07/07/24 第3回厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会議事録   厚生科学審議会科学技術部会   第3回厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会   議 事 録   ○ 日  時 平成19年7月24日(火)17:00〜19:00   ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階)   ○ 出 席 者   【委  員】  笹月委員長           岩田委員 北地委員 木下委員 末松委員 平井委員           福井委員 宮田委員 望月委員 谷内委員             【議 題】   1.厚生労働科学研究における利益相反への対応について   2.その他  【配布資料】   1−1.アメリカにおける臨床研究と利益相反マネジメント       東北大学 利益相反マネジメント 平成17年度 活動報告   (平成18年3月 国立大学法人 東北大学)より   1−2.大学法人等における寄附金・契約金等について(一般的なイメージ)   1−3.対象とすべき利益相反の定義について(案)   1−4.利益相反問題を問われる可能性がある想定事例(案)について  1−5.「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」に関する       調査結果   1−6.厚生労働科学研究における利益相反に関する指針に盛り込むべき事項(案)   参考資料1.「臨床研究に関する倫理指針」における被験者保護について   常設資料.適正に医学研究を実施するための指針 ○坂本研究企画官 傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たりましては、既にお 配りしております注意事項をお守りくださいますようお願いいたします。なお、本日は クールビズということで、事務局は軽装で失礼しております。上着をお召しになってい る方も適宜脱いでいただくなど、よろしくお願いいたします。  定刻になりましたので、ただいまから「厚生科学審議会科学技術部会第3回厚生労働 科学研究における利益相反に関する検討委員会」を開催いたします。委員の皆様には、 ご多忙の折お集まりいただき御礼申し上げます。  資料の確認をお願いいたします。議事次第の半ばのところから配付資料のリストが書 いてあります。資料1-1「アメリカにおける臨床研究と利益相反マネジメント」、資料 1-2「大学法人等における寄附金・契約金等について(一般的なイメージ)」、資料1-3 「対象とすべき利益相反の定義について(案)」、資料1-4「利益相反問題を問われる 可能性がある想定事例(案)について」、資料1-5「『インフルエンザに伴う随伴症状 の発現状況に関する調査研究』に関する調査結果」、資料1-6は「厚生労働科学研究に おける利益相反に関する指針に盛り込むべき事項(案)」です。  参考資料1「『臨床研究に関する倫理指針』における被験者保護について」、常設資 料として、冊子を1冊お配りしております。常設資料「適正に医学研究を実施するため の指針」については、次回以降の会議でも使用いたしますので、お帰りの際は席に置い たままでお帰りくださいますようお願いいたします。お持ち帰りの希望等がございまし たら事務局までお申しつけください。  以後の議事進行につきまして、笹月委員長よろしくお願いいたします。 ○笹月委員長 議事に入ります。まず、事務局より資料1-1から資料1-3までの説明を お願いいたします。 ○坂本研究企画官 資料1-1から資料1-3についてご説明いたします。資料1-1は谷内 先生から提供していただいたものです。平成18年3月に東北大学で作成された報告書か らの抜粋です。一枚めくりますと、第3章となっていてアメリカにおける現地調査のこ とが書いてあります。調査目的と概要のところでは、臨床研究の実施に関する可否を検 討してきた倫理委員会(IRB)と、利益相反マネジメント(Conflict of Interest Management)という表現で書かれていますが、これらがどのような連携を採るかという 課題があった、といったことが書かれております。この頁、5頁となっていますが、こ の下の方から、アメリカにおけるIRBとCOI マネジメントについての歴史的な流れが書 かれており、その後6頁、7頁等に続いております。  8頁から各大学の現状として、この資料ではまずジョンズ・ホプキンス大学について 書いてあります。8頁の下のほうから、マネジメントの内容は、禁止又は条件付実施承 認ということで、審査基準として、コンサルティングなどにより、年間2万5,000ドル を超える収入の有無、公開株式取得価額2万5,000ドルを超える保有の有無等が書かれ ております。9頁の上の方にもその続きが書いてあります。  9頁の半ばからは、ペンシルベニア大学の記載があります。ペンシルベニア大学のマ ネジメントの内容については10頁にあります。審査基準としては、コンサルティングな どにより年間1万ドルを超える収入の有無、公開株式取得価額1万ドルを超える保有の 有無等の規定が記載されております。  10頁の下のほうから、テキサス大学ヒューストン・ヘルス・サイエンス・センター (UTHSCH)についての記載があります。こちらの審査基準については11頁にあります。 Significant Financial Interestsの開示ということで、具体的にはUTHSCH及び学術機 関を除く営利企業1社から年間1万ドル以上の収入等の規定があると記載されておりま す。  12頁から、調査結果のインプリケーションというところでまとめ的なことが書いてあ ります。制度基盤について、法令が存在してIRB、COIマネジメントの実施というのが大 学の義務的なものとなっているということが書かれています。12頁の下のほうではスタ ッフの充実、13頁にはCOIとIRBの連携についての記載があります。こちらの資料につ きましては、後ほど谷内先生から適宜補足していただければと思います。  資料1-2は、厚生労働省の医薬食品局が作成した資料を改変して使わせていただいた ものです。大学法人等における寄附金・契約金等についての一般的なイメージを図解し たものです。企業からは、各大学法人等ごとの規定に基づき、大学法人等へ寄附等の申 込みがあるということ、大学法人等に関しては図の左の方に、個人的関係については図 の右の方に書いてあります。  寄附金(不動産、動産、奨学寄附金を含む)は部局等で受付けて、使途・配分決定を されるということ。治験は受託研究の一形態として、治験審査委員会での審査、組織と の契約があり、共同研究・受託研究の方では、あらかじめ教職員が指定され、部局等で 受付けされ、教授会等で審査があって受入れ決定があるという大学法人等の中でのプロ セスが書かれております。個人的関係としては、顧問・相談、講演・原稿執筆、専門家 証人、有価証券などが考えられるということが右の方に書いてあります。  大学法人等の中でも、大学法人が受けるものとして、学生向け奨学金等、それから研 究室(教授、准教授等)が受けるものとして、教育研究の実施、治験担当医師として治 験を実施する場合、企業と共同で又は委託を受けて研究を実施する場合がある、という ようにイメージを整理しております。  一枚めくりますと、大学法人等における寄附金・契約金等の整理として、一つは個人 経理か機関経理かという問題、それから寄附金・契約金等と実質的な名宛人との関係と いう整理をした資料です。機関経理の方では、共同研究、受託研究(治験も含む)、寄 附金(奨学寄附金も含む)があります。奨学寄附金については右下の方に矢印で書いて ありますが、国立大学等が教育研究に要する経費等、教育研究の奨励を目的とする経費 を充てるべきものとして企業や個人などから受け入れる寄附金ということで、主な目的 ・使途としては、研究、学生支援、大学の記念事業等があり、寄附金の期末残高はバラ ンスシート、当該年度の受入総件数・総額については附属明細書上で公表されていると いうことです。  個人経理の場合は、企業との関係で生じるものの例として、顧問料・相談指導料、講 演・原稿執筆料等、訴訟における専門家証人、有価証券があるということです。  名宛人との関係としては、教授等が名宛人で、かつ当該教授等に使途決定権があるケ ース、教員(研究室)あての奨学寄附金の場合等と、教授等が名宛人だが、当該教授等 には使途決定権がないケース、学部長(自分)あての学部への寄附金といったケースが あるという整理をしたものです。  資料1-3については、前回お出ししてご議論いただいたものを、修正した案です。修 正漏れが一カ所あります。対象とすべき利益相反の定義について(案)ということで、 前回ご指摘がありました2番目のポツの4行目のところで「又は損なわれた」を「又は 損なわれる」に直したつもりが直せていませんでした。ここは現在形にするということ です。申し訳ございませんでした。  前回の資料からの修正点として、2番目のポツの2行目の「狭義の利益相反を中心に」 というところについては、前回は「狭義の利益相反を対象として」となっておりました が、それ以外のものもあり得るというご指摘がありましたので、こちらについては「中 心」という表現にして、「狭義の利益相反とは、」という文言を入れて、その後の説明 の文章につなげているものです。  対象とすべき利益相反については早目に固める必要があるということで、前回のご議 論を踏まえてこういう形の案ということで整理させていただきました。これでよろしけ れば、今後の利益相反については基本的にこの考え方で整理していきたいという意味で 整理をさせていただいたものです。駆け足になりましたが、資料の説明は以上です。 ○笹月委員長 資料1-1から資料1-3までの説明に対し、ご質問、ご意見がありました らお願いいたします。まず、資料1-1について谷内先生から追加説明がありますか。 ○谷内委員 1年半ぐらい前にアメリカへ行ってまいりまして、調査報告を西澤先生が まとめたものです。少し間違っているところもあるかもしれませんが、調査した段階で、 厳密に西澤先生が記述されていると思います。これだけ細かい報告はないと思いますの で、是非お読みいただいて参考にしていただければと思います。この報告書は東北大学 のホームページ上にオープンになっておりますので、外部から見ることもできます。こ れは、本当に一部だけを抜粋しておりますので、全体の報告はホームページ上で見てい ただくことができます。今年の報告書も三部持ってまいりましたので、委員長あるいは 事務局に一部置いていきますが、是非ホームページ上でお読みください。 ○笹月委員長 いくつかの大学の実例も記載されております。いずれもコンフリクト・ オブ・インタレストと、IRBとの関係が特段示されておりますので、これについて一言 説明していただけますか。 ○谷内委員 IRBは公開で部外者が入ってまいりますけれども、利益相反委員会、マネ ジメント委員会というのは部内の委員会で、最終的な決定権は、その大学の中心の人た ちが行う組織です。ですから、学部長クラス、あるいは副学長クラスの方が、最終的に go、no goをサインしています。実際にその委員会はIRBの前に開くのが原則になって いて、クローズになっていて、どういう方が委員であるかもオープンにしていません。  アメリカの委員会というのは非常に公開性が強いのですけれども、テニュアトラック の委員会と利益相反マネジメント委員会は委員名が公開されておりません。ですから、 誰かが圧力をかけようと思っても無理なのです。学部長クラスの人でも、自分の研究の ためにこれを押し通すこともできないようになっています。そういう事例としてペンシ ルベニア大学の事例があるわけです。そういう面で、大学の根幹をなす委員会として認 知されています。組織マネジメントする必要上そういうことになっているのだろうと思 います。 ○笹月委員長 IRBよりも先にやるとおっしゃいましたか。 ○谷内委員 IRBと連携を取りながら、IRBの方から回す場合もあります。 ○笹月委員長 IRBでやって、これは利益相反がありうるというときに。 ○谷内委員 回す場合もあるし、あるいは前もってやる場合もあるということです。ペ ンシルベニア大学は前もってだと思いました。 ○笹月委員長 前もってやるとなると、利益相反の関係にあるかどうかわからない事例 も、すべて臨床研究なら臨床研究はここでやらなければいけないのですか。 ○谷内委員 そうです。大体研究者が理解している場合が多いので、アメリカの大学の ホームページへ行くとチュートリアルというのがあります。臨床研究をやる前に、利益 相反マネジメントのチュートリアルを受けてからでないとできない形になっています。 たぶん、そこでほとんどの方は理解しているのだと思います。ですから、これがあると 思ったら前もって利益相反マネジメント委員会にかけて許可を得る。ホームページ上に 基準が記載されていて、ほとんどの有名大学では原則禁止ですので、研究者は、ある程 度自分の方で考えて対応しています。  ただ、それでは対応できない場合があるので、そういうときにマネジメントをお願い することになってきます。結構件数が多くて、毎回苦労しているという話を聞きました。 私たちがペンシルベニア大学を訪れたときに、その委員会が開かれるときだったのでこ んなに厚い資料を持っていて、これを全部いまからやるのだと言っていました。そうい うことで、結構頻繁に開かれているということです。 ○笹月委員長 ご質問はございませんか。 ○岩田委員 谷内先生の説明で前からわからなかったことがあるので確認させていただ きます。アメリカではIRBと利益相反委員会は分かれているという話でした。なぜ分か れているのかずっとわからなかったのですが、この資料を読ませていただいて、ここに 書いてあったのはIRBが十分信頼を受けるような判断ができなかった、ということが一 部書かれていたと思います。  もう一つ谷内先生が言われたのは、情報の公開性ということで、IRBのほうは誰でも 見られるような状況だけれども、利益相反委員会のほうは情報がクローズになっていて、 ほかの人たちには見えないような状況になっている。それには二つあって、ここでも議 論のあった研究者の方々のプライバシーを守る側面と、もう一つは変な圧力がかけられ ないということを言われたと思うのです。その三つはどのぐらいの重みがあるのか、と いうことがもしわかれば教えてください。日本では、なぜそういうのが分けられるのか というのがいまひとつよくわからないのでお伺いできればと思います。 ○谷内委員 全米の全部の大学が分けているということはないと思います。小さい大学 では一緒にしている所もあると思うのですけれども、私たちが行った所は産学連携を中 心にやっている所で、しかも全米の中で科学研究費をいちばん多く受け取る大学だから、 自分たちの組織マネジメントとして利益相反マネジメントをしっかりしなければいけな いということで、分けようというAAMCの考え方に沿ってつくっていると思います。  科学研究費をたくさん貰っていない所は組織維持が大変で、IRBと一緒にしていて、 そういうときには委員長が個人で判断している。個人で判断したものを、組織の意見と して言えるかどうか。例えば、私がIRBの委員長だった場合もありますけれども、その ときに私の判断が東北大学の考え方として言えない場合があります。そういう面で利益 相反のマネジメント委員会というのは、学部長クラスの人が最終的な決定をしていると いうことなので、分けたほうがベターだということで分けているということです。組織 がどうあるべきかということまで関係してくると思いますので性格が違います。  それから、IRBは始めるときに審査をしますけれども、マネジメント委員会というの は継続的に見ていかなければならないという特徴があります。臨床研究の途中、あるい は終わった後というのも見ていく必要があるので、そういう面で少し役割が違うと考え ています。細かい字句の訂正とか、被験者に対するものというのはIRBで、利益相反委 員会はあくまで経済的なところだけ判断していただくという形になっています。ベンチ ャーが絡む場合とかいろいろありますし、臨床研究の形態は非常に複雑ですので、調査 することも必要ですので、IRBとは少し違ってくるだろうと思います。 ○岩田委員 最後の点で確認なのですけれども、日本では谷内先生たちがすごく努力さ れている中で、研究者たちをどうやって説得するか、というのがすごく重要だというお 話がありました。それもあって、日本ではどちらかというと研究者のプライバシーを守 るために守秘義務をかけるということで、IRBと分けている部分がすごく強いような印 象があります。アメリカでも同じようなことがかなり強調されているのか、そうではな くてマネジメントということに焦点に当てながら分けているという理解でよろしいの か、そこのところを確認させてください。 ○谷内委員 そこは私にもわかりませんけれども、彼らもプライバシーには注意してい ると思うのです。守秘義務があるということは、常に前提になっています。そこに関し てはもう少し質問を整理して後で確認してみます。どうもありがとうございました。 ○宮田委員 谷内先生に教えていただきたいのですけれども、これは営利機関という定 義になっています。例えばこの間問題になったような所で、財団法人を経由した寄附金 みたいなものがあります。その辺は海外ではどのように取り扱っているのでしょうか。 ○谷内委員 財団法人の寄附金ということに関しては、私は不勉強で勉強しておりませ んし、情報も持ち合わせていません。後で、私の上司の西澤教授に確認してみます。私 の理解では、財団を介した事例があるかどうかというのは明確に調査しなかったように 思います。あの時点では問題になっていなかったということです。 ○宮田委員 日本では国の研究資金がメジャーですけれども、ヨーロッパとかアメリカ では国と同じぐらいある特定の分野でいうと、例えばゲノムの分野ではウエルカムトラ ストとか、ハワードヒューズとかの結構大きな財団がお金を出しています。その辺をフ ァイナンシャル・インタレストに含めるかどうか、というのは線を引く必要があるのか と思っています。 ○谷内委員 ウェルカムトラストなどは完全に公的な機関です。たぶん、そういう所で マネジメントしているはずだと思います。 ○宮田委員 もちろんそうです。そこにマネジメントがあるということが重要です。 ○谷内委員 重要です。 ○宮田委員 日本にある寄附団体で、そんなものがある所は知りません。ですから、単 純にそういうことで学術団体という美名の下に一緒くたにすることはできないという感 じです。 ○谷内委員 そうです。そこは欧米との違いかもしれません。欧米では、組織があれば その組織のマネジメントというのは非常に重要視されています。 ○笹月委員長 いまのは大変重要なご指摘だと思いますので、指針作成のときにもう一 回検討したいと思います。 ○岩田委員 先ほどの定義の話でお伺いします。前回からずっと申し上げ続けていて、 必ずしも取り上げられていないのですが、特にこれで皆さん方は異論がないということ であればこれ以上申し上げないようにしようと思っています。  資料の後ろのほうで、各大学の利益相反規定が参照されていると思うので私も少し見 てみました。これは、大学全般としての規定になっていると思うのです。東京大学とか、 私が調べたのだと神戸大学だと、医学部の規定が、大学全般のレベルと臨床研究みたい なことをやる所のレベルの規定みたいな形になっていて、二段階になっているのだと思 うのです。臨床研究をやる所は、まさに人(患者)を扱うので、そこの安全の部分が重 要ですね、というような構造になっているのではないかと思うのです。そこのところは 一応検討した上で、これでほとんどカバーしているだろう、ということでこういうもの を作っているのかということを確認させてください。 ○坂本研究企画官 いまのご指摘は、定義というよりは指針になったときにどう運用す るか、というところではないかと理解していました。定義から臨床研究の場合とそうで ない場合とを分けるより、定義は一緒であって、そのほかの運用面でより一段厳しくす る必要があるかどうかというところの検討課題が残っていると理解しています。定義か ら分けるという発想ではなくて、そういうやり方ではないかと考えていました。 ○笹月委員長 資料1-3の主な意味は、ここで問題にする利益相反とは、いわゆる狭義 の利益相反を中心にするけれども、組織に対する責務相反も考える必要があるかもしれ ないということでよろしいですか。 ○宮田委員 先ほどの論点からいくと、「個別企業等」などと入れていただいたほうが いいのではないか。残念ながら、日本の補助金を出すような団体の中で、極めて紐付き の色が強い所があって、それがこの利益相反のガイダンスの対象から逃がれると、結局 また穴があくだろうと思います。「個別企業等」、それから「特定企業等」。 ○笹月委員長 資料1-3ですか。 ○宮田委員 資料1-3の一つ目のポツの1行目の後ろの「個別企業との関わりについて、 適正に対応する必要がある」と。ここで定義したいのは企業に絞りたいということなの でしょうけれども、いまの日本の財団の支出のことを考えたり、ファンディングエージ ェンシーのあり方を考えると、企業だけで議論すればいいということにはならないと思 っています。  二つ目のポツの2段落目の1行目の右端のところの、「特定企業等」と入れておいて いただいたほうがいいのではないか。もちろん、中心としては企業を中核として議論す べきだと思いますけれども、ちょっと幅を入れておいていただきたいと思います。 ○笹月委員長 宮田委員のご意見に対してお考えはありますか。事務局から何かありま すか。 ○坂本研究企画官 先生のイメージしているところは、いまのところは財団だけですか。 ○宮田委員 よくわかりませんけれども、企業がいろいろな形で中立を装った財団とか エンティティをつくって、その資金を流す可能性を封じたいと思います。いまの具体的 なイメージは、いろいろな企業がつくっている財団があります。そこが本当にそういう 意味ではきちんとしたマネジメント体制があるかどうかぐらいはちゃんと調べてから受 け入れるようなことをやるべきであると思っています。 ○谷内委員 財団以外に、最近日本ではLLCというのが認められました。このLLCとい うのも非常に難しいのです。これは、企業ではなくて、共同組合みたいなものだと思う のです。これはどのように取り扱ったらいいか私自身もわからないです。 ○北地委員 いまお話しようかと思ったのですが、LLCよりもLLPのほうが問題です。 私立大学であれば、LLPの構成員になり、片方は企業が構成員になって、成果物をお互 いが分け合うという形であれば、実質的な資金の拠出をしていても、資金を拠出したと いう形にならないです。 ○谷内委員 それは、全然知りませんでした。 ○北地委員 組合という共同性を持ったものまで含んでしまうと、定義は随分広くなり ます。 ○笹月委員長 LLC、LLPについての定義を説明してください。 ○北地委員 LLCは法人です。法人でありますけれども、株式会社のように、法的に内 部でこのような機関を持ちなさい、決議要件はこうですというような拘束されたもので はなくて、かなり柔軟に設計できるところがLLCの特徴です。ですから、小さい所から 大きい所まで対応できます。  LLPは組合であり、法人ではありません。つまり、いくつかの法人なり個人が寄せ集 まって一つの組合を形成します。ただ組合とはいえども、いまの日本のLLPは、ある種 の契約の下になるということは言われています。平井先生、いかがですか。 ○平井委員 おっしゃるとおりだと思います。最近はNPOもそうですし、中間法人もそ うですしいろいろな組織があります。宮田委員がご指摘になった懸念というのは、財団 だけではなくて、そういう組織一般に及ぶ可能性はあると思います。ここで法人の議論 をきっちりやる必要はないと思います。場合によっては組織とか、そういうタームでま とめてしまう。  「個別企業との」ということであっても、個別企業がバックにいて、間に藁人形が入 るケースはみんなこれに入るのだと考えれば、これでもカバーできなくはないです。そ の辺は書きぶりの問題かという気がします。 ○北地委員 IRBとCOIの関係で、日本とアメリカを比較したときに、宮田委員がおっ しゃった資料1-3でいけば主語をどうするかということが非常に気になっています。日 本の利益相反は個人の段階でとどまっていて、組織的利益相反までは含んでおりません。  米国で論じられる場合には、普通は組織的利益相反も含みますし、IRBは当然含むと 思います。日本では資料1-3の主語を「研究者は」とするのか、彼の所属する団体まで 含むのかというところは大きな課題かという気がしています。 ○笹月委員長 前回か最初の会のときに、個人だけではなくて組織としても利益相反が ありうるのだということは議論したと思います。ですから、当然それは考慮の対象にな りますし、指針を作るときにはそういうことも出てこなければいけないと思います。 ○北地委員 日本のCOIのシステムがまだそこまでいっていない、というところを気を つけなければいけないということです。 ○笹月委員長 先ほどの問題に戻ります。宮田委員から指摘がありました、個別企業、 特定企業の後に、とりあえず「等」ということを入れておいて、実際に文章化するとき にご議論いただくことにいたします。 ○末松委員 いまの記載について、宮田委員からご提案のあった趣旨はわかるのですが、 「等」というのを増やさないうまい方法がないのか。つまり、言葉がどうかわかりませ んが、「個別企業」あるいは「資金提供を行う組織」とやっておいて、フットノートで それが何を指すのか、ということを後から入れられるような形にしたほうがいいのでは ないかと思うのですがいかがですか。 ○宮田委員 それは、全然異存ありません。ただ、議論のために、とりあえず定義を拡 大しようとしただけなのです。明確化は必ずしなければいけないので、成案するときに は明確化しないといけないと思います。 ○笹月委員長 文章にするときに、もう一回きちんと議論したいと思います。 ○坂本研究企画官 わかりやすい指針にしたいと思っておりますので、対象は明確化を 図る必要があると我々も考えております。仮にここでは「等」を使っても、先ほどおっ しゃられたフットノートとかQ&A等では、そういうものがあるという形の整理は必要だ と思っております。 ○笹月委員長 資料1-1から資料1-3についてほかに何かありますか。 (特に発言なし) ○笹月委員長 次に資料1-4、資料1-5について事務局から説明をお願いたします。 ○坂本研究企画官 資料1-4と資料1-5をご説明いたします。これまでのご議論でも、 具体的なイメージといったものを持って議論すべきではないかというご指摘もありまし たので、そのような観点で用意したものです。  資料1-5は、当省の医薬食品局が3月末にまとめた、「インフルエンザに伴う随伴症 状の発現状況に関する調査研究」に関する調査結果というもので、いわゆるタミフルの 問題があったときの調査結果をまとめた報告書です。こちらは、ちょっと長いもので、 そういうものも踏まえて資料1-4では想定される事例としてポイントを書き出して、こ ういうような場合があるのではないかというものをいくつか作ってみたものです。  資料1-4の1頁では、厚生労働科学研究の目的は、国民の保健医療、福祉、生活衛生、 労働安全衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ること にあり、判断においては、国民の保健医療等の向上に資するよう留意する必要がある、 という一般的な考え方をまず書いております。  その後で、これらがすべて網羅的というわけではありませんが、今後指針を作成して いく上で、念頭に置くべきかなと思われるようなものを想定事例として作成してみたも のです。1番目は、ベンチャー企業との兼業による直接的な利益ということです。独立 行政法人を想定し、こちらの部長が自己の研究成果の事業化を図るためにベンチャー企 業を設立し、その会社の発行済み株式総数の3割を保有して取締役に就任したといった 事例を考えたということです。この部長が、自己の個人保有特許について、その会社と 実施契約を締結し、売上げに応じて実施料収入を得ることとなっていた。そして、厚生 労働科学研究費補助金の交付を受けて、会社の協力を得ながら個人保有特許に関連した 研究を実施し、それによって会社がその部長の技術を活用した製品開発に成功した。部 長は、個人的に実施料収入と取締役としての成功報酬を得たような場合ということで、 また、この会社が成長して、株式を売却したような場合といった例を考えてみたときに は、この部長に関しては未公開株、役員報酬、特許の実施料収入に関して、金銭的利益 を有していて、個人保有特許に関連した研究によって、個人的な金銭的利益を得る立場 であるため、厚生労働科学研究費補助金の交付を受けて実施した研究について、研究の 本務にバイアスがかかっているのではないかとの懸念を生むおそれがあり、また個人へ の金銭的利益を供することになっていないか、利益相反問題を問われる可能性があると いうこと、それから、厚労科研費の交付を受けて実施した研究については会社の利益と なるよう、開発を必要以上に推進するとか、公的研究としての公正性・公平性、更には 適切さを問われることになるといった問題があるだろうということです。  こういう場合の対応案として考えられるのは、臨床研究に関する倫理指針等に基づい て、当該臨床研究に係る資金源、起こり得る利害の衝突、研究者等の関連組織との関わ り等について、被験者に十分な説明を行った上で、被験者からインフォームド・コンセ ントを受ける必要があるということ。それから、研究に関係する重要な経済的利益、特 に研究の対象となる医薬品等と研究者との関係(製造者等からの研究費の受給、製造者 等の株式の保有等)について所属機関の利益相反管理委員会に適切に開示した上で、被 験者の安全性の確保等について疑念が生じないような措置も含めて研究の進め方を管理 する必要があろうと書いております。  特に、このような事例の取扱いに関しては、その研究者がその分野で余人をもって代 え難いような場合も含め、取扱い方針を明確にする必要があるということ、具体的には 取締役から科学技術顧問への変更とか、未公開株の管理を第三者に委ねる等適切なマネ ジメントを実施すべきであろうといったことを書いております。  2番目の例として、ベンチャー企業への出資による利益と産学連携活動の例を書いて おります。こちらも独法の研究所を想定して、そちらの部長が新たな治療薬の開発を行 い、その特許を基盤としてベンチャー企業を立ち上げ、自ら取締役に就任して実用化を 目指したようなケースで、それに協力する医師がいて、そのベンチャー企業に出資し、 第三者割当増資を受けたというような状況の下で、厚労科研費を得て、自ら責任医師と なって臨床研究を行って、このものの実用化に協力したような場合を想定したというこ とです。  このような場合には、協力した医師は、臨床研究の実施と未公開株の所有という重要 な経済的利益について、第三者から懸念を呈されるおそれがあり、利益相反問題を問わ れる可能性があるということと、このような研究課題の応募があった場合の厚労科研費 補助金の交付要件について明確にしておく必要があるということが考えられるというこ とです。  対応案としては、臨床研究に関する倫理指針等に基づいて、臨床研究に係る資金源、 起こり得る利害の衝突、それから研究者等の関連組織との関わり等について、被験者に 十分な説明を行った上で、被験者からインフォームド・コンセントを受ける必要がある ということ。臨床研究と利益相反の問題であることから、医師が所属する組織における 利益相反マネジメントが必須となるということ、それから、当該マネジメントが通常の 利益相反ポリシーよりも厳格なポリシーであることが求められようということを書いて あります。  3番目として、共同研究、受託研究、奨学給付金の例を考えてみたのが3頁です。こ れは、大学の教授が、ある疾患の症状とその治療薬の効果と副作用の関係について、厚 労科研費補助金を用いて研究を行うことになったけれども、治療薬の一つであるものを 生産する製薬企業から奨学寄附金を受け取っていたような場合、あるいは共同研究を行 っていたとか、受託研究を行っていたというような事例も考えられるという例です。  この場合には、教授はその治療薬に関する臨床研究と奨学寄附金の受け取りに関し、 重要な経済的利益の関係について第三者から懸念を呈されるおそれがあるということ で、利益相反問題を問われる可能性があるということ。奨学寄附金についてはその目的、 実際の使途、過去の状況、特定の研究を実施してから寄附の申し出があった場合など、 種々の事情を加味して検討を行うことが必要であろうということ。特に、特定の研究を 実施してからの寄附の申し出の場合には、懸念・疑念を招きやすいことに留意する必要 があろうということが書いてあります。それから、ある治療薬、特定の治療薬を生産す る製薬企業からの寄附行為については、事情によっては組織における利益相反として検 討することも必要になろうということです。  対応案としては、研究の焦点が特定の薬剤等にあるような場合など、臨床研究と重要 な経済的利益の関係が強い場合は、過去から継続的な奨学寄附金であっても、奨学寄附 金を受領していた研究者は、主任研究者として当該研究に応募することは避けるべきで あるということを書いております。なお、主任研究者でなく、適宜研究をサポートし、 協力する立場での参加は検討に値するということ。それから、奨学寄附金の提供元につ いて変更等がある場合、これは以前に、会社が合併してしまったような場合も最近はあ るというご指摘がありましたので、そういう場合も書いてあるわけですが、速やかに当 該機関における利益相反マネジメントにおいて検討がなされるようなシステムが必要と いうことと、組織における利益相反は当該製薬企業と継続的又は包括的な経済的関係が ある場合に問題となるが、組織における利益相反マネジメントの構築が進んでいない現 状では、暫時、システムの整備を進めることとなろうということを記載しております。  4番目には、企業からの間接的な助成と疑われる事例を想定してみました。ある大学 の教授が、ある疾患の症状とその治療薬の効果と副作用の関係について、厚労科研費で 研究を行うことになったけれども、その教授が期待する規模の研究を行うには研究費が 不足したようなとき、研究が不足する部分、追跡調査等の別の検査等について別途臨床 試験計画を立案し、財団から研究費の助成を受けたような場合、そして、その財団が会 社から高額の寄附を受けていたような場合を考えてみました。  財団からの研究費が、会社からの資金であることが第三者の目から見て、また教授の 認識から明確な場合には、その教授は治療薬に関する臨床研究と、財団からの研究費助 成とについての利益相反問題を問われる可能性があるということを記載しております。 財団に企業が寄附した場合に利益相反が発生する可能性については、(1)に認識から明 確な場合と書いたように、研究者側のみでは管理し難い側面もあるという点も留意する 必要があろうということで(2)を書いております。  対応案としては、財団から助成を受ける場合には、財団の資金について確認(照会) する等の措置が必要ではないかと考えられるということ。財団の資金の出所によっては、 当該研究へのバイアスを監視する第三者機関を設ける、または複数の研究者による研究 体制をとる等、実質的な利益相反マネジメントを実施すべきであろうということです。  5番目に、寄附講座の問題という議論が前に出たのでその想定事例を作ってみました。 独法の研究所に、製薬企業からの寄附により設置された研究部門の責任者である部長が 責任医師となって、厚労科研費の交付を受けて、その会社の製品の臨床試験を実施した というときにどうなるかということを考えてみました。この部長の臨床研究については、 寄附金という重要な経済的利益の関係で利益相反マネジメントが必要となって、患者の 生命・身体の安全の確保、国民の健康・福祉との関係で厳格な利益相反マネジメントが 必要であろうということ。それから、独法の研究所についても、会社からの寄附、会社 の製品の臨床試験の実施、公的な補助金の受給の関係で、組織としての利益相反問題を 問われる可能性があろうということを書いております。  