07/07/26 第101回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第101回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成19年7月26日(木) 9:30〜 2 場所  厚生労働省専用第12会議室 3 出席者    委員  公益代表 : 鎌田委員、清家委員        労働者代表: 市川委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表: 輪島委員   事務局  鳥生職業安定局次長、坂口需給調整事業課長、        篠崎需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐、        佐藤需給調整事業課長補佐 4  議題  (1)労働力需給制度について        (2)その他 ○清家部会長  ただいまから「第101回労働力需給制度部会」を開催します。なお本日は北村委員、 山崎委員、成宮委員が欠席です。本日は最初に公開で、労働力需給制度についてご審議 いただきます。その後、一般労働者派遣事業の許可の諮問、有料職業紹介事業の許可の 諮問に係る審議を行います。許可の審査については、資産の状況等の個別の事業主に関 する事項を扱うことから、これについては「公開することにより、特定の者に不当な利 益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある」場合に該当するため、非公開とさせていた だきますので、傍聴されている方には、始まる前にご退席いただくことになることを予 めご了承ください。  それでは議事に入ります。最初の議題は「労働力需給制度について」です。事務局に おいて前回の部会の議論を踏まえて、検討課題について修正を行っていただいているの で、まず事務局から資料の説明をお願いします。 ○篠崎補佐  資料の確認からお願いします。本日の配付資料は3点です。資料1が「労働者派遣制度 に関する検討課題(案)」です。まず、初めにこちらを説明いたします。そのほかに資 料2-1、資料2-2ということで、「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進 に取り組む請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン」というものと、同じく 「発注者が講ずべき措置に関するガイドライン」という資料を配付しております。  まず、1つ目の議題の関係で資料1を説明いたします。前回の部会においては、いくつ かご指摘をいただき、それに基づき修正をしております。主な修正点を中心にご説明し ます。まず、全体として、前回派遣対象業務という中で、例えば登録型についてどのよ うに考えるかを盛り込んでいたり、その中で日々雇用型の派遣についてどのように考え るかという記載をしておりました。こういう登録型については、例えば対象業務に含め るのはどうかという意見もありましたので、全体として目的別に整理して、Iが「派遣 労働者の雇用の安定」という柱を立て、その中で各課題を整理しております。IIは「労 働力需給調整機能の強化」。IIIが「派遣元事業主・派遣先事業主の講ずべき措置」。IV で「適正な労働者派遣事業の運用の確保」という形で、目的を書きながら、その下に従 前の整理をしています。  まずI「派遣労働者の雇用の安定」の(1)登録型の派遣労働ということで、これは 前回書いていたものを登録型派遣という形で書いています。(2)日々雇用の派遣労働 は、1つにまとめておりましたが、日々雇用という形は登録型と分けてはどうかという ご意見もありましたので、別にして書いております。「登録型で、1日単位等ごく短期 で働く、日々雇用の派遣について、どのように考えるか」としております。  意見として、常用型の派遣、登録型に対して常用型派遣についても、労働力需給調整 機能を果たしているということを、きちんと課題として明確にしてはという意見もあり ましたので、(3)として、常用雇用型の派遣労働として、その上で検討課題というこ とで「派遣元に常時雇用されている常用雇用型派遣の場合、派遣元で雇用の安定が図ら れており、派遣受入期間制限のない専門的な26業務等の場合の雇用契約の申込義務は、 派遣労働者の雇用を不安定にしているとの意見があるが、どのように考えるか」という 形で、別途分けて常用型ということで書いております。  (4)の○の2つ目の部分で、雇用契約の申込義務について、従前は全体として3年を 超えない運用がなされているという記載をしておりましたが、意味がわかりづらい部分 がありましたので、修正をして「雇用契約の申込義務がかからないよう、派遣受入期間 制限のある業務についても、制限のない業務についても、3年を超えない運用がされて いる現状について、どのように考えるか」ということで、少し説明がわかりやすいよう に修正をしております。  続いて、IIの「労働力需給調整機能の強化」です。(1)事前面接等の派遣労働者の 特定を目的とする行為の部分です。修正したのは○の2つ目の部分と、3つ目を付け足し ております。ここについては従前の記載ぶりでは、事前面接という本来してはいけない ような行為が前提として書かれている、事前面接は事前打ち合わせとは違うのではない かというご指摘もありましたので、ここについては従前から言っているフレーズですが 「いわゆる」を付けて、「いわゆる事前面接」という形に修正しております。事前打ち 合わせというものをどう捉えるかがあるので、○の3つ目として「特定を目的としない 事前打ち合わせや事業所訪問について、どのように考えるか」という記載をしておりま す。  (2)は紹介予定派遣です。紹介予定派遣については従前の記載ぶりでは、直接雇用 されるときの労働条件の明示の時期等について、どのように考えるかとしておりました が、労働条件というフレーズを使った場合、実際に雇用契約を結ぶときや職業紹介をす る際の労働条件との紛れがあると。ここでどのように考えるかという明示の時期として は、紹介予定派遣後の雇用形態の大まかな見込み、そういう意味では労働基準法や職業 紹介の労働条件とまた違った部分の議論ではないかということでしたので、そこについ て修正して「雇用形態等の見込みの明示の時期等」としております。全体としては、1 つ目の○は「紹介予定派遣において直接雇用される場合の雇用形態について、どのよう に考えるか。また、直接雇用される場合の雇用形態等の見込みの明示の時期等について、 どのように考えるか」と修正しております。  IIIが「派遣元事業主・派遣先事業主の講ずべき措置」です。この中でご意見として、 派遣元・派遣先の責任分担というご意見もありましたので、従前あった記載に追加をし て、「教育訓練の実施や労働・社会保険の加入の促進等について、派遣元と派遣先の責 任分担の在り方をどのように考えるか」という形に修正をしております。  IVは「適正な労働者派遣事業の運用の確保」です。この中の1つ目の柱が建設業務、 港湾業務等について労働者派遣が禁止されているが、どのように考えるかです。○の2 つ目は、派遣先や派遣労働者による良質な派遣元事業主の選択を促進するためにも、派 遣元事業主の事業実績等の情報を開示すべきかとの意見があるが、どのように考えるか。 指導監督の関係について記載をしております。事業実績等の情報を開示すべきに関して は、派遣元、派遣先、派遣労働者、それぞれ三者の関係で情報をどのように明示をして いくかについての議論もありましたが、それについては「事業実績等の情報を開示すべ きとの意見があるが、どのように考えるか」の中で議論はしていけるのではないかとい うことで、文章としては修正をしておりません。以上が主な修正点です。 ○清家部会長   ただいまご説明いただいた修正された今後の検討課題について、議論に入ります。ご 意見がある委員、どうぞよろしくお願いします。 ○市川委員  全般的にこれまでの議論でいろいろと論点をまとめていただいていると思いますが、 私どもが職場の組合の皆さんと話をしてよく聞くのは、26業務の在り方です。専門的な 業務という言われ方をして、政令で決められている26業務とはなっていますが、これが 今日的に見て、本当に専門的と言えるのかどうかというようなことも、今あるのではな いかなと思います。例えば、事務用機器操作、昔のオフィスコンピュータの汎用型は知 識がある人しか使えなかったという時代から、いまはむしろ使えない人がいないという ぐらいになっています。あるいはファイリングも、物の製造業務に派遣が禁止されてい るときに、部品を整理することを称してファイリングだと言って、現場で派遣を使って いたという実態もあります。こういう26業務の精査を一度検討しておく必要があるので はないかなと思っています。 ○清家部会長  事務局からこの点について何かありますか。 ○坂口課長  いまのご指摘の26業務については、法律の規定の中では派遣先の労働者との常用代替 との関係であったり、あるいは専門性であったり、特別の雇用管理という観点から、法 律の規定でも、審議会にもお諮りをして、意見を頂戴した上で政令で定める形になって おります。またいろいろな事情等が生ずれば、具体的な形として審議会で検討いただく ことも、これまた然りということかと思います。  その前提として、そもそもの26業務の在り方についてどのように考えるかは、この部 会の検討の俎上でもご検討、ご議論いただければと思います。ただいまご指摘があった 個々の5号、8号の問題という形のご議論になると、相当具体的な材料も用意しながらと いう形での議論をしていかないと、なかなか具体的な議論には入りづらいのかなと事務 局としては考えています。全体として26業務そのものについて、いまどのような問題意 識なのかというようなことは、部会の中でも議論いただくことはあり得ると思います。 ○清家部会長  ほかにございますか。 ○輪島委員  26業務の在り方もずっと議論を継続していく内容だと思っております。私どもも反対 の意味から、もう少し増えてもいい業務があるのではないかと思っていて、営業販売の 業務、物の製造も対象にはなっているわけなので、その中で26業務に適する業務という のもあり得るのではないかなとも思っております。そういう意味で、基本的には政令で の指定業務なので、継続的な見直し作業は、ある程度必要なのではないかなとは思って います。 ○清家部会長  そうするといまのお二人のお話は、Iの(4)の辺りの書きぶりが、これでいいかど うかですか。 ○市川委員  この検討課題の一文一句に縛られて意見が言えない、ということでもないとは思いま すので。 ○清家部会長  文言的には、基本的にはこれでよろしいですか。 ○長谷川委員  問題意識としてはそこも視野に入れておく必要があります。法律が変わったり、時代 の流れというものもあるでしょうから。市川委員が言ったように、昔はOA機器が使える 人は専門的な人だったのでしょうが、いまはもう誰でもというか、それが使えなかった ら採用されないというぐらいなので、そういう意味では26業務というのは、見直してい く必要はあるのだと思います。新たに入れなくても、この中で議論していくということ でいいのではないでしょうか。 ○清家部会長  鎌田先生、これでいかがでしょうか。 ○鎌田委員  ちょっと位置づけの話ですが、26業務については今回の検討課題にかかわらず、この 部会の中で必要に応じて検討課題になり得ると思います。そういう趣旨から言うと、こ の中に必ずしも入らなくても議論できるということでよろしいのですかね。もちろんそ うは言いながらも、検討課題と密接に関係する場合もあるかもしれませんので、それは それで適宜検討するということでよろしいのでしょうか。 ○清家部会長  ほかの点についてはよろしいですか。 ○輪島委員  Iの(2)日々雇用の派遣労働です。いろいろ話題にもなっているのかもしれません が、派遣法上の課題が何なのかということと、労働基準法上の課題が何なのかというこ とが、どうも整理されていないような気がするので、一度整理していただいた資料をお 作りいただいて、議論したほうがいいのではないでしょうか。どうも賃金の直接払いで あるとか、何とか費で徴収しているというのは全額払いでないというようなものは、基 本的には基準法なのではないかなと思える部分もあり、その辺りの整理は私どももまだ 仕切れていないので、検討課題として議論する際には、整理をしていただきたいなと思 っています。 ○長谷川委員  そうだと思います。だからスポット派遣、日々雇用などの問題は、派遣法の中ではど こが問題なのか、基準法の中ではどこが問題なのか、そこは仕分けが必要だと思います。 1つ私の感想なのですが、電子メールでの就業条件の明示が解禁になって以降、やはり この問題は発生したし、出てきたのだと思うのです。だから派遣法の中のどこが問題で、 いま言ったように基準法ではどこなのかというのは1回整理してもらい、では派遣法の 中のどこで改善する、見直さなければいけないかというのは、まさに審議会のテーマだ と思いますので、そのとおりでいいのではないかと思います。 ○清家部会長  では文面はこの形で。どのように考えるかということではほかにいかがでしょうか。 ○輪島委員  Iの(3)の常用型の派遣の記述で、ここの読み方は常用型の26業務についての記述 がありますが、常用型で自由化業務もないことはないと思います。そこの読み方はどの ように読むのでしょうか。 ○篠崎補佐  (3)については、従前からあった申込義務との関係で、雇用がかえって不安定にし ているのではという意見があったという、その前段として記載しており、派遣元で常時 雇用されている場合「雇用の安定が図られており」というのは、もちろん26業務か否か に関わりないことだとは思いますが、ここで記載しているときには、雇用が安定してい るということに対して、申込義務が関わることによって、不安定になってしまうことを 記載している部分なので、特段26業務以外との関わりについて書く必要がないので、書 いていないと理解しております。 ○輪島委員  そうすると常用型の自由化業務のところは、もちろん申込義務等の取扱いは違います が、その点についてはどのように考えるべきなのですか。検討項目としては、検討の余 地なしという整理ですか。 ○篠崎補佐  そこは(4)の○の2つ目として、申込義務で見た場合に、期間制限がある業務につい ても、ない業務についても、3年を超えない運用というような記載をしていますので、 議論として全く排除されているということではないとは思っております。 ○坂口課長  そこは補足的にご説明します。これまでもいろいろな形でご議論いただく中で、派遣 の問題は切り口がいくつかあり、いま輪島委員がご指摘のように、26業務と26業務以外 は自由型という形の切り口。あともう1つは、日々雇用型は別にありますが、昨今いろ いろ部会の中でも注目されている常用雇用型と登録型という切り口。もう1つはそれぞ れの規制、それぞれの制度の切り口といういくつかの切り口がある中で、常用雇用型に ついては、いちばんヒアリングもしたりということで、特に期間制限のない26業務の常 用型の雇用申込義務という問題がいちばんクローズアップされていて、1つの大きな議 論の塊として取り出しております。  いろいろ整理し出すと、いくつかの切り口が縦、横になってくるので、ひとつひとつ 全部書いていると、おそらく再掲、再掲というような形になってくるので、いちばん代 表的なものとして特に(3)は皆さんのご議論の中でもあったということで、こういう 形で書いています。いま篠崎から申し上げたように、それぞれのところの雇用申込義務 の切り口もあるだろうし、例えばII(1)事前面接のところでも、若干、常用雇用型と 登録型によりというように記述もして補っております。あまり再掲、再掲がない形で書 いておりますので、ご議論を具体的にしていただく中で、常用雇用型の派遣労働の中で 考え方として整理すべき点があれば、またそのときに追加的にご議論いただくことは、 もちろん可能だと思います。 ○輪島委員  正しいかどうかわかりませんが、そういう整理を1回しないといけないと思います。 ○清家部会長  常用型と登録型というのは、大きな軸であるし、26業務とそれ以外というのも大きな 軸ですから、輪島委員が言われたように、常用のところを横串にすると、26業務以外の 話も、そちらのラインで見ていけば出てくるのではないでしょうかということですね。 ○坂口課長  そうです。相当程度ここ数回ご議論いただく中で、委員の方々の頭の中では、整理も できてきていらっしゃるようにも思いますし、我々としてもそう考えておるのですが、 なかなか言葉として記述をすると、重複感があまりに出すぎるということで、このよう にしております。またそこは議論していただくときに、例えばそういうところにいちば ん頭が戻れるようにということで、材料としてはやっております。 ○清家部会長  いま期せずして、労使双方同じ図を描いているわけですから、そういうものは少し事 務局でも整理していただいたら議論が進むと思います。では、それはそのように整理さ せていただくということで、長谷川委員よろしいですか。 ○長谷川委員  はい。 ○清家部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○市川委員  IIIということになると思いますが、3つ目の○で「労働者からの苦情や要望への対応 について、どのように考えるか」ということで、派遣法でどのようにするのかわかりま せんが、いま連合もいろいろ頑張ってやっています。派遣の皆さんを労働組合の組合員 にして、いろいろと一緒にやっていこうよ、みんなで条件をよくしていこうよという取 組をしています。そういった場合にいわゆる交渉相手、交渉関係、当然派遣労働者と派 遣元、派遣会社があり、派遣労働者の労働組合と派遣会社との交渉というのは当然です が、とは言え派遣元とだけ交渉していたのでは、なかなか立ち行かないことも多く、現 実には派遣先との交渉が認められているというケースも出てきているようです。  その辺りの、特に集団的な労使関係の在り方というのは、もう少し整理する。あるい は派遣先の労働組合との関係、派遣労働者の労働組合、派遣労働者、派遣元、派遣先、 この4つのたすき掛けなのか。それぞれの労使関係、あるいは交渉できるできない、こ れを少し整理する必要があるのかなと考えています。これが派遣法でどうのということ ではないのだと言われそうな気がしていますが、問題意識を持っているということは述 べておきたいなと思っています。 ○清家部会長  はい、わかりました。 ○輪島委員  個別の事情によるものと、基本的な枠組みをどのように整理するのかというのは、違 うような感じがしますが、整理は必要だとは思います。 ○清家部会長  もう1つ、派遣元、派遣先という軸が、また変数として入ってくるということでしょ うか。 ○輪島委員  そうですね。 ○清家部会長  わかりました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ほかにご意見がない ようでしたら、取りあえずいまご説明いただいた案を現時点での今後の検討課題という 形で、整理させていただくことでよろしいでしょうか。もちろんこれは現時点のもので すから、また今後いろいろ変わってくることは当然ございます。少なくともいまの時点 で取りまとめておいたほうがいいかと思いますので、そのような形にさせていただいて、 よろしいでしょうか。 (了承) ○清家部会長  ありがとうございます。ではそのようにさせていただきます。ではそういうことだと いう理解の上で、今後の進め方について事務局より何かございますか。 ○篠崎補佐  次回以降の部会の進め方について、本日取りまとめていただいた検討課題に沿って、 各検討事項の議論に入ることとしたいと考えておりますが、具体的には部会長とも相談 した上で、後日事務局よりご案内したいと考えております。 ○清家部会長  よろしいでしょうか。それでは今後の進め方については、別途、私と事務局で相談し た上で、事務局よりご案内することにしたいと思います。最初の議題の「労働力受給制 度について」はここまでとします。次に事務局より報告事項があるので、よろしくお願 いします。 ○篠崎補佐  本件の需給制度部会における直接の議論の課題ではありませんが、当課で6月29日に 製造業の請負事業の雇用管理改善に関して、ガイドラインについて発表しましたので、 紹介いたします。資料2-1と2-2です。まず、ガイドラインを作った背景は、製造業の請 負事業については、いわゆる偽装請負の問題を始めとして、労働者派遣法等の労働関係 法令の違反、労働条件やその処遇の改善の必要性、またこの請負事業における職場で働 く労働者、特に若者も多かったりするわけですが、キャリアパスが明らかでないなどさ まざまな問題が指摘されており、そういうものについて雇用管理という面からアプロー チをする必要があるのではないかということです。  当課で昨年10月以来、学識の方にお集まりいただき研究会を行い、この「請負事業主 が講ずべき措置に関するガイドライン」「発注者が講ずべき措置に関するガイドライン」 も含む報告をまとめていただきました。その報告の中でガイドラインの案をお示しいた だいたので、厚生労働省としてもこのガイドラインについて、今後周知を図っていきた いと考えております。  まず、資料2-1の「趣旨」、いまの説明と重複する部分がありますが、趣旨にあるよ うに請負事業においては、そこで働く労働者の雇用契約は短期で繰り返される等、労働 条件や処遇、その他雇用管理が必ずしも十分ではなく、技術・技能の蓄積がなされない という現状や、労働関係法令が徹底されていないという現状があるという問題意識を背 景に、請負事業主が発注者からの影響を受けやすいという特徴があるので、その雇用管 理の改善や適正化の促進を実効あるものにするためには、発注者の協力が必要であると いうことで、このガイドラインについては請負事業主と発注者、双方それぞれにガイド ラインという形で定めたものです。  これは製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む事業主が、講 ずべき措置としてのガイドラインです。まず、大きな内容の柱は、第2にあるように「就 業条件等の改善のための措置」、第3として「職業能力開発」、第4として「法令遵守」、 第5として「苦情の処理」、第6として「体制の整備」という柱にしております。  具体的には、第2の「就業条件等の改善のための措置」では、1「安定的な雇用関係の 確保」ということで、請負事業主は請負労働者について募集及び採用を適切に行い、各 人の希望及び能力に応じた就業の機会の確保、労働条件の向上その他安定的な雇用関係 の確保を図ることとし、次のような措置を講ずることといったことで、いくつか挙げて おります。  (1)として募集及び採用ということで、募集の際には、従事すべき業務内容、必要と される能力等について具体的に明示をすること。発注者が請負労働者にとっての使用者 であるとの誤解を招くことがないよう、労働条件の明示に当たっては、誰が使用者なの かを明確化する等の措置を講ずること、といったことを記載しております。(2)雇用契 約では、請負労働者の希望により、雇用契約の期間を請負契約の期間に合わせる、請負 契約の期間を超えるものにする等できるだけ長期のものにし、または期間の定めのない 雇用契約にすること、といったことを記載しております。  (3)定着の促進としては、請負労働者と緊密な意思疎通を図り、その希望に応じて職 務経験の機会を付与したり、待遇の向上を図る等の措置を講ずること、といったことを 記載しております。(4)福利厚生は、社宅・独身寮の整備等の福利厚生を充実すること。 発注者と協力して請負労働者の福利厚生を充実することということで、発注者の構内で 作業をしている場合があるので、例えばそこの給食施設等を利用できるようにするとい ったときには、発注者との協力も欠かせないということで、そういうことを記載してお ります。  2の「安定的な雇用関係の確保に配慮した事業運営」ということで、例えば(1)(2) がありますが、請負事業主は請負契約の締結に当たり、発注者の責に帰すべき理由によ り、請負契約が解除された場合における必要な損害賠償に関すること等について、取決 めを行っておくことというようなことを記載しております。(2)はア、イ、ウ、エにあ るような技術や技能の水準等を勘案、踏まえ、適正な請負料金の設定を図って、併せて 請負労働者の待遇の向上を図ると記載しています。  3の「キャリアパスの明示等」は(1)から(4)まであるように、請負事業主が請負 労働者に対して、具体的かつ明確に多様なキャリアパスを示すこと等を記載しています。  第3の「職業能力開発」においては、1「教育訓練等」ということでは、教育訓練に係 る設備、プログラム等を充実させることに留意して、計画的に教育訓練を実施すること、 といったことを記載しています。次頁の2「職業能力の評価」では、請負事業主は職務 経験、教育訓練等により高められた請負労働者の職業能力を適正に評価し、賃金その他 の待遇に適切に反映させること、といったことを記載しています。  第4の「法令遵守」は、1で「請負と労働者派遣の適切な選択」ということで、請負事 業主は業務内容、契約期間等を考慮して、労働者派遣、請負のいずれにより業務を処理 すべきかを的確に判断し、労働者派遣により業務を処理すべきと考えられる業務につい ては、請け負わないこと、ということを記載しております。2では「労働者派遣法及び 職業安定法の遵守」。3では「労働基準法、労働安全衛生法等関係法令等の遵守」。  4では「労働・社会保険の適用の促進」。その中で例えば(1)にあるように、請負事 業主は社会保険に加入する必要がある労働者については、加入させてから就業させるこ と。(2)にあるように、請負事業主は労働保険の成立について、届け出ていることを発 注者に対して明示すること。(3)にあるように、請負事業主は請負労働者の健康保険等 の加入状況を発注者に対して明示すること、といったことを記載しています。  5が「法令の周知」。6が「法令遵守の取組」ということで、法令遵守を徹底できる労 務管理、生産管理等の事業の体制の整備、改善を図ることや、自主点検結果の公表等法 令遵守の状況を発注者に対して明らかにすること、といったことを記載しています。7 「適正な請負料金の設定」ということで、請負料金の設定は、労働・社会保険の事業主 負担等、法令遵守に必要な費用の確保を考慮したものにすること、という記載をしてい ます。  第5として「苦情の処理」ということで、請負事業主は第2から第4までの事項を始め として、請負労働者の苦情の処理を行うとともに、発注者または発注者の労働者に起因 する苦情の処理については、発注者に対してその改善を求めることと記載をしています。  第6として「体制の整備」ということで、1「事業所責任者の選任」、2「工程管理等責 任者の選任」ということで記載をしています。具体的に事業所責任者の選任をしてどう いう業務を行ってもらうかは、次頁の(1)にあります。(1)の事業所責任者について は、請負労働者100人につき1名以上を選任して、具体的にはアからキにあるような業務、 苦情の受付や就業条件の整備、能力開発、法令遵守、あるいは工程管理責任者の監督、 請負契約の履行、請負契約の締結または変更といった業務を行わせるということを想定 しております。こういう業務を行わせた上で(4)にあるように、事業所責任者を選任し た場合は、その氏名、役職、与えられた権限の範囲を発注者にも通知をするというよう に記載をしています。  2の「工程管理等責任者の選任」、この工程管理は事業所よりももう少し小さい単位に なる、工程ごとの、まとまりごとの責任者というイメージです。この工程管理責任者は、 具体的にはアからオにあるような、法令の遵守、業務の処理の進行や管理、請負労働者 の就業の状況等について事業所責任者に対する報告、請負契約の履行、苦情を受けた場 合の事業所責任者への取次ぎということを想定しています。以上が請負事業主向けのガ イドラインの内容です。  資料2-2は「発注者が講ずべき措置に関するガイドライン」ということで、冒頭申し 上げたように、請負事業における雇用管理の改善をするに当たっては発注者の協力も必 要だということで、双方に対するガイドラインになっております。そういう意味では内 容的には請負事業主に対するものとパラレル、対応するような内容になっている部分も あります。  まず、第2の「就業条件等の改善のための措置」としては1の「福利厚生施設の利用」 というものが定められていて、発注者は給食施設等自社の福利厚生施設について、利用 料を適切に設定する等により、請負労働者の利用も可能とすることということで、請負 事業主向けのものにも福利厚生の記載がありましたが、それに対応するような形でガイ ドラインを定めております。  2の「請負事業主の選定と取引関係の継続」では、(1)から(3)にあるように、発注 者は請負事業主の選定及び契約条件の交渉に当たり、請け負わせようとする業務に必要 とされる技術・技能の水準を明確に請負事業主に説明すること。請負事業主が有する技 能等を評価した上で、これらを請負事業主の選定及び請負料金に適切に反映させること。 (3)にあるように、請負契約を可能な限り長期のものにし、実績を十分に評価して更新 するということで安定的な取引関係を継続すること、ということを記載しております。  3は「請負契約の解除」です。これは解除に至った場面において、次のようなことを してはどうかということで(1)から(4)ということで記載しています。(1)発注者は 請負契約期間が満了する前に、請負契約の解除を行う場合であって、請負事業主から請 求があったときは、請負契約の解除を行う理由を請負事業主に対して明らかにすること。 (2)専ら発注者に起因する事由により、請負契約の期間が満了する前に、契約の解除を 行おうとするときは、請負事業主の合意を得ることはもとより、予め相当の猶予期間を もって解除の申入れを行うこと。(3)発注者の責に帰すべき事由により、請負契約の契 約期間が満了する前に請負契約の解除を行おうとする場合としては、請負事業主と十分 に協議した上で、適切な善後処理方策を講ずること。(4)請負契約において、そのよう な解除する際の措置等について必要な措置を具体的に定めるということを記載しており ます。  4の「中途採用における募集方法の明示等」ということで、(1)発注者は労働者の中 途採用を行う場合の募集の方法を明示すること。(2)発注者が文書募集、公共職業安定 所への求人票の提出等により、幅広い対象者が容易に募集し得る形式で中途採用を行う 場合には、取引先の請負事業者が雇用する請負労働者であることを理由として、当該請 負労働者を応募、採用等の対象から排除し、当該請負労働者を対象とする不利な選考基 準を別個に設けてはならないことということで、取引先である請負事業主で働く請負労 働者についても、公平に取り扱うようにということを定めております。  第3の「職業能力開発」は、1「教育訓練に係る協力」、2「教育訓練施設等の利用」で、 請負労働者が利用できるように便宜を図ること、というようなことを記載しています。  第4としては「法令遵守」ということで、まずはじめに、1「請負と派遣の適切な選択」 ということです。発注者は処理することが必要な業務の内容、契約期間等を考慮して、 労働者派遣や請負と自らの雇用する労働者のいずれにより業務を処理すべきかを的確に 判断し、労働者派遣や請負により業務を処理すべきと考えられる場合には、さらにいず れにより業務を処理すべきかを的確に判断し、労働者派遣により業務を処理すべきと考 えられる業務については、請け負わせないことを定めております。2は「労働者派遣法 及び職業安定法の遵守」、3は「労働安全衛生法等の遵守」。  4は「労働・社会保険の適用の促進」。その中で(1)では、発注者は請負事業主が労 働保険の成立について届け出ているかを確認すること。(2)では、発注者は、請負事業 主が請負労働者を健康保険等に適切に加入させているか確認することを記載しています。 5「法令の周知」では、労働者派遣法等について、関係者への周知を図るために説明会等 の実施を図ること。その際には請負業務を発注する現場の担当者も含めて、周知徹底を 図るということを記載しています。6の「法令遵守の取組」では、体制の整備及び改善 を図ること、自主的な点検等の状況を請負事業主に対し明らかにすること、法令遵守が 確保されている請負事業主を選択すること等の取組により、関係法令の遵守を図るとい うようなことを記載しております。  第5として「苦情の処理」です。発注者は発注者または発注者の労働者に起因する請 負労働者の苦情を適切に処理するため、発注元責任者を選任し、体制を整備すること。 また苦情の申立てを理由として、請負事業主に対して不利益な取扱いをしたり、請負労 働者に対して不利益な取扱いをするよう請負事業主に求めてはならない、というような ことを定めております。  以上が請負事業主向けと発注者向けのガイドラインで、これについては発表をホーム ページに記載するほか、いろいろな方法を使い周知を図っていきたいと考えております。 以上です。 ○清家部会長  製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業者が講ずべ き措置に関するガイドラインと、同じく発注者が講ずべき措置に関するガイドラインに ついてご説明をいただきました。ただいまのご説明について、ご質問等があれば承りた いと思います。 ○古市委員  基本的には大変結構なガイドラインを作っていただいたと思いますが、書いてあるこ とは結構なのですが、実効が上がるのかというか、是非実効を上げるようにご努力いた だきたいなと思います。  「請負労働者」という言葉が私たちの建設グループでは、いま話題になっているとい うか、少し違和感を持って見られております。これは課長にお聞きしたらいいのか、鎌 田先生にお聞きしたほうがいいのかよくわかりませんが、請負労働者という言葉が、こ こではきちんと請負事業主に雇用される労働者なのだと規定していますから、そういう ことなのでしょうが、請負労働者というと、労働者が請負をしているというようなイメ ージ、私たちはすぐパッとこの言葉を見るとそう思ってしまいます。  どうしてそのように思うかというと、建設業では非常に労務請負というのが、個人に よる労務請負というのが、非常に昔から一般的に行われており、私たちの世界では「手 間請け」といいます。この手間請け、労務請負を厚生労働省はケースバイケースで判断 するのですが、大体は労働者ではないと判断することが非常に多いのです。これは労働 者ではないのだと。雇用者ではないから、労働者ではない。こういう判断をすることが 多く、手間請けで仕事をしている労働者が、元請けで労災が起こっても、元請けがこれ は労働者だからということで労災保険の申請をすると、監督署がこれは労働者ではない から労災保険は支給できませんと、不支給決定を始終行うわけです。  厚生労働省の文書に請負労働者というのが出てきたので、これは厚生労働省は方針を 転換して、手間請けを労働者と認めたか、やったなと。こういうことになっているので すが、よく読むとどうもそうではないということで、この言葉が何とかならないのかな という気がします。しかしこれは建設業のことではなくて、製造業のことだから、これ はこれでいいのだということなのでしょうが、その辺りについて、少し考え方を教えて いただければなと思います。 ○鎌田委員  私はこのガイドラインを策定する研究会の委員でしたので、その観点から一言だけ申 し上げます。いま古市委員が言われた手間請け、個人による労務の請負が、このガイド ラインの対象である可能性があるかということですが、それはないと思っています。 「請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン」の趣旨の2行目から、請負労働者 についての定義があり、これを読み上げると「請負事業主(請負事業を営む者をいう) に雇用され請負事業で就業する労働者をいう」ということで、請負事業主に雇用される ということですので、いま古市委員がおっしゃったのは、まさに雇用関係があるかない か、曖昧な場合ということになろうかと思うのですが、そういう場合についてはこの請 負のガイドラインについては、適用の範囲には考えていない。この点だけは少しご理解 いただきたいと思います。 ○清家部会長  事務局どうぞ。 ○坂口課長  いまお話のあった点はそのものですし、あとはいみじくも古市委員がおっしゃった点 がまさしくそのとおりということになるわけです。今回のこのガイドラインそのものに ついては、先ほども篠崎から趣旨のところでもお話したとおり、製造業の請負事業につ いていろいろ製造現場で広がってきている、一定の役割を果たしているけれども、いろ いろな雇用管理上、法制上、法令の適正化の面でも、いろいろな問題があるということ で、それについての拠り所を作っていくべきではないかという発想で行ったものなので す。委員をなさった鎌田先生からもお話があったとおり、製造業の請負事業に関わる問 題として、捉えたガイドラインということです。  そこで使っている請負労働者の定義そのものについては、鎌田委員からご説明があっ たところに書いてあるとおりです。理解としては、このガイドラインそのものは、最終 的に研究会の中でも厚生労働省の中でも、安定局のみならず、労働基準局、能力開発局 も一緒になって事務局も務め、最終的にこのガイドラインも労働基準、職業安定、能力 開発の3局長の連名で発出しており、役所としてもそういうものとしての理解というこ とです。  いま古市委員がおっしゃったように、建設の現場での請負労働者も含めての個人請負 労働者と申しますか、その問題についての懸念があるということについては、承知はし ておりますが、やはり労働基準法上の労働者性という問題については、使用従属性も含 めた取扱いについて、個別にそういうものについての判断をしていかざるを得ないこと になろうかと考えております。全体としては、このガイドラインそのものについては、 先ほど鎌田委員からご説明があったとおりということで考えております。 ○古市委員  このガイドラインに、不都合があると申し上げているわけではありません。「請負労 働者」という言葉がこのように正規に出てしまうと、その言葉がどのように世の中で受 け取られていくかについて、請負労働者というのは労働者なのだというのが世の中に広 まっていって、それが製造業から押し寄せてきて、建設業の中にも一般化されれば最も いいのですが、なかなかそうはならないと思います。  前の議論の中で、正社員、正規雇用、非正規雇用などいろいろな使い方があり、正規 雇用、非正規雇用、こういう言葉がある。その中で例えば、常用型の派遣労働者は、き ちんと会社に雇用されているのだから、これは非正規ではなくて、正規に雇用されてい るのだ。派遣は正規の働き方ではないような印象があると。こういう議論がここでもあ りました。そういう意味で言うと、請負労働者というのは、製造業の中ではきちんとし た雇用労働者なのだという位置づけなのですが、建設にくると、請負労働というのは、 要するに個別に判断しないと、労働者なのか事業者なのかわからないのだとなっていま す。  私たちはもうだいぶ前から、労務請負というのは、労働者なのだという主張をしてい るのですが、いま課長から報告があったとおり、厚生労働省は現場では労働者として認 めないのです。どちらかというと、事業者として取り扱うことが非常に多い。この大工 さんは道具を持っているから、自分で道具を持って仕事をしているから、それが労働者 ではないことの一部に利用されると言いますか。私たちの側から言うと、道具を持たな い職人が世の中にいるかということになるのですが、それも事業者たる1つの要件だと いうようなことなどを言われて、労働者として認めない場合が非常に多い。  そこで現場で労災の支給、不支給を巡ってトラブルが始終発生をして、審査請求が行 われ、場合によったら裁判が行われ、こういったことがあるので、非常にこういう言葉 に敏感になるということです。こういう言葉が製造業のガイドラインに出てくると、私 たちの所にどのような影響が及ぶのかなというのが、非常に気になるということを申し 上げたわけです。 ○清家部会長  ちょっと混乱を招きやすい用語ではないかということでしょうか。この請負労働者と いう言葉はもう法律等に書き込まれている言葉なのですか。つまり請負労働者というこ の定義で、請負労働者、つまりこの用語を別の言葉に書き替えるなど、そういうことは できるのですか。例えば「請負事業労働者」などといった。 ○篠崎補佐  法令用語では確かにないのですが、おっしゃるとおり「請負事業で働く雇用者」など フルで正確に言えばいいのですが、何度も使う場面や、略すときにこういう言葉で通常 言っているケースが一般的に多い。その中でおっしゃるように、意味がいろいろ捉えら れ方があるのかもしれませんが、まさに世の中的に、特に製造業で働く労働者のことを 請負労働者と指し示す場合が多いので、そういう意味では「いわゆる請負労働者」とい うことなのかもしれませんが、そういうものを使っております。  例えば需給制度のアンケートのときにも、これも便宜的にということですが、製造業 の請負の実態を調査するときには、例えば請負労働者用という形で、そこは略称なので すが、そのような形で略して製造業では使っておりましたので、我々としてはそこは混 乱はないのではないかと。特に製造に限って言えば、労働者性がない労働者というのは、 あまり想定し得ないということもあり、混乱はないのかなと思い、そのような言葉をそ のまま使わせていただいているということです。 ○清家部会長  しかしいまのご意見は、作ったほうは混乱はないと思っているかもしれないが、混乱 がある場合もあるのではないかということですね。 ○坂口課長  そこは法律上の用語ではないのですが、このガイドラインの中でも先ほどご説明した ように、こういう形の定義を置いてやっており、今後もこのガイドラインについては、 いろいろ懸念されている点が多い製造業の請負事業に関わる発注者と請負事業主に向け てということを中心に考えておりますので、若干派生的な部分があるにせよ、そういう 点については十分留意して、周知もしていきたいと考えております。またこのガイドラ インの周知、取組については私ども行政のみならず、製造業の請負に関わる事業主団体 等も含めて、いろいろ努力をいただいて、しっかり取り組んでいただくような施策を進 めていきたいと考えております。そういう誤解、懸念が広まらないように十分留意をし てやっていきたいと思います。 ○清家部会長  そのようなご心配があるという点について、当局にも留意していただき、これを進め ていただくということでよろしいでしょうか。ほかにございますか。 ○市川委員  聞き逃したとしたら申し訳ないのですが、発注者が講ずべきガイドラインの第2の3「 請負契約の解除」の(2)の「発注者は専ら発注者に起因する事由により、請負契約の契 約期間が満了する前に云々」というのと、(3)の「発注者は、発注者の責に帰すべき 事由により云々」というものは、これは違うことを言っている。「専ら起因する」とい うのと「責に帰すべき事由」という違う段階を指し示しているのか、その後求められて いることが(3)のほうが具体的なのでしょうね、この「30日前に云々」とか。(2)の ほうは「相当の猶予期間」ということで(2)と(3)の関係についてもう少しご説明い ただければと思います。 ○清家部会長  では、事務局からお願いいたします。 ○松浦補佐  (2)と(3)はご指摘のように、確かに(2)は、ほわっとした話で(3)は非常に具 体的に書いてあります。その理由は(2)については「専ら」ということなので、すべて が発注者の責任というわけではないのだけれども、発注者が何らかの事情があって、少 しそのようなこともしなければいけないのでということで、請負事業主と円滑に相談を しながら、事前に十分に余裕をもってやりましょうというような話であります。一方 (3)については「発注者の責に帰すべき」ということですから、これは発注者が解除の責任 があるのですというときには、きちんとした処理をしてくださいということで、具体的 にそのように書いてある。このような整理になっています。 ○市川委員  私は「専ら」というほうが、何かすべて発注者があれなのかななんて。「専ら」という 言葉が、すべてという発注者に責任があるので、何か「専ら」と書いたほうが発注者が 全部悪いのかなというように、ちょっと日本語を間違って解釈してしまいました。すみ ませんでした。 ○鎌田委員  いいんですけど、ちょっと一言だけ。これはテクニカルタームなのですよね。まず、 ここの文言、ワーディングは派遣指針と同じになっていて、そのときにある程度の整備 はされています。いま市川委員が言われたニュアンスは、おそらく「専ら」のほうが、 むしろ何というか発注者のほうの責任というか問題性が多くて、(3)の「責に帰すべ き」が少し広いのかなという印象かと思うのですが。法律用語なので、特に「発注者の 責に帰すべき事由」というのは、要するに発注者に故意過失がある場合です。これは、 まさに法令上の用語なので、はっきりした故意過失がないといけないということです。  「専ら起因する」というのは、もう少し広くて、故意過失ではなくても、それによっ て何らかの形で発注者側の事情によって発生したものについては、相当の猶予期間をも って解除の申入れを行うということです。ただ、そうするとあまりにも広くなってしま いますので、「専ら」というところで一定の制限を加えているということです。 ○市川委員  (1)(2)(3)の順で厳しくなるのですね。(1)は、必ずしもその発注者はどのよ うな理由かは問わないということですね。 ○鎌田委員  そうですね、解除する場合は理由を言うという意味ですから、ある意味では当り前と いうことです。2番目は、これはどのような場合を想定しているかというと、請負契約 に期間を定めますが、例えば、1年契約で請負してくださいと、ところが中途解除とい うのが結構あるのです。中途解除というのは、本来、事業的には1年と約束しているの だから、途中6カ月でやめますというのはちょっとどうかと思うのですが、実務におい ては、結構、請負契約を結んでいるときに中途解除をできるという規定が多いのです。 そうした場合に、例えば、もう来週から解除しますというのは、それはちょっとひどい ではないかということで、一定の猶予期間を置きなさいということなのです。もちろん、 契約上合意をしているけれども、突然すぐ明日から、1週後に来なくてもいいというの はないだろうということです。  3番目は、これはまさに損害賠償の話なのですね。30日前に予告し、さらにその賃金 に相当する額についての損害の賠償を行うこと、これはまさに何らかの出費を発注者に 要求することなので、非常に発注者としても負担がかかってくるということで、より厳 しくなっていて、その分だけ要件も厳しくなっているということです。何か補足があれ ば。 ○清家部会長  市川委員、よろしいですか。ほかに何かご質問ございますでしょうか。 ○輪島委員  こういうガイドラインを、講ずべき措置に関するガイドラインなので、非常に厳しい 強いガイドラインができたのかなと思うのです。いまのところ、3局長の発出というこ とです。私どもは、少し将来的な課題について不安をもたないわけではないのですが、 ゆくゆくこのようなことをやりますが、やったけれどもなかなかうまくいきませんねと いうことで、法令的な強制力をもち始めるのではないかとも思うのですが、そのような ことはどうなのかということです。  それから、いまのところ製造業ということですが、例えば建設業のガイドラインなど、 業種ごとに別に発展していく可能性があるのかどうかということも、ちょっとお伺いし たいと思います。 ○清家部会長  事務局、いかがですか。 ○坂口課長  私どもとしましては、このような形での局長通知でガイドラインを定めて、請負事業 主のみならず、本来雇用使用関係でもない発注者のほうにも積極的なお取組をいただい て、製造業の請負事業に関わる雇用管理の改善であったり適正化ということを進めてま いりたいと考えています。ある意味で第一歩であることは事実でありますが、今後また 一歩このような形でお取組をお願いをしたいと考えています。ガイドラインではありま すが、行政の啓発ということで積極的なお取組をいただきたいということで、まずは進 めていきたいというところから、行っていきたいというところまで、ということで今は 考えているところです。今後の取組については、いろいろ皆様方のご意見等も含めて、 何かあればまた検討することになるのだろうと思います。  もう1つの製造業に関わる問題以外についてですが、先ほど来、古市委員のほうから もいろいろあった建設業についても、請負ということはあるのですが、ただ、建設業に ついては、別途建設に関わる建設労働の雇用管理の改善という形で法律を定めていただ いて、それに基づいて政府としても建設業に関わる雇用管理の改善ということについて は、雇用保険の三事業についても、いろいろ事業者の方からも保険料をということも含 めて、積極的なお取組をお願いしているということなので、そちらの分野についてはそ のような形でということになるのだろうと思います。  請負との関わりでは、事務的な委任、受委任であったりとか、そのような問題もある のは私どもとしても承知はしております。特に、今般平成16年3月からその製造派遣が 解禁された中で、製造業に関わる請負事業ということについての問題点もクローズアッ プされている一方で、物づくり産業という形での製造業に関わる請負事業についての位 置づけということもあったので、このような形で取り上げさせていただいたということ であります。  先ほども申し上げたように、ご指摘があったような誤解のあるような形になってしま ってはいけないので、我々としても注意はしていきたいと思います。まず、ここの製造 業の請負事業を中心に考えていければと思います。製造業についてもいろいろな大きい ものから小さいものまでということも含めて、いろいろな場面がまだまだ広がりもある のかと思います。お取組をしていただく範囲としては、まだまだその部分の広さも相当 あるかと思いますので、しっかり我々としても周知・啓発をお願いしてまいりたいと思 います。 ○清家部会長  輪島委員、よろしいですか。ほかにご意見ございますか。 ○長谷川委員  輪島委員のいまの意見は、もしかしたら、ガイドラインを作ったら次に告示にして、 告示から次に法律化かというように、長い間審議会委員をやっていればそのようなこと を考えるのだと思います。  そもそも、偽装請負や違法派遣などの問題が起きなければ、このようなガイドライン などは作る必要もなかったと思います。派遣法の中で製造業へ解禁した結果、偽装請負 や違法派遣といわれるものが起きて、それが非常な社会問題になったという中で、世論 としても、国会もそうだったし、私たち労働組合の周辺からも、製造業の派遣や請負に 対して何ら指導しなくてもいいのかというような声を受けて、行政府とすれば、ガイド ラインを作らざるを得なかったというのが、今日的状況だと思います。  先ほども出ましたが、やはり厚生労働省の労働雇用政策の中で、介護労働者の雇用管 理を作ってみたりとか、いろいろなことをしているわけです。ある意味では、製造業の 請負や派遣が非常に法律に従って適切にされていれば、それは、ある時期が来ればみん な守っていますねということになるのだと思います。ですから、ガイドラインを作って、 みんなで努力をして、請負も適切に行われていると、派遣も適切に行われていて、我が 国の国民もみんな幸せだと言うのなら、あえて行政はこのようなガイドラインを作る必 要はないのではないかと思っています。 ○清家部会長  はい、よろしいですか。では、ほかによろしいでしょうか。それでは、ただいまのご 説明についての議論は以上とさせていただきます。  次に、ここからは、一般労働者派遣事業の許可の諮問に移りたいと思いますので、冒 頭に申し上げましたように、傍聴されておられる方につきましては、恐縮ですがここで ご退席いただきますようお願い申し上げます。また、鳥生職業安定局次長につきまして も、所用により退席されると伺っております。               (傍聴者と鳥生次長退席) ○清家部会長  事務局より何かありますか。 ○篠崎補佐  次回の部会の日程ですが、8月28日(火)9時半から、場所がまたいつもと違いまして 18階の専用第17会議室で予定をしていますので、よろしくお願いします。10月以降の部 会の日程も決めていきたいと考えていますので、10月、11月、12月の日程表ということ でお手元に配付をさせていただいています「予定伺い表」にご記入の上、8月3日目途で 事務局宛ファックスしていただければと思っていますので、よろしくお願いします。 ○長谷川委員  日程の決め方ですが、清家部会長の日程が空いているところ、先生方は曜日で動いて いるはずだから、部会長の曜日で空いているところを最初から2時間だったら2時間を言 ってもらって、それで曜日で合わせていったほうが早いのではないかと私は思います。 ○篠崎補佐  考慮します。 ○清家部会長  私はまた事情が出てまいりまして、ほかの方に日程が合わせにくくなりまして、申し 訳ありませんが、よろしくお願いします。10月以降はまたそのような形にさせていただ くということで、次回の部会は8月28日(火)9時30分から開催しますので、日程の確保 等はよろしくお願いします。以上をもちまして「第101回労働力需給制度部会」を終了 します。なお、本日の署名委員は、雇用主代表輪島委員、労働者代表市川委員にお願い します。委員の皆様、どうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)