07/07/25 平成19年7月25日薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年 7月25日(水)  14:00〜 厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(12名)五十音順    新 井 洋 由、 飯 沼 雅 朗、◎池 田 康 夫、 庵 原 俊 昭、    守 殿 貞 夫、 竹 内 正 弘、 田 村 友 秀、 早 川 堯 夫、   ○堀 内 龍 也、 三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、 山 口 一 成   (注)◎部会長 ○部会長代理 他 参考人2名    欠席委員(4名)   上 原 至 雅、 岡   慎 一、 土 屋 文 人、 前 崎 繁 文 3.行政機関出席者 黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 中 垣 俊 郎(審査管理課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、    佐 藤 岳 幸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、    坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、    望 月   靖(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、    山 田 博 章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第四部長)    田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)  三 澤   馨(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全部長)  他 4.備  考    本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会を開催いたします。  本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。当部会委員数16名のう ち、12名の委員に御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御 報告申し上げます。なお、本日は上原委員、岡委員、土屋委員、前崎委員から御欠席の連 絡をいただいております。  本日の審議事項に関して、参考人の先生に御出席いただくことにしております。議題1 の「rHSA原液」等について、高橋孝喜 東京大学医学部付属病院輸血部教授に御出席い ただくことにしておりますが、先生は後ほどいらっしゃる予定です。議題2の「タルセバ」 について、藤原康弘 国立がんセンター中央病院臨床検査部長に御出席いただいておりま す。  加えて、事務局の異動について御報告します。医薬食品局安全対策課の松田課長、医薬 品医療機器総合機構の新薬審査第四部の山田部長、安全部の三澤部長が出席しておりま す。  それでは、本日の議事進行をお願いします。なお、カメラ撮りはここまででよろしいで しょうか。 ○池田部会長 皆さん、お暑いところお集まりいただきましてありがとうございます。  それでは、事務局から配付資料の確認と、資料作成に関与された委員及び利益相反に関 する申出状況について報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をいたします。本日席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿 を配付しております。議事次第に記載されている資料1〜7は、あらかじめお送りしてお ります。このほか、資料1-2として議題1に関する「添付文書案」、資料8「審議品目の 薬事分科会における取扱い等の案」、資料9「専門委員リスト」を配付しております。  続きまして、平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく、資料作成に関係された 委員の確認です。議題2の「タルセバ」について、田村委員が資料作成に関係されている との御報告をいただいております。  本年4月23日の薬事分科会申合せに基づく、利益相反に関する申出については、議題 1「rHSA原液」について退室委員が池田委員、議決には参加しない委員なし、議題2 の「タルセバ」については退室委員なし、議決には参加しない委員は、池田委員、堀内委 員です。  したがって、議題1は部会長代理の堀内先生に、議題2は薬事分科会規程第5条第1項 において、部会長及びその職務を代理する者のないときは、当該部会員のうちから選任さ れた者が、仮に議長として会議を開くことができるとされておりますので、御選任をお願 いします。 ○池田部会長 委員の皆様には大変御迷惑をおかけして申し訳ありませんが、ただ今の説 明にもありましたように、自薦あるいは他薦で、どなたか議長として会議を開いてくださ る方はいらっしゃいますか。どなたか御推薦いただけますか。事務局から何か案はありま すか。 ○審査管理課長 事務局としては、今までの知識と経験から、早川委員にお願いしたらど うかと考えます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただ今、事務局から早川委員にお願いしてはど うかというお話がありましたが、委員の皆様よろしいでしょうか。  御異議がありませんので、早川委員には議題2の議事進行をお願いします。よろしくお 願いいたします。ほかに、事務局から何かありますか。 ○事務局 本日の議題1「rHSA原液」については、参考人の高橋先生が3時ころに到 着されることから、審議事項の議題2、報告事項の終了後に御審議いただきたいと考えて おります。よろしくお願いします。 ○池田部会長 本日は、いつもと少し違った形になるかと思いますが、審議事項は2議題、 報告事項が2議題となっております。  それでは、議題2から始めます。議題2の審議については、早川委員に進行をお願いし ます。 ○早川委員 御指名ですので、僭越ではございますが進行係を務めさせていただきます。 なお、田村委員は本議題に関与されておりますので、本議題の審議の間、別室で待機いた だくことといたします。 ── 田村委員退室 ── ○早川委員 議題2について、医薬品医療機器総合機構から概要の御説明をお願いしま す。 ○機構 議題2、資料番号2、タルセバ錠25mg、同100mg及び150mgの生物由来製品及 び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否等について、医薬品医療機器総合 機構より説明いたします。  タルセバの有効成分であるエルロチニブ塩酸塩は、腫瘍の増殖に関与すると考えられる EGFRチロシンキナーゼを阻害する抗悪性腫瘍剤です。本剤と同様の作用機序を有する 抗悪性腫瘍剤として、国内ではゲフィチニブが承認されております。  非小細胞肺癌の罹患者数は、約7万人です。このうち、切除不能の進行・再発の非小細 胞肺癌の患者には、延命効果を期待して、白金製剤を含む化学療法が標準治療として実施 されており、標準治療が無効な患者では主にドセタキセルが用いられています。本剤は、 標準的な化学療法が無効であった患者に使用した場合に、延命効果を示す薬剤として申請 されました。  なお、本剤は優先審査の対象とされ、海外においては非小細胞肺癌患者を適応として、 米国、欧州等83か国で承認されております。  本剤タルセバの海外での承認時期は米国では2004年11月、欧州では2005年9月であ り、また、類薬のゲフィチニブは米国では2003年5月、日本では2002年7月に承認され ているところです。  本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料にございますとおり、14 名の委員です。  品質、毒性、薬理、ADMEについて大きな問題は認められませんでした。  主な臨床試験成績としては、海外で実施された三つの第III相試験及び、国内で実施され た第I相試験と二つの第II相試験が提出されました。  海外第III相試験のうち、一つの臨床試験結果からは、標準的な癌化学療法が無効であっ た患者に本剤を単剤で用いた場合に、プラセボ投与群と比較して全生存期間の延長が認め られました。一方、他の二つの海外第III相試験では、標準的な化学療法への本剤の併用が、 全生存期間を指標として検討されましたが、いずれの試験結果においても、本剤の上乗せ 効果は認められませんでしたので、機構はこの点が明確となるような効能・効果を設定い たしました。  安全性については、間質性肺炎をはじめとする間質性肺疾患、皮疹、出血、肝機能障害 及び眼障害等の副作用が生じており、これらの副作用について十分に注意する必要がある と考えております。  機構は、これらの副作用については専門医による慎重な観察と適切な対応が必要である と判断しております。また、本剤の延命効果が示された海外第III相試験での本剤群におけ る間質性肺疾患の発現頻度は2.7%であったのに対して、本剤の国内臨床試験での間質性 肺疾患の発現頻度は123例中6例、すなわち約5%であり、製造販売後における安全性に 関する最も重要な事項と考えております。  したがいまして、機構は、本剤の承認に際して、十分な製造販売後の対応を行うことが 必要であると考え、治療開始初期に患者を入院又は入院に準じた環境下において慎重な観 察を実施すること、適正使用の推進、全例調査による間質性肺疾患等の重篤な有害事象の 収集及び迅速な情報提供が必要と判断し、申請者に指示を行っております。  以上の審査の結果、機構は、「切除不能な再発・進行性で、癌化学療法施行後に増悪し た非小細胞肺癌」の適応について、本剤を承認することは可能と判断いたしました。  本剤は、新有効成分含有医薬品であり、再審査期間を8年とすることが適当であり、原 体及び製剤は劇薬に該当すると判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品 のいずれにも該当しないと判断しました。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○早川委員 ありがとうございました。本剤は、EGFRチロシンキナーゼを阻害するこ とにより、EGFRの自己リン酸化を抑制する、下流の細胞内シグナル伝達を阻害するこ とで腫瘍の増殖を抑制するというコンセプトで開発された医薬品です。  それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。 ○堀内部会長代理 本剤は、基本的にはゲフィチニブとほとんど同様な作用機構と有効性 を持っている薬剤だと判断をしておりますが、ゲフィチニブとの差異があるとすればどう いうところにあるかということと、この間のゲフィチニブの間質性肺炎等の副作用につい ての検討で、すでに本剤も同じように間質性肺炎が起こる可能性が治験の段階でも現れて いるので、その点については十分な注意が必要だと思います。  もう一つお尋ねしたいのは、EGFレセプターの遺伝子変異の問題です。