07/06/18 平成19年6月18日医療機関のコスト調査分科会議事録 第13回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会 議事録 (1)日 時  平成19年6月18日(月)13:00〜15:03 (2)場 所  厚生労働省専用第18〜20会議室(17階国会側) (3)出席者  田中滋分科会長 猪口雄二委員 井部俊子委員 今中雄一委員         尾形裕也委員 柿田章委員 近藤正晃ジェームス委員         椎名正樹委員 須田英明委員 高木安雄委員 手島邦和委員         西岡清委員 原正道委員 松田晋哉委員         池上直己診療報酬調査専門組織委員         <事務局>         八神保険医療企画調査室長 他 (4)議題   ・診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会における         平成18年度調査研究結果の報告について         ・診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会における         平成19年度調査研究について (5)議事内容 ○田中分科会長  ただいまより、「第13回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会」を開 催させていただきます。まず、前回開催以降、事務局の交代がありましたので、紹介を お願いいたします。 ○八神室長  では、事務局の異動を紹介いたします。まず本年4月1日付で医療課企画官に着任い たしました宇都宮でございます。私は、昨年9月1日付に着任いたしました保険医療企 画調査室長の八神と申します。よろしくお願いいたします。 ○田中分科会長  次に委員の出欠状況について御報告いたします。本日は石井委員が御欠席との届けが 出ております。また、猪口委員、井部委員、高木委員は出席の予定ですが、おくれてお 見えになると思います。また、本日は診療報酬調査専門組織の池上委員にも御出席いた だいております。ありがとうございます。  審議に入らせていただきます。本日は2つの議題がありますが、初めに「診療報酬調 査専門組織・医療機関のコスト調査分科会における平成18年度調査研究結果につい て」を議題にしてまいりたいと存じます。御記憶のとおり、平成18年度は4つ調査が ありました。「医療安全に関するコスト調査」、「医療機関の部門別収支に関する調査研 究」、「診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究(DPCコスト調 査研究)」、「医療のIT化に係るコスト調査」の4本を実施いたしました。本日はそれ ぞれ報告を受けたいと存じます。  最初に「医療安全に関するコスト調査」について、今中委員より説明をお願いいたし ます。 ○今中委員  説明させていただきます。この医療安全のコストに関しましては2つ報告書がござい まして、厚めの方のコ−2−1というものとコ−2−2とございます。コ−2−2は厚 生科学研究費で臨床研修指定病院の管理型・単独型の病院、約1,000病院にアンケート を行ったものでありますので、これは後ほど説明いたします。  コ−2−1の資料を説明させていただきます。全体の構成は目次を見ていただければ と存じます。まず1ページ、調査実施体制ということで、検討委員会をこの診療報酬調 査専門組織で構成させていただきまして、調査を実施いたしました。これは17年度に このもととなる調査を行ったわけですが、17年度は数施設の綿密なヒアリング調査を もとにコストの出し方を検討し、実際にコストを出したということでしたが、数が少な かったので、今度はその成果をもとにアンケート調査で多くの施設のデータをとろうと いうようなことを行っております。  2ページでございますが、どういう施設にどれぐらいの数を対象に調査を行ったかが 書かれております。表1−1でございますが、病院は2,000を対象に調査票を配付して おります。一般診療所の有床が2,000件、一般診療所の無床が2,000件、歯科診療所 2,000件、保険薬局2,000件というような数でございまして、それぞれ2,000件は層別 化して抽出しております。そして結果の値を算出するときには、この病院の比率に合わ せてウェイトを掛けまして全体の値を推計しております。  3ページございますが、(2)の調査内容というものがございまして、このような調 査内容、項目を挙げますと、医療安全に係る人的管理体制、医療安全のための研修、安 全管理・感染制御のための点検・改善活動、医療安全の向上に関わる機器・設備等、医 療機器の保守・点検活動、医薬品の安全管理に関わる活動、感染性廃棄物の処理、患者 相談のための窓口や担当者の設置というような内容について行っております。  したがいまして、医療安全にかかわるすべての活動ではありません。例えば患者さん に説明をするとか、重要な記録をとるとか、またIT機器に関しましては別の松田班が 動いておりますので、IT機器に関してもここではデータとしてとっておりません。物 代も入っておりますが、主に人の活動量に焦点を当てております。実際にどのような質 問票を使ったかにつきましては77ページ以降、本資料の最後に付録としてすべての調 査票のコピーを添付しております。それぞれ病院、診療所、歯科診療所、保険薬局、診 療所は有床、無床、それぞれ別に調査票を設定しております。  5ページに参りますが、アンケート調査の回収状況でございます。5ページの一番上 の表1−3につきまして、有効回答率はこのような形で出ております。病院13.7%、 一般診療所有床は14.6%、無床16.3%、歯科診療所35.9%、保険薬局40.0%となって おります。病院につきましては厚生科学研究の財源で同様の調査をやっているわけです が、そちらで扱っている単独型・管理型の臨床研修病院は除いております。  この過程で、今までここでも議論が出てきたかと思いますが、賠償責任保険医療が今 だんだんと上がっていて、かなりの負担になっておりますが、今回、このアンケート調 査は主に事故予防システム、安全確保のための予防側の予防、あるいは管理側のシステ ムについてのコストに焦点を当てておりまして、事が起きてからのコストということに 関しては一切入っておりません。そういう状況もありまして、この大きな負担となる賠 償責任保険料も何らかの数字が必要ではないかという議論になりまして、これにつきま しては全日本病院協会の御協力のもとに、任意に選択された59病院を対象にアンケー ト調査を行い、その結果に基づき値を推計しております。  結果の方に移りたいと思いますが、7ページから結果のセクションとなります。7ペ ージには回答された数が書かれておりますが、8ページの図2−1をごらんいただけれ ばと思います。これは医療安全に関して今回調べた取り組みをなさっていると回答され ている病院の割合ということで、領域によってはまだまだ普及する余地がある領域もあ るということでございます。  10ページに参りますと、実際のコストの集計値が載っております。一番下の段が患 者相談対応を含む合計、その上が患者相談対応となっていまして、下から3段目が合計 値となっております。患者相談対応というところは重要な領域としてコスト推計を行っ ているわけですが、今回、病院と診療所、歯科診療所、保険薬局で、調査の過程でやや コンセプトが異なっている可能性が大きくなってきましたので、外出しで別掲としてお ります。患者相談対応の費用は大きいと思われるのですが、それは外出しで出しており まして、それを除く合計というものを下から3段目に出しております。そうしますと、 下から3段目の左から3列目に406.27円とありますが、これが入院患者1人1日当た りコストの今回の平均値でございます。参考までに4分位と中央値の値、25パーセン タイル、50パーセンタイル、75パーセンタイルの値を右隣に載せております。  11ページでございますが、これは病院の種別で見たものです。一番左のバーが病院 全体、その次が精神病院を除いた一般病院と。その内訳といたしまして、一般病院の療 養病床が、60%以上、60%未満、療養病床なしという3区分で、一般病院療養60%以 上のところで少し低目になっていると言いますか、療養病床が少ないところで高目にな っていると。医療の密度を考えますと、自然な結果が出ていると思われます。精神科病 院についても同様に想定されるような値が出ているのではないかと思われます。  13ページでございますが、安全対策加算の有無でどれぐらい違うかというものを出 しておりまして、算定している病院は患者1日当たり448円、算定していないところは 404円と44円の差がありますが、算定している病院の方が44円分活動量が多くなって おります。これは10日入院すると1入院当たり444円ということになるかと思います が、こういう実情であります。  14ページにコストの対医業収入比というものをグラフで出しております。先ほどの 絶対額と同様の傾向が見られております。今回の病院全体として医業収入比としては 1.37%が使われていると。  15ページにその内訳が書かれておりまして、委員会活動、研修、ヒヤリ・ハット事 例収集等、どのような活動にどれぐらいのコストをかけているか、資源を投入している かということを人件費、非人件費ということで、主に人件費に焦点を当てて調べた結果 を出しております。  次に一般診療所について、これは同様の構成になっております。一般診療所の有床の 結果が17ページ以降に載っております。診療所につきましては、それぞれの診療の中 で医療安全活動、感染対策活動が一体となっておりますので、その部分を抜き出すのは 病院以上に難しい点がございます。規模も小さく、いろいろな活動を同時に兼帯しなが ら行っていると考えられるわけですが、19ページの図2−4に各取り組みの普及度合 いというものを載せておりまして、21ページにコストの結果を載せております。これ も有床診療所の場合に何の単位のコストを出すかという課題はあるわけですが、入院患 者1人1日当たりコストということで計算いたしますと、合計の平均値は618.88円と。 21ページの下から3段目の左から3列目のところの数字でございます。  裏のページの22ページでございますが、外来患者1人1日当たりコストというふう に計算した場合には、同様の値は247.55円となります。  25ページには内科系、整形外科、産婦人科、その他外科系という形で診療科別のコ ストを出しております。  次でございますが、29ページでございます。無床の一般診療所の調査結果でござい ます。ここではさらに診療内容の中に安全活動が組み込まれておりますので、この調査 で切り出すのは難しい領域ですが、31ページに安全に対する取り組みの普及の度合い、 プラスアルファの取り組みの普及の度合いというものを出しております。  32ページにコストを算出しております。外来患者1人1回当たりということで、下 から3段目、左から3列目の平均値は89.58円ということになっております。  35ページに診療科別のコストを出しております。これに関しましてはまだ検討する 余地はあると思われますが、今回の値はこのような形になっております。  次に39ページでございます。歯科診療所の調査でございますが、40ページに安全に 関する取り組み状況の分布を載せております。  そして42ページに対医業収入比、コストの平均値を出しております。42ページにコ ストの調査結果を出しておりますが、外来患者1人1回当たりコストということで、約 268円という値が今回出ております。歯科診療所の規模としまして、ユニット数で規模 が見られるわけですが、その規模ごとのものを43ページのグラフに出しております。 45ページには対医業収入比を出しております。  次に保険薬局でございますが、48ページにございます。医療安全に関する取り組み、 目に見えやすい取り組み活動の普及度合いは49ページの図2−13の表でございます。 そして50ページに処方箋1枚当たりコストということで平均値を出しております。平 均183円ということになっております。これも規模との関係を見るために、51ページ の表にありますように月間の処方箋枚数で保険薬局を区分して1枚当たりのコストとい うものを出しておりますが、規模の経済が見られるような、大きいところでは小さくな るというような状況が見られます。  以上でございますが、この上に少し追加計算をやっております。64ページに医療安 全の標準的内容の達成に必要なコストのシミュレーションというものを行っております。 これはどういうものかと言いますと、65ページの上のところに書いてありますが、平 成19年3月30日付の厚生労働省医政局長通知の「良質な医療を提供する体制の確立を 図るための医療法等の一部を改正する法律の一部施行について」と。そして薬関係では 3月26日付の厚生労働省医薬食品局長通知に関して求められていることがございます ので、そこで求められている水準というものがこの調査アンケートでどれぐらいのもの に相当するかという基準を一つ設定いたしまして、それに達していない医療機関が達す るためにどれだけのコストを投入しないといけないか、資源を投入しないといけないか ということについて計算したものであります。  66ページから67ページにわたりまして、標準的なレベルというのを局長通知に従っ て書いております。66ページの上のところの委員会・会合というところでは、局長通 知に書いてあることをそのまま引用してラインを引こうということで、(1)、(2)、(3)とご ざいますが、医師、看護職員、薬剤師、医療技術員、事務職員すべての参加があり、毎 月のように開催されて、1回当たり平均時間は1時間以上であるというような設定をし て、そのラインを決めて、それよりも低い回答をしている病院がそれをやるにはどれだ けのコストを投入したらいいかと。  68ページに計算イメージを図にしたものがあります。それぞれの標準的内容を満た した病院を抽出いたしまして、その病院の25パーセンタイル水準のコストでラインを 引きまして、そこに到達するのにどれだけ資源の投入が必要かというのを計算しますと 幾らぐらいになるかということをここに載せております。それを全国規模で推計すると どうなるか、大ざっぱな概算をするとどれぐらいの額になるのか、そしてこの25パー センタイル水準を50パーセンタイル水準に上げるとどれぐらいになるのかというよう なことを計算しております。ここにありますように、かなりの額になると考えられます。  このような形で18年度の医療安全に関するコスト調査というものは行われておりま す。それに加えまして、コ−2−2を説明させていただきたいと思います。  コ−2−2の方を1枚めくっていただきますと、2ページに調査内容というものが載 っておりまして、3ページに回答施設数が載っております。こちらは対象1,039施設に なっているわけですが、418施設から回答が得られました。回答率40.2%でございまし た。  4ページに回答施設の状況を書いておりますが、1−2−3にございますように、大 学病院、国立病院等、公立病院、公的病院、社会保険関係、医療法人等ということで 418施設となります。17年度の調査では大学病院は対象にできなかったのですが、今回 はかなりの病院から御回答いただいております。  次の5ページ以降、結果等があります。  7ページをごらんください。7ページが結果になりますが、このページ以降、それぞ れの領域においてどれぐらいの活動をしているとどれぐらいのコストになるのかという ことがわかるように、4分位で25パーセンタイル水準、50パーセンタイル水準、75パ ーセンタイル水準で、それぞれ1施設当たり、あるいは100床換算した場合、どれぐら いのコストになるのかということを表にしております。これを全部説明すると時間だけ かかるので 割愛いたしますが、見方だけ少し説明させていただきます。  7ページの下半分の2−1−2、安全管理に係る委員会・会合の取組状況というのが ございます。これで一番左の25パーセンタイル水準というところを見ていただきます と、1施設当たり490床というのが25パーセンタイル水準の前後の4施設の平均です が、この委員会をやるに当たり、1開催当たり構成人数は平均15.8人。1開催当たり の出席者はそのうち12人と。平均所要時間は75分というような形になっております。 それを100床換算で出しますと、構成人数3.2人、平均出席者数2.5人というようなこ とになります。こういう形で部分的なものを何ページかにわたり示しております。  サマリー的な数字がわかりやすいのでそちらを説明いたします。16ページをごらん ください。16ページの上のグラフが、病床規模別に今回対象とした範囲での医療安全 コストの中央値を出しております。199床以下、1,090円と。これは1人1日当たり 1,090円。800床以上で609円、特定機能病院は1,006円という形になっております。 これは規模の経済が見られるようなグラフになっております。  下には開設者別の中央値を出しております。大きな差はないと言えるかもしれません。  そして17ページの下の表に活動領域別のコストを出しております。  18ページには安全管理加算の有無というところで区分をいたしまして値を出してお りますが、安全管理加算のあるところは998円と。ないところの934円に比べて1日1 人当たり64円多く投入しているということになります。今回のこちらの方の調査は医 療機器の保守点検などの委託費は含んでおりますが、実質上は人件費オンリーという範 囲になっております。  20ページでございますが、これは地方別に出しております。東北と中国でやや低い、 へこんでいるような状況が見られます。  21ページには対医業収入比というものを出しております。  27ページには、先ほど御報告いたしました賠償責任保険料の調査、全日病に御協力 いただいて行った調査を外挿いたしまして、足し算したらどうなるかということをやっ ております。これは実際にヒアリングをやった部分的な知見に比べると、この賠償責任 保険料のここに書いてありますのは低く見積もられている可能性が高いと思われます。  29ページ以降に、先ほどの標準的内容を達するのにどれぐらいのお金がかかるのか、 資源を投入しないといけないかということについて同様のシミュレーションをやって、 必要な追加的コストを臨床研修指定病院の単独型・管理型の範囲で出しております。  最後に、幾つか留意点がございますので、33ページで述べております。今回、1,039 病院から418病院の回答が得られまして、有効回答のものとして使えるのは406病院で ございましたが、そのサンプルの病床規模とか、開設地域といったものには大きな偏り がございませんでした。  1人1日当たりの中央値は975円だったわけでございます。開設者別に大きな差は見 られませんでしたが、特定機能病院においては比較的大きな値が出てまいりました。病 床規模が大きくなるにつれて単位当たりのコストは低減する傾向が見られました。小さ い施設ほど相対的に大きな負担となっていることが示唆されます。また、東北地方並び に中国地方において相対的に小さな推計値となる傾向が見られましたが、これは地域特 性による医療従事者確保の困難な状況が影響を及ぼしている可能性が考えられます。  医療安全の活動をするためにはコストがかかるということを認識する必要があると思 います。下に小さな字で書いてあるところは、今回の集計値は限られた範囲の推計値で ありまして、インフォームドコンセントとか、記録書類の作成とか、多くの物に関係す るようなコストというようなことは算入されていないことに御配慮いただければと思い ます。 ○田中分科会長  膨大な御報告をありがとうございました。今日は報告が4つありまして、時間が限ら れており、池上先生が途中で退席する時間があるので、ただいまの点に関する質疑は後 回しにさせていただきます。先に池上先生の報告、「医療機関の部門別収支に関する調 査研究」、こちらを先に進めさせていただきます。よろしくお願いします。 ○池上委員  時間の関係で先にさせていただきます。診調組コ−4−1をごらんになってください。 「医療機関の部門別収支に関する調査研究」平成18年度調査研究結果報告(案)でご ざいます。なお、4−2は資料編でございますので、それは御参考にごらんになってい ただければと存じます。  1ページめくっていただきまして、第1章、調査研究の背景と目的ということで、こ れは平成15年度より継続して医療経済研究機構に委託いただいて、私が主査としてか かわってまいりました。この場合の部門別というのは、診療科という部門についての分 析でございまして、これは病院の管理運営する上での基本単位は診療科であるという認 識から診療科における収支の実態を把握して、また、もともとの趣旨はこういった結果 を病院にフィードバックして、そして病院の経営情報としても活用していただくことが、 このデータを国として収集する場合もそれの精度が高いデータが実際に使われた場合に は得られるのではないかということを期待したわけでございます。  