07/05/30 「中国残留邦人への支援に関する有識者会議」第3回議事録 日  時:平成19年5月30日(水)17:00〜19:00 場  所:厚生労働省「専用第17会議室」 出席委員:貝塚座長、猪口座長代理、金平委員、岸委員、森田委員、山崎委員 (議事録) ○貝塚座長 それでは、定刻になりましたので、これより「中国残留邦人への支援に関する有識 者会議」の第3回目を開催したいと思います。  本日は、堀田委員が御欠席になりまして、猪口座長代理が少し早目に御退席の予定となってお ります。  それでは、早速議事に入りたいと思いますが、本日は第1回、第2回の議論の中で出てきた論 点につきまして、更に議論を深めていただきたいと思います。  初めに、事務局の方から資料説明をいただき、その後に意見交換をしたいと思います。それで は、事務局の方から御説明願います。 ○野島援護企画課長 それでは、今日席上にお配りしております説明資料を御説明させていただ きます。  前回、前々回で先生方に御議論いただいた中で、幾つかの宿題をいただいております。また制 度的な説明で、御説明が不足している部分等がございましたので、それを補足する意味で、また 本日の委員の方々の御議論の参考に供したいということでつくらさせていただきました。  それでは、説明資料を御説明させていただきたいと思います。  表紙をおめくりいただきまして、引揚援護施策をどのような考え方で、どのような形でやって きたのかということでございます。引揚援護施策でございますが、1ページの一番下にございま すように、先の大戦終了直後に外地、海外にいらっしゃった方は、軍人・軍属311万人、一般邦 人319万人、合わせて630万人の方が海外にいらっしゃった。この方々が本邦に戻ってくる。 それに関する施策ということでございます。  括弧で書いてございますが、旧満州地区からの引揚者は、軍人・軍属の方が約4万人。  一般の邦人の方が、約100万人という規模でございました。  引揚援護施策でございますが、一番上の(1)に戻りますが、昭和27年の閣議決定、海外邦人の 引揚に関する件等に基づき実施してきたものでございまして、大半が予算措置でございます。  終戦直後から独立回復までは、日本に外交機能がございませんので、GHQの引揚に関する基 本指令に基づいて行われてきた。独立を回復した後に、この閣議決定に基づいて行ってきたとい う経緯でございます。  その施策の趣旨でございますが、これは終戦に伴う外地の混乱の中で、軍人・軍属、一般邦人 の方々の帰国を支援するために行われたものでございます。これにつきまして、当会議の中でも 法的責務という御議論があったかと思いますが、これまで中国残留邦人の集団訴訟の地裁判決に おいては、引き揚げに関して、早期帰国の実現を図らなかった、義務違反ではないかという御議 論がされておりますが、これについては、法的な義務違反を認めた判決は1つもございません。 そういう状況でございます。  2ページでございますが「(2) 中国残留邦人に対する援護施策の変遷」ということで、こ れも途中で変遷があったのではないかという御議論があったかと思います。確かに基本的には日 中国交正常化前は、いわゆる一般の在外邦人の引揚援護施策の一環として行われていたという面 が強かったと考えられます。  一方、日中国交正常化後、さまざまな政府間の取り決め等によりまして、帰国者が増加するこ とに伴いまして、次第に当面の引き揚げから定着・自立という方向に施策が転換してきた。  具体的にはここにございますように、昭和59年にスタートいたしました中国帰国者定着促進 センター、これは中国からお戻りになった方々に一定期間宿泊を伴った研修等を行って、日本の 習慣、日本語の習得を行っていただくというような形で、単なる引揚援護施策から更に定着・自 立支援の方に方向性を変えていったという大きな1つの流れではないだろうかと思っておりま す。  その他はここに書いてございますように、自立研修センター、帰国者支援・交流センター、自 立指導員による巡回指導等々の施策をそれぞれ逐次充実して、現在に至っているということでご ざいます。  3ページでございますが、既に申し上げたものの1つの整理でございますが、一般の引揚者対 策と中国残留邦人に対する支援の大まかな比較でございます。  「一般引揚者に対する支援」ということでは、上から2番目の箱にございますように、帰国直 後の当面の生活費として、帰還手当というものを引揚者に支給しておりました。これは昭和27 年当時からずっと1人1万円という形であったわけでございます。  「中国残留邦人等に対する支援」につきましても、当初はこの帰還手当を支給してきたわけで ございますが、昭和62年からはこれを自立支度金という名前に変えております。金額も帰還手 当の途中からでございますが、大幅に引き上げを行っておりまして、現在では大人2人、子ども 2人世帯の場合には、55万7,500円という金額になっております。  「帰国等に伴う費用」につきましても、引揚船の費用を国が用意。これは、当然、中国残留邦 人に対しても同じですが、更に航空による運賃についても国庫負担をするようになったというこ と。  「帰国後の支援」ということで、一般邦人引揚者につきましては、ここにございますように、 当面当座の支援というものが中心だったわけでございます。  中国残留邦人につきましては、それに加えまして、先ほども御説明しましたが、帰国後の各ス テージに応じて、定着促進センター、自立研修センター、支援交流センターといった施設体系に よる支援。更には自立指導員による巡回指導。それから、ここにございますような公営住宅への 優先入居、職業訓練の実施、学校での受け入れ等々、さまざまな積極的な支援も含めた支援を強 化してきているというような状況でございます。  次に、中国残留邦人の訴訟の関係でございます。  訴訟につきましては、恐縮でございますが、5ページを先にお開けいただきたいんでございま すが、中国残留邦人の方々からは、ここにございますように「(2)提訴理由」といたしまして、旧 満州に居住した民間人を置き去りにして、長期間放置するとともに、日中国交正常化後も速やか に帰国支援をとることを怠ったという、いわゆる早期帰国実現義務違反という論点。  それから、帰国をする際に、出入国管理法上の身元保証人を要求する等、帰国妨害を行った。 帰国妨害という論点。  帰国後、現在に至るまで十分な定着、自立支援措置の実行を怠ったという自立支援義務違反と いった3つの論点を主たる論点として、訴訟が平成13年から提起されております。  賠償額としては、幾つか訴訟のパターンがあるわけでございますが、大きなグループといたし ましては、3,300万円、うち弁護士費用300万円という賠償請求がありまして、これまで下にご ざいますように、一審で継続中、既に一審で判決が出て控訴審に至っているものがございます。  4ページにお戻りいただきたいんでございますが、これまでさまざまな訴訟の中で、8地裁で 判決が出ておりまして、うち国側が7地裁で勝訴しておりまして、昨年12月に神戸地裁の1地 裁で国側が敗訴しております。  論点につきます判断でございますが、先ほど3つ挙げた論点。つまり、早期帰国実現義務、帰 国妨害、自立支援義務違反というような問題でございます。原告側の主張は、先ほど申し上げた ようなことでございますが、早期帰国実現義務につきましては、判決といたしましては、国の行 った帰国施策につきましては、当時としては合理的であると認めるという判決が体勢を占め、早 期帰国実現義務違反を認定した判決はございません。  例として下にございますのは、今年1月30日に東京地裁での判決の概要でございます。東京 地裁におきましては、2,200余名の訴訟のうち、1,000名強が訴訟を提起されているところでご ざいます。この東京地裁では、原告らの主張する先行行為に基づく条理上の義務としての早期帰 国義務違反が成立することはできず、国が原告らの早期帰国を実現する法的義務を負うと認める ことはできないという判示がされております。  第2点の論点でございまして、帰国妨害につきましても、神戸地裁の判決を除きまして、入管 法上の取扱い等は違法ではないと判示しておりまして、帰国妨害は認定されていない。東京地裁 でも帰国妨害を認めに足る証拠はないという判示がされております。  自立支援義務の点につきましても、神戸地裁の判決を除きまして、国の行った自立支援施策に ついては、当時としては合理的であると認めるという判決が大勢を占めておりまして、自立支援 義務違反を認定した判決は、神戸を除きましてございません。ちなみに、東京地裁の判決につき ましては、ここにございますように、自立支援に関する施策について、それを違法あるいは著し く不当と評価することはできない。国が原告側に対して、法的な自立支援義務を負っているもの と認めることはできないという判決になっております。法的な状況はそういうことがございます。  6ページをお開けいただければと思います。6ページにつきましては、第1回のこの会議の中 でも、戦争損害等の関係での御議論があったかと思います。その関係で、現在の状況についての 御説明を6、7、8ページでさせていただきます。  いわゆる戦争被害、戦争損害に関する給付制度につきましては、戦争被害を補償といった性格 を有する定期給付の制度は、国と雇用関係あるいは雇用類似の関係にあった軍人・軍属、準軍属 といった死亡等について支給される恩給、援護年金等に限られている。これは言ってしまえば、 国が使用者としての立場から行うという性格であろうと思います。  その他、シベリア抑留帰還者、一般戦災死没者等については、そのことに着目して支給される 定期給付の制度がないということでございます。  具体的には、下の表にございますように、軍人・軍属、戦没者、戦傷病者につきましては、今、 申し上げた恩給、援護年金等の支給。  シベリア抑留帰還者につきましても、これは恩給の年限に達していれば恩給が出るわけでござ いますが、そういう状況に達していない方等につきましては、定期給付はないわけでございまし て、独立行政法人平和祈念事業特別基金による慰労金の支給や慰労品の贈与といったもの等が行 われているのみでございます。  国籍という点で申しますと、旧軍人・軍属で朝鮮半島出身、台湾出身者の方々、日本の独立に よりまして国籍が外れた方でございますが、これらの方に対しては、定期給付はございません。 ただ、人道的見地、精神に基づきまして、日本在住の朝鮮半島、台湾出身の方、在台の台湾出身 者の方につきましては、一時金の支給を過去に行った例がございます。  そのような国との身分関係がなかった方々につきましては、以下のとおりでございます。原爆 被爆者につきましては、健康被害が原爆放射能という他の戦争被害とは異なる特殊な被害である ことにかんがみ、健康の保持という観点から、医療特別手当等の支給がございます。  引揚者については、定期的な給付はございません。これも上に書きましたような平和祈念事業 特別基金による慰労品の贈呈等が行われております。  一般戦災死没者、東京大空襲等が1つの例示かと思いますが、一般戦災傷病者等につきまして も、定期的な給付は何もございません。  いわゆる慰安婦と言われる方々でございますが、これも我が国から定期的給付を行っていると いう事例はございません。ただ、既に事業としては終わっているかと思いますが、女性のための アジア平和国民基金によります、いわゆる償い金という形で一時金が支給されていたという事例 がございます。  中国人強制連行被害者の方々についても、そのようなものはございません。  これが事実でございますが、それに関する基本的な考え方というものを7ページ、8ページに 抜き出しております。  「(2)戦争被害に対する国の責任に関する見解」ということで、戦争被害に対する国の補償 責任については、まず最高裁の判決が(1)でございます。シベリア強制労働補償請求訴訟。シベリ アに抑留されたことによってこうむった損害は、戦争損害として国民が等しく受忍するものであ って、憲法29条第3項による補償請求は理由がないという形で棄却をされている。これは複数 の同様の判例がございます。  (2)中国残留邦人集団訴訟。これは一番最初に出た平成17年7月6日の大阪地裁の判決でござ いますが、戦中戦後において、国民のすべてが多かれ少なかれその生命、身体、財産上の犠牲を 耐え忍ぶことを余儀なくされていたものであるから、戦争損害は、国民の等しく受忍しなければ ならないものであり、このことは、被害の発生した場所が国内または国外のいずれであっても異 なるものではない。これは地裁でございますが、判決が出ておるところでございます。  (3)の戦後処理問題懇談会。これは下に小さい字で注が付いてございますが、戦後40年を控え、 戦後処理問題について、政府として検討するために、昭和57年に総理府総務長官、後に内閣官 房長官の下に設置された懇談会でございます。主として、恩給欠格者、強制抑留、在外財産の問 題を中心として、戦後問題を包括的に御議論された懇談会でございます。これにつきましては、 苛酷な抑留を強いられたことは真に同情すべきではあるものの、それもまた国民がそれぞれの立 場で受け止めなければならなかった戦争損害の一種に属するといわざるを得ず、というような形 で整理されております。  8ページのところで、今の戦後処理問題懇談会報告のもう少し詳細な部分を載せてございます が、基本的な考え方として、およそ戦争は、国民すべてに対し何らかの損害を与えるものであり、 全国民がその意味で戦争被害者と言われる者であるが、その中で、戦後処理問題とは、戦争損害 や国民の納得を得られる程度において公平化するために、国がいかなる措置をとるかという問題 であるという中で、最後のパラグラフでございますが、更に措置すべきであるにもかかわらず、 残されている戦争損害があるかどうか、これまでに講じられてきた措置に不均衡なものがあるか どうか、その後における新しい事実又は事情の変化によってこれまでの措置を見直す必要がある かどうかについて、以上のとおり、恩給欠格者問題、戦後強制抑留者問題及び在外財産問題を中 心に、種々の観点から慎重かつ公平に検討を行ってきたが、いずれの点についても、もはやこれ 以上国において措置すべきものはないとの結論に至らざるを得なかったという整理が、約20年 前でございますが、政府としてされているということでございます。  これが戦争被害損害に関する問題でございます。  次に公的年金制度の関係で、これは現状に関する御説明でございます。中国残留邦人の方々が お受け取りになっている年金につきましては、第1回の実態調査の御説明の中で若干御説明させ ていただきましだか、一般の国民の方々がということで補足でございます。  (1)の上の箱は、国民年金のみの受給者。老齢年金でございますが、これは国民年金でございま すので、原則25年以上加入することによって、受給権が発生するわけでございますが、平均受 給額は月額4万6,700円でございます。平均で見ますと、4万6,700円でございますが、右のグ ラフをごらんいただければおわかりになるとおり、3万円台を受給されている方がピークでござ います。そういう意味で、いわゆる40年加入満額年金は、6万6,000円という数字がございま すが、日本国民の受けている年金は、こんな感じでございます。  一方、厚生年金の受給者の平均年金受給額はどのようなものかというのが、下の箱でございま して、厚生年金の老齢年金、原則、厚生年金期間は20年以上加入された方でございます。平均 受給額は、約16万5,000円でございまして、右にございますが、全体の過半数を月額17万円 というところで切りますと、左側、つまり、17万円以下の方々が53.2%という形で、過半数が 17万円以下、20年以上拠出の厚生年金であっても、そんなような数字になっております。これ が年金制度における現在の一般国民の方の受給額の現状というところの補足説明でございます。  10ページ、11ページでございますが、これは公的年金制度における特例措置の制度でござい まして、公的年金制度におきましては、基本的に拠出と負担という形で年金の受給権に結び付く わけでございますが、一定の方々につきましては、特例措置が設けられているということで、ま さに今回御議論いただいている中国残留邦人に対する特例措置、拉致被害者に対する特例措置、 沖縄居住者に対する沖縄復帰時の特例措置という3つの特例がございます。  具体的に申し上げれば、前々回も若干御説明したと思いますが、中国残留邦人につきましては、 約六千人の方でございます。帰国までの期間、これはここに書いてございますが、この6,000人 の方は平均すると約二十五年間になるわけでございますが、帰国までの期間につきましては、保 険料免除期間につきまして、その期間の満額の3分の1の部分については、支給を保障するとい うような仕組みになっております。その後、帰国後に追納されれば、当然その上の部分につきま しても受給額が増えるという仕組みになっております。  拉致被害者の方々につきましては、拉致されていた期間。つまり帰国までの期間につきまして、 この5人の方々は約二十四年間になるわけでございますが、ここにつきましては、中国残留邦人 に対する措置と若干違っておりまして、いわゆる3分の1の期間ではなく、その上の部分につき ましても国庫の方から保険料分を負担をすることによりまして、帰国までの期間については満額 給付されるという仕組みになっております。  沖縄につきましては、沖縄における年金制度発足は、本土に比べまして9年間遅れたわけでご ざいますが、その最長9年間につきましては、中国残留邦人と同じように保険料免除期間として、 3分の1分については支給をする。追納も可能であるという仕組みになっておるわけでございま す。  いずれの制度につきましても、帰国あるいは沖縄の場合は制度発足というようなところまでの 特例でございまして、その後、帰国後とか制度発足後という部分について、特例を設けている制 度は、現在のこの公的年金制度の下におきましては、ございません。  11ページでございます。これは今の御説明したものを文字で書いたわけでございまして、趣 旨のところだけ若干繰り返しますと、中国残留邦人につきましては、本人の意思に反して中国等 に残留せざるを得なかったために、国民年金に加入できなかったという事情に鑑みて、特別の措 置を講じた。  北朝鮮拉致被害者につきましては、北朝鮮の未曾有の国家的犯罪行為によって北朝鮮に居住す ることを余儀なくされたという極めて特殊な事情により、年金制度に加入できなかった状況に鑑 みて、特別な措置を講じた。  沖縄居住者につきましては、本土が36年4月、沖縄が45年4月に制度が遅れて発足したた めに、最長9年間の格差が生じており、その是正を行うために特別の措置を講じたという趣旨で ございます。  12ページでございます。今も比較申し上げました、中国残留邦人と北朝鮮拉致被害者に対す る支援の比較ということで、これも第1回のときにも御議論があったかと思いますので、資料と して提出をさせていただきます。  対象者につきましては省略させていただきますが、給付金等の支給につきましては、拉致被害 者等給付金につきましては、単身で世帯ですと17万円を5か年を限度として支給をするという 仕組みに、生活再建に資するためということで支給をするということになっております。  一方、中国残留邦人につきましては、自立支度金ということで、一時金を単身であれば15万 9,400円を支給する。ただ、その生活再建に資するということでは、一部でその下の生活相談の ところにございますが、各種センターあるいはソフトウェアによる各種支援を中国残留邦人にお いては行っているということが拉致被害者に対する支援と異なっていることかと思います。国民 年金の特例は先ほど申し上げましたので、省略をさせていただきます。  下の方に住宅の供給、雇用の機会、教育の機会等々につきましては、体系的には拉致被害者と 中国残留邦人に対する支援とは同じでございます。実質的には中国残留邦人に対する支援の方が さまざまな具体的な措置が行われておると思っております。  13ページ以下でございますが、生活保護制度の議論もるるされてきたわけでございますが、 これについても現状等についての補足説明をさせていただきます。  13ページでございます。これは生活保護制度で、具体的な金額、最低生活費の具体例がどん なものかということについて、少し積み上げを行ったものを参考までに出させていただきました。  左の上の部分でございます。高齢単身世帯65歳の方、1級地−1。これは東京都でございま すが、これにつきましては、生活扶助、いわゆる衣食その他の日常生活の需要を満たすというも ので、生活扶助が8万820円。  住宅扶助は、いわゆる特別基準額、上限額でございますが、5万3,700円。  医療扶助は、生活保護におきましては現物給付されておりますので、金額で本来出てくるわけ ではございませんが、これはいわゆる保険制度における高額療養費の自己負担の上限額というこ とで、低所得者の上限額ということで、3万5,400円という形で、単純に積み上げれば16万9,920 円、約十七万円という水準になるわけでございます。  生活保護制度におきましては、更にその当該世帯の需要に応じまして、介護扶助とか生業扶助 等々の他の扶助もこのぐらいに必要があれば、あるという仕組みになっております。  同じく東京都で65歳の夫婦世帯の場合には下にございますように、生活扶助が約12万2,000 円、住宅扶助が約七万円、医療扶助が3万5,400円ということで、約二十三万円というような水 準に現在の基準がなっているわけでございます。  14ページでございます。