07/07/18 ホームレスの実態に関する全国調査検討会第4回議事録 第4回ホームレスの実態に関する全国調査検討会 厚生労働省社会・援護局 第4回ホームレスの実態に関する全国調査検討会議事録 日時:2007年7月18日(水)14:00〜15:55 場所:三田共用会議所 A・B会議室 出席者  委員   岩田座長、阿部委員、大橋委員、駒村委員、坂本委員(代理・松本係長)、古屋委員、  森田委員、安江委員、山田委員  行政担当者   藤崎課長(社会・援護局地域福祉課)、島村課長補佐(地域福祉課)、   北條室長(職業安定局雇用開発課就労支援室)   梅崎課長補佐(国土交通省住宅局住宅政策課)   小野田課長補佐(国土交通省総合政策局安心生活政策課) 議事  1.開会  2.議事   (1)ホームレスの実態に関する全国調査結果の分析について   (2)その他  3.閉会 配付資料  資料1.ホームレスの実態に関する全国調査報告書の概要  資料2.平成19年「ホームレスの実態に関する全国調査」の分析  参考資料1.クロス集計表  参考資料2.ホームレス施策実施状況等  参考資料3.自治体ホームレス対策状況結果 ○岩田座長  皆さんおそろいになりましたので、ただいまから第4回ホームレスの実態に関する全 国調査検討会を開会いたします。  きょうは、お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございまし た。  初めに、委員の出席状況について、事務局よりお願いいたします。 ○島村課長補佐  本日は、委員の方は全員に御出席をいただいております。  なお、人事異動によりまして委員の異動がございましたので、御紹介させていただき ます。東京都の福祉保健局生活福祉部副参事は坂本委員に異動になっております。なお、 本日は都合によりまして代理で松本係長に御出席をいただいております。よろしくお願 いします。  会議を始めるに当たりまして、一言、地域福祉課長から発言をさせていただきます。 ○藤崎課長  皆さん、こんにちは。委員の皆さんにおかれましては、大変お忙しい中を御出席いた だきまして、まことにありがとうございます。本日は、私どもの社会・援護局長の中村 も出席する予定でありましたが、一昨日の新潟県中越沖地震の関係で、私どもの局が災 害救助法を所管しているということで、局長は省内にできました対策本部の副本部長と して午後も会議があるということで、大変申しわけありませんけれどもそちらに出席す ることになりましたので、きょうは欠席をいたしております。  ホームレスの実態に関する全国調査につきましては、昨年7月から本検討会で3回御 議論いただきまして、検討結果に基づきまして、本年1月に全都道府県で実施すること ができました。市町村における概数調査、それから2000名をめどに聞き取りで行いまし た生活実態調査の結果については、本年2月末に各都道府県より御報告がありまして、 それを私どもで単純集計いたしましたものを4月6日に公表をさせていただきました。  その後、岩田座長と御相談いたしまして、本検討会で分析について御議論いただく前 提であるクロス集計と分析案について、本委員会の阿部委員にお願いをすることにいた しました。阿部委員におかれましては、大変お忙しい中をまことにありがとうございま した。  阿部委員にお願いするに当たりまして、単純集計の結果から、一つはホームレスの年 齢の高齢化、また、路上生活期間の長期化、さらに勤労意欲等の自立意欲の低下という 3点に着目していただき、あわせてホームレス施策の柱の一つであります自立支援セン ターに関する事項についても分析をしていただくよう、お願いをしたところであります。 今回の調査結果に基づきます本検討会における分析については、私どもがその分析結果 をいただきまして、来年7月末に期限がまいりますホームレスの自立の支援等に関する 基本方針の見直し作業に入っていきたいと考えております。  また、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法、これは平成14年から10年間 の時限立法になっておりますが、5年をめどに見直しをするという規程もございますの で、国会の場でもこの実態調査の結果等が議論されることにもなると思いますので、こ の分析については秋の国会審議に間に合うようにできればお願いをしたいと考えている ところでございます。よろしくお願いいたします。 ○岩田座長  それでは、まず今日の配付資料について事務局から説明をお願いします。 ○島村課長補佐  本日の配付資料は、  資料1.ホームレスの実態に関する全国調査報告書の概要  資料2.平成19年ホームレスの実態に関する全国調査の分析  参考資料1.クロス集計表  参考資料2.ホームレス施策実施状況等  参考資料3.自治体ホームレス対策状況結果  以上でございます。もし不足等があればお申し出いただきたいと思います。 ○岩田座長  御確認、よろしいでしょうか。  今のような経過で4月にこの概数と単純集計の全国調査報告書というのが出たのです が、その後、まだクロス集計とか、当然、クロス集計をやりますとデータの齟齬が出て まいりますので、データのクリーニングとかそういうことが必要になるわけですが、そ の辺のやり方をきちっと詰めておりませんでしたので、阿部委員に御無理をお願いしま して、皆様にあらかじめ配付してあります五つ柱を立てましたクロス集計表をつくって いただき、なおかつ、前回調査との比較や自立支援センターの効果測定等に関して、阿 部委員の方でこうした文章になったものをつくっていただいておりますので、きょうは その概要について阿部委員から御報告をいただきまして、その後、少しこの取りまとめ、 あるいは分析を今後さらにどう進めていくかということについて御意見をちょうだいし ていきたいと思っておりますが、よろしいでしょうか。全体についてもし何かあらかじ め御意見があれば……。  では阿部委員、恐縮ですがよろしくお願いします。 ○阿部委員  それでは、まだまだ初期的な段階ではございますが、今回の全国調査のデータに基づ く分析を若干行いました。皆様がこの報告書、またクロス表を読むときに少しでも役に 立てばと思いましてそういうのもつくってみましたので、御紹介いたします。  若干注意をしなければいけないことがあります。先ほど岩田座長がおっしゃいました ように、報告書に載っているものは生データといいますか、集計会社がそのまま集計し たものでありまして、また私が使いましたのは、その後の、すべてではありませんが、 幾つかの項目についてデータクリーニングをしたものでありますので、数値が報告書と 違う場合、またはクロス表と報告書の食い違いとかが若干みられるかと思いますが、そ れはデータクリーニング後にそのようになったと御承知おきください。  また、分析によっては女性の皆さんが3.6%いるのですが、その方を含めますと、よ りデータ的にはっきりは見えなくなってしまうところもありますので、男性のみの1955 サンプルだけを使って分析している部分もあります。そこのところは注意書きしてあり ますが、全体の数が違うということにお気づきになったら、そのような理由があること を御承知おきください。  それでは、資料2に基づいて簡単に御説明いたします。先ほど、課長からも若干触れ られましたが、まず路上生活者の属性の変化ということで前回調査と今回調査を比較し てみたところ、大きな違いがみられたのが2点ありました。一つ目が年齢です。平均年 齢でみると1.6歳の上昇なのですが、分布で見ますと、1ページの図1を見ていただけ ればと思いますが、50歳から59歳で3.4%、60歳から64歳で0.9%、65歳から69歳 で3.1%、70歳以上で2.8%と大幅に上昇しております。特に上昇の割合が多いのが70 歳以上で、4年前に比べて1.6倍となっております。  これと同時に、長期化の傾向もみられました。1ページの図2で見ますとはっきりと 見えたのですが、1年から3年未満という層が大幅に減って8.7%の減少になります。 また、5年から10年がそれと同じぐらいに割合がふえておりまして、これが8.5%の上 昇となりました。また、10年以上という超長期の路上生活者の方々も8.9%と、2倍以 上の大きさとなっております。ですので、15年調査のときには一番大きいのは1年から 3年未満という層だったのですが、今回の調査では5年から10年という方々が最も多い 層となっています。  先ほどは今回の路上生活なのですが、これを初めての路上生活からの期間からみても 5年未満が大幅に減少して、22%減っております。その分、5年以上が増加していると いうことがいえます。  この路上生活者の年齢と路上生活期間は関連があります。図4を見ていただきますと、 年齢が高いほど路上の野宿期間も長いことがはっきりと見て取れるかと思います。です ので、この二つの傾向は同じ現象をあらわしていると考えられます。つまり、高齢の路 上生活者は路上生活も長いのですが、彼らの相対的な割合が増加したことから長期化と 高齢化の両方が進んだと考えられます。  さらに路上生活者全体の概数が減少していることから考えますと、高齢長期路上生活 者の総数自体がふえて相対的に多くなったというよりも、それ以外の路上生活者が減少 したと考える方が自然であると思います。換言しますと、比較的若い新規路上生活者が 減少したこと。また、比較的路上生活が短くて若い人が自立支援センターなどを通して 路上生活を脱却したこと、その二つのことによって路上生活期間が長くて高齢の層が路 上に停滞してしまったということがいえます。  次に、第2点目の自立支援センターの利用経験と利用規模について御説明いたします。 今回の調査の中で、「自立支援センターを知っており、利用したことがある」と答えた人 たちは全体の9.1%でした。「知っているが利用したことがない」という方が57.2%で大 多数を占めるのですが、その中でも「今後利用したいと思う」のが23%、「今後利用し たくない」と思うのが76%。これは、57%の中の23%と76%という意味です。そうな っております。また、「自立支援センター自体を知らない」と答えたのも33%で、約3 分の1おりました。  平均年齢を見ますと、「知っており、利用したことがある」という利用者が一番平均年 齢が若く、「知らない」と答えた人たちが一番高くなっています。  ということは、自立支援センターの存在を知っていながらも利用希望がないというの は、全体の43.3%と半数弱になりました。  この自立支援センターの利用希望が低い理由は何かということを見てみますと、まず 一つに就職希望そのものが大きく減っているということがいえます。これは、「今後望む 生活形態」というのを聞いているのですが、「きちんと就職」という選択肢があるのです が、この割合が前回の調査では49%と約半数だったのが、35%まで減少しています。そ れとは反対に「今のまま」という現状維持を希望する人がふえておりますし、そのほか の、例えば「行政支援と軽い仕事」とか「福祉利用」という方も若干ずつですがふえて おります。  これは、簡単に考えますと高齢で野宿期間が長い人がふえたからそうなったのではな いかと考えられるのですが、それだけではないということがいえます。4ページのグラ フを見ていただきたいと思います。年齢別にみてみても、15年と19年調査を比べてみ ますと、「就職希望」というのが減っております。65歳以上はもともと就職希望が少な いのですが、その方々たちの間でも減っております。45歳未満では前回は70%近い方が 就職を希望していたのですが、今回は60%弱となっております。  また、就職希望というのは、今、路上において得られている所得に非常に左右される ところもあるのですが、この所得階級別にみてもやはり減っていることがわかります。 特に5万円以上の収入を得ている人たちの就職希望は大きく減っており、約15%から 20%減っていることがわかります。  また、「今後望む生活形態」の中で「就職」を選択した人、つまり就職を希望している 人の中で自立支援センターの利用希望があるかどうかというのをみたのが次の表になり ます。これで見ますと、「全就労希望者(男性のみ)」の中で自立支援センターに入りた いという希望があるのは38.7%にとどまっています。ですので、就労希望があったとし ても自立支援センターを利用したいという希望につながっているわけではないことがわ かります。  次に、利用経験者と利用希望者、利用回避者と私は呼んでおりますが利用したくない 人の属性を比べてみますと、「利用者」というのが一番若い年齢となっております。平均 では54.5歳です。また、非利用者の中でも、利用希望者の方が利用を希望しない人より も年齢が若くなっています。  5ページに移りますが、45歳未満の人は、ほかの年齢層に比べてセンター入所を希望 する割合も高いです。また、65歳以上の路上生活者はもともとそのセンターを知らない という人が44%を占め、利用希望または利用経験者となると、ほかの層に比べて大きく 少なくなっています。この年齢層では、たとえセンターの存在を知っていても入所を希 望しない人が多く、入所希望者はわずか18%となっています。  ここで、表の下の「χ2乗」という数字について若干説明を加えさせていただきます。 これは統計学上の統計量というものなのですが、2番目の数字、ここでは0.0001より低 いという小さいマークがついていると思いますが、この数字が小さければ小さいほど統 計的にその差に有為性がある、その差に意味があると考えていただければいいと思いま す。逆に、この数字が0.1以上、人によっては0.05以上という方もありますが、より大 きい場合は、集計表のクロス表では違いは見えても、それは統計的に意味があるとはい えない数値と思ってください。ここでみますと、ここの数値は0.0001より小さいという ことで非常に小さい数値となっておりますので、年齢階級と自立支援センターの利用状 況が非常に関係があることがわかります。  また、自立支援センターの利用及び希望が高齢層に比べて中年層に偏っているという ことは、前回調査でも同じ結果が出ています。5ページの下は、参考として前回のとき の自立支援センター希望というのと今回の自立支援センター希望というのを年齢別に出 してみたもので、やはりこれが右肩下がりとなっており、両方のその傾向自体は変わっ ておりません。  また、これを所得階級別にみても同じ傾向が出ています。ですので、今回の調査は前 回の調査に比べて、まず高齢化しているということ。それから、7ページの図7を見て いただきますと、収入も上がっております。ということで、自立支援センターを希望し ない理由というのがますます強くなってきているということがあると思います。  これらの結果を簡単にまとめますと、自立支援センターの利用経験者は路上生活経験 者の9%となります。この利用経験者は比較的年齢が低く、今回の路上生活が短く所得 が低い層です。また、同様に自立支援センターへの今後の入所希望者も比較的年齢が低 く、路上生活期間が短く、所得が低い層です。そして、自立支援センターの利用希望は 低迷しています。  この理由としては、比較的年齢が低く、路上生活期間が短く、所得が低いという就労 意欲が高い層が相対的に減っているということ。二つ目としては、同じような年齢層、 同じ所得層でも就労意欲が減っていること。三つ目は、就労意欲があったとしても自立 支援センターの利用希望が低迷しているということがいえます。また、65歳以上の路上 生活者は、自立支援センターがあること自体を知らないケースが非常に多いということ がいえます。  8ページでは、自立支援センターの経験者、9.1%、サンプル的には184あるのですが、 その人々の分析を行ってみました。このグループの平均年齢は54.5歳で、全体の野宿者 より若干若くなっております。ですが、自立支援センターの利用者の平均年齢が自立支 援センター側からの資料から見ますと51.6歳となっておりますので、自立支援センター を利用した人の中でも、もしかして路上に戻ってしまったグループは若干年齢が高い層 である可能性があります。  路上に戻った理由は、「センターから直接」というのが過半数を占めております。「期 限到来」が23%、「規則違反」「自主退所」「無断退所」は40%で、64%です。また、就 労を通じた後に路上に戻ったのは18%、生活保護などの福祉を通じて戻ったのが5%と なります。  これを自立支援センター側からのデータからみますと、やはり「期限到来」「自主退所」 というのが本調査では非常に多く出ているということは、就職、福祉を通じて自立支援 センターを退所した人たちは路上に戻ってきていない可能性があると思います。特に福 祉のところの割合は大きく減っておりますので、自立支援センターから福祉にかかった 人たちが路上に戻ってきているのは比較的少ないといえると思います。ただし「就職」 というところは割合的にも余り変わっておりませんので、これは退所者をすべてフォロ ーした調査をちゃんとしなければわからないのですが、就職しても結果的に路上に戻っ てきている人が結構いるのではないかということを示唆しています。  また、退所から路上に戻るまでの期間というのもあるのですが、これも「1週間以内」 が全退所者の27%になりまして、「期限到来」「自主退所」などの理由が過半数を占める にもかかわらず、非常に少ない数となっております。  9ページの線グラフは、退所してから路上に至るまでの期間を退所理由別にしてみた ものです。これを見ますと、「強制」「自主」「無断退所」という人は3日以内に路上に戻 ってしまっていることが非常に多いことがわかります。ですが、「期限到来」の人はそれ ほどはっきりとすぐに戻ってきているということはいえません。ですので、これはあく まで推測の域を出ないのですが、入所期間中に一定期間、就労などに従事したことによ って少額の蓄えなどができた可能性があるかと思います。  また、就労を得た場合、生活保護を得た場合をみますと、就労してから路上に戻るま での期間が長くなっています。特にアパートを得て就労した場合は、平均で15カ月と一 番長い層になっています。また、住み込みでも7カ月となっています。ただ、生活保護 というのは2カ月ですので、生活保護からまた路上に戻るケースは比較的早い段階で生 活保護から脱落してしまっているということがいえるかと思います。  11ページの路上生活者の生活状況です。まず全体の環境ですが、今回調査では路上生 活者の高齢化、長期化が明らかになっています。このことは路上生活の質、生活水準と いうことがいえるかと思いますが、それ自体にも影響してくるはずです。これをみよう としたのが次のものであります。  まず第1にいえることが、寝場所のつくり方が大きく変わっているということです。 つまり、小屋の常設や段ボールなど、半永久的な寝場所を確保している率が減っており、 寝場所をつくらない率がふえています。ですので、路上生活者を取り巻く環境自体が変 化している可能性もあります。  次に経済面です。先ほどちらっと言いましたが、まず収入がある人たちが若干ふえて いることから、経済的な状況は前回に比べて少しよくなっている可能性があります。収 入金額別の集計表は先ほどあったかと思いますが、それでみても上がっております。で すので、経済的には少しよくなっています。  ただ、路上生活自体の生活水準の項目を見ると、改善の傾向をみることはできません。 「路上生活で困っていること」というのを前回と比べていますが、経済状況がよくなっ ているからよくなっているかと思われるのですが、実際「よくなっている」というのは 余りみられません。食べ物、雨や寒さ、入浴、洗濯、その他は若干減少していますが、 寝場所の困難を訴える人が多くなっています。  次に健康状況です。自覚症状があるか・ないかということでみますと、前回調査では 31.4%が「ない」といっていますが、今回は21.8%と9.6%の減少となっています。逆 に言いますと「自覚症状がある」という人たちが多くて、これは自覚症状別の統計を見 ましても、ほとんどすべての自覚症状において今回調査の方が多くなっています。これ は、野宿者の方々全体が高齢化してきたこともあわせて考えますと、当然の結果といえ るかと思います。  ただ、次にみたのが自立支援センターと路上生活ということで、自立支援センターに 入所する際に当事者が入所を好まない理由の一つとして、既存の生活基盤、例えば場所 とかテントとかリヤカーなどの資材とかがあると思いますが、それを手放してしまうと いうことが挙げられます。そのために、自立支援センターから就労や福祉に結びつかな いで帰ってきてしまった場合は、路上生活の水準が低下する可能性があるわけです。  これをみるために、自立支援センターの経験の有無別にみた困っていることをみてみ ました。これでみますと、はっきりとセンター経験者の方は、いざこざやその他を抜か してほぼすべての項目でセンターを経験していない人たちよりも高くなっています。特 に大きく違いがあるのが寝場所です。寝場所を一たん放棄してしまうことによって、新 しい寝場所、いい寝場所といいますか、それを確保することが難しくなっているのかと 思われます。  これは、健康状況でみても同じです。健康状況で「自覚症状がない」というのと「体 のぐあいが悪いところがある」というのをセンターの未経験者と経験者でみますと、セ ンター経験者の方が健康状態が悪くなっています。ただ、この因果関係がこういう統計 からははっきりとみえないのです。ですから、自立支援センターに入ったから健康状態 が悪化したとか生活水準が悪化したと考えるか、もともと生活水準が悪い人たちとか健 康状況が悪い人たちがみずから率先して自立支援センターに入ったのかという、その因 果関係の方向性はわからないということで、そこは御留意ください。  この傾向をはっきりとみるために、次にロジスティック分析というのを行ってみまし た。これは見方が難しいかと思いますので、要点だけを申し上げます。  自立支援センターの経験があり・なしというのを黄色くハイライトしていますが、こ こが☆マークがついていればこれが有為であるということで、意味があるということに なります。ですので、ほかの年齢とか野宿期間とか収入とかをすべてコントロールした 上で、たとえ全くほかの条件が同じであっても、自立支援センターの経験があるかない かによって生活水準に影響を及ぼすかということをみたものですが、ここではほぼすべ ての、「食べ物」「寝場所」「雨」「寒さ」「入浴」「洗濯」という項目で黄色くなっており まして、☆印も三つついております。ということは、自立支援センターの経験のある人 たちの方が悪い状況にあるといえます。  16ページは、先ほど今後の就職希望が減ってきていると申し上げたのですが、どうい う人たちにおいて就職希望が減っているかというのをみたものです。今後の生活の希望 は全体でみると、減ったとはいえ今でも「就職」が一番多い36%になっています。ただ、 次に路上生活の継続ととらえられる「今のままでいい」「都市雑業」というのが27%、 最後に行政による支援といえます「行政支援と軽い仕事」「福祉」「入院」などが22%と なっています。  今後の希望と年齢の関係をみると、比較的年齢が低い層ほど就職を希望し、年齢が高 い層ほど福祉を希望していることがわかります。また、同様に路上生活期間が短く収入 が低いほど、就職を希望する場合が多くなっております。  就職希望は自立支援センターに入所する最大の動機なのですが、この二つの変数は必 ずしも直結しているわけではありません。確かに回答者の約半数を占める自立支援セン ターを望まない人が、今後の生活の希望においても、「今のままでよい」とか「都市雑業」 とする人がほかの人より多くなっております。しかしながら、自立支援センターを望ま ない人が就職を全く望まないというわけではなくて、彼らの26%は就職を希望していま す。つまり、これらの人々は自立支援センターを就職の手段の一つと考えているわけで はないことがわかります。  では、このような人たちは就職を実現させるためにどのようなことを行っているのか をみますと、全就職希望者が696名いるのですが、その中で自立支援センター回避組が 約3分の1あります。このグループの約3分の1は、自立支援センター以外の方法で就 職活動をしています。しかし、同じく約3分の1は、就職活動もしていないし、その予 定もないと答えています。つまりこれらの人々は、漠然とした就職の希望はあるものの、 実際にそれが就職活動に結びついているかというと、結びついていません。  また、就職希望者の多くにとって自立支援センターは休職活動の選択肢となっており ません。つまり、自立支援センターが路上生活者の就労による自立を目的としているの であれば、センターは路上生活者の中でも就職希望がある36%しか現実的なターゲット としていないことになりますし、しかもその中でも自立支援センターへの入所を希望し ているのは少数ということがわかります。  次は、今後の希望を決定するのはどのような要件があるのかというのを分析したもの です。全体のかなりのパーセントの人たちは「今のままでいい」とか「都市雑業」とい うのを選んでいるのですが、どういう人たちが「今のまま」を選んでいるかといいます と、意外なことにこれは年齢ではなくて野宿期間というのが一番効いていることがわか ります。黄色になっていますが、野宿期間通算と今回の野宿期間が長ければ長いほど「今 のまま」を選んでいる可能性が多いです。ただ、これも2乗法で有為になっております が、余りこれが長くなり過ぎるとこの傾向が落ちてくることがわかります。  また、「都市雑業」を望んでいるのはどういう人たちかというと、これに影響があるの は現在の収入のみです。つまり、今、ある程度の収入を得ている人たちは、これからも 都市雑業をして生きていきたいという希望があることがわかります。  また、例えば「家族がある」とか「借金がある」とか「体のぐあいが悪いところがあ る」というのが、「今のまま」とか「都市雑業」に影響するのではないかとみてみたので すが、これらは最初に私の思ったのと反対の方向を示しています。つまり、「音信のある 家族がある」という人は都市雑業ではなく就労を選ぶのではないかと思ったのですが、 ここはマイナスになっていますので、就労ではなくて都市雑業を選ぶ者があるというこ とです。  「無希望」と書きましたが、現状維持を選んだのはどういう人たちか、余りはっきり とした分析をすることはできませんでした。  以上です。 ○岩田座長  どうもありがとうございました。阿部委員には、これ以外にも添付のクロス集計表も つくっていただきまして、大変お世話をおかけいたしました。今、御報告いただきまし たように前回調査との比較、地域によって大分差はありますが、シェルターとか自立支 援センターとか相談事業とかそういうものをやり出した後の効果というものを、この調 査の中からかなり深く分析していただきまして、今回のデータの感じといいますか、か なりおわかりいただけたかと思います。もちろんまだ集計の途上にありまして、このク ロス集計はこれから改訂される可能性が非常に高いので、ぜひそのようにお取り扱いい ただきたいと思います。  それでは、今の阿部委員の御報告に関してでも結構ですし、そのほか、今後の検討会 としてどのように分析を進めていくかということについて御意見を、きょうは少し自由 にいただきたいと思います。どうぞどのあたりからでも結構ですので。  いろいろなデータそれ自体の信頼性といいますか、前提として考えなければならない のは、特にこのサンプル調査の方は一定の基準に従ってサンプルを取っていますが、地 域別に自治体にかなりゆだねられておりますので、そのサンプルがうまいこといってい るのかどうかというあたり、地域別のクロスをごらんいただくとかなり地域差が出てい まして、それが実態的な差なのか調査手法の差異が少し出てしまったのかというあたり はちょっとわからないのですが、かなり特徴的な感じで出てくる地域が幾つかあるとい うことはあります。もちろん地域によって政策が違いますので、政策のところではかな り違いが出ます。  もう一つは、今回の調査は、皆様方に大分御苦労いただきまして調査票をつくったよ うに、かなり用意周到にできていまして、具体的に括弧書きをしてもらって選んでもら うというようなやり方をしているのですが、それが十分かどうかというチェックはない ので、大前提としてはデータクリーニング自体をもうちょっと進めた方が安全かなとい う感じがあります。  どうぞ、どなたからでも。 ○大橋委員  確認なのですが、今の阿部委員の分析の中で今後の希望というところで、「今のまま」 という選択肢と「都市雑業」という選択肢についてロジック分析をされていますが、「今 のまま」と「都市雑業」で結果をみてみますとほとんど似通っているのですね。という ことは、都市雑業しながら生活している人が今のままでいいと答えている可能性、これ は択一になっていますので、選択肢は一つしか選べないということでどちらかを選んで いると思うのですが、これは二つあわせてという感じではないかなと読めますがどうで しょう。つまり、「今のまま」というのと「都市雑業」というのは必ずしも排他的な選択 肢ではないという気がしますが、この辺はどのようになっているかということ。  あと、支援センターの活動の中身なのですが、私がホームページなどでちょっと見た 感じでは、いろいろな免許をとらせるというのが大きな宣伝になっています。年とった 人が、運転免許とかあるいはいろいろな資格といったものに対してどれだけ強い希望を 持つかなという疑問を少し持ったのです。