07/05/29 平成19年5月29日薬事・食品衛生審議会生物由来技術部会議事録 薬事・食品衛生審議会 生物由来技術部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年5月29日(火) 14:00〜    厚生労働省共用第7会議室 2.出席委員(9名)五十音順    小 沢 敬 也、○堺   晴 美、 澤 田 純 一、 土 屋 利 江、    西 島 正 弘、 貫 和 敏 博、◎早 川 堯 夫、 山 口 照 英 吉 倉   廣 (注) ◎部会長  ○部会長代理 他  参考人 1名   欠席委員(6名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 岡 野 栄 之、 甲 斐 智恵子、 島 田   隆、 山 口 成 夫、 渡 邉   信      3.行政機関出席者    黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、     中 垣 俊 郎(審査管理課長)、   俵 木 登美子(審査管理課補佐医療機器審査管理室長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、   丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)  他 4.備考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻ですので、薬事・食品衛生審議会 生物由来技術部会を開催させて いただきます。本日は、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。当部 会委員数15名のうち9名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しており ますことを御報告申し上げます。なお、本日は飯沼委員、岡野委員、甲斐委員、島田委員、 山口成夫委員、渡邉委員が御欠席です。  まず最初に、本日の部会は、1月にありました薬事・食品衛生審議会の委員の改選以後 初めての部会になります。引き続き、早川先生に部会長をお願いすることで既に決定され ていますので、御報告申し上げます。  また、改選後初めての部会でございますし、新たに委員になられた先生方もいらっしゃ いますので、御出席の委員の先生方を御紹介申し上げます。飯沼委員、岡野委員は御欠席 です。自治医科大学内科学講座血液学部門教授の小澤敬也委員です。甲斐委員は御欠席で す。社会福祉法人信泉会理事 介護老人保健施設とわだ医師の堺春美委員、国立医薬品食 品衛生研究所機能生化学部長の澤田純一委員です。島田委員は御欠席です。国立医薬品食 品衛生研究所療品部長の土屋利江委員、国立医薬品食品衛生研究所長の西島正弘委員、東 北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野教授の貫和敏博委員、部会長をお願いしている 独立行政法人医薬品医療機器総合機構顧問の早川堯夫委員です。山口成夫委員は御欠席で す。国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長の山口照英委員、元国立感染症研究所長の吉 倉廣委員です。渡邉委員は御欠席です。以上、よろしくお願い申し上げます。なお、本日 は参考人として、独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター院長の堀田知光先生に御 参加いただいています。よろしくお願い申し上げます。  続きまして、本日の審議に先立ち、4月23日に開催されました薬事・食品衛生審議会 薬事分科会において審議されました、「薬事・食品衛生審議会 薬事分科会における利益 相反の取扱い」について事務局から御報告したいと存じます。お手元に、「薬事・食品衛 生審議会 薬事分科会における利益相反問題への対応について」という紙が配付されてい ると思います。これが、薬事分科会において申合せしていただいたものです。1番は、審 議会における利益相反について、年内をめどに分科会としてのルールを策定する。そのた めに、ワーキンググループを設置する。2番は、そのルールが策定されるまでの間の当面 の対応ということで、別紙2「申し合わせ」を御覧ください。  1番は、過去3年間に審議品目の製造販売業者からの寄付金等の受取実績があり、寄付 金等の受取額が、過去3年間で年間500万円を超える年がある場合は、当該委員は、審議 会場から退室していただく。2番は、その受取額が、年間500万円以下の場合は、出席し て、意見を述べることができるが、議決には加わらない。ただし、寄付金等が、講演・原 稿執筆その他これに類する行為による報酬のみであり、かつ、過去3年間いずれも年間 50万円以下の場合は、議決に加わることができる。  その中で、具体的取扱いですが、1.「寄付金等」には、コンサルタント料・指導料、 特許関係、講演・原稿執筆、受託研究費と言われる研究契約金・(奨学)寄付金が含まれて いますし、なお書きですが、当該年度においては、その株式価値も金額の計算に含めると いうことです。2.実質的に、委員個人あての寄付金等とみなせる範囲をその対象とし、 例えば、医学部長で医学部として受け取った、あるいは学会長で学会として受け取ったも のは含まれないということです。3.期間としては3年ということです。  この分科会における議論の中においては、幾らにセットすればいいのかが一つの議論に なります。アメリカのFDAの諮問委員会が10万ドルを一つの目安にしています。改正 案が現在パブリックコメント中ですが、改正案においては5万ドルが一つの目安になって います。ヨーロッパのEMEA(欧州医薬品庁)の諮問委員会が5万ユーロを一つの目安に しています。5万ドルあるいは5万ユーロということから考えますと、500万円というの が一つのめどとしてあるのではなかろうかということから、とりあえずのルールとしてこ のような形で決議されたものです。  先生方におかれましては、審議会への御参加あるいはあらかじめの検討にお手を煩わせ ているところですが、それに加えましてこの利益相反について寄付金等をチェックしてい ただくことが必要となってまいるわけで、そういう点で申し上げますと誠に申し訳ないこ とと考えます。しかし、一方において審議の透明性の確保という点から申し上げると、こ の利益相反問題に適正に対応していく必要があると考えていますので、一つ今後とも御協 力いただきますようお願い申し上げて、私からの報告に代えさせていただきたいと思いま す。  それでは、部会長の早川先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○早川部会長 それでは、まず、部会長代理を決めさせていただきたいと思います。部会 長代理につきましては、薬事・食品衛生審議会令第7条第5項によりまして、部会長があ らかじめ指名することになっております。