07/07/13 第2回ワクチン産業ビジョン推進委員会速記録 第2回ワクチン産業ビジョン推進委員会             開催日: 平成19年7月13日(金)             場 所: グランドプリンスホテル赤坂 五色1階「新緑」 ○関血液対策課長  定刻の4時になりましたので、ただいまから第2回「ワクチン産業ビジョン推進委員 会」を開催いたします。  委員の先生方、また参考人、オブザーバーの先生方におかれましては、御多用のとこ ろお集まりいただきましてありがとうございます。心よりお礼を申し上げます。この会 議は御案内のように、公開での開催となりますのでどうぞよろしくお願いいたします。  また、委員のうち、本日は山西委員から御欠席の御連絡をいただいております。そし て、第1回目と同様でございますが、当委員会の顧問という形で国立病院機構三重病院 名誉委員長の神谷齊先生においでいただいております。また、千北オブザーバーの代理 といたしまして、財団法人化学及血清療法研究所から野崎様においでいただいておりま す。  それから本日は、国立感染症研究所におけるワクチン研究開発について御説明いただ くこととなっておりますが、この御発表をしていただきます参考人といたしまして国立 感染症研究所より小林免疫部長にお越しいただいております。  それでは、これ以降の進行は座長の倉田先生によろしくお願いいたします。 ○倉田座長  皆さんこんにちは、お忙しいところまた台風の雨も心配なところお集まりいただきあ りがとうございました。台風が来る前に逃げ出すためにも、速やかに議論をし、速やか に時間どおり終えたいと思いますのでその辺の御協力をよろしくお願いします。しかし 討議をしないというのはまずいので、意見をどんどんわかりやすく発言してもらうとい うことが大事かと思います。どうぞ御協力をお願いします。  それでは事務局お願いします。 ○堀内課長補佐  それでは、事務局から本日の資料の確認をさせていただきます。1枚目が本日の座席 表になってございます。その次、本日の議事次第でございます。  資料Aといたしまして、第1回、前回の本推進委員会の今後の進め方に関する御意見 等を事務局でまとめたものでございます。  資料Bは、米国のACIP(エーシップ)の6月末に開催されましたもののアジェン ダでございます。  資料Cは、国立感染症研究所の小林免疫部長から本日御説明いただく資料でございま す。確認と合わせまして1点お願いがございます。本日、メインテーブルと傍聴席の方 に資料Cを配付してございますが、この資料につきまして、二次的利用に際しましては、 感染研の方に確認をお願いしたいということでございます。後日その他の資料と合わせ まして、その点に支障のない形で、厚生労働省のホームページに掲載する予定としてご ざいますので御了承ください。  資料Dが、本日御欠席でございますが、山西委員から御提出いただいております「ワ クチン開発研究協議会(仮称)について」の資料でございます。  資料Eが、「ワクチン普及・啓発への提言・意見」ということで、日本製薬団体連合会 と細菌製剤協会から御提出いただいております資料でございます。  資料Fが、ワーキング設置の際の考え方(案)ということで、2枚の資料。  それから参考資料1、2に運営要綱と委員名簿をつけております。委員名簿の2枚目 の顧問(アドバイザー)神谷先生の次に関係事業者となってございますが、こちらオブ ザーバーの誤りでございます。一番下、千北参考人となっておりますが、千北オブザー バーの代理ということで誤字がございました。申しわけございません。  それから委員の先生方のお手元には、参考といたしまして「ワクチン産業ビジョン」 を配付させていただいております。  資料は以上でございます。過不足ございましたら事務局にお申しつけください。 ○倉田座長  ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。  本委員会はワクチン産業ビジョンとなっておりますが、そこに掲げられました事項の 着実な推進に資するための情報交換と、その討議を行うことが目的であります。前回、 第1回の議論でワーキンググループを設置してはどうかという意見がありましたが、本 日はワクチン産業ビジョンの推進に関係する幾つかの情報提供と、ワーキンググループ の設置をどのようにするかという点について議論をしていただく予定でございます。  議事に従いまして、最初に第1回の委員会においていただきました御意見について事 務局から説明をお願いします。 ○堀内課長補佐  資料Aでございます。こちら本日の委員会開催に当たりまして、前回の議論で今後の 進め方について意見をいただいたものの整理を、冒頭にさせていただきたいということ でございます。  前回は1回目ということで、ワクチン産業ビジョンそのものとその中にございますア クションプラン、米国ACIPの活動報告を岡部委員から、危機管理ワクチンの開発状 況と技術的課題等について御報告、御討議させていただきました後、その他事項といた しまして、次回、つまり今回以降の進め方について幾つか御意見をいただいております。 再確認ということで御紹介させていただきます。  丸の1つ目でございますが、前回ありましたACIPのようなものを日本でつくろう とすると、どういうものにすればそのような機能が果たせるのかという御意見、御質問 がございました。  それからWHOのSAGE(Strategy Advisory Group Of Expert)では、WHOの方 でワクチンに関する議論を年2回定期的に開催している。現在使用されているワクチン の現状分析、開発中の製品や将来的な課題について議論をしているということがござい ますので、そういったものも参考になるのではないか。  丸の3つ目でございますが、本推進委員会だけでは、年数回ということでの活動の中 では、十分な活動が難しいので、推進委員会のもとに、例えば新ワクチンや大人用、小 児用など大きなテーマを決めてグループ討議を経た形で推進委員会に集約してはどうか。  丸の4つ目、検討対象となるようなワクチンの選定については、企業との関係もある ということからフェアな形で選定されることが望ましいのではないか。  個別ワクチンを取り上げるということに問題があれば、例えば小児・思春期層といっ た形で年齢層でのワーキンググループの構成を検討してはどうか。  最後の丸でございますが、B型肝炎ワクチンのように、ワクチンの開発成功事例が感 染症対策として機能した結果、ワクチン自体の必要量の著しい低下にも結びつく。当初 の開発・産業化プロセスのみでなく、普及による結果を見据えたワクチン産業・制度の 根幹を議論する必要があるということでございます。ワクチンの種類によりまして、長 期的な需要のあり方が、それぞれかなり違いがあるということで、そういった特性に応 じた議論が必要ではないかということかと存じます。  前回の推進委員会でございました今後の進め方に関する御意見等は以上でございます。 ○倉田座長  ありがとうございました。ただいまの報告についてですが、最後の議題にありますワ ーキンググループ設置の議論の中でも討議していただくことになると思いますが、前回 出ました御意見について、御質問あるいは御意見がございましたらどうぞ。  1つ目のACIPにつきましては、これからも出てくるわけですが、その次のSAG E、セージアドバイザリーグループに関しましては、元感染研所長の大谷先生、ついで 3代前の山崎所長がしばらくやっておりまして、最近感染症情報センター長の岡部委員 が推挙されて正式委員になったと思いますが、そういう段階です。そのほかいろいろ具 体的に、後のワーキンググループの中に候補として提案されている内容が入っていると 思います。何かありますか。なければ、また後で御意見をいただくことにして次に行き たいと思います。  次の米国ACIPは、6月にありましたミーティングについての報告を事務局からお 願いします。 ○堀内課長補佐   資料Bでございます。前回の本委員会におきまして岡部委員より、この米国ACIP の組織、構成、その概要について、御出席されていたということもございまして、御報 告をいただいたところでございます。こちらにつきましても年3回、前回の岡部委員の 資料にもございましたが2月、6月、10月ということで開催されております。関連しま して、本推進委員会も年3回程度、その1カ月後ぐらいをめどに開催するということに してはどうかと事務局の方で考えております。ちょうどその6月の分が27、28日に米国 ジョージア州のアトランタで開催されてございます。こちらにつきましては、このアジ ェンダのみならず、それぞれのプレゼンテーションのスライドでございますとか会議の 記録が事後にホームページに掲載されるということで、さらに具体的な情報提供もされ ているわけでございます。6月分につきましては、それらの資料はまだ掲載されており ません。こちらのアジェンダのみということになってございます。  今回は感染研の方からも御参加がなかったということですので、事務局の方からどの ような議論がされているかということにつきまして簡単に御報告を申し上げたいと思い ます。  見方ですが、AGENDA ITEM とPURPOSE とPRESIDER/PRESENTER ということでございま す。その課題とPURPOSEのところでInformation なりDiscussionなり Voteなり、議事 の内容が区分されています。  右端の部分では、冒頭の部分でACIPのチェアーから記載ございますが、例えば8 時半からのHepatitis A Vaccineと言えばTracy Lieuさんが、このACIPのワーキン グのチェアーということで、岡部委員の前回の御紹介にもございましたそれぞれワーキ ングが多数ございますので、そのワーキングのチェアーがそれぞれのアジェンダの司会 進行をしているというような形式になってございます。  アジェンダですが、27日の分で午前中からA型肝炎ワクチンでございますとか、9時 半からアップデートといたしましてワクチンのファイナンシングの問題、その次には Adult Immunization Scheduleこちらのアダルトは18歳以上ということになっています。 に対するImmunization Scheduleのリビジョンのプロポーズ。それからその次には ChildhoodとAdolescentということで、出生から6歳までがChildhood、7歳から18 歳がAdolescentということでございます。そのスケジュールのリビジョンが議論されて いるということでございます。その後さらにSafety Officeのアップデートですとか、 Herpes Zoster帯状疱疹ワクチンについてのトピックがございます。さらに午後になり ますとCombination Vaccines混合ワクチンに関するトピックもございます。その後には 髄膜炎菌、ブレイクをはさみましてEconomic Analyses が3時40分ですが、Proposed Approach to Economic Analyses of Vaccines and Immunization Strategies Consideration by the ACIPという個別のワクチンからエコノミックアナリシスまで幅 広く議論されております。  2ページにまいりますと、同じく27日の夕方でございますがSupply and Implementationということで供給の問題についてもトピックがございます。そのほか肺 炎球菌の問題でございますとか、妊娠中あるいは授乳中のワクチンに関するトピックも ございます。これを前半一日でこなしているということでございます。  翌28日は、半日程度ですが、インフルエンザワクチンに関しまして、 school-age-childrenに対するエクスパンションのリコメンデーションについての議論 などがございます。2点目では、HIV感染症の方に対するワクチンの使用に関する問 題が討議されてございます。ロタウイルス、HPV、水痘という個別ワクチンの議論が されまして、12時45分にAgency Updatesということで、これに関連する参画機関のそ れぞれのインフォメーションがアップデートされるということになってございます。恐 らくまもなくこれらのプレゼンテーションスライドがACIPのホームページにアップ されるのではないかと思いますので、御参照いただければと思います。簡単でございま すが、以上でございます。 ○倉田座長  ありがとうございました。ただいまの6月にありましたACIPの報告につきまして、 質問がございますか。なければ次へ行きます。  国立感染症研究所におけるワクチン研究開発ということで、小林免疫部長に説明をお 願いします。 ○小林免疫部長  御紹介いただきました国立感染症研究所免疫部の小林でございます。お手元に資料C としまして、そして左上の方に国立感染症研究所−1、−2、−3、−4記載していま す4つのワクチン開発研究について簡略に御説明させていただきます。 国立感染症研究所−1は経鼻投与型インフルエンザワクチンの開発でございます。当研 究所の感染病理部、長谷川 秀樹室長を中心に進められているものでございます。イン フルエンザの危機は御案内のとおりでございますが、このワクチン開発の開発戦略につ いてでございます。日本における現行のインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです が、アメリカ合衆国では経鼻接種の生ワクチンもございます。しかしながら、どのよう に免疫をワクチンで付与したら一番合理的か、すなわちインフルエンザの感染防御には 3つの大きな要因があります。第一は、粘膜の免疫で重要なIgA抗体という粘膜防御、 感染防御に役立つ抗体をうまく誘導すること、第二は、血中のIgG抗体の誘導、そし て、第三にインフルエンザウイルスに感染した細胞を殺してしまう細胞傷害性T細胞を 誘導することが理想的なワクチンになります。  それともう一つ問題になりますのは、今、鳥インフルエンザで、いつの日か新型イン フルエンザが出てくるだろうということを想像しているわけです。現時点では例えば鳥 インフルエンザがベトナムで流行しましたら、それを原料としてワクチン開発をします。 そうしている間にインドネシアで亜系の異なる鳥インフルエンザが流行し、インドネシ ア株を原料としてワクチン開発を進めています。すなわち、インフルエンザウイルスの 変異に応じてワクチン開発を進めています。もし、変異を超越するワクチンによる交叉 免疫が誘導できれば、変異ごとにワクチンを作成する必要がなくなるという長所がござ います。ここで進められた研究は今の2つの命題、効率的な感染防御を誘導すること、 そして交叉免疫を成立させることに注目した研究課題でございます。  要点は今のとおりでございますが、2枚目の図をご覧ください。ここで用いましたの は、不活化したインフルエンザワクチンでございます。不活化しますと免疫力は弱いも のですから、普通はアジュバントという免疫増強剤を併用します。従来、日本で認可さ れているあるいは世界的に使われているアジュバントはアラムです。しかし、本研究で は自然免疫の成立に重要なToll様受容体3に結合し、活性化するアジュバント、合成二 十鎖RNA(商品名:アンプリジェン、Hemispherx, Biopharma社)を用いました。なお、 アンプリジェンは慢性疲労性症候群などの治療薬としてアメリカ合衆国で臨床試験され ています。  長谷川室長を中心としたワクチン開発では、先ほど申しました不活化したインフルエ ンザウイルスとアンプリジェンを組み合わせています。しかも接種経路は、従来、皮下 注あるいは筋注ですが、本研究では経鼻接種でございます。すなわち、インフルエンザ 侵入部位の粘膜免疫を誘導することを期待しております。  上の図を見ますと、種々のウイルス由来ワクチン株(PR8、Beijing、Yamagata:いず れもA型)を経鼻接種し、PR8に対するIgA及びIgG抗体産生及びウイルスの量を解析 しました。その結果、経鼻接種の場合、A型で亜系の異なるインフルエンザウイルスに もワクチンの有効性を示し、すなわち、交叉反応性を誘導できました。しかし、B型イ ンフルエンザ(Ibaraki、Yamagata、Aichi)には無効でした。加えて、ワクチン接種マ ウスはインフルエンザによる死亡が著明に低下しています。不活化インフルエンザワク チン経鼻接種は亜型を飛び越えてワクチン効果を発揮するということでございます。  続きまして、話題の高病原性鳥型インフルエンザH5N1(A型)でございます。H 5N1ベトナム株から作成されたワクチンにアンプリジェン免疫助剤を加え、経鼻、或 いは、皮下接種しました。そうしますと、図が3つ並んでいますが、上の方からご覧に なっていただきますと、効果は皮下接種より、経鼻接種がはるかに良く効きます。  次に、亜系の異なる高病原性鳥型インフルエンザ(A/Hong Kong/483/97及び A/Indonesia/6/2005)の感染におけるベトナム株(A/Vietnam/1194/2004)由来ワクチン の効果について述べます。ベトナム株由来ワクチンの経鼻接種は亜系の異なる高病原性 鳥型インフルエンザにも有効性を示しました。なお、皮下接種ではこの効果は認められ ませんでした。アンプリジェン添加不活化インフルエンザワクチンの経鼻接種は感染防 御免疫を誘導、かつ、交叉免疫性を誘導でき、理想的なワクチン候補と考えられます。  引き続きまして国立感染症研究所−2、発癌性ヒトパピローマウイルス群の感染予防 ワクチンでございます。これは当研究所の病原体ゲノム解析研究センター、神田 忠仁 センター長を中心として進められている研究でございます。  御案内のとおり、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、既に、Merck及び GlaxoSmithKline社から商品化され臨床使用されています。但し、両社のHPVワクチン は子宮頚癌を起こすHPV16と18型を標的にしています。すなわち、これらのHPVワクチ ンは16と18型に起因する子宮頚癌にのみ有効です。子宮頚癌とHPV型の関係として、 欧米では16と18型、日本では16、52や58型の関与が報告されています。したがって、 日本においてMerck及びGlaxoSmithKline社製HPVワクチン効果は低減する可能性があ ります。加えて、HPV型共通抗原を探索し、共通抗原を基盤としたワクチンはすべての HPV関連疾患を予防することが可能となります。これらの視点から、神田センター長は 型共通HPVワクチン開発を推進しています。  次ページの図をご覧下さい、HPVの構造は大きく分けて2つのサブユニット(L1お よL2)から構成されています。先ほどのMerck及びGlaxoSmithKline社製HPVワクチン はL1部分を標的にしたワクチンです。他方、L2部分はHPV宿主細胞への接着や侵入 など感染の成立に不可欠な分子です。神田センター長らはL2にHPV型共通の抗原決定基 を発見しました。この知見を応用し、L1とL2を結合させ、新規HPVワクチン候補を作 成しました。  HPVは細胞培養系で増殖しないウイルスであり、ウイルス様粒子を人工的に作成し、 ワクチンとして開発しました。L1及びL2結合型HPVワクチンを油性アジュバントと共 にウサギに接種し、抗体など免疫応答を観察しました。用いたL2抗原部分と対応抗体は 抗Ch18/38、抗Ch56/75、抗Ch96/115の3つございます。特に、Ch56/75抗原を組み込 んだHPVワクチンはHPV18、31、52、58及び16に対し、高力価の中和抗体を誘導するこ とが判明致しました。すなわち、型の異なるHPVに共通なワクチンを試作することがで きました。  