07/06/14 第15回労働政策審議会議事録 第15回労働政策審議会 日   時 平成19年6月14日(木)9:00〜 場   所 厚生労働省省議室(9階) 出 席 者  【公益代表】  伊藤(庄)委員、今田委員、今野委員、岩村委員、          大橋委員、勝委員、菅野委員(会長)、清家委員、          林委員、平野委員  【労働者代表】 植田委員、岡部(謙)委員、加藤(裕)委員、小出委員、          篠原委員、土屋委員、森嶋委員、山口委員         【使用者代表】 井手委員、大村委員、岡部(正)委員、紀陸委員、          山内委員  【事 務 局】 武見副大臣、上村厚生労働審議官、青木労働基準局長、          高橋職業安定局長、奥田職業能力開発局長、大谷雇用均          等・児童家庭局長、金子政策統括官、中野政策評価審議          官、山田労働政策担当参事官 議 題  (1) 会長の選挙  (2) 第166回国会提出法案の審議状況等について  (3) 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議 中間報告等に      ついて (4) その他 配布資料  資料1  労働政策審議会委員名簿  資料2 労働政策審議会分科会委員名簿 (作成中)  資料3  第166国会提出法案審議状況等について成 中)  資料4-1 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議中間報の概要  資料4-2 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議中間報告    −「重点戦略策定に向けての基本的考え方」について−  資料5-1 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2007(案)    資料5-2 経済財政諮問会議労働市場改革専門委員会 第一次報告書          (ポイント)  資料6  規制改革会議再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォ ース提言(平成19年5月21日公表)  資料7  雇用労働政策の基軸・方向性に関する研究会について       参考1 厚生労働省設置法  参考2 労働政策審議会令  参考3 労働政策審議会運営規程  参考4 労働政策審議会諮問・答申一覧 議 事 ○山田労働政策担当参事官   ただいまより、第15回労働政策審議会を開催いたします。会長が決まる  までの間、事務局が議事を進行させていただきますので、ご協力をお願い  いたします。   本日は、武見厚生労働副大臣にご出席いただいております。それでは武  見副大臣からご挨拶申し上げます。 ○武見厚生労働副大臣   厚生労働副大臣をしております武見でございます。本日はご多忙のとこ  ろ朝早くから労働政策審議会にお集まりいただきまして、ありがとうござ  います。この労働政策審議会・第4期の委員によります初めての会議の開  催にあたりまして、ひとことご挨拶をさせていただきます。   最近の雇用情勢は、一時は5.5%にまで上昇した完全失業率が約9年ぶり  に3%台となるなど、着実に改善が進んでおりますが、一方で若者の雇用  問題、雇用情勢の地域差、あるいは働き方の多様化、そして人口減少への  対応など、さまざまな課題をまた同時に抱えているわけであります。   こうした中で本審議会委員の皆様の多大なご尽力をいただきまして、こ  の通常国会には多数の労働関係法案を提出しております。   雇用対策法やパートタイム労働法など、既に成立をみた法案もございま  すが、労働契約法案、最低賃金法改正法案など、現在も審議が続けられて  いる法案もあります。今国会も終盤にさしかかっているところではござい  ますが、提出法案の成立に向けて、引き続き最善の努力を尽くしてまいる  所存でございます。   本日は、そうした労働関係法案の審議状況を御報告させていただいた後、  新委員による初の会合ということで、いわゆる「骨太2007」の案をは  じめ、現在、政府において検討・議論が行われている各種の方針や報告等  について御説明をさせていただきます。   昨今、労働政策の在り方を巡りましては、かつてないほど国民各層の関  心が高まっている中で、経済財政諮問会議や規制改革会議をはじめ、様々  な検討の場が設けられ、それぞれの立場からの提言等も行われております。  その中には、少子化が進展する中での「ワーク・ライフ・バランス」の実  現をはじめ、今後の重要課題として認識を一にする部分もあるかと思いま  すが、一方では、今後十分に議論を重ねていく必要があるものも含まれて  いるかと存じます。   こうした中で本審議会の委員の皆様におかれましては、我が国の今後の  労働政策の方向性等について調査審議いただく極めて重要な役割をお願い  することとなります。どうか、委員の皆様の幅広い御見識と豊かな御経験  に基づき、高い視点に立った御議論をいただきますようお願い申し上げま  して、私からの挨拶とさせていただきます。ひとつ、よろしくお願い申し  上げます。 ○山田労働政策担当参事官   武見副大臣は、所用のためここで退席させていただきます。 ○武見厚生労働副大臣   よろしくどうぞ、お願い申し上げます。 ○山田労働政策担当参事官   それでは、議事に入る前に新たに委員になられた方のご紹介をさせてい  ただきます。お手元に資料1「労働政策審議会委員名簿」を配付させていた  だいておりますが、新たに委員になられた方をご紹介いたします。   まず公益代表委員です。独立行政法人労働者健康福祉機構理事長の伊藤  委員です。東京大学大学院法学政治学研究科教授の岩村委員です。一橋大  学大学院経済学研究科教授の大橋委員です。明治大学政治経済学部教授の  勝委員です。また、本日は遅れてご到着の予定ですが、千葉科学大学学長  の平野委員が就任されています。   続きまして労働者代表委員です。自治労中央本部中央執行委員長の岡部  委員です。全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会中央執行委員  の篠原委員です。   続きまして使用者代表委員です。東京都中小企業団体中央会会長の大村  委員です。全日本空輸株式会社上席執行役員室客室本部長の山内委員です。  また、本日はご欠席されていますが、使用者代表委員の社団法人日本経済  団体連合会常務理事の鈴木委員が就任されております。   本日、任命辞令を机の上に置かせていただいております。併せて、審議  会関係法令、運営規程等を参考資料として配付させていただいております。   また、資料2は、各分科会の委員名簿です。後ほど目をお通しください。   それでは議事に移りたいと思います。   早速ですが、第1の議題、「会長の選挙」です。労働政策審議会令第5  条により、公益を代表する委員の中から委員が選挙をするということで、  委員の皆様により選んでいただくことになっておりますが、いかがお取り  計らいいたしましょうか。 ○今野委員   よろしいでしょうか。菅野委員にお願いしたいと思うのですが、いかが  でございますか。         (異議なし) ○山田労働政策担当参事官   それでは、菅野委員に会長に御就任いただくことといたしまして、以後  の議事の進行につきましては、菅野委員にお願いいたします。 ○菅野会長   菅野でございます。進行役を務めさせていただきますので、よろしくお  願いいたします。   この労働政策審議会は、分科会体制をとっておりますので、労働政策の  各分野の個別的な事項は分科会にご審議いただくということになっており  ますが、先ほど副大臣のご挨拶にもありましたように、労働政策の在り方  が国の政策の全体の課題の中で議論されるというような事態になっており  ますので、この本審議会においても、各分科会にまたがる政策の基本的方  向といったものについて審議していただく必要が生じるのではないかと思  っております。よろしくお願いいたします。   それでは、第2の議題及び第3の議題についてご審議いただきたいと思い  ます。第2の議題、「第166回国会提出法案の審議状況等について」、第3  の議題、「「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議 中間報告  等 について」です。事務局から、まとめて説明及び報告をお願いいたし  ます。   私、うっかりしていました。その前に会長代理の指名がございました。  会長代理を私のほうから指名させていただきたいと思います。会長代理に  は今野委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。   大変失礼いたしました。ただいまご説明しました第2の議題、第3の議  題について、事務局からご説明いただきます。 ○山田労働政策担当参事官   資料3からですが、資料3は「第166回国会提出法案審議状況等について」  です。先ほど副大臣からもご挨拶の中にございましたように、雇対法、地  域雇用開発促進法、パート法につきましては、既に成立という状況になっ  ています。次の頁で、労働契約法、労働基準法、最低賃金法につきまして  は、現在、衆議院で審議中ということです。その次の頁の雇用保険法につ  きましては、いろいろとご迷惑をおかけしましたが、4月19日に成立とい  う状況になっています。   続きまして資料4ですが、「「子どもと家族を応援する日本」重点戦略  検討会議」の状況です。   少し前後しますが、この資料の8頁をご覧いただきたいと思います。「検  討体制」という紙のいちばん上に「少子化社会対策会議」と書かれていま  す。これは、内閣総理大臣が会長で少子化対策について総合的にやってい  る会議ですが、その下に、官房長官を議長とした「重点戦略検討会議」と  いうものが設置され、さらに4つの分科会を設けまして、その1つの分科会  としては「働き方の改革分科会」、少子化の問題を考えるときに働き方の  改革というものが非常に重要な要素であるということから、このような分  科会構成で検討をしてきているという状況がございます。   資料4−1の最初の頁に戻っていただいて、これが先般、6月1日に出され  た中間報告の概要です。1番の「基本認識」の所で新たに出ました新人口  推計では、一層急速な少子化の進行が予測されると、このような状況にな  っています。   いちばん上の箱の3つ目の○の所ですが、こうした背景には「就業継続  希望と結婚・出産・育児の希望との二者択一を迫られる構造」がある、多  様な働き方の選択ができない、あるいは非正規労働者の増大、長時間労働  など、「働き方をめぐる様々な課題」が存在している。   その次の「今後の人口構造の変化を展望した戦略的対応の必要性」の所  ですが、こういった働き方というものを変えるということにより国民の希  望する結婚・出産・子育ての実現により少子化の流れを変える。あるいは、  若者、女性、高齢者の就業促進を図る。こういった要請に対して戦略的に  同時に応えていく必要があるということで、「ワーク・ライフ・バランス  の実現を目指した働き方の改革」が最優先の課題であるという位置づけを  されているところです。   2頁目の上の箱の所ですが、「働き方の改革によるワーク・ライフ・バラ  ンスの実現」ということで3点入っています。労使の自主的な取組を基本に  置きつつ、政府において、制度的な枠組みの構築、基盤整備等を通じて、  社会全体の取組となるよう促進、支援をしていく。地域の労使団体を中心  として、「働き方の改革」に向けた推進体制を構築していく。「ワーク・  ライフ・バランス憲章」あるいは「行動指針」といったものを政策のパッ  ケージとして策定し、総合的、体系的な施策を展開していく、というよう  なことが提言されているところです。資料4−2で、中間報告の本文も付け  ております。   資料5は「基本方針2007」、通称「骨太2007」と呼ばれている  ものです。これは一昨日、経済財政諮問会議に出た資料です。まだまとま  っているものではありません、途中段階のものです。労働関係のところに  ついてかい摘んでご紹介します。   6頁、第2章、「成長力の強化」です。冒頭の所に「成長力加速プログラ  ム」ということで、「成長力底上げ戦略」の内容が盛り込まれています。  これは前回の本審の時にご紹介したものです。「人材能力戦略」、「就労  支援戦略」、「中小企業底上げ戦略」という3つの柱で戦略を構築しよう  ということで、具体的手段がその下に書かれています。特に7頁の「中小  企業底上げ戦略」という所については、生産性向上を伴いつつ最低賃金の  引上げをするという合意形成を政労使でやっていこうと、このような流れ  の中で最低賃金の引上げが可能となるためには、中小企業の生産性向上が  重要であるということで、その生産性向上プロジェクト、かなり広範な施  策が骨太の中にも盛り込まれているということです。   22頁、「労働市場改革」の方向です。先ほど重点戦略会議の中間報告に  もありましたように、人口減少下で貴重な人材が生かされるためには、す  べての人が働きがいと意欲を持って自らの希望に基づいて安心して働ける  ことが重要であるということから、改革のポイントの所にありますように、  「ワーク・ライフ・バランス憲章」、「働き方を変える、日本を変える行  動指針」というものを策定するということです。その下の具体的手段の(1)  の下のほうに4つの「・」がありますが、数値目標、指標の在り方、政府  の横断的な政策方針、国民運動の推進といったような内容を盛り込んだ「  行動指針」を平成19年内を目途に策定するということが盛り込まれていま  す。   資料5−2は、いまの労働市場改革の中に盛り込まれていることと関連し  て、4月6日の経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会第一次報告という  ものが出たということです。この報告書の中には、上の箱の下のほうにあ  りますように、就業率の向上といったこと、あるいはフルタイム労働者の  労働時間の短縮といったことについて数値目標を掲げている、といった内  容になっています。その下の所ですが、この4月6日の経済財政諮問会議  において総理からこのようなご発言があったということです。ワーク・ラ  イフ・バランスは大切である。安倍内閣としても本格的に取り組みたい。  「働き方を変える行動指針」について、政府部内で十分連携をして、とり  まとめることとしたい。このようなことが発言として出ているということ  です。   資料6は、規制改革会議の労働タスクフォースというところが5月21日に  公表したものです。