07/06/05 第2回厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録 第2回 厚生科学審議会健康危機管理部会議事録             日時 平成19年6月5日(火)             15:00〜16:30             場所 厚生労働省省議室 ○浅沼健康危機管理官  定刻になりましたので、ただいまから第2回「厚生科学審議会健康危機管理部会」を 開催いたします。委員の皆様には、本日はご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げ ます。本日は、明石委員、石井委員、岡部委員、吉川委員、工藤委員、山本茂貴委員か ら欠席の連絡をいただいております。委員15名のうち、出席委員は過半数を超えてお りますので、会が成立いたしますことをご報告いたします。  また、本年4月の人事異動で事務局に変更がありましたのでご紹介いたします。坂本 研究企画官です。私は、健康危機管理官の浅沼です。本日の会議資料のご確認をお願い 申し上げます。資料の欠落等がございましたらご指摘ください。以後の議事進行は倉田 部会長にお願いいたします。 ○倉田部会長  議事に入ります。前回の第1回健康危機管理部会で、委員から、この部会発足の契機 となった、平成16年に発生した東北地方での急性脳症多発事例についての総括を行う べきというご指摘がありました。このご指摘を踏まえ、本年3月22日に、原因不明な 健康危機事例への対応に関する専門家会合が開催されたということですので、本件につ いて事務局から報告をお願いいたします。 ○浅沼健康危機管理官  資料1に基づいてご報告いたします。前回第1回健康危機管理部会において、岡部委 員、山本都委員から、いわゆるスギヒラタケの事件についてまとめたものを報告するの がよろしいのではないかというご意見をいただきました。つきましては、資料1に基づ いて、この原因不明な健康危機事例の対応に関する専門家会合についてご報告いたしま す。  開催日時は、本年3月22日(木)の10時から、開催場所は厚生労働省内です。専門 家会合の出席者は資料のとおりです。会合の概要ですが、議題1と議題2があります。 議題1は事例のレビューです。平成16年秋の東北北陸等における急性脳症多発事例の 概要及び経過について事務局より説明を行いました。一番後ろの別紙「東北北陸等にお ける急性脳症多発事例について」をご覧ください。  事例の概要ですが、発生期間は平成16年9月から10月、場所は新潟県を中心とする 東北北陸地方です。患者数は55例、そのうち死亡された方が20例ありました。症状は 痙攣、意識障害、不随意運動。症例の特徴としては、腎機能障害、スギヒラタケの喫食 というものがありました。  行政対応ですが、平成16年においては専門家の派遣、関係各課からの通知の発出、 会議の開催、これは健康危機管理調整会議の臨時会議です。特別研究の実施、これは平 成16年度の厚生労働科学研究の特別研究を実施いたしました。国際機関への情報の発 信ということで、国立感染症研究所よりWHO/WPROへの報告。また、日本中毒情報 センターよりWHO/IPCSへの正式報告がなされております。  平成17年、平成18年のスギヒラタケ採取シーズン前に、腎機能の低下していない一 般の方も含め、スギヒラタケの摂取を控えるよう注意喚起を促しました。  疫学的考察ですが、腎機能障害、スギヒラタケの喫食歴等の症例の疫学的特徴が報告 されました。疫学的分析を行うにあたり、迅速な症例定義の必要性が指摘され、また、 今回の事例において、感染症法に基づく急性脳症の届出が有用であったことが確認され ました。  臨床像の分析ですが、スギヒラタケの喫食から発症までの潜伏期間、腎機能障害の原 疾患、脱力/意識障害等の神経症状といった臨床像、CT、MRI等における画像所見、 治療効果、あるいは剖検例における病理所見等について議論がされたところです。学会 等を通じた情報提供、透析医や腎臓内科医のネットワークの活用が、こうした症例につ いての情報収集の際に有用であったということが会議では確認されました。  スギヒラタケの成分分析の結果、農薬あるいは重金属といった外部汚染、カビ毒の可 能性は低いと考えられること、スギヒラタケに元々含まれている成分として、シアン化 物イオンを定量したところ、平成16年度産のスギヒラタケが、平成17年度産の物と比 較して高値であったということ、ほかのキノコ類には含まれないスギヒラタケ特有の成 分として、高度不飽和脂肪酸の一種が単離されたこと等が報告されました。  また、こうした事例について、調査研究を実施するにあたり、成分分析の専門家だけ ではなく、人健康影響や毒性の専門家の関与が必要であるというご意見も出されました。 また、内容によっては、非公開の場で検討を行うことも必要ではないかという意見も出 されたところです。  動物実験ですが、スギヒラタケが他のキノコと共生した場合に何らかの毒性物質が産 生される可能性について紹介されました。また、マウスを用いた動物実験においては、 血中で筋由来のCPKが上昇していることも報告されました。本事例が発生したことで、 安全である他のヒラタケの販売数が減少したことが報告され、食品の安全という観点で、 消費者に対し、正しい情報を開示することの重要性が確認されたところです。  脳症につながる原因物質として、高分子性の糖タンパク、あるいはタンパク多糖体が 挙げられ、これらの物質が腎機能の低下している患者の体内において、溶血や尿毒症を 引き起こす可能性について紹介されました。  地方公共団体における対応として、新潟県における事例の対応については複数の課(健 康、生活衛生、医薬品、福祉等の関係課)が関与した県庁内の体制、疫学調査検討会の 設置、報道発表、他県との連携の下での症例検討といった詳細が紹介されました。  議題2は対応における要点で5点あります。1点目として、原因不明な健康危機事例 への対応は、テロ発生時対応のシミュレーションともいえるという意見が出されました。 2点目として、諸外国での原因不明な健康危機事例が紹介され、原因物質が特定され解 決するものもあるが、原因が解明されないままの事例も存在することが報告されました。  中毒情報センター、国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所等の関係機関間で の情報共有の重要性が確認されたのが3点目です。4点目は、複数の機関、専門家等が 関係する場合に、取りまとめとなる組織が必要であることが確認され、厚生科学審議会 健康危機管理部会がこの機能を果たすべきであるとの意見が出されました。5点目とし て、今回の事例の際に収集された検体の分与を行う際には、複数の専門家により判断を 行う必要があるという点が確認されました。  まとめとして、原因不明な健康危機事例への対応体制構築における要点として、以下 の6点がまとめられました。1点目は、多分野の専門家の連携。2点目は、広域調査の 際の定義・手法の標準化。3点目は、サーベイランスシステムの活用。4点目は、諸外 国・国際機関等との情報共有。5点目は、適時・適切な国民への情報提供。6点目は、 検体の迅速な収集と適切な保管です。以上です。 ○倉田部会長  資料1の原因不明な健康危機事例への対応に関する専門家会合の3月の報告のまとめ ですが、ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。結 局、分からないということですね。今後の対応ということですが、早目早目に対応して いくということだろうと思います。 ○黒木委員  日本中毒情報センターの黒木です。最後の方にありました検体分与のことですが、別 の会合で新潟のきのこの分析をされている先生にお会いしたときに、やはり新潟県から 提出したスギヒラタケの分析を行いたいという要望がありました。分与については複数 の専門家による判断を行う必要があるとされているのですが、具体的にどのようにして いくとか方針がありましたら教えてください。 ○浅沼健康危機管理官  具体的には検体を保管している、人由来の検体のほうは国立感染症研究所、食品のほ うは国立医薬品食品衛生研究所の方で検体を保管していると聞いております。研究や分 析をされたいという話があった際に、関係する専門家の方々で話し合っていただきます。 その際に私どものほうとも情報交換をさせていただいた上で判断をさせていただきたい と思います。 ○黒木委員  要望があるときの、ファーストコンタクトの窓口としては厚生科学課になるのでしょ うか。 ○浅沼健康危機管理官  もちろん私どもでも構いませんし、専門家の先生方のネットワークの中で、感染研、 国衛研のほうに話があれば、その話をまた私どもの方にしていただければ、いま申し上 げたような対処をさせていただきたいと思います。 ○加茂委員  女子医大の加茂です。私は心理担当ということで出席させていただいています。比較 的短期のうちに20名が亡くなっているということで、地域の混乱ですとか、心理的不 安といったものに関するデータは何か出ていないのですか。 ○浅沼健康危機管理官  その点については私どもも聞いておりません。 ○西山技術総括審議官  心理的な、いわゆるPTSDみたいなものは、データが届いていないというよりもやっ ていないのでしょう。その辺はやっていてデータがないのですか、それともやっていな いということですか。 ○浅沼健康危機管理官  確認した中ではやっていないと思われます。 ○山本(都)委員  私は3月22日の会合のときにも発言させていただいていますが、急性脳症多発のと きにいちばん感じたのは、やはり情報共有体制の大切さでした。今までも、情報共有の 大切さはいつも言われていることですので、あのときにも中毒情報センターや感染研や 私ども、それから救急医の先生や薬学関係の先生と、こちらで考えられる限りの分野の 方たちとは、こんな情報があったとか、意見などについていろいろメールでやり取りし ていました。  ただ分野が全然違う、学会が全然違うような臨床系の先生とは全く情報のやり取りが なくて、そちらのほうでどういう動きをしていたかというのはお互いわからなかったと いうことがあります。私たちでは、普段学会でも付き合いがないなど限界がありますの で、そういう点でもこういう部会とか、行政の方たちが中心になって情報をグループか ら別のグループへ流すというネットワークは非常に大切だと思いました。 ○倉田部会長  浅沼さん、それはよろしいですね。 ○浅沼健康危機管理官  はい。 ○倉田部会長  次は、健康危機管理に関する研究事業という議題です。事務局から説明をお願いいた します。 ○浅沼健康危機管理官  資料2-1及び資料2-2です。厚生労働省における健康危機管理関連の研究事業につい てご説明いたします。資料2-1は、健康危機管理関連の研究事業の体系図です。厚生労 働省における健康危機管理関連の研究の概要図ですが、大きく分けますと分野横断的対 策研究、それから個別分野対策研究の2つに分けられます。そのお互いの分野ごとに連 携を図るということで考えております。  分野横断的対策研究については、健康危機管理・テロリズム対策システム研究費、こ れはテロが起こった際の初動体制確保に関する研究、情報ネットワーク構築に関する研 究等を採択する研究費です。  もう1点は、地域健康危機管理研究経費です。こちらは地域健康危機管理の基盤形成 に関する研究ということで、分野別のほうから下にも流れております個別分野対策研究 である生活環境安全対策研究、水安全対策研究と、大きく個別分野も含めた形で1つの 研究経費になっております。  個別分野対策研究については、新興・再興感染症の研究、これは生物テロに使用され るおそれのある病原体についての確定診断・治療法開発等です。2点目として、医薬品 の安全研究です。医薬品のリスク・有効性評価に関する研究等。3点目は、食品の安全 研究ということで、食品の安心・安全性の確保に資する研究等が行われているところで す。こちらに再掲ではありますが、生活環境安全対策研究、水安全対策研究ということ で、個別分野は5つの分野で、健康危機管理関連の個別分野別対策研究を進めていると ころです。  こうした体制において、厚生科学課直営でやっておりますのが、分野別横断研究の対 策研究のいちばん上に書いてあります健康危機管理・テロリズム対策システム研究です。 そこで資料2-2です。今般この研究事業において採択した課題についてご紹介いたしま す。6点あって、1点目は健康危機管理における効果的な医療体制のあり方に関する研 究です。主任研究者は、東京医科歯科大学の大友先生です。研究期間は、平成19年度 から平成21年度です。研究の概要として、CBRNテロ・災害への対応が原因物質毎に 異なる対応がとられており、初動時の対応困難や混乱が懸念されます。そのため、CBRN 共通の標準的な医療対応、サーベイランスの方法等に関するマニュアル及び研修カリキ ュラムの開発を行い、救急医療機関における全ての原因物質への対応が可能となる体制 の整備を目指すものです。  2点目は、健康危機・大規模災害に対する初動期医療体制のあり方に関する研究です。 主任研究者は、国立病院機構災害医療センターの辺見先生です。研究期間は、平成19 年度から平成21年度です。研究の概要は、阪神・淡路大震災以降に導入しました災害 拠点病院制度、あるいは広域災害救急医療情報システム、緊急災害派遣医療チーム (DMAT)、広域医療搬送体制を充実・強化し、これら諸施策が有機的に機能する災害対 応システムの構築を図る研究です。  3点目は、バイオテロの曝露状況の推定、被害予測・公衆衛生的対応の効果評価のた めの数理モデルを利用した天然痘ワクチンの備蓄及び使用計画に関する研究です。主任 研究者は、国立感染症研究所の岡部先生です。研究期間は平成19年度から平成21年度 です。研究の概要は、バイオテロの早期探知システムからの情報を受け、バイオテロが 発生した場合の曝露状況を推定する統計学的なモデル等を開発する研究です。また、こ のシステムを保健所等の現場で使いやすい形でソフト化し、被害予測をリスクコミュニ ケーションの基盤的・基礎的情報として利用していただくものです。また、本シミュレ ーションにおいて、天然痘ワクチンの備蓄のあり方に関する検討も行っていただくこと になっております。  4点目は、改正国際保健規則への対応体制構築に関する研究です。主任研究者は、国 立感染症研究所の中島先生です。研究期間は、平成19年度から平成21年度です。研究 の概要は、WHOの国際保健規則IHRの改正を受け、規制対象疾患が大幅に拡大される 等、加盟国においては相応の対応を行わなければならないことになりました。この研究 において、我が国における改正IHRに準拠した対策をどのように行うかという提言を行 うため、世界各国の対応状況等の調査を行っていただくものです。  5点目は、国際連携ネットワークを活用した健康危機管理体制の構築に関する研究で す。主任研究者は、日本医科大学の近藤先生です。研究期間は、平成19年度から平成 21年度です。研究の概要は、世界健康安全保障イニシアティブ、これは注書きにありま すように、2001年9月に、米国における同時多発テロを受けて、カナダ政府の呼びかけ により、各国保健相レベルが会合を行い、健康危機管理、特にテロに対する対応を行う ための国際会議、あるいはそれの下にある専門家会合等のことです。いわゆるGHSIの 中で、化学テロ、核放射線テロ、災害医療等の分野に対し、各分野の課題を、まず日本 の現状を分析し、日本から発信できる科学的根拠を提示し、国際協力を必要とするテロ についてのシミュレーションモデル等を提示するものです。  6点目は、健康危機管理におけるクライシスコミュニケーションのあり方の検討です。 主任研究者は、慶應義塾大学の吉川先生です。研究期間は、平成19年度から平成20年 度です。研究の概要は、感染症分野での事例を中心に、過去のクライシスコミュニケー ションを行政対応と社会的影響の視点から分析し、あるべき情報提供に重要な要因を明 らかにすることにより、健康危機管理発生時に必要となるクライシスコミュニケーショ ンのあり方についてのマニュアルを作成していただくものです。  以上6点の研究を進め、特にテロの初動期、国際的な対応等に対処するためにこの6 点の研究を進めてまいりたいと思っております。以上です。 ○倉田部会長  ただいまの説明に対し、ご質問、ご意見はありますか。 ○加茂委員  見渡して、精神健康障害に関係する研究が1つもないと思うのです。例えばPTSDと か、あるいはそのPTSDの予防でもいいのですけれども、これはまた別ものということ になるのですか。 ○浅沼健康危機管理官  資料2-1の健康危機管理関連研究の中で、地域健康危機管理研究経費の分野で対応さ せていただいております。具体的には参考資料1の2頁のいちばん下の40番に、国立 精神・神経センター精神保健研究所の鈴木先生に、健康危機管理体制における精神保健 支援のあり方に関する研究の中で、一般的な健康危機管理発生時の心理的な応急処置等 について研究をお願いしているところです。 ○加茂委員  ほかの感染症の問題に比べて、この分野は非常に薄いような気がするのです。 ○浅沼健康危機管理官  健康危機管理に特化した形では、いま申し上げた研究がされているところなのですが、 広くPTSDの研究となりますと、厚生科学研究費の中でも、精神保健の分野の研究の中 で、例えば国立精神神経センターの金先生等がずっとされています。いわゆるPTSDの 様々な事例に基づく研究は続けられているところです。そうした研究成果を踏まえ、私 どもも災害、あるいはNBCテロの心理的な影響に対する対処について検討を進めてい きたいと思っております。 ○西山技術総括審議官  これは、応募する一般公募だから出てこないということです。応募してもらえれば。 ○加茂委員  なるほど。テロ対策とかそういうことになると、今まで日本ではそういうことがなか ったので、そういう発想では対応していないと思うのです。ですから、むしろ積極的に こういうことはどうかと言っていただいたほうがいいのではないかと思うのです。 PTSD研究は確かにたくさんあるのですが、こういったテーマで扱っているものはほと んどないのではないかと思うのです。  ですから、先ほどご紹介いただきました鈴木先生もおそらくこういったことを中心に なさると思うのですけれども、テロという言葉が1つも入っていないので、もしそうい うものができれば非常にいいのではないかと思った次第です。 ○浅沼健康危機管理官  ご意見を参考にして、また平成20年度の公募の際には考えさせていただきたいと思 います。 ○加茂委員  是非よろしくお願いいたします。緊急の危機対応のチーム等は、都道府県や市町村レ ベルでは一応あると思うのですが、国レベルのものが全然ないのです。ですから、個々 の人たちのボランタリーな、そのときに仕事があるとかないとかといったことによって 出張っていることが非常に多いと思いますので、そういうものにも少し対処していただ けるといいかなと思います。 ○西山技術総括審議官  これは倉田先生に質問なのですけれども、3番目のバイオテロの感染研の岡部先生の 研究は大事なのだけれども、こういうのはもともと感染研のミッションとして業務計画 の中にあればあるのでしょう。 ○倉田部会長  天然痘に関しては、感染研のミッションとしてあるのではなくて、中谷先生が感染症 課の課長のころに、これをどういう格好でやっていくか、という議論も会議も何度もな されて保存計画がされました。ただし、このときにはどこにあるなどということは公開 していたけれども、その後テロの問題が起きてからは、どこにどれだけあるということ は一切公表しないというのが世界の常識です。そういうことで、これは質問しようと思 っていました。 ○西山技術総括審議官  これは自問自答なので先生方に聞いておくのですけれども、要するに、だいぶ増えて きたといえども少ない研究費です。国のナショナルセンターとか、国研のミッションを はっきりして、それは国研の予算でやる。これは一般公募でしょう。 ○倉田部会長  たぶんそうです。 ○西山技術総括審議官  一般公募で、国がこうやれと言っているのに落ちてしまったら困るわけだから、そう いう区分けを我々がしっかりやっていかなければいけないのではないかと思っています。 ○倉田部会長  ちょっと突っ込んで文句を言うようで悪いのだけれども、国が研究費を出してやるこ とでしょうか。そこは審議官が言うように、これは結果として知ったので、前のときに うっかりしていて経緯を知りませんでした。この天然痘を知っている人がこんな数理モ デルというのは、防衛省でもかつて出していますし、いろいろな所、感染症課の会議(中 谷課長時代)で出しています。これをこんな大きな研究費でやることかと疑問ですし、 これは関係者が数回集まれば、ある方針は出る。ここのところは確かにそういう問題が あるかもしれません。審議官が指摘されたとおりです。 ○西山技術総括審議官  そうすると、バイオテロの研究の政府全体のミッションとしてはどこにあるのかとい うことは事務局にはわからないですよね。 ○倉田部会長  物を検出するという対応に関しての責任は、当然厚労省(感染研)にあるのではない ですか。 ○西山技術総括審議官  一部ありますね。 ○倉田部会長  あります。地方での問題だったら、地方でできることは中央感染症研究所との連携で やるというのは当然のことです。 ○西山技術総括審議官  PTSD等は、精神神経センターのミッションとしてあると考えていいのだよね。 ○浅沼健康危機管理官  はい。各パート、パートごとの専門性に委ねて、その専門分野を研究している研究所 等にお願いするという考え方でよろしいと思います。 ○国包委員  国立保健医療科学の国包です。今までの議論とも関係があるのですが、テロとかクラ イシスとか、特に危機的なものというのは頻度が非常に低くて、そのわりにはもし万が 一起きたら大変だというものです。ですから、どういう状況を想定するかによってガラ ッと事情が違ってきたり、検討内容なり結果が違ってきたりすると思うのです。そうい うものについて、どちらかというと公募主体で研究をするというのはどうかなという感 じがするのです。  むしろ、提案型といいましたか、あるいは戦略型といいましたか、ある程度募集する 側で、つまり厚労省の側でこういう研究をというようなものも最近1、2年前からでき てきています。そういうもので重点的に取り組むとか、場合によっては厚労科研費では なくて、いまお話がありましたような、別の形でもう少し国主導でやるということも考 えてよろしいのではないでしょうか。いかがでしょうか。 ○西山技術総括審議官  国立保健医療科学院で、例えば水の研究をずってやっていますが、こういうのは一般 公募ではなくて、院独自の研究というのはないのですか。 ○国包委員  うちには何もありません。 ○倉田部会長  それはないですよ。感染研でもないです。 ○国包委員  ですから、それは何らかの形で仕組まないと無理です。 ○西山技術総括審議官  研究費と事業費だけれどもね。 ○倉田部会長  いま事業費は非常に付きにくくなっていて、研究費として公開でやれということで、 研究所独自の事業費というのは非常に限られたものだけです。 ○大野委員  西山審議官がおっしゃるように、本来こういうものは国でやるべきことだと思うので す。国立衛研でも、化学物質に関するテロに関する部分で、事前の準備とかそういう体 制はいつも整えておかなければいけないと思うのです。そのためのミッション、そうい う使命をきちんと位置づけて、組織規程にはそういうのを書いていないのですけれども、 そういう意識を皆さんが持って、それなりの手当てをしておくべきなのです。色々な情 報を集めるのでも、いつもフォローしておくためにはそれなりの予算がかかるわけです。 そういうものは、事業費という形で入っていれば対応できますけれども、いま入ってく るのは全部厚生科学研究費とか、文科省の関係とか、そういうのから天引きしておいて、 テロ対策等に実際上使っているわけです。それが矛盾になっているのです。 ○西山技術総括審議官  私の知識では答えられないので、課長方に手伝ってもらわなければいけないのだけれ ども、研究事業費としては取りづらいと。 ○倉田部会長  極めて取りづらいです。 ○西山技術総括審議官  指定研究にするしかないということなのですか。 ○倉田部会長  そうです。 ○藤井課長  現実問題として、最近の政府全体の予算を見ますと、どちらかというと研究費のほう が予算を獲得しやすい。そのために、事業費的なものも予算が取りやすい研究費で取っ て、その中で対処していこうという傾向がありました。そのために、今のご議論にある ような、本来ならば国の役割として、また国の研究機関としてやるべきものが、実際は 研究費という枠の中でしかやれていないという問題があります。  そこは我々としても、事業費は事業費としてきちんと取っていただいて、研究費はそ もそも純粋な研究という意味で使っていただきたいという仕分けを少しずつでもしてい きたいということで、関係部局といろいろ折衝しているところもあるのですが、既存の 体制がある程度固まっているものですから、徐々にそういうことを踏まえながら、省内 で連携を図りながら予算の組換え等を行っていきたいと考えております。 ○倉田部会長  それは非常に大事なことです。感染症の問題で、行政検査的なことをやらなければい けないのですが、それは全部研究費で取るという話になっています。テーマは研究費な のですが、実際の中身は全部検査なのです。鳥が死んだそれを全部チェックするとか、 そういうものも含めて移送のお金、チェックのお金、それから始まって、例えば、今は インフルエンザの関係も東南アジアから全部集まってきます。WHOの世界4つの協力 センターの内の1つのインフルエンザのセンターですから、ウイルサスサンプルがたく さん集まってくるわけですが、こういうものの費用は事業費ではなくて全部研究費なの です。  そうすると評価のときにどうなるかというと、なんだ、こんな検査がどうしてと。つ まり、行政のほうが分かっているときには点数がいいけれども、研究者のほうは全部外 部の関係のない人が審査しますから、なんでこんな検査をということを必ず言ってきま す。本来、厚労省がやる事業費と研究費は分けなければならないというのは当たり前の ことです。課長が言ったとおりです。  もう1つ言えば、総合科学技術会議のライフサイエンス部会のヒアリングでも、岸本 議員のときも、本庶議員のときも、これは何度も指摘されていることなのです。厚労省 はなんでもゴチャゴチャにするというのだけれども、厚労省は作戦が下手なのか、お金 の取り方なのかよくわからないのですが、いま課長が言われたことは非常に大事で、本 来やるべきことと、研究者が研究者としてのモチーフに基づいて何か申請するという話 とちょっと分けていかないと、何でもかんでも一緒にしておいて、本音も隠しておいて というのはなかなか難しいという気がします。いま皆さんが指摘されたとおりです。 ○大野委員  今の3番のところですが、バイオテロの早期探知システムが既に存在していて、十分 機能していることを前提とした研究のように見えるのですが、それはそのように考えて よろしいのですか。バイオテロ早期探知システム化の情報提供を受けて、我が国でバイ オテロが発生した場合の曝露状況云々と書いてあるので、そこがちょっと気になりまし た。  最近うちの研究所で、自衛隊と一緒にこの関係の研究を始めました。具体的に言うと、 空中に散布される、空気中にある埃の量を随分と追跡していて、それがちょっとした乱 れから人為的なものを探るというような研究をやっていて、それもバイオテロの早期探 索ということでやっています。そのときに聞いた話だと、不十分ながらやっているとい うことなのでどうなのかなと思ったのです。 ○倉田部会長  浅沼さん、これは研究者が研究の概要のところに書いた内容ですね。 ○浅沼健康危機管理官  はい、そうです。参考資料1の4番目に、国立保健医療科学院の緒方先生の研究があ ります。こちらで「健康危機管理の情報の網羅的収集/評価及び統合/提供に関する調 査研究」ということで、バイオテロも含めた健康危機管理情報についての収集システム の研究をこちらでしていたただくということもありますので、こうした研究の成果も踏 まえながら岡部先生の研究ともうまく連携した形で進めていければと思っています。  早期探知システムの話ですが、この分野はまだ進行形のものですので、どのようなシ ステムが良いのかというのは、やはり時代とともにまだ進んでいく、伸びていくエリア だと思っていますので、いまの時点で完璧だというものはないわけですから、是非そこ の精度もどんどん高めていただきたいと思っています。 ○倉田部会長  これをやるためには、非常に機動力が必要になります。ですから、米軍がやっている ように、低い所はヘリコプターで収集していくとか、少し高い所は軽飛行機でずっと集 めるとか、そのようなことを実際にこういうものでやるというのを見せてもらったこと があります。これは、そう簡単にはいかないです。それがうまくいっている、という結 果に関しては一切公開されていません。それを普通の研究レベルでできるかというと、 これは全くできません。空を飛ばす権限がなければいけないし、そういう物を持ってい ないといけないし、自由に飛ばせるというわけにはいかないので、日本で数千万円のお 金でできるような問題ではないところがあります。ですから、これはどこかでこうやれ ばできるよと言ったら、それから情報を得るという話だと、これはいま浅沼さんがおっ しゃったように進行形で、いまそれがあって何かやっているというのはちょっと違いま す。  天然痘というのは既に根絶されて26年経ちますし、これに関する膨大な経験があっ て、スモールポックスブックといってこんな厚いWHOが出している10cmぐらいのも のがありますので、これを隅から隅までお読みいただければわかると思います。ちょっ とオーバーアクションを起こしている。知らない人がやるとちょっと事がおかしな方に 行くのではないかということです。そもそも、民間委託でシミュレーションをやるよう なものではないでしょう。 ○浅沼健康危機管理官  はい。 ○倉田部会長  これが、今の結論だと思います。私から1つお聞きしますが、資料2-1の分野横断の テロリズム対策システムとなると、厚労省の分野だけでは済まないのですが、この辺は どのように考えているのですか。どういうことかというと、米国でも12だったか13だ ったか、そのほかアジアの国々でもバイオセキュリティという概念が出てくると、11と か8とか、そういう政府機関が全部横にこういうものを対応するということでやります。 同じ研究にしても、この分野というのは厚労省の中における分野ですか。確認だけです。 ○浅沼健康危機管理官  前提としているのはNBCテロ、特にBCテロを前提として考えているところです。 ○倉田部会長  日本でCテロに対して実力があるのは防衛省だけで、ほかには全くないです。Cテロ 対策に対して、防衛省の化学学校は素晴らしい力を持っています。たぶん、あの力は世 界に比するものだけれども、ほかに日本にはないです。そうすると、Cというものを考 えたときに、そこの力を借りないと対応はほとんど難しいと思うのです。そのようなこ とに関する連携を考えているか考えていないか。  どういうことかというと、研究者がいろいろな資料を集めただけで作った話では、た ぶん具体的に役に立つものは出てこないということを前提に言っているのです。 ○浅沼健康危機管理官  Cテロに関しては、厚生労働省とすればまず医療の確保というところが重要になると 考えております。例えば、この研究課題の中で申しますと、大友先生の研究、辺見先生 の研究といった、いわゆる初動医療、効果的な医療というものをどのように組み立てる のか。具体的には、必要な資機材はどういうものが必要なのか、あるいはどうしたらそ れが有効に使えるのかといったもの。あるいは救急医療情報システムとどのような連携 を図ればいいのかというようなことについて、私どもとすればCテロに対して対処して いく研究領域ではないかと考えています。 ○西山技術総括審議官  私も防衛省にいてバイオテロを担当していたのですけれども、あのときに厚労省とは 没交渉でした。軍は軍でシステムを持っています。これがアメリカ等と違うのは、シビ ルとの連携ができていないのが日本の問題で、どっちから言い始めるかなのです。防衛 省サイド、内閣府サイド、厚労省サイド。これを見ても、もっと言えば生物探知機みた いなのが必要になってくる。そのときにその車が必要になってきます。どの局がどのお 金、厚労省が整備するのかといったら、もう防衛省はバンバン整備しているのです。そ ういう意味からすると、私の仕事範囲は連携しなければいけないということになります。 ○倉田部会長  これは余計なことですが、厚労省の内容としてはいいかもしれないけれども、こうい う対応というのは、完全対応でもっと広い意味での対応というのは全省庁10いくつ。 かつて安全保障危機管理室でもそういう問題を議論して、いまもたぶんやっているはず ですが、そのころから連携してという話は出ているのですが、具体的に物を考えるとこ ろに連携のグループがないというのは気になります。政府レベルであるのならそれでよ ろしいのですけれども、そこは今後の対応で大事だと思うのです。研究者の研究レベル でいく対応というのは結構具体性が乏しいのではないかと思うのです。そこが気になる ので、どうせやるならそういうことも考えていったらいかがかということです。 ○大友委員  医科歯科大学の大友です。いま倉田部会長からご指摘のあった、関係機関の連携とい うことに関しては、平成13年に、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルというのが作 成されて、ここで一応医療だけではなくて、消防、警察、自衛隊、関係する部局がどう いう連携をするかということに関しては、一応モデルとしては出されています。  それからCテロに関して自衛隊を活用すべきという話がありました。実際に現場レベ ルで検討していくと、自衛隊の機動力というか、対応の迅速性に非常に問題があって、 実際自衛隊にお願いできるところは、被害者の搬送が終わった後の、現場の危険物質の 除去というレベルでのタイミングでしか関与していただけないのではないかと思ってい ます。  厚労省の中での研究としては、医療機関でどう対応するべきかというところに関して は、まだまだ十分具体的な対応計画がないので、そこはいま現実に検討中とお考えいた だきたいと思います。 ○山口委員  大友先生にお聞きします。大友先生のご研究の中で、原因物質が特定できない前に、 共通の治療法を検討されるということで理解してよろしいのでしょうか。例えば、原因 物質を特定するというのは非常に難しいのかと思っているのです。 ○大友委員  現場検知、それから病院に来てからの検知ということも一応計画はあるのですが、そ れを待っていては目の前の傷病者に対して対応できないので、実際に呈している症状と か状況に応じて、しかも医療を提供する側も二次被害を受けないような形で、どのタイ プのものであっても大丈夫なように、複合のものを使われていても対応できるようにと いうことでいま病院レベルでの対応計画は作りつつあります。それを、また研修に活か していこうと計画しております。 ○倉田部会長  他によろしければ議題3の改正国際保健規則(IHR2005)について事務局から説明を お願いいたします。 ○浅沼健康危機管理官  資料3-1、3-2、3-3です。改正国際保健規則、通称IHR2005についてご説明いたしま す。国際保健規則の概要は資料3-1です。IHR(International Health Regulations)国 際保健規則というのは、世界保健機関WHO憲章第21条に基づく国際規則であります。 目的としては、航空機、船舶、陸上交通も可能性としてはあるのですけれども、そうい う国際交通に与える影響を最小限に抑えつつ、疾病の国際的伝播を最大限に防止すると いうことで定められた規則です。  基本的にいままでは感染症、特に今回の改正前は黄熱、コレラ、ペストの3疾患を対 象としていた規則なのですが、昨今のSARS、鳥インフルエンザ等の新興・再興感染症 による健康危機に対応できていないということ。各国のコンプライアンスを確保する機 序の欠如、WHOと各国の協力体制の欠如、現実の脅威となったテロリズムへの対策強 化の必要性等が指摘されたことから、大規模な改訂が行われました。  改正の経緯の年表はご覧のとおりですが、今回の改正のポイントについては8つあり ます。その前提となるキーワードとしては情報があります。その点を頭の中に入れてい ただきまして、いまからの8点をご説明いたします。  (1)は、原因を問わず国際的な公衆衛生上の脅威となる、あらゆる事象が改正IHRに基 づきWHOへの報告の対象となるということです。限られた感染症等を報告するのでは なくて、原因を問わずすべて報告するということが考えられているものです。  1ポツは、自国領域の中での事象を、評価後24時間以内にWHOへ通達し、その後も 引き続き詳細な公衆衛生上の情報をWHOへ通達する。輸出入により判明した疾病の国 際的拡大をもたらすおそれのある証拠を受領した場合、受領後24時間以内にWHOへ 通達するということで、情報をきちっと通達することが大事になってきています。  (2)は、そのための連絡体制として、国内IHR担当窓口を設け、WHOと常時連絡体制 を確保する、ということが改正IHRに盛り込まれています。この国内窓口については厚 生科学課となっております。後ほど資料3-3でご説明いたします。  (3)は、加盟国のCore Capacityの規定ということで、各国が緊急事態等に対して、最 低限備えておく能力というのが規定されたということ。  (4)は、非公式情報の積極的な活用ということで、GOARN等の様々なチャンネルから 得られたいろいろな情報を当該国に照会して検証し、その検証で求められた加盟国は24 時間以内に初期反応を示すということ。  (5)として、WHOは関係各国に対して保健措置に関する暫定的な勧告等を発出するこ とができるようになりました。  (6)は、IHRの専門家の名簿を作成し、我が国では国立感染症研究所の岡部先生を登録 し、緊急の事態に対して専門家の意見を収集することができるようになったこと。  (7)は、WHO以外の国際機関、例えばUN、ILO、FAO、IAEA等がありますが、そう した所と十分な連携を図り、活動の調整を行うということ。  (8)は、感染者や感染の疑われる者の出入国制限ができるということになりました。  資料3-2は、IHR2005に基づく情報収集及び情報伝達ということです。1点目は、 WHOに通告すべき事象、それから伝達経路、通告期限、体制構築の期限です。これは、 先ほど申し上げたことが箇条書きできちんと記載されているものです。  2点目は、情報収集、情報伝達の体制です。1)情報の収集については、厚生労働省健 康危機管理基本指針に基づき、健康危機管理担当部局を中心とした情報収集を継続し、 既存の法令によって報告が規定されている事項については規定の報告を行うこととし、 その他の事態については当面の間国内でのテロ事件発生に係る対応について、平成15 年12月15日の通知です。これは参考資料を付けておりますが、この通知等に沿って対 応しようということです。  2)は情報の評価ですが、寄せられた情報については速やかに健康危機管理担当部局 において情報の評価を行い、さらに省内あるいは厚生労働省所管の試験研究機関等の担 当者・専門家からなる健康危機管理調整会議等において、情報の分析、対応についての 検討を行うこととしております。また必要に応じてこの健康危機管理部会の招集を行い、 専門的な評価・検討を行っていただくこととしております。  3)は情報の伝達です。これは先ほど申し上げたとおりで、WHOへの通告が必要であ る場合は、私ども厚生科学課を通じて速やかに情報提供を行うこととしております。  資料3-3は、IHR2005に基づく主な情報の流れの概要図です。ポンチ絵ですので簡単 にご説明いたします。A国からE国までありますが、要するに加盟国から何か国際的に 懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するか否かを認定するIHR事務局、WHOの IHR事務局のほうに、健康危険情報が提供されます。その上で、WHOの判断で、これ は各国に知らせなければならないということになれば、青い矢印のように情報提供とい うことで、我が国にもその情報が提供されます。私ども厚生科学課がこの情報連絡窓口 となっておりますので、この情報を受けた厚生科学課は、この事象の評価を行うために 健康危機管理調整会議、あるいは健康危機管理部会の開催等を行い、国内の関係機関、 関係省庁等に情報を伝達します。  また逆の流れ、つまり日本で何かしらの事象が起こったときが赤い矢印の動きになり ます。国内関係機関、あるいは関係省庁等から得た情報を、例えば感染症であれば結核 感染症課、食中毒等であれば監視安全課、空港等で起きた事象であれば検疫所業務管理 室、地域であれば保健所を通じて地域保健室ということで、そういう情報が厚生労働省 に入り、その際に同じく調整会議、健康危機管理部会を実施し、これでWHOに通告す べきではないかという判断が下された場合に、厚生科学課から通告協議ということで、 WHOに送られます。WHOの判断があって、また各国にその情報が流されるという仕組 みになっております。  これが新しい仕事となって、厚生労働省に付加され、この発行・実行が6月15日か ら始まります。以上です。 ○倉田部会長  ただいまの説明に対し、ご意見、ご質問はございますか。 ○黒木委員  資料3-1の1頁の下のほうの改定のポイントのところで質問です。いちばん下の括弧 書きのところで、「我が国はあらゆる事象に感染症のみならず化学物質、放射線物質を含 めることに異議を唱えていたが、最終的にはすべて含まれるという理解となっている」 ということなのですが、これから見る限り我が国で感染症はよしとして、C、Nに対し ては消極的であったという、この姿勢についてはどこから生まれたのかということです。  日本はサリン事件などやN関連施設等があり、むしろ積極的であってほしかったと思 うところがあるのですが、それについてお願いいたします。 ○倉田部会長  その辺についての事情はわかりますか。 ○小池課長補佐  異議を唱えていたというよりは、WHOという所が、これまでの改正前の保健規則か らの経緯の中で、比較的感染症を中心とした対応をとっていたというところから、新た な化学物質や放射性物質が入ってくることにより、実際の運営上の問題があるという観 点から、むしろ感染症を中心としたものを唱えていたという経緯がありました。現時点 では、最終的には化学物質、放射性物質を含めたすべての公衆衛生上の危機、脅威とな り得る事象が含まれてきたというような経緯と承知しております。 ○黒木委員  アメリカでは、9.11以降すぐにCDCが実施していた感染症のサーベイランスと61 あるポイズンコントロールセンターの化学物質等のサーベイランスと合体し、全体的な サーベイランスができる体制を1年でとっております。中毒コントロールセンターでは、 化学物質の中毒があったときに入力が行われれば、全米的にそれを見ることができます。 それも4分から20分程度で情報をみんなで共有することができるというシステムが既 にできているわけです。是非日本でもそういうシステムを構築していっていただきたい と思います。 ○浅沼健康危機管理官  はい、わかりました。 ○倉田部会長  ほかによろしければ議題4に移ります。世界健康安全保障イニシアティブについて事 務局から説明をお願いいたします。 ○浅沼健康危機管理官  資料4-1と4-2です。世界健康安全保障イニシアティブについてご説明いたします。 先ほど研究の説明のところで出てきた言葉ですが、経緯としては2001年9月の米国に おける多発テロを受けて、米国・カナダ政府の呼びかけにより、世界的な健康危機管理 の向上及びテロリズムに対する準備と対応に係る各国の連携等について話し合うことを 目的に、各国の保健相レベルの会合、世界健康安全保障イニシアティブ、Global Health Security Initiativeと申しまして、略称がGHSIと申しますが、2001年11月に発足い たしました。  この閣僚級会合の下に、実務レベルで協議するための、いわゆる局長クラスの作業グ ループ、これは世界健康安全保障行動グループと称しまして、Global Health Security Action Groupで、こちらは通称GHSAGが置かれて、我が国からは技術総括審議官がメ ンバーとして登録されております。  GHSAGの下に生物・化学テロ等の健康被害への対応について、技術的な検討作業を 行う専門分野が設定され、その中で必要に応じて専門家会合、ワーキンググループが設 置されているところです。構成としては、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ等が入 っておりますし、我が国も入っております。  閣僚級会合の開催状況ですが、平成13年から記載されているとおり、昨年12月に第 7回が日本の東京で開催されたところです。今年は11月に米国のベセスダで開催が予定 されております。  専門分野ですが、こちらに書いてあるように、1から8までの分野に分かれています。 特に4番目の化学イベント・ワーキンググループですが、日本ではサリンによるテロ等 があったということもあり、このワーキンググループの担当を日本がさせていただいて いるところです。  昨年12月に第7回世界健康安全保障イニシアティブ閣僚級会合が東京で開催されま した。その際に閣僚合同宣言が発出されたのですが、その概要を簡単にまとめた資料で す。大きく分けて5つの点がありました。  1番目は、新型インフルエンザの対策です。各国の行動計画の比較、ワクチンの研究 開発等におけるWHOとの連携、リスクコミュニケーション、途上国における対応能力 の強化についてまとめられました。2番目は、実験施設ネットワークの強化メンバー国 の協調ということで、病原体検査法の標準化を図ること、あるいは実験施設間での病原 体の輸送のあり方等が議論されました。3番目は、緊急時連絡体制の整備ということで、 平時からの情報共有を図るということ。4番目は、化学・核物質を用いたテロへの対策 ということで、訓練や専門家会合の実施、また専門機関であるIAEA、あるいはOECD 等の国際機関との連携を図るということ。5番目は、国際連携の促進ということで、実 地疫学調査の推進、さらには重要な研究分野の特定を図るということがまとめられまし た。3頁以降は、そのときの閣僚合同宣言の仮訳です。  こうしたGHSIが毎年のように開催されているわけですが、専門分野等に対する対応 というのは、各専門家の方々にお願いをしているところでありましたが、いわゆる横の 連携に欠けるのではないかということが、東京で行われたGHSIの閣僚級会合の、我が 国の対処の中で意見をいただいたところもあります。  資料4-2に移りまして、世界健康安全保障イニシアティブ国内委員会を設置すること といたしました。この趣旨ですが、先ほど申し上げたとおり、「しかしながら」からです が、これまでの我が国のGHSIへの対応は、行政官や専門家による会合への参加を中心 とした散発的なものであり、国内のGHSI関係者間の情報共有が十分になされておらず、 GHSI全体を俯瞰した上で、我が国としての取組みのあり方についての議論がなされて こなかったということで、その反省を踏まえてこの国内委員会を設置することといたし ました。国内委員会の位置づけとしては、大臣官房厚生科学課長の私的諮問会議として 位置づけております。厚生科学課長が招集し、開催を行います。会議は原則として非公 開とさせていただいております。  2頁は、国内委員会の委員の先生方のリストです。健康危機管理部会の委員の方々に も何人かお入りになっていただいているところですし、またオブザーバーとして岡部委 員、大友委員、吉川委員にも入っていただいているところです。  3頁の模式図、国内体制図は、左からGHSIのレベルの流れ。日本からの参加者とい う流れ、省内の関係部局という流れ。それにGHSI国内委員会と健康危機管理部会の関 係図となっております。  GHSIのほうの専門家会合、専門分野となっておりますが、こちらのほうにGHSI国 内委員会のメンバーが原則的に出席していただいているところです。例えば、新型イン フルエンザ・ワーキンググループに対しては、感染症研究所の田代部長と中嶋室長にお 願いしています。ラボネットに対しては倉根部長、森川室長にお願いしています。この 図の見方としては、横にも見ていただけると思います。  この健康危機管理部会との関係でありますが、倉田部会長にGHSIの国内委員会の委 員長も兼ねていただいております。また同時に明石委員には両方の委員になっていただ き、また岡部・大友・吉川の3委員の先生方においてはオブザーバーとしてGHSIの国 内委員会にも参加していただいているということで、健康危機管理部会と国内委員会の 連携を図りながら、GHSI対応を進めていこうと考えているところです。国内委員会設 置についての報告は以上です。 ○倉田部会長  ただいまの説明に対し、ご意見、ご質問はございますか。この問題は、カナダが非常 に熱心にやっています。事務局もカナダで、いろいろな連絡も全部カナダで非常にはり きっているヘルス・カナダの先生から来ます。この下にラボネットというのがあり、ワ ーキンググループとの中間ぐらいでしょうか、いろいろな情報がいっぱい入ってきて、 最初は申し込みを受付過ぎて、各国から10人、15人と数十人になって、いまは各国2 人という限定で、具体的なラボのほうでのセキュリティをどう高めて、どういう問題を きちんとテロ体制でやればいいか、というようなことをずっとやってきています。  そこのワーキンググループというのは非常に面白くてというのも失礼なのですけれど も、テロ対象病原体としていくつかのものがありますが、それを自分の国でやっている 方法でブラインドテストをやります。4年ぐらい前に天然痘の100検体、1つは何も入 っていないのがあって99検体でしたが、水が入っていたり、培養菌が入っていたり、 不活化したものですが本物が入っていたり、同じグループのマウスのものとか、ヒトの ものではないものとかいろいろなものが入っていて、それをブラインドテストを99検 体についてやって、日本は満点を取って帰ってきました。要するに、日本の成績はいつ もトップクラスです。そういうワーキンググループの結果ですけれども、病原体がもし 何かあったとき、検出のレベルを競いつつレベルを上げようということです。  面白いという言い方は失礼ですが、各国がどのぐらいの技術を持っているかがすぐば れてしまいます。そういう意味では、日本でやっている人は非常に少なくてもちゃんと 知っているということは事実です。  ただいまの点で何もなければ、全体を通してはいかがでしょうか。事務局からは何か ありますか。 ○浅沼健康危機管理官  事務局からは特にありません。 ○倉田部会長  議事はこれで終わりですが、今後の開催については未定ですが、緊急時のことがあれ ば随時開催になります。そうでなければ前回の第1回健康危機管理部会のときに申し上 げましたが、年に1回程度は定例でやり、いろいろな情報を交換していく。さらに必要 があれば、情報については委員の先生方にきちんと連絡させていただくということでや っていきたいと思います。大事なことがあれば、健康危機管理官のほうに連絡していた だいて、年に1回といえば確かにのんびりといえばのんびりなので、緊急のことがあれ ば随時やるというのを前提にしての年1回ということになります。こういうことについ ても何かご意見があればいただきたいのですがよろしいですか。  今後こういう問題については、いろいろな危機管理というか、危機意識といいますか、 そういうことがありますので、それについては危機管理官の浅沼さんのほうに上げてい ただいて、それで対応していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。                       (照会先)                         厚生労働省大臣官房厚生科学課                         健康危機管理対策室 石 井                         電話:03-5253-1111(内3818)