07/04/02 第14回労働政策審議会議事録 第14回 労働政策審議会議事録 日 時 平成19年4月2日(月)15:30〜     場 所 厚生労働省省議室(9階) 出席者【委員】公益代表  菅野会長、今田委員、今野委員、齋藤(邦)委              員、諏訪委員、清家委員、西村委員、林委員、              横溝委員  労働者代表 植田委員、岡本委員、小出委員、古賀委員、中              島委員、土屋委員、森嶋委員、山口委員 使用者代表 井手委員、伊藤委員、岡部委員、勝俣委員、加              藤(丈)委員、紀陸委員、齋藤(朝)委員、佐              々木委員、柴田委員    【事務局】上村厚生労働審議官、松井総括審議官(国際担当)、青木労         働基準局長、高橋職業安定局長、奥田職業能力開発局長、         大谷雇用均等・児童家庭局長、金子政策統括官、中野政策         評価審議官、山田労働政策担当参事官 議 題 (1)平成19年度予算の主要事項について(労働政策関係)     (2)各分科会等の審議事項の検討結果報告(建議・答申等)     (3)「成長力底上げ戦略」等について     (4) その他 配布資料 資料1   平成19年度予算の主要事項(労働政策関係)     資料2−1 分科会及び部会における検討状況について     資料2−2 付 属 資 料     資料3   「成長力底上げ戦略」(基本構想)について     資料4   「子どもと家族を応援する日本」重点戦略について 議 事 ○菅野会長  ただいまから第14回労働政策審議会を開催いたします。本日の議題は3点 ございます。第1は「平成19年度予算の主要事項について(労働政策関係) 」、第2は「各分科会等の審議事項の検討結果報告(建議・答申等)」、第 3は「『成長力底上げ戦略』等について」です。また、「その他」として事 務局から報告がございます。 それでは、事務局から、まとめて説明及び報告をお願いいたします。 ○山田労働政策担当参事官  資料1、平成19年度予算の主要事項です。時間が若干経過していますが、 経済情勢、雇用情勢、全体としては改善している中で、一方では格差問題の 指摘等があるわけです。正規・非正規問題等を含めて雇用の質をどうしてい くのか、こういったことが課題となっています。そのような中で平成19年度 予算においても、こういったことへの対応が前面に出る形になっています。 第1のところで「公正かつ多様な働き方の実現と働く人たちの安全の確保」 が前面に出ている、という内容です。  資料2-1では、これまで分科会、部会で検討していただいてきた状況を踏 まえ、第166回国会提出法案の内容が書かれています。資料2-1の3頁目に「 雇用保険等の一部を改正する法律案について」とありますが、雇用保険法等 の関係について国会で成立が遅れたことについては、後ほど職業安定局長か ら説明させていただきたいと思っております。  資料2、本国会提出法案です。資料2-2の3頁目に「法案概要」として掲げ られているように、6本の法案について国会に提出していきます。各分科会 で精力的にご審議いただいたものが国会提出ということになっています。  資料2-2の1頁目、2頁目は、それぞれの法案、現在抱えているさまざまな 課題ごとに趣旨を整理したものです。これについて少しご説明したいと思い ます。  1番目に「就業率の向上」と書いてありますが、人口減少社会という状況 の中でこれに対応しなければならない、就業率のアップをどうしていくか、 雇用対策法の改正の中で働く希望を持つすべての人の就業促進を法目的に追 加等々さまざまな方が就業に参加する、こういった趣旨の法改正をしており ます。その中で雇対法の3ポツ目、募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化 については、与党審査の中で義務化という形で法案提出ということになって います。  2番目、3番目が非正規雇用の増加に対応した政策の方向です。政策の軸と しては2つあるのではないかということです。若年フリーターをはじめとし て正社員になりたいという希望が非常に大きいことを踏まえると、非正規雇 用の正規雇用への移行促進が1つの軸として重要であろうということで、雇 対法の改正の中で、若者の能力・経験の正当な評価と雇用機会の確保という ことです。その下の1ポツ、募集方法の改善ですが、例えば応募資格の既卒 者への開放等々を事業主の努力義務にするということが1点です。パート法 ですが、パート労働者の正社員への転換の促進ということで、ここに赤い字 で書いてあるようなさまざまなことを措置として義務化するということです。  非正規雇用の増加に対するもう1点の軸です。これから人口減少社会へ向 かい、女性や高齢者がそれぞれの都合あるいは健康状況に即した形で働ける。 このようなことを考えますと、非正規を含む労働者の安心・納得できる働き 方、幅広いところでの安心・納得をどう確保するかということも重要になっ てくるということです。パート法の中では、均衡のとれた待遇の確保、ある いは労働契約法案の中では、有期労働契約も含め、労働契約の成立・変更・ 終了等に関するルールの明確化、さらに最低賃金法の改正の中では、地域別 の最賃の見直しということで、生活保護との整合性も考慮するように決定基 準を明確化するとともに罰則を強化する、ということを掲げております。雇 用保険法の改正においては、従来、短時間労働被保険者については12月勤め なければ基本手当の受給要件がなかったわけですが、今回の改正で受給要件 を一般被保険者と同じく6月に短縮するということになったわけです。  次の頁です。もう1つの課題として、少子化という観点からも働きの見直 しが大きな課題となっているということで、仕事と生活の調和のための対策 ということです。労働基準法の改正、長時間の時間外労働に対する割増賃金 率の引上げについて、今回、中小企業に対しては猶予措置を設ける中で行う ということ。また、いわゆる自己管理型労働制の問題については、与党審査 の中でさらに十分な議論が必要であるということになっているということで す。雇用保険法の改正の中で、育児休業給付の拡充、給付率の引上げという 内容が盛り込まれているところです。  資料3、「成長力底上げ戦略」の基本構想です。これは、2月15日に官房長 官をヘッドとする「成長力底上げ戦略」構想チーム、この中には厚生労働省 からも次官、公労使がメンバーとして入っていますが、ここでまとめられた 基本構想です。趣旨としては、格差の固定化を防ぐ、働く人全体の底上げを するということです。これを政府が一体となって、あるいは産業界、労働界 も一緒になってこういった取組をしていこう、このような構想です。先般、 3月22日にこういった産業界、労働界も巻き込んだ形での円卓会議第1回目が 開催されたところです。  中身について、資料3の8頁に「成長力底上げ戦略」における新規施策等と いう概要ペーパーがあります。1番目の○から3番目の○がいわゆる3本の柱 です。1番目の柱は「職業能力形成システム(通称ジョブ・カード制度)」 です。職業能力形成プログラム、これまでの座学にプラスしてOJTも絡ませ た形で効果的な訓練を行っていくということと、それをやっていく中で「ジ ョブ・カード制度」ということで能力評価の視点を加える、こういったこと をやっていってはどうかというものです。  2番目は『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』策定・推進です。「福祉か ら雇用へ」という流れは既に形成されているわけですが、この流れを具体的 な目標設定をもって計画的に実施していこうというものです。  3番目は「生産性向上と最低賃金引上げ」に向けた産業政策と雇用政策の 一体運用です。これは、生産性向上と最低賃金引上げに関する政労使の合意 形成をしていくというものです。具体的な額についてはもちろん最賃審で決 めていくわけですが、そのための雰囲気づくり、全体の合意形成をやってい こうというものです。また、生産性向上を踏まえた最賃の引上げとなります と、雇用政策のみならず、産業政策も組み込んだ形で一体的にやっていかな ければいけないということで、今回、経産省、中小企業庁も一緒になってこ の問題に取り組んでいこうということになっています。  円卓会議の設置です。1番目、2番目の課題については、当然産業界の協力 が必要ですし、3番目の最賃の問題については、当然労使間の合意形成が重 要であるということで、産業界、労働界を巻き込んだ円卓会議の設置をする、 このような内容になっています。  資料4、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略です。これについても、 官房長官がヘッドとなった形で取組をしていこうということです。