07/04/23 第25回臓器移植委員会議事録について 第25回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会 議事録                           平成19年4月23日(月) 三田共用会議所大会議室 〇矢野補佐  定刻になりましたので第25回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催い たします。本日は木下委員、藤村委員、町野委員、山本委員から御欠席との連絡を受け ております。  資料の確認をさせていただきます。  資料1 臓器の移植に関する法律違反事件について  資料2 病腎移植に係る調査等の状況について  資料3 病腎移植に関する学会声明について  資料4 臓器の移植に関する法律の運用に関する指針に規定する事項(案)等につい て  資料5 移植施設(レシピエント)への意思確認時期について  資料6 「臓器移植に関する世論調査」の要旨  資料7 臓器提供意思登録システムについて  座席表については先ほど差しかえ版をお配りさせていただきました。  参考資料1 臓器の移植に関する法律  参考資料2 「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針  参考資料3 日本移植学会倫理指針・生体腎移植の提供に関する補遺  参考資料4 患者から摘出された腎臓の移植に関する調査班報告書  参考資料5 病気腎移植に係る調査委員会報告書(香川労災病院資料)  参考資料6 市立宇和島病院で実施された病腎移植における生存率・生着率等につい て  参考資料7 臨床研究に関する倫理指針  参考資料8 レシピエント選択と移植実施施設への情報提供のタイミングに関する要 望        (臓器移植連絡協議会資料)  参考資料9 脳死下臓器提供に関する要望(日本救急医学会要望)  以上でございます。途中、不備等がございましたら事務局までお伝えください。  では、議事の進行を永井委員長にお願いします。 〇永井委員長  本日は「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針に規定する事項」について御議 論をいただくほか、報告事項が3件ございます。  早速、議事に入ります。よろしいでしょうか。  初めに、臓器の移植に関する法律の運用に関する指針に規定する事項について御議論 をいただきます。この件につきましては、昨年10月の臓器移植法違反事件を受けまして、 第23回・第24回の臓器移植委員会で臓器移植法の運用指針改訂に向けて御議論をいた だきました。また、前回の委員会で病腎移植についての報告がございましたが、その後、 関係施設、関係学会で調査が行われております。それでは、臓器移植法違反事件につき まして、昨年12月に判決が出されておりますので、事務局から御報告をお願いします。 〇矢野補佐  資料1をごらんください。「臓器の移植に関する法律違反事件について」、本件につき ましては、昨年10月に被疑者が逮捕されたということで、その後の委員会で、それまで の報道等に基づきまして概要報告をさせていただいたところですが、昨年の12月に事件 の判決が出されまして、本年1月に検察・被告人とも控訴しなかったということで判決 が確定をしております。  まず、判決に沿いまして事件の概要について改めて御説明をさせていただきます。  I.事件の概要です。個人名につきましては、便宜上ABCという記載にいたしてお りますので御了承ください。  慢性腎不全であったA及びその内妻であるBは、平成17年9月に実施された腎臓移植 手術において、Bの知人であるCからその移植術に使用されるための腎臓の提供を受け たことの対価とする趣旨で、Cに対して、C名義の銀行口座に現金30万円を振込入金し、 普通乗用自動車1台150万円相当を贈与し、それぞれ移植術に使用されるための臓器の 提供を受けたことの対価として財産上の利益を供与した。  これが臓器移植法11条の臓器売買等の禁止規定に違反して有罪とされたものでござ います。  II.判決における指摘です。事件の背景とか事実関係などにつきまして、判決本文の 抜粋によりポイント報告をさせていただきます。  まず、事件に至る経緯及び動機です。  被告人Aの病状です。  被告人Aは、平成17年9月20日当時、1回約4時間の維持透析を週3日というペー スによる透析治療を受ける必要性は認められたものの、維持透析は安定しており、これ を続ける限り直ちに生命への危険性があったわけではなく、また、腎臓移植が必須の状 況にあったわけでもなかった。  被告人Aが腎臓移植手術を決意するに至った事情です。  Aは、平成17年6月11日以降、人工透析の治療を継続して受けていたが、このよう なことをずっと続けていなければならないのかと思うと不安でならなかった。そんな折、 被告人Aは、入院後ほどなくして夜間病室を訪れた主治医から、透析を続けても病気が 治るわけではない、透析を続けても血管にぶつぶつができたりして長くは生きられない、 治そうと思えば腎臓を移植するしか方法がないなどと説明を受け、それまで自己の病状 が進行しているという自覚はあったものの、死が迫っているとまでは考えていなかった ことから衝撃を受け、その後も何度か主治医と相談を重ね、腎臓移植手術を受けること を決意することに至った。  被告人らがCにドナーとなることを依頼するに至った事情です。  被告人Bは主治医から被告人Aの病状について、このままでは死ぬなどと聞かされて いた上、同被告人の固体化した血尿を目の当たりとするなどしていよいよ同被告人の死 期が迫っているものと思い、その命をなんとか救いたいとの気持ちから被告人Aの頼み を引き受けた。  次にCがドナーとなることを承諾した事情です。  被告人Bは、平成17年7月20日、Cに対し、被告人Aが腎臓移植を必要とする状況 であることを説明し、ドナーになれるかどうか検査だけでも受けてほしい、腎臓を提供 してくれたら一生恩に着る、お礼はちゃんとするからなどと言って、ドナーとなってく れるよう頼み込んだ。これに対し、Cはドナーとなることを直ちに拒絶することなく、 むしろ、被告人Bの申し出た謝礼に関心を示した。  被告人らはいずれも臓器移植のドナーに対し金品を提供することが法律で禁じられて いることを知悉していたが、Cはそのことを全く知らなかった。また、Cは、被告人B から自分との関係は義理の姉妹ということにしておいてほしい、ドナーとなることは他 言しないでほしいと頼まれ、これを了承した。  以上が事件に至る経緯と動機として判決本文で指摘をされている事実関係でございま す。  判決の後半のところで、事件の意味合い等、について言及されているので御紹介させ ていただきます。  生体からの臓器移植についての規制は必ずしも十分であるとはいえず、当事者や医師、 病院の倫理観に委ねられているのが実態であるように見受けられる。  本件を機に、国や関係諸機関において、早急に生体からの移植医療に関する法整備や ガイドラインの策定等を行い、同種事件の再発防止に努めるよう強く希望したい。  本件の移植手術に際して、仮にCの戸籍の確認がなされていれば、Cと被告人らとの 間に親族関係が存しないことは容易に判明したはずであり、そうすれば、移植手術が行 われなかったか、少なくともCがドナーとなることを承諾する事情に関してより慎重に 確認する必要性があることが認識されたと考えられる。移植手術を実施する医療機関及 び医師には、レシピエントとドナーの双方に十分な説明と聞き取りを実施し、不審な移 植手術の実施に自ら歯止めを掛ける役割が社会的に期待されていることを強く自覚する よう求めたい。  以上が本決本文で指摘をされているポイントについての御報告でございます。以上で す。 〇永井委員長  ありがとうございました。ただいまの御説明に何か御意見・御質問ございますでしょ うか。  よろしければ、続いて病腎移植に係わる調査等の状況について、事務局から御説明を お願いいたします。 〇丹藤主査  では「病腎移植に係わる調査等の状況について」報告させていただきます。お手元の 資料2をごらんください。  病腎移植の問題の経緯について報告いたします。  先ほど説明のありました臓器移植法違反事件を受け、宇和島徳洲会病院が設置した調 査委員会において、生体腎移植のうち11例が患者から摘出した病腎を移植したものであ ることが明らかにされ、公表されました。さらに、11例のうち5例は他の病院で摘出さ れた病腎が移植のために持ち出されたものであること、ほかに2病院、市立宇和島病院、 呉共済病院でも同様の移植事例があることが明らかになりました。  2枚めくってください。病腎移植の全体像という資料をごらんください。中央の太字 で囲んだ3つの病院が病腎が移植された病院です。その( )内は移植された病腎の数 です。また→の数字は病腎が摘出されて運ばれていった数を表しております。  例えば、宇和島徳洲会病院に関しては6例が自分の病院で摘出されて移植された。ほ か川崎病院、吉永病院、北川病院、香川労災病院についてはそれぞれ1つまたは2つの 腎が摘出され、宇和島徳洲会病院等で移植されたという表であります。  戻ります。これらの病腎移植については、医学的にもインフォームドコンセントや倫 理委員会での審査の手続き的にも、問題の可能性があると指摘されており、移植を行っ た病院、関係学会等で調査が実施されているところです。  調査等の状況です。  各調査委員会、それぞれ5つの調査委員会あるいは調査班が設立されて調査を行って きたわけです。まず病腎移植を実施した医療機関、3つの医療機関の調査状況を御説明 いたします。  宇和島徳洲会病院は3月15日に見解を公表しております。また市立宇和島病院に関し ては、3月18日に委員会を開催し見解を公表、調査結果の取りまとめを現在作業中です。 呉共済病院に関しては、調査結果の取りまとめの作業中であります。  摘出・提供のみを行った医療機関につきましても香川労災病院では4月11日、こちら は報告書の概要が既に公表されております。また三原赤十字病院ほか4院、摘出のみを 行った病院ですが、こちらは関係学会を中心に調査班が設立されて3月26日に報告書を 公表しております。  これらに伴って、関係学会では、病腎移植問題に関する情報公開や、医学的見解を整 理するために、合同で会議を開催。3月31日には会議を開催し、病腎移植に関する声明 を公表されております。  調査委員会等の調査結果の概略について説明させていただきます。  共通事項としてあげられる点についてです。病腎の提供や病腎の移植について倫理委 員会に付議されていた事例はない。個々の病腎の提供や病腎の移植を施設の責任者であ る院長が認識していた事例は、極めて少数に止まる。病腎の提供及び病腎の移植の同意 が文書で取得されていた事例は、少数に止まる。これら共通の事項が問題となりました。  次に、個別の病院、調査委員会に関して説明いたします。  宇和島徳洲会病院では、現在、自院で摘出された6例のみについて見解が公表されて いますが、こちらは調査委員会の中で適応ありが1例、容認できるが3例、適応の有無 については両論併記とするというのか2例です。これはネフローゼ症候群から2つの腎 臓が摘出された事例です。このような形になっております。  その下部委員会として専門委員会、これは学会推薦の専門委員の見解がまとめられて おります。こちらは調査委員会の公表とは異なって、適応なし、または適応に疑問が2 例、適応なしが4例という形で、2つの見解があるという状況です。これがいま公表さ れている状況です。  市立宇和島病院に関してです。こちらは摘出・移植された25例についての見解が公表 されているわけです。腎がん5例に対しては、患者が望んでいる等から、摘出は容認さ れる。再発や転移の可能性があり移植には使うべきではない。また、5例の尿管がんに 関しては、再発の可能性が高く、移植するべきではない。ネフローゼ症候群の6例に対 しては、内科的治療を続けるべきであった。腎動脈瘤・腎膿瘍等の7例に関しては、保 存療法が可能である。最後の尿管狭窄の2例に関しては、摘出について原則的に否定的 に考えるべきだが、患者の希望等によっては否定できない。という見解がされておりま す。  香川労災病院については、摘出のみの4例が調査の対象になっております。それは参 考資料の5をごらんください。参考資料5は香川労災病院が病気腎提供に係る調査委員 会報告書概要として4月11日に発表された資料です。1枚めくってください。6.委員 会の見解について、という部分です。