私としては、従来よりお願いいたしております 堺委員に引き続き部会長代理をお願いいたしたいと考えておりますが、いかがでしょう か。ありがとうございます。それでは堺委員、こちらの方によろしくお願いいたします。  それでは、まず、事務局から配付資料の確認と資料作成に関与された委員及び利益相反 に関する申出状況について報告を行ってください。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、先ほど御説明申し上げまし た「薬事・食品衛生審議会 薬事分科会における利益相反問題への対応について」、資料 1-1、議題1に係る諮問書、資料2-1、議題2に係る諮問書、資料3-1、事前に資料3とし て送付しました、報告事項の議題1の資料の最終版、資料3-2、中外製薬より提出された 文書、資料6、審議事項の議題1に関するJR-031の専門協議委員名簿、そのほか、議事 次第、座席表、委員名簿があると思います。不足等ございましたら、事務局までお申し付 けください。 ○早川部会長 先生方、お手元に資料はおそろいでしょうか。それでは引き続きまして、 関与委員及び利益相反に関する申出状況について報告をお願いします。 ○事務局 平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく、資料作成に関与された委員 の確認ですが、本日の審議品目について、関与委員はいらっしゃいません。また、先ほど 御説明申し上げました本年4月23日の薬事分科会申合せに基づく、利益相反に関する申 し出については、次のとおりです。審議事項の議題1については、退室委員はなし、議決 に参加しない委員は小澤委員とされていますので、よろしくお願いします。以上です。 ○早川部会長 ありがとうございました。本日は、議事次第にありますように、審議事項 が2議題、報告事項が2議題、その他事項が1議題となっています。  それでは、議題1に入ります。「細胞・組織を利用した医薬品の品質及び安全性の確認 について(JR-031:日本ケミカルリサーチ株式会社)」です。議題1について、まず制度の 概要について事務局から説明をお願いします。 ○事務局 お手元に参考資料が配られていると思います。参考資料1の1ページ目の概要 を御覧ください。ヒト由来細胞組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針の 目的でありますが、今回確認申請として提出されておりますものが、この指針に適合して いるかどうかの確認をお願いするわけでございます。本指針は、ヒト由来の細胞組織を利 用した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保のために必要な基本的要件を定めた ものでございます。本指針において製造販売業者は細胞・組織加工医薬品等の安全性及び 品質の確保を期すために当該医薬品がこの指針に適合していることの確認を、厚生労働大 臣に求めることとされております。  確認申請の内容でございますが、「(3)確認申請に当たって添付すべき主な資料」にご ざいますように、培地成分などを含めた製造方法の妥当性、安定性、非臨床試験による安 全性・性能、臨床試験の状況についてということでございます。なお、この場合の臨床試 験と申しますのは、あくまでも外国における開発状況などがある場合でございます。  それから指針の位置付けでございますが、「一般的な流れ」として一番下に図をお示し してございます。製品開発や非臨床試験に関するデータを基に今回の確認申請がなされま して、本日の生物由来技術部会において、薬事法に基づく申請のための「治験」として治 験計画の届出をする前に品質・安全性の確認という観点から御審議をいただいた後に、 「治験」として治験計画の届出を行うことが認められるというものであります。そして治 験に関する審査を経て治験が行われ、そのデータに基づき承認申請がなされますと、総合 機構の審査を経て、再度薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会、あるいは医薬品第二部会 の方で審議いただくという形になっております。  つまり、今日御審議いただきます指針への適合性につきましては、本部会における審議 の結果が直ちに医薬品等の製造販売承認に結び付くというものではなく、あくまで治験に 入る前の、この製品の品質・安全性の確認であるということでございます。以上でござい ます。 ○早川部会長 ありがとうございました。ただ今、この部会の位置付け、役割について御 説明をいただきました。繰り返しになりますが、この部会の役割は、開発された製品につ いて、治験に入る前に、治験成績と因果関係が付けられる程度に品質に関する情報が得ら れているかどうか、さらに、非臨床試験データなども合わせてみて、治験に進むに当たり、 差し支えとなる品質・安全性上の大きな問題点がないかどうか、また倫理上の問題がない かについて確認する、という役割だということであります。  臨床的な有効性・安全性はこれからの治験の成績を基に評価されるということでありま すし、製品の品質規格や品質管理のあり方についても、最終的には臨床上の所見や今後の 製造実績などを踏まえまして、次第に詰められ、設定されていくということでございます。 よろしいでしょうか。何か御質問等がございましたらお願いいたします。  それでは、今回議題1に上がっている品目「JR-031」の内容について機構から御説明を お願いします。 ○機構 議題1、資料1、JR-031の細胞・組織を利用した医薬品の品質及び安全性の確 認について説明します。  同種造血幹細胞移植後においては、約半数の患者に急性移植片対宿主病すなわち急性G VHDが発症し、またその約半数はステロイドによる標準治療抵抗性の急性GVHDです が、現在この病態に対する確立された治療方法はありません。本剤は、他家ヒト間葉系幹 細胞から構成された細胞・組織加工医薬品で、低免疫原性及び免疫調節作用を有するヒト 間葉系幹細胞を静脈内投与することにより、標準治療抵抗性急性GVHDの改善を期待し て開発されたものです。  申請者の日本ケミカルリサーチ株式会社は、米国のOsiris Therapeutics社より本剤の 開発に関する技術を導入し、本邦において本剤の製造方法及び品質管理等の検討を行うと ともに非臨床試験を実施し、平成18年8月28日に品質及び安全性の確認が申請されまし た。  本剤の製造方法ですが、米国において健常ボランティアから採取された骨髄液を、本邦 の申請者の製造施設に搬入し、赤血球を除去後、□□□□□□□□□□□、□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□となるように調製します。1継代した中間体はドナー セルバンク(DCB)として凍結保存され、最終製品はプロダクトドーズ(PD)と呼ばれ、 使用されるまで凍結保存されます。骨髄提供者は、年齢、既応歴等の細かい選択基準が定 められているほか、骨髄採取日から2か月以上前に抗HIV抗体等が陰性であること、骨 髄採取の2週間前から採取日までにHIV、HCV、HBV等の検査が実施されます。  