07/05/29 第38回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第38回厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録 ○ 日  時 平成19年5月29日(火)10:00〜12:00 ○ 場  所 厚生労働省 専用第21会議室(17階) ○ 出 席 者   【委  員】  垣添部会長           石井委員 岩谷委員 金澤委員 川越委員 北村委員           木下委員 笹月委員 佐藤委員 末松委員 竹中委員 西島委員 福井委員 南(砂)委員 宮田委員 宮村委員           【議 題】 1.厚生労働科学研究のあり方について   (1)中長期的な厚生労働科学研究費のあり方(中間報告)のフォローアップについて   (2)厚生労働科学研究費補助金配分機能の移管のあり方について   (3)戦略研究に対する今後の対応について   (4)第37回厚生科学審議会科学技術部会における議論概要について 2.その他 【配布資料】 1−1. 中長期的な厚生労働科学研究費のあり方(中間報告)のフォローアップ 1−2. 厚生労働科学研究費補助金配分機能の移管のあり方について 1−3. 戦略研究に対する今後の対応 1−4. 早急に取りまとめるべき厚生労働科学研究のあり方について 2−1. 厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会の設置について(案) 2−2. 新健康フロンティア戦略(概要) 2−3. 革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略の概要 2−4. 革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略 2−5. 日中韓三国保健大臣会合について 参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 参考資料2. 今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報告書 ○坂本研究企画官 傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしてお ります注意事項をお守りくださるようお願いいたします。定刻を過ぎましたので、ただいまから第 38回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様には、ご多忙の折お集 まりいただき御礼申し上げます。本日は、今井通子委員、永井良三委員、松本恒雄委員、南裕 子委員、望月正隆委員からご欠席のご連絡をいただいております。遅れていらっしゃる先生方 もいらっしゃいますが、委員21名のうち、出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成 立いたしますことをご報告いたします。  本日の会議資料の確認をさせていただきます。議事次第の配付資料のところに資料の一覧 が書いてあります。資料1-1「中長期的な厚生労働科学研究費のあり方(中間報告)のフォロー アップ」、資料1-2「厚生労働科学研究費補助金配分機能の移管のあり方について」、資料1-2 と資料1-3の間に配付資料一覧にはありませんが、別添資料1-1から1-4、別添資料2、別添資 料3-1から3-3という資料が資料1-2の関係資料として付いております。資料1-3「戦略研究に対 する今後の対応」、資料1-4「早急に取りまとめるべき厚生労働科学研究のあり方について」、 資料2-1「厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会の設置について(案)」、 資料2-2「新健康フロンティア戦略(概要)」、資料2-3「革新的医薬品・医療機器創出のための5 か年戦略の概要」、資料2-4「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」、資料2-5 「日中韓三国保健大臣会合について」です。このほかに参考資料1と参考資料2「今後の中長 期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報告書」があります。  以後の議事進行を部会長にお願いいたします。 ○垣添部会長 早朝からお集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから、第38回 厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。議事1は「厚生労働科学研究のあり方につ いて」ということで、その下に(1)から(4)までありますが、これを順次事務局から説明をしていた だきながら議論していただくという形で進めさせていただきます。 ○藤井厚生科学課長 最初の「中長期的な厚生労働科学研究費のあり方(中間報告)のフォ ローアップについて」、資料1-1を基にご説明いたします。この中間報告自体は、参考資料2に 全文を付けております。この中間報告は、平成17年4月に取りまとめられております。その当時 取りまとめていただきました先生方については、参考資料2のいちばん後ろの頁に委員名簿を 付けております。  資料1-1に概略をまとめてあります。いちばん左側が中間報告での指摘事項、そして取組と 今後の課題という形で整理しております。制度全般に関する事項として、他省庁の研究費との 違いがあまり明確でないというご指摘がありました。これに対して、取組のところにもありますよ うに、厚生労働行政を進めるために必要な「目的指向型研究」であるとの位置づけをより一層 明確に打ち出してきております。  次に、研究システムに関する事項の、研究の枠組みに関する指摘についてです。この中で は、厚生労働行政の政策目的に対応した研究の枠組みが未整備である、というのがいちばん 上にあります。二つ目の○以下で、より具体的に政策に必要とされる研究制度・重点課題に対 する研究上の配慮、研究の進捗に応じた資源配分や研究者、特に若手研究者の育成につい ての問題点が指摘されておりました。  それらの指摘に対し、取組のところですけれども、従来は一般公募型と指定型、そして若干 の若手研究者の育成枠という形で運用していたものを、そこにお示ししておりますように、5類 型に再編しております。一般公募型と指定型はいままでもあったものになりますが、今後、その 他の新たな制度について改めて検証を実施し、問題があれば必要な対応をとる必要があろう かと考えております。  今後の課題の欄にもお示ししておりますが、現在の枠組みでは長期疫学研究のように、3年と か5年とかの研究期間では対応できない長期継続的な研究への対応が改めて必要であろうと いう問題提起もなされてきております。  研究システムの中の(1)研究の枠組みの最後の○のところですが、個別研究では成果が出づ らい研究についての指摘に関しては、上にもお示ししておりますように、新たに戦略型研究であ るとかプロジェクト提案型研究を創設したのに加え、トランスレーショナルリサーチを充実させる という取組を進めてきております。  (2)の研究評価のあり方のところで、内閣府の総合科学技術会議では、学術的な視点を重視 した評価が多く指摘されておりますが、厚労省の研究は冒頭にもご説明しましたように、目的指 向型研究であることを常に強調しております。これまでの取組のところにも書いておりますよう に、一部の研究事業においては、若手研究者を活用し、二段階評価を実施するという取組も開 始しております。  2頁は、研究の実施体制についてです。これまでの取組のところにもありますように、研究費 交付の早期化については、前回のこの部会でもご説明しました事項を基に進めてきておりま す。しかし、他省庁と比べますと交付時期が遅いという指摘がなおあるために、今後の課題に もありますように、交付事務の簡素・効率化、研究費配分機能を本省から移すという、いわゆる FA化を進めていく必要があろうかと考えております。  二つ目の○の若手研究者の件については、先ほども若干触れさせていただきましたが、さら に最近では総合科学技術会議のほうで、若手研究者の育成への対応が必要だという議論が なされております。これは厚生労働省だけではなく、すべての省庁への問題意識という形になっ ております。  三つ目の○は、臨床研究実施のための体制基盤の強化についてです。先ほど触れましたよ うに、戦略型研究の創設であるとか、トランスレーショナルリサーチの充実、臨床研究に必要な 専門家である疫学/統計学の専門家の研究への参画の奨励、臨床研究の拠点整備等を実 施してきております。  三番目の、透明性の確保と社会的貢献の重視についてですが、最初の国民への研究成果 の広報等については、研究成果を含めた厚生労働科学研究費のパンフレットを作成して配布 したり、研究成果のホームページへの公表をしているほか、研究者の方々にはできるだけご自 身がされた研究について、市民公開講座などで内容を説明してくださいというお願いをしている ところです。  