基本的に、 昨年の末に新人口推計が出て、今後少子・高齢化が一層進むという見通しが 出てきたということで、従来から少子化対策についてはさまざまな取組をし ておりますが、もう一段の戦略を立てていく必要があるということで、重点 戦略の策定をこの場でやっていくというものです。  2頁目です。少子化社会対策会議の下に重点戦略検討会議を設けます。その 下に4つの分科会がぶら下がっており、その1つとして働き方の改革分科会。 ワークライフバランスの問題、子育てをしながら働き続けられる働き方の実 現の問題、若者の経済的自立の問題、さまざまな働き方に関わる問題もこう いった大きな課題の下で検討していこうということです。いずれにしてもこ の問題は、働き方あるいは子育て支援策、財源の問題、税制の問題をどう考 えていくか、非常に総合的な対応が必要だということで、こういった大きな 枠組の中で検討していくということになっているわけです。以上、駆け足で したが、資料の説明をさせていただきました。 ○高橋職業安定局長  2点ほどご報告させていただきます。第1点です。先ほども参事官から少し ございましたが、雇用保険法等の一部改正法案につきまして、労働政策審議 会よりご答申をいただき、国会に提出し、審議をお願いしてまいったわけで す。この改正事項の中には4月1日施行を予定しておりました部分があったわ けですが、先般、私どもの大変申し訳ない事務的なミスにより、参議院での 議決が延期されたわけです。この改正法案については、現時点においても成 立を見ていないという現状にあります。そのミスの内容ですが、法律成立後 に配付するために準備しておりました改正内容の周知資料を誤って改正法成 立前に関係議員の一部の事務所に配付してしまったというものです。大変申 し訳ない事態になったわけで、改めて労働政策審議会の委員の皆様方にお詫 びを申し上げたいと思います。私ども、できるだけ早く、国会のご理解をい ただきながら1日も早い成立を期すべく、さらに努力をしていきたいと思っ ております。また、4月1日施行を予定しておりました事項、特に保険料率に 関わる部分等々について国民の皆様方への影響ができるだけ最小限になるよ うに、できるだけの対応をしていきたいと考えているところです。改めてご 理解を賜りたいと思っております。  いま1点のご報告事項です。既に委員の皆様方も新聞報道等でご案内のこ とかと思いますが、先週金曜日に、ハローワークとILO条約に関する懇談会 の報告書が取りまとめられたという報道がなされていたかと思います。これ は、大田特命担当大臣の私的諮問機関として花見忠座長の下での懇談会が設 置され、その懇談会での報告書がまとまったというものです。この懇談会が 設置された直接の経緯ですが、昨年11月30日の経済財政諮問会議において、 民間議員からハローワークの一部を包括的に民間委託できないだろうかとい ったご提案がございました。このご提案が、ご案内のとおりILO88号条約と いう職業安定組織に関する条約があるわけですが、これとの整合性を検討す る目的で設置されたものです。  ILO88号条約においては、おおむね3つの点が規定されています。1点目は、 国が無料の職業紹介を行う職業安定組織を創設・維持するということ。2点 目は、職業安定組織は各地域に十分な数で地域の労使の利用に便利な位置に あるネットワークからなること。3点目は、職業安定組織の職員は公務員で あること。こういった主な3点が規定されています。この包括的な民間委託 が果たしてILO88号条約に抵触するのかどうかということ が1つの大きな論 点として検討されたというものです。報告書の結論部分では、委員の見解と して4つの見解が整理されていますが、実質的には条約違反か否かで見解が 分かれた内容となっているというものです。  私ども厚生労働省としても、この問題について労働法、国際法、経済学等 々の専門家の先生方からもご指導をいただきながら、現在、これらの見解に ついて検討しているところで、近日中に当省としての考え方を取りまとめ、 公表していきたいと考えているところです。そのようなことを前提に私ども としての現時点での立場、考え方をご説明しておきたいと思っております。  大きく第1点として、ILO88号条約との関係についてです。先ほど申し上げ ましたように、見解として抵触する・しないということが大きく分かれたわ けです。ILO88号条約の解釈権限は第一義的には各国に委ねられている、そ のことはまさにそのとおりです。ただ、同時に、ILOは他の国際機関とは異 なる特徴を持っているわけで、条約違反との問題提起に対しては、条約勧告 適用専門家委員会等の監視機構の見解に基づくいわば準司法的機能を有して いる。そうした中でこれが条約違反であるという形で問題提起された場合、 国としても大変困難な対応を迫られる可能性があるということです。  大きく2点目として。このILO条約の問題もさることながら、政策的観点か ら考えたときに、私ども、民間議員提案は非常に重大な問題があるのではな いかと考えているところです。具体的に申し上げますと、1点目として、現 在職業紹介事業は、これまでの大幅な規制緩和により、既に原則自由化され ています。そういう中で民間の事業者は、自由に事業展開が可能になってい るわけです。そういう中で、こうした民間の事業者を通じてはなかなか就職 できない、あるいは結果として就職できない、そういった方々にとっての最 後のセーフティネットがまさにハローワークであると考えているわけです。 そういう中でハローワークの組織、具体的に言えばネットワークをどのよう な形で設定するのかは、それぞれの時代、時代、あるいは地域の経済・社会 情勢の変化、さらには、いま申し上げましたような民間の事業者の利用拡大 等々に対応してできるだけ簡素なものに見直していくべきものである、とい うことは申し上げるまでもないわけです。そうした際にできるだけ簡素な組 織にしていくプロセスの中で、現在の姿から見ると余剰の部分がもしあるな らば、それは廃止すればいいのであって、それを民間委託するという選択は 果たして国民のご理解を得られるのだろうかという点です。  セーフティネットとしての公共機関であるハローワークの政策的意義とい う観点から見てもいろいろ問題があります。即ち、日本国憲法第27条におい て勤労権の保障が謳われているわけですが、これを具現化するために国が国 民に無料の職業紹介の機会を提供いたすとともに、勤労の義務という観点か ら失業中の生活補償として労働の意思を確認しながら失業の給付を行ってい るという点。また、ハローワークは、当然、職業紹介だけを行っているわけ ではないわけです。職業紹介、失業給付、雇用対策、特に事業主指導といっ たものを中心とした雇用対策を一体的に実施する、それがまさにハローワー クの中核業務、中核機能であるわけです。そうした中核業務を一体的に実施 することにより、初めて再チャレンジ支援、成長力底上げ戦略といった現下 の大きな政策課題に実効を期することができるものと思います。また、失業 給付の乱給を防止していくためにもこの一体的実施が不可欠のものであると 考えているところです。この点については、OECDの雇用戦略においても3つ の機能は統合されるべき旨勧告されているところで、主要先進国においても、 そうした考え方は共通の考え方となっていると理解しております。さらに、 現在のハローワークのネットワークは、管轄を超えて求人・求職情報を全国 レベルで共有し、また、全国レベルで管轄を超えて職業紹介を行っていると いう現状にあるわけです。そういう中で仮に1カ所でも包括的に民間委託を するとした場合、私ども、いくつかの懸念があります。  1つは、社会的弱者としての就職困難者が結果として置き去りにされかねな いのではないか、このようなことにより公平・公正なセーフティネット機能 を果たせなくなる恐れがある。  いま1つは、受託者が受託する民間事業者が全国の求人・求職情報にフリー にアクセス可能となるわけですが、そうした場合、他の民間事業者間での公 平・公正な市場競争の観点から、これが阻害されかねないのではないかとい うような懸念も併せ持っているわけです。  縷々申し上げましたが、私どもとして現時点で考えますと、経済財政諮問 会議の民間議員の提案については、極めて重大な問題を内包していると考え ているところです。申し上げるまでもないわけですが、私どもハローワーク の中核業務以外のハローワーク事業については、これまでも民間委託につい て積極的に対応してまいりましたし、この4月から開始される市場化テストに おいても、3つのハローワーク事業を各府省の先頭を切って対応させていただ いているところです。この中核業務以外のハローワーク関連事業については、 サービスの質の向上あるいは行政の効率的、効果的な運営に資するかどうか といった政策的判断を行った上で、今後とも積極的に市場化テストなり民間 委託に対応していきたいと考えている次第です。一応ご報告です。 ○菅野会長  ただいまのご説明及びご報告についてご質問等がございましたらお願いい たします。 ○植田委員  平成19年度予算の主要事項の3頁目、第2の経済社会の活力の向上に向けた 人財立国の実現に関連して2点発言させていただきます。  