07/07/25 平成19年度第2回目安に関する小委員会議事録          平成19年度 第2回目安に関する小委員会議事録          1 日 時  平成19年7月25日(水)10:00〜12:00 2 場 所  厚生労働省労働基準局第1、第2会議室 3 出席者   【委員】 公益委員  今野委員長、石岡委員、勝委員   労働者委員 勝尾委員、加藤委員、田村委員、中野委員        使用者委員 池田委員、川本委員、原川委員   【事務局】厚生労働省 氏兼勤労者生活部長、前田勤労者生活課長、              植松主任中央賃金指導官、吉田副主任中央賃金指導官、              吉田課長補佐 4 議事内容 ○今野委員長  ただ今から、第2回目安に関する小委員会を開催いたします。本日は藤村委員と横山委 員が欠席です。  最初に、いくつか確認させていただきます。まず7月13日に、中央最低賃金審議会で提 出された資料No.8の趣旨について、事務局から再度説明していただきたいと思います。 ○前田勤労者生活課長  7月13日の中央最低賃金審議会で本年度の目安について、厚生労働大臣から諮問させて いただきました。その際に平成19年度の地域別最低賃金額改定の目安審議に当たって、以 下のような考え方に留意してはどうかということで、資料No.8として、「平成19年度地域 別最低賃金額改定の目安審議に際して留意すべき考え方」という、4つの考え方を示してお ります。これについては中央最低賃金審議会においても、御説明申し上げたところですが、 円卓会議において出された意見などを基に、例えばこういった考え方もあるのではないか ということで、審議に当たっての参考として出させていただいたものです。これまでにも それぞれ労使から、いろいろ御意見をいただいていることですし、もちろんこれだけで審 議していただきたいということでもありませんので、そういった趣旨を改めて一応御説明 させていただきたいと思います。 ○今野委員長  それから、もう1点だけ確認させていただきたいことがあります。前回の小委員会で、 池田委員から御発言がありました。何点かおっしゃったのですが、まず、全体的には、最 低賃金を考えるときには、ちゃんと経済の実態を見ろということと、もう1つは企業の支 払能力もちゃんと考えろということと、もう1つは単純な国際比較はするなという、単純 に言うと、この3点だと思います。  その後に今後の議論の進め方として、特に円卓会議の議論の扱い方についてコメントさ れたというように私は思っております。その点についてはご存じのように、「中央最低賃金 審議会においては、平成19年度の最低賃金について、これまでの審議を尊重しつつ、本円 卓会議における議論を踏まえ、従来の考え方の単なる延長線上ではなく、雇用に及ぼす影 響や中小零細企業の状況にも留意しながら、パートタイム労働者や派遣労働者を含めた働 く人の「賃金の底上げ」を図る趣旨に沿った引上げが図られるよう、十分審議されるよう に要望する」という旨の合意が取りまとめられました。  しかも、これを受けて先日の中央最低賃金審議会においては、柳澤厚生労働大臣自らが 出席されて、「現下の最低賃金を取り巻く状況を踏まえ、成長力底上げ戦略推進円卓会議に おける賃金の底上げに関する議論にも配意した」調査審議を求めるという、例年にない諮 問が行われたわけです。したがって今回の目安審議については、「これまでの審議を尊重し つつ、従来の考え方の単なる延長線上ではない」審議が求められているというように理解 しております。  前回、進め方について池田委員が言われたことは、従来の第4表以外の議論を否定する とか、第4表以外の議論は超法規的な措置で、すべきではないというような趣旨ではない というように私は理解して進めたいと思いますが、その辺はよろしいでしょうか。 ○池田委員  私が申し上げたのは、従来、データごとに第4表を中心にやってきたというのは、1つの 法律の根拠の基に、3つの要素が集大成されたと思っています。それを尊重してきたわけで すから、第一義的にはそれを尊重していただきたいということです。  それと、今お話のように、柳澤大臣からの諮問は、十分受け止めるということは理解し ておりますが、それについては逆に私どもが、どういう法的な根拠の基に論議していくか という根本的なところを理解させていただきたいと申し上げたわけです。私ども中小企業 の厳しい経営環境を踏まえて、支払能力を無視した最低賃金を急激に引き上げるべきでは ないということを申し上げた根拠として、今までの第4表を尊重していきたいし、今まで 論議してきた最低賃金の3つの要素を尊重して、まず基本にしていただきたいということ を申し上げたつもりです。 ○今野委員長  分かりました。私の方から確認したい点は終わりましたので、次に事務局から、資料に ついて説明をしていただきましょう。 ○前田勤労者生活課長  その前に前回、川本委員から御質問があった点について、まず、お答えさせていただき ます。前回の資料No.2の「主要統計資料」の13頁、14頁をご覧ください。「中小企業春季 賃上げ率の推移」という13頁の(2)の方ですが、賃上げ率の推移の集計企業数は、平成 18年度が3,630という数になっております。14頁の(3)の「賃上げ額・率の推移」の集 計企業数は、1,632になっております。  次に、本日お配りしている資料についてです。まずは資料No.1をご覧ください。これも 前回お配りした資料No.2の17頁に、「地域別最低賃金額(時間額)、未満率及び影響率の 推移」というのが出ており、前回の小委員会で勝委員から、これをランク別に集計できな いかという御意見がありましたので、それをみたものです。データの制約がありまして、 平成9年度、平成10年度は単純平均でしかできておりません。平成11年度以降は加重平 均です。平成18年度でみますと、未満率はAランク、Bランクが1.0、Cランクが1.3、D ランクが2.1、影響率はAランクが1.2、Bランクが1.3、Cランクが1.7、Dランクが2.5 です。過去からの推移をみても、大体Dランクの方が未満率・影響率が高くなっていると いう傾向にあるかと思います。  それから資料No.2をご覧ください。これまでの議論の中で、賃金分布といったものも参 考にしてはどうかという意見がありました。平成15年にJILPTで「賃金構造基本統計調査」 を基に、最低賃金と実際の賃金分布とを調査分析したものがあります。これはそれと同じ ような形で、平成18年の「賃金構造基本統計調査」を基に、賃金分布と最低賃金との関係 をみたものです。大きく3つに綴じていると思います。1つは一般労働者で、1つは短時間 労働者で、あとはそれらの両方を合わせたものです。  まず資料No.2の「時間当たり賃金分布(一般労働者・短時間労働者計)」を見てくださ い。これは各都道府県別に「賃金構造基本統計調査」の賃金分布と、最低賃金との関係を みたもので、それをさらにランクごとの順番で整理したものです。1枚目の左側の東京で見 ますと、下の横軸が1時間当たりの賃金額で、10円刻みで棒グラフになっております。一 番右が1,500円となっていますが、実際の賃金分布はもっと右までずっとあるわけです。 例えば一般労働者の平均は、1,800円ぐらいになっていますので、この右側にもっとたくさ ん分布しているのですが、最低賃金との関係ということで、一応1,500円のところで切っ ております。縦は「賃金構造基本統計調査」での復元後の人数を書いております。また、6 月の調査ですので、最低賃金額については、昨年6月時点の地域別最低賃金額を各都道府 県ごとに線で引っ張っております。ですから昨年の改定前の金額ということになります。  それぞれランクごとに整理しています。例えばAランクでいきますと、最低賃金と実際 の賃金分布との間には、まだかなりの乖離があるという状況が一般的かと思います。3頁か らがBランクです。Bランクにおいてもある程度の乖離がある所が多いという状況です。6 頁からがCランクです。Cランク辺りですと、県によっていろいろ違っています。6頁で見 ると、茨城、山梨、群馬、香川辺りは、最低賃金と地域分布とは、それほど張り付いてい ないという状況ですが、例えば8頁の北海道や福岡辺りですと、わりと最低賃金近辺に分 布しているという状況がうかがえるかと思います。10頁以降がDランクです。Dランクに ついても徳島や島根などで、それほど張り付いていないという状況になっているかと思い ますが、最後の沖縄や青森辺りになりますと、かなり最低賃金近辺に張り付いているとい う状況かと思います。  一般、パートについては、それぞれ14頁、27頁からあります。パートについては特にD ランクなどの地方において、最低賃金にかなり張り付いているという状況がみられます。 