2ページに目的が書いてございまして、診療科別の実態をとらえることによって、下 の段の(1)調査対象病院における本手法による診療科部門別収支計算の対応可能性・実施 可能性、(2)同一診療科の収支計算結果の特徴、(3)本手法に基づく診療科部門別収支計算 結果の妥当性ということでございまして、ここにいらっしゃる先生も交えて、実施体制 としてはこの図表1−2に示したとおりでございます。  具体的にどんな形で費用を見てまいりましたかというと、4ページに書いてございま すように、このようにして配賦してまいりまして、これはちょっとわかりにくいので次 の5ページにございますように、配賦のイメージとしてまず4部門として、入院部門、 外来部門、中央診療部門、補助・管理部門、このそれぞれの部門で出てきたもののうち、 まず補助・管理部門を残りの3部門に配賦し、次に中央診療部門のものをそれぞれの診 療科別の入院部門、外来部門に配賦していくことによって診療科別、入院・外来別の収 支の実態を把握することが目的であったわけでございます。  次に14ページをごらんいただければと思います。図表3−1にございますように、 調査協力依頼をDPC対象病院及びDPC準備病院の731病院に対して行いまして、そ のうち3分の1に御協力に応諾いただきました。最終的には層化抽出した100病院、D PC対象病院50病院、DPC準備病院50病院で、主に医療法人を中心とした病院に対 して調査の御協力をお願いしたわけでございます。  結果の主要なところだけをお示しいたしますと、20ページをごらんになっていただ ければと思います。図表3−8で病床規模別にごらんになっていただくと、病床規模に 余り関係なく、入院は黒字に、外来は赤字にということが出ております。  続きまして24ページをごらんください。図表3−12、診療科別 入院・外来別収支 差額比率分布を見ますと、これも診療科で見ても、分布の偏りが多い診療科もあります し、割合まとまっているところもありますが、診療科によってさほど大きな差はなく、 入院は黒字になっており、次の25ページをごらんになっていただくと、外来はやや赤 字の傾向が見られております。  以上がざっくりとした問題でございまして、時間の関係で途中を割愛させていただき まして、44ページをごらんになってください。44ページの図表4−5、DPCコスト 調査研究、部門別調査研究の目的・調査方法等。これは松田先生を初め御協力いただき まして、対象病院というところをごらんになっていただければ、DPC対象病院31病 院について、全く同じ病院について私どもの診療科別の部門別調査研究とDPCコスト 調査研究について突合したわけでございます。  違うところが幾つかございまして、当方の調査では医業外費用も見て、収益も見てい る。給与費に関しては実際の支払い金額を勤務時間による按分等を行っておりまして、 これに対してDPCコスト調査研究においては、診断群分類別の標準的コスト計算の環 境整備が目的でございましたので、そちらでも国家公務員俸給評価表に、勤務時間に人 数を掛けております。材料費については1カ月分の総費用から私どもは計算しておりま すが、DPC調査研究においては、保険対象は診療報酬点数表を用い、また保険対象外 は調査票から算出しています。診療科別の分類は、うちはEファイルの34項目でござ いますし、コスト調査はEファイルの63科目となっております。  基本的には同じ結果が出ておりまして、以上のところをまとめましたのが51ページ でございますので、その総括のところを読ませていただきますと、4.3.1調査手法 の整理で、収支計算結果は、本年度調査においては調査対象病院を100病院に拡大し、 そのうち67病院の計算結果を分析したところ、診療科別におおむね共通した傾向が見 られた。また、参加病院に対して実施した事後調査では、半数以上の病院が調査結果と 病院の認識がほぼ一致しているとの結果が得られた。  必ずしも各病院において、参加病院においても厳密に調査はこれまで分析されていな いという割合も出ておりました。本年度の調査は、DPC対象病院、DPC準備病院と いう限定された病院についてのものであるが、その範囲内において本診療科部門別収支 計算手法による診療科部門別収支計算結果には一定の汎用性が確認できた。  2、データ収集の課題として、調査結果の検証と同時に、本年度調査では拡大した調 査対象病院での調査対応状況を検証し、データ収集における課題の抽出を行った。その 結果、調査票の正確性を確保し、かつ病院の調査票作成負担を軽減するための幾つかの 改善策を挙げることができた。  これについては今後も関係していますので、43ページをごらんになっていただけれ ばと思います。43ページの図表4−4をごらんになっていただくと、各病院で作業に 要した延べ時間というのは1,500時間という膨大なものでございますが、それをEファ イルやレセプトデータの先行受領、調査票及び記入要綱の改善、データチェックのシス テム化などによって、改善後の3分の1の552時間に短縮することができることが明ら かにされました。  お戻りになっていただいて51ページ、(3)診療科別コードでございます。本調査研 究では、病院固有の診療科をレセプト診療科コードに対応づけ、それを診療科部門別収 支計算の基本診療科に集約している。しかし、この集約された診療科に含まれる内容は 病院により異なる可能性がある。例えば、内科とともに循環器科や消化器科を標榜する 病院では内科に循環器科、消化器科は含まれないが、内科のみを標榜する病院の内科に は、これらの診療科が含まれている場合がある。あるいは、整形外科とともにリハビリ テーション科の両方を標榜している場合には、リハビリテーション科は含まれないが、 そうでないときには含まれる場合があるので、今後は「広義の内科」、あるいは「広義 の外科」という概念を用いて比較しないと、病院によって含まれるものは違ってくる可 能性がありますので、広くつかまえる場合には「広義の内科」、「広義の外科」というふ うに集約する必要があるのではないか。  (4)等価係数の課題。等価係数というのはそれぞれの、例えば手術の手技などの診 療行為を、何か基準を1.0とした場合に、それが相対的にどれだけコストがかかるかを 手技別に等価係数というのを出すのですが、これは手術台帳とあわせて特殊原価調査を 行う必要がある、つまり手術として個々の手術がどれだけコストを要しているかという ことを見なければいけないのですが、これはまだ等価係数の基準が不十分でございまし たので、今後さらに追究する必要があるかと存じます。ちなみに検査や画像診断につい ては一昨年度の調査において等価係数はほぼ妥当であるという結果が出ております。  (5)病院へのデータフィードバックでございますが、病院のデータに基づいて算出 した収支計算結果の妥当性は、算出過程の妥当性はもちろんのこと、病院が提供するデ ータの正確性を前提に成り立つものである。したがって、より精度の高い調査を実施す るためには、計算方法の確立とあわせて病院のより正確なデータ提供を促すような仕組 みの構築が必要となる。このために、病院へのフィードバックとしては、単に計算結果 だけでなく、その算出過程における情報提供等も視野に入れ、病院にとってのメリット も考慮した調査、検証体制を構築することが有効と考える。  例えば、他の病院と比較して当該病院のポジションを示した資料を提供するとか、病 院独自の按分係数や等価係数を投入して再計算できるようなソフトを提供するといった ことが考えられる。  つまり、今後国としてこのような調査を行うとしても、その調査を行うことで直接的 なメリットが協力した場合に得られない限り、また、その直接的メリットというのは病 院の経営管理に生かせるような形で工夫が行われない限り、正確なデータの提供が必ず しも望めないのではないかということで、このように書かせていただきました。  続きまして、成果の活用として、対象病院を拡大した本年度の調査研究により、今後 の成果の活用に関しては以下が確認された。  統一的な計算手法。本年度調査研究の結果、病院の対応可能性の観点から複数の改善 点が明らかになった。これに対応することにより、データの正確性を確保し、参加病院 の負担を軽減することが可能となる。その結果、より多くの病院を対象にした汎用性の ある調査を実施することができると考える。  ページをめくっていただきまして、(2)病院間の比較可能性。本調査研究で使用す る原価は標準化したものではなく、実際に病院が費消した費用のデータに基づくもので あるため、計算結果は病院の実態をあらわしたものと言える。このことにより、本調査 研究の結果は、診療報酬改定に当たっての政策立案に資する資料としての利用価値だけ でなく、病院の内部管理にとっても有益なものとして発展する可能性がある。さらに本 年度のように参加病院に当該病院の計算結果と全参加病院の計算結果を還元することに より、参加病院は診療科別に自院と他院との比較をすることができ、それにより病院の 調査参加についてのインセンティブを高めることができる。  (3)公的調査の回収率とデータの精度の向上。今後、公的調査の回収率を高め、デ ータの精度を向上させるためには、調査客体となっている病院にもメリットとなる調査 とする必要がある。本調査研究で開発したソフトを病院に提供し、必要に応じて病院独 自の按分方式等を入れかえて、管理会計として業務的に使用すれば、病院にとっても有 用であると考えられる。本調査研究で明らかなように、対象病院においても、診療科部 門別収支をほぼ完全に把握している病院は全体の2割以下にとどまっており、簡便な方 式に対するニーズは高い。以上でございます。 ○田中分科会長  池上先生から、大変興味深い調査結果と総括、DPCコスト調査研究との比較を御説 明いただきました。ありがとうございます。ただいまの御説明に対して質問、あるいは 御意見がおありでしたら、お願いいたします。 ○今中委員  大変有意義な今後の展開が望まれる調査だと思いますが、2点意見があります。一つ は、これは松田班のDPCの調査でコストを計算するアルゴリズムを、例えばEファイ ル、Aファイルというのが松田班の中で出てまいりましたが、それを活用してやってい くという方法論をつくったわけですが、そもそも調査として具現化されたのは病棟医療 ですけれども、もともと方法論としては外来特殊部門を含む仕組みであったわけです。 だんだんとそちらのやり方に近づいてきて、結局は同じやり方になったのではないかと いうのが私の見たところでございまして、今まで違ったようなところは特殊原価計算し て標準等価係数的なものを出されていたところは違ったわけですが、それも今回なくな って、診療報酬点数を媒介にして推計するということで同じような状況になってきてお りますので、基本的に私の見方としては同じところになってきたのではないかなと。具 現化するときに調査票の中身が変わってきますので、それを今後も工夫していく余地は 残っているのではないかと思っておりますので、その点を明確にしておいていただけた らいいのかなと思いますのが1点です。  もう一つは、先ほどの診療科の問題がございまして、科別原価計算するわけですが、 結局、内科というものは病院によって循環器が含まれたり、含まれなかったり、どうい う領域に強いのかということで、構成がかなり違ってくるわけですね。外科についても そうだと思いますし、診療科それぞれ診ている患者さんの内容がかなり違ってくるので、 科別に出していったときに、どういうふうに政策上、集計していくのかというところで かなり問題になるかと思います。その点は池上先生御指摘されていることだとは思うの ですが。  結局、松田班のDPCで開発している方法論と同じになってきていますので、結局は Eファイルを集めてやっておりますので、やろうと思えばDPCごとに原価を出すこと もでき、MDCごとにもできて、いろいろな診療領域で原価を出すことも可能な状況に なってきているのではないかと。あえてここでは記載されていないとは思いますが、そ ういう点もあるのではないかということでコメントさせていただきました。 ○池上委員  まず両者の調査の違いというのは44ページで先ほど御説明したとおり、だんだん 我々の調査に近づいてきていただいたということはありがたいことでございますが、依 然として違いはございます。それはまず収益も調査しているということ、給与費につい ては先ほど申したように、これは実際の支払い金額から出していると。材料費について は総費用から出しております。等価係数云々というところでございますが、等価係数は、 基本的には用いておりますので、診療報酬というのはそれがどうしてもわからない残差 の部分について使っているだけでございます。  それは13ページをごらんになっていただければ、中ほどから下にございますように、 13ページの2.2.5の事後調査のすぐ上の段落でございますが、平成17年度までの 等価係数が存在する場合は、昨年度までの等価係数を標準化したもの、複数の等価係数 の中央値を用いたと。それが基本でございます。それがない場合には、おっしゃったよ うに、部分的に点数表を用いたわけでございます。  診療科についての考え方は、私は経営管理上の病院の部門として考えた場合に、診療 科が、その病院によってどう定義しようと、それが基本となりますので、診療科という のは重要だと考えております。というのは、これは経営上の情報として、管理会計とし て診療にフィードバックする際に診療科という単位が必要でありますので、確かに国と して診療内容のコストを把握するという観点からはDPCの診断群別のコストで十分か と存じますが、経営管理に役立つということからすると、各病院で定義した診療科が重 要だと考えております。  その診療科のくくりは病院によって違いますので、それは今後、厚生労働省としても、 診療科のあり方を考え直す方向で今検討が進められていると伺っておりますので、今後 とも診療科のくくり方について、基本原則は確立した上で病院として比較可能にするた めの工夫というのは分けて考える必要があると考えております。 ○西岡委員  今のお話の続きですが、池上先生におやりいただいた部門別調査研究とDPCの調査 研究とは、図表4−6以降の表を眺めていますと、大体似たような形で、違いは誤差範 囲ぐらいというふうにとらえていいのでしょうか。あるいは、この2つの手法を、例え ば部門別などで比べたときに、どこかに差が出てくる可能性はあるのでしょうか。その あたり、教えていただけたらと思います。 ○池上委員  基本的には同じなのですが、比較的大きい差が出ている、その理由について分析した 48ページをごらんになっていただければと思います。これで見ますと、国家公務員の 給与体系を用いますと、5病院について見ると、私的病院の方が違いがあると。逆に、 給与差額が小さい病院というのは、このように公的病院の方があるということでござい ますし、材料費についても、48ページ下をごらんになっていただくと、材料費の差額 が大きい5病院についてその内訳を見ると、「部門別調査研究」において材料費の半分 を占める「診療材料費」(ガーゼ、縫合糸、レントゲンフィルム等の1回ごとに消費す る診療材料の費用)について、5病院すべてにおいて「部門別調査研究」の方が「DP Cコスト調査研究」よりも大幅に高くなっている。また、材料費の約44%を占める 「医薬品費」について比較すると、3病院が「部門別調査研究」の方が高く、2病院で は「DPCコスト調査研究」の方が高かった。その理由について、消耗品である「診療 材料費」云々については2〜3%しか構成していないので割愛しますが、これは実態と して給与費などは違うと思いますが、あとは計算の仕方によるものと考えられますので、 これについては個々の病院ごとに比較する必要があると思いますが、この31病院のう ち、確かに5病院程度が比較的違いが大きかったというふうに出ております。 ○今中委員  先ほどのコメントにつきまして御説明いただきましたとおり、経営管理ということで 内部で使う分に診療科というのが非常に重要であるというのはよくわかっておりますし、 そのとおりだと思います。そういうスタンスでやられているということについてはよく わかりましたが、今後政策に展開していく際に、その課題をクリアする必要があるので はないかと。  これに関する発言は終わりにしたいと思いますが、政策上の位置づけの大きい研究的 な要素があるからここで話されているのだと思うのです。その際に、今の方法でやりま すと、各診療領域なり、DPCごとにも収支を出せるのではないかと考えます。使って いるデータも明らかに違いますので、DPCコスト調査研究とこの調査研究との間では、 データをとった後のやり方は実質上、同じ仕組みになってきているのではないかと。松 田班の方の仕組みは数年前から同じ形でずっと継続しておりますが、そういう方向に統 一されてきているのではないかと。  松田班の方は調査の位置づけ上、政治的というか、社会的位置づけ上、いろいろなデ ータ収集での制約がございましたので、その制約の範囲内でやられているわけですが、 データをとった後の流れと方法が、特にDPC班で定義したEファイル等を使うことに なって以降も同じようなやり方になってきていると。そうすると、診療科というのが経 営部門で重要である一方で、診療領域なり、MDCなり、DPCなりでも収支が出せる ようになっていくのではないかと思いました。  あと一点、等価係数について、少し気になっていたのは、昨年度まで医療機関でかな りばらつきが大きかったので、なかなか他の施設に該当するのは難しいのではないかと 思いましたことを思い出しました。これに関して私の発言はこれにとどめたいと思いま す。 ○池上委員  その点は、画像と検査については等価係数がほぼ一致していたということをこれにつ いて報告しまして、昨年度においては申し上げたとおりで、手術については違っている 可能性が大きいので、おっしゃるように今後、調査を進める必要があるかと存じます。  別の分科会の課題かもしれませんが、基本的に病院に役立つような資料として提示し ない限り、病院として正確な情報は必ずしも提出していただけない可能性があるという ことはこれまで繰り返し述べたとおりでございます。 ○田中分科会長  時間の都合で先ほど後回しにさせていただいた今中先生の御発表に関する質問、御意 見がありましたら、それも加えていただいて結構です。いかがでしょうか。 ○須田委員  今中先生、御報告ありがとうございました。最初に御説明いただいた資料、診調組の コ−2−1の5ページでございますが、アンケート調査ですので、余り回答率が低いと バイアスが心配になってくるわけですが、この5ページの1.4.1の回収状況を見ま すと、病院、一般診療所、有床、無床、歯科診療所、保険薬局、それぞれ2,000通出さ れておりますが、歯科診療所、保険薬局に比べて、どうしても病院とか、一般診療所、 有床、無床の回答率がかなり低くなるのは、作業が大変になってしまってなかなか御協 力が得られにくいと理解してよろしいのでしょうか。無床よりも有床が低い、有床より も病院が低いということになっているのですが、この辺はどういうふうに理解すればよ ろしいでしょうか。 ○今中委員  この調査におきましては、もともとこのヒアリングなり、医療機関のかなりのコミッ トメントがないと多くの数字を出しにくい、負担の大きい調査になっておりますので、 そういう点で、一般診療所においてはもともと人が限られている中、本調査につぎ込む のは難しい点がある中、御協力いただけた病院があったということだと思います。  病院につきましては、こちらの調査対象病院となった病院は療養型病床を多く持った 病院等も多く含まれておりまして、そういう点で、人間の数ということでいきますとや や少なく、この調査に人を充てにくい状況があったことが考えられます。もう一方で、 臨床研修の単独型・管理型病院を対象にした方の調査は、回収率は40%程度得られて おります。 ○須田委員  回答してこられなかった病院・診療所に対して、回答してくださいという2度目のお 願いのようなことは特になさっていないのですね。 ○今中委員  これはそれぞれの歯科診療所、保健薬局につきましては関係団体の方からそれなりの リマインドをしてくださっております。そういうこともあって回収率が上がっている可 能性が高いと思います。 ○須田委員  病院、一般診療所の方は、リマインダーは送っていないのですか。 ○今中委員  ないと認識しております。 ○八神室長  事務局から補足いたします。回答のなかったところには催促という形でお願いしてお りますので、その結果としてもなかなか集まらなかったということでございます。 ○須田委員  10%台でかなり低いので、回答しやすい病院からだけ来ているのではないかと心配に なりまして。ありがとうございました。 ○田中分科会長  事務局からも補足をいただきました。ほかにいかがですか。よろしければ先に進みま す。また後で質問がございましたら、後の時間で質問をお願いいたします。  次に、松田先生から2つあるのですが、一緒に報告していただいてもよろしいですか。 松田委員より、「DPCコスト調査研究」について、「医療のIT化に係るコスト調査研 究」について、続けて説明をお願いいたします。 ○松田委員  それでは、「診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究」、「医療 のIT化に係るコスト調査研究」の結果につきまして御報告させていただきます。  まずDPCの方から行きたいと思います。このDPCの調査研究の目的は、先ほど池 上先生の方からも御報告がありましたように、あくまで国レベルで、すべての病院が同 じ手法で、同じ原価の積み上げで計算を行ったならば、各DPCの原価がどうなるのか ということを把握するということが目的であります。しかもDPC原価の方の一番の目 的は、きょうの資料の方では絶対額でお示ししておりますが、絶対額ではなくて原価の 係数表をつくるというのが一番の大きな目的です。  研究方法でございます。これは過去5年間やってきているものでございますが、同じ 手法で行っております。その手法ですが、6ページに診断群分類別コストデータ収集概 要というものが参考資料1−1という形で入っております。これは職種別の人数、どこ で働いているか、材料費、貸借料、委託費、減価償却費等を別途把握する調査票という ものをつくりまして、それに基づいて1次把握でそれぞれの部門の構成を見て、それを 用いて、上の方の集計結果から出てくる、例えば面積比ですとか、あるいは共通部門に おける医師の働いている配分、そういうものを用いて2次把握を行って、さらに入院・ 外来の延べ患者数の分類、配賦、あるいはその診療行為・回数のところでの配賦を行い まして、3次把握を行って、そこで患者単位のコスト算出を行うわけですが、各患者さ んにつきましてはDPCがわかっておりますので、それを用いてDPC単位での原価を 把握するという、こういう手法でやっております。  これまでのやり方のところで言いますと、16年度は93施設、17年度は169施設。こ れは民間病院等だけでございます。18年度は178施設を対象に、この方法を用いて行 っております。ただ、これまでの反省で、病院によって調査票の入力の仕方が違うとい うことがございましたので、それを解消するために入力支援ソフトというものを一昨年 度開発しまして、17年度からそれを用いて行っております。  恐らく目的が違うわけでございますが、この研究のコストの把握方法として、部門別 原価計算の方法と最も異なるのが、人件費の算出に当たっては国家公務員給料表の値を 用いているということでございます。  1枚めくっていただきまして2ページ目でございますが、あともう一つのところ、材 料コストの直課はE、Fファイルを用いてやっております。月次損益計算書等は実調の 様式と整合性を保ちながらやっているのですが、ただ、ここで1点注意すべき点は、そ の年度の財務諸表は使えませんので、その前の年度の財務諸表を用いてやっております ので、そこの部分で少し調整が必要な部分は出てくると考えております。  昨年のこの研究報告の際に、出来高換算コストと推計コストの比較等も行うことが望 ましいのではないかと。実際のコストと診療報酬の関係についてはさらなる検討が必要 であるという指摘がありましたので、今年度はDPCの方でやっています原価推計の方 法と診療報酬の点数表を積み上げたコスト、これは請求できるもの、できないものも含 めて積み上げたコストの比較もやっております。  急性期病院のところではICU/ERというものをどういうふうに考えていくか、あ るいは望ましい5基準という形でDPC調査対象施設のところでの示された基準がござ いますので、それはどのようにコストを評価していくかということを考えなければいけ ないということで、特に重症度をどういうふうに評価しようかということで、昨年度か らは、ICU/ERにつきまして、APACHEという、いわゆる救急の患者さん、も ともとICUの方でございますが、その重症度を把握する調査票を用いての検討も行っ ております。  4番目としまして、財務諸表分析。これは少し大きな立場から病院の機能をどういう ふうに評価していくか、その係数をつくるということでございますが、それをやるとい う目的で財務諸表分析を行っております。ここのところでは得られる指標として、安定 性指標としての固定長期適合率と流動比率、あるいは資源配分を検討する古典的指標と して医業収益対各種指標、医業利益率とか、人件費率、医療材料率とかそういうもので ございますが、それと付加価値関連指標、人件費配分率ですとか、医療材料配分率、そ ういうものでございますが、それとケースミックスインデックスとの関連を検討してお ります。  ケースミックスインデックスの定義はそこに書いてあるとおりでございます。ここで 相対係数としては、出来高換算で求めた費用というものを全部積み上げて、それを用い て各DPCの平均費用を用いてケースミックスインデックスを計算するということをや っております。  続きまして3ページの方に移りたいと思います。こちらの方に研究結果ですが、DP C別原価推計の結果を16年、17年、18年度で推計しております。これは1症例当たり の1日当たりコストです。症例の加重平均をとっておりませんので解釈には注意が必要 だろうと思います。各年度とも5例以上存在したDPCのデータのみを用いております。 対象施設数が表の一番下、93、99、178施設。症例数も約15万件、20万件、34万件と いう形でふえてきております。対象施設が増加しておりますので単純に比較することは できませんが、平成18年では1日当たりコストが約2,200円増加しております。  冒頭でも申し上げましたように、あくまで原価のコスト係数表をつくるということが 目的でありますので、この原価の絶対額にどれほど大きな意味があるのかということに ついては留意が必要だろうと思います。ただ、見ていただいてもわかりますように、1 日当たりの単価は上がっておりますが、平均在院日数が16日、12日、11日というふう に非常に短くなってきておりますので、そういう意味で1入院当たりのコストという意 味では当初から比べると大分下がってきていると考えられます。  参考資料2の方に350症例以上あったDPCごとの調査結果を示しておりますので、 これはまた後で見ていただきたいと思います。これは特定機能病院等を除いた民間病院 等の平成18年度7月から12月の退院患者について、アウトライヤー処理をしておりま す。上の方の5%を除いて、コストで見て非常に高かった症例というものを除いて、そ の範囲で計算した結果を示しております。  続きまして、実コストとの関連を検証するという目的で、これは分担研究者の今中先 生がサポートされたお仕事ですが、その例を24ページに示しております。先ほど今中 先生の方から、MDC別でまとめることも可能であるということのお話がありましたが、 MDC別にまとめた原価計算による1入院コストと出来高換算による1入院コストの関 係をMDC別に比較しております。非常に高い正相関が得られます。原価計算で推計し た方がどうしても高くなっております。もう一つ、参考資料2の方に、MDC07につ いて、DPC上6桁のところで手術があったものについて同じことをやっておりますが、 非常に高い正相関が得られております。  資料を見ていますと、また3ページに戻りますが、両者に非常に強い相関があること から考えて、現行の順番で考えたときの今の診療報酬点数表の点数設定ですが、順番で 見る限り、それほど大きなずれはないのではないかという認識を得ております。  続いて4ページの方ですが、ICU/ER調査です。これは例えば病院の機能をいか に評価するか、経済的にどう評価するかということを検討するための一つの資料になる わけでございますが、参考資料4と5を見ていただければと思います。これは26ペー ジと27ページです。26ページは何かと言いますと、これもまた今中先生がまとめてく ださったものですが、APACHEIIの施設別の分布を20症例以上あったものだけに ついてまとめているものでございます。35点以上というのが非常に重症な患者さんを 受けている。点数が低くなるにつれて重症度が低くなるということですが、まずICU の方で見ていただきますと、非常に重症な患者さんをたくさん診ているICUからそう でないICUまで、同じDPC病院でもかなり差がございます。  ERにつきましては3次患者、いわゆる緊急の処置をして一般病棟以外の病棟に入院 された患者さんを対象にしたものでございますが、これで見てみましても、各病院の救 急で受け入れている患者さんは、そのAPACHEというスコアで見る限りにおいては 受け入れの重症度にかなりばらつきがあるということが把握できるわけでございます。  次に財務諸表分析ですが、これは一部分だけでございますが、これは分担研究者の橋 本英樹先生がやられた研究でございます。それでは財務諸表の分析をやっております。 ここのところから財務指標とケースミックスインデックスの間の関係を見ているわけで すが、これは例えば38ページ目からを見ていただきたいのですが、38ページのところ に図1、多様性指標・資源投下指標・効率性指標の相関関係というのがございます。多 様性指標というのは、そこの病院がDPCで見たときにどのくらいいろいろな種類のD PCの患者さんを診ているのかということですが、これを見ていただきますと、実はC MI、いわゆる重症度の指標みたいなものですが、それと多様性指標の間には大きな相 関はございません。  ただ1点、特定機能病院というのは確かに多様な疾患を診ていますし、CMIでも非 常に高い患者さんが集まっているのが見てとれるかと思います。  39ページの方では資源利用効率性指標と多様性指標ですが、これも非常にばらつい ておりまして、この両者の間に一定の関係はないということが言えるかと思います。た だ、多様性指標で見てみますと、特定機能病院が非常に多様な患者さんを診ている。た だし、資源利用の効率性で見てみますと、1を中心として大きくばらついているという 現状でございます。これは病院の機能というものをどういうふうに評価するかというこ とで、少し再考を要する結果ではないかと考えております。  また、ほかには労働分配率とか、そういうものとDMIの関係なども見ているのです が、残念ながら今回は一定の関係は見られておりません。  ただ、これにつきましては、実は注意すべき点がございます。これは私ども、調査の 方のやり方の問題でもあるのですが、実は今回の財務諸表を集めるに当たりまして同じ フォーマットで入れていただこうということで、こちらの方で配付した財務諸表の入力 様式について入れていただいたのですが、その結果何が起こってしまったかというと、 集まったデータの3分の1に基本的なミスが見られております。例えば、そこに書いて おりますように、当期未処分利益の記載が不一致であるとか、その他記載の不一致とい うことで、それを除いて分析をしておりますが、こういう財務諸表をいかに正確につく っていただくかということが、こういう研究をやる上では非常に大きなポイントだろう と思っています。  もう一つは、私どもの調査の方は厚生労働省の本体調査とは別に、DPC対象病院と 個別の契約を結ばせていただいてデータを集めておりますので、例えば大学病院に関し まして言いますと、必ずしも多くの病院が入ってくださっているわけではございません。 ということで、大学病院のデータをこれで評価するということは少し難しいかと思って おります。  4ページの考察のところでございますが、多施設で診断群分類ごとの原価を推定した 調査でありまして、今後のいろいろな検討をする上での重要な資料を提供するものであ ります。これまでの結果と比べましてもほぼ同様の結果が得られております。これは実 は民間病院と特定機能病院につきましては、国立大学、私立大学、両方分けて、3つの 種別の施設につきましてそれぞれ原価計算をやっておりますが、それぞれ過去の2年間 の研究とほぼ同様の見解が得られておりますので、そういう意味ではDPC別の原価を 推計するという方法論としては安定性が改善しておりますし、ほぼ実用に耐えるところ まで来ているのかなと思っております。  ただ、財務諸表分析の結果からも明らかなように、まだ原価関連のデータ基盤が不十 分な状態での調査であります。特に財務諸表が設置主体別によって違っているという状 況がございます。これをどのようにこれから統一していくのか、あるいは同じフォーマ ットで評価できるように整備していくのか、そこのところを考えていかないと、DPC 別の原価推計を、例えば施設別に分けて比較するときには大きな課題になってくるので はないかと思っております。  もう一つはICU/ER、いわゆる急性期病院で、急性期の急性期たるゆえんである ような機能を評価するに当たって、必ずしも各病院のICU/ERというものが同じよ うな患者さんを受け入れているわけではない。このような重症度の違いというものをど のように評価していくのか。これはこれから大きな課題だろうと思います。例えばオー ストリアですと、各病院がどのくらいの重症度の患者さんを平均的に受け入れているの か、それに対してどのような人員配置を行っているかということで、別に1日当たりの 加算をつけるような対応をしておりますが、いずれにしても各病院の受け入れている患 者さんの重症度みたいなものをどのように評価するかということはこれからの課題だと 考えております。  原価推計をやっていきますと、日本のDPCは非常に分類数が多ございますので、症 例で見ますと数例しか対象患者が生じないようなDPCが出てきます。こういうまれな 疾患をどのように評価するかということは、これは実際、非常に重要なポイントでござ いまして、まれな疾患ほど確かにコストがかかっているということがあります。それを どうするのか。その部分を考えるためにも、もう少し原価計算をするための数の少ない 分類みたいなものをやらなければいけないのかなということも考えております。  3年間の研究をやらせていただきまして、今後のDPCに関してどのような枠組みを 使って研究できるのかということを5ページのEの今後の研究課題というところでまと めさせていただいております。一番大きな課題は、急性期病院の機能を評価するための 方法論の検証を少し踏み込んでやっていかなければいけないと考えております。特にI CU/ERというような、そういう急性期の急性期たるゆえんでありますが、こういう ところをどのように評価するのか。放射線部門、臨床検査部門などの中央診療部門にお けるサービスのコスト、特にこれは病院によって持っている機能がかなり違いますので、 そういうものをどういうふうに評価するかということは課題であろうと思います。  もう一つは、教育とか、研究機能をどのように評価するのか。この部分も、特に臨床 研修が必須でありまして、そういう臨床研修病院におけるコストをどういうふうに考え るかということもありますし、大学における教育研究をどのように評価するか、この部 分も評価手法の検討が必要だろうと考えております。  2番目として財務諸表の標準化、医療分野での分析手法の検討。あくまでコスト調査 でございますので、病院でのコスト推計の相対であります財務諸表というものが、異な った設立主体であっても、お互いに比較可能な状態で整理されなければ、この先、異な った施設間の比較はできませんので、その部分をどのようにやるかということが課題で ございますし、まさにこれが医療経済実態調査への活用方法の検討ということにもつな がっていくのではないかと考えております。  「診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究」の発表は以上でご ざいます。 ○田中分科会長  たぶん、質問の時間がなくなってしまうので、続けてもう一つの方も発表していただ いて、まとめて質問の時間をとろうと思います。 ○松田委員  続きまして、「医療のIT化に係るコスト」の調査につきまして御説明いたします。 これは診調組コ−3でございます。まず1ページ目のところに調査の背景と目的という ことが書いてあります。背景は「重点計画−2006」という中で、ITの構造改革力を最 大限に発揮し云々という、医療のIT化の重要性・緊急性にこたえるための調査として 始まったものでございます。  そのIT化をするということは、いいことであるとは思いますが、それはコストがか かります。実際にそれがどのぐらいかかるのかということを検討するための調査を行う ということでこの研究が企画されました。  これは昨年度から行われていることでございますが、平成17年度の調査では、先進 的な取り組みを行っている医療機関に対するヒアリング調査を行うということでありま したが、それをベースに調査票を設計させていただきました。今年度はこの調査票を用 いまして幅広く調査を行う。もう一つは、さらにそのデータを詳しく見るためにヒアリ ングをさせていただいたところでございます。  2ページのところに調査の概要がございますが、今年度のアンケート調査は、病院、 有床診療所、無床診療所、歯科診療所、保険薬局、それぞれ2,000件に対して郵送を行 いまして調査を行いました。回収率を見ていただいてもわかりますように、非常に低い のが現状でございます。これは先ほどの安全の問題と一緒です。病院のところで言いま すと10.5%、有床・無床診療所は数%、歯科診療所、保険薬局はそれぞれ10%、20% という状況です。督促も1回やっているのですが、それでもこのような結果でございま す。  ヒアリングの方は病院7施設、保険薬局1施設に行っております。  調査の方ですが、調査票をどのようにやったのかということですが、36ページから 医療のIT化に係るコスト調査の調査票がございます。これを見ていただきますと、病 院票だけ説明させていただきますが、基本情報として各施設の病床の状況、勤務してい る職員の状況を調べさせていただきました。  37ページの方にございますように、第4表としましてIT化の個別情報、これはい つシステムを導入して、その契約形態がどのようなものであったのか、金額が幾らであ ったのかということを電子カルテ、オーダリング、各部門のシステム、これは看護業務 支援システムとか、薬剤業務支援システムですが、それぞれについて聞かせていただき ました。  全体の収入に対してどのぐらいの費用がかかっているかということを検討する目的で、 収支情報として財務諸表の方からの医業収入、介護収入、費用等について調査を行って おります。  各病院がどのようなIT化を行っているかということで、部門別の状況を聞いており ます。  さらに第5表の方で、システム導入・運用に関する院内体制。実際にこれを入れて、 すぐに走るものではございませんので、システムのための人員をどのようにやっている のか、あるいはそれのための検討委員会をどのようにやっているのか、そういうことを 聞いております。  39ページの方で、IT導入によってどのようなコストへの影響があったのか、そう いうものを聞いております。ここは定量的な評価は難しい結果になっておりますが、第 7表でIT導入による変化ということを聞いております。データの活用が可能になった とか、あるいは人件費が削減できたとか、そういうことでございます。それぞれ同じよ うなものをほかの有床診療所、無床診療所、歯科診療所、保険薬局についても調査させ ていただきました。  続いて結果の方に行きたいと思います。調査結果の概要でございますが、5ページ目 から医療のIT化に伴うコストというものが書いてございます。まず表3−1−4、6 ページ目でございますが、病院で一番入っているのはレセコン、医事業務支援システム でございまして、続きまして食事業務の支援システム、薬剤業務支援システム。それを 追ってオーダリングとか、放射線業務支援とか、臨床検査とか入っておりますが、まだ まだ電子カルテの方は19.1%で非常に低い状況です。  このようなシステムをどのように入れているのかということでございますが、7ペー ジ目を見ていただきますと、病院の場合には、電子カルテにしましても、オーダリング にしましても、購入している施設が50%から70%ということで非常に多いという特徴 がございます。この電子カルテとか、オーダリングとか、各部門のシステムというもの を、実際にいただいたデータから1床当たりどのくらいのコストになるのかということ を推計しまして、仮にある病院がすべてのシステムを入れたら幾らぐらいかかるのかと いうことを計算したのが表3−1−6の表でございます。これを見ますと、仮にすべて のシステムを導入しますと、1病床当たり約62万円。これを医業介護収入比率で見ま すと3.9%ぐらいになるという、そういう推計結果をここに出しております。  9ページのところは、平成18年度は診療報酬改定でございましたので、それに伴っ てどのような費用がかかったのかということを聞いております。平均的追加費用としま しては198万円というのが出ております。レセ電算をやっているところでは720万円と いうデータが出ているのですが、これはたぶん新規購入費用等まで含まれている。部分 的に見ますと、1施設で2,000万円という計上をしているところもございますので、新 規購入を行った施設も入っているだろうと思いますので、これはたぶん参考程度に見て いただけたらと思います。  施設内の人的資源の投下ということでございますが、図3−1−1の方でシステム導 入決定から実際の稼働までにどういうことをやっているのかということを見ております。 ここで見ておりますように、院内体制をどのようにつくっていくかということが非常に 大事でございますので、こういう流れで大体動いているということです。  11ページの方にシステム専管部署の職員等が書いておりますが、表3−1−10を見 ますと、約2.9人ということです。検討委員会のところで15.5人ということで、ワー キンググループに、その年にどのぐらい参加しているのかということを延べの人と回を やっておりますが、かなりの数が行われております。  システム導入前の一定期間の研修の時間というのが表3−1−13に書いております が、医師で大体1.6時間、薬剤師で1.3時間、看護職員で1.6時間。多く使う職員で非 常に長い時間をかけてやっているという現状がございます。  13ページの方に移りまして、人的コストにどのくらい必要なのかということがござ いますが、システム専管部署で医業介護収入の0.4%、検討委員会に0.01%というお金 がかかっているという、こういう推計を出しております。  以下の有床診療所、無床診療所、歯科診療所、保険薬局というふうに同じような表が 出てくるわけですが、まず導入した場合のコストというのは、有床診療所で3.6%、歯 科診療所で4.2%、保険薬局で3.0%。大体3%から5%ぐらいの水準で推移しており ます。ただし、電子カルテとか、オーダリングシステム、医業業務支援システムですが、 病院の場合には非常に購入が多かったのですが、有床診療所以下のところでございます とリースが非常に多くなってくるという現状がございます。あとは大体同じような結果 でございますので、また見ていただけたらと思います。  実際にこういうITを導入してどういう効果があったのかということですが、IT導 入によるコストへの影響ということでございます。「あった」というのがどれもほぼ 数%。保険薬局と歯科診療所が高くて10%前後になっておりますが、病院、有床診療 所に至りましては大体2%から7%のところで推移しております。最も多かったのが 「不明」、そして「なし」というのが約30%となっております。  ただし、人件費で見てみますと、病院、歯科診療所、保険薬局で少しこれが「あっ た」ということです。配置転換等につきましても、多くの病院は約16%のところが 「あった」ということでございます。例えば紙の使用量がどのように影響したのか、保 管スペースがどのように影響したのか、フィルム使用量へどのような影響があったのか ということで、当初の予想としましては、紙が減って、保管スペースが削減されて、フ ィルム使用量も少なくなるだろうということだったのですが、「あった」というところ が非常に少ないのが現状でございます。ほとんどの場合が「不明」ということで、実際、 このITを導入したことによってどのような経済効果があったのかということは、全体 として把握できるような状況ではないというのが今回の現状です。  29ページのところで、病院だけを示してありますが、実際に定性的にどのような変 化があったのかということを調べております。見てみますと、まず一つはデータの蓄積 と活用が可能になった。この点につきましてはかなり積極的に評価されて、約60%の 施設が「そう思う」と回答しております。またこれも病院の特徴でございますが、動 画・静止画とか、そういうものを使って患者さんに対して理解しやすい診療が可能にな ったというところが約3割ということで、これはほかの施設に比べて非常に多くなって おります。  よくちまたで言われているような、パソコンへの入力のために患者と話す時間が減っ たとか、あるいは診察時間がかかって外来の患者数が減ったとか、そういうことは起こ っていないようです。  あと、病院の場合に非常にポジティブに評価されているのが、医療従事者間での情報 共有が可能になって、チーム医療の実施が容易になった。これは非常に積極的に評価さ れているようです。  また、医療安全の面でも、処方量の基準値オーバーとか、伝達ミスによるインシデン ト等の削減、こういうものは積極的に評価されているようです。ただ、「どちらでもな い」とほぼ同じ数になっておりますので、この辺のところは少し解釈に注意が必要かと 思います。  診療報酬の請求事務の効率化、これは大きな目的でございましたので、これは約6割 の病院が「そう思う」と回答されております。  業務が効率化されて残業時間が減り、人件費が削減されたということですが、これに 関しましては「そう思う」「そう思わない」「どちらでもない」というのが3分の1とい うことで、余り明確な結果は出ていないようです。  ただ、どこの区分でも少し問題だなと思いますのが、システム障害が起こって業務の 障害があったというところが20%、歯科診療所のところでは約60%ということでござ いますので、こういうトラブル時の対応というものが少し負担になっているという現状 が出てきているのかと思います。  35ページにまとめが書いてありますので、ここのところをかいつまんで説明させて いただきます。今回の昨年度に引き続きまして行った調査に基づいて、とりあえずIT 化に伴ってどのくらいのコストがかかっているかということを定量的に把握することは できたと考えております。今後、この結果を一般化するためには、恐らく回収率が低い ということは大きな問題だと思いますので、今後いかに解消していくか。もう少し大き なデータでの検討が必要であろうかと思います。  コストの影響につきましては、IT化の影響につきましてですが、これに関しまして は今回このような方法でやったわけですが、余り明確な結果は出ておりませんので、少 し調査の仕方をこの後工夫する必要があろうかと考えております。 ○田中分科会長  2つの報告をありがとうございました。きょうは4つも報告があって、時間がとれな いので、それぞれ2つずつまとめて質疑という形をとらせていただきました。今の2つ の研究について委員の方々から御質問や御意見があれば、お願いいたします。 ○高木委員  DPCの方で質問させていただきたいのですが、非常におもしろい研究を発表してい ただきまして、ありがとうございます。私が一番質問したいのは、橋本先生がやった財 務情報、これを見ると、大学病院のデータが非常に悪いですよね。DPCというのは特 定機能病院から始まってきて、そこに民間が入ってきたのに、コアの大学病院の財務デ ータが非常に悪いという結果になっていますよね。この辺をこれからどう変えていこう としているのか、少し御意見があればと思って質問させていただきました。 ○松田委員  大学病院につきましては、財務諸表のつくり方が、会計基準が違いますので、この辺 をどういうふうに合わせていくかということが非常に難しい問題だろうと。ここに出て きているデータが必ずしもほかと比較可能なデータであるとは考えておりません。そう いう意味で、たぶん近藤先生にお聞きした方がよろしいかと思うのですが、今年度から 国立大学病院につきましては共通のフォーマットで会計基準を合わせてきていますので、 それでかなり病院会計準則の整理したものとも比較可能なものになってきていると聞い ておりますので、そういうデータが上がってきたところで改めてこの分析をやらなけれ ばいけないのではないかと考えております。 ○西岡委員  医療サービスコストの方の38ページからございます図ですが、多様性指標とCMI と比較した図で、特に特定機能病院だけ色が黒くなっていて、少し特徴がある分布が示 されているのですが、そのほかの病院で、例えばベッド数であるとか、あるいは病院の 経営母体であるとか、そういったところでの分類をして、施設そのものをクラス分けす るということは可能なのでしょうか。 ○松田委員  一つは多様性指標とかCMI、これは病院の種別でどのような会計制度を用いている かによって違わない指標ですので、そういうものを用いて病院をある程度こうやって分 類してみるということはできるのかもしれません。例えばここで見てみますと、確かに 多様性指標というものを使いますと、これはかなり特定機能病院とそれ以外の病院とは かなり違うと思いますし、それ以外に非特定機能病院であっても、特定機能病院と同じ ぐらいかなり多くの範囲の患者さんを受け入れている施設がございますので、そういう 意味で受け入れている患者さんの種類というもので病院を少し区分してみるということ は可能であろうかと考えております。  きょうはお示ししておりませんが、DPCの方の研究で、また別の研究で東京医科歯 科大学の伏見先生が、どのぐらいまれな患者さんを診ているのか、どのぐらい複雑な患 者さんを診ているのかということを、ケースミックスインデックスみたいなものですが、 使って、特定機能病院、臨床研修病院、医療法人、個人病院というふうに比較をしてお りますが、それでかなり大きな差があるのが出ておりますので、どのような患者さんを 診ているのかによって医療施設を少し区分してみるということは可能であろうかと思い ます。 ○井部委員  ITに係るコストの研究は大変興味深く拝見いたしました。電子カルテシステムを導 入している施設が19.1%の割合というのは、国が一生懸命、初めに目標を立てました よね。400床以上は6割といったような計画があったと思うのですが、それに比べたら 非常に低いということが一つわかったことと、IT導入による変化に関する定性的な質 問が面白いと思いました。今後このような変化の指標を、もっと質問紙を工夫してやる とおっしゃっていましたが、どのような調査を今後考えていらっしゃるのでしょうか。 私はもう少し前向き調査で、これから導入するところはこのようなデータを必ずとりな がらやったらいいのではないかなと思ったものですから、今後の調査手法についてお考 えがありましたら教えていただきたいと思います。 ○松田委員  まず一つ、非常に難しいなと思うのが、IT化の定義と言いますか、定義とか方法論 というのが各施設によってかなり違うということがあろうかと思います。例えば病院の ヒアリング等でもよくわかったのですが、例えば電子カルテみたいなもので、自分の病 院でどんどんカスタマイズしているところというのは、確かにどんどんコストがかかっ てきます。でもカスタマイズすると、その分だけ使い勝手もよくなってくるということ があります。  一方で、カスタマイズしていない病院もかなりあるわけでして、そういう病院はかな り安くできるのですが、実際には使い勝手のところでかなりずれてくるということで、 IT化と一言で言ってもかなり違う状況がある中で、どのようにその効果を評価してい くのか。なかなか難しいなと思っています。  ただ、先生が今おっしゃられたみたいに、できれば前向きで調べてみたいということ はあるだろうと思いますし、あるいは、そういうものがきちんと残っている病院ですね。 実際にデータをずっととっている病院がありますので、そういう病院を中心に少しモデ ルケースというところでまた調査し直すということの方が、もしかしたら全体を対象に していろいろばらばらな施設のデータをまぜてしまうよりはいいのかなとも思います。  要するに、モデルケースをきちんとケーススタディとして調べて、それでいわゆる一 般的な行程を、クリニカルパスみたいなものですが、つくって、それにモデル費用とし てどれぐらいかかるのか、モデル的なコストとしてどのぐらい削減できるのかという形 で、いわゆる典型例として推計するということの方が、このIT化の調査に関しては適 切な手法ではないかと考えているところでございます。 ○原委員  まず1点目は、アンケートの回収率が非常に悪いこと。御自身もおっしゃっておられ るのですが、こういうアンケートが来たときに、担当者が一目見て嫌になるようなアン ケートの用紙ではないかと思いますので、データをたくさんとるのも必要ですが、10%、 あるいはそれ以下では、そのこと自体が問題ではないかと思います。多少、データの収 集項目が少なくても、データが返ってくる方がまず第一ではないかと思います。  第2点といたしまして、自治体病院などではこういう導入をするときに、それでなく ても赤字病院が多い中で、導入に導く魅惑的な要件を出すことができないんですね。こ のデータを見ても、これがいいからこれから導入しようじゃないかと現場をなかなか説 得できないではないかと考えます。先生、何かこういうポイントで今後導入へ導いてい く方がいいのではないかというような御意見がありましたら教えてください。 ○松田委員  基本的には先ほどもお話ししましたように、幾つかの典型的な施設種別と言いますか、 病院種別で、実際にモデルケースを提案していくということが一番いいのではないかと 考えております。そのモデルケースで実際に大体どのくらいの費用がかかって、どのく らいの削減が可能なのか。そして、それをやることによってどういうメリットがあるの かということを整理して、そこと実際の自分の病院との逆分析を通して行って、メリッ ト・デメリットを明らかにしていく。そういう手法の方が望ましいのかなと思っていま す。  まとめますと、モデルケースをつくるということがいいのではないかと思います。た ぶん成功例と失敗例と両方モデルケースをつくった方がいいのではないかと思うのです が、そんな形で、たぶんこういうアンケートで平均像を見ていっても、分布が違うと思 うんですね。すごく成功しているグループがあって、失敗しているグループがあってと いう形ですので、それぞれそういう形で平均像で物事を考えると、恐らくどちらからと っても不適切な結果になっている可能性が高いと思いますので、モデルケースで見てい くということをやるのがいいのではないかと私は考えています。 ○田中分科会長  まだあるのかもしれませんが、研究者として興味があるところは後で聞いていただく ことにしまして、この分科会として結論を出さなくてはなりません。本日御発表いただ き、御議論いただきました4つの調査研究について、この分科会において了承し、中医 協・診療報酬基本問題小委員会の求めに応じて私の方から報告したいと存じますが、よ ろしゅうございますか。質問がいろいろとあって、アドバイスもありましたが、特段に これはだめとの指摘はなかったようですので、こういう留意点もあったと報告させてい ただきます。そのような扱いにさせていただきます。  最後ですが、手短に次の議題、平成19年度における調査研究について、八神室長か ら説明をお願いいたします。 ○八神室長  保険医療企画調査室長でございます。診調組コ−6という資料でございます。「平成 19年度医療機関の部門別収支に関する調査研究について(案)」とございます。私から これについて御説明いたします。  先ほど、池上先生から御報告いただきました医療機関の部門別収支の調査研究の継続 ということで、まず1番、調査研究の目的ですが、病院の診療科部門別収支計算方法を 開発して、これにより部門別の経営状態の把握を行うことにより、診療報酬改定に当た っての政策立案に資する基礎資料を整備するということを目的といたします。  研究の内容でございますが、先ほどの御報告にもございました調査研究の成果を踏ま えまして、1番、調査対象施設のデータを提供していただく方の負担を軽減する工夫を する。2番、病院間の部門別収支の比較ができるような区分の問題。3番、調査結果を いかに活用するか。こういった調査を今後実施していくための具体化を念頭に置いた調 査を行うということでございます。  調査票は18年度の調査票をベースといたしまして、調査協力の医療機関のインセン ティブとなるような、そういうデータ収集方法の検討もあわせて行いたい。  調査研究の対象ですが、主に一般病床で構成される病院で、レセプト電算処理フォー マットで提出。DPC対象病院、DPC準備対象病院といったところを調査研究の対象 とすると。こういった施設の中で病院の管理会計システム等で診療科部門別収支を把握 しているところを選定いたしまして、診療科部門別収支の計算方法や結果の利用状況に ついてヒアリング等を実施するということです。  スケジュールですが、早速にも始めさせていただいて、今年度中にまとめていくとい う方向でやらせていただければということでございます。よろしくお願いいたします。 ○田中分科会長  ありがとうございました。ただいまの室長の御説明に対して御意見や御質問がありま したら、お願いいたします。先ほどの質疑の中でも幾つかヒントになるようなことが既 に出ていましたね。ほかに何かございますか。 ○井部委員  先ほどの松田先生の発表の中に重症度をはかる用具としてAPACHEという尺度を 用いているという話でした。正確な情報ではありませんが、中医協では7対1の配置の 検証をするために看護必要度という尺度を使うときいています。患者が重症であるとい うものをどのような尺度を使って検証するのかというのは、看護界では議論になってい ます。看護必要度の妥当性について疑義を持っている者もおりますので、先ほどのAP ACHEと看護必要度の尺度の類似性とか異質性について、少し事務局で検討していた だいた方がいいのではないかと思っております。患者が重症であるということをはかる 尺度の検討をどこかでお願いしたいと思います。 ○八神室長  APACHEの方は私、よくまだ掌握できていないので、看護必要度について今の状 況を御説明いたします。今年の1月、中医協で7対1問題に端を発しまして建議が行わ れて、それに基づいて今、医療機関の御協力をいただいて、看護必要度に基づく調査を しております。昨年度、1回目をやりまして、今年度も引き続き調査をすることになっ ております。それとAPACHEとの関係ということは、私ども、頭の整理をしないと いけないので、今ここでお答えするものを持っていないのですが、少なくとも先ほどの 看護必要度の調査に関しましては、集計をしましたらまた中医協に御報告して、その上 でこれをどう扱うかということになっておりますので、状況としてはそういうことだと いうことを御理解いただければと思います。 ○松田委員  APACHEはあくまで入院後、24時間以内の状況でやられるもので、これでスコ アが高いほど死亡確率が高くなるという、そういう国際的によく使われているものです。 ただ、このAPACHEにつきまして言うと、例えばERでよく扱うような外傷ですね。 外傷みたいなものを扱うものに関しては、このAPACHEが適当なのかどうかという 問題があります。例えばTRISSとか、TISSとか、ほかにもいろいろな国際的に 使われているものがありますので、そういうものも使わなければいけないだろう。看護 必要度に関しましてはそういうものではなくて、毎日とるものですから、たぶんこうい う救急とかICUというところで看護必要度を使うというのは少し分別力が弱いだろう なと思います。 ○柿田委員  先ほどの議論の中にもありましたが、診療科別の池上委員のほうの調査と私どもの参 加したDPC側との差は、病院ごとの取り扱い疾患の重症度の差というのをかなり考慮 に入れませんと、同一の診療科であっても大分結果が違うと思うのですが、その辺は次 の調査ではどのように考慮されますか。各病院毎の機能的要素を、どう今後の調査に組 み込んでいかれるか伺いたい。 ○松田委員  今、先生が御指摘になった点はまさに病院の機能をどういうふうに評価するかという ことだと思うのですが、私どもの研究班、今年また始まったのですが、その中で各病院 がどのような重症度の患者さんを受け入れているのか、各病院がどのような機能を持っ ているのかということに関して、これは看護のケアの必要度も含めてですが、そういう ものをどのように経済的に評価するかという方法論と言いますか、今までかなり方法論 は議論してきたと思うのですが、それを実証的に検証していくというのが私たちの新し い厚生労働科学研究の課題になっておりますので、それで今の先生の御質問にこたえら れるような成果を出したいと思います。 ○田中分科会長  具体的な中身はこれから詰めるのだと思いますので、先生の言われたことも踏まえて、 きっと事務局が考えてくれると思います。  時間になってまいりましたが、よろしゅうございますか。これは全体像としてはこう ですが、個別の具体的な項目については、また事務局に先生方からの専門の立場からの アドバイスがあれば、きっと拾ってくれると思います。こちらにつきましても、今、皆 様方の御了承が得られれば、私が診療報酬調査専門組織の求めに応じて報告してまいり たいと存じますが、こちらもよろしゅうございますか。今年度案についても御了承いた だいたということにいたします。  いつも最後に座長は付け加えるようにと言われているのですが、きょう議論された内 容は中医協・診療報酬基本問題小委員会の了承を得て初めて成案となります。報道等に 当たっては、その旨御留意いただきますよう、よろしくお願いいたします。  よろしければ、本日予定しておりました18年度の4つ、今年度の研究については、 皆様の議論で了承いただきました。本日の分科会はこれにて終了したいと存じます。  次回の開催について、事務局より説明をお願いいたします。 ○八神室長  次回日程につきましては追って連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○田中分科会長  これにて第13回の会合を終了させていただきます。お忙しい中をどうもありがとう ございました。 (終了)                   【照会先】                    厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室                    03−5253−1111(内線3287) 1