出ているデー タの一番中心になっているBR.21においても、変異のある患者には有効性が高いというデ ータが出ていると思います。審査の中では、変異があるかどうかで必ずしもそれを区別す る必要はないという結論になっていると思いますが、私自身はある程度縛りをつけたらど うかと考えます。その点については、いかがでしょうか。要するに、変異のある患者に使 う、あるいは極力変異があるかどうかを確認してから使うと。専門委員の議論の中では、 不要な変異のチェックはやらないようにというような議論がされているようにも思われ ますが、その点についてはいかがでしょうか。 ○早川委員 ただ今の御質問は3点あったと思いますが、一つはゲフィチニブとの差異、 次に副作用、中心的には間質性肺疾患様事象発現等の安全性の問題を今後どのように取り 扱っていくか、それからEGFRの遺伝子変異との関係で本薬をどのように適応していく のかです。一つひとつお答えをお願いします。 ○機構 1点目ですが、ゲフィチニブとの薬理的な作用機序の差異です。審査報告書の 20ページ以降に、この点については、申請者の見解とそれに対する機構の見解を記載し ております。まだ不明な部分も多々ありますが、20ページの下の表が、ある程度簡潔に サマリーされたものかと思います。臨床面では、こういったゲフィチニブとエルロチニブ との比較を行った検討がありませんので、ヒトでの臨床効果についてはお答えすることは できませんが、薬理学的な検討については、この20ページの表にサマリーされていると いうのが答えになるかと思います。 ○堀内部会長代理 基本的には、あまり差がないと考えてよろしいですね。 ○機構 基本的にメカニズムに違いはないのですが。 ○堀内部会長代理 EGFレセプターに対するアフィニティ等についても、あまり差異が ないと捉えていいですね。 ○機構 22ページの審査報告書の2)の上に、こちらの見解として記載していますが、現 時点ではゲフィチニブとの腫瘍抑制効果の違いについて十分な考察・結論ができないと考 えます。ただ、薬理試験における本薬とゲフィチニブの腫瘍増殖抑制強度の違いについて 検討した細胞株における本薬の細胞増殖抑制活性はゲフィチニブに劣るものではないと ころを確認したという状況です。  2点目、ILDの現状と今後の対応ですが、ILDについては、先ほど申し上げたとお り現時点で123例中6例が出ています。臨床的な危険因子の検討結果は、現時点では海外 でも国内でもなされていないというか、まだ不明といった状況です。  臨床的な患者背景因子等の危険因子があるかどうかについては、国内では製造販売後に 全例調査の形で全例患者の情報を収集していくのですが、その中でILDの発現状況を見 て、必要な段階ですぐに臨床的な危険因子の同定をできるような、違う調査若しくは試験 をやっていくことを考えており、会社にはそのように指示を行っております。  具体的なところは、現時点は危険因子が明確でない中、添付文書の警告2番では間質性 肺疾患に関する注意事項を記載しましたが、投与初期は入院又は入院に準じた環境下で、 患者を専門の先生にしっかり患者を診ていただくよう、注意喚起を行っております。 ○堀内部会長代理 今の点について、年間予測が8,000例となっていますね。肺癌の患者 で、新しく出てきて化学療法をやって効かなかった患者の大多数についてタルセバを投与 するという想定になるのではないかと思いますが、それを今のような形でやろうというこ とで大丈夫でしょうか。要するに入院をして投与をすることが可能かどうか、そして、か なり多様な医療機関で投与をすることになるのではないかと危惧されますが、いかがでし ょうか。 ○機構 製造販売後に関しては、流通管理という言葉が適切かということがありますが、 かなり厳密な流通管理を行っていく予定にしています。医療機関を、こういった肺癌の治 療を専門としている先生方がいらっしゃる施設に限定していく形で、施設限定をかけてい くところはもちろんなのですが、この薬は経口剤であることもあって、名称は変わるかも しれませんが患者確認カードを導入することを、現在会社としては考えています。  具体的には、主治医が全例調査に登録している場合には、会社から患者確認カードを先 生に渡し、先生がその患者に患者確認カードを渡すと、患者は院外で処方を受ける場合で も、その確認カードを持って薬局に行くことになります。そこで薬局の薬剤師が、患者確 認カードを持っているということで全例調査に登録していることが分かる仕組みを作っ て、本当の意味での全例を網羅することを考えています。  ちなみに、患者確認カードを持っていない患者が来た場合には、処方した主治医が分か るので、薬剤師の方から会社にそこの医療機関等を伝えて、全例調査に協力してもらうと いったところまでの段取りを会社は計画している状況です。 ○池田部会長 今の説明なのですが、患者確認カードというのを、実際どういう施設にど の医師に配るかということですね。普通は全例調査というと、施設を限定して、その施設 にしか薬剤がいかないので、100%近く把握できる状況ができると思うのです。この場合 だと、患者確認カードを、施設に限って言えばその施設の医師しか出せないので、ほかの 薬局はそれを持っていない患者には院外処方も切れない状況になると思うのです。その辺 りはどのように担保されるのか、そこは少し難しいのかと思うのです。 ○審査管理課長 審査報告書の93ページ、「(2)安全監視対策について」を御覧くださ い。中ほどに三つあって、主な医療機関は大体このような所で、すなわち癌診療連携拠点 病院や日本臨床腫瘍学会認定施設、日本呼吸器外科学会認定施設、日本呼吸器学会認定施 設等を考えていることが書かれております。実際上は、全例調査を義務づけるわけですか ら、当然のことながらこれを納入する医療機関というのは、ある面で申し上げますとこの ようなことを基準に選定をして情報提供し、その上で納入をしていくということで、そこ は確実に押さえられるだろうと考えております。  また、使用上の注意の警告を見るとお分かりのように、基本的には入院をするというこ とで考えていますので、そういう意味では、大方は入院で処理されるのだろうと思います。 ただ、一定期間入院したあとの外来、特殊な状況下の外来をどう考えるのか。外来と言っ たとたんに、院外調剤薬局とのことを考えなければならない。すなわち、院外処方箋が書 かれて、それによって投薬されるケースが出てくるのです。あまりこれが通常の投与の仕 方になるとは考えておりませんが、その点についても十分な配慮が必要だろうと思いま す。  どのような配慮をしていくかですが、院外処方箋を書くときには、それを処方する医師 に患者確認カードを出してもらい、それを調剤薬局で確認してもらう。院外処方箋を持っ てきたけれども、患者確認カードを持たない人が持ってきたときには、製造販売企業に薬 局から連絡をしてもらって、製造販売企業から調査をしてもらうという一連のルートを構 築しようということです。もちろん、これを構築するためには、一つには関係する学会の 方々に御協力をいただかないといけません。また、院外処方箋を調剤する方々にも御協力 をいただかなければいけないし、製薬企業にはそれを義務づけなければなりません。した がって、大体そのような方針で臨みたいと考えておりますが、そのようなことを前提とし た上で御審議いただき、それが承認になるときには、我々の方から通知等をもって必要な お願い、企業への指示をしたいと思っております。 ○池田部会長 実際的に、調剤薬局に卸すというか、それを全部把握することは、企業と してはできるのでしょうか。あるいは、それをある程度確認させるという指導はできるの ですか。そこまでしないと、なかなか難しいと思います。 ○審査管理課長 調剤薬局の方々、すなわち日本薬剤師会とは内々にお話を進めておりま す。従来から全数調査を義務づけたものではアラバなどがあるわけですが、そういうとき にも確認をして企業へ連絡するということで、御協力を願っております。  今回は、それよりももう一段引き締めた形で、患者確認カードの厳格なチェックと、患 者確認カードを持ってこなかった患者がいた場合に、それを処方した医療機関の名前と処 方医の名前を、患者を確認するために企業に連絡する態勢を取っていただく。それを取っ ていただくことが、院外処方によってこれを供給できる態勢として必須ではないかという ことを確認しており、今のところ基本的な御了解を得ている状況です。 ○池田部会長 ありがとうございました。おそらく、経口でこのように強力で、かつ、あ る程度リスクがある薬剤が、これからたくさん出てくる可能性があると思うのです。今ま では、抗腫瘍剤というと注射でやっていたものが多いわけですが、これからの方向として は、経口でもかなり強力、しかしリスクも否定できない薬剤がたくさん出てくる可能性が あると思うので、今の傾向から言うと、調剤薬局なり薬局の方にも、その点をしっかり指 導していくことがものすごく大事だと思います。あるいは、企業がそういう認識をしてい ただかないといけないのかと思って発言しました。 ○早川委員 ありがとうございました。実際に薬を供給するのは企業ですから、まず、所 定の病院にそこをしっかりさせる。また、薬局に院外処方が回っても、最終的には企業が そこに薬を供給する形になるので、そこの道筋をしっかり企業として態勢をとっておくと いうことかと思います。行政的には、薬剤師会等いろいろな所に、今おっしゃったような 方策を徹底していただくといった形で、このような注意深く扱わなければいけない薬に対 する対応を取っていくという理解でよろしいかと思います。 ○機構 先ほどの堀内部会長代理の3点目の質問で、EGFRに関連する遺伝子変異や、 その蛋白発現と、本剤の有効性の話ですが、審査報告書の67ページ以降に、この点につ いての検討結果などを記載しております。ゲフィチニブについては、公表論文等がたくさ ん出ていますが、EGFR遺伝子変異の有無及び遺伝子コピー数が、有効性として腫瘍縮 小効果や生存期間に影響を与えるという報告が確かにあります。  本剤については、ピボタルな試験であったBR.21試験の結果を68〜69ページに記載し ております。御質問のあったEGFRの遺伝子変異についてですが、確かにNew England Journal of Medicineで公表論文になっているところもあるのですが、まだ検討している 症例数も少なく、現段階で患者をEGFR遺伝子変異のありなしなどで制限することがで きるまでのエビデンスは、現在は得られていないと機構は判断しております。ただ、興味 深い結果であることは事実なので、もちろんEGFRの遺伝子変異、若しくは蛋白発現、 コピー数といった点に着目して検討を継続していく必要があり、その点は申請者にも指示 を行っております。 ○堀内部会長代理 極めて類似した医薬品ですので、イレッサの教訓をできるだけ活かし た形で承認審査をしていくことが大事かと思います。イレッサの場合もそうですが、今回 のBR.21の論文を見ても、遺伝子変異がある場合には16%くらい有効性があり、ない場 合には7%くらいとなっていて、かなり明確に違いがあると思います。確かに、変異がな くても有効な場合がある事は、イレッサでも同じように議論をされてきましたが、数パー セント有効であればそれを医薬品として承認するかどうかという議論もあると思います。 20%くらい有効であれば、今の抗癌薬の状況から言うと承認されることは十分価値がある と思うのですが、数パーセントの場合どう評価するかは、いろいろ議論のあるところだと 思います。  