不適切な研究費の処理については、昨年8月に内閣府のガイドラインが出ましたので、その 周知徹底でありますとか、研究者が直接研究費を扱わないようにする機関経理の徹底などを 進めてきましたが、今般厚生労働科学研究費をめぐる不正事件というものも発生しました。そ の捜査結果等を踏まえ、総合的な不正防止対策、研究費の監査体制の充実などを検討してい く必要があるだろうと考えております。  次の○の個人情報に対する配慮については、個人情報保護法を踏まえ、厚生労働省等で作 っております各種の指針の改正等を実施してきたところです。  最後の国際貢献の推進についてですが、一部の研究について国際的な研究活動を厚生労 働科学研究費の中でも実施しておりますが、課題のところにもありますように、今後はさらにそ の推進のための検討が必要であろうと考えております。資料1-1についての説明は以上です。 ○垣添部会長 平成17年4月に出された、中長期的な厚生労働科学研究費のあり方について の中間報告についてはこの席上でもご議論いただきましたし、総合科学技術会議等からいろい ろいただきました指摘事項と、それに対してこれまでどう取り組んできたか、残されている課題 はどういうものかということを整理してお話をいただきました。何かご発言いただくことはありま すでしょうか。 ○末松委員 これまでの議論の中で、厚労科研費の、例えば間接経費のことについてはどうい う議論があったかについて伺います。いまの説明の中で、厚労科研費と、ほかの研究費の区 別化の問題が出ていました。トランスレーショナルリサーチとか臨床研究をやる上で、大学機関 がそれぞれにヒトの生命倫理のレギュレーションとか、倫理委員会とか、利益相反マネジメント さらにはメディカルライティングの対応をどうするかとか、機関ごとにいろいろ自力で対応しなけ ればいけない項目がここ数年たくさん出てきていると思うのです。そのときに、厚生労働省の研 究費だからこそサポートできるような間接経費の使い方を考慮して、その額を大きくするなどの 特色を出すというのは今後可能性としてあるのかどうかをお聞きします。 ○藤井厚生科学課長 間接経費の件については、本日の資料でいいますと資料1-4のところ に、前回いろいろご議論いただいたことを踏まえて若干載せております。また、そのときに説明 は改めてするとして、先ほどのご質問に対しましてまずお答えをさせていただきます。  厚生労働省のほうでも、できるだけ研究費に間接経費を取るべくいろいろな努力をしてきてお ります。しかし、研究費全体の枠が厳しいということがあり、思うように間接経費を確保できてい ないという実情があります。いまのところ大きな考え方として、3,000万円以上の研究事業や研 究課題については、できるだけ間接経費を予算の範囲で確保する努力をしております。  総合科学技術会議のほうからは、すべての研究費に30%の間接経費をというご指摘があり ます。いろいろな諸条件で難しい部分もあるのですが、できるだけその方向に向けて努力をして いきたいと考えております。 ○垣添部会長 後ほどまたご議論いただきたいと思います。 ○笹月委員 1頁のいちばん下の研究評価のあり方、総合科学技術会議からの指摘のところ に、いわゆる「学術的視点に偏っており、政策的意義が十分に評価され難い」という問題が指 摘されております。これは、いつも文科省以外の各省庁のミッションオリエンティッドの研究に対 して言われていることなのですが、こういう意見は正しい意見だと思うのですけれども、これが 正当に理解されず、あるいは受け取られずに、すぐ役に立つ本当にものが出てくる研究しか厚 労科研費は駄目だという誤解があって、基礎的なところから、その病気の克服へ向かっている 研究が、いまだにそれは基礎的だから厚労科研費には適さないといって、非常に低い評価を 受ける、というのは間違いだと思うのです。  例えば、いきなりスギ花粉症が来年には解決するような研究というのはあり得ないわけで、そ の手前のしっかりした研究がなければいけないので、そこは国際的に見てもその研究の進展度 をきちんと評価し、それへ向かっているのであれば、いくら厚労科研費であっても、きちんと評価 されるべきであります。ここの誤解がないようにすることがいちばん大事だと思います。 ○垣添部会長 大変大事なポイントではないかと思います。 ○佐藤委員 いまのご発言にも絡むかもしれないのですが、長期にわたる研究、特に疫学研 究は今後の課題に出ているのでよかったと思っております。3年ないしは5年では済まないよう な研究についてはどのようにサポートしていくかというのは今後考えるべきだろうと思います。  私自身の話で恐縮なのですけれども、コホートを抱えておりますと、3年ごとぐらいに見た目が 違うように化けさせてというのも変ですけれども、そういう形で研究費を続けざるを得ないわけ です。しかし、笹月委員のお話にもあったと思うのですが、10年かかる研究というのもあるし、1 年で終わるものもあるし、その辺のメリハリというか、特に長期にかかわるような研究について のサポートを是非お願いしたいと思います。 ○垣添部会長 これは、文部科学省の研究費でもよく議論されるところでありますが、厚生労 働省の研究費に関しても非常に重要なポイントではないかと思います。 ○宮田委員 お二人の意見にちょっと付け加えさせていただきます。やはり目的指向ということ が、応用指向とか、すぐ商品化というところに誤解されてしまうのは、目的の設定ミッションが明 確ではないというところが最大の問題だと思うのです。他省庁の例を挙げると反発なさるかもし れませんけれども、いま経産省は各学会と提携してロードマップを書き始めています。要する に、どういうことが何年後ぐらいに可能になるかというもの。それプラス政策目標を加えて、要す るに何年後ぐらいにこういうことをやりたいという目的をまず明示しないと、その目的に向かって その研究が進んでいるのかどうかを評価もできないし、この萌芽的な研究がその目的に貢献で きるのかというところも理解できないのです。  これは目的指向型研究であるという宣言をする以上は、何をやるだけではなくて、どういう段 階で、ロードマップとして実現していくのだということを設定していただかないと、研究管理もでき ないし、国民に対するアカウンタビリティも足りなくなるだろうと思います。 ○垣添部会長 短時間で大変重要なご指摘を数々いただきました。さらにこれを取り入れさせ ていただきまして、今後の研究のあり方に関して進めさせていただきたいと思います。まだあろ うかと思いますが、時間の関係もありますので先に進ませていただきます。今度は資料1-2の 「厚生労働科学研究費補助金配分機能の移管のあり方について」をお願いいたします。 ○藤井厚生科学課長 資料1-2に基づいてご説明いたします。経緯の1)のところですが、平成 15年4月に総合科学技術会議で、「競争的研究資金制度改革について」という意見がまとめら れました。資料1-2の後に別添資料1-1が付いております。これは、その意見が出された当時 に、平成15年10月の科学技術部会に提出させていただいた資料です。別添資料1-1の2頁に、 独立した研究費の配分機関、FA体制の構築ということで、現状がいろいろ書いてありますが、 具体的方策、この頁のいちばん下のところに、各配分機関がそれぞれ専門性と特徴をもって戦 略的・機動的に業務を遂行すべきである。3頁の二つ目の○のところで、我が国の競争的研究 資金の約1割を占める厚生労働科学研究費補助金については、その規模を考えると、その実 態を勘案しつつ、独立した配分機関にその配分機能を委ねる方向で検討すると指摘されてお ります。  これを受けて、別添資料1-1の1頁のいちばん下のところで、平成15年10月当時、検討の方向 性ということで総合科学技術会議の指摘を受けて、厚生労働省では既存施設等機関の専門性 に着目し、研究事業の内容に応じて配分機能を付与する方向で検討するということで説明をし てきているところです。  別添資料1-2は、平成17年7月にお示しをしたものですが、1頁に平成18年度予算分から段階 的・試行的に既存施設機関等への業務を移管することを検討中となっております。経緯だけを いままで提出させていただいた資料に基づいて、簡単にご説明させていただきます。別添資料 1-3の3頁に、平成18年度から三か所に配分機能を移管し、全体では3か年で移管を進めていく という説明をしております。その後、いろいろ状況の変化に応じて、科学技術部会では説明をし てきておりますが、それが別添資料1-2とか1-3の中に入ってきております。  それを、改めてまとめたものが別添資料1-4です。これは、昨年10月に科学技術部会にご報 告させていただいたものです。平成18年度から開始し、概ね3年で移行していくということを説明 しておりましたが、その後平成22年度から国立高度専門医療センターが、独立行政法人になる ことが決まりました関係で、平成22年度まで試行的・段階的にそういう検討を含め、長期的な視 野で検討をしていくということで説明をしてきております。  