07/07/24 第37回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録 第37回 労働政策審議会職業能力開発分科会 日時 平成19年7月24日(火)10:30〜 場所 厚生労働省省議室 ○森岡総務課長 おはようございます。定刻になりましたので、「第37回労働政策審議 会職業能力開発分科会」を開催いたします。最初に、労働政策審議会の委員は4月が任 期切れで、改選がありました。これに伴い本分科会も委員の改選が行われました。今回 は委員改選後の初めての分科会ですので、分科会長選出までの間、私が議事進行役を務 めさせていただきます。  今回の委員の改選について、改選後の名簿はお手元に配付しておりますが、新たに委 員になられた方をご紹介させていただきます。使用者代表委員は日本経済団体連合会川 本裕康様。 ○川本委員 川本です。よろしくお願いいたします。 ○森岡総務課長 今回ご欠席ですが、株式会社日立製作所執行役常務大野健二様にご就 任いただいております。なお、公益代表委員、労働者代表委員は変更がありません。今 回、所用により、大野健二委員、玄田有史委員、中村紀子委員は欠席です。また、厚生 労働省の事務局については、前回の分科会のあと、吉本明子育成支援課長、星直幸実習 併用職業訓練推進室長が新たに就任しておりますので、ご承知おきください。  事務局から代表して、奥田からご挨拶申し上げます。 ○奥田職業能力開発局長 皆さん、おはようございます。いま、司会からお話しました ように、今日の審議会は委員改選後初めてです。新しく委員になっていただきました皆 様方、大変ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。また、引き続き の方も、能開行政課題山積ですので、どうぞよろしくご審議のほどお願いいたします。  今日の審議会は、諮問案件が1件、報告案件が5件です。諮問案件は8月4日に施行 ですので、この時期に開催し、皆様方にご意見をいただきたいということで諮問したわ けです。また、報告案件5件は、前回の審議会以降、いろいろな研究会の報告とか、い ろいろなものをまとめましたので、それを皆様方にご報告申し上げ、また、この報告は 来年度の事業についてもつながるように、いろいろな事業をやってきましたので、今日 の報告のあと、また皆様方からいろいろなご意見をいただければと思っておりますので、 どうぞよろしくお願いいたします。 ○森岡総務課長 当分科会の分科会長の選出についてご説明させていただきます。お手 元の参考資料の労働政策審議会令第6条第6項に規定されているとおり、「分科会長は分 科会に属する公益を代表する労働政策審議会の委員のうちから選出すること」とされて おります。本分科会の公益代表のうち本審委員でいらっしゃいますのは、今野委員のみ ですので、今野委員に分科会長にご就任いただくことになります。よろしいでしょうか。 (異議なし) ○森岡総務課長 よろしくお願いいたします。 ○今野分科会長 議題に移ります。本日は諮問案件1件と報告案件5件の合計6件です。 最初の議題は、「『雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律の施行期日 を定める政令案要綱』等について」です。これについて、事務局から説明をお願いしま す。 ○吉本育成支援課長 能力開発局の吉本です。よろしくお願いします。お手元の資料1-1 から1-4に基づいてご説明します。今回諮問いたしますのは、1枚目にありますように、 7月20日付けで労働政策審議会会長宛てになされている諮問文がありますが、そこに表 記されている政令案のほかに、今回の法改正に伴い政省令等の改正があります。それを まとめて諮問する形になっております。本日この分科会にお諮りするのは、次の頁にあ りますが、法改正に伴う雇用保険法施行規則の一部改正の中のキャリア形成促進助成金 制度の改正にかかる部分です。そのほかの部分は雇用安定分科会でご審議をいただいて おります。  今回お諮りする内容は資料1-2をご覧いただきたいと思います。キャリア形成促進助 成金は、現行制度を左に書いてありますが、これは3月のこの分科会でも今年度のもの をお諮りして、こういう形に現在実施していますが、4種類あります。職業能力開発計 画、事業主が作成するものに基づいて従業員に職業訓練等を受けさせた場合、それに要 する費用の一部を助成する制度です。その目的別に訓練等支援給付金、職業能力評価推 進給付金、地域人材高度化能力開発助成金、中小企業雇用創出等能力開発助成金があっ て、今回の関係にかかる部分は3つ目の地域の助成金の部分です。  その内容についてご説明する前に、若干、その地域法の改正の内容について資料1-4 を付けています。これは法改正により、すでにこういった見直しがなされているわけで す。雇用情勢全体がよくなる中で、なお地域差が残っているので、これを是正すること で、特に雇用情勢が悪い地域、また雇用創造に向けた意欲が高い地域に支援を重点化し ていこうというのがこの見直しの大きな考え方です。現行は、左にありますように4つ の地域がありますが、それを右にありますように、雇用情勢が特に悪い地域(雇用開発 促進地域)、また雇用創造に向けた意欲の高い地域(自発雇用創造地域)の2つに再編す るということです。  今回のキャリア形成助成金の改正にかかわるものは、この雇用開発促進地域のほうで、 こうした地域の中に、下にありますように、所在する事業主が以下のような措置を講じ る時に助成金を支給するものの中の一つがキャリア形成助成金です。  そこで改めて資料1-2の新旧対照表をご覧いただくと、これまでは、左にありますよ うに、地域法に規定する能力開発就職促進地域、高度技能活用雇用安定地域に所在する 事業主を対象として、訓練に要した費用の一部を助成する形でやっていましたが、今回、 いま申し上げました地域法の見直しによって、地域法に新たに規定された雇用開発促進 地域に所在する事業主を対象とし、同じく訓練に要した費用の一部を助成するといった 形に変えるものです。地域法に基づく、特に支援の必要な地域における事業主が訓練を 行った場合の費用を助成する意味で、いままでのものを引き継いでいます。以上です。 ○今野分科会長 ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたら、お願いしま す。よろしいでしょうか。それでは、当分科会としては、「雇用対策法及び地域雇用開発 促進法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令案要綱」等については、概ね妥当 と認める旨の報告を、私から労働政策審議会会長宛てに行うこととしたいと考えていま すが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○今野分科会長 ありがとうございました。それでは、事務局から報告文の案をお配り ください。それでは、案文を読んでください。 ○吉本育成支援課長 平成19年7月24日。労働政策審議会会長菅野和夫殿。職業能力 開発分科会分科会長今野浩一郎。「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する 法律の施行期日を定める政令案要綱」等について。平成19年7月20日付け厚生労働省 発職第0720002号をもって、労働政策審議会に諮問のあった標記については、本分科会 は、下記の通り報告する。記、「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法 律の施行期日を定める政令案要綱」等について、厚生労働省案は概ね妥当と認める。以 上です。 ○今野分科会長 よろしいですか。ありがとうございました。それでは、このように報 告をさせていただきます。  次は報告案件が続きます。まず、「研修・技能実習制度研究会中間報告」です。これは、 厚生労働省が研修・技能実習制度研究会を設置して、制度の見直しの方向について取り まとめた中間報告として公表したものです。事務局から説明をいただけますか。 ○藤枝外国人研修推進室長 外国人研修推進室長です。よろしくお願いします。資料2-1、 2-2をご覧ください。いま分科会長からお話がありましたように、外国人の研修・技能 実習制度について、いま政府内で見直しを進めています。厚生労働省においても、昨年 10月に外国人研修・技能実習制度研究会で、分科会長にも座長になっていただくなど先 生方にもご協力いただいて研究を進め、去る5月に中間報告をまとめております。その 内容をご説明させていただきます。  中間報告の内容に入る前に、この制度の概況を簡単にご説明させていただきます。資 料2-2の中間報告本体の2頁を開けていただくと、この制度の概要を簡単に絵で描いた ものです。この外国人研修・技能実習制度は平成5年に、それまでの研修制度をより拡 充する形で、開発途上国等の人づくりに協力するというスキームとしてスタートしてい ます。  