引き続きまして国立感染症研究所−3、C型肝炎ウイルスに対するワクチン開発です。 ウイルス第二部、脇田 隆字部長を中心に研究開発されているものです。戦略的に1) 細胞培養系で増殖しないHCVウイルスを増殖可能なウイルスに転換し、ワクチンとして 利用する、2)HCVウイルスの構成成分を高度弱毒化ワクシニアウイルス(Dis株)に組 み込みワクチンとして開発する、2研究を推進しています。  HCVウイルスの増殖性や感染性に関し、劇症型C型ウイルス肝炎から分離されたJF H−1株は増殖性や感染性を有することが判明しました。JFH−1株における構造、 増殖性や感染性に関与している遺伝子領域を検索し、HCV遺伝子領域C−5Bが必須であ ることが判明しました。これらの遺伝子領域を導入したウイルス粒子を作成し、現在、 マウスにウイルス粒子を免疫し、中和抗体の誘導など免疫応答を解析しています。  HCVワクチン開発における第2の戦略は高度弱毒化ワクシニアウイルス(DIs株)に HCV遺伝子を組み込んだワクチン開発です。ワクシニアウイルスは種痘ウイルスです。 種痘ウイルス、DIs株は低病原性です。HCV構造蛋白のE1、E2領域を組み込んだ DIs/J228を作成し、マウスに接種したところ、E1、E2領域に対し、抗体を産 生しました。すなわち、DIs/J228はHCVワクチン候補と考えられます。  最後は国立感染症研究所−4、Vero毒素のトキソイドワクチンの開発でございます。 これは細菌第二部、高橋 元秀室長を中心に開発が進められている研究です。腸管出血 性大腸菌感染症の主な病原性はVero(Shiga様毒素:SLT)毒素に起因しています。Vero (Shiga様毒素:SLT)毒素により、血管内皮細胞が傷害され、その結果、溶血性尿毒症 症候群、腎不全や脳症を誘発し、死亡を含め重篤化します。Vero(Shiga様毒素:SLT) 毒素を無毒化し、かつ、免疫原性を保持したトキソイドワクチン開発を推進しました。  ジフテリアや破傷風毒素はホルマリン処理により、現行のトキソイドワクチンを作成 していることから、SLTをホルマリン処理し、トキソイド化を試みました。しかし、SLT はホルマリン処理に抵抗性を示したため、油性微粒子であるリポソームの応用を考えま した。SLTとリポソームの結合にグルタールアルデヒドを用い、無毒化したSLT(すなわ ち、SLTトキソイド)結合リポソームを作成しました。無毒化されたSLTはリポソーム 表面に結合し、すなわち、宿主に認識され易い構造でした。  次に、SLTトキソイド結合リポソームによるワクチン効果をマウスやサルで検証しま した。ワクチン接種動物は抗SLT中和抗体を産生し、腸管出血性大腸菌感染やSLTによ る重篤な病態や死亡を回避することができ、SLTトキソイド結合リポソームは有効なワ クチン候補であることが判明しました。但し、毒素に対する防御免疫応答は誘導可能で すが、腸管出血性大腸菌そのものを減らすことはできません。すなわち、SLTトキソイ ド結合リポソームは個人の発病予防に奏功するワクチンです。従いまして、接種対象者 の選定が課題となります。  以上、国立感染症研究所のワクチン開発に関する4研究課題に関し、簡略に説明させ ていただきました。 ○倉田座長  ありがとうございました。何か質問ございますか。 ○橋本委員  質問といいますか意見です。非常に貴重な研究でこういうものを実用化していくため にはどうすればいいかという議論をするのは重要なことだと思います。一つは、どうし て感染研の発表だけを聞かされているのかという前提がよくわかりません。ほかにもい ろいろな大学や研究機関でこういった基礎的な研究が行われていると思います。前提と してどうして感染研の研究だけを取り上げたのかということがわからないと思いました。  もう一つ、非常に基礎的な段階の研究といいますか、こういうものが実用化していく には時間がかかると思います。目の前の問題として、海外では承認になっているワクチ ンが日本に入ってきていないという状況かと思います。例えば前回ACIPで推奨して いるワクチンとしてこういうものがありますと。その中で日本に入ってきていないもの があるということがわかっているかと思います。そうした、海外で有効性、安全性が確 認されているけれども日本ではまだ未承認であるというようなワクチンが日本に入って くるためにどうすればいいのかという議論の方が先にあるべきではないかということを 少し思いました。 ○倉田座長  今の質問に対して、事務局いかがですか。 ○関血液対策課長  事務局でございます。この推進委員会の場でどういうような議論をしていくのかとい うところで、一つの具体性という話が以前から出ているわけです。本日のこの発表のア ジェンダを決めていく上での趣向といいますか、具体的なイメージということでいろい ろな研究発表会のような形で発表を聞くということでもよかったのかもしれませんが、 限られた時間の中で、どのようなイメージで今後の検討するに当たっての議論をしてい ただくかというときに、具体的な研究課題でこういうものがあるという例示という意味 で発表いただいたと。特に倉田先生が座長であるということもございますし、そういっ た意味でいろいろな補足的な解説をしていくという意味でも、例示として取り上げた場 合に議論がしやすいのではないかということでございます。このアジェンダについての 取り上げ方について、事前にもし御説明が十分でなかったということであればおわび申 し上げます。あくまでもイメージということで御理解いただければと思っております。  後段の御質問でございますが、もちろん多面的にいろいろな議論をしていく必要があ るということでございます、初期の開発段階の研究というのが大体このような形で例示 として進んでいるというものについての話題提供をすることが、今後のアジェンダを考 えていく上での一つの要素として意味があるのではないかという考え方でございます。 いただきました御意見はまさにほかの委員も共通して持っておられるような問題意識だ と思います。どういうところにどういうふうな時間配分をして重点的に検討していくの かということについて、まさに今いただいたような御意見をいただきながらさらにより 効率的な議論ができるようにということで座長と相談していけたらと思っております。 ○倉田座長  この資料D、今日は山西さんが欠席されておりますが、そこのところでも前に幾つか 出されていて、今後さらに検討が行われていくということに、最初の方の「なぜ感染研 だけか」というところがございます。よろしいですか。ほかにございますか。 ○松本委員   橋本委員と少し理解が違うのかもわかりませんが、国立感染研さんから現在開発され ているものを発表されまして、産業ビジョンの中で問題になっていました、日本でもい いものが開発されているのにどうやったらコマーシャル化されるかという議論があった と思います。具体的なワクチンの開発が出てきた。これからこれで議論になっていくの だと思うのですが、ではこういう今、先生が発表されたようなことを、例えば企業が一 緒になって聞く、あるいはこういう場でもっともっと違うワーキングチームをつくって、 そこで本当にシークレットのようなデータまで出して、企業が集まってオークションす るような、そういうような会をつくろうとかそういう議論に持っていくために今回一つ の例として発表されたのではないのかと理解しています。 ○倉田座長  事務局、意見ありますか。なければ私の方から言います。これは既に学会等でも公表 されています。それから大学等はいろいろなところと組んでやるのは自由自在ですが、 国立感染症研究所の場合は非常に厳しい規制があります。勝手に企業と手をつなぐとい うことはほとんどできないようになっています。特にお金のやり取りはゼロです。そう いう歴史的な流れがあります。その規制は今も枠は取れていません。ヒューマンサイエ ンスのプロジェクトとして協力してもらって産官学でやるとか、そういうあくまでも枠 の中でしかできないような仕組みになっています。それがいいか悪いかは全く別な話で す。国の組織がそういうものでなければ動かせないという理屈が正しいかどうか、今の 時代に合っているかどうかというのは全く別な問題として、そういうものを後ろのワー キングの方で今後どういうふうにやっていくかというところで、多分後で血液対策課の 方から御説明があると思います。繰り返しになりますが、小林さんが発表された大部分 はワクチン学会あるいはウイルス学会、細菌学会いろいろなところで全部公表されてい ます。一部のものはヒューマンサイエンス財団の中での産官学あるいは官産といった格 好での仕組みで幾つか動いているということです。 ○岩本委員  もと伝染病研究所が2つに分かれた感染研の片割れの出身だからというわけでもあり ませんが、この出方で少し違和感を持ったのは、感染研は検定機関としての役割を持っ ているからだと思うのです。その辺やはり慎重にしなければいけないと思います。今そ の議論を進める気はありませんが、出方として少し違和感があったというのを感じまし た。なぜ感染研だけがここにあるのかというのは、少し慎重でもよかったなと思います。 研究自体は非常にレベルが高いと思います。 ○倉田座長  これはさっき言いましたようにサイエンスとして発表されているものであって、どう いうふうに行くかというのは別な話です。検定機関というのはまた別なことで、サイエ ンティックなものについてのチェックをやるということで、それが違和感があるかどう かは先生のお感じ方でいいのですが…… ○松本委員  済みません。説明があれで、企業側としては物すごく興味のある研究です。学会等で 発表はなされているのですが、それでもなかなかトランスミットされないからやはりビ ジョンの中で、いろいろと問題があるという話であれば、学会の発表だけでなくもっと ほかの機会を考えなければいけないのではないかという議論があるのではないかと思っ たのです。 ○倉田座長  余計なことを言いますと、これはかなりの論文になって出ています。