再び資料1-2に戻りまして、1頁のいちばん下の3のところで、そのほか最近になってからの指 摘事項です。総合科学技術会議からは、厚生労働省でナショナルセンター、試験研究機関が 配分をしていることについて、配分を担当するナショナルセンターであるとか試験研究機関の研 究者に、自ら研究費を配分しているということから、そこは利益相反の観点から注意が必要で あるという指摘を受けております。  資料1-2の2頁で、それを明確にするために、アメリカのNIHのように所内研究費と所外研究費 を分けるような取組が必要ではないかと言われております。  2)のところで、昨年9月に、既存の研究機関の配分体制の検討が必要であり、最終形態とし て、配分を複数の機関でするのではなく、単一の機関ですべきだという指摘もなされておりま す。これらに対し、いままで厚生労働省では、研究事業が政策目的別になっているという厚生 労働省の研究費の特性を考慮し、その内容にふさわしい研究機関が配分機能を担うのが効率 的であり、自らの機関の研究者に研究費を配分することを禁止はしないけれども、その選定に ついては公正中立な研究の採択を実施する仕組で行うという説明をしてまいりました。  3)で、総合科学技術会議の中に、研究費関係を議論するワーキンググループがあります。こ のワーキンググループの中間報告が5月に出てきております。その中には、本省からは概ね3 年を目処に独立した配分機関に配分機能を移すということが指摘されております。  こういう状況を踏まえ、現在段階的・試行的に実施しております厚生労働省の配分機能の移 管について、きちんとした検証を行い、これから出されるであろう総合科学技術会議からの指 摘に対し、どのように対応していくのかを検討していく必要があろうかと考えております。  ちなみに、他省庁の状況を別添資料2でお示ししております。これは、内閣府で取りまとめた、 各省庁の競争的資金をどこが担当しているかを整理したものです。研究費の額が多い文部科 学省、経済産業省、農林水産省では、その半分以上の競争的資金を、所管の独立行政法人 において配分しております。厚生労働省は、医薬品の研究開発の一部について、医薬基盤研 究所で配分しているほか、ほとんどのものについては本省で配分しています。この中では、先 ほど申しましたように、平成18年度から試行的・段階的にナショナルセンターであるとか、試験 研究機関にも配分機能をお願いしておりますが、試行中という位置づけということもあり、本省 扱いという形に厚生労働省の場合は整理されております。  別添資料3-1、3-2、3-3という形で、文部科学省の独立行政法人日本学術振興会、科学技 術振興機構、経済産業省の新エネルギー・産業技術総合開発機構の概要を付けております。  資料1-2の説明は以上です。 ○垣添部会長 厚生労働科学研究費補助金の配分機能の移管について、平成15年4月に総 合科学技術会議から指摘された事項に対して、さまざま対応してきた経緯を説明していただき ましたが、何かご発言いただくことはあるでしょうか。 ○西島委員 国立医薬品食品衛生研究所の西島です。ただいまのFAについて、本年度から私 どもの研究所でこの事業を開始しましたので、簡単に現状と我々がいま感じております問題点 をご紹介させていただきます。この問題については利益相反がないようにということが大変重要 なことですけれども、その点について考慮したことも含めてお話いたします。  作業の現状ですが、昨年度までは交付が年明けになっておりましたけれども、この4月からFA の取組を始めました。その結果、現状では29課題に対して作業を進めておりまして、おそらく6 月末までにほぼ交付ができる状況と考えております。対象となっております事業は、資料1-2に もありましたが、化学物質のリスク評価の事業についてです。この事業を始めるに当たっては、 PDとPOを選ぶ必要があるわけです。それについてはいろいろ苦慮いたしましたけれども、PDに ついては、いまはうちの企画調整主幹が担当しております。POは二名いて、一人は研究所の 室長、もう一人は主任研究官が当たっておりまして、事務官がもう一人担当していて、合計3名 でやっております。現状はそんなところです。  その中で問題点もいくつか出てきております。工夫としては、利益相反がないということのた めに、POを選ぶときに、その事業に関係していない室長を選ぶ必要があるわけです。そういう ことで、今回は化学物質の事業に対し、医薬品関係の室長をPOとして当てました。利益相反と いうことがないように考えております。  問題点ですが、POはそのようにして選んだわけですが、これに当たると自分の研究ができな くなるわけです。そのときにPOの評価をどうするかということです。研究所の中では、一応そう いうことの評価はできると思っております。ただ、それの評価が、例えばその室長が外の大学の 教官にアプライするようなときには、どうしても評価してもらえないといった問題点もあるかと考 えています。  いまのところPOは1年交替でするということなのですが、そのような形にしますと、POの個人 的経験の蓄積、ノウハウがうまく伝えられないという問題点の1つとして考えております。  うちの今後の取組ですが、とりあえずいまは化学物質について始めたばかりなのですが、担 当する事業としてレギュラトリーサイエンス関係と、食品関係の2つがあります。これについて は、現状を考えながら今後の対応を考えたいと思っております。以上現状報告ということで参考 にしていただければと思います。 ○竹中委員 用語の説明をお願いしたいのですが、「所内研究費」と「所外研究費」と書いてあ るのですが、ここを具体的に教えてください。 ○藤井厚生科学課長 ここでいう所内研究費というのは、その機関に属する方だけが使える研 究費、という意味合いで使われていると思います。それに対して所外研究費というのは、配分 機関ということを考えますと、外に配分をする、そして中の研究者が使えない研究費という位置 づけになろうかと思います。 ○宮田委員 質問ですが、別添資料2の競争的資金制度一覧の中で、各FAの各省庁の機関 があります。そのFAの機関の中で、研究も同時にやっている機関がどれぐらいあって、その人 たちの、いまおっしゃっていた所外と所内研究費の配分ポリシー及び利益相反というのはどの ようにマネージされているのかを教えていただきたい。 ○垣添部会長 大変重要なポイントだと思いますが答えられますか。 ○藤井厚生科学課長 いま、私どもも各省庁に問合せ中のところがあります。現在、自ら研究 事業を実施している独立行政法人というのは、上からまいりますと総務省の情報通信研究機 構、農林水産省の農業・食品産業技術総合研究機構、経済産業省の石油天然ガス・金属鉱 物資源機構です。厚生労働省にあります医薬基盤研究所というのも自ら研究を実施しておりま す。  その中で、ご指摘の利益相反ポリシー、所内研究、所外研究というのが明確に区分されてい るのかどうかというところは、いまのところそういう情報を取りつつあるところですので、いまの段 階ではまとめてご説明する情報は持ち合わせておりません。 ○宮田委員 それはとても重要なので、まず調べていただきたいということが1点です。それか らNIHの仕組は皆さんご存じだと思いますけれども、もう一度さらにそれを資料として提出してい ただきたいと思います。なぜかというと、NIHの傘下に、各分野の研究機関がぶら下がってい る、あれは一本化された構造になっています。たぶん、この議論でいちばん重要なのは、一本 化するべきだという総合科学技術会議の指摘に対し、それぞれの分野別のナショナルセンター がファンディングエージェンシーになるにはどういうメリットがあるかということを議論しなければ いけないと思うのです。そういう意味で、追加で調べていただきたいと思います。 ○西島委員 具体的に追加させていただきます。私たちが始めた事業は29課題あります。現状 は、そのうちの11課題について、我々の研究所の者が主任になっております。残りについて は、その部分の半分がさらに分担研究者になっております。そういう中で利益相反を考えて、こ のFAをするというのは、研究所としては非常に難しいわけです。いままでのように、研究費が取 れなくなってしまう可能性が十分あります。その辺も問題点としてこれからは十分考えなければ いけない点と思います。 ○垣添部会長 先ほど宮田委員がご発言されたNIHは、下に27のセンターがあって、それをエ キストラミューラルとイントラミューラルという研究費の配分で整理していると。それを頭に置きな がら総合科学技術会議からは、厚生労働科学研究費もそのような一本化したFAに移行すべき である、という指摘をずっと受け続けているということだと思います。それにどのように応えていく かということに関しても、そういう資料が必要だと思いますので、是非しかるべき時期にご提出 いただければと思います。 ○笹月委員 NIHをモデルというのは、もちろん皆さんすぐ考えるのですけれども、ただ注意しな ければいけないのは、NIHが抱えている予算の額というのは、日本でいえば文科省が持ってい る生命科学の研究費とか、そういうものも全部含めたものを持っているわけです。だからこそイ ントラミューラムとエキストラミューラムを切り分けて、自分たちの研究所がきちんとやっていけ るだけのものを自分たちでまず確保することができるわけです。  その額を無視して、単にNIH方式がどうだということだと、またアメリカではの、ではの守になっ て、実態とは全くそぐわないことを導入しようとすることになると思いますので、その点も十分注 意しなければいけないと思います。 ○垣添部会長 これまた大変重要なご指摘だと思います。この問題は極めて重要ですので、た くさんご意見がおありかと思いますが、申し訳ありませんが時間の関係で先に進ませていただ きます。資料1-3の「戦略研究に対する今後の対応」についての説明をお願いいたします。 ○藤井厚生科学課長 資料1-3に基づいて説明をさせていただきます。戦略研究については、 先ほどご説明をいたしました平成17年に取りまとめられました、今後の中長期的な厚生労働科 学研究費の在り方についての中間報告を受けて、平成17年度から創設されたものです。いち ばん上にありますように、戦略研究とは行政ニーズに基づき設定した研究課題について、一般 公募して研究を実施するのではなく、あらかじめ求める成果と、そのための大筋の研究計画を 設定し、研究実施団体を通じ、それを実行する研究者を募っていくという大型の臨床研究という 位置づけになっております。研究期間が、通常の公募研究の場合は3年であるのが、この戦略 研究については5年という位置づけになっております。  下の図のところにありますように、平成17年度は糖尿病・自殺、平成18年度はがん・エイズ、 そして本年度からは腎疾患・感覚器というテーマで研究が実施されることになっております。こ れは平成17年度から創設した新しいスキームということもあり、2頁を見ますと、実際にやってい ただいている関係者からご意見をいただいております。そのいくつかを検討課題でお示ししてお ります。  最初が間接経費です。先ほどもご指摘がありましたけれども、間接経費が確保されていなか った。研究実施団体に、研究を実施する上で、各種の委員会を設置するようお願いしておりま したけれども、その委員会の役割分担というのが若干重複しているようなものもあるので、もう 少し委員会等を整理し、研究運営体制の効率化が図られてもいいのではないかというご指摘も ありました。  また、研究スキームの見直し、研究者選定の見直しの両方にかかることですけれども、研究 成果と、それに到達するための研究計画の骨子を示して、実際に研究を実施してもらっている わけです。実際のプロトコール、研究計画を作成するのにかなり時間を要しております。そし て、プロトコールを基に研究を始めても、その段階でいろいろ修正をする必要があるということも 出てきており、そのためにより時間を要するということがあります。そのため、研究者の選定方 式も含め、全体的な研究の流れを少し工夫したほうがいいのではないかというご意見等もいた だいております。  そういうことから、実際に戦略研究をやっていただいている研究者等の方からきちんと話を聞 くなどして、戦略研究の検証を行い、検討課題、そのほかにもあろうかと思いますが、そういうも のについてどのように対応していくかということの検討を進める必要があるのではないかと考え ております。  3のところですが、平成17年度から始まりました研究は、平成19年度というと中間年になって まいります。そうしますと、中間評価等をやる必要があるわけでありますが、その中間評価だけ ではなく、モニタリングでありますとか、評価をするための戦略研究企画調査専門委員会を設 置する、というご説明を前々回の部会だったと思いますがさせていただきました。  その際、委員会の位置づけを、当科学技術部会の下にするというご説明をさせていただきま したが、厚生労働科学研究費補助金のほかの研究事業では評価を担当するような、各種委員 会があり、それが、各々研究事業の担当課に所属していることから、この委員会についても科 学技術部会の下ではなく、窓口であります厚生科学課の下に位置づけたいということでご了解 をいただきたいと思っております。資料1-3の説明は以上です。 ○垣添部会長 何かご意見があるでしょうか。私から質問させていただきますが、1頁の下のこ れまでの経緯と研究テーマということで、平成17年から平成18年、平成19年と糖尿病・自殺、が ん・エイズ、腎疾患・感覚器という研究テーマの設定は厚生科学課でしているのですか。 ○藤井厚生科学課長 研究テーマの設定について、最終的には科学技術部会でご承認を得 るという形になっております。戦略研究自体ご説明いたしましたように、いちばん上にあるように 行政ニーズに基づいて設定した研究課題ということですので、省内の関係各課から、特に戦略 研究にふさわしい臨床研究について、どういうテーマがあるのかというのをまず内部的に洗い 出し、それを整理した上で最終的には科学技術部会でご承認を得るという形式をとっておりま す。 ○笹月委員 糖尿病が最初にスタートしたわけですが、糖尿病のプロトコールも、実際には戦 略研究ですから、前もって決められているのですが、先ほど課長からご説明がありましたよう に、実際にスタートしてみるといろいろな問題が出てきて、本当にスタートするためには1年近く の変更とか検討という期間を必要としました。  その経験を踏まえて、次のものはそういう必要がないようにきちんとプランされたのかどうか、 というのが一つ問題になります。やはり、スタートする前の半年とか1年間というのは、実際にそ れをやっている専門家をたくさん集め、十分検討する。もちろん内部の検討会というのはあるわ けでしょうし、あるいは先行した糖尿病などの研究者を呼んで、その問題点を十分指摘してもら い、それを活かす。糖尿病でのスタートをレッスンとして、それに学ぶという企画といいますか、 検討会、検討班みたいなことがあってしかるべきではないかと思うのですがいかがでしょうか。 ○藤井厚生科学課長 実際にこれをマネジメントしていただきました、資料1-3の下の図でいい ますと、中ほどのところに「戦略的アウトカム研究策定に関する研究」班というのがあります。そ の中で、いままでご指摘されたような、研究を実際にやっていただいている上で問題点が出て きたようなことを、ある程度取りまとめられたりしております。そういうことも含め、改めて現在戦 略研究を実施している所にヒアリング等をして、問題点を検証した上で、それに対応すべく改善 方策をご検討いただきたいと考えております。 ○宮田委員 戦略研究で5年間、しかも国家目標を遂行するというところがポイントになります。 科学研究には不確実性があるので、それとの相反をどう考えるかを考えたほうがいいです。  たぶん、このような大きな研究をなさるときには、糖尿病のケーススタディがすごく良かったと 思うのですけれども、何本かの政策研究を走らせておいて、最初の1年とか2年がアイドリング ステージで、そのステージを突破したものに対して、5年間かなりの額を出すというようなフェー ズに分けた審査とマネジメントをすべきだと思いますが、いかがでしょうか。 ○藤井厚生科学課長 宮田委員からご指摘のあった、まさしくそのことについても先ほど申し 上げました、アウトカム研究班で議論がされて指摘をされております。私どもも実態を見まして、 そういう段階的な絞り込みが必要ではないかということを、事務局的には考えておりますので、 もう少し幅広く戦略研究をやっていただいているところの問題点を整理した上で、それも含めて 総合的に改善方策を事務局案としてご検討いただきたいと思っています。 ○垣添部会長 省庁の大型の研究費も、だんだんとそんな傾向が出てきていますね。例えば 10本ぐらいで走り出して、最終的に3本ぐらいに絞り込んでいくとか。よろしいでしょうか。では資 料1-4「第37回厚生科学審議会科学技術部会における議論の概要」についてお願いいたしま す。 ○藤井厚生科学課長 それでは資料1-4に基づいて説明させていただきます。この資料は、前 回の科学技術部会におきまして、総合科学技術会議から宿題になっておりました1〜4までの 事項について事務局から説明をし、いくつかのご意見をいただきましたので、それを整理したも のですが、改めて簡単に説明させていただきます。1の研究事業枠組みの整理・再構築につい ては、非常に細切れで統一性がないという指摘に対しまして、今後は先端医療などの厚生科 学基盤、疾病・障害対策、健康安全確保、この3つの分野に研究事業を大別して、細分化と捉 えられないように、総合科学技術会議へ向けて説明したいと説明いたしました。委員のほうから は、各部局の連携を図り、組織的な対応を検討すべきである。行政的な評価にも配慮するよう にすべきであるというご意見をいただきました。  2の研究費の執行の早期化についてですが、これはいろいろな取組を重ねながら、徐々にで はありますが、早期化の実効が上がってきているという説明をいたしました。  3の間接経費の拡充につきましては、先ほど末松委員からもご指摘がありましたが、事務局 説明のところにあるように、すべての機関に30%の間接経費を充当しろという指摘があって、そ れに対応しようとすると、あと64億円の研究費が必要になってくるという説明をしました。それに 対しまして委員のほうからは、直接研究費に影響を及ぼさないような形で予算の確保に努める べきだという意見をいただきました。  4の研究費の不正防止についてですが、最近の厚生労働科学研究費補助金絡みの不正に ついての捜査当局の捜査結果を踏まえまして、また、総合科学技術会議から昨年8月に出され た共通指針も合わせて、総合的な不正防止対策を検討していきたいという説明をいたしまし た。1-4については以上です。 ○垣添部会長 第37回の部会において議論された内容を事務局で整理していただきました が、何か発言はありますか。末松委員の最初のご指摘に対しては、要するに非常に困難であ るという回答のように思いますが、なかなか厳しい情勢です。 ○末松委員 先ほども言いましたが、臨床研究等の受け入れを行う大学や研究機関等では、 厚労省の研究に限らず、文科省の生命科学系の研究や経産省のライフサイエンス等の研究す べてに関わるところで、メディカルエシックスの整備に研究費全体の何パーセントを厚労省のイ ニシアチブで使っていこうとか、拡充していこうとか前向きな姿勢があってもいいのではないかと 思うのです。予算枠を増やさずにこれをやるのはなかなか大変なのは分かるのですが、その辺 はいかがでしょうか。 ○藤井厚生科学課長 間接経費については、私どもも十分必要性というものを認識しておりま す。いろいろな厳しい情勢の中ではありますが、できるだけ間接経費を確保するよう努力をして まいりたいと思っております。 ○笹月委員 先ほどもちょっと議論がありましたが、最終的に2で「FA(Funding Agency)化したこ とにより、早期執行において顕著な改善が見られた」とポジティブな評価をしていますが、それ は先ほどの総合科学技術会議からの指摘のような、何か単一の機関にすべきだという指摘と は違って、厚労省の方針としては複数の各研究機関にやらせようということなのでしょうか。あ るいは、まだそういった決定はしていないのか、その辺をお聞かせいただければと思います。 ○藤井厚生科学課長 最終的に総合科学技術会議からどういう理由を付して、どういう中身の ものが出てくるかというのは、今のところ判明しておりませんで、それを踏まえてでないと、どう いう方向に持っていくのかということが難しい状況にはございます。いろいろな情報が整った段 階で、事務局の資料を揃えた上で、科学技術部会でも引き続きこの件についてご議論をいただ きたいと思います。 ○宮田委員 くどいようですけれども、間接経費、これはかなり重要だと私は思っています。特 に、日本の各省庁の政策を見ると、論理的整合性がない政策が行われることがあるのですけ れども、これは是非やってほしい。それはなぜかというと、ナショナルセンターを独立行政法人 化しようとしていらっしゃるわけです。彼らが研究費を確保して、彼ら自身の運営費をまかなうた めの1つの重要な財源として厚生労働科学研究費があるので、そこに間接経費が付いてこない となると、論理的にも全く整合性がない。そういう意味では、ナショナルセンターを独立行政法 人にするならば、すべての厚生労働科学研究費に間接経費を付けるべきだと私は思います。 ○西島委員 FAのことなのです。先ほど経済的な点での問題点がありました。実際にやってみ ましてPOを選ぶわけですが、そのときにPOというのはすごく大事で、専門性に通じていなけれ ばいけないわけです。そういうことで今我々が苦慮しておりますのは、利益相反ということを考 えて、その分野から外れた人を選んだわけです。ある程度分野が近いわけですが、必ずしも十 分専門性に通じているということはないわけです。そういうことで、こういったFAを作るときに、 PDあるいはPOの人材確保ということが非常に重要です。そういうことを考えると、お金以上にも っと重要、あるいは問題になると思っておりますので、その点もこれから考えていかなくてはい けないと思います。 ○垣添部会長 ご指摘のとおりだと思います。 ○木下委員 ただいまの議論は、与えられた研究費等の枠の分配の話になっていると思うので す。間接経費が極めて重要であるとかという話も、末松委員のお話もそうでした。科学研究ある いは教育に関して、これから知的立国を目指す我が国にとって、基本的に、そういったことを削 るというのは全く相反する施策だと思うのです。我々医師会としても、医療費そのものに関して は、医師のためというより、国民にとって、医療費がこれだけ削減されていくと、もはや成り立た なくなるという視点で見ているわけです。文科省も厚労省もそうですが、研究費や教育費が GDPに比較してどのくらいの割合を占めているかというようなことをやってみますと、減っている のです。医療費に関してはGDP比で、たしか8%ぐらいだったと思いますが、それは全国一般の 中では18位ぐらいと非常に低い。しかも、経済はどんどん進んでいる中で、なおかつ減らすとい うのはどういう発想なのかというような基本的な問題があります。いま議論されているのは皆、 非常に限られた枠の中でどう分配するかという話にすぎないのです。ナショナルセンターが今 度独立行政法人になるということも含めて、研究などというのは大きな枠を与えなければ始まら ないということがあるのです。そういうことから、ここでの議論ではないかもしれませんが、厚労 省の基本的な考え方として、これはもう大きな予算を取ってくるのだと。抜本的に、小さなことを 考えないで大きな視点から考えていただきたい。これは是非お願いしたいと思うのです。我々 全体としても、こういった研究に関してはもう少し真剣に、基本的なこととして予算を取ってくる のだということを是非考えていただきたいと思いますので一言発言いたしました。 ○垣添部会長 ありがとうございました。大変力強い発言だと思います。 ○笹月委員 ナショナルセンターに対する応援を二人の委員からいただいて大変ありがたいと 思うのですが、抜本的なことを考えるとすれば、一つには研究費の絶対的な増額ということが あると思いますし、もう一つは組織化です。いわゆる基盤的な研究であるので厚労省はサポー トしないというような評価がしばしば聞かれるのですが、そこで出た成果を本当に患者に届くプ ロダクトにするための組織、それを私はプラットフォームと称しているのですが、そういう組織づ くりを厚労省に是非お願いしたいと思います。出た成果がなかなか患者に届かないのは、研究 者が悪いのではなくて、組織化がされていないということだと思いますので、研究費の増額、そ れから組織をきちんと作る、この2つを是非お願いしたいと思います。 ○福井委員 議論が噛み合わなければ申し訳ないのですが、厚生労働科学研究の申請書で も何年か前からパーセント・フルタイム・イクイバレント、つまり働いている時間の何パーセントを 研究に使いますよという枠が設けられていますが、質問が二つあります。一つは、本当にその 時間が費やされて研究が行われているかどうかについて、調べているのでしょうか。もう一つ は、パーセント・フルタイム・イクイバレントはかなり表面的なものであって、実はエクストラの時 間を自分で取らないとだめで、組織の中では、昼間正々堂々と、例えば水曜日の午後3時間と か5時間この研究のために使いますということが、組織全体でアプルーブされているような所は ほとんどないように思っているのですが、いかがでしょうか。つまり、正々堂々と昼間の時間をこ の研究のために使うというような環境整備をされないと、自分の睡眠時間を削ってでないと研 究できないという、アメリカとは全然違った状況が今後とも続くのではないかと心配しています。 ○垣添部会長 決して議論が外れるわけではないのです。パーセント・フルタイム・イクイバレン トを記載するように求められていますが、現実とかなりかけ離れているのではないかというご指 摘かと思います。これは事務局にお尋ねするのは難しいかもしれませんが、何か今の時点でお 答えはありますか。 ○藤井厚生科学課長 確かに私どもとして各研究事業の評価委員会でその数字を拝見して、 評価の一つの材料として使われているということは事実としてあります。ただ、それが本当に実 態を表しているものなのか、そして、研究をしていただいた結果、その数字になっているのかと いう検証したことはない。厚生労働科学研究費補助金というもの全体を統一的に調べたこと は、いまのところはございません。それから、研究について、自分の勤務時間と勤務時間外、そ の関係については厚生労働省から、厚生労働省の研究だから勤務時間内にやっていただいて いいですとは言いづらい面がありますので、どうしても、それは各々の研究者の方が所属する 機関がどのように判断するかということで今は進んできているのではないかと思っております。 ○垣添部会長 NIHのファンディング機能を取り入れてくるとか、パーセント・フルタイム・イクイ バレントも外国の考え方だと思いますが、形式だけが取り入れられていて実態が必ずしもそぐ わないということをご指摘なのではないかと思います。かなり根の深い問題ですので、今日のと ころはこれで終わらせていただきます。先に進みまして議事の2「その他」。まず、厚生労働科学 研究における利益相反に関する検討委員会の設置についてお願いいたします。 ○藤井厚生科学課長 資料2-1をご覧ください。前回の科学技術部会におきまして、いわゆる 利益相反に関する委員会の設置についてご承諾をいただきました。それを受けまして、当部会 の垣添部会長とも相談をして委員会を設置しましたのでご報告をさせていただきます。  1.の設置目的ですが、厚生労働科学研究費の信頼性を確保するため、企業との関わりに対 する対応を検討するための検討委員会を設置するということです。  2.の検討事項です。研究者の外部資金の実態、文科省、海外での状況、各機関での現実の 対応を踏まえて検討していきたいと考えております。  3.の委員会の位置づけにつきましては、前回ご了承いただいたとおり、当部会の下に設置す るとしております。  4.の委員会の構成(2頁)ですが、委員長については、垣添部会長とも相談して、当部会の委 員である笹月委員にお願いしております。そのほか当部会からは、木下委員、末松委員、福井 委員、宮田委員、望月委員にご参画をお願いしているところです。  1頁の4.の委員会の構成のなお書きのところでは、必要に応じて別の方に来ていただくことが できるようになっております。  5.の委員会の取扱いについては、会議は原則公開するということです。現在、最終的に委員 の方々の日程調整をしておりまして、6月には実施したいと考えております。 ○垣添部会長 ありがとうございました。前回ご了解いただいた方針に沿って検討会を立ち上 げるということです。笹月先生以下、この中の委員の何人かの先生にもご苦労いただくことにな るかと思いますが、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ○笹月委員 最近の委員の構成は両性からというようなことが言われますが、今回は男性だけ です。ここの部会で、一応そのことも意識はしたが「これでよろしい」ぐらいのアプルーバルをも らっておいたほうが、後で何か言われたときによいと思いますが宜しいでしょうか。 ○北村委員 これは厚生科学課の会議ですので研究に限っているのかもしれませんが、厚生 労働省がやっておられるいろいろな委員会には、審議会も含めて、例えば医薬食品局には企 業との関連の深いたくさんの委員会があります。そこの委員あるいは委員長等々は、利益相反 において発言をやめる。医薬食品局のほうでも、500万円以上の資金をもらっている人はどうこ うするというような書類も一方で出てきていまして、厚生労働省全体として、この問題はどこまで 整合してやっておられるのかをお聞きしたいのです。すでに健康局のほうでも、利益相反の申 告といいますか、書類を出すことが始まっていますし、医薬食品局のほうでも、500万円という収 入がある企業からあったというように、金額までが明示されてきています。ですので、厚生科学 課における研究の利益相反においても、他と整合のできる形で是非お願いしたいと思うので す。 ○垣添部会長 大事なポイントだと思いますが、何かお答えになりますか。 ○藤井厚生科学課長 北村委員からご指摘がありましたように、今回の委員会は、あくまでも 研究費をもらっている方と、場合によっては関係するであろう企業との利害の衝突に関して何ら かのルールの整理が必要ではないかという観点からお願いするものです。したがいまして、各 種の審議会等の委員が企業等と利益相反の関係にあるかどうか、そのルールづくりというのは 視野に入れておりません。これはご理解をいただきたいと思います。  一方、ご指摘がありましたように、審議会等の委員についての利益相反の考え方を、まずは 医薬食品局が所管する審議会で年末までに整理をするということですから、もし何らかの関係 が出てくるようなことがありましたら、そこはきちんと整合性というものは執っていただくように検 討をお願いする必要があろうかと思います。 ○垣添部会長 いま最後におっしゃったような情報は、適宜科学技術部会でも流していただけ ればと思います。よろしくお願いします。 ○宮田委員 ちょっと頭を整理させてください。これは今おっしゃったような外部資金を入れたと きの利益相反である。しかし、ここはFAでさっきからずっと問題になっていた、あの利益相反に ついて議論する場ではないのですか。 ○藤井厚生科学課長 FAの内部の話については、事務局では想定しておりませんでした。別 途FAについてもいろいろとご議論をこの科学技術部会で続けていただこうと思っております。こ の研究費の議論も関係が出てこようかと思いますが、これは外部資金についての利益相反に 限っていただいたほうが整理がよりクリアかと思っております。 ○垣添部会長 では、よろしくお願い申し上げます。その他の2番目「新健康フロンティア戦略」 についてお願いいたします。 ○藤井厚生科学課長 資料2-2をご覧ください。昨年9月の安倍総理の所信表明演説の中で 「新健康フロンティア戦略の策定」が盛り込まれました。それを受けまして、内閣官房長官主宰 の賢人会議において議論が昨年の11月から開始されました。その賢人会議の下に4つの分科 会が設けられ、その分科会での議論を踏まえて、最終的には今年の4月18日に戦略が取りまと められました。この賢人会議のメンバーにつきましては、資料2-2の3頁、黒川清内閣特別顧問 を座長として、以下7名の方、総勢8名のメンバーで検討がなされました。  趣旨は1頁の二つ目の枠の中に書いてあります。健康寿命の延伸に向け、予防を重視した健 康づくりを国民運動として展開するとともに、家族の役割、地域コミュニティの強化、技術のイノ ベーションを通じて、病気の方、障害者、お年寄りの方も能力を活用して充実した人生を送るこ とができるよう支援し、健康国家の創設に向けて挑戦をしていくということです。期間は今年度 から10年間となっています。  内容につきましては、その真ん中の樹の絵をご覧ください。健康に直接関与することとして 「女性の健康力」「子どもの健康力」等9つの柱建てになっております。そして、それを支える基 盤という形で「人間活動領域拡張力」以下3つの柱建てになっています。「人間活動領域拡張 力」というのは耳慣れない言葉かと思いますが、医療機器や福祉機器、再生医学等々を応用し て人の活動を支えていこうという考え方に立っているものです。  その主な内容は2頁目に柱ごとに整理しておりますが、これらはすべて「○○力」という形で統 一して整理されております。趣旨でも説明しましたように、国民運動の展開を重視していること から、積極的な広報が謳われております。その一つとして、社会的影響力のある方を「健康大 使」に任命して国民運動の展開をする必要があるのではないかという中身になっております。  また、二つ目の○でこの賢人会議の提言を受けまして、政府としてアクションプランを策定し、 それに基づいて施策の実施を図ることになっております。  最後の○ですが、進捗状況を管理するため、ここでは指標を細かくは示してありませんが、報 告書の中で指標の例が示されております。そういう指標を見ながら進捗状況を管理していく必 要があるというご提言がございます。「新健康フロンティア戦略」については以上です。 ○垣添部会長 こういうプロジェクトが動いているというご報告ですが、よろしいでしょうか。では 続いて資料2-3「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略の概要」についてお願いし ます。 ○武田経済課長 資料2-3と資料2-4で「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」 の説明をいたします。資料2-4が本文で、資料2-3が概要ですので、資料2-3に沿ってご説明を 申し上げます。この「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」ですが、先ほど「新健 康フロンティア」の説明にもありましたように、現内閣の下でイノベーション、それから、こういっ た健康関連の技術の向上というのが1つのテーマになっております。総理の所信表明演説の中 でも、イノベーションの重視、その中でトップに挙げられたのが医薬の分野でした。先週「イノベ ーション25」がまとめられた中でも、医薬品の開発というものが一つのテーマとして挙げられたと ころです。  一方で経済成長戦略というものが取りまとめられておりまして、国際競争力強化のための重 点的な分野として医薬品・医療機器分野が挙げられています。我が厚生労働省といたしまし て、こういった動きを受け、医薬品・医療機器のため川上から川下に至るまでの一貫した戦略 を5か年戦略としてまとめたものがこの戦略です。  これは文部省、厚生労働省、経済産業省、三省連携の形になっていること。また、医薬品・医 療機器の開発は基礎研究から最終的な製品化まで、どこかの段階がつまずきますと製品開発 がストップするということで、終始一貫した政策を打ち出すということを今回の眼目にしておりま す。  目的として二つ。世界最高水準の医薬品・医療機器を国民に提供する。現在、特に医薬品に つきまして、ドラッグラグと言われているような、日本国内への導入に時間がかかっているという 指摘があり、こういったところを解消していきたい。それから「医薬品・医療機器産業を日本の 成長牽引役に」と書いてありますが、経済成長戦略の中で重点分野として取り組んでいきたい ということです。  以下(1)〜(7)まで柱を立てていますが、(1)が薬や機器のシーズの発見にかかるものです。研 究資金の集中投入というところで、政府の持っているライフサイエンス関連予算の中でも、医薬 品・医療機器関連予算について重点化し、さらに拡充を図っていくという方針です。  それから、産官学により、重点開発領域についての調整組織を設置するという点、民間にお ける取組促進のための研究開発税制の充実・強化について検討するといった点が盛り込まれ ております。  欧米に比べまして日本はベンチャーの果たす役割が現時点ではまだ小さいというようなご指 摘もありましたので、資金的な面や機材の面、特に薬事に詳しい人材、その他人材面でベンチ ャー育成の柱を立てているところです。  (3)の臨床研究・治験環境の整備ですが、世界的には国際共同治験というのが非常に進めら れている中で、我が国はまだまだ国際共同治験の中に組み込まれていないという実態を踏ま えまして、国際共同治験の推進を大きなテーマとして位置づけております。  さらに、国立高度専門医療センターを中心に、「医療クラスター」という形で産官学の連携体 制を整えたいということが書かれております。それから、文部科学省においても橋渡し研究拠 点といった拠点整備をしていくということが併せて書かれております。  さらに、研究開発を進めていくためには人材の育成が大変重要であるということで、文部科学 省におきましても人材の育成・確保、医師にとどまらず、臨床試験に関係するさまざまな人材の 育成ということを掲げてあります。  それから、我が国において、基礎研究に比べて臨床研究が評価されにくいというご指摘があ りましたが、臨床業績評価を向上させるための取組という項目も一つ入っています。  (4)ではアジアとの連携ということで、東アジアとのデータ活用方法の共同研究なども挙げられ ています。  (5)が審査で、審査の迅速化・質の向上。特に、審査人員を3年間で236名増員ということで、 飛躍的に倍増して迅速化を図ってまいりたいということを挙げております。  また、医療機器についても同様に審査の迅速化を図っていくことを考えております。  (6)にイノベーションの適切な評価と書いてあります。審査が終わるといよいよ発売ということに なりますが、我が国の国民皆保険制度の下では、医療保険制度の下で一体どういう価格がつ くかということは非常に影響が大きいので、革新的製品にはより適切な評価がなされることにつ いて検討を進めることを考えております。  そして(7)として、以上の(1)〜(6)までの諸点につきまして、官民対話を通じて実施を図っていく ことを想定しております。なお、この5か年戦略は三省連携ですので、どこの省庁が主にこれを やるのか、そして、いつまでに実施するのかといったことを明らかにするという方向で、本文の2 〜3頁に、ロードマップということでお示ししています。こういった5か年戦略をまとめましたので、 今後この計画に沿って施策を進めてまいりたいと考えております。 ○垣添部会長 三省庁合同によるロードマップに沿った5か年計画をご説明いただきましたが、 何かご発言はありますか。 ○竹中委員 この業界に身を置く者として、ありがたいことをしていただき、御礼を申し上げま す。  私が申し上げたいのは、ベンチャー企業の育成の中で、研究資金の拡充の件についてです。 バイオベンチャーといいますか、医薬品関係のベンチャーというのは、ITなどに比べて投資・研 究費が多い。少なくとも、スタート時点で10倍ぐらい必要だろうと思われます。ちょっとした企業 価値を出すまでにもITに比べて時間がかかるという、そこに大きな差があるということが特徴の 企業です。ところが、この研究資金の拡充については経済産業省のご担当のように見られるわ けですが、この辺を是非経済産業省にもご理解いただけるように、私たちも働きかけますが、 厚生労働省からもお話をしていただけたらと、このようにお願いを申し上げます。 ○垣添部会長 大事なポイントだと思いますが、何かお答えはありますか。 ○武田経済課長 経済産業省には一般的なベンチャー支援ファンドがございますが、私どもの 関係でいいますと、医薬基盤研究所の支援事業がございます。ただ、国の用意するお金でそ のベンチャーが必要な金額すべてを手当するわけにはまいりませんので、できましたら、国の 資金を有効に活用して、民間資金の呼び水になるような支援ができないのか、その点で今後知 恵を出さなければいけないと考えております。ベンチャーファンドは一時期大変盛り上がったの ですが、最近は特に医薬品・医療機器の分野は冷え込んでいるというような話も聞きます。こ の5か年戦略を出すこと自体も、そういう呼び水効果も期待しているところですが、個々の施策 に当たっても、なるべく厚生労働省として、この分野に力を入れているのだということをはっきり させて、資金の呼び水につながるような形を研究してまいりたいと思います。 ○宮田委員 いまご指摘なさったように、ベンチャーキャピタルのファンドは日本では非常に冷 え込んでいますけれども、ヨーロッパとアメリカでは、実はファンドが戻ってきています。ですか ら、そのような状況を放置しておくと、ますます日本は先端技術、特に医療、医薬の分野で遅れ てしまうという認識を是非持っていただきたいと思います。喫緊の課題です。  もう一つ質問があります。(1)の研究資金の集中投入の中で、官民対話のもとに調整組織を作 ると書いてあります。ここで産学官の中で重点分野を議論なさるのだと思いますが、それが最 終的に厚生労働省の研究開発の戦略的な目標設定に還流されるような仕組みというのは是 非設けていただきたいと思うのです。つまり、国が勝手に決めるのではなくて、国民とか、業界 とか、患者さんとか、そういうところと話し合った上で国の戦略目標を決める仕組みを作ってい ただきたい。そのための組織になるのではないかと大いに期待していますので、どのようなもの か教えていただきたいのです、イメージだけだと思いますが。 ○武田経済課長 ご指摘のように、説明の中には含めておりませんでしたが、官民対話のもと に設置をしたいと考えております。(7)の官民対話の場は、産官学のトップで集まろうということ で、私どもも大臣が出席する。産業界も代表する企業のトップの方に出ていただいております。 しかし、そこであまり細かい議論までできませんので、その下に各省庁、また産業界、それから 関係の実際の先生方に入っていただいて十分意識調整をして、それを官民対話の場にフィード バックする、こういう形でご指摘のような良いサイクルが作れればと思っております。あるいは、 その方向で頑張りたいと思います。 ○宮村委員 (3)の臨床研究・治験環境の整備のトップに国際共同治験の推進という非常に大 きなテーマが入っています。次頁以降のロードマップを見ますと、それが抜けていて、逆に再生 医療のための拠点整備と書いてありますが、ここの整合性はどうなっていますか。 ○武田経済課長 大変大事なポイントをご指摘いただいたと思います。ほかの項目では一つ一 つ個々の施策が書いてありますが、「国際共同治験の推進」と最初に書きましたのは、大きな 考え方として、我が国の製薬産業、それから医療機器産業の今後の展開も、国際共同治験の 推進抜きには語れないものがあるだろうということで、関係施策全体的に国際共同治験の推進 ということを方針として明らかにする。個々の政策はどこにつながるかですが、一つは治験の拠 点です。国際共同治験が欧米からスタートしてアジアの各国に広がってきておりますが、いず れも、アジア各国におきましては、大きな臨床拠点を作りまして、しかも国際的なGCPの基準で 治験ができる。しかも、英語でそのままできるという展開が進んでおります。我が国としても、そ ういうことをにらみながら、世界的に伍していけるような治験の拠点を作らなければならないだ ろうと。それが医療クラスターの整備であり、橋渡し研究拠点の整備であり、再生医療拠点の 整備であると考えております。  もう一つの課題は、審査体制の問題です。国際共同治験に対応できる審査体制といいます か、国際的な水準で、しかも国際的なスピードで各企業の相談に応じられる体制が大事だと思 います。