こういったものを参考資料としてみていただければと思います。 ○今野委員長  それと前回、原川委員にお願いしたものも、今日資料としていただいておりますので、 御説明いただけますか。それでまとめて議論をしたいと思います。 ○原川委員  この前お出しした中小企業の賃金改定状況調査の結果で、対前年比について小委員長に 御質問されましたので、その資料を再度提出いたしました。2枚組の縦の資料で、「中小事 業所の賃金改定状況の比較(対前年度)」と題しております。従業員29人以下の表と、従 業員9人以下の表で、それぞれ「引上げた(予定を含む)」と、「引下げた(予定を含む)」 と、「今年は実施しない(凍結)」という3つの項目に絞り、平成18年度と19年度を比較 してみた数字です。  平成18年度と比較して、29人以下、9人以下共にそれほどの変化はありません。数値的 には、例えば「引上げた」が若干増加して、「引下げた」あるいは「今年は実施しない」と いうのが、若干下がっているということはみてとれますが、大体昨年と同じような傾向で、 とりわけ良くなっているという状況ではないとみております。強いて言えば横ばいの状態 であると考えてよいかと思っております。また、1枚目の網掛けの所に、前年度比の数値が 出ております。この前も申し上げたように、「引下げた」と「今年は実施しない」というの を合わせますと、29人以下でも56%、9人以下でも67.9%ということで、全体の3分の2 を占めています。  2枚目は、同じような項目をランク別にみたものです。ここでは2つのことが言えるかと 思います。1つは、Dランクを除いたA、B、Cランクでは、各ランクともやや改善の兆しが みられ、若干良くなっています。しかし、今年をみますと各ランクとも、「引下げた」ある いは「今年は実施しない」を合計しますと、Aランク、Bランク、Cランクそれぞれ29人以 下で5割を超えていますし、9人以下で6割を超え、7割近くになっているという状況です。  もう1つは、特にDランクが悪いということです。29人以下の方をみますと、引き上げ た割合は、むしろ平成19年度に下がっており、「今年は実施しない」という割合が高くな っています。9人以下の方も「引上げた」「引下げた」「今年は実施しない」の3つの項目す べてが、悪化しているという状況で、大変厳しい状況を示しています。 ○今野委員長  それでは事務局と原川委員から御説明いただきましたので、御質問、御意見がありまし たらどうぞ。 ○川本委員  事務局から資料の御説明をいただきましたので、確認をさせていただきたいと思います。 まず1枚目に、未満率・影響率の表が出ておりますね。この資料は「最低賃金に関する基 礎調査」ですよね。この調査の対象規模ですが、前回この資料について御説明があったと き、確か製造業100人未満で、その他30人未満という御説明があったと思いますが、それ でよろしいでしょうか。 ○前田勤労者生活課長  はい。 ○川本委員  その後に分布図がありまして、「賃金構造基本統計調査」からということですが、これは 確か5人以上でしたか。それだけ確認させていただきたいと思います。 ○前田勤労者生活課長  5人以上です。 ○川本委員  では5人以上ということで捉えておくと。分かりました。なぜ、わざわざ前回の分を確 認するかというと、調査というのは回答数や対象によって、全然違った見方になってきま す。どういう規模の取り方をされているかというのが、やはり重要だと思いますので、確 認させていただいたということです。 ○池田委員  このグラフを見ますと、違反している所が500円台からいますよね。調査の結果、こう いうデータが出た場合は、それなりの行政指導をなさっているわけですか。 ○前田勤労者生活課長  基本的に統計調査を基に、別のことには使えないということになっていますので、本来 は調査結果からそういう監督はできないということになります。 ○池田委員  それはまた別の調査になるのですか。 ○前田勤労者生活課長  統計調査は、あくまでも統計調査以外に使ってはいけないというのが、統計法上の定め なのです。 ○池田委員  あと、未満の所を縦に合計する線というのはできるのですか。今、未満は未満で、細く 小さくたくさんあるけれども、未満だけでどれぐらいの人数がいるかというのは分かりま すか。 ○前田勤労者生活課長  それは計算すれば出ます。 ○今野委員長  でも、要するに県別の未満率でしょ。 ○前田勤労者生活課長  未満の労働者数や率は出ます。 ○池田委員  結構多い所を足してみると、800円ぐらいの人数がいるのかなという感じになってしまう のです。違反している未満の所を合計で縦で足していくと。 ○前田勤労者生活課長  例えば東京でやった場合には、一般・短時間計で2万9,220人というのが未満になって います。 ○池田委員  2万人までいくのですか。 ○前田勤労者生活課長  ええ、2万9,220人で、全体の労働者に占める割合は0.6%ですから、未満率と同じだと 思うのです。 ○池田委員  そうすると900円ぐらいのレベルと同じぐらいの人数がいるということですか。 ○前田勤労者生活課長  これだと900円で4万人ぐらいいるので、それよりも少ないと思いますが。 ○池田委員  相当ですよね。これは900円だと2万人ちょっと。 ○前田勤労者生活課長  4万人ちょっとで、かなり伸びているのがあると思うのですが。 ○池田委員  4万人というのは、一番高い所で900円ちょっとですね。 ○前田勤労者生活課長  一般・短時間計の方ですよ。1頁の方を申し上げているのです。 ○池田委員  こちらですか。1頁のどのグラフですか。 ○前田勤労者生活課長  1頁で東京で一番高い所は4万5,000人ぐらいですね。 ○池田委員  例えば700円以下を合計してみると。 ○前田勤労者生活課長  700円以下を合計すると、先ほど申し上げたように、2万9,220人です。714円未満です ね。 ○池田委員  ということは、850円ぐらいの人数がいるということですか。 ○前田勤労者生活課長  850円というのは10円単位で見たときに、その10円単位に入っている人と同じぐらいで す。 ○中野委員  1頁の愛知をみても大阪をみても、必ずしも正規分布にはなっていないし、押していない 所もそうなってはいないのです。そうすると、この分布自体をどう見るかというのは、か なり具体的に研究しないと、なかなか難しいかと思います。 ○今野委員長  こういうデータは、面白いデータであることは確かですよね。 ○中野委員  組合に帰れば組合の皆さんの賃金データを全部集めて、もっとこれよりも度数分布にし て作っていますから、意味は分かるけれども、このことの判断で、ここはどうだというよ うに短絡的に考えられると、かなりきついなということです。 ○今野委員長  ある程度は考慮してもいいでしょ。 ○中野委員  それは影響率を考慮しているわけですからね。 ○今野委員長  そのとおりですよね。 ○加藤委員  私は違う意味で、ある程度考慮してもいいと思うのです。産業構造や就業構造というの は、いろいろ混じっていますから、やはり地方によって、都道府県によって違うと思うの です。今、委員長がおっしゃったように、正規分布にはならない要素でもあるのかと思っ ています。  これを見て感じたのは、最低賃金というのは統計的に影響率や未満率を取ると、国際的 にみても極めて低いわけです。しかし、最低賃金というのは、それなりに影響しているな という感じはしました。最低賃金近辺に1つの山ができていますよね。そういった意味で は直接的な影響率ではないにしろ、間接的な影響というのは結構大きいのかなという印象 は受けました。  したがって、考慮するということは大事だと思いますが、このまま放置しておくと、な かなか賃金の改善には結び付きません。それだけ影響があるわけですから、やはり引き上 げることによって賃金の底上げを図り、そのことによって雇用形態などの違いによる、あ るいは就業構造、産業構造の違いによる格差の改善だとか、生活の改善に寄与するという 意味で、やはりしっかりと見ておく必要があるのかなという印象です。ただ最低賃金の付 近に1つの山ができているから、そこは引き上げる必要がないというような活用の仕方を されたのでは、それはちょっと違うのではないかと思います。むしろ改善の必要を感じま した。 ○今野委員長  だいぶ中身に入ってきたので、とりあえず単純にこの統計の。 ○川本委員  質問の確認ではなくて、今意見表明に近いようなお話が出始めておりますので、そこは 仕分けていただきたいと思います。 ○今野委員長  ですから、そこはちょっと止めさせていただきます。 ○加藤委員  感想を述べただけですから。 ○今野委員長  このデータに関することはどうですか。 ○勝委員  資料No.1の各ランクについてですが、確か全員協議会の平成16年度で、17年度からは ランクの見直しが入っていると思うのです。これは5年ごとに、いくつか県のランクが変 わっていると思うのです。これにはその数字が反映されていると考えてよろしいのでしょ うか。今のランクで全部過去まで引っ張っているのですか。 ○前田勤労者生活課長  これはその時々のランクです。 ○勝委員  それで全部やっているということですか。 ○前田勤労者生活課長  ですので、今のランクではないということです。 ○勝委員  分かりました。 ○今野委員長  他にありますか。私の方からですが、原川委員からいただいたデータで一番印象的なの は、2頁のA、B、CとDはこんなに違うということですね。 ○原川委員  確かにA、B、Cの辺りは、数値としては「引上げた」の割合が上がっているということ はあります。ただ一方で、「引上げた(予定を含む)」というのが過半数をいっておりませ ん。むしろ「今年は実施しない(凍結)」、あるいは「引下げた(予定を含む)」というのを 加えた合計の方が、過半数を超えています。したがってA、B、Cが手放しで良くなったと いう印象は、私どもは全然受けていないのです。 ○今野委員長  1頁には全体の数字があって、2頁はA、B、C、Dランク別にあるのですが、1頁の全体の 対前年の比較は、A、B、C、Dの年々のサンプルがかなり動いているから、実際にこれには その影響も入ってしまうでしょうね。 ○原川委員  そうですね。 ○今野委員長  2頁を見ると、サンプルが動いていますので。 ○原川委員  そこはあまり精密にはなっていません。集まった分だけでやっています。一応2頁の企 業数を見ていただければ、大体分かると思います。 ○今野委員長  他にありますか。 ○田村委員  今の話で振り返りますが、私どももいろいろアンケートを取ると、集まらないという状 況があるのです。このA、B、C、Dで平成18年度からみると、19年度は急に企業数が増え ているのです。そして見ると、Aは減っているのにCとDはドーンと増えているという感じ が随分しています。恣意的とは言いませんが、集まり方の偏りというか、平成18年度と19 年度は比較しづらいのかなという気がするのです。率はそれぞれの率でしたら、それです が。 ○原川委員  これは7月1日が本調査の時点ですが、7月1日から6日までの間で、その状況をみると いうことで、一応6日で切ってあるものですから、こういう集まり方になっているわけで す。ただ割合ですから、それぞれの所の割合を出していきますので、比較はできると思っ ております。 ○今野委員長  これは例年、一定の期間にいっぱい入ってきたデータで、最終的に集計されるわけです よね。その最終的な集計と、ここに書いてある集計とは、あまりぶれませんか。 ○原川委員  今データは持っていないのですが、そんなにぶれないと思います。 ○今野委員長  他にありますか。ないようでしたら、前回の小委員会でお願いした今年度の目安につい て、労使双方の基本的な考え方を表明していただければと思います。それでは使側の方か らお願いします。 ○川本委員  それでは使用者側委員を代表して、まず今年度の目安議論に際しての考え方を申し上げ たいと思います。私が話した後に、それぞれの委員からも補足の御説明や考え方を述べさ せていただければと思っております。  今年の中央最低賃金審議会の諮問は、現下の最低賃金を取り巻く状況を踏まえ、成長力 底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論にも配意して、という調査審 議を行うように求められております。今年度はこのことを踏まえ、また先ほど事務局から 御提示して御説明いただいた、各都道府県の賃金分布も新しく示されましたので、これも 参考としつつ、議論を行ってまいりたいと思っております。  それでは、日本経済の状況、雇用環境、中小零細企業の現状について申し上げます。 まず第1は日本の景気の現状、特に地域経済の現状についてです。日本経済全体が回復基 調にあるにしても、地域間や産業間、企業規模間、さらには同じ地域、あるいは同じ産業、 企業の間においても、景況観、業況観にバラつきがみられるという事実をきちんと受けと めておかなければならないと考えております。地域経済の現状について申し上げますと、 日銀が発表しております2007年7月の「地域経済報告」では、全体として緩やかに拡大し ている旨が記されているものの、拡大としているのは関東甲信越、東海・近畿で、回復方 向にあるその他の地域との間で、依然地域差がみられるという総括判断がなされておりま す。雇用環境についても、平成18年度の有効求人倍率は、愛知の1.85倍から青森の0.44 倍まで、非常に分散しております。失業率も、三重の2.7%から沖縄の7.7%まで、地域に よって非常に状況が異なっています。他方、今年の「賃金改定状況調査」をみますと、各 ランクによっての違いはありますが、昨年よりは若干の改善がみられたと思います。  第2に、最低賃金の影響を最も受けやすい中小零細企業の現状について申し上げます。 2007年版の「中小企業白書」では、昨年の状況について、今回の景気回復局面では、全体 として利益率が上昇しているということです。しかしながら、資本金1億円以上の大規模 な企業とそれ以外の企業の間では、過去に比しても利益率の差が広がっている旨分析し、 企業規模間のバラつきがあることを指摘しております。日銀の短観における中小企業の業 況判断ですが、6月調査で、良いから悪いを差し引いた値(DI)は、マイナス2ポイントと なっております。この原因としては、原油をはじめとする原材料価格の高騰の中で、仕入 価格が上昇する一方、販売価格に転嫁が進まないために、企業収益を圧迫しているという ことが指摘されています。また、企業倒産件数が増加傾向にあることも見逃せないと考え ております。東京商工リサーチの調査によりますと、2007年上期(1〜6月)における、負 債額で1,000万円以上の全国倒産状況は、負債総額は減少しているものの、倒産件数とし ては前年度同期比で6.4%増の7,516件です。倒産企業に従事していた労働者数は、約6万 2,000人にのぼります。特に負債1億円未満の中小零細企業の倒産は、前年比4.8%増の 4,561件、構成比で64.6%を占めているということを強調しておきたいと思います。  第3に、先行きの見通しについても、厳しいものとなっていることについて申し述べた いと思います。6月の日銀短観での業況判断によりますと、大企業のDIは、全産業でプラ ス22となっております。これに対して中小企業のDIはマイナス5となっており、中小企 業の先行きに対する不透明感、あるいは不安感というものが、数値として顕著に現れてお ります。このような先行きの不透明感、不安感は、2007年度の設備投資計画にも大きく影 響を及ぼしております。大企業では全産業平均で前年度比7.7%増というように、設備投資 額を増やす中にありますが、中小企業の全産業平均では、前年度比16.3%減という数字が 出されております。さらに言えば、日本経済の今後に大きく影響するアメリカや中国をは じめとする国際経済情勢、為替や株価の動向、あるいはグローバル化の進展に伴う国際競 争の激化やICT化による技術革新への対応など、中小企業を取り巻く環境とその先行きと いうのは、非常に不透明で、かつ厳しいものがあると言えると思っております。  以上申し上げたように、地域間のバラつきが大きく、また中小零細企業が引き続き大変 厳しい状況にあることを認識した上で、企業の存続や雇用に及ぼす影響を考慮して、今年 の目安についても検討すべきであると考えております。なお、中央最低賃金審議会の目安 審議については、これまでにも様々な指標を使いながら議論を行ってまいりました。これ は多角的な視点で考え、審議するという趣旨であると理解しております。したがって、13 日の審議会で示された「平成19年度地域別最低賃金額改定の目安審議に際して留意すべき 考え方」については、13日当日にも述べさせていただいたように、特定の指標や数値に偏 重しておりますし、その指標の内容も合理性に欠けるため、反対であるということを改め て申し上げておきたいと思います。 ○原川委員  これに関連して、一つ資料を出しておりますので、それを見ながら申し述べたいと思い ます。「全国及び各地域の【業界の景況・売上高・収益状況DI】」という資料です。これは 私どもが6月20日に発表したもので、一番新しい中小企業の景況のデータです。これは業 界の事情に精通している団体の役職員の方を、全国から約3,000名ほど、情報連絡員とし て委嘱し、その方々から業界の状況を毎月報告していただいて集計したものです。  1枚目の縦の棒グラフに、全国各地域が3本ずつあります。一番左が景況、真ん中が売上 高、一番右が収益となっております。これは前年同月比です。これをみますと、景況は各 地域とも、DI値でほとんどマイナス30を超えております。収益では北海道・東北地方、四 国地方の収益状況が非常に悪くなっております。その他にも東海地方、あるいは近畿も悪 いという状況になっております。  続いて2枚目、3枚目を見てください。全国及び各地方が、それぞれ4本の棒グラフにな っております。これは最近4カ月のデータを表したものです。一番左が3月末で、一番右 が6月末現在の数字です。この4カ月をみますと、2枚目の景況も3枚目の収益状況も、そ れぞれの地域で下降傾向にあることがみてとれると思います。景況で言いますと、1枚目の 数字が、一番右の縦の棒ブラフになります。最近6月の落込みが大きく、徐々に徐々に落 ち込んでいるという状況です。  一般に景況はだいぶ良くなってきているとは言われていますが、実際のところ最近の原 材料高、その上昇部分を価格転嫁できないということで、このようにみますと、中小企業 の収益構造は、非常に悪くなっているということを如実に表しているということが言える と思います。そういう中で中小零細企業の非常に厳しい現状が出ているということと、全 体として地域差が非常に大きく出ている、というこの2つのことが言えるのではないかと 思います。したがって、今、川本委員が申し上げたように、目安の審議をする際には、こ うした厳しい企業の経営環境にある、中小零細企業の実態を十分考慮していただいて、審 議を尽くしていただきたいと考える次第です。 ○池田委員  今のお二方の御意見に重なる部分が相当あると思います。13日の審議会及び20日の第1 回目安小委員会でも意見を申し上げたとおり、商工会議所としても「平成19年度地域別最 低賃金額改定の目安審議に際して留意すべき考え方」に示された4つの案には、反対であ るということを表明したいと思います。4案とも最低賃金改定の目安を検討する理由として は不適当です。かつ、企業の支払能力を無視した一方的な内容で、4案ありきで議論すべき ではないと考えます。  前回も申し上げたとおり、4案のうち一般労働者の所定内給与や、3番目の小規模企業の 一般労働者の賃金の一定割合を、最低賃金の水準とすることについては、企業の支払能力 は地域の経済情勢と関係がなく、不適当であると考えます。2番目の高卒初任給との比較に ついても、長期雇用を前提として採用されている者の賃金水準とパートタイム労働者に多 い最低賃金の水準との比較を行うこと自体、検討材料として適当ではないと考えます。一 方、4番目の成長力加速プログラムの推進による労働生産性上昇等を見込んだ引上げについ ては、見込みで引上げを行うことは論外であり、検討材料としては不適当であると思いま す。中小企業の経営を底上げし、中小企業の支払能力を確保した上での引上げでなければ、 企業の経営は成り立たなくなり、失業を招く恐れがあると考えます。  なお、これらの4案の扱いについては、厚生労働省にお聞きしたいと思います。あくま でも例示なのか、または公益委員の方々のこれらの4案についての見解も、お尋ねしたい と思います。  また、13日の審議会で配付された資料No.6として、円卓会議で出された最低賃金引上げ に関する意見が6件記載されておりますね。このうち「中小企業の生産性の向上を先行さ せるべき」という意見については、厚生労働省の示した考え方に反映されていません。最 低賃金を引き上げるのであれば、中小企業の底上げを図り、生産性が向上して、その結果、 支払能力を向上することが先決です。円卓会議における議論にも配慮して議論をするので あれば、円卓会議で出されたそれぞれの意見を反映した案を提示すべきではないかと思い ます。  次に、中小企業の厳しい経営実態を踏まえた論議をすべきだと考えます。既に申し上げ たとおり、財務省の法人企業統計によれば、平成17年度の資料、資本金1,000万円未満の 中小企業の労働分配率は、9割に達しております。国税庁の統計によれば、平成17年度の 資本金1億円未満の中小企業の約半数は赤字経営であり、7割は欠損法人です。これについ ては、こちらの資料にありますように、6月6日の衆議院の国会答弁において青木局長が、 資本金1,000万円未満の企業の労働分配率は高止まりであるということを、実際におっし ゃっているのは明白です。  また、前回の会議で御説明いただいた「平成19年度賃金改定状況調査結果」によれば、 今年は賃金改定をしない企業が全産業の計49.4%、引き下げた企業1.5%と、全体の半数 以上の50.9%が、賃上げしないという事実を強く、重く受け取るべきであると思います。  さらに、国会での厚生労働省の答弁にもあるとおり、最低賃金は日本でも多くの国々で も、労使が参加した審議会で賃金の実態などを踏まえた審議を経て、その国々の妥当な水 準として決定されているということを、確認しておきたいと思います。我が国では中小企 業、零細企業の厳しい環境を踏まえた結果として、最近5カ年の引上げ幅の目安が0円か ら4円の範囲で推移してきたという事実があります。御参考までに今年6月1日、衆議院 の厚生労働委員会における公明党の古屋議員の質問に対する答弁の中でも、同じく青木局 長から、最低賃金は多くの国で労使が参画した審議会において、賃金の実態などを踏まえ た審議を経て、その国々の妥当な水準として決定されていることにも留意する必要がある、 という趣旨の答弁を行っております。中小企業は依然として厳しい環境での経営を余儀な くされていることに十分留意すべきであり、このような状況で企業の支払能力を無視して 最低賃金を大幅に引き上げれば、経営に影響して、結果として雇用にも影響を及ぼしかね ないことを、改めて強調したいと思います。  もう1つの考え方として、円卓会議は政労使の三者で話し合って決められたと聞いてお りますが、この場はやはり公労使ですので、これの政労使の政治の力の意見の入った審議 を公労使の審議の中でどう影響させるかに関しても十分審議をしていきたいと思います。 これは中長期的、段階的な戦略なので、今ここで急いでやらずに法律改正を待って、それ によって産業別最低賃金との関係、生活保護との関係、それから罰金との関係等をじっく り見る。企業は大体年間予算でやっていくわけですから、秋頃の賃金改定をある程度は見 込むとしても、急激な改定に企業は対処していけないわけでして、じっくりと法律改正の 後に、どういうものが私どもの最低賃金として妥当なものかということを、公労使でやる のか政労使でやるのか分かりませんが、十分審議していただいて、中長期的にやるのが筋 ではないかと思います。  また、この図にもあるように、最低賃金がぎりぎりのところがたくさんあるわけで、こ の改定によって未満率、影響率がどういう影響をするのか、もしそれが増えた場合に、そ れに対して対策を立てずに一方的に上げるということは中小企業を非常に圧迫するもので、 その辺のところを慎重に審議して、私どもの支払能力が一番重要ですので、そのことを重 要な要素としてお考えいただきたいと思います。 ○今野委員長  それでは労側、お願いします。 ○勝尾委員  労働側の基本的な考え方は7月13日の審議会の場で発言させていただきましたので、そ のときと何ら変わるものではないということをまず申し上げ、その上で、一部繰り返しも ございますが、見解を申し上げたいと思います。  前回の小委員会で示された平成19年賃金改定状況調査の結果をみますと、パートタイム 労働者の比率が上がっているという事実がございます。このことは、全体的に企業の行動 として、まだ人件費の抑制を進めているのだということを示していると思っております。 このままこういったことが続きますと、いわゆる低所得者層、低賃金層が増大していくと いうこと、もう1つは、格差の拡大に歯止めがかけられない、そういう状況になるのでは ないかと思っております。  最低賃金制度はセーフティネットとしての役割があるわけなので、最低賃金制度がそう したセーフティネットとしての役割を今後果たしていくことが重要であろうと思います。  日本の経済力は国際的に見て非常に高い水準にあるということは、今更論ずることでは ないと思いますが、その一方で、最低賃金の水準はあまりにも貧弱という感じを持ってお ります。人が生活できるレベルという意味合いで、連合としてはリビングウェッジという ものを出しているわけですが、そういった点からしましても、生活という点では非常に貧 弱な水準であり、こういった水準をこのまま放置してはいけないと考えている次第です。  先ほど経営側委員の中からも将来についてのお話がございましたが、勤労者、国民、そ ういった立場で将来のことを考えた場合、現在のままでは安心、安定、安全、そういった 言葉からはどんどん遠のいていくのではないかと考えられます。そういった現状に歯止め をかけ、国民生活、所得の底上げを図ることが最優先の課題であろうと考えています。こ こで議論される目安の水準につきましては国民の多くが関心を持って見ていますし、期待 を持って見ていると言ってよいと思いますので、そういったことを念頭に置いた審議が必 要であろう、また、生活できる最低賃金水準への引き上げが急務ではないかと思っており ます。  前回も述べましたので簡単に触れておきたいと思いますが、影響率について平成18年度 の新しい指標が出され、それも1.5%と下がってきていますが、こういった水準は、ほとん ど社会的な存在価値がないのではないかと思っている次第です。  今年の目安決定に当たりましては、低賃金労働者の底上げに向けた国民的論議というこ とで受け止めています。諮問の中にもありましたが、従来の延長線上ではないというメッ セージをこの場で出していくことが必要であり、それがこの中央最低賃金審議会の役割で あろうと思います。今年の目安については、存在感のある最低賃金とすることが必要であ ろうと考えております。このため、生計費や各種賃金指標の現行水準や環境の変化、そう いった動向も踏まえまして、特に、本年の場合は諮問の内容あるいは成長力底上げ戦略推 進円卓会議の合意内容の趣旨を踏まえまして、働く人の賃金と生活を底上げするという観 点から、大幅な引上げを図っていただきたいと考えます。  労働側はこれまで、いわゆる高卒初任給の賃金水準あるいは平均的な労働者の賃金水準 の5割ということで、900円を上回る時間給の水準というものを前回も申し上げましたし、 連合の計算しているリビングウェッジからすれば、生計費として時間給850円以上必要で あるということも申し上げました。一度に引き上げるのは大変困難なことですので、時間 をかけた引上げということも必要だと考えておりますので、平成19年度に関しては50円 の引上げが必要であろうと思っている次第です。 ○今野委員長  今、労使から御意見をいただきましたので、それをめぐって御意見、御質問があったら お願いいたします。 ○前田勤労者生活課長  池田委員から資料No.8の確認がありましたが、それについては冒頭の説明の中に含まれ ているということで御理解いただきたいと思います。 ○今野委員長  そうでした、公益もどう思うかという御質問でしたが、前回か前々回に私が申し上げた ように、これは例示であると書いてあります。御意見、御質問はありますか。 ○中野委員  川本委員にお伺いします。日銀短観の中で雇用人員判断DIがありまして、その中では、 大企業マイナス3、中堅企業マイナス3、中小企業マイナス4ということで、規模が小さい ほど不足観が強まっているというように数値上はなっています。確かに私どもも、地方で みますと、中小企業の方がなかなか人が採れないという話を聞くのですが、その辺りにつ いてはどのようにお考えなのでしょうか。 ○川本委員  これはデータ上ではものを言えない話ですので、あくまでも個人的な感想として申し上 げます。中小企業の方からいろいろお話を伺う機会がありますが、中小企業でなかなか人 が確保できないというところが多々あることも実感として感じております。しかしながら 一方で、先ほど池田委員から御説明があったとおり、中小企業の実際の付加価値の話にな りますと非常に厳しい状況にある。分配率、これも規模のとり方によりますが、それが90% 近くまでいっていて高止まりで、赤字状態にある。そういう中で、人は採りたいが、では 賃金はという話になると、これも支払能力がなくて厳しい状況で苦しんでいる状況にある と考えております。 ○中野委員  池田委員に質問します。前回、7月18日に日本商工会議所が政策アピールを出したとい う御紹介があったと思います。その中では「公正な取引の実現」というようなことも、確 か言われていたのではないかと私は記憶しているのです、しっかり読んだわけではありま せんので間違いかも分かりませんが。もし私の理解どおり、そういうことが書かれている とすれば、その意味では私も同じ意見を持っております。景況DIというのは、取引条件と かなり相関のあるような動きをしているということも私は感じておりますが、この公正な 取引条件を実現するということの裏返しとして、社会的な労働条件規制があると私は理解 しております。中小企業の生産性を上げるということについては、上げなければならない と私も思いますし、これから少子高齢化を迎える中において、中小企業の生産性を上げる というのは国家的な命題でもあろうと理解しております。これは鶏と卵の議論になるのか も分かりませんが、生産性を上げれば最低賃金を引き上げることができるのか、最低賃金 を引き上げることによって労使に生産性向上のための努力を促すことになるのか、両面あ るような気がしております。  その意味では、私がこの審議会に出るのは今年で5年目になるのでしょうか。支払能力 がないから最低賃金は引き上げられないのだという御議論を使用者側から毎年聞いている のですが、いつになったら中小企業の生産性が上がって最低賃金が引き上げられるように なるのか。そういうことがある程度分かれば、我々も考えたり待ったりするのですが、今 の御議論ですと、いつまでたっても生産性が低い、中小企業の経営実態は苦しい、という のは最低賃金を引き上げないための理由としておっしゃっているようにも受け取れます。 もしその辺りで、例えば、今こういうことをやっているので、それが実現すれば最低賃金 を引き上げることは可能なのだというようなプランのようなものがあれば、使用者側から ぜひお聞かせいただきたい。そうでなければ、これは永遠に上げられないのかという非常 に暗澹たる気持ちになりますのでお伺いしたいのです。 ○川本委員  これは池田委員への御質問のようでしたが、私から一言申し上げます。生産性をどう上 げるかというのは、最低賃金審議会における議論の項目ではないように存じます。もう1 つの円卓会議という中で、先般こんな議論があったという資料が提示されておりますが、 その中でも、いろいろな意見があったという中で、今回の最低賃金の議論については、生 産性が向上した結果として、最低賃金は長期的に上がっていくべきと。いまパッと出てこ ないのですが、そういう意見があったと認識しています。 ○池田委員  全然上げていないわけではありません。私どもはこの審議会の中の5年間で、上げられ ないときは上げない、上げられるときは上げてきたわけです。公正な公益の先生方のお考 えや経済情勢を踏まえて、妥当な額の上げ方をしたわけで、全然上げてないわけではあり ません。  今会議所が問題にしているのは、ご存じの格差問題です。国もそうだと思います。これ は、1つは大企業と中小企業との格差問題、それから地方と、ランクでいえばA〜Dの格差 をどうするかという問題です。大企業と中小企業の賃金格差は実態的には縮んでおりませ んから、経済状況の仕組みが悪いのではないかと。実際に収入が上げられない中小企業や 大企業が妥当な支払をしていただいているのかどうか、その辺は別の観点として今経済産 業省などと御討議いただいていると思います。実際に商売をしている倉庫にとっても、運 輸にしても、バブル時代に完全に戻っていないわけです。例えば、保管料、荷役料、運送 料をとっても、10年前の2〜3割ダウンで、そのままで抑えられているわけです。ここで石 油が上がり、いろいろなものが上がっても定価を上げられないことは事実ですから、その 中で、労働配分率は限定されるわけです。  中小企業はいまだに苦しいという実態をよく見ていただく。単に労働者の賃金だけ上げ ろと言っても。他にどんどん上がってきているものを今一生懸命吸収して、それで売り値 が上げられない。上に対する支払がある。大企業も一生懸命苦労なさって、どうやって生 産性を上げ、利益を出そう、適正な価額の取引にしていこうということで一生懸命考えて いただいていますが、いまだに大企業と中小企業の格差が解消されていない。  同時に地方と都心の格差。これは私どもも回答していると思いますが、頻度において実 態的な仕事の忙しさがある。実態的に東京では、業種によっては1,000円とか1,500円出 しても人が来ないところがある。ところが、地方においては、仕事がないからできないと いう実情があります。格差是正ということが国の一番大事なところですから、どのように して企業間格差、地域間格差をなくすか、その戦略が先ではないか。それによって賃金格 差が縮まるという前提がないと、その辺の解決策は今見えてないので、そこが先だという ことを申し上げてあるのです。当然、企業業績が良くなれば労働分配率も上げられるわけ ですから、それに対して少しでも多くのものを払っていくことができるのです。  円卓会議の考え方ですが、果たして最低賃金を上げただけで済むのか。最低賃金がどう いう業種の方でやっているのか。その人たちを800円とかと上にくっつけただけで済むの かというと、絶対にそうはいかない。グラフが全体的に横に寄っていくだけのことで、単 に最低賃金だけでは済まない。その引上げによって、800円クラスを上げるなら、900円ク ラスも、1,000円クラスも、全部を上げていかなければいけないのが賃金ではないかと思っ ていますから、最低のボトムラインというのは非常に慎重に考えていただかないと。単に 最低賃金を上げるだけで済む問題ではなく、影響力が上の方で出てくるわけです。最低賃 金だけ、そのクラスの人だけ上げればいいということで済むのならよいのですが、企業で はそれでは済まないわけです。君がこれなら、こっちを上げようと。それは仕事の質と仕 事の量、それから勤務時間は地域によって全部格差がある。どうしようもない格差がある わけですから、全体の引上げにつながるということを私どもは考えなければいけない。  同時に、これを決めた後には産業別最低賃金を決めるのでしょう。そうすると、産業別 最低賃金も同時に値上げですか。そうしたら産業がもつのですかと。上げられる産業もあ れば、上げられない産業もあります。しかし、今の法律では、産業別最低賃金を上げたら、 それは法律で規制されているわけで、そういうところも納得できるのかと。実際に地方も、 今のこの経済状態の中で、円卓会議がこういう要素で上げろ、第4表以外で上げろと言っ たときに、本当に説得できるのか、そこの実態をよく御検討いただきたいと思うのです。 ○中野委員  私は別に生産性の話をしようとしているわけではないのです。支払能力と生産性はニア リーイコールな関係のように思いますので、それと最低賃金との関係をお聞きしたかった のです。  私も少しだけ意見を申し上げます。最近になく、最低賃金についての関心が、マスコミ も含めて、世間で高まっていることは御案内のとおりです。最低賃金がなぜこんなに注目 を浴びるようになったのか。それは今ほど池田委員のおっしゃった格差の問題もありまし ょう。また、労働市場の規制緩和が進んで「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」が大々 的に紹介されるようになり、存在し始めたこと、あるいは、その人たちが増加しているの ではないかと思われていることが原因ではないかと考えております。  一時、日本では「貧困」という言葉はほとんど死語のようになっていましたが、最近、 その言葉が存在感のある言葉として使われるようになっています。その意味では、少し時 代が変わったと考えざるを得ない。それで、時代が変わった中で最低賃金制度はどうある べきかというのがこれからのテーマであろうし、今年の審議の特徴なのではないかと私は 考えております。これまで、最低賃金制度において救済される人々の多くはパートやアル バイトの労働者、それも家計補助労働者と考えられてきたきらいがあるのではないかと私 自身は感じております。今の最低賃金の水準ではとても生活していけないわけですから、 何らかの家計補助労働者でなければ、それだけではとても生活できない。誰かに頼らなけ れば生活できないという水準ですので、そう考えております。ただ、今後は賃金で自分の 生活を賄わなければならない新たな貧困層が、生まれていることからいうと、本人、家族 を含めた生計費を維持できるような水準にしなければならないというのが、多くの国民の 皆さんの気持ちだろうと思います。だからこそ先の国会でも、その種の質疑がたくさん行 われたのだろうと思います。今後少子高齢化社会を迎える中で、支払能力がないからとい うことだけで最低賃金を上げずに、仮に、そのことによって支払能力のない企業が存続し 続けることは果たして良いことなのか、そのことも真剣に考えなければならないのではな いか。仕事はなくならないわけです。生産性の高い企業にその仕事が移れば、国全体とし ての生産性は上がって、高い賃金を支払うことができるようになるわけですから、生産性 の低い企業、それから支払能力が本当にない企業は、その努力をするか、その努力をして も達成できなければ、労働者の場合は解雇あるいは企業倒産ということで路頭に迷うわけ ですから、同様の市場からの退場もあって然るべきなのではないか。それぐらいの決意を 持って、今回の審議に当たらなければならないのではないかと考えております。  私どもの委員だけの感覚で言うと、今年は従来と同じで法律も改正していないわけです から、従来と同じような感覚で私も考えられるのですが、周りがとてもそういうことを許 してくれないような環境にあると思いますので、ぜひ、その辺りも御理解いただいて御審 議をお願いしたいと思います。 ○原川委員  今、労使のやり取りを聞いていたのですが、中小企業は、生産性を上げるということに ついて、特別なことをやる、あるいは全く努力してないということは現実にないわけです。 毎日毎日が努力なのです。企業というのは、そういうことでその日を生きているわけです。 だから、その努力を怠ったら、まさに「明日は死あるのみ」ということになるわけです。 そういう厳しい状況の中に企業はあるということを、まず認識していただきたいと思いま す。  それから、私も生産性の話を長々とするつもりは全くありませんが、政府の底上げの戦 略会議においては、最低賃金を引き上げることも1つの目的ではありますが、まず中小企 業の生産性を上げることによって最低賃金の引上げを図る。いわば最低賃金を引き上げる だけではなくて、中小企業の生産性の底上げを図ることによって、最低賃金を引き上げる ということは、はっきり言っているわけです。  中小企業の場合は、いつまでも支払能力はないということではないわけです。ないとい うことを我々も言いたいわけですが、現実には非常に厳しい状況にある。その原因の1つ は、平成3年以降のバブル崩壊からずっと平成大不況というような厳しい経済情勢が続い たということで、その間に企業は、私の記憶では、平成11年には法人と個人を合わせて、 511万企業あったものが、今年の中小企業白書を見ると432万ぐらいに減っている、そうい う厳しい状況にあるわけです。ですから、当初余力のあった中小企業もだんだん、不況に 堪え忍ぶ中で余力がなくなって、倒産あるいは廃業した企業がたくさん出てきた。それで 先ほどの432万という企業になったのだと思います。  もう1つの原因は中小企業の取引構造といいますか、取引の実態的な問題があるわけで す。例えば、下請取引の適正化あるいは取引先の優越的地位の濫用等の問題がある。今、 東アジアの安い製品が入ってくる。そういう中で、中小企業に発注される仕事としては、 大幅なコストダウンを要請されるということがあって、そういうことに応えなければ従業 員を養っていけないというような厳しい状況が一方にあるわけです。政府は、そういうこ とを認識しているからこそ、こういう底上げの戦略というものを立てて、中小企業の生産 性を上げることによって中小企業の底上げを図る。それによって最低賃金の底上げも図り ましょうということだと私は認識しているわけです。そういうことを実現してほしいとい うのが中小企業の大きな期待でもあり、そうすれば最低賃金の引上げも可能なわけです。 別に、中小企業にいつまでも支払能力がなくて払わない、そういう頑なことで最低賃金の 引上げから逃げようと言っているのではない、そのことを申し上げておきたいと思います。 ○今野委員長  今、中野委員が言われた点で、具体的にどう言われたかは覚えていませんが、社会的な 注目度が高いからもたないと、そんなニュアンスでしょうか、ちょっと乱暴なことをおっ しゃっていました。ついていけないところは中小企業は潰れてもいいのだという話でした。 今回は従来と違って社会的な注目度があるのでもたない、というのはどうですかね。 ○池田委員  今日の新聞にも、そんなことが書いてありました、適えない所は市場から退場しろと。 これは非常に乱暴な意見です。日経新聞の某大学の偉い先生です。一方で注目しておかな ければいけないのは、日本の失業率が3%ぐらいになってきましたね。しかし、有効求人倍 率は逆に上がっているわけです。これは他の国にも誇るべき失業率だと思うのです。だか ら、これを維持するということは、労使双方が我慢して、払うべきものは払う。不況なと きでも、1人でも人を確保して、来たるべき時を待てと。中小企業というのは運命共同体で、 日本の家族経営的なものがありますから、少しみんなで我慢しようではないかというとこ ろで、1人でも2人でも失業者をなくす。その一方では、生産性を上げるのには人を減らし て機械化するのが一番なのです。