そういった観点から、少なくとも今はEGFレセプターの遺伝子変異のアッセイについ ても、SMAP法というものがあって、感度も癌細胞が100分の1くらい入っていれば、 1時間くらいでアッセイできるようなシステムが確立しているので、イレッサが議論され ていた状況とはかなり変わってきております。できれば、変異を調べてから投与をする方 向性が取れないかどうかをお尋ねしたいと思います。 ○機構 残念ながら、EGFRの遺伝子変異について、本剤の有効性を検討したデータが ない状況です。New England Journal of Medicineでも出ているのですが、これは奏効例 数がこの程度だったというデータしかないこともあって、生存に関する検討結果というわ けでもありません。また、遺伝子変異についても、もちろん研究が進んで、最新の状況で はということはあるとは思うのですが、バリデーションとされた標準化されたものが、現 時点では全国でやられる状況でもありません。  後半はプラクティカルな面の理由になってしまうのですが、機構の判断としては、現時 点で得られているBR.21試験という生存期間についての有効性を示した試験において、E GFR遺伝子変異が調べられた検討症例数がこの表にあるような少ない数で、かつ、奏効 に関するデータは、その表の数値しかない状況ですので、EGFR遺伝子変異のありなし で対象を制限するだけの材料がないと判断しています。ただ、もちろん今後海外でもタル セバを用いた試験が、EGFRの遺伝子変異ではないですが、蛋白発現の有無に着目した 第III相試験なども行われていますし、そういったデータも見ながら、将来的にはどうなる か分かりませんが、現時点では制限するだけのエビデンスはないと考えております。 ○堀内部会長代理 先ほどからお話しているように、ゲフィチニブの教訓をできるだけ活 かしたらいかがかと申し上げていますが、そのためにどのくらいの類似性があるかをお聞 きしました。その結果、構造から言っても作用メカニズムから言っても、極めて類似して いると言えるだろうと思います。  確かに、BR.21試験は症例数から言うと十分ではありません。しかし、これが全く差が ないのであれば、かなり違うだろうと言えると思いますが、同じような傾向が出ていると いうことですし、ゲフィチニブの場合は変異のある患者の方がはるかに有効である事は明 らかです。特に、東洋人で女性で変異のある患者は極めて有効率が高いというデータも出 ているわけなので、そういうデータも評価に入れたらいかがかということをお聞きしたい と思います。 ○早川委員 将来に向けての課題の話かと思いますが。 ○審査管理課長 御指摘のとおり、先行する類薬の経験を活かすことは、承認審査をする 立場にとって当然のことだろうと考えております。そういう意味では、今回の機構におけ る審査についても、ILDの関係や臨床試験成績の評価の仕方等は、私としてはそれらの 経験を踏まえたものではないかと考えております。そういう観点から、先ほど来御説明し ましたように、全数調査をする、さらには全数調査をするときの院外調剤のやり方等々に ついても、ディスカッションを積み重ねてきたところです。  今、委員から御指摘があったのは、審査報告書68ページで申し上げますと、端的に言 うとEGFRの変異を検査することを、この指標の前提条件とするかですね。 ○堀内部会長代理 前提というか、義務づけるのがいいかどうか分かりません。ただ、で きるだけそれを行ってから投与をする。要するに、患者には有効であることがかなり推定 できるわけです。我々の病院では、イレッサの場合はすべての患者に対して行っていて、 変異のある患者には、効く可能性があるからしてみませんかと説明しています。 ○審査管理課長 言い方を変えると、承認にあたってEGFRの検査をできるだけやるよ うにと言うことは、基本的には義務づけることとそれほどの差異はないのだろうと思いま す。実際上、できるだけやるようにというのは、かなり強く受け止められるとすると、そ れは義務的にも捉えられるわけですが、いずれにしても、先生の御主張は、EGFRの検 査をリコメンドするようにということだと思います。リコメンドする限りにおいては、E GFRが不明な状態にあるのかどうかは分かりませんが、陽性の患者に投与を絞ることと 同義なのだろうと考えます。  私が存じ上げている限りでは、カナダ等いくつかの国でEGFRが陽性、または不明の 患者に投与することを明確にしている国があったと思います。それにおいても、不明とい うところがあるということは、検査をリコメンドする、あるいは義務づけるところまで行 っていないのではないかと考えます。この点について、藤原参考人、臨床の現場としてE GFR変異の検査をリコメンドする、または投与の対象を今回のデータから見て、EGF R陽性に限定することについて御意見をいただければと思います。 ○藤原参考人 がんセンターの藤原です。今の御意見ですが、審査報告書の69ページの 表を見ると、EGFRのミューテーションのありなしで、生存のHazard Ratioはそんな には変わっていません。それから、海外の、例えばNCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインが今年出ていますが、非小細胞肺癌の治療法に関するガ イドラインを見ても、必ずしもEGFRミューテーションの有無で投与しなさいと書いて あるわけでもありません。総合的に、今承認の段階で、ミューテーションの有無で投与機 会を患者から奪ってしまうのは、私ども現場でたくさんの患者さんの声を聞いていると、 厳しいかという印象を持ちます。むしろ、市販後のところでしっかりその辺りの情報を収 集していただく。  ただし、先ほど機構の方がおっしゃったように、ミューテーションをチェックするシス テム、機器や試薬のバリデーションは非常に大事で、その辺りがしっかりバリデートされ たもので検査をして、例えばGLPの対応で検査したデータなどが大事で、その辺があま りはっきりしない段階で市販の検査でやって、その結果で、患者には投与しないという判 断をしてしまうことに、今は困った話になってしまうと思うので、全例調査の段階あるい は再審査期間の段階で、その辺をしっかり情報収集した上で見直しをかける、あるいは早 いうちに見直しをかける方が、私どもとしては助かると思います。  もう一点は、この審査報告書はNew England Journal of Medicineの公表論文からのデ ータで、実際にファイナルスタディレポートのような、企業が解析した結果でどのように 記載されているのか、不明なところも気になります。というのは、後半、いろいろ審査報 告書を見ましたが、QOL評価などもNew England Journal of Medicineのペーパーでは、 QOLはポジティブとたしか出ていたと記憶するのですが、興味を持ってFDAの審査報 告書の方を見ると、実際に企業がFDAに提出している資料ではQOLの差がなかった り、公表論文と実際のGCP等を踏まえた申請資料との齟齬があって、必ずしも闇雲に公 表論文のデータだけを信頼するのも危険なところがあるという印象を持ちました。審査の 際の添付資料としてちゃんとついているものでの議論のほうが無難かと考えました。 ○庵原委員 25ページの上のデータですが、この薬の機序として、EGFRが必ずしも 関係していない機序があると記載されています。118〜119ページに、長期生存のデータ があるのですが、119ページのデータはEGFR発現の陰性、陽性で長期生存に有意差が 出ていないデータです。単変量で0.749で、多変量で0.520という結果ですが、これは、 この薬の作用機序はEGFRディペンデントではないというデータを逆に表しているの ではないかという印象を受けるのです。  そうすると、今の御指摘の事項は、逆にないほうがいいのではないかと読めるのですが、 この点はいかがでしょうか。ないしは、あまり制限しなくてもいいのではないかというこ とを指示するデータと解釈していいのではないかと思うのです。この点の御検討をお願い します。 ○早川委員 機構の報告書によると、まず、この薬剤は必要とされていると。それはよろ しいですね。これは、たぶん否定的ではないと思います。EGFRの変異との関係におい ては、実際のデータから見ると、必ずしも明確な関係付けはなされていないと。ただ、こ ういう条件でやれば有効性があるというデータはあると。したがって、そのデータの上に 乗って承認の方向にいこうという趣旨で、この薬剤自体は、チロシンキナーゼ阻害剤とい うコンセプトはそうなのですが、実態のデータを見ると、そのメカニズムは働いているか もしれないけれど、それ以外のファクターもあるかもしれない。そのような状況の中での 判断のように見受けられるのです。 ○機構 おっしゃるとおりで、まだ解明されていない部分も多々あり、それはこの薬に限 った話でもないといったところもあります。御指摘をいただいた審査報告書の25ページ より前に、いくつかこのような検討事項を書いていますが、EGFRチロシンキナーゼ阻 害以外の経路を介する機序も、もちろん可能性はあると思います。ただ、現時点でヒトで 得られているデータでは、標準治療が無効であった患者という臨床的な対象患者にプラセ ボと比較してきたときに、この患者層で生存の延長が得られたというデータが貴重である ことは間違いないと、そこまでに情報は限られています。  EGFRに関する検討はもちろん大事で、イレッサのときにいろいろ文献で出てきたも のを活かしながら、それと似たようなものなのか、あるいは全然別個なのかという検討が 今後必要なことは重々分かっているのですが、現段階で得られているデータであっても、 この患者層にこの薬を承認するメリットはあるのではないかと判断しました。 ○堀内部会長代理 結構ですが、是非、市販後でその辺りを明確にしていただければと思 います。 ○早川委員 ただ今の件に関しては、こういう議論があったことを十分メーカーにもお伝 えいただいて、これからのこの部会でのアドバイスということで、よろしくお願いします。 ○守殿委員 もう少し易しい話ですが、錠剤が25mg、100mgと150mgがありますが、これ はどういう使い分けをするのですか。小児に使うわけでもないと思いますし。というのは、 抗癌剤は、一般的に適正量とされている量を減量した場合には、かえって副作用だけで効 果が得られないものが結構多いかと思うのです。この薬の投与量は150mgになっています が、100mgでも効果がどれくらい得られるのか、そういうデータはあるのでしょうか。 ○機構 この薬の使い方としては、ピボタルの試験で行っていたやり方では、副作用の程 度に応じて50mgずつ減量する形になっています。先生の御質問に直接のお答えになって いないかもしれないのですが、そういった減量の仕方でやった試験の結果が、先ほどの第 III相試験だったということです。 ○守殿委員 最後の方で、1年、2年経った状態で、50mgでもステイブルで効果が得ら れていたと、そのような症例があるということでしょうか。 ○機構 ありました。最低投与量についての考察は、審査報告書の90ページに記載して おりまして、委員から御指摘いただいた内容については確認を行っております。 ○守殿委員 50mgでも、継続投与してもいいわけですね。一応効果ありと考えると、そ ういうデータがあるということですね。 ○機構 そのような患者がいたという状況にはとどまるのですが。 ○守殿委員 一般的に考えると、投薬量を80%にするだけで相当奏効率は落ちるわけで すが、これは高価な薬だと思うので、場合により効かない量を無駄に使うのはもったいな い感じがします。 ○審査第一部長 補足をします。審査報告書の90ページに、今担当の方から御説明しま した1日最低投与量の図表があります。この中で、実際にBR.21の試験群では、50mgに 減量後の投与日数、25mgの投与日数を含めるということですが、中央値でも87日、範囲 としては2〜459日という状況が出ております。この結果等を踏まえて、私どもとしては、 有害事象により1日50mgまで減量した場合でも有効性が見られないことはないと、非常 に持って回った言い方ではありますが、一応有効性は否定しておりません。これが先ほど の御説明の趣旨です。 ○守殿委員 添付文書の性状の絵なのですが、実物を見ても明らかな大きさの違いがある のです。これは同じ大きさになっていて、何か誤解を与えそうなので、それなりの大きさ に訂正したほうがいいのではないかと思います。 ○審査第一部長 ありがとうございました。御指摘のとおり、我々も気づきませんでした。 見かけ、同じ直径で書いていますので、区別するように指示したいと思います。 ○守殿委員 用法・用量のところでは、「食事の1時間以上前又は食後2時間以降に」と 書いてあるのですが、その下の用法・用量に関連する使用上の注意では、「食事の1時間 前から2時間後の間の服用は避けること」となっていて、これを「食事」というものを抜 いて頭で計算すると、食後1時間になるのです。同じ書き方のほうがいいのではないかと 思うのです。食前1時間から2時間となると、食後1時間と考える人がいるのではないか と思います。こういう書き方をすると、いろいろな読み方があると思うのです。 ○審査第一部長 その点については、誤解のないように変えたいと思います。 ○守殿委員 食後空腹時でないと、薬剤の曝露時間が上がるわけです。副作用に関係して くるので、その辺りは使用する際に、明確に空腹時を狙った書き方をされたほうがいいの ではないかと思うのです。 ○審査第一部長 ありがとうございました。私どもは、ここはそういうつもりで読んでい なかったのですが、確かにそういう読み方もできるので、間違いのないような記載にした いと思います。 ○守殿委員 本剤は、患者さんには服用について非常に丁寧に説明しなさいとなっており ますが、本剤は、日本では治験中に3名の関連ありの死亡例があるのですね。ゲフィチニ ブの場合は、国内治験では何例くらいの死亡例があって、間質性肺炎が何例くらいあった のでしょうか。本剤では、3例中1例だけですか。治験というのは慎重に投薬されての結 果だと思うので、市販された場合にどんどん多数例に使われ出すと、いろいろな階層や知 識の医師が使うので、このようなことを守らなければ余計に間質性肺炎等の危険性が出て くると思うのです。投薬については更に厳しく指導していただくことを、メーカーにもお 願いしなければいけないのではないかと思います。 ○審査管理課長 その点は、御指摘のとおりだと思っております。この中でも、警告で、 まず医療施設、あるいはそれに携わる医師を、十分な知識と経験のある方々に絞るという ことで、先ほど御説明した学会認定施設等を考えております。さらには、患者特定カード というのも考えています。  さらには、効能・効果の書き方ですが、ファーストラインではないのだということを明 確に読めるように効能・効果を書くとともに、念には念を入れて、使用上の注意にファー ストラインでの有効性・安全性は確立していないことを書いて、セカンドラインとしてお 使いいただくということで進めようとしております。もちろん、厚生労働省としても、関 係学会や関係医療団体に、これの適正使用について特段の御注意をお願いしたいと思いま す。その上で、全数調査をやっていき、適宜報告をしていただき、仮に不幸にもILDの 発症が多発するようであれば、先生方の御意見もお聞きしながら、必要な対策を講じてい くことになっていくのだろうと思います。  今の時点では、できうる限り、あるいは類薬の経験も踏まえて、あるべき姿を我々とし ては考えてきたところだろうと思っております。これを、今申し上げたような通知や医療 現場の御協力をどのように得るのか、企業に厳格な指示を送るということで実施していこ うと考えております。 ○早川委員 よろしくお願いします。先ほどのゲフィチニブの国内治験での間質性肺炎の 発現率、死亡の件ですが、今分からなければ、後日調査していただいて御報告いただくの でもいいと思います。 ○機構 正確な数値かどうかを確認したいと思います。 ○庵原委員 二つ確認したいのですが、1点は118〜119ページのHazard Ratioの多変量 解析のCox回帰のデータの読みについてです。白金製剤を含む先行化学療法の有無で、 ないほうが生存期間が伸びているわけです。このデータですと、スタンダードの白金治療 をしたあとでこれを使うと、生存期間が延びないと読めるのです。このデータの読みと添 付文書の説明との整合をどう説明されるのかが1点です。  2点目は、現在、間質性肺炎が話題になっていますが、この薬と、先ほどから問題にな っているゲフィチニブと、同じ投与をしたときの血中濃度に差があるのかです。  更に追加の質問ですが、間質性肺炎の発症メカニズムが、血中濃度ないしは蓄積された 投与量によって起こっているのか、それとも、ほかのメカニズムが起こっているのか、そ の辺りが分かっていたらお願いします。 ○機構 1点目の白金製剤のことですが、効能・効果というか、位置づけとしては標準的 な治療が無効な、ということで考えているのですが、BR.21試験では、審査報告書の87 ページの効能・効果の欄で記載しております。BR.21試験の組み入れられた患者集団も、 標準的な治療が無効であった患者ということで、そうなると、ほとんどの場合は白金が入 るという状況で、実際、結果的に白金製剤の前治療歴を有しない患者は、本薬群では488 例中34例、プラセボ群では243例中19例ということで、何らかの事情で白金が入らない 場合もあり得るのですが、このようなパーセンテージの患者さんは白金が入っていないこ とになります。そういうわけで、数字が多い、少ないという話はできないのですが、白金 製剤のデータがなった理由は、一つは症例数が白金製剤入りの人とない人では極端に違っ ているので、データの解釈に注意が必要な部分であろうかと考えました。  とは言え、白金製剤が入らない患者も1割弱います。試験でも、その患者を含めて試験 していますので、必ずしも白金製剤の入った人に限定することはできないと考えて、効能 ・効果では「癌化学療法施行後に」というような表現にいたしました。  2点目ですが、ILDとPK若しくは蓄積性との関係なのですが、国内でも6例という ところもありまして、お答えからすると、現時点ではっきりしたデータはありません。 ○庵原委員 この薬とゲフィチニブと、同じように150mgを投与したときの血中濃度の差 というのはあるわけですか。 ○機構 比較したデータはございません。 ○早川委員 動物のレベルでもないということですね。 ○機構 現時点ではないと思います。 ○早川委員 これから進めていく過程で、そういうことを測っていく計画は、特にはない ですか、今のところ。両方を比較してというのはないのですね。 ○機構 はい、ありません。現時点では見ておりませんのと、製造販売後の方に、そうい ったゲフィチニブも念頭に置いた上での血中濃度とか、薬物動態の話というのは、指示は していません。 ○早川委員 一般論として、ゲフィチニブの間質性肺炎、それのメカニズムは、まだ十分 には解明されていないということですね。 ○機構 さようでございます。 ○早川委員 そういう答えですが、よろしゅうございますか。他に何かございますか。 ○溝口委員 この薬の作用機序から当然かもしれませんが、副作用で発疹が96.7%と非 常に高くなっております。幸い重症例は少ないようで、軟膏を塗るなどの対症療法とか、 本剤の減量で対応していて、中止例が少ないようです。  そこでお願いなのですが、市販後、副作用も全例調査されると思うのですが、ただ「発 疹」と書いてあると、何のことだか分かりませんので、例えば角膜潰瘍が起こっています ので、皮膚の潰瘍も起こる可能性もありますし、全身に紅斑が起こることもあるのではな いかと思います。せめて、投与してから何日頃、どこに何ができたと調べていただけると、 そのデータを集積し、この薬でどのような副作用が出るかというのが分かって、早めに対 応できます。全身が痒くなったり、痛くなったりする前に対応できて、減量後改善すれば、 増量もまた可能であるのではないかと思いますので、皮疹の詳しい調査を、できればお願 いしたいと思います。  一番いいのは、添付文書の案の2ページに、「目の異常が現れた場合には、直ちに眼科 的検査を行い、適切な処置を行うこと」と書いてあるのですが、ここに「皮膚科的検査」 というのも加えていただけると、皮疹ではどのようなものができるのかというのが分かる のではないかと思います。抗癌剤の中では、ほとんどが非常に薬剤に特徴的な発疹を出す ことがあります。それが分かっていると、すぐに対応できるのです。私、今癌研有明病院 に非常勤で診療していますので、この薬ではこういう皮疹が出るということが分かり、し かも非アレルギー性でしたら、薬の効果があるときは、患者に話しますと、命に危険がな いなら我慢してもらって治療を続けられるということにもなります。本薬剤での治療その ものにも役立つと思いますので、可能でしたらお願いしたいと思います。 ○機構 御指摘を踏まえて、対応させていただきたいと思います。ありがとうございまし た。 ○早川委員 ほかにいかがでしょうか。藤原先生には参考人として来ていただいているの ですが、追加的に何かございますか。 ○藤原参考人 先ほども委員から御指摘のあったこの薬ですが、フェイズIで、国内で死 亡例が間質性肺炎で出ているということは、非常に注目すべきかと見ておりまして、海外 のポスターでそれを発表されていたと思うのですが、イレッサのときはそれがなかったの で。  添付文書で縛れない場合、私ども実際の医療現場の医師がこれを処方するときに、それ をきちんと捉えて、闇雲に処方をしないというところを、いかに企業と各種学会、行政に フォローしていただいて、指導していくかが大事だと思っていまして、企業と行政の方々 には、そこを闇雲にマーケットに走らせないというところが、この薬を育てる上では非常 に大事かと思っています。  私ども専門医としては、非常に対象を考えて、Performance statusを考えて処方する のが通常なのですが、そうではない先生方もいらっしゃるところを、どう捉えていくかが 大事なので、工夫を是非お願いしたいと思います。 ○早川委員 課長からございますか。 ○審査管理課長 心に止めてやっていきたいと思います。ありがとうございました。 ○早川委員 ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。有効性の作用機構、あ るいは副作用の発現の作用機構についても、まだいろいろと不明な点がありますが、本剤 が現時点で、医療の現場に必要とされている薬であるかどうかを、これから御判断いただ きたいと思います。議決に入りたいと思います。なお、池田部会長、堀内委員におかれま しては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととい たします。  