07/06/06 第1回厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会議事録   厚生科学審議会科学技術部会   第1回厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会議事録   ○ 日  時 平成19年6月6日(水)15:00〜17:00   ○ 場  所 厚生労働省 専用第21会議室(17階)   ○ 出 席 者   【委  員】  笹月委員長           岩田委員 北地委員 木下委員 末松委員 平井委員           宮田委員 望月委員 谷内委員           【議 題】 1.厚生労働科学研究における利益相反への対応について   2.その他 【配布資料】 1−1.厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会の設置について   1−2.平井委員提出資料(利益相反について)   1−3.谷内委員提出資料(東北大学における臨床研究の利益相反マネジメント体制の構築) 1−4.各種指針等における利益相反について 1−5.利益相反の定義について   1−6.検討における留意点などについて   参考資料1. 厚生科学審議会科学技術部会厚生労働科学研究における利益相反に関する 検討委員会委員名簿 参考資料2. 利益相反ワーキング・グループ 報告書    (平成14年11月 文部科学省 科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会          産学官連携推進委員会 利益相反ワーキング・グループ)   参考資料3. 臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン    (平成18年3月 臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班 文部科学省 「21世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム」)  参考資料4. AAU Report on Individual and Institutional Financial Conflict of Interest(全米大学協会(AAU:Association of American Universities) 報告書)   常設資料   適正に医学研究を実施するための指針   ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事項をお守り くださいますようお願いします。なお、本日は、6月からクールビズということで、事務局は軽装 で失礼しております。上着をお召しになってる方も適宜脱いでいただくなど、よろしくお願いいた します。  定刻を過ぎましたので、ただいまから「厚生科学審議会科学技術部会第1回厚生労働科学 研究における利益相反に関する検討委員会」を開催いたします。委員の皆様方には、ご多忙 の折お集まりいただき御礼申し上げます。  最初に、委員を五十音順にご紹介させていただきます。上智大学法学部教授岩田太委員、 監査法人トーマツ公認会計士北地達明委員、社団法人日本医師会常任理事木下勝之委員、 国立国際医療センター総長笹月健彦委員、慶應義塾大学医学部教授末松誠委員、レックスウ ェル法律特許事務所所長平井昭光委員、日経BP社バイオセンター長宮田満委員、共立薬科 大学長望月正隆委員、東北大学大学院医学系研究科教授谷内一彦委員、なお、聖路加国際 病院長福井次矢委員はご欠席です。  次に事務局を紹介させていただきます。厚生労働省厚生科学課長の藤井です。私は、研究 企画官の坂本です。主任科学技術調整官の神ノ田です。バイオテクノロジー専門官の荒木で す。  それでは、事務局を代表いたしまして、藤井より一言ご挨拶申し上げます。 ○藤井厚生科学課長  委員の皆様方には、大変お忙しいところ、委員をお引き受けいただいたことを御礼申し上げま す。当検討委員会は、ご案内のようにタミフルの問題を一つの契機にいたしまして、厚生労働 省からの研究費を貰っておられる研究者と、その研究者自身が企業等といろいろな関係を持っ ておられ、その利害の衝突について、やはり整理をすべきだろうということで、この検討委員会 を開催させていただいております。  一つの契機がタミフルという薬の問題でしたけれども、厚生労働省の研究ということになると 薬だけではなく、医療機器、福祉機器、食品等々とかなり幅広い分野にわたっておりますので、 もし対象ということを考えるとすれば、ある程度幅広くという観点からご議論をいただければあり がたいと思っております。  また、先端医薬品なり、医療機器の世界では産学官連携ということを柱に進めるということも 国の施策としてやっておりますので、そういう現実的な面への対応という観点からも、そこをあ まり無視したような形にならないような対応ということでも検討をお願いしたいと思います。  本日は、この委員をお引き受けいただいたお二人の先生に、まず全体的な問題点の整理な り、実際に現場でこの問題をどう取り扱っているかということをご発表いただく予定にしておりま す。私どもとしては、幅広い観点からご検討いただきたいと思いますので、委員の先生方のほう で、こういう分野の、こういう立場の人から話を聞きたい等々の要請がありましたら、できる限り 調整をさせていただいて、対応も考えさせていただきたいと思っております。  一応検討をお願いするわけですので、いつまでということを事務局的には、ある程度お願いを いちばん最初の段階でしておきたいと思っております。私どもとしては、遅くても来年度の厚生 労働省の研究費の執行に間に合うようには検討結果をまとめていただきたいと考えておりま す。そういう諸準備を考えますと、遅くても年内にはと思っておりますが、周知の期間等々を考 えますと、もう少し早い時期におまとめいただけましたら大変ありがたいと思っております。  いろいろと忙しい中、検討にご参画をいただく中で、そういう厚かましいお願いをさせていただ きますが、いろいろな方面で関心も深い事柄でもございますので、是非積極的、建設的なご意 見を取りまとめていただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○坂本研究企画官  本検討委員会の委員長についてご説明いたします。厚生科学審議会科学技術部会運営細 則第3条で、委員長については部会長が指名することになっております。これに基づいて笹月 委員に委員長をお願いしたいと存じます。以後の議事進行は笹月委員長にお願いいたしま す。 ○笹月委員長  一言ご挨拶申し上げます。ただいま委員長を仰せつかりました笹月です。課長のお話にもあ りましたように、社会的な関心も高い重要な課題でありますので、どうぞ委員の皆様方はご専 門の立場から深い議論を通じ、最終的な結論を出せるように円滑な運営を図りたいと思います ので、どうぞご協力のほどよろしくお願い申し上げます。  議事に入る前に、本日の資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○坂本研究企画官  議事次第に配付資料の一覧がありますのでご確認ください。資料1-1「厚生労働科学研究に おける利益相反に関する検討委員会の設置について」、資料1-2「利益相反について」、資料 1-3「東北大学における臨床研究の利益相反マネジメント体制の構築」、資料1-4「各種指針等 における利益相反について」、資料1-5「利益相反の定義について」、資料1-6「検討における留 意点などについて」、参考資料1は委員会の名簿、参考資料2「利益相反ワーキング・グループ 報告書」、参考資料3「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」、参考資料4 「AAU Report on Individual and Institutional Financial Conflict of Interest」です。もう一つ「適 正に医学研究を実施するための指針」という冊子を置いてあります。こちらは指針などがまとま っている資料ですので参考に置かせていただきました。誠に申し訳ございませんが、部数の関 係がありますので、お帰りの際には席に置いたままでよろしくお願いいたします。お持ち帰りの 希望がありましたら、事務局までお申し付けください。 ○笹月委員長  議事に入ります。厚生労働科学研究における利益相反への対応についてということでご審議 いただきますが、まず事務局より説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料1-1についてご説明いたします。資料1-1は「厚生労働科学研究における利益相反に関 する検討委員会の設置について」です。この検討委員会の設置目的についてですが、厚生労 働科学研究について、その信頼性を確保すべく、個別企業との関わりについて、いわゆる利益 相反問題に、いかに対応すべきかを検討するためにこの検討委員会が設置されたものです。  検討事項としては、研究者の外部資金等の状況、現在実施されている関連するガイドライン (臨床研究に関する倫理指針等)の各研究機関等における運用、他府省や海外の利益相反に 関するガイドラインなどを踏まえ、厚生労働科学研究における利益相反に関する今後の対応に ついて検討するということです。  委員会の構成については、先ほど委員をご紹介させていただきましたように別紙のとおりで す。課長も申しましたように、必要に応じて参考人を招致することができるということです。  委員会の取扱いについては、基本的に会議は公開ということです。ただし、公開することによ り個人情報の保護に支障を及ぼすおそれがある場合、知的財産権その他個人もしくは団体の 権利利益が不当に侵害されるおそれがある場合、又は国の安全が害されるおそれがある場合 には、委員長は会議を非公開とすることができるという規定です。非公開とした部分につきまし ては議事要旨を作成し、これを公開ということになっております。  資料1-2と資料1-3については、平井委員、谷内委員からいただいております資料です。利益 相反について、それぞれの取組みについての資料ということで、あらかじめお願いしていただい た資料です。こちらの資料については、平井委員、谷内委員からご説明いただきたいと思いま す。 ○笹月委員長  それでは、早速平井委員から説明をよろしくお願いいたします。 ○平井委員  資料1-2に基づいて、利益相反についてご報告、ご説明をさせていただきます。先ほどこちら に歩いてくる途中、非常に風が気持よくて、時間がなくて急いでいたのですが、非常にさわやか な気分でした。利益相反の最後の目標というのは、こういう気分を皆さんに味わってもらうこと です。それは研究者であれ、それが企業の方であれ、研究に携わる方々が非常にさわやかな 気分で研究を進め、かつ素晴らしい成果を上げていただく、というのが究極のゴールだと感じて おります。  こちらの資料は長いのでかい摘まんで説明させていただきます。既にヘルシンキ宣言をはじ めとして、臨床研究におけるガイドラインでもそうですが、厚生労働省におきましては利益相反 という言葉を、あるいは利害の報告という形で、一定の配慮はもちろん示してきていると思うの です。あるいは、インフォームド・コンセントについてもそうだと思います。  今回の問題というのは、こういうこれまでの取組み、歩みを一歩進め、さらにどういう形でもう 少し幅広に、あるいはもう少し国民に目を向けてこの問題を進めていけるか、ということに尽き るのではないかと考えています。  最初に結論を言ってしまいますけれども、なぜこの利益相反マネジメントがいま必要なのかと いうと、ポイントはいくつかあると思います。一つ大きく言うと、これまでのマネジメントよりも、若 干対象なり、期間なり幅広にできるということが一つ大きいと思います。  もう一つは、インフォームド・コンセントの場合は患者を念頭に置いています。利益相反マネジ メントは納税者、国民を念頭に置いております。そういう意味で大きくなるかという気がしており ます。  時間もありませんので資料に基づいてザッと説明しますが、利益相反マネジメントについての 基本的な部分というのは改めて説明するまでもないかと思います。ただ、利益相反という言葉 が悪いせいかもしれませんが、非常に誤解されることが多いのです。先日あった誤解の例とし て、利益相反というのは研究者の利益と組織の利益がぶつかる。この場合には、国研とか大 学の利益がぶつかるから、それを調整するためのものですか、というようなことも言われまし た。非常に誤解の多い概念ですが、もちろんそうではありません。これは、研究者が抱える複 数のインタレストをどうやって調整するかという問題です。ですから、入口を非常に気をつけな いといけない議論ではあります。  4頁ですが、このようにサークル、円形のコントロールにはいろいろなものがあります。法的な 規制が必要な部分、自由な部分。この利益相反マネジメントというのは、その中間を扱うのだ と。ここも非常に誤解されやすいところです。決して誤った不正な行為をどうしよう、捜査して処 罰するというのは利益相反ではないわけです。その点は非常に気をつけるべきかと思います。  9頁は利益相反の基本的な部分です。先ほど申しましたように、これは不正な行為を捜査し て処罰するということではありません。あくまで本務にバイアスがかけられると一般人、国民や 納税者が懸念するような、そういう事態があったら、それをどうやってマネジメントできるだろう か。どうやってその事態をもう少しアカウンタビリティ、よい方向へ持っていけないかというのを 議論するのが利益相反マネジメントです。  18頁で臨床試験の方に入ります。ここにありますように、臨床研究に関係する利益相反には さまざまなシステムないしは規範があります。一つにはヘルシンキ宣言をバックにするようなガ イドライン。それから、アカデミアにおけるルール、これも非常に重要です。そして利益相反のマ ネジメント。こういうものが複合的に関与しているということが言えます。続いてヘルシンキ宣言 のことが出ておりますが、この辺はご案内のとおりですので省略させていただきます。  24頁でIRBとの違いです。よくある話なのですが、臨床に関して、治験に関してはIRBがある からいいではないかと言う方もいらっしゃいます。確かにIRBが一定の利益相反マネジメント機 能を果たしていることは間違いありません。また、組織によってはIRBが利益相反のマネジメン トを代替して、あるいは拡張して行っていることもあります。ですから親和性がないわけではなく て、非常に密接な組織ではあるのですが、ただ、通常のIRBと利益相反マネジメントは若干違 います。  なんとならば、利益相反の中で取り扱う範囲が広いのです。対象となる臨床研究とは直接関 係のない共同研究、物品の購入といったものにもマネジメントが及ぶことがあります。さらには、 開示対象者も配偶者とか一定の範囲の親族に広がることもあります。また、時期的にも臨床研 究開始前、終了後にもマネジメントが行われたりします。こういうことで、IRBより若干広いマネ ジメントが行われるというのが特徴です。  25頁ですが、そのIRBと利益相反というのはどうやって組織を調整するのかというとこれは自 由です。ただ、理想的にはIRB、利益相反委員会、さらには勤労室・人事室といった組織が、相 互に情報を交換し合って統合的にマネジメントする、というのが最も望ましい状態ではありま す。ただ、場合によってはいろいろな制約によって、これらのうちの一つないしは二つの組織で すべてを対応することもあるかもしれません。  26頁は二重の基準です。ここで取り扱うのは、基本的に臨床研究が絡む問題が多いと思い ます。もちろんそれが絡まない基礎研究もあると思います。基礎研究の場合と、臨床研究の場 合においては、マネジメントは若干異なります。それがこの二重の基準というものです。  27頁の絵を見るとよく理解しやすいかと思います。まず一階部分に汎用型の利益相反ポリシ ーがあります。これは、研究者であれば皆さんに適用になります。基礎研究である場合でも、場 合によっては社会学的な研究である場合にも、これは及んできます。さらに二階建てとして、臨 床試験のポリシーがあっていいのではないか。これは臨床試験、臨床研究は対象として人間を 取り扱うことが多い。さらに創薬というような場合には緊急性などいろいろな要素が絡んできま す。また、臨床試験ガイドラインとの整合性との問題もあります。したがって、ある意味若干厳し めの基準を臨床試験においては用いることがあります。  28頁ですが、例えばアメリカでは(2)にあるようなゼロ・トレランス・ルール、研究者による臨床 試験への係わり合いを一切禁止するというルールを採用している大学もあります。これはペン シルベニア大学です。他方、若干厳しいのだけれども、100%禁止はない(1)のようなルールを 採用する大学、ハーバードのような大学もあります。  日本はどうするのだ、というのをこれから探っていかなければいけないと思います。すべては バランスですので、日本の社会、それから臨床試験に対する政策。やはり臨床試験を今後も奨 励しなければいけないという政策に対応した形で進めていくことが必要かと思います。その続き は米国の事例が書いてありますので省略いたします。  最後は32頁になりますが、厳しい基準というのは一体何なのだというと、一つの例として代表 権を持たない取締役兼業は認めるが、なるべくCSOにとどめるようにしてください、あるいは関 係会社の株式の保有は制限させてください、又は研究責任者をなるべく他の研究者に譲っても らう。場合によっては経済的なインタレスト、報酬とかそういうものには一定の制限を設けること も必要かもしれない。さらに、奨学寄附金については、アカウンタビリティを保つような何らかの 配慮をとっていくことが必要かもしれない。こういうことを皆さんの知恵、研究者それぞれの協力 をもって進めていくというのが利益相反に関するマネジメントであると思っております。私からは 以上です。 ○笹月委員長  ありがとうございました。資料をたくさん用意していただいたのですが、時間の関係で短くて申 し訳ありませんでした。後で質疑応答の時にまたいろいろご意見を聞かせていただければと思 います。続いて谷内委員からお願いいたします。 ○谷内委員  東北大学の谷内です。このような会で東北大学の対応事例を紹介させていただく機会を与え ていただきまして非常に感謝申し上げております。東北大学でも、かなり前から準備はしていた のですが、先ほどお話になられた平井先生に東北大学に来てもらってキャラバンをしていただ き、研究者の注意を喚起するということで、少しずつ時間をかけてやってきています。いま3、4 年目になると思いますが、そこで対応を作ってまいりました。まだ不完全ではありますけれど も、その事例を紹介させていただき、ご意見あるいはご高見を賜りたいと思います。  2枚目は、日本における臨床試験の当面する問題ということで、私の勝手な意見を述べさせ ていただいております。2番目として、会計システムが結構大変です。やはり、いくつかの研究 費をうまく組み合わせないとなかなかうまく動かないということがあります。  米国の例をたくさん出して申し訳ありませんが、米国では国家研究法と、それからOHRPとい うのがあります。私たち東北大学のグループは、そこを1度訪問させていただきました。OHRP というのは、すべての臨床研究、公的な研究費で行われる臨床研究をチェックする政府の役所 です。ここが結構強い権限を持っていて、ここではどのようにやっているのだろうということに非 常に興味がありましたので、昨年東北大学のグループで見学させていただきました。こういうも のが、日本にはないので自由度が高いといえば高いのですが、何かあったときに対応できない ということがあります。  その中で、コンフリクト・オブ・インタレストというのは、ご存じのようにヘルシンキ宣言に書いて あって、いつも読みながら対応していないことに対して非常に苦渋の思いをしておりました。ま た、厚生労働省の倫理規範にも書いてあったのですが、しているところを私はほとんど見たこと がないということで非常に辛い思いをしていました。東北大学では、一般的な利益相反のシス テムを立ち上げるところに臨床研究のものも付加しようということで準備してまいりました。  3枚目は、どういう事例があるかという簡単な例ですのでおわかりいただけると思います。最 近、法人化されてから寄附講座というものがある程度できてまいりましたし、あるいは実際に法 人化されてからベンチャーを立ち上げることを大学の一つの目標としている方向もあります。当 然その中の一部は臨床試験に入ってくるということで、東北大学としてどういう対応をするかを ある程度決定・承認するシステムは必要だろうと考えております。  4枚目は、平井先生のスライドを一部変えたものです。IRB、それから研究担当部門、産学連 携本部、人事担当部門も関係しますが、やはり、その間に中間的な利益相反マネジメント委員 会を立ち上げてこないと、なかなかうまくマネジメントできない。IRBというのは、外部委員の方 がおられます。外部委員がおられる所に、研究者が個人的なお金で作ってきたベンチャーと か、あるいは個人的な資産を全部公開する形になります。  そこが非常に難しいところで、IRBというのは外部委員の方がいて、活発に意見を言っていた だく。利益相反マネジメント委員会というのは、個人名と個人の資産が明確になってくる。やは り、その辺に一つ中間的なものを置いて、この委員会は別々に書いてありますけれども、できた ら一部オーバーラップして、共同してマネジメントしていく必要があるだろうということで、東北大 学では、利益相反に関しては全学統一的な委員会をつくることで対応しています。  5枚目は、我々が参考にした米国医科大学協会(AAMC)の2002年勧告を提示しています。 アメリカでも、IRBのプロトコールが出る前に、COIの審査をした方がベターだろうということを強 く促しています。AAMCというのは非常に強い民間団体で、この意見を主張しています。我々も この後、昨年AAMCに見に行きましたけれども、非常に自信を持っておられたというのが私の 感想です。それを基に東北大学のシステムは作っております。  もう1つは、日本の中の流れとして、平井先生も参加されておられた、臨床研究の利益相反 のポリシーに関するガイドラインを文科省で作成しています。この検討班での議論が非常にい いきっかけになりました。東北大学の場合、完全にこれに従っているわけではないですが、かな りこの意見を取り入れて作らせていただいています。  平成16年から平成17年の2年間、文科省の検討班がありました。ただ、この委員会はかな り大きな影響を与えていて、これができたことによって、たぶん各大学で利益相反に対して、そ ろそろ対応していこうという方向ができてきたのだと私は考えています。そういう面で、この委員 会は非常に大きなインパクトを与えるのだろうと考えています。  これに伴って、平成17年度は吉本前総長が非常に強いリーダーシップを発揮いたしました。 東北大学は総合大学ですので、医学系の方が総長になるというのは稀にしかないのですが、 医学系出身の方が総長だったということで、特任補佐という利益相反に対応する専任の教授を 指名していただきました。それは、経済学部の西澤教授ですけれども、それに伴って事務室に 専任の職員を置いていただきましたが、これが結構大きかったです。私も、併任でやっている と、いろいろな仕事があり、専任の職員が相当補助してくれます。  米国の視察では6カ所へ行きました。平成18年に自己申告のフローと申告書を作成し、まず 倫理委員会全部に挨拶に行って説明しなければいけないということで全部に行きました。東北 大学は総合大学ですのでたくさんの倫理委員会があります。しかも、最近は臨床研究は医学 部だけで行われるものではなくて、他学部で結構行われているので、そこを全部利益相反に関 しては統一しようという考え方でやらせていただきました。  そういうことで、学内での宣伝を含めて東北大学では、米国政府の人と、大学の担当者、それ からジョンズ・ホプキンスにも来ていただき、非常に格式の高い方々の意見を聞かせていただ き、パネルディスカッションをし、議論を深め、去年の11月から完全実施をしております。  どういう事例があるか、簡単に説明させていただきます。実施状況としては、平成18年11月 の導入で、大体毎月1回臨床研究の利益相反マネジメント委員会をやっております。これに伴 って、上部の一般的な利益相反を伴うマネジメント委員会が、学部長クラスの方が集まって月1 回開かれますので、その前に開く形になっています。  対象としては倫理委員会と治験審査委員会ですけれども、基本的にいままであった事例とい うのは全例が倫理委員会のほうです。当大学にくる治験というのは非常に問題のない治験が 多いので、ほとんど治験に関しての利益相反の問題はいまの現状ではないです。ただ、将来医 師主導の治験が出てくると思い、いま準備をしているところです。その事例について一つお話さ せていただきます。  マネジメント体制としては、必ずベースに一般的な利益相反があります。これは、年に1回東 北大学の全職員が、利益相反マネジメント委員会にすべてのものを開示していただきます。そ こで、一般的な利益相反は全職員に入る。それから、臨床研究に伴う利益相反というのは、臨 床研究のプロトコールが申請される前に、マネジメント委員会の方に出して、それを臨床研究 部会で一例一例非常に細かく検討し、一つの型を作っていく作業をいましている最中です。ま だ、完全には型が決まっていませんので、毎回1時間以上議論していますし、問題になる事例 に関しては、それぞれの研究者と個別にヒアリングしております。  それから、アドバイザリーボードを設けていて、年に3回東北大学の対応を説明しています。 マネジメント委員会は学部長クラスの方が集まって、臨床研究部会は臨床研究の専門家が集 まっている委員会です。利益相反専門の事務の方にいていただいて、事務をしていただける形 になっています。  9枚目ですが、利益相反のポテンシャルがあると自分自身で研究者が判断した場合に関して は、初めに利益相反マネジメント委員会の承認をしないと、倫理委員会の審査に入らない形に なっております。  10枚目が、実際の倫理委員会の開示内容です。いろいろな倫理委員会があるので倫理委員 会名、そういうのが全部ホームページで書式が揃っており、産学連携活動など、これが全部な しですと、自動的に倫理委員会の審査に入ります。6番目はどちらでもいいのですけれども、5 番目までに1カ所でもありますと、次の頁の詳細を記入する形になります。これは、奨学寄附金 も入ります。奨学寄附金は後で基準を示していますけれども、200万円以上、個人収入は100 万円以上という形で一応規定を作っております。この基準に関しては、文科省のガイドラインに 従っています。  12枚目は、インフォームド・コンセントの開示です。東北大学では、ホームページ上で一例とし て出しておりますが、一応あるということだけしか記載しておりません。それでいいかどうかは意 見が分かれますけれども、東北大学ではこういうことで、金額は記載しないでいいということで やっています。  米国でも金額は記載しないと聞いていましたけれども、状況によっては金額まで出していると 聞いていました。そこがちょっと違うところなので、ここは対応を考えなければいけないと思って います。  検討事例として、これはいままでにした例です。寄附講座による、医師による自主臨床研究で す。基本的に寄附講座自体は、東北大学の職員として同じに扱っていいという決まりが、東北 大学の中ではありますが、その寄附講座のお金を出してくれた所のプロダクトを臨床研究する 場合が出てきます。これが、非常に難しい事例だと思うのですけれども、この事例に関しては多 施設共同だったということもあり、認めさせていただきました。これも何回か話し合って決めたの ですが、経過報告をすること、効果安全性評価委員会をつくるということ。被験者への説明文 書の中に入れるということで対応させていただきました。  14頁は検討事例の二つ目です。これは、うちの利益相反マネジメント委員会で承認されただ けで、医師主導の治験という形ではまだ認められていない事例です。研究者が非常に心配され て、こういう形で東北大学としていいのだろうかということで委員会のほうに来た事例です。  普通、医師主導の治験というのは厚生科学研究費で行われるのがほとんどですが、最近さら にそれを適用拡大して、もう少し自由度の増す方向でやりたいという研究者が何人かいて、治 験届を出したいという方がおりました。  ある財団を介して行うのですが、このことに関して、厚生労働省に治験届を出す以前に、東北 大学の方でマネジメントでどうだろうかという意見を求められましたので、これに関して対応させ ていただきました。一応現時点では問題ないのではないか、というのが東北大学全体の考え方 です。  必ず実施する条件を付加して倫理委員会に戻していて、いま倫理委員会の審査中です。そ の後に治験相談に行くと伺っています。東北大学では、一元的に全学共通でやろうという考え 方で、一般的な利益相反、必ず毎年1回報告するのですが、それに付随する形で利益相反マ ネジメントをしているということで、特任補佐の西澤教授、事務室には2人の専任の職員がいま す。  ホームページを作っていますが、外部から見られるのと、内部から見られるのは少し内容が 違いますが、かなり透明性を確保しています。16頁は実際のホームページから取った、倫理委 員会提出用の書類です。この内容を決めるのも相当議論いたしました。夏休みにかけてずっと 議論して、それでも決まらず、いまだにまだ直す必要があると考えています。  実際の基準、どこをシーリングにするか、というのが非常に重要なポイントになってくると思い ます。これの真ん中より下のところに、ある一定額を基準に、産学連携活動とはという定義を決 めています。この定義が結構重要でして、うちの大学の考え方というのは文科省の考え方をと っていますけれども、この委員会等で全体の方針を決めていただければ、たぶん日本の中は すべてそういう方向に決まっていくのかと考えています。  あとは詳細ですが、これは研究者の個人情報がすべて集まってくることになりますので、一切 外部に持ち出さず、委員会の中だけでキープする形になっています。委員の方々には全部守 秘義務があるということで対応し、これで全部の内容を確認し、さらに必要があれば事務局から 細かい点に関して研究者に問い合わせています。  18頁では、臨床研究の定義は何かという質問を研究者からたくさん受けました。私の理解で は、心理学研究であっても、疫学研究であってもすべて入るということで何でも書いたのですけ れども、これも東北大学で決めた基準です。  また、研究者からは、実際の記載例を教えろと強く言われましたので、これも東北大学の利益 相反マネジメント委員会で審議し、こういう形だったらいいのではないかということで、外部アド バイザリーの方々には意見を聞いておりますけれども、一応こういう形で記載例を掲載し、実際 に個々の例に関しては全部確認しております。  毎年10月に、学内での啓蒙を兼ねて、20頁にあるようなセミナーをやっています。今年もなん とかしたいと考えていましたが、こういう形で、学内の関心を高めながら、なんとか産学連携活 動を妨害しないで、これは非常に難しい点で、先ほど委員長も言っておられましたし、平井先生 も言っておられましたし、課長も言っておられましたが、研究者を萎縮させないでやっていくとい うことが非常に重要なことで、ここはもう少し注意しなければいけないと思っています。  長くなって申し訳ありませんでした。説明は以上です。 ○笹月委員長  2人の委員から、それぞれ情報を提供していただきましたので、ここで質疑応答をしたいと思 います。ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○岩田委員  私は、ここにいらっしゃる委員の中では、こういう問題についていちばん詳しくないというか素 人的な立場ですので、基本的なことを両先生にいくつか確認のためお伺いいたします。  まず、平井先生のご報告についてです。私自身あまり詳しくないものですから、頭の整理がで きて大変興味深くお伺いしました。私のイメージする利益相反の問題は、大きくいうと三つぐら いの場面があります。間違っていれば教えていただければと思います。  一つ目は、ここではたぶん検討の対象にはならないという話が最初にあったように思うので す。大学と研究者の関係ということが、職務専念義務みたいなもので違反するかどうかというこ とがあると思うのです。  あとの二つがここでも対象になると思うのですが、患者の安全についての利益相反というか、 医師として患者をちゃんと診なければいけないという義務と、自分の利害が絡むというのが一 つの場面としてあると思うのです。  もう一つは、科学者というか、医学者というか、研究を行っていく上で、科学的にきちんとやら なければいけないというものと、自分の利害が衝突する部分があると捉えているのですが、そう いう捉え方でよろしいのでしょうか。  平井先生のご説明とずれるのかと思ったのです。これは、完全に素人の疑問なのですが、そ このところを少しお伺いできればと思います。 ○平井委員  1点目の職務専念義務については、利益相反の対象として一応入ってきます。ただ、その場 合にどう捉えるかというと、研究者や職員の責務・本務があるはずであるというふうに、組織側 ではなくて、研究者側が持っている一つのインタレストとしてそれを捉えます。それと、他の経済 的利益との衝突、あるいは他の責務との衝突ということで捉えることはあります。  私が最初に申したのは、組織そのものが持っているインタレストの衝突を考えてはいけないと いうことなのです。誤解を招いてすみませんでした。  2番目と3番目は比較的似たような感じだと思うのです。患者の生命・身体の安全、ないしは 科学的データの正確性、これはいずれも大事です。ただ、それを担保するためには、当然さま ざまなプロトコール、レギュレーションが決められておりまして、それは既に厚生労働行政の中 でも実行されていることだと思うのです。ですから、利益相反プロパーの問題としては、生命・身 体の安全やデータの科学性というよりは、むしろ研究者の置かれている状況のマネジメント、こ う言うと何を言っているんだというお叱りを受けそうですが、その方に重点を置きます。  副次的に利益相反マネジメントがうまくいっていれば、患者の生命・身体も当然守られるでし ょうし、データの安全性も確保できるとは思います。ただ、それはそれを目標にしたものではなく て、副次的な効果であると考えております。 ○岩田委員  よくわからないのですが、私がいちばん大事だと思っているのは患者の安全・被験者の安全 というのがあります。もしかするともっと重要なのかもしれませんけれども、科学的なデータの信 頼性というのが利益相反で問題になるのではないか、これはもしかすると誤解なのかもしれま せんが、素人的にはそう理解していました。  そこがいままでのさまざまなガイドラインで、すべて利益相反を理由にして患者の安全が多少 ゆがめられるということにすべて対応されていたのかなと、そこのところがよくわからなかったの です。既に対応されていて、そこのところはもう大丈夫なのだということであれば、まさに先生が 言われたように、それ以外の部分でマネジメントという議論は十分あるのかと思ったのです。ま ずはそこのような気がしましたし、それは私の無知だと思うのですが、そこのところが何か対応 できるとすごくいいのかと思うのです。それは、たぶん私だけではなくて、外から見ていてもその ように見えるのではないかという感想を持ちました。 ○平井委員  例を挙げて説明するとわかりやすいと思うのですが、どういう例がいいかと思って考えていた のです。 ○岩田委員  例えば、先生の中に入っていたゲルシンガー事件などは典型的な利益相反の問題で、しかも 被験者の安全が問題になっている事例ですね。裁判の結果が和解で終わっているのでという ことで出ていませんが、それなどはまさに利益相反で、通常の臨床の倫理委員会だけではうま く対応できていないような問題だったような気がするのです。そういうのは入ってこない問題な のでしょうか。 ○平井委員  ゲルシンガーさんの例で言えば、例えば研究している本人は非常に真面目に臨床治験をやっ ていて、たまたまそれに使うためのマテリアルが、自分の関連しているベンチャーでしか作れな い、しようがないからそこで買ってやっている。一生懸命やっているわけです。  そういうケースというのは、ある意味で先生にとっては不可避なケースだと思うのです。ところ が、その不可避なケースであるにもかかわらず、あるとき納税者で、例えば、あの先生は自分 の研究のために、自分の会社から物を買って、結局は自分で儲けて、それは自分の懐に入る のではないか、それはおかしいと言う方がいるかもしれないのです。そのときに、その先生は非 常に真面目にやっていて、しかもそれしか道がないので仕方なくやっているのに非難されるの は非常にかわいそうである。そこをどうやったらマネジメントできるのか。  そこで、対外的なアカウンタビリティの仕組みとして、本人にエクスキューズさせると、それは あまり効果がないから、替わって大学や組織の方で利益相反委員会をつくって、自己申告をベ ースに物事をすべて把握し、皆さんで考えて、もし正すべきところがあったら方向性を変え、あ るいは病院であれば、先生は非常に素晴らしくやっているということを説明してあげたい、という のが基本的なタスクなのです。  事故が起きたということは、これは理想ですけれども、IRBなり、治験委員会なりがきちんと機 能していて、レビューを行った上で、適切にその研究計画の訂正ないしは中止をできれば、防 げた事案であろうと思われるのです。 ○笹月委員長  岩田委員からの2番目の質問は、患者の生命・健康を守るべき医師が、例えば医師主導型 の治験をやり、そのことによって被験者に健康上の害が生じたということを称して、衝突と言っ ておられるのですか。 ○岩田委員  たぶん二つあると思うのです。実際に事故が起こったという場合、被害が出たという場合と、 そういうのがあることによって、本来は患者のためだけに一生懸命やらなければいけないの に、自分の利益のために活動しているように見える。だから二つです。見えるというアピアラン スの部分と、実際に被害が出るかもしれないということです。本来ならこの機械を使うはずだっ たのにこっちを使ってしまう、というようなことがあり得ると思うのです。  多くの研究者がきちんと真面目にやられていて、真摯にやられていて、しかも患者を治そうと 思ってやっているということについては全く疑いはないのです。少なくともアピアランスの点から いうと、国民がとか、納税者が文句を言うということよりも、被験者自身がそういうことに疑いを 持ったり、もしくはかわいそうな場合には被害を得たりということがいちばん重要な気がしたので お伺いしました。 ○笹月委員長  それは、新しい薬なり、新しい医療機器が、その医師にとっては医師由来のものであり、最終 的には利益を生むという場合を想定して言っておられるのですか。 ○岩田委員  それとその研究に対する。 ○笹月委員長  どこかにも書いてありましたけれども、そういう場合には、いわゆる治験なら治験、あるいは本 人が臨床研究の責任者とならないと。そういうことで、委員会なりマネジメントというところでは、 そういうところでマネージしようということでしょうか。 ○平井委員  例えば、ゲルシンガーさんの件が、日本で行われて利益相反のマネジメントにかかれば、まず 考えることは研究代表者を他の代表者に替わってもらうということがあると思います。  ほかにはもし第三者、別の企業から入手可能であれば別のマテリアルに替わってもらう。そ れが不可能であれば、物品購入に関する委員会でその点をきちんと議論し、物品購入の方で もう少しきちんとやってもらう。さらにエクイティについては、要するに株式とか新株予約権を持 っている場合には、それから直接利益を上げると非常に社会の誤解を生むことがありますの で、場合によっては寄託しうる機関があればそちらに寄託し、自らの手と離れたところで処分な いし管理をしてもらう。さまざまな手法で、先生にかかっている疑念を晴らすことはできると思い ます。それが、利益相反マネジメントの主たる役割だと思っています。 ○笹月委員長  岩田委員の三つ目の質問についてはどうですか。 ○岩田委員  いまお答えをいただきましたので結構です。 ○末松委員  谷内先生からご提示いただいた東北大学の例のことで伺います。私どもの大学でも寄附講 座によってサラリーがサポートされている教員、あるいは寄附講座でなくても、外部資金の導入 によって、私どもの場合には特別研究教員という制度があり、それによって研究とか診療に携 わる教員がおります。それが、安全な医療を提供したりするのに非常に重要な戦力になってい るということが現実問題としてあります。そういう方たちが参加する臨床研究とか治験のような 事例が、例えば東北大学であった場合に、そこの処理はどのようにやられているのでしょうか。  実は、平井先生から出された資料、あるいは文科省のモデルプログラムの会には私も出席い たしまして、私どもの大学の仕組みに関してもこれを参考にしていろいろやっているところです。 非常に難しいジャッジを迫られるケースも多々あります。非常に各論的なことで恐縮なのですけ れども、そういうところの基本的な考え方はどのようになるのかを教えていただければと思いま す。 ○谷内委員  寄附講座の事例というのは日本特有の事例だと思います。米国では、寄附講座というのは日 本ほど盛んではないし、寄附した所と大学との関連がわりと薄いと思うのです。日本の場合は、 どこどこ製薬の何とかの寄附講座というように冠が付きます。その会社の化合物を使っていな ければあるいは、ただ単に本当に純粋的なものであれば問題ないと考えています。私たちは東 北大学の中でもちゃんと議論をして、寄附講座であっても、普通の職員と同じにするという決ま りがあります。  ただ、その会社の化合物をダイレクトに臨床治験する、あるいは臨床研究するというのは、本 人たちは真面目にやっていても、外から見たときに何と言われるかわからない。しかも、そういう 目的で、逆に言うと製薬会社の方で寄附講座を作っている場合もあります。臨床研究できなけ れば困ることもあるので、やはりどこかで確認する所が必要だろうということなのですが、これは 非常に難しい点です。  確かに大学本部でも意見が分かれています。推進する形にすべきではないかということで、 全くフリーではいかんだろうという考え方と二つあります。これは、寄附講座の職員を公募した 場合でもすべて外から見たときは同じだと思うのです。やはり、どこかで見ていかなければいけ ない。その間を結構丁寧にマネジメントしていかなければいけないということで、現状東北大学 では臨床研究に入る場合に関しては、利益相反マネジメント委員会で承認を与え、理事のお墨 付を与えて、やってもいいですよということにしています。基本的には、先生がおっしゃるよう に、なるべくその研究者は外れることが必要ですけれども、やはり外せない場合もあります。 ○笹月委員長  やはり、それは無理ですね。例えば、寄附講座をつくってしまった後で、治験とか寄附した製 薬会社のケミカルコンパウンドを利用する研究ということを、後になって四の五の言うよりも、寄 附講座をつくるときに条件を付して、その寄附した会社の製品に関する治験は行ってはならな いとか、寄附講座をつくるときに前もって条件を付すというのは一般的にやられていないと思い ますが、そういう検討はされましたか。 ○谷内委員  それが、これからの論議です。大学の本音としては、なるべくたくさん寄附講座をつくりたい。 そういう条件を付けてつくってもらえるかということがあります。でも、見ていますとそれほど活発 に行われているのではなくて、ほとんどは非常に純粋学問的な研究をされています。その一部 だけたまに入ってくる場合があります。そういうことなので、最初に条件を付けることがいいかど うかということは、私は今でも疑問に思っています。そこまで求められるとなると、大学に帰って 相談しなければいけなくなります。 ○末松委員  これは非常にタッチな問題ですが、それを扱うのがここの委員会のタスクだと思っていますの であえてお話しました。ドネーションマネーというのは、基本的には見返りを求めないお金という ことで大学に入ります。そのお金を使って教員を選考するプロセスには、その会社の意思はほ とんどというか全く入らない。選考委員会というのがあり、非常に客観的に、ほかのファカルティ の教員と基本的には同じデュープロセスで選ばれるという事実があるわけです。  ケースによっては、選ばれた教員が、一体自分のサラリーがどこから出ているのか。うちの場 合ですと、慶應大学からお金をいただいているのであって、製薬企業からいただいているので はない。自分のものはほとんどの方がわかっていると思いますが、助教授クラスの方になると それもわからない。果たしてそこまで中立性を保って、コンフリクト・オブ・インタレストをマネジメ ントしようということをきちんとやったときにでも、しかもそれをディスクロージャーしても、それが 企業からいただいたお金を使って治験をやっているからよくないというところまで糾弾できるの かどうか。  いま、谷内先生も非常に苦しいお答えだったと思うのですけれども、要するに、そういうバジェ ツトリソースを使って、安全に医療ができるかどうか、あるいは研究のプロトコールが特定の分 担者に当たるような研究者が、仮にそういう外のリソースからサラリーが出ていたとしても、その 方は普通バイアスは持っていないわけです。その方が仮にバイアスをかけたとしても、臨床研 究の結果には全く影響がないということが、第三者が見てちゃんと担保できるのであれば、ドネ ーションマネーを使って、こういうスタディをやるのは問題ないのではないかと思うのです。その 辺について東北大学ではどういう議論があったのか、もし何かありましたら教えてください。 ○谷内委員  この検討事例がまさにそれなのです。これは実際に患者の症状を評価するのですけれども、 症状を評価する方が、これは寄附講座の職員ではなかったということ。医師は全部寄附講座の 職員だったと。評価する人は、いわゆる医療関係者なのですけれども、その人は寄附講座の職 員ではなかった。この方が実際に患者の症状を評価しますので、ここでこの方は大学の別な正 規職員ではないですけれども、一応寄附講座とは全く関係のない職員だった。そこで担保でき るだろうということで、苦し紛れにこの事例に関しては認めた例です。  あとは、多施設共同だったということです。100症例ぐらいのうち、東北大学では10症例だっ たということで、バイアスがかかったことに関して、ほかの所は全部寄附講座ではありませんで したので、そういうことで効果安全評価委員会だけ設置し、そこでしっかり見てもらえばいいだろ うということで認めました。研究者ともかなりディスカッションしました。2時間以上かけて、問題 は理解していただきました。ただ、こちらで結構こまめにヒアリングしないと問題点を理解しても らえないということです。  また、同じ状況のときに将来どうするかというのは、こういう委員会での検討結果を基に、東 北大学の方で基準を作り直すつもりでおります。今回は、こういうことで認めたということでご理 解いただきたいと思います。 ○笹月委員長  その場合、先生がおっしゃったのはドネーションで、言うなれば委任経理金みたいなことがあ ります。一方、先生がおっしゃったのは寄附講座の話ですから、これはまた話が違うと思いま す。寄附講座の場合、例えば寄附をした企業の製品の臨床治験を行うというようなことは普通 は考えられない、やってはいけないことだろうと単純に思います。  ところが、一方、委任経理金というのは、いまはどうか知りませんが、まだ大学が国立のころ には一旦国庫に入ってしまって、支出のときも国から来たお金として使用するわけです。だか ら、先生がおっしゃったように、そのお金で誰かを雇用したとしても、そのお金がどこの企業由 来のものかは全くないわけです。そういう場合といわゆる寄附講座の場合とは、全く区別して議 論しなければいけないだろうと思います。 ○谷内委員  先生のおっしゃることは非常によくわかります。ただ、寄附講座が置かれているのは、基本的 には委任経理金と同じ扱いだと思います。 ○笹月委員長  これでいいかどうかという。 ○谷内委員  はい。大学での取り方は、寄附講座のお金というのは委任経理金と同じ扱いで入ってくるわ けです。 ○笹月委員長  国庫に入るわけではないでしょう、国立のときには国に入るわけですから。 ○谷内委員  東北大学に入って、そこから関連するところに行くという形になります。委任経理も基本的に は日本だけのシステムだと思います。これは条件なしとなっていますが、必ず決まった研究者 のところに行く。 ○笹月委員長  それはそうですね。 ○谷内委員  ただ、本当のドネーションだったらどこに行ってもかまわないわけで。 ○笹月委員長  大学に対するドネーションならそうでしょうけれども、研究者を特定した、あるいは講座を特定 したドネーションであればそこに行くわけです。ただし複数、10カ所とか20カ所の企業から来た 場合にはそれがプールされてしまう。それがどうかということでしょう。その点も今日の課題とい うよりも、将来検討すべき課題として項目立てしておかなければいけないと思います。 ○谷内委員  寄附講座でもたまにそういう事例がありますね。何十社からいただいて寄附講座をつくる、こ れも多分出てくると思います。 ○平井委員  非常に難しい問題にいきなり入ってしまったのですが、確認をしておきたい点がいくつかあり ます。これは私個人の考えですが、奨学寄附金、寄附講座の場合でもそうでしょうがドネーショ ンが入る。それをベースにして医療を行う、あるいは事務スタッフをお雇いになる。あるいは研 究を進める。広く言えば研究室マネジメントですね、こういったことは確かに重要だと思います。  利益相反マネジメントについては、現実からスタートしないといけないと思います。理想を述べ て、それを押しつけるというのでは機能しないと思います。現実からスタートすべきと思っていま す。  したがって、ドネーションをベースにする現実のニーズというのは踏まえるべきだと考えていま す。もちろん、政策的にはドネーションではなくて、内部資金で回すようになるときが来かるかも しれません。それは今ではないので、現在はドネーションをベースにするというのを一応理解す る。それをまず一つ置く。  次におっしゃったように、寄附金というのは全くヒモが付かないのか。理論的には当たり前で すが付かないです。私は一応弁護士ですが、契約書を書くときに寄附金のところで対価を付け たりは絶対しません。そのようなことは理論上はあり得ないのです。  ところが、問題点はそこではなくて、理論上対価がないからではなくて、奨学寄附金というもの が日本の社会の中で、構造的に一定の対価があるものとして使われるケースが多かったという 歴史があると思います。これも否定はできません、やはり現実ですから。さらに、寄附講座の場 合にも、やはり一定の対価というものが意識されたことがあったと思います。だから、理論的な 部分と現実を踏まえないといけないと思います。  そういったものを踏まえて我々はどうしたらいいのか。マネジメントというのは、先ほども言った ようにアピアランスの問題なのです。結局、今回最初に話があったタミフルもそうなのですが、 いろいろな方がいらして、やはりあの先生はあの企業から5,000万もらっているのだろう、3,000 万もらっているのだろう。一般市民から見たら非常に高額なお金ですよね。  そういう中で、本人がいかに真面目にやっていても、それを本人が代弁できない苦しさがある と思います。基本的にはそこをどうするか。先生がきちんとやっているということは誰も疑いがあ りません。ただ、それを代弁する仕組みを作ってあげないといけない。あるいは、代弁できない 場合であれば第三者機関を設置する、あるいは何らかのマネジメント手当をしてあげることが 必要だと思います。それがスタートだと思います。話が元に戻ってしまいますが、ドネーションの 問題はそういった現実を踏まえて、それを否定したりするところから始まるのではないと考えて います。 ○北地委員  利益相反の問題は平井先生もおっしゃったように、また谷内先生もおっしゃったように現実的 に解決することがまさに必要で、あまりきれいに理論化できないと思います。最初に岩田委員 からご質問があったように、例えば臨床研究と治験、両方ともが確保すべきアピアランスの対 象が違うと思います。患者の場合と納税者、両方に対して自分の独立性を証明するのはレベ ルが違う問題です。  それから、講座制のもとでそういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、人が代われ ばいいかというと例えば組織の上下関係にある、教授が受け持って、准教授というとそういう議 論はないのですが、評価体系で下位にあるものが、別の人だからやっていいかということもあり ます。  外部からいきますと、これは最近悩ましい問題ですが、医療関係の寄附金をくれる相手が非 常に合従連衡が多いところで、お金を続けてもらっているところに全然別の会社で、研究を受け ていたものが合併してしまったということも起こります。これはあまりきれいに、スパッとは割り切 れないなといつも思っています。  組織がどういうポリシーを持ってそれを判断していくか。あと、他の事例、寄附講座のように日 本特有ではないのかもしれませんが、非常に特徴的な事例がありますと、これに関して他校、 あるいは他の研究機関がどのような解決手法を持ってやっているか。ここの意見交換が活発に 行われることがこれから必要だろうと思っています。 ○末松委員  平井委員の先ほどのお話、非常によくわかりました。私どもの場合、最近あった例で、抗癌剤 の臨床研究に当たるものに関して、いわゆる寄附講座ではなくて、特別研究教員で、そのバジ ェット・リソースをただすと、その会社からいただいたお金を使ってやっている方が分担研究者 の中にいたケースがある。結局、我々はファースト・ケースに関しては、そのバジェット・リソース を、善意の研究代表者から報告が最初の段階でありましたので、結局そこをどう処理しようか。 つまり、本人からこれは利益相反状態にありますのでマネジメントにかけてほしいということで、 私どもの委員会に来ました。そのケースの場合には、基本的にはこういうリソースでお金をいた だいて、サラリーの出ている教員がいますということ。それから、これしか方法がないというよう に我々は判断したのですが誓約書を取ること。つまり、それによって結果が左右されないという ことです。これは紙切れといえば紙切れかもしれません。  しかし、きちんとした誓約書を作って、それを被験者の方に全部ディスクロージャーして、参加 されるかどうかというところまでやってゴーサインを出した。そこまでしか出来なかったと言うべき か、そこまでやったと言うべきかわかりませんがそういう対応をせざるを得ない。最初にディスク ロージャーされているということが非常に重要だろうというように、私どもの認識ではそういうよう に考えています。 ○望月委員  先ほど平井先生が言われた中で、本人は真面目な研究をしているのだけれども、本人が言う とバイアスがかかってうまく代弁ができない。第三者機関でもしそういうものができたら、そこで 代弁してくれという。私は非常にいいシステムだと思います。  事実、日本にはそのような機関というのはあるのでしょうか。あるいは、これからつくる方向が あるのか。あるいは、この委員会としてそれを目指すのか。本当の素人としてお聞きしていま す。 ○平井委員  多分、いままではなかったのではないかと思います。いままでというのは、例えば20年前、10 年前というスパンの話です。利益相反ということが議論されたのが、あれはかれこれ7、8年ぐら い前ですか。その辺からこの議論が日本では始まりました。こと臨床研究については、本当に この2年ぐらいの話です。私たちが認識しているのは、これからそういう組織をつくることによっ て、まさしく先生がやられたようなマネジメントを各組織で実践していただきたい。  いみじくもおっしゃられたのですが、ディスクロージャーがないと物事が動かないのです。その ためには申告の仕組みづくりが必要なのです。申告をしていただいて、それを議論してフィード バックをかけていくという仕組みづくりが必要である。そのために、何らかの機関があった方が いいだろうと思っています。それをこれから大学であれば大学、国研であれば国研、そういった 組織の中につくっていくようになると思います。 ○望月委員  ただ、同じ大学、同じ研究所内につくったとしても、世の中のごく一般の人から見ると、「何だ、 仲間うちでかばい合っているではないか」と取られると思います。そうすると、ある意味独立した 機関で、そこにはごく一般の人、「ごく一般の人」とは誰かというのは難しが、そういう人たちの 常識にもきちんと訴えられるような機関がやはり必要かなという気がします。 ○木下委員  医師の間では利益相反というと、最初に岩田先生がご質問になったような、そもそも具体的 にどういう事なのかがまずなかなかわかりづらいのです。1、2、3とご質問があり、3は2に含ま れるというお話がありました。  利益相反そのものというのは、狭義の利益相反と責務相反に分かれるというところからまず よくわからなくなりました。先ほどご説明があったことはわかるのです。その2つを同時にコント ロールというか、マネジメントしていくという方向なのだろうと思うのですが、そもそもは国民と か、「納税者」とか、我々もそうですが国民の目でこれはおかしいということがない限り、個々の 例においてディスクロージャーされ、納得されればいいわけです。法的なことはよくわからない のですが、具体的に典型的なものを例示していただき、これに対しては狭義の利益相反だし、 これは責務相反である。だから、こういうようなマネジメントをしていくことが望ましいというお話 をいただかないと、あまり観念的な言葉だけではわかりません。寄附講座は具体的にわかりま すが、是非そういったことを整備していただきたいと思います。どうも、まだ議論に入り込めない ものですから、是非その辺から整理していただきたいと思います。 ○笹月委員長  そういう意味で、今日、お二人の委員の方にご説明願いました。ただし10分しか、それぞれの 担当の方に時間が割りふられていませんでしたので、わかりにくい点もあったかと思います。  まず、木下委員がおっしゃったいわゆるコミットメントのほう、「責務相反」については、課長、こ れは今回の検討には入るのですか、入らないのですか。これは入れないということでよろしいの ですか。 ○藤井厚生科学課長  のちほど、事務局から、資料に基づいて考え方の整理としてご相談しようと思っておりました。 私どもが当初考えていたのは、あくまでも国から研究費をもらった方の企業等との利害の衝突 ということですから、広い意味での責務相反というのは対象にならないのではないかと考えてお りました。ただ、いわゆる狭い意味での利益相反の中にも、責務相反という部分がどうしても入 り込む、そこも考慮する必要があるという議論になりましたら、そこは私どもとしても委員会の判 断に委ねたいと思います。 ○笹月委員長  どうもありがとうございました。次に進みたいと思います。谷内委員にお伺いしたいのですが、 大学の場合、企業からお金が入ってくる入り方に関しては、これまでは「委任経理金」という形 がいちばん一般的だったと思いますが、どういう入り方があるのか。先ほど寄附講座、委任経 理金、その辺をちょっと整理していただいて、それぞれについて区別しながら議論したほうがい いだろうと思います。 ○谷内委員  私の資料の17頁に、どういう産学連携活動があるかを簡単に、私たちが基準としているもの を提示していますのでご覧ください。「東北大学における臨床研究に係る利益相反の自己申告 書(詳細)」というもので、先ほど言いました活動の中にこの「共同研究」というものがあります。 これは企業と大学、あるいは国研でもいいのですが、一緒にフィフティー・フィフティーで行うとい う考え方のものです。これはかなり企業と共同でできるものです。  「受託研究」というのは、多分大学だと治験になります。治験がどうして受託研究になっている か、私も未だにわからないのですが、通常は小さな町工場から頼まれて何らかの形で受託して 行うのが受託研究です。共同研究、受託研究というのは結構、企業と関係が密接なものです。 ですから、これは通常の契約に基づいて行われるもので、いわゆる普通の寄附とは違う。  次の「奨学寄附金」というのは日本独特のシステムかと思います。研究者に企業からお金が 入ってくるのですが、条件はなし、あくまでも寄附金で行う。やはり、少しずつ意味合いが違う。 私たちの考え方というのは、共同研究、受託研究であれば企業にデータをフィードバックしても いいだろうという考え方をいま持っています。ただ、受託研究と違って、奨学寄附金の場合に関 しては完全に独立ということで考えています。ただ、我々が論文を書くことには自由がある。そ れ以外にも「学術指導」とかあるのですが、これは特別なシステムなのであとに回します。  あと、利益相反の問題になってくるのは、物品購入は決して無視できないということが多くあり ます。これは結構重要なテーマです。あるいは、利益相反でいちばん社会の批判を受ける例と いうのはエクイティの問題です。これは我々自身も非常に注意して見ているところです。  実際に困った例というのは、無償での機材の提供、薬の提供です。これはマネジメントがもの すごく大変な領域であります。この辺をどうするかという点も、まだ特に完全な解が見つかって いないと思います。 ○笹月委員長  これはいわゆる、各論として今後検討するときの参考にここにまとめていただいています。こう いうことを参考に、次回以降検討したいと思います。  事務局から、今日、そのほかいくつかの資料を準備していただいています。その説明をよろし くお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料1-4以降、参考資料も含めて簡単にご説明いたします。資料1-4が参考資料などでいろ いろお手元に置かせていただいていますが、「各種指針等における利益相反について」というこ とを簡単にまとめたものです。まず、1番目に、研究に関する各種指針における利益相反に対 する考え方についてということで、既に何人かの先生方は言及されていますが、臨床研究に関 する倫理指針、疫学研究に関する倫理指針の細則では、研究計画書に一般的に記載すべき 事項及びインフォームド・コンセントの際に研究対象に対して説明すべき内容として、「当該研 究に係る資金源、起こりうる利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わり」を挙げていま す。  別添参照ということで、次の頁に「臨床研究に関する臨床指針Q&Aより」を別添しておりま す。「臨床研究の実施に際し、私企業から研究資金や報酬の提供を受けることについて、本指 針においてはどのように解しているか」といったQ&Aがあり、そういうようなものについて整理 して載せています。こちらに関しては、残部が少ないとご紹介した先ほどの冊子の方に他のとこ ろも含めて載っていますので、そこからの抜粋となっています。  資料の2頁、別添では先ほどの質問に対し、「研究資金等の提供を受けることにより発生しう る研究者の利害の衝突等により、研究の本質が歪められるようなことがあってはならないこと はもちろん」ということで、そのあと「一方」から、「基礎レベルにとどまっている研究成果を臨床 に応用する機会を促進し、国民の保健医療水準の向上に貢献しうる医薬品等として上市され るためには、いわゆる治験をはじめとする商業活動の一環としての研究を経ねばならず、一律 に利害関係のある企業と関わりをもつ研究を禁止することが医薬品等の開発を阻害することも 考えられる」としています。「したがって、こうした利害の衝突については一律に禁止するべきで はなく、それぞれの研究を取り巻く状況等に応じて個々に判断することが適当であることから、 研究計画書及び被験者に対するインフォームド・コンセントに記載するべき事項として、『当該 臨床研究に係る資金源、起こりうる利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わり』を挙げ、 倫理委員会や被験者自身がこうした利害の衝突について判断できるようにしているところであ る」という解説を書いています。  その下、Q3.8では「臨床研究計画書に記載すべき事項及び被験者等に対する説明事項とし て、『当該臨床研究に係る資金源、起こりうる利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わ り』とあるが、具体的に何を指すのか」という質問に対し、回答を書いています。  利害の衝突として、「ヘルシンキ宣言」における“Conflict of Interest”を邦訳したものという注 釈があり、こちらに関しては、「研究者等が研究の実施や報告の際に、金銭的な利益やそれ以 外の個人的な利益のためにその専門的な判断を曲げてしまう(もしくは曲げたと判断される)よ うな状況を示す」と書いています。  そのほか、「金銭的な利害の衝突とそれ以外の利害の衝突に分類できる」として、先ほどご指 摘があったように、臨床研究に係る資金源の他に、機器や消耗品等の提供を受けること等とい った解説がこちらに書いてあります。  1-4の最初の頁、2.として、他省で検討されている利益相反に関するルールの設定状況として どういうものがあるのか、文部科学省では平成14年11月、科学技術・学術審議会、技術・研 究基盤部会、産学官連携推進委員会の利益相反ワーキング・グループ「利益相反ワーキング ・グループ報告書」というものが出されています。もう一つ、参考資料でも準備していますが、平 成18年3月、臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策 定に関するガイドライン」というものがあります。こちらは利益相反、責務相反も含むということ ですが、概念整理と問題点の指摘が行われ、大学及び独立行政法人等に対して利益相反ポリ シー及び利益相反管理規定を策定し、運用するよう求めるというものでございます。  参考として、「米国における利益相反に関する状況」ということで少し記載しています。NIH、 FDA、NSFによる規程、州政府による規程に基づいて、AAU、AAMC等、大学関係団体による 提言などを参考に各大学等で規程を作成し、利益相反のマネジメントを行っているという実態 があるというように承知しています。研究者個人や配偶者等に対する一定基準以上の金銭的 利益について、定期的に大学に開示し、それを機関の利益相反委員会において検討・審議す ることにより管理している大学があるということです。3頁に「参考」として、NIHの臨床研究実施 者に関する金銭上の開示基準、FDAの臨床試験実施者に関する金銭上の開示基準を記載し ています。  資料1-5ですが、こちらは利益相反の定義です。いま、既に議論していただいていたわけです が、各種文献等でどういう定義があるかといったものを簡単に整理したものです。1.として科学 技術・学術審議会、技術・研究基盤部会、産学官連携推進委員会利益相反ワーキング・グル ープ「利益相反ワーキング・グループ報告書」の中では「真理の探究を目的とし、人類共有の財 産とするための研究成果の公表を原則とする大学と、利益追求を目的とし、営業上の秘密を 競争の源泉の一つとする企業とは、もとよりその基本的な性格や役割を異にしている」。一部 略して、「このような両者の性格の相違から、教職員が企業等との関係で有する利益や責務 が、大学における責任と衝突する状況も生じうる。このような状況がいわゆる『利益相反 (Conflict of Interest)』と言われるものである」、こちらは大学の方を中心に書かれていると理解 しています。  2.として、臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に 関するガイドライン」では、「教育・研究という学術機関としての責任と、産学連携活動に伴い生 じる個人が得る利益とが衝突・相反する状態が必然的・不可避的に発生する。こうした状態が 『利益相反』と呼ばれるものであり」という表現がございます。  3.として全米大学協会(AAU)では、もう少し原文は長いのですが、ポイントを訳し出したもの をこちらに書いており、個人レベルの利益相反については「研究を実施し、成果を公表する活 動において、金銭的な要因で研究者の職業上の判断力が損なわれる、又は損なわれたように 見える状況を指す」という表現でございます。組織レベルの利益相反については、「大学、その 上級役員や理事、学科、学部その他の組織、又は提携機関や団体が、大学の研究プロジェク トに金銭的な利害関係を有する企業と外的関係又は金銭的な利害関係を有する場合に、大学 レベルの金銭的利益相反が起こる可能性がある」という表現があります。  続けて、資料1-6の説明をいたします。こちらは事前に、当課で「検討における留意点などに ついて」ということで作成したものです。この内容については本日、あるいは今後のご議論によ って、いろいろ変えていく点があると考えています。  まず1点目としては「情報の公開・透明性の確保を基本として、厚生労働科学研究における 利益相反に関する指針を示すよう検討する」と書いています。2点目として、「利益相反関係等 について明確にした上で、申請・採択がなされるよう、また現実的な指針となるように留意す る」。「厚生労働科学研究」という特性があり、申請していただいて採択という点を踏まえ、この ようなことを記載しています。  3点目としては「被験者と研究者・企業間の利益相反(被験者や研究者の興味や企業の利益 行動において不利益を被らない)、及び公的研究としての厚生労働科学研究と研究者・企業間 の利益相反(例えば、規制当局が利用するデータを供する研究について、研究者又はスポン サーとなる企業が自らに有利な結果を出すのではないかとの懸念)を対象とし、責務相反(研 究者が所属する機関の業務以外の業務を実施することにより、所属機関に対する職務遂行責 任が果たせなくなる状態)等は対象としない」。こちらも先ほどご議論いただいているところです が、フォーカスを広げすぎるとこの検討会はなかなかまとめが難しいのではないかと考えていま す。厚生労働科学研究というところに焦点を絞れば、こういう整理でいかがかということで書い ています。当然、先ほど課長が申しましたように、この辺はなかなか仕切りが難しいということで あれば、今後、議論の中で整理をもう一度ということがありうると考えています。  あと、こちらも既にご指摘いただいているところですが、利益相反問題の対象となる行為等に ついて誤解が生じないように留意する。確かに、なかなかわかりにくいという話は我々の耳にも 入っています。この取りまとめをする際には、どういうものが対象かというところが出来るだけわ かりやすくしたいと考えています。  もう1点、政策的必要性が高いものの競争的環境では取り組みの進まない研究課題の解決 を図るための枠組みとして、厚生労働科学研究費補助金では、研究者を厚生労働省側が指定 する研究、「指定型の研究」と言っていますが、そういうことが実施されていることなどに留意し て検討を進めるということを我々としては考えています。注釈としては、「指定型とは、『行政施 策の推進のために必要な研究課題であって、優れた成果につながるものにするため、当該研 究課題を実施する者を指定するものをいう』と定義されている研究」で、いわゆる一般公募でな く、特定のこういう課題があり、ある先生のところにノウハウがあるのでやっていただきたいと言 っているような場合があることを示しているものです。  参考資料もご説明いたします。参考資料1は「名簿」です。参考資料2が平成14年11月の 利益相反ワーキング・グループの報告書です。内容については説明を割愛いたします。参考資 料3が谷内先生からの資料の中にも出てきましたが、各大学ではこれをかなり参考にされてい るのではないかということで、「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」です。 参考資料4がAAUのレポート、“Individual and Institution Financial Conflict of Interest”という もので、海外の情報も参考になると思って参考資料としました。  続いて、これはこちらからのお願いです。本日の資料以外に今後の検討に参考とすべき資料 など、お気づきのものがあれば、各先生方、どうぞ事務局に言っていただきたく、そういうものが あれば、この次か、さらにその次になるかもしれませんが、委員会の席上で使えるような形で整 理したいと思います。まず、我々が委員会を始める前に見ていて、必要と思われる資料をお示 ししておりますが、今日も既にこれ以外の資料に関してご発言がありました。あとでこちらから、 そういうような資料についても問い合わせをさせていただきます。その際にはどうぞよろしくお願 いいたします。資料について、概略の説明は以上です。 ○笹月委員長  どうもありがとうございました。資料をご説明いただきました。資料1-6、これがこの委員会が 留意して検討すべき点です。もうちょっと申しますと、最終的にはこの委員会は利益相反に関 する指針のようなものをアウトカムとして出したい。ただし、それは2番目のポツ、現実的な指針 となるように留意する。平井委員もおっしゃいましたが、机上の空論であっては駄目だ。現実に 即した、それが役に立つ指針でなければならない。  それから、3ポツの後ろのほうに、いわゆる責務相反のコミットメントに関する相反、プリンシプ ルとしては対象とはしないというセンスで行きましょう。これは先ほど課長もご説明になったとお りです。最後のところの「指定型の研究」、これは一般の競争的スキームとはまた違って、トップ ダウン的な、国(この場合は厚生労働省)が指定する研究、研究者も指定することになるわけで す。特に、この場合には利益相反を十分注意しなければいけないので、この点についても議論 を深めなければいけない。そういう留意点を常に意識していただいて、議論を次回から深めて いただきたいと思います。 ○北地委員  資料1-6の3ポツのところの範囲なのですが、1-5、AAUと比較すると、いま日本の利益相反 というのは個人的な範囲にまだとどまっています。組織レベルの利益相反の議論はシステム的 に対応しなければいけないこともあってやっていないのですが、1-6の3ポツもまだ個人的利益 相反、研究者個人という対象になっています。組織的利益相反は今回の範囲にはまだ含まな いと考えてよろしいですか。 ○笹月委員長  いや、一応これは当然考えなければいけないと思います。 ○北地委員  わかりました。 ○谷内委員  日本の場合というのは、組織的なものと個人的なものがかなり密接してくるという特徴がある ので、全く除外することは不可能ではないかと感じています。 ○北地委員  「研究者及び研究者が帰属する組織」ですね、わかりました。 ○笹月委員長  もう一つ、参考資料2、平成14年版とちょっと古いですが、その3頁の終わりから4頁をご覧 ください。ここに先ほど木下委員からご質問があった「利益相反とは」、それから個人の利益相 反、組織としての利益相反、責務相反ということに関して、スタンフォード大学の“Research Policy Handbook”で述べられたことが非常にわかりやすく書かれています。これを是非、ご参 照いただければと思います。そのほか、ただいまご説明いただいた資料についてご質問はあり ますでしょうか。 ○末松委員  これは厚生科学課長にお伺いします。これも非常にナイーブな問題なのですが、参考資料2 の別添のところに「利益相反が発生しやすい具体的場面」とあって、ほとんどが大学関係のも のばかり出ています。これは非常に重要な問題ですので、当然議論すべきだと思います。  1点伺いたいのは、非常に先端的な医療技術や新しい技術を厚生労働科学研究費等でサポ ートされている、あるいは経済産業省等でサポートされている研究が多数あると思います。厚 生労働科学研究費に関して審査の段階で、例えば文部科学省関係、JSTの研究等ですと、も ちろん審査の中で審査を受ける側が所属する大学機関、あるいは研究機関に属するレフリー の方がいた場には当然抜けていただく。あるいは、もう一歩踏み込んで、例えば審査される側 がベンチャー企業などの場合、その企業と直接何か関係のある方は事前にチェックをして、 Confrict of Interestをチェックして抜けるという仕組みがかなり厳密にある。私がJSTの審査の 関係で入ったときにも経験したことですがやられています。厚労科研の場合、そこはいまどうな っているのか伺っておきたいと思います。いかがでしょうか。 ○藤井厚生科学課長  今回、お願いしている利益相反に関する検討とは、直接は関係がないお尋ねかなと思いま す。研究費を採択する場合、評価をする側が申請された研究者と何らかの関係がある場合に ついては、判断には参加をしていただかないというルールで運用しています。 ○末松委員  具体的に利益相反のマネジメントで、例えば私は一切COIがありませんという一筆を取るよう なところまではやっていないのですか。 ○荒木専門官  厚生労働科学研究費の中でも制度が若干異なる部分があるのですが、ファンディング・エー ジェンシーにおいて評価などをやっているものについては、一筆を取るような仕組みでやってい るものもあるといったところです。 ○末松委員  つまり、まだ統一的にルールづくりというところまでは徹底しているわけではないということで すか。 ○荒木専門官  同一組織の方が評価に加わらないといった部分は統一でありますが、一筆を取るようなとこ ろはまだ統一ではありません。 ○笹月委員長  一般に文科省の科研費の場合、審査委員が審査対象の課題、あるいは提出者とどういう関 係にあるか。まさに、「利益相反」という同じ言葉が使われています。本委員会ではいわゆる企 業が出資者としての利益相反ということですので、同じ「利益相反」という言葉でも、科研費の 審査の場合は、審査委員と応募者との関係が対象になります。これに関しましては、一応、最 初の議論からは除外しておいて、これが全部済んだあと、もし時間があれば厚労科研費につい てもそのようなルールづくりが必要であるということを提言し、時間があればそれに踏み込んで もいいかと思います。それはこれが済んだあとにしていただければと思います。 ○木下委員  最終的には、利益相反のマネジメントという方向で行くべきであることはわかります。特に、こ れから何をするかという点では、「厚生労働科学研究における」ということをあえておっしゃって おられるわけです。私は5種類ぐらいの研究のタイプがあったと思いますが、どうあれ、それほ ど大きな額の研究費ではないわけです。有能な研究者のところ、例えば億の単位の研究費を もらう方は当然おられると思います。そういう方は企業の研究所からでも、是非、一緒に研究し てほしいというのは当然なのです。我が国の科学研究の研究費というのは、おそらく諸外国か ら比べれば非常に微々たるものだと思います。この利益相反マネジメントがこういう場合には科 学研究費を出さないというような、ネガティブな方向ではなくて、幅広く、企業からもらうとしても 許されるではないかという視点での、ポジティブな方向でまとめていただくことが国にとっても、 国民にとっても大事なことではないかと思います。  見ていると、禁止する方向性のように見受けられます。国民が求めているのは本当にそうな のかを考えると、先ほど平井委員がおっしゃいましたが、現実的に前向きの意味だろうと思いま す。やはり、そういう前向きな視点でのまとめ方で行っていただきませんと、知的立国を目指し ている我が国にとってはブレーキになるだろうと思います。是非、そういった視点で考えていた だきたいと思います。 ○笹月委員長  木下委員がいまおっしゃったように、平井委員が言われた現実を踏まえてということはそうい うことも含んでいると思います。また、藤井課長が最初のご挨拶のところで述べられた、国とし ては産官学連携ということを推進しようとしているときですので、いろいろな形で「学」と「産」との 間の関係はむしろ推奨されているときであります。おっしゃるようにあれも駄目、これも駄目とい うのではなく、どういう形でならタックス・ペイヤーに納得してもらえるのかということが一つ検討 の視点になろうかと思います。今後の検討のとき、そういうことも常に意識していただければと 思います。 ○平井委員  いまのお話、まさしくそのとおりだと思います。多分、バックグラウンド的に言うと、利益相反と いうのはなかなか誤解があって、産学連携のブレーキはやめてくれと言われる方もいらっしゃる のです。本当はブレーキではなくて、産学連携を推進するための1つのシステムなのですが、な かなかそこをご理解されていない。  内閣府や各省庁でもいろいろ考えられて、ナショナル・グラントを1つトリガーにして推進でき ないかというのがバックグラウンドとしてあると思います。もちろん、皆さんに利益相反のマネジ メントをやってもらいたい。ただ、少なくとも厚労科研費、文科省からの科研費、NEDOからの科 研費、こういうものが出る場合には出来たら利益相反のマネジメントをきちんと行った上でやっ ていただきたい。そういうように、一つ前に進めるためのトリガーだと思います。決してネガティブ ではないと考えています。 ○笹月委員長  先生のおっしゃったセリフで言えば、ブレーキではなくてハンドルであるということですよね。 ○岩田委員  いま、木下先生や平井先生が言われたこと、私も本当にそのとおりだと思います。是非、そう いう方針で行っていただければと思います。その研究を進めていくためにも、国民の信頼や臨 床研究に関与していただく被験者の人たちの信頼が多分重要だということだと思います。  二つほど、是非お願いしておきたいと思います。一つはここでも議論がいっぱい出たと思うの ですが、開示の十分性、誰に対してどこまでやらなければいけないのか。谷内先生からも今 日、先端的なご紹介もありました。いろいろな立場の人からそういうことについて、例えば患者 側とか被験者側の人はどの程度開示を求めているのか、海外ではどの程度のことを求めてい るのかということについて、一度集中的に議論していただきたいというのが一つ目のお願いで す。  二つ目は今日、谷内先生から先端的な取組みということで、利益相反委員会の非常に真摯 な、しかも相当労力を使われている努力を見せていただいたあとに思いました。それ自体は非 常に素晴らしいと思うのですが、私自身もわからないことなのですが、もしかすると大学とか、 場所によって倫理委員会とか、利益相反委員会の資源の問題もあると思います。谷内先生の ところのように大変立派な大学だと、本当に徹底的にやるということが可能なところもあるし、そ うでないところもあると思います。そのように、ある程度信頼をうるためには統一性と、そこをサ ポートするようないろいろなシステムがきっとあると思います。先ほど、専任の事務の方がいる ということも重要だということをおっしゃられましたが、利益相反委員会のようなものを機能させ るための現実の実態認識とそのためのサポートシステムについて、何か議論をしていただける と非常にありがたいと思っています。 ○谷内委員  私の考えとして二つあります。文科省の考え方というのは、全部大学に丸投げしている。そう されると、大学としては一生懸命やらないとならない。しかも、米国の例だと、一生懸命にしてい るところだけ研究費が付いているという実例があります。  もう一つの考え方としては、厚生労働科研費のようなものを出すときに厚生労働省のほうに 開示するという考え方があると思います。どちらを取るかによって考え方が違ってくるのではな いか。厚労科研のほうも全部大学に丸投げしてしっかりやりなさいということをされるのか、ある いは厚労科研費を申請する段階で、申請書のほうに私たち研究者が開示するか。二つあると 思うのですが。 ○笹月委員長  プリンシプルとしては、申請のときにそこをきちんと開示する。それが鉄則だと思います。 ○末松委員  科学技術部会でも先般、発言しましたが、アメリカのグラントシステムは言うに及ばず、ヒュー マンサイエンスの研究に関してIRBに使われるべきコストの何パーセントは出さなければいけ ないとか、間接経費でしっかり賄われている。そこの仕組みが非常に遅れていると思います。 今日、東北大学の例でもありましたけれども、常勤・専属の方がいないとなかなかそこがきちん と出来ない。そこを大学の自助努力もありますが、厚労科研できちんと、これはほかの科研費 とは違うと思います。そこをしっかり仕組みを作っていただきたい、私もそのように思います。  もう一つ、これはおそらくこの部会に関係することだと思います。非常に先端的な研究で、専 門家の数、ポピュレーションが非常に少ない研究領域から先端的な医療技術、医薬が出てき た場合に、その研究をやっている人たちでないとわからない部分がかなりある領域がいくつか あると思います。そこをどういういうように、COIを解決するか。つまり、多くの方はそういう方が ベンチャーを起業していて、ご自分のベンチャー企業のプロダクトとしてものを持っている。そこ に、医師主導型の臨床研究をやるとなると、当然COIの発生する状況になります。そこをマネ ジメントする方法が必要となる。例えば創業者イコール、エクイティを持っていますから、その方 のジャッジを仰がないとそのプロダクトのエフェクトがきちんと評価できないような場合、当然そ の方の意見を入れなければいけないし、その方がいないと患者の福利に反する形になる可能 性が十分にある。  そこがちゃんと整備できていないと、折角良いプロダクトが日本発で出たときに、それがきちん とリリースできない可能性がある。そこを第三者の機関を入れて、確かにそこの臨床研究で行 われたジャッジというのは正しい、ということを第三者からきちんと認定してもらうような仕掛けを 国のルールとして作らないと、この辺の人たちはCOIの議論が出てくるとみんな腰が引けてくる はずなのです。そこについては何かお考えがあるかどうか、どうしても伺っておきたいと思いま す。厚生労働省としてはどのように考えているのか、いかがでしょうか。 ○藤井厚生科学課長  そこも含めて、この委員会で幅広くご検討いただきたいと考えています。こちらとしては何も、 「最初にこうあるべきだ」という決め事がないという状況であるということで、ご説明に代えたいと 思います。 ○笹月委員長  いま、末松先生がおっしゃったことは、今後議論を深めるべきテーマの一つだと思います。是 非、皆様、よろしくお願いします。 ○北地委員  いま、末松先生がおっしゃったことと先ほど木下委員がおっしゃったこと、近視的なところでい くとどうしても動きがわからない。例えば、ちょっと見聞きしたところでは、再生医療の領域では これからどういうように基準ができていくかまだわからない。これをどう動いていいかを近視的に やると何も動けなくなります。おそらくセーフ・ハーバー・ルール的な、1万ドル以下であるかとか いうようなもの、ネガティブなリストを出していくというよりは、そのような方向で収束していけば 多少動けるのではないか。なかなか第三者が介入してできるほど、日本には専門家はいない のではないかと思います。 ○笹月委員長  ありがとうございました。ほかにどなたか、ご意見はございますでしょうか。本日は第1回目と いうことで、いろいろな情報を共有するという意味で準備していただきました。総論的なこと、あ るいは逆に非常に各論的な、突っ込んだご意見もありました。次回以降、本日の議論を踏まえ て事務局で整理していただいて、検討すべき項目をきちんと項目立てしていただいた上で議論 をスムーズに行っていく。もちろん、深い議論は必要ですので急ぐつもりはありませんが、あまり 時間をかけずに、先ほど課長がおっしゃったようなタイムテーブルに従ってガイドラインができれ ばと思います。どうぞ、よろしくご協力をお願いいたします。事務局から何かありますか。 ○坂本研究企画官  次回の開催ですが、既に日程調整のご連絡をさせていただいています。6月28日(木)、午後 5時からの開催を予定しています。正式なご案内については後日送付させていただきます、よ ろしくお願いいたします。以上です。 ○笹月委員長  どうもありがとうございました。先ほど事務局からお話がありましたように、この委員会で議論 するのに何か参考となる資料について、お気づきのものがありましたら是非お知らせいただい て、参考に供したいと思います。よろしくお願いいたします。  それでは、今日はここまでにしたいと思います。どうも、お忙しいところ、大変ありがとうござい ました。                ―了―    【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -