07/06/11 地域医療支援中央会議 平成19年度第2回議事録         平成19年度 第2回地域医療支援中央会議 日時 平成19年6月11日(月) 18:00〜 場所 厚生労働省省議室(合同庁舎5号館9階) ○指導課長(佐藤)  本日はお忙しい中ご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。会議の開 催に当たりまして、柳澤厚生労働大臣からご挨拶をお願いいたします。 ○柳澤厚生労働大臣  皆様、今日は第2回の会合に、このように勢揃いをされる形でお集まりをいただき まして、まずもってご参集に対して厚く御礼を申し上げたいと思います。  まず、先般私も諸先生のご議論をここで拝聴させていただきましたけれども、医師 確保の問題というのは、非常にいま重要な問題となっております。それは病院のお医 者さんの勤務環境が厳しいということに加えて、地域におけるお医者さんの不足の問 題というものが、非常に重要な課題となっておりまして、こういう状況を受けまして、 実は去る5月31日に政府与党において、緊急医師確保対策というものの取りまとめ が行われたところでございます。あるいは、先生方のうちには、そのことについても ご注目というか、そういうことにご関心を払っていただいた方もいらっしゃるかと思 います。  この対策におきましては、いろいろいま先生方の中にもご議論をいただいた施策が、 おそらく網羅的に盛り込まれているというふうに私は理解をいたしておりますけれ ども、中でも、先ほど申したような、医師不足地域に対する緊急臨時的なお医者様の 派遣ということが、非常に火急を要する課題ということで取り上げられているところ でございます。  この取り上げが行われたということが、非常に地域の、言わば、よくぞやってくれ たと、こういうようなことで、評価というか期待につながっているというふうに受け 止めておりますけれども、したがいまして、厚生労働省といたしましては、この課題 のみならず他もそうですけれども、特にこの課題について、関係省庁と一体となって、 速やかにこれを具体化して、実効ある取組を行っていく必要があると、こういう状況 にございます。  そういうようなことで、本日はこの緊急臨時的医師派遣について、国レベルにおき ますご議論をいただきたいということが、いちばんお願いをしたいことでございます けれども、同時に、実は率直に申して、この医師派遣の体制を具体的に取るためには、 さんざん諸先生のそれぞれのところでも、ご自分たち自身の中で、医師不足が起こっ て大変なのだということを、かねてからお伺いをしている中で、こういうことをお願 いするというのは、誠に心苦しい限りでございますけれども、目下、本当に医師不足 が起こっている地域というものが存在して、これはもう本当に地域住民の医療サービ スの確保というのが、待ったなしになっているということの状況にございます。言わ ば、医師派遣を訴える声が深刻になっているということでございまして、そのことを ひとつご理解いただきまして、本日、私からいちばん申し上げたいポイントというの は、この事業について、それぞれのお立場で、本当に恐縮ですが、できるだけのご協 力をお願い申し上げたいということでございます。  特に本会議の委員をお願いしております日本赤十字社、また社会福祉法人恩賜財団 済生会、それから独立行政法人国立病院機構が、全国的に医療を提供している組織で あるということを踏まえまして、是非ご協力をいただきたい。また、本日またオブザ ーバーとしてご出席を賜りましたVHJ機構、それから総合母子保健センター愛育病院 の諸先生のところにつきましては、多く研修医が、後期の研修のお医者さんが集まる 病院であるということを承知をいたしておりますので、本当に申しわけないお願いで ございますけれども、何卒この緊急医師派遣の事業に対しまして、ご協力をお願い申 し上げる次第でございます。  本日は、委員の皆様から忌憚のないご意見をいただきまして、その結果を踏まえて 施策に反映するということで、我々も最大限努力をしてまいりたいと、こう考えてお りますが、これはタイミング的に言って、ありのままに申しまして、政府与党の対策 として出てまいりましたので、これは本当に、ある意味で政治的な動きであるという ことは率直に言って私もそういうことを認めるわけでございますけれども、しかし、 そればかりではなくて、本当に地域医療を確保するということが、本当のそういった 政治的ないろいろなことを離れても、もう待ったなしになっているということを、先 ほど来申し上げているとおりでございますので、ひとつ日本の医療全体の大きな問題 として是非お受け止めいただきまして、先ほど申し上げましたように、今回のこの事 業にご協力を賜りますようにお願い申し上げたいということでございます。  まだなお、いろいろと申し上げたいことはありますが、お願いをするということで ございますので、あまり深入りしないところで、むしろ控えたいと思いますので、私 の心情もお察しいただいて、くれぐれもよろしくお願い申し上げます。ありがとうご ざいました。 ○指導課長  柳澤厚生労働大臣は、この後公務のためにご退席でございますので、ご了承をお願 いします。 ○柳澤厚生労働大臣  私、さんざん頼むだけ頼んで、すぐにどこかへ行ってしまったということでなく、 是非よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。 ○指導課長  ただいまから、平成19年度第2回地域医療支援中央会議を開催させていただきま す。私は事務局を担当しております、指導課課長の佐藤と申します、よろしくお願い いたします。  初めに、委員の交代がございましたので、ご紹介させていただきます。社会福祉法 人恩賜財団済生会常任理事の松原了委員ですが、幹事会の委員になっていただきまし て、新たに済生会病院長会の副会長で、済生会福岡総合病院院長の岡留健一郎委員に ご就任いただきました。  この会議に先立って幹事会を開催したわけですが、ここで幹事会の委員をご紹介し ておきます。中央会議と兼ねてご出席いただいている委員は割愛させていただきます。 まず、先ほどもお話しましたが、社会福祉法人恩賜財団済生会常任理事の松原了委員 です。独立行政法人国立病院機構理事の鈴木英明委員でございます。先ほど開催され た幹事会の中で、会長にご就任いただいた千葉県病院局長病院事業管理者の近藤俊之 委員です。先ほど大臣のご挨拶にもございましたが、緊急臨時的医師派遣ということ で、趣旨にご参同いただき、オブザーバーとしてご出席いただいている3人の方をご 紹介いたします。まず、社団法人地域医療振興協会の杉田義博理事です。特定非営利 活動法人VHJ機構の曽我絋一専務理事でございます。総合母子保健センター愛育病院 中林正雄院長でございます。先ほどの幹事会にもオブザーバーとしてご出席いただき ましたが、全国衛生部長会の五十里明会長は、今日は都合により欠席ということで、 代理の全国衛生部長会副会長の坂元昇川崎市健康福祉局医務監でございます。  それでは、会議の開催に当たりまして事務局から資料の確認をいたします。 ○医療計画推進指導官(伊東)  本日ご用意した資料の構成ですが、資料1が「政府与党の緊急医師確保対策につい て」、資料2が「緊急臨時的医師派遣システム(仮称)」について、資料2が「地域医 療アドバイザー候補者」についてとなっています。また、参考資料として、中央会議 幹事会及びオブザーバー参加団体の概要を添付しています。資料の欠落等があればお 申し出ください。座長、よろしくお願いいたします。 ○久道座長  議題1「『緊急医師確保対策について』にかかる緊急臨時的医師派遣システム(仮称) について」に入ります。先ほど大臣の挨拶にもあったように、もともと本中央会議の 役割は、都道府県が取り組む医師確保等の対策を支援することであり、地域医療の確 保に関する好事例、改善策を提示して、広域的な視点で助言を行っていだくことにし ておりました。  しかし、全国各地の医師不足を訴える声は日増しに大きくなっていて、直接国に対 して医師派遣を訴える声を踏まえ、まずは政府与党の取りまとめた「緊急医師確保対 策について」を簡単に伺いたいと思います。事務局からお願いします。 ○総務課長  資料1に沿って、ご紹介します。2頁です。1から6まで6項目ありまして、1が緊 急に体制をつくろうというもので、この中央会議でこれから議題としていただくもの です。2から5までが、中長期的に対応し、効果を表わしていこうというものです。6 が長期的に時間をかけてやっていくものです。  1の緊急臨時医師派遣システムですが、ここに書いてあるように、都道府県からの 求めに応じ、国レベルで緊急臨時的な医師派遣を行う対象を整備するということです。  2から5ですが、これから予算を確保していくとか、検討会を行っていく形で対策 を講じ、効果を表わしていくというものです。  2が病院勤務医の過重労働を解消するための勤務環境の整備ということで、交代勤 務制など、そういったものについて今後どうしていくか、あるいは医師、看護師等の 業務分担を見直していく必要があるとか、助産師や医療補助者の活用を図っていく必 要があるということです。また、深刻な医師不足の現状にある地域医療を支える病院 への支援を充実するといったこともあります。さらに、一次救急を含めて地域医療を 担う総合医の在り方について検討するといったことが盛り込まれています。  3点目が、女性医師等の働きやすい職場環境の整備です。出産、育児による女性医 師の離職を防止、復職を促すためということで、院内保育所の整備など、そういった ものを図るとしています。それから、女性医師の復職のための研修を実施する病院へ の支援をしていくこと。日本医師会でお願いしている女性医師バンク、そういった体 制をさらに充実していくことが盛り込まれています。  4点目は、臨床研修医の都市への集中の是正のための臨床研修病院の定員の見直し 等です。臨床研修医制度全体の在り方についての見直しもありますが、定員の見直し に取り組んで、都市部の病院に研修医が集中することを是正し、各地に研修医が分散 するような体制をとっていこうということが盛り込まれています。また、臨床研修後 の専門医に向けた後期の研修についても、地域医療への従事とか、医師派遣の仕組み に関連づけて、後期の研修の在り方についても検討していくことが盛り込まれていま す。  5は医療リスクに対する支援体制の整備で、昨今医療リスク、リスクの高い診療科 が敬遠されがちといったことが言われていて、すでに産科補償制度については、実現 に向けて具体的な設計に入っているわけですが、それについての早期実現。それから、 診療行為に係る死因究明制度、「医療事故調査会」と書いてありますが、航空鉄道事 故調査委員会の医療版といった形で、真相を究明し、何が起こったのかを患者にわか りやすくする。それによって、訴訟、刑事事件にならないようにしていくといった趣 旨で、そういった究明制度をつくっていくことが課題であるということです。そうい ったことについても取り組むことが盛り込まれています。  6は長期的な課題で「医師の養成の推進」と書いています。一言で申し上げれば、 医学部の定員増を一定の場合に容認していこうということです。奨学金を活用して都 道府県が定める地域や診療科に確実に医師が配置できるようにするために臨時緊急 的な増加を行うもので、一言で言うと、自治医大を各県の医大で取り組んでいただこ うということで、県内自治医大というか、各県自治医大といったイメージでやってい ただきたい。やっていただける場合には、定員増をしていこうといった趣旨のもので す。以上です。 ○久道座長  引き続いて、資料2「緊急臨時的医師派遣システム(仮称)」についての説明をお願 いします。 ○医療計画推進指導官  資料2の4頁目です。この図の左側のほうにある都道府県です。都道府県の求めに 応じて、この緊急臨時的医師を派遣するということですが、まず都道府県において医 師不足が深刻で、医療が確保できない地域における病院で、医師確保が必要、医師を 派遣していただきたいというものが、都道府県の医療対策協議会に上がりましたら、 そこについてご検討いただき、あるいは都道府県でそれらの状況の調査、把握をして いただいて、都道府県から国に、どうしても緊急臨時的に医師を派遣していだきたい という依頼をするかどうかを検討していただいて、こちらのほうで国に医師派遣要請 をしていただく形になります。  それから、都道府県が国に医師派遣を要請することになると、一方で、厚生労働省 あるいは地域医療支援中央会議で、この派遣の可否、本当に派遣をしなければならな いかどうか、あるいは多数寄せられた場合に、その緊急度、優先順位の検討をしてい ただきたいと思っています。これについては、都道府県からの情報に加え、私どもも 状況把握をしなければならないと考えています。  他方で、下のほうに「ドクタープール」と書いています。まずは全国規模の病院グ ループ等において、グループ内で派遣者の検討をしていただければと思っています。 ここで、実際に派遣する方々、派遣する医師というのは、勤務医であり、あるいは後 期研修医といった場合もあると思いますが、あるAさんという方がその期間ずっと行 くということもあれば、編成チームを組んで派遣する場合もあろうかと思っています。  他方、退職医師などについては、公募をして、即戦力となる場合もあると思います、 あるいは研修が必要な方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方には研修をや ることも必要かと思っています。このようにしてドクタープールといったものを構築 して、地域医療支援中央会議で、その派遣の可否、緊急度の優先順位を検討していた だいた結果、それを調整しながら実際に医師派遣を行うといったイメージです。  なお、この退職医師の公募研修事業、あるいはドクタープール、派遣医師の登録、 実際の事務手続については、委託を予定したいと考えています。  5頁です。4頁で、医師不足が深刻で医療が確保できない地域で、医師派遣を要請 したいといった場合の病院の要件はどういうものかをまとめています。派遣を受け入 れる医療機関の要件として、原則としてですが、下記の事項を満たすことが必要と考 えています。  まず第1点が、二次医療圏内で中核的な病院であること。すなわち救急医療やいろ いろなものがあると思いますが、ある意味で公的な役割を担っている病院であること です。  2点目として、過去6カ月以内に、医師が減少し、そのことによって休診が余儀な くされた診療科がある、あるいは向こう6カ月以内に、医師数が減少することが確実 視されていて、休診を余儀なくされる診療科があるといった場合です。  3点目として、管理者・開設者ともに、相当の努力を行った上で、それでも医師確 保ができない事実があることです。  4点目として、緊急臨時的医師派遣の終了後に医師確保に関するアクションプラン を作成していただいてはどうかと考えています。  そのほかに地域医療の要件として、例えば同じ二次医療圏内に、「休診を余儀なく された診療科」と書いていますが、その当該医療を代替する医療機関がないといった こと。あるいは都道府県の役割について、すなわち医療対策協議会が、本当にこの地 域が医師不足地域で、医療の確保ができずに国に派遣要請しなければいけないという ものを決めていただくことがあろうかと思いますが、こういったものがあると認識し ています。  これらの手続については、地域医療支援中央会議・幹事会において、今後確認して いくことになろうかと思っていますが、緊急臨時的医師派遣システムは、このように して稼働させてはいかがかという提案です。以上です。 ○久道座長  ただいま資料1と資料2の説明を事務局からいただきました。資料1は政府与党の 緊急にまとめた医師確保対策ということで、1から6までありますが、先ほどの大臣 の話にありますように、政治日程との関連で、極めて政治的な課題という受け止め方 で本日急にお集まりいただいたという話だと思います。したがって、いろいろ課題が ありますが、今日は確保対策の1の「緊急的臨時的な医師確保」ということで、ご議 論をいただきたいと思います。  資料2で説明いただいた、緊急臨時的医師派遣システムの説明についてのご質問、 ご意見をいただければと思います。 ○小山田委員  政府与党から出された緊急医師確保対策ですが、私どもだけではなく、この対策に ついてはいままで要望し、主張してきたものが、ほとんど網羅されています。その点 では大変感謝しておりますが、最も大事なことが抜けています。これをやることによ って、病院の経営が破綻して病院が廃院においこまれないかという不安が全国にあり ます。  それで、項7に、これらを施行するに当たって、適正な財政面での確保を約束する、 あるいは十分に用意するということがなければ、駄目だと思います。それをお願いし たいです。  どのぐらいのお金が必要かというのを試算して、ここに持って来ました。詳しいこ とはやめますが、国から出たデータでいま勤務医の時間外勤務時間が1か月93.2時 間で、これを40時間にすることはとてもできませんが、労災で過労死と判定する大 体の目安とされているのが、月に80時間です。それを基準にすると、13.2時間多い。 これを医師で埋めるとすると、9,000人の医師が必要です。それに対する給料は年間 1,170億円になります。  しかし、いますぐにこれだけの卒業生が出てくるわけではないです。それで、まず 1,170億円を基礎に置きながら、この金を準備して医師の勤務体制をもう少し緩やか にする、例えば外来を制限しなければならない救急病院があるかもしれない。そうす ると、そうしたことに対する収入減を補わなければ、24時間以上働いて、また手術を しなければならないという状況を解消することは出来ない。  それから、医師派遣をする病院に対する支援も必要です。そういう点から、これは 基礎的にこのぐらいの金が必要だということです。これは診療報酬からやるのが妥当 だと思いますが、ここで問題なのは全体額として決められた診療報酬の枠の中で 1,100億円を何とかやりくりして、そちらを減らして、こちらに持ってくるのでは駄 目で、そうではなく、緊急医師対策費としてこれだけの金は用意するということを明 確にしなければ、紙に書いた項目だけになってしまって、何ら実行性もないし、医師 不足も解消しない。私の提示した金額の妥当性については、もっと吟味が必要と思い ますが、これを実施するに当たっては病院経営が破綻しないような手立てはするとい うことを明記してもらわないと、納得できないと思います。 ○久道座長  小山田委員からの強い要望ということで、緊急医師対策費を確保せよということを 加えるべく、要望ということにさせていただきます。 ○内田委員  いまの小山田委員のお話は私も賛成です。  これは絶対に財政中立ではなくて、新たな財源から手当をしてもらいたいというの が、非常に大きなポイントだと思います。 ○小山田委員  項目6について医師を要請するに当たって、特に地方の大学で独法化によって教育 人材が減らされ、経営の合理化が進められている中で入学定員を10名増やしても既 設の状況では質の確保をしながら医師を養成するのは極めて難しいのではないかと 思います。ここにも国の財政的支援の保証が約束されなければ良い医師の養成は出来 ません。このことを是非認識していただきたいと思います。 ○久道座長  非常に大事なことを言っていただいているのですが、初めに申しましたように、本 日の会議は政府与党がまとめた対策の中で、1の「緊急臨時的医師派遣システム」を 今日の議論にしてほしいということです。時間があれば、いまお話になったようなこ とは非常に重要なことなので、議論しなければいけないのですが、今日は政治日程、 参議院選その他もあるのだろうと思いますが、そういうことも含めて、この中央会議 で出せる考え方をまとめたいというのが、事務局の意向ですし、また厚生労働大臣か らの強い要望でもあるということですので、議論を当初の目的である緊急医師派遣シ ステムの問題についてご議論いただきたいと思います。 ○山田委員  日赤の山田です。先ほどの大臣の挨拶の中で日赤の名前が出たので、このシステム に乗って医師を派遣することを日赤に期待されていると考えたわけですが、なかなか 難しい問題です。  この4月に緊急的に、全国の92病院の赤十字病院に医師がどのくらい足りないか を調査して、大雑把にまとめた数字があるのです。昨年も同じ調査をして、62病院で 医師不足で、今年は76病院が医師不足です。そのトータルの数は、昨年が437名だ ったのが今年は623名ということで、去年よりも増えてきています。これは病院サイ ドの自主申告ということで、必ずしもこれがアブソルートに足りない数というわけで はりあませんが、それだけ現実的に医師不足が進行しているということです。また、 この4月から閉鎖をしなければならない診療科を抱えている病院が20病院、12種目 の診療科で、これも大変厳しいということです。  本日示していただいた4頁の図の中で、私どもも、いままでこれと同じような形で グループ内で努力をしてきていますが、医師不足の病院に対して平成13年から、複 数の病院に対して、10病院以上から援助を始めているわけですが、この間新聞に出て いた記事を見たら、国立病院機構でも医師の説得が大変で、なかなか長く続かない。 大学から派遣をされてきているということとか、他病院へ回す余裕があるなら大学へ 引き上げるとか、地方病院に行くために勤務しているのではないとか、いろいろと医 師が抵抗して、なかなかこれを続けることは難しい状況になっています。  また、全国規模の病院グループのドクタープールということで、我々も医師派遣拠 点病院というものをつくって、医師を余分に獲得して不足病院へ派遣しようという形 で、この2年間やってきましたが、やっと2名を確保できて2病院に派遣しているの が精一杯です。いくつかの構想がありますが、なかなか実現できない状況です。  退職医師にしても、我々も定年退職するドクターに、直接私の名前で呼び掛けて、 やっと3名が何とか将来的に応じてくれそうな形になっています。  先ほどの資料の5頁の派遣を受ける医療機関等の要件についても、医師数が減少し て休診を余儀なくされた診療科があることを要件にしますと、我々としても20病院 以上に派遣しなければいけなくなりまして、これはなかなかきつい努力をしなければ ならないです。  いまお話しましたように、グループ内での派遣が精一杯で、なかなか赤十字以外の 病院へ派遣することは難しいということですが、本日の1番目の緊急臨時的医師派遣 システムの構築ということについての趣旨は、これは賛同して了解いたしますので、 我々としてはグループ内へ派遣するのが精一杯だと考えていますが、そういう場合に もこのシステムに乗る形で、この委員会に相談を掛けながら今後進めていこうかと考 えています。病院に頼むときには、「一体どのぐらいの期間出したらいいのだ」とい うことをいつも言われるわけです。これが3カ月なのか、6カ月なのか、永遠に続く のかということで、その辺をきちんと決めていかないと、これは難しいと思います。  それから、いま赤十字の中の医師派遣拠点病院は1カ所ですが、できればこの数を 増やしたいとは考えていますが、なかなか外から確保することも難しい状況ですので、 努力はしたいと思いますが実現できるかどうかは100%保証はできませんが、何とか できるところは協力させていただきたいと思っています。 ○久道座長  関連して、大臣の発言で2番目に名前の出た済生会の岡留委員からお願いします。 ○岡留委員  実は昨年6月から1年間医師を派遣していて、九州のある地方の病院だったのです が、派遣されるドクターは経済的なことはあまり強く言わないのです。彼らのいちば んネックになるのは、キャリアパスが空白になるのです。専門医制度の延長線上にあ りますから、後期研修医制度の中で、そこのキャリアが欠落することを彼らは非常に 嫌がるのです。  ですから、私はこういった問題というのは、もちろん小山田委員のおっしゃる財政 的な支援ももちろん大事だと思うのですが、専門医制度を含めた医師の教育研修の延 長線上の一環として捉えていかないと、絶対に若いドクターは行こうというインセン ティブが働きません。  12、13名をローテーションシステムで1年間回したのですが、行ってよかったか聞 いたら、その期間は非常に無駄だと思ったとはっきり言いました。確かに派遣した病 院は収支は非常によくなったのですが、派遣した連中は、Not significantというか、 行って何だったのだろうと、ちょっと虚脱状態になって帰ってくるのです。1カ月あ るいは1、2週間のローテーションで行くのですが。こういったところを、専門医制 度の中の組込みと整合性をとりながら、例えば医師派遣のときに、行ったら、専門医 制度のプライオリティを与えると。何か優遇措置がないと彼らは絶対に動かないと私 は確信しました。  今日ここに来て言いたかったのは、まさにその1点だけなのですが、彼らは金は要 らないのです。いまの若い連中は金はそんなに求めないのです。むしろ、いい先生に 付きたい、いい指導医の下で研修したい、あるいは認定専門医制度のキャリアが空白 にならないようにしてくれというようなことを、非常に強く言っていた感じがしまし た。 ○久道座長  とは言いながら、病院としてはどうしようかという辺りはいかがでしょうか。 ○岡留委員  かと言って、有効な方法はないのですが、私がいつも若手に言うのは、医者は noblesse obligeだ、高貴な職業に就くのはdutyがあるのだ、そういうところを、い まはしょうがないから堪えてやってくれと言わざるを得ないということだと思いま す。 ○久道座長  趣旨に関してはいかがですか。 ○岡留委員  もちろん私らも、いま山田委員がおっしゃったように、済生会は公的な医療機関で すので、国がこのようなことをすることについて協力するのは吝かではないです。ス タンスとしてはそう思っております。 ○久道座長  3番目に名前の出た矢崎委員はいかがでしょうか。 ○矢崎委員  いまお二方の委員がおっしゃるとおりで、国立病院機構は146の病院で、いちばん 大きな医療のネットワークですが、その3分の2の91病院はもともと医師確保の困 難であった旧療養所なのです。それによって、国時代の国立病院はある程度体力があ ったのですが、独法化によって、そういう意味では薄まってしまったところがありま す。  ですから、例えば100ベッド当たりの医師の数というのは、国立病院機構は10名 ちょっとで、他の公的医療法人は100ベッドに15人とか17人おられます。そういう 意味でものすごく少ないのです。それで、その3分の2の病院が医師不足で、特に医 療法で定員に満たないものが49病院もあるわけです。  我々がやっていることは、同じ中で、そういう施設を互助努力で何とかやろうとい うシステムをつくったのですが、いまお話のようないろいろな条件で、なかなかうま くいきません。私が申し上げたいのは、私どもとしては、こういう状況の中でお互い に必死に助け合おうということで、踏み出したのです。ですから、私としては、是非 自治体病院も地域の中で医療資源がどうなっているのか、それは自分たちの仲間だけ ではなくて、今日は本当に心強いVHJ機構の方もいらっしゃるので、そういうリソー スを正確につかんで、それで状況を正確に把握する。  いま要件がありますが、この要件を基にして、少し正確な状況を伝えていただかな いと私どもの態度を決めるのも難しいし、この中央委員会でも幹事会でも、検討する に当たっては、本当に医療のリソースがどうなっているかをきっちりと検討していた だく必要があると思います。  私は何も低いもので我慢しろということではないので、いま緊急の課題としては、 地域医療が崩壊しないための正確な状況を知りたいので、何かそういう仕組みが必要 ではないかと思います。是非自治体病院でも、自己努力、互助努力と言いますか、そ ういうものを検討していただいて。当然検討しておられると思いますが、システムと してどういうことを考えておられるのかを、私どもとしてはお聞きしたいというとこ ろがあります。 ○梶井委員  この医師確保対策については、多くの病院が望んでおられると思います。一方、い ま諸委員の方々がおっしゃったように、派遣側も努力はしておられます。そういう状 況下で、この確保対策をどのように進めていくかを考えるときに、重要なことがあり ます。  例えば、ここの案に示されている派遣を受ける医療機関の要件ですが、すでに満た している病院がたくさんあります。その中でどれだけのプール枠をつくっていくか、 その辺りも具体的なイメージを持ちながら議論していく必要があるのではないかと 思います。  一方で、従来のいまの派遣体制の中で、このようなプール枠をつくるのか、あるい はへき地医療支援機構というものがあります。ここは実際はなかなかプールができて いないのです。例えば国が予算的な措置を講じて、各県にプール枠をもう少しつくっ ていただくとか、そういうことの可能性についてはいかがでしょうか。 ○久道座長  事務局から何かありますか、あるいは具体的な資料がどうなっているかの状況につ いて。 ○指導課長  前回お触れいただいたへき地医療支援機構の話ですが、今日はデータを持ってきて おりませんが、これは各県、基本的にはよほどのことがない限りは設置することにな っておりますので、次回は必ずデータをお持ちしたいと思います。 ○久道座長  それと、いま梶井委員から出た、派遣を受ける医療機関の要件を満たす病院はすで にたくさんある。しかしどのくらいかという数は把握されていないわけですね。 ○梶井委員  この議論を進めていくときに、これをスタートしました、要件を満たしているとこ ろはたくさんありますと、その中でどのような順位づけをするかとか、かなりそこで 混乱が起こるのではないかと思います。ですから、そういうことをきちんと踏まえた 上で議論する必要があるのではないかと思います。 ○久道座長  具体的な数字がないとイメージが湧いてこないということですね。その把握はして あるのですか。 ○医療計画推進指導官  5頁の要件を満たす医療機関が数多くあるのではないか、というご指摘であったと 認識しています。まず、この要件でいいかというご議論もいただかないといけないの ですが、さらに加えまして、下に書いてありますが、例えば胃がんの手術なら胃がん の手術で構わないのですが、そこの病院では外科医がいなくなってできなくなった。 ただ、二次医療圏を見れば、同じようなオペのできる医療機関があるということであ れば、優先順位は下がってくるのかと考えていまして、その辺りの精査が、今回、都 道府県にもお願いしないといけませんし、私どもでもやらないといけないと考えてい ます。  いずれにしても、上の3つの要件を満たすところは、ご指摘のとおりであろうかと 考えていますし、実際に都道府県からも一部報告をいただいているところもございま すが、さらにどのような要件で優先順位をつけていくのか、中央会議で議論をすると きに、それに資する背景は何なのかをさらに私どもは今日のご議論を踏まえて、手続 を詰めていきたいと考えています。 ○久道座長  先ほど矢崎委員が言ったように、正確な情報を知るために、各地域、都道府県だと 思うのですが、自助努力をして把握をしてほしいという意見があったと思うのですが、 そういうことは各都道府県に厚労省から要望しているということはありますか、ある いはこれからするのかどうか。 ○総務課長  各都道府県に情報として、派遣をしてほしいかどうかということではなくて、どう いった状況にあるかについては、各地域ごとの担当を医政局に限らず、他の局の協力 も得て担当を決めていて、状況の把握はしてきています。  結局どちらが先かということになるのですが、出してほしいというところに全部出 せるわけではなくて、出せる側の能力というかどれぐらいできるのかということとの 兼合いですので、両方をどうやって取るかということで、逆に、要望はこれだけある のだと先に決めても、キャパの問題もあろうかと思いますし、その中で出せる優先順 位を具体的にどのように決めていくかということだと思うので、基本としてはどうい ったことが必要なのかということで、医療機関そのものの要件と、地域要件は原則で、 むしろこうやって狭めていったときに、ここまで絞ったら逆にあまり出てこなかった という場合には、原則ということですので少し緩める必要もあるでしょうし、もしこ ういう要件でいったときに非常にたくさん出てきて、逆に派遣するほうの能力からす ると、そんなにはとても出せないということも、場合によってはあるかもしれません ので、そういう場合には、この要件を運用上は厳しくしていかざるを得ない場面もあ るかもしれないということです。いずれにしても、派遣体制を確立しないと、そうい った具体の動きになっていきにくいのかなと考えています。 ○久道座長  どちらが先かどうかということはあるのですが、とりあえず本日の議論としては、 派遣を受ける医療機関の要件は、ここに出した案として皆さんどうかということだと 思うのです。こういう要件でいいのかどうか、もっと重要な要件があるではないかと いうことがあれば、是非お話いただきたいと思います。 ○内田委員  要件については私は異論はありませんが、もともと医師派遣について医師会として は、医療は派遣に馴染まないということはずっと言ってきました。だから、人材派遣 会社が医師の派遣に参入することに関しては、ずっと反対をしてきたのです。そうい う経緯があって、いまだに基本的にそういうスタンスは変わらないと認識しています。  今回の話も、強制的にやるということに関しては、やらされる前にやめてしまうよ という話になりますから、絶対にそれはうまくいきません。ですから、いかに派遣さ れる人間にとって魅力のあるものにするかが非常に重要な要件だと思います。  もう1つは、そこを手っ取り早く解決するのに大きな手段としては、定年の延長を 考えたらどうかというのがあるのですが、この点はいかがでしょうか。 ○久道座長  これは他の委員のご意見も聞きたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○松原委員  済生会の基本的立場を後で述べさせていただきたいのですが、いまの定年の件に関 連して、それだけについてお話しますと、先ほど赤十字でもご紹介がありましたよう に、全体を調査されたら2、3名は出てきたけれども、その程度であったということ です。済生会においても、そもそも定年制というのは病院によって違うのですが、退 職寸前の医師あるいは退職直後の医師、予測される医師にアンケートを取ったところ、 やはり2名程度しか出てこなかったということで、非常に候補としては考えられるの ですが、事実上はそういうことで、大きくは期待できないということです。 ○矢崎委員  私どもも同じようなことを考えて行いました。実情は同じようなことで、なかなか 難しいです。特に地方に行っていただきたいというときには、なお難しいです。  ただ、我々の社会的責任として、医療崩壊の危機があるから何とかしてほしいとい うときには、応える責務はあると思います。ただ、その場合に、先ほどお話いただい たように、我々は互助努力で一生懸命やっているわけです。だけど、なかなかうまく いかない。だけどやらなければいけないということを説得するのですが、そのときに、 機構の中でも述べられている病院よりも悪い状態があるので、しっかりこの要件を満 たせば、あるいは地域の医療計画でどうかということもあるのですが、しっかりした エビデンスを示していただかないと、個々の病院に頼めないと思うのです。  ですから、最初に申し上げたように、地域の医療資源がどうなっているか、中長期 的にはそういうことで医療のレベルが均霑化するように、これからは努力しないとい けないのですが、緊急の場合にはそこの医療資源がどうなっているかをエビデンスで 示していただかないと、皆さん、出すほうの病院が極めて難しくなると思います。  もう1つは、先ほどご指摘のあった、厚労省の言われるマグネットホスピタルで、 我々でも9施設ぐらいあるのですが、そこでの問題は、先ほどお話になったように、 そこに医師が集まるのはそこで勉強したいために集まります。そこから派遣というと なかなか難しいです。もしそういう事態になったら、まず大学の方々に、医療の崩壊 だからこういう方がやむを得ず行くといったときに、それをサポートしていただきた いと思います。  いわゆるマグネットホスピタルというのは医師を育成する機能は全く持っていま せん。こういう病院は大体は大学に依存しているので、大学の了解を是非いただきた いです。そして、極めて体力のある民間の医療法人の方々は、ご自分の理念で医師を たくさん集められている病院はあります。そういう病院の力も我々は是非お借りして、 実際に検討を進めるのであれば、是非ご尽力をお願いしたいと思います。我々派遣で きるような病院も、体力が極めて脆弱であるということで、やはり大学病院と民間の 医療法人のサポートがいただければと思います。 ○久道座長  先ほど内田委員からの発言で気がついたのですが、労働者派遣法という法律があり ますが、その法律を検討する予定はあるのですか、それに引っかかるのか、どういう ことになるのか。労働者派遣法の場合は医師は対象外ですね。何かありますか。 ○総務課長  どういった形で派遣をいただくか、もともとおられる病院を退職して行かれる場合 もあるでしょうし、そこでの雇用関係をそのまま維持した形もあると思います。そう いったタイプによって、諸手続が違ってくると思いますが、いろいろなタイプが可能 になるように進めたいということです。  実は先ほど説明は省略しましたが、政府与党の紙の中でも、緊急医師派遣システム 構築の中に、「規制緩和等所要の措置を講じる」と書いていますが、そういった派遣 の面からもきちんとした対応が取れるようにしていきたいと思います。 ○久道座長  大臣の話にも出てきましたが、今日オブザーバーとして出席いただいているVHJ機 構の曽我さんからご発言があればお願いします。 ○曽我オブザーバー  ご指名をいただきましたので発言させていただきます。私どもは、純粋な民間病院 ですから、公立病院に医師を派遣するのはちょっと考えにくいことです。いまの「派 遣を受ける医療機関について」というのを読ませていただくと、大体自治体病院では ないかと推測するわけですが、私どもが自治体病院に医師を派遣することは考えにく いということだけは申し上げておきます。  もう1つは、私どもの会員病院はご覧いただくとおわかりのように、県庁所在地以 外のところに位置している病院が多ございますから、へき地あるいは離島を抱えてい る病院が相当ありまして、特に北海道、沖縄、鹿児島県等には、十分というと少し語 弊がありますが、その病院なりに努力をして、相当貢献しているのではないかと考え ます。これが何故できるかと申しますと、家庭医療、あるいは、ルーラルメディスン の専門分野を作り、その所で医師を養成して、それを出しているわけです。言葉は別 にしても、実際に、ファミリーメディスンとかルーラルメディスンを志向したい学生 さんは結構多いのですね。希望もありますから、私どもの会員病院だけではなくて、 後期の研修制度でそういう医師を養成している病院、あるいは、養成したいという所 は全国に数多くあると思います。行政が何とかそれを支援していただければ、緊急的 に研修医が増えると私は思いますし、その研修医を出すことは、これは彼らの専門で すから、他の専門医制度と違ってキャリアプランを阻害することはありませんから、 受け入れやすいのではないかと考えます。  もう1つは、医師が足りないといっても、医療が本当に受けられるかどうかという ことになりますと、例えば交通機関がどうとか、外的な要因がいろいろ入りますから、 必ずしも5頁の案だけでやるのは堅過ぎるのではないか。いま申し上げた、私どもの 会員病院では、国保の診療所などにも結構応援しています。それで、その地域の医療 が100%と言わないまでも、例えば救急などでも、何とか辛うじて近くの救急病院に 送り出せるというようなシステムでも、やはり1つの選択としてはあり得るべきであ って、必ずしもこれぐらいの二次医療圏の中核的な病院だけを的にしていくと、先ほ ど来出ている、医師の派遣が現実にはあまりないのではないかと危惧いたします。 ○座長  それではもうお一方、総合母子保健センター 愛育病院の中林さん。 ○中林オブザーバー  愛育病院の中林でございます。愛育病院自身は港区にある小さな病院ですが、全国 にある総合周産期センターの一員として、今日はお話をさせていただきます。愛育病 院も総合周産期センターでございます。  総合周産期センターは全国に60ほどありまして、地域周産期センターが200ほど あります。いま我々が産科の問題で大変困っているのは、この10年間で分娩を扱う 中核的病院が30%減り、それから、分娩を扱う開業の先生方が30%減ったというこ とで、10年間で分娩施設が3分の2になってしまった。しかし、その間に分娩数は 10%しか減っていないということで、当然1つの施設にかかる負荷は多くなります。 分娩というのは全国で年間110万件ありますから、その分娩を医師が全部担おうとす ると、約6,000人の産科医がいますから、1人あたり年間200件ぐらいは対応しなけ ればなりませんが、それはなかなか厳しい数です。そして同時に、開業の産科の先生 方がいま諸般の事情で分娩を取り扱わなくなっています。そのために中核病院が正常 分娩もハイリスク分娩も全部行わなければいけません。特に中核病院は2人の当直医 が必要になりますから、医師が10人いても4、5日ごとに当直は回ってきます。  当直ということは、大体電話等で起こされたり、指示をちょっと出したりと言いま すけど、総合周産期センターの当直というのはまったく不眠不休で仕事をするわけで すから、その方々が翌日も日勤して帰るとなりますと、36時間の連続勤務になります。 最近は若い医師が、そういう生活はいやだといいます。お金も少ないのもいやだけれ ど、自分の時間がないのがいやだ、ということで医師が集まらなくなっています。そ して、唯一というか、そういう産科でも人が集まる病院は、夜勤の翌日は勤務を少し 自由にしようとか、小山田先生がおっしゃったように、当直料といわずに、然るべき 夜勤手当としてきっちりと出そうとか、そういった、労働基準法等を視野に入れて対 応している病院が若い医師の人気になって、人が増えているわけです。ですから、そ うでない病院にいくら人を出そうと思っても、強制的なことができないので、それは 無理だろうと思います。  ただし、今回のお話に関しては、産科医の少なさは他の科よりもよほどひどいので すが、いまは少ないのを憂うのではなくて、等しくないことを憂おうではないかとい うことで、お互いに協力しようという姿勢は貧しいながらあるわけですので、こうい うことは是非やりたいと思います。しかし、せっかくいい病院があるから産科医にな ろう、という人たちが減ってはなりません。昔は産科医の総数が全体の8〜10%だっ たのが、いまはたった4%にしかなっていません。これは如何に産科医が嫌われてい るかということなのです。  産科医を増やすためには、いい病院もあるから産科医なろうという人を増やさなけ ればいけません。そういう点では、いまいきなり医師の多い病院から他へ行くと共倒 れになってしまう可能性があります。やはりこれを避けなければいけないのですから、 むしろいい病院に集まる理由を他の病院がとり入れて、そういう病院にしていこうと 努力することです。そして、中央の病院と地域の連携ができれば、例えば、亀田総合 病院とか愛育病院と、地域の病院との連携ができれば、全体として非常にいいシステ ムになるのではないかと考えます。ですから、派遣というよりは連携というシステム のほうが適切かという感じがいたします。しかし、いずれにしても産科医はこの1、2 年にもう少し体力をつけないと、これだけの連携や派遣ができるとは言い難いという 状況でございます。 ○座長  どうもありがとうございました。現実はなかなか難しいということがはっきりして いますが、他に何かご意見は。はい、どうぞ。 ○大橋委員  先ほどの矢崎委員の発言に対応して、医学部、あるいは附属病院の立場からお話し いたします。  項目の3番ですが、確かに地方の大学は、管理者・開設者ともに相当の努力という ときに、1つの条件、すなわち、その医療圏での医科大学設立からの歴史的背景が関 係すると思います。その大学と非常に緊密な関係にある医療機関かそうでないかとい うことが、重要な影響を及ぼしてきたというのがいままでの歴史ではないかと思いま す。その緊密度によって、配置の難易度が決ってくるのが現実ではないかと私は思い ます。  私は学部長という立場で、長野県の事例で、あるいは我々の事例を申しますと、県 の5カ年計画の協議会に、それぞれの産科の教授、あるいは小児科の教授に入ってい ただいて、現実の地域医療として何が問題なのか、教育研究以外に地域医療という視 点から何が問題なのか見ていただくということをしています。その協議会の中で、5 カ年計画でどういう医師の配置をしていくのかというときに、大学としてもどういう ような医師を、どのような形で作っていくのかという認識を、いままでは講座にまか せきりでありましたが、これからは大学としてきちっと責任を持つという体制を作っ ていこうとしています。これは大学自身の存亡の問題ですので、地方の大学は昔のよ うな姿勢ではないと思います。私も、協力姿勢というのはとらなければどうにもなら ないのではないかと思いますし、とるべきだと、私も全国医学部長病院長会議の会長 としてかなりの責任をもって言っています。  ただ、問題が1つあります。都道府県によってはいまなお、その病院にその医療圏 にはない大学から医師が来ているという事例について、どう対応するという問題でご ざいます。今回、こういう協議会ができたのですから、信州大学医学部がその派遣し ている大学にお願いに行って、大学間の交渉によって、地域の医師の配置について話 合いを始めた。これはいままでの歴史ではないことだと思いますが、大学医学部が責 任を持って、長野県の医療5カ年計画はこうであるときちっと説明し、医師の配置の 仕組みについて、そちらの大学が責任をとるのか、当大学がある程度協力しながらや るのか、そういうことまで話し合う場所が持ち得たということがあります。やはりこ ういう事例として、これは緊急に、地方の大学にとって存亡の危機を払うためにも、 自ら汗をかかないとやっていけないという認識がかなり強いのではないかと思いま す。  ただ、システムのときに是非お願いしたいのは、窓口も、いま地域に協議会ができ ているとおっしゃいますが、実質動いている地域と動かない地域があります。それは 先ほど言いましたように、大学と地域の医療機関の管理責任者の協力関係というか、 そういう連帯意識がかなり大きな動きをやりやすくする要因になっているのも事実 です。そういう所まできめ細かく配慮していくと、地域の協議会においても、同じよ うなものが十分動かし得るのではないか、その努力の中で、大学間の調整などが必要 なものこそ中央会議がやるべきではないかと、私は思っています。 ○座長  先生のお考えでは、要件の3番目で、何か直したほうがいいという所はありますか。 このままでよろしいですか。 ○大橋委員  「相当の努力」というのが非常に美しい言葉なのですが、行って、おそらくほとん ど門前払いに遭ってしまって、話ができないような事例もあって、門前払いと言いづ らいというか、そういうことをどうにか解消するためには、相当の努力という所が、 県の協議会がきちっと対応して、単に管理者お1人にまかせるのではないシステムを とか、県としてちゃんと大学と交渉しうるような状況を踏まえてというか、多少そう いった配慮をしてあげたほうがいいのではないかと思います。 ○座長  文言はこれでいいけど、カッコ書きの所にもう少し加えたらという感じですか。  他にご意見はないでしょうか。はい、どうぞ。 ○小山田委員  私がいまいちばん困って悩んでいるのは、その地域に、民間も含めて他の医療機関 がない地域に、自治体病院と国保連の病院があります。医師が引き揚げて、皆いなく なると、その地域の医療が崩壊しているのです。では、すぐそれを国立病院とか他の 医療団体にお願いするという方法はありますが、その前に、県全体として見てどうな のか、あるいは、その二次医療圏でどうなのかの検討、協議が必要なのですね。これ がうまくいかないというのは、私はそれを阻害している4つの壁があると言っている のですが、せっかく各県に作った地域医療対策協議会が、このための機能を発揮して いないのです。この前のデータにも出ましたけどそこで、本当に早く必要だったら、 こういう理由で必要だというものを出してもらう。ただ不足だと言っても、1人足り なくなったから不足だと言われても困る。ですから、その現場でのいちばんよくわか っている関係者で協議して、その上でこの中央会議に出してくるようなことをやって いただきたい。  それから、いくつかの県から異論が出ているのは、医療対策協議会の委員に、いち ばん困っている、自治体病院の代表を入れない所があるので、これを入れて、自治体 病院の悪い、弱い体質とか構造などを議論してもらう。そのためにも地域医療対策協 議会の活用化を図っていただきたい。そして、何故この県の中で協力、連携ができな いのか。例えば、同じ県の中で、他の市町村に医師を派遣してはいけないという条例 を持っている所がいくつもあるのです。そういったことも含めて、私はこの場で、皆 さんの知恵を借りて、自治体病院間で本当に困っている所への支援体制を作っていき たいと思っております。それには地域医療対策協議会に頑張っていただきたいと切に 願っている次第です。 ○座長  私、座長ですが、私もいまの小山田先生の発言に大賛成です。確かに各県には地域 医療対策協議会というのがあって、主な仕事は医療計画の策定なのですけど、計画を 見直しするのは5年に一遍ぐらいですね。しかし、今回は緊急臨時的資格をどうする かという問題が政治レベルでも載っているわけです。少し厚労省から働きかけて、小 山田先生がおっしゃるようなことを緊急に、その問題だけでもいいから、各県、地域 での事情もあるでしょうから、具体的な調査もした上で進めたらどうでしょうか。い かがですか。 ○指導課長  先生方のおっしゃったとおりでして、多分これまでの医療審議会だとか、あるいは、 その延長線上にあると思われる地域医療対策協議会だと、どうしても医療計画上の基 準病床数の策定という所に目が行きますので、そうした視点でメンバーが選ばれてい る可能性があります。この医師確保そのものに限らないのかもしれませんが、先ほど から申している、医療計画と絡むような、病院の集約化とか重点化とか、そういう話 にふさわしい人選をお願いしますと、機会あるごとにお話をしているところでござい ます。それが1点です。  それから2点目は、先ほどから何度も出ている、5頁目の基準案の所です。ここは たまたま、わかりやすく、シンプルにするために、「派遣を受ける医療機関の要件」 だけを中心に書いて、見えづらくなっているかもしれませんが、「地域医療の要件・ 都道府県の役割」という所の、下から2つ目の黒ポツの所に「都道府県の役割(都道 府県医療対策協議会が医師の派遣要請を決定すること等)」としています。単に医師 を派遣してくださいとお願いして、○○地域に派遣してください、県としてもこう決 めましたではなくて、これまで、県としてもこう考えて、こうやってきたし、このよ うな議論もしてきた。そうした中で、やはりどうしても○○は必要なのだというご意 見はいただいて、その上でということになろうかと思います。 ○矢崎委員  ちょっと提案したいと思います。地域医療アドバイザーと、その後、議論を何度か しましたが、その位置づけや役割がなかなか見えてこないということで、やはり当事 者と関係者との間でコンセンサスを得ていかないと、実際に現場においては混乱する かもしれません。それで、ようやく小山田委員と私どもの共通の土俵に立つことがで きたと思います。ですから、やはり限られた医療資源を最大限に発揮した医療体制を 緊急に、将来の医療計画ではなくて、いまの危機を乗り越える企画、あるいは構築を する、まずそういうチームを作ることが必要ではないかと思います。それにはやはり、 そういうことを経験したり、トレーニングを受けた人たちが実際にそこで調査をして、 そこにデータを持ち上げていただきたい。それにはやはり、チームに対してはある程 度の位置づけを明確にしないと、あるいは、ある程度権威づけをしないといけません。  例えば、内閣府とか総務省、もちろん厚労省もそうですが、それが全面的にバック アップするような体制を是非この際、地域医療アドバイザーにそういう役割を付加す るか、また、別にそういう実態を調査して、地域医療の連携体制をしっかり構築する ような、そういうことを企画・立案できる人が地域で活動する。それにはある程度バ ックアップをしていただくような、そういうチームを作っていただければ、「派遣を 受ける医療機関の要件」の中に、条文に表われない部分でそういうサポートシステム を作っていただきたいと思います。 ○座長  貴重な提案をありがとうございました。その地域医療アドバイザーに関しては、議 題になっていますので、幹事会からのご報告等も含めて後でお話は出ると思います。 時間の都合もあります。本日は、予定では7時半まで、開始が6時という、異例の時 刻ですので、終了はきちっと守りたいと思います。  オブザーバーの方で出席されている、地域医療振興協会の杉田さん、何かご発言あ りますか。 ○杉田オブザーバー  先ほどから先生方のお話を聞かせていただいて、本当にそのとおりだと思います。 私は地域医療振興協会の中で、派遣医師を調整する仕事と、実際に自分で派遣される 側と、両方やっているわけですが、気づきますと、派遣医師を集めるにあたっては、 グローバルな、できるだけ広い範囲で集めて、いろいろな条件にマッチする人をプー ルしておいたほうがいいと思います。ただ、実際に派遣される側となりますと、全国 的な派遣というのは、交通機関、移動の距離、疲労といったものもあって、あと、交 通費を派遣元が負担しなければならないので、大体それだけでカバーするのは大変で す。やはり先ほどの話にありましたとおり、県内での医師の派遣を協議会で十分調整 していただいて、それと、全国的な公募と調整というのを両輪でやるべきだと思いま す。そのときに、各県の、先ほどお話のあった「へき地医療支援機構」ですが、ここ には必ず専任担当官という医師がいまして、各県内の病院のこともかなり存じておら れると思うので、その方たちの協議も必要かと思います。 ○座長  どうもありがとうございました。今日、1つ決めておかなければならないのは、「派 遣を受ける医療機関等について」の要件の所を大筋で、この中央会議の委員の方々の ご了解は得ておきたいと思うわけです。いろいろな発言の中に、中核的な病院だけで いいのかとか、それから、先ほどの「相当の努力」という文言についての注釈も必要、 あるいは、交通状態も要件の中に入れる必要はないのか、という意見が出たのではな いかと思います。したがって、これをいますぐ修正して、皆さんにどうだというわけ にはいきません。大筋では事務局が提案した要件でご了承いただいて、細かい所につ いては事務局と座長にご一任いただいて、なお、何か問題があれば皆さんにご一答い ただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。武田委員、どう ぞ。 ○武田委員  いまのは大事な所だと思います。この二次医療圏だけというようなお話で、座長は、 細かい点も出たと。実際に、地域によっては一次医療が相当困っている所があるので すね。お話にあったように、自治体病院を中心にあるのです。ここは医師が1人とか、 2人とか、全員いなくなってしまうと、そういう所は各都道府県で努力しなさいと、 国は二次医療圏だけを中心にやる、という区分けをするのか。しかし、それはトータ ル的に一次医療も含めて、各都道府県と話合いの中で進めていかなければいけないの ではないかと思いますが、その辺の事務局の見解はどうなのですか。 ○座長  二次医療圏ということはあるけど、一次医療圏というのはありませんよね。そうい う言葉はないですね。だから、二次医療圏の中で行う医療にはもちろん一次医療も入 るわけですね。 ○武田委員  入っていればいいのですけど、具体的になってくると、どうしても区分けを、都道 府県では分けがちな所がありますから、その辺の所を聞きたいのです。 ○座長  はい。これは事務局に質問だそうです。 ○指導課長  二次医療圏と言っていますが、二次医療を担うとは書いていないつもりです。ただ、 1ポツを見ていただくと、中核的な病院となっていますから、事実上二次医療レベル を想定しているのは事実でございます。ただ、これも言い訳がましいのですが、※の 所に「原則として」と書いてあります。こうしたことを踏まえた上で出していただい て、その上で、4頁の図の所で先ほどご説明しましたが、やはり優先順位というのは、 派遣できる医師の数も相当に限定されているというお話でしたが、そういう中ですか ら、5つも6つも7つも、あるいは10も20も上がってきたときには、そうしたもの の中で優先順位をつけていく、その中で少し解決をしていきたいと思います。  なお、同じ5頁の下から3つ目の所にも書いていますが、地域医療の要件の所で「当 該医療を代替する医療機関がないこと」と書いてあります。これも一次医療機関だけ ど、そこがないと本当に代替する所は1つもないということは、この全体の要件の中 で読み込める部分もあるのではないかと思います。いずれにしても、実際にこうした 要件が世の中に出ていって、応募があったときに派遣できる医療機関と、それから、 応募をしてきた所との兼合いの中で優先順位をつけていただきたいと考えます。 ○武田委員  もう1点よろしいですか。 ○指導課長  はい、どうぞ。 ○武田委員  派遣先の要件も大事なのですけど、いちばん大事なのはどれだけドクターを確保す るかということで、いろいろな諸条件を具体的にきちっと出さないとなかなか大変だ ろうと思います。ご意見ありましたように、お金だけでもないのですけど、お金を上 げると応募がグッと増えたという例もありますから、その地域によってすごく条件が 違うと思います。ですから、相当有利な条件を出して、特に困っている所は、皆さん 方のご意見のとおり、地方ですから、そういった面では、いろいろな面で国が有利な 条件を作ることが大事なのではないかと思いますが、そこの所は具体的に書いていま せんし、規制緩和の所も詳しくはわかりませんが、何を指すかという所も大事だと思 います。 ○坂元オブザーバー  全国衛生部会長からなのですが、私たちの会員、大都市から、それから、へき地を 抱えている都道府県、さまざまな会員がいて、それぞれ医師不足問題に関して非常に 意見がバラバラです。例えば、大都市においても医師不足があることを訴えると、お そらく現実には住民の意識の問題、どのレベルをもって医師不足、医療過疎というか。 例えば、都市部の住民でいいますと、24時間いつでも小児救急を見てほしいと、それ が実現しないと医師不足であるといって、実際、議会を通して非常に騒がれると。  この前、大都市衛生主幹局長会議があって、特に小児救急が大都市においてもそれ ぞれ問題になって、どのようにやっているか、若干意見交換をしたところ、おおむね どの都市も、夕方6時から朝までで20万人弱の人に対して当直料等を払っていると いう、これは内々の話ですね。それほど出しても集まらないと。それは都市部の住民 のニーズが非常に高いと、都市部の住民のニーズがどんどん高くなっていけば当然そ こに集中してしまって、もっと医者がいない所から見れば本当にそれは贅沢な話、そ の辺の医療過疎とは一体何なのかということをさらに広く、やはり国民に周知してや っていく必要がある気がいたします。以上です。 ○座長  ありがとうございました。 ○矢崎委員  国立病院機構からは、自治体病院には医師を派遣できないシステムになっているの です。それは地財特措法というのがあって、お金をやりとりできないので、小山田先 生に是非、総務省に、医師派遣に関しては地財法を緩和すると、それが条件でないと 我々は二進も三進もいきませんので、その点をよろしくお願いします。 ○座長  非公務員化すればできませんか。それもできないのですか。 ○矢崎委員  と思います。そうですよね。 ○事務局  はい。 ○座長  時間が来てしまいました。まとめなければならないのですが、先ほど私がお話申し 上げたような形でご了解いただくのはいかがでしょうか。よろしいですか。細かい所 は事務局とも相談しながら、また、発言された、関連する先生には確認していただき たいと思います。どうもありがとうございました。  それでは、2番目に入ります。もう終了の時間ですが、座長権限で5分間だけ延長 します。電車の都合でお帰りにならなければならない人は、どうぞよろしいですので。  それでは、2番目について、どうぞ説明をお願いいたします。 ○医療計画推進指導官  それでは、事務局から手短にご説明いたします。いままでご議論いただいた、医師 派遣とは違うということをまずご留意いただきたいと思います。これは4月10日の 会議で宿題事項になっていた、地域医療アドバイザーの派遣ですので、いま言った、 緊急臨時医師派遣ではないことをご確認いただきまして、まず8頁をお開きください。  もう一度4月10日のことを繰り返させていただきます。地域医療の確保、その中 に医師確保もあるかと思いますが、それに取り組む都道府県を支援するために、地域 医療アドバイザーを派遣していただきたいという都道府県からの要請に基づいて、厚 生労働省が委嘱したアドバイザーを派遣するといったものでございます。  内容につきましては、医療機能の分化・連携の方策の助言・指導、あるいは集約化・ 重点化の実施に関する助言・指導などを含んでおります。結果として、これらのこと が医師確保にもつながるといった、先ほどの議論もあろうかと思います。ここでは4 月10日の案件、地域医療アドバイザーの派遣事業について、どういう方々を地域医 療アドバイザーにするか、その候補者についてご議論いただければと思います。よろ しくお願いいたします。 ○座長  それで、この会議の前にいろいろご議論いただいた幹事会、会長の近藤委員から一 つお願いします。 ○近藤委員(幹事会会長)  ただいま事務局からありましたように、地域医療アドバイザー派遣事業についての 説明と、アドバイザー候補者について協議をいたしました。派遣事業につきまして、 委員の中からは、いまさら都道府県にこういうようなアドバイザーを派遣する意義は あるだろうか、これまで都道府県がやっていたのだから、屋上屋を重ねるというか、 こういう人が必要だろうか、というようなご意見がありました。先ほど、矢崎委員等 のお話を聞いていますと、やはり都道府県の地域医療協議会等で、場合によっては第 三者が入って、企画・立案等をすることも意味あるのかと思いました。中でも事務局 のほうにそのようなご意見がありまして、検討会としてはこの必要性について了解を したという面があります。  次に、ここにも掲げられていますが、アドバイザーの候補者についてでございます。 一応ここに掲げられた方についてはご了解を得られたわけですが、それ以外に委員か ら、この中にいらっしゃる方は主に大学にいる方です、実務、臨床をやられて、また、 実際に病院にいらっしゃった方がもっと多く必要ではないだろうかというご意見が ありまして、この方々についてはそれぞれ各委員が具体的に推薦していただいて、事 務局と相談するということで、また次の回に、具体的な人選をいただいて協議をした いということになりました。以上です。 ○座長  矢崎委員、よろしいですか。先ほどの話と違う形のアドバイザーと言っています。 ○矢崎委員  了解いたしました。 ○座長  ちょうど時間がまいりました。是非話しておかないとという方、いらっしゃいます か。30秒ぐらいならいいですが。よろしいでしょうか。  それでは、どうもありがとうございました。時間が短いところでかなり実のある、 いろいろなお話をいただきました。しかし、まだ不十分な所もありますし、この医師 確保策というのはそう簡単ではないのが実態だと思います。  今日の議題はこれで終わりますが、事務局から何か。それから、局長からご発言を お願いいたします。 ○医政局長  本日は1時間半の時間を延長してまで大変闊達なご議論をいただき、本当にありが とうございます。また、ご出席の皆様には、特に緊急臨時的医師派遣について、ご協 力についてご理解をいただきまして、感謝を申し上げたいと思います。小山田委員か らのお話もありましたけれども、5月31日の政府与党の対策は、短期、中期、長期、 網羅的に出ているものですが、大変重いものだと私どもも受け止めていました。総理 も大変関心をもってこれを進めると申しておりました。骨太の方針、これから政府で 決めるところですが、私どもとしては当然、この医師確保についても取り上げていた だけるものと考えていますし、また、これから始まる、予算の折衝、ないしは診療報 酬の議論等においても、大変大きなバックグラウンドになるのではないかと考えてい る次第です。  また、先ほど小山田委員、大橋委員からもお話がありましたが、実際に医師を派遣 することになりますと、お金の問題以上に、やはりその医師のキャリアパスとして大 変重要なものになるということが大事だと思います。これは政府与党の4項目でも、 臨床研修後の専門医に向けた研修の在り方についても関連づけて検討すると。「ただ ちに」の所にはなっていませんが、これからの方向としては、いままで専門医と、あ るいは後期研修ということについては国はほとんどタッチをしてこなかったわけで すが、こういうことの関連で、こういうことに協力をすると、こういうことは将来の パスとして大変有意義な、前向きなことに将来なるに違いないと私どもは考えていま す。それは是非若いドクターにもご周知をいただければと思います。本日ご議論いた だいた、緊急臨時的医師派遣については、先ほど申しましたように、総理をはじめ政 府与党も大変強い関心を持っています。また、心配もしていただいているところでご ざいました。私どもとしても、本日のご議論を反映しながら取り組んでいきたいと思 っています。  先ほどありましたように、各都道府県には、先般の医療法の改正で地域医療対策協 議会が設置されています。これは従来の各県の医療審議会と違いまして、茶飲み話で 終わらせるようなものではなくて、それぞれの都道府県の中で、きちんと医師の確保 について、私どももそうですけど、いままでやってこなかった分野で大変なことは承 知しておりますが、まずそこで、どういうやり方がいいのかということを大いに議論 をして、そういった議論の中で、自分の県の中ではどうしてもまかなえないことにつ いて、県を越えて他の県から応援をするということです。もらう話ばかりが出てくる ようでは大変情けない。今日のところは大変出す話をしていただきました。本当に感 謝を申し上げたいと思います。自治体病院、それから、厚生連の病院、もらう所も多 いと思いますが、出せる所もあると思いますので、是非そちらについてもお願いを申 し上げたいと思います。また、医師会のご協力も是非お願いしたいと思います。  なお、医師不足によって地域医療の確保が困難となっていた、北海道の市立根室病 院につきましては、国立病院機構が6月から外科医の派遣を始めたところでございま す。大変困難な中、ご協力をいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。これ は緊急の派遣ということで、根室に限らず、今回の議論はそうですが、大きな地震が 起きたときに、数カ月単位、数週間単位で派遣をする仕組みがありますが、それと同 等程度の困難を抱えている地域があるとすれば、やはりそれは私どもの困難を超えて 派遣をして助けていかなければならない、こういうことではないかと思っております。 何とぞその点はよろしくご協力のほどをお願い申し上げます。今後とも地域医療の確 保のため支援、ご助言をお願いいたしまして、私からの終わりのご挨拶とさせていた だきます。本当は大臣にこれを言っていただきたかったのですが、大臣はいま別のこ とで忙しいので、私から申し上げました。どうもありがとうございました。 ○座長  それでは、どうもありがとうございました。次回の開催につきましては、事務局が いろいろ皆さんと調整の上で決めたいと思います。これをもって本日の地域医療支援 中央会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省医政局指導課     計画係(桑原)、指導係(中根) 電話 :03-5253-1111(内線2557)