それでは、本剤の承認を可とするということに関して、御同意、御賛同いただけますか。 よろしいですか。では、本剤の承認可、といたしまして薬事分科会に報告することとさせ ていただきます。 ── 田村委員入室 ── ○池田部会長 報告事項に移ります。機構から説明をお願いします。 ○機構 議題の順番に沿って報告します。議題1です。「医薬品ティーエスワンカプセル 20、同25の製造販売承認事項の一部変更承認申請について」御報告いたします。資料4 を御覧ください。  本剤は、フッ化ピリミジン系の抗悪性腫瘍剤であり、現在は、「胃癌」、「結腸・直腸 癌」、「頭頸部癌」、「非小細胞肺癌」、「手術不能又は再発乳癌」、「膵癌」の効能・ 効果で承認されております。  今般、大鵬薬品工業株式会社から、「胆道癌」の効能・効果を追加する製造販売承認事 項一部変更承認の申請がなされたものです。  医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いた しました。  議題2です。「医薬品タケプロンカプセル15、ほか18剤の製造販売承認事項一部変更 承認申請について」御報告いたします。資料5です。  ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾールナトリウムの、いずれかのプロト ンポンプ阻害剤とアモキシシリンは、クラリスロマイシンとの3剤併用療法により、現在 は、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助の効能・効果 で承認されております。2、3ページ目の5番の用法・用量を御覧いただきたいと思いま すが、そのような状況です。  今般、武田薬品工業株式会社ほか8社から、先の3剤での除菌治療が不成功の場合の、 これに代われる治療、すなわちヘリコバクター・ピロリの二次除菌療法の用法・用量、効 能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。  また、本申請は、いわゆる公知申請のものになります。  医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いた しました。 ○事務局 続きまして、報告事項の議題3です。「希少疾病用医薬品の指定の取消しにつ いて」です。資料6を御覧ください。  こちらにお示ししていますSOT-107という品目については、平成17年1月21日の本部 会におきまして、神経膠腫を予定される効能又は効果として、希少疾病用医薬品の指定に ついての御審議をいただきまして、平成17年2月8日に指定したところです。  この品目につきましては、これはもともと米国NCI及び米国の会社が開発し、株式会 社そーせいが日本での開発を準備していたものです。これにつきまして、審議当時、欧米 において、臨床試験が実施されていた状況です。3ページ目ですが、今回、この品目につ きまして、申請企業から開発の中止をしたいという申出があったものです。  この経緯ですが、3ページの3.にあります。現在開発を行っているXenova社が実施し た欧米での第III相臨床試験におきまして、本品目、海外での名称は「TransMID」と記載が ありますが、この品目とベスト・サポーティブ・ケアを比較する多施設共同の試験を行っ ていたところです。  それにつきまして、中間解析が実施された結果、死亡率はベスト・サポーティブ・ケア 群の方が低く、生存期間の中央値もベスト・サポーティブ・ケアの方が長いという結果で、 有効性の評価において、本品目での有効性が見込めないという結果が得られたということ でございます。その結果を受けまして、海外で開発しておりますXenova社が開発の中止 を決定した。それを受けまして、日本におきましても、株式会社そーせいが開発を中止す るということです。以上の経過におきまして、本剤の開発を中止しておりますが、我が国 における開発は、臨床試験未着手の状態であったということです。以上のようなことから、 この希少疾病用医薬品の指定を取り消すということです。  議題4です。「優先審査指定品目の審査結果について」です。資料7を御覧ください。 この優先審査の取扱いですが、資料7の裏面に取扱いについて概要を示しています。薬事 法第14条第7項に、厚生労働大臣は、承認申請された医薬品が希少疾病用医薬品、その 他医療上特に必要性が高いと認められるものであるときは、当該医薬品の審査を、他の医 薬品の審査に優先して行うことができるという規定がございます。その指定に当たりまし ては、この取扱いに示している1番の(2)の(1)適応疾病の重篤性、(2)医療上の有用性を 総合的に評価して判断することとしています。  資料の表を御覧ください。今回報告する品目ですが、医薬品名「アービタックス注射液 100mg」、「ブリセタックス注射液100mg」、成分名はセツキシマブ遺伝子組換えでござ います。今般、本剤について、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌を適応疾患とす る、製造販売承認申請がなされたものであります。  この適応疾病であります治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌については、治癒切 除不能となるステージIVの結腸・直腸癌では、5年生存率が15%前後となり、予後も不 良であることから、生命に重大な影響がある疾患、致死的な疾患であると判断したもので す。  医療上の有用性ですが、我が国において、切除不能な転移・再発大腸癌に対しては、フ ォルフォックス療法などが、一次治療及び二次治療として用いられていることが多いと考 えられますが、一次治療及び二次治療が無効となった症例に対しては、生存期間の延長等 が検証された治療薬はなく、そのような症例に対する有効な治療は存在しないと考えられ ます。  本剤の有効性に関しまして、主な臨床試験の結果を見ますと、米国において、フッ化ピ リミジン系薬剤及びイリノテカン、オキサリプラチンを含む化学療法に、PDまたは対応 不能となった患者を対象に、ベスト・サポーティブ・ケア群を対象とし、ベスト・サポー ティブ・ケア、プラス、本剤単独投与群を試験群として実施した第III相臨床試験において、 全生存期間の中央値は、対照群で4.6か月、本剤単独投与群で6.1か月であり、本剤の延 命効果が確認されました。  なお、安全性につきましては、本剤と塩酸イリノテカンとの併用投与及び本剤単独投与 における安全性については、いずれも特段に優れた結果は得られておりません。また、肉 体的・精神的な患者負担については、海外の第II相臨床試験において、QOLの評価が行 われているものの、患者該当数が少ないなどのことから、結論を見出すことはできなかっ たとされていまして、既存の治療法と比べて特段優れるかどうかということは明らかでは ありませんでした。  以上の点を踏まえ、安全性及び肉体的・精神的な患者負担の観点からは、既存の治療法 に比して優れるものとは判断できないものの、有効性の観点からは、治療選択肢の限られ た患者に対して、ベスト・サポーティブ・ケアと比べて優位な生存期間の延長を示す成績 が得られていることから、本剤は既存の治療法に比べ、有用性の高い治療法となることが 期待できるものと判断され、本品目を優先審査品目に指定することといたしました。以上 でございます。 ○池田部会長 ただいま四つの議題についての報告をいただきました。一つは抗癌剤のテ ィーエスワンカプセルの製造販売承認事項の一部変更承認です。もう一つはピロリ菌の除 菌ですが、タケプロン等の製造販売承認事項を一部変更承認についてです。この二つに関 しては、特に何か御意見はございますか。よろしいでしょうか。  それでは、この製造販売承認事項の一部変更承認については、御確認いただいたことに いたします。  議題3は希少疾病用医薬品の指定の取消しです。議題4は、セツキシマブ遺伝子組換え の優先審査指定品目の審査結果についてですが、この二つの議題について、何か御意見、 御質問はございますか。  特にないようでしたら、この報告事項も御確認いただいたことにいたします。ありがと うございました。  審議事項の議題1に戻ります。これについては、冒頭に御説明がありましたように、堀 内部会長代理に進行をお願いします。 ○堀内部会長代理 それでは議題1に入ります。池田委員は本議題に関与されていますの で、この議題の間は別室で待機していただきたいと思います。 ── 池田部会長退室 ── ○堀内部会長代理 総合機構から概要の説明をお願いします。 ○機構 議題1、資料番号1、rHSA原液、アルビースト注25%、同5%並びにrHS A原液-バイファ、アルブレック注25%、同5%の製造承認の可否等について、医薬品医 療機器総合機構より御説明いたします。  本品目は、人血清アルブミンcDNAをピキア酵母に組込み、産生させた遺伝子組換え アルブミンを有効成分とする製剤でございます。  本品目は、申請後、平成11年の中央薬事審議会血液製剤特別部会における審議の結果、 本剤は通常のタンパク質医薬品に比べ、大量かつ繰り返し投与される場合があるにもかか わらず、宿主である酵母由来不純物に対する安全性の検討が十分ではないこと等の指摘を 受け、繰り返し投与時の安全性を確認する臨床試験及び血漿由来アルブミン製剤との生物 学的同等性試験を追加実施すること。また、臨床用量に準じた反復投与時のアナフィラキ シー反応誘発原性試験を非臨床で検討することを指摘されております。追加臨床試験のプ ロトコルの骨子については、平成12年の中央薬事審議会医薬品第二特別部会に報告され ております。  追加臨床試験の開始の前に当たりまして、動物を用いて、アナフィラキシーの誘発原性 試験を実施したところ、承認申請時製法(A法)の製剤において誘発原性が認められまし て、これについて□□□□□のための□□□の□□□□工程における温度が高すぎたとい うことが原因であると考えられたことから、□□□□□が可能な程度に加熱温度を低下し た、改良製剤(B法製剤)を用いて追加臨床試験が実施されました。  一方、申請者は、並行して、本剤の添加剤としての開発を米国で行っておりまして、宿 主であるピキア酵母の特異的IgE抗体陽性例に対するChallenge studyを行っておりま した。このChallenge studyにおいて、4例中2例に重篤なアレルギー症状が発現したこ とから、国内で実施中の繰り返し投与試験を一時中断いたしました。その後、先ほどの□ □□□□□□□□□□□時に、□□□□□□□□工程で高温のままであったことが原因と なっていた可能性が、動物実験等から示唆されまして、工程管理を厳密にすることで、ま た、□□□□を□□□□□□□□□□に変更することで、アナフィラキシー反応の誘発原 性を更に低下することが可能となり、この新改良製剤(C法製剤)を用いて、米国の例を受 けまして、特異的IgE抗体陽性例を除外した上で、国内の繰り返し投与試験を再開して おります。繰り返し投与試験については、平成□年□月に終了し、審査結果が追加提出さ れ、審査が再開されております。  本品目の専門協議につきましては、追加臨床試験のプロトコル作成時と試験結果提出後 の二度行われており、お手元の資料9に、それぞれの専門協議ごとに、御参加いただいた 専門委員を示させていただいています。