当委員会においては、病気腎提供という行為によ り病気腎移植に関わったことの是非についての結論は出していない、というわけです。 もっぱら香川労災の病院が提供した4例の腎臓提供に関してのみ検証して結論が出され ております。  医学的妥当性について。診断については、エビデンスに基づき妥当と判断はされてお ります。また腎臓の全摘出については、2例の尿管がんについては妥当。また腎がんの 2例についても妥当、という判断はされておりますが、インフォームドコンセントの経 過を記した証拠書類が見られないとして、妥当と判断できないという意見もあったとい うことです。  また手術の術式については、全摘出がオーバーサージャリーではないか、あるいは腎 移植のドナーとするということを強く意識した手術方式であって、妥当とはいえないの ではないかという意見もあったということです。  また一連の手続き的な妥当性については、手術そのものについての説明、同意につい ては、書面をもって同意がとられている点から妥当と判断されておりますが、説明に用 いた証拠書類、あるいは説明の経過の記録が診療録に残っていないという点で改善が必 要であるとの指摘がありました。  また、摘出した腎臓を提供することについての説明・同意に関しては、摘出と提供は 別の行為であって、それを一連のものとして説明し、同意を得る方法では不十分である、 というように判断されております。  また病気腎提供に関する院内手続きについては、実施する以前に院内の生命倫理委員 会等で検討されるべき事項であって、1診療科の1医師が単独で実施するべきことでは ない、院内の報告体制などの改善の指摘があった、という報告がなされております。  三原赤十字病院ほか4例、これは摘出のみでありますが、こちらの6例に関しても調 査班が報告書を提出しております。こちらは参考資料の4をごらんください。こちらは 関係学会が推薦した専門医の先生方及び法律家及び一般有識者の方で構成され、事務局 は厚生労働省が行っております。そういう調査です。  調査結果です。病腎の摘出について、取られた手技を含めて考えると、6事例すべて において適応がないかまたは適応に疑問がある。また、移植についても適応がないか又 は適応に疑問があり、移植医療として望まれる医療ではないと考えられる、とされてお ります。  具体例です。1例は、尿管がんのため病腎の摘出は必要であったが、がんの術式はな されておらず、腎の摘出法に問題があった。これは血管の処理の手順等のことに関して ですが、その摘出方法に問題があったとされました。  また1例は、尿管がんの肺転移又は原発性肺がんがあり、病腎の摘出の適応は疑問が ある。さらに先ほどの例と同じくがんの術式がなされておらず、腎の摘出法に問題があ ったとされました。  尿管狭窄の1例は、長期間続いた尿漏のため摘出されており、手術の結果が不良であ ったことによるものから考えると、できれば腎機能温存のため自家腎移植が薦められた と思われる。また本人は尿漏のため長期間入院を忌避し、腎摘出を納得して承諾してい るものの、承諾に立ち会っていない家族は、腎摘出され移植されたことに憤怒しており、 治療を行うに当たり家族への配慮が必要であったと思われる。  上記3事例は、提供者が悪性腫瘍疾患であるため移植腎として使用できない。と結論 されております。  悪性腫瘍の疑いが強いとして摘出された膿疱性腫瘤の1例は、詳細な検査により診断 すれば摘出は防げた可能性がある。また病理ではなく肉眼的に良性と判断し、病理を確 認せず移植したことは問題がある。  また、腎血管筋脂肪腫の1例は、両側同時手術のため一時的には急性腎不全になった ことや両腎に腫瘍が存在することから腎機能温存のため、極力自家腎移植するべきであ ると考える。移植に関しても、腫瘍が再発、増大する危惧から自家腎移植を選択しなか ったとあるが、その腎を移植するのは移植者にリスクを負わせる結果になり、移植の適 応にはならないと考えられます。  腎動脈瘤の事例は、経過観察でもよく、腎摘出の適応にはなりがたい。また、動脈瘤 を形成せずそのまま腎をレシピエントに移植しているのは非常に問題がある、とされま した。  また、これら6事例のうち2事例においては、下大動脈の壁を切除し、移植時に吻合 しやすいように意図されているということで、生体腎の提供者に行うには危険性が高い 操作であるということで、これも問題があるとされました。  適応者の予後については、調査した限り、生活に支障を来すような慢性腎不全にはな っていない、とされております。  6つの事例いずれについても、管理者である院長は病腎が摘出されたことを認識せず、 いずれも倫理委員会に付議されていなかった。また、いずれも執刀医に、移植医療にお ける医療機関の責任に対する理解が不足していたものである、とされました。  同意書を取得していたのは、1事例だけで、3事例は口頭で取得して診療録にはその 旨を記載。1事例は口頭で取得し診療録には記載していない。さらに1事例では摘出手 術を実施し提供を行った病院においては、臓器提供に係るインフォームドコンセントを 取得しておらず、病院によれば、外部の執刀医により行われたとされている。  必要事項を記載した資料で患者やその家族に説明し、文書で同意を取得した上で、当 該資料及び同意書を保存することは必要条件であると考えられ、インフォームドコンセ ントの取得方法も不十分であったという結論もなされております。  参考資料6をごらんください。こちらは日本移植学会が3月30日に公表した資料です。 病腎移植における生存率・生着率についての概要です。対象症例は、市立宇和島病院に て病腎移植を受けた25例。一般の生体腎移植及び死体から提供された腎移植と比較する と、市立宇和島病院で実施された病腎移植においては生存率は低く、担がん患者からの 腎移植に限定するとその傾向が顕著になります。  受腎者生存率の表をごらんください。病腎移植全体では1年生存率は91.3%、担がん 患者に限っても90%と生体腎移植や死体腎移植について大きな違いはないのですが、5 年、10年とたちますと、病腎移植、特に担がん患者の生存率は生体腎移植や死体腎移植 に比べて非常に低い数字がでています。  また、生着率につきましても一般の生体腎移植及び死体から提供された腎移植と比較 すると生着率は低いという結果が出ています。  以上で説明を終わります。 〇永井委員長  ありがとうございました。御質問・御討論をお願いします。 〇相川委員  確認です。いまの調査報告、参考資料4の裏のところです。5行目の移植者というの は、受腎者あるいはレシピエントと解釈してよろしいのでしょうか。 〇丹藤主査  御指摘のとおりです。受腎者です。移植者というのは腎を移植された者でレシピエン トです。 〇相川委員  これは摘出した患者さんにまた返す、自家移植もリスクがあったといっているので、 その腎臓を他の人に移植するのはリスクがあると解釈してよろしいですね。「自家腎移植 を選択しなかったとあるが」というのはね。 〇丹藤主査  そうです。もし自家腎移植を選択しなければ、もちろんそれは他の方に移植するとい うことももちろんリスクがあるわけですから、その意味です。矛盾があるということで す。 〇相川委員  二つのことが一緒に書いてあるのでわからなかったのです。 〇永井委員長  先ほどの報告で、IRB等で審議されていなかったということですが、例えば、院内 でどのくらい情報が共有化されていたのか、麻酔とか術後の管理する集中治療とか、そ ういう人たちの中では、こういうことが行われているということに対する疑問とか、何 か問題の指摘はされていなかったのでしょうか。 〇原口室長  これは病院によって状況が異なるところがございます。ただ多数の症例を行った病院 の場合には、麻酔医等のスタッフは、全体としては承知していた。これは特に問題があ るとは思っておられなかったという場合があるようでございます。1例だけ摘出したよ うな病院の場合ですと、そのようなことが行われることを術前に聞いていなかった、腎 臓を搬入するための準備をされているのを知っている少数の者だけが、それはそういわ れればわかっていましたというくらいで、少数の腎を提供しただけの病院の場合には、 そもそも執刀医以外はほとんど知らなかった場合があるようでございます。 〇永井委員長  レセプトの処理はどのようになっていたのでしょうか。 〇原口室長  レセプトに関しては御指摘のとおりに、かたや病気治療、かたや移植という形になり ますと、一緒のレセプトで処理ができないわけでございまして、そういうことを含めて、 社会保険の関係で調査対象になっているのではないかと思います。 〇永井委員長  それはこれからの調査であるということでしょうか。 〇原口室長  はい。 〇永井委員長  宇和島徳洲会病院では、適応について専門委員会と内部の調査委員会で意見が違うよ うですが、構成メンバーは調査委員会というのは内部のみでしょうか。外部の方は入っ ていなかったのでしょうか。 〇丹藤主査  調査委員会に関しましては、13名の委員のうち12名が内部あるいはその関係者とい う報道がなされております。1名のみが移植学会からの推薦者であるということです。  形としては調査委員会の下部組織として専門委員会がまず設置されたわけですが、そ ちらは多くは学会からの派遣メンバーということで、調査委員会と専門委員会で最終的 に出した結論が異なるということで、現在、今後調査を続けるか否かに関しては、まだ はっきりしていない状況です。 〇大久保委員  基本的にこういう調査をするのは、どのような人がするかによって大きく変わってく るわけです。この香川の労災病院についても、内部の委員か関係者がほとんどです。実 際に外部の委員として移植に関係するかもしくは泌尿器に関係するということで、吉村 先生とか深尾先生が入っていらっしゃる以外は、ほとんどが地元もしくは病院の方とい うことで、かなりの偏りがあるのですが、このことに関して厚生労働省として、こうい う委員というような要望は出されてはいないのでしょうか。 〇原口室長  調査に当たりましては、基本的に関係学会から推薦された外部の委員を受け入れて公 正に調査してほしいということを申しております。香川労災の方も同じでございます。 こちらの方は少数意見が付されておりますが、ただ外部から入られた委員の方と関係者、 そういう形で意見が分かれたわけではない。多数の意見についても学会の委員の方も賛 同された方がある、という構成になっているということを聞いております。こちらにつ きましては、内外で意見が分かれてしまうというような形ではなかったようでございま す。 〇北村委員  これはこの委員会では報告を受けるということ、もし意見があればそれにコメントす るということで、何かをどうこうするという趣旨は現時点ではないのですね。そう理解 してよろしいですか。 〇原口室長  御指摘の点は、もし個別の症例を吟味していくということでありますと、これは個人 の情報に関わる個別の症例資料を用意しまして非公開の形で議論をいただかないといけ ないことになろうと思います。まさにそういうことを各病院の調査委員会でやられたも のであり、その結果を御報告し、それを踏まえた学会の見解を御紹介した上で公開の形 で審議いただく、というのがこの委員会での議論でございますので、個別症例をさらに 掘り下げていただこうという趣旨ではございません。 〇永井委員長  いかがでしょうか。大島委員何か全体を通して御意見とかコメントございますでしょ うか。 〇大島委員  前回まで私自身、あるいは学会としての見解については、十分に発言させていただき ました。いまいくつかの論点が出ていますが、学会側の基本的なスタンスとしては、社 会から学会が信用していただくためには、科学的な根拠をもって医学的な判断をきちん としていく、現在のレベルの基本的な倫理的な判断を下に、そしてインフォームドコン セントとかは極めて常識的な話になっていると思いますが、そういうことをきちんと行 ってゆくということで今度の事態についても、学術専門団体そして専門職能団体として 判断をさせていただいたという理解でいます。そこで学会が出した判断についてどう受 け止めてどう考えるのかということについては、学会の手を離れた、それは社会全体、 もちろん学会もそれの一員であるということですが、社会全体の中で判断をしていただ くということだと考えています。 〇永井委員長  とりあえずの評価を行った、という位置づけになりますでしょうか。 〇大島委員  そうですね。学術団体、専門職能団体としての大げさな言い方をすれば、その団体と しての存在をかけての判断を行ったということだと思います。 〇永井委員長  これで終わりということではなくて、今後いろいろな局面において学会がまたそこに コミットしていろいろな意見を述べていくということはあるわけですね。 