5月30日の規制改革会議の答申の中には、この内容は  盛り込まれていないということですが、労働政策にかなり関わりのあるこ  とが書かれており、内容的にもかなり議論のある内容が載せられていると  いうことでご紹介させていただいたものです。詳しい説明は省略させてい  ただきますが、例えば3頁に「解雇権濫用法理の見直し」、4頁に「労働者  派遣法の見直し」、5頁に「労働政策の立案について」というようなこと  が書かれています。「労働政策の立案について」という所をちょっとご覧  いただきますと、1行目で「現在の労働政策審議会は、意見分布の固定化と  いう弊害を持っている」、下の3行ぐらいですが、「使用者側委員、労働  側委員といった利害団体の代表が調整を行う現行の政策決定の在り方を改  め、利害当事者から広く、意見を聞きつつも、フェアな政策決定機関にそ  の政策決定を委ねるべきである」、このような指摘がなされています。   この報告書が出る前段階で厚生労働省もヒアリングを受けたわけです   が、その中で我々のほうからは三者構成審議会の重要性について申し上げ  ているところです、それは反映されていないということです。ただ、三者  構成審議会の重要性は踏まえるものの、運営の在り方については工夫の余  地があるのではないか、といった議論があるのも事実です。例えば本審の  在り方について、それぞれの項目、司の議論は分科会で行われるとしても、  その前提となる大枠の議論、労使の共通のコンセンサスというようなこと  の形成というものを図っていく必要があるのではないか、というような議  論もあるところです。   その関連ですが、資料7に「雇用労働政策の基軸・方向性に関する研究  会について」という1枚紙をお付けしています。いちばん下の事務運営等  の所にJILPTでこういったものをやっているということが書かれています。                                     研究会のメンバーの構成を見ていただきますと、この労政審の本審の委  員の方々もかなり参加をしていただいており、今後の雇用労働政策の基  軸・方向性について検討されているところです。例えば、こういった研  究会の内容というものを素材にして本審で議論していただくということ  も1つの方向ではなかろうかと思っており、その議論のやり方等々につい  ては、またご相談させていただきたいと考えているところです。簡単で  すが、一応ご説明させていただきました。 ○菅野会長   ただいまの説明及び報告につきまして、ご質問等がございましたら、よ  ろしくお願いします。 ○山口委員   質問ではないのです。 ○菅野会長   どうぞ、ご意見でも結構ですから。 ○山口委員   よろしいですか。 ○菅野会長   はい。 ○山口委員   労働側委員の山口でございます。意見と言いますか、ただいま報告があ  りました付属の資料の6の規制改革会議のタスクフォースチームの件につ  いて意見を申し上げておきたいと思います。この規制改革会議の再チャレ  ンジワーキンググループ労働タスクフォース提言ということで出されまし  たが、これは、私たち働く者にとって見逃せない大変重要なものであると  捉えております。特に労働者の権利を強めればその労働者の保護が図れる  という考えは誤っている、そういった視点でいくつかのことが述べられて  いるのですが、先ほど資料の報告がなかったのでそれを申し上げさせてい  ただきたいと思います。   まず、最低賃金の引上げです。これについては、「賃金に見合う生産性  を発揮できない労働者の失業をもたらす。女性労働者の権利を強化すると、  最初から雇用を手控えるなどの副作用が生じる。正規社員の解雇を規制す  ることは、非正規社員のシフトを企業に誘発する。一定期間継続した派遣  労働者に対する雇用申込義務は期限前の派遣取止めを誘発する。画一的な  労働時間の上限規制は脱法行為を誘発する」などの点を臆面もなく主張し  ているわけですが、これは法遵守や最低労働条件の確保という使用者責任  を一切不問に付したまま権利の強化を否定するという詭弁であり、すべて  の働く者に対する重大な挑戦と言わざるを得ないと考えております。また、  同意見書は、判例の集積をそのまま立法化することの問題を指摘し、「司  法判断の集積たる判例が立法政策を拘束することは、三権分立の原則に反  する」とまで言い切っているわけです。公益委員の先生方にお聞きしたい  のですが、判例を立法化することはそれほど問題なのか、判例をそのまま  立法化することは、立法としての1つの手法ではないかと考え得るわけで  すが、これについてどうお考えかということ、質問ではないですがご意見  をお聞かせいただければと思います。   もう1点です。これは参事官も言及していたところですが、この意見書  において労働政策審議会の弊害にも言及しているわけです。「労使代表は  決定権限を持たず、その背後にある組織のメッセンジャーになっていると  して、現行の政策決定の在り方を改め、フェアな政策決定機関に委ねるよ  う定義している」ということでした。いま現在、審議会で労働政策に関す  ることを公労使で議論を積み重ねているということがありますが、一方で  は、例えば経済財政諮問会議などで同じようなことが重ねて議論されてい  たりといった状況にあります。参事官もおっしゃっていたように、在り方  等に工夫の余地はあるとしても、三者構成主義というものは労働政策に役  立っているということについて厚生労働省は国民に対してもっとアピール  するべきではないかと、労働行政を主管するところは厚生労働省であると  いうことを自信を持って、たぶん自信を持っていらっしゃると思うのです  が、それをよりアピールしていただくことが労働者全体の利益に適うと思  っております。この部分は意見として申し上げておきたいと思います。前  段の部分でもしご意見があれば、お聞かせいただきたいと思います。 ○菅野会長   一通りお聞きしたいと思います。 ○植田委員   すみません、労働側委員の植田でございます。いま資料6の話が出まし  たので関連して意見を申し述べたいと思います。この資料の7頁から8頁  にかけての「同一労働・同一賃金」の部分です。ILO勧告が2003年に出さ  れたかと思うのですが、趣旨はたしかパートタイマーへの同一価値労働・  同一賃金原則の適用と認識しているのですが、そういったことが踏まえら  れていないなと感じています。そういったことの認識について、まず大き  い隔たりを感じるというところです。この7頁から8頁にかけての文章を読  んでいますと、いま山口委員からあった「女性労働者の権利を強化すると  最初から雇用を手控えるなどの副作用が生じる」という部分も同様だと思  うのですが、「同一労働・同一賃金」のくだりも男性と女性とか、どうも  正規社員と非正規社員にはもともと格差があって当然とするような意識  が、あえて申し上げますが、見て取れるなと感じております。   例えば、(3)の(1)の2行目から3行目にかけて「労働者を雇用して得ら  れる利益によってその価値は異なる」といった記述がありますが、そのよ  うな結果異なる付加価値の差であったり、あるいは職務評価による労働価  値の差であったり、そういう差をそのまま性別や雇用管理区分に当てはめ  ようとする態度は論理の飛躍でないかなと思います。   全体について、私、率直に申し上げますと、再チャレンジの主語である  べき労働者の一人一人の個々の労働の実態というものがきちんと把握され  て、それに基づいて述べられているようには全く感じられないということ  に危機感を覚えますし、真意をはかりかねるというのが本音です。多分に  感想を申し述べるような形になってしまったのですが、ともかくここの部  分の記述について、私としても是非公益委員の先生方の見解をお聞きした  いと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○土屋委員   副会長をしております土屋でございます。関連いたしまして、労働者派  遣について意見を申し上げたいと思います。   いま関連といたしまして、その提言の中では労働者派遣法を「真に派遣  労働者を保護し、派遣が有効活用されるための法律に転換するため」とし  て、派遣期間制限の撤廃なり派遣業種限定の撤廃、さらには事前の面接の  解禁、紹介派遣の派遣期間の延長、さらには派遣と請負との区分の基準の  変更等を主張しているわけです。しかし、これは、労働者の派遣や請負労  働者を使う企業にとってさらに使い勝手の良いものに変えるという視点の  みの提言という受け止めができるわけです。そういう意味からすると極め  て問題があると、このように思っております。加えて、労働者派遣法をめ  ぐっては、いまマスコミを賑わせているグッドウィルやスポット派遣等々、  さまざまな問題が起きているわけです。したがって、これらを踏まえた労  働者保護の観点から見直しが必要だろうということについて、あえて意見  として申し上げておきたいと思います。 ○菅野会長   いかがでしょうか、タスクフォース関係についてそのほかにございます  か。 ○今野委員   この資料をまだきちっと精査していないので細かい点はコメントできな  いのですが、先ほど事務局からお話があった5頁目の「労働政策の立案に  ついて」の所についてです。タスクフォースのこのようなペーパーが出た、  出ないに関わらず、ここの本審でどのような議論をすべきか、どのように  運用すべきかというのは前からもいろいろ議論のあった点ですので、ある  いは、今日、会長からもそのようなお話がありましたので、一度議論して  もいいかなと、そういう点は我々としても考えてみるべきだろうと、これ  に対するコメントというか感想を言わせていただきました。 ○清家委員   公益委員にお尋ねがありましたので、念のためにコメントを申します。  労働側の委員の方がおっしゃる趣旨はわかります。ただ、ここに書かれて  いることは、例えば、理論的に言えば、賃金が上がり過ぎれば労働需要が  減るというのは、労働経済学の教科書の最初のほうに書いてある、ごく当  たり前のことです。   問題は、例えばいまの最賃のレベルが、そういう雇用をちょっと上げた  だけで減らすようなレベルかどうかという認識で、それはもう全然違うの  だろうということですよね。ご承知のとおり、アメリカがもう最賃を上げ  ますから、日本の最賃レベルも相当低い水準になっているわけです。国際  的に見ても、いま最賃を上げると雇用が大幅に減るかどうか、ということ  が自明のように書かれるのはどうかなと思います。これも、そこまで勉強  されているかどうかわかりませんが、そもそも最低賃金が雇用を減らすか  どうかについての実証分析というのはアメリカも含めて世界中で山のよう  にあるわけで、そういう分析を踏まえた議論が必要だろうという意味では  相当荒っぽい議論だろうなとは思います。   労使と学識委員で構成される審議会での政策決定の部分についても、こ  れはいろいろな議論があるでしょうけれども、少なくともその雇用のルー  ルについては、どんなに学者がこういうものがいいのではないかと言って  も、労使がそんなものは守れないと言うルールは作っても意味がないわけ  です。ですから、雇用の規制は、基本的には労使がそれぞれいろいろ不満  がありながらも、ぎりぎりここなら何とか守れるでしょう、あるいは、こ  こだったら許容できるでしょう、という形で決めるのがいちばん合理的な  わけです。そういう意味では、この三者構成の審議会の基本的枠組みは意  味があるのではないかと思います。   その上でそういう意見はいろいろありますが、こういうことを申し上げ  ると良くないのかもしれませんが、今日は事務局もこういう資料を報告さ  れたのでいろいろ議論になっているかと思いますが。そもそも私も昔、総  合規制改革の委員でしたから、そのときの経験から申しましても、これは  いわばタスクフォースの作文のようなものなのです。事実これは、先ほど  事務局からもご説明がありましたように、さすがに規制改革会議の答申の  中にも盛り込まれていないわけで、そういう面では規制改革会議も見識を  示している、皆様方は見識があると思っておられるかどうかはあれですが、  この範囲についてはそう思います。ですから、これが例えば規制改革会議  の答申に盛り込まれたりした場合にはこのような場で本格的に議論する意  味があると思いますが、この程度の文章と言ったらあれですが、例えば、  このタスクフォースの提言を大々的に取り上げて議論するというのはあま  り生産的でもないし、もちろん、何らかのエピローグがあるかもしれませ  んからきちっと反論したり議論したりする必要はあると思いますが、これ  は大上段から議論するような種類のレベルの報告書ではないのではないか、                               というのが私の感想です。 ○菅野会長   判例の立法化についてお尋ねでしたので、その点だけ私の感じを申しま  す。アメリカの場合は、判例法の国で、それではわかりにくいので、その  内容を明らかにするというrestatementという作業があります。労働契約法  の作業について言えば、研究会でやったことも、分科会でやっていただい  たこともそういうrestatementではないのであって、今後の労働契約法の在  り方としてどのようにするのがいいか、政策としてどのようにするのがい  いかをご議論いただいたのだと、その中で判例というのはこうなっている、  それも1つの選択肢の中に加えて労使のご意見などの中で判例に非常に近  い形で、例えば就業規則のルールが法案化されたわけですが、それは政策  の選択肢の中から選ばれたということだろうと思います。それについては、  私は妥当な法文化であったと考えております。   この関係でほかにございますか。事務局のほうはよろしいですね。それ  では、その他の点でご意見、ご質問等をいただきたいと思います。 ○小出委員   資料5−1の「成長力加速プログラム」の問題は、当然いま話題になって  いる円卓会議の主力な内容だと思うのです。私もそのメンバーの一員に選  ばれていまして、いちばん最初に政府から説明に来られたときにどうして  も解せないのは、生産性向上と最低賃金引上げという項目が出ているので  す。要するに、最低賃金そのものを議論するときに生産性という関連で何  でこんなことが起こるのかと。最低賃金というのはもともと生計費という  視点からスタートしなければならないのではないかと。そういう面でいく  と、政府がいま非常に気にされているのは、年収200万円以下の所得の人  口が非常に増えてきたということで、これが最大のポイントだろうと。   たしか厚生労働省は、去年の暮れでしたか、あるいは今年の初めでした  か、労働政策委員会に1986年からの労働力のいろいろな表を出されていま  した。私の記憶だと、1985年が約4,000万人、あれは2005年か2006年だっ  たと思いますが、5,500万人、圧倒的にこの辺りで正規社員はほとんど増  えていない、非正規社員が圧倒的に1,500万人になっている。こういう報  告がたしか出されたと思うのです。   いま1,500万人増えた非正規の人が中小零細企業で雇用が吸収されてい  るのだったら、私は、一面において生産性向上と問題がとられるのはわ  か ると思うのです。しかし、今どこの層で雇用されているのかと言った  ら、これは中小企業庁が今年の4月に報告を出していますが、例えば300名  以下の所には派遣・請負はほとんどいないという報告書になっています。  圧倒的に大手中堅企業が派遣・請負を使っているということになっている  のです。大手中堅企業はいま史上最高の業績を上げていると、こういうこ  とになるのです。だったら、最賃を上げようが上げまいが、そこの議論と  いうのは何なのだと。ですから、基本的な生産性向上と最低賃金とを結び  付けること自体が、まず私どもとしてはおかしいのではないかと、この考  え方に立っています。その上に立って、いま私どもとしては、とりあえず  現行出されている最賃の問題については早いところ国会を通してくれと。  はっきり言ったらそれが心境です。社保庁問題で厚生労働省は大変でしょ  うけれども、それをとにかく通してくれと、その上に立って最賃の問題を  議論するとすれば、いままでの最賃の審議の在り方について検討し直して  ほしい。いままでの最賃の審議というのはいわば、中賃と地賃の問題があ  りますが、基本的にいろいろと聞いていますと、例えば地賃のデータにな  っているのが零細企業30人以下の企業の実態を踏まえてどうするかといっ  た議論が中心になっていると。零細企業30人以下の賃金がどうだこうだ、  それで引上げ幅が1円、2円と。こんな議論をやっているところに私は、い  ままでの最賃というのは、上げないという前提の最賃の協議かと。このよ  うな感じですね。それをどうするのかという視点に立つのだったら、やは  り賃金を生活保障という視点から高さできちっと議論すべきではないかと、  このように問題提起をさせていただきます。   その中で連合は、少なくともこの2年前に、例えば埼玉と宮崎でいま労  働者が1人、最低生活をするためにどの程度のお金が必要かと、こういう  ことで調査している連合リビングウェッジというものを調査して出してい  るのです。その調査結果を基にして問題提起をさせていただく。要するに、  地方の平均賃金の半分ぐらいのところが大体妥当な数字ではないか、この  ような試算が出てくるのです。したがって、連合としては、そういう視点  から最低賃金のこの議論をすべきではないかと、これを1点言っています。   もう1つ、正規労働者の関係で見るのだったら、大企業に勤めている正  規労働者と中小企業の労働者では、確かに賃金の格差がかなり生じていま  す。中小の賃金が低下していることは事実なのです。ただ、中小の賃金を  ある程度引き上げるためにもう1つ非常に重要なことは、取引問題という  ことをきちっと整理し直さなければならない。あくまでもメーカーからも  のすごいコストダウン要請で、これに対して法を、いわゆる下請代金法と  言いますが、この法を超えるようなところに厳しい取引条件が行われてい  る。これをもう1回きちっと見直すべきではないか。下請代金法というの  は昭和31年に出来た基準で、そういうあれでは、その下請代金法に入らな  い範疇のところでいろいろな厳しい取引が行われている。これをやはりき  ちっと整備すべきではないかと、こういうことを申し上げています。   もう1つ。いま格差として見ると、地方は非常に厳しい状況になってい  る。その地方の厳しい状況というのは、皆様方も地方に行かれたらおそら  くわかると思います、シャッター通りがいっぱい出来ています。これは何  で出来ているのか。これは結局、大型店舗が地方に出て、スーパーとか何  とかに客がみんな行くからだと言います。そういうあれでいくと、地方を  どうやって活性化するかという視点になると、これははっきりと一面にお  いて地方の公共投資を考えて、それに対して新しい仕事と言うのですか、  そういうことをつくっていかなければいけない。   もう1つ最後に申し上げると、中小企業、要するに今いちばん困ってい  るのは何か。人は採れません。例えば地方における中小企業において人を  採ろうとしても、若者はほとんど賃金の高い所に移動するのです。ものづ  くり産業の中で本当に人は採りたいという前提はあるのですが、ところが、  採れないのです。このことをどうするかということももう少し真剣になっ  て考えていかないと、私は日本の産業の中で中小企業が瀕死の重傷を負っ  たらメーカーも重傷を負うというのは日本の産業の構造だと思います。そ  ういうあれから見ると、そういう視点もこの中できちっと見ていってもら  いたいと、こんなことを連合としては主張させていただいているというこ  とだけを申し上げておきたいと思います。 ○菅野会長   篠原委員ですか。 ○篠原委員   項目が違いますので、また後ほど。 ○菅野会長   では加藤委員。 ○加藤(裕)委員   すみません、よろしければ、いま小出委員が「基本方針2007」に触  れましたので、労働側で1、2、そこで少しコメントしたいところがあるも  のですから。私からまず簡単に申し上げて、あと、ほかの委員からもある  と思います。この中で私がご指摘したいのは6頁、「ジョブ・カード制度」  の構築ということを目指した「職業能力形成システム」、「人材能力戦略」  ですね。これについてのことです。   いま小出委員から円卓会議のことも出ましたが、この下にこれを検討す  る委員会が出来て、そこにも労働側委員も出席しているのですが。この「ジ  ョブ・カード制度」というのは、実はそこに文部科学省からも委員が参加  しているとは聞いているのですが、私も、中教審の側で生涯学習分科会で  かなり長い期間をかけて生涯学習をどのような形で個人の履歴として表し  ていくのかということで、ジョブパスポートというような発想でかなり言  及してきた経過があるのです。   なぜそれがなかなか形にならないかと言うと、それを実際に仕事に結び  つけていくプロセスで文部科学省側にはそんなノウハウや行政としての蓄  積がないといった面もあって、これは今回、非常にいいチャンスだと思う  のです。したがって、省庁間の壁を超えて違う制度が2つ出来てしまわな  いように同じ所で検討するのであれば、その発想を是非ドッキングしてい  ただいて。いちばん肝心なのは、個人にとってみればそこのカード上で、  パスポートと言ってもカードと言ってもいいのですが、どんなことをそこ  に表現していくのか。そして、使用者側はそれのどういう点を活用したい  のかということだと思います。これについてはさまざまな資格制度の、選  別の在り方あるいはそれの権威付けの在り方等々については生涯学習分科  会で大きな蓄積がありますので、そういうものとの間で是非これを一元的  に検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。 ○岡部(謙)委員   労働側委員の岡部でございます。同じく、資料5−1の「基本方針2007」  に関連して意見を申し上げます。   資料の40頁、「市場化テストの推進」の(2)「ハローワーク」の所に、  「都内23区内のハローワーク2カ所における無料の職業紹介」について、  いわば平成20年度を目途に市場化テストを行う、このようなことが示され  ています。無料職業紹介事業を市場化テストの対象とするというのは、私  どもは極めて大きな問題があると思っています。ハローワークにおける無  料の職業紹介というのは、雇用の非常に大事なセーフティネットのところ  ろですので、個々でいわゆる就職困難者と呼ばれる人たちにとってハロー  ワークの存在というのは非常に大きなものが現にあると思います。市場化  テストが導入されて、そこで民間の事業所がそういう事業をやるとなって、  コストや効率性といったことを重視することに当然なると思うのです。そ  うした場合、こういった就職困難者の方々に対する対応がいわば後回しに  なるということを非常に懸念いたします。求職活動については、国が無償  でやるという国際労働基準等々もあります。ですから厚生労働省としては、   ハローワークを本当に必要とするような利用者の立場に立って本格的なハ  ローワーク事業の民間開放とはならないように、そういった対応を是非お  願いしておきたいと思います。これは意見です。 ○紀陸委員   資料5−1の点について3つ今……申し上げたいと思います。1つは、加藤  (裕)委員がおっしゃったジョブ・カード……。これは企業としても産業  界としても……。特に産業別で……どのような職業かによって。…… だ  いぶ違いますのでそういう方法で……どういう……能力、これから精査し  てそれに相応しい……。 ○菅野会長   すみません、ちょっとマイクが。 ○紀陸委員   申し訳ありません。産業別によって望まれる、あるいは望ましい教育内  容というか、レベルは違いますので、それをまず各企業が協力してやるべ  きであろうと。基本的に就職困難の方々が職業能力がないと、これはどう  にもならないので、この点についてはできるだけ協力していくということ  だと思うのです。   ただ、その場合に、いろいろな企業がございますから、あまりハードル  を高くしてガチガチでこういうことまでと言われると困るので、その辺は  企業が取り組みやすいような協力・支援の仕組みをやっていただきたいと  思っております。   2点目は、小出会長がおっしゃった最低賃金の件です。企業の支払能力  というのは最賃の要件の1つになっていますね。支払能力がないと、大企  業であれ、中小企業であれ、やはり具合が悪いわけです。政府のこの仕掛  けの中で生産性の向上というのはやはり入っていて、それと同じ生産性を  上げることによって支払能力が増えるという理屈ですから、それができれ  ば最賃を上げ得る余地が生まれてくる、そのような状況ではないかと思い  ます。特に日本は、これまで、非常に長い間デフレ的な状況でしたね。企  業も、財政状況の改善というのはごく最近の話ですので、単純に、ほかの  国が上がったから日本もというわけにはいかないだろうし、国内の事情が  違うのだと思うのです。生産性向上によって当然ながら、先ほどもお話が  ありましたが、地域の活性化ということについても弾みが出てくるだろう  と思っておりまして、やはり生産性の向上という視点は欠かせない、その  ための施策がこの中にかなり詳細に盛り込まれて、これからいろいろ取り  組もうということですので、そこはまさに産学官で協力して取り組むべき  課題ではないかと思います。   ハローワークの件です。基本的に、労働市場の活性化を官民でできるだ  け協力して競い合ってやれるべきところは効率を上げてやっていこう、と  いうのが方向としてねらわれているのだと思うのです。確かに民のほうは、  全然利益がなくてという所には手を出せないですよね。だから、それがで  き得るような状況をどのようにつくるか、いい意味で官民の競い合いとい  うか効率化が就業能力の向上、あるいは本当の意味で就職につながるよう  なことをどのようにしたらできるか、これはいろいろ考えていかなければ  いけない部分だと思うのです。これはまだこれから立ち上げようという段  階でしょうけれども、いろいろ工夫することによって、就職困難の方々に  もう1つ道が開ける可能性も出てくるのではないかと思っております。お  互いに協力し合える部分は官民で知恵を出し合っていく分野ではないか、  と私どもは思っております。 ○菅野会長   ほかにいかがでしょうか。 ○篠原委員   では、私からは要望というようなことで申し述べたいと思います。先ほ  ど事務局側の方からご報告があった、(2)の166回通常国会の提出案につ  いての要望について申し述べたいと思います。   私、均等分科会のほうでこのパート労働法の審議会の中に加わらせてい  ただきました。パート労働者の本当に悲願であったこの改正パートタイム  労働法が成立したということで、やっとここまできたという思いが非常に  あります。そこで1点要望というようなことになるわけです。   今後はたぶん省令や指針づくりという部分が予定されているのではない  かと思いますが、この附帯決議に示された事項。中でも、例えば均等・均  衡待遇の確保に向けた対応。2つ目には、フルタイムパートにもこの法の  趣旨が考慮されるということの周知。3点目ということでは、改正法の施  行を理由とする不利益変更の排除などを踏まえた実効性ある指針や通達作  りを是非お願い申し上げたい。ということを、1点要望として申し述べた  いと思います。 ○岡部(正)委員   この資料は大変膨大な資料でして、おそらく多くの委員の方々が大変ご  苦労されて取りまとめもされたのだろうと思いますが、できれば、もう少  し早めにこれを見せていただくと、大変ありがたい。実はこの場でこれだ  けの資料を見て、私はこれをすぐ理解するだけの頭はございませんので、  できれば時間的にもう少し余裕のあるような形でこれを見せていただける  と、事前によく読んでくるということになりますので、この点は是非お願  いしておきたいと思います。   今回のこの全体の方向と言いますか、これは大きな政策の方向性が打ち  出されたということで、この点は、私も高く評価していきたいと思ってお  ります。この中で特に関心の深いワーク・ライフ・バランスの問題ですが、  この実現のために、この中にもありますが、労使が自主的に取り組んでい  くと、これを基本とするということが確認されています。これは大変喜ば  しいことだと思って、大歓迎です。この点については、個人、あるいは家  族の希望に応えるだけでなく、先ほど来話が出ていますが、生産性の向上、  あるいはその企業の成長といった問題も同時に実現ができるようにという  視点からも、これは大変大事なことだろうと思っております。そうするこ  とによりワーク・ライフ・バランスとイノベーションの創出が同時に達成  できるのではないかということで、大変大事なことではないかと思ってお  ります。   もう1点は、ここ1、2年、大企業を中心に子育て環境の整備、こういっ  た問題に積極的に取組みがなされているわけですが、この「ワーク・ライ  フ・バランス憲章」、あるいは「働き方の改革を推進する行動指針」、こ  ういった問題の策定に当たり、制度的な枠組みの構築、これは規制の強化  ではないということを明確にした上で今後、この中小企業にどのように展  開していくのかということ。これが大変大事になってくるのではないかと。  この辺をより具体的に考えていく必要が出てくるのではないか、こういう  ことを考えております。 ○森嶋委員   委員の森嶋でございます。いまワーク・ライフ・バランスの話が出まし  たので、関連して申し上げます。ここに「ワーク・ライフ・バランスの憲  章と行動指針を作る」とあるのですが、具体的なイメージがいまいちでき  ないと。実効性があるのかどうなのかについては、やはり検討が必要だろ  うと思っています。連合としても検討はいろいろさせていただきますが、  基本的に政労使でその論議が必要だろうと思っていますので、組織内討議  を私どもも行って意見を出したいと思いますが、このような審議会の場で  も論議を少しさせていただければありがたいと思っています。 ○菅野会長   一通りご意見もいただきましたが、ご質問もありましたので、事務局か  らお答えいただくようなことがあれば、お答えいただきたいと思います。 ○金子政策統括官   全体的なことを所管しております政策統括官の金子でございます。直接  お答えになるかどうかわかりませんが、何点かコメントさせていただけた  らと思います。順番が逆になりますが、いま森嶋委員からもございました  が、「ワーク・ライフ・バランスの憲章」の問題です。これは先ほど私ど  も事務方からも説明させていただきましたが、この「憲章と行動指針」、  総理のご指示に基づいて今回の骨太方針にも盛り込まれたということで、  大変重要な課題であろうと考えております。   これに先立ちまして、「子どもと家族の重点戦略会議」においても検討  してきた経緯もございます。ただ、具体的な内容についてはこれからの議  論ということで、必ずしも判然としていないわけですが、いずれにしても  政府の横断的な政策方針ということになりますので、必ずしも当省のみで  検討できる、あるいは検討すべきものでもないのかなと考えております。  ただ、その上で「ワーク・ライフ・バランス」ということになりますと、  やはり政労使の取組みというのが大事だろうと思いますので、本審議会と  の関係も含めて、どのような場で検討を行うことが適当であるのか、また、  中身をどうやって詰めていくのか、関係府省とも調整をして、実効ある指  針に仕上げていきたいと考えております。当然のことですが、労働関係制  度の改廃等につながってくるということが万一あるということであれば、  労働政策審議会ではもちろんご議論いただくことになると思いますし、そ  れ以外のケースにつきましても、当審議会との関係をきちんと整理した上  で対応していきたいと思っております。   「成長力底上げ円卓会議」の関係は、これは先ほど小出委員のほうから  もお話がありましたが、いま政府のほうで、成長力底上げ戦略ということ  で円卓会議というのを組織させていただいております。労働側からも3人  の委員の方に入っていただいて、3つの型について検討している。これが  第2回目まで開かれておりまして、地方においても、都道府県ごとに円卓  会議を開催するということで、こちらもいま順次開催しております。最低  賃金の問題につきましては、どういう考え方でやっていくのか、いろいろ  な意見があるだろうと思いますが、その辺も含めていま議論が行われてい  るところですので、我々としても円卓会議の円滑な運営に協力していくと  いう立場でいま取り組んでいるところです。総論的なことでは以上です。 ○奥田職業能力開発局長   いまの骨太の中の成長力底上げ戦略に関して「ジョブ・カード制度」に  つきましては、厚生労働省としては私ども職業能力開発局が担当しており  ますのでお答えさせていただきます。   この「ジョブ・カード制度」につきましては、具体的な内容を詰めてい  くということで現在、「ジョブ・カード構想委員会」というのが内閣府の  中に設置されておりまして、これは内閣府が事務局となってそこに私ども  と文科省が参加しているという構成になっております。この第1回が5月23  日、第2回が6月12日に開催されたところで、今後、それぞれ委員の方々か  ら意見をいただいておりますので、それを踏まえながら具体化していくと  いうことになっております。基本的にはいま委員から出ましたような、シ  ステムそのものが産業界・企業に受け入れられるということが最も重要な  ことですので、そういう視点を大事にしながら、また、既存の政策につい  ても、できるだけこの制度の中にうまく溶かし込んでいくという形で、有  効活用したいと思っております。そういう政策資源の有効活用ということ  も含めて、この制度が実効あるものになるように努めていきたいと思って  いるところでございます。 ○高橋職業安定局長   ハローワークの市場化テストの問題について、骨太の原案の中の40頁に  具体的に、東京23区内の2カ所ということで盛り込まれているわけです。  この問題はこの場におきましても1回、経済財政諮問会議の民間議員から  のご提案があった際に、考え方をご説明してきたことがあろうかと思いま  すが、5月9日の経済財政諮問会議の際に、厚生労働大臣からこの問題につ  いて一定の提案をさせていただいた、その結果がこの骨太の原案の中に盛  り込まれているわけです。非常に簡単な表現になっていますので、より詳  細な、私どもの考え方を踏まえた提案の内容というところまで書いてあり  ませんが、私どもが公共サービスの提供主体としてどういう、官がいいの  か民がいいのかという、その枠組の中での市場化テストというものですが、  ただ、ハローワークについては、私どもが重ねて主張してきましたのは、  ハローワークというのは国民の雇用に関するセーフティネットであるとい  う立場から考えると、当然考えていかなければならないいくつかの視点が  ある、その1つは、この業務運営が公平公正でなければならないこと。   もう1つは、ハローワークは職業紹介のみならず雇用保険の運用と、さ  まざまな観点からの事業主指導、こういったものを職業紹介とともに一体  的に運営している機関であること。3点目として、骨太方針にもあり現在、  政府として大きな課題にしている再チャレンジ支援あるいは成長力底上げ  戦略という中で、特に生活保護受給者あるいは障害者等々、非常に就職困  難な事情を抱えている方の就職支援に当たりましては、福祉関係機関等々  の行政機関と一体となって、この支援をしていかなければならないこと。  こういう3点を十分踏まえていく必要があると同時に、いまご指摘もあり  ましたILO88号条約との整合性もしっかり確保していかなければならない  のではないか。   こういう点を踏まえて具体的な提案としましては、ハローワークの職業  紹介部門について、官と民との窓口を併設する形で民間の知恵、民間の創  意工夫もこの公共サービスたるハローワークの職業紹介に生かしていこう  と、こういう中身でご提案させていただいたものです。そうした中でこの  公平公正さを確保していく仕掛けを、今後どうしていくかがこれからの制  度設計を考える上で、非常に大きなポイントとしてあろうかと思います。   もう1つは、官と民が1つのハローワークの中に併設をして業務を行って  いく。それを考える上で、官と民とがイコールフッティングの競走をして  いく条件を確保していく必要がある。このことについて、具体的に業務を  行っていく上での求人情報をはじめとしたさまざまな情報の提供、民にも  提供をしていくわけですが、その情報の取扱いについて、受託をするその  職業紹介業務以外の業務に、不正利用しないというようなことを担保する  ための仕掛けをどうしていくか。こういう2点がこれからの制度設計を考  える上で非常に大きなポイントとしてあろうかと思っております。   いずれにしてもこれからいま申し上げましたように、官と民とが1つの  ハローワークの中に併設する形で、この市場化テストをやっていく。その  中でいま申し上げたような点をよく担保する形で、制度設計をこれから検  討していくというものですので、その点をひとつご理解賜りたいと思いま  す。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長   パートタイム労働法の関係についてご要望をいただきました。この法案、  5月末に成立させていただきました。どうもありがとうございました。指  針につきましては、6月28日以降の雇用均等分科会においてご議論を始め  ていただく予定にしております。その中ではいまご指摘いただきました点  も含めまして国会の附帯決議、あるいは国会審議の過程において指摘され  た事項について、指針上必要な措置を講ずることも含めて十分ご検討をお  願いしたいと考えております。   通達につきましてもこの雇用均等分科会や国会のご審議等を踏まえて、  適切に対応していきたいと考えております。 ○菅野会長   ほかによろしいですか。 ○奥田職業能力開発局長   補足をさせていただきます。「ジョブ・カード」に関してですが、私ど  もと、文科省もその構想委員会に一緒に入っておりますので、2つのもの  が別々にということはなく、当然1つの制度の中に両省のものが入ってく  るということです。そこだけ補足させていただきます。 ○山内委員   ワーク・ライフ・バランスの実現、子育て支援についてちょっとお話を  しておきたいと思います。   このテーマにつきまして、企業にとっても大きな課題であると認識して  おります。個々の企業や行政の取組み、これは当然なのですが、1人1人の  国民の意識、その意識の改革というのも必要かなと思っています。また、  大企業と中小企業、労働組合がある企業とない企業、このあたりも進め方  については、非常に温度差があると思いますので、配慮をもって政策を考  えていくべきだと思います。また、それに対する財源は、報告されていま  すが、さらに精査して、それでも必要な場合には、国民全体で支えていく  という方向性も明確にしておく必要があるかなとは思います。以上です。 ○紀陸委員   いまパートの処遇改善の話が出ました。これから細部を詰めていくのだ  と思うのですが、大きな4分類が非常に抽象的であって、それを本当の意  味で均等、均衡の処遇改善を、企業の人事労務管理上どのように実現して  いくか。これは賃金制度の運用と絡む問題ですから、非常に難しい問題が  たくさんあると思います。そういう意味で、あまり拙速に論議をしてもら  っては困るなという感じを持っておりまして、この辺は少しきちんと応対  をお願いしたいと考えております。以上です。 ○菅野会長   ほかにありますか。公益代表委員の方々もどうぞ。 ○加藤(裕)委員   今日ご説明になったこと以外についてもちょっと触れるかもしれないの  ですが、この審議会のあり方も含めましてね。それから先ほどのタスクフ  ォースに対する、私どもからの考え方も述べさせていただいたのですが、  冒頭の菅野会長のごあいさつにもありましたように、私どもとしても、い  わゆる人口減少時代に入ったこの日本、そして市場改革がいろいろ行われ  ている中で、労働政策がどのように展開されていくのかということは、極  めて重要な問題だろうと思いますし、特にこのタスクフォースの問題をこ  の場で、正式なものとして取り上げるかどうかは別として、いまの国全体  の風潮として、わが国がどうやってこの競争力を維持しているのか、その  重要なポイントがやはり人にあるというところが、あるいは労働の尊厳の  尊重と言いますか、そういうものが踏まえられていないような見解があち  こちで述べられたり、この規制改革会議のタスクフォースの見解もまさに  そうだと思うのですが、そういう中で、JILPTの中で研究会が発足した。   これは大変期待もしているところですし、是非よろしくお願いしたいの  ですが、できればこの件なども、事前に少し連合サイドにもご相談がいた  だけるとよかったかなと思わないでもない。メンバーにはなっていません  が、いろいろな形で意見も申し上げさせていただきたいと思います。   マイクを取らせていただいたついでに、今日はご説明がなかった話なの  ですが、今、労働市場の中で1つ重要なテーマ、今後も重要なテーマにな  ると思うのですが、外国人研修、実習制度の改革ということが大きな関心  事項になっています。つい先日も長勢法務大臣の私案という形ですが、か  なり極端に外国人に市場を開放しよう。もちろん期間限定。数も限定とい  うことでしょうが、これは従来の外国人研修制度からは大きく踏み出した、  あるいは外国人の、我々が言っている高度技能者ではない単純な労働者へ  の道を開いていくような、そういうものだと私たちは思っているわけです。  先ほど申し上げた、日本の競争力の源泉は人だということも含めて、もの  づくり分野でなかなか人が採れない、小企業からは、外国人にも頼らざる  を得ないという声が出ていることは承知しております。かと言って現在の、  不法就労がまかり通っている、あるいは実際に働いている外国人の方々の  権利や、あるいは社会保障の分野でも極めて問題がある中で、このように  ある意味なしくずし的に広がろうとしていることについては、私たちは大  変な危機感を持っております。   経済産業省も研究会で従来の制度を少し、期間の面でも再入国の面でも  広げようとされているようですが、この点についても私どもはやはり危機  感を持っております。厚労省の中でもこれの改善についていろいろ検討が  なされているようですが、是非この雇用市場のあり方ということ、極めて  関わりの大きいことですし、まさに、若者雇用ですとかあるいは高齢者、  あるいはこれから市場にまだまだ増えてくる女性という観点もすべて含め  て、そのときに、従来の日本人が就きたがらない仕事を、外国人が働く職  場ということで、二分化が起こってしまうという懸念もあるわけです。ど  んどん労働市場を外国人に広げていけばですね、そういう意味で、これも  非常に重要な時期にさしかかっていると思いますから、是非その管轄担当  省庁として、厚生労働省としてこの制度の見直しについては、そういった  点に十分に配慮したリーダーシップを取っていただきたいなと思いますの  で、よろしくお願いいたします。以上です。 ○菅野会長   ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは、時間もやや早いのですが、今日予定の議題、一通りのご審議  をいただきましたので、この辺で閉会としたいと思います。私自身は三者  構成のこの審議会で労働政策を議論していく、労使が現場を踏まえていろ  いろな意見を闘わせていただく。それで政策の方向、あるいは内容につい  てコンセンサスをつくっていくというのは、大変大事な議論のやり方だと  思っておりますので今後ともよろしくお願いしたいと思います。   本日の会議に関する議事録については、当審議会の運営規程第6条によ  り、会長のほか2人の委員に署名をいただくことになっています。つきま  しては労働者代表委員の岡部(謙)委員、使用者代表委員の井手委員に署  名人になっていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。本  日の会議は以上で終了といたします。どうもありがとうございました。 照会先 政策統括官付労働政策担当参事官室 総務係 内線7717