そういうことを考えると、支援センターにつ いてホームレスが持つイメージがどんななのかなというのが少し気になったということ です。 ○岩田座長  問29の最初の設計では、アルミ缶、雑誌集めなどの都市雑業的な仕事で生活できるく らいの収入が得られればいいというのと「今のままでいい」、つまり路上生活を仕分けて いるのですが、実態的にはそういうのをしながら路上にいるという人が半分ぐらいいる ものですから、実際上、同じになってしまっている。 ○大橋委員  これはほかの質問を使って、現在、何かこういうことをやっていますか、と。こうい うことをやっているという人がいれば、その人を除けば「今のままでいい」というのは もう少し意味がある。 ○岩田座長  今の仕事を使って少しそこをコントロールする必要が出てくるということはあります ね。そのほか、いかがでしょうか。 ○安江委員  自立支援センターのことについてですが、例えば3ページの、自立支援センターの存 在を知っているか・知らないかといいますか、それが路上生活者全体の半数弱、43.4% というふうになっておりますが、自立支援センター自体が県でも一つもない箇所もござ います。例えば東京では三多摩の方だと自立支援センターのことを知らないというか、 その地域にないこととのクロスというのでしょうか、それはこの1955のサンプル数全部 でやってしまってよろしいのでしょうか。もうちょっと地域とのクロスが必要ではない かと思いましたが。 ○岩田座長  それは、きょう、別の参考資料としてつけていただいた中に、「ホームレス施策の実施 状況とその効果との比較」などというのが参考資料2、それから具体的な対策条件とい うのが参考資料3についていますので、混ぜてやるのと分けてやるのと両方つくった方 がいいかもしれないですね。そして、施策の中でも相談事業とそれ以外といいますか、 シェルターとか自立支援センターとか、あるいは東京都がやっているような地域生活移 行支援事業のような何かハードがくっついているというか、特に住むところがくっつい ている事業とそれ以外を分けてやってみた方がいいかもしれないですね。 ○森田委員  全部かかわってきますので、もう認知度だけではなくて。 ○阿部委員  安江委員がおっしゃっていることはまさに正しくて、クロス集計表の27ページに地域 別に、これがシェルターで、29ページに自立支援センターがあるのですが、やはり「知 らない」という人たちは地域によって大分変わっております。「その他」というのが、東 京23区、大阪、名古屋、川崎市以外すべてなのですが、では、例えば自立支援センター があることを知らない人が45%なのですが、自立支援センターなどを早くからやってい るような大阪では17%とすごく違うことがわかりますので、そこの分析についてはもう 少しちゃんとやることが正しいと思います。 ○大橋委員  現状として自立支援センターは定員が100とか70とかいろいろついていますが、大体 満員なのでしょうか。 ○古屋委員  大阪は今、5カ所設置しております。定員というのがあるのですが、やはり古い建物 を有効活用したりしておりまして、定員全員入れてしまいますとなかなか生活空間とし てしんどいところがございます。ですから490というのが公の数字ですが全員は入れが たいところで、今で330ぐらい入っております。入所希望は時期的な傾向がございまし て、今は少し入所者がふえている状況でございます。ですから、率でいいますと64〜65% ぐらいです。 ○藤崎課長  参考資料2の「ホームレス施策実施状況等」の7ページにまとめてしまっていますが、 今お話があったように入所率が約60%という表をつけさせていただいています。 ○岩田座長  入所率というのは、全員に対する入所者の割合を示しているものですね。 ○藤崎課長  はい。 ○岩田座長  定員充足率ということになりますね。 ○森田委員  そのあたりは表現が難しいのですが、大阪市はそういう懇話会を開いておりまして、 いっぱいいっぱい詰めると人間らしい住まいができないのではないかと。少しはゆとり をもちなさいという意見もあります。 ○岩田座長  ステップ方式をとって、その前にシェルターに必ず入って、それからそこで適当と認 められた人がいくというのとね。 ○森田委員  大阪もそうです。 ○岩田座長  そうではないところもあるのですか。横浜などはそうではない、今はみんなそうです か。そうすると、大体シェルターで半分いって、そこでまた半分、ですから4分の1が ……。 ○坂本委員代理(松本)  東京の場合には、緊急一時保護センターが第1ステップという形で原則1カ月の入所。 プラス1カ月で最大2カ月の入所が可能なのですが、その後、約半数の方が第2ステッ プの自立支援センターに移っている。第2ステップの自立支援センターは、原則2カ月。 プラスまた2カ月の延長で4カ月間の利用が可能です。ですから、緊急で2カ月、自立 で4カ月というタイムラグといいますか、期間の違いがありますので、そこである程度、 入所の調整をしつつ、待機者をまた自立支援センターに入所させるようなことを今はし ております。もう5年以上経過しておりますが、ここで自立支援センターの入所率は多 少減ってきているという実態は認識しております。 ○藤崎課長  シェルターから退去された方がどういう状況かというのは、8ページの左下に書いて ございます。若干、自治体によってシェルターのとらえ方が、今、東京都さんが言われ たように違いますので、これは次に具体的に9、10と書いてありますが、8の集計でい きますと、シェルターから自立センターへというのが22.7%と、約4分の1ぐらい。 ○岩田座長  東京の大田寮というのはシェルターなのですが、ここの入所者の分析を前にしたこと があります。その分析だと、今回、阿部委員にやっていただいたような自立支援センタ ー型というか、やや野宿経験が短くて、場合によっては野宿経験なしというか、いわゆ る野宿ですね、あっても1週間とか、非常に短い層をよくキャッチしているという印象 がありました。もちろんそうではない人も入っていますが。ですから今回のデータでも 私が拝見して思ったのは、もちろん制度自体がない地域もありますが、制度に親和的で 早くに制度に近寄って、なおかつ自分の問題を自分でも困っていると表現する層と、そ うであっても表現しない、今のままでいいし、制度に近寄らない層とに二分化されたと いう印象が、前のときよりは非常に強い。  だから、多分自立支援センターみたいなのは、前者の一部はうまいこと取り込んでい く可能性はあると思いますが、残ってしまった層には余り効果がないかもしれない、そ んな印象はデータの上から持ちましたが、現場の感覚ではいかがですか。 ○安江委員  自立支援センターを中心とする自立支援事業というのが基本方針の大きな柱で、そし て自立支援事業を検証するということで路上にいる方、つまり自立支援センターから再 路上している方のことが詳しく分析されていると思ったのですが、今回の調査は、2003 年の基本方針以降、施策はどのように効いたか効かないかと、今、先生がおっしゃった ように二分化してしまったということがよくあらわれたと思うのです。それはそうだと 思うのですが、もうちょっと検証するのにこの自立支援センターを利用したことのある 人についてといいますか、自立支援事業の検証はいろいろ分析されていると思うのです が、生活保護を利用して再路上している人も474人いるということですので、大体入院 したというのが多いと思いましたが、ちゃんと見ておりませんが、こういう再路上して いるところから、その施策が効いたか効かないか、もっといろいろな方法で分析するの がよいと思います。  再路上は自立支援センターとか生活保護とかがございますし、それをもっと詳しくみ るのがいいと思いますし、それから2003年以降この4年間で野宿期間が4年以上と4年 未満でクロス表はちゃんと分けてありますが、4年未満というのが新規流入といいます か、それが阿部委員のこの分析では半分といふうに、五百何人ですか書いてあったと思 います。この新規流入の人たちも施策が予防にどのように効くか効かないかといいます か、新規流入は少なかったのであれば、それは景気がよくなったのが一番というか、そ ういうふうに巷では言われておりますが、野宿になった原因とか、そこできれいにこの クロス表だけでは全然わからないと思いましたが、新規流入の年齢であるとか最長職で あるとか、どういう人がこの4年間に新しく路上にきたかというのも調べれば、施策が 予防も行うという意味でとてもいいと思います。  なので、新規流入とか再路上とか、そういうのクロスをもっといろいろかけてみるの がいいのではないかと思いましたが。 ○岩田座長  生保は、生保の経験は聞いていますが、再路上といえるのでしたっけ。 ○阿部委員  自立支援センターが、生活保護を通して路上に戻った人は9名しかいなかったのです。 ○安江委員  自立支援センターはですね。 ○阿部委員  ただ、以前、生活保護を受けたことがあるという人は結構な数はいるわけです。 ○岩田座長  路上から脱却するときに生活保護を使って、そしてまた路上にきたというタイプとは 限らないということになるので、再路上というより、制度利用経験者という感じのくく りはあり得ると思うのです。ただ、かなり昔かもしれないというところが問題ですね。 ただ、生活保護は自立支援センターが特にない地域でどういうふうに利用されているの かというのは、別途やる必要があると。4年未満は、五つの柱同士のクロスがまだない のであれなのですが、ほかのクロスは全部出ていますので、4年以上4年未満というの はよく聞いているところがあります。 ○安江委員  どういうところがよく聞いているか……。 ○岩田座長  野宿期間が短い方が固定していないとか収入もないとか、典型的にそのように出てき ますね。逆に制度利用を4年未満の方があるとか、感じとしてはね。 ○古屋委員  私どもの大阪は、ホームレスは今、相変わらず非常に多いということで、とはいうも のの6600から4000台に大幅に減りまして、そのこと自体は喜ばしいのですが、だた、 4000というのは非常に大きい数字だと思っておりますし、これから景気が改善していく 傾向があるようには見受けられますが、今後引き続き減っていくかどうかは非常に疑問 視しております。この調査自体で浮き彫りにされていた長期化とか、今のままでいいと いう層がふえているということは、大阪でも露骨にそういう状況が出ておりまして、公 共施設等から立ち退いていただくというのも指導がなかなか入っていかないという状況 がございます。  自立施設に関しまして、阿部先生の方でいろいろ分析されていろいろな御指摘をいた だいている。すべてどれもこれもまさにそのとおりだとは思っておるのですが、大阪の 状況をちょっと御説明しますと、ホームレスは減っておりますが自立支援センターに入 る人は決して減っておりません。これまででしたら年間570名ぐらいの方が入っておら れまして、それがずっとコンスタントに続いてきております。昨年の1月に2施設、200 名で増設しましてからは、18年度で871名入っております。そして、入られる方のほと んどが野宿歴6カ月未満の方です。全国的な傾向よりも大阪の方が野宿歴の浅い方の比 率は高いかと思うのですが、まさしく自立支援センターに関しては、野宿になって間な しの方が入られていることから、引き続きニーズは高く継続するのではないかと思って おります。  私どもも施設を5カ所設置しておりまして、おのおののやり方が違うものですから、 在籍期間も短いところでは3カ月のところもありますし、おおむね6カ月近いところも あって、さまざまな形で運営されておるのですが、指導員の方々からは、必ずしも入っ ておられる方に関しては就労意欲が低いとは感じられない、割とやる気のある方が少な くありませんよ、と聞いております。今でも1カ所の自立支援センター、60数名入って おる中で40数名の方が仕事に行っておられるということで、かつてない入所中の方の就 業率ですので、それが6カ月の段階で常用雇用でアパートを確保されてやるかどうかは わかりませんが、かなり頑張っておられるという状況は見受けられると思っております。  今回の実態調査の質問の項目にはなくて、私どもで若干追加した質問を幾つか行って おります。その中で、自立支援センターを利用された方に「再度利用したいですか」と 質問しました。入られた方に再度の利用希望を聞きましたら、「利用したい」という方が 58.6%で、「思わない」が41.4%だったのです。これは、再度利用が58%を低いとみる のか高いとみるのかというのはあろうかと思いますが、現場を預かっている私どもとす れば、半数以上の方がもう一回入ってもいいという思いをお持ちということは、私ども はそれなりに評価はしているところです。 ○安江委員  私が思いましたのは、路上にくる人といいますか、建設技能・労務が直前職、最長職 もそれが多かったですし、それが4年未満だったらもっと全産業にわたるかなとかとい うことですとか、あと、年齢はどうなのかなと、4年未満と4年以上、それは出ており ますよね。なので、この4年間の新規流入者とそれ以上の長期間の野宿者の違いが何か あるかというか、それはどういうことが背景にあるかというか、施策の関係か何かとい うようなことまでできるのかなと思ったわけなのですが。 ○岩田座長  4年というのは、単にデータ業者との関係で4年といっているのですよ。ですのでど の程度の意味があるかというのはあれですが、そう仕切ってみると今のような感じで出 てくるし、若干、若いということも多分あると思いますが、やや作業員とかそういう職 種は異常に多いとか、これは年齢も多分高いだろうとか、そういう感じは出ていますが、 4年以上4年未満というのはあくまで前回調査との関係でやっただけなので、そのこと にそれ以上どのような意味をつけられるかというのはね。 ○安江委員  私も前回調査との比較といいますか、4年未満の人たちの最長職なり年齢なり職歴な りと、前回調査の全体でもいいと思うのですが、そういうのの比較をすることが意味が あるかなと思ったのですが。 ○岩田座長  4年未満というのは今回の野宿が4年未満なので、それまで野宿をしたことがないと いう人は多分その60何%ぐらいで、そうすると、4年未満のうちの60何%がいわゆる 新規組ということになりますね。だから、全部が新規とは限らない。つまり、行ったり 来たりみたいのがありますので。だから、そういう層を出してその性格を明らかにする ということはあり得ると思います。全くの新規層というか、この4年間のね。 ○山田委員  4年のそのくくりについてですが、調査項目で4年未満という書き方をしていました っけ。 ○岩田座長  いえ、1年何カ月何日……。 ○山田委員  実数を書くやり方ですか。では、それを全部ピックアップして。 ○岩田座長  可能です。くくりを5年とかやっているのは、前回調査との並びでそういうくくりで やっているのですが、いかようにもばらせるようになっています。 ○山田委員  何日とか何カ月とか書く欄はありましたよね。 ○岩田座長  ですから、まだ加工は可能なのですね。それから、今回というのとその前も聞いてい ますから、今回は4年未満なのだけれども、その前も1回も野宿をしたことがないとい う層を取り出すことは可能です。だから、純粋にこの4年の間に新規参入して、なおか つ今、路上にいるというのはどういうタイプかというのはみることができますね。そこ に自立支援センターの利用層が多かったとかなんとか、そういうことをみることは可能 だと思います。それは取り出してみる意味があるかもしれませんね。 ○安江委員  それと新規流入といいますか、それが野宿生活になった理由のところで、ホームレス 問題が経済問題で倒産・失業というか、景気がよくなったのでこういう倒産・失業とい うのが減るかと思ったら、そういうわけでもないのですかしら。これの見方がわからな かったのですけれども。このクロス表のクエスチョンの15ですが。 ○岩田座長  見方がわからないというのは、どういう。 ○安江委員  倒産・失業で4年以上4年未満で27%、26%で、それは全体の1955ケースでは46% に当たるのだけれど、4年以上も4年未満も30%を切っているということで、野宿にな った理由がもっとほかに目立つものがあるのでしょうか。 ○阿部委員  倒産・失業というところだけみますと、4年以上が27%、4年未満が26%で、ここで は統計的に意味がある差はみられません。みられるのが、「仕事が減った」というところ と、「ホテル代・ドヤ代払えず」「病院、施設退所」「その他」なので、そこから……。 ○大橋委員  これは、分母がホームレスの人ですよね。ホームレスの人のうちのこういう理由でと いうことで、この比率が安定的であるということは余り驚かないのですが、むしろ私は 非常に驚いているのは、建設業と製造業でかなり肉体的に頑強だった人がホームレスの 潜在的な供給力になっていて、そういうホームレスの人の産業構成をみますと、現在の 日本の産業構成と大きく違う。今、製造業とか建設業の従業員の比率は低下傾向にあり ますから、単純に景気がよくなったからホームレスが減ったというだけではなくて、産 業構造が変化してきて、もしそういうことであれば、長期的に多少ホームレスの数が減 っていく。私のようにサービス業のやわな人間はホームレスにはなれないというふうに 強く感じたのですね。そういう点では、少し産業構造の変化というのもサプライを減ら すのではないかなという印象で、これから産業のところはもう少し分析した方がいいと 思います。  もう一つは、阿部委員が出された結果の中で、センター経験者がいろいろな面で困っ ている人の比率が高いというのが出てきまして、これだけみると、センターが余り機能 していないのではないかというように思えるのですが、実はもう少し考えてみると、も ともと困った人がセンターにいく。うまく収入になる仕事も見つけられないとか、寝場 所も確保できないとか、そういった人がまずセンターに行く確率が高いというので、用 語ではセレクションバイアスというようなことをいいますが、それが一つ。  もう一つ、センターへ行ったことによって、今、期間を聞いてみますと、長くて4カ 月ですね。シェルターだったら2カ月ですから、合計で半年。半年たつと、今までの寝 場所もなくなってしまう。今までの自分のもうけ口も人にとられてしまう。非常にそう いうリスクは大きいので、したがってそういうリスクをある程度反映している。逆にい えば、そういうリスクを負いたくないホームレスは入ろうとはしない。そういう点では、 センターの入っておれる期間とかその後の処置、そういったものが非常に。  それともう一つは就労の比率が、またこれもホームページですが、大体4割ぐらいで すか。つまりセンターによって違うと思うのですが、センターを就労で出られていく人 が4割ぐらいという数値が出ていました。これは、随分ここの出ている比率と違います よね。ということは、それなりの機能はある程度認められると思うのですが。 ○山田委員  大ざっぱにみて、今の自立支援施策の内容を正確にまではわかりませんけれど、やは り反映しているデータだろうと思っています。これまで自立支援施策の結果、例えば高 齢者が滞留するとかいう問題とか、あるいは魅力を感じないような問題点とか、あるい は若年層だけにしか対応しきれていない自立支援センターの内容とかというのは、この 間の自立支援施策は就労、自立ということでボーンと打ち上げていますから、どこの自 治体も基本的には働ける能力のある方ということで選抜していった経緯があります。そ れは65以上とかいろいろな方を入れているケースもありますが、往々にして大体若年の 稼働能力層を対象に自立支援センターに狩り込むというやり方をやってきた帰結でもあ りますから、そういった内容は阿部さんの内容を見てもはっきりと出されているのでは ないかなと思っております。 ○駒村委員  これはセンターで失敗した人だけのデータですから、センターの全体の効果を測定す るのではなくて、センターで拾いきれなかった人はこういう人ですよというデータで、 センターの政策そのものの全般的な評価ではない。 ○山田委員  再野宿についてはそうですが、全般的には高齢者が滞留することと、いわばそのもち 上がりで5年以上にわたってドーンと滞留しているわけでしょう。 ○駒村委員  そこの部分のデータが初めてわかったということであって、センター全部が意味があ るとかないとかいう話ではない。いい人は抜けているわけですから、センターで対応で きなかった人だけが分析対象となっている。 ○山田委員  基本的には自立支援センターで対応できる人は、早めにさっさっといってしまったと いうのははっきりしています。ただ、自立支援センターで包摂しきれなかった層は、や はり高齢者であるとかそういう階層の人たちというのが具体的には出ているということ ですよね。 ○駒村委員  そういうことですが、センター全体の評価というふうにしてはいけないわけですよね。 ○山田委員  もちろんそれはそうですよ。 ○駒村委員  健康状態の読み方なのですが、阿部さんは、ぐあいの悪いところはありますかと、先 ほど頑強な人というところのあれなのですが、これはデータをどう読めばいいかという ところなのですが、本編の19と20は、これは主観的に「現在悪いところはありますか」 という健康状態のところが健康状態の指数としていいのか、それとも問20のような「1 年以内で何かありましたか」というような取り方のほうがいいのか。あるいは、この両 方でちょっと数字のずれがあるのですが、「いいえ」といっている人の中にも、441人は 全くないといっていますが、残りの1600人ぐらいは何かあるわけですよね。問19の回 答と問20の回答はずれているわけですが、これは主観的なスコアだからずれているのか。 主観的な回答と自分の症状のギャップみたいなところなのでしょうかね。 ○阿部委員  そうですね。 ○駒村委員  どちらを使った方がいいのか、病気を持たれているのは平均幾つぐらい丸をつけてい るのか。これをざっと計算すると1人で平均3.5個ぐらいつけているのかなという感じ がするので、問20のデータを健康状態の指数に使うとまた結果が違ってくるのかどうか、 これはどんな感じでしたかね。 ○阿部委員  何とのクロスですか。 ○駒村委員  今、主観的にぐあいが悪いところはありますか、イエスかノーかというデータを健康 状態の変数として使うか、健康に関するデータによって分析結果が異なるかという点で す。 ○阿部委員  自立支援センターに入ったかどうかですか。 ○駒村委員  そうではなくて、全部の説明変数としていろいろなところで使っている健康状態です よね。それの変数としてはどちらがいいものなのかなと。 ○阿部委員  私は20と、実際は21も使ったのですが、そちらの方は前回とはっきりと比べられる ようになっていないので、そちらは落としたのです。 ○駒村委員  前回との比較というよりは、さまざまな変数として使うときにですね。例えば18ペー ジの表2のロジック分析などに使うときに、ぐあいの悪いところがありかなしかの1、 0として使うか、それとも症状の数別で使うかによってまた答えが変わってくる。それ は問20と問19の関係にもよってくるのかなと。 ○阿部委員  表2ではちょっとしか使っていません。20しか使っていないと思います。 ○駒村委員  表2は問の19ではないですか。 ○阿部委員  済みません、確認してみます。今はちょっと覚えていないので。 ○駒村委員  何種類か体の調査というか健康状態の指数があるので。あるいは加齢とか野宿期間に よっては、症状の数が急激にふえていくようなことがあるかどうかですね。 ○岩田座長  質問項目数が多いので、今の健康状態のところも主観的な健康を少し期間を変えて聞 いてみたり、客観的な診断ということで聞いたり、微妙にずれた聞き方をしていますの で、どれを使うかというのは結構大きくなるかもしれないですね。一番最初に大橋先生 がおっしゃったようなこととか、今後、少し違うタイプでやってみて両方の関係を見て みるとかというのも必要なのかもしれません。 ○阿部委員  クロス表でいいますとページ24と25なのですが、問19と20を年齢階級でクロスし てみると有為になっていないのです。19も20も両方とも。 ○駒村委員  これは、だから主観的なということなのでしょうかね。悪いところがありますか、い いですか、というのは。 ○阿部委員  19も20も全部主観的なものなのですが。両方とも年齢階級や今回野宿期間は聞いて いないのです。ただ、20の方は「ある」か「ない」かで分けてしまったので、そこのと ころは、「ある」人の中でより重いという可能性もありますので、症状の数なども数えて みなければ。 ○岩田座長  先ほどの産業の話なのですが、東京都が白書みたいなものを出しましたよね。それを 拝見して、私も2000年に東京都で別の調査をやったデータとの比較でいうと、ここには 書いていないのですが、今回の調査では寄場の経験で代表的な寄場地区との関係を聞い ているのですが、東京では山谷経験が異常に多かったのです。私の分類でいうと日雇い 型というかそこにもう一回戻っているような印象が非常に強かったのです。2000年調査 では数値が全然違うのです。そういう変化があったとしたらそれはそれで大変な驚きだ し、しかし東京の白書を拝見すると、やや固定層を少し多めに選んでしまったのではな いかという表現が最初の方にあって、調査方法が反映しているとまたそれはそれで困っ たものだなというふうな印象があって。  これは、多分そこが4年前との違いだと思うのですが、駅とかそういうところが少な くなっていて、河川とか公園とかで調査しているので、どちらかというと固定層をよく とらえているのだと思うのです。そのことがどのぐらいの意味……、それはそれで一つ、 大橋先生のおっしゃったようなことだと思うのです。製造業と建設から出ているという 基本構造はそう大きくは違わないのですが、もうちょっと都市のサービス業との関係が あったような記憶があって、特に東京でいいますと、西の方では山谷などは知らない層 が大半だったのですが、そちらが路上からいなくなったためにそうなったのか、それと も落としたのか、そこのところが気がかりではあるのですね。ただ、もちろん固定して しまった層を中心に考えればそうだということはいえるかなとは思っていますが。 ○森田委員  大阪の場合は、逆に減っていますよね。あいりんでやられているのはね。順当に全国 と同じように。 ○岩田座長  だから全体からいえば相殺されていくのかもしれないのですが、地域差があり、東京 と川崎は固定的に出ているのですよね。 ○森田委員  もともと大阪でもそうです。やはり地域差は若干ありますね。西成、釜ヶ崎に近いほ ど建設労働、製造業が多くて、梅田の方へいったり河川にいきますとサービス業も入っ てきますから。 ○岩田座長  それは地域での生活展開もいろいろ違うので、当然といえば当然なのですけど。 ○坂本委員代理(松本)  今回、東京の場合には23区で500人調査だったのですが、23区それぞれ、今、現状 のホームレスの数に比例して500人を振りまして、その比率で各区ごとにホームレスを サンプルとして調査をしていった。ですから、台東、墨田とかホームレスが潜在的に多 い区についてはその対象数も当然多くなるということがありますので、そういった場合 には山谷の経験者も多いし、あと、実際の調査も都の23区の巡回相談チームがやったこ ともありまして、固定層に偏らないようにということで指示をしましたが、それでもど ちらかといえば固定層に偏ったかなというところはあります。でも、夜間調査、移動層 については東京駅でやったりとか新宿駅でやったりとか、夜12時ぐらいまでやったりと かということもあるので、まるきり固定層ということではないのですけど。 ○安江委員  東京の新宿の場合は、固定の大きな二つの公園が移行支援事業というのでアパートに 移行したということがあり、東部の方の隅田河川敷というのはまだテントがたくさんあ る、そういうちょっとした違いもあったかと思いますね。 ○岩田座長  内容についてはまだいろいろな御意見があると思うのですが、あと30分ぐらいですの で、こういうことを分析した方がいいというような御意見も含めて、今後の取りまとめ のやり方について少し御意見をいただいて、本日の会議を閉じたいと思うのですが。 ○森田委員  岩田先生と阿部先生にお伺いしたいのですが、データを見ていますと、我々の単純集 計の印象で、全体傾向として長期化、高齢化の特色は間違いはないですね。その全体傾 向を直線回帰でとってしまって、果たしてデータが大丈夫なのかなという部分がみえる ような気がしないでもない。生データをいただいておきながら私が分析しないのが悪い のですが、例えばU字型に出たり。だから、幾つかの群があってそれがデータ全体を構 成しているようで、単純な回帰ではないような気がするのです。その中に、例えば先ほ どおっしゃったような再路上の回帰だとか、あるいはいろいろな意欲の問題とか、そう いうレールに乗れない・乗るという層の質的なものが恐らく集団を分けてしまっている のではなかろうか。  だから、単純に年齢という年をとっていく……、このラインの中で質的に三つくらい の違いが、若い層、あるいは中年層でふくらんでいるところがありますね。例えばセン ターの自立支援の希望のところなど、明らかに直線回帰でありながら、例えば阿部さん の5ページの図5でもそうですが真ん中でキューッとふくらむのですね。それでまたへ っこむのです。それが前回の傾向よりも強くなってきている。そういう質的なものが集 団を分割しながら一本のホームレスという集団にまとめあげてしまっているようなとこ ろを少しやらないと、正確な対応ができてこないような気がするのです。そのあたりを データを詳しく分析された方がいいような気がしますね。 ○岩田座長  一番いいのは、もっとそういう類型みたいのをつくっていくことだと思うのですけど ね。  それで具体的な、なかなか私もゴールがはっきりみえてこないものですから、阿部さ んもとてもやりにくかったと思うのですが、今後の手続といいますか、やり方とかタイ ムリミットとか、これはこれで出てしまっているものですから、どういうふうにするか ということについて。 ○藤崎課長  一つは、冒頭、私からお話しさせていただいたように時期的な問題があります。特別 措置法の法律の関係は国会マターの問題ですから、我々はとやかく言えませんが、基本 方針の見直しが来年7月、差し迫っては平成20年度の予算へどのように反映させていく かということもありまして、これはまた座長とも御相談させていただきますが、できれ ば当検討会では阿部先生のおまとめいただいたことをベースに一応分析していただいて、 森田委員から今御指摘があったような、せっかくいいこういう調査のデータが出ていま すので、さらに分析の専門家にお集まりいただくような別な検討会というか研究会を考 えていただいて、そちらにお任せしてはいかがかということで、座長と御相談させてい ただければと思います。 ○岩田座長  今の課長さんからの御提案は今回はたまたま阿部さんに本当に無償でお願いしてしま って、しかも非常に短い期間でですね。先ほど申しましたように、データそのものもも う一回クリーニングする必要があるかなと思っているところがいろいろあります。そこ で、きょういただいた御意見を参考にしながら少し分析の作業チームを、ここの検討会 というよりは、地域福祉課で責任もってつくっていただいて、そして分析をしてまたこ こにお持ちするという感じでしょうかね。 ○藤崎課長  秋の国会審議等でもし仮にこの実態調査の分析を求められたときの用意として、でき れば8月中ぐらいには当検討会で一応おまとめをいただいた方が、私どもとしてはあり がたいのですけど。 ○岩田座長  ということなのですが、データに戻るとそんなに簡単にはできないと。そのタイムリ ミットだと、先ほどの類型みたいのはできるかなという感じはするのですね。それと、 せっかくのデータなので、しかし国がやっている調査ですから、余りいろいろな数字が 今後あちこちで出るというのも変な感じですよね。今後もどの程度データを使った分析 が、例えば検討委員会の個々の委員がやってもいいのかとかそういうことも含めて、具 体的な見通しがもうちょっとあった方がいいのかなという感じもするのですが。 ○藤崎課長  森田委員の御指摘の作業はかなり時間と予算も必要になってくると思いますので、そ ういったのは私の方で少し検討させていただいて、先ほどいいましたように基本方針は 来年7月末ですが、作業としてはかなり期間を要しますので、それに間に合わせるよう な形で少し考えてみたいとは思いますが。 ○岩田座長  8月中というのは、今の例えば作業チームみたいなものを至急立ててもうすぐできる ということを前提に考えればいいのですか。それとも、それはもっと後の話になる。 ○藤崎課長  そうですね。ちょっと時間が必要になると思います。 ○岩田座長  それはもっと後の話。そうすると、例えばこのクロス表とか今回の阿部さんにやって いただいた分析をふくらませるような形で8月中につくる、というようなイメージです か。 ○藤崎課長  そうです。 ○森田委員  そうすると、先ほどの自立支援センターの評価、駒村委員からも大橋委員からも出て おりましたが、この評価の部分は非常に慎重にお書きいただいて、それが効果があった・ なかったという方向へ走らないように。これはさまざまな要因が絡んだ上での結果です ので、そしてこれは比重がかなり高いですから。前の方で肯定的な部分が若干あるので すが、福祉や自立支援センターにいけばかなり路上へは戻らないという結果があるので すが、それはごくわずかになっていて、後ろが非常に分厚いものですから、むしろ矛盾 点で、自立支援センターがよくないのだとか、効果を全く発揮していないのだというよ うなマイナスの評価を得られやすい結果になりますので、そこは非常に慎重に表現して いく必要があるだろうと思います。 ○山田委員  効果はあるわけですけれど、それなりに限界をどうわかるように。 ○森田委員  だから今、大橋委員がおっしゃったように、ここからくみ取れる今後の対応、あるい は問題をどういうぐあいに処理をしていったらいいのか、その点へ向けていくことは大 事なことだと思います。だから、存在そのものの存廃にかかわるという形でもってくる 記述は私は非常に危険だということです。 ○大橋委員  アンケート調査これだけでそういった制度の評価をするというのは、非常に厳しいも のがあると思うのです。もちろん出てきた結果は結果で、こういう結果が出ましたよと、 それについての考え方を書くことはかまわないと思うのです。ただ、これで評価を断定 的に決めるというのは難しい。  それをやるのだったら、もうちょっと自立支援センターへヒアリングするとか、ある いはホームレスの人にいろいろと話を聞くとか、特に活動の内容ですね。例えばいろい ろな免許をとらせるとかそういうプログラムが多いようなので、そういうプログラムは、 高齢者はもう後は余りないわけですから、自分に投資してもしょうがないというのも非 常に合理的な行動として考えられますので。その辺を考えると、何かもっともらしい結 果は出ているなと思うのですが、これだけのデータで制度の評価にまでつなげるのはち ょっと危険かなと。しかも、センターを出てそのまま就労していかれた方の追跡調査も ないので、その辺のデータを書きながら評価するというのは、ちょっと厳しいのではな いかなと思いますね。 ○安江委員  自立支援事業ということでその評価、もちろんそういうふうに評価してしまうとかそ ういうことはできないと思いますけれども、概数が減ったということでこの4年間の施 策の評価というのが、自立支援事業の評価だけではなくて、路上生活を脱却させたとい うところに着目して、だから生活保護もどれだけ効いたか効かないかとか、そういう分 析というふうにならないのでしょうか。自立支援事業がどうだったかということが大変 関心が高いようですが、それだけではなく路上から脱却させるというところに着目すれ ばいろいろ施策はあるわけで、ホームレス対策というか一般施策も含めてこれまでも報 告はいろいろ出されているわけです。そして、このアンケート調査からも例えば生活保 護のことも聞いているので、うまく結果をクロスをかけて何か活用というか、評価に結 びつけていただきたいと思いますけども。 ○阿部委員  このアンケートは、この委員会が始まったときにこのお話はあったかと思うのですが、 路上にいる人を対象にしたアンケート調査では失敗例しかみてきませんよ、というのは 最初から申し上げていたことだと思うのです。だから、これをフォローアップ調査と同 時にやらなければいけませんね、という話だったと思うのですが、結局、フォローアッ プ調査の方をやらなかったわけですよね。民間団体でやっているということも聞きます けれども。  ですから、路上にいる人たちのアンケートからそのような結果を出すのは非常に難し いですし、私の個人的な意見を申し上げさせていただければ、この概数調査でも本当に 何千人減ったということが言えるかというと、私は言えないと思います。調査の手法の 問題ですとかいろいろありますので。ですので余り期待しすぎても、データから読み取 れるものはあるので、今ここから言えることは、路上に残ったのがどういう人たちか、 そういう分析しかできないわけです。そこは、自立支援センターの評価とか過去4年間 の評価というのはかなり難しいのではないかなと思います。 ○山田委員  だけど、そういう人たちをではどういうふうに次に包摂していくのか、そういうとこ ろでのネタとしては使えるわけですから。 ○阿部委員  もちろんそうだと思います。すごく意味はあることだと思うのです。ただ、過去がど れぐらい成功したかとかそちらの方の点数をつけることを余り目的とすべきではないと 思うのです。これから先、残った人たちをどういうふうに救済していくか、そちらを主 眼に報告書をつくれば、それはこのデータから読めることだと思うのです。 ○岩田座長  私もどういう言葉を使ったらいいかわからないのですが、制度親和的な層とそうでは ない層があるというのは感じとして出ているのですね。だから、それを使って脱却した かどうかではなくて、過去にも何度も何度も利用して、なおかつ今、路上にいる層と、 ほとんどそういうことには寄りつかないでいる層、これは分けられると思うのです。た だ、今の話は、皆さんは無責任に言っていますけど、だれがやるかということなのです。 それは全然何もないのです。先ほどの作業チームは8月から向こうの話なのですから。 ところが、8月末までに出せということになると、検討会としては一体だれがどのよう に分担してこれをやるかという話をむしろしていただかないとならないのです。  きょう伺っていると、このクロス表のもうちょっと素直な分析を加えていてくことが 一つと、少し抽出した、例えば純粋新規流入層みたいなのとか、今いったように制度を 過去にもかなり利用した層とそうではない層とか、自立支援センター利用層とか、かな りダブっても幾つかそういうのをつくって取り出してみるという分析と、二つやればい いのかなという感じはあるのです。この参考資料などもどうせつくと思いますので、制 度の直接的な効果測定はできないとしても、それは先ほどから課長さんがおっしゃられ ているように予算策定の前提になることも事実なのですね。だから積極的にこの調査報 告にどう書くかということはもちろん慎重にするにしても、数字そのものの出し方にか なり左右されるということはあるとは思います。だから、結構大変なのでしょうね。  しかもこれが出てしまうと、これも出て、またそれも出て、さらに作業チームがやっ て精査した数字がまた変わったということになると、クロスして変わることはよくある のですが、ちょっと困ってしまうので、その辺はどうですかね。もうちょっと前倒しし て、作業チームでやったもので報告書を書くとかというわけにいかないのでしょうかね。 ○藤崎課長  ことしの1月の実態調査ですから、どの程度まで最終報告というのが延ばせるかとい うことともつながると思うのです。8月ぐらいだと半年ぐらいでまとまったことになり ますが、作業チームはまた半年ぐらいかかって年末とか年明けということになると、ち ょっとどうかなと、私自身は気になりますけれども。 ○岩田座長  客観的にはそうなのですが、我々からみれば、4月にポンと出ただけで、その後、ほ ったらかしだったわけですから、それは率直に言って遺憾ですよね。だから、4月のこ れが出るときより前に検討会を開いていただきたかったという感じがするのですね。そ のときに今のような話であれば、それはできたと思うのです。6月でも7月でも、ちゃ んとクリーニングは一応やった上でね。これはクリーニングを経ていませんから。 ○森田委員  阿部さんが御苦労されたと思いますのでね。 ○岩田座長  それがクロスで出してみたらこうなりましたよ、というのはそれでもまだね。でも、 今度やって、また作業チームでやって、また変わりましたよというのをそんなに出すわ けにいかないですよ。そのあたりは。 ○森田委員  かければかけるほど、分析していくとどうしてもデータのあらというのは出てくるの ですよ。だからある程度のところできっちり整理しておかないと。ここでやって、また 次にやると、またこれは絶対狂います。 ○岩田座長  そのあたりはどうですかね。私も余り安請け合いはできないというか、それぞれの先 生方も夏は夏で御予定もあるでしょうから、 ○藤崎課長  今、座長が言われましたさらに分析を深めるという部分について、私どもで検討させ てください。そして、次回は8月7日にお時間をとっていただいていますので、そのと きに。その前に座長にも御報告させていただきますけれども。 ○古屋委員  ちょっと話が戻ってしまうのですが、今回の調査は、これまでのホームレス施策を検 証するというのが大きな目的だったと思うのです。その意味では、自立支援センターが 大きな話題になりましたが、それ以外に巡回相談があり、シェルターがあり、そのほか の施策も質問項目の中に入っています。巡回相談などでいえば、全国的に35%の方が会 ったことがあるとなっておりますし、大阪ではそれは、私どもは規模が大きいせいでも ありますが、56%ぐらいの方が会ったことがあるという数字を出しております。地域差 も相当あるかと思いますが、私どもとすれば現行の巡回相談事業はいろいろな意味でホ ームレスの方を脱却させる大きな力になってきたと思っておりますので、特に今回の調 査の目的である福祉施策の検証については相当比重を置いた形で、評価をどうするかは 別にしまして、クロスも含めて、地域性も含めて検討していかなくてはいけないのでは ないかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○岩田座長  しかし、結局、この検討会のメンバーでボランティアで分担してやるしかないのです よ。ただ、調査票まで戻ってクリーニングするというのは、我々が預けられても無理で す。人をつけていただかないと。ですから、やるとするとクリーニングを経ないで、た だ、今言ったようなウエイトを少し考えてこのクロス表をちょっと加工し直すというこ とぐらいしかできない、ということははっきりしていることを前提に御検討いただけま すか。 ○大橋委員  阿部委員から送っていただいた個票がありますね。あの個票は具体的にまだどういう ところがクリーニングしないといけないところがあるのでしょうか。私が見た限り、一 応きれいに埋まっているなと思っていましたが、例えばどのような問題があるのでしょ うか。 ○岩田座長  私が今ちょっと気にし始めたのは、こちらの単純集計をした調査会社がフリーアンサ ーというのでひとまとめして送ってくれているのですが、それを見ましたら、今回調査 は、例えば特に職業などは、職業を具体的に書かせた上でその後の分類にまとめている のです。それがちゃんと仕分けられているかとか、その他にいってしまっているのか、 書いてあってきちっとそうなっているのかというチェックが十分なされているのかとか、 そのあたりですね。多分大丈夫だとは思いながら、フリーアンサーに余りたくさん出て きて、それから、例えばどこにいるかという場所で、つまりその他が多くなってしまう というのはどういうことかなということなのです。  具体的にいいますと、その他の中には、例えば「河川敷」とは書いたけれども「橋の 下」とは書いてないので(笑声)、「橋の下」はどちらに入ってしまったのとか、それか ら我々が予測していなかった「車中」というようなのが出てきたので、それだったらも う一つカテゴリーを立ててもいいなとか、一つはそういうごくごく単純なことがあるの です。  あとは、もし先ほど言ったような、幾つか矛盾するといいますか、重なっているので はないかとか、そういうことをほかのところでチェックをかけて、もう一回分析すると きは組み直してもいいとか、それができるとなんとなく安心なのです。だから、そこは どうしようかという。 ○大橋委員  でも、その作業だったら、分析する人が適当に仕分けしてやればいいわけですよね。 ただ、言葉の河川敷どうという話はやはりちょっと。 ○岩田座長  ですから適当な監督のもとにだれかやる人さえいれば、できないことはないわけで。 ○阿部委員  私自身がクリーニングしたのは、問3、問4の今回と初めての路上期間と、収入のと ころで、仕事からの収入と仕事以外からの収入ぐらいの項目です。そこら辺は調査票ま で戻ってやっています。入力ミスがかなりありますので、それが2000ぐらいのサンプル で多分100の単位であると思います。なので、ちゃんと調べたのはそこぐらいです。  残りは、マルティプル調査の方が多いので間違っていないと期待しているのですが、 わかりません。特に記述で書くところは結構間違いが多いです。 ○岩田座長  もともとかなり重視した地域移動、これは項目を立ててやる必要があるかなと思って います。今回、東京は、えらく東京外の人が多いという調査が出ているのですよね。こ れも非常に地域差が出ましたが。そういう意味ではやや気が重いという感じもするので すが、特に職業のところがミスが多いのです。そもそも職業分類はとても難しいので、 それがちょっと気にかかります。  では、そのようなことをもう一回相談をしまして、御足労ですが8月7日にもう一度 お集まりいただいて、8月末あたりをめどにした取りまとめの方向を決めたいと思いま す。それと、より深い作業というか、もうちょっと研究的なといいますか、それはまた 別ということになりますね。  そのほか、きょう、何か御意見をいただいておくことがあれば……。 ○山田委員  45歳未満で寝場所の云々などでも、その他になっているところの内容は書いてないで すよね。 ○岩田座長  書いてあるのとないのとあると思うのです。それでフリーアンサーのところが、その 他で書いてあるのか、それともあらかじめ上に書くようになっているところに書いてあ るのとがダブって書いてあるものですから、その仕切りも調査票を見ない限りわからな いわけです。 ○山田委員  例えば短期で若年でという人は、今、私のところで調査などをやっているのですが、 例えばネットカフェを利用したり、お金があるときは洗濯するときだけドヤを活用する とか、ないときは路上にいて。路上というのは、ベンチなどでよう寝ないということな のです。うろうろしている、徘徊。そこそこのときはネットカフェを使うとか転々とし ている層がありまして、たまたまそんなにしてひっかかったのが見えてくるかなと思っ ていたのですけど。若年層など。 ○岩田座長  ただ、行ったり来たりとか、決まった場所がないとか、そういう聞き方もしています から、そういうをのかけてみないとわからない。 ○山田委員  それはずっと後にやってもらうしかないなと思っています。 ○森田委員  ただ、先ほど阿部委員がおっしゃったように、100、200で入力ミスが。 ○阿部委員  記述で書いているところは相当数あると思います。 ○森田委員  5%、6%だとちょっと気になりますね。 ○岩田座長  場合によっては、調査会社にもう一回チェックしてもらうという手もあると思うので すよね。 ○森田委員  最初にもうこれが出てしまっていますので。 ○岩田座長  単純集計というのはそういう意味でこわいのです。それだけポンと出されるとね。単 純集計を出されてもいいけど、クロスしてから出してほしいという感じはあります。 ○森田委員  5%とかの狂いがあると、相当数が動きますからね。場合によっては、順位が動くと 大変なことになる。 ○岩田座長  というようなことでなかなか難しいのですが、ではまた次回、よろしくお願いします。 次回、少し読んでいただいて、特にここはこうだとかああだとかという御意見をいただ ければ、なるべく反映させたいとは思います。  きょうは、どうもありがとうございました。 −了−                                                                                                                                                                                            照会先 [ホームレスの実態に関する全国調査検討会事務局]   厚生労働省社会・援護局地域福祉課 TEL 03-5253-1111(内線2855、2858) FAX 03-3592-1459 31