まず外国人、例えば中国の方とかインドネシアの方が多いわけですが、この方は研修 という在留資格で入って来て、まず1年目、この黄色い部分ですが、いわゆる座学と呼 ばれる日本語の教育とか安全衛生の教育を受けていただいて、さらに実務研修という形 で実際の製造現場などに入っていただいて、その技術を学んでいただきます。この1年 目は研修で、あくまで就労ではない、雇用関係はない、勉強だという位置づけで、入管 法上も就労をしてはならないという性格です。  その後、この研修を終えて一定の技能検定試験を受けていただいて、それに合格され た方は、さらに今度は技能実習の形で、雇用関係の下でより実践的な技術を学んでいた だく形になっていて、研修1年の技能実習2年、最大3年までの形で技術を学んでいた だいて、母国に帰っていただき、その技術を活かしていただくという制度です。  数的なものを若干申し上げます。3頁をご覧ください。研修生での入国者数が非常に 増えており、青い棒グラフですが、平成18年で9万2,000人を超える方が入っています。 研修を終えられて技能実習に移る方、黄色い棒グラフですが、平成18年で4万1,000 人という数です。技能実習は概ね2年間在留されますので、平成17年の3万2,000人と 平成18年の4万1,000人を合わせた7万人を超える数、約7万人から8万人の方が現在 ストックベースでは、日本に在留して実習をしながら働いていらっしゃる状況です。  右の円グラフで国籍別に載せていますが、中国からの方が85%と圧倒的に多い状況で す。  下のほうに職種別の推移を載せています。業種で見ますと、繊維・衣服関係、いわゆ る縫製が非常に多くて、断トツです。次は機械・金属関係、食料品・食品加工です。最 近では、農業も増えているのが特徴です。  このように非常に数も増えている中で、マスコミ等で大きく報道されておりますよう に、いろいろなトラブルとか、不適正な事例が散見されます。5頁の報道の事例ですが、 例えば研修生は1年目は働いてはいけないわけですが、実際には労働をさせられていた り、残業までさせられている例とか、時間給100円の残業とか、あるいはパスポートの 取り上げとか強制的な貯金といった人権侵害まがいの行為も起きている状況です。  こういった状況を受けて、その制度そのものの適正化あるいは見直しについていろい ろなところで求められるようになってきています。  政府内としては、平成18年3月に規制改革・民間開放推進会議において、特に1年目 の研修生の法的保護のあり方等について必要な措置を検討せよという命題になって、そ れを受ける形で昨年10月にこの研究会を発足させて検討してきました。特に1年目の研 修生は、本来就労してはならないという身分でありながら、実際には残業までさせられ ている例があります。また事業主にとってみれば悪意がなくても、研修生のほうが逆に、 研修生だけれども働かせて欲しいとか、残業させて欲しいということで、それを安易に 認めたために、不正行為になってしまった例もあります。特に実際の製造現場に入って からの実務研修での法的な保護のあり方が大きな課題となっております。  2-1に戻っていただいて、その辺を中心にして、制度全体についての検討をこの研究 会で議論いただきました。その内容についてポイントを説明させていただきます。  基本的な考え方は、上のいちばん大きな四角で囲んでいます。「この制度につきまして は、研修生が実質的に低賃金労働者として扱われている等の実態を改善するとともに、 技能移転を通じた国際協力という制度本来の目的が適正に実施されるよう、必要な見直 しを行うべきである」ということで、その「技能移転を通じた国際協力」という制度の 目的は維持したうえで必要な見直し、改善を図っていくという方向性です。  具体的なスケジュールとしては、その後、規制改革・民間開放推進会議において、第 3次答申が昨年末に出まして、その中で、遅くとも平成21年通常国会までに関係法案の 提出をせよとなっています。この内容は、その後閣議決定もされております。政府とし ては約束した状況ですので、この平成21年通常国会に向けて具体的な制度設計を今後関 係省庁において行っていく段階です。  したがって、厚生労働省としてはこの中間報告を踏まえて、この方針に沿って法務省、 経済産業省等関係省庁と調整を図っていきたいと、これからまさにそういう議論をして いきたいと考えています。  報告のポイントの1点目です。これが、先ほど来お話し申し上げた大きな課題の一つ です。「実務研修中の研修生の法的保護のあり方」です。繰り返しになりますが、そこに 小さく図を付けております。1年目が研修という身分で、これは雇用関係ではないとい うことです。実際この研修生に対しては、生活の実費という形で、研修手当が払われて おります。平均で大体月6、7万円が相場です。そうしますと、最底賃金であれば月11 万円とか12万円ですので、最低賃金の半分ぐらいの額で、実際には働かされたり残業さ せられている例があります。ここをどう考えるかという点が最大のポイントです。  実際の受け入れ企業はほとんど中小企業ですが、その現場の実態を見ますと、1つの 製造ラインに研修生もいれば技能実習生もいて、実際同じような作業をしている中で、 組織的な労務管理体制が不十分な中小企業で、ここまでが労働で、ここまでが研修だと いう区別がなかなか担保できないのではないかと。そういった実態を踏まえたうえで、 研修生の保護を図る観点ではどうすればいいかということから、この研修1年と技能実 習2年については、その右の図にありますように、最初から技能実習の形で、雇用関係 の下で3年間という実習に一本化したうえで、労働関係法令の適用を図ってはどうか。 これによって、1年目から最低賃金法等の適用もでき、法的な保護を図れるだろうとい うのがこの研究会の提案です。  なお、マスコミ等で、「厚生労働省研究会で、研修廃止案」という書かれ方がされてお りますが、いわゆる研修、実習という技術を学んでいく目的は当然維持するわけです。 この研究会でも、いわゆる座学、日本語教育とか安全衛生教育といったものは非常に重 視していて、できれば日本語は入国前に一定のレベルに達していることが必要だろうと、 それを入国要件とすべきだろうと。仮にそうでない場合には、現行どおり入国当初に座 学によって日本語教育をしっかりするべきだと、安全衛生とか日本の生活習慣も、しっ かり入国当初にこれまでどおり位置づけることを考えて打ち出しています。ただ、少な くとも実務研修は技能実習と一本化して、労働法令の適用を図るといった整理をすべき ではないかという提案になっています。  2点目が「技能実習の実効性の確保」で、最初から雇用関係にするにしても、当然、 この研修、実習という性格を維持し、かつその実効性を上げるべきだという観点から、 実習指導員、きちんとその技術を教える指導員の配置を義務づけるとか、実習終了時、3 年経ったあとの技能の評価は現行では義務づけになっておりませんので、こういったも のも義付づけたらどうかと。  一方、職種は、いま62職種が対象になっております。基本的には、旋盤なら旋盤、プ レスならプレスを実習していただくことになっていますが、いま製造現場では多能工化 が進んでいる実態もありますので、実習生の幅広い技能の習得が可能となるよう、やや 幅を広げるような見直しをしてはどうかという提言をいただいています。  3点目が「受入れ団体の役割・責任」です。説明を省略して恐縮でしたが、この受入 れ制度の仕組みとして、企業単独型というやり方と団体監理型の方式があって、企業単 独型は、例えば中国なら中国に現地に子会社があるとか合弁企業がある場合に、そこの 従業員を直接受け入れて研修をして、また帰すという仕組みです。一方、団体監理型は、 現地に合弁企業等がない中小企業がこの研修制度を活用できるようにということで、ま ず、その事業協同組合等の団体が第一次受入れ団体となり、そこがまず受け入れて傘下 の中小企業に研修生、実習生を配置する仕組みです。この団体監理型が実習生の95%を 占めており、残念ながら、問題になるケースも、この団体監理型で生じている状況です。 この受入れ団体、事業協同組合等の責任が、やはり非常に重要で、この役割・責任の強 化を図るべきだということです。  現行制度上、1年目の研修生の間は、この受入れ団体に企業を監理する責任がかかっ ていますが、技能実習に移ってからは、個別の企業で実習をしてもらうという考え方で、 その受入れ団体には責任がない状況になっています。しかしながら、研修中であろうが 技能実習中であろうが、その受入れ団体がしっかりと責任をもって傘下の企業を監理す るべきだということが前半です。  また、最近、その受入れ団体の中にブローカー的にこの受け入れのみを、営利を目的 として行っているような団体が散見されます。研究会の中でも一例として挙げられたの が、安い研修生を使わないかということで企業を募って、まず企業を先に集めて、それ で組合を作りましょうという形で組合を立ち上げる例があるということで、言ってみれ ば、その受入れ目的のために組合を作るという、前後逆になっているようなケースがあ るという状況でした。  そこで、こういった営利目的の団体の設立を防止するために、本来の事業協同組合と しての活動実績、組合としての共同購入とか本来の取組があるはずですので、そういっ た事業協同組合としての活動実績を受入れの要件としてはどうかという提案です。  4点目は「同等報酬要件の実効性の確保」です。いまでも技能実習生は雇用関係があ りますので、日本人と同等の報酬を支払うのが原則です。実態としては、最底賃金にほ ぼ張り付いているような状況があり、この同等報酬要件の実効性を上げる観点から、そ の判断の前提となるガイドラインを設定して、それに照らして著しく格差がある場合に は、その実態を調査して是正を図ってはどうかということです。  5番目が「より高度なレベルの技能実習」です。これも大きな課題の一つです。受入 れ団体あるいは経済団体から研修・実習を終わって3年で帰った方で、より優秀な方で 高度な実習を希望される方は、もう一度日本に再入国していただいて、技能をさらにレ ベルアップしてもらうという再技能実習、高度技能実習と呼んだりしていますが、これ について是非制度化を図ってほしいという要望が非常に強く出されています。これにつ いても検討していただきました。これについては、現行制度において、技能移転や適正 な運営がなされている企業単独型に限って、個別の審査によって、2年間に限定して認 めてはどうかという案になっています。  再度の技能実習については慎重な意見もありまして、一旦帰るにしても、例えば再技 能実習を2年としますと、最初の3年プラス2年でトータル5年で在留期間が長期化し ます。それによる定住化、失踪の懸念があるのではないか。いま、研修・実習ですので、 家族の呼び寄せは認めていません。単身赴任です。その方が、仮に5年も単身となりま すと、人権上の問題が出てくるのではないかというご意見、あるいは足元のいまの現行 制度が団体監理型を中心にいろいろと適正化が求められている中で、まずは適正化を図 ることが必要だというような観点のご指摘もありました。ここについては、そういった 懸念が少ない企業単独型に限ってこれを認めてはどうかという提案です。  6番目は、「ブローカー対策、あるいはチェック機能の強化」です。先ほど、受入れ団 体の役割が非常に大事だという話は申し上げましたが、もう一つ、送出し機関の問題が あります。中国なら中国で研修生を送り出してくる機関があるわけですが、ここにおい ても、一部には高額な保証金を本人から取る。本人は、その保証金を払うために多額の 借金を背負ってきている。そのために、日本に来て、研修と言うよりは、むしろ、より 稼ぐことを重視した行動をとってしまう。場合によっては、失踪して、より高い賃金の 所に流れるというような状況もあります。この送出し機関の適正化もしっかりやらなけ ればいけないということです。外交ルート等を通じてしっかりとこの適正化は、送出し 国政府に要請すべきだろうという内容になっています。  また、いわゆる悪質な機関の排除ということで、いま入管法令に反するような不正行 為を行った場合には、不正行為認定を入国管理局が認定します。これをしますと、新規 受入れが3年間停止される措置になっています。これを、例えば5年以上にするなど、 その厳罰化を図るべきではないか、というご提案です。  なお、JITCO(財団法人国際研修協力機構)が、この研修・技能実習制度について、円 滑な受入れができるよう受入れ団体や受入れ企業に支援、サービスを行っています。た だ、若干適正化という観点の取組が疎かではなかったのか、という批判も多数受けてお ります。現在も、JITCOにおいては、その適正化に向けた取組の強化をしています。JITCO においては、巡回指導の強化を図るとともに、その結果は労働基準監督署に提供するよ うにしています。また、労働基準監督署と入国管理局では、相互通報制度を昨年6月か ら立ち上げて、基準法違反の情報は入国管理局に、入管法違反の情報は監督署にという 形で連携を強化しています。研究会においても、こういった関係行政機関の連携の強化、 さらには実習生本人に対する相談・支援機能の強化に取り組むべきだという提言をいた だいています。  概要で、かい摘んでご説明しましたので、また後ほど資料2-2の本文を読んでいただ ければありがたいと思いますが、こういった提言を中間報告という形でいただきました。 私ども厚生労働省としては、これを踏まえて今後、具体的な制度設計を行っていきたい と考えています。  なお、この制度の見直しは、経済産業省のほうでも、産業政策上の観点での見直しの 提言がされています。この制度の目的を維持したうえで、適正化を図るという基本的な 方向性は厚生労働省の研究会とも同じです。  ただ、2点ほど大きな違いがあります。一つは、「実務研修中の研修生の法的保護のあ り方」、1番目の課題ですが、経済産業省では、現行の研修1年、技能実習2年という制 度は維持したうえで、適正化に向けた指導の強化、申告相談窓口の整備を通じて適正化 を図り、保護を図ってはどうかという案になっています。ただ、厚生労働省の案のよう に、最初から労働法令を適用するという考え方もあり得るということは言っています。  5番目の「より高度なレベルの技能実習」は、経済産業省では、企業単独型、団体監 理型という区別ではなくて、企業単独型であっても団体監理型であっても、一定の評価 をしたうえで、優良な所は、この再技能実習を認めてはどうかいう案になっています。  この関係で法務大臣の私案も示されました。法務大臣の件は、マスコミ等で単純労働 力受入れという形で報道されていますが、私案をよく読みますと、何でもかんでも単純 労働力を受け入れろというものではなくて、一旦、この研修・技能実習の目的をなくし た場合に、どういった受入れ制度が考えられるのか、根本に立ち返って考えてみてはど うかと。ただ、その場合であっても、労働市場への悪影響とか低賃金、劣悪労働を招く ようなことがあってはならないということをおっしゃっていまして、その制度の根幹に 立ち返って議論をしてはどうかという投げかけになっていると理解しております。  いずれにしても、今後、関係省庁、与党も含めた議論をして、平成21年の国会までに 見直しを図ってまいりたいと考えています。その節目節目において、見直しの状況を当 審議会でも報告させていただいて、ご意見を頂戴し、それも踏まえながら我々も対応し ていきたいと考えています。以上です。 ○今野分科会長 ありがとうございました。それでは、いまの説明にご質問、ご意見が ございましたらお願いいたします。 ○水町委員 何点かあります。基本的な方向性としては、よろしいのかなという気がし ます。  細かい点で、まず第1に「実務研修中の研修生の法的保護のあり方」という1番の点 ですが、これは、労働者性の判断を実態に応じて判断するのか、それとも、少なくとも 実務研修を受けている場合には、労働者であって労働関係法規の法令の適用があると見 なしてしまうのかどちらになるのかということです。もし、実態に応じてという場合で あれば、日本人の学生のインターンシップについても通達がありますので、その通達と の関係で齟齬がないようにしないと、外国人についてはこうだけれど日本人については こうというのがあるので、その点をどのようにお考えになっているのかというのが1つ です。  2番と3番はこれでいいと思うのですが、義務付けるとか監理責任を負うということ はありますが、最終的にそのサンクション、義務違反があった場合や責任をちゃんと尽 していない場合のサンクションをどのようにお考えになっているのか、労働関係の法規 では、事業主に義務を負わせると書いてあるだけでサンクションがほとんど何もない場 合があるので、そのサンクションについてちゃんと実効性のある形になるのかという点 をきちんとしてほしいと思います。  4番目の「同等報酬要件の実効性の確保」のところで、これは労基法3条で国籍差別 が罰則つきで禁止されていますので、この労基法3条との関係がどうなのかということ です。ここの同等報酬要件ですが、著しく低い場合には必要な措置をとると書いてあり ますが労基法3条との関係でこの「著しく低い」ということがどのような法的な位置づ けになるのかを、少しきちんと整理をしておかないと、労基法3条違反なのに、こっち の必要な措置は言っていないなどという齟齬があるといけないという問題があると思い ます。  もう1つだけ、5番目の「技能実習2年プラス」なのですが、果して2年プラスする 必要性があるとすれば一度帰らせなければいけないのか、そのままコストがかかるのに 帰らせないできちんとした必要性とチェックができれば、5年間居させるということで いいのではないかというのが1つです。それと、いまの状態で家族を連れてこさせない という話がありましたが、果して先進国として、家族を連れてこさせないというあり方 がいいのかどうかということです。家族を連れてきた場合に、その生活上のケアを国と してどうするかという問題があるかもしれませんが、例えば、我々が外国に行って勉強 させてもらうときには、ちゃんとした収入があってむこうに行っても生活ができるかと いうことをチェックされれば、家族を連れて行ってもいいというのが普通の先進国の対 応だと思います。日本に来て3年間もしくは5年間家族を連れてきても、生活できるこ とがきちんと証明される場合には、家族を連れてきてもいいという制度にするのが本来 の姿だと思います。もし、そのようになっていればいいのですが、そうでない場合はご 検討いただきたいと思います。以上です。 ○藤枝外国人研修推進室長 それでは、何点かご質問いただきました。  まず、1番目の実務研修中の法的な整備の問題ですが、もちろん、これから具体的な 制度設計を図っていくのが前提ですが、考え方としましては2-1の絵にございますよう に、この研究会の考え方としては、最初の入国の段階から技能実習という形で入ってく るということです。つまり、ビザを研修ビザではなく、技能実習なら技能実習というビ ザ、在留資格で入っていただくことを前提に考えております。その技能実習の在留資格 の位置づけとして、雇用関係のもとで実施をするという位置づけにして、制度上雇用だ としてしまうのがよろしいのではないかと考えるわけです。 ○水町委員 そこで問題は、座学の時間をどうするかということと、もっと法的に言う と入管法上の規制と労基法法上の規制の趣旨が違うので、入管法上このようにしている ので、労基法上当然そうなると言えるかどうかが問題なので、その辺をちょっと詰めて 考えたほうがいいと思います。教えてあげて何も企業には利益が入ってきていないし、 手取り足取り教えてあげて、コストの時間が、仮に4月から入ってきてしばらく期間が あるのに、そこも労基法がみなしとして適用されて、座学か実務かと言ってもその中間 的なところでうまく区別がつかない。実態としては、指揮命令しないで教えてあげてい るに過ぎないのに、そこで労基法法と最低賃金法等が全て適用されるとなってしまうの か。そのような制度だと割り切るのか、割り切るとすればみなしとして法律上書かない と駄目だと思うのですが、そのようなみなし規定という強い効力にするか、それとも立 前としてはそうなのだけれども、実態としてそのような場合もあるし、そういう場合も あるという個別の判断になるのかという点です。 ○藤枝外国人研修推進室長 少なくとも、ご指摘していただいた座学の扱いについての 考え方としては、いわゆる業務命令としての研修と位置づけて労基法を適用するのか、 あるいは、制度上切り分けてそこは労基法の適用を除外するのかというところは、今後 詰めていかなければいけないと思っているところです。  それから2、3番目の「義務化を図ったうえでのサンクション」ですが、これは、いま の入管法令の中に位置づけるという仕組を前提とすれば、当然、先ほど申し上げたこれ に違反している場合は、入国管理局の不正行為に当っていくという形で、現行であれば 新規受入れの停止3年間といったところがありますが、この停止期間自体も5年以上と か内容によっては厳罰化するべきだろうと考えています。  それから同等報酬要件ですが、これは確かに難しい問題です。現状もそのような意味 では同等報酬要件はかかっているわけですが、何をもって、比較対象となる労働者をど のように捉えるかというところがありますし、研修生・実習生がいる現場をみますと、 実態としては研修生・実習生以外はパート労働者しかいなかったり、短時間労働といっ た形で、本来比べる労働者がなかなか難しい場合も実態としてあるのではないかと思い ます。そのような意味で、ガイドラインを一つのきっかけとし、入国管理局なりJITCO なりが実態を調査して、実効性を図っていくべきだろうという考え方です。その中で、 明らかに日本人労働者と仕事でも経験年数も同じで労基法法違反の疑いがあるものにつ いては、これは当然、そのようなものが認められれば労働基準監督署なりに情報を提供 して、そちらの指導を受けさせることになると思います。ここは、実態として非常に難 しい点ですが、いま実態として最低賃金に張りついている中で、少しでも改善をする方 向性にもっていきたいという考え方です。  最後の再技能実習ですが、基本的には3年間で一旦帰っていただくというこの制度で すが、いまの現行制度がこのようになっていますので、それは維持したうえで一定の、1、 2年なのか3年なのかクーリング期間を何年置くかという問題はありますが、3年間日本 で研修・実習していただくわけですから、その技術をできれば向うで3年間技能を移転 して、現地に技術を移転していただいて、その後、また来ていただくという形を考えて おります。  家族の呼び寄せについては、いまは3年の間という限られた期間で単身赴任という形 になっています。ここは、非常に制度そのものの仕組みにも関わってきますが、まさに 日本社会において外国人研修・実習生をどのように位置づけていくかという大きな問題 だと思います。家族の呼び寄せを仮に認めるとなると、やはり定住化する可能性が強く なってくることもあり得ますので、その点は今後の議論が必要かと考えているところで す。 ○水町委員 結局、定住化する怖れというのは弊害としてあるかもしれませんが、日本 人については、ワーク・ライフ・バランスで家族と共生しようという話になっているの で、外国人研修生についてはそれとは全然違うという話でいいのかという点をご検討い ただきたいと思います。 ○今野分科会長 はい、どうぞ。 ○川本委員 ただいまのところで、資料2-1で言いますと4の「同等報酬要件」のとこ ろですが、実際の報告書ですと資料2-2の20頁のところにその中身が書かれていると思 います。20頁の最初から始まって中身的には4行目「したがって」という段落からだろ うと思います。これを見ますと2、3行目で、実態として比較対象となる日本人労働者が いない場合にはこれが使えないということで、「したがって」のところでガイドラインを 作るのだと、その際、例えば都道府県別の高卒初任給の平均額を採って、それと比べる という考え方が示されていると思います。そうしますと、例えば高卒初任給という言葉 が出ていますが、1つは絶対基準を設けるかという考え方を示されるということになり はしないのかと危惧されることです。その場合については、今般、改正法が国会を通っ ておりますが、パート労働法等との考え方のすり合わせということも必要になるのでは ないかと思う次第です。また、併せましてこの高卒初任給のお話について申し上げてお きますと、実は賃金というのはいろいろありますが、いわゆる労働の対価とよく一言で 言われますが、実際にはそれだけではなく、例えば長期勤続を前提としております、い わゆる正社員という考え方であれば、将来のその雇用獲得とその後の雇用確保維持とい う考え方も企業戦略をも含めた賃金設定がなされているわけであり、単純にその部分で 全てが労働の対価とは考えにくいのではないか。あるいは、この都道府県別初任給の調 査も、実際は中小零細企業においては、新卒採用をきちんとやっていない場合も多いも のですから、そのようなところで本当の意味で、それでは仮に新卒採用したらいくらに 設定しているのだろうかという調査はしにくいわけで、その辺での制度が問題になるの ではないかということも少し心配になったわけです。以上、簡単ですが意見です。パー ト法の絡みでいうと佐藤委員が一番お詳しいかと思います。 ○藤枝外国人研修推進室長 先ほども申し上げましたが、確かに、同等報酬要件との関 係で非常に考え方が難しいわけですので、あくまでガイドラインも絶対基準ではなくて、 そこに書いています同等報酬要件を判断する際の判断の前提となるもの、調査のきっか けになるようなガイドラインを考えております。確かにおっしゃるように、いま、ここ で例えば都道府県の高卒初任給平均額と書いてありますが、その前の頁、19頁の左側の 棒グラフにありますように、実態としては技能実習生、たまたま同じ数字になりました が、最底賃金の全国平均と同じ額になってしまっておりまして、高卒初任給の平均額よ りもさらに低い額に張りついているという状況です。何をもってそのガイドラインとす るかということも今後検討が必要ですが、研究会の問題意識としましては、もちろん適 正に労働の対価としての賃金を仕組んで支払っていただいていれば問題ないのでしょう が、研修生・実習生を安い労働力として安易に、日本人労働者の採用の努力をせずに、 安い労働力として悪用している例があるのではないかと、そのような指摘からこの同等 報酬要件の実効性を高めるということは、その労働市場全体への影響を考えると非常に 大事な話だというご意見があり、そのようなことからこのような提案になりました。 ○今野分科会長 はい、どうぞ。 ○長谷川委員 この研究会報告は、遅くても21年の通常国会となるのですが、この法律 改正は、1つは、今日の中間報告を聞いていると、いまだと1、2年の研修技能実習です よね。今度3年の実習だから、新しい入管法の中で新しい枠組を作るということになり ます。そうしますと、入管法の改正が1つあるわけです。あと、この研修技能実習制度 のときには、どの法律を変えなければならないのかというのが1つです。  それと、いまの1、2年と今度3だから両方を入管法の中で2つ併存させるのかどうな のかということです。いまの1、2を全部やめて3年にするのか、それとも、いまの1、 2と3年をを2つ併存させるのかというのをお聞きしたいと思います。  それと、全体的に中間報告は最近の研修技能実習制度に対する批判が世の中からもの すごくあるわけです。国内ではなくアメリカからまで批判されているわけであり、その ような意味では、改革しなければいけない課題だと思います。中間報告で、このように 出てきたのは全体的には評価したいと思います。ただ、今日の報告にもありましたよう に、厚生労働省の中間報告と経済産業省の報告と、それと長勢私案なるものが出ている わけですが、あと外務省が前にやった審議会報告などもあるわけで、4つの省庁がいろ いろとそれぞれ出してきているわけですが、その調整を今後どのようにしていくのかと いうこともお聞きしたいと思います。  細かいところはあるのですが、おそらくこの分科会でもう少し議論するのだと思うの ですが、1つは今日言われました実習生の法的保護のあり方です。例えばこの制度がも ともと研修や実習で、自分の国に帰ってからそれを生かすという技術の移転という目的 があったわけです。そうするとこの研修制度は残すのかどうなのか。もし、研修制度を 残すときにちょっと注意しなければいけないのは、最近、いろいろと何か言われるのだ ったら研修1年で転がしたほうがいいのではないかという話もあるので、そのようなこ とはどうなのかということを聞きたいと思います。  それから、今日の中間報告にも問題点が指摘されていますが、問題は団体監理型受入 れなわけですね。先生方もいま言われましたが、公益側から出ましたけど、団体監理型 に対して、悪いことに対して、法違反したり非常に恥ずかしいことをやっているみたい で、何か2度とやりたくないと思うぐらいのペナルティを懸けないとこの制度は大変だ と思うので、もう少し実効性のある何らかの措置が必要なのではないかと思っています。  それから、受入れ団体なのですが、今回の介護保険でも出てきたのですが、自分のと ころが駄目であれば別の子会社を作って、そこに営業譲渡してやろうかということもあ ります。これだって下手すると企業ごとだと別会社を作ってそこにやらせるということ などもあるわけでが、要するに企業ごとにみていくのか、事業所ごとにみていくのかと いう見方についても少し私は研究会で引き続きやってほしいと思います。  それから、使側からも言われました同等報酬要件ですが、これは前から言われていて、 結果的に、おそらく日本人で同じような人がいないということで、みな最賃に張りつい ているのだと思うのです。だから、そこのところをもう少しきっちり、今回モデルやガ イドラインを作ると言われているので、今日川本委員からはいろいろな意見が出たけれ ど、何か作らないとこれは最賃に全部張りついて、下手すると最賃割れしています。私 どもは、ここ何年間この研修技能実習生の労働相談をやっていますが、500円とか230 円とかというそのような話がザラですから、やはり最賃に張りついているわけで、ここ のところは、てこ入れは必要なのではないかと思います。  それから、問題はこの研修技能実習生のときに賃金から食費代や住居費などを天引き していることがよくあるわけです。だから結果的に、最終的に手取りがすごく少ないと いうのは、そこで天引きがあるからです。だから、この天引きについてどのように扱っ ていくかということを、もう少し引き続き検討する中で、天引き貸借をきっちりしない といけないのではないかと思います。だから、働いても働いても何か天引きで全部取ら れていって、実際は本人のところに入っていないということがあるので、ここはちゃん としてほしいと思っております。  あとは、送出し機関について、国内対策は結構できると思います。ところが、国外の ブローカー、これは送出し機関のチェックをどのようにするのかということが非常に重 要だと思います。ただ、話し合えばいいと言ってもそんなに簡単ではなく、私どもが扱 ったものは、引かれているのは大体2万円です。国を出てくるときに契約書を書かされ て、毎月2万円というようなものが出ているわけで、このブローカー対策をどのように するかということをもう少し踏み込んだものが必要なのではないかと思います。  あとはチェック機能の強化です。結果的にJITCOがやっているのですが、JITCOの予 算や人員体制をみれば、みなさまご存知のように、そんなに期待できるものにはなって いません。年々予算も減らされているわけですから。でも、やっぱりここがブロックで いろいろな指導などもしているわけで、そのような意味ではJITCOの要員も増やすとか、 それから労働基準監督官だとか入国警備官なども増やしながら、連携しながらきっちり と制度を本来の趣旨に沿ったものにしていくことが必要なのではないかと思います。 ○今野分科会長 すごく多いのですが。10項目以上ですね。短かく、1個1個で。 ○藤枝外国人研修推進室長 3年の実習にする案でして、ですから、1年の研修2年の実 習というのは基本的に残さないとする考え方です。ただ、研修だけでいま6か月とか1 年で帰っているものもございます。これについての考え方は、この研究会でもさらに検 討するという課題になっています。  それから、必要な法律は基本的に入管法令でございます。場合によっては、労働関係 法令も必要になるかもしれませんが、原則は入管法令の中に、技能実習なら技能実習と いう在留資格を新たに作らなければいけないと思います。これは確かに法律事項として 出てくるところです。  各省庁との調整につきましては、正直言ってこの夏の時点では動きが少し停滞してお りますが、今後、具体的に本格化しますので、政府内での議論の場ができてくると思っ ております。  団体監理型に対するペナルティの強化、これは研究会でも指摘されているところで、 その趣旨は踏まえてまいりたいと思います。いわゆる、一旦受入停止処分がかかると3 年間受入停止がなされます。実態として確かに新たな受入れ団体を別途作って、さらに 受け入れを継続するような悪質なケースもあるということでして、この研究会でもその ような脱法的な行為を防ぐ観点からも受け入れ団体について活動実績を、例えば5年な ら5年活動実績がないと受入れできないことにすれば、脱法的に新たな受入れ団体を作 って受入れを継続するというものを排除できるのではないかと提言をしています。  賃金からの天引きの問題は確かにございます。研修手当が6、7万だとしまして、技能 実習移行後は本来であれば11万とか12万最低賃金がもらえるのですが、ただ、実際に そこから寮費や宿舎費等を引かれて、実際に手取りはあまり変わらないという例もある と聞いております。入国管理局でも、例えば宿舎費6万とか、4人部屋で狭いアパート・ 寮なのに1人6万も取っているようなことがある場合には、問題視するということにな っております。そのような実態がありますので、この研究会で、実際の雇用条件や実習 条件が入国前に本人にしっかり分かって、本人がどのような条件で自分が日本に入って から働くのか、あるいは研修を受けるのかということが重要だというような観点も指摘 されておりますので、そのようなことも、十分考えていきたいと思っております。  送出し機関のブローカー対策は、送出し国政府に対して、我々としてももう少し踏み 込んでいかなければいけないだろうという問題意識はもっています。その送出し国政府 でどのような送出し機関の認定の仕方をしているのかということも調査していきたいと 思っております。  またJITCO等の組識については、予算面や人員面を含めて強化が必要だと思っており ます。ともかく、監督署、入管、JITCO、あるいはハローワークといった関係行政機関が 重層的かつ連携できている体制が必要だと思っておりますので、そのような連携体制の 強化を図っていきたいと考えています。 ○今野分科会長 あとは同等報酬要件のてこ入れはどうするのだということが一点。あ とはたぶん答えたことになるのですが、従来の研修は残すのかということもあったので、 その2点について追加していただくとちょうどいいです。 ○藤枝外国人研修推進室長 同等報酬要件、あとガイドラインをいかに作っていくかが 大きな課題だと思っていますし、チェック体制をどうするかということも今後の課題だ と思っています。  研修を半年とか1年のみで帰国する、いわゆる研修というビザがあります。これの取 扱いについては、いまの半年とか1年の研修でも実際に実務研修が行われていますので、 その点については実務研修生の法的保護という観点でいえば同じ問題が残っていますの で、その取扱いについては研究会の重要な検討課題だとして、さらに検討することにな っています。 ○今野分科会長 それでは、佐藤委員どうぞ。 ○佐藤委員 中間報告でこれからまた検討されるということはお願いなのですが、検討 するときに確かに研修・技能実習制度を悪用して、例えば低賃金労働力として活用する 場合にはこういう問題が起きないようにすることもとても大事なのですが、もう1つ大 事なのは、この制度を見直すときに、技能移転の仕組みとして見直すという形ですので、 そういう意味ではきちっと正当な対価を払っていたとしても、技能移転として全然効果 がなかったら、これは問題なわけです。いまのを付随的な問題と言うと怒られてしまい ますが、確かに問題はあるのです。だからメインのところの技能移転としてこれが機能 しているかしていないか。機能していないとすれば、技能移転として機能するように見 直すというのが、本来見直すべきところだと思うのです。これまでも相当の期間この制 度は動いてきて、送出し国の労働者の技能向上にどの程度効果があったかということが、 十分把握されていないということです。  もう1つはそれと関係するのですが、1年プラス2年が終わった後に、どのぐらい技 能向上があったのかもわかっていないのです。そういう意味では、つまり本来のメイン の見直すための素材がないのではないか。付随的ではない、いろいろな問題があるのは よくわかるのです。それを手直しすることが必要だと思いますが、大事なのは技能移転 として効果があるような仕組みとして見直すために、何かということを是非ご検討いた だきたいというのがお願いです。 ○藤枝外国人研修推進室長 ご指摘の点は、この研究会の中でも非常に厳しくご批判を いただいたところでして、本来技能移転の効果がしっかり把握できていない。そこは大 変我々としては反省しておりますし、見直しに当たってはそこが非常にポイントですの で、送出し国政付に対しても状況把握を求めていくなどして、実態を踏まえた上での見 直しがポイントになっていると思います。 ○今野分科会長 ほかにございますでしょうか。 ○黒澤委員 いまのに関連するのですが、例えば4頁に帰国生のアンケート調査の結果 が出ているのですが、アンケート調査はいま佐藤委員がおっしゃった評価という意味で 非常に重要だと思うのですが、これは例えば41人(中国)と非常に少ないサンプルなの ですが、これは送出し企業ですので、送出し機関が特殊な場合に限定されているのかも しれませんが、こういった帰国生のアンケートが、いまどういった形でなされているの か。もし限定的であれば、それを拡張すべきではないかということと、それは送出し機 関にそれを強制とまではいかないかもしれませんが、そういったことをすることも責務 として職務の中に入れていただくほうが、先ほどの話ではないですが、送出し機関のチ ェックにもまた効果が現れるのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。 ○藤枝外国人研修推進室長 まず帰国生のアンケート調査というのは、いま外務省から の依頼を受けてJITCOが年に1回、例えば今年なら中国で次の年はインドネシアという ふうに一国訪問をして、現地でヒアリングやアンケートを実施したものでして、そうい った不十分ながらのフォローアップはしております。ただ、おっしゃっているような全 数的な把握はできておりませんので、帰国生に対する実態調査とかアンケートのあり方 は批判を受けて、ちょっと我々も検討したいと思っているところです。  送出し機関やそういったことの報告を義務づけたらどうかという点は、非常にご意見 としてはあると思います。いまは送出し国政府とJITCOがRD、協定を結んで、その中で は送出し国政府からそういう報告を求め得ることになっていますが、現実にワークして いない部分もありますので、送出し機関や受入れ団体にもそういった報告を求めていく ことは、見直しの中であり得るのではないかと思っています。 ○今野分科会長 まだご質問、ご意見があるかと思いますが、議題がまだ4つ残ってい ます。これは中間報告ですので、また議論が進んだら報告をしていただくということで、 改めてご意見をいただく機会はつくることにさせていただいて、申し訳ありませんが先 に進ませていただきます。  3番目の議題である「生涯キャリア支援と企業のあり方に関する研究会報告書」につ いて、事務局より説明をお願いします。 ○小林能力評価課長 「生涯キャリア支援と企業のあり方に関する研究会報告」ですが、 資料3-4に報告書の本体があります。それから資料3-6になりますが、研究会の参集者 の名簿を付けています。研究会は2月から9回にわたりご議論をいただき、先般報告書 としてまとめられましたので、この場をお借りして報告させていただきます。時間の制 約がありますので、資料3-2に付いているポイントを使って、簡潔に説明します。  まず検討の趣旨、背景ですが、企業と働く人の関係は、いろいろな意味でいま転機に あるのではないかということです。そういった中でいまの働き方、あるいは働かせ方の あり方が、個人、企業あるいは社会にとって持続可能性、あるいは発展性のあるものな のかということが問題意識でして、そういった中でまずは企業の実態を見ながら今後の 方向性を探ってみようということで、資料3-6にあるような企業の実務家、あるいは企 業の人材育成等に詳しい方のご参集をいただき、幅広く検討を行ってきました。検討の 過程で、各企業の先進的な取組の報告もいただいており、そういったものは本文中にい くつかコラムという形で枠で囲んで提示をしていますので、また詳細は是非お読みいた だければと思っています。以下ポイントに従い、概略のみ説明します。  企業・労働者を取り巻く状況、あるいは企業と働く者の関係は大きな「転機」にある。 ここにありますように、働く者個々人の持続的な成長、あるいは企業活動の活性化、あ るいは活力ある社会の発展といういずれの面からも、働く者の職業生涯という観点から 職業キャリアのあり方見直しを求めてきているのではないかということが出発点です。 そこら辺の細かな分析は多々ありますが、それは省略します。  そういった中で次の○ですが、働く者の「生涯キャリア支援」が今後のキーワードに なってくるだろうということです。即ち働く人というのは経済社会の主体であることは もちろんですが、同時に次世代を生み育てる生活者でもあり、ポスト工業化と言われる 中で、付加価値を創造する文化的・社会的活動主体でもあるといった多様な側面を有し ているわけです。そういった「ひと」としての多様な側面を尊重していくことが、本人 の能力開発・能力発揮はもとよりですが、企業、あるいは経済社会の均衡ある発展にと っても極めて重要であろうと。したがって働く者一人ひとりについて、そうした働き方 を実現していく観点に立って、職業キャリアを将来にわたり「持続可能」、「発展性」の あるものにしていくことが重要と。そのために必要となるさまざまな取組を包括する理 念・考え方、それを「生涯キャリア支援」という言葉で括れるのではなかろうかという ことで整理しています。今後そういった「生涯キャリア支援」の観点から働く者の職業 キャリアのあり方を見直していくことが必要だということで、いろいろな観点を指摘し ているところです。  いま申し上げましたように、今回は企業による生涯にわたるキャリア支援の必要性を 強調しているわけですが、併せて(1)にあるような「自立」という言い方もしています。 自立というとややちょっとミスリードをさせる面もあるかもしれませんが、そういった ことではありません。ここにあるように企業寿命がいま短縮を余儀なくされる流れにあ る一方で、職業生涯というのは長期化をしている。その生涯をどのように乗り越えてい くかということ。長い生涯キャリアを考えた場合に、会社におけるキャリアというのは 一時期、あるいは一局面のものであって、家庭や地域での生活を含めた「ひと」として のキャリアのあり方を重視する必要があるであろうと。それはいわゆる職業人から生活 者へという言われ方をするのと同じような意味で、「自立」という表現を用いています。 同時に、企業のさまざまな支援の必要性を指摘していまして、例えばここにあります「時 間の確保・場の提供・力の養成」といったことによる「専門軸」、キャリア軸を強化して いくことが重要だ、あるいは中長期的視点に立ってのスキルマネジメント、キャリア支 援の専門的体制等々を指摘しているところです。  2つ目は、長い職業生涯におけるキャリアの転機や節目で今後のキャリアを考える機 会や、まとまった能力開発機会が与えられることです。これはキャリア・トランジショ ンと言われるような節目での集中的なキャリア支援の重要性を指摘するとともに、とり わけキャリアの中年期問題を取り上げております。これはこれから65歳までの継続雇用 ということで、まさに本当の意味で職業生涯は長期化してくるわけですが、そういった 中で40歳ぐらいに訪れるキャリアの中年期問題をうまく乗り切らないと、あきらめ、停 滞、過度の企業への依存ということが起きて、それはお互いにとってマイナスではなか ろうかということで、中年期におけるキャリア支援の重要性を、特に強調しています。  3つ目は、失敗しても教育訓練が受けられることなどにより再チャレンジできる社会 であること。4つ目は、働く者個人のライフステージ等に応じて、多様な働き方が柔軟 に選択できること。5つ目は、育児・介護に限らず、広い意味で家庭生活や地域での活 動等と調和の取れた働き方、ワーク・ライフ・バランスが図られるという5点を、主に 指摘しています。  最後の頁ですが、こういったキャリア支援を推進していく上で、企業のキャリア支援 の取組が重要だということで、これは先ほど※に書いてある話ですのでここでは省略し ていますが、企業のそういった取組は重要である。また同時にその企業ができないこと もあるわけでして、そういったものについては企業を超えた取組や公的な政策を進めて いくことも必要であろうということで、例としていくつかそこに書いてありますが、キ ャリア支援インフラの整備が必要と。例えばキャリアコンサルティングの高度化等と。  企業だけで長い生涯の雇用を維持するというのは難しい中で、企業グループ内でのキ ャリア開発、あるいは地域における受け皿開発等。3つ目にありますが、各世代の従業 員のキャリアサーベイをやって、それを企業におけるキャリア支援のあり方の見直し、 あるいは個人に対するキャリア支援の充実などにつなげていく必要があるのではないか 等を指摘しています。  以上申し上げたのはごく一部ですが、企業の実態を踏まえて、いろいろな論点を提示 しています。併せて今後さらに議論すべき課題として、いくつかの問題提起もなされて います。例えば1つ目のポツですが、過度に共同体的・集団的働き方から個人が契約に 基づいて働き方を選択できる仕組みに変えていくことなどのいろいろな見直しの必要性、 これは共同体的・集団的な働き方というのは、我が国の非常に強みとしていたところで すが、今後ワーク・ライフ・バランス等を本当に進めていこうというのであれば、就業 規則、あるいは包括的な指揮命令の中での集団的な働き方を改めて、契約内容の個別化 を徐々に図っていくということも必要になるのではないかという指摘です。  2つ目は、自立化を進めていくことになりますと、企業の外に足場やよりどころが必 要となってくるので、そういったところにおける交流の場やネットワークづくりを指摘 しています。3つ目は、企業の社会的責任の問題の中で生涯キャリア支援の視点を含め ていくことが重要であろうということです。市場の圧倒的な影響力のままにしておきま すと、どうしてもキャリア支援といった施策は後退を余儀なくされるわけでありまして、 むしろキャリア支援が市場で評価されるようなあり方を模索すると、市場自体に社会性 を持たせるといったことが、こういったキャリア支援の推進力を高めることになってく るのではなかろうかといったことについても、指摘をしております。概略は以上ですが、 実際には多々いろいろな事項がありますので、またお読みいただければと思います。以 上です。 ○今野分科会長 まだ報告が3つありますので、申し訳ないですがまず報告をいただい て、それで全体的にご意見があったら伺おうと思いますのでお願いします。まずはもの づくり白書、その次は能力開発基本調査、その次はニートの調査です。順番に説明して いただけますか。 ○亀島基盤整備室長 時間もありませんので、ポイントを本当に絞り込んで説明したい と思います。資料の順番に従いましてご説明します。資料4-1ものづくり白書について をご覧ください。  これは、ものづくり基盤技術振興基本法に基づく法定白書で、今回の報告で第7回目 になります。番号は振っておりませんが、A3のほうで簡単に説明します。  1章は経産省の全体の部分です。時間の関係でここは割愛させていただきまして、第2 章のものづくり人材について説明します。  それぞれ各節に分かれていますが、第1節は、全体の状況分析です。ここでの鍵は製 造業の雇用は増加していますが、労働者の不足感が拡大しているという図表の2-1の所 に代表されると思います。  そういった状況ですが、第2節では団塊世代の大量退職、いわゆる2007年問題に対し て備えた人材育成ということで総括をさせていただいています。定年延長等もありまし て、2007年問題ですぐに大きな影響が出る状況ではありませんが、図の2-2でわかるよ うに、次の世代が大きくへこんでいます。こうした状況にあって団塊の世代の退職によ っても揺るぐことのない現場力の維持の観点から、各世代層における取組を分析させて いただいていますが、ここでは詳細は割愛させていただきます。  今回の白書の特色の1つとしてとして、中小企業における人材育成を取り上げていま す。教育投資自体は、ここにきて回復基調ですが、その中身は大企業が引っ張っている というのが2-3の図です。中小企業における教育訓練投資は引き続き低調ということで、 加えて若年者の確保が困難を増す中で、大企業に比べて高い離職率、それがさらに教育 訓練力を衰えさせているという悪循環。資料はグラフを記載していませんが、すべての 規模において求人が増大している中で、中小企業が人材確保についても厳しい状況にな っています。そういった状況の中での取組について提言をしています。  第3節では、特に今回ものづくりにおける女性人材の育成活用の問題を新たに取り上 げています。図表の2-5のグラフを見ると、折線グラフの黒い部分が、全産業の女性比 率です。薄い部分の折線が、製造業における女性比率です。全体ではわずかずつ比率は 上がっていますが、製造業ではここ10年ほどの間に大きく下がっているということで、 具体的な分析の中で、特に製造業の各業種においてそういった現象が見られます。その 中で女性人材の積極的な確保・育成を図っていく必要があります。例えば技能の分野に おいても、より高度な、あるいはより責任のある職務への拡大がなかなか見受けられな いのではないかということで、そういったところを拡大していく、あるいは育児や介護 などの環境を整備する必要性を提言をしています。あと、ものづくり立国ということで、 ユニバーサル技能五輪の取組を紹介しています。次の頁の3章は、文部科学省の部分の 分析ですが、時間の関係で割愛します。  続きまして、能力開発基本統計調査です。資料5-1ですが、能力開発基本統計調査自 体は毎年行っている調査ですが、今回は非正社員も含めた詳細な分析を行いたいという ことで、総務省による承認統計として、大変細かい分析が可能なように、設計をしてい ます。企業における能力開発方針において「企業責任」、「ライン主導」、「労働者全体」 を重視する傾向が強まっているということです。その中で特に能力開発の対象者で、従 来選抜重視と言われた時期があるのですが、今回の調査の中では労働者全体のレベルの 重視ということが、やや強まる傾向が出ています。  次の頁ですが、「人材育成に問題がある」とする事業所の割合が高くて、80.6%に上り ます。その内訳は定番なのですが、指導する人材が不足している、人材育成を行う時間 がないとする事業所が依然多いという傾向です。  3番は、今回の調査の中でも大きな眼目の1つですが、正社員に対する非正社員の教 育訓練の状況を、多面的に今回は分析しています。OFF-JT、計画的なOJT、あるいは自 己啓発支援のいずれにおいても正社員の状況を下回っているという状況です。詳細は割 愛しますが、それぞれ割合や時間、対象人数を細かく分析しています。  4番目は、自己啓発の問題を分析していまして、自己啓発を行った者は、正社員で 46.2%、非正社員では23.4%ということで、平均時間も1年あたり正社員で42.7、非正 社員で30.8で、これをどう見るかということはあるかと思います。自己啓発上の問題点 としては、自己啓発に問題があるとする労働者の割合ですが、正社員では85.5%、非正 社員では71.7%で、その内訳は「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」と言う者がい ちばん多く、次いて「費用がかかりすぎる」、「セミナーの情報が得にくい」という形に なっています。今回企業の教育訓練費についても分析をしているのですが、その中でい うOFF-JTの費用額は、1社あたり平均326万超ということですが、自己啓発支援はそれ に比べて40.3万円に止まっているという状況です。その他細かい分析をしていますが、 以下は割愛します。  最後に資料6-1ですが、ニートの若者の実態及び支援策についての調査研究を昨年度 実施しましたので、それについて簡単にご説明をさせていただきたいと思います。ニー トの若者に対するこういった大規模なサンプルを取った調査というのは、いままではあ りませんでした。今回は自立塾、サポートステーションといった支援機関を訪れている 若者という限定はありますが一定のサンプルを取り、かつニート状態を脱した方につい て、臨床心理士の先生方に集まっていただきまして、半構造面接を行っていただいてお ります。また支援側の施設についてもアンケート調査を取り、総合的にまとめたものが 今回の報告です。かい摘んでご説明します。2頁目を見ていただきますと、ニート状態 にある若者の出身家庭は、経済状態を見るとかなり幅広い状況にあります。学校教育段 階でつまづきを経験している者、例えば不登校を経験しているのは37.1%という割合で した。今回の調査の中では8割近くが何らかの就業経験を持っていますが、仕事の内容 は熟練を要しない仕事の経験者が多いと。あるいは学校でのいじめ、引きこもり、精神 科・心療内科受診経験のある者が半数に及んでおります。  これは前から言われてきたことですが、3頁の対面コミュニケーションの苦手意識が 目立つというような基礎的なスキルについての状況、あるいは仕事を覚えるとか仕事で 失敗を繰り返さないといった、仕事に関しての苦手意識が高いということもわかりまし た。またニート状態にあることについて精神的な負担を感じている者も多い等も、今回 わかっています。  4頁では、自立塾で若者と実際のトレーナーとの感触を相互に比較することをしてい ます。支援内容については評価が高い形になっていますが、トレーナーの実感と訓練生 の実感がほとんど変わらないということが、今回わかっています。5頁は、ニートを脱 した方についての専門家による本格的なヒアリングをしております。その中でニート状 態にあるときから続く特徴として、3つの特徴が挙げられています。「受動性」、「生きて いくことへの欲求の希薄さ」、「対人関係の希薄さ」です。これはそれぞれ独立したもの ではなくて、相互に関係する力動的なものとして、報告の中ではまとめられております。 そういった中で脱ニートの方から見た支援として、支援機関が心理的サポートの場にな っている。そして、本来的な支援終了後のアフターケアが、その人たちにとって大変大 きな意味を持つことが、今回の調査の中でわかってきました。  7頁は、いままでの調査、あるいは支援機関に対するアンケートから四角で囲んでい る所のニート状態を脱するための支援プロセスの中でのエッセンスを、1から6まで抽 出しています。  その中で重要な部分は、本人の状況に合わせた小さなステップを登る支援による自己 評価の向上で、いわゆる就職ができないわけではない。しかし継続して就業することが 大変困難な状態にあるニートの方々と、それに対する具体的な支援方法といったことが 明らかになっています。5番目で就労体験を通じた社会への手応えについても、具体的 な形でその重要性が指摘されています。  本調査の総括と今後の課題が、8頁です。ニート支援における課題としては、社会的 認知の向上と早期支援の必要性ということで言われています。支援人材の量的拡大と質 的向上の必要性。そして9頁は、合宿型だけでなく通所による各種支援プログラムや継 続的なフォローの充実、諸機関が連携した支援体制づくり。さらに長期的展望に立って ニートを生まないための取組ということで、とりまとめをさせていただきました。たい へん雑駁ですが、以上です。 ○今野分科会長 予定は12時までですが、ちょっと時間を延長させていただいて、皆さ んのご意見、ご質問をいただきたいと思います。 ○西原委員 「生涯キャリア支援と企業のあり方に関する研究会」報告についてなので すが、細かいところまでは読んでいないのですが、これまでの論議の中で、いわゆるこ の能力開発施策の中で、企業の果たすべき役割はまさに第一次的で、最も役立つもの。 その中でいま企業がどういった観点で能力開発にかかわって、直面している課題は何か というところをより深掘りしていくことは、非常に重要なことだと思っています。ただ、 そういった観点で見たときに、今回の報告書の研究会のメンバーの方が、それぞれ研究 者の方、あるいは企業代表の方を含めまして、それぞれ識見、経験豊かな方ばかりなの ですが、この中で企業とのかかわりになったときに、まさに能力開発の受け手である働 く人たちの置かれた実態や企業とのかかわりの中における問題意識というのは、この中 ではすくいきれないのではないか。アンケート調査等はたぶんやられているとは思うの ですが、やはりメンバー構成としてちょっとバランスを欠いているのではないかという 印象があります。  もう1つは、そもそも企業といってもこのメンバーの方々の企業というのは、かなり 先進的な取組をやられている企業ばかりです。いわゆる企業とのかかわりの中における さまざまな能力開発にかかわる問題、制約が多いのは、特に中小企業の関係で、そうい った声が本当にこの中で十分すくいきれるのか。ここで大きく企業のあり方という形で 整理されるのであれば、今後そういった観点を含めての幅広い観点での取組を進めてい かないと、バランスを欠くものになってしまうのではないか。  もう1点だけ、いまの説明の中での印象ですが、ちょっと強調されているのが企業依 存ではなくて個の自立というのがかなり強調されているような印象を受けます。もう一 方で先ほどの能力開発基本調査の結果概要で見ると、企業の能力開発方針において「企 業責任」、「ライン主導」、「労働者全体」を重視する傾向が強まっているとなっている。 もちろん個々人の能力開発、キャリア形成にかかわる主体性を高めていく方向はいいの ですが、現実の実態とのギャップがいまはあまりにも大きくて、その中で各企業、特に 集団や組織的なもの、あるいはチームワークという部分で、さまざまな問題意識の中で いま研修、あるいは能力開発のあり方について模索しているところが、かなり大きな方 向ではないかと思います。そういった観点で、あまりにも個の部分を強調しすぎるのは どうなのかなと。こういう言い方をすると失礼かもしれませんが、まさに先進的な取組 をやられて、先を見て取り組んでおられるメンバーの方々の中での論議になると、どう してもやはりそういう方向に行き過ぎてしまうのではないかという気がしますので、ち ょっと印象も含めた意見としてお願いします。 ○今野分科会長 いまのお話の中で、前半はご意見として伺っておきます。2番目の点 については、何かコメントはありますか。 ○草野審議官 今回は企業全体ということでやりたかったのですが、大企業、中小企業 をトータルで含めると拡散してしまうので、とりあえず先進的な所の取組を取り上げて、 いまどういう方向に向かっているのかを見ています。中小企業についてはまた別途、こ れはあまりにもいろいろな中小企業がありますので、整理してきちんとやっていきたい と。むしろそちらのほうは時間をかけて、中小企業とか弱者をやりたいと思っています。 全体の企業や労働者がいる中で、ある程度部分部分で見て全体像をつかんでいかなけれ ばいけない。そういう意味で今回先進的な企業を見まして、そのいいところというか、 これからも取り上げて施策的にも溶け込ませていく必要があると思います。  もう1つの視点は、生涯ということで職業生涯が長くなる中で、ずっと働き続けると いうわけにはいかない。やはりマラソン型というか途中で水を補給したり、これは第8 次計画でも書いていただいたことですが、それを深めていくという視点で先進的な分野 を取り上げたということです。ですから、ある意味ではこれだけではなく、中小を含め て全体像をこれからキャリア支援という観点で考えていきたいと思って、取りかかりは これからやると。  もう1つは、これは問題提起型という報告で、方向性を出したというよりこういう問 題があるのではないかということで取り上げていますので、これを契機として、今回は 組合の方には入っていただきませんでしたが、どんどん議論をしていただいて、むしろ 今後議論していく題材をここで集めたという性格です。ですから今後必要に応じて、当 審議会等でも取り上げ方を考えながらご議論していただくことを考えていきたいと思い ます。 ○黒澤委員 先ほどの西原委員のお話は、私も全面的に賛成です。ただ、いま草野審議 官のお話を伺って、今後ずいぶん多面的に検討を深めていくということで安心しました。  先ほどのものづくりに関する発表の中で、女性が非常に少なくて、今後女性のものづ くり産業への参入に力を入れていきたいという方向のお話があったのですが、ものつく り大学という厚労省も大きく関わった大学があります。そこで私は評議委員をしている のですが、開校当初は女子学生も結構入っていたのですが、年々女子学生の応募者、合 格者が少なくなっています。そういう意味で、自然に任せておくとなかなか増えないと いうことで、ものつくり大学はある一つのケーススタディをつくっていく実験ですので、 その辺も是非もう少し考えて、厚労省としても力を入れていただきたいと思います。 ○今野分科会長 何かありますか。そろそろ終わりにしたいと思っていますが、ほかに ございますか。よろしいですか。それでは、「その他」というのはどなたですか。 ○亀島基盤整備室長 厚生労働省というよりはJILPTの関係でして、プロジェクト研究 を3年半にわたり行っていただきました。職業能力開発と教育訓練基盤の整備について ということで行っていただきました。その研究成果が昨年度まとまっていますので、参 考に付けさせていただいています。座長はご承知のとおり今野先生にお願いしまして、 大変網羅的かつ全体的な研究になっていますので、今回の分科会の中で資料として付け させていただきました。 ○今野分科会長 ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。ちょっと私から お願いですが、今日は大変貴重な資料をたくさんいただきまして、ありがとうございま す。ただ、運ぶには多すぎます。できればご希望の方は郵送していただくということで よろしいですか。では、ご希望の方は皆さんの前にボンと積んでおけば、郵送をされる ということにさせていただきます。  最後に議事録ですが、労働政策審議会運営規程第6条により会長の私と、私の指名す る委員の2人に署名していただくことになっています。署名は、井上委員と草浦委員に お願いしたいと思います。それでは、今日は終わります。ありがとうございました。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 総括係 (内5738)