〇大島委員  そうですね。我々の独自の判断としては、これは専門家にしかできないことなので、 その専門家にしかできないことについては責任というか、我々の責務として行う。これ から先の話は社会の中のワンメンバーとして参加させていただいて、議論に参加させて いただくという形になると考えています。 〇永井委員長  どなたかほかに御意見等ございませんか。そうしますと、この報告をとりあえずお受 けしておき、その上で、次の議題にもございますが、いろいろな規定に何を盛り込んで いくかというときに参考にしていくという位置づけでよろしいでしょうか。  続きまして臓器移植法運用指針に規定する事項につきまして、事務局から御説明をお 願いいたします。 〇原口室長  資料3の「病腎移植に関する学会の声明」、資料4の「臓器移植法運用指針に規定する 事項(案)」に関して説明をさせていただきます。  まず資料3です。2枚ほど役所で作成しました病腎移植に関する学会声明の概要がご ざいます。この2枚をめくって3ページをごらんください。ここから終わりまでが関係 学会による病腎移植に関する学会声明でございます。右上にございますとおりに3月3 1日に日本移植学会、日本泌尿器科学会、日本透析医学会、及び日本臨床腎移植学会か ら連名で公表されたものでございます。  なお、日本腎臓学会におかれては、この学会声明に連名で加わるかどうかを今後組織 で御判断になるというふうに承っております。この内容に関して概要の1・2ページを 使いまして御説明をさせていただきたいと思います。  1ページの1です。この学会声明は「声明」とこれの前提である「見解」の2つのセ クションから構成されております。その声明の概要です。  1.声明。病腎移植という実験的な医療が、医学的・倫理的な観点からの検討なく、 閉鎖的環境で行われたことは、厳しく非難されるべき、という指摘がございます。  実施された病院は、この実験的医療を行うには、種々の手続きを含め体制が極めて不 備。医学的見地からの問題等が判明し、移植医療として問題、ということでございます。  臓器移植の新しい治療法は、今後も研究開発されるであろう。この推進の上では、厚 生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」に従わなければならない、という指摘がござ います。  さらに、日本移植学会は、移植医療において、学会員、非学会員とも新しい診断方法、 治療方法等の提案を審議し、推進できる体制を整備する方針である。このように御指摘 がございます。  なお、ここで引かれております臨床研究に関する倫理指針は、参考資料の7としてつ けておりまして、後ほど若干の点を御紹介させていただきたいと思います。  次に、2.見解。学会は、一連の病腎移植が行われた病院の調査に委員を派遣し、專 門的立場から検証を行うとともに、事実把握に努め、妥当性を検討してきた。  一連の病腎移植につき、全体を見渡し、現時点で声明を出せると判断した。  なお、ここで病腎移植とは、疾患の治療上の必要から腎臓が摘出された場合において、 摘出した腎臓が腎移植を必要とする患者に移植されることをいう。ということで病腎移 植について、この見解の部分で定義をおいています。疾患の治療上の必要から摘出され た場合であるということでございます。  以下、この見解において8点にわたって指摘をなさっておられますが、医学的妥当性 の2つの項目について御紹介させていただきます。  (1)腎の摘出の医学的妥当性、ということです。  (1)良性疾患のうち機能的障害、例えばネフローゼ症候群等の場合についてで、ふさわ しい内科的治療の機会が与えられるべきであるが、十分な医療を受けていたとの確証が 得られなかったとなっております。適切な内科的治療により病勢を管理できた可能性が ある、というようにみられております。 (2)良性疾患のうちの器質的障害、尿管狭窄や腎動脈瘤等でございます。こうした場合に は腎臓温存するような治療を第一選択とするのが原則である。例外として医学的に摘出 が選択肢に入る場合は、治療の選択と利点・欠点に関する情報を患者に適切に与え、記 録を残さなければならない、ということでございます。  なお、記録がなかなか十分でなかったということがほかの項で指摘をされております。  (3)その他の良性疾患、腎膿瘍などの場合でございます。腎膿瘍は、抗生物質などの投 与により治癒に努めるべきである。この腎膿瘍でも摘出し移植された事例が1つあった わけでございます。  (4)悪性疾患、担がんの場合で直腸がん、腎がん、尿管がんという場合である、という ことでございます。悪性腫瘍の治療は、摘出、部分切除など種々選択肢があり、症例ご とに治療の選択肢が異なる。治療法について利点・欠点を説明した上でインフォームド コンセントを得なければならない。こうしたことについてカルテが廃棄されているなど、 十分な資料がないため、医学的妥当性に関する判断やインフォームドコンセントの妥当 性は判断できなかった、と整理されております。  (4)に、病腎移植の方の医学的妥当性の項がございます。  感染腎や腎動脈瘤では現に移植された例があるわけですが、感染症や破裂の持ち込み のリスクがある。破裂の危険性から摘出した腎動脈瘤の腎臓が動脈瘤を治療されずに移 植された例がある。生着率が劣るとのデータもある。悪性腫瘍を有する患者からの腎臓 を移植腎として用いることは、腫瘍細胞の持ち込みの可能性が否定できない。免疫抑制 療法下で、持ち込まれた腫瘍細胞による再発のリスクが高まる。生存率が劣るとのデー タもある。以上により現時点では、病腎移植は医学的に妥当性がないとされております。  概要の御紹介は以上にさせていただきますが、3ページ以下の学会声明のところで、 該当の部分を申し上げてまいります。  声明につきましては3ページ全体が声明でございまして、これの1つ目の段落のとこ ろで実験的な医療である。病院の体制が実験的医療に不備であった、ということなどの 指摘があります。  2つ目の段落で、臨床研究が行われる場合の事柄が規定されております。また2つ目 の段落の終わりのところでは、今後の日本移植学会の取り組みとしまして、体制整備を されるということが記述されております。  4ページからの見解の部分でございます。上にあります一段落のうちの終わりの2行 ほどのところの「なお」書きのところに病腎移植を定義されております。先ほどの概要 で御説明したのはこの部分の抜粋でございます。全く同じように記述されているところ でございます。  個別の事項の指摘は、5ページからでございます。8つの項目が以下に記述されてお ります。このうちの摘出の医学的妥当性に関しましては、5ページほぼ全体が、摘出の 医学的妥当性についての見解の文書でございます。  移植につきましては、6ページの中ほどに(4)ということで病腎移植が医学的に妥当か ということが記述されています。以上の点を、概要により紹介させていただきました。  参考資料7で臨床研究に関する倫理指針がございまして、これについて若干御説明を させていただきたいと思います。  この指針は、どのような場合に適用され遵守いただく必要があるかでございます。2 ページ目の下の方に2.適用範囲という記述がございます。この適用範囲のところで、 この指針は、社会の理解と協力を得つつ、医療の進歩のため実施される臨床研究を対象 とし、これに携わるすべての関係者に遵守を求めるものである。ということでございま す。臨床研究に携わる方すべての関係者に遵守をお願いするものとして、既に策定をさ れているものである、とあります。ここでいう臨床研究の範囲につきましては、3ペー ジ目の中ほどに用語の定義というところがあり、ここの(1)に臨床研究、という言葉の定 義がございます。  医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理 解並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって、人を対象 とするもの、というように定義をされております。  この指針でどのような事柄が規定されているかでございまして、中の方に入っていき ますと非常にボリュームがございますので、目次だけ申し上げさせていただきます。  1ページのところに目次がございます。先ほどは適用範囲あるいは用語の定義のとこ ろを申し上げたわけでございますが、その後、第2として研究者等の責務等、という項 がございます。こうした中では研究責任者が計画をつくって、それに準拠して研究を進 めなければならないとか、安全性の確保の義務でございますとか、一般的に受け入れら れた科学的原則に従って根拠をもって行わなければならない、ということなどが規定さ れております。  次の第3のところでは、倫理審査委員会に付議することについて、第4ではインフォ ームドコンセントの取得について、それぞれ記載されているところでございます。中身 につきましては、既存の指針でございますので、この場では省略をさせていただきたい と思います。  資料4によりまして「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針に規定する事項 (案)について」の説明をさせていただきたいと思います。  第23回、2回前の臓器移植委員会におきまして、臓器移植法違反事件を踏まえ臓器移 植法運用指針に生体移植に関する規定を加える改正を検討させていただきたい、と申し 上げておりました。  そこで今回、一つには臓器移植法違反事件を受けまして日本移植学会で策定された倫 理指針の補遺等、前回報告させていただいたものでございますが、これを踏まえますと ともに、病腎移植の問題を受けて関係学会で出された声明、これも踏まえ、改正を提案 させていただきます。  資料4の2行目のところに第12ということで項を起こしてございます。臓器移植法運 用指針は、現在11項目からなっておりますが、今般、生体移植に関する一連の項目を第 12という形で追加させていただきたいという提案でございます。  内容に関しましては、3ページ以下をごらんいただきたいと思います。3ページから の表でございますが、前回の委員会におきまして、第23回の委員会の議論における論点 を、日本移植学会の倫理指針、あるいは生体腎移植の提供に関する補遺、さらに生体腎 移植実施までの手順というものと対照する形で整理させていただいておりました。◎が 倫理指針、○が補遺、●が手順ということでございます。この表の左側及び中央は、前 回の会議で出させていただいた資料と同じ内容になってございます。これに今回は、右 側に臓器移植法運用指針に規定する事項(案)を対照の形で記載させていただきました。  順次項目に沿って御説明してまいります。まず(1)でございます。この項目は左側をご らんいただきますと、生体腎移植は健康腎にメスを入れるという一般の医療行為であれ ば行われないことを前提としている、生体移植というものの性格を指摘した部分でござ いまして、真ん中の欄ですが、移植学会の倫理指針では健常であるドナーに侵襲を及ぼ すということで本来望ましくないと考えられる、という記載があります。  右側の運用指針の案におきましてもこのことを規定してはどうかと考えまして、健常 な提供者に侵襲を及ぼすことから、やむを得ない場合に例外として実施されるものであ ること、と規定してはどうかと思っております。なお、これは生体移植に関する一般的 な項目でございますので、臓器移植法自体にも生体移植に関わる一定の適用される条項 がございますが、その条項をここで併せて指摘しておきたいと考えて書いてございます。  (2)の2つ目の項目でございます。提供意思の任意性の確認という項でございます。本 人の自由な意思によって臓器提供が決定されるということが重要なわけでございます。 真ん中の欄ですが、移植学会の倫理指針におきましては、提供意思が他からの強制でな いことを家族以外の第三者が確認をする。また第三者について移植医療に関与していな い者、提供者本人の権利保護の立場にある者、と記載されております。  これに対応する形で、運用指針案におきましては、臓器の提供の申し出については任 意になされ、他からの強制でないことを、家族及び移植医療に関与する者以外の者であ って、提供者の自由意思を適切に確認できる者により確認しなければならない、と同趣 旨の記述をさせていただきたいと考えております。  次のページです。補遺におきましてはさらにこの第三者につきまして、○の終わりの 方ですが、第三者とは、倫理委員会が任命する精神科医など複数の者、というさらに具 体的な任命されるべき者の記述がございます。さらに●の手順のところでは、承諾書の 示し方あるいは具体的な相談体制といったことについて、以下順次記述があるわけでご ざいますが、こうした大変具体的な内容につきましては、公的な指針においてここまで は示さず、こうしたところの運用は学会の補遺等に委ねる、という形にしたいと考えて ございます。  以下、5ページも同様の内容が続いてございます。  6ページです。ここにまた◎がございます。提供は本人の自発的な意思によって行わ れるべきものであり、報酬を目的とするものであってはならない。という項目が倫理指 針にありますが、この項目に関しては、臓器移植法の11条において禁止されている内容 でございますので、運用指針で重ねて記述の必要はないだろうと考えております。  次に(3)のインフォームドコンセントの実施という項目でございます。議論としまして は、インフォームドコンセントと患者の自己決定権を基本とするパートナーシップの医 療が現に根付いている。社会のチェックの中で安全で質の高い医療が求められている、 という指摘です。それから今回の事件について、1回しかドナーに会っていない、イン フォームドコンセントを書面に残す必要を認めない、という発言が報じられていて、一 般の医療としても異質であるという議論があったわけでございます。このインフォーム ドコンセントに関して、真ん中の欄に学会の倫理指針等の記述でございますが、ドナー へのインフォームドコンセントに際しては、ドナーにおける危険性と同時に、レシピエ ント患者の手術において推定される成功の可能性について説明を行わなければいけない。 ドナーの場合でもレシピエント側のことも説明するという規定があり、移植医療全体に ついて説明を受けた上で判断されるべきであるということが示されております。  また、●の手順のところでは、文書を用いて説明をすること、次のページにまいりま すと、この文書に何を記述するべきであるか、先ほどもあった事項の再掲でございます が、承諾書をどのように示すか、また示した上での相談体制ということについての記述 がございます。  こうした中で6ページに戻ります。右側の欄でございます。運用指針案におきまして は、説明するべき事項について、ドナーの場合でもレシピエントまで含めて全体を説明 すること。また文書を用いることを記述しようと考えております。  提供者に対しては、摘出術の内容について文書により説明するほか、臓器の提供に伴 う危険性及び移植術を受ける者の手術において推定される成功の可能性について説明を 行い、書面で提供の同意を得なければならないこと、という基本的な内容と考えられる 事柄を規定させていただいてはどうかと考えております。  次の7ページの下でございます。学会の倫理指針におきましては、インフォームドコ ンセントの特則としまして、ドミノ移植の場合についての記述がございます。ドミノ移 植を行う場合に第一次レシピエントは併せて生体移植のドナーとして扱われなければな らないということが記述されております。  このことにつきましても、インフォームドコンセントは手続き面で非常に肝要な部分 でございますので、こういう場合の取り扱いも運用指針に盛り込んではどうかと考えて おります。移植術を受けて摘出された肝臓がほかの患者の移植術において用いられるド ミノ移植において、と定義をさせていただきまして、最初の移植術を受ける患者につい ては、移植術を受ける者としてのほか、提供者としての説明及び同意の取得を行わなけ ればならないこと、と規定してはどうかと考えております。  なお、学会倫理指針におきましては、さらに倫理委員会に個別に付議することについ ても記載がございますが、これは性格としまして、第三者に対する提供という形になり ますので、ここで規定するまでもなく、後の方に第三者に提供するためには倫理委員会 に付議するという事項がございますので、公的な運用指針としましては、そこの項目で 適用されるのであれば重ねて記述はいらない、と考えて、ここでは書いておりません。  次に移植学会の倫理指針におきまして、レシピエントからのインフォームドコンセン トについての記述でございます。レシピエントからインフォームドコンセントを得る場 合には、ドナーにおける危険性、及びレシピエントにおける移植治療における効果と危 険性について説明し、ということで今度はドナー側を含めた説明が必要とされておりま す。書面にて移植の同意を得なければならないということでございます。ここも運用指 針で同様の記述をしようと考えておりまして、移植術を受ける者に対して移植術の内容、 効果及び危険性について説明し書面で同意を得る際には、併せて提供者における臓器の 提供に伴う危険性についても説明しなければならない、と記述したいと思っております。  なお、真ん中の欄の倫理指針におきましては、意識のない患者の場合、さらにレシピ エントが未成年の場合について記述が続いてございます。これらにつきましては、実は 意識のない患者等の場合には、代諾者あるいは親権者が同意をすべきというのは当然の ことと考えられまして、臓器移植法運用指針におきましては、死体からの移植の場合の 事項について縷々規定がございますが、そうしたところでこのようなところまで記述し ているわけでございませんので、均衡を考えまして当然の内容であるのでこれは規定す るに及ばないのではないかと考えてございます。  次に(4)で本人確認の実施ということでございます。今回の臓器移植法違反事件におき まして、そもそも提供者が移植を受ける者の義妹を詐称していたという事情があり、本 人確認の手段を講じるべきではなかったか、という問題点が判決の中でも指摘をされて いるところでございます。  左側の欄でこれにかかわる議論でございます。作為を伴うものを完全に見抜くことは 難しいが、今回の事件では確認手続きが不適切であったことが問題である。本人確認を 他の医療機関を含めて徹底すべき、という議論があったわけでございます。  真ん中の欄でございまして、倫理指針の補遺におきまして、本人確認ということで記 述がされています。内容としまして、顔写真付の公的証明書で確認する。そして確認し たことを診療録に記載する、ということが書かれているところでございます。またこう した証明書を所持していない場合は、倫理委員会に本人確認のための資料を提出し、倫 理委員会が本人確認を決定する、というふうにされておりまして、親族でない第三者で あれば個別に倫理委員会で審議をするわけでございますが、所持をしていない場合にお いても倫理委員会で審議する形をとろう、という考え方がとられているところでござい ます。  そこで右側の欄、運用指針の取り扱いでございます。臓器の提供者が移植術を受ける 者の親族の場合は、親族関係及び当該親族本人であることを公的証明書により確認する ことを原則とし、ということで確認する内容が一つは親族関係、もう一つには親族本人 であること、この二つがあることと整理しております。公的証明書により確認すること を原則とし、親族であることを公的証明書により確認することができないときは、当該 施設内の倫理委員会等の委員会で関係資料に基づき確認を実施すること、いうことにい たしまして同様に倫理委員会の審議事項にする、ということにしたいと思っております。  なお、技術的な事項でございますが、具体的にどのように運用すればよいのかという ことの細則をこのたび設けまして、規定させていただいては、と思っております。この 臓器移植法運用指針につきましては、局長通知で制定されておりますが、全体の運用指 針としての整合を見まして、細かすぎる事項については、それを補足する室長通知を出 させていただき、そこに規定する形をとろうと考えているところでございます。  まず本人確認そのものにつきましては、公的証明書による本人確認は一般に広く行わ れているわけでございますので、あえて記述はする必要はないと思っております。親族 関係の確認でございまして、この公的証明書としてこういうものを確認できるものとし ては、戸籍抄本あるいは住民票あるいは世帯単位の保険証で確認することが可能である と考えてございます。  ただ、こうした証明書に限定するのではなく、さらに実質的に詐称をされることがな いようなことが担保できればよろしいと考えられますので、別世帯であるが戸籍抄本等 による確認が困難なときには、少なくとも本籍地が同一であることを公的証明書で確認 するべきであること、といたしております。これは本籍が同一であるという場合に、そ れで親族を詐称しているというところまで心配する必要はないのではないかということ で、このように規定をいたしました。  もう1点、細則で規定したいと思っていることがございます。倫理委員会等の委員会 の構成員にドナー・レシピエントの関係者や移植医療の関係者を含む時は、これらの者 は評決に加わらず、また、外部委員を加えるべきこと、という内容でございます。この 臓器提供者の身元等に関する個別の審査に関しましては、利害関係者が加わらないこと が望ましいと考えられますので、ここにこのように規定をしたいと思っております。  なお、この臓器移植法運用指針でもっと前のところで倫理委員会等の委員会で審議を する事項というのが出てまいりますが、例えば脳死下での臓器提供を実施するというこ とについて、あらかじめ組織としての意思決定をするときに、倫理委員会に付議すると いう事項がございまして、こうした場合は当然移植医療の関係者が入った上で付議しな ければいけませんので、この事項はここの生体移植のところについての細則という形で 位置づけたいと思ってございます。  次に10ページです。(5)倫理委員会への付議、という項目でございます。議論としま しては、ほかの医療に比べ倫理問題が発生しやすい移植医療を、しかも全国で多くの数 を行っている施設で倫理委員会が開催されていないことが問題の一つである。移植医療 の後退を懸念するので、法律ということでなく、行政が学会とともに本人確認・倫理委 員会の開催等を通達するなど、ということを求められておりました。  真ん中の段です。学会の倫理指針におきましては、親族に該当しない場合においては、 当該医療機関の倫理委員会において、症例ごとに個別に承認を受けるものとする。その 際に留意するべき点としては、有償提供の回避策、任意性の担保などがあげられる。こ のように規定がされております。この部分に関しまして、臓器移植法運用指針の方に同 種の規定をおきたいと考えております。  親族以外の第三者から臓器が提供される場合は、当該施設内の倫理委員会等の委員会 において、有償性の回避及び任意性の確保に配慮し、症例ごとに個別に承認を受けるも のとすること。とういふうにいたしております。  なお、学会の倫理指針におきましては、さらに移植学会に意見を求める等の手続きの 規定がございますが、法的なガイドラインとなります運用指針におきましては、学会の 方に求めることということについては規定をしないこと、とさせていただこうと思いま す。  次に細則を規定したいとしております。これはさらに次にあります項目との関係で概 念の整理をするための細則でございますので、後ほど戻って説明をさせていただきたい と思います。  一番下に(6)財産上の利益供与の防止、という項目がございます。この項目に関しまし ては臓器移植法第11条で禁止している内容でございますので、前回項目の整理をいたし ておりますが、この点につきましては特に運用指針には盛り込まない、という扱いにさ せていただきたいと考えております。  12ページです。病腎移植への対応という項です。ここのページに関しましては、左側 に病腎移植に関する学会声明の抜粋を対照の形で記載しました上で、臓器移植に関する 法律の運用に関する指針に規定しようと考える事項を右側に記載をしております。  左側の方で引用している項目ですが、病腎移植というものが実験的な医療であるとい うこと、あるいはこれが閉鎖的環境で行われていてとても問題があった、という部分を まず抜粋させていただきました。  2つ目の項目です。臓器移植の新しい治療法については、今後も研究開発されること であろうということ。2行ほど先ですが、これを推進する上では、わが国での臨床研究 のあり方を示した厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」に則って行わなければな らない、という部分がございました。  次の項です。これは医学的妥当性がないということに関する部分です。感染腎や腎動 脈瘤等の良性疾患の場合の問題点。下から2行目は、悪性腫瘍を有する患者の場合の問 題点を記述した上で、次のページの4行目のところですが、現時点では病腎移植は医学 的に妥当性がない、という判断があるということでございます。  最後は見解のところで整理されておりました病腎移植の定義の整理でございます。疾 患の治療上の必要から腎臓が摘出された場合において、摘出した腎臓が腎移植を必要と する患者に移植されることを言う、この部分を引いてございます。  こうしたことを受けまして、臓器移植法の運用指針での取り扱いでございますが、一 つには病腎移植については、現時点では医学的に妥当性がないということについて指摘 したいと思っております。医学的に妥当性がない結果、いわば一般医療として行われる ものではなく、行われるとすれば必要な条件を満たした段階で臨床研究として行われる、 ということについて特に規定をさせていただきたいと思っております。  12ページの右側の欄ですが、疾患の治療上の必要から腎臓が摘出された場合において、 摘出された腎臓を移植に用いるいわゆる病腎移植については、現時点では医学的に妥当 性がないとされている。したがって、病腎移植は医学医療の専門家において一般的に受 け入れられた科学的原則に従い、有効性及び安全性が予測される時の臨床研究として行 う以外は、これを行ってはならないこと。また、当該臨床研究を行う者は「臨床研究に 関する倫理指針」(平成16年厚生労働省告示第456号)に規定する事項を遵守するべき であること、といたしまして、医学医療の専門家において一般的に受け入れられたとい たしましたのが、閉鎖的な環境のもとで独断的な判断で行われてはならないということ がございますので、このようなことを記述しました上で、有効性及び安全性について十 分に整理した上でなければ臨床研究が行われるべきでないわけでございますので、こう いうことを記述しているということでございます。  このように一番終わりに病腎移植に関しまして規定をするわけでございますが、ここ で2枚ほど戻らせていただきまして10ページの細則の趣旨でございます。  一番終わりの項目にございましたのは、治療上の必要から腎臓が摘出されてそれをあ えて移植して使うような場合ということでございます。この細則の冒頭にございますよ うに、生体腎移植においては、提供者の両腎のうち状態の良いものを提供者に止めるこ とが原則とされている、ということがございます。この結果、親族以外の第三者から摘 出する必要のない軽度の疾患を有する腎臓が提供されることになる場合があるというこ とでございます。言葉を変えて申しますと、生体ドナーが提供しようとされる場合に、 腎の機能が若干違うときに機能の良い方をあえて摘出して、悪い方を残すというのは一 般的なやり方ではない、ドナーに対しては機能のよい方を残されなければならない。そ うしますと、結果的に摘出などは対象にならない軽度な疾患などがあるものを、移植に 用いることになる場合がある。  このことが、次の項目で、病腎移植の定義を明確に書いてございますが、こちらとや や紛らわしいのではないかと考えまして、これは、最後の項の病腎移植の問題ではない、 ここの親族以外の第三者から提供される場合に倫理委員会にかける、こうした手続きを 踏めばよいのだ、ということがわかるように確認規定をおいておきたいという趣旨の項 目でございます。  なお、この参考資料4では、一番終わりの14ページのところに、前回の会議で付して おりました資料の1ページ目、第23回臓器移植委員会における指摘事項のうちの総論的 な部分を、今回このような形にして書いておりませんので、参考として掲げてございま す。  以上、運用指針に追加する事項(案)を御説明させていただきました。 〇永井委員長  ありがとうございました。非常に大部の資料で内容もいろいろなものを含んでおりま す。いかがでしょうか。 〇北村委員  よくわかりましたが、この細則の11のあとにこれをつけ加えるとおっしゃったのです が、11のところには、移植機会の公平性の確保と、臓器あっせんを行うネットワークを 介さない移植は行ってはならない、というところがあります。その他という第11項です。 このあとに12項を足すと、これにはかからないということはしておかなくてもいいので しょうか。参考資料7ページにあります。 〇原口室長  申しわけございません。申し落した部分があったと思います。今回説明いたしました のは、新たに追加しようとしている事項について御説明したわけでございますが、これ を追加いたします場合に、内容を変えるわけではありませんが、ほかの項目について、 もともと指針にある項目について一部修正をしていかなければいけない部分が出てまい ることになります。  そうしたことにつきましては、この運用指針について第12として独立した項を立てる ことを前提に必要な改変を別途手当させていただきたいと思っております。例えば、い ま御指摘の第11の項目、その他の事項とあるわけですが、恐らくここのところは死体移 植におけるその他の事項とか、そうした名称の項目にいたしませんと、いまのままの名 称ですと指針の一番最後にあるべき事項、項目立てになっておろうと思います。例えば そうした補足をさせていただくということは出てくると考えてございます。  今回、この場でそのような余り細かなところまで御審議いただく必要は必ずしもない と思いまして、追加事項を資料として整理させていただきました。 〇北村委員  ちょっと老婆心であったかもしれません。しかし、法律の方にでも移植を必要とする 者にかかる移植術を受ける機会は公平に与えられるように配慮しなければならないとな っておりますから、この細則の中に生体をぽっとほりこむというのはどうかとちょっと 思います。生体は生体で別項として、12に入れるのではなく別項目として扱わないと、 法律そのものの公平性に配分されなければならないということと、また違ってくると思 うのですがどうでしょうか。 〇原口室長  そもそも法律の第2条の4項でございますか公平性の項がございます。臓器移植法自 体が生体移植についても法律として網は掛けおります。目的規定なり、第4条の注意義 務、そして第11条の臓器売買の禁止等は、間違いなく生体移植も念頭においているわけ でございます。しかし、第2条のうちの第4項、公平性の項目は性格上一般の生体移植 に関しては、かかっていないと考えないと、公平にだれにでも提供しますという形で生 体移植の提供がなされるというのは、通常は考えがたいわけでございますので、第2条 の第4項は生体移植については適用されない項目である、と考える必要があると思って おります。  この追加する事項(案)の冒頭でも、実は法の第2条については、第2項と第3項は 引いておりますが、第4項はあえて引いていないのはそのせいでございます。  そのように考えますと、こちらの第11のところで記載していますのも、法律の第2条 に係わる基本理念の概念を引いているわけでございますので、第11、死体移植に関して はこうである、という形で整理すれば問題はないはずである。そうでないと生体移植ま で網を掛けている臓器移植法として解釈ができなくなりますので、そのように解してよ ろしいものと思っております。 〇相川委員  説明してだいてありがとうございます。この案を追加する必要があるということは了 解いたしました。  細かいことですが、3ページの一番右の規定事項(案)の○のところには、臓器の提 供の申し出については任意になされる、他からの強制でない、と書いてあります。これ は根幹に係わるところです。学会の方の指針では、4ページの一番上に提供者の自発的 意思の確認ということがございます。それでこれは言葉をここではっきりさせていただ かなくてはいけないのは、「申し出が任意」ということと「自発的意思」についてです。  例えば今回の事件のように、BさんがCさんに、つまりドナーに依頼してしまった場 合には、Cさんの自発的意思であったのかどうか。Cさんは自分が任意で申し出たのか どうか。今回、Cさんは、この事例に関しては法律違反になったわけです。将来的にも、 多くの場合には自分から臓器を提供しようという自発的に提供したいというケースと、 病気に悩んでいる人、腎臓の場合には慢性腎不全で悩んでいる人、あるいはその関係者 が親族に、あるいは第三者に強制ではないが依頼をする場合もあるのではないか。強制 ではない依頼ですね。そこのところではこれを規定事項ではどのように扱うのか。任意 とは何か、ということについて御説明いただきたいと思います。 〇原口室長  御指摘に関しては、移植を必要とするレシピエント側から提供をお願いしたいという 依頼があった上で、それでは提供しょうと決断された場合、これは任意性に問題はない かということでございます。この点は、腎移植についての生体移植のプロセスにおいて、 患者側から家族に対して申し出があるということは通常のことでございますし、その上 で自分としての意思をちゃんと固めて提供なされば問題はない、というのが法の趣旨で あると考えますので、そこは任意性を、任意というのは法律でも使われている言葉でご ざいますが、これを損なうことはないものと思います。  学会の倫理指針の補遺で自発的という言葉もございますが、これが意思を固める端緒 として家族から依頼を受けたということが自発的ということを害うことはない、という 認識で規定なさっているものであろうと思います。 〇相川委員  私もそう思いました。それでよろしいと思います。記録にちゃんと残しておけば。つ まり自発的意思の解釈が将来問題になったときに、自発的意思ということもあるが、自 発的意思というのには端緒として依頼があって、それで任意にドナーが申し出た場合で も自発的意思と了解する、ということでよろしいですね。ありがとうございます。 〇松田委員  私も北村委員がおっしゃったことを感じております。臓器移植に関する法律というの は、死体からの移植というものがメインで、ほとんどがそういう文言で書いてあります。 これは当初から現場で問題になっていて、角腎法をこのときに廃止し、この法律だけに なった。ところが従来からやっていた腎移植のことが余り明確でなく現場で若干混乱し た。それ以降、生体肝臓移植でいろいろな問題が出てきて、これは学会の指針で対応し ていた。  基本的に生体からの移植については、こういう追加ではなく新たなところに切り込ん でいかないと、大原則が示せないのではないかという気がするのです。生体からの移植 というものが、基本的なところを押さえないと追加のこういうところだけでは、次々に 混乱が起こってきそうな気がしています。北村先生と同じ質問になりますが、それでい いのかなと疑問に思います。  あとは細かいことです。提示された文言でわかりにくいところが2か所です。  例えば10ページの倫理委員会の付議で、室長も御説明になりましたが、細則のところ がわかりにくいです。「良いものを提供者に止めることが原則とされている。この結果、」 ここで突然に「親族以外の第三者からの摘出の必要のない軽度」ここはまだ理解できな い。前段と後段がちゃんとつながっているのか。基本的に親族でないといけないという が、親族以外の第三者というのが突然に出てくるので、全体のくくりからいうと基本的 には親族であるが、だが親族以外の第三者については、学会でずっとやっていたのです が、それに沿ったような書き方にした方がわかりやすいのではないか  12ページの臨床研究、こういうことは病腎については臨床研究でやりなさいという道 を残すというのは学会からのことだと思いますが、「有効性及び安全性が予測されるとき の臨床研究として行う以外」一般に臨床研究は有効性か安全性かを予測しようとして始 める臨床研究なので、最初から予測されるときの臨床研究としてという文言が、臨床研 究の指針に合うのでしょうか。この2つの文言が気になりました。  基本的には、生体移植について、この法律との整合性が疑問です。 〇大久保委員  もともと法律が先生のおっしゃるように亡くなった方を前提とされているわけです。 そういうことを言い出すと、生体移植に関する法律をつくらなくてはいけなくなってし まう。そこまでは必要ないのではないか。ですから、北村先生がおっしゃったように補 足ではっきりと生体に関するガイドラインですよ、ということがきちんとわかるような 形であればいいのではないか、と思います。ですから、これはこれでいいのではないか。  もう一つ、患者団体としては、この前の移植学会の声明、各調査委員会の報告を受け て、我々としては、いまの日本の現状からして、もちろん亡くなった方からの提供によ る臓器移植を増やさないといけないのは当然ですが、可能性がある場合においては全く ゼロではないということなので、病腎移植に関してはある程度は道を残してほしい。こ れは患者団体は恐らくどこもそうだと思います。  万波先生が行った病腎移植に関することについては、完全に否定的ですが、可能性と してはゼロではないということは、今まで過去にも実際にそういうことがあるわけだし、 生体の親族においてもそういうことがあり得る。  先生がおっしゃったように「有効性及び安全性が予測されるとき」ということは、本 当に有効性と安全性が確立するということは、ほとんど難しい、要するにこういう状況 では臨床研究自体も難しいのではないかと思います。  ですから、我々もこの前も声明では記者会見をさせていただきましたが、移植学会と しても今後データを集めていって、実際にどれだけ有効性があるのかないのか、という ことも見極めていくというようなことを移植学会の声明のあとに理事長もおっしゃって おりました。基本的には何らかの形でこれは研究を進めていけるような文言にしていた だけないかと思うところです。  有効性及び安全性が完全に確立していない限り全く行えないということになると、本 当に実験的にも始められないことになります。この辺は少しどうか。言葉としてはもっ とよい言葉があるのかもしれませんし、ないのかもしれませんが、我々患者団体として は、病腎移植に関してもある程度の研究なりを続けて、実験研究を続けていって、道を 残していただきたいと思っております。 〇永井委員長  いまの点は有効性及び安全性が予測されると書いてありますので、確立ではないので かなり幅を持っているのではないかと思いますが。全くブラインドでということではな いと思います。 〇松田委員  そのように解釈すればいいのかもしれません。 〇北村委員  この臨床指針策定委員会に関与していました。これは前臨床的な研究でいいというこ とにしないとだめだ、というようなディスカッションがありました。ただこれは見直し の時期にきておりますので、いま改訂するという操作に入りつつあるところです。逆に これに、生体の移植についてもこれに従えということにした場合、問題になる点はありま せんか。この臨床指針の方を変えないといけないとか、それは感じておられないですか。 〇原口室長  ひと当たり確認はしたところです。私よりお詳しいと思いますが、臨床研究に関する 倫理指針は、かなり幅広い臨床研究があることを念頭に書かれているという感じがござ いまして、この個別にこの場合に今回の病腎移植を臨床研究として行う場合において、 非常に不都合がありそうと思われるような部分は、私はないように思いました。 〇北村委員  ありがとうございました。 〇原口室長  先ほどの質問が数点ありました中であと一つです。北村先生にもお答えしたところで すが、そもそも臓器移植法という法律自身が基本的には死体移植を前提に規定された法 律ではございますが、ただ当時の資料を見ましても、一部の規定については性格に応じ て生体移植にも適応されるとされております。まさに典型的なのが第11条です。それゆ え、今回、生体移植についての臓器売買事件が立件されたわけでございます。このよう に規定によっては生体移植についても規定しているという形になっているわけでござい ます。  それゆえ、これに係わる事項についてもこの法律でさらに詳細を定め、あるいはこの 徹底を担保するという観点のものとなれば、この運用指針の中で位置づけをさせていた だこうと考えたものでございます。  あと、10ページの細則についての御指摘です。簡潔に書こうと私どもが考え過ぎてい るのかもしれませんが、何かこの規定についてこのままだと具体的にどうという部分が ございますでしょうか。 〇松田委員  文言として、「摘出の必要のない」と書くと、また議論が出てくる。これは具体的に何 を想定しているのか私にはわかりにくい。大島先生、これは対象として適用例が出てく るのでしょうか。 〇大島委員  文書として、確かにこれはわかりにくいですよね。今度の病腎問題では、医学的に摘 出の必要がない。十分に本人に残すことが可能であったものが摘出されたということで しかも、悪性腫瘍ではなく良性疾患の場合ですよね。そういう場合にほかの規定項目で その部分をどう規定していけばいいのかということを考えると、実験的医療というので は説明できにくい部分がどうしても出てきてしまう。そういうところからこういう文脈 が出てきたのかと思ったのです。確かにちょっとわかりにくいですよね。 〇金井委員  教えてください。この場合、同じような状態であった場合には、第三者が評価するの でしょうか。だれが評価して決めるのですか。この状態が良いものを止めるということ になっておりますが、それを第三者が決めるわけでしょうか。 〇大島委員  初めから臓器を提供したいというドナー希望の方が来て、医学的にチェックをしたと きに腎機能がどんな状況かとか、あるいはそこに疾患を有しているのかどうかというこ とは専門医であればほとんど迷うことなく判定はできると思います。 〇永井委員長  いまのところは、したがって本項はこれこれの場合も適用されるとか、シンプルに書 いた方が良いと思います。この結果といわれると、どの結果なのかと戸惑うところがあ ると思います。  それと私からです。この指針は既に移植が適応ありというところからスタートしてお りますね。その場合のメリットと危険性についてちゃんと説明するのがよいでしょう。 特に8ページのところで「移植術を受けるものに対して移植術の内容、効果、危険性に ついて説明し」とあります。そもそも適応ありというところでスタートしているように 思います。もっとほかのチョイスもありますということを提示することがインフォーム ドコンセントの基本です。ですから、選択し得るほかの可能性についてもきちんと説明 しておくということが大事だと思います。すると今回のように本当に移植の適応があっ たのかどうか、という議論まで含めて客観的に当事者が考える余裕が与えられるように 思うのですが、いかがでしょうか。  つまり、ここに移植術の内容、効果、危険性及びほかの選択し得るチョイスについて 説明し、というようなことを一言加えなくてもよろしいのでしょうかということです。  医学的に移植の適応ありとドクターが判断しても、それをすべて患者さんが受け入れ る必要もないと思います。8ページの右のインフォームドコンセントのあり方のところ です。 〇松田委員  これは、それまでに移植とかほかの治療の説明の中で移植にたどり着いたということ を前提として書かれているのではないでしょうか。その前には当然ながらそれがあると いうのは前提事項です。ですからもうここまで来てしまっている。その前のことはいろ いろな治療法の選択というのは、済んでいると解釈できるのではないでしょうか。 〇大久保委員  同意を得るというのは最終段階ではないか。それまでは当然いろいろなことを、移植 医療だけではなく内科医とかいろいろな方からもお話をされると思います。最終的に同 意を得るときのインフォームドコンセントについての記述です。  10ページの件です。細則というのは、基本的に「この結果、親族以外の第三者からの 摘出の必要のない軽度」というのは、これは第三者からの場合のみのことですから、親 族以外の第三者については、必ず倫理委員会においてちゃんと承認を受けなければいけ ないということですね。  それなら、「軽度の疾患を有する腎臓が提供される場合」ということを書かなくても、 こういう場合においてもすべて第三者からの臓器提供については、基本的に倫理委員会 等の承認を得ないといけないということで、細かく書かなくてもいいのではないかとい う気もします。 〇原口室長  御指摘の点につきましては、2ページで見ていただきます。条項の配列は最終的にま た整理をさせていただきますが、終わりから2つ目、それから一番終わりの項目は、こ のように一連に並べました場合に、終わりから2つ目の場合が、病腎の定義があるとは いえ、一番終わりの場合と混同されないように入念的な整理がいらないだろうか。実は、 なくても意味がとおるのではないか、ということがあり、確認的事項なので、あえて本 則レベルにする必要はないと考えたわけでございます。この趣旨は明らかにした方がい いのか、と考えたということでございます。  ですから、なくても意味が通じるという指摘は、実はおっしゃるとおりであろうと思 います。  ここの項目は、先ほど、「この結果」とありますのが、むしろ「したがって」として記 述した方がまだわかりやすいのではないかという御指摘があったと思います。 〇大島委員  それと「したがって」に変えて、親族以外の第三者から「医学的には」という言葉を 一言入れたらどうでしょうか。「摘出の必要のない軽度」というのは、とっても残しても いいと思いますが、「医学的には摘出の必要のない疾患を有する腎臓が提供される場合に は」という、それで多少はすっきりするのではないかと思います。 〇永井委員長  よろしいでしょうか。大分それでわかりやすくなった気がします。 〇松田委員  これは要するに善意の提供の第三者がおられて、調べたら少しその腎臓が少し何か病 気を持っていた、その場合にも倫理委員会に諮って、ちゃんとやりなさいという趣旨で すね。 〇大島委員  それはもちろんそうですが、今まで臓器を提供したいという希望のあった方について は、病気あるなしに関わらず問題にせずにやって来ていましたよね。だからそれは今ま でのルールにしたがってゆけばよいと思います。今度の宇和島での問題では、もともと 病気を持っている人が病気を癒す目的でいるわけですから、その腎臓疾患に対して治療 についての話をするわけですよね。その話をする過程の中で提供という話が出てくるの か出てこないのかわかりませんが、そういう展開になったときに、何かある一定の歯止 めのようなものが必要であるということだと思います。個別にこの場合とかあの場合と いう形で記載することはほとんど不可能ですから、そういう場合の一つの念押しの条項 と考えればいいのかなと思います。 〇北村委員  これは結局はある特殊な状況で、提供者側も受ける側も十分なインフォームドコンセ ントができておれば、病腎移植を容認するという判断と理解してよろしいのでしょうか。 それに対して各学会側は、パブリックコメントした場合にどういう反応になるのか、ち ょっとわかりませんがどうでしょうか。 〇原口室長  改めまして申し上げさせていただきます。事件となりました病腎移植につきましては、 治療上摘出が必要である。適切であるということになって摘出されたが、それが移植に 用いられたわけでございます。早い段階から指摘されておりましたのは、移植して人の 体で機能するなら、なぜその摘出が適当であったのか。そもそもそういうケースがどの 程度あり得るのか、というのが問題視されていたものと思います。  この点に関してです。12ページにある病腎移植のところでは、まさに「治療の必要か ら腎臓が摘出された場合」というようにしておりまして、治療上摘出が必要だったとす れば、恐らくは機能も低いであろう。生着率、生存率等に影響もあり得るだろうし、い まのところはそうした傾向がみられるというデータも公表されている。  こうした中で、これは現時点では医学的妥当性はないという判断もあったわけでござ いますので、このように「臨床研究として行う以外は、これを行ってはならない。」とい う整理をしております。まずこれが1点です。摘出が治療上必要ならです。  他方で、いま一般の生体移植を行います際に、一般の生体移植で提供される腎臓で軽 易な疾患をもつ場合は、それは移植する腎の選択上、出てき得るものである。これはそ うした問題のある病腎移植ではない。もともと提供しようとして、検査を受けて、そし て若干の疾患があるということになったケースなわけですから、例えば、それなら自分 の体に止めるべきであるとか、部分切除にするとか、そういう論点は出て来る余地がな い。提供しようとしているわけですので、そういう余地はないわけでありますし、比較 的機能も高いと考えられる。こうしたものは、一般の生体移植として行われ得るもので ある。この二つの概念を極力分けるべく、このように細則を書いております。  先ほどの臨床研究に関してです。臨床研究というものについては性格上、この分野で の研究はあり得ない、という言い方をすることはできない。学会の声明においても、治 療技術はこれからも進歩していくものとされております。その中でこういう治療法の可 能性があるのかないのかということについて規定することはできない。こうしたことに つきまして、この指針(案)にも反映をさせておりまして、「医学・医療の専門家におい て一般的に受け入れられた科学的原則に従い、有効性及び安全性が予測されるとき」と いうように書きましたのは、現時点でこのような医学的な整理ができるかどうかはなん ともいえないという状況だと思いますが、あるいは現時点でできないとしても、このよ うな医学的な整理ができたときには、臨床研究としてまず行われなければいけない。こ ういう趣旨を記載したものでございます。 〇北村委員  よくわかります。新聞記者さんがその辺にいたら、厚生省は容認したと書きますよね。 これはね。それで厚生省として後々問題はないのか、よく考えておかないといけない。 腎臓は二つあるから、複雑な手術をしてくれるならとってくださいという患者さんはお られる可能性はある。そしてとったあとに、ちゃんと修繕したら使えるという判断で第 三者の委員会にもかけて、した場合には、それを臨床研究として行うという可能性は将 来性はあるという観点を述べられましたが、それなら、こういう条件設定をきちんとで きればあり得る、ということを国は認めたという形で理解されると思います。それでい いのではないかと僕も思うのですが、大島先生どうでしょうか。 〇大島委員  多少誤解されているところもあるかもしれません。もし医学的に全く取る必要はない と判断されて、本人に十分適切なインフォームドコンセントがとられた上で、なおかつ 本人が摘出してくれと、それは医学的には第一選択肢ではなく第二選択肢とか第三選択 肢を、充分に説明を聞き納得した上で本人が治療法として選んだ、そういうケースの場 合に、それをノーということは基本的にできないわけです。  ただしそういう第三選択肢あるいは第二選択肢が選ばれて、一番良い治療法と判断さ れた第一選択肢が選ばれなかったとすればその理由は、きちんとだれが見てもわかるよ うに明らかにするべきであると、ずっと言ってきていることです。  今回のケースについては皆が納得していると言っていますが、そこの手続きが全く欠 落して不明です。その点がおかしいということを言っているのです。  〇北村委員  法律的な細則になるもので、厳密なレベルではあり得ることであるという形でできあ がるということで、先生もそれでいいとお考えですね。 〇大島委員  この辺が、先生が先ほどいわれたように、メディアの方も参加していて、書くときに は容認という言葉がどんと踊るのではないかという話になると、これは非常に困ります。 例えば、捨てられた腎臓を必要としている人につかって何が悪いのだ、受けた人でこう いう人がこんなによくなっているではないか、という記事ですね。これが正当性の根拠 になっているような外に向けてのメッセージですね。しかも年間に捨てられる腎臓は 2,000個あるというわけです。これもどういう根拠なのか、全くわからないですね。  こういう言葉が少なくともメディアの中で踊っているわけです。踊っている中に容認 という一言が入ると、一挙につながってしまう可能性があります。だから適切なインフ ォームドコンセントの取られ方、適切な対応の仕方で、その適切が何かといわれると非 常に問題があるのですが、それを含めて医者の裁量の範囲ではないかといってしまうと、 実際に行われる医療にとんでもなく大きな幅が出てくる可能性もある。  したがって、言葉というのは、とり方によっては危険性が高いのですが、本意は先ほ どいったところだと思います。だからと言ってそれを一律に全面禁止とか全面例外なし に100%だという言い方というのは、これも個人的には不適切であると思っております。 〇松田委員  移植学会の意見もずっと聞いていて、最終的なまとめも見させてもらって、結局は現 時点では医学的に妥当性がないというところまで言い切って、それで臨床研究を残すと いうのは、筋が若干通ってないところがある。私は移植学会が新しい道を探すのは当然 ながら医学の研究者の使命であって、臨床研究に関する倫理指針に則って行う。それを あえて指針に入れる必要があるのかどうかです。  例えば、臨床研究として行うとした場合に、この場合には例えばある病院とか、ある グループでそういう臨床研究をする。それが客観的な指標というか第三者うんぬんで検 証するというものではないかもしれませんね。すると、いろいろなところで臨床研究が 出てくる。それは学会としては、それはずっと眺めているだけしかしょうがないのかも しれない。  私の提案は、病気腎をしばらくは閉ざすということになるかもしれないが、いまの段 階では、これだけ学会関係はおかしかったと言っているわけです。それから遠隔成績を 見ても、許容できない遠隔成績ですよね。これはがんの場合ですね。  まとめて言いますと、病気腎で摘出された腎臓を用いるのは現時点では妥当性がない。 それはそういうことにしておいて、病気腎ということではなしに、新たな治療、腎臓の 移植に関する新たな治療というものを研究する、例えば厚生科研とか何かで日本できち んと検証して、今までやった検証を延長して、きちんとこういうものが本当に妥当性か あるのかどうかというアプローチをしていったらどうでしょうか。  難しいかと思いますが、いろいろな施設で独自に臨床研究をしてくださいというので は、移植学会のメッセージとはちょっと違うと思います。 〇大久保委員  実際にこの腎移植というのは一般医療としてもつかわれていて、今まで、万波先生の 場合には例外中の例外だと思いますが、今までもそのような形で星長先生とかがされた りしている例があります。それだけの医療レベルのあるところであれば、全くゼロでは ないわけです。我々としては、研究なり何なりの形を続けてほしいわけです。ここで反 対してやめましょう、当分の間はやらないということだったら研究しないということに なります。そうではなく、ちゃんと研究をして、それをきちんと学会なりに発表して、 それを検証していって皆がこれはどうなのか、これはだめなのか、ということを続ける ことが学会の研究だと思います。  だからそれを、どこかの研究班だけに絞るのではなく、これだけ一般化した腎移植の 中においては、ある程度臨床研究という形で道を残す、その中でデータを集めていって、 それが実際に当然ながらだめというのはわかります。今回も悪性腫瘍などはほとんど全 部だめです。  我々もそれを望んでいるわけでもなんでもない。でも可能性としてゼロではないので あれば、その方向として少し研究をしていくことをきちんとやっていただきたい。それ は学会としてもやっていただきたいと思っております。 〇松田委員  私は研究をどのように誘導というかまとめていくか、何かそういう道があるのかなと いう意味での提案です。 〇永井委員長  どのように表現するかというところだと思います。病気腎であるかどうかと分けられ るものかどうか。例えば、腎機能がある程度年齢とともに低下している腎臓もあるわけ です。すると何をもって病気腎というのかという議論も出てきます。ですから、病気腎 だから原則としていけないということも、その場合には飛躍があるようにも思います。 〇相川委員  いまのものに関連します。具体的な例をあげて検討するとわかりやすくなるかなと思 って例をあげます。  例えば遊走腎。遊走腎であるがために腰が痛い、場合によっては、血尿も出たり、あ るいは血圧が一時的に上がるということを長く悩んでいて、いろいろな治療法をしたが 余り良くならない。片方だけ。世の中に慢性腎不全で長いこと透析している人がいるの なら、説明を受けた上で遊走腎を摘出するというのは、ベストの治療法ではないが私の 腎臓を使ってください。そういう具体的な例のときに、それをどのような方策で、その 妥当性とか自由意思をはっきりさせてそれが活用できるのかということも具体的にはあ り得るのかなと思います。  これが病気腎であるかどうかも問題です。遊走腎は腎臓を固定する組織においては病 気腎ですが、また長いこと続いていれば腎臓自身も機能が低下しているということもあ りますが、むしろ遊走腎をもっている個人にとっては、場合によってはそれによって高 血圧になってしまったりということがあって、本人は第二、第三の選択肢であるが、ど うぞ私の腎臓を摘出してください。私もその方が楽になります。それに一人の患者さん が移植を受けことがあれば提供したい。  それがまたひとり歩きして、では簡単な解決法で自分が病気で苦しんでいるのだから 提供に走る、ということにも歯止めをかける方策が必要かなと思っております。 〇大島委員  いま相川先生がおっしゃられたようなケースというのは、確かに私も1例経験があり ます。私の場合にはそれはやらなかったのですが、具体的な話をさせていただきます。  小児科病棟で掃除などをやって働いていたおばさんが、腎不全の子供をいっぱいみて いたのです。その方がたまたま自分が胆石で手術が必要になったのです。手術が必要に なったときに、御主人も亡くなっていて、子供も一人前になった、お金についてもある 程度老後についても準備をしているから、あの子供たちのだれかに、どうせお腹を切る のだから腎臓を一つ取ってだれかにやってくれ、とこれは本当に私は訴えられたのです。  いまの相川先生のお話と多少は違いますが、わざわざ病気でもないのにお腹を切って 腎臓をとってもらうというのは困るが、たまたま自分が病気になって、そのチャンスに お腹を切るのだから一つとってくれというケースが現実にあった、他にどういうケース があるのかわかりませんが、そういう場合が全くないわけではない。全くないわけでは ないが、しかしこれは極めて例外的な話です。例外的な話を一つ一つこういう場合、あ あいう場合という格好で、記述するというのは不可能だと思います。  したがって、今度の場合も私の個人的な感じとしては、宇和島のようなことが起こら なければ、わざわざこういうものをつくってやる必要はほとんどないわけです。ああい うことが起こって、しかも、自分たちの行ったことの何が悪いのだと、いまでもそうで すよね。社会にどんどんアピールして訴えかけているという状況です。社会全体もそれ を非常におかしいことであるという論調がありながら、一方で非常に同情的というか共 感を示している部分もある。  そういうところで何らかの歯止めと大久保さんがいったように、医学研究というもの を100%閉ざしてしまうようなやり方をしないで、一定の防止策のような何か指針を出 さざるを得ないという状況になっている、というのがいまの状況ではないかという感じ がするのです。 〇北村委員  繰り返し問答になる問題ですよね。厳格には可能性を残すということであれば、例え ばそういう病気腎移植のときはどういう委員会判定なのか、あるいは公的な委員会で審 議して、明日亡くなる患者さんから取り出すという緊急の場合には問題はあり得るかも しれませんが、それは例外的として、公的な判断を仰ぐ、それは移植学会でも国がよい というのであれば、そこに委託して判断させるとか、あるいはこういう公的審議会で判 断した場合には認め得る可能性はあるが、現時点としては禁止という形でまとめないと しかたないのではないかと思います。  厚生省としては、そういう事態のときには、厳格にして認め得る可能性を残している のでしょう。この文書で。 〇原口室長  今回の一連の事件の教訓としては、行われていた病腎移植はまず否定されなければい けないというのが1点だと思っております。 〇北村委員  ここで、できましたよね。 〇原口室長  それと、記述するに当たりまして、論理的に臨床研修の可能性がないとまで書いてし まうわけにはいかないだろう、こういうことで規定を考えたものでございます。先ほど の御指摘に関して申し上げますと、治療の是非について個別に認可制度を設けましょう ということを言い出すのは、無理があるのではなかろうかと思いますので、そうでない 範囲でどのように規定するのがよいのか、先ほどは松田委員の御指摘では病腎移植につ いてうんぬんということを具体的に書くまでまだ熟度がないのではないか、という御指 摘であろうと承ったところでございます。 〇北村委員  行政でこれの適否を判断するというのはなかなかですね。省令のところでもどこどこ 学会に審査を任せるというのはあるわけです。ですから移植学会にそれを公的に判断し てもらうようにしてはどうか。専門家で第三者の集団ですから判断させた場合でないと、 これは容認と新聞は書くと思います。条件が揃えばね、しかし書いてもらっては困るの であれば。 〇大島委員  いまの状況でいくと、宇和島の実際にやったのは、かれらは学会の判断がこうである という判断を下しても、従わないということをかなりはっきり言っておりますよね。し かし、国という話になるとこれは従う。学会のいうことは納得は全然いってないわけで す。 〇松田委員  先ほどちょっと話題にでましたが、室長ははっきりおっしゃらなかったが、保険の請 求、そちらからくくって進める仕組みはできないのでしょうか。 〇原口室長  医療保険についてこの場で責任を持ってお答えすることは少し難しい点がございます。 ただ、この一連の移植については、保険上でみられるような内容のものではないだろう、 またそのことは明確にしていくべきものであろうというようには思います。 〇永井委員長  紛糾をしてしまってなかなかまとまりがつかなくなってしまいますが、いかがでしょ うか。もうちょっと継続した方がいいのか、あるいは表現をあとで持ち回りで御審議い ただくか、基本的には全くは閉ざさないということだと思います。表現の仕方ですね。 〇大久保委員  病腎移植というのは、万波先生がやった病腎移植に関しては否定するのは皆が同じで、 それは問題はないと思います。ですから万波先生がやられた移植に関しては否定される のは当然です。ただ、ゼロにしない、何らかの形での道を残すというところを苦労して このようになっていると思います。それは皆さん原則的にも同じだと思います。 〇金井委員  専門家の場合ですとよくわかりますが、一般の方からみますと同じようにとられる可 能性はありますよね。 〇山勢委員  いまの御意見と同じです。一般的に病腎移植と書かれること自体が、移植してはいけ ないガンというところから、腎機能が落ちていない結石とか遊走腎というところまで全 部を含んでしまう。そうすると一般の方からみれば、病気腎移植ということで、それを 容認されたとなると非常に危険性がある。軽症から重症まで、軽症であればなんとか治 療可能性があれば、移植の可能性があるのだということが表現できる言葉があればいい のかなと感じております。 〇永井委員長  どうでしょうか。ちょっと表現の仕方についてもう少し事務局と相談して、それをま たきょう欠席の先生方を含めてその辺を持ち回りで御審議いただき、それでまだ合意が 得られないということであれば次回さらに継続審議ということでいかがでしょうか。そ の辺の病腎という使い方ですね。これをもう少しいい表現ができないか。適用とかあり 方を、あるいは新しい医療のあり方について研究として進めるということ、そういう手 続き、しかも中だけで審議をしないということは大事ですね。新しい医療のあり方です から、これは外部の委員を加えた形でIRBを必ず開くとか、そういう新しい臨床研究 の進め方についてもう少し明確に書いておく、その中で検討していくということだろう と思います。そういう形でできるだけ病気腎という話にはならない方がいいのではない かと思いますが、北村先生そういうことでいかがでしょうか。新しい移植の技術適用に ついては臨床研究の中で進める。 〇北村委員  それは皆がそう思っておられる、大島委員もそう思っておられる。究極のポイントは ね。突き詰めればね。ただこれは、厚生省という国が出す法律の中で臨床研究をすれば 認められるというのは、比較的簡単かなとも思うし、もう少し明確にいまのやり方はだ めだということを示すべきということも皆がよくわかっているわけです。こういう臨床 研究を組んでやれば道はあり得るということを全面に国として出してよいかということ だけを決定すれば。 〇永井委員長  あとは透明性とか公開性、評価、そういうことが非常に重要になる。移植に関係する ことについては相当厳格にやっていかないといけないだろうと思います。そういう形で 道は閉ざさないということが妥当のように思います。 〇大久保委員  ちょっとわからないことかありますので大島先生に伺います。臨床研究をするという ことは学校内、大学なり病院の中ですごい審査をしないことには始められないわけです よね。だからさっきいったように、ここに出してくるという以前に臨床研究をするとい う段階で、その中でいろいろな条件が入ってきて、審査が入ってきて、初めて施設にお いて臨床研究をするのかしないということが決定されるということは、いまここに書い てある臨床研究として始める、臨床研究ならば可能性として道を残しましょうというこ となので、相当に厳しい状況での条件がかかっていることだと思います。 〇大島委員  これは本当に大学の例をあげるまでもなく、臨床研究を行うというのは大変な手続き などで大変です。少なくとも研究計画書というのは、そこに何を記載して提出しないと いけないのかということから始まって、これは大変な作業、手続きなのです。ところが 今回の場合に、行われたことが臨床研究に属するようなことであったのかという認識が あったのかということすら疑問です。  普通、治療法として認可されていないことだとか、禁忌とされているようなことにト ライをするというのは、これは臨床研究以外に何者でもないわけです。そこで手続きも されていない、そもそもこういうものが臨床研究なのかどうかというような認識すらあ ったのかどうか、ということに疑問を抱かざるを得ないというのが今回の状況です。  しかし、そういう全体を含めて医学界というか、医学界の中ではそれは物すごく厳し く糾弾されることですが、社会全体がそういう認識をしているようには何か思えないと ころがあります。そこに非常にずれがある。 〇永井委員長  今回の場合には問題があるということです。移植というのは、例えば、原則として健 全な組織を移植するということが原則としてまずあって、それ以外のもののあり方につ いては臨床研究で解決をしていく。そのくらいの表現でどうでしょうか。 〇相川委員  賛成です。 〇大島委員  そこまで言ってしまうと、例えば言葉の遊びのようですが、非常に極端なことをいう と、亡くなられた方から提供されるものというのは健全な状況ではあり得ない、阻血時 間がありますということです。そういう状況を踏まえて研究が非常に進んできているの です。  したがって、いまの表現だと、ちょっと具合の悪いことになる。 〇永井委員長  すると原則としての中にも入らないのですか。つまり死体腎の場合でも機能は回復し 得るという中での健全性というのはあるわけですね。その範囲、その線引きのところを どうするかという問題なのですね。それは研究の課題になるわけですね。確かに死体腎 の場合には病的腎といえなくもないですね。虚血ですから。 〇大島委員  強いて言えば、現在少なくとも標準的な形で認可されていないような状況の、それは 何かわかりませんが、状況での移植が行われるような場合でしょうね。そういうものに 対して現在の医療水準というのが移植の医療水準を超えるものについての新しいあり方 に対する研究とか、そういうもの、一般論でいうとすればそういう言い方しかないでし ょうね。 〇永井委員長  まさにそうだと思います。それをあえて病的腎をどうするかというように記載する必 要はないように私は思います。新しい医療を行う場合にこういう手続きを踏みなさい。 ただし移植ですから、とにかく透明性と評価ということを相当にきっちりやらないとい けない。そういう形の修文でいかがでしょうか。これは非常に奥の深い問題で、医療と 研究というところに踏み込んできた問題ですね。  そういう形で事務局と打ち合わせをさせていただき、また先生方に回覧させていただ きます。それでもまだ問題があるということであれば、さらに継続審議としたいと思い ます。きょうのところはそういう形でまとめておきたいと思います。  大分時間を超過してしまいました。 〇原口室長  いまの点につきましては、委員長と相談をさせていただきたいと思います。それとこ の指針(案)でございますか、形式的には行政指導の指針という位置づけになろうと考 えられまして、行政手続法に基づきパブリックコメントの手続きを得なければならない ものというふうに思っております。御相談をさせていただきましたあと、そういう手続 きをさらに得ることになるだろうと思っております。申し上げておきます。  では、以下の報告事項を手短に説明いたします。 〇矢野補佐  時間が押しておりますが、最後に資料5・6・7に基づき3件ほど報告事項でござい ます。  まず資料5、「移植施設(レシピエント)への意思確認時期について」でございます。 これはこれまでの臓器移植委員会でも議論がされたものでございます。臓器提供の意思 を確認してから摘出終了までにかかる時間が長く、これが臓器の提供者の遺族や臓器提 供施設の負担を重くしているという指摘があります。移植実施施設、レシピエントへの 意思確認実施時を第2回目の法的脳死判定終了後にいま現在行っているわけですが、こ れを第1回目の脳死判定終了後に早められないかという論点がございます。  これに関しまして参考資料8・9で添付しておりますが、臓器移植関連学会協議会、 及び日本救急医学会から要望が出されているということを御報告させていただきます。  ちなみに、直近では、平成16年第18回臓器移植委員会で議論をいただきまして、現 状が望ましいという意見、1ページの下です。それから早期化が望ましいという御意見、 それぞれの意見をいただいているところです。  なお、前回の委員会で提出させていただきました脳死判定事例に至る所要時間と、移 植臓器の経過について、6・7ページにつきましてデータをネットワークで更新してい ただきましたので現状について簡単に御報告をお願いします。 〇小中委員  御報告させていただきます。6ページです。この表は、脳死判定事例に係る平均所要 時間第1例から第39例までの平均値でございます。総時間は平均44.5時間です。2回 目の脳死判定が終了してから意思確認を開始しますが、その後摘出手術を開始するまで の時間か10.5時間であり、長いことが問題となっております。そこで第1回目の脳死判 定が終了後に、レシピエントの意思確認を開始すれば、この時間が短縮できるのではな いかと検討されています。  さらに次の7ページをごらんください。ちなみに脳死臓器提供事例のうち第2回目の 脳死判定が終わってから摘出手術開始までの所要時間の長い場合と短い場合に分けて提 供臓器、移植後の成績をまとめました。  まず、長い時間は17時間以上のAからGまで7事例まとめておりますが、このような 経過になっております。さらに、短時間は8時間未満の5時間から7.8時間ですが、7 事例まとめ、表の右にその提供臓器と成績を紹介しております。  この両者の比較からは、提供臓器、成績に、大きな差はみられておりません。 〇矢野補佐  資料5の論点に関しまして、学会の要望の御紹介と現状のデータについての御説明は 以上でございます。  資料6でございますが、臓器移植に関する世論調査の要旨をつけてございます。これ は、平成10年から2年ごとに実施をしておりまして、今回で5回目でございます。昨年 の11月に調査を実施しまして、今年の1月に内閣府の方で発表があった資料でございま す。個々の説明については省略をさせていただきます。  最後に資料7でございます。これは昨年の4月の臓器移植委員会でもお話をさせてい ただきました。臓器提供意思登録システムについて、運用が開始されましたのでネット ワークから御報告をお願いします。 〇小中委員  では1ページにシステムの概要を紹介しております。趣旨だけを読ませていただきま す。  趣旨は、インターネットを活用して臓器提供意思表示カードを普及することにより、 カード所持者の一層の増加を図るとともに、臓器提供に関する意思がより確実に確認さ れるようにするため、日本臓器移植ネットワークにおいて、臓器提供意思登録システム を整備する、ということでございます。  システムの概要ですが次のページをみていただきたいと思います。平成19年3月5日 に登録開始をしております。その登録者は、4月16日現在は5,400名で、本日現在が 5,563名になっております。  携帯電話、パソコンからネットワークのホームページの登録窓口にアクセスしていた だき、情報を入力していただき仮登録をしていただきます。ネットワークでは仮登録さ れた方に対してID番号と臓器提供に関する意思を印刷したカードを郵送します。次に 本人が郵送されてきたものをもとに登録窓口にアクセスして、本登録サイトでID番号 とパスワードを入力して本登録の完了になります。  現在、この意思登録に対して、現段階で20件の検索を行いました 。 〇永井委員長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。御質問等がございましたらお願いし ます。よろしければ御了解いただいたということで進めさせていただきます。最後に事 務局から御連絡をお願いします。 〇原口室長  臓器移植運用指針につきましては、本日御指摘をいただきましたことを受けて、永井 委員長と案をつくりまして御相談をさせていただきたいと思います。この会議で必要が あれば再度の議論があり得るということでございます。これまで3回議論をいただきま して誠にありがとうございました。  次回の日程につきましては、改めて議事を整理して日程を調整させていただきます。 本日はありがとうございました。 〇永井委員長  ありがとうございました。これで終了させていただきます。 (終了) 照会先:健康局臓器移植対策室 丹藤、矢野 内 線:2362、2366