1点目は、職業能力開発における企業の役割、責任及び国の支援のあり方 についていま一度再確認させていただきたいということです。バブルが崩壊 して以降、企業の投資活動が長期に停滞する中で企業による人材投資が減退 した結果、教育訓練の不足による事故、不祥事が発生し、また、技術・技能 の継承もうまくいかないなど、いわゆる現場力の低下という事態が発生して おります。能力開発に対する基本的な考え方として、労働者の職業能力とは、 長期雇用の下、職務経験を通じて形成されるものです。したがって、労働者 の職業能力を開発していく役割なり責任は、主として企業にあることを再確 認すべきだと思います。基本的に担い手は企業であるということ、その上で 国のやるべきこととは、企業の職業能力開発の取組を促進させるよう企業へ の支援を充実させることではないかと考えます。これが1点目です。  2点目は、第2の1、第1の1の(2)(3)にも関連してくるところだと思う のですが、近年、雇用、就業形態の多様化が急速に進んだ結果、非正規労働 者が急増していますが、非正規労働者は、正社員と比べ、場内で十分な教育 訓練を受ける機会が極めて限られているのが現状です。したがって、非正規 労働者に対する職業能力の開発機会の拡充が今まさに求められていると思う のです。そこで、具体的な国の支援内容というところで、例えば派遣労働者 に関しては、誰が主体となり、どのような場で教育訓練を行っているのでし ょうか。あるいは、就職氷河期世代の年長フリーターといった方が、正規の 職に就けるまでの教育訓練には国の支援が必要と思われますが、公共の職業 訓練機関等では、具体的にどのような訓練が行われているのでしょうか。 併せまして、冒頭、山田参事官から法整備上の重要な軸として非正規雇用の 正規雇用への移行促進というお話もございましたが、そういった正社員化に 向けて何がネックとなっているのかをこの場で確認させていただきたいと思 います。以上2点、よろしくお願いいたします。 ○菅野会長  では、一通りお聞きします。 ○土屋委員  1-1の公正かつ多様な働き方を実現できる労働環境に対して2つ発言させて いただきます。1つは個人請負の保護についてです。私ども連合としては、 労働契約法の議論の中で経済的従属性の強い個人の請負の人たちについても 労働契約法の対象に含めるべきだと、こう主張を申し上げてきました。ご承 知のように、例えばトラックの傭車の運転手あるいはNHKの料金の集金人等々 のように契約の打切りなり代金の未払い、あるいは安全衛生の取扱い等々さ まざまな問題を抱えているわけですが、残念なことに実態の把握が大変難し い状況にあると考えております。  一方、新たな問題として、最近ではバイク便をめぐる本が出されています。 また、テレビでも取り上げられたように、バイク便のドライバーの問題も浮 上してきています。バイク便はいわゆる貨物自動車運送事業法の適用を受け るものですが、我々の調査では、おそらく全国で1,000社程度だろうと推測 しておりますが、そのほとんどは大都市に集中しています。そして、この業 界で働くのは圧倒的に若い人たちが多いということですが、そのほとんどの 人たちは、雇用契約ではなく、請負契約になっています。したがって、想像 のごとく、社会保険なり労働保険は未加入ということですから、事故が起き た場合の補償は何もないという状況にあります。また、大半が仕事柄、即日 時間指定という急送便になっていますから、現実には、働き方は労働時間の 管理がされていると同時に、劣悪な労働条件の中で労働者的な働き方をして いる、と我々としては考えております。こういう中で個人請負の問題につい ては、問題を放置せず、早急な対応を図るべきだと私は考えております。し たがって、経済的従属性のある個人請負の人たちへの適切な保護の観点から、 まず実態調査を行うようにご要請したいということが1つです。  2つ目として、労働者派遣なり請負についてです。厚生労働省として、製 造業を中心に偽装請負の適正化への指導・監督の取組が強められているとい う状況にありますが、残念ながら、法違反はまだまだ存在するという状況に あると思っております。ご存じのように、偽装請負の場合には職業安定法違 反に留まらず、労働基準法なり労働安全衛生法における使用者の責任が曖昧 となるなど、労働者保護の観点から言えば、問題が生じると受けとめており ます。また、当初派遣法が想定していなかった日雇いの派遣、あるいは、ス ポット派遣と呼ばれる形態の派遣もあります。加えて、能力開発の機会に恵 まれないまま日雇いで就労している若い人たちが多い実態もあります。そう いう意味から言っても、このような課題についても、実態を把握した上で是 非労働行政として対応していただきたいということを強くお訴えしたいと思 っているところです。 ○柴田委員  私からは、若年雇用に関連して2点申し上げます。1点目は雇用対策法につ いてです。先ほど山田参事官より、若者の能力・経験の正当な評価、雇用機 会の確保、事業主の努力義務をするという改正法案が今国会に上程されたと いう報告がございました。それに伴い、法案成立後には、事業主が適切に対 処するために必要な指針が策定されるということになろうかと思います。産 業界としては、この若年者雇用対策の重要性は十分に認識しており、意欲と 能力のある若者には積極的に就労の機会を提供していきたいと考えておりま す。とは言いましても、こうした取組を行うのはあくまでも個別企業ですの で、指針の策定に関しては、企業経営への慎重な配慮をお願いしたいと思い ます。  2点目は成長力底上げ戦略についてです。若者が就労機会を獲得するに当た っては就労能力の向上が肝要であると思いますので、産業界としても、能力 発揮社会の実現に向けた取組について、できる限り協力していきたいと思っ ております。具体的施策の中に、資料2の2頁でしたか、「ジョブ・カード制 度」と書いてありますが、このジョブ・カード制度を構想中ということにつ いて。この制度構築に当たっては、従来、「実践型人材養成システム」とい うシステムがありましたが、そういった既存の仕組みやノウハウを適切に組 み合わせ、より多くの企業が協力しやすい制度にしていただきたい、この点 についてご留意いただきたいということです。 ○森嶋委員  私から、安全・安心な職場づくりに関連して何点か要望なりご意見を申し 上げておきたいと思います。1つは、いわゆる時間外労働の関係です。安全 衛生法改正により、時間外労働が月80時間を超えた労働者について医師の面 接指導を受けさせることが努力義務化されましたが、これはどの程度行われ ているのか、実態を把握されているのか、お聞きしたいと思っています。そ れが1つです。  もう1つは、労働安全衛生法における定期健康診断について申し上げてお きたいと思います。これまでもいろいろ取り組まれてきましたが、特に高齢 者医療確保法に基づく特定健康診断と特定保健指導については、労働者が希 望する安全衛生法の定期健康診断の実施日に一本化し、実施すべき項目を一 度の健康診断で実施できるようにすべきだと思っております。これについて の見解をお聞かせいただきたいと思います。  さらにもう1つは、メンタルヘルスに関連して申し上げておきたいと思い ます。最近、メンタルヘルスは本当に異常な状況で増え続けていると認識し ております。早期発見、早期治療が不可欠だと言われているわけです。そう いった意味では、職場での対応は早急にしなければならないと思います。今 回の予算に関連する対応でも対策が一応出されてはいますが、原因もいろい ろ考えられるだろうと思います。特定するのはなかなか難しいと思いますが、 要は、職場における過重な労働、長時間労働、あるいは極端に個人の能力に 頼った労働のあり方、職場におけるコミュニケーションのあり方等、これら の対策を総合的に立てる必要はあるだろうと思っています。いずれにしても、 現状ではこれらをサポートするシステムが必ずしも十分ではない、不足して いると思っております。したがって、それらのシステムを早急に整える必要 はあるだろうと考えております。それらの施策の1つとして、例えば産業医 に加えて事業場の保健室などに勤務している看護師など、あるいは産業衛生 スタッフ等の積極的な活用を図るということが必要ではないか、そのための 検討委員会を早急に立ち上げて議論すべきではないかと思っています。これ についての見解もいただきたいと思います。 ○勝俣委員  東京電力の勝俣でございます。私からは、労働基準法と労働契約法につい て申し上げたいと思います。  労働基準法改正については、自己管理型労働制の導入が先送りされ、割増 賃金率の引上げのみが行われるということですが、経済界としては、大変残 念ということで考えております。労働者の健康確保の観点から長時間労働の 抑制は企業としても取り組まなければならない課題ですが、仕事の効率化な どは、本来、労使の努力によって達成されるべきものであると考えておりま す。割増賃金率の引上げは、一定時間を超える場合に限ったとしても、多く の企業の経営に影響を及ぼすことになります。