07/07/19 第1回介護事業運営の適正化に関する有識者会議議事録  第1回介護事業運営の適正化に関する有識者会議 日時 平成19年7月19日(木)10:00〜12:00    霞が関東京會舘ゴールドスタールーム ○古都振興課長 おはようございます。それでは、定刻となりました。第1回の「介護 事業運営の適正化に関する有識者会議」を開催させていただきます。  座長が決まるまでの間、私、振興課長の方で議事を進めさせていただきたいと思いま す。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、本日第1回の会議が始まるに当たりまして、阿曽沼老健局長から御挨拶を 申し上げます。 ○阿曽沼老健局長 おはようございます。老健局長の阿曽沼でございます。  本日は、御多用中のところ、大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうご ざいます。  今日は第1回目ということで、「介護事業運営の適正化に関する有識者会議」という のを私ども老健局として設けさせていただきましたその趣旨について一言申し上げたい と思います。  御承知のとおり、介護保険制度は、平成12年の4月に実施をされまして、今まで7 年余り経過をしてまいりました。この介護サービスの事業者につきましては、一定の基 準を設けておりまして、その一定の基準をクリアすればすべて事業者を指定するという 仕組みになっておりまして、あとは事後規制をする、そういったような形でサービスの 質を確保するという事後規制に重点を置いた規制ということになっております。その結 果、公的主体のみならず、あるいは社会福祉法人等々だけではなくて、株式会社、ある いはNPOなども含めた多様な主体によって今、介護サービスが提供されているという 実態がございます。その利用者の方もかなり多岐にわたっておりまして、在宅サービス を中心に介護サービスがかなり拡大しているという現状でございます。そういう意味で は、かなり広く国民に理解をされ、認知をされてきているのではないかというふうに思 っております。  今後さらに高齢化が進むことが考えられますが、介護ニーズもさらに高まるというこ とで、一方においてはサービスの質を高めなければならない。さらにまた、この制度自 体を将来にわたって持続可能なものにしていかなければならないという使命を持ってお ります。そういう課題に対応するために、私どもはいろいろな形で介護保険制度の改正 もやってきたわけでございますけれども、平成18年の4月から新たな改正を実施をいた しました。その結果、かなり厳しい規制になったわけでございますけれども、一方にお いて、今般、かなりメディアでも報道されておりますけれども、一部の公益的な事業者 による不正行為が発覚をするという事態になりました。私どもとしては、大変残念な事 態だというふうに思っておりまして、そのサービスを利用されている利用者の方々に影 響を与えるだけではなくて、国民の介護保険制度自体に対する信頼を失わせしめる行為 ではないかということで、大変重要視しております。  今回の事案が直接の契機ではございますけれども、国民の介護保険に対する信頼を回 復するという意味で、今回こういう適正化に関する有識者会議というものをつくったわ けでございます。この問題が生じた構造的な背景というものをやはり我々としても、あ るいは、この有識者会議としてもきちんと捉えていただく必要があるだろうというふう に思っております。サービスを利用されている方は高齢者の方でありますから、高齢者 の方が安心してサービスを利用できるというために、サービスの事業者による不正行為 の再発を防止し、また、その後、介護事業を適切に運営するためにどういう必要な対応 が要るかということについて、幅広く御議論いただければというふうに思っております。 今回、いろいろな分野の方にお集まりいただきました。率直に言って、私どもとしては、 今回の事案の構造的な背景というものをいろいろな角度から捉え直さなければならない と思っておりますが、1つには、広域的なサービス事業者に対する規制をどういうふう に考えていくべきなのか、これは事前規制、事後規制を含めて、どこまで規制をすべき なのか。県の単位だけでやっている事業者もいれば、あるいは市町村だけの範囲で営業 されている事業者もいれば、広域的にやられている事業者もいるということでございま すから、その辺をどう考えるかという問題がございます。  それから、法令遵守の徹底、特に株式会社だから、あるいはNPOだから、あるいは 社会福祉法人だからということではなくて、あらゆる経営主体にとってのコンプライア ンスの徹底というものについてどう考えるかという問題もあろうかと思います。さらに は、残念なことが起きて、結果として介護サービス事業から撤退をしなければならない となった場合に、利用者へのサービスに対する確保措置、円滑な移行措置をどういうふ うにシステムとして確保していくかという点も大きな問題ではないかというふうに思っ ております。  私どもは以上3点を主に問題意識として持っておりますけれども、介護保険制度は7 年たちましたが、まだ発展途上といいますか、成熟途上の面もございます。したがいま して、今日お集まりのいろいろな立場、いろいろな分野に造詣の深い先生方にさまざま な御意見をいただきまして、私ども厚生労働省としても、できるだけよりベターな制度、 あるいはもっと国民に信頼される制度に変えていきたいと思っておりますので、どうか 忌憚のない御議論をいただければ幸いでございます。  開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げました。 ○古都振興課長 それでは、引き続きまして、本会議の委員の御紹介をさせていただき たいと思います。五十音順に沿って御紹介させていただきます。  初めに、遠藤委員でございます。  引き続きまして、狩野委員でございます。  神作委員でございます。  小島委員でございます。  木間委員でいらっしゃいます。  小山委員でいらっしゃいます。  櫻井委員でいらっしゃいます。  山本委員でいらっしゃいます。  引き続きまして、事務局を御紹介させていただきます。  先ほど御挨拶いたしました阿曽沼老健局長でございます。  木内審議官でございます。  石塚総務課長でございます。  小関計画課長でございます。  中井介護保険指導室長でございます。  榎本企画官でございます。  私、振興課長の古都でございます。  議事に先立ちまして、本会議の運営について御説明をさせていただきます。  まず第1点、議事は原則公開であること。  それから第2点、議事録も原則公表されること。  以上でございます。  なお、本会議の座長は遠藤久夫先生にお願いいたしたいと思いますが、いかがでござ いましょうか。             (「異議なし」と声あり) ○古都振興課長 御異議なしということで、遠藤先生におかれましては、座長席にお移 りいただければと思います。             (遠藤委員、座長席に着席) ○古都振興課長 それでは、これからの進行につきましては、遠藤座長にお願いいたし ます。よろしくお願いいたします。 ○遠藤座長 ただいま座長を拝命いたしました学習院大学経済学部の遠藤と申します。  私は経済学者でありまして、医療や介護のシステムについて経済学の視点から研究を しております。実は厚労省の審議会等々では、どちらかというと医療の方を中心にやら せていただいておりまして、現在も中医協とか社保審の後期高齢者の特別部会といった ような委員を務めているわけですけれども、介護保険に関する審議会というのは実は今 回初めてでございまして、何とぞよろしくお願いいたします。  先ほど局長よりお話がございましたように、介護保険制度は我が国の高齢社会にとっ ては今後ますますその重要性は増すわけでございますけれども、その中で、今回の不祥 事といったらよろしいのでしょうか、いろいろな意味で介護サービスの提供に対する規 制のあり方に大きな課題を投げかけたわけでございます。介護保険制度は、歴史も7年 とまだ短いわけですので、このようなことをきっかけに逐次制度が改善しながら完成度 の高いものになっていくのだろうと考えております。ある意味、この会議を災い転じて 福となすような、そういう会議にできればと思っております。幸い、委員の皆様にはこ の分野の本当のエキスパートの方が就任されておりますので、皆様の御協力のもと、実 りのある方向性を導き出せるよう精いっぱい努力いたしますので、よろしくお願いいた します。  それでは、早速議事に移りたいと思います。  まず、事務局から幾つか資料が提出されておりますので、その確認及び説明を事務局 よりお願いしたいと思います。 ○榎本企画官 それでは、企画官の榎本でございますが、まずお手元の資料の確認をさ せていただきたいと存じます。  まず、資料1ということで薄い2枚ペラでございますが、「介護保険事業運営の適正 化に関する有識者会議の設置について」というものでございます。それから、資料2と いうことで、これは横紙でございますが、「事業者規制の現状について」というもの。 それから、資料3、これは縦紙でございますが、「株式会社コムスンの不正事案に係る 経緯について」。これが本体資料でございます。  あと、参考資料として4点ほどございまして、参考資料1が「介護保険制度の概要に ついて」、横紙でございます。それから、参考資料2が、縦紙でございますが、「介護 サービス施設・事業所の現状」。それから、参考資料3も縦紙で「参考条文」というも のでございます。それから、参考資料4が「東京都からの提案書」。  以上でございます。先生方のお手元に遺漏ございませんでしょうか。  そうしましたら、引き続き内容の方を御説明させていただきたいと存じます。  まず、資料1を御覧ください。表紙をおめくりいただきますと、開催要綱というもの がございます。今回の有識者会議の概要を説明したものでございます。「趣旨」にござ いますように、先ほど局長が申し上げましたように、今回の介護サービス事業者の不正 事案の再発を防止をして、介護事業運営の適正化を図るために必要な措置として検討す るということを趣旨として今回お願いをしているものでございます。「主な検討事項」 としては3点ほどございまして、1つは、広域的な介護サービス事業者に対する規制の 在り方。2つ目として、指定事業者における法令遵守徹底のために必要な措置。そして 3番目として、事業廃止時における利用者へのサービスの確保のために必要な措置。そ の他ということでお願いをしたいというふうに思っております。  それでは、具体的に中身でございますが、まず恐縮でございますが資料2を御覧くだ さい。資料2の表紙をおめくりいただきまして、1ぺージ目でございます。「介護サー ビス事業者の指定手続の流れ」というものでございます。これは、介護保険の中でもい ろいろな各種サービスがございますが、居宅サービス事業者の場合についてここでは整 理を例示としてさせていただいております。通常、介護サービスを利用される場合には、 事業者の指定を受ける。そして、指定を受けた事業者からサービスを受けることになり ますので、その指定の関係の手続がどうなっているのかということをここでは一覧図と して整理をさせていただいております。  まず、事業を行うということを考えますと、居宅サービス事業を行う方が都道府県知 事に申請をしていただくということになります。それで、知事の方では、指定のあった ものについて具体的に審査を行います。審査を行って、その際に、申請の枠の右の方に ございますが、幾つか欠格要件というものがございまして、例えば人員基準を満たさな いときでありますとか、あるいは設備、運営基準を満たさないとき。あるいは、取消し から5年を経過していないときとか、あるいは申請前5年以内に不正又は著しく不当な 行為をしたときといったような欠格事由に該当する場合には指定は行わないということ で、指定の拒否をするということになっております。こういった欠格事項に該当しなけ れば指定を受けられるということになってまいります。  