本剤の製造に用いられる動物由来原材料は、ブタ膵臓由来のトリプシン、ニュージーラ ンド又はオーストラリアを原産国とするウシ胎児血清がありますが、どちらもガンマ線照 射及びウイルス否定試験が実施されています。本剤の凍結に用いる溶液には、医薬品とし て承認された人血清アルブミンが含まれます。なお、最終製品においてウシ胎児血清の残 存量の規格が設定されており、トリプシンの残存量については極めて低いと考察されてい ます。  本剤の規格及び試験方法は、DCBについては、in vivoのウイルス否定試験、核酸増 幅試験等による12種類のウイルスに対する否定試験、マイコプラズマ否定試験、無菌試 験、エンドトキシン試験、細胞濃度、3種類の細胞表面マーカーによる確認・純度試験、 細胞増殖性試験、□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□、□□□□□□ □□□・□□□□への分化能確認試験、染色体検査、血液がん関連遺伝子検査が実施され ます。染色体検査及び血液がん関連遺伝子検査は、製品の継代数を超えた細胞に対しても 実施されます。PDの規格及び試験方法は、外観、細胞濃度、細胞生存率、純度試験、マ イコプラズマ否定試験、エンドトキシン試験、無菌試験、細胞増殖性試験、□□□□□□ □□□□□□□□□、ウシ血清アルブミンの濃度を測定する培地由来成分否定試験、□□ □□□□□□□□が実施されます。PDの特性解析としては、PDの規格試験に加えて、 T細胞増殖抑制等の5項目の試験が実施されたほか、活性化T細胞のIL-2受容体発現 抑制作用が確認されています。  安定性については、Osiris社において、DCBで22か月まで、PDで18か月まで確 認されていますが、申請者が製造したPD3ロットにおいても36か月の安定性試験が継 続中であり、現時点では6か月までの安定性が確認されています。PDの医療機関での使 用方法を反映し、37度の湯浴で急速に融解後に、リンゲル液で希釈された状態での安定 性も検討され、融解希釈後は、3時間以内に使用することとされています。  非臨床試験としては、毒性試験として、ラット由来の間葉系幹細胞を同種異系ラットに 投与する単回投与毒性試験及び反復投与毒性試験、ヒト間葉系幹細胞をラットに投与する 単回投与毒性試験、ラットでの安全性薬理試験等が実施されています。効力又は性能を裏 付ける試験として、末梢血単核球等を間葉系幹細胞と共培養した際に分泌されるサイトカ イン等の測定、ラットGVHDモデルにラット由来の間葉系幹細胞を投与する試験等が実 施されています。体内動態試験としては、ラット及びイヌを用いた試験が実施されていま す。  次に、総合機構における本剤の品質及び安全性に関する事前審査の内容について御説明 します。品質に関連する事項については、治験薬の製造においては品質、非臨床データの 取得時から細胞の洗浄工程に変更が加えられていますが、変更後の製法で製造したPD6 ロットの規格及び試験方法、規格及びモニタリング項目においても洗浄方法の変更前と同 等の結果が得られたため、問題はないと考えます。また、品質管理に関しては、本剤で実 施される試験の方法、規格値がOsiris社と一部異なっていますが、申請者の品質管理か ら考えて問題はないと考えています。  非臨床試験に関連する事項について御説明します。ラットを用いた単回投与毒性試験及 び反復投与毒性試験において、肺の循環障害に起因する輸注毒性が認められています。申 請者は、輸注毒性は、投与細胞数及び細胞粒子径に依存する物理的な循環障害に起因する こと、ラットの試験に比べ、ヒトでは緩徐に点滴静注されること、また、Osiris社の海 外臨床試験では、現在までに約100例以上に間葉系幹細胞が投与されていますが、輸注毒 性と考えられる有害事象の報告はないと説明しています。機構は、治験の実施に支障が生 じるほど重大な輸注毒性が生じるリスクは少ないと考えていますが、治験における投与時 には慎重に観察するとともに、有害事象に対処可能な体制を整えておくことが必要と考え ます。  また、異所性の組織形成や腫瘍化等、投与された細胞の性質が変化する可能性について は、申請者は、製造における継代数を超えた細胞のカリオタイプ分析及びテロメラーゼ活 性が正常であったこと、軟寒天コロニー形成能試験が陰性であったこと、細胞は36回程 度分裂すると急速に増殖能力を失うこと、本剤の製造工程はおよそ□回の分裂であること から、本剤の製造方法で細胞が不死化する可能性は低いと説明しています。また、DCB 及び製品製造の継代数を超えて培養した細胞の規格として、染色体検査及び血液がん関連 遺伝子検査が設定されていること、現在までの動物試験及びOsiris社による海外臨床試 験では、間葉系幹細胞の投与に関連すると考えられる腫瘍化、又は異所性組織形成の発生 は認められていないことを説明しています。さらに、非臨床試験においても、現時点で可 能な検討はされており、異所性組織形成等は認められていません。以上から、機構は、被 験者に対する長期的なフォローアップの必要はあるものの、治験を実施することに支障は ないと考えています。  これらのリスクの可能性に対し、本剤のベネフィットとしては、治療方法が確立されて おらず重篤で致死性の高い標準治療抵抗性急性GVHDの患者に、より有用な治療方法が 提供される可能性が期待されています。  以上、提出された品質及び安全性に関する資料を評価した結果、現時点の科学的水準か ら、治験において十分に安全性を確保できる方策を講じることを前提に、治験を開始する ことは差し支えないと判断しました。なお、本品目の専門協議に御参加くださいました専 門委員は、資料6にありますとおり4名の委員です。また、本日参考人として、国立病院 機構名古屋医療センター院長の堀田専門委員に御出席いただいています。御審議のほど、 よろしくお願いします。 ○早川部会長 ありがとうございました。本日御欠席の先生から、事前のコメント等は出 ていますか。 ○事務局 本日御欠席の岡野委員より、本件についてコメントをいただいていますので御 紹介します。「JR-031確認申請書、別紙6の26ページ、7)異所性組織形成の可能性に ついては、Osiris社で実施した前臨床試験を引用しているのみであり、日本ケミカルリ サーチ株式会社自社で調製したJR-031細胞について行っていない。また、Osiris社で実 施した前臨床試験も、ヒヒMSCのヒヒへの移植という同種移植であり、ヒトMSCの免 疫不全動物への移植という形で行われていない点が問題である。実際に臨床に用いる JR-031細胞の免疫不全動物への移植を行い、異所性組織形成の可能性を行うべきである」。  もう一点は、「JR-031確認申請書、別紙6の27ページ、8)投与したMSCが悪性腫 瘍の発生原因となる可能性については、カリオタイプの分析、試験管内での軟寒天コロニ ー形成試験については詳細なデータが添付されているが、in vivoでの実験については「こ れまでの動物実験、ヒトでの投与経験において、がん原性は認められていない」と、デー タを示さず、一文での記載にとどまっている。実際にJR-031細胞を免疫不全動物に移植 し、7か月程度観察し、腫瘍形成の有無を確認すべきである。これはFDAの基準である」。 以上のコメントをいただいています。 ○早川部会長 ありがとうございました。コメントが出ていますが、機構から何かありま すか。 ○機構 異所性組織形成試験と腫瘍化の試験について、機構の考えを御説明します。先生 から御指摘をいただきましたFDAの基準ですが、審査チームで確認しました限りでは、 現在までにFDAや海外のガイドラインで、細胞・組織製品について一般的に腫瘍化の確 認を免疫不全動物で行うべきとされているものは確認できていません。また、 Osiris社においては米国で治験が既に行われているところですが、現在までに免疫不全 動物による試験は実施していないということです。そして、本剤に関しては、品質管理及 び特性解析としまして、細胞の変質や変性にかかわる検討が適切になされていると考えて いまして、対象疾患から期待されるベネフィットを考慮すると、現時点では御指摘の試験 は実施の必要はないと考えています。 ○早川部会長 ありがとうございました。今のことについて、もし必要であれば後ほど御 議論いただければと思います。それでは、本日参考人としておいでいただいています堀田 先生から、専門協議の委員のお立場から追加すべき事項がございましたらお願いいたした いと思います。 ○堀田参考人 少し補足します。私ども臨床の立場から申しますと、同種骨髄移植若しく は造血幹細胞移植における急性GVHDと言われるものは、実は全然ないより少しあった 方が再発が少なく予後がいいのですが、重篤であれば致死的である、諸刃の剣のような性 質があります。骨髄移植ないしは造血幹細胞移植が長期にがんに対して治癒をもたらすと いうのは、むしろGVHDが軽くあることが重要であると最近認識されているわけです。 しかし、これが重篤ですと致死的になって、例えば一次治療、すなわちステロイドでコン トロールができる急性GVHDは大体70〜80%コントロールできますが、もしこれがコ ントロールできないとなりますと1年生存率が30%を下回るくらいの致死率です。そう いうことから見ますと、何か二次治療に有効な手当てが欲しいというのは、我々臨床の立 場にいる者の悲願でもある状況です。そういうことから申しますと、後で議論になると思 いますが、形質の転換や異所性、発がん性などの問題が長期的にはありますが、短期的に はこの急性GVHDの治療不応例を乗り越えないと、二次的に起こってくる変化さえも見 えてこないのが現状であることを付け加えておきたいと思います。以上です。 ○早川部会長 ありがとうございました。せっかく堀田先生においでいただいていますの で、先生に対して御質問等がありましたらお願いします。いかがでしょうか。新しい治療 法が今までの限界を乗り越える一つの技術になり得るかもしれない、それに対して期待が あるというお話であったと思います。よろしいですか。  それでは、ほかのところでコメント、御意見がありましたらお願いします。 ○土屋委員 臨床的にほかに治療がない患者の命を救うということで、非常に有効である と思います。一つ気になるのが、先ほど言われました、それを乗り越えた後の腫瘍化と異 所性の組織形成です。カリオタイプできちんとしたものが見られているということで、恐 らく腫瘍化の可能性は低いと思います。前駆骨芽細胞がマーカーで入っていることから、 例えば軟骨細胞でも一部コラーゲンジェルで1例くらい骨化したものが出ていたとか、ヒ ト間葉系幹細胞を軟骨の欠損部に少し深めに入れますと、下は骨ができて上は軟骨ができ る、いわゆるそこの環境に合わせてヒトの間葉系幹細胞は分化するということですので、 通常はそれほど大きな問題は起こらないと思います。密度が低ければそれほど問題はない と思いますが、かなり大量で何回もやったときに、どこかに固まった場合にどうなのかと いうことで、先ほど言われました異所性の組織を、確認申請をパスした後で、臨床しなが ら、ヌードマウスにある一定の量のものを入れて、異所性のものはできないのかどうか、 骨はできないのか、それを確認するくらいはしてもいいのかと思いました。 ○早川部会長 堀田先生、今御意見がありましたが、大量に異所性に蓄積されて、そこで 何かをする可能性が非常に大きいのか、そうでもないのかというところをお願いします。 ○堀田参考人 間葉系幹細胞は骨髄由来なのですが、もともと骨随の中に非常に少ない状 況で、それを体外に取り出して分裂させて大量培養する形になるわけです。もう1回体内 に戻したときにどのくらいのアクティビティがあるのかということについては、それがま たどんどん増えることは多分なくて、生体の中のレギュレーションに入っていくであろう と思っています。ただ、間葉系細胞として骨にも軟骨にも脂肪細胞にもなり得るというポ テンシャルがどのくらい発揮されるのかは、実験的にはもちろんありますが、実はそれほ ど分かっていないわけです。そういうことから言うと、懸念は確かにあります。考えてみ ますと、浮遊細胞にして静脈投与しますと、循環に入って心臓に戻って、次に行く所は肺 です。肺に引っ掛かって、一部肺で軟骨や小さい骨組織ができる可能性は将来的にあるの ではないかと思います。もう一つは、土屋委員が御指摘のように、炎症部位に集まりやす い傾向があるので、炎症やディフェクトのある所に行く可能性は普通の正常組織よりは多 いのではないかと考えます。ただ、それも先ほど申し上げたように、急性GVHDの困難 な状況を乗り越えてその次にある話なので、そこまで明らかでないとこの治験が進められ ないかどうかという判断としては、もう少し前の段階で判断できるのではないかと思って います。 ○早川部会長 よろしいですか。今の御提案は、治験に入るのは別に問題はないけれども、 その後、その管理というか、承認申請までに今のような実験をやってみてはどうかという 御提案であろうと思います。例えばそこでプラスが出た場合、どこかで異所性に骨化がヌ ードマウスでたまたま起こりましたといった場合に、この治療をやめるのですかという話 ですね。そこが非常にクリティカルな判断ポイントで、この治療を進めるのか、進めない のかというレベルで考えたときに、いかがでしょうか。 ○土屋委員 もちろん、この治療は進めていただきたいと思います。そして、それは、成 功された患者において、今後モニタリング等による検査をする必要があると思います。別 にそれで命がなくなるわけではないですので、そこを一部切り取れば。 ○早川部会長 おっしゃっていることは、ヌードマウスでやることに大きな意味があるの ではなくて、そういうことを非常にケアしながら慎重にモニタリングを進めていってくだ さいと。今アメリカで100例やっている。それはそれとして、ある程度の年月を掛けてや っている治験がありますので、その情報については申請メーカーからきちんと取っていた だいて、慎重にこれからも追っていただく。もし本邦でも治験に入っていった場合に、そ ういう点もある程度意識しながらモニタリング項目として見ていく。そういう対応なのか と思いますが、堀田先生いかがですか。 ○堀田参考人 おっしゃるとおりであると思います。恐らく、これに参加する研究者側も 学問的な意味では大変関心を持っていて、このような細胞がどこまで長く生着するのか、 あるいは、場合によってはそれが形質に変化を起こすのかについては関心は高いので、き っとモニタリングをすると思います。 ○早川部会長 大体そういう方向で、この件は処理していただければいいのではないかと 思います。ほかにいかがですか。 ○貫和委員 呼吸器の立場から申しますと、肺での出来事で、急性期を乗り越えた後のB OS(Bronchiolitis obliterans syndrome)に、この製剤が関与することがあるのか、あ るいは、もともとの移植そのものによるのか、その差は区別できるのでしょうか。 ○堀田参考人 オリジンの問題でしょうか。 ○貫和委員 オリジンの問題と言いますか、急性期に関しては、非常に重篤な状況ですか ら、それは使って問題ないと思いますが、例えば患者に説明されている異所性の組織形成 が、どのレベルのことを意識して書かれているのか、具体的な内容が分からない。一番大 きな問題は、恐らくBOSのようなことではないかと思いますが、そこのところの血液系 の先生方のお考えを少し聞かせていただければと思います。 ○堀田参考人 私もそれほど十分に承知しているわけではないですが、最初に輸注をする ときに、凍結を融解した浮遊細胞の中に一部はどうしても凝集塊ができると思います。そ れは、それほど大したことはないと記載されていますが、場合によってはそういうことも 起こり得る。凝集塊はまず肺に引っ掛かるであろうということで、引っ掛かったときにそ こに生着する可能性が一番考えやすい。そこから全身循環に入っていった場合には、かな り細かい細胞になって分散されますので、余り集中することはないであろうと考えます。 そうすると、肺にそのような異所性の変化が一部起こってくる可能性はあるであろう。そ のほかの全身のことについては、その頻度などは分かりませんが、否定はできない程度で あると思います。 ○貫和委員 恐らく現状では分からないと思いますが、かなりの方が米国で臨床試験に入 っておられるのでしたら、長期予後と言いますか、どちらが原因でBOSが起こったかが 分からないにしても、どのくらいの頻度で起こっているかなど、そういうデータを常にモ ニターしていただきたいと思います。 ○早川部会長 米国で100例を超えるということですが、今まで期間的にどれくらいやっ ていて、どういう状況なのですか。 ○機構 米国での臨床試験では、現在までに100例の患者に投与されていまして、一番長 い例で1年までのフォローアップが終わっている状況です。その中で、異所性の組織形成 が認められたのは1例です。その1例の詳細は、骨大理石病の患者にこの間葉系幹細胞を 投与したところ、石灰化が認められたということです。その石灰化の部分のDNAの検査 をしたところ、患者自身のDNAと造血幹細胞のドナーのDNAは検出されたのですが、 投与した間葉系幹細胞由来のDNAは検出されなかったということで、本品の影響ではな いのではないかという考察がされています。そのほかの例では、今のところ異所性組織の 形成は認められていないということです。 ○早川部会長 これから長期にわたって、更にモニターを続けていくということがポイン トであろうと思います。先生、特に御心配になられていたのは肺の方ですか。 ○貫和委員 これは、骨髄移植の後にもかなりの頻度で血液内科から照会がありますし、 重篤なのです。プログレッシブで、せっかく原疾患がカバーされても肺の方で命取りにな ってしまう状況が多いものですから。 ○早川部会長 先ほどの1例は、臓器はどこでしょうか。 ○機構 場所は、頭と足ということでした。 ○早川部会長 移植した細胞のせいではないということは、今のところ調べた限りでは明 らかになっていますね。 ○土屋委員 細胞は、そこに行っていないということですか。 ○早川部会長 そうですね。DNAが検出されなかったということです。 ○土屋委員 サイトカイン等が出て、それによって自分の細胞の骨分化がということもあ り得るので、全く関与はというのはなかなか難しいと思います。 ○機構 否定はできないと思います。 ○土屋委員 様々なサイトカインが出るのは有名ですので。 ○早川部会長 すべてはバランスの問題であると思うので、100%起こらないとか、非常 に起こりやすいとか、まれにしか起こらないとか、それによってリスクとベネフィットで 考えていかないといけない問題であろうと思います。 ○澤田委員 数字が見付からなかったのですが、日本の治験で、症例数はやはり100例く らいなのでしょうか。 ○機構 現段階では、治験のプロトコールについてはまだ詳細を決めていなくて、これか ら考えるということです。ひとまず今の段階では10例程度の安全性を確認してから次の ステップに進む計画になっていますが、これから検討するということです。 ○澤田委員 先ほどの石灰化の話は100人に1人出たという話ですが、10何人ではほと んど見られないということですね。  もう一点よろしいですか。当面は、コケイジアンの細胞でおやりになるということで、 将来的に日本人でやる予定があるのかどうか、いかがでしょうか。 ○機構 今のところはありません。 ○早川部会長 その会社に関してはないということですね。別の会社が勇気を得て、また 別の良い製品を出そうとすることはあるかもしれないということですね。 ○機構 はい。 ○澤田委員 申請書に人種差があるかもしれないと書いてあって、それをやらないのは矛 盾があるような気がします。 ○土屋委員 1人のドナーから何人分の製品ができるのでしょうか。 ○機構 1人のドナーから□〜□人分の最終製品が製造できます。 ○小澤委員 少し臨床開発に関係もしていますので、コメントしたいと思います。会社で は初め、日本人でやろうとしたらしいのです。ところが、日本人の場合はEBの抗体など が多くて、抗体を持っていてもウイルスのゲノムは普通はないですから使えると思います が、医薬品開発という観点からはEBの抗体もないドナーから作ってほしいというリクエ ストがあって、やむを得ずアメリカ人に替えたらしいのです。  それから肺の問題ですが、小動物などでin vivoイメージング装置を使ってよく追跡調 査をしています。私たちの所もやっていますが、ずっとイメージング装置でフォローする と、一過性に肺にトラップされて、すぐ消えてしまうようなのです。MSCは余り長期的 に体の中にとどまらない傾向にあるようです。ですから、動物実験レベルですが、長期的 な副作用はそれほど心配しなくてもいいのかと思います。  またフォローアップに関しては、スウェーデンのグループがOsiris社とは別に臨床開 発をしていて、患者で生検などのスタディもやっています。そうしますとごくわずかにM SC由来と思われる細胞が検出されるようですが、残存しているのは非常に少なくて、固 まって残っているケースはこれまでのところなかったという報告が学会発表レベルでさ れているようです。 ○早川部会長 有益な情報をありがとうございました。細胞がいつまでどのくらいの濃度 でとどまるかというのは、先ほど来の議論のポイントとしてとても大事なことであると思 います。  堀田先生、先ほどの人種差というのは、どの程度の大きな意味があるのでしょうか。 ○堀田参考人 もともとHLAのバリアを越えてこれができるというもので、MSCその ものは免疫原性が低いことから言うと、普通であれば人種差よりもHLAなどに規制され ると思いますが、それを越えられるということなので、余り大きな問題ではない。ただ、 先ほど小澤委員がおっしゃったように、いろいろなウイルスのキャリアであったりすると 困るという点が考慮されたと思っています。 ○土屋委員 種を越えて免疫抑制作用があるようで、マウスの系でもヒトの細胞を入れる とT細胞の活性化や増殖を抑えられています。そういう意味では、非常に幅広く効くもの ですね。 ○早川部会長 ありがとうございました。ほかに何かありますか。よろしいですか。先生 方からいろいろなコメント、議論をいただいたわけですが、議決に入ってよろしいですか。 それでは、申し訳ありませんが、小澤委員におかれましては、利益相反に関する申出に基 づきまして、議決への参加を遠慮いただくことになります。先生はいらして結構ですが、 賛否の意思のみ控えていただければということです。  本品目について、特にこの品質・安全性でもって臨床治験に入って問題があるようなお 話はなかったと思いますので、その適合性は認められたと理解していますが、それでよろ しいですか。ありがとうございました。手続論的には、本品目は、薬事分科会に報告とい うことです。よろしくお願いします。堀田先生、どうもありがとうございました。  次に、議題2に入ります。「生物由来原料基準の一部改正について」です。これについ て、事務局から概要を御説明いただきたいと思います。 ○事務局 それでは、議題2について御説明申し上げます。お手元の資料2を御覧くださ い。併せまして参考資料3を参照ください。生物由来原料基準につきましては、本日、参 考資料3としてそのものをお付けしていますが、生物由来原料基準とは、薬事法第42条 に基づき定められた基準でありまして、すべての医薬品、医療機器等は、その基準に適合 する必要があります。この基準は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造に用 いられるあらゆる人・動物等に由来する原料を対象とし、その原材料の適格性の要件を定 めたものです。基準に適合しない原料を使用した製品の製造、販売等は禁止されています。  BSE対策としては、「生物由来原料基準」の中の第4の1、参考資料3で言いますと 5ページ目にありますが、「反芻動物由来原料基準」において、主に資料に示しています 以下の事項を規定しています。[1]ウシ等由来原料として使用してはならない反芻動物の部 位材料、[2]原材料として使用できる反芻動物の原産国。[3]のリストが第4の(3)に掲げら れていますが、こちらについては、これまで、欧州食品安全庁(EFSA)においてリスク が低い、いわゆるGBRのクラスがI及びIIとの評価を得て公表された国であって、米国 農務省の定める輸入制限国でない国を参考とした経緯があります。  今回諮問している事項ですが、生物由来原料基準の改正の趣旨です。今回EFSAの地 理的BSEリスクの評価(GBR)において、平成17年6月にチリのGBRがクラスI(B SEリスクがほとんどない国)からクラスIII(BSEのリスクがある国)に変更されたこと に伴い、「生物由来原料基準」中の「反芻動物由来原料基準」の国名リストから「チリ」 を削除するものです。なお、チリのGBRが変更されたのは、新たにBSE感染牛が発見 されたためではなく、チリのBSE病原体の循環及び増幅を防止するためのシステムが不 安定、つまりBSEが発生した場合、飼料などを通じてBSEの感染が増幅し得るとみな されたためです。この基準の改正につきましては、現在、我が国におきまして、チリ産の 反芻動物を原材料とする製品は流通していないことから、公布の日から適用する予定とし ております。以上です。 ○早川部会長 ありがとうございました。ただ今の説明に対して御質問、御討議をお願い いたします。チリを除くというだけの話ですが、いかがでしょうか。それでは、議決に入 らせていただいてよろしいですか。先生方でこれに対して特に異論がないようですので、 御了解いただいたということで、改正を可として、薬事分科会に報告とさせていただきま す。 ○審査管理課長 一点だけ報告いたします。事務局の説明の中でも触れましたが、平成 17年6月にEUの欧州食品安全庁の地理的BSEリスクが変更されていたということで、 事務局としてはもう少し早い時点で手当てができればということも考えたわけです。ま た、本年3月に業界団体を通じて調査したところ、チリのウシの肝臓を利用した医薬品が 1品目ありました。その医薬品は、平成17年6月のチリのGBRの変更前に屠殺された ウシを使っている、それをドイツから輸入しているということでしたが、この製品の出荷 も取りやめたところです。現段階においては、調査の結果、少なくともチリのウシ由来の 原材料を使った医薬品はないということですので、できるだけ早期に基準を改正し、即日 施行したいと考えております。 ○早川部会長 ありがとうございました。次に、報告事項に入ります。議題1「ウシ由来 原材料を使用した医薬品のリスク評価について」です。事務局より説明をお願いいたしま す。 ○事務局 本議題の資料については、未定稿としてお送りしていたところですが、最終版 として資料3-1を本日お配りしておりますのでこちらを御覧ください。1ページです。今 般の背景ですが、ウシ等の反芻動物に由来する原材料については、審議事項、議題2でも 説明したとおり、「生物由来原料基準」において使用可能な原産国及び部位を定めており、 本基準に適合しない原材料を用いた医薬品等の製造・輸入を禁止しているところです。た だし、医薬品等については、治療上の効果が当該原材料を用いることによるリスクを上回 る場合、その他必要な場合において、上記の原産国等に適合しない原材料をやむを得ず使 用する場合は、その妥当性について、薬事法に基づく製品の製造販売の承認の際に交付さ れる承認書に記載した上で、その使用を認めていることが、基準第4の1(5)に、参考資 料3では6ページ目にその条文があります。本日は、その妥当性について、お配りしてい る資料のとおり、評価票が該当企業より提出されたことから、御報告を行うものです。  対象となる品目は2.に示しているとおり、いずれの品目もアメリカ又はカナダ産ウシ 由来のもので、米国産ウシ由来原材料を使用したものは、乾燥ガスえそ抗毒素、乾燥ボツ リヌス抗毒素、乾燥濃縮人血液凝固第VIII因子、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、 A型ボツリヌス毒素、トラスツズマブの7成分、カナダ産ウシ由来原材料を使用したもの は、2社が取り扱うインスリン、米国産ウシ由来のところで述べたものと同じムロモナブ -CD3の3成分ですが、重複がありますので、米国、カナダを合わせて9成分というこ とです。  これらの9成分について、それぞれ提出された評価票及び添付文書を資料としてお配り しております。以下、品目ごとに御説明いたします。  資料の4ページを御覧ください。この評価票においては、販売名からウシ等由来原材料 の管理基準まで記載しておりますが、中心となるのは、「品質におけるリスク」及び「総 合評価」でございますので、この点について御説明申し上げます。まず、1品目目の乾燥 ガスえそ抗毒素"化血研"です。品質におけるリスクですが、平成15年薬食審査発第 0801001号、薬食安発第0801001号通知に基づきリスク評価を行っております。この通知 自体は参考資料5として付けておりますが、通知の中で、平成15年7月8日付けの伝達 性海綿状脳症調査会の資料としてリスク評価の考え方が示されており、これに基づき評価 を行いました。その結果、これらウシ由来製品を使用した製品のBSEリスクの概算値は、 平成15年7月の伝達性海綿状脳症調査会の資料に示してあるリスク評価の目安とされて いる-3、これは感染牛の危険部位から見て100億分の1未満のリスク、1/∞のリスクレ ベルと評しておりますが、それよりも危険性が低いと評価されております。これらの結果 を踏まえ、5ページですが、総合評価は、医療上の有用性と当該原材料を使用するリスク を比較した場合、医療上の有用性が上回ると判断した、とされております。  9ページを御覧ください。2品目目は乾燥ボツリヌスウマ抗毒素です。品質におけるリ スクですが、製造工程において、免疫用抗原をウマへ接種した後に血漿を採取する特殊な 工程を有しているものであり、ウマへの免疫用抗原の接種行為をウマの体内における希釈 と仮定し、リスク評価を行った結果、リスク評価の目安である-3を下回ったという結論 が得られております。これを踏まえて、10ページですが、総合評価は、医療上の有用性 と当該原材料を使用するリスクを比較した場合、医療上の有用性が上回ると判断した、と されております。  16ページを御覧ください。3品目目は、販売名クロスエイトM250他、一般名乾燥濃縮 人血液凝固第VIII因子です。品質におけるリスクですが、ウシ由来原材料は、モノクローナ ルIgGを産生させる際に、細胞培養の添加剤として使用しているものであり、その際の 希釈効果に加えモノクローナルIgGを精製する製造工程においてリスク減少の効果が 期待できる、また、精製したモノクローナルIgGを樹脂に固相化することによりリスク が軽減し、さらに製造工程の初期の段階で用いているため、その後の製造工程で更にリス ク減少の効果が期待できる、とあり、この状況を踏まえ、先ほど述べた通知に基づき、リ スク評価を行ったところ、いずれも目安である-3を下回ったということです。17ページ ですが、総合評価は、医療上の有用性と当該原材料を使用するリスクを比較した場合、医 療上の有用性が上回ると判断した、とされております。  23ページを御覧ください。販売名レミケード、一般名インフリキシマブです。24ペー ジに品質におけるリスクを示しております。評価した結果、リスク評価の目安である-3 を下回ったということです。25ページですが、総合評価は、医療上の有用性と当該原材 料を使用するリスクを比較した場合、医療上の有用性が上回ると判断した、ということで す。  34ページを御覧ください。販売名オルソクローンOKT3注、一般名ムロモナブ-CD 3です。品質におけるリスク評価を行った結果、本製品のBSEリスクの概算値は「0」 であったということです。35ページですが、総合評価は、本剤のBSEリスクの概算値 は0であること、「腎移植後の急性拒絶反応の治療」のためのオーファンドラッグであり、 急性拒絶反応において他剤が有用でない場合に使用されること、長期間継続的に使用され ることは想定し難いこと、移植医療の専門医から本剤の継続供給が望まれることなどか ら、本剤は医療上の有用性と当該原材料を使用するリスクを比較した場合、医療上の有用 性が上回ると判断した、とされております。  42ページ、販売名ボトックス注100、一般名A型ボツリヌス毒素です。43ページに品 質におけるリスクを示しておりますが、リスク評価の目安である-3より低いとされてお ります。それを踏まえて、総合評価は、医療上の有用性と当該原材料を使用するリスクを 比較した場合、医療上の有用性が上回ると判断した、とされております。  49ページを御覧ください。販売名ハーセプチン、一般名トラスツズマブです。品質に おけるリスクは、リスク評価の目安である-3を下回っているということです。50ページ ですが、総合評価は、医療上の有用性と当該原材料を使用するリスクを比較した場合、医 療上の有用性が上回ると判断した、ということです。なお、本品目の切替状況について、 製造者である中外製薬から意見が出されておりますので、資料3-2として配付しておりま す。また、52ページですが、吉倉委員にあらかじめ見ていただいた際に、リスク評価の 中で不活化除去等によるリスク低限値の内訳について質問がありましたので、その内容に ついての企業からの回答を付けております。  58ページを御覧ください。ノボ ノルディスク ファーマ株式会社のヒトインスリンで す。59ページに品質におけるリスクを示しております。リスク評価値は、リスク評価の 目安である-3よりも少ないことが書かれております。総合評価は、医療上の有用性と当 該原材料を使用するリスクを比較した場合、医療上の有用性が上回ると判断した、とされ ております。  最後の品目ですが、74ページを御覧ください。日本イーライリリー株式会社のインス リン リスプロです。品質におけるリスクは、マスターセルバンク作製時に使用した培地 成分のペプトンは、カナダで初めてBSEが発生した2003年より10年以上前のウシ由来 原材料(胆汁)を使用していること、また、胆汁はBSE感染リスクがない部位とされてい ることを踏まえてリスク評価を行い、その結果、BSEリスクは、リスク評価の目安とな る-3よりも低いとされております。75ページですが、総合評価は、医療上の有用性と当 該原材料を使用するリスクを比較した場合、医療上の有用性が上回ると判断した、とされ ております。個別の品目の状況は以上です。  資料3-1の1ページ目にお戻りください。3.リスク評価(案)ですが、これまでに報告 したように、これらの9成分については、製造販売企業からそれぞれ提出されたリスク評 価票を精査したところ、先ほど述べた基準の第4の1(5)に該当するものと考えられ、今 後、この妥当性を承認書に記載したいと考えております。以上です。 ○早川部会長 ありがとうございました。ただ今の報告について、委員の先生方から御質 問等がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、 報告いただいた事項については御確認いただいたものといたします。  資料を拝見して、例えばマスターセルバンクの保存培地のようなものの中に、極めてト レースアマウントに入っているケースにまで累を及ぼすことは、そろそろ再検討してもい いのではないかと思いました。これはEUやアメリカでは特にそこのところは、マスター セルバンクはゴールデンスタンダードで、それを変えたときの影響の方が、場合によって は大きくなるかもしれないということも言われておりますので、検討の俎上に上れるので あればと個人的には思いました。また、例えば精製の途上で抗体カラムなどを使います。 その大本を手繰ると、またマスターセルバンクがあって、そこも同じ理屈ですが、どう考 えるかについても検討材料にしていただければどうかと思いました。 ○審査管理課長 ただ今の提案ですと、先ほど御覧いただいた参考資料3にある生物由来 原料基準を変えることにせざるを得ないのであろうと思います。平成16年でしたか、ア メリカでのBSEの報告を受け、アメリカについては、今言われたようなマスターセルバ ンクうんぬんといった経過措置がここに書かれているわけです。したがって、仮に検討す るとなると、アメリカに加え、それ以外の国のどこまでをそのような形にすればいいのか、 あるいはもっとドラスチックに、マスターセルバンクはいいが、その後のワーキングセル バンクは駄目であるなど、またいろいろなことが必要になってくるのか、いずれにしても 少し地道な検討が必要かと考えておりまして、先生のお力を借りながら、作業をするかど うかも含めて検討させていただきたいと思います。 ○早川部会長 よろしくお願いいたします。次に、報告事項の議題2について事務局より 説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは資料4に沿いまして、御説明させていただきたいと思います。まず、 1枚おめくりください。「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保 に関する法律(いわゆるカルタヘナ法)の概要」が示してあります。上から三つ目の大きな 囲いにありますように、この法律では、遺伝子組換え生物等の使用等に先立ち、使用形態 に応じた措置を実施することが求められております。そのうち三番目の囲いの右側にあり ます「第2種使用等」、つまり環境中への拡散を防止しつつ行う使用等において、施設の 拡散防止措置が主務省令で定められております場合は当該措置を、定められていない場合 には、あらかじめ主務大臣の確認を受けた拡散防止措置をとることとされております。  1枚目にお戻りください。今回については遺伝子組換え技術応用医薬品ということで、 その間に執るべき拡散防止措置について厚生労働大臣が確認を取ることとなっており、前 回の当部会において御報告した分以降である、平成18年1月から平成19年4月までに確 認を行った品目は、計14品目です。内訳については、本資料3ページ目以降に示してい る14品目です。いずれもGood Industrial Large-Scale Practice、すなわちGILSPに該 当するものです。これにより、カルタヘナ法施行後の平成16年8月からこれまでに、カ ルタヘナ法第13条に基づいて、確認を行った品目数は計91品目となりました。以上です。 ○早川部会長 ただ今の報告に対して、御質問等がありましたらお願いいたします。いか がでしょうか。よろしいですか。それでは、報告いただいた事項については御確認いただ いたものといたします。  最後に、その他の1議題について、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 お手元の資料5を御覧ください。細胞・組織を利用した医療用具又は医薬品の 品質及び安全性の確保については、平成11年7月30日付けの医薬発第906号厚生省医薬 安全局長通知により、本日審議していただいているように、治験計画の届出を行う前に安 全性及び品質の確認を行っていただいているところです。また、確認申請を行うに当たり まして添付すべき資料などについては、平成12年12月26日付けの医薬発第1314号厚生 省医薬安全局長通知により示されてきているところです。平成18年12月25日に、内閣 総理大臣を始めとする、国の科学技術政策全体の方向性などを決めて打ち出していく総合 科学技術会議の中で、細胞や組織を利用した医療機器や医薬品について安全性評価基準を より明確にするとともに、確認申請の段階、治験計画届における調査の段階において重複 する部分の簡素化を図るべきであるという意見具申が出されました。  これを受けて厚生労働省では、本日の部会長でもある早川先生を主任研究者とした厚生 労働科学研究の研究班を立ち上げ、その中で906号通知、1314号通知などについての内 容の再検討を現在行っているところです。資料5については、この3月30日の段階で、 治験計画届までにやること、確認申請の段階でやることにおいて重複する部分について、 簡素化を図ってもいいのではないかということを取りまとめたものを通知いたしました ので、本日報告させていただきます。「記」以下に具体的な内容がありますが、参考資料 7に改正前の通知を付けております。両面印刷になっていますが、これの3枚目の後ろに 様式1の別添があります。この下の注2)に「治験計画届書案を併せて提出すること」と ありますが、治験計画届書案については、治験計画届の段階で確認することもできるので はないかということで、今回削除することとしております。  資料5にお戻りください。1枚目の裏側に1314号通知の改正がありますが、その次の ページに新旧表を付けておりますので、こちらを中心に説明いたします。右側にあるよう に、現行基準は、「第8章 臨床試験」の「第2 国内の治験計画の概要」で、12の項目 について具体的に資料を提出するように求めているわけですが、今般、その中で、確認申 請の段階でどうしても確認しておくべき必要があるものとして、左側の5項目を提出して いただく、その他の項目については治験計画の届出の段階で確認できるのではないかとい うことで考えております。このような形で3月30日付けで906号通知、1314号通知の改 正を行いましたので報告いたします。 ○早川部会長 ありがとうございました。ただ今の件について、委員の先生方から御質問 等がありましたらお願いいたします。よろしいですか。それでは、本事項についても確認 いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、事務局から連絡事項はあります か。 ○事務局 特にございません。議題ができたところで、先生方には日程調整等をさせてい ただきますので、その節はよろしくお願いいたします。 ○早川部会長 全体を通じてで結構ですが、追加的に何かありましたらお願いいたしま す。よろしいですか。審議事項の議題1についてはいろいろ議論がありましたので、メー カーの方にこのような議論があったことをよく説明していただき、参考にしていただく部 分についてはそのようにしていただいて、いい形で治験に入っていくように指導していた だければと思います。よろしくお願いいたします。それでは、本日予定しておりました議 題はすべて終了いたしました。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 専門官 田中(内線4221)