それでも日本は失業率が3%とどんどん下がってきており、 いまの賃金体系がそんな乱暴なものではないのだと。外国との単なる比較にしても、その 辺をよく比較していただかないと。日本の経営者が努力した結果によって、あるいは労使 双方の努力によって、失業率が他の国に誇るべき数字になっている。有効求人倍率だって、 今は非常に高いから、業種によっては人が来ないところが多くなっています。高い賃金を もらいたければ、それこそ格差になってしまう。例えば、東京の介護の分野でも人が足り なくて困っていると言っているわけです。  ただ、ワーキングプアについては、家族の事情や身体的な事情があって仕事ができない と。これはやはり国がしっかり政策を立てて補助してあげるべきであって、仕事をしよう と思えば、今の有効求人倍率があれば、それなりの仕事があるのではないか。ただ、地域 間あるいは企業間格差によって払えない企業はあるわけですから、地域格差がなくなった、 有効求人倍率と失業率を是正させるということが最も大事なことではないかと思います。 ○田村委員  働きながら生活できないというのは非常に不幸なことです。今の有効求人倍率なり失業 率なりを見ると、Dランクの所が東京や愛知に比べてそういう数字も悪いわけです。そこの 平均年齢なり勤続年数を見ると、年齢は高くて勤続年数は短い、そして求人がないという ことですから、先ほどの賃金分布を見て、最低賃金にへばりついている所は、新しく採用 された人ではなくて、かなり勤続年数がある人もそこに我慢をしているという状況がある のではないか、そうすると、仕事に見合う賃金になっていないということも言えるのだろ うと思います。  4月の数字しかありませんが、実収入を家庭2人のところでみると横ばいなのですが、所 帯主収入が減ってきて、配偶者の収入でどうにか賄っているという現状もあります。労働 時間を見ても、北海道、青森、秋田辺りは170時間を超えているが、愛知、東京は163〜164 時間で生活できる水準になっている。こんなものを見ると、やはり是正をする必要はある だろうと思います。池田委員は先ほど、全体が上がると言いましたが、我々が気にしてい るのは、働いても生活できないような賃金であるというものは直していく必要があるだろ うということです。  そこで言われた大企業と中小企業の付加価値の分配。日商でも下請 取引への要望を出されていると思いますが、その中で、違法とは言えないまでも、抑制効 果があるように実質のものを上げていかないと中小は浮かばれないということが書かれて いるのですが、まさに、その辺を是正しながらということも必要だろうと思います。  もう1点、これは今年の第1回の後だったと思いますが、7月14日付けの朝日新聞に「誰 でも1,000円」と。最低賃金を1,000円に上げた場合に、一時的に企業側の支払能力は苦 しくなるが、日本全体の経済効果としては1.3兆円の効果があると、こんな数字も出てい るのです。どちらが鶏か卵かは分かりませんが、その辺にも配慮する必要があるのではな いかと思っています。 ○中野委員  私は、企業が潰れても良いとは思っていません。ただ、私が最低賃金と企業の支払能力 を考えたときに一番印象に残っているのは、イギリスの最低賃金を引き上げた後のリサー チ調査なのです。最低賃金を引き上げることによって、企業は、様々な合理化や付加価値 を含める引上げの工夫をして、それを乗り越えていったという事例報告のようなものが載 っているわけです。それで私は、そういう効果が賃金にはあるのではないかと。例えば、 春の企業内の賃金交渉の中では労使でそういうことをいっぱい議論するわけですし、集団 的な労使関係がない所ではなかなかそういう話ができないとすれば、この最低賃金を契機 として、そういう努力を促すことにもなるのではないかと考えております。そういう意味 で申し上げたということで、誤解のないようにお願いしたいと思います。 ○今野委員長  先ほど出ました橘木さんの論文で、最低賃金を上げて中小企業や会社が払えなかったら 正社員の給料を下げればいいではないか、というようなことも言っています。それで総原 資は一緒ではないかと言うのですが、どうですか。私が言ったのではなくて、橘木さんが そう書いたわけですが。 ○池田委員  ちょっとお聞きしたいのです。この場は経済戦略を考える場ではない、最低賃金を上げ ることによって国の経済を1兆円底上げしようということを考える場ではないと私は申し 上げているのです。それは政労使でやっていただくならそれでいい。ここは公労使で、ど ういう実態に合わせた賃金の現状を今年の目安として出すべきかという審議です。それに よってどういう経済効果があるかというのはどこか他の席でやっていただいて、やるのだ ったら、どこか地域を決めてテスト的にやってみるとか。第4表でも申し上げましたが、 それプラスアルファをどうするかということは政労使の意見があるわけですから、それは どのように捉えればいいのかということを私はお聞きしているのです。つまり、そこの経 済戦略まで考えて、政治戦略まで考えて目安を決めるのか、そういう使命感がこの場にあ るのかということをお聞きしたいのです。 ○今野委員長  最低限考慮はしないといけないですよね、支払能力というものに入っているわけですか ら。生産性が支払能力のバックにある以上は、生産性がどう動くかということは、少なく とも考慮せざるを得ない。生産性をどう上げるかということについて、いろいろなことは あるかもしれませんが、支払能力ということを考えるわけですから、それはしょうがない のではないでしょうか。それを考えなくてよいということは、支払能力を考えなくてよい という話になってしまうので。 ○池田委員  実質的に50%は上げないと言っているわけです。上げないということは、大体は上げら れない、そう解釈せざるを得ないですね。上げられるのだが上げないのと、上げたくても 上げられないのとあって、中小企業の場合は、50%上げたくても上げられないというのが 大多数だと思いますから、支払能力を十分に加味していただかないと、あとのプラスアル ファは大変な難問ではないかと思います。 ○今野委員長  中野さんの御意見は、やはり人間は退路を断たないと動かない。賃金を上げて、環境条 件をつくって頑張ろうという退路を断つと生産性が上がると、そういう御意見なのですか。 ○池田委員  要するに段階的、長期的にやるならいいでしょうと申し上げているのです。2カ月で8月 のを先に決めろなどと、こんな乱暴なことを地方が納得するのか、こんなことをやった場 合に説得できるのかということです。現実は、我々は目安を出すだけで、地方で全部決め るわけですから、そんな短期間で、こんな乱暴な話があるのかと。 ○中野委員  私はすべての退路を断てと言っているわけではなくて、少しずつそういう刺激を与えろ と言っていただく方が正解なのではないかと思います、実際に、そういうことはあるので はないかと。原川委員がおっしゃるように、日々努力はしている。それは経営側だけでは なくて、そこで働いている労働者も日々努力をしているわけです。そのことは私も十分承 知をしておりますし、全く否定するつもりはないのです。日々努力をしているゆえにこそ、 そこにはきちんとした生活できるような賃金があって然るべきではないかと思っているわ けです。それがなかなか難しい、支払能力ということで困難だとすると、そこに労使が一 致して努力できるような刺激を、この最低賃金制度の中で果たさせる、そのことも1つの 役割ではないかと思っているのです。  もう1つは、一挙になんぼという話はしていないわけです。我々が言っているのは50円 なのです。 ○池田委員  大した額ではないと。 ○中野委員  率で言うと大きいのかもしれませんが、それは今低かったからです。例えば50円上げて 723円になって、1,000時間働いて72万円です。普通2,000時間働いて140万円強です。 140万円強で、家を借りて本当に暮らせるのですか。月に12万円。それで、小さい所です と国民健康保険に入らないといけないような所もたくさんありますので、それから1万 4,100円を引いたり、健康保険代を引いたり、税金を払ったりして手取りをしたら働けない ですよ。それは家計の補助として働く場合だったら、それでも生きていけますが、1人でそ れをしなければならない人が増えている現状の中では、大変だから何とかしてほしい、何 とかしなければいけないのではないかと先ほどから申し上げているわけで、そこが今年の 命題なのではないかと私は考えているのです。 ○川本委員  刺激というお話がございました。毎年重要な指標として、いわゆる第4表ということを 中心に話合いが最後は詰まっていくわけです。その第4表というのは賃金改定の状況を示 しているわけですが、あくまでも平均値です。この平均値によって全体の目安を示してい くということです。平均値ということは、いわゆる正規分布かどうかは分かりませんが、 分布した状態ということですから、常に分布の下のほうにある所はそれでも引き上げられ る目安が出ますので、実は状況は大変きつくて、十分刺激を受けながら対応しているのだ ということは申し上げたいと思います。だからこそ、いわゆる賃金凍結の状況が多いとい うのは今年の第1表でしたか、その中にもありますし、併せて中央会からもその状況が示 されているわけです。そういう状況の中で例年、たぶん5年とか10年ですが、そういう中 で、ゼロ目安のときもありましたが、多くはデフレの中でもプラス目安という形が出てや ってきたということ、これはよく考えておかなければいけない。過去に全然そういうこと は無理させていない、ということではないということは確認しておきたいと思います。  もう1つ。今簡単に50円と言われましたが、1時間50円上げるということは、1日8時 間として400円、月に25日バックリやって、それでも1万円ぐらいです。今いろいろな企 業でベースアップを1万円やっている所はどこにあるのか、ということを本当に申し上げ たいと思います。今年でもベアを行えなかった企業が、大企業でも多々あるわけですし、 一部上げた所でも、電機業界等は1,000円というようなお話でしょうか。その中で500円、 500円と分けて実は中身で対応しているぐらいであります。そういう中で「ささやかだけれ ども、50円」と言われますと「えっ」と。あまりの思いの違いあるいは現状認識の違いに 実は戸惑っているというのが今の私の心情です。 ○加藤委員  500円、500円の電機業界です。今、支払能力論ということで少し意見交換がされたと思 うのですが、経営にとって、最低賃金というのは人件費に及ぼす影響が大きいだろうと思 いますが、一方で、中野委員や田村委員の発言にもありましたように、労働者にとって、 それは生活費そのものになるわけです。具体的な生活費がどうあるべきかという中身につ いては、中野委員からの話がありましたので繰り返しませんが、そうした観点で、適正な 水準がいかにあるべきかということを、今年はしっかり議論しておく必要があるのではな いかと思うわけです。この間ずっと、いくら上げるかという議論をされてきたわけですが、 現行の673円という水準は、中野委員もおっしゃったとおり、フルタイムの月例賃金換算 ベースで10〜11万円のレベル、年収ベースで110〜120万円というレベルではないかと思 っておりまして、そうした水準がセーフティネットとして適正な水準なのかという議論が 必要なのだろうと思っています。  円卓会議の今年の目安に対する考え方みたいな合意内容の中に、従来の考え方の単なる 延長線ではない議論をしてほしいという趣旨の取りまとめだったように思いますが、「従来 の延長線上ではない」という考え方にはそうしたことが含まれているのではないかと思っ ております。今年は、いくら上げるかということも非常に重要ですが、その前提として、 私たちはどういう最低賃金の水準を目指すのが適正なのか、という議論をしっかりしてお かないといけないのではないか。それに向けたステップとして、今年の目安審議をしっか り位置づけてほしいと考えています。 ○今野委員長  だいぶ議論をしていただきましたが、公益に休みが多くて少数派でした。日程を急に決 めたものですから、業務があって皆さん休まれたのですが、そういう点では、公益も半分 しか意見が言えてないのです。いずれにしても、皆さんからいろいろお話をお聞きしまし た。いろいろなことをおっしゃられましたが、非常に端的な数字で言うと、労側は50円と 言いました。使側は、言われてはいませんが、第4表尊重ということを考えて、第4表で いくと5円でしたか。そういう点では両者の主張の隔たりが非常に大きいということだと 思います。ここで最終的にはまとめていきたいと思いますので、今日は今日で議論を終わ らせていただいて、できれば次回までに、労使それぞれ議論をしていただきましたので、 少しでも歩み寄っていただけるように検討していただきたいと思います。何か言い足りな かったこと等はございますか。 ○川本委員  ちょっと申し上げておきたいのは日程の件です。実は、13日の諮問がなされた日にも、 小委員会は31日まで、そして3日に答申予定という案が示されましたが、例年は5月諮問、 6〜7月と2カ月にわたって議論するということからみるとあまりにも短かすぎるので、と りあえずの日程として認識しておきたいと申し上げたわけですが、今日の議論を通して、 果たして、元々のスケジュール案でいけるかどうかというのは非常に懸念せざるを得ない のです。したがいまして、8月に入っても、ある程度必要性もある、可能性もあると考える ならば、日程の調整もお願いしておいた方がよろしいかと思います。 ○今野委員長  日程について何かございますか。 ○加藤委員  日程を調整した方が良いのではないかという川本委員の御提案を否定するつもりはあり ませんが、最大限設定された内容で合意が得られるような努力は必要だと思います。ここ は目安の場ですから地方審議ではありませんが、地方での審議はおおむね10月1日前後で 発効日が設定されております。発効日という要素も金額同様非常に重いものがあり、地方 審議への影響も少し考慮しないといけない面もあるのだろうと思います。どうしても31日 で仕上げろという意味で言っているのではありませんが、最大限合意に努力するというこ とで進めていただければありがたいと思います。 ○今野委員長  私は前回と前々回でスケジュールの件をお話したと思うのですが、とにかく、この前設 定していただいたスケジュールでいく。できなかったら、そのとき考えるという趣旨で私 はお話したのです。ただ、今私が少し心配しているのは、もしこのスケジュールで駄目だ ということが起きたときに、次の日程スケジュールを設定するのにみんな合わなくてずっ と持てないというのが一番いけないのです。だから、仮置きにでもいいからリスク回避で 取る。仮の日は取っておいたほうがリスクは回避できていいと思います。 ○加藤委員  それは委員会として31日以降の日程をきちんと確認した方がいいということなのですか。 ○今野委員長  私としては、そういう可能性もあるので、日程について事務局で調整しておいてほしい ということだけです。 ○川本委員  そのことについても御意見がありましたので、最大限努力をするという姿勢そのものは 全く同感である、ということをまず申し上げます。そうは言っても、出席状況によっては 成り立たなくなるわけなので、その辺は可能性とリスクを考えて、きちんと調整して、出 席の確保ができるような形にしておいていただくようお願いいたします。  もう1つ。今回は例年と状況の違う諮問の仕方をされたという認識があります。これは 質問なのですが、10月1日という発効日は非常に重いのだという御意見が先ほど加藤委員 からございましたが、今年は私どもが目安を出すのも日程的に例年よりも遅いわけです、 31日に目安小委員会ですから。その目安が今の予定で8月3日に答申予定という日程案で すが、実際、地方の審議会においては、いつまでに結審しないと10月1日に間に合わない のでしょうか。 ○前田勤労者生活課長  8月7日までに地方で結審しないと、10月1日の発効には間に合わないのです。 ○川本委員  今年どういう形の目安が出るか、出ないかも含めて、地方においても、今年は中央最低 賃金審議会が異常な事態なのですから、答え次第によっては地方だって異例な事態になる 可能性があるということでしょうか。そうすると、3日に出して7日というのは地方にとっ ても非常にきつい日程である、本当にそれでいいのかということだけは申し上げておきた いのです。言葉が難しいのですが、要するに、審議の尊重という意味で心配であるという ことだけ申し上げておきます。 ○今野委員長  いずれにしても、ここのできることは、なるべく早くやることなのですね。 ○池田委員  要望にこれだけ格差があると、相当慎重審議していただかないと、地方の意見も聞かな ければならないでしょうし、大変だと思いますね。 ○今野委員長  いずれにしても、ここの場で代替的な日程も取るように私から事務局にお願いしたとい うことでよろしいですか。 ○前田勤労者生活課長  分かりました。 ○今野委員長  本日の議事録の署名委員は、田村委員と原川委員にお願いします。第3回の目安小委員 会は7月31日午前10時から行います。また、既にお知らせしてありますように、休憩後 に5時から、いつもの場所「茜荘」で再開したいと思います。本日はこれで終了いたしま す。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)