この指定でございますが、通常、指定を受けますと6年間指定の有効期間があるとい うことになっておりまして、6年後にまた更新の申請をしていただいて、当初の欠格事 由に当たらなければ指定の更新が受けられるという流れになっております。  そうしますと、指定を受けた後でございますけれども、事業者に対しましては、法律 の上でも法令遵守でございますとか、あるいは適切なサービス提供といった責務の規定 がかかっております。それからまた、そういった事業を運営している中で、例えば名称、 所在地の変更などがありますと、変更の届出をしていただくということになりますし、 事業の休止あるいは廃止といったときには、それを届出をしていただくという形になっ ております。  そしてまた、通常、行政の方からは、事業者の方に対しまして指導・監査ということ で定期的に、あるいは随時に検査・指導に当たるという形になっております。  それから、そういった指導・監査を通じて、あるいはいろいろな情報を得ることで、 基準に従った人員配置や適切な事業運営が行われていないというような状態が生じた場 合には、県庁の方から実際に調査に入りまして、必要なときには勧告を行う。勧告に従 わないときには、命令といったところまで命令措置をかけるという形になってまいりま す。  そして、そういった導・監査の結果、いろいろな問題が生じたということが明らかに なった。例えば指定の際の欠格条項に該当したとか、あるいは基準に違った人員配置や 適切な事業運営ができない。あるいは、そもそも不正な手段によって指定を受けたとい った場合には、指定の効力の停止、あるいは指定の取消しというような事態にも至ると いうことになってまいります。  大まかな手続の流れは、こういったような流れになっているものでございます。  参考条文が参考資料3にございますが、またこれも適宜御覧いただければというふう に思っております。ここでは居宅サービス事業ということで整理をさせていただきます。  次に、もう少し具体的にその中身を見てまいりますと、2ぺージでございますが、「指 定拒否の要件」というものがございます。これは、申請者が下の点線の枠の中に囲って おります幾つのそういう事項に該当する場合には、都道府県は指定をしてはならないと いう形になっております。例えば、これは居宅サービス事業者の場合ですけれども、1 つは法人でないとき、あるいは人員に関する指定基準を満たしていないとき。それから、 設備運営に関する基準を満たしていないときといったようなものがございます。  それから、4番目でございますが、禁錮以上の刑を受けて、その執行を終わるまでの 者である。あるいは、保健医療福祉に関する法律によって罰金刑に処せられて、その執 行が終わるまでの者である。あるいは、6番目でございますが、指定取消しから5年を 経過しない者である。それから、指定以前5年以内に介護保健サービス、これは法律上 は居宅サービス等と言っておりますが、そういったものに関しまして、不正または著し く不当な行為をした者であるといったような場合が指定の拒否がなされるという形にな っております。 こういったものを踏まえて、3ぺージの方では具体的な指定基準、人 員設備運営基準というものがあるということを御説明しております。  その基準につきましては、実は5ぺージにございますように、各サービスの類型ごと に基準を設けておりまして、これはサービスの各類型ごとに省令で具体的な人員、設備、 運営の基準というものをそれぞれ定めておるところでございます。  6ぺージにまいりますが、「指定を受けた介護サービス事業者の責務」ということで、 ここでは指定居宅サービスとして73条とか74条の方でそれぞれ忠実な職務遂行義務と いったようなもの、あるいはサービスを受ける立場に立ってのサービス提供といったよ うなことを定めております。  それから、変更の届出等ということでございますが、これは今回の事案にもちょっと 絡んでまいりますけれども、指定を受けた事業所について事業の休廃止をする、あるい は再開をするといったときには、10日以内に届出をするということで、これは事後に届 出をいただくという形になっているものでございます。  そして、以下、サービス事業者に対するいろいろな監督規定がございますが、それは、 9ぺージに飛ばさせていただいて、17年法改正の規制の見直しの流れと併せて御説明を させていただきたいと思います。  10ぺージをおめくりいただきまして、実は事業者規制のあり方につきましては、平成 17年に介護保険法の大きな改正を行いました際に、併せて見直しをしております。そ の見直しは、10ぺージにございますように、大きく3点ございます。1つは、指定の欠 格事由、そして指定の取消要件の追加ということでございます。それから、2番目は指 定の更新制の導入ということでございます。3番目としては、勧告・命令等の追加とい うことでございます。  以下、その概要を御説明申し上げますと、まず11ぺージをおめくりいただきますと、 「事後規制の導入の背景」ということでございますが、従前から介護事業者の指定とい う仕組みはあったわけですけれども、その指導・監督のあり方について、まず介護サー ビスの質を確保する上で、事後規制のルールをもう少し整備をする必要があるだろうと いうことで幾つか御指摘をいただいております。1つは、指定拒否の要件が不十分であ るということでございます。当時の法制度からいたしますと、例えば過去に何か問題を 起こした事業者で、今後再発が見込まれるというような場合でも、指定拒否が法律上明 確になっていなかったというような事態がございます。そういう意味で、指定の要件の 見直しを行うということで、次のぺージになりますが、指定要件の見直しをしておりま す。  12ぺージを御覧いただきますと、1つは、対象者の追加ということで、問題がある欠 格事由の対象として、従来は申請者のみを挙げていたわけですけれども、法人の役員と か、管理者というものも欠格事由の中に含めるという形にしております。こういった従 前、指定の取消処分を受けた事業所にいた法人役員、あるいは管理者という方がもし新 たに申請をされた事業所の中におられれば、そういった者については指定をうけること はできないということになってまいります。  それから、もう1つは要件の追加ということでございまして、従前、人員基準、ある いは設備、運営基準を満たさないおそれがある、違反しているといったような場合は指 定を受けることはできないということになっておりましたが、そのほかに、下の枠の中 にございますが、禁錮以上の刑を受けて、執行を終わるまでの者でありますとか、いわ ゆる保健医療福祉の罰金刑を受けている、あるいはと指定取消しから5年を経過しない 者である、それから5年以内に介護保険サービス、居宅サービス等に関しまして不正又 は著しく不当な行為をした者であるといったような要件を新たに追加をしております。  それから、2番目のいただいておりました指摘としては、従前、指定については、一 旦指定を受けたら、その指定の効力に期限がないということで、ずっと指定の効力があ るという形になっておりました。そうしますと、一旦指定を受けますと、介護サービス の質を確保するために、事業者がちゃんと基準を満たしているかどうか定期的に確認す る仕組みがなかったのではないかということで、今回の改正では指定の更新制というも のを導入しております。13ぺージを御覧いただきますと、イメージ図を載せております が、改正前は、一度指定を受けますと、指定取消しがなされるまで、あるいは自分自ら 廃止をするまでの間はその指定は有効であるというような形になっております。そうい ったところで、やはり中身を定期的にチェックする仕組みが必要であろうということで、 今回、改正後では6年ごとに指定の更新を受けるという形に改正をしております。この 指定の更新をする際には、もちろん当然、都道府県庁におきましてその中身を再度審査 をするという形になってまいります。その際には、指定の更新の欠格事由に該当する場 合には指定の更新が受けられないという形になってまいります。条文上は、指定の欠格 事由の規定を準用するという形で、更新の欠格事由を指定の欠格事由と同様な形で適用 するという形にしているものでございます。  それから、次の14ぺージを御覧いただきたいと思います。事後規制が適用される事 例ということでございますが、通常、介護サービス事業を運営する法人が指定の取消処 分を今後受けるということになりますと、指定の欠格事由に該当することになりますの で、当然のことながら、この法人というのは指定を受けることができないということに なります。例えば下のイメージ図でございますと、A株式会社というところがB訪問介 護事業所で不正の事実が明らかになったということで、都道府県知事の方から取消処分 があったということになりますと、このA株式会社は、もし新たにC訪問介護事業所を 開設しようとしても、このC事業所については指定を受けられないという形になってま いります。  それから、この法人がすでに例えばD通所介護事業所でございますとか、E訪問入浴 の介護事業所でありますとか、F訪問介護事業所といったようなほかの事業所を運営し ている場合には、こういったものについても、実は指定の更新の欠格事由に該当すると いう形になってまいります。具体的に申し上げますと、指定の取消しから5年を経過し ないものである。A株式会社自身が指定取消しから5年を経過しないものに該当すると いう形になってまいりますので、そういう意味で、D、E、Fの事業所についても、そ の事業所の指定の更新を受けるということになったときに、再度指定の更新を受けると きには、欠格事由に該当するということになりまして指定の更新は受けられないという ような構造になっているものでございます。  これが今回の改正の指定関係の要件に伴って生じてくるものでございます。  この指定につきましては、15ぺージにございますように、各サービス類型ごとに指定 の根拠規定というのがございまして、それぞれの類型ごとに根拠条文を設けて指定を具 体的に規定をしているものでございます。  続きまして、勧告関係の規定について御説明申し上げたいと思います。恐縮でござい ますが、飛びまして19ぺージを御覧いただきたいと存じます。「行政処分の事務的な流 れについて」ということでございますが、通常、私どもが事業者の方々にお願いする際 には、人員基準、設備基準、運営基準をそれぞれ満たしていただきたいということをお 願いをしております。これにつきましては、現在の法律のスキームによりますと、こう いった基準を満たしていないということになりますと、まず改善勧告を行うという形に なってまいります。それで、期限内に勧告に従わなければ公表するというステップにな ります。それから、正当な理由なく期限内に勧告に係る措置がとられなければ、改善命 令を行って公示を行う。そういった命令に従わないときには、必要な聴聞手続などを行 った上で、指定の効力の全部又は一部停止といったような形になってまいります。それ で、より問題が大きいということになりますと指定の取消処分という形になってまいり ます。こういったような流れで勧告などの手続がとられるという形になってまいります。 これは、赤い枠で囲っている部分が実は17年改正で設けておりまして、従前はこの赤い 部分がございませんで、問題があれば指定取消しというところに一挙に飛んでいたとこ ろで、今回、その間をとって、よりきめ細かに改正を行ったというのが今回の改正でご ざいます。  以上が事業者規制の関係でございまして、続きまして、今回の事案の関係を御説明申 し上げたいと存じます。資料3を御覧いただきたいと存じます。  今回の株式会社コンスンの不正事例の経緯でございますけれども、まず1ぺージを御 覧ください。(1)にございますように、株式会社コムスンの件につきましては、全国的 な監査によりまして、6月5日現在ですと5都県8事業所で不正な手段による指定申請 を行ったということが確認されております。具体的には、9ぺージの方を御覧いただき ますと、別添1ということで問題のあった事業所の状況を整理しております。  