13ページは一つの基準でございますが、現実に高齢の被保護者に対 して、どのぐらいの金額が平均的に支給されているかというような実態の数字でございます。こ れは平成17年の全国一斉調査に基づいた実態ということでございます。  一番左の箱が生活扶助の基準額で見ますと、平均で7万4,000円でございます。一方、基礎年 金の右側でございますが、これは40年の満額で6万6,000円という形で、この2つを比べます と、生活扶助基準額の方が高いわけでございますが、実際の生活扶助支給額はこの真ん中のとこ ろでございまして、この7万3,956円から、被保護者の収入は年金等が中心かとは思いますが、 2万4,307円というものを差し引きまして、現実的に支給されている生活扶助費は4万9,649円、 約五万円。これが全国の高齢の被保護者に対する生活扶助支給額の現実的な金額であるというよ うなものでございます。  15と16ページにつきましては、もう既に御案内かと思いますが、生活保護の基本的な考え方 ということを簡単に整理したものでございます。これは生活保護の目的につきましては、ここに ございますとおり、最低生活の保障ということで、資産、能力等のすべてを活用してもなお生活 に困窮する者に対して、その程度に応じた生活保護を実施し、自立の助長を図るということで、 その理由のいかんを問わず、平等に対応するということが基本的な目的でございます。具体的に 最低保障、生活の保障ということはここに書いてございます。  支給される保護費の額は、先ほど具体例で申し上げましたとおり、最低生活費から年金等の収 入を差し引いて、支給される保護費が決まるというようなことでございます。自立の助長を図る ために、世帯の実態の応じた訪問調査、就労指導等を行うというようなことでございます。  生活扶助基準の例ということで、これは19年度の例でございます。このうち、先ほど例とし て挙げました、高齢の単身所帯の金額がこの箱の中に2つほど書いてございます。手続はここに 書いてございます。  保護の実施機関等につきましては、町村部については都道府県、市部については市が実施する。 保護費については国が4分の3、自治体が4分の1を負担するというような仕組みになってござ います。これは生活保護制度の一般的な仕組みでございます。  17ページでございます。中国帰国者等に対する4月、これは本年4月以降でございます。生 活保護の特例的な運用でございますが、中国帰国者等に対しましては、新たに地域生活支援プロ グラムというものを実施いたしまして、中国帰国者等の個々の生活状況を把握するとともに、そ のニーズに対応したきめ細かな支援を行うということで、自立の助長を図るというような仕組み を導入いたしております。  その中で具体的には、(2)にございますような親族訪問等のために中国に渡航する場合、従来は この期間については生活扶助費の減額を行っていたわけでございますが、4月以降につきまして は、これらの方が親族訪問、墓参等のために中国へ渡航する場合につきましては、1〜2か月程 度の訪問期間の場合については、その日数に応じた生活扶助費の減額を行わない。つまり継続支 給を行うということにしてございます。  そのような場合の渡航費用についても、収入認定除外を行うということで、親族訪問、墓参等 のために中国に渡航する場合の費用を中国残留孤児援護基金の金銭等から賄う場合については、 金銭については、当該世帯の自立更生のために充てられるものとして、収入として認定しないと いう運用を図っておるということでございます。  以上、少し長くなりましたが、補足資料ということで提出させていただきました。よろしくお 願いいたします。 ○貝塚座長 どうもありがとうございました。  今、いただきました御説明は、今までの措置やその他について、その背景や経済的な支援です ね。かなり細かい部分。訴訟に関する今までの経過。戦争被害というものがどういう形で今まで 行われてきたか。あるいはそれをめぐる見解がどういうものであったかということであります。  あとはこの問題と直接あるいは間接的に重要な現在の年金制度が、どういう状況になっている か。年金には特例措置もないわけではないというわけでございます。中国残留邦人と拉致被害者 の支援の数字。生活保護制度がどうなっているかということであります。有識者会議で議論され たことのいろんな制度について、一括して御説明いただきました。  これから先は、委員の皆様に御自由に議論していただくということになると思いますので、よ ろしくお願いします。  前回まで、この有識者会議でいろいろな発言があったわけですが、何らかの支援が中国残留邦 人に関して必要であるということにつきましては、委員の間で見解がほぼ一致していると理解し ております。  したがいまして、そういう理解の上に立って、これまでの論点をもう少し整理して、次回以降 の有識者会議のいろんな主張をまとめる際に整理させていただいて、議論していただくのがいい のではないかと思います。  いろんなやり方があるんですが、第1番目に、何といっても支援の基本的な考え方ですね。支 援をすることについては皆様が賛成されているわけですが、そのときの基本的な考え方というの は、どういうものであるべきかとかですね。  それから、実際論として、やはり支援するときにどういう方法で支援するかというのは、2番 目のポイントであります。これも今までのヒアリングその他でも、随分いろんな問題が提起され ていると思います。支援する際のどういうやり方でやるかという話であります。  3番目の問題は、これは国民一般といいますか、社会全体の話として、中国残留邦人を社会で 受け入れるために、我々は何をすべきかという社会としての対応の問題があると考えられます。  そういうわけで、一応3つに分けさせていただいて、順次、御議論いただくのが議論の進め方 としては、一番基本的なところから方法論、我々が社会でどういうふうにすべきかという話であ ります。  最初の点について、支援の基本的な考え方については、どういうふうに考えるべきかというこ とでありますが、支援すべきであるということについて、皆様は大体賛成されているわけですが、 支援のどういう点に主眼を置くべきかという点でありますが、ヒアリングその他でかなりはっき りした点は、中国残留邦人が今、置かれている状況というのは、かなりの時間が経って、大体も う60歳以上の方が非常に増えているわけですね。  そうすると、これはここの場でも残留邦人の方々が口々に言われた点だと思いますが、老後の 生活の安定を求めている点は確かであって、そういう点が生活の安定という点では重要なポイン トではないかと。その点に絞って議論するのがいいのではないかということを考えたいと思いま す。  生活の支援というのは、それを支援する理由あるいは、そのときの支援の原則というのも当然 あるわけでありますが、その点についても申し上げますと、法的な責任があるという議論は、こ こでは出てきませんでしたけれども、今までのいろいろな議論の中でも多分、法律上の責任があ るという議論はほとんどなされたことがないと思います。  そういう点では意見の差異はないと思われますが、どういう視点を重要視するのかというのが あるわけですが、今日は堀田委員が出ておられませんので、ある意味で残念なんですが、戦争責 任という話が多少出ました。  現在、堀田委員がその主張をそのまま継続してお持ちであるかどうかについては、必ずしも自 分が把握しているわけはありませんが、この点を入れるか入れないかを支援するときの理由とし ては、大変大きな違いが出てくるということになると思います。  多少、私見を申し上げれば、あとで皆さんにも言っていただきますが、やはり戦争責任の話が 出てくると、話がすごく広がるわけであります。  いろんな問題がこの第二次世界大戦あるいは太平洋戦争で、結果、場合によっては悲惨な状況 が起きたわけでございますけれども、そのケースケースというのはたくさんあるわけで、そうい う問題にも波及するような、現実的にはそういう話があります。  したがって、そういうふうに議論をすると、この会議では、我々が議論する資格は勿論ないわ けではないんですが、もっといろいろ広い見地から見ていかなくてはいかぬという気がしますの で、この点は余り議論をこれ以上大きくするのは、私としては疑問に思っております。  多分、堀田委員も必ずしもこの点には、同じ意見をそのまま主張されるということではないよ うな感触ではありますので、本当は来ていただければありがたかったんですが、そういうことの ようではないかと思います。  それから、原則に関して、支援すべきは支援すべきなんですが、支援というのは当然、限度が ありまして、どの程度まで支援すべきかという話が、これはもう少し実質的な話になりますが、 その場合、支援すべきかというのは、それ以外の普通の一般国民の方々にも生活の支援は困って いる方にはなされているわけで、典型的な例は生活保護ということになりますが、あるいは年金 その他、いろんな社会保障の制度がありますが、そういう社会保障の制度ないしは生活保護の給 付とかそういうものとのバランスがやはり必要ではないかと思います。  以上、もう一度申し上げますと、やはり残留邦人の方が一番心配されているのは老後の生活で あって、その点を相当、我々は考えなくてはいかぬのではないかというのが出発点であります。 それから、原則論的に、実質的に一番重要なのは、やはり限度があるわけで、その限度はどのよ うな程度のものであるかということについて御議論いただくのがよろしいのではないか。  あとは、御自由に御発言いただければよろしいと思います。どなたからでも御発言ください。  どうぞ。 ○金平委員 今日いただいた17ページの、生活保護の運用という形になっていますけれども、 その(2)と(3)、特に(3)の問題はいろいろと御要望が強かった点ですからよかったと思います。  (1)の問題なんですけれども、今、座長がおっしゃるように、今後の支援というときに、極めて 大きなことと思いますので「地域生活支援プログラム」の趣旨と目標をお聞かせいただけません か。 ○貝塚座長 どうぞ。生活支援プログラムの方ですね。 ○金平委員 はい。新しく始まったということなのでね。 ○福本課長 これは、この4月からこういうことで取組みを始めたところでありますけれども、 そもそも生活保護行政の中で自立支援ということにポイントを置いて、今、行政を進めています。 その手法としまして、平成17年度からであるわけですけれども、自立支援のプログラムという ものを、保護の行政を実際にやっておりますのは自治体でありますので、その自治体ごとに保護 の行政の中でプログラムというものを組み立てるという手法を導入いたしました。これが平成 17年度からなわけでございます。  それは、自治体において、自立をする際に、どういうところがポイントで、どういうセクショ ンが関わりながらどういう支援をしていくのかというのを具体的な形で、それが「プログラム」 という所以でありますけれども、それをつくって自立を支援する。その中には就労の支援という こともありますし、地域で生活が成り立つように生活習慣なりについての支援ということもあり ますし、あるいは入院しておられるような方々について在宅で生活できるように支援をしていく というようなこともあります。いろんな支援の仕方について、具体的なプログラムを自治体ごと に工夫を凝らしてつくっていくということを平成17年度から始めました。  その手法を、中国残留邦人で、かつ生活保護を受けておられる方にも当てはめて支援をしてい ただくよう自治体に促しているというのが、ここで書いたことでございまして、具体的には、こ の4月からですから、それぞれの自治体において具体的なプログラムを、今、作成中あるいは今 後取り組んでいくということになるわけですけれども、いずれにしましても、中国残留邦人の方 で生活保護を受けておられる方の具体的なニーズに、その中には日本語の学習ということもある かもしれませんし、あるいは地域で生活しているときのいろんなニーズがありますが、それに具 体的にどういう形で自治体の行政として取り組んでいくかを策定して支援をしていくというこ とでございます。  中国残留邦人については、支援が不十分ではないかという話がございますので、国としても呼 びかけて、自治体で取り組んでほしいということにしたということでございます。具体的な中身 あるいは成果については、これからだと思っています。  以上です。 ○貝塚座長 私の理解している限りには、局長も関係しておられるかもしれませんが、生活保護 の制度が、考え方が少し変わった点があります。要するに、生活保護を受けている人がなるべく 自立できるような形でいろんなことをやりたい。  もし、何か一言あればお願いします。 ○中村社会・援護局長 実際、自治体ではこれまで生活保護ということで保護を決定し、生活費 を出している、あるいはそういうことを主力にやってきているわけですが、むしろ自立していた だくために、例えば就職あっせんをしなければならないというようなときに、福祉事務所の職員 の人だけではとても手が回らないというようなことがあります。そうすると、ハローワークでそ ういうことを経験してきた方々に入っていただいて、実際、被保護者の方、これは中国残留邦人 のケースではありませんが、就職に結び付けるような支援をする。そういうことについて、国の 方でも、生活保護の費用とは別に補助金を用意して、自治体の取組みを助長するということをし ております。  ですので、もう少し社会福祉的な観点に立って、生活保護は本来そうでなければならないんで すが、どうもいろんな面でそういったことについて十分でなかったので、平成17年度から自立 支援プログラムということで、特にいろいろ困っておられる状況もパターンがありますので、そ のパターンを基にプログラムを立て、また個別の御相談に応じてというやり方を取っております ので、それを、この問題が中国残留邦人の方からも今の保護制度はいろいろ問題があるという御 指摘をいただいていますので、このような取組みを今年度から始めたところでございます。 ○貝塚座長 どうぞ。 ○金平委員 今の様なことでしたら、地域生活支援は大変大事で、まさにお一人おひとりのニー ズと、自治体の方が用意される支援内容が包括的に行くんだと思いますけれども、そうすると、 生活保護受給者以外もそれは必要なのではないんですか。 ○中村社会・援護局長 たまたま、自立支援プログラムは生活保護の制度で始まっておりますけ れども、勿論、いろんな分野でこういうものが必要だと我々も思っておりまして、まさに金平委 員の専門の福祉の領域ですけれども、地域福祉としてそういうことは必要であると思います。  中国残留邦人の方々について、そういうニーズがあると思いますので、これからの方向性とし て、例えば老後の生活の安定というお話もありましたけれども、やはり地域でなかなか溶け込め ないとか、いろいろお困りのことがある。地域としても、座長の論点整理では3番目のテーマに なるかもしれませんが、そういったときに、やはり考え方としてこういった手法がよろしいとい うことであれば、そういう政策というのはこれから別に、生活保護の方以外の方にもやっていく 必要はあると思っております。 ○貝塚座長 よろしいですか。 ○金平委員 はい。 ○貝塚座長 それでは、ほかに御質問あるいは御意見があれば御自由にどうぞ。 ○岸委員 2点お伺いしたいんです。1つは17ページに出てきます、援護基金による里帰り費 用なんですが、これは無制限にお出しになっているわけではないと思うんです。どの程度の制限 が、回数制限とかがあるかと思うので、その制度の中身を。  もう一つは、援護基金は昭和56年の残留孤児の大量訪日調査が始まって以来、大変多額の寄 附金等が集まって、この基金が形成されたと思うんですが、今、恐らくほとんど寄附の申し出も なくなっているのではないかと思います。この援護基金そのものの行く末について御説明いただ ければと思います。 ○貝塚座長 どうぞ。 ○北原室長 援護基金につきましては、財団法人といたしまして養父母事業と子弟の就学援助等 の事業をしてございます。  あと、養父母の事業につきましては、養父母の扶養費の送金を国とともに行っております。  里帰りでございますが、昭和62年から孤児の方々が養父母をお見舞いするときに訪中するた めの支援をしております。平成16年度までに約300人ぐらいの方々が訪中いたしまして、ほぼ 一巡されましたので、平成17年度からにつきましては2度目の訪中援助をしているところでご ざいます。これは養父母の方々が御健在である、もしくは養父母の方々が御病気か危篤の場合に 訪中の支援を行うという制度でございます。 ○荒井審議官 多少補足させていただきますと、今、申しましたように、今までは1回限りだっ たんですけれども、いろいろ事情がありますので、2回目の訪中にも援助するということになっ てございます。  あと、寄附金に関しましては、今、岸委員から話がありましたように、そのときの状況によっ て相当寄附の金額が違ってございます。現在は非常に厳しい状況がございます。ただ、基金の方 でいろいろ、今までの基本財産もかなり運用しながら、安定的な運営ができるように努力してお りまして、今までのところ、その要請に対してお答えできる状況になっているのかなと思ってお ります。  ただ、この寄附の問題につきましては、つい最近も理事会がございましたけれども、社会的な 背景の中で、この問題が非常に関心が持たれたときは非常に寄附が集まりますけれども、そうい う状況でないと少なくなるという状況があるようでございます。 ○野島援護企画課長 現在ですと、約13億円ぐらいの基本財産がございまして、今、審議官の 方から御説明しましたように、昨今はやはり中国残留邦人問題について報道等をされる機会が減 っておりますのでなかなか厳しいんですが、例えば一昨年ですとNHKが中日友好楼問題で幾つ かテレビ放送をしましたときには、かなりの方が、やはりそれをごらんになって寄附をいただく というようなことがございまして、今後、国民の御理解を求めるという観点から、そこをどうい うふうに我々としても努力していくかという話はあるかと思っております。 ○猪口座長代理 支援の基本的な考え方が、今までの社会福祉の現場理解、自立支援という考え を新たに入れた地域生活支援プログラムができたということについて、お願いというか、コメン トをしたいと思います。  やはり、政府というか行政の一端が直接その方に相互作用を始めますと、帰国者の中からも出 たような、監視されているとか、規制されているというような感情が出る可能性があるので、そ こら辺はやはり総理の御指示もあるように、個人の尊厳をしっかりと大事にしながらやってほし いというところはやはり強調した方がいいかなと思います。  とりわけ、今日の御説明にあったように、いろんな形での財政的な支援についてはすごく内容 が、同じ仕組みの中ではぎりぎりまで頑張っているという印象を私自身も受けるんですけれども、 余り私の感じでは硬直的といいますか、仕組みに正しくというのは、私の中国社会の理解にもよ るんですけれども、やはり嫌がる人が多いんだと思います。  まだトウ小平が登場してくる前の中国社会では、人民公社みたいなところがあったときは物すご く厳しくて、鶏もよく飼えなくて、それを勝手に市場に売りに行って自分の懐に入れるようなこ とができた途端に、みんなだんだん幸せになりましたから、そういうような経験がある人たちに とっては、生活がこれだけ、年金がこれだけ、あとは何をやってもだめだなどといったら、本当 にいら立つような感情がすごくあるんだと思います。それに、いつも定期的に観察、大丈夫です か、何かできることはありますか、こんなものはいかがでしょうかというのが嫌だというか、お せっかいだ、何というか、わずらわしいという感じが出ないように何とかするという運用が結構 重要だと思います。それが、今のところ、私がここで考えたのが1つ。  2番目は、この運用なんですけれども、原則は社会福祉中心から自立支援というんですか。根 本的に、このケースは自立支援というのは難しいんです。だから、そこら辺も特別な運用という 感じで、大きな枠組みを崩さない限りにおいて特別運用するという、運用のところがすごく重要 だと思いまして、それは本当に現場にいる方でないと意外とわからないかなと思って、中央行政 の現場にいる方は物すごく、そういう意味では負担が重くなってきているのではないか。  自立支援といった途端、現場の人が重要になって、それが余りつっけんどんみたいな感じとか、 あるいは義務だけでやっていますなどという感じを与えないようにするというのが、物すごく、 このシフトに関連して重要なのかと思って、とりわけ中国からの帰国者の場合はそういうものに すごく敏感だし、何とかそこら辺はそういう心遣いをよくしていただきたいと思います。 ○中村社会・援護局長 今、御意見をちょうだいいたしましたけれども、確かに運用面について はいろいろあろうかと思っておりますし、あるときには自立支援という言葉が誤解されて、だか ら働かなければだめなんだとか、そういう強制とか圧力につながるように取られると困るという ふうにも思っております。  特に、この中国残留邦人の方々は、年齢的に言っても年金受給世代におなりになっていますの で、そういう観点からすると、自立という意味もむしろ、この場合には、1回目のときに委員の 皆さんの間で御議論がありましたように、日本社会に帰ってこられた方なわけですから、どうや って地域に言わば定着していただけるか。あるいはスムーズに地域で普通の暮らしができるよう にしていくかということだと思いますので、まさに猪口座長代理がおっしゃったように、そのた めの配慮ということを、行政がやるにしろ、あるいは地域の方々にしていただくにしろ、配慮し ていただかなければならないことだと思っております。 ○貝塚座長 山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員 座長がおっしゃいました、最初に基本的な考え方について議論するようにというこ とでしたので、私なりの考え方を申し上げます。 今、事務局から説明がありましたように、戦争被害に対する国の補償責任ということにつきま しては、国民が等しく受任しなければならないという考え方が一般的あるいは支配的だというこ とのようでございまして、私は法律の専門家ではございませんから、その通説に従います。 それとともに、一般の被害者に対する定期的な給付は行っていない。ですから、なぜ中国残留 邦人にだけ、そのようなものを行うかということになると、非常に難しいということになります。 そこで、私は、考えてみたんですが、1月30日に総理が厚生労働大臣に対してされました指 示の中に、法律問題や裁判の結果は別にして、中国残留邦人の方々の置かれている特殊な事情を 考慮して、誠意を持って対応するようにということでございますので、一般の戦争被害者という ことを超えて、特殊な状況は何かということを考えてみました。 4点思いついたことを申し上げます。 第1点は、一般の引き揚げは、恐らく昭和30年ごろにはほとんど終わっているんだろうと思 いますが、それよりもはるかに遅れて長期にわたって、中国に残留せざるを得なかったことが第 1点でございます。 第2点は、日本での生活になじむ上で不可欠な日本語のハンデキャップを負っておられる。ま た、帰国後も日本語の習得を始め、十分な支援を受けられなかったことがあると思います。これ は、総理も支援が不十分であったとおっしゃっておるようであります。 第3点に、一般の戦争被害者と違って、戦後の日本の復興あるいは経済成長の成果を享受でき なかった。早期の帰国者は、戦後の復興、経済成長の成果をまさに享受し得たわけでございます が、そういう成長の成果を享受できなかったばかりか、中国でそれなりの生活をされておられた 方も含めて、ほとんど無一文でお帰りになったがゆえに、現実には老後に向けての蓄えはほとん どない、乏しい、そういう状況にあるというのが第3点であります。 第4点が、現実に既に高齢に達しておられるという、この4点ぐらいが中国残留邦人の方々が 置かれている一般の戦争被害者とは異なる、特殊な条件だというふうに思います。 以上でござ います。こういった状況に着目して、新たな支援策を考えるべきだと思っております。 ○貝塚座長 ほかに御意見はございますか。 岸委員、どうぞ。 ○岸委員 私も山崎先生と非常に似たような考え方をしているんですけれども、実は私の父親も 台湾からの引揚者でありました。 私の小さいころは、父親がよく引き揚げていらして大変ですねと言われていました。大変です ねというのは何かというと、まさに戦中、戦前に蓄えたものが無一物で帰ってきた。ゼロからや り直したということを皆さん、お気の毒に、お気の毒にとおっしゃっていましたが、先ほど資料 でありましたように、630万人もいるわけでありまして、お気の毒とは言われましたけれども、 必ずしもその人たち全員が今回の支援が必要とする人とはだれも思わない。 では、今、私たちが議論している中国残留者という方々は、そもそも一体どういう方たちを言 うのか。中国からの引き揚げ、先ほど山崎さんから御指摘がありましたけれども、集団引き揚げ で大きいのは、昭和24年までと、昭和28年から昭和33年までです。 では、昭和33年に帰国された方はこの対象になるのか。長崎の国旗事件があって以降、集団 引き揚げが途絶えたんでありますが、しかし、その後も散発的に実は帰国していらっしゃいます。 一体支援を必要とされる中国残留者とは一体どの時点の方を言うのかというのは、誠に難しい、 私はずっと考えておったんですが、なかなか結論を導き出すのは難しい。昭和33年に集団帰国 された方でも遅いと言えば遅いです。 その頃、たしか南洋の方で残留兵士が見つかったケースもあったと思います。そのずっと後の 横井さんらのケースと同様に、それはかなりの騒ぎになったと思います。戦後10年以上経って と言われた人たちです。そういう方もいらした。 そうすると、残留邦人とは一体どの人たちを言うのかというのを、私はつらつら考えていたん ですが、やはり今、山崎先生がおっしゃったように、どこでターニングポイントがあったかと言 えば、恐らく私は昭和30年代半ば以降の高度経済成長、その果実を享受できなかった方たちを 言うんだろうという気がするんです。 ですから、恐らく昭和30年代の前半にお帰りになった方は、戦後十数年は経っておりました けれども、何らかの形で自立をする機会はあったし、大きな経済成長の波もあったので、この方 たちは、ある意味では、今回の支援の対象に入ってこないのかなという気がするんですが、非常 にデリケートな問題です。 では、昭和35年ですか、36年ですか、37年ですかと言われると、これは大変難しい問題が 生じてくるんですが、漠然と私は基本的に昭和30年代半ば以降にお帰りになった方というイメ ージでとらえるしかないのかなというふうに思っております。 その方たちが、なぜ支援が必要かというと、山崎先生が、今、整理されたような事柄が該当し てくるのかなと考えております。 ○貝塚座長 昭和33年と昭和47年の15年間ぐらいの間のある種の空白期があるわけですね。 これが多分、常識的に考えれば、非常に複雑な外交関係とか、いろんな問題がある。その結果と して帰ることができなかった。その方々が非常に後で帰られて大変苦労された。 ○岸委員 昭和47年以降も実は余り具体的な政策はなかったんです。変わっておりません。昭 和56年の大量訪日調査まで、国交回復後も取り立てて取った政策はなかったと思います。 ○猪口座長代理 高度成長の時期に、若くて帰ったという人が成功している、私も19歳でお帰 りになって、今、日本に溶け込んで自立して成功しているという方を知っています けれども、それは本当のラッキーの、本当に狭いところにタイミングよく来られて、国交回復で も、まだ4人組とか、政治経済的に面倒くさい状況が中国の方でもありましたから、結構面倒く さいんです。平和条約はもっと先の話で、結構難しかったし、そのころには、高度成長というの が、だんだん陰が来るわけですから、そういう意味では、何か悪いなというふうに日本政府が感 じるのは自然だと思うんだけれども、それを厚生労働省の枠組みの中でやるということについて は、一定の枠組みがあるから、仕組みがあるから、それを何とかするということで、それはやは りそういうことを常に思いやる行政の現場がなければだめかなと、私は思います。 それ以上だったら、本案件を返す方向になるわけで、それもまたそういう仕組みに日本はなっ ているのか、ちょっとよくわからなくて、総理大臣が厚生労働大臣にこういう指示を与えた、そ うしたら行政の方としてはそれを受けて何かやるというのがあるんだけれども、ですから、余り 厚生労働省の枠組みの中に入ってしまうので、また枠組みを全面的に変えるとか、考え方を全面 的に変えるというのは、それは総理大臣に戻すしかないんですね。あるいは裁判所の結果を待っ てと、そういうことは許されないので、もう高齢者であるし、それから日本の社会に定住という か、融合というのが、それほど十分になされなかった。それは彼らの責任では、恐らくないんで す。ですから、そこら辺は痛みを感じながらも運用でベストを尽くすという、それからいつも思 い合っているという行政の現場がやらなければだめなのかなと思います。 それから、世論の理解を求めるのは、やはり継続的にやるしかないのかなと思います。 ○貝塚座長 ただいまの点に関して、一番最初の会合のときに、政務官がおっしゃったのは、や はり白紙に戻して検討してほしいというようなことを言われて、そういう御希望も官邸筋にはあ るということ。ですから、その辺のところは、必ずしもそれほどね。 ○猪口座長代理 きつく考える必要はないような気もしますね。 ○貝塚座長 そういう気もしますけれどもね。ほかにどうぞ。 ○金平委員 私は1回目を欠席してしまいましたので、今の御議論にちょっとついていけなかっ たんですけれども、やはり前回のときに、私はこの問題を国がどういうふうにとらえるかという ところ、どういうふうな立場を取るかというか、ここは大事ではないかと、はっきりさせるべき ではないかということを申し上げました。 その一つが、先ほどから出ている戦争責任というふうなことまで、それも国の責任だというこ とで、これには引き揚げてきた方の個々の思いもあるでしょう。当時の日本人だって、みんなそ れぞれの立場で戦争被害ということについてはあると思うんです。 けれども、これを今、ここで追及していると、私は間に合わない。しかし、引揚者の方たちが、 やはりここまで困窮に陥ったことは事実なので、困窮というか、お金の面だけではないですけれ ども、戦争の被害というよりも生活の被害というもの、それを受けたことだけは間違いない。 私は国はいろんな施策を取ってきたけれども、やはり実態を本当に知らなかった、十分ではな かったということを確認すべきではないかという気がいたします。 施策のメニューを見ると、いろいろありまして、項目だけから言えば、メニューはどれもこれ も何か入っていて、あるんですね。ですから、決して考えなかったわけではない、何らかの援護 をしていますけれども、そうではないんです。メニューはちゃんと考えていたかもしれないけれ ども、やはりこの人たちのこれだけの生活被害に対して、そこに思い至らなかった、不十分だっ たと、そういう認識は取るべきではないかと思うんです。 ○貝塚座長 ただいまの御発言は、私も基本的にはそうなんですけれども、ですから、どういう 形か知りませんけれども、とにかく従来の政府の支援の仕方における不満足な点あるいは至らな かった点というのは、反省すべきは反省するということを、局長は余り賛成されないかもしれな いけれども、我々は、それをちゃんと入れて、その上で今後という話ですね。 ○金平委員 これだけ困窮の状況に陥ってしまったことは事実だと思うんです。それはあえて言 えば、政府だけではなくて、情報も不足していたから、そのせいだけにはしませんけれども、国 民も私たちは、やはりそれを看過してしまっていたということですので、ただ、国民ばかりの反 省ではなくてね。 ○貝塚座長 支援の基本的な考え方に関して、森田さん、何かございますか。 ○森田委員 私も1回目は欠席しましたので、今まで発言を控えておりましたけれども、座長が 最初におっしゃいました論点で、基本的な考え方につきましては、特に責任の問題については、 皆さんの御意見とほとんど同じであります。恐らく、今、老後の不安を非常にお持ちであって、 なおかつ現状においては充分な救済制度がないときに、救済を求める一つの根拠として過去の責 任という話が出てきているかと思っております。 それは、今、おっしゃいましたように、責任があれば、賠償の話になるわけでございますけれ ども、この責任の話は、政府として本当に責任を認めるかどうかということも含めまして、大変 波及するところが多いことでございますし、それをこの会議でもって責任があると言い切ること は勿論できませんし、そういう議論をしていたのでは、現実に救済策にならないと思います。 その意味で言いますと、ここは責任論から切り離すという形で、一つ議論を考えていく必要が あるのではないか。勿論、別な形で政府の方で責任の話が出てくれば、それはそれで別の話だと 思いますし、それは訴訟でも展開されるところだと思います。 その次の問題といたしまして、そうしますと、少なくとも、現在、そしてこれからの生活の不 安、困窮に対して、どうやって救済をしていくか、支援をしていくかという話になろうかと思い ます。その場合に一つ論点になりますのは、今までのところは、既存の社会保障制度の枠の中で 救済策を図るということで、先ほど出た平成17年度からの生活支援ということにつきましても、 言わば今までの生活保護制度の枠の中で、更にそれを少し重点をシフトして、新しい方向へ踏み 出していくということだと思います けれども、前回のヒアリングで伺ったところにおきましても、基本的に生活保護制度の枠の中で 方策を講じるということについては、残留邦人の方については不満が残るのではないかと思って おります。 先ほどから御議論ございましたけれども、17ページの(1)のところで、「個々の生活状況を把握 するとともに」と書いてありますけれども、そのニーズに応じてということになりますと、個々 の生活状況をどう把握するかというところが、この前、随分議論されたところだと思います。 個別的なきめ細やかな支援を行おうとすれば、するほど現状ではその辺について把握するとい うことになりますので、今の保護制度の場合ですと、残留邦人の方の不満といいましょうか、そ れはなかなか解消できない。たくさんのメニューがあって、自分で自由に選択できる。そして、 そのメニューを選択できるだけの支援があるという形ならば、また別ですけれども、その辺が今 のままでは難しいのではないか。これは猪口先生もおっしゃったところだと思います。 そうしたら、どうしたらいいのかというのは、なかなか難しいところですけれども、大きな社 会保障の体系を崩すということになりますと、これはまたどうやって理屈を付けて、どういう制 度をつくるのか大変難しいと思いますので、思いつくところは、山崎先生がおっしゃったところ も少し関連するかもしれませんけれども、やはり特別な事情というものがあるとしますと、それ を考慮して、大きな意味での社会保障の体系になるかもしれませんけれども、そこで別の仕組み というものは考えられないのかどうか。その辺は少し考えていく必要があろうかと思います。 特に、いわゆる今までの生活保護制度といいますのは、引き揚げられた方もそうですけれども、 日本語が通じる方ということを前提にしてつくられてきたと思いますので、逆の面でいいますと、 同じ同胞でありながら日本語が話せない人というのは、今までの日本の制度の中では位置づけら れてこなかったと思います。そういう方がかなりの数いらっしゃるということですので、山崎先 生がおっしゃった日本語のハンデというのと、もう一つは時間的な要素だと思いますけれども、 それを加味したような形で別の仕組みというものが考えられないのかどうか。 要求されていたところでも、前回のヒアリングで岸委員がお尋ねになったように、どれぐらい の要求をされているかということですけれども、確かにある程度の金額だと思いますけれども、 現在の生活保護制度と比べて、特段数倍とか、そういう話ではなくて、プラスαぐらいのことと 思いますし、特に国民健康保険、その他が自己負担になった場合は、必ずしも今まで以上によく ない。 そうしますと、給付額そのものというよりも、むしろ給付の制度の在り方が問題ではないかと いう気がいたしますので、その辺につきまして、この場でもそうですし、むしろ厚生労働省の方 で類似した制度としてどういうものがあるのか、どういう可能性が考えられるのか、少し御検討 いただければというのが私の意見です。 ○貝塚座長 今までもたびたび論点として出てきたわけですが、やはり生活保護の制度というも のがあるわけですが、これは私もそれほど専門家ではないんですが、かなり硬直的な要素がある ということは否定し難いんです。 その結果、これらの方々が非常に御不満に思っておられるということがあるということは確か にあって、それをどうするかというのは、やはりいろんな要件があるんですが、そこをかなり緩 和し、フレキシブルに考えるということになりますね。 ですから、そこの弾力性をどういう形でうまく、この問題に関して生活保護の制度をある意味 で相当弾力化した形で、それは違う制度という解釈もあり得るけれども、だけれども、生活保護 の制度の一種のかなり特殊なケースとして、特別な場合として考えることもあり得るし、その辺 のところが、具体的には一番重要なところではないかという気がしますが、何かこの点について、 ございますか。 山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員 一般の戦争被害者とは異なる特殊な事情を考慮して、更に総理が残留邦人の代表団 の方とお会いになったときに、日本人として尊厳を持てる生活という観点から検討したいとおっ しゃったそうですから、そういったことを踏まえると、やはり生活の基盤になるのは年金でござ いますから、基礎年金について、現在では、昭和36年4月以降の期間を免除期間として扱って いるわけですけれども、それを更に一歩も二歩も踏み込んで、北朝鮮拉致被害者の方と同様に、 その期間の保険料を追納する資金についても、国が責任を持って手当てしていただく。これは相 当思い切ったことなんですが、考えていただけないだろうかと思います。  実は、日本の現在の社会保険の中では、介護保険の65歳以上の被保険者の方で、生活保護を お受けになっている方も、介護保険の保険料を払っていただくことになっているんです。連帯の 輪の中に入っていただく。  しかし、現実には生活保護を受けているわけですから、保険料は払えない。払えない人にお金 を払ってもらって、助け合いの仲間に入っていただくために、生活保護費でその保険料を出して いるわけです。  ですから、そういう例もありますから、追納に必要な資金を国の責任で手当てしていただくと いうことですが、実は、先日のヒアリングでも出てきましたが、既に百何十万円を追納しておら れる方がいるんです。しかも、それはお金を借りて追納しておられる方がいらっしゃいまして、 そういった方々のことも考えなければいけないとすると、そこに不公平のないような、追納して ばかを見たということに決してならないように。  今、日本では年金不信が非常に高まっておりまして、余り保険料を払ってもらえない方もたく さんいる、つまり経済的に余裕があっても払ってもらえないような人がたくさんいるんですが、 そういった日本の現状からすると、苦しい中でお金を借りてまで保険料を追納していただいたと いうのは、日本人として学ばなければいけない努力だと思っております。それが1点です。  しかし、そうかと言って、基礎年金だけでは、特に都市部で生活しておられる方も多いようで ございまして、生活保護基準を下回るのがしばしばだと思います。  最初の回のときに私、言いましたが、一般の日本人であれば、基礎年金だけの人、つまり自営 業者の方であっても、多くの方はそれなりにも一定の蓄えをして老後を迎えられるわけですが、 そういう余裕が全くなかった方、あるいはもう既に高齢に達してお帰りになった方ですから、基 礎年金プラス一定の、いろいろな議論の中では給付金という話が出ているようですが、私が最初 の回のときに手当と言いました。生活保護でもない、社会保険でもない手当制度というのが幾つ か日本にあるんですが、そういったものを上乗せ、加算できるような仕組みが考えられないか。 つまり、一般の国民であれば、基礎年金だけの人でもそれなりの蓄えがあった。その蓄えもない。 その部分に着目した給付の構成ができないかということでございます。  ただし、日本の手当と言われるもの一般にそうですが、所得制限を設けているわけでございま す。これをどう考えるかということなんでございますが、仮に生活保護の枠の中で特別な対応を すると、これは無理だと思います。これは生活保護の限界でございまして、日本の生活保護は昭 和25年に現在の法律ができているんですが、無差別平等というのをとっても大事な原則として やってきているわけです。  戦前で言いますと、困窮に陥った原因によって保護をしなかったり、給付の額が違っていたり、 あるいは戦後の旧生活保護法の時代でも、道徳的な要件を入れていたわけです。素行不良、どう も怠け者だ。これは非常にケースワーカーの価値判断を伴うようなことでございまして、そうい った困窮に陥った原因は一切問わないで、無差別平等にという原則があるわけです。  そうすると、その原則の中で、中国残留邦人だけ特別な扱いをするというのは、私は無理だと 思います。生活保護をかえって内部から崩してしまうことだと思いますから、生活保護制度とは 別に手当なり給付金を用意して、しかし、全部を税で給付するということになると、既存の制度 でも一定の所得等の要件を設けています。それをどう扱うかということですが、時間がないよう ですからはっきり申し上げますと、基礎年金あるいはそれに相当するぐらいの年金については、 生活保護で言えば収入認定するわけですけれども、その分だけ保護費を引くわけですが、それか ら除外するぐらいの思い切ったことを考えていただかないといけないのではないかということ です。  これを申しますのは、総理が日本人として尊厳を持てる生活ということをおっしゃったわけで、 そうすると日本の一般国民とのバランスというものも考慮せざるを得ないと思いまして、日本人 として尊厳を持てるということになりますと、基礎年金プラス給付金。その給付金の幅がどこに なるかはよくわかりません。先ほど、厚生年金の例を見ましても、17万円ぐらいが平均ですが、 恐らく左の方の山というのは女性の方が非常に多いんだろうと思うんですが、10万円そこそこ という山もあるわけでございまして、一方で20万円ぐらいの人もいる。  ですから、日本人とのバランスといった場合、どの程度のことを言うのかよくわかりませんが、 その辺の細部は、事務局の方で詰めていただくんだろうと思います。  それから、先ほどの資料の13ページに「(1)最低生活費の具体例」とありますが、これは非 常に高く出ているんですね。この住宅扶助は最高額でございまして、例えば公営住宅にお入りに なっているような方は、ここまでいかないんだろうと思います。民間のアパートにお入りになっ ている場合の実費に近いような、それに上限がこのような形で入っているというものだと思いま す。それから、医療扶助もこのような格好で載せていいのかなという気がします。  この3万5,400円というのは、恐らく入院した場合の自己負担限度額でございまして、普通の 通院ではとてもこんなにはいかないはずでございますから、この13ページで言う最低生活費の 具体例。これぐらいは全員にとなると、一般日本国民とのバランスから言っても、ちょっと高過 ぎるのではないかという気がします。  以上です。 ○貝塚座長 ただいま山崎委員のおっしゃった点は、結局、年金制度との関係をどうするかとい うのは、制度的には割と重要な問題であるということは、皆さんそれぞれにある程度意識されて いることですね。そこをどういうふうに考えるかが割と重要な論点です。  あと、水準の問題は、どちらかといえば比較的簡単というのもおかしいけれども、とにかくし かるべく増額する。そのときに、やはり先ほどの現在の日本の生活保護の給付とか、そういうも のとある程度バランスをとりながらというのも、常識論としてはそのとおりだと思います。  ですから、制度設計として、生活保護の枠の中に広い意味で入れるのか入れないのか、その辺 りが割と重要なポイントだと思います。  ほかにございますか。  どうぞ。 ○猪口座長代理 生活支援とかというふうに別の概念をつくったら、法律をつくる必要はあるん ですか。中国帰国者に対しては、生活保護ではなくて、生活支援だというふうにしたときは、新 しい法律をつくる必要があるんですか。 ○中村社会・援護局長 判断が難しいところだと思いますが、1つは給付でございますので、必 ずしも法律が根拠として必要でないというのはあるかもしれませんけれども、例えば今のを1つ だけ御説明させていただきますと、13ページの生活保護制度について書かれていることを申し 上げますと、つまり生活保護制度は8万円という生活費を現金で出している。  しかし、この生活費の中には、普通の一般国民であると生活費といったときに、医療費も家賃 も負担しなければならないわけですが、生活保護の場合は、医療費や家賃は生活費には含めない で、別に保障するという制度でできているということでございます。  山崎先生がおっしゃった、高齢単身世帯17万円というのは高く出ているのではないかという お話ですが、例えば高齢者の方は全部生活保護で医療費を払っておりまして、1年間に、一般国 民だと70万円ぐらい医療費を使っているんですが、生活保護の高齢者の方は120万円ぐらい医 療費を使っておりますので、実は社会的なコストとしては、平均的に言いますと、月に10万円 医療費を負担しているわけです。  そうすると、このモデルで言うと、自宅で暮らしておられる場合のケースですと、医療費は実 は10万円かかっているので、8万円に10万円で18万円。それに家賃がかかる。自己負担でこ ちらは出していますので、一般国民の場合だと、自己負担しか払わなくて済む。3万5,000円の 負担だから、その分を差し上げていると、モデルとして書いているからこうなんですが、実際問 題は、生活保護の人は医療保険に入れない仕組みになっているので、高齢者の生活保護の方は、 一人当たり年間120万円医療費を使っていますから、別に120万円を用意しておかなければな らないということなわけです。  ですから、そういう実態になっているという御説明です。  法改正する必要があるかないかというのはどういう施策を取るかによってになるわけですが、 例えば一定額の給付金を出したとしても、今、申し上げましたように、病気になった場合には医 療費を払えない。その給付金で賄えないということになると、やはり生活保護にならなければな りませんし、そういったことについてどういうふう考えるかということ。  それと、実はもっと我々が気にしておりますのは、先ほどの座長の整理で出ておられますよう に、どういう考え方で支援するか。その支援の程度について、やはり片方で40年間保険料を払 って、少なくとも25年間保険料を払わないと今は年金額に結び付かない。25年間払って、こう いう年金をもらっている人たちもいる中で、どれだけ手厚く中国残留邦人の方にどの程度保障す ることがいいんだろうかということについて、我々は判断の問題があるもので、是非、有識者の 方々に御議論いただきたいと思っておるわけでございます。 ○貝塚座長 今の局長の御発言は、かなりあれなんですね。やはり、今までの制度と今度考える 仕組みとの、経済学者の用語を使うのはあれですが、ある種の整合性というのかな。それから、 やはり普通の一般国民の年金を受け取っている、その他、あるいは生活保護のケースもあり得る わけですが、要するにそういう方々とのバランスと言えばバランスです。そこの辺りは、やはり 重要だという気がします。  こういう問題は、非常にごく短期的にあれだけれども、長い期間とったときに、どういうリア クションが発生するかということも、やはりそれなりに考慮しておく必要があるとは思います。  ほかに何かどうぞ。  岸委員、どうぞ。 ○岸委員 生活保護と医療扶助の話なんですが、これは表裏のような関係だろうと思うんです。 つまり、長期入院していらして、生活能力が喪失する、あるいは経済的な活動ができない。よっ て、生活保護に陥っているという高齢者がかなりいる。その人たちが医療費を非常に多額に消費 する結果になる。  この前ヒアリングした際にも、一方の方は何らかの支援金というか、給付手当等をもらうこと によって、生活保護ではなく、監視される必要がなく、自由に使える金によって、国民健康保険 の保険料も払いたいとおっしゃいました。  その一方で、いやそうではないんだ。やはり老後の最大の不安は医療であるから、医療扶助の 分は残してほしいという方もいらっしゃいました。  これは悩ましい話でありまして、今、ちょっと局長もおっしゃったけれども、自由に使えるお 金を、場合によっては、そういう給付を受けておっても生活保護になだれ込むことになり得ると いうのは、あり得るんじゃないか。どうですか。 ○中村社会・援護局長 例えば家賃も全部その手当てで出さなければならないということになる と、相当高い手当てになると思いますが、今の山崎先生からもどういう制度が手当てとしてある かというと、そういう高額な手当てはないのが実状でございます。  基本的には、年金を主に考えていますので、例えば障害者の方の重度の障害者手当てというの も、年金があるということを前提にして補完的に手当てが出ていますので、数万という手当てで ございますし、そういうことを考えますと、かなりそういう高額な手当てを創設するというのは、 いろんなバランス上難しいし、その中で家賃、医療費を払うということになると、かなり難しく なるので、病気になったときには、生活保護のケースというのは、残念ながら多いのではないか。  それから、絶対そういうことのないくらいの水準となりますと、日本人は多くの方が老後に不 安を持っているわけですから、それで老後設計するということなので、かなりの水準にはなるん ではないかと思います。 ○貝塚座長 ほかに御意見いかがでしょうか。  森田委員、どうぞ。 ○森田委員 私は、山崎先生のお考え、大変そうかと思いまして、基本的には自由に使えるお金 という意味でいいますと、年金ベースで手厚くして、それでも難しい場合には生活保護というこ ともあり得ると思います。 ですから、御自身で多少でも自立できる方は、御自分の負担でやっていただくということで、 給付金なりをどれぐらいのレベルでどう考えるかという問題もあるとは思いますけれども、いず れにしましても、今、局長がおっしゃいましたように、そんなに高額・多額というのは、なかな か現実には難しいかと思います。 その意味でいいますと、金額の問題もありますし、いざというときのセーフティーネットとい う形での生活保護があり得ると思いますけれども、できるだけ自立できるような形での、自由に 使える形での給付という仕組みがあり得るか。そういうものが考えられるなら、それは1つの可 能性ではないかと思います。 全体に日本人みんな高齢者の方は、共通して不安を持っているわけですけれども、特に日本語 ができないとか。そういう意味で大変ハンディを負ってらっしゃる方をどう考えるかということ だと思いますし、そのハンディが生じた理由というのは、やはり時間的な要素で、これまでのチ ャンスが奪われたというのが1つの理由ではないかと思います。 ○貝塚座長 生活保護の制度と社会保険の年金との関係において、政府の方でどういうふうに位 置づけるかということに関しては、かなり複雑なポイントがあるという気はします。だから、そ の点に関して、また後で発言していただいて、この会議は必ずしも一致した結論を出すという性 質のものでもありませんので、こういうやり方を取ればどういう問題があるかとか、いろいろ副 作用があるとか。そういう点もやはり御自由に発言していただいて、今後の制度設計に役立つよ うな形で御議論していただければありがたいと思います。 あともう一つ残っている論点は、3番目について、中国残留邦人の置かれている状況が、社会 的に余り認知されていない。だから、国民的な理解が得られてないというふうな感じがするとい うことが言われているわけで、それと付髄して、先ほど来申し上げた地域社会がどういうふうに 受け入れていくか。それから、日本語の教育をどうしていくかというふうな、やや細かい具体的 な話もありますが、その辺に関して、何か御意見がありましたら、どうぞ。 ○森田委員 別に根拠があるというわけではなくて、若干思い付き的なものですが、これまでの 意見は、なるべく言葉を教育して日本人として同じような形で、地域社会に溶け込むというお話 ですけれども、それができれば一番理想的だと思いますけれども、世界で、例えば多民族国家の 問題であるとか、いろいろ考えたときに、極めて難しいと思います。むしろこの間もございまし たように、ある程度以上の年齢の方の場合には、そうした方たちのコミュニティーの中で一番安 住される面もあろうかと思いますので、これはどちらかにしなければいけないということではあ りませんけれども、そういう可能性も含めて多様なメニューをどうやって提供できるか。一律に 日本人の方に同化していただくために日本語を教育してというのは、私は必ずしも帰られた方に 本当に幸せになっていただく方法かどうかというのは、若干疑問に思います。 かといって孤立したコミュニティーを本当につくってしまうことがいいのかというと、これも また問題かと思います。ここは大変難しいところがあろうかと思います。 ○貝塚座長 金平委員、どうぞ。 ○金平委員 理想的には、やはり隣人として支え合って生きるというのが、一番いいと思うんで すが、それはやはり引き揚げていらした時点ならまだしも、それから20年、何十年となった現 時点で、今はもう老後のことを考えていらっしゃるということで、私は今、森田委員がおっしゃ ったように、そこら辺も選択、またそういう社会環境づくりというものをしていかなければいけ ないと思いました。前回のときに、御発言の方に伺いましたら、やはり自分たちだけのコミュニ ティーをつくりたいとおっしゃったので、私はこの会が始まる前は、せっかく帰っていらしたん だから、老後にもっと交わっていただいて、最後にここに帰ってきてよかったという思いになっ ていただけるかなというふうなことも考えて、そのための一般国民の努力、努力というか、支え 合って生きるというのが一番いい、この方たちだけではなくて、これから海外からいろんな方も いらっしゃるわけでしょうから、孤児の方たちだけの問題だけではなく受け止められればとは思 ったんです。 この間、はっきりと自分たちだけの老人ホームが欲しいとはっきりおっしゃったので、そうい う選択肢も残さなければいけないと思います。 ○貝塚座長 ですから、かなり長い期間の間、アイソレートというか、孤立してきた方々で、そ うして本当に60近くになったときに、これから先というふうになると、その問題は違うんだと いう感じは持ちました。 ほかに、山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員 これは私の専門ではございませんが、どうも長い間中国で生活してこられて、日本 にある日帰ってこられたわけですが、生活習慣や文化という点では、むしろ中国人だというふう に我々は考えた方がいいんではないかと思います。 したがって、日本に同化していただくというよりも、多文化共生という考え方で、我々は対応 しなければいけないと思いまして、特に福祉事務所のケースワーカーの方には、そのことを理解 する努力をしていただきたいと思います。 中国の方に以心伝心ということを言うと、そういう言葉は中国にもあるけれども、実際に中国 人の中にはないとおっしゃるんです。日本人は以心伝心と言いますと、私がにこっとしているけ れども、日本人はみんなそうですね。日本人同士であれば、その場の雰囲気で伝わっている。し かし、中国人ははっきり、山崎さん、発言してもらわないとわからないと言います。 ですから、そういったことを始めとして、お互いに理解し合う、そしてそういう異なる生活習 慣、文化を身に付けておられる残留邦人の方々にふさわしい自立支援のプログラムを組むことが 大事ではないかという気がします。そこのところは、うんと支援の過程では弾力的な扱いが必要 だと思います。 ○貝塚座長 どうぞ。 ○金平委員 私も冒頭に発言した、社会的、経済的、自立の助長を図るということと、この地域 生活支援というプログラムが、何か総合的、総括的でいいんですけれども、やはり同化政策みた いに、この年代になってしまうと難しいのではないかと思って、局長も自立支援という言葉が違 った意味に取られるおそれがあるとおっしゃったけれども、それはありますね。だから、自立と いう言葉、私なら静かに暮らしたいということを言うかもしれません。 ○貝塚座長 どうぞ。 ○森田委員 具体的に申し上げますと、御本人にとって一番ハッピーな状態にするということだ と思います。別に、必ず別な社会をつくれという話ではなくて、同化されている方は同化されて もいいと思いますし、その辺を、まさにきめ細かい配慮というのは、どうやったらいいかという のは、これはなかなか難しいところだと思いますけれども、日本社会にきちっと同化して、随分 ケアをして、本当に御本人が幸せな老後をお送られるかというと、必ずしもそうではないという ことだと思います。 また、今までは老後の不安ということで、高齢者の方を念頭に置いた場合にはそういう方が多 いわけですけれども、御家族だとかお子さんで若い方もいらっしゃるわけですね。そういう方は また別なチャンスがあって、そこは今いろいろとNPOも含めて、いろんな仕組みが言われてい ると思いますけれども、その辺はかなり工夫をする余地があるのではないか。ただ、何となく日 本へ帰ってきてよかったというのは、日本人と同じように幸せを感じることであるという発想は、 余り御本人のためにならないのではないかと思って申し上げたことでございます。 ○貝塚座長 ほかに、どうぞ。 ○岸委員 当たり前だと言えば当たり前なんですが、ひと口に残留邦人の方といっても、個々に よって随分事情が違うと思うんです。 一概にあの方たちは、中国人の暮らしに親しみ、またそういう価値観を持ってらっしゃるから、 中国人と思った方がいいよと一言で言ってしまうのも非常にリスキーで、中には冗談ではないと、 私は日本人で、日本人として生活したいんだと、そのために日本へ帰ってきたんだから、まるで 中国人のような扱いをされるのは、不本意であるとおっしゃる方は、当然いらっしゃるわけです ね。 私は、何が社会的支援の最大公約数かと言えば、孤独感ではないかと思うんです。社会の中で、 なかなか自分の言いたいことの意図が伝わらない。それから、自分の意図しているところことを 感じ取ってもらえないということで、やはり一種の孤独感、それは家庭内孤独ということをおっ しゃった方もいましたね。孫とコミュニケーションが交わせない。孫は日本語で育っているので、 自分は中国語しかできない。そこで、家族内コミュニケーションも取れない。そこから、どちら かというと残留邦人だけの1つのコミュニティーみたいなものが欲しいという発想にもなって くるんだろうと思うんです。 ただ、地域によって、皆さんが暮らしてらっしゃるのは、非常にばらつきがあります。大都市 部に大体集中はしていますけれども、開拓団を多く出した長野県などにもいっぱい帰っていらっ しゃいます。 ですから、長野県は独自の施策をいろいろ自治体でやってらっしゃいますけれども、全くそう いうものが届かないところも全国にはたくさんあるわけで、なかなかひとくくりにして、この政 策を取ればいいというわけには、いかないと思います。 それで森田先生おっしゃるような、やはり多様なニーズに応えるメニューをつくるとしか言い ようがないような気がします。 ○貝塚座長 どうぞ。 ○金平委員 私は、これからはいかなるメニュー、いかなる選択をなさったとしても、それをサ ポートする。しかも、サポートし続けるということがとても大事なような気がします。指導員は 何年間、日本語は何年間ではなくて生涯にわたって、何か困ったときにはそこに行ったら、今の 時点でまた困難な問題に相談もできる。そこは日本の社会の温かさととらえて、何か用意できな いかと思います。 それでないと、一つひとつの政策があって、これは何年間はできますという、今までとってき た日本語の教育とか、指導員の派遣が、やはり何年間というふうに、何年間でできないものが、 ぷつんぷつんあったから、今回よけい孤立感というのもあると思います。 生涯にわたって、何かサポートし続ける体制というか、いつでもべたっと寄り添うんではなく て、必要なときに必ず受け入れられる。しかも継続してということですね。 ○貝塚座長 別な言い方をすると、ケースワーカーの人は、ある意味では非常に多様なケースを 扱わなければいけないので、普通の仕事とはちょっと違った面が入ってきて、そこをうまくサポ ートできるような体制をつくっておかないと。 ○金平委員 そうですね。どうしても生活保護法の仕組みの方に引っ張られてしまっている。 ○貝塚座長 その辺の工夫もできればいいという気がします。 あと余り時間がございませんが、何か御意見があったらお願いします。どうぞ。 ○森田委員 もう一つだけ、今のケースワーカーの話として、我々もそうですけれども、今まで 日本でほとんど経験がなかったのは、多文化共生という発想ですし、それをどうしたらうまくい くかということについての知識の蓄積も余りなかったと思います。 だから、そういうことはこれからかなり重点的にやっていく必要があろうかと思いますし、そ の1つとして、この前もお話がございましたけれども、お子さんとかお孫さんとコミュニケーシ ョンができない。お子さんは日本語で、帰られた方は中国語ですけれども、私などが学生を指導 しておりまして、学生が中国語を覚えるのにどれぐらいのコストを払っているかということを考 えますと、生まれながらにして、ある意味でバイリンガルに育つ環境にあるというのは、大変重 要なことだと思います。むしろそういう方をどうやって支援をしていって、そして単に残留され た邦人の方としてケアするというよりも、むしろそういう方にどうやって社会において活躍して いただくか、そういう発想の転換というのもあっていいのではないかと、これは厚生労働省の所 管かどうかはわかりませんが、そういう形での社会的な参加の仕方もあり得るのではないか。 それが、むしろそうした方にとって、日本の社会に対して入っていくという意味で、大変生き がいを与えることになると思いました。 ○貝塚座長 どうぞ。 ○金平委員 今のお話を聞いていて、自分のボランティアグループでのことを話してみたいと思 います。私たちは地域でボランティア活動をやっています。その地域の学校の中に帰国してらっ しゃった方たちがお子さんを入れる。そうすると、子どもはどんどん日本語を学ぶんだけれども、 お母さんの方がなかなか付いていけない。そこで、教師から地域のボランティアに「学級だより を子どもに持たすがお母さんがそれを読めないんです。それを読んでやってくれないか」と依頼 があった。ボランティアは大変喜んで、そのお母さんサポートするグループができて、学級だよ りをどんどん読んで差し上げる。そうすると、うまくいった。 ついでに、そのお母さん同士は、いろいろと生活の知恵を交換しあって、そこに地域のつなが りができていったというふうな例もあるのです。私はあきらめることなく地域がそういう事実を 事実として、もっと情報があって受け入れれば、やれることがあるんじゃないかと思っています。 今回知ったんですけれども、NPOの方が随分活躍してらっしゃいますね。あれを、特定の方 ではなくて、一般のボランティアにもシェアできることがあるんではないかという気がします。 ○貝塚座長 時間がそろそろまいりましたので、今日も非常に率直な御意見をいろいろいただき まして、非常に参考になりました。ですから、次回は多少論点を整理していく必要がありまして、 事務局がうまく論点を整理して、相当多様な視点があって、それをなるべく生かした形で次回の 議論を更に先に進めることがよろしいんではないかと思います。 それでは、今日は時間がまいりましたので、この辺で終わらせていただきます。どうもありが とうございました。 ○野島援護企画課長 次回は、6月7日の午後2時から、場所は厚生労働省ではございませんで、 霞が関の法曹会館の高砂の間で開催をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいた します。 (照会先)  厚生労働省 社会・援護局 援護企画課 中国孤児等対策室 内線3417