資料No.8−1


これまでの検討の概要について

今後の対策の方向

I.表示
1. 振動値の表示を要する工具(表示対象工具)

(1)  原則として、チェーンソー、卓上用研削盤、床上用研削盤及び昭57年3月24日付け労働省労働衛生課長内かん(振動工具一覧表)に示された工具といった、いわゆる2時間規制の対象(準ずるものを含む)としてきたものを、振動値の表示が必要な工具とする。

(2)  振動値が2.5メートル毎秒毎秒未満の表示対象工具の場合、本体や取扱説明書等に表示するのは、実際の測定振動値ではなく、2.5メートル毎秒毎秒未満である旨の表示で足りるものとする。

(3)  輸入か国産か、プロ仕様かどうか等で区別せず、主に労働者が取り扱う表示対象工具を対象とする。

2.準拠規格

(1) 表示する振動値を測定するにあたり、原則として、表示対象工具ごとに、JISB7762(又はISO8662)、ISO22867、EN50144又はEN60745の順で適合する規格によることとし、これら規格の対象とならない表示対象工具、又はこれら規格に拠りがたい事情がある場合は、JISB7761−2に準拠した測定とする。

(2) 原則として3軸同時測定(又は3軸順次測定)を行うものとする。

 

(3)  こうして得られた振動値(=周波数補正振動加速度実効値(3軸合成値))(2.5メートル毎秒毎秒未満での場合はその旨)を表示するものとする。

(4)  表示すべき箇所は、工具本体をはじめ、取扱説明書等を含むことが望ましい。

(5)  すでに流通している表示対象工具については、工具本体に表示することは困難であるので、振動値をユーザー向けに公開し、情報提供することが望ましい。

3.換算・互換性等

(1) ISO8662等に基づき単軸測定した振動値データがある工具については、一定の換算を行い、3軸合成値相当値を求めることを可とするものとする。 「チェーンソーの規格」に基づく測定方法で測定されているチェーンソー及び刈払機については、一定の換算方法により計算で3軸合成値相当値を求めることを可とするものとする。

(2) 表示対象工具ごとに、周波数補正振動加速度実効値(3軸合成値)の最大限度値は設けないこととする。

(3) これら状況を踏まえ、「チェーンソーの規格」の適用を受けるチェーンソーにあっては、振動加速度の最大値を3Gとする規制値を設けているが、これを廃止することも含めた見直しをすることとしてよいか。

II.作業管理
1.作業管理の原則

(1) ISOの考え方に基づき、EU等において行われているA(8)(日振動ばく露量)による評価、振動ばく露対策値及び振動ばく露限界値といった考え方を取り入れることが適当である。

   

(2) EUの規制及び考え方等を参考に検討したところ、振動ばく露対策値は2.5メートル毎秒毎秒、振動ばく露限界値は5メートル毎秒毎秒とすることが適当と考えられる。

(3) A(8)は振動ばく露限界値を超えないように作業時間を定めるものとする。

(4) A(8)が振動ばく露対策値以上となる場合、振動ばく露対策値以下に近づけるよう作業時間の抑制及び低振動工具の選択(使用)に努めるものとするほか、作業時間基準を除き、昭和50年10月20日付け基発第608号及び第610号に定める指針等に基づく対策を講じる。

(5) 振動値が非常に大きい工具については、A(8)が振動ばく露限界値に達する作業時間が極めて短くなることから、イギリスのA(8)weekという概念を踏まえ、特例として、1週間単位の総ばく露量の考え方を取り入れるものとする。

2.振動値とA(8)

(1) 作業現場において実際に作業しているときの振動を測定することは望ましいが、現実的には困難であることから、原則として、表示対象工具に表示された振動値を基にA(8)を計算することとする。

3.作業時間とA(8)

(1) A(8)の考え方を導入し、振動ばく露対策値や振動ばく露限界値を定めることによる作業時間規制に加えて、1日の作業時間の上限(※)を、日本産業衛生学会等を踏まえて設けるのはどうか。

(※)ここでいう上限は、A(8)の考え方から自ずと定められる時間とは別の概念の作業時間である。

(2) 表示対象工具であって、表示される振動値が2.5メートル毎秒毎秒以上の工具と、2.5メートル毎秒毎秒を下回る工具とを1日に併用する場合、振動値2.5メートル毎秒毎秒を下回る工具を使用する作業も含めて、作業時間管理を含む作業管理の対象とする。

(3) 振動値が2.5メートル毎秒毎秒未満の工具と、振動値が2.5メートル毎秒毎秒を超える工具を1日に使用する場合における、A(8)の値を出すときは、振動値が2.5メートル毎秒毎秒未満である旨の表示がされた工具の振動値を2.5メートル毎秒毎秒と見なして求めることとする。

4.作業時間と管理

(1) 使用する表示対象工具及びその振動値に基づいた作業者の作業時間(1日及び1週間)の管理計画を定めるとともに記録を作成する。

5.保守管理

(1) 表示される振動値は出荷時の値であり、作業後の管理方法等によっては振動は変化することがあることから、適切な保守管理について記述することはどうか。

III.その他
1.騒音

(1) 表示対象工具にあっては、振動値に加え、騒音値も表示することが望ましいものである。しかし、騒音値は直接的に作業管理の指標にしにくいものであることから、騒音値の測定・表示は推奨するものの、振動値の表示を優先することとする。

(2) メーカーが騒音値を表示するために騒音を測定する場合、その測定はISO22868等の国際規格等に準拠するのはどうか。

(3) 騒音値の表示を行う場合は、振動値の場合と同様の箇所に表示することが望ましい。

(4) 騒音対策については、引き続き平成4年「騒音障害防止のためのガイドライン」に基づいて作業環境管理、作業管理等を行うものとする。 

2.質量

(1)  表示対象工具の質量を、取扱説明書等に表示することが望ましい。

(2)  なお、チェーンソーの重量(ママ)表示は、従来のとおりとする。

今後の課題

(1)  レシプロソー等近年使用されてきている工具類もあるので、使用実態等の情報を収集し、表示対象工具の必要な見直しを検討。

(2)  振動ばく露限界値等について、日本産業衛生学会等国内外の情報や知見の動向について、今後とも注意。

(3)  労働安全衛生法第28条の2第2項の規定に基づく「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(リスクアセスメント指針)において、機械安全の指針として示している「機械の包括的な安全基準に関する指針」の改正の動向に注意。


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