連絡先 厚生労働省医政局研究開発振興課 担当 佐藤(内線2542) 松山(内線2545) 電話 03-5253-1111(代表) 03-3595-2430(直通) |
平成19年7月12日
厚生科学審議会科学技術部会
第1回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会
議事概要
1.日時 | 平成19年7月11日(水)16:00〜18:10 |
場所 | 経済産業省別館 1036号室 |
2.出席委員 | 永井委員長 青木委員、阿部委員、位田委員、掛江委員、春日井委員 貴志委員、小島委員、木下委員、高坂委員、島崎委員 高橋委員、戸口田委員、中畑委員、前川委員、水澤委員 湊口委員、山口委員 (事務局) 厚生労働省 新木研究開発振興課長 他 |
3.議事概要
大阪大学、帝京大学、奈良県立医科大学、東海大学、国立循環器病センター、京都大学及び国立国際医療センターの7つの研究機関より申請のあった8件のヒト幹細胞臨床研究について審議が行われた。
実施計画に対する各委員の指摘点については、本委員会から申請者に照会を行い、その回答を基に再度審議することとされた。
(臨床研究実施計画の概要は別紙1〜8参照。)
(別紙1)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年7月11日審議分
研究課題名 | 虚血性心疾患に対する自己骨髄由来CD133陽性細胞移植に関する臨床研究 |
申請受理年月日 | 平成 19年 3月 7日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:大阪大学医学部 総括責任者:澤芳樹 |
対象疾患 | 虚血性心疾患(冠動脈バイパス術を施行する症例) |
ヒト幹細胞の 種類 |
骨髄由来CD133陽性細胞(骨髄由来幹細胞) |
実施期間及び | 対象症例数 承認日より4年間 10例 |
治療研究の概要 |
虚血性心疾患患者で冠動脈バイパス術による血行再建が適応となるが、一部これが不可能な部位を合併する者を対象とし、心筋虚血の改善を目的に、自己骨髄由来CD133陽性細胞の心筋内移植を行う。最終的に虚血性心筋症として心臓移植や補助人工心臓を必要とする患者において、かかる治療を回避できる可能性も期待でき、社会的意義は大きいと思われる。 |
その他(外国での状況等) | 重症心不全患者に対して骨髄単核球細胞移植が欧米で行われ、心機能改善効果が報告されているがその効果は十分ではない。CD133陽性細胞は骨髄由来細胞の中でも特に未分化な幹細胞であり、心筋への移植後に血管内皮細胞や心筋細胞にも分化することから心機能改善を期待している。欧米ではすでに自己CD133陽性細胞の心筋への移植は臨床試験が行われており、今回、大阪大学医学部では国際共同研究として当該臨床研究を行うものである。 |
(別紙2)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年7月11日審議分
研究課題名 | 自家骨髄間葉系細胞移植による骨組織再生医療に関する研究 |
申請受理年月日 | 平成19年4月13日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:帝京大学医学部 総括責任者:松下 隆 |
対象疾患 | 骨折および骨切り術後の合併症としての偽関節・遷延治癒・変形治癒,骨腫瘍摘出術後の骨欠損,変形性関節症あるいは関節リウマチに対する人工関節(再)置換術 |
ヒト幹細胞の 種類 |
自己骨髄培養幹細胞 |
実施期間及び 対象症例数 |
申請許可から2年間 6例 |
治療研究の概要 | 移植手術の6週間前に,手術室で患者から無菌的に骨髄液を採取する.MSC超増幅技術により,骨髄液から骨髄間葉系幹細胞の分離・培養・増殖を幹細胞自動培養装置を用いて行う.偽関節部または骨欠損部に,移植細胞および新生骨組織を自家骨の代替として手術室で移植する.術後の経過は通常の手術後と同様に定期的なX線検査を中心に評価する. |
その他(外国での状況等) | わが国においては,歯科領域で骨髄由来間葉系幹細胞を骨補填に臨床応用されている。外国において,骨補填に骨髄由来間葉系幹細胞を用いた臨床試験の成績はない。骨髄由来間葉系幹細胞を使用した臨床試験としては、1)化学療法中の乳癌患者の造血能を回復(2000年,米国)、2)心筋梗塞の治療(2004年,中国.2005年,ギリシア)、3)筋萎縮性側索硬化症の治療(2006年,イタリア)などがある。 |
(別紙3)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成 19年 7月 11日審議分
研究課題名 | 自己骨髄培養細胞による顎骨疾患の治療 (自己骨髄培養間葉系細胞由来の再生培養骨を用いた顎骨良性腫瘍、顎骨腫瘍類似疾患、顎骨骨髄炎、顎骨骨折に対する治療) |
申請受理年月日 | 平成 19年 5月 7日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:奈良県立医科大学 総括責任者:桐田 忠昭 |
対象疾患 | 顎骨良性腫瘍、顎骨腫瘍類似疾患、顎骨骨髄炎、顎骨骨折 |
ヒト幹細胞の 種類 |
自己骨髄培養間葉系細胞 |
実施期間及び 対象症例数 |
各々の疾患(顎骨腫瘍、顎骨腫瘍類似疾患、顎骨骨折、顎骨骨髄炎)に対し合計20症例、実施期間は承認後5年間とする。 |
治療研究の概要 | 患者自身の骨髄から培養して得られた骨芽細胞を用い、より低侵襲で、高い治療効果を望める治療法を確立することを目的とする。移植試料の調整にあたっては、腸骨から骨髄採取を行い、独立行政法人産業技術総合研究所セルエンジニアリング研究部門にて培養を行う。骨髄由来間葉系細胞を骨芽細胞へ分化させ、骨芽細胞・骨基質を含む人工骨を作製し、顎骨欠損部に移植する。 |
その他(外国での状況等) | 奈良県立医科大学整形外科学で行われている自己骨髄培養細胞の臨床研究では、長管骨を対象疾患とし、本研究と同様の骨髄採取法および移植材料を用いている。ドイツで行われている自己骨髄培養細胞の顎骨疾患への応用は、本研究と同様の対象疾患であるが、顎骨から骨髄を採取し、移植材料としてコラーゲンを用いている。 |
(別紙4)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年7月11日審議分
研究課題名 | 自家骨髄間葉系幹細胞により活性化された椎間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究 |
申請受理年月日 | 平成 19 年 4月 16日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:東海大学医学部 総括責任者:持田 讓治 |
対象疾患 | 腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎椎間板症、腰椎不安定症の手術適応例 |
ヒト幹細胞の 種類 |
骨髄間葉系幹細胞および椎間板由来細胞 |
実施期間及び 対象症例数 |
2007年9月1日〜2009年8月31日 15歳から30歳までの10症例 |
治療研究の概要 | 腰椎椎間板を摘出、あるいは椎間板摘出+骨移植術を行う腰椎椎間板変性疾患手術例において、摘出した椎間板の髄核細胞を自家骨髄間葉系幹細胞との細胞間接着を伴う共培養法によって活性化し、活性化終了直後にその髄核細胞を変性進行が予測される隣接椎間板内などに移植し、その椎間板の変性過程の抑制あるいは再生を試みる。 |
その他(外国での状況等) | 椎間板疾患の治療法開発には栄養因子注入療法、遺伝子治療と細胞移植療法が柱となっているが、椎間板固有の髄核細胞を用いた細胞移植療法を考案し、さらに髄核細胞の活性化細胞として骨髄間葉系幹細胞に注目したのは東海大学医学部整形外科学が国内外を通してはじめてである。 |
(別紙5)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年7月11日審議分
研究課題名 | 急性期心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球静脈内投与の臨床応用に関する第I-II相臨床試験 |
申請受理年月日 | 平成 19年6月29日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:国立循環器病センター 総括責任者:成冨 博章 |
対象疾患 | 心原性脳塞栓症 |
ヒト幹細胞の 種類 |
自己骨髄単核球細胞 |
実施期間及び 対象症例数 |
2007年5月から2008年4月 12症例 |
治療研究の概要 | 心原性脳塞栓症は多くの患者に恒久的かつ重篤な後遺症を残すことが特徴である。本臨床試験は脳梗塞発症7-10日後の重症心原性脳塞栓症患者に対し、局所麻酔下において自己骨髄細胞を採取し、骨髄単核球分画を精製後静脈内への投与を行い、その神経機能回復効果および安全性を明らかにすることを目的としている。 |
その他(外国での状況等) | 神経幹細胞を用いた細胞治療は、国外でいくつか報告されている。米国ではブタ胎仔由来細胞等を用いた臨床試験が行われたが、有効性は殆ど示されなかった。韓国および札幌医科大学では、骨髄単核球細胞の静脈内投与による脳梗塞治療が報告されている。また、欧州では骨髄単核球細胞を用いた急性期虚血性心疾患に対する臨床試験が複数行われている。 |
(別紙6)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年7月11日審議分
研究課題名 | 大腿骨頭無腐性壊死患者に対する骨髄間葉系幹細胞を用いた骨再生治療の検討 |
申請受理年月日 | 平成 19年 6月 5 日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:京都大学医学部附属病院 総括責任者:中村孝志 |
対象疾患 | 大腿骨頭無腐性壊死 |
ヒト幹細胞の種類 | 骨髄間質間葉系幹細胞 |
実施期間及び 対象症例数 |
2年間 10症例 |
治療研究の概要 | 大腿骨頭無腐性壊死は有効な治療法が確定されていない難治性骨疾患の一つである。本治療研究は、現行の優れた治療法である血管柄付き骨移植術に、体外培養にて増殖させた自己骨髄間葉系幹細胞と人工骨材料の移植を併用する事で壊死骨の再生を図る新規治療法の開発を目指すものである。 |
その他(外国での状況等) | 類似の研究として、ヨーロッパにおいて骨髄単核細胞の壊死部への直接注入が行われた例が報告されている。本研究と類似した骨髄間葉系幹細胞を用いた大腿骨頭壊死に対する治療法も本邦においていくつか施行されているが、治療成績の評価に関する結論は出ていない。 |
(別紙7)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年7月11日審議分
研究課題名 | 月状骨無腐性壊死患者に対する骨髄間葉系幹細胞を用いた骨再生治療の検討 |
申請受理年月日 | 平成 19年 6月 5 日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:京都大学医学部附属病院 総括責任者:中村孝志 |
対象疾患 | 月状骨無腐性壊死 |
ヒト幹細胞の種類 | 骨髄間質由来間葉系幹細胞 |
実施期間及び 対象症例数 |
2年間 10症例 |
治療研究の概要 | 月状骨無腐性壊死は有効な治療法が確定されていない難治性骨疾患の一つである。本治療研究は、現行の優れた治療法である血管柄付骨移植術に、体外培養にて増殖させた自己骨髄間葉系幹細胞と人工骨材料の移植を併用する事で壊死骨の再生を図る新規治療法の開発を目指すものである。 |
その他(外国での状況等) | 月状骨無腐性壊死に対する血管柄付骨移植術の治療成績は、国内外を通じて多数の報告があるが、細胞移植による治療法の成績は、体外培養行程を用いる用いないを問わず論文上は未だ報告されていない。従って本臨床研究のように両者を併用する治療法については、全く報告はない。 |
(別紙8)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年7月11日審議分
研究課題名 | 自己脂肪組織由来の幹細胞移植による末梢性血管疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・バージャー病)に対する血管新生治療 |
申請年月日 | 平成19年6月8日 |
実施施設及び 総括責任者 |
実施施設:国立国際医療センター 総括責任者:大河内仁志 |
対象疾患 | 慢性閉塞性動脈硬化症・バージャー病 |
ヒト幹細胞の 種類 |
自己脂肪組織由来幹細胞 |
実施期間及び 対象症例数 |
平成19年7月〜平成22年7月までの3年間。 目標症例数5例 |
治療研究の概要 | 慢性閉塞性動脈硬化症やバージャー病の患者から皮下の脂肪吸引を行い、手術室内で脂肪組織から酵素処理によって内皮細胞や間葉系幹細胞を含む分画を無菌的に分離・濃縮し、そのまま患肢の筋肉内に注入するという医師主導型の臨床研究であり、血流量、痛み、潰瘍の大きさなどを指標として新規の細胞療法の有効性と安全性を検討する。 |
その他(外国での状況等) | 2001年に皮下脂肪組織の中に骨髄間葉系幹細胞と同様な分化能を持つ多能性幹細胞の存在が報告され、2004年には血管内皮細胞への分化も示され、2006年には動物の虚血肢に脂肪組織由来の細胞を移植すると血管新生がみられたという報告もなされた。 |
(参考)
厚生科学審議会科学技術部会
ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会委員名簿
氏 名 | 所 属 ・ 役 職 |
青木 清 | 上智大学名誉教授 |
阿部 信二 | 日本医科大学呼吸器感染腫瘍内科部門講師 |
位田 隆一 | 京都大学公共政策大学院教授 |
掛江 直子 | 国立成育医療センター研究所成育保健政策科学研究室長 |
春日井 昇平 | 東京医科歯科大学インプラント・口腔再生医学教授 |
貴志 和生 | 慶應義塾大学医学部形成外科准教授 |
木下 茂 | 京都府立医科大学眼科学教室教授 |
高坂 新一 | 国立精神・神経センター神経研究所長 |
小島 至 | 群馬大学生体調節研究所所長 |
島崎 修次 | 杏林大学教授 |
高橋 政代 | 理化学研究所神戸研究所網膜再生医療研究チームチームリーダー |
戸口田 淳也 | 京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野教授 |
○永井 良三 | 東京大学医学部附属病院教授 |
中畑 龍俊 | 京都大学医学部附属病院教授 |
中村 耕三 | 東京大学医学部附属病院教授 |
西川 伸一 | 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 副センター長 |
前川 平 | 京都大学医学部付属病院輸血部教授 |
水澤 英洋 | 東京医科歯科大学大学院教授 |
湊口 信也 | 岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学・呼吸病学教授 |
山口 照英 | 国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長 |
(○は委員長)
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