対応案として、特定の企業からの寄附講座などに関しては誤解を招かないよう慎重な 対応が必要であり、個々の研究機関における適切な利益相反マネジメントが必要であろ うということ。この部長は、その会社の製品の臨床試験には参加せず、仮に参加すると しても臨床試験の計画段階(プロトコール作成等)までとするなど厳格な対応が必要と 思われるということを記載しております。  前にも議論がありました、専門家が少ないような領域について、6番目に想定してみ ました。「社会問題化している」という枕を付けましたが、ある疾患について診断・治 療のガイドラインを作成するために、厚労科研費で指定研究を行うこととなったが、そ の病気に詳しい専門家が日本には少なく、主要な専門家がその病気の治療薬のメーカー、 あるいは治療薬開発中のメーカーのいずれかから奨学寄附金等を受け取っていることが 判明したような場合ということです。  必要性が高い研究については、利益相反問題が生じ得る研究者を完全に排除した場合、 研究が進まない可能性があるということ、個々の研究者の利益関係を明確にした上で、 特例的に研究に参加する方策は必要だろうということです。  対応案としては、利害関係を開示し、更に当該研究者の参加の必要性について、アカ ンウンタビリティの問題として認識し対応することが必要ということ。評価を行う者を 複数にする、利害関係のない者によるレビューを受けるなどの方策が考えられるが、ど のような体制が適切かその詳細を検討する必要があるということを記載しております。 利益相反マネジメントは、あくまで国民の健康及び福祉のため、研究をいかに進めるか に意を置くもので、可能な限りバイアスを避ける工夫が必要と記載しております。  それから、共同研究先からの物品の購入のような場合の例を考えてみました。独法の 研究所の部長が、医療現場で汎用されている、ある医療機器の性能に不満を持って、そ の改良試作品の提供を受けつつ、厚労科研費の交付を受け、自ら改良試作品の臨床研究 を行ったような場合ということを考えてみました。その部長の臨床研究については、患 者の利益と研究開発によって会社が得る利益や、医療機器の供給に関する便宜供与の間 の利益相反問題を問われる可能性があるということ。購入価格の適正さを考える必要も あるということ。安価又は無料で提供されるケースも考えられるが、そのような場合に は利益相反問題を問われる可能性が高くなることになります。  こういった場合には、まず会社と独法で共同研究契約を締結し、会社の研究の範囲を 明確に定める必要があろうということを対応案のはじめに書いてあります。その上で、 利益相反の検討を、機関の利益相反委員会において、他の要素(奨学寄附金や受託研究 など)と総合して行い、対応方針について判断する必要があろうということ。臨床研究 に関する倫理指針等に基づいて、臨床研究に係る資金源、起こり得る利害の衝突、及び 研究者等の関連組織との関わり等については、被験者に十分な説明を行った上で、被験 者からインフォームド・コンセントを受ける必要があろうということです。  最後の例として、物品購入と機関の利益という想定事例を考えてみました。大学の教 授が、ある疾患の治療における医療機器の有効性等について、厚労科研費で研究を行う こととなった。一方、その大学病院で、その教授も含めた複数の教授が関与し、その会 社からの医療機器の購入について交渉したら大幅なディスカウントに成功してしまった ような場合、この教授の臨床研究において、この教授が何らかの経済的な利益を得てい る場合には利益相反マネジメントが必要となる場合があるということ。自ら行う研究に 使用する物品の購入については、その購入先・対価などが公正・公平となるよう努力す べきであろうということが指摘できます。  対応案としては、この教授自らが、関係する物品の購入交渉に関与することは避ける べきであろうということを書いてあります。  我々が作ろうとしている指針が対象とするようなものについて、少々抽象化しており ますが、このような事例を考えた上で検討すべきではないかということで、想定される 事例ということをまずまとめてみたものが資料1-4です。 ○笹月委員長 最初にインフルエンザの例の件と、いろいろなフィクション、ノンフィ クションを含めた想定事例ということです。まず、その想定事例について1番から8番 まで作っていただきましたので、これについて逐一ご意見、ご質問をいただく形で議論 を進めていきます。 ○北地委員 先ほども、私は組織的利益相反のことを申し上げました。想定事例は網羅 的ではないと最初におっしゃいました。設問3のところに、組織における利益相反のこ とも整備を進めることになろうということもおっしゃっていました。設問全体が個人的 利益相反のところに集中していて、逆にもうちょっと視点を広げなければいけない。先 ほど宮田委員がおっしゃったように、どういう主体がというところも、典型事例が現在 我々が個人的利益相反でやっている典型事例のものが多くて、どうも限定的になってし まうような気がします。  特に気になりましたのは、設例7で対応案として「A社と独法Yが共同研究契約を締 結し」という、ここがまずこれでいいのかということを感じるのです。ある意味では組 織的利益相反は見過ごしてしまった上でなっているような気がするのですがいかがでし ょうか。 ○谷内委員 組織の利益相反というのは非常に重要ですけれども、例えばそれをマネジ メントする方法というのは、アメリカでも解が見つかっていない状況です。先生自身ど うやってそれをやってくべきか。私が思うには、もうしようがないから外部委員の方々 にこういう事例があるからこれでどうだ、というのを見せるしかないのではないかと思 っているのです。組織の利益相反マネジメントまで厚生労働科学研究費のほうでできる かどうかということはあると思うのです。そこまで入れるかどうかということだと思う のですがいかがでしょうか。 ○北地委員 ですから、あまり事例をフォーカスしすぎないで、組織的利益相反の問題 をもう少し入れたほうがいいだろうと。例えば、組織が利益相反になるようなストック オプションを貰うとか、上司と部下の関係において、部下がチェックをするものを、上 司が査定するわけです。上の人が何らかのグラントを貰っているというような状態のも のを想定して書き出したらいかがかと思っているわけです。 ○笹月委員長 組織の利益相反のときには、個人の場合には個人が所属する組織ですが、 組織の内部の人間で委員会をつくるわけです。組織が対象となると、その組織がそれを やっても意味がないと。先ほど、谷内委員はそういう意味でもおっしゃったのだろうと 思うのです。それは、なかなか難しい問題を提起していることになると思うのです。 ○北地委員 結論は非常に難しいと思います。出せるかどうか。最初に私が申し上げた、 いまのところ利益相反というのは個人的なところでとどまっていて、あまりツールとか、 どういう事例がというところの研究は進んでいないですよと。でも、それを含むか含ま ないかということを決めなければいけないと思うのです。含むのであれば、注意を喚起 する意味でいくらかの例は必要だろうということです。 ○笹月委員長 大事なご指摘ですね。 ○平井委員 確かに組織における利益相反も大事だと思うのです。まず、この概念をき ちんとする必要があると思うのです。いま聞いていて気になったのは、上司と部下の関 係という話が出てきました。組織における利益相反というのは、狭義の利益相反を組織 に置き換えるパターンを言います。したがって、組織が自らの本務というものがあって、 それと組織の有している外部的な実質的経済的利益が、何らかの衝突を起こすケースを 言うのです。そうであれば、組織の中の上司と部下の関係は、組織における利益相反と は関係ないと思うのです。  もちろん、この辺の概念整理をどうするかというのは議論が必要です。基本的にはそ の組織の本務をベースに考えるべきだと思います。そうであった場合にどうあるかとい うことです。谷内委員がおっしゃったように、日本ではこのマネジメントはまだほとん ど進んでおりません。私が認識する限りでは、つい先日産総研のほうで、組織における 利益相反の検討を始めようという議論が始まったところです。私が知る限り、他の組織 でこれをやっている所はないと思います。  だから、現状でそれをやれと言っても、たぶんどこもできないです。もちろんそうい うことがある、ということを指摘するのは非常に重要だと思うのです。指摘するにとど めて、今後の日本のマネジメント、COIマネジメントの成熟を見ながら逐次これを補訂 するなり、改訂するなりしていけばよいのではないかと考えます。 ○笹月委員長 北地委員はよろしいですか。 ○北地委員 ええ、同感です。あるということだけ知らせて、解決はまだまだ難しいと いうのは私もそう思っています。 ○笹月委員長 ご指摘いただいたのは大事な問題ですので、実際の指針作りのときにそ れをどう書き込むのか、というのはそのときにもう一回検討することにしたいと思いま す。  想定事例の1番から一応ご意見をお聞かせいただきたいと思います。何かコメントあ るいはご質問がありましたらお願いいたします。 ○末松委員 これも、ここに記載されていない個別の話に落としてしまうので恐縮な点 があります。このガイドラインで想定されている大学、研究機関、もちろん私立大学も 入っていると思うのです。一時期というか今もあると思うのですが、大学発のベンチャ ーというのをどんどんつくりましょう、頑張りましょうとやっていました。それで、バ イオベンチャーの冷え込み等もあって大変な時期ではあるのですが、一時期そういうこ とをやっていました。  例えば、大学の知的資産センターが、大学発ベンチャーをつくるのを支援した。特定 のベンチャーのストックオプション等を大学が持っている。そのベンチャーのプロダク トを、大学の研究と企業の研究の両方で支えて実用化をする。それによって大学が利益 を得る。そのプロダクトが例えば臨床研究であった場合には、臨床研究をその大学のIRB やCOIの委員会で調べて通すことになります。その場合に、内部のIRBやCOIのジャッジ が、大学がストックを持っていることとコンフリクトを起こさないのか。  こういうケースというのは、先ほどの研究をやる側には直接利益にはなっていないけ れども、大学そのものが利益を得るわけです。ここはなかなか踏み込みにくいところな のかもしれないのですが、ほかの委員の先生方で、そういうケースがもし生じた場合に どういうふうにそれをマネジメントしていったらいいのか。もし何かコメントがあれば 教えていただきたいのですがいかがでしょうか。 ○笹月委員長 それは、端的に言うと、先ほど北地委員がおっしゃった組織の利益相反 ということで、そのときにお話したことと同じような問題だと思いますが、どなたか特 段ご意見はございますか。 ○谷内委員 末松委員のおっしゃる例には、法人化した後に特許を持っているものは全 例当てはまるのではないですか。法人化した後の特許というのは、すべて大学と個人と 企業と分けています。だから、法人化後の特許というのは組織の利益相反になると思い ます。特許がないとなかなかベンチャーはつくりづらいので、すべての事例だと思うの です。これは、たぶん一般的な事例だと思うのですが、非常に難しいです。ただ、その ときに強いて言えば、いわゆる主任研究者にしないというところで、いまのところはマ ネジメントできるのかなと思っているのですが、臨床研究のときの主任研究者としない ということで、いわゆる利益相反のない方に、研究責任者になっていただく。それでい いかどうかということはあると思うのですが、先生はまた別の解を持っておられるかも しれませんが、私たちのいまの考えでは、主任研究者から外れていただくという形で対 応しています。原則そういう方向で考えております。 ○末松委員 いま私が申し上げたのは、具体的なケースがわかりやすいのであえて申し 上げたのですが、それをいまの先生のようなお考えで、主任研究者から排除してしまう と、例えば、それにプラス、4頁のいちばん下の6ポツですが、「専門家が少ない場合 の指定研究」と書いてあります。つまり、本来主任研究者である方でないと、どうして もわからないようなケースというのは、このような大学発のベンチャーのプロダクトを 実用化する場合に、必ず起きることで、そこを主任研究者から外してしまうと、次の5 頁の上を見ていただきたいのですが、ここの文言も非常に智恵が要ると思うのですが、 「必要性が高い研究については、利益相反問題が生じ得る研究者を完全に排除した場合、 研究が進まない可能性がある」というのはもちろんなのですが、より重要なことは、そ の方が外れてしまうと、患者の福利に反するようなスタディになってしまうようなケー スがあります。  そこを明確にしておかないと、つまりそのようなケースで、非常に希少な臨床研究が あった場合に、主任研究者が外れなくてもできるような一定のルールを作ることは、こ の厚生労働科学研究では非常に重要なことではないかと思うのですが、いかがでしょう か。 ○谷内委員 おっしゃるとおりです。専門性の高い領域というのはたくさんありまして、 これは外せない場合があるのです。  ただ、この厚生労働科学研究費というのは公的なものですので、そこがガイドライン を作るときの難しいところではないかと思うのです。公的なものをどのように定義する かになってくると思うのです。  ベンチャーをつくって稼ぐというのは、公的資金だと問題が出てくると思うのですが、 このように疾患の少ない場合が問題です。それは先生のおっしゃるように、専門家の少 ない領域に関しては特段の配慮が必要で、例えばそこの領域に関しては、指定研究のと ころで何らかの考え方をすると言っていましたので、そこでマネジメントをする、ある いは厚生労働省でマネジメントをしていただくことができるかどうかだと思います。 ○北地委員 人の参加だけでなくて、マテリアルの提供とか、知財になる前のデータの 提供も全部排除してしまうとか、いろいろと難しい問題はあります。  それから、仮にストックオプションを渡す側の論理からいくと、企業がストックオプ ションを渡すのは、何らかの貢献を期待しているわけですから、初めからそれを外すと いうことをわかっていて出さないと、渡してから外しますというのは、かなりカチンと くる話だと思います。ですから、組織的利益相反というのは難しいです。解決はすぐに はできないと思いますが、このように組織的利益相反があって難しいということを、い まの段階ではプリベールすることがこの委員会の目的ではないかという気がしていま す。 ○平井委員 組織における利益相反がいかに難しいかということなのですが、これは最 初の概念整理なのです。谷内委員が主任研究員を外すという話をしたと思うのですが、 私はそれは組織における利益相反の問題とは違うと思うのです。  組織における利益相反はどういうことかというのは、非常に砕けた言い方をすれば、 例えば大学が経済的利益を持っているから、その企業を優遇しているのではないかとか、 甘やかしているのではないかとか、端的に言えばそういうことなのです。  そもそも、いまのトータルの政策を考えると、大学に大学発ベンチャーという冠ベン チャー、これは産総研ベンチャーも、理研ベンチャーも全部そうですが、冠ベンチャー を認めて、非常に優遇している。それに対して、ライセンスをして、対価として、その ようにストックオプションをもらうこともあるし、ロイヤリティをもらうこともある。 さらには、ファンディングのための手当てをしているところもあります。直接はやらな いのですが、例えば東大はファンディングの一つの組織を持っていますし、産総研、理 研でも、同じようなものを持っています。要するに、みんなでベンチャーをちやほやし て、何とか頑張れとやっているところなのです。  これは言い方は非常に悪いですが、組織における利益相反の固まりなのです。ただ、 いまの現状の政策がそうなのです。そうしないと、ベンチャーがなかなか育たない、成 功しない。だから、いまは非常にオーバーにやっているというのが実情だと思います。  今後は、これがもう少し落ち着いたら、組織として、第3の使命がいかに社会貢献で あろうと、どうやったら公平、かつ適正にベンチャーを支援できるのか、あるいは組織 として、これは包括連携なども関係するのですが、大企業とお付き合いできるか、とい うのは、これからどんどん深めていかなければいけません。そのためのCOI委員会はど のようにつくって、どのように置くのか。それをこれから制度設計していくわけです。 だから、この問題は大きくて、また難しい深い問題です。  先ほど少し議論が入り込んだ、専門家が少ない場合の指定研究をどうするかとか、そ の辺とはあまり関係がないのです。こちらの問題はこちらの問題として、また別に議論 はできますし、レベルが若干違うのです。ここは分けたほうがいいと思います。 ○笹月委員長 私もそれを申し上げようと思ったのですが、末松委員が示された事例と いうのは、むしろ組織の利益相反が大きいと思うのです。ですから、それを主任研究者 を外すとか個人のレベルにすると、それは個人の利益相反の解決法であって、組織の利 益相反のマネジメントにはなっていないわけです。だから、それをどうするのか。  そうすると、それは大学そのものがベンチャーを支援して、企業がそこに絡んできて ということであれば、例えば治験ということになると、その大学で行う限りは、第三者 的には納得できないということになろうと思いますので、COIの委員会をその大学には もう任せることができない、第三者のCOIが必要なのではないかということに発展して いくと思いますので、それはそれとして、また議論しなければいけないことだと思いま す。 ○宮田委員 基本的に、私の理解の間違いかもしれませんが、COI委員会というのは、 大学とか独法によっては、総長などにリポートするような、一見所属しているような機 関に見えると思いますが、第三者の人たちが委員として並ぶことはマストですので、こ の場合のCOIの場合は、社会とどうコミュニケーションをするかというところがいちば ん重要なので、それを内部として捉えるべきかどうかというのも、少し議論をしておい たほうがいいと思います。最近は第三者委員会というのが流行になっており、何でも第 三者委員会がやればいいという考え方があると思うのですが、そのうち第四者委員会と いうのが要るようになるかもしれません。そういう構造で、いまの日本の学術機関の構 造が、チェック・アンド・バランスになっていなくて、それを社会的な説明責任を負う 機関が明確ではないというのが、いまの組織の利益相反の最大の問題なので、COI委員 会の構成というのを、しっかりとこのガイドラインで作ることによって、ある程度それ を解決する方策が出せるのではないかと思っているのです。 ○笹月委員長 一つのご提案だと思います。 ○北地委員 ご理解は間違っていないと思います。というのは、産学連携で初めにCOI を議論したときには、大学内の研究の成果の帰属の問題からいくと、どちらかというと 経済的な話だったのです。でも、いまは保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生、こ こからいくと、これを侵すと国民に被害を与えるかもしれない、このレベルのものと当 初の産学連携では、随分深さが違っているから、それでご理解はいいのだろうと思いま す。 ○平井委員 否定的なことを言って恐縮なのですが、宮田委員のご指摘ですが、いま現 在日本では、利益相反委員会と、IRBと別立てでやっているところはもちろんございま す。それから、阪大のようにIRBがCOIを兼ねているところもあります。あと別のパタ ーンとして、知財本部の外に利益相反委員会を置いている組織もあります。しかし、そ れができずに、知財本部の中に利益相反委員会を置いているところもあります。  理想を言うと、IRBとCOIは独立していたほうがいいし、当然知財本部も外にあった ほうがいいです。ところが、なかなかその状況に至れないところもありますし、一律に IRBとCOIを付けていけないかというと、それはそうとも言えないのです。阪大の方とも だいぶ議論をさせてもらいましたが、それはそれできちんと意味があるところもありま して、どれが正しいかというのは言えないのです。  ですから、制度設計については多少は機関の事情に任せるというのも必要か、それが 本当にベストかわかりませんが、そういうような気がします。 ○宮田委員 そのとおりだと思いますが、ただ、それをやったために文科省の利益相反 マネジメント体制が、大学で遅々として進まないこともあるので、まずそういう体制が ないと、厚生労働科学研究費は出さないということを、1行最初に出すべきだと私は思 っています。 ○笹月委員長 いわゆる組織としての利益相反の問題は、非常に難しいということがご 理解いただけたと思います。1番から、それぞれいろいろなものが飛びかってきました が、そのほかにご意見はいかがでしょうか。 ○北地委員 具体的に、1番の設問で、設例の下から3行目なのですが、「取締役とし ての成功報酬を得た」というのは、意味が不明確ですので、これはどのようなイメージ なのでしょうか。取締役に就任することが成功報酬ではないと思いますので。 ○坂本研究企画官 簡単に言えば金銭的利益を得た、ということを言いたいのです。 ○北地委員 「取締役としての」というのは少し曖昧な表現かと思います。 ○宮田委員 議論を整理したいのですが、まず、このガイドラインが出た場合は過去の 事例に当てはめるのですか、そうではなくて、来年の厚労科研費からやるのですか。 ○藤井厚生科学課長 役所の出すものですから、遡及をして適用するのは難しいのでは ないかと思います。こういう新たなものをお示しするときには、ある程度の周知期間を 設けまして、その周知期間が過ぎた後に適用開始をするというのが、一般的なものです から、いまの時点でのイメージとしては、そのような考え方を持っております。 ○宮田委員 そうすると、独法あるいは国立大学法人で、いま知的財産はほとんど機関 所属になります。この場合の個人所属の知財というものを、あえて取り上げた意図は何 ですか。 ○坂本研究企画官 想定として、いろいろなケースがあり得ますので、参考とした資料 等もあり、まず個人所属の場合の方が、利益相反についてはイメージしやすいというこ ともあって、事例(案)として書いているところがございます。  それと、現実の問題として特許は活きているわけですので、指針が出来ても遡及しな いとしても、今後の厚生労働科学研究において、個人所属の特許が絡むことは当然あり 得ると思っているのですが、そこは誤解でしょうか。 ○宮田委員 これはあまりにも極悪非道な例で、これは機関が悪いのではないかという 結論になってしまうのではないかと思うのです。 ○坂本研究企画官 わかりやす過ぎたのかもしれません。 ○平井委員 個人保有の特許ですが、これを議論するには二つあって、一つは機関所有 にしないで個人に落とすケースです。機関に十分な予算がない関係があって、半分以上 が個人に落ちるというのはかなりあります。  それからよくいうのは、発明者補償金です。それが入ってくるので、そういう意味で は、機関保有の特許であっても、常に個人の経済的利益が問題になると捉えることがあ ります。 ○谷内委員 個人の特許というのは、法人化前の特許にはかなりのものがあります。こ れはかなり事例としては多いし、隠れていると思います。法人化後だけでなく、法人化 前の特許というのは、結構臨床研究をたくさんやっていますので、これは相当事例が隠 れていると思います。 ○笹月委員長 事例の2、3の辺りで、何かご質問、コメントはございますか。4が、宮 田委員がおっしゃった、いわゆる企業からダイレクトではない、財団からの資金という ことですが、いかがでしょうか。 ○谷内委員 3番の事例に関して、「その他、共同研究を行っていた、受託研究を行っ ていた等の事例も考えられる」と言いますが、奨学寄附金の考え方がいいかどうかとい うことがありまして、製薬会社との密接な関係があるときの臨床研究のときに、奨学寄 附金ですべてやるというのは、問題が出る事例だと思うのです。  奨学寄附金というのは、基本的には、受け取る側と、こちら側が全く関係のない事例 になっていると思います。すべて奨学寄附金と、共同研究、受託研究を一緒にするとい うのは、私は間違っているのではないかと思いますし、米国では、奨学寄附金というの はなくて、このような事例は全部共同研究、あるいは受託研究の形でやられると思いま す。そういうときの研究費を受け取ることに関して、報告は受けていますが、それに関 して一切制限はないと伺っています。ですから、研究費をいただいてやる分に関しては 問題ないです。ただ、これは厚生労働科学研究費をいただいているという場合では問題 になってくると思います。  そこのところで、厚生労働科学研究費をいただいていなければ、私は米国の例を考え れば、問題のない事例だと考えています。ただ、厚生労働科学研究費をいただいている ということで、これに関しては相当な注意が必要だろうと思います。公的な研究費を用 いて、ある治療薬の効果、副作用をやるというのは相当な注意が必要だということで、 タミフルの事例に似ている例だと思います。50万円とか、500万円という基準が出たと 思うのですが、あの基準はこの例では活きてくるのでしょうか。例えば50万円のものに 関しては、50万円以上のものに関しては委員になれるけれども、意見を述べられない。 あるいは500万円のものに関しては一切外されるということで、私の理解では厚生労働 省で決めていると思ったのですが。逆に言うと、こういう事例に関しては、厚労科研費 のほうで基準を決めていただければ、何とか対応できるのではないかと思います。言っ ている意味がわからないでしょうか、厚労科研費の例に関しては、こういう事例に関し ては、今回の例では金額を決めたのではないかと私は理解していたのですが。 ○笹月委員長 まず、厚労省側からお願いします。 ○坂本研究企画官 研究費の方では、そのような金額を決めておりません。薬事の審議 会の方で、審議に参加する、参加しない等の暫定ルールを決めております。 ○北地委員 いまおっしゃったことは、奨学寄附金というのは建て前的には白だと取り 扱ってきたので、おっしゃることは非常によくわかります。奨学寄附金というのは、基 本的には紐付きではないという扱いなのです。ですから、対応案の下から6行目に、「奨 学寄附金の提供元について変更等がある場合(合併等の場合)」。これはいままでの我 々の考え方からしたら、紐付きでないもので、1回出してもうおわりだから、合併しよ うが何があろうが関係ないではないかということなのです。ここが共同研究とか、受託 研究であれば、私もすんなり読めるのですが、奨学寄附金になった途端、ここの合併等 の括弧が、ここまで言い切ってしまえるのかなという疑問はございます。 ○谷内委員 こういうものを奨学寄附金だけで行うというのは問題で、奨学寄附金をも らってもいいですけれども、可能な限り共同研究が正しいのではないかと思うのですが、 どうなのでしょうか。これは私たちの考え方で、間違っているかもしれませんが、この ように明確な関係があるものに関しては、可能な限り共同研究、あるいは受託研究でや っていただきたいという考え方を持っておりますが。 ○北地委員 企業が下手にそういう目的で出した場合、これは寄附金にはならないで交 際費になる可能性があるかもしれません。 ○谷内委員 これは紐は付けない形になっていると思いますね。 ○平井委員 この奨学寄附金というのは、金額が大きなケースがあると思うのです。し かも、毎年であって、当該J教授の研究室の運営に非常に重要な資金源となっている可 能性があると思うのです。それは否定できないし、それをある意味頭からいかんという わけにはいかないと思うのです。  これをどのように考えるかなのですが、この奨学寄附金を共同研究とか、スポンサー ドリサーチに振り替える、それは実際上は無理ではないかと思います。今回の場合は、 たまたま製薬企業がLを生産しているということで、非常に関係性が強くなってしまっ たのです。だから、こういう関係性が強いケースでは、アカウンタビリティを強化する という方向で、強い利益相反マネジメントを及ぼすということで、対処するしかないと 思います。  たぶん結論的には、もちろんそれは利益相反委員会の判断によりますが、このケース に関しては、J教授の当該研究に対する参加を見合わせていただくとか、あるいはその 役割を主導的なポジションから替わっていただくとか、そういうことはあるかもしれま せん。逆に、Lというリンケージがないケースであれば、利益相反マネジメントとして、 これは全く問題がないから進めていただくという判断をするのがいいのではないかと思 うのです。米国の事例をここであてはめると、実態が歪むような気がします。 ○北地委員 たぶんおっしゃっているのは、括弧書きが付いているから問題だと思うの です。つまり、奨学寄附金と、共同研究と、受託研究を並列に読ませて、たどっている 筋のお金が一緒であるというケースで書かれているので、そこが変で、奨学寄附金の問 題であったら奨学寄附金。でも、ここで言おうとしていることは、共同研究、受託研究 のお金の流れで、起こりやすいことですよね。 ○谷内委員 北地委員のおっしゃることと全く同じ意見で、私たちは、奨学寄附金と、 共同研究、受託研究を分けていただきたいという気持が非常に強いです。 ○笹月委員長 ただ、谷内委員もおっしゃったと思うのですが、アメリカには奨学寄附 金に相当するものはないのではないですか。というのは、奨学寄附金というのはいかに も日本的なもので、企業から見ますと、何も利益を期待せずに1億円出すというのは、 アメリカ的なドライなセンスでいうと普通は考えられませんよね。だから、これは奨学 寄附金で目的は何もない、何も紐は付いていません、だからいいのだという括りで、本 当にいいのかどうかというのは疑問が残ると思います。ご議論、ご検討をいただくテー マとして、残しておいた方が私はいいのではないかと思います。 ○末松委員 各論的なことですが、3番のもので、先ほどの受託研究とか、共同研究の ところで、是非項目を分けていただきたいというのは、私もそのとおりです。それに関 連してですが、特定の製薬企業がLというものをつくったり、Mというものをつくった り、Nというものをつくったりしていると、要するに厚労科研でもらっているお金で、L という薬の研究をやっていて、同じ製薬企業のつくっている別の薬で受託研究、これは リターンを明確にして、このお金はこれに対して使っているという、それをもらってい ることは利益相反状態になるのかどうかに関しては、どういう考え方でいけばいいので しょうか。  そういうケースも、大きな製薬会社ですといろいろなケースがあって、実際にあるわ けです。その辺はどのように考えたらいいのでしょうか。 ○宮田委員 それはなります。それは当然利益相反状態です。それは説明できればいい わけです、どうやってファイヤーウォールをつくるかを説明できて、利益相反マネジメ ント委員会が第三者も含めて、これなら明確ですねと言えば。 ○末松委員 明確な切分けができていて、それを申告する側もきちんと申告していて、 それをディスクロージャーした情報に基づいて切分けができているとコミッティが判断 すれば、クリアできるという考え方でいいわけですか。 ○宮田委員 はい。あるいはぐずぐずですねと言われて、やめた方がいいと言われる可 能性もあります。 ○末松委員 そうですね。そういうことがあるので、是非分けていただきたいと思いま す。奨学寄附金等とは、根本的に異なる性質のものです。 ○平井委員 これは小さなことなのですが、4ポツの財団のケースですが、対応案のと ころに「財団の資金」と書いてあるのです。いま気がついたのですが、財団の資本金の ような寄附行為というもので、最初にお金がボンと入るのですが、それを指しているの か、あるいは財団形成後に財団が得ているお金を指しているのか、これはどちらなので しょうか。 ○坂本研究企画官 ここは財団からの資金という意味で書いております。財団から受け 取ったお金が、先ほど宮田委員がおっしゃられたような色が着いているような場合とい う意味合いで書いています。 ○岩田委員 この辺になると、私は全然素人なのでわからないので、すでに議論があっ たのかもしれないのですが、この具体的な事例の中に、例えば医学部の教授のどなたか が研究資金をもらっていて、それが他の助手の方、助教授の方が何か研究をしようと思 ったときに、そこで利益相反になるのかどうかということは、あまり問題にならないの でしょうか。  つまり、主任研究員自身はお金をもらっていないけれども、仲間とか自分のボスに当 たる人がお金をもらっていることは、実際に問題になったり、事例の中で、どの程度の 頻度があるかは全然わからないですが、そういうのが重要であるのかどうか、あるのだ としたら想定事例の中に、そういうものがあったらいいのかなと思いました。 ○谷内委員 そういう事例は、例えば奨学寄附金では日常茶飯事に起きております。自 分の教授が持っていて、下の人がやることはよくあります。IRBに来たときに教授がお 出でにならないで、下の人が来られると、全く質問をしてもわからないのです。教授は 認識しているということはよくあることで、医系の委員だとみんなわかる事例だと思う のですが、そういう面で非常に難しいです。  もう一つそういう事例で困るというのは、本当にベンチャーのときで、教授がベンチ ャーをつくっていて下の人にやらせる。これはもう非常に困る事例だと思います。その ような事例が、どのようになっているかは大学の中で見ていればよくわかりますが、外 から見るとわかりづらい場合があります。 ○岩田委員 いまのような事例は、具体的に主任研究者であれば、ルールとして開示し なければいけないというのがあると思うのですが、グループの中にも開示のルールはあ るのですか。 ○谷内委員 東北大学は全部オープンにしていますので、それはできると思います。た だ、今回の厚労科研でどうするかというのは、またいろいろと議論が分かれるところだ と思います。分担研究者まで、すべてオープンにしないとわからないです。  分担研究者だけでも足りるかどうかというのがあって、ベンチャーをつくっている場 合は家族が絡んできますので、家族まで含めるというのが文科省のガイドラインになっ ています。特にベンチャーとか重大なものに関しては、家族までオープンにする必要が あると我々も考えていますし、多くのガイドラインはそのような方向になりつつあるの ではないでしょうか。 ○宮田委員 実際に未公開の株のベンチャーで、奥様とか、お子さんに株を所有させて いる例がほとんどなので、いま言ったようなことはマストかもしれません。 ○平井委員 私も利益相反のアドバイザーをやっていて、非常によく見かけるケースで、 研究室の複数名の方がグループとしてベンチャーにかかわるとか、企業との研究にかか わるというのは、ままあることだと思うのです。  今回の厚労科研費のスキームによれば、厚労科研費を受けた先生が、きちんと組織の 利益相反のマネジメントを受けるとすると、組織がしっかりやれば、同じ基準で組織の 研究者すべてに対して、自己申告をすることになると思うのです。そうであれば、その 組織はその研究者の研究室の中の状況を把握できると思います。  ですから、そこがきちんと機能すれば、適切なマネジメントが行われて、これは一体 的に動いているとか、あるいはこの二人は一人として扱ったほうがいいのではないかと か、その辺は徹してなされるのではないかと思うのです。そこはすべて組織に期待した いという気がしています。 ○木下委員 この共同研究、受託研究、奨学寄附金というのは、どこの大学にとっても、 日常的なことです。もちろん教授名で大きな額をもらっています。教授は、資格のある 医局員へはとにかく科研費を取れるように、申請書を書かせます。そして、採託された ら具体的なマネジメントはどのようになるのでしょうか。額が問題なのか、関係する企 業から奨学金をもらっていればやめろという意味なのか、ある程度の額ならいいのか。 主任研究員ではなくて、協力研究員の立場での参加はOKなのか、等々。検討というのは、 どのように検討して、どうすべきだということまで明確にしていただかなければわかり ません。もちろん利益相反のマネジメントは大事だとわかっています。例えばベンチャ ーとか、非常に特殊な大学等では、当然大事な問題だと思いますが、一般の大学では、 奨学寄附金は日本独特であるとは言え、現実にありますので、例えば額としてはいくら 以上なら問題になるのでしょうか。  教授は研究費をいかに取ってくるかということが、一つの大事な役割になっています。 そのような状況の中での第3の設問というのは、我々にとっては非常に大事なことであ りますので、もう少し現実的な対応を是非お考えいただきたいと思うのです。 ○谷内委員 文部科学省のガイドラインでは200万円が基準になっていて、一般的に100 万円よりも1つ上のところでやっているということです。 ○木下委員 それは当事者という意味ですか。 ○谷内委員 これはあくまでもいけないということではなくて、200万円から申告しな さいということで、100万円をいただいている場合に関しては、ほとんどフリーパスで IRBにかかっていますので、金額の基準としては、いま文科省のガイドラインでは200 万円となっています。そのプロダクトが関係して200万円を超える額をいただいて臨床 研究に入る場合、そういうときはマネジメント委員会の審議対象です。いまのところ私 の大学ではマネジメントだけをして、相当厳しい意見は出ていますが、一応認める方向 でやらせています。問題はありますけれども。 ○木下委員 それは各大学によって基準は変えてもいいということですか。 ○谷内委員 国立大学だと、文科省のガイドラインにみんな沿っているのではないでし ょうか。 ○笹月委員長 寄附講座を通じた産学連携、専門家の少ない指定研究、これも議論しま したが、それからこの間審議官から提案された、物品の購入、物品購入と機関の利益が ありますが、これらの問題についてご意見がございましたらいただきたいと思います。 ○北地委員 前半の問題点、宮田委員のお言葉を借りると極悪非道なケースの後ろに、 わりと説明的に長い文章が付いているところがありまして、これは後ろに持ってきたほ うがいいのではないでしょうか。より難しいケースによりたくさん説明して、シンプル なケースはシンプルにと。  先ほど木下委員がおっしゃったように、非常にマジョリティなトランズアクションで、 基準を明確化することが求められるようなところは、そういうことを早く決めたほうが いいと、そういう配置になさったほうがいいような気がします。 ○笹月委員長 時間も迫ってきましたので、資料1-6、参考資料について、ご説明をい ただいて、議論をしたいと思います。 ○西山技術総括審議官 先ほど私の名前を出していただいたので、7ですが、全く私は 素人なのですが、これは厚生労働科学研究費ではなくて、企業からの研究であれば利益 相反問題は生じないと考えていいのですか。ある医療機関の医者が、この材料では駄目 だと。企業の人と相談しながら、企業からだけお金をもらって開発したと、そういう問 題というのは利益相反問題とは関係ないのですか。 ○笹月委員長 この委員会では厚労科研費についてという傘がありますので、その指針 の外になるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。実際の問題としては、ま た別で議論しなければいけないと思いますが。 ○谷内委員 7番のケースであれば、私たちのところはマネジメントの対象になると考 えています。これは厚生労働科学研究費をいただいているし、しかもある会社の製品を 少し改良して、製品をよくすると。 ○笹月委員長 それはいいのですが。 ○西山技術総括審議官 厚労科研費をもらっていない場合です。 ○笹月委員長 審議官がおっしゃったのは、厚労科研費はなしで企業だけからのという ことです。 ○谷内委員 企業だけからお金や物が来ているという場合、そのときも、私はマネジメ ントの対象になると考えています。特に、その機器がどれだけの値段によるかに関係し てくると思います。  例えばそれが1,000万円のものか、2,000万円のものか、あるいは50万円とか20万円と いうことになってくると、また違ってくるでしょうし、これはマネジメントすべきでは ないかなと思います。 ○笹月委員長 ただ、私が申しましたように、この委員会は厚生労働科学研究における 利益相反に関する云々ということなので、もし指針を作るとしたら、全く厚生労働科研 費が関与しないものについて、どう取り扱うのかということが、別の問題としてあると 思います。 ○宮田委員 谷内委員、一つだけ質問させてください。いま厚生科研費がなくてもマネ ジメントすべきだということでしたが、それはZ部長がA社から、他の何らかの利益的 な供与を受けていて、こういうような研究をしたかどうかをチェックしようということ ですか。 ○谷内委員 例えば、これはものをただでもらっていますよね、Bの改良試作品ですが、 これはお金を払っていないのではないかと思うのです。これは無償の物品供与になるの ではないでしょうか。その機器が、10万円とか、20万円だったらいいのかなと思います が、これが1,000万円とか、2,000万円の機器だった場合に、どう周囲から見られるの かという問題はあると思うのです。マネジメントをするか、あるいは厳密にこれが共同 研究契約等を結んでいるか確認をして、きちんと企業との関連が明確に大学当局にわか っていればいいと思いますが。禁止はする必要はないですが、マネジメントは必要だと 思います。その製品が、将来非常に大きく市場を形成する場合もありますので、マネジ メントはしていく必要があると思います。 ○笹月委員長 資料1-6、参考資料についてのご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官 資料1-6と参考資料1について、簡単にご説明いたします。資料1-6 は前回までの議論を踏まえまして、「厚生労働科学研究における利益相反に関する指針 に盛り込むべき事項(案)」として、書き出したものです。  1.として、研究を実施する機関において、利益相反マネージメントを実施するように 求めるということです。臨床研究を実施する場合には、「臨床研究の利益相反ポリシー 策定に関するガイドライン」に従って、各機関において、利益相反ポリシーを策定し、 臨床研究利益相反委員会の設置等、利益相反マネージメント体制の構築を求めるという 事項が要るであろうと。ただし、各機関の準備等を考慮すると、猶予期間は必要という ご議論があったということ、それから、指定型の研究等については、さらに検討する必 要があるということを※で書いています。  2.としましては、厚生労働省側が、研究を実施する各機関において、必要な場合には、 オンサイトレビューを実施する旨を示す。「オンサイトレビュー」というのは、議論の ときに出た用語をそのまま使っていますが、そちらの機関に行って確認をするというよ うな趣旨で、ここでは使っています。  3.としまして、情報の公開・透明性の確保を基本として、自己申告による透明性の確 保、及び研究者と組織の説明責任を示すということ、それから、個人情報の保護に留意 しつつ、情報はできるだけ公開する趣旨を示す必要があろうということで、書いており ます。  4.として、利益相反問題の対象となる行為等については、無償での機材や薬剤の提供 等も含まれることを明確にするということです。  5.としまして、明確に避けるべき事例等を示す。何等かの形で示すとして、以下は例 示の案です。これはあくまでも案でペーパー自体が案でございますが、ここはさらに例 示の案としております。  1)として、研究の対象となる医薬品等が明確に特定されている場合、その医薬品等の 製造会社等からの一定以上の寄付や便宜供与を受けている研究者については、利益相反 が明確であることから、当該研究に関して、主任研究者として厚生労働科学研究費を受 けるべきではない(研究者が少ない分野で、当該研究者が余人をもって代え難い場合を 除くが、その場合であっても開示は必要)というものです。  2)として、ベンチャー企業等の企業の代表取締役でもある大学教員等は、利益相反が 明確であることから、当該ベンチャー企業等の製品の臨床試験等の主任研究者として厚 生労働科学研究費を受けるべきではないということを、例示の案として示しています。  6.として、データ保存と遡及性を確保するため、関係書類の保存期間を明確にすると いうことです。保存期間の案としては、領収書等の保存期間が5年間という規程があり ますので、5年間ということを※で書いています。  7.といたしまして、外部資金等(寄付金、便宜供与、株式、無償での機材や薬剤の提 供等)に関する状況が大きく変化した場合には、研究を実施する各機関の臨床研究利益 相反委員会に報告すべきことなどを示すということです。  8.として、研究者が帰属する組織の利益相反問題について、厚生労働省側に申告する ように示すということで、こちらはやり方についてはまだ議論があるところですが、触 れないわけにはいかないだろうという議論がありましたので、このような形で書いてい ます。資料1-6はそのような事項があるのではないかという整理をした資料です。  参考資料1については、これまでも利益相反に関して被験者の保護について少しご議 論がありまして、臨床研究に関する倫理指針の方で、被験者保護についての規程もあり ますので、そういったところの抜き出しをしています。研究者の責務等で、「被験者の 生命、健康、プライバシー及び尊厳を守ることは、臨床研究に携わる研究者等の責務で ある」といった規程、そういった関連部分を抜粋したものを参考資料としております。 ○笹月委員長 参考資料は、臨床研究に関する倫理指針の中での被験者の保護というこ とですが、資料1-6が、これまで議論した中から事務局で抜き出していただいた指針に 盛り込むべき項目、議論して明確に記載すべき項目ということですが、これらについて 何かありますか。 ○望月委員 教えていただきたいのですが、各機関において利益相反ポリシーを策定す る委員会を設置するというときなのですが、先ほどの資料1-4の議論の中で、第三者の COIということで話が出ました。それから、いちばん最初のアメリカのものでは、これ は非公開の秘密の委員会であるという話も出たのですが、この指針で求めるのは、どの 程度の第三者性のものなのでしょうか。 ○谷内委員 私たちの経験ですと、利益相反マネジメント委員会というのは第三者性は 要らないのではないかと思います。それはあくまでもクローズドの委員会で、私たちの 経験からすると、いわゆる常勤の職員で、その中でやっていた事業に関して、後でお配 りするような、公開するような形の委員会を別途でつくっておいて、そこでは個人名や 金額、企業名を全部消して開示する形にするのです。そのように別に委員会を設けて公 開していくということで、決定する委員会はすべてクローズドでいいのではないかと考 えています。 ○笹月委員長 いま「公開する別の委員会」とおっしゃったのは、COIのマネジメント の委員会があったとしたら、それに付属するものなのか、いわゆるIRBでよろしいので すか。 ○谷内委員 私たちは年に3回、アドバイザリーボードに公開しております。そういう 部外者の方々に、マネジメントをこのような形でしているという委員会を別途設けて、 そこで公開しておりますので、それで公開性は担保していると考えています。 ○笹月委員長 そうすると、COIのマネジメントの委員会があれば、それに付随してそ ういうものが必要だとおっしゃっているわけですか。 ○谷内委員 私たちはアドバイザリー・ボードと言っていますが、そこの委員会で、い ままで決定した事項に関して、個人名や金額を全部削って、そこで公開しているのです。 ○笹月委員長 確かにIRBで代行することはできますか。 ○谷内委員 できますかね、ただ、IRBというのも基本的には大学の組織の中なので。 ○笹月委員長 そこには学外の第三者の委員が入っていますよね。 ○谷内委員 それはIRBでも代理できますね。IRBの専門性と、利益相反の専門性とい うのは、まだ日本では十分にできていませんので、やはり大きな組織はアドバイザリー ・ボードは持ったほうがいいのではないかと思いますし、産総研もアドバイザリー・ボ ードはあるのではないでしょうか、小さな組織は無理だと思いますが、大学のレベルが 大きなところ、あるいは産総研レベルになってくると、アドバイザリー・ボードを持っ て、もう少し中立性を持った委員会をつくっておいたほうがベターかなと私たちは思っ ています。大変ですが、これはあくまでも付随的なものです。 ○笹月委員長 私の感じでは、先ほども少し議論しましたが、COIのマネジメント委員 会というのは、IRBに臨床研究の申請があって、もし何かそこでCOIの問題があるとす れば、COIの委員会に投げる。その結果は当然IRBに報告されるというステップがある わけですので、IRBはその結果をもらうわけです。しかも、IRBは物事を公表しなければ いけないということで、いまおっしゃった個人名、金額、もちろん伏せるべきところは 伏せて、IRBがそれを公表すれば、それで済むのではないかと思ったのですが、そうは いきませんか。 ○谷内委員 IRBの質によるかもしれませんが、私たちはIRBにそこまで負わせるのは 大変かと思いますが、できなくはないかもしれません。 ○北地委員 すべてのCOIを第三者に入れる必要はないと思うのですが、冒頭に宮田委 員がおっしゃったことに賛成で、生命にかかわる問題の利益相反のところですから、場 合によってはそこは第三者を入れたほうがいい委員会もあるかもしれないと思うので す。  例えば奨学寄附金は置いておいても、それが例えば受託研究であるとか、あるいは資 料1-6の5.の研究者が少ない分野で余人をもって代えがたい場合、このような場合に は、第三者に一緒に入ってもらって考えることがあってもいいのかとは思います。 ○平井委員 私も北地委員と同意見なのですが、利益相反委員会には学外、組織外の方 が入っていたほうがいいのではないかと思うのです。クローズドにすることは結構だと 思うのですが、その理由は、利益相反というのはアカウンタビリティの問題ですので、 患者や国民がどう思うかということだと思うのです。  その場合に、すべて学内の方で固めた利益相反委員会があって、仮にその結果をボー ド、あるいは外部に開示するとしても、その判断自体に疑義がはさまれる可能性がある と思うのです。そういうときに、これは学内の専門家、加えて外部の専門家を交えてや りましたというほうが、アカウンタビリティとしては高いのではないかという気がしま す。  谷内委員のおっしゃった産総研の利益相反のシステムの中で、確かにアドバイザリー ・ボードというのが非常に大きな機能を果たしているのですが、産総研の場合はアドバ イザリー・ボードという名前の利益相反委員会なのです。その上の利益相反委員会とい うのは、極めて組織のトップの方が集まっていまして、それにオーソリティを与えると いうか、最終的なアプルーバルを与えるという感じなのです。だから、ボードは利益相 反委員会だと考えたほうがいいのではないかと思っています。 ○宮田委員 仲間うちだけで審議したという形はまずいと思います。ただ、プライバシ ーが関わっていますので、事務局としてあらかじめ収集するような資料を内部の人たち がきちんと集めることは、研究者が申告しやすい雰囲気をつくるということで、私はそ れはいいと思うのですが、最終的にこれが利益相反をしているかしていないかというの は、第三者が加わった判断が必要だと思います。 ○福井委員 私も、実際のところ外部の人が入らないと、このようなCOIの検討という のは、それぞれの組織で難しいのではないかと思うのですが、最初の資料1-1にありま したように、アメリカでは少なくともスタッフの充実が謳われています。また、日本で こういうことをやらなければ駄目だとは思うのですが、人も、お金も付かなくて、やれ という話です。やる必要は感じるのですが、全然それをサポートするものがなくて、非 常に不合理性も感じるところです。 ○木下委員 似たようなことだと思うのですが、これから産学共同とか、東京大学もそ うでしょうし、すべてそういった方向性というのが一つの流れだと思うのです。特にそ ういった意味では、寄附講座というのは、我々大学にとりましては極めて大きな課題で あり、いかに寄附講座を取ってくるか、そういう流れが明らかにあります。  そういう視点で、ここに書いてある対応策を見ていたのですが、これからの研究の流 れ、産学共同は大きな問題であるだけに、これを推し進めていく上で、寄附講座に関し てマネジメントはどうあるべきかという、本当に具体的に考えてほしいと思います。こ こに書いてあることも一つの案ではあると思うのですが、はたして外部委員を入れてや らなければいけないほど、我々は信用されていないのか。確かに対外的にはいいのです が、実はそのような仕組みはなくとも、手加減なんか許される時代ではないし、性悪説 に見られて、厳しくしていくという印象が強くあります。従って、そのような国の流れ、 研究の流れを止めるようでない形の具体的な対応策を考えていただきたいと思います。 マネージメントが大事なのはよくわかりましたが、ここに書いてある対応策だけでは、 私どもとしてはこんなものでいいのかなという思いがありますので、是非ご検討願いた いと思います。 ○笹月委員長 産官学共同研究を推進するという、国策だと思いますし、それがスムー スに行われるように、この指針を作りますということだろうと思います。ですから、お っしゃるように性悪説で、これも駄目、あれも駄目というのではなくて、国民が納得で きる形で推進できるようにどうするかという工夫のしどころだと思います。 ○谷内委員 最後に福井先生が言っておられましたが、原資がないということですが、 厚生科学研究費が出ている場合というのは間接経費が出ています。最近科学研究費は、 基盤研究Cまで間接経費が付いています。これは大学あるいは受け取る組織のほうで対 応してほしいということで、間接経費が付いているわけです。  間接経費の考え方というのは、マネージメントをしなさいという考え方が少し入って います。それですので、もし可能であれば、厚生労働科学研究費、私の理解ですと3,000 万円以上でないと間接経費は付いていないと思うので、それを少し下げていただくか、 あるいは臨床研究をやるものに関しては間接経費を付けてくれるとか、それを配慮して いただければ、福井先生の話に対しても対応できていくのではないかと私は思います。 間接経費の問題も考えていただきたいと思います。 ○笹月委員長 重要なご提言で、議論するに値するテーマだと思います。 ○岩田委員 私は外部委員が入ることは、必ずしも医療の専門家を信頼していないこと にはならないと思っていて、私自身、ある大学の倫理委員会の委員を少しやったことが あるのですが、私の印象は、私などはいなくていいと思ったのです。それは先ほど木下 先生が言われたように、むしろ同僚の先生方が非常に厳しく、私たちが何も言わなくて いいぐらい徹底的に、科学的に同僚を批判するということがあったのです。  それを私が見て思ったのは、これは内部だけでやっていると、そういうことをきちん とやっているというのが外に見えてこないので、むしろ私なんかがいて、私はあまり伝 える役割はできていないのですが、そういう意味では、外の人たちに、どれだけ一生懸 命やっているのかを見せる機会に、外部の委員は活躍するのではないかと思うのです。 ここでも議論になったと思うのですが、IRBにせよ、利益相反委員会にせよ、外部の人 が入ることによって、中身をきちんとできるということだけではなくて、外とのコミュ ニケーションをうまくつなげる役割になるのではないかと思うのです。そういう意味で、 必ずしも外から入る人たちも、そんなに批判的にというか、医師とか、研究者を悪く見 ているのではないことは、認識していただけるとありがたいと思うのです。  もう一つは、先ほどの文科省の臨床研究における利益相反のポリシーのところでも、 確かに外部委員は入ったほうがいいですねということは書かれていると思うのですが、 実際問題、もしかするとIRBと利益相反委員会が、アメリカのように完全に分かれなけ ればいけないとは限らないです。そうすると、規模の小さなところではIRBが利益相反 委員会を兼ねるような形にしておけば、そこには外部委員が何らかの形で入っているの で、そんなに大規模にいろいろな委員会をつくらなくても、可能なのかもしれませんね。 ○谷内委員 確かにそうなのですが、例えば1.の事例は非常に難しいものですが、こ ういうものをやるときにIRBだけでは大変です。なぜかというと、これは複雑な事例で、 しかも長い年度にわたって利益相反が関係してくるということで、こういうものを一回 のIRBだけで審議するのは非常に難しいのです。  そういう面で、そういうときにはIRB以外にCOIマネジメント委員会をつくらないの であれば、人事担当部門がきちんと確認する、あるいは産学連携本部にやっていただく 形にしないと、1番の事例に関しては対応できないと思いますし、我々のところでも実 際にそうでございます。 ○末松委員 資料1-6について、二点伺いたいことがあります。4.に「無償での機材や 薬剤の提供等も含まれることを明確にする」とあります。特定の薬剤が欧米のEBMで、 最初に有用だと認定されたものが、有害事象が出てきて、仮にそれが日本でひょっとし たら有益だったものが、害があるのではないか、そこを調べるときに、この薬剤の提供 を無償でやってもらうというのは、悪いことではないと思うのですが。ケース・バイ・ ケース。こういうものは一回文書を作ってしまうと、無償でもらうことが全部アウトに なってしまいます。人種によって薬の効き方の問題が議論される。欧米のEBMをそのま ま我々が受け入れていいのかというのは、日本を考えた場合に非常に重要な問題なので す。その辺についてはいかがなのかということです。 ○谷内委員 私たちのところでは、無償の機材の提供、薬剤の提供に関してマネジメン トはしていますが、禁止はしていません。あくまでもマネジメントをする必要があると いうことだけであって、禁止することではないと思うのです。 ○末松委員 つまり、何を申し上げたいかというと、利益相反問題はここの委員の先生 方はよくおわかりだと思うのですが、平井委員がいろいろなワークショップで、利益相 反というのは状態であって罪悪ではありませんと、百回でも千回でも、言えば言うほど 罪悪に聞こえてくるのです。  そういう背景があるので、こういうものを慎重に検討して、できるかできないかとい うことを、コミッティできちんと議論できるような文脈にしていただきたいというのが、 私の意図です。 ○平井委員 私はこの「無償での」という部分は、本当は契約でやるべきだと思うので す。実際にあるところで遭遇した例で、無償でものを渡して、研究者に使ってもらって、 その評価結果を企業の方がもらっていくのです。受託研究であるべきものが、無償の、 契約のないケースでやられているのは、非常によくないと思うのです。  だから、これはおっしゃるようなことはいいことなのですが、契約を締結して、契約 に基づいてやってもらいたいというのが、大原則ではないかと思います。 ○笹月委員長 大事なご指摘だと思います。 ○宮田委員 ワーディングに気をつけなければいけない。利益相反マネジメントとか、 利益相反問題とか、利益相反と書いてあるので、これがいま言った問題の諸悪の根源な のです。「利益相反問題」という言い方は絶対にしてはいけなくて、「利益相反」もし くは「利益相反マネジメント」という形でワーディングを統一しないと、そこに勧善懲 悪というものが忍び込んでいます。それを徹底的に排除して、利益相反はよくある問題 なのだと、その代わりそれはアカウンタビリティの問題であることを啓蒙することが、 実はいちばん重要な気がします。 ○笹月委員長 時間になりました。今日はたくさんのご意見をいただいて、いろいろな 問題が浮き彫りになりましたので、また事務局に整理していただいて、次回以降の検討 に備えたいと思います。事務局から何かございますか。 ○坂本研究企画官 次回の開催の件ですが、すでに日程調整させていただいております ので、次回は9月3日(月)の午後5時から開催予定です。正式な案内につきましては、 後日送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。 ○笹月委員長 お忙しいところ、貴重なご意見をいただきまして大変ありがとうござい ました。                                                                        ―了―     【問い合わせ先】   厚生労働省大臣官房厚生科学課   担当:情報企画係(内線3808)   電話:(代表)03-5253-1111    (直通)03-3595-2171 - 1 -