また1ぺージに戻りますと、こういった行為につきましては、いずれにしても、不正 な手段による指定申請がなされたということでございますので、指定取消処分に該当す るものでございましたけれども、9ぺージで御覧いただいたように、いずれの事案にお いても、実は取消処分を行う前に事業所の廃止届が出されまして、結果的に取消処分が なされなかったというところでございます。例えば10ぺージを御覧いただきますと、青 森県の弘前城東ケアセンターの例で具体的な流れを整理しておりますが、ここでは4月 12日から13日にかけて監査を実施いたしましたところ、この城東ケアセンターで指定 申請時に記載のありました非常勤訪問看護員につきまして、指定申請ときからの雇用実 態が確認できなかったという状況でございます。その後、4月25日に聞き取り調査を行 いまして、やはり申請時から雇用実態がなかったという事実が確認された。5月2日に 県庁の方では聴聞の通知を起案しておりましたが、決裁して発送準備をしておりました ところ、5月7日になってケアセンターの方から事業所の廃止届が提出されて、これを 受理したということで、聴聞手続に入ることは実際上はできなかったということでござ います。  11ぺージの方は兵庫県豊岡立野ケアセンターというものでございますが、これも同様 にそういったような流れがなされているものでございます。  1ぺージに戻らせていただきまして、(3)でございますが、厚生労働省といたしま しては、こういった不正行為の事実確認、そして法適用関係を検討させていただきまし て、こういった青森県、兵庫県の事例というのは、今回の改正を行いました18年4月以 降の申請に基づいてなされたケースでございますので、改正介護保険法の「不正又は著 しく不当な行為」に該当するということで、居宅サービスを含むすべてのサービス種類 についてコムスンの事業所の新規指定・更新をしないということを都道府県あてに通知 を行っております。具体的な通知につきましては、4ぺージから8ぺージに通知をつけ ておりますので、また御覧いただければと思います。  同日、株式会社コムスンに対しましては、処分内容を伝達をいたしまして、改正介護 保険法の規定にのっとりまして、更新時期までのサービス提供と、それから更新ができ なくなる事業所が出てきます来年4月以降の利用者の移行のための事業計画の作成など を指示をしているところでございます。具体的には、小さい字で書いておりますような 指示を出させていただいております。  同日夜、株式会社コムスンの方では、一旦、事業を別法人である同一資本グループ内 の日本シルバーサービス株式会社に譲渡するという方針を公表しておりますが、厚生労 働省といたしましては、6月7日に同社に対しまして、やはり20年3月までの間はコム スンが責任を持って利用者にサービスを提供するということ。そして、同一資本グルー プ内の別会社への事業譲渡というのは利用者や国民の納得を得られない行為でございま すので、日本シルバーサービス株式会社への譲渡というのは凍結すべきであるというこ と。そして、受け皿については、7月末までに作成する事業移行計画も踏まえて、厚労 省と十分調整・相談すべきといったことを指導しております。  これを受けて、6月8日に、同社はグループ内の別会社への事業譲渡については、ス ケジュールを含めて現時点では何も決まっていないということで、今後、厚労省と調整 しながら検討するという形にしております。  その後、6月13日にコムスンの方におきましては、グッドウィル・グループについ ては、関連会社を含めて、すべての介護サービス事業から撤退をする。それから、事業 譲渡先としては、各地域においてグループ外の事業主体とする。それから、具体的な譲 渡先については、各方面と十分調整をした上で、できるだけ早い時期に選定をするとい った正式な対応方針をお示しいただいているところでございます。経緯につきましては、 一応そういったところでございます。  実は、法律の適用関係について1点説明させていただきたいと存じまして、14ぺージ を御覧いただきたいと存じます。先ほど事業者の規制の現状についてというところで、 粗々介護保険法の仕組みを申し上げたところでございますが、それが今回の事例につい てどう適用されているのかということを解説したのが14ぺージからの資料でございま す。  まず、指定許可についてということでございますけれども、介護保険法におきまして は、介護サービス事業者の指定、あるいは許可の欠格事由に該当する場合には、これは 指定又は許可をしてはならないという形になっております。これは裁量があるわけでは なくて、してはならないという形になっているわけでございます。今回の青森県と兵庫 県の不正事実というのは、不正の手段による指定を受けたという事実によりまして、こ れは欠格事由の1つとして挙げております「居宅サービス等に関し、不正又は著しく不 当な行為をした者」に該当するというふうに解釈をしております。この不正行為につき ましては、今回のケースにつきますと、居宅サービス等ということで訪問介護と介護予 防サービスの事業者の指定を受けるときに行われていたわけでございますけれども、介 護保険法上は、実は「居宅サービス等に関し、不正又は著しく不当な行為をした者」と いう要件については、すべてのサービスの種類の指定許可の欠格事由として挙げている ものですから、すべてのサービスの種類において、これは指定あるいは許可の欠格事由 に該当するという形になってまいります。したがいまして、不正行為の発生から5年間 については、コムスンについては介護サービス事業者の指定又は許可をしてはならない という形になってまいります。  次に、許可あるいは指定の更新の際も同様でございまして、これは6年ごとの指定の 更新ということになってまいりますが、その要件として、指定許可の規定というものを 準用しているものでございますから、同様に「居宅サービス等に関し、不正又は著しく 不当な行為をした者」という要件が係ってまいりますので、更新を行う場合についても、 やはりこれは更新ができないという形になってくるわけでございます。  なお、取消事由に該当しますと、これは指定又は許可を取り消すことができるという、 できる規定ということになっております。今回の青森県とか兵庫県の事例につきまして は、これ自体については取消事由に挙げておりますとおり、「居宅サービス等に関し、 不正又は著しく不当な行為をした者」に該当するというふうに解しております。この取 消事由につきましては、すべてのサービスについても取消事由として挙げておりますの で、すべてのサービスの種類において、これは取消事由に該当するということになって まいりますが、だからといって、今回明らかになった不正事実だけで、問題があった青 森とか兵庫の事例以外の事業所において直ちに取り消さなければならないということで はなくて、これはむしろ個別の事業所ごとに監査を行って、事実確認を行った上で、処 分を行うべきかどうかを判断をするという形で考えております。  それから、役員の取扱いでございます。介護保険法上、不正又は著しく不当な行為を した事業者の役員等につきましては、法人と同様に、その欠格事由、あるいは取消事由 に該当するという形になっております。役員等ということでは、具体的には次の(1)、(2) が該当しております。1つは、不正行為を行った時点での申請書に役員として氏名の記 載をされておられる者。それから、不正行為を行った事業所の管理者ということになっ てまいります。これらの役員につきましては、そういった不正行為の時点から5年間は、 ほかのサービス事業者の役員などになっても、これは指定の欠格事由に該当するという ことになってまいりますので、もしこういった役員がほかの法人の役員申請者になって いた場合には指定をしてはならないということになってまいります。これは取消事由に も該当いたしますので、当然、取消事由にもそれぞれのサービスの申請があった場合に は、取消事由に該当するということになってまいります。ただ、これも先ほどの取消処 分の場合と同様でございますが、不正のあった事業所については当然直ちに取消しとい うことになりますけれども、ほかの事業所については、今回明らかになった事実のみで、 直ちに取り消さなければならないということではなくて、個別の事業所ごとに事実確認 をしっかり行った上で判断をするという形で考えております。  それから、指定取消処分中に廃止届出があった場合の取扱いということでございます が、これは今後の取扱いということでございますけれども、事業所の廃止届は、今回の 事例ですと聴聞手続に入る前になされたわけでありますけれども、「著しく不正又は不 当な行為」に該当するというふうに判断されますと、許可の取消事由、あるいは更新・ 指定の取消事由に該当するというふうに判断することが可能だというふうに私どもは考 えて整理をさせていただきたいと思っております。  今回影響のございますコムスンの事業所につきましては、18ぺージ、19ぺージに表 で整理をしておりますので、また御覧いただければと思います。  以上がコムスン関係の状況の御説明でございます。  あと、後ろの方は参考資料として、まず参考資料2の方では、現在の介護サービス施 設・事業所の現状を載せております。1ぺージの方では、各サービス類型ごとにどのよ うな主体が運営をしているのかという現状を、17年10月1日現在でございますけれど も、整理したものを載せております。  それから、飛んで3ぺージの方では、これまで指定取消などの処分があった事業所の 法人種別ごとの整理、事業所ごとの整理を載せております。これも、このような状況に なっているということでございます。  それから、4ぺージ目では各都道府県別の整理の表を載せているものでございます。  あと、参考資料3は参考条文でございますので、また後ほど御覧いただければと思い ます。  それから、参考資料1でございますが、これは介護保険制度の概要ということで、詳 しくはここでは御説明申し上げませんが、今後議論をいただく際、ちょっと念頭に置い ていただいて御参考になればということで、13ぺージ、一番最後のぺージでございます けれども、「介護サービス事業に係る事業の特性として考えられるもの」というものを 整理をしております。  1つは、生活の密着性ということでございます。介護サービスに係る事業につきまし ては、これはやはり身近な地域において、介護を要する高齢者の生活をそれぞれのニー ズに応じてきめ細かく支える、いわゆる生活密着性の高い事業であるということが1点 目でございます。  それから、2点目は継続性・安定性ということでございます。介護を要する高齢者に とりましては、介護サービスというのは、言ってみればライフラインのようなものであ るということでございますので、その方のニーズに応じて、そのニーズに合った事業者、 あるいは従業者による継続的・安定的なサービス提供が望まれるということでございま す。よくなじみの関係が求められるということを言っておりますが、そういう観点でご ざいます。  それから、選択肢の多様性というのが3番目でございます。やはり介護を要する高齢 者の方々というのは多様なニーズを抱えております。そうしますと、そういった方々の ニーズに応じて適切なサービスを提供するということが必要になってまいりますので、 介護サービスとしても、福祉的なサービスから医療的サービスまで幅広いサービスとい うものが求められます。9ぺージの方に介護サービスの種類を載せておりますが、いろ いろと予防給付から介護給付まで、また、非常に身近な地域でやっているものから居宅 サービス、施設サービスといったものまで、非常に幅広いサービスがございます。そう いう中で、それぞれのニーズに応じた多様なサービスを選択できるようにするというこ とが求められるということでございます。  それから、4番目は事業主体の多様性ということでございます。これにつきましては、 一部のサービスを除いて、介護サービスというのは社会福祉法人や医療法人、株式会社 NPOなど、非常に多様な事業主体が担っているということでございます。  それから、5番目は公益性ということでございます。事業者が提供する介護サービス に対して、介護給付という形で保険者の方から必要なサービスの費用が支払われるとい うことになっております。介護給付につきましては、5ぺージにもございますように、 保険料と公費によって賄われているということでございまして、これは国民の税金、あ るいは、まさに国民の保険料ということで負担されているものでございますから、非常 に事業の公益性が高いということがございます。  こういった5つが恐らく介護サービスに係る事業の特性として考えられるのではな いかということで、今後の議論の御参考にしていただければということで御紹介をさせ ていただきました。  非常に駆け足で申し上げましたが、また何かございましたから御質疑などをいただけ ればと思っております。よろしくお願いいたします。 ○遠藤座長 ありがとうございます。コンパクトに整理して御報告していただきました。 これについての御質問をというところですが、実は、参考資料4で東京都からの提案書 というものが狩野委員から提出されておりますので、続けてこの内容について御発言い ただきたいと思います。狩野委員、よろしくお願いします。 ○狩野委員 7月3日付けで東京都の福祉保健局長から老健局の阿曽沼局長の方にお出 しをした介護サービス事業者の規制に関する法整備についてという緊急提案でございま す。  趣旨は、1枚目の後段の「ところで」以下のところにありますように、コムスンが監 査等の最中に突然廃止届を提出して、利用者に対して不利益・不安を与えたと。それで、 結果的に指定取消処分を免れたこと。それから、同一資本グループ内の企業に事業譲渡 をするということで連座制の適用を免れようとしたということについて、介護保険法が 想定していない事態であるということで、法改正を提案させていただいております。  具体的には、次の別紙にありますように、4点でございます。  今、事務局からも説明がありましたように、1点目は、廃止届は法75条で居宅サー ビスについては廃止の日から10日以内に届け出るということになっておりますけれど も、1つは利用者保護の観点、それからもう1つは、今回の事案のような処分逃れを目 的とした事業廃止を防止するために、事前届出制に改めるということを提案してござい ます。これは、利用者が別のサービス提供事業者へ移行を確認できる仕組みにもなるわ けですので、利用者保護の観点からもぜひ検討していただきたいというふうに考えてお ります。  2番目は、いわゆる連座制の問題ですけれども、今回の同一資本グループ内の子会社 への事業譲渡をコムスンは考えたわけですけれども、それを規制するために70条の2項 6号に連座制の適用の役員等の範囲に同一資本グループ内の法人の役員を加えるなどし て、処分逃れを目的とした事業譲渡を規制できないかという提案でございます。  それから3番目は、同じく連座制の運用の問題ですけれども、今回は不正の手段によ る指定を受けたということで、法の70条2項9号に規定する「不正又は著しく不当な行 為をした者」に該当するという解釈を厚生労働省の方で示されたわけですけれども、一 般的にやはり70条2項9号の「不正又は著しく不当な行為をした者」というのを1件ず つ判断・解釈をしていくのではなくて、解釈及び適用基準を明確にしていただきたい。 これは、法改正というよりも、有権解釈を示していただきたいというものでございます。  それから4番目は、不正な手段により指定を受けた場合、それから不正請求を行った 場合についての罰則規定は、現行の介護保険法には設けられておりません。例えば指導 ・監査の際に虚偽報告を行った場合には罰金刑を科すという罰則規定があるわけですけ れども、指定申請も今回のような不正な手段での指定申請の場合、あるいは不正請求に ついても罰則規定をぜひ設けていただきたいというふうに思います。不正請求について、 例えば詐欺罪等で告発をするといった場合には、詐欺罪の構成要件は非常に厳密ですの で、なかなか難しいというふうに聞いておりますので、ぜひ介護保険法の中で罰則規定 を設けていただきたいというのが提案でございます。  以上です。 ○遠藤座長 ありがとうございました。実際に規制を行うお立場からの問題解決のため の御提案も含まれていたということでありますので、今後の議論の中で参考になるだろ うと思われます。  それでは、最初に事務局から御説明がありました膨大な資料でありますが、これにつ いてまず御質問、あるいは御意見があればお聞きしたいと思います。どなたでも結構で す。  特に今ないようでありましたら、また後に議論をしていく過程において適宜御質問を いただくという形で、早速討論に移りたいと思います。  先ほど資料1で主な検討事項というものが1、2、3、4と出されておるわけです。 第1回ですから、フリーディスカッションという形で議論したいと思いますけれども、 それでも少しは交通整理をした方がよろしいだろうと思いますので、主な検討事項3つ について、関連する事柄についてディスカッションをしていきたいと思います。したが いまして、「広域的な介護サービス事業者に対する規制の在り方」、2番の「指定事業 者における法令遵守徹底のための必要な措置」、3番目の「事業廃止時における利用者 へのサービスの確保のために必要な措置」という、これらについて皆雑方の御所見をい ただければと思います。  それでは、1番目の「広域的な介護サービス事業者に対する規制の在り方」というこ とで、先ほど来の事例にも出ていたわけでありますが、基本的には現行制度は法人単位 ではなくて、事業所単位での指定ということになっているわけですけれども、広域的に 複数の事業所を展開する事業者に適切な事業運営を勧めることが必要となっているとい うことが実態として出てきているわけです。組織的な不正を未然に防ぐためにはどうい ったことが考えられるか、そういった視点の議論になるかと思います。これについては、 さまざまな視点からの御意見があろうかと思いますけれども、いかがでございましょう か。 ○櫻井委員 今の点に関しまして前提の質問からさせていただきたいのですが、資料3 ですが、コムスンの事実関係のところで、1ぺージ目のところに経緯があるのですけれ ども、まず監査をして、それで問題があるということがわかって、取消処分をしようと 思って起案をしていたら、機先を制して廃止届が出されてしまったので取消処分ができ なかったと。それで、仕方がないので、新規の指定と更新をしないというやり方で、と りあえず対応することにしたというわけですね。その経緯も少し問題があると思うので すが、ちょっと伺いたいのは、まずそこで(3)ですが、都道府県に対して厚生労働省と して通知を出したということですけれども、この通知を出したというのは、基本的には これは自治事務の話で、通知を出して都道府県に一種の指導、技術的な助言というふう に伺っておりますけれども、要するに制度のつくり方が甘いのではないか。行政の機先 を制して、隙間をついて民間事業者がどんどん動いてくるというのがこの問題の構造的 なところだろうと思うのです。  大体、民間事業者と公の行政主体が対応するときには、民間の方がスピードがありま すし、それから知恵が働きます。行政の方はどうしても手間暇がかかるのと、組織とし て動くということになりますと、競争すると負けるといいますか、そのスピードに合わ せて適時適切な権限を行使するということが基本的に不得手な主体なんですね、公的主 体というのは。だから、仕組みをつくるときには、そこを少し改善していくということ がまず王道としてはあるのだろうと思います。そういう前提で申し上げているのですけ れども、そうすると、まず通知を出したという点については、都道府県がその通知に感 度よくレスポンスするかという問題もあって、1つ隙間があるというふうに思っていま す。  それから、(4)のところで、コムスンに対して直接、事業計画の作成等を指示した というのは、これは厚労省さんが指示したということですよね。だから、これは根拠条 文は恐らくないんじゃないかと思いますが、そうですね。だから、事実上、行政指導で やっておられるということで、本来であれば、指定権限を持っている都道府県、あるい は市町村が持っておられる場合があるのかもしれませんが、それに基づいて行政指導す るというのが普通のあり方だろうと思いますが、それを国がやってももちろん悪くない んだけれども、根拠がないということになりますと、法的には何もないところでやって いるということになりかねないので、この点、もし国がきちんと対応するということに なるとすると、そこについての規定がないということ自体がもうひとつの問題じゃない かと思います。それで、指示についても、指示を出したら一応従順に従ってくださって いるということだけれども、相手は従ってくれるだろうという性善説でいくか、性悪説 でいくかというようなこともありますが、きちんと対応してくれる保証がないというと ころで問題が起きているので、仕組みとしてはここにも問題があると思います。ですか ら、この話は、こういう事業者に対する監督のあり方、どういう形で私的な領域に入っ ていくかということになりますけれども、そのときに、国と都道府県と市町村の役割分 担の話ということで、多分その点も踏まえないといけないのだろうと思います。  それから、2ぺージ目へいきますと、(6)で行政指導をしたということで、そうい うふうにまとめておられるのですけれども、ここも非常に甘いというか、行政指導は決 して軽いものではないことはわかっているのですけれども、相手に開き直られますと、 拘束力がありませんのでそれっきりになってしまう。それで、結果としてサービスを受 ける国民の側の方が不利益を被るということになるので、ここも仕組みとしてはどうか と思っています。 ○遠藤座長 今のは御意見ということですね。 ○櫻井委員 ええ。事実関係を確認させていただいたことと、それから全般的な法律の つくり方が甘いということです。 ○遠藤座長 後者は御意見ということですね。 ○櫻井委員 そうですね。 ○遠藤座長 事実確認は、特に質問は。では、お願いします。 ○古都振興課長 事実確認といいますか、先ほど資料3の1の(3)、このことについて は後ろにつけました通知にも書いてございますが、4ぺージ以降、5ぺージのところに 書いてございますように、基本的にはこれは考え方、解釈を示したということでありま すので、地方自治法に基づく技術的助言という位置づけで出しております。ただ、私ど もが出すに当たっては、実際、東京都あるいは青森県、兵庫県等がきちんと事実確定を されたということを踏まえてやっている。そういう事実に基づいて、解釈をお示しした ということでございます木。  それから、指導のところについては、確かに法的根拠というものは明確ではございま せん。しかしながら、指導というのは両者が合意してやっていただくということですか ら、我々としては、こちらの考え方に対して合意をいただいてやっていただいている。 そういう意味で、合意に基づく指導に沿っていただいているというふうに理解しており ます。 ○遠藤座長 櫻井委員、今のお答えでよろしいでしょうか。 ○櫻井委員 はい。あと、最近こういう問題がいろいろ起きるのですけれども、ミート ホープの事件もございましたし、建築偽装の話もそうですけれども、結局、霞ヶ関全体 の行政を見ていて、行政のビジネスモデルが古いんですよね。それで、どうやって従前 でないような形の行政の動き方、ビヘイビアを確保できるような仕組みをつくるかとい うところが問題で、従前どおりやっていると、それを突破してくる人たちというのがた くさんいるし、あるいは想定していなかった事態がおきるので、そこをどう救うか。あ るいは、可及的にそういう弊害をどうしたら少なくすることができるかという観点で、 仕組みをつくらないといけないと思っています。そこは、先例主義じゃなくて、新しい アイデアでやっていかないといけないと思うんです。今の行政指導の話も、ある種相手 が合意してくれるという前提で初めて成り立っていくものですので、そうすると、そう じゃない部分というのが今問われているということで、現にこういう問題が生じたとい うことだと思います。  それから、指定という点につきましても、東京都さんの方から御提案もございました けれども、そもそもは指定のときにきちんと検査ができていれば、こういう指定はして いなかったはずということになるのではないかとも思われますが、それはしようがない んでしょうか。指定法人の場合には、民間事業者の主体性を前提にした上で、行政が最 小限関与するという形で指定しているだけなので、許可制とか特許とか、そういうのと 違いますから、そういう前提でやっておられるのでしょうけれども、そもそも論から言 うと、そこのところの審査というのがどうか。それからまた、指定法人は1つのドグマ としては余り干渉しないというところがセットとして出てきて、監督手段も比較的緩や かにやっていくというような流れがあるんだろうと思います。しかし、こういう事例が 出てくるということになると、指定法人であっても審査などをきつくやらなければいけ ないとか、監督についても厳しくやっていかなければいけないというような流れになっ ているんだろうと思います。  それで、事前規制にするというのはよろしいのですが、罰則の話をされましたが、恐 らく罰則は、これは何とかの一つ覚えで、何かあると罰則をといわれるのですが、不正 な行為をいかに防止するかという観点で考えたときに、今、罰則は機能不全なんです。 このことはむしろすでに共通の認識になっていると私は思うのですが、そうすると、行 政上の措置として、違法行為をいかに抑止するかという手法を考えないといけないんで す。その場合には、例えば罰金というけれども、罰金と同じような機能を持つものとし ては、最近は行政制裁金というような言い方もしますが、行政上の措置として違反行為 に対する制裁を設けるというようなことがないと、実際に罰金を設けても、本当に発動 するというのは非常に難しいことだし、警察とか検察当局はなかなか動いてくれないと いうこともありますので、行政としてのツールとしての制裁というものがないという点 が、現行法の欠落部分になっています。独禁法の世界ですと、課徴金の話なども出てき て、理論上は同じ問題ということになりますが、多分そういうことも今後は考えなけれ ばいけないだろう。とりあえず、以上です。 ○遠藤座長 ありがとうございます。規制のあり方について、行政法の専門家のお立場 が非常に濃厚に出ておりまして、今後の議論について視点を幾つか整理していただいた と思います。  ただいまの櫻井委員の御発言に関連しても結構ですし、あるいは、そうでなくても結 構ですけれども、基本的には広域的な介護サービス事業に対する規制のあり方というこ とで、何か御意見ございますでしょうか。 ○神作委員 私は商法や会社法を勉強している者でありまして、そういう意味では、介 護関係とか公的な分野についてふだん勉強している者ではないのですけれども、会社法 から見た場合に、1つ非常に特徴的だというふうに思いましたのは、事業所単位の規制 の体系をとっているという点であります。と申しますのは、会社法ではどのような考え 方に立っているかといいますと、例えば法令を遵守する体制を整備するのは、事業所単 位で決めるべき問題ではなく、まさに法人のトップといいますか、取締役会が存在する 場合には取締役会で決めるということになっております。  それから、ちょっと会社を離れて一般社団法人や一般財団法人の場合でも、新しく制 定された一般社団法人及び一般財団法人に関する法律では、第90条の4項で、理事の職 務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制は理事会で決めるべき事 項とされております。これは、事務局の御報告の中で、介護サービスには幾つかの特色 があって、例えば生活密着性があるというような点からすると、事業所単位で規制を考 えていくというのはある種の合理性もあるのであろうと思いましたけれども、しかし、 会社経営ですとか、あるいは法人の運営という観点からすると、さまざまなガバナンス の要所はむしろ経営・運営のトップの方が占めているということを考えると、事業所単 位の規制と法人を中心とする規制との関係を整理する必要があるのではないかというふ うに感じたのが第1の感想であります。  それから、続けてよろしいでしょうか。 ○遠藤座長 お願いします。 ○神作委員 それから、公的な問題と私的な問題についてでありますけれども、これも 大きな特徴として、介護サービス分野においては事業主体が非常多様化している。その 前提として、選択肢の多様性が求められているということで、介護サービスというのは 社会福祉法人、医療法人、株式会社、NPOなど、非常に多様な主体が担っているとい うことで、私はそのこと自体は方向性としては非常に望ましいことで、それぞれの間で 競争関係が生じ、あるいは場合によっては協調関係が生ずるというような、さまざまな 組み合わせができていくということは理想的だと思っているわけですけれども、それが うまく機能するためには、非常に柔軟で多様な仕組みが必要で、例えばガバナンスをど のように監督して監視して、それを向上させていくかという観点から言いますと、例え ば単なる行政によるチェックというだけではなくて、それ以外のさまざまな観点からの 評価のシステムですとか、法律の議論だけではなくて、もう少し多様な観点からの議論 が必要であるとともに、何よりも実践こそが必要である。そういう分野であるのではな いかと思います。  これまで御報告の中で、平成17年の改正によって行政処分についての多様性が広が って、改善勧告、公表、改善命令、そういった多様な手法が取り入れられたということ でありますけれども、それはそれで評価すべきことであると思いますが、こういった法 的な話だけではなくて、ガバナンスの問題となると、なかなか法律だけで規律するとい うのは非常に難しい。特に私が専門としております会社法では、良いコーポレートガバ ナンスの実現は、法規制だけでは限界があるということが一般に広く認められておりま して、そういう意味では、こういった不正の事例に対処するに際しましても、ガバナン ス全体を向上させるという観点から、もう少し広い視野から議論をしていくということ が非常に重要なのではないかという感想を持ちましたので、2点コメントをさせていた だきました。 ○遠藤座長 神作先生、ありがとうございました。ただいまお2人の法律の御専門家か ら、行政法の立場から公的な規制の持っている特性、問題点ということを挙げていただ きました。また、神作委員からは商法の御専門という形で、法律で規制するということ だけではなくて、ある種のコーポレートガバナンスをどうつくっていくかという視点か ら、しかも、かなり多様な組織がありますので、それに対してどうするのかという、あ る意味で非常に難しいパズルを解くことになると思うのですけれども、そういうことも 重要だろうという話だと思います。いずれにしましても、今後の議論で非常に重要なこ とが視点として言われたと思います。  私、先ほど、「広域的な介護サービスについて」ということに限ってご意見を求めまし たがやはりそういうふうに細かく切ったこと自体はやや仕切りがまずかったかなと思い ます。2番目の「指定事業者における法令遵守徹底のための必要な措置」ということと セットの議論をしなければならないと思います。3番目は、「事業廃止時における利用 者へのサービスの確保のために必要な措置」というちょっと毛色の違う話かもしれませ んので、これはまた別の議論としまして、(1)と(2)について、もうすでに神作先生 は両方混ぜた形で御発言いただいたわけですけれども、この辺について御意見ございま すでしょうか。あるいは、ただいまお2人の委員から御発言があったわけですけれども、 実際の規制をされるお立場の狩野委員、あるいは小島委員から何かコメントございます でしょうか。 ○小島委員 実際に所管しているという立場からちょっとコメントさせていただきます。 都道府県ごとに事務手続を行っていますが、やはりコムスンのような、広域的に全国展 開していて本社機能があるような法人に対しては、個々の事業所に対するでの許認可、 監査というようなことでは十分な対応ができなかったことは事実だったと思いますので、 やはりこういうところを反省しながら、何らかの形で法整備が必要であるというふうに 思っております。とりわけ、法整備ということでは、今回、東京都さん、広域性の対応 ということは1つ必要ですけれども、(2)の方に関連する法令遵守のようなことでは、 本当に緊急に法整備をしていただく必要があるなというふうに私どもは思っておりまし て、そのための提案としては、東京都さんが今回緊急提案されておりまして、大体私ど もが思っていることが基本的には網羅されているというふうに思うわけです。  そういう中で、それにつきましてコメントといいますか、意見を申させていただくの ですけれども、1つは、事業廃止というのが今回、法規制しようとしたときに、あらか じめ事業廃止という手段を事業者側が持ち出すので、これをどうしても防止する必要が あるということで、そのために、東京都さんとしては、事前届制にしたらというような 提案をされております。そういうのを1つの方法かなと思いますけれども、問題事例が 発生すると、私どもは監査に入るわけですけれども、監査に入ったら直後に廃止届が出 てくるということで問題が非常に混乱して、適正な処理、指導ができなかったというこ とから考えますと、監査開始後には廃止届は受理しないというような法整備をすべきで はないか。その方が直接的に廃止届をさせないということで、監査をしっかりして、そ の中で取消処分なら取消処分というきちんとした対応ができますので、それが今回の場 合は完全に法的な尻抜けの部分を活用されたということでございますので、これは何と してでも法整備をしていただく必要があるということで、東京都さんの提案にさらに加 えてコメントさせていただいたわけでございます。  2つ目も、同一資本グループ内で事業譲渡するというのは非常にまずいわけでござい ます。これも法律的には尻抜けになっておりますので、それを今回、東京都さんで提案 されておりますけれども、ちょっと具体的な話になって申しわけないのですが、役員等 の範囲に同一資本グループ内の法人の役員を加えるというようなことになってきますと、 作業としては、そのチェック体制ということでは非常に大変になって、本当にうまくで きるのかなというようなことは思いますけれども、何らかの形で事業譲渡規制というこ とをやる必要があるということからは、同一資本グループ内での事業譲渡を何らかの形 で規制するような法律の見直しはしていただきたいというふうに思います。  3番目の「不正又は著しい不当な行為をした者」の解釈については、今回、都道府県 では十分な解釈ができなかったということで、結果、厚労省さんの指導に沿って都道府 県が法解釈をしたということになるわけでございますが、この辺はもっと前から都道府 県に権限があるわけでございますので、それが的確にできればよかったわけですけれど も、やはりそこの解釈、運用基準が明確になっていないので十分できなかったというこ とからは、適切な解釈等はお願いしたいというふうに思います。  それから、4つ目に、罰則規定を設けるということがございますが、先ほどもどなた かからコメントがありましたけれども、罰則については、連座制を設けてるということ では非常に厳しい規制がなされておりますので、あえて罰則まではどうかなというのも 私どもとしては、それは場合によってはそういうことも必要かもしれませんけれども、 十分なイメージは持っていない。連座制をしっかり効果的に使っていけば、かなりのこ とができるのではないかというふうに思っております。東京都さんの提案に対するコメ ントみたいなことで申しわけありませんけれども、私どもとしては、できるだけ法を運 用していく面で尻抜けになっているところは当然ありますので、そこをまず穴埋めをし ていただくということが重要でございますので、そのことを申し上げたいと思います。 以上です。 ○遠藤座長 ありがとうございます。狩野委員、同じく規制主体として、すでにレポー トが出ているわけですけれども、また今の議論を踏まえて御意見をいただければと思い ます。 ○狩野委員 1つは、検討事項が広域的な介護サービス事業者に対する規制のあり方と いうのが最初のテーマになっているわけですけれども、まず私は、基本的に事業者に対 する規制のあり方を検討した上で、その上で広域的に事業展開をしている事業者に対す る規制はまたそこに特化して検討すべきじゃないかというふうに、検討事項の立て方の 問題としてそういうふうに思います。  それからもう1つ、櫻井先生からお話があったように、例えば指定申請時のチェック というのは形式的にはやっているわけですね。事業開始の大体2カ月前には指定申請書 を出してきて、例えば居宅サービス、訪問介護事業者ですと、管理者ですとか、サービ ス提供責任者はほかの事業所から異動でこういう方を当てますという、要は、それは事 前の届出ですから、その時点ではまだそこで同じ社内での社内異動はまだ行っていない わけですね。事業開始までに異動させるという約束のもとに書類が提出されるわけです けれども、確かに異動した後のチェックまで全部やっているかというと、そこが今回、 私どもが見ても、結果的に後の立入検査ですとか、指導監査まで発見できなかったとい うのは反省すべき点だなと思うのですけれども、ただ、事業所の数が多い中で、例えば 管理者やサービス提供責任者の人事異動管理まで行政がすべて把握をするという仕組み がつくれるかどうかというのは非常に難しいと思っています。ただ、私は規制のあり方 として、例えば管理者やサービス提供責任者には番号を付番をして、全国で統一管理を するというふうにすれば、今、例えばケアマネージャー(介護支援専門員)には統一的 な番号を付番をしておりまして、全国的に一律で管理ができるようになっているわけで すけれども、管理者やサービス提供責任者までそういう規制をかけて事業社内での異動 等もきちんと管理できるようになれば、事前のチェックはある程度はできるのかなとい うふうに思いますけれども、行政のコストを考えたときに、そういった手法が本当に妥 当なのかどうかというのはちょっと議論の余地があるのではないかというふうに思いま す。 ○遠藤座長 ありがとうございます。現場のお立場から意見をいただきました。一通り 御意見をいただきたいと思いますので、規制のあり方についてということで、この規制 を受ける方の立場の方はこのメンバーの中にはいらっしゃらないのですけれども、介護 の運営について大変お詳しい小山先生、何かコメントございますでしょうか。 ○小山委員 法律的なことを十分わかっているわけじゃないのですが、教科書的に言え ば、規制には経済規制と社会規制がありますよと。経済規制と社会規制ですが、それに ついては規制緩和の潮流の中で介護保険ができていて、御指摘のように、厚労省老健局 がつくってきたこの制度に全国マネジメントの視点がなかったという視点はそのとおり ですし、この有識者会議での御意見がよりよいものになればいいと思うのですが、私は、 実は結果的には地域や利用者や、そこで介護保険の中で働く人たちのまなざしがどう経 営に入るかということだと思うんです。そういうふうに考えないと、全国展開でベンチ ャーが動いて大騒ぎしたから規制すればいいというものではない。利用者のまなざしは なかなか難しいんですけれども、それでも介護保険は苦情のマネジメントをはじめ、か なり利用者視線を取り入れた制度だと思っておりますし、地域の視点というのでは、地 域のまなざしが入るようにということも考えたんだと思うのですが、例えば、突然です けれども、指定事業者の法令遵守とか、広域的な規制ということになると、見渡す限り の東京都で東京都さんだけが取り締まり行政みたいな話をやるといっても、例えば市町 村とか23区に全部分けてしまった方がいいんじゃないかという意味での地域の議論も あるし、もっと同業者同士で、同僚審査というか、ピアレビューができるようなシステ ムというのも考えなければいけないんじゃないかとか、第三者評価、情報公表といろい ろやってきましたが、情報公表をもっと積極的に進められていたらこういう事件は起き なかったのかなとか、いろいろ思うのですが、もう1つ、私がぜひ考えていただきたい のは、介護保険の13万事業所あると言われていますが、そこには何らかの保健険医療の 専門職か社会福祉の専門職がいるわけであります。多くは国家資格を取っている専門職 が働いていますし、それに、ヘルパーさんについても資格制度があったり、介護福祉士 になっていけるような段階的な研修のシステムもとっておりますし、先ほどからお話が 出ていますケアマネージャーさんたちにも一応研修を受けてもらって、それをまた継続 研修のシステムも組んでいるわけです。さらには、今日は役員さんと事業所の責任者の 話、管理者の話が出ましたが、先ほどのお話にもありましたように、訪問介護事業所に はサービス提供責任者を置くようになっています。サ責なんて言っていますけれども、 これは管理者はともかく、サービス提供責任者はちゃんとした介護サービスが提供でき るようにしなければだめなんですよという趣旨で置かれていますけれども、こういう人 たちも、今、ケアマネージャーと同じように、サービス提供責任者も登録制にするとか ということも考えられると思うのですけれども、やはり介護保険を支えているのは介護 保険分野で働いている職員なわけですから、その職員は介護保険をきちんと円滑に運営 できるということに共通の利害があると思うんです。ですから、そういう意味では、働 く人々にもっといいかげんな運営とかがあった場合には、2006年に公益通報者制度みた いなものができたわけですから、専門職であれば、公益のために害を及ぼすものであれ ば、自分のライセンスをかけてでも、やはりきちんとした対応をしなければいけないん だという、甘いのかもしれませんけれども、私はそういう専門職が介護保険制度を支え ていくという形で考えていただけないのかなと。これは個人的にちょっと甘い意見です が、結果的に幾ら社会規制や経済規制を強めても、いろいろ法律の抜け穴を見つけて、 ズルした者が得するという社会では、やはりこういう大きな社会制度であったり、社会 保険制度である介護保険のような制度というのは運営するのが非常に難しいんじゃない かというふうに考えていますし、先ほどの御説明の中にも、なじみの関係があって制度 が提供されると。これはまた別の後の議論ですけれども、では本当に誰が困っているの かという議論を、専門じゃないのでよくわからないんですけれども、本当に今、コムス ンの問題は大問題だと言っていますが、コムスンが事業を継続できないと、どのぐらい 誰が困るのかというのがよく議論されていないような気もしますので、よけいなことを 言っているのですが、私としては、もう少し介護保険分野で働く人の視線で、何か規制 だけしてしまうと、せっかく介護保険をやりたいと思ってがんばっている人たちにとっ てはすごくよくない。コムスンのおかげでこんなひどい目に遭ったみたいに思われるの もちょっと残念ですし、やはり自分たちがずっと研修システムや何かをして、介護保険 サービスの質の向上をしていくという中に、きちんと公益通報と言うと嫌な言い方かも しれませんけれども、やはり自分たちの倫理規定もたくさんお持ちなわけですから、そ の倫理規定もちゃんと行使できるような、そういうシステムのバックアップというのは 要るんじゃないかというふうに考えます。 ○遠藤座長 ありがとうございます。まさに委員の皆様の専門が多様であるということ は非常にいいことだなと思います。私も経済学者として法律家と話をすると、規制の問 題などでいろいろと齟齬があったりします。さらに経営学者は、小山先生を経営学者と 私は勝手に言わせていただきますけれども、経営学の人たちは、どちらかというと人間 の持っているある種潜在的なやる気や善意みたいなものをどううまく引き出すかという ところに非常に価値を置いているわけですし、法律家はどちらかというと性悪説みたい なものに立っているところがあって、経済学者は人間行動は自己利益追求なのでインセ ンティブシステムさえうまくつくれば何とかなるでしょうというスタンスをとるもので すから、まさに多様な議論が出ていて、第1回目から非常にいい方向に議論が展開して いるというふうに思います。  いかがでしょうか。まだ御発言のない、特に消費者の問題という話が出ましたので、 利用者の立場から消費者問題にお詳しい木間委員、どうぞ。 ○木間委員 先ほどミートホープ社の問題、耐震偽装の問題につきまして、行政が古い という御指摘がありましたが、そういう捉え方もありましょうけれども、私は、それは 規制緩和の中で起きた問題と思っております。昭和30年代、40年代は、食品の表示や 安全性の問題などをめぐり消費者運動が大変盛んであった時期です。そのころ、安全性 の問題については、例えば食品衛生監視員などにより食品行政によるチェックが全国で なされていました。それだけではなく、例えばミートホープ社の食品は生協が販売して いましたが、当時、生協には立派な試験設備がありまして、今もあるでしょうけれども、 販売者として、そこで1つ1つチェックをしていました。今はどうなっているのかわか らないのですが。  それともう1つは、消費者行政であります。消費者行政の中で商品テストを行ってお り、食品はもちろん危険な商品について商品テストをしてきた。ところが、90年前後の ころから規制緩和の流れの中で、どんどん予算が削られ、行政のコストということも問 題にされてきまして、商品テストも少なくなってきてしまったということがあります。 そういうときに、介護保険というものが検討され導入されました。私は、80年代後半か ら90年代にかけて有料老人ホームの消費者被害を見ておりまして、有料老人ホームは立 派なところもありますが、まさしく隙間産業でありシルバービジネスとして参入してき た企業が、終身介護とうたいながら、介護に手がかかるようになると外に出すという有 料老人ホームが多くみられました。そういう企業の実態を見てきた者としては、営利企 業がこれだけ入っているこの業界に対して、このような規制でいいのかと非常に危惧し ておりました。  消費者相談を見ておりますと、今回のような不正に消費者は気がつきませんから、消 費生活センターには不正という形では苦情は寄せられておりませんが、推測ですが、多 分相当悪いことをしているのではないかと思える苦情はありました。24時間介護してい ると言いながら、実は明け方は来ていなかったとか、そういう事例を挙げますとたくさ んあります。介護サービスを買う消費者は、生命を維持していくために買うわけですか ら、安全のためには規制が必要だと思います。 ○遠藤座長 ありがとうございます。それでは、山本委員、お願いします。 ○山本委員 今回の件で、視点として今までの委員の先生方の御意見も伺いながら思っ たのは、やはり一番大きな視点として何があるかといえば、事前規制型社会から事後規 制型社会へ移ってきているということだろうと思います。これは、お話にも挙がりまし た耐震偽装の問題であるとか、ミートホープは関係あるかどうかわかりませんけれども、 いずれにしろ、民間に広く、それまで自治体等が担当していた業務を民間に開放するこ とによって、広く細かいサービスが得られるようにするという目的のために、事後規制 によって民間に開放するということが行われてきたのだと思うんですけれども、そうい う意味で、事後規制というのは、基本的には自由だけれども、法令違反等、不当な行為 を犯した場合にはサンクションがあるよと。そうすることによって、自然にそういった 悪質な質の悪い業者が淘汰されて、いい業者が残るというシステムなんだろうと思いま す。  そういう意味では、今回起こったことというのは、ある意味では事後規制が働いたと いう、現象的に見ればそういうことでありまして、実際にその事業からはその業者は退 場を余儀なくされている。そういう意味では、事後規制が予定どおり働いているという 現象が起こっているんだろうと思うのですが、問題は、その退場を余儀なくされている 業者が業界でもトップの大きな業者だったために、非常に大きなインパクトがあって、 それに対応する措置というのが、どういった措置をとったらいいのかがなかなかわから ないということだろうと思います。  私は弁護士として主に企業法務をやっておりまして、そういう意味では、分野として は神作先生と重なる部分があるわけですけれども、事後規制型社会というのは、ある意 味では本当はもう1つ車の両輪的に必要な要素がありまして、それは今いろいろと言わ れております内部統制の問題であろうと思います。つまり、事後規制ということは各業 者が自律的に自分で自分をコントロールして、法令遵守(コンプライアンス)を図って いくということがある程度予定されているはずなのですけれども、どちらかというと、 日本の場合、規制緩和による事後規制型への移行ということが先行して、内部統制とい うものをきちんと図っていくということが若干遅れぎみなんだろう。その狭間で起こっ た問題ということであろうと思います。しかし、私が専門としております会社法なりの 分野でも、内部統制の問題というのは始まったばかりでして、各社ともどのようにそう いったシステムを構築していくかということについては非常に悩んでいるところである と思います。先ほどお話がありました内部通報制度とか、そういった制度を取り入れて いる会社もかなりあるようでありますけれども、介護保険の場合は、参入している業者 が株式会社だけではなくて、NPOとか、いろいろな団体なり法人があるところがまた 特色でありまして、そういったところにいろいろな種類の団体に対して、どういうふう に内部統制をそれぞれ確保していくのか。  例えば、株式会社で上場会社であれば、ご存じの方も多いと思うのですが、内部統制 報告書というもの、これは財務報告に限ってではありますけれども、来年度から提出が 要求されているわけですけれども、別に介護事業者の方は上場会社である場合の方が恐 らく数的には少ないだろうと思いますので、必ずしもその方法だけでは足りないのだろ うと思います。そういう意味で、今回の大きな方向性として、先ほど木間委員からもお 話がありましたが、一方で本当に規制緩和して大丈夫なのだろうかという御意見もある のですが、社会の大きな流れとして事後規制を軸足に据えていくという方向性自体につ いては、多分なかなか動かしがたいところもあるのだろう。そういう意味で、事後規制 の社会が進んでいくのに対応して、内部統制というものをどう図っていくかという視点 が非常に重要で、その中で介護保険という法律の枠組みの中で、参入する業者の内部統 制というものが図られることをどう確保するかということが1つ問題になってくるのだ ろうと思います。  それとともに、検討事項の3番目ですけれども、では事後規制が働いたときに、どう いうふうに後の余波を吸収していくのか。それによって、一番の問題であります利用者 の方が適正なサービスを継続的に受けられるということをどう確保していくのかという ことが一番重要な視点であろうと思います。検討事項の(1)と(2)はいずれも法規制 的な問題でありまして、最終的には非常に細かい法技術的な議論が必要になってくるん だろうとは思いますけれども、それは当然やらなければならないと思うんです。17年改 正の方向性というのは、基本的には間違っていなかったと思いますけれども、先ほどか らお話が出ているとおり、そうは言っても、規制を強化しても、やろうとする人はそれ をかいくぐっていろいろなことをやる。例えば役員が共通していなければいいんだから、 では、役員は形だけにして、重要な従業員に実質的な権限を持たせて共通させるとか、 幾らでもいろいろなかいくぐる方法というのは考えられるわけでありまして、そういう 意味では、もちろんきちんと効果的な規制をかけるということも重要ですけれども、一 方で、事後規制がかかった後のインパクトを吸収する措置も同時に検討するとともに、 さらには、業者がそもそも不正な行為に走らないようなインセンティブ、それは規制と いう側面もそうですけれども、そもそも営利事業者ですから、きちんとビジネスとして それなりに成り立っていくというような仕組みにすることも重要であろうというふうに 考えております。以上でございます。 ○遠藤座長 ありがとうございました。一通り御発言いただいたわけですけれども、例 えば規制とは異なる視点で先ほど小山委員から情報の開示、あるいはピアレビューとい った仕組みによるガバナンスについて御発言があったわけですけれども、このことにつ いて何か御意見ございますでしょうか。 ○櫻井委員 ピアレビューではないのですが、要するに調査のやり方をどうするかとい うことだと思うのですが、1点申し上げたいのは、平成17年に改正されて、勧告、命令 が入りましたよね。それで、日本の行政のとても足りないところは、こういう法律はつ くるんですけれども、その法を執行するといいますか、エンフォースメントの局面につ いての意識が非常に薄いんですね。法を執行するについては、すぐ予算と人員が必要だ と言う話になりがちなのですが、それ以前に、法をきちんと執行しなければならないと いうところがずっとおろそかになっていて、そこは都道府県にしても、市町村にしても、 なかなか腰が重いので、どこかちゃんと押してあげないとだめだというのが基本的にあ りまして、これはそういう意識を喚起するということと、執行体制をフォローしてあげ るような仕組みが国なり何なりにあると、現実に動いていくんじゃないかというふうに 思っていまして、これは運用の問題としてあると思うんです。  それで、内部統制とか、本当に大会社であれば、まさに国際的な舞台で競争していく ために、ガバナンスもきちんとつくって、コンプライアンスも充実させてということを 自分でやるのでしょうが、これを見ますと,介護サービス事業者というのはいろいろな 職種の人たちが入っていて、かつ必ずしも本当に競争しているかというと、そうでもな いだろうと思うんです。医療法人等々も入っていますから、昔ながらのやり方でやって おられるところもあるので、そういうことで言うと、多分、行政が適切に調査に入る。 それから、いきなり退場されてしまうと困るので、もう少し傷が小さいうちにまめに入 って、かつ緊張感を失わないような形で、ここが悪い、あそこが悪いということをでき るようにしてあげる。それは行政の体制として必要じゃないかと思います。 ○遠藤座長 ありがとうございます。恐らくそれは監督のあり方という視点でのご発言 だったと思います。小山委員の言われたピアレビューというのは、同業者同士の評価、 監視ということで、行政の直接介入ということ以外でコンプライアンスを守るような、 そういう仕組みがあるのではないかという御提案だったということだと思います。  狩野委員、どうぞ。 ○狩野委員 先ほどの小山先生のお話の中で、例えば第三者評価とか、介護サービス情 報公表、そういったものによって、いわば利用者さんや国民がきちんと事業者をウォッ チしていくという方法もあるのではないかというお話だったのですけれども、私は、今 回の反省点は、介護サービス情報の公表制度も、第三者評価制度も、こういう不正な業 者を排除する手段としては有効に機能しなかったということが大きな問題じゃないかな と。私どもも2つ、全国的な制度としての介護サービス情報公表制度と、それから東京 都は独自に第三者評価制度というものを持っているわけですけれども、その制度が結果 的にきちんと機能していないというのがあるのではないかというふうに思います。です から、一体どういう情報を国民に、あるいは利用者に公表することによって、単に選択 に資するだけじゃなくて、不適正なものを除外をする、排除するという仕組みをつくら ないことには、やはりこれは解決しないんじゃないかというふうに私は思います。  それから、専門職の皆さんが非常に自分たちのサービスやケアプランに位置づけた事 業所のサービスが適正に提供されているかというのはきちんとチェックしていただいて いると私は思っています。ケアマネージャーさんたちは、自分たちがケアプランに位置 づけた事業について、例えば訪問のときにケアマネージャーさんが御自宅を一緒に訪問 したり、適切なサービス提供がされているかという意味で、そういう意味でサービスの 質を確保するための努力というのは、専門職の皆さんは非常に努力をされている。訪問 介護事業所のサービス提供責任者の方も、登録ヘルパーさんの訪問時に動向したり、抜 き打ちでチェックをしたりというのをやっているわけです。それでもなおかつコムスン のような不正な事業者が発生する。そこをどうするかという議論をすべきだと私は思う んです。専門職の皆さんは非常に努力をされているというふうに私は思っています。 ○遠藤座長 ありがとうございます。小山委員、何かありますか。 ○小山委員 介護サービス情報の公表が機能しなかったかどうかというのがちょっと理 解できなくて、介護保険サービス情報公表は、前回の介護保険改正で法律事項になって、 その後、まだ全部ができているわけじゃなくて、順番に介護サービス情報の公表という のを、事業者の方が強制的にお金を払って、自分たちが公表したい情報と決められた情 報をきちんと必ずすべての項目に答えて、さらに2人の調査員が1年に一遍必ず行くと いうシステムなんです。ですから、私は今回の事件を見て、介護保険サービス情報の公 表がもう少し早ければもう少し手を打てたかなというので慙愧の念がありますが、介護 サービス情報の公表は私は大変すばらしい制度だと思いますし、もう少しそれをいろい ろ動かしていけば可能だと思います。もう東京都さんが幾ら血眼になっても、一事業者 ずつを捕捉するということ自身も非常に難しいわけですから、何とか電子媒体に載せた 大量のデータを行政がウォッチしながら、あるいは同業者同士が隣の介護保険情報を見 ながら、互いに切磋琢磨するという方法をやらなければ、要するに、何か事件が起きた から二度と起きないように排除するためにどうシステムを組むんだということになれば、 本当に莫大な監査経費とか、指導経費がかかると思うんです。ですから、もちろん再発 防止のために法的整備をすることは当然必要ですが、それだけやっても、事業者の方は 賢い人がいて、また下をくぐって出てくる人がいるわけです。ですから、もう少し幅広 に、行政対応でどうした、行政は十分やったけれども、またかいくぐって出てきたとい う話に必ずなるわけですから、もう少し制度全体を介護サービス情報の公表だけじゃな いし、今はまだ十分な制度じゃないですけれども、大変多くの方に御苦労いただいてや っている制度もありますので、重層的に介護事業運営の適正化を図っていくような仕組 みづくりを検討するということが大事だというふうに自分は考えるものです。 ○遠藤座長 ありがとうございます。木間委員、どうぞ。 ○木間委員 介護サービス情報の公表と第三者評価に関してですが、介護サービス情報 の公表については、決算書について公表できないか、と項目を検討する際に言ったので すが、上場企業の場合、一部の子会社について公表することはできないという議論があ りまして、決算書についてはチェックできないということになってしまったのです。そ れを承知で発言したいのは、例えば介護保険収入が1億円ぐらいのNPO法人の場合は、 実にわかりやすい決算書を出しています。人件費が幾らなのか、管理費が幾らなのか。 財務報告などという上場企業のものを見てもわかりませんが、こういう単純なものを公 表すれば、不正防止に役に立つのではないかと思っております。  それから、第三者評価ですが、東京都の第三者評価についていえば、経営についても チェックすることになっているのですから、そこを少し見直して、今回のようなことが 事前にチェックできるようにつくり替えるということも1つの方法かと思っています。  重層的とおっしゃいましたが、介護相談員が月に2回とか3回、高齢者施設などに派 遣されている仕組みがあるのですから、そういう人たちがチェックをする。いろいろな 仕組みを重層的に使う。既存のものを使うということも重要だと思います。 ○遠藤座長 ありがとうございます。恐らく今後の議論の中で、現行ではどういうもの がツールとして使われているのかということを御紹介をいただくということになるのか なと思います。  それでは、一応、1番目と2番目に関して御議論いただいたわけですけれども、何か つけ加えることがあれば承りたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。  それでは、もう1つ残っております、いわゆる事後的規制の結果、生じたものが、利 用者への負の便益となって生じている。それをどう対応するかということが3番目であ ります。今回、具体的な問題として出ているわけでありますけれども、事業廃止時にお ける利用者へのサービス確保のためにはどのような措置が必要かということであります。 これについて何かお考えがあれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○小山委員 どうしてもよくわからないのですが、要するに、平成20年度に 657事業 所が更新がストップしてしまうから、来年から始まって1年間で 657の事業所の利用者 がサービス確保のために困るかどうかという議論ですよね。困るという議論もたくさん あるのですけれども、全然心配ないという議論もたくさん聞くんです。コムスンがなく なって、657事業所が事業継続しなかったら、利用者が本当にサービスが受けられなく なって御不自由だということはあるんだろうと思います。それは、なじみの関係で、今 まで来てくれた人が「明日で終わりなの」と言って去っていって、また次のところを見 つけなければいけないから困るという時点の話もあります。  しかし、よく考えてみて、本当に657事業所が更新されないと、それで来年から始ま る議論をして、そんなにサービスが受けられないで、マスコミ的に言うと介護難民が大 量に出るんだということなのですか。そういう事実があるのかどうかということをどう いうふうに認識されているのか。ここを議論しないとちょっと。サービス確保のために、 受けられない人が大量に出るぞみたいな形でみんなで大騒ぎしても、私は、実は市町村 とかのレベルで、東京区部などを歩いて担当者に聞きますけれども、余り困らないんじ ゃないのというところもある。ただ、コムスンが24時間やっているところが、今は継続 できないけれども、だったら継続できるようにほかの業者ががんばればいいじゃないか という話になる。そもそも2000年以降にできてきたサービス事業ですから、そんなにノ ウハウの蓄積もあるわけでもないので、済みません、私はわけがわかっていないのかも しれないけれども、本当に657事業所が更新しなければ介護難民が出ると言っている根 拠とか、何か見せていただけるものがあったら見せてほしいと思うんです。 ○遠藤座長 わかりました。介護市場における需給バランスとか、あるいは参入の容易 さということが当然背後にあるわけですが、それをどういうふうに考えてこういう議論 になっているのかということを確認したいということでありますので、事務局からの案 として出てきておりますので、この案を出された背景、特に小山委員からの御質問に対 して、お答えできる範囲でお願いしたいと思います。 ○古都振興課長 そこの問題意識ということですけれども、多分、地域的にいろいろ見 ますと、その事業所しかないという地域もありますし、それから、さっき言いましたサ ービスの24時間の問題、その瞬間ではほかが担い切れないものもあるだろうし、いろい ろ問題があるわけですね。それで、さっき言われた重層的にものを考えていくという観 点で考えたときに、どの時点、どのタイミングで利用者に安心していただくかというこ とを幾つか考えておく必要があるのではないか。もちろん、東京都のように、競争がか なりあって、同業の事業所がたくさんありますよということは、選択肢としてかなり豊 かな部分もあるでしょうし、地域によってはなかなかそこに頼み切りであるという実態 があって、にわかに明日からというわけにはいきませんよという時期もあるものですか ら、時間をかけていけば、徐々に他社が吸収していく、引き受けていく。あるいは、利 用者御自身の意向で変わっていかれるということがあって、問題なく多くはうまくいく ということもあるのですが、もう1つ我々として考えておきたいのは、それだけではな くて、もう1つ座布団を重ねるといいましょうか、いざというときのための備え、それ は発動しなければ発動しないでいいのかもしれないけれども、そういうことを議論して おく必要があるのではないかということで、時間軸ではいろいろな段階があると思うの ですけれども、いきなり介護難民がどんどん出るとか、そういう議論ではなくて、受け 皿をどう整えていくのか、引き継ぐ仕組みをどう考えていくのかという、備えという考 え方で御議論いただければありがたいというふうに思っております。 ○遠藤座長 ありがとうございます。小山委員、今の回答でよろしいですか。 ○小山委員 はい。 ○遠藤座長 では、櫻井委員、どうぞ。 ○櫻井委員 事業所がなくなって、その人たちを別の事業所で吸収するということは最 終的な着地点だろうと思いますが、先ほどのコムスンの場合には、たまたま更新をしな いという形で将来に先送りしましたので、そういう意味でソフトランディングした面が あります。しかし、今後、例えば指定をきちんと取り消すということになってくると、 もう少し早めに対応をとっておくということが必要になってくると思うんです。そのと きに、需給バランスがとれているということを前提にすると、かつ、今、課長さんが言 われたように、安心感をどうつくるか。制度に対する信頼をどうするのかということで 仕組みを考える必要があると思うのですが、その場合に、オプションとしては、論理的 な可能性として考えられるのは、以前、銀行が破綻したときに問題になりましたが、一 時公有化するみたいな話も論理的にはあり得るんでしょうし、あるいは、私は穏当なの は、多分、今回、実際にやられているように、県なり国なり市町村なりが正式にあっせ んする制度のようなものをつくっておいて、事業はちゃんと継続するというようなスキ ームを考える。それで、最終的には別の事業者のところにうまくいくというふうに仕組 んでいくということが極めて重要なことではないかと思います。だから、3番目の事業 廃止の話というのは、まず、住民にとって一番困るのは、サービスをしてくれる人がい なくなってしまうというのが一番困るので、まずは、なるべくいきなり退場していよう に生き延びさせるためにどうするのかという話と、いよいよこれはだめだといったら、 それは適切に取消しなりをさっさとやって、それで別のところにあっせんするというよ うな2つの観点で、アンビバレントな要素を同時にやるということが必要だろうと思い ます。 ○遠藤座長 そういう議論をしていくということですね。  ほかに。例えば木間委員、いかがでしょうか。利用者でもしお考えがあれば。突然退 室を命じられてしまったという場合の利用者の立場としてどういうふうに考えるべきか。 ○木間委員 これまで有料老人ホームの倒産というものを見てきましたが、その場合、 行政が、入居者が困らないように一生懸命対応していました。有料老人ホーム以外のも のについても、指定した行政が責任を持って、困らないようにすることだと思います。 ○遠藤座長 その場合、行政はどういうふうにして助けてくれるのですか。あっせんで すか。 ○木間委員 有料老人ホームの場合は、次の経営者を見つけるといったことをやってい ますね。入居者がバラバラになってしまったというホームもありましたけれども。 ○遠藤座長 何かございますか。 ○小島委員 現場の方の立場から。この問題が起きて、そんなに現場で難民が出るとい うような状況は今のところは起こっていないんじゃないか。やはりコムスンじゃなくて、 別の事業者に移りたいという方も中には、そんなに大ぜいじゃなくて、多少はおられて、 そういうのはケアマネさんがあっせんするなどして移動をしていく。ただ、大半の方は 今のままでできるだけという、かなり特定の方の意見しか伺っていない面はありますけ れども、やはり利用者としては今の事業者さんにやってほしいというふうな声が強いよ うな感じがしています。とりあえず、来年の3月までは今のままで基本的にはいけると いうことで、その辺はそんなに問題は発生していないように思いますけれども、ただ、 事業所によってはというか、スタッフ、マンパワーをどう維持するかというのが事業所 ごとに非常に重要でありまして、将来がない事業所ということからいくと、スタッフが 抜かれていくという状況が発生しているようでございまして、それによっては突然維持 できなくなるというような問題も起きるのかなという心配はございます。事業譲渡とい うことで今動いていると思いますけれども、それが適切に迅速に行われない場合は、現 場の方はかなりしっかり対応して優秀なスタッフも見えると思います。そういう人から 引き抜かれていって、事業所として成り立たなくなると、そこで難民のような発生も危 惧されるので、そこがやはり事業譲渡の方はスムーズにいくような形を早くとらないと いけないなということは思います。そのときに、誰が指導するのかというような話も先 ほどありましたけれども、全国展開している事業所でございますので、個々の県ごとに というふうには非常にやりにくいという今回の事例ではありまして、民から民への事業 譲渡でございますので、私どもとしては様子を見ている状況ではございます。公的な介 入が必要ということでしたら、厚労省さんにやはりある程度一肌脱いでいただいてとい うことで、事業譲渡はいずれにしても早く進めていただきたいというのが感想でござい ます。 ○遠藤座長 ありがとうございます。同じく行政ということで、狩野委員、もし何かあ れば御発言いただきたいと思いますが。 ○狩野委員 基本的には、やはり事業者の説明責任というのがあると思うんです。事業 廃止届をするときには、利用者の措置をきちんと行政に報告をしなければならないとい うふうに定められているわけですから、事業を休止にせよ、廃止するにせよ、それが自 主的な廃止であれ、行政からの処分によって廃止せざる得ない事態になるのであれ、や はり事業者が事業を始めた以上、廃止をするときにはきちんと責任を持たせるべきであ るというふうに私は基本的に思います。それが、少なくとも介護保険法の事業廃止届を 提出するときに義務づけをしているわけです。利用者一人一人の措置をどうしたのかと いうのをきちんとしなさいと言っているわけですから、それがまず大原則だなと。です から、コムスンについても、コムスンが東京ですと延べで約1万3,000人ぐらいいると いうふうに言われておりますけれども、その方々の移行計画を立てるというのは彼らの 責任であるというふうに私は思っていいます。その上で、やはり古都課長がおっしゃっ たように、コムスンだけじゃなくて、いろいろな事例があるわけですから、要は急激に 破綻をしたときに、受け皿対策をどう考えるかというのは私はやはり必要だと思います。 特に有料老人ホームですとか、特別養護老人ホームのように、いわゆる入所型のサービ スの場合には、具体的に行き場がなくなるということも多々あるわけですので、そうい う備えをしなければいけない。そういう議論をしていかなければいけないというのは私 どもも認識をしています。 ○遠藤座長 ありがとうございます。同じような問題は、病院でもあるわけですけれど も。  まだ恐らくいろいろな御議論があるかと思いますけれども、用意していた時間がそろ そろ迫っております。どうしても一言という方はいらっしゃいますでしょうか。よろし ゅうございますか。  第1回目ということでありましたけれども、極めて活発な御議論ができたと思ってお ります。ミッションの共有化及び問題点もある意味で共有化できたのかなとも思ってお ります。2回以降も、積極的な議論をよろしくお願いいたしたいと思います。  それでは、本日の第1回目の有識者会議をこれにて終了したいと思います。  事務局の方から次回以降について何かあれば御連絡ください。 ○古都振興課長 ありがとうございました。次回の日程につきましては、8月下旬に、 先ほど中でも御議論ありましたように、有識者、あるいは関係団体からのヒアリングを 行っていければというふうに考えております。詳細につきましては、また追って御連絡 をさせていただきますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  本日は、どうもありがとうございました。    照会先  老健局総務課 上村  連絡先:03−5253−1111(3918) 1