また、国際共同治験をするに当たって、各国別にどれくらいの症例数を集めるかという ガイドラインがないと、企業がこれにチャレンジできない。そういうことで、(5)にあるガイダンスの 作成、優先的治験相談の実施、日米欧の間の審査当局の連携といったものが審査側の対応 です。そういうことを総合的にやっていかないと、世界の流れに乗り遅れる。  併せて官民対話の実施ということもありますので、私といたしましては、国のほうも体制を整え ますので、民間のほうも積極的に国際共同治験に取り組んでいただきたいということを併せて お願いしたいと思っております。 ○福井委員 「臨床研究・治験環境の整備」の中の下から二つ目、医師等の臨床業績評価を 向上させるための取組がロードマップではどれに対応するのか分からないということが一つ。も う一つは、これは素晴らしいプロジェクトだと思うのですが、どれくらいの予算を考えているのか 伺いたいのです。 ○武田経済課長 臨床業績評価を向上させるための取組として、一つは資料2-4の10頁目(7) 関連する人材の育成・確保の中の三つ目に、医師の臨床業績の評価を向上させる取組を行う とあります。文部科学省と相談をしておりますのは、そもそも臨床研究に係る論文掲載数が非 常に少ないということがありますので、基礎研究に比べて一定の目標を掲げることができない のかどうか、それから、臨床研究の質の向上に資する評価基準の目標設定ができないかどう か、今後両省で検討していきたいと思っております。  それから下から二つ目の・で、今後公的研究費で行われる臨床研究を採択する際には、研究 者の臨床研究実績を評価基準に入れて、そういった面でも臨床研究実績を評価するという流 れを作っていけないか、そういうことが当面この計画の中では書かれています。  関連予算につきましては、三省合わせて頑張って今後予算要求をしようということで、関係す る財政当局からは、一定の方向について、こういう戦略を出すこと自体についてご理解はいた だいた上で発表したものですが、具体的にはこれからです。よくあるのは、研究の重要性は分 かったが、各省庁の枠の中で要求しろと。こうなると思い切って予算が作れませんので、少しで も重点化ができるように我々も頑張りたいと思っています。 ○垣添部会長 最後は「日中韓三国保健大臣会合」についてお願いします。 ○井上国際協力室長 4月8日にソウルにおいて開催されました第1回日中韓三国の保健大臣 会合に関して、資料2-5に沿ってご報告いたします。まず会議の概要ですが、4月8日、ソウルに おいて第1回の三国保健大臣会合が開催され、三国とも保健担当大臣が出席しております。日 本からは柳澤大臣が出席でした。  1の(2)ですが、本会議において、「日中韓新型インフルエンザへの共同対応に関する覚書」 に署名するとともに、「共同声明」が発表されたということです。  2の議論の概要について簡単に説明いたします。2の(1)ですが、まず主題となったのは新型 インフルエンザ対策で、新型インフルエンザ対策に対しては三大臣が覚書に署名し、今後イン フルエンザ対策のいくつかの分野において、三国が協調して対応していくことを合意いたしまし た。  2の(2)、インフルエンザ以外の分野として我が国から、三国共同で協力を進める分野として、 臨床研究及び健康危機管理を提言し、中国、韓国より賛同を得、今後とも、この二つの分野、 「臨床研究」と「健康危機管理」に関しても三国で協調して取り組んでいくという合意がなされま した。  2の(3)、さらにインフルエンザ対策については三国が等分の拠出をして基金を設置する。そし てWHOと連携を図りつつ、インフルエンザ対策に資金面でも協力していくということに賛同いた しました。  (4)は今後についてです。今回第1回として開催された三国保健大臣会合は、今後定期的に 開催することで合意しました。来年はオリンピック後の北京にて開催し、再来年は日本において 開催という予定です。  3番目ですが、日中韓三国保健大臣会合に先立って日中、日韓、それぞれの二国間会談も 開催しております。まずは日韓ですが、3の(1)として、インフルエンザの重要性についてお互い の認識を共通させるとともに、3の(2)、韓国側からの提案として、高齢者に優しい産業振興と いう分野において二国間で協力をしたいという提案がなされ、我が国としても同意したというと ころです。  4番目は日本と中国、二国間の会談です。4の(1)で、インフルエンザの重要性について認識 を共有するとともに、4の(2)ですが、特に日中においてはがん対策において今後協力を進めて いく、官民合同のミッションを今後派遣するという予定に関して合意をしたというところです。  5番目は今回の意義です。日中韓、三国の保健大臣が一堂に会したのは初めて、日中韓の 大臣会合は初めてというところが意義です。これまでも世界の中では、特に感染症をはじめとし て国境を超える健康問題が増えてまいりました。各地域での保健大臣会合はいくつかございま す。ASEAN、APEC、EU、G8、南北アメリカ、いろいろな所でございますが、日中韓というものは 今までなく、今回初めて行われたというのが第1の意義です。この中でも、特に喫緊の課題であ るインフルエンザ対策については三国が協調して取り組むということで、具体的なプランも定ま ったというのが今次会合の意義です。以上ご報告でした。 ○垣添部会長 日中韓三国の保健大臣会合の報告をいただきましたが、何かご質問はおあり でしょうか。 ○末松委員 この資料の取組で伺いたいことが一つあります。これは文科省関係の感染症の グラントの審査を私がPOとして担当したときに出たことなのですが、例えばインフルエンザなど で、渡り鳥だと環境省、港湾のチェックだと国土交通省、学校から情報を集めようとすると文科 省、ITで結ぶとなると総務省だというのです。国の間の連携はいいと思うのですが、国内で厚労 省がイニシアティブをとってそういう情報をリアルタイムに統合して集めるといった取組は省庁 間でどのぐらいやっているのか。問題になったのは2、3年前の審査のときにそういうことを総合 科学技術会議に上げていこうということで、POの仲間で意見書みたいなものを出してやった覚 えがあるのですが、今現在はどのような取組をしているのでしょうか。なかなか難しいだろうとは 思うのですが、いかがでしょうか。 ○井上国際協力室長 ご質問ありがとうございました。今現在の対応といたしましては、今般結 ばれましたInternational Health Regulation(国際保健規則)という法的に拘束力を持つ規則に 基づきまして、厚生労働省が窓口となり、特にいまご質問がありました国際感染症に関しては、 各省庁がそれぞれ持っている法律をすべて整理したところです。具体的に申し上げますと、こ の国際保健規則は2007年6月15日から発効いたします。したがいまして、6月15日の時点で、 日本政府としては、国際感染症に関して他国に影響を及ぼすような状況に関しましては、法的 に整理をし、担当省庁、この場合は厚生労働省ですが、すべてを把握するということが義務とし て世界的に求められているという形です。現在私どものほうで特に、感染症を中心として世界 の健康に危機を及ぼすような状況が発生した場合に、どの省庁がどういう法律でどういう対応 するか、いまご質問になったようなことはすべて把握し、統一のとれた対応ができるという体制 をいま構築しているところです。 ○結核感染症課 いまの国際協力室からの説明に加えまして一点追加いたします。研究レベ ルにおいては、総合科学技術会議の協力の下で、連携施策群の研究課題の一つとして、国立 感染症研究所の元所長の倉田ドクターをトップとして、各省庁の連携を図っております。 ○西山技術総括審議官 いま末松先生が話された核心部分について追加しますと、実は、私 どもの省からは健康局長と私と食品安全部長、三人が入った鳥インフルエンザについての内 閣官房長官主宰の会議があります。その場で、例えば共同訓練をやったり、各省の各種レギュ レーションについてチェックが入ります。主宰は内閣官房ですから、鳥インフルエンザに関して は頻繁にそれが開かれ、密度は高くなっていまして、いろいろな情報もまた、そこから各省庁に 来るという状況です。 ○垣添部会長 大変よい形で進んでいるということであろうと思います。予定された時間がまい りましたし、すべての議事が終了いたしました。事務局から何かお諮りいただくことはあります か。 ○坂本研究企画官 次回の開催については既に日程調整をさせていただいておりますが、6月 25日(月)15時から17時で開催を予定しております。正式なご案内は、詳細が決まり次第後日 送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。 ○垣添部会長 これで第38回厚生科学審議会科学技術部会を終了させていただきます。皆様 方、どうもありがとうございました。  ―了―    【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -