀痰の塗 抹が出ないという場合には、やはりこれは入院すべきと、そういう条件があった場合だ と思います。 ○丹野委員 そうしますと、もしそのコメントがなくてよくわからない場合には、保健 所の方からお聞きするという形になりますかね。あと、ちょっとお聞きしたいのですが、 プラスマイナスというのは陽性というとらえ方でよろしいんでしょうか。 ○坂谷部会長 先生、プラスマイナスという結果は出ますか。 ○重藤委員 プラスマイナスは、イコール要再検ということであったと思います。プラ スマイナスは、以前のガフキー1号相当ということで、プラスマイナスでもPCR陽性 なら、私は塗抹陽性と見ていいと考えております。原則、要再検ですね。 ○丹野委員 現実的な話で、そういう形で届出が出るときがあるんですけれども、それ はどのように判断したらよろしいですか。 ○重藤委員 やはり、そこまでは総合的な判断というか、診査会の機能になるのではな いかと思います。 ○坂谷部会長 今、原則を決めているわけですから、先生がおっしゃる御質問について は、それこそ保健所から施設側へ指示が返戻していただければいいわけで、プラスマイ ナスとしか書いていないのは、その後、再検されたらいかがでしたかとか、胃液プラス としか書いてないですけれども、せきが激しくて、入院が必要なわけですかとか、御質 問になればいいことだと思うんです。 ○丹野委員 そのことは聞いても特に失礼ではないということですか。わかりました。 ありがとうございます。 ○坂谷部会長 加藤委員。 ○加藤委員 今の(3)の(2)ですけれども、この書きぶりも問題ですけれども、胃液の 塗抹陽性はこれでは入らないことになりますか。 ○三宅補佐 入らないですね。 ○加藤委員 入れた方がいいですね。 ○三宅補佐 喀痰、胃液、気管支鏡検体で塗抹(ただし喀痰を除く培養もしくは核酸増 幅法で陽性があり)という、そういうふうな言葉はもう少しきれいにするとしても。 ○三宅課長 最初に塗抹陰性とあるからいいのではない。 ○三宅補佐 そうですね。最初に喀痰塗抹陰性であるが、喀痰、胃液、気管支鏡検体で 塗抹培養もしくは核酸増幅法が陽性でありの方が、現場としてはよろしいということで すかね。ただし、勿論、喀痰の塗抹陽性は(1)に入るから関係ない。では、それでやらさ せていただきます。ありがとうございます。 ○坂谷部会長 加藤先生、よろしゅうございますか。 ○加藤委員 はい。結構です。 ○坂谷部会長 今いただきました御意見につきましては、事務局で整理をしていただき まして、一般的な入院基準(案)への反映の検討をお願いいたしたいと思います。 具体的修正につきましては、事務局で作業を行っていただくとともに、本部会として 取扱いにつきましては、私に一任をいただきたいと思いますが、よろしゅうございます か。 川城委員。 ○川城委員 今もう座長が締めの言葉に入ってしまったんで言おうと思っていたんです。 一般的な話ですけれども、喀痰の検査の不確実性。具体的に言うと、うちの病院であ ったんですけれども、塗抹陰性だというふれ込みで来て入院させてしまったら、ガフキ ー9号だったということが起こる。 この文書を読むと、例えば(2)の上から3行目。「塗抹では陰性で」と書いてある んですけれども、この塗抹陰性はすごく意味が深いことで、これは確実な検査をした上 での言葉ですね。ただ塗抹陰性、たんを検査して1回、つば出して1回陰性、「はい、 どうぞ」という意味ではないということで、これは長年皆さん苦労していることだと思 う。そういうことというのは、こういう通知みたいなものの中に、そういうことを喚起 するという意味のことを書けないものだろうかと、私は長年ずっと思っているんです。 しっかりやれよと、喀痰の検査というのは、血液の検査と違うんだぞということを何か うまく書いていただければ、私は非常に幸いです。 以上です。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。 ○安里補佐 事務局として、そういうような文言を入れていきたいと思います。また、 表現ぶりとか、しっかりやれよというときに具体的にこうしてくれというようなものが ありましたら、そういうこともアイデアいただきながらまとめたいと思いますので、よ ろしくお願いいたします。 ○坂谷部会長 何か米印付けてすべきようなことですよね。実際、そういうことはよく あるんです。こんなものが出るはずだということですけれども、マイナスで送られてき まして、入ってそれ見ろ、9号出ている、10号出ているということはよくありますね。 川城委員、ありがとうございました。 ただいま、入退院基準に関しまして、御検討いただいた中で話題となりました薬剤耐 性等による「長期の入院患者に対する対応」につきましては、どのように検討を続けて いくか。総論的には、4ページの「5.今後の検討課題」というところにありますけれ ども、具体的にどういう作業をするかということに関しまして、事務局から何か御案が ございますでしょうか。 ○三宅補佐 「長期の入院患者に対する対応」につきましては、現在、平成19年度の厚 生労働科学研究費の補助金でございます新興・再興感染症研究事業におきまして、結核 に関する研究を本部会の加藤委員になさっていただいております。その研究課題の中の 追加の課題として、この問題に関する調査・研究をしていただきまして、その報告を基 にして、部会において検討していけたらどうかと考えております。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。加藤委員、いかがでございましょう。 ○加藤委員 かしこまりました。承ります。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。こういうふうに事務局の案でいこうかと思いま すけれども、御意見、御質問等がございましたら、よろしくお願いします。よろしゅう ございますか。 それでは「長期の入院患者に対する対応」につきましては、まず加藤委員の分担研究 として調査並びに研究を進めていただくという形でいきたいと思います。御異議ござい ませんでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○坂谷部会長 ありがとうございました。それでは、加藤委員よろしくお願いします。 なお、本調査・研究、これは今後の部会における検討材料となりますので、事務局は 調査等が円滑に進むように、配慮をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたしま す。 次に、報告事項に進みますけれども、時間の都合上、先にすべての報告を行った 上で、皆様からの御意見、御質問等をお聞きいたしたいと思います。 まず、報告1)「結核の接触者健診手引きについて」でございます。事務局より説明 をお願いいたします。 ○平山専門官 よろしくお願いします。 報告資料1にあります「結核の接触者健康診断の手引き」は、平成18年度の厚生労働 科学研究の「効果的な結核対策に関する研究班」の分担研究の成果として、主として、 保健所職員向けの結核の接触者健診の新たな技術指針として策定されております。 この新指針は、平成11年度の厚生科学研究班が作成した「保健所における結核対策強 化の手引き」を基礎としたものであり、その改訂版といえます。 この手引きを保健所における接触者健診の参考として活用していただけるように、各 自治体に事務連絡として送付する予定としております。 本日は、これを旧手引きと比較しての主な変更点について説明していきます。 1つ目としまして、この新手引きでは、感染症法に基づき、法第15条による調査と法 第17条による健康診断の組み合わせなどを結核の接触者健診の効果的な実施方法につ いて解説しております。 また、2番目としましては、対策の発端となった結核患者の感染性の評価を喀痰検査 の情報を基本として呼吸器症状や胸部X線検査所見等の因子も考慮し、感染性の有無を 判断しております。 感染性ありの場合は、更に、感染性の高さを評価しております。喀痰塗抹陽性か否か を基本とし、高感染性と低感染性の2つに区分しております。 感染性の評価に当たって、従来は、喀痰塗抹検査のガフキー号数とせきの持続期間の せきを感染危険度指数と定義し、同指数の算定結果に基づいて、初発患者の重要度区分。 最重要、重要、その他の3区分を行っていましたが、新しい手引きでは、検診対象とな る接触者自身の感染発病リスクの評価をより重視したいという意向から初発患者側の感 染性の評価については、2区分に単純化しております。 3番目としまして、感染性の状態になった最初の時期について、初発患者の特徴によ り、症状出現時期もしくは診断日より一定期間のさかのぼりを考慮するように求めてお ります。 例えば、喀痰塗抹陽性であるが、かなり以前から慢性的なせき症状があった ために、結核の症状出現時期の特定が困難で、胸部X線写真等の経過から見ても、発病 時期の推定が困難な患者については、診断時点から少なくとも3か月前までを感染性期 間として接触者調査の実施を求めております。 4番目としまして、接触者の評価。 これにつきまして、旧手引きでは、最濃厚接触者、濃厚接触者、その他の接触者とい う区分でありましたが、接触者自身の発病リスク等も考慮すべきなので、新しい手引き では次のような区分に改訂しております。 まず1つ目のハイリスク接触者としまして、乳幼児及び免疫不全疾患や治療管理不良 の糖尿病患者、免疫抑制剤や副腎皮質ホルモン等の結核発病のリスクを高める薬剤治療 を受けている者。 また、臓器移植例、人工透析患者など、感染した場合に発病のリスクが高く、重症結 核が発症しやすい接触者。 (2)としましては、濃厚接触者、非濃厚(通常)接触者と分けております。 5番目としまして、接触者健診の優先度。これにつきましては「初発患者の感染性の 高さ」だけではなく「接触者の感染・発病のリスク」の評価も組み合わせて、検診の優 先度を最優先接触者、優先接触者、低優先接触者と分けております。 また、この優先度の高い順に同心円上に接触者健診を実施するとしております。 6番目としまして、感染の有無に関する検査として、従来はツベルクリン反応検査が 用いられていましたが、今回の新手引きでは、日本結核病学会予防委員会の指針等に基 づき、QFT検査を第一優先としております。 ツベルクリン反応につきましては、QFTが実施できない場合の検査、または集団感 染対策でQFTを効率的に実施するための補助的検査としております。ただし、小児、 特に乳幼児に対するQFT検査につきましては、現在のところ、妥当な判定基準が確立 していないため、当面はツ反を基本としております。 7番目としまして、発病の有無に関する検査として、潜在性結核感染症が疑われるも のの、治療を実施しない接触者につきましては、2年間、おおむね約半年感覚で胸部X 線検査等による経過観察を推奨しております。また、適当な時期に実施されたQFT検 査やツ反が陰性の接触者は、その後、6か月後、1年後などの経過観察目的の検診は原 則として不要としております。 以上であります。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。御質問は後で一括してお受けします。 次に、報告2)といたしまして「平成12年度全国結核緊急実態調査時における薬剤感 受性試験結果について」加藤委員より御説明を願います。 ○加藤委員 この調査につきましては、平成11年結核緊急事態宣言が発されたに伴いま して、平成12年、全国の結核緊急実態調査というのが行われました。 このとき、慢性排菌例という患者さんの調査が併せて行われていまして、この慢性排 菌例というのは、登録後2年以上経過して、1年以内に菌陽性であった者。こういう定 義でございます。 この際の疫学調査につきましては、既に発表はされておったんですけれども、薬剤感 受性検査のデータについては、未発表のままでございましたけれども、昨年の10月にW HOがExtensively Drug Resistant Tuberculosis(XDR−TB)、日本語の仮訳と しまして超多剤耐性結核というのを定義、発表したんですけれども、この合致する例が どの程度あるかというのを検討したものであります。 本来であれば、データを資料として配付できるようにするべきところでございますけ れども、誠に申し訳ございません。現在、学会誌に投稿中であるということで、詳細を 配付することができません。結果の概要につきましては、おおむね400量を若干超える 集まった菌株の中の約4分の3程度が、多剤耐性に該当しまして、更に、その多剤耐性 の株の半数以上が、このWHOが新たに提唱したXDR、超多剤耐性の定義に当てはま る。こういった結果でございました。 この超多剤耐性につきましては、結核療法研究会における調査結果も既に発表されて いまして、この中では、薬剤耐性の約3割程度というデータがありますけれども、今回 の慢性排菌例というのは非常に長い経過を持っているという例ですので、そのデータよ りかなり大きい多剤耐性の半数以上が、超多剤耐性に該当するという結果でございまし た。 以上でございます。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。 それでは、最後の御報告3)に移ります。「結核研究所あり方検討委員会報告につい て」でございます。工藤参考人より御報告を願います。 ○工藤参考人 工藤でございます。このような機会をつくっていただいてありがとうご ざいます。 早速、御報告をさせていただきたいと思います。お手元の、結核研究所あり方検討委 員会報告書というのをごらんいただきたいと思います。 財団法人結核予防会結核研究所、以下結核研究所と申しますが、これは平成14年に外 部評価委員会の評価と在り方への提言を受けまして、この5年間に組織並びに業務の改 革あるいは方向転換を行ってまいりました。この平成14年の提言は、当時の国民の健康 ニーズの変化あるいは国庫補助の見直し、世界的な結核ニーズの増加等に対応するため になされたものでございます。 この外部評価委員会の提言後、約5年間を経過したというところで、財団法人結核予 防会の要請によりまして、この間の実績や組織改革の成果などを検証して、さまざまな 環境の変化や国内外のニーズの変化を踏まえた今後の在り方を探るために、再び外部有 識者による「結核研究所あり方検討委員会」が組織されて検討されたものでございます。 検討委員会は、この冊子の1ページを開いていただくとございますように、結核及び 呼吸器あるいは感染症対策に関する基礎及び臨床の専門家、地方及び中央の保健医療政 策の専門家、医療経済の専門家等の8名から構成されております。 検討委員会は、平成18年7月以来、本年の3月まで合計5回の検討会を開催いたしま して、このたび、最終報告書がまとめられましたので、その要旨を御説明したいと思い ます。 内容でありますが、お開きいただきますとここにあるように、 (1)「趣旨」。 (2)「結核の現状と今後の対策」。 (3)「結核研究所の実績」。 (4)「目標と期待される役割」。 (5)「役割遂行のための必要な活動のあり方」。 (6)「人材と財源の確保」。 (7)「まとめ」。 この7項目から成っていまして、ほかに(8)「資料」が添付してございます。 まずは、1ページの「結核の現状と今後の対策」でございます。 結核は我が国でも減少はしております。しかし、一方で、生活困窮者あるいは外国人、 HIVの感染者などの結核の増加が予測されております。更に、地域間格差やあるいは 集団感染、院内あるいは施設内感染といった複雑化が進んでおります。 こういうことから、今後、半世紀以上、結核は我が国の公衆衛生上の重要な課題とし て残るということ、また危機管理上の観点から技術的な適正性あるいは人材確保等の面 からも対策の再構築が必要になると理解しております。 また、人口の移動あるいは交通手段が発達した現在、今日、世界的な取組みがなくし ては、自分の国の結核制圧も成り得ないことが、世界的な認識になっております。特に 世界の結核の60%以上を占めるアジア諸国を背景にしている日本では、こうしたアジア 諸国等の結核対策を無視しては成り立たない、そういった認識も持つ必要があろうかと 思います。 次に「結核研究所の実績」が2ページにございます。併せて別添資料に結核研究所の 業績というのが後ろの方に付いてございますのでごらんいただきたいと思います。 結核研究所は、御存じのように、1939年の設立でございまして、以来、日本の結核対 策の要として歴史的に他の機関ができない重要な役割を果たしてきたということを改め て確認いたしました。 最近では、短期化学療法の開発と普及、結核発生動向調査システムの開発と解析、結 核菌の薬剤耐性サーベイランスの中心的な役割、日本版DOTSの開発と普及、あるい は分子疫学研究の対策への応用、感染の新しい診断法であるクオンティフェロンの導入 と対策への応用、新抗結核薬の研究開発、更に、中央や地方行政への対策に関する支援 や普及、そしてWHOあるいはJICA等と協力して進めております日本を代表する国 際協力への関わりといったものが挙げられます。 次に、3ページにあります「目標と期待される役割」に関してでございます。 我が 国が、早期に罹患率10万対10といった低蔓延国にすること。更に、続いて、100万対 1の制圧を達成する。そのためには、アメリカのCDCあるいはイギリスの健康保全局 (HPA)のような機関の存在が必須であろうと思いますが、結核研究所はその役割を 果たすことができる唯一の機関ではないかと評価しております。今後は、この目標に特 化した活動が期待されるとする見解を示しております。 国や地方自治体が、新感染症下で適切な結核対策の政策立案あるいは政策の実施及び その評価が行えるような科学的な根拠を示し、技術的な支援を行う機関としての役割は、 従来に増して重要になるのではないかと考えております。 また国際医療協力におきましても、我が国が特に医療の分野で得意としてきた結核分 野の協力に関して、中心的な機能を期待されるのではないかということであります。 3ページから5ページにかけて記載してございます「役割遂行のための必要な活動の あり方」であります。 従来から4つの機能を持って活動しておりますが、第1に「研究」、第2に「対策支 援」、第3に「抗酸菌レファレンスセンター」、第4に「国際協力」でございます。 これら4つの機能は極めて妥当であると評価いたしましたが、その中でも、「研究」 は、研究所すべての活動の基礎でありまして、結核対策強化のための研究の強化、実施 体制の見直しによって、有用かつ質の高い成果を産出して社会への還元を推進すること としております。 また、「抗酸菌レファレンス機能」、「対策支援機能」については、ニーズの動向に 沿った活動の見直しをすること。特に、菌バンクの設立の重要性が述べられております。 「国際協力」についてでありますが、結核研究所、RITという名前。これは国際的 なブランドになっております。とりわけ、アジア、更にはアフリカ等における戦略的な 拠点として本来の役割を果たしていく必要性を強調しております。 最後に6ページにございます「人材と財源の確保」であります。 定員等の減少によって、現在、研究所としての機能を維持するのに、まさにぎりぎり のところにあるのではないかと評価をしておりますが、今後、流動研究員あるいは外国 人なども含めて、さまざまシステムあるいは雇用形態を用いた研究員の確保に関する提 言をいたしております。 その重要な機能を維持するために必要な基本財源の確保については、従来どおり、ま た先進諸国のように、中央(国)の関与がこれからも一層必要であるとともに、研究所 自らによる多様な競争的資金の獲得を努力するように、こういう提言を行いました。 以上が要旨でございますが、このような報告書に示された方向性に沿って、結核予防 会及び関係諸機関におかれては、研究所の今後の方向付け、改革を進められるように期 待をしております。 以上でございます。 ○坂谷部会長 工藤先生、ありがとうございました。以上3つの御報告でございました が、委員の皆様方から、この3つを兼ねまして、何か御意見ございますでしょうか。あ りましたらよろしくお願いいたします。ないようでございます。ありがとうございまし た。 それでは、全体を通じまして、何か委員の方々及び工藤参考人から、全体を見渡して 何か御発言、是非ともこの機会に御意見あるようでしたらお願いをいたします。 工藤先生。 ○工藤参考人 今、御報告をさせていただいたことにも関わりがございますけれども、 1つ申し上げたいことがあります。 今日、中蔓延国、更に低蔓延国へ移行していくというときに、国全体としては、技術 的な適正性、あるいは専門家の人材確保というのが非常に重要な課題になってきており、 また難しくなってきていると思います。 これについて2つの点で申し上げたいと思います。 1つは、先ほどの報告書でも申し上げたように、一定の集中化というか、アメリカの CDCあるいはイギリスのHPAといったような中央的な組織。ここに人材、財政的な 集中的な投入を行っていくということが必要なのではないか。これは、先ほども申し上 げましたように、結核研究所がその役割は十分に果たし得ると私自身は思っております。 もう一つの問題は、戦中、戦後の10万対600あるいは700といったような時代から、 今日の10万対20というような結核罹患率になってまいりますと、国民医療費の中での 結核医療費は非常に減ってきている。これは、戦後、国を挙げて、営々とした努力の中 で達成した、この60年間の成果だと思いますが、同時に、患者さんが減ってきた今こそ、 逆に結核医療の不採算性の問題に手をつけた方がいいのではないかと思っております。 不採算がゆえに、結核医療から手を引く、あるいは人材が集まらない。こういうこと を是非とも避けねばならないのではないか。タイミングとしては結核予防法が廃止され て感染症法に統合されたことは大変いい機会であって、その視点で是非、御検討いただ けないかと考えております。 以上でございます。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。 これで、すべての議題と御報告、御意見を終えることができました。 事務局から最後に何か伝達事項がありましたら、お願いいたします。 ○三宅補佐 ありがとうございました。次回以降でございますが、先ほども申し上げま したが「長期の入院患者に対する対応」につきましては、加藤委員の研究課題といたし まして、調査・研究をまずは進めていただきました上で、本部会におきまして御検討を お願いするということで考えたいと思います。 また、並行して、本部会におきましては、ほかにもいろいろ課題がございますので、 必要な検討課題につきまして御議論いただきたいと考えております。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。方向性につきまして、先ほど、工藤参考人から 御意見もありましたけれども、そのほか御意見、御質問がありましたら、この機会にど うぞ。ございませんか。 川城委員。 ○川城委員 希望ですけれども、国立病院機構で退院基準、入院基準をやって2年半に なっているんですが、データ、楽しみに待っています。 以上です。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。最後の2年目に入りまして、2年が過ぎました といいますか、それでデータをまとめつつございますので、もし機会をいただければ、 本部会でも御報告を申し上げたいと思います。 事務局からほかに何かございますか。 ○三宅補佐 今後の部会の日時・議題等におきましては、追って事務局より連絡をさせ ていただきますので、よろしくお願いいたします。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。わずか2分ほどですけれども、時間を残しま して終了いたしました。本日の部会、これで閉会にいたしたいと思います。 本日は、お忙しい中、誠にありがとうございました。御苦労さまでございました。   (照会先) 厚生労働省健康局結核感染症課 TEL:03−5253−1111 (内線2381) 1