回復しつつある日本経済のマ イナス要素とならないよう、今後の運用において十分な配慮をお願いしたい と存じます。また、自己管理型労働制については、ワークライフバランスの 実現のためにも是非とも必要な制度であると考えております。引き続き、制 度のあり方についての検討を進めるべきと存じます。  次に労働契約法についてです。本法案は、分科会での審議の結果、労使双 方が労働契約の基本ルールについて合意したものであると理解しております。 法案の成立後は、法案の趣旨が個別企業の労使に十分に理解され、紛争の抑 制に資することを期待しております。 ○岡本委員  若者への自立支援対策について2点、先ほどの発言とはまた別の視点で申 し上げたいと思います。2007年度の予算の主要項目では地域若者サポートス テーション拡充・強化が謳われていますが、一方で、ヤングジョブスポット が現在の14カ所から東京、大阪の2カ所に削減されると聞いています。地域 のヤングジョブスポットのホームページを見ても、既に廃止のお知らせが掲 載されていました。また、経済産業省が実施してきたジョブカフェも3年間 の時限措置ということで、予算措置がなくなったと聞いています。この2つ の施策は、それぞれ役割分担をしながら、若者の就労に関するサポートにそ の役割を発揮してきたと思います。フリーター経験者が相談役になっている という所も多いと聞いていますし、入りやすく親しみやすい、そういった場 所だったことが利用者の声からもうかがえます。適性診断とかコンピュータ ーを無料で使用できるということも大きなメリットだったと思います。これ と類似の事業も新たに計画されているようですが、必要な措置については、 是非とも継続すべきだと思います。ジョブカフェの予算措置がなくなったこ とで地方自治体がこのサービスを継続すれば、予算面において地方自治体へ の負担は大きく、雇用支援において地域格差がますます出かねません。正規 の職に就けない若者が増え続けている実態からも、厚生労働省の事業として 位置づけ直し、是非水準の維持をしていただきたいと考えます。  もう1つ、若者への対策についてです。成長力底上げ戦略の中でもフリー ターやニート、母子家庭の就労支援が掲げられています。今回、省庁を超え ての議論ということですので、是非この中で1つ付け加えていただきたいの が住宅問題です。いまから8年前に議論されたホームレスの対策法の中では、 男性50代のホームレスの人たちを想定した議論が行われていたと認識してい ます。いまでは漫画喫茶やネットカフェに寝泊りをしてスポット派遣でその 日暮らしの仕事をしている、ネットカフェ難民とも言われていますが、この ような人たちが増えています。このような人たちが定職に就きたいと思って も、履歴書に現住所を書くことができずに、結局、入口段階で拒否されてい るというような実態があります。実際、将来の展望をどのように描いたらい いのかという声もいろいろと聞きます。  現在、フランスでは誰もが住宅に入ることができる権利、いわゆるホーム レス法というものが間もなく制定されるのでしょうか、話題になっています。 ここでは、住宅に住むことができなければ、フランス憲法の中に政府を訴え る権利を書き込むという非常にダイナミックなことが議論されています。日 本でも2002年の自立支援法には、低家賃対策と言うのでしょうか、そういっ た制度はありますが、若者がいまホームレス化しているということも踏まえ、 改めていまの状況に合わせた施策が必要なのではないかと思います。誰もが 能力を発揮して働き続けていくために能力開発、最低賃金の保障は当然雇用 対策の柱になると思いますが、生活そのものを支える施策についても、いま の状況を踏まえ、また、諸外国の施策も踏まえながら、是非省庁横断的に議 論を深めていただきたい、ということで意見を申し上げました。 ○岡部委員  日本通運の岡部でございます。私からも、これは要望ですが、労働基準法、 特に長時間労働の抑制について一言申し上げたいと思います。長時間労働の 抑制を進めるに当たっては、業務特性を踏まえた個別・具体的な取組が不可 欠であろうと考えております。例えば私どもの物流業界における小口貨物配 送の時間指定、あるいは夜間配送ニーズ、こういったものへの広がりなど、 それぞれの業種・業界で、これまで以上にさまざまな顧客ニーズに対応する ためにやむを得ず長時間労働になっているというケースもあるわけです。今 回の労働基準法改正案では、長時間労働の抑制のために、一定条件下の中小 企業を除き、割増賃金率の引上げを一律に行うことにしているわけですが、 是非、業種・業界におけるいろいろな実態も十分に踏まえてお考えいただき たいと思っております。今後の運用に当たってこうした観点からの細やかな ご配慮をいただければ、大変ありがたいと思っております。重ねてお願いい たしておきます。 ○中島委員  私から2点お願いしたいと思います。1点目は障害者自立支援法の関係です。 先ほどご説明のあった成長力底上げ戦略においても、「福祉から雇用へ」が 1つの施策の柱になっています。こういった方向性については評価できると 考えておりますが、懸念事項を指摘させていただければと思います。  障害者自立支援法の完全実施に伴って利用者の1割定率負担化が実施され たことにより、現場では混乱が生じていると聞いております。障害者団体な どは、この法律の早急な見直しを求めていると認識しております。利用者の 負担増に当たっては、障害者の就労支援と所得保障の拡充、とりわけ就労困 難な重度障害者等への所得保障を確立することが必要であると考えておりま す。それが確立されるまでは、低所得者層の負担軽減が必要なのではないか、 というのが1つです。また、利用者の実情に応じた障害福祉サービスが適切 に提供されているかどうか等、実施状況を丁寧に検証するとともに、全国ど こででも必要なサービスが確保されるようなサービス基盤を整備し、地域偏 在を解消すべきではないかと考えております。これがまず1点目です。  2点目は労働基準法の改正についてです。この中で特にこういった個別法 案の施策については分科会で議論されていますが、この問題についてほかに 発言の場がありませんので、本日、是非発言させていただければと思ってお ります。  時間外割増については、法案要綱では、政令で定める時間を超えて時間外 労働をさせたときは、その超えた時間について政令で定める率以上の率で計 算した割増賃金を支払わなければならないとなっていたはずです。つまり、 改正法案が成立したあとに審議会で議論して政令で定めるということではな かったかと考えております。しかし、法案では月80時間を超えた場合に50% となっているわけで、この80時間や50%という数字はどのような論議経過で 出てきたのか、決定されたのか、ご説明いただければありがたいということ。 また、月80時間超の時間外労働は、そもそも労災認定基準です。長時間労 働の抑制策として打ち出すにしてはあまりにも水準が低過ぎるのではないか ということ。さらには、附則第138条で、中小企業には当分の間適用しない ということになっています。月80時間を超える時間外労働への措置にもかか わらず、経過措置を設けるというのはいかがなものかというのが労働界の考 え方です。以上について、見解をいただければと考えております。 ○小出委員  私、ものづくりの立場で問題提起を若干しておきたいと思います。私は、  中小の担当という立場でお話させていただきます。  最近、一般的に2007年問題や派遣請負の問題などが中心的な話題になって いますが、率直に言って、派遣請負の問題にしても2007年問題にしても、私 は、大企業中心の問題点に見ております。  いま中小の実態は、ことものづくり産業に限っては、景気がかなり拡大し ていくということは間違いないです。ただ問題は、若者が全く入ってこない のです。大体行くのは自動車産業だけです。例えば静岡県の場合は、隣が愛 知県ですから、ほとんどが愛知県のほうに流れるのです。静岡県は、ものづ くりの中小企業がものすごく多いのです。そういった現象が実際に起きてい るのです。ですから、ものづくりのベースは大手ではないのです。本当に重 要なのは、ものづくりの部品を作っているところの技能継承をどうやって育 成していくかということです。ここを無視したら、これから先日本は、おそ らく不良品ばかりの車を作るしかないような状況になるだろうと思います。 その辺りにもう少しきちっと目を向けてほしいと思っています。  いずれにしろ、これだけ多額の予算を付けるということに一般論として  は、私はこの内容について反対する者ではないのですが、そういったところ にもっと目を向けていかないと。いまそういう面では、ものづくり産業の中 でも自動車以外の所にはほとんど人が行かない、特に中小では人を採りにく くなっているのです。そのようなことを含めて厚生労働省としてそういうと ころにもっと目を向けてこれからの施策をやっていただきたい、こういった ことをお願いしておきたいと思います。 ○加藤(丈)委員  私からは、最低賃金制度について一言申し上げておきたいと思います。改 めて言うまでもありませんが、最低賃金制度の最も重要な役割は、すべての 労働者を対象とした賃金のセーフティネットであると思っています。その中 でその役割としては、私どもは、すべての都道府県で設定され、すべての労 働者に適用されている地域別最低賃金が基本だと考えています。したがって、 日本経団連でも、地域別最低賃金に屋上屋を架す産業別最低賃金は廃止すべ きであると、かねてから主張してまいりました。今回の改正法案では、すべ ての都道府県に地域別最低賃金の決定を義務付けるとともに、産業別最低賃 金については、廃止には至らなかったものの、最低賃金法の罰則を適用しな い民事的なルールに改めるというものです。これは、労働政策審議会の下に ある労働条件分科会最低賃金部会において関係労使が長い時間をかけて話し 合って取りまとめた内容を法文化したもので、これについては、我々として も一歩前進だと思っております。国会においても、このことを踏まえた審議 がなされるようにお願いしたいと思っています。  また、先ほどご説明がありましたように、成長力底上げ戦略の中で中小企 業の生産性を向上させた結果として、地域別最低賃金が引き上がるという方 向を示していますが、これは、方向としては望ましいことだと思います。た だ、重要なことは、最低賃金は、都道府県ごとに、その地域で働く労働者の 賃金や生計費、企業の支払能力などを総合的に勘案し、地方の審議会で労使 が話し合って決めていくというものだと思います。したがって、最終的な判 断は、これまで同様、地方の労使が地域の実態を踏まえて行うことが望まし いのです。これまでも一部には実態を無視した議論があったように思います が、これまで同様、地域の労使が実態を踏まえた議論を積み重ねていただく ことをお願いしたいと思います。 ○齋藤(朝)委員  全体の審議会等の議論の進め方について一言申し上げたいと思います。先 ほど事務局よりご説明がありました法改正等の議論は、昨年は、労働政策審 議会の多くの分科会、部会で取りまとめられました。しかし、開かれている 通常国会への提出を目指すということがあり、それが目的と言うのでしょう か、中には月に2、3回という開催があります。特に年末などは、私ども商工 会議所の代表が出ておりますが、中小企業が多いので、その2、3回というの がなかなか大変です。ですから、議論が十分にできないままに取りまとめら れてしまった意見も多かったと聞いております。私たちは、使用者の委員と して、経営者の代表として生の声をお伝えしたいと思って参画しております が、自分の会社というものも経営していかなくてはならないので、その辺を ひとつご配慮いただきたいと思います。今後は、労使が十分に議論して、納 得した上で取りまとめを行うことができるようなスケジュールで議論を進め ていっていただきたいと思っております。  もう1つ、労働政策審議会の下の基本問題部会の委員の方に聞いたことで すが。これが審議会で議論するまでの問題ではないという厚生労働省からの ご説明で、審議会を開催せずに各委員に合意するか否かという署名をとる形 で進められてしまった案件があるように伺っております。その内容が事業者 が全額負担しております雇用保険三事業の助成金に関わる案件であったと聞 いております。審議会を開催するかどうかの判断基準を一つ教えていただき たいと思いますが、いずれにしても、十分な議論をせずに決めるべきもので はないと思います。特に雇用保険の三事業に関しては、事業者が全額を負担 しているものですので、使用者としては、その使われ方について非常に関心 を持っております。今後は、このようなやり方でなく、十分な審議をしてい ただきたいと思っております。 ○井手委員  NTTドコモの井手でございます。私からは、改正パートタイム労働法案につ いて申し上げたいと思います。本法案については、雇用均等分科会で審議を 重ねられた結果、労使双方で合意したものであると理解しております。内容 についても、労働条件の文書交付や説明責任の義務化や差別的取扱の禁止を 含む均衡待遇の確保、通常の労働者への転換推進など、パートタイム労働者 側にとって、かなり前進した内容になっていると理解しております。改正法 案の成立後、来年4月の円滑な施行に向けて、このパートタイム労働者をそ の対応によって4つのグループに分ける基準の明確化ですとか、実務面での懸 念を払拭するようにお願いをしたいことと、また中小企業を含めまして、企 業の受入れ態勢が整うように十分な周知を行うことを改めてお願いしたいと 思います。私からは以上でございます。 ○古賀委員  3点、ご要望や見解をお聞かせ願いたいと思います。少し現場で起きている ことを2点、まず申し上げたいと思います。1つは労働保険事業制度の見直し についてです。雇用保険三事業の見直しの中で、都道府県における労働相談 事業などにかかる国の委託事業が廃止、または一部廃止されるように聞いて おります。具体的には中小企業福祉事業補助金と雇用労働関係調査委託事業 委託金の廃止、あるいは一部廃止ということだとお聞きしています。  例えば、北海道などは国が廃止しても道として実施しようということでや るようですが、国の委託事業の廃止によって、事業そのものを廃止する自治 体も多く出てくるのではないかと思います。厚労省として、これらの実態を 把握をしているのか、また廃止されることによって、労働者、働く側への影 響が生じると我々は思うのですが、そのことをどう考えているのかについて、 お考えをお聞かせいただければありがたいと思います。  2つ目はハローワークと労働基準監督署の統廃合についてです。まず冒頭職 業安定局長がハローワークとILOの関係を提起されました。その懇談会には連 合の役員も入っておりまして、基本的には我々としては先ほど、安定局長が 提起のあったことを支持賛同をしたいと思っております。そのことは少し別 にしまして、行政改革の一環としてハローワークとか、あるいは労働基準監 督署の統廃合が実施されています。もちろん、いろいろな理由であると思い ますが、雇用の最後のセーフティネットであるハローワークが地域からなく なるというのは、やはり地域の労使にとっては、重要な問題だと思いますし、 労働基準監督署の統廃合も、監督行政への影響とか、あるいは行政サービス の低下が懸念されると思います。再編、あるいは整理案件についても、少な くとも年に1回ぐらいは適当な時期に適切な分科会等で、報告して議論をする 仕組みが必要ではないかと思っていますので、この事に対してご要望をさせ ていただきたいと思います。  最後に3点目でございます。各分科会の審議事項、その審議内容と法案の 位置づけについてです。先ほど来ありますように、今166通常国会、労働関 係の法案が6本議論される。それには労働政策審議会の各分科会での公労使 の様々な議論の中で、一定のとりまとめが行なわれたわけでございます。  しかし、各分科会における審議段階や審議後にいささか我々としては懸念 する事項が今回1、2存在をしました。  その1つは例えば、雇用対策法、審議会では一切議論の俎上にものぼらな かった募集・採用時の年齢制限の廃止措置が雇用対策法の改正案に盛り込ま れた。あるいは労働契約法も、これは少し見方の違いがあるかもわかりませ んが、法案要項と異なる、我々から見れば、やはり懸念があるような内容が 法案として提起をされました。  したがって、私は労働政策審議会の分科会の位置づけと、どこまで結果に 対して責任を持つのかを明確にする必要があるかと思います。分科会での法 案要求のまとめから、法案提出に至る段階で、それは様々なことが起こると 思いますが、それがテクニカルな技術的なものだけに止まらないと思われる ようなことはきちっとその後の、その種のことを分科会において一度当事者 認識にも立つという手順が必要ではないかと思っております。以上3点です が、ついでと言ったら叱られますが、そういう意味からすれば、この労働政 策審議会もどういう位置づけなのかを、いま一度整理をする必要があると思 います。本日提起された法案も既に国会に提出されているわけです。予算も ほとんど固まっている。次の機会に生かそうじゃないかということはいいの ですが、いまこういう論議をしてもせんないとは言いませんが、寂しい話で ございます。この労働政策審議会本審というのは一体どんな位置づけなのか、 もっと突っ込んで言えば、私は先ほど説明のあった底上げ戦略会議であると か、少子化に伴う「子どもと家族を応援する日本重点戦略会議」みたいな、 ことをここで論議するテーマであってもいい。これは1例ですが。  そこの交通整理がいま一度必要ではないかと。すみません、最後に蛇足に なりましたが、そのことも提起をしておきたいと思います。以上です。 ○伊藤委員  商工会議所の伊藤でございます。私は安全衛生部会の委員にもなっている ため、本日この労働政策審議会の後に開催される予定の安全衛生部会でも議 論します、事業者に義務付けられている定期健康診断の項目の見直しについ て、ちょっとお話をさせていただきます。いま現在、私ども事業者には労働 者に対する定期健康診断の実施が義務付けられております。更に来年平成20 年度より、生活習慣病対策、通称メタボリックと呼ばれているものですね。 これを目的とする新しい健康診断がスタートいたします。問題なのは新しい 健診に合わせて、一方的に健診の項目を増やしたいと言われていることです。  我々事業者としては労働災害を防止するための定期健診と新たな健診とい うのは、法律の目的が違うために項目が一致しないのは当然であると考えて おります。事業者としては、これまでどおり定期健診のみを実施することで、 十分ではないかと思っております。具体的な意見は、この後の安全衛生部会 で申し上げたいと思いますが、この問題は労使双方について、とても大きな 問題であると思われますので、是非皆様にも理解とご協力をいただきたいと 思っております。よろしくお願いいたします。 ○菅野会長  ほかによろしいでしょうか。今日ご説明いただいた予算関連、あるいは法 制度改革関連、様々のご意見とともに質問も出ましたので、整理して、事務 局から、まずお答えいただきたいと思います。その後、また時間があるかと 思いますが。では順次お願いします。 ○奥田職業能力開発局長  能力開発局長でございます。私への質問が最初にございますので、能力開 発関係につきまして、ご説明いたします。最初に能力開発は企業が主体的に 行うべきであるというご意見でございます。まさに能力開発促進法も基本的 にはそういう考え方で出来上がっておりますので、企業が従業員の能力開発 を主体的に行うということを国がいろいろと支援をするという仕組みでやっ ているわけです。  具体的な措置としては、企業が実施をする教育訓練に対しまして、経費を 支援するキャリア形成促進助成金の制度でありますとか、公共職業訓練施設 で在職者の訓練を支援する、そういったようなことを実際にやっております が、先の国会で能力開発促進法を改正いたしまして、実践型人材養成システ ムというものを新たな訓練システムとして位置づけたわけです。企業が計画 的に訓練を行うということについて、更なる支援措置も講じているところで す。また今般、第8次の能力開発基本計画を定めましたが、その際にも議論 になりましたが、企業における訓練の実施率がだいぶ下がってきているとい うようなことも明らかになってまいりましたので、今その実態調査もやって いるところです。今後そういう状況も踏まえまして、更にそのことについて は対策を講じていきたいと思っているわけです。非正規労働者が増加してい る中で、非正規労働者に対する訓練をどのように行っていくかということで す。平成19年度予算におきましてはいくつかの芽が出てまいりましたが、非 正規雇用者を雇っておられる企業が非正規労働者に対する教育訓練を行う際 の新たな助成金措置の創設などを行っております。また非正規労働者から正 規労働者に転換をしたいと考えている労働者に対します訓練としまして、企 業実習を先行して、そこでどういった能力が不足しているかを早い段階で見 極めて、必要な能力開発を実施する企業先行型の教育訓練システムを平成19 年度開始をするということにしております。それから、フリーターの方が正 社員になるために、例えば販売職種で働いておられる方にどのような資格が 必要なのかということで、その資格を取得するためのコースを開発して、そ れをフリーターの方 が受けやすい土日であるとか、夜間にコースを設定、 これは民間の教育訓練機関にお願いをすることになりますが、そういったと ころにも訓練コー スを設定していただいて、できるだけ仕事と訓練が両立 するような、新しい訓練コースの開発も行っておりまして、これも今年度か ら実施をするというようなことを行っているわけでございます。  底上げ戦略の中で、ジョブ・カード制度につきまして、現実のいろいろな 制度との整合性を取って実行してほしいということです。この底上げ戦略が 決まる過程では当然私どももいま能力開発がどんな状況にあるのかというこ とをお話いたしまして、特に企業の実習をからめて、いま大きく2つのもの をやっていると。  1つは日本版デュアルシステムということで、これは平成16年度から既に 開始をしておりますが、これは底上げ戦略の中では委託型と整理をされてお りますが、まだ雇われない段階で教育訓練機関での訓練を主体とするのです が、その訓練の一部に企業実習を織り込んでいただくというもの。もう1つ は雇用型と整理をされておりますが、これが実践型の人材養成システムのこ とを指しておりますので、これをまず平成19年度は先行プロジェクトという ことで、実施をして、その中でより使いやすいものを開発していきたい。ま たその過程で、ジョブ・カードとして、どういった内容を記載していくのか、 ということについても現実に具体化をしていきたいということで、それぞれ 構想委員会というのがこれから出来上がりますが、そこには労使の方にも入 っていただくことになっていると聞いておりますので、皆様方のご意見をお 聞きしながら、具体化をしていきたいと考えます。基本としては、使われる 制度にしたいということで、考えていきたいと思っています。  ヤングジョブスポットの廃止について、これを廃止しないでほしいという ことですが、これは、私どもの説明の仕方が悪かったのかもしれませんが、 ヤングジョブスポットとして施設は東京や大阪のものは、そのまま施設を残 しますが、それ以外のものにつきましては、廃止をする12カ所を含めま して、残りの全都道府県でいわゆる出前型という形のヤングジョブスポット 機能というものを残したいということで考えておりますので、若者が多く集 まるような所に担当の者が出向いていって、相談を受け付けるという形の事 業を展開するということで考えております。  また、ヤングジョブスポットにつきましてはハローワークしかなかった時 代に若者がいきなり就職相談というのもなかなか大変だということで、相談 しやすいということで、先行的にこの事業を始めたわけですが、その後、先 ほどお話がございましたように、ジョブカフェという事業が始まりました。 昨年度から、私どもは地域若者サポートステーションというものを設置して おりますが、これは今年度は50カ所に増大するということで、4つを除いて、 ほぼ全県で設置されるということです。  今年度から、主要なハローワークの中で、ジョブクラブという事業が開始 されるということで、これはヤングジョブスポットでやっておりました若者 たちが集まって、いろいろな経験談を話し合うというようなことがあります が、いわば若者の交流事業のようなものですか、これはかなり似たような事 業がハローワークの中で行われるということもありまして、私どもといたし ましては、ヤングジョブスポットが育てた、いろいろな機能がほかの機関に 受け継がれていくというふうに考えております。現実にヤングジョブスポッ トを使っていただいた方が困らないようにということにつきましては、万全 を尽す考えでおりますので、それぞれの相談者に応じて、それぞれの機関に 引き継ぐというようなことについては、万全を期したいと思っているわけで ございます。  底上げ戦略の中で、若い人たちが訓練を受ける際に住宅がないというのは 非常に問題だというご指摘です。これは非常に重大なご指摘だと思いますの で、今後の構想委員会等の中での議論にも、私どもお伝えをしていきたいと 思います。ものづくりに関連して、特に中小企業の部品関連での人手確保と いうか、技能継承が非常な課題だということで、それは私ども同様な認識で おります。本年度から、いろいろな新しい事業を始めておりますが、いまの ご指摘を踏まえまして、更に充実をしていきたいと思います。  2007年は静岡でユニバーサル技能五輪国際大会が開かれますので、これで 若い人たちにまずものづくりの現場を見ていただくということが非常に大事 かなと思います。私も実際に技能五輪大会を見に行きましたが、ああいう場 で若い人たちが必死に競技をしているとか、その姿を見ることで、自分もや ってみたいと思う若者が、確実に見学に来ている若者の中に出てきておりま すので、そういった技能の魅力を直接伝える場を更に広めていくということ も大事だと思います。私どものところは、大体以上だと思います。 ○青木労働基準局長  労働基準局長ですが、いくつかお答えしたいと思います。まず労働契約法 の議論の中で、個人請負のお話が出ました。具体的な事例も挙げられて、実 際には労働時間管理がなされているものだということでありました。請負に ついては、もともと世の中で非常に広く行われている契約形態でありまして、 一部労働基準法上の労働者と同視できるような実態にあるというような場合 には、労働者性を認めて、基準法上の保護を与えているというようなことを やっているわけでありますが、しかし多くは一般的に別の契約形態をという ことで、大方は独立した事業者間の契約ということになるわけでありますの で、契約法の議論の際にもそういう意味では、まずは労働基準法上の労働者 と同じところを考えようではないかということになったと思っております。 いろいろな個別の事例については、いろいろな事例が重なるにつれて、ルー ルが出来上がってくるのだろうと思っています。そういう意味では、私ども としても、個別具体的な実態などは、いろいろ収集したり、勉強して研究を したりということは必要だと思っています。基準法上においても、あるいは 契約法でどれだけ、どういうことができるかということもありますが、それ ぞれの具体的な事案についても、可能な範囲で適切な対応を考えていきたい と思っております。  長時間労働の縮減の関係で、80時間を超えた場合の医師の面接指導を受け 入れなければいけないというのが前の前の国会で成立をした法律で義務付け 等さられたわけですが、それの実態ということですが、これは施行は平成18 年4月から実施されまして、この10月に、半年経ったところで全国の396人の 産業医等を対象として調査を実施いたしまして、この調査では面接指導を実 施したと回答した産業医が全体の約70%でした。面接指導の結果、メンタル ヘルス不調や循環器疾患の疑いということで、その労働者を医療機関へ紹介 したことのある産業医の割合は約4割となっております。そういう意味では、 この面接指導の実施が疾病の早期発見など、労働者の健康確保に役立ってい るものと考えております。そのほか、この法案の審議でもそうでしたがこう いった制度については、事業者に対しまして、申出様式の作成をしたり、あ るいは申出窓口の設定などをしまして、できるだけ、こういったことが実施 されるようにいろいろな環境を整え、また私どもとしてもパンンフレットを 作成したり、集団指導、あるいは個別指導、そういったことを実施している わけでありまして、それは今後とも引き続きやっていきたいと思っておりま す。  定期健康診断で、高齢者医療確保法において、それぞれ特定健康診査、あ るいは特定保健指導というのがなされておりまして、労働安全衛生法の定期 健康診断や、あるいは保健指導と実施日を一本化したらどうかというような お話だったと思いますが、この労働安全衛生法に基づく定期健康診断項目に ついては、先ほど伊藤委員からもお話がありましたが、この後安全衛生分科 会でもご報告をすることにしておりますが、昨年10月から労働安全衛生法に おける定期健康診断等に関する検討会で検討しまして、今 年の3月に報告 書が取りまとめられました。それで、項目をいくつか追加する。例えば腹囲 を追加するなどが提言されておりまして、生活習慣病や脳・心疾患の予防を 目的として行われる高齢者医療確保法に基づく特定健康診査項目と、結果と して一致をするということに報告書にはなっております。これはもちろん、 この後議論をしていただくことになっておりますが、一方この検討会では、 せっかく項目が一緒であったら工夫によっては、一緒にできる、同時実施を やれば一遍の健康診断ですむということで、労働者のためにもなるという指 摘もされています。  ただ、健康診断同士は可能かと思いますし、保健指導同士は可能かと思い ますが、健康診断と保健指導は時間的経過が必要で、健康診断結果を見た上 で指導するということなので、そこはちょっと無理かなというふうに思って います。いずれにしても、この後の安全衛生分科会のほうで議論をしていた だくということになろうかと思っています。  メンタルの関係で、サポートシステムが大切で、産業衛生スタッフの積極 的な活用のための検討会の立ち上げのお話もありました。これはメンタルヘ ルス面のチェックについては、やはりいま申し上げました、昨年4月から施 行された労働安全衛生法の改正で、いわば重要事項の1つとして実施をされ ているわけであります。法改正と合わせまして、指針が出来ていますが、そ れの見直しも行いまして、実際にメンタルヘルス対策を促進するための環境 整備として、支援をするということで事業所に対する専門家による支援であ りますとか、家族を含めた相談態勢の整備をするとか、あるいは産業医と精 神科医のネットワークを形成するとかいうことで、そういったものを実施し ているわけであります。確かに、おっしゃったように産業保健スタッフの活 用というのは大変大切でありまして、私どもとしては中災防で検討をお願い して、例えば今年度は養成のためのカリキュラムを作るための検討をやって もらうとか、そういうことで、おっしゃったようにスタッフの活用のための 方策について、大体毎年検討会を設けて、テーマを決めてやっているところ でありますが、引き続きそういうことで、検討をしていきたいと思っており ます。勝俣委員から自己管理型労働制は検討を進めるということになったの で、やってほしいというお話もありましたし、労働契約法については個別企 業労使が十分話をしてやっていくんだと、基本的には労使が努力をしてやっ ていくというお話がありました。まさに私どももそのとおりだと思います。 自己管理型については、今回の労働条件分科会では随分と議論をしていただ きましたが、そして答申などもまとめていただきましたが、結局今回の法案 の中には入らなかったわけであります。これについても、引き続き検討する ということに変わりはないということであります。  時間外労働の縮減ということで、いまの中で、法案の審議の過程では、時 間外割増しの時間でありますとか、率については審議会でもう一回議論をす るということではなかったかというようなお話もありました。これは、確か に今年1月に諮問して答申をいただいた基準法改正法案の法案要綱において は、おっしゃったように割増賃金の率を引き上げることとなる時間でありま すとか、その率自身について政令で定めるということで、お諮りをし、答申 をいただいたわけでありますから、当然その政令審議をしていただくときに、 また審議会労働条件分科会でご議論いただくという段取りであったわけであ りますが、その後2月6日に与党合意におきまして、月80時間超の時間外労働 にかかる割増賃金率は50%とするということとされました。  この与党の意向を受けて、法案に明記をいたしたものです。ということで ありましたので、審議会のその点については、大変申し訳なく思いますが、 議論とは違って与党合意で、そういうことに決したということです。  80時間超50%というのは、あまりにも水準が低過ぎるではないかというご 指摘もありましたが、今回の長時間労働対策、与党合意のときの考え方であ りますが、今回は全体の長時間労働縮減のために法定の割増賃金率の引き上 げということだけではなくて、まず、いわゆる限度基準告示において、一定 時間を超える時間外労働をできる限り短くするよう努めるという努力義務、 それから現行の法定割増賃金率を超える割増賃金率を設定することを労使双 方に努力義務として求めるということにしているわけであります。そして、 こういったことを通じて長時間労働の抑制を進めて、そして特に長い時間外 労働を更にきっちりと強力に抑制をしようという観点から80時間を超える時 間外労働については、割増賃金率を法定50%に引き上げるということにした ものです。  なお、当然のことながら、長時間労働対策は割増賃金率だけで抑制が図ら れるというものではありません。中小企業に対する助成金の創設を通じて支 援をするというようなこともやろうということでありますし、個別には監督 署による重点的な監督指導をするといことで、総合的にやっていかなければ いけないと。こういったことを通じて、時間外労働抑制の実効を挙げていき たいと思っております。  中小企業に対する猶予措置の話もありました。これも与党合意でそいうふ うに決したわけでありますが、これは経営体力が必ずしも強くない中小企業 においては、時間外労働抑制のための業務分担の見直しでありますとか、新 規雇入れ、あるいは省力化投資を速かに、そういったことを行って対応する ということは難しくて、止むを得ず、長時間の時間外労働を行わせた場合の 負担もまた大きいということで、適用が猶予されたということであります。 先ほど申し上げましたように、中小企業については長時間労働抑制対策は法 定割増率のところだけではありませんで、様々な取組を通じて長時間労働の 抑制を図ろうということで考えております。今回の法定割増賃金率引上げに ついては、施行後3年を経過した後に、時間外労働が減少しているかどうか 等の検討を行って、中小企業に適用する場合には、その際、また法律改正を 行うということになっているわけです。  あと、古賀委員のおっしゃった中で、全体のところではありませんが、労 働契約法で、法案要綱と異なる、見方は異なるかもしれないがとおっしゃっ ていましたが、私どもは政府で閣議決定をいたしました労働契約法案につい ては、労働政策審議会における答申を踏まえ、それを条文化するということ で、検討したものでして、立法技術上の文言が変わっているという点もあり ますが、内容については変わっていないと考えております。大体そういうと ころだと思います。 ○高橋職業安定局長  職業安定局関係でいくつかご指摘をいただいた点について、ご回答いたし ます。まず若年者対策に関してですが、1つは今回雇用対策改正法案の中に 盛り込んでおります、若年の能力を適正に評価する募集方法の改善の努力義 務化に伴いまして、事業主が適切に対応すべき内容について指針を策定をす ることになっております。これにつきましては、各企業におきます募集採用 実務というものの実態も十分踏まえながら、これは改めて労働政策審議会に 成立後、お諮りをしていきたいと思っておりまして、ご意見も十分頭に置き ながら、定めていきたいと思います。  この若年者対策に関しまして、ジョブカフェに関わって、ジョブカフェは もともと若年者のための就労支援のためのワンストップサービスとして、都 道府県で設置をし、そこに経産省と厚生労働省が連携をして支援をするとい うスキームで進めてまいりました。経産省はもともと3年間の予算の措置、3 年間の支援という限定でやってきたと聞いております。私どもとしては、こ のジョブカフェについての支援については、平成19年度以降も引き続いて、 十分対応していきたいと思っておりますし、なかなか経産省がこれまで負担 した部分をカバーしてというのは正直申し上げて難しい面がありますが、で きるだけの対応を図っていきたいと思っております。  派遣・請負にからんで何点かありましたが。派遣法の平成15年改正等を受 けまして、監督指導の体制については、私ども体制強化を図りながら、鋭意 進めてまいりました。昨年9月には特に偽装請負の解消・防止に向けた強力 な対応を図るということで、職業安定局長、労働基準局長の連名通達をもっ て、各労働局に対して、指示をしてきているわけです。今後とも、偽装請負 の防止・解消に向けての対応については引き続きしっかりやっていきたいと 思っております。  その中で、最近、ご指摘にありました日雇派遣、あるいはスポット派遣と 呼ばれている、ある意味では究極の派遣就業というものがかなり広がりつつ あるという実態が報告されております。正直申し上げて、現在の派遣法の中 でこれを規制をするという枠組はありません。ありませんが、こうした働き 方はきわめて雇用の安定という面では、非常に不安定な働き方である、また 労働条件の面でもいろいろ問題があり得るだろうと思っております。ただ、 いま申し上げたように派遣法上特段規制があるわけではありませんが、しか し実態の面で何らかの形で派遣法に違反があるような事案が、もし具体的な 事案、事案で上がってくる中では、監督指導の過程で十分な指導をしていき たいと思っております。  これに関しましては、その実態がよくわかっていないではないか、把握を すべきではないかというご意見が先ほどありましたが、国会でもこの点取り 上げられておるところでして、私どもも何らかの形でこの実態について、把 握はできないだろうか、これは派遣事業者を通じてどんなことが考えられる か、いま現在検討をいたしているところです。  それから、この日雇派遣、スポット派遣と言われている方々に関わって住 宅問題ということが提起をされました。確かにホームレス対策として、特に 男性の中高年というのはホームレスのこれまでの主要な対象であったと、そ の中での住宅問題については、一定の対応をしてきているところですが、ま んが喫茶とかネットカフェに寝泊りしているという若い人たちの中で、果た して住宅というものに困窮している者かどうか、必ずしもここは判然としな い部分があります。先ほど申し上げた実態把握の中で、もう少しよく実態を 掴んで見てみたいと思っております。  あと、齋藤委員から、基本問題部会、これは職業安定分科会の基本問題部 会の話かと思いますが、三事業の助成金関係で審議会を開くまでもないとい う、何か私どもの事務局側からの対応があったやのご発言がありましたが、 三事業の助成金関係等は、これは当然雇用保険法施行規則の中でその基準で あるとか、施策の内容であるとかは規定をされますので、当然にこれは雇用 保険部会なり、職業安定分科会なりに施行規則の見直し改正が当然必要にな れば、それは審議会にお諮りをするということは当然予定をされております ので、その点はご理解をいただきたいと思います。  今回提出されました雇用対策法案の中に、審議会の答申にはなかった募集 ・採用に関わる年齢差別の禁止についての従来の努力義務規定を義務化する という内容が含まれているのはご指摘のとおりです。これにつきましては、 審議会からご答申をいただいた後、法案化の作業をやりまして、法律案要綱 を与党審査という形でお諮りをいたしましたところ、与党から、努力すべき というご提案がありまして、具体的に法案として提出する際の政府与党一体 的な対応という観点で、与党の提案指示を含めて、法案としてまとめ、国会 に提出をさせていただいた次第であります。その点のプロセスにつきまして は、是非ご理解をいただきたいと思いますし、できるだけ私どもも審議会で の諮問、答申のプロセスの中で与党の動き、意向を十分に把握しながら、今 後とも適切に対応させていただきたいと思っております。  ハローワークの統廃合にからんでの関係審議会への報告、議論の機会とい うご指摘がございます。これにきましては先般の職業安定分科会でもご意見 があったわけですが、私どもとしては、そのご提案については、十分これか ら検討していきたいと考えています。以上でございます。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  井手委員からパートタイム労働法についてご要請いただきました。法案は 今週から国会で審議入りの運びとなっておりますが、成立いたしましたら、 来年4月に向けまして、基準の明確化に努めますとともに、また関係団体に もご協力をいただきまして、周知徹底に努めてまいりたいと思います。  よろしくお願いします。 ○青木労働基準局長  すみません、1つ言い忘れましたが、加藤委員から、最低賃金の関係もご指 摘がありました。これはおっしゃるとおり、審議会での審議も十分踏まえて、 国会でも審議をやってもらいたいとか、あるいは地方労使が最終的に決定を するんだということをおっしゃっていただきました。そのとおりだと思いま すし、成長力底上げ戦略で内閣府、官邸が中心となってやったものについて もこの点については、非常によく理解をしていただいていると。与党におい ても非常によく理解をしていただいていると思っております。私ども、全く おっしゃるとおり、今後もそういうような運用で実際にはやっていきたいと 思っています。 ○金子政策統括官  政策統括官でございます。古賀委員から、ご指摘がありました2点について、 簡単にコメントさせていただきます。1点目の労働相談事業に対する国からの 補助金の廃止についてですが、大変ご心配をおかけしております。1年間の経 過措置を設けるということと、都道府県からは補助金廃止に伴って労働相談 事業を廃止するというようなことは、聞いておりません。こうしたことです ので、今後とも都道府県労働局との連携という形でできる限りの協力をして いきたいと考えております。  もう1点、この本審議会の運営に関します基本的な問題について、ご指摘 がありました。これまでも、折りにふれて、こういったご指摘も受けている わけですが、今後につきましては、先ほど来ありましたような円卓会議です とか、諮問会議での議論というようなこともございます。公益委員の先生方 とも十分ご相談の上、例えば労働政策の基軸となるような、大きな方向性で の議論、こういったようなことについて、労使で建設的なご議論をしていた だければいいのではないかというようなことも考えておりまして、更に諸先 生方とご相談の上、具体的な内容を詰めていきたいと考えております。 ○菅野会長  よろしゅうございますか。私の不手際で大変時間オーバーしてしまいまし た。今日は大変いろいろな充実したご意見、ご質問をいただきまして、それ にひととおりお答えいただいたということであります。まだまだご意見があ ろうかと思いますが、特にこの審議会の運営につきましては、いま政策統括 官のほうで述べられましたが、私としても、分科会方式というのは、これは 維持せざるを得ないわけで、それを踏まえて、全体に亘る事項について皆様 のご意見をお聞きしたほうがいいというようなことは、そういう会を設けて もらうということにいたしたいと思います。  では、もしよろしければ、本日の審議はこのぐらいということにいたしま して、最後にこれが現メンバーで行う最後の審議会ですので、ここで上村厚 生労働審議官からのご挨拶をいただきます。 ○上村厚生労働審議官  どうも本日はお忙しい中、数時間に亘ってご議論をいただきまして、あり がとうございます。私も何年か前、いまのこの審議会のメンバーのスタート の前の前ぐらいに中労委から戻って来たときに、先ほど古賀委員から意見が 出ましたような審議会の審議内容をどうするかというような議論が、その当 時も出たことをよく記憶しております。そういう意味では、審議会もいま会 長からございましたが、考えていきたいと思います。  審議会でご議論いただいて、厚生労働省から出た姿と法案が提案された姿 とがずれている部分があるのではないかというご意見もいただきました。実 効性を考えれば、審議会でのご議論を十分していただいて、提案をするとい うことで、そういう意味では審議会の議論を踏まえて、提案をするというこ とで、厚生労働省が出ているわけですが、議員内閣制の下で法案を国