合計20名の専門委員でございます。  続きまして、審査の概略について御説明します。  品質につきましては、等電点や分子量、アミノ酸配列に加えて、各種スペクトルや立体 構造解析等の特性解析の結果、血漿由来アルブミンと同等であることを確認しておりま す。また、安定性につきましては、25%製剤は、血漿由来アルブミン製剤と同じ、室温で 2年間となっておりますが、5%製剤については、□か月の時点で□□□□□が認められ たことから、室温で1年間となっています。  薬理、動態、毒性につきましては、特段の問題は認められておりません。  臨床試験に関しては、生物学的同等性試験で、血漿由来アルブミン製剤との同等性が確 認されております。また、血漿由来アルブミン製剤との第III相比較臨床試験において、血 清中のアルブミン濃度の上昇値に同等性が認められております。さらに、追加で行われた 繰り返し投与試験におきまして、血清中アルブミン濃度及び膠質浸透圧の上昇並びに体重 の減少が認められております。その他、出血性ショックやネフローゼ症候群等の患者を対 象とした試験においても、特段の問題は認められておりません。  安全性につきまして、追加臨床試験を含めた国内臨床試験全727例におきまして、102 例(14.0%)の副作用が認められ、1%以上の症例に発現した副作用は、「発熱」、「発疹」、 「肝性脳症」及び「そう痒症」がございました。副作用症例中、死亡症例は肝硬変NOS の2例と痔出血・出血性ショックの1例の計3例が、腹水を伴う肝硬変患者を対象とした 追加の繰り返し投与試験で認められております。  第III相の比較試験において、本剤と血漿由来アルブミン製剤の副作用発現率に特段の差 は認められておらず、また、繰り返し投与試験において、繰り返し投与数の増加に伴う有 害事象や副作用の発現率に、大きな差は認められませんでした。また、特異的IgE抗体 の陽性例と陰性例で、有害事象や副作用の発現率に大きな差は認められておりませんし、 特異的IgE抗体陽性例24例に投与した際においても、皮膚や呼吸器におけるアレルギー 様症状の副作用は認められませんでした。なお、承認申請時までに実施された臨床試験よ りも、承認申請後に実施されました追加臨床試験で有害事象や副作用が多く認められたこ とに関しまして、有害事象の調査期間の違いや申請後の追加臨床試験が新GCPの下で行 われていたことによる、有害事象の収集方法の違いによるものであると考え、忍容可能と 判断しております。  国内臨床試験では、本剤に伴う重篤なアレルギー様症状は認められておりませんが、米 国で重篤なアレルギー症状が認められていたこと、また特異的IgE抗体陽性例に、アレ ルギー様症状とはされていませんが、発熱やそう痒症が認められていること、また、市販 予定製剤であるC法製剤を特異的IgE抗体陽性例に投与した経験がないことなどから、 製造販売後に、使用実態下での特異的IgE抗体の有無と副作用発現状況等の安全性情報 を収集するために、10,000例の使用成績調査を実施すること、また、特異的IgE抗体陽 性例が非常に少数になることが予想されますので、これらについて安全性情報を逐次確認 しつつ、100例を目標に情報収集をすることとされております。  加えて、肝硬変患者又はネフローゼ症候群患者に対する有効性及び安全性に関する特定 使用成績調査も実施することとされております。  以上の機構での審査の結果、本剤は、血漿由来アルブミン製剤と同程度の有効性が期待 できると考えられ、安全性について、ウイルス等感染症のリスクは限りなく低いと考えら れる一方で、酵母由来不純物に対するアレルギー様症状の発現のリスクが考えられます。 アレルギー様症状の発現の懸念に対しては、特異的IgE抗体陽性例を含め、国内臨床試 験で、重篤なアレルギー様症状は認められていないということ、また、製造販売後ですが、 本剤投与の際に特異的IgE抗体価を測定し、原則として陽性例への投与を回避すること 等の処置を実施すること、また、酵母由来不純物に対するアナフィラキシー反応誘発原性 について、規格試験において□□を用いて確認をしていることから、現時点で可能な対応 は取られていると判断し、血漿由来アルブミン製剤と同一の効能又は効果及び1回あたり の投与量が12.5gを基準とする用法及び用量で承認して差し支えないと判断いたしまし た。  なお、添付文書において、これらに対する注意喚起を行うとともに、適正使用の観点か ら、本剤使用に際しては、患者への説明を十分に行うことを明記しております。  本剤は新有効成分含有医薬品としての申請であることから、再審査期間を8年間とし、 本剤製造にはヒト・動物由来成分を使用しておらず、また、宿主が酵母であるということ から、生物由来製品・特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。ま た、毒薬・劇薬の指定につきましては、人血清アルブミン製剤同様、いずれにも該当しな いと判断いたしました。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○堀内部会長代理 今のアルブミンにつきましては、従来の医薬品の少量使うものと違っ て、一度に12.5gが基準ということですが、大量に投与する遺伝子組換え物質ということ で、そういう面では、今回ここで議論されるものとしては新しいことだと思いますので、 十分に御審議をいただきたいと思います。  最初に、参考人の高橋先生、御意見がございましたらお願いします。 ○高橋参考人 御承知のように、アルブミン製剤は我が国で非常に広く使われて、一番激 しく使われていた頃は95%を輸入に頼る状況で、通常の献血由来の血漿からつくられた アルブミン製剤ではほとんどカバーできないくらい使われた時期もございました。もちろ ん適正使用を図るということで、だんだん減ってきましたが、かなり広く使われている状 況は変わりません。  今回の話が少しややこしくなっているのは、申請時から紆余曲折があって、A剤からB 剤、C剤と変わってきていますし、それぞれの時点での評価基準なども、少しずつ異なっ ているので、少し分かりにくいのですが、今、話がありましたように、有効性に関しては、 血漿由来のアルブミン製剤と同等であろうと。安全性に関しても、ウイルス等の病原性微 生物の伝播のリスクの点では、少なくとも血漿由来のアルブミン製剤に劣ってはいないで あろう。ただし、少し酵母由来のアレルギーの懸念があるということです。  ここの副作用の割合を見ると驚くのですが、対象症例に伴って見られた、広い意味で副 作用と言いますか、アルブミン製剤投与が、因果関係が必ずしも証明されたものばかりで はないと思うのですが、そういうので多く含んでいるわけで、それを見ても、通常の血漿 由来のものとほとんど変わらないことが分かっていますし、酵母由来の特異的なIgE抗 体陽性例に関しては、慎重に投与すべきである。基本的にはIgE抗体を測定して、その 陰性例に用いる。陽性例に用いることは、基本的にはしない。  ところが、このようなアルブミン製剤が一番重要視されるのは緊急事態で、循環血液量 が下がって、出血性ショックのような状態のときに、緊急に使用することがありますので、 そういう場合はリスク・ベネフィットを考慮して、患者側にも十分にそういう説明をして、 それで扱うべきであるという結論でした。以上です。 ○堀内部会長代理 今の高橋先生のお話に御質問はございますか。 ○山口委員 非常に臨床で期待をされている薬剤であることは確かですし、ただ、これが 認可されて使われる場合には、日本の輸血行政、あるいは血液行政に非常に大きな影響を 与えるだろうと思います。  確かに酵母アレルギー反応に対する懸念は残るものの、血漿由来アルブミンと、構造、 性状、物理化学的な性格などに差がない。それから、膠質浸透圧の改善、循環血漿量の是 正が認められて、臨床結果も同等であるということは、非常に評価できると思います。  ただ、その上でいくつか質問なのですが、一つは、今もありましたが、今まで審査に長 い時間がかかった理由のいくつかが解決できたのかということです。改良された製剤で、 今も高橋先生が言われましたが、発熱を含めた副作用の頻度が少し高いような印象を受け ます。14%というのは、これがどの程度の副作用なのかというのはありますが、その点が 1点です。  2点目として、長期反復投与の問題です。3クールあるいは5クールくらいまでやられ ていたと思うのですが、もっと長い反復投与の場合に、インヒビターの問題であるとか、 本当に抗体ができないのかどうか、この問題がクリアになっているのかということです。  3点目として、米国での治験中止です。4例中2例に重篤な副作用があったということ で中止になっていますが、これを製造の変更ですべて対応できるのかどうかということ を、確認としてお聞きしたいと思います。 ○堀内部会長代理 これはどうしましょうか。機構から説明をしていただいて、高橋先生 から追加をお願いします。 ○機構 御説明させていただきます。有害事象及び副作用の発現頻度の点に関しまして は、先ほども高橋先生からも述べていただきましたとおりですし、審査報告書の51ペー ジにも記載しているのですが、先ほどの口頭の説明でも簡単に触れましたが、申請前の試 験では、投与終了翌日までを有害事象の収集期間としていましたが、追加臨床試験におい ては、次クール開始まで若しくは最終投与終了後4週までを調査期間としていた、そうい った調査期間の違いが一つあるかと思います。  それから、申請前の試験は平成9年の新GCP省令施行以前に実施されていたというこ とで、副作用等の概念が、その後行われた追加臨床試験に比べると異なっていたという点 で、安全性情報の収集方法に違いがあったのではないかと理解しています。  また、第III相比較試験において、人血清アルブミン製剤と、本剤A法の製剤を比較した 臨床試験において、54ページに記載していますが、有害事象及び副作用の発現率に、特 に差は認められておりません。  こういった状況から、長期反復投与試験において、本剤の有害事象、副作用の発現率が 高かったということが生じたのかということが考えられますが、生じた内容についても、 原疾患等の問題もあるということも、専門委員からも指摘いただいておりますし、機構の 判断について、特段問題は指摘されませんでした。  2番目の長期反復投与の問題につきましては、肝硬変症例ということで、5クールまで 行われたのですが、これよりも長期にわたって使われることに関しては、この後行われる、 製造販売後の使用成績調査の10,000例の中で調査していくことで対応してはいかがかと 考えています。  使用成績調査については、肝硬変症例だけではなく、その他アルブミン製剤が使われる 全領域、救急領域も含めて調査対象となっていますので、そういった長期の使用例も収集 されてくるのではないかと考えています。  アルブミンに対する抗体産生についてですが、申請前に実施した試験で、200例に対す る、リコンビナントアルブミン抗体の検査が実施されていまして、投与終了1か月後及び 3か月後において、陽性例は認められておりませんでした。また、申請前の試験でありま すが、10例の繰り返し投与試験においても、アルブミンの抗体産生は認められませんで した。  3番目の米国の試験に対する対応が、製造方法の変更のみで十分なのかという点に関し てですが、これについては審査の中でも議論になっていて、審査報告書の32ページ辺り からも書いています。まず、問題となった製剤が、□□□□の問題というよりは工程管理 そのものに問題があり、製造工程において、□□を□□□□した後に、製造中間体を通過 させるわけですが、その□□□□□後の温度が高いままの状態で製造をしてしまった。そ ういったことが原因ではないかということで、その後、□□後の時間を□時間取るという こと、また温度も□□以下まで下げることを確認しなければ、そういった製造中間体が流 れないような形に、製造現場で対応していくという形になっていまして、そういった改良 製剤について、まず開発しました。  問題となったB法の製剤とC法の製剤で、□□□での□□□試験を行っていまして、B 法製剤で陽性、C法製剤で陰性となるような□□□を設定しております。  また、審査報告書の52ページの表ト-11と表ト-12に記載していますが、長期反復投与 試験において、B法製剤で投与された症例で、有害事象、副作用の発現率と特異的IgE 抗体価の間に相関は認められておりませんでした。  そうは申しましても、アレルギー様症状の発現の懸念については、否定できないという ことから、使用前に特異的IgE抗体価を測定して、原則として陽性例への投与を回避す る。陽性例の投与を緊急時等で、測定結果が得られる前に使用する際には、リスク・ベネ フィットを十分に説明し、考慮された上で、やむを得ない場合に限ることと、添付文書の 用法・用量に関連する使用上の注意に記載しています。また、同じ用法・用量に関連する 使用上の注意及び重要な基本的注意にも、過敏症等が発現した場合に、適切な処置が取れ る体制で投与することを記載しています。  さらに、製造販売後の使用成績調査において、連続調査方式による偏りのない調査を実 施して、特異的IgE抗体価と本剤投与時の安全性について調査するとともに、収集され た情報につきまして、迅速に医療現場へフィードバックしていくということで対応させて いただくことで、承認して差し支えないのではないかと判断いたしました。 ○庵原委員 そのB法とC法に用いられた、アルブミンの素性なり成分自体、何か変化し ているのですか。と言いますのは、□処理によってアナフィラキシーが増えているという ことは、アレルギー反応とは考えにくいのです。アルブミンの凝集なり、何か異常蛋白が 出現したなり、□変性によってアルブミンが変性したとか、そちらが原因ではないかと考 えられるのです。この点について検討は行われて、Cではそういうものがなくなったから、 アナフィラキシーが減ったのではないかという解釈ができます。BとCでアナフィラキシ ーを起こす物質は変化はないわけですか。アナフィラキシーと説明するには、少し理由が 成り立たないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○機構 B法とC法ではないのですが、当初の製造方法のA法製剤において、□□□や酵 母成分の□□、□□□を用いた□□□□□□□□□等におきまして、□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□が認められておりました。これについては B法製剤の中では認められておりません。精製工程の中で、何らかの酵母由来不純物が□ □□□□□□□□□□□□して、誘発原性をA法製剤において示したのではないかもしれ ません。  また、B法とC法についてですが、B法の中ですでに見えなくなってきてはいるのです が、A法からB法へ変更するに当たって、一番感度が高かった試験として、□□□を用い た□□□□□□□□□□□□□試験がありました。この□□□□試験で、B法においても □□□量を増量することで見られてきたということもありましたので、製造方法改良の結 果、C法においては、B法で見られるくらいまで□□□を増加しても誘発原性が見られな くなりました。酵母成分に対する□□、□□□を用いた□□試験が行われているので、そ の中で陰性を確認してきていると判断しています。  また、米国で問題が起きたロットにつきましては、□□□の□□□試験において、非常 に強い誘発原性を認めていたこともありまして、この誘発原性が認められなくなったとい うことで、アナフィラキシーの誘発原性若しくはアレルギー様症状の誘発原性が低下して いるのではないかと考えています。 ○庵原委員 □□□だと、見ているのは遅延型の過敏反応ですね。即時型の過敏反応を見 ていますか。一般的に□□□というのは遅延型の過敏反応を見る試験方法だと思うのです が。 ○機構 □□□を打って、その状態で本剤を投与して反応を見ておりますので。 ○庵原委員 何時間後に反応を見ていますか。一般的に□□□というのは遅延型で、48 時間後に判定するのがスタンダードなやり方なのですが。 ○機構 □時間の時点で判断しています。 ○庵原委員 即時型なら4時間なり6時間で判断しなければいけないのが、□時間で判断 しているのは遅延型と思います。そうするとヒトに投与しても、反応が4時間で出たのか、 □時間ないし48時間で出たのかの説明がつきますか。 ○機構 先生のおっしゃるような形で、□□試験とのリンクのことではありますが、ただ、 B法製剤については、米国で問題の起きた治験のロットに関しては、□□試験においても 反応性が十分に見られているということがありますので、一つの試験方法としては妥当と 思っています。 ○庵原委員 私が言っていますのは、IgEが関与するアナフィラキシーではないのでは ないかということなのです。 ○機構 その点につきましては、特異的IgE抗体陽性例に対して投与していたというこ とから、また、投与が1日のうちに行われるChallenge studyの中で生じていたことから、 IgEに関連するアレルギー症状ではないかと考えているという米国の治験担当医師のコ メントがなされております。 ○庵原委員 そうすると□□□の説明と合わないのです。□□□は遅延型の反応ですか ら。 ○機構 □□□を投与してから□時間後に本剤を投与し、その□□後に反応を判定してお ります。 ○庵原委員 □□分後にもう反応が出ているということですね。それでしたら即時型の反 応ということで了解しました。 ○堀内部会長代理 この場合には、□□液中に出てきたアルブミンを精製する段階で、□ □を□□□するために温度を□度でやっていたけれども、その場合には酵母由来に産生さ れたもので、□度にすることによって分解されるか何かのものが出てきたと。それを□度 に下げたことによってそれがなくなって、十分に分離できたと考えてよろしいのですね。 ○機構 そのように考えております。 ○溝口委員 昔の話かもしれませんが、米国での4例中2例のアレルギー性の重篤な副作 用というのは、アナフィラキシーかアナフィラキシーショックか、あるいは別のアレルギ ーかというのは、症状からすぐに分かると思うのですが、ここでなぜ「アレルギーの重篤 な副作用」と記載されているのでしょうか。 ○機構 その症例そのものを直接見ているのではなくて、向こうの臨床のレポートという 形で、「アレルギー症状」と記載がございました。 ○溝口委員 例えば喘息とか下痢とか、喘鳴という記載があれば、すぐにアナフィラキシ ーと分かると思うのですが、全くそういうものがなくて、アレルギーとしか書いてないの でしょうか。 ○機構 喘息とか、そういうことは書かれておりませんで、添付資料概要のト-703ペー ジに症例一覧が記載されていまして、気管支痙攣という形で、シビアな副作用が見られて いるということです。 ○溝口委員 気管支痙攣でしたら喘息ですから、やはりアナフィラキシーではないかと思 いますが。 ○機構 ここの点で、アナフィラキシーかアレルギーかについては、当時の回答、米国と のやり取りを見た中では、特段、申請者と試験責任医師とのやり取りは記載されていない のですが、この状態でアレルギー症状だと判断をされて、投与を中止しているということ から、また、両被験者に対して急性アレルギーの治療により、症状が寛解したとのことで す。 ○溝口委員 これが承認されると、便利にはなるかとは思いますが、実際に、全く代わり のものがないのではなくて、血漿由来の人アルブミンというのが実際に存在するわけで、 これが出てくるためには、より高い安全性が求められると思うのです。  当然、人由来の、血漿由来のものも副作用はあると思いますが、一番の問題は生命に直 結するアナフィラキシー反応及びアナフィラキシーショックだと思いますが、この新しい 工程でつくったものでは、ヒトに実際に使用して、アナフィラキシーショックあるいはア ナフィラキシー様反応は起きていないのでしょうか。  それと、人由来の血漿のアルブミンでは、アナフィラキシー反応はどのくらい起きてい るのか、もしデータをお持ちでしたら、比較したいので教えていただきたいのですが。 ○機構 今回、市販予定の製剤でありますC法製剤を用いて、肝硬変、腹水症例に対する 追加臨床試験が実施されておりますので、この製剤を投与された症例はございます。ただ、 特異的IgE陽性例に対しては除外基準ということで、陽性例に対する投与経験はござい ません。 ○溝口委員 一番問題になるのは、事故か何かで失血の人に、もともと元気な人に投与し て、IgEを調べる時間のない人に対してということだと思うのですが、それはまだやる ことは難しいと思うのですが、データもないということになりますね。 ○機構 その点につきましては、使用成績調査の中で調査をしていく形になると思います が、ただ、A法製剤を用いての出血性ショック等の試験も実際には行われておりまして、 その際には重篤なアナフィラキシーの有害事象、副作用は報告されておりません。 ○溝口委員 血漿由来のもともとの人の方でのアナフィラキシーショックの報告はどの くらいありますか。 ○機構 その点につきましては、正確なものはまだ調査されていないと思いますけれど も、現在の人血清アルブミンの添付文書の中におきまして、「重大な副作用」として、「シ ョック、アナフィラキシー様症状(いずれも頻度不明)」という形で記載されておりますの で、起こってはいるのだと思いますが、頻度等についてはまだ不明なところだと思います。 ○堀内部会長代理 高橋先生、何か追加はありますか。 ○高橋参考人 先ほどの32ページに不純物の一つである□□□□の混入の度合いが、ア レルギー反応を惹起するレベルよりも低いレベルまで落とすことが可能になったという ような記載がありまして、そういう点からも当初のものに比べると、大分良くなっている と判断しているわけですが、悪いことが重なって、たまたま極めて敏感な方に投与される と危ないかと判断しています。ただ、これは非常にスタティックなと言いますか、待機的 な処置と言うのでしょうか、そういう方に関してはもちろん検査をして、調べてやるべき ことですし、逆に救命の場合には、これを投与しなければ間に合わないという状態ですの で、そういう場合はリスク・ベネフィットを考慮して、これしか使うべきものがなければ 使わざるを得ないという状況になるのではないかと判断しています。  ただ、□□□□などの不純物に感作されている方が肝硬変等の症例でどのくらいあるの か、少し分かりませんし、実際には念には念を入れて特異的IgE抗体陽性例を原則除外 とし、それから緊急時の対応を決めておけばよろしいのではないかと判断しています。あ とは、長期投与、反復投与に関して、先ほどのインヒビターの産生そのほかは、血友病の 方に対する凝固因子製剤の使用のように、極めてレギュラーに使い続けて、10年、20年 使われるというものと異なりますので、基本的には救命が必要な循環血漿量の補充、ショ ックなどの改善というのがメインの使用目的ですので、現行の調査プラスアルファで十分 ではないかと思います。 ○早川委員 安全性ということに関して、二つの観点からの考え方があると思うのです が、一つは、このもの自体が持っている、先ほど来話題になっているアレルゲン性の問題 ということだろうと思うのです。それに関しては、開発の紆余曲折の中で、精製度が進ん でというか、あるいは工程管理が改善されて、解消されてきたというのが現時点での製剤 だろうと思うのです。  それから、血漿分画製剤との関係で言えば、アルブミンはアルブミンなので、アルブミ ン本体に関しては同じようなレベルの話かと私は理解するのですが、もう一つの違いは、 従来から血漿分画製剤については、セオリティカルであってほしいのですが、血漿由来と いうことで、ウイルス混入の可能性も場合によってはあり得るわけですね。ですから、酵 母由来のものに対してはそういう懸念はないという意味でのアドバンテージはあるとい うことで、一応、臨床上提供する安全性という観点から見て、意味はあるのだろうと私は 理解しております。 ○機構 先ほどの血漿分画製剤におけるアナフィラキシー症状の件について、審査報告書 の55ページに記載しておりますが、申請者が血漿分画製剤も持っておりますので、過去 5年間の調査の中でアナフィラキシー反応が1例1件、アナフィラキシー様症状としてい る呼吸困難、喘鳴が3例4件、呼吸困難、喘鳴を発現した3例のうち1例に蕁麻疹が1件 報告されているということが挙げられています。ただ、母体数は分かりませんので、頻度 等はまだ不明の段階です。 ○堀内部会長代理 どちらにしろ、もし承認されれば、市販後いろいろな患者に使われた 場合にどうなるかというチェックが極めて必要であるということだと思います。ほかに違 う観点から御意見はありますか。 ○庵原委員 二つお聞きしたいのですが、1点は、日本人の人口で抗ピキア酵母抗体の陽 性の割合は分かっているのですか。それと、今後こういうものが市販された場合に、これ を使うときにIgE抗体をコマーシャルレベルで測ることが可能になるのかどうか。特に メーカーに測定を依頼するとなると、問題が生じてくるのではないかと思いますので、そ の点の今後の見通しというか、その辺をお聞かせいただければと思うのですけれども。 ○機構 その点について、まずピキア酵母抗体の陽性例という形で、今回の治験において、 423例中30例に抗体が検出されたということで、7.1%程度ではないかと思われます。ま た、米国のChallenge studyでは先にスクリーニングを行っており、その際には1,935名 中84例ということで、4.3%と考えられております。一方、国内でビール酵母に対する特 異的IgE抗体陽性例を検討した報告例があり、その際には1.8〜2.1%程度という報告が されております。  もう一つの御質問でありました抗体価の測定については、現在、市販キットが承認され ており、審査報告書の27ページにも記載していますが、ユニキャップ特異IgEというも のとイムファストチェックピキアABCというものが、平成19年1月及び3月に承認さ れております。後者は医療施設で1時間程度で測定が可能なキットということで承認され ております。 ○堀内部会長代理 したがって、医療機関でも測れるということですね。 ○機構 はい。その場で測ることが可能になっております。 ○溝口委員 今、ビール酵母に対する抗体陽性率をお答えいただきましたが、確かに、い つも調べていてもあまり陽性にならないものなので、今のパーセントでよろしいかと思う のです。15ページには、「カンジダ及びアスペルギルスに対するIgE RASTの測定が実施 された」と書いてありますが、もしカンジダ、アスペルギルスに対する陽性者も今度のr HSAにIgE抗体をつくりやすいとしますと、日本ではカンジダに対する陽性者はかな り高いのではないかと思うのですが、そちらの方は関係ないと考えてもよろしいですか。 ○機構 同じ15ページですが、申請前の試験において、これらの陽性例が多いというこ とで、IgE RASTの測定が実施されております。IgE RASTの推移に関しては、観察期に限 界以下で、投与終了後に検出された症例も認められてはおりますが、これらの症例でIgE RISTの上昇は認められておりませんで、臨床上の問題となる異常所見も見られておりま せんでしたので。 ○溝口委員 IgE RISTの上昇がないというのは確かに書いてあるのですが、伺いたいの はカンジダのRASTが陽性の人が、今回のこの薬剤の酵母に陽性を示しやすいかどうか というのが問題ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○機構 カンジダについては今回測定されておりません。 ○堀内部会長代理 これは注意していかないといけないということですね。 ○溝口委員 そうですね。いつもアトピー性皮膚炎の患者で調べることが多いのですが、 カンジダはビール酵母より、はるかに陽性に検出されることがありますので、もし関係が 分かると、少し心配ではありますが、今のところ不明ということでは致し方ないかと思い ます。 ○堀内部会長代理 大分いろいろ御意見をいただきましたが、主な論点は酵母に産生さ せ、それから生成したものを大量に投与するということで、不純物が入っていた場合のア ナフィラキシーショックやアレルギー症状について、どう回避するかということが大きな 問題だったろうと思います。したがって、製造工程について、一つは再現性のある製造工 程をどうチェックしていくかという問題と、日本で初めてこのように大量投与する遺伝子 組換えのアルブミンが議論されているわけですが、このデータは世界に発信されていくこ とになると思いますので、市販後かなりきちんと評価をすることが大事かと思います。  先ほどのお話で、10,000例について市販後調査をやるということだったのですが、こ こがかなり重要な点だと思いますが、具体的にはどのようにやる予定なのでしょうか。 ○機構 使用成績調査など製造販売後調査の基本計画書が資料の中にも含まれておりま すが、対象施設については本剤を使用する200施設を対象として行うと。その施設の中に は、消化器内科、消化器外科、腎臓内科、循環器科、心臓血管外科、救急部等も含めて 200施設で行うことを予定しております。10,000例で、今現在の計画においては、診療科 単位での連続調査方式で実施をすると。10,000例の調査にかかる期間としては、発売後 より3年間という計画で行われる予定となっております。 ○堀内部会長代理 病院単位ではなくて、診療科単位ですか。 ○機構 今現在の計画としては、診療科単位でするという形になっております。 ○堀内部会長代理 きちんと契約をしてやるということですね。 ○機構 少なくとも契約に関しては、きちんと結んだ上で行うことにはなります。 ○堀内部会長代理 いろいろな使い方がされると思いますので、それがすべて集約される 形でないとまずいわけですね。それは診療科単位で十分でしょうか。 ○機構 今、先生から御指摘いただいた点を十分検討して、申請者とともに、より厳密な、 より偏りの少ない調査ができるような形にしていきたいと考えております。 ○堀内部会長代理 もう一つは、適正使用といいますか、手術との関連や大量投与など、 いろいろな形で行われる可能性もありますので、できるだけ適正使用が進むような方向 で、全症例フォローができればいいかと思います。何か追加の御意見等はありますか。 ○新井委員 これは純粋な蛋白のように見えるのですが、資料を見ているとアルブミンで すから□□□などいろいろなものが結合できるわけですが、実際、これは資料を説明して ほしいのですが、添付資料概要の「物理的科学的性質並びに規格及び試験方法等」のロ-207 ページです。□□□の含量が測られていて、カプリル酸の添加もしているようなのですが、 それ以外におそらくは。要するに、いろいろなものがくっついている可能性は、どのよう に考えているのでしょうか。製剤になったとしても、まだ結合しているのですか。 ○機構 アルブミンについては、□□□を結合した状態で存在しているということがあっ て、これらの□□□を含有した状態で精製されております。 ○新井委員 これは後からカプリル酸も添加しているけれども、それ以外のものはおそら く酵母由来がきている。 ○機構 酵母由来の□□□。血漿分画製剤についても、□□□を結合した状態で精製され てきておりますので、その点についてはカプリル酸の含量は確かに添加していますので高 くはなっているのですが、その他の□□□については同様に結合した状態で精製されてき ます。 ○新井委員 先ほどから酵母由来の抗原性物質が問題になっていると思うのですが、□□ □以外にも、結構、疎水性のものは結合しやすいので、そういうのはきちんと見られてい るわけですよね。 ○機構 それらについては、SDS-PAGEで検出できないレベルまでにはなっております。 ただ、やはり問題が起きたことは事実ですので、今現在、申請者の方でも正体というか、 何であったのかということを探るべく検討を続けてはいるということは聞いております。 ○新井委員 ここに出ている表は、ヒトにもほとんどある□□□ばかりですが、たしか酵 母にしかない□□□もあったような気がするので、そうすると、本質的にその□□□を除 かないと、それが毒性を発揮する可能性もあるかと思うのですけれども。 ○機構 その点について、酵母独特の□□□について個々に検討したということはなされ てはいないのですが、rHSA全体として毒性試験により血漿由来のアルブミンと特段の 差が認められるような情報はないということで、アルブミンとしては問題ないレベルでは ないと判断しております。 ○堀内部会長代理 今、新井先生から御指摘いただいた点は、逆にいろいろなものを結合 するアルブミンの特性ですね、低分子のものについても結合する性質があるということ で、今後、十分に注意していかないといけない問題かと思います。  大分御審議いただきましたが、先ほどから繰り返しておりますように、遺伝子組換えの アルブミンを大量にヒトに投与するということで、十分に注意をして使っていかないとな らないということだと思います。もし御了解いただければ、製造販売された後、きちんと した10,000例の調査をするということですが、特にここで問題になるのは安全性だと思 いますので、その段階で安全性についても、きちんと調査をするということを条件にして、 承認をするという形にさせていただければと思いますが、いかがでしょうか。  では、本剤の承認を可とします。本剤は新有効成分であり、既存の類薬がありませんの で、薬事分科会に上程し、審議をすることとさせていただきたいと思いますので、よろし くお願いいたします。 ── 池田部会長入室 ── ○池田部会長 堀内先生、どうもありがとうございました。先生方には大変御迷惑をおか けしました。申し訳ございませんでした。本日の議題は以上だということですが、最後に 事務局から報告をお願いします。 ○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように、8月31日(金)午後2時から開催さ せていただく予定ですので、よろしくお願いします。 ○池田部会長 少し長くなりましたが、本日はこれで終了させていただきます。先生方、 お暑い中どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2734)