ですから、そう いう方のサーチは立場、立場でやっていただくことで、そのほか興味があればまたいろ いろな仕組みの中で動くことだと思いますので、ぜひ検討されて、繰り返しですが後の 方で出てくるワーキンググループがどういう位置づけになっていくかということもここ での議論で、ワーキングがどうするかということになるかと思いますのでよろしくお願 いします。ほかにありますか、よろしいですか。  それではワクチン開発研究機関協議会、これは仮称ですが事務局から説明をお願いし ます。 ○堀内課長補佐  資料Dをお願いいたします。今ほどの議論でもございましたが、ワクチン産業ビジョ ンのアクションプランが、前回のビジョンの御紹介の中でも御紹介をさせていただいて いるところですが非常に幅広にアクションプランの内容がございます。今ほど紹介のあ りました、外国製品を円滑に導入できるような環境整備ということもございます一方で、 アクションプランの中に基礎研究の関連ですと基礎研究から実用化、臨床開発への橋渡 しの促進と、トランスレーショナルリサーチの促進ということが一つの課題として上が ってございます。これらをどのように今後取り上げて行くかということは一つの課題で ございますが、まさにアクションプランの中に一つ掲げてございます、ワクチン産業ビ ジョンの中のアクションプラン2でございますが、「ワクチンの基礎研究を行う研究機関 相互の連携を高め、基礎研究の効率的な実施を可能とする共同研究のネットワーク(協 議会)」というものを形成するということがございます。こちらにつきましては本日御欠 席の山西委員が現在中心となられまして、協議会の形成に御尽力をいただいているとこ ろでございます。まさにビジョンのアクションプランの具体化の一つであるということ で、現在の状況を御報告し、また御意見等がございましたら今後の活動に反映していき たいということで御紹介させていただくものでございます。  資料Dの1枚目の下のスライドでございますが、今ほどお話がありましたように、こ れは昨年度の厚生労働科学特別研究事業の中でワクチンの研究開発の現状、今後の研究 開発目標に関する調査研究というものがございます。まさに基礎研究はされているけれ ども、実際の開発に結びついていないという指摘がございました。研究結果としまして は、ワクチン関係で種々実施されています研究事業を産業との連携により統一的な戦略 のもとで推進し、次世代ワクチン開発戦略を進めていくということがございます。これ らもございまして、まさにビジョンのアクションプランの中にこのようなネットワーク の形成が指摘されているところでございます。  現在のところその構成機関といたしましては、ワクチン開発に係る基礎研究を行う研 究機関の代表の方々、国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、大阪大学微生物病研 究所それから医薬基盤研究所などが集まられるということで、必要なオブザーバーも参 加するという形で、今後のワクチン開発研究の方向性、戦略に関する意見交換、開発研 究の普及事業等を進めていきたいということでございます。  1枚めくっていただきますと、研究機関協議会を設定する必要があるということに対 する問題意識のおさらいになります。背景、課題ということでしてここ10年間我が国で は海外の状況と比較しまして、新ワクチンが開発されている一方、我が国では10年間な いということから、課題としてこのような研究の統合的な推進ということが必要であり、 テーマの重点化ということも必要であろうと。  協議会を設置し、2ページ目の上のプレゼンテーションスライドの下から2つ目のく くりの中で、「製薬企業との連携な連携による」となっておりますが、「製薬企業との連 携による」の誤りでございますが、の開発、ワクチン治験環境の整備などを進め、また この後の議題で御発表される内容にもかかわってくると思いますが、ワクチンに対する パブリックアクセプタンスの形成ということと合わせてこういった活動を進めまして、 特に2ページ目の下の方のスライドの、新規投与であったり、新規アジュバントであっ たりウイルスベクターの開発という開発に共通に必要となる横断的研究分野の集中を推 進していくべきではないかという問題意識でございます。  3ページ目、4ページ目は、現在の時点での協議会を今後設置していくに当たっての 設置要綱(案)の段階でございますが、御参考としておつけしているものでございます。  4ページ目の参考でございますが、下から3つ目の丸のところで、これもまだ案の段 階ですが、現在は協議会会長をこれら4機関の持ち回りということで、初年度は医薬基 盤研究所の山西先生のところでスタートしたいということで進められているというふう に聞いております。  この事業、活動内容等につきまして御意見等ございましたらお伺いし、それを事務局 からまたお伝えして、今後の活動に反映していただきたいと考えております。説明は以 上でございます。 ○倉田座長  ありがとうございました。そこで私の隣にいらっしゃる神谷先生に、2年前にワクチ ン産業ビジョンという問題につきまして何回もヒアリングをされ、また意見を聴取して まとめをつくられております。一言御意見をいただければと思います。 ○神谷顧問  今事務局が説明になりました大体その内容です。この推進委員会を進めていただく中 でアクションプランというものをつくったわけですから、それをどう進めていくかとい う一つのモデルとして、山西先生がおられて先に資料Dを説明されると、橋本委員が言 われたような質問が出なかったと思うのですが、少なくともこういう組織がいろいろあ って、研究組織があるけれども、その研究組織が現実には皆さんの中で共通の場で検討 されていないといいますか、いい研究があってもまた片方では違うことをやっていて、 それがなかなか進まないということが現実にあります。それをこれからの推進委員会の 中でまとめていっていただく、いわゆるトランスレーショナルリサーチの促進という言 葉で書いてありますが、そういうことをやっていくためですが、きょうは感染研が代表 としてお話になったという程度に考えていただいて、こういうようなことがあるのでこ れも一つの取り上げていく中では大変大事なことですので、これを組んでいただいたと 私は理解をしております。  さっきおっしゃったほかのことの問題は、また別の機会に話されていくと思います。 そういうふうに理解していったらいいのではないかと思っております。以上です。 ○倉田座長  ありがとうございました。何か加えることがありますか。 ○橋本委員  これは基礎研究の段階までといいますか、動物などの実験までで治験などをこの研究 協議会が主体となってやるところまでは想定されていないということですか。 ○倉田座長  今おっしゃったのは、ワーキンググループの中での話ですか。 ○橋本委員  そうですね。 ○堀内課長補佐  今現在考えられています内容は、3枚目に設置要綱がございます。(設置)第1条とい うところで、ビジョンの趣旨にのっとり、ワクチン開発に係る基礎研究を行う研究機関 相互の連携を高め、基礎研究の効率的な実施を可能とする共同研究のネットワーク組織 ということで、組織的に臨床研究が実施できないというような機関も入ってございます ので、今のところはこういったところが主たるフォーカスではないかと思います。 ○橋本委員  ただ将来的に実用化を目指して行くということであれば、いずれは臨床試験をやって という話に次のステップで入っていくものだと思うのです。そこを考えた場合に、例え ば厚生労働省の独立行政法人の医薬品医療機器総合機構が薬事承認審査を担当するわけ ですが、そこが例えば症例数としてこのぐらいで、こういうものを持ってこないとどう だよといったアドバイスをする立場だと思うのです。そういうところがアドバイザーな りオブザーバーなりの形で入った方が、よりスムーズに実用化につながっていくのでは ないかと思います。 ○倉田座長  非常に大事な御意見です。事務局、何か今の御意見にコメントございますか。 ○植村企画官  事務局からでございます。本日山西先生御欠席ということで、この構想自身をもう少 し煮詰めていく上では山西先生のお考えなりあるいは基盤研がどういう役割を担うかと。 基盤研というのはまさに研究のアドバイスというような機能も持って果たしております し、実際の実用化に向けた支援をしている機能を持っているというところがございます。  一つは支援をしている立場と、実際の審査という、先ほど検定のお話もございました が審査なり規制で安全性・有効性を見ていく立場とがある程度独立性を保った形も必要 があるのではないかという部分と、そういうものが製品なり分野によっては一体となっ た形での進め方をした方がいいような分野と、それぞれあるのではないかと思います。 例えばオーファンドラッグに指定されるようなものになってまいりますと、その規制の 部分と振興支援の部分というのが基礎から実用化に至るまでかなり圧縮して一体となっ て進めて行くような部分もございます。それはケースバイケースによっても違ってくる のかということで、山西先生のアイデアとして、基礎研究全体の分野でこういった基盤 をつくろうという部分と、それからその先の個別分野ごとあるいは品目によっての応用 部分というのは、またどういう連携がいいのかを、次回、山西先生御出席いただければ、 そういった点も少しお話しいただくようなことでフォローしていただいてはいかがかと 思います。 ○倉田座長  この問題について私も山西さんと毎週話をしています。非常にポジティブに、いい方 に物事を展開させるようにやろうと。つまり足かせになるようなものは取っ払えばいい と、諸外国でやっているレベルで行くのだったら、そういうものにできるだけ早く変え ていっていいものができればいいのではないかと基本的にはそういうお考えです。です からネガティブにしようという気が全くありません。いい方に、今橋本さんがいろいろ 質問を投げられましたがそういうふうに展開するのではないかなと思っています、御期 待ください。ほかにありますか。  それでは次に、日本製薬団体連合会代表しまして松本委員からワクチン普及・啓発へ の提言・意見をお聞きしたいと思います。 ○松本委員  松本でございます。僭越ながら日本製薬団体連合会及び細菌製剤協会を代表いたしま して、ワクチン普及・啓発への提言・意見ということで発表をさせていただきます。  我々としまして、この発表に至るまでにワーキンググループをつくりました。各日薬 連さん細菌製剤協会からワクチンを製造販売している会社の代表の方、約20名集まって いただきまして、常に日本でワクチンの普及・啓発するにはどういう問題点があるのか、 また日本のワクチンの産業あるいは行政がいろいろなことでどういう問題があるのかと いうことを議論いたしました。その中で優先順位が高いであろうことを取り上げ、今回 の発表にさせていただきました。私の発表はお手元のスライドのスライドナンバーでお 話をさせていただきます。  スライドナンバー2番に移ります。我々ワーキングチームとして目指すゴールは何か ということでございます。世界も本来一緒だったのですが、ワクチンはどうしても小児 の領域ということでした。ただ皆さん御存じのように、昨年の委員会でも出てまいりま したが、いろいろな年齢層におけるワクチンが今開発されつつあります。また世界の接 種スケジュールを見ますと、日本では小児にしか使われていないものも思春期で使われ たり高齢者で使われたりしております。新たな接種層というところでの接種スケジュー ルがある。そういうことを見たときに、やはり我々としては国民を感染症から守る観点 から、小児、思春期、成人、高齢者に至るまでの幅広い予防接種の普及・啓発をする。 結局今ワクチン産業は年間600億円、あるいは700億円という売り上げ市場しかありま せん。片や医薬品は6兆円、7兆円の市場があります。幅広く普及・啓発しマーケット がふえてまいりますと、当然企業のワクチンビジネスへの投資意欲の醸成がされてくる。 そうなりますと先ほどから日本でのこういう素晴らしいリサーチあるいは開発、そうい うところにも企業からの投資が行われまして、またいい開発ができるのではないか。こ れは今の産業ビジョンにも出ておりますが、ワクチン産業のスパイラル、発展を促進し ていく。そうなりますと結局は国民の公衆衛生に多大なる貢献ができるのではないかと いうことで、我々はこれを目指すゴールにしようということで統一いたしております。  しかしながらスライド3になりますが、その目指すゴールに向けましてやはり幾つか の課題がございます。我々が話し合った中で、こちらにあります5つが、優先順位が高 いのではないかということで課題を挙げさせていただいております。  順番に読みますが、1番としましては、幅広い年齢層に普及する。では本当に各年齢 層で感染症対策に必要なワクチンが本当にあるのか、ないのか。またそれらの開発状況 がどうなのか。今後そういう開発の可能性があるのかどうか、こういうことが課題にな ってくる。どんどん広げるのであればあらゆる世代でワクチンを接種すればいいと言っ てもものがなければそれは始まらない。  2番目としましては、普及対象が各年齢層に拡がりますと、国民各年齢層間でのワク チン接種の関心度が大きく異なっております。個人的なことですが、肺炎球菌ワクチン というのを販売促進しております。高齢者の方にワクチンを普及するとき、特にそれも 自己負担のワクチンを普及するときには、小児のワクチンのように先生方からお母さん に教育して、お母さんが一生懸命に子供に勧めるようなやり方だけでは当然高齢者です からありません。高齢者で子供さんが高齢者に肺炎球菌ワクチンを勧めるようなキャン ペーンもするのですが、それも難しい。やはりいろいろな年齢層で違ってくるのではな いか。後ほどお話ししますが、例えば先ほど思春期層という話がありましたが、中学生 あるいは高校生がワクチン、病気に対しての関心度が高いものではないということもあ ります。これも課題だろう。  3番目は、これは少し文章的に不適切かもしれません。一般的にどうしてもワクチン というのは小児科医の先生のものではないかというイメージがあります。やはり幅広い 年齢層に普及するためには、小児科の先生以外の先生方への啓発活動が重要になるだろ うということで挙げさせていただいています。  4番目としましては、やはり普及するためには日本の状況に合う接種スケジュールの 見直しが必要ではないかということで課題として挙げさせていただきました。  5番目としまして、かなりの大きな問題になる。普及・啓発する場合の特に普及です。 ワクチンを普及する場合に大きな問題になるであろう、接種率向上のために接種費用を だれが負担するのが妥当なのかということがやはり課題に挙がってくるであろうと考え ております。やはり自己負担ということになりますとどうしても限界がある。  スライド4に入ります。きょうの提言といたしまして、これらの課題それぞれを今後 解決するためには、やはりワーキンググループやあるいはこの委員会でいろいろな御討 論がされることになると思いますが、我々としましてはそれぞれの課題を議論する際に ぜひとも話し合っていただきたい、あるいは解決していただきたい点を、正しい言葉か どうかわかりませんが論点案ということで挙げさせていただきました。次のスライドか らそれらの点を説明させていただきます。  スライド5になります。課題Iと言うことで先ほど言いました各年齢層での感染症対 策に必要なワクチンの有無とそれらの開発状況、開発の可能性はどうなのか。この中で 検討いただきたいのは開発。これは国内の開発もそうです、あるいはまた海外からのワ クチンの導入における検討課題はやはり開発ガイドライン、先ほど山西先生のパートの ところでも橋本委員が質問されていましたが、そういう臨床試験のガイドラインなど日 本ではどうなのか。あるいは生物製剤基準がどうなのか、また審査体制がどうなのかと いうことも検討課題にすべきであろう。例えばHPVのワクチンやHibとか肺炎球菌 ワクチンというのは具体的なワクチンになるのではないか。又、そういう新しいワクチ ンだけではなく、既存のワクチンのキャッチアップ及び新たな接種年齢層の開拓、例え ば麻疹、風疹ワクチンはキャッチアップの年齢層をきっちりと決めて、そこでどう普及 するのかということを議論いただけたらいいのではないか。またB型肝炎ワクチンなど は新たな接種年齢層があるのではないか。諸外国で思春期層、中学生、高校生あたりも 今リコメンデーションが出ておりますが、日本でもそのような接種スケジュールに持っ ていけないかどうかという議論もなされていくべきではないかということで提案させて いただいています。  スライド6になります。国民各年齢層、小児だけでなくいろいろな年齢層に対し普及 する場合に、先ほど言いましたワクチン接種の関心度が大きく異なってくる。一つは年 齢によりどのような感染症リスクにさらされているのかが異なる。ですから年齢に応じ た情報提供が必要であろう。疾病に対する危険性の恐怖心が大きく違う、年齢層ごとに 啓発メッセージを変える必要があるだろう。乳幼児のお母さんに勧めるメッセージと女 子高生や中学生にワクチンを打たせるメッセージ、あるいは高齢者に打ってもらうメッ セージ、やはり変えていく必要があるだろう。3番目としましては情報入手先医師、主 にこういうワクチンの情報や医療情報はお医者さんから得るわけですが、残念ながら健 康人はお医者さんに行きません。特に成人層や働き盛り、思春期層の人たちはお医者さ んに行きません。そういう人たちは、ここにありますように医師、地方自治体というよ りもマスメディア、インターネット、学校といったところからワクチンの情報を得てい る。そうなりますとメディアの方々が物すごく重要な役割になると思いますが、やはり 正確で十分な情報の発信の必要性が出てくるであろう。副反応の情報だけでなく、有効 性・安全性及び予防接種を受けない場合の疾病の怖さまで伝える。しっかりと情報を出 す仕組みをつくれないか。例えば少しジャンプアップするかもしれませんが、産官学で 共同の啓発機関をつくって定期的に、それこそ傍聴席にメディアの人がたくさんいます が、メディアの人を集めて啓発活動をするといったこともできないだろうかということ もワーキンググループなりこの委員会で御討議いただく。  課題IIIとしましては、スライド7になります。小児科以外の先生への啓発活動の必要 性です。1番として、ワクチン学会と他学会との連携・協力をどんどん進められないか、 あるいはワクチン啓発のため、各学会の代表の先生方にお集まりいただいて議論する場 をつくっていくべきではないか、こういうことが本当に実現できるのかどうか、そうい うことをワーキンググループ等で御議論いただきたいと考えております。  スライド8になります。やはり普及・啓発するためには、日本の状況に合う接種スケ ジュールの見直しが必要ではないか。定期接種、予防接種法等がありますので、ここに ありますのは、それ以外の任意のところも含めてもう少し幅広く何かそういう接種スケ ジュールを考えてやっていけないだろうか。我が国で、ここにあります感染症発生状況 に基づいて接種スケジュールをタイムリーに検討し実施に移していけないか。やはりア メリカの接種スケジュールはイコール日本の接種スケジュールになるとは我々も考えて おりません。そこは日本に合ったものをやる。今このビジョン委員会では、毎回ACI Pの報告もありますが、少なくとも公にしなければいけないのはACIPやヨーロッパ あたりで接種スケジュールのリコメンデーションが変更された場合は、やはり日本でも 広くオープンに共有していく必要があるのではないかということが出てきております。  最後の課題でスライド9ですが、やはり接種率向上のために接種費用をだれが負担す るのが妥当かというところは、負担責任はこれだけあります。接種者本人から始まりま して企業保険まで、あるいは検討する方々というのは接種本人から企業もありますが、 やはりワクチンに関しましては、国に対してすべて責任を持ってくれというわけでなく 企業も含めてですが、いかに接種費用をどこから捻出してくるか。そうしないとなかな か接種率の向上につながりませんので、このあたりはしっかりと今後ワーキングチーム 等ができたら議論いただきたい点であります。  以上、課題を幾つか挙げまして、今後ワーキンググループあるいはこの委員会で御議 論いただけたらということで提言させていただき、それぞれの討論をいただくことによ って最後のスライド10ですが、小児から高齢者までの中でワクチンの普及がどんどん進 み、イコール、企業の人間で申しわけないのですが、産業が活性化して市場がふえて、 そこに国内外問わず企業が投資をして、それによってまた先生方の素晴らしいリサーチ にも投資がなされて、ますますいい研究をしていただくことによっていいスパイラルが 生まれて産業が活性していくと確信しております。ぜひとも今後の議論の中に、この提 言を踏まえていただければ幸いでございます。以上でございます。 ○倉田座長  松本さんに貴重な提言、御意見をいただきました。質問あるいは御意見ございますか。 ○大日委員  ありがとうございました。2年前のワクチン産業ビジョンには、啓発の中で費用対効 果分析を欧米では非常に中心として考えられています。それを進めるようなことも書か れておりました。きょうお配りいただいた資料BのACIPのものでも、CDCの方が 中心にサンチェスとかメルツァーという方々が報告されていますので、御提案いただい た啓発の機関というのはHIPに近いのかどうかわかりませんが、そういうことも含め て副反応と効果を平等といいますか、同じ土俵で評価する手法が費用対効果の分析だと 考えております。そこについても含めておいていただければと思います。 ○松本委員  まったくそのとおりでございます。最後の課題Vの接種率向上のために接種費用はだ れが負担するのが妥当かというところで、当然国あるいは地方、企業に接種費用を出し てくださいというときは、費用対効果のデータは必ず必要だと思います。そこまできょ うは書いていませんでしたがそれは必須だと考えております。  また副反応に関しましても当然いろいろ考えております。ワーキンググループで話が 進んでいくと思いますが、例えば企業でアメリカなどのようにバイアルに100円ずつ事 前に副反応救済のお金のような形でプールするなど、そういうことも考えていけるので はないかと考えています。おっしゃるとおりです。 ○倉田座長  多くの課題につながる説明をいただきました。大日委員のお話になったのもまさにそ うです。外国のワクチンのところには必ずこれをやらないで病気になったら幾らかかる と、非常に緻密な数字が出ております。ワクチンをそういう目で見れば、だれが負担し てくべきかということもおのずから、今松本さん言われたように出てくることは、ぜひ 今後の議論の重大な点だと思います。ほかにございますか。  それではワーキンググループを設置するということにつきまして、事務局から説明を お願いします。 ○堀内課長補佐  それでは資料Fをお願いします。本日資料Aで前回のおさらいを少しさせていただき まして、そこにワーキングの設置というお話もございましたので、今ほど御説明いただ きました日本製薬団体連合会さんと細菌製剤協会さんから御提言のあった内容なり課題 というものがワーキングの検討課題というか、まさにワクチン産業ビジョンのアクショ ンプランの推進の課題のかなりの大部分を網羅しているところであろうかと思います。 資料Fとかなり重複する部分もあろうかと思いますが御了承ください。  冒頭の資料Aや、今回のACIPの報告をさせていただきましたことでもお感じにな られているのではないかと思いますが、また本日の議題の持ち方に関しましても関連す るかもしれませんが、本推進委員会におけます情報交換、討議をさらに内容の濃いもの にしていくためには、ワーキンググループを設置しまして、そこでの情報交換、討議の 結果をこの推進委員会にお示しするというような形が望ましいのではないかと考えてご ざいます。  前回、会議の最後でしたので余り十分御討議いただけなかったところでございますが、 ワーキンググループの設置運営の必要性を御指摘いただいてございまして、幾つかの御 意見をいただいております。事務局におきまして、このような形ではどうかというもの を今回検討してございますので、その案を説明させていただきまして御意見等を頂戴い たしたいと考えてございます。  前回の議論の中でも、例えば年齢層で分けて検討を進めてはどうかという意見がござ いました。一言にワクチンと申しましても、御承知のように既に指摘された色々な視座 がございます。それを幾つか列記しましたものが資料Fの1枚目でございます。検討事 項と検討事項の分類と書かせていただいております。一番上がその対象世代、年齢層で 分けるということでございます。産業ビジョンの関連としましては、先ほどありました 国内の研究シーズなり国内企業の開発促進、あるいは橋本委員から御指摘ございました ような、海外ワクチンの導入促進ということもございます。それぞれの促進に対しては 具体的に検討すべきアプローチはかなり異なってくるのではないかと思われますが、そ れぞれに重要であるということでございます。  また、年齢層とは別にワクチンの使用目的、利用目的という意味でも前回の意見にも ございましたように、開発資源や産業化というものの促進施策は使用目的によりまして、 かなりマーケットのサイズなど規定されてまいりますので異なってくるものかと思いま す。そのほか、費用負担の問題、今御指摘いただきました。あるいはそれと合わせて、 定期予防接種へ位置づけられるような感染症に対するワクチンかどうかということも開 発に対して大きな影響を与える要因かと思います。  純粋な研究促進や製品開発ガイドラインというものも、産業振興のためには必要な事 項でございますが、この研究機関ネットワーク、研究促進のところに書かせていただい たことにつきましては、本日の資料の中で紹介させていただいた部分でございます。そ のほか臨床非臨床ガイドラインということにつきましても、本年度から厚生科学研究に おきましてワクチンに関します臨床非臨床のガイドラインの検討がスタートしてござい ます。  このほか普及啓発、市場拡大、安定供給ということを書かせていただいてございます が、先ほどのお話にもあったようなワクチンの場合のマーケットの確立ということが、 その特性上疾病症状が顕在化する前に予防的に利用されるものであるという特性から、 消費サイドに対する啓発によらなければ、なかなか市場形成が安定的に期待できないと いう特殊な医薬品であることから、松本委員からの御提言あった普及啓発という点が市 場拡大、安定供給といったことと不可分に重要な課題であろうかと思います。   それから検討対象となるワクチンの選定についての御意見も前回あったところでござ います。ここで書かせていただいておりますことについては、経鼻ワクチン、混合ワク チン、多価ワクチン、本日の話の中にも経鼻や多価の話は出てまいりましたが、実用化 あるいはその効果を高めるという観点では、こういったワクチン共通の投与手段であり ます、製剤化の技術も課題であるわけですが、ワクチン産業ビジョンのアクションプラ ンの中におきましても、1つ目の課題に掲げられております政府の取り組み及び方向性 というところがございますが、その(2)の中にはビジョンのフォローアップをする場 において官民関係者が共同して個別のワクチンニーズに基づく開発、治験計画やガイド ラインの作成普及を含む検討を行うというようなこともございますので、これら一般的 なワクチンの分類から、さらにワーキングにおいては具体的な個別のワクチンを取り上 げた検討も必要になってこようかと。そのためには可能な範囲での企業の企業情報、未 公開情報などを持ち寄って議論を深めることの必要性も考えられますので、ワーキング の運営については非公開ということが適当ではないかと考えてございます。  以上が事務局で考えますところの、推進委員会を進めていくにあたりましてのアクシ ョンプランの具体的推進に対する検討課題でございます。実際には、これらの課題の逐 一につきまして、きょうの資料の中にありましたACIPのような網羅的なワーキング グループを設置するということは現時点ではなかなか難しいところもございます。例え ば前回御提案のあった年齢層で分けるということを基本としまして、その中でここに挙 げた検討事項も可能な限り網羅的に検討していくということで、資料Fの2枚目が、ワ ーキンググループの運営イメージでございます。当初検討課題なりをバランスよく振り 分けるというワーキングあるいは準備委員会的なものを開催した上で、2つ程度のワー キングを設置し、本推進委員会の開催の間に各ワーキングを2、3回程度開催すること を目標といたしまして、その結果なり途中経過を推進委員会に報告させていただくとい う形になれば、推進委員会の議題もある程度バランスのとれたものになってくるのでは ないかと考えてございます。  以上の形を事務局で考えさせていただいているところでございます。検討課題でござ いますとか運営の方法につきまして、先生方の御意見を頂戴したいと存じます。 ○倉田座長  ありがとうございました。私も今これだけ多数のものを1つのワーキンググループが やるのか、やれないのかその辺のところにつきまして皆さんの御意見を伺ってみたいと 思います。質問、御意見ございますか。 ○岡部委員  おくれてきて申しわけありません。途中から議論に参加するような形になりますが、 課題はここにたくさん書いてあるので大変結構だと思うのです。特にその課題の中で、 利用目的あるいは予防接種法との関係、費用負担、普及啓発に関しては、予防接種に関 することを検討する公的な会というのは、この中にも委員のメンバーがおられますが、 予防接種検討会というのが現在も開かれています。今の緊急課題としてはしかの対策と いったこともやっています。したがって特にワクチンを進めていく、あるいはワーキン ググループでいろいろ検討するに当たっても、その目的が何か、あるいはどういうニー ズがあるのか、今の対策なのかあるいは長期的な対策なのか、危機管理なのかといった ようなことも非常に広範にわたるところもあるので、その予防接種検討会、あるいはそ の上ですと厚生科学審議会の感染症分科会などでも検討すると思いますが、実質的な討 議を行っている予防接種検討会や何かからは運営上はかなり連携をはかっていただいて、 両方の意見が、どっちが中心になるかはわかりませんがそういう連携がぜひ必要ではな いかと思います。 ○倉田座長  ほかにいかがですか。 ○岩本委員  岡部先生の意見とかなり重なるかもしれませんが、私も予防接種検討会のメンバーに 入れていただいています。1つは恐らく予算のこともあって、予防接種検討会では今承 認されているワクチンの議論をするのが精一杯だという印象です。検討事項の中で非常 に大事なのは、ワクチンが対応すべき病気の議論をすべきだということです。排除を目 指す病気がどれか、発症予防をして病気のコントロールする病気にどういうものがある か、重症化を防ぐためのワクチンは何か、ワクチンがないので開発しなければいけない 病気は何かというように、病気があってワクチンがあるのだというつながりを明確にし ないと国民には非常にわかりにくいのではないかと思います。課を超えるなど難しい部 分があることは理解できますが、疾患そのものを検討課題に入れないと、例えば先ほど B肝の話も出ましたが、流行状態が日本のもともとの問題から現在変わりつつあるとい うような疾患もあると思います。そういう疾患のことについての議論をしていただきた い。  もう1点は対象世代を小児、成人というわけ方についてです。思春期、高齢者という 年齢層も非常に大事ですので、その辺小児と成人という分け方では少し足りないと思い ます。たくさん増やしてくれという意味ではありません。以上です。 ○倉田座長  この辺のところにつきまして、今岩本委員の言われたこと総括的にやっておられます 神谷顧問からお話をいただきます。 ○神谷顧問  岩本先生の言われたとおりだと思っていました。余り細かく分けても大変ですので、 小児と成人として、成人の方に思春期、成人、高齢者という形を入れて、そしてそれか ら下の項目については、それぞれの中で大事なところは討議するという形にして、ワー キンググループは2つかせいぜい3つぐらいで進めた方が内容が濃くなるので、そうい うやり方で分けて、途中でお互いが意見交換するといった方法がいいのではないかと思 います。いかがでしょうか。 ○倉田座長  これについて何か御意見ありますか。全くそのとおりだと思うのです。先ほど岡部委 員あるいは関連して岩本委員からもお話がありましたように、国民の公衆衛生上の必要 性ということを踏まえた予防接種施策といいますか、その展開とワクチンの開発及び供 給のための施策というのは両方あると思うのです。密接に関連して初めて施策が生きて くるということになるわけです。片方で施策が政策的に進み、一方で同じものを違った 観点から議論しているというのでは、いつまでたっても実質的なものになりません。双 方進めていくということが非常に大事で、この運営にあたっては、関係部署に最初から ワーキンググループに入っていただくなりして検討を進める必要があると思います。  本日、結核感染症課の三宅課長もおいでになっていますが、この辺のことについて御 意見あるいは御意思をお聞きしたいと思います。 ○三宅結核感染症課長  最近の事例では麻疹の流行は、ここにいる皆様よく御承知だと思います。流行したと きにワクチンを打ちたいという人たちがふえましたが、その際にはワクチンが足りない ということがありました。私どもがやっています予防接種の行政とワクチンの供給は本 当に裏腹の関係です。非常に密接に関係してやっていかなければいけないということは 当然のことだと思います。ただもう一方でワクチンの産業のために我々が何かやるとい うことになると、国民から見ると、もう一方で副作用の問題などございますので、そこ の点はある意味では一線を画してやらなければいけない部分ではないかと思っておりま す。  今いろいろ御意見がありましたように、前回もACIPのお話とかそういうところで 議論がありましたが、密接に連携をしながらあくまでも我々の予防接種の検討会の目的 としては感染症対策として予防接種をどういうふうにやっていくかという視点でとらえ ていかないといけないと思います。今後またどんな形がいいのかということは、またこ こでの議論も踏まえさせていただき、予防接種検討会の議論も踏まえながら、行政内部 でも検討をしていきながら、どんな形がいいのかというのはさらに検討させていただけ ればと思っています。 ○倉田座長  ぜひその辺のところを御協力いただいて、早い議論と早い決定といいますか、政策が 早く行われていくということが感染症対策に一番重要な点なのでぜひよろしくお願いし ます。  それから前回、時間の関係でオブザーバーの方から発言をいただく時間がありません でした。きょうは少し時間がありますので、オブザーバーの方でも御意見あるいは御質 問のある方どうぞ積極的に発言をお願いしたいと思います。 ○岡オブザーバー  細菌製剤協会の岡でございます。私どもはワクチンを提供するという形で、国民の感 染症予防に寄与するということを一生懸命今までやってきたつもりでございます。この 数年間ワクチンが不足すると、不幸にして我々は非常に脚光を浴びるのです。これはど ういうケースかということをよく考えると、余り勉強をしていませんのでわかりません が、例えばはしかが流行したのは原因があったと思うのです。それがどういう原因だっ たか、あるいは流行するためのバックグラウンドが疫学的にきちんと抑えられてなく、 あるいはそういう情報を共有化していないので、ある年代に集中してはしかの流行が起 こった。流行が起こったからワクチンをすぐにと言われてもメーカーは対応できない。 メーカーはワクチン供給するのが責任ではないかと、こういう段取りで話が来るという のは非常に我々としても肩身の狭い思いをしているところでございます。そういう意味 では、いろいろな形で先ほど岩本委員から感染症、病気を議論すべきだと、私は非常に その言葉は大切ではないかと思います。疫学があって感染症の予防が成り立つのではな いかと思っております。ですから疫学があって感染症予防のためにワクチンの必要な量 が見えてくると。我々は努力して貢献できるのではないかと思っております。そういう ことも含めた議論がこれから展開できればありがたいと思っております。 ○倉田座長  ありがとうございました。非常に重要な御意見だと思います。ほかに何か。  1994年インフルエンザのワクチンは100万ドーズしかつくられなくて、40万しか使わ れなかった。なぜか、その前の数年間猛烈なインフルエンザワクチンは効かないという メディア、新聞、テレビ、雑誌あらゆるものが活動されました。ところがこの数年、な ぜワクチンがないのだと、同じメディアの方が叫ぶ。つくる方法も何も全く変わってい ない、チェック方法も変わっていない、こういうことが起こっていいか、私はメディア を攻撃するわけではありませんが、研究者、医師の中にもこんなもの効かないという人 もいらっしゃる。いるのは構いませんが、どういうことに基づいて言っているかという ことに非常に薄っぺらなものがあります。メディアの方が後ろにいらっしゃったら、そ の辺のところよく勉強していただいて、それで書くと。日本の普通の方々、こういう領 域でない人は、新聞はどうか知りませんが、テレビ、週刊誌に非常に流されやすい、そ こに今私が前段で言いましたことが出てきますとやはり流される。流されたあげくにイ ンフルエンザのワクチンが使われなくなる。減ってくると今度必要性が出てきたときに 「何でつくってないのだ、厚生労働省何やっているのだ、メーカー何やっているのだ」と 今、岡さんのおっしゃられたことがそのたびごとに、サインコサインのように動き回る というのは、日本国民の民度は大丈夫かと、それを動かしている人たちは大丈夫かと思 います。  今突然言ったわけではございません、ずっと言い続けてきたことです。私は1990年か らあらゆるところに書いたり言ってきていることです。これ非常に大事な問題です。人 を躍らせることはいいことでも何でもありません。命にかかわることに関して人を踊ら すべきではないというのは私の基本的な姿勢です。今後もそういう対応をしたいと思い ます。非常に大事なことを言われましたのでつけ加えました。ほかにございますか。 ○橋本委員  メディアとしてここに座っている以上、一言言っておかないといけないかと思います。 不勉強だというのはおっしゃるとおりで、逆に我々も正しい情報を伝えていくというこ とは非常に重要なことです。例えばはしかの話なども、恐らく一回の接種だけでは十分 な免疫がつかないということがメディアもそうですし、そういうことがこれまで接種の 際に広くちゃんと伝えられてきていたのかというところ、副作用の問題についても当然 正しい情報は伝えられるべきだし、有効性などについても正しい情報がちゃんと伝えら れるべきであると、それを我々としては勉強して正しく国民に対して情報発信していく というのは非常に重要なことなので、私もその認識を改めて思っているということを申 しつけます。 ○倉田座長  ぜひ、いい方に御協力をお願いしたい。 ○岡部委員  メディアの側に立って代弁するわけではありませんが、確かにきちんとしたことが伝 わりにくいといったことがありました。一方でそういう努力をこちら側もやっていなか ったというのは反省すべき点ではないかと思います。学会や委員会といったところでの 説明、あるいは何か起きたときの説明はしていますが、ここで普及啓発といったこと、 またどこかで「コミュニケーション」という言葉が出ていたと思いますが、何が正しい かというのをこちらが一方的に判断するのでなく、例えばメディアであり一般の方が世 の中として判断することもあると思います。しかしそこに対しては判断の材料としての 正しい情報を常に提供しておくという場を設けておくことが必要だと思います。そうい う点では代弁するわけではありませんが、最近ではかなりのメディアの方が勉強してい るのではないかと思っています。また私たちも出来るだけそのような機会を作っており ます。 ○倉田座長  それは承知の上で、さらに勉強してほしいということをお願いしたわけです。その議 論はこれで終わりにします。  ほかに何か、ワーキンググループをつくることについて、そんなの必要ないといった 反対の意見がありましたらお願いします。ないですか。 ○橋本委員  ワーキンググループの必要性ということではありませんが、この検討項目の中に、予 防接種法の定期予防接種と任意予防接種というのがあります。理解が正しくないかもし れませんが、予防接種法の改正が5年に1回で、こういう検討をしても5年に1回しか 定期予防接種であるとか任意予防接種の区別にならないということであれば、このワー キンググループで検討する内容として足が長すぎると思います。あるいは例えば定期予 防接種と任意予防接種ではなく、推進委員会で推奨するワクチンはこれだというような ことを議論していくとか、導入した方がいいものはこれだというようなことを決めてい く方法もあります。5年に1度のサイクルの中だけで議論するのは少しもったいないと いう印象があります。 ○倉田座長  これもまた非常に重要なことです。勝手なことですが、二人の方から御意見をお聞き したいと思います。まず、こういうワクチンのことについて現場で非常に長い間活躍さ れました神谷先生、お願いします。 ○神谷顧問  橋本委員がおっしゃったとおりですが、現段階では今の定期予防接種が本当にいいか どうかも非常に問題です。任意ということ、定期と任意の考え方そのものがおかしいと 思っています。予防接種というのは認めた以上はみんな必要なワクチンを認めているわ けで、それをなぜ片方はお金を出して、片方はお金を出さないとか。ただ全額国が負担 しなければならないかということはやはり見直さなければいけない。  持論ですが、この予防接種法は昭和23年にできました。それから科学は物すごく進歩 していろいろ変わってきているので、この際そこも含めて全部見直すと。この委員会か らの意見もあるし、三宅課長が言われましたような検討会の意見もあります。その辺が 本当なら両方一緒になって討論するような場所をつくったらもっといいのではないかと 思っております。 ○倉田座長  ありがとうございます。次に行政側から三宅課長御意見をお願いします。 ○三宅結核感染症課長  先ほど述べたことで大体私としての意見は言い尽くしているかと思いますが、産業ビ ジョンの委員会のワーキンググループとしての考え、その根底にある考えと私どものや っている予防接種法に基づく予防接種。神谷先生の御意見もございましたが、やはり予 防接種法に基づいて全国津々浦々の市町村が子供たち、高齢者の部分もありますが予防 接種を行っている。そのことによって非常に大きな予算も動いておりますし人も動いて います。今動いているものをまた変えていくということは、それなりの大きな制度の改 正といったことが必要になってまいります。もちろん必要なことはしっかり変えていか ないといけないのですが、変えるにはそれなりの準備と覚悟と大きな労力が必要になっ てまいります。改革をしていかないということではありませんが、それなりのことをし ていかなければいけないということかと思います。連携はしっかりとりながら、それか ら将来的にどんなふうにもっていくかということを考え、関課長とも御相談させていた だき、先生方の御意見もお聞きしながら我々としては取り組んでいきたいと思っており ます。 ○倉田座長  先ほど行政も一緒にというのはそういうことで、いろいろ議論を重ねて今までの法的 にかかわるようなものがありましたら、それを変えた方がいい場合は変える根拠もちゃ んと出してやっていくことかと思います。  それでは、このワーキンググループを設置するということについては御了解いただけ たということでよろしいですか。今までの議論の中でも出てきていますが、開発中の個 別ワクチンというのがございます。そういうものを踏み込んだ議論をする場合があるか と思います。そういう点も考えて、非公開ということでさせていただきたいと思います。 よろしいでしょうか。  具体的なことにつきまして、今後新しく組みまして産業ビジョンをつくられた神谷顧 問あるいは現在基盤研でやっておられるもう一つの山西座長の方ですか、事務局等々関 係の方々と相談させていただきまして、ここにおられる先生方に全部の先生にお願いす るかどうかは別としまして多数の方に御参加をお願いして、それにあたりましては事務 局から連絡をとらしてもらいますが、適切なワーキンググループをつくりまして今きょ う問題になりましたことを含めて検討する機会をつくりたいと思います。よろしく御協 力をお願いしたいと思います。  きょう今まで検討してきたことを含めまして御意見、御質問がありましたらどうぞ。 ○橋本委員  全体の進行の仕方といいますか、次の会からの事務局へのお願いです。産業ビジョン のアクションプランの進捗についてフォローアップしていくという目的の委員会かと思 いまして、最初に前回の議論の概要ということではあったのですが、いきなり感染研の 話やACIPの話から始まりました。その前に、やはり前回から4カ月ぐらいたってい ます。この4カ月の間でアクションプランの中で具体的にどういうところがどういうふ うに進捗しているのかということを見せていただけると、全体的な動きも把握しやすい です。実際にアクションプランの進捗状況が確認できて安心して聞いていられるといっ た印象を受けましたので、ぜひともできれば冒頭の部分で進捗についてまとめてお聞か せいただきたいと思いました。 ○倉田座長  ありがとうございました。そのように努めたいと思います。事務局、これについてあ りますか。 ○関血液対策課長  そのようにしていきたいと思います。それから先ほど行政の方にマイクを向けていた だいたときはありがたかったのですが、健康局の方にかなりマイクが向きまして、少し 不公平ではないかという感じもいたします。事務局としては、血液対策課と経済課長に もこのビジョンをつくるときからずっとかかわってきていただいております。どちらか といいますと、産業振興サイドあるいは開発供給サイドというところでの検討をしてき たというのは、一方で先ほど三宅課長がお話ししたような、予防政策については別の場 があってということです。きょうのお話は恐らく今の仕組みを壊してしまうということ まではなかなか立ち至りませんので、両者の連携をいかによくとるかということかと思 います。違った部署の間の連携をどうとるかという仕組みについては、いろいろなとこ ろで連携の必要性がますます高まっています。例えば食品問題をめぐる農水省と厚労省 の間の連携といったことも含めていろいろな仕組みがございます。現在のこういう検討 の枠組みというものがあることは一応前提としながら、いかに実質的な連携ができるか ということを議論して、さらにその上で将来的により別の形の発展形があればそちらを 目指すという形になっていくと思います。当面、やや短期的な視座でいかに連携が図れ るかということについて、まさにこの会の事務局という立場からも努めていきたいと思 っております。  産業という言葉がある意味でネックになっているということであって、全体の公衆衛 生政策が語れないということであれば、そこはそこで両方の「産業」ということにこだわ らないで議論できるような仕組みをまた考えていかなければいけないと思っております ので、さらに御指導いただきまして考えていきたいと思っております。 ○倉田座長  ありがとうございました。とにかくワクチンに関するもの全領域ととらえて検討して いきたいということだろうと思います。私もそのようにとらえています。そこで次回の ことを説明願います。 ○堀内課長補佐  それでは、本推進委員会の今後の開催でございます。当初、年2、3回程度の開催で いかがかといった予定についてお話をさせていただいておりましたが、今日ACIPの ところでも触れさせていただきましたが、やはり年3回程度開催させていただきたいと 思います。できますればACIPの開催を一つのめどにしますと、ACIPが2月、6 月、10月でございますので、3月、7月、11月というような形で開催を予定してはどう かと考えてございます。したがいまして次回は11月を目途に開催を予定したいと考えて ございます。日程等については後日調整させていただきたいと思います。よろしくお願 いいたします。以上でございます。 ○倉田座長  そうするとワーキンググループは、それまでの間に発足させて動き出すということで すか。 ○堀内課長補佐  さようでございます。 ○倉田座長  次回以降の開催につきましては、日程調整を事務局からやっていただきます。そのほ か、特別になければ本日の委員会は閉会にいたしたいと思いますが、何かございますか。  なければ、これで終わりにいたしますが、11月は待てない、ワーキンググループも待 てないが、こういうことはこうした方がいいのではないかといった御意見がありました ら、事務局の血液対策課の堀内補佐にメールでもファックスでも手紙でも結構ですから お送りください。電話は意思の疎通が違うと困りますので、紙に書いてお送りくださる ようお願いします。  それではお忙しいところありがとうございました。台風も来ております、気をつけて お帰りください。                                      終了 (照会先) 厚生労働省医薬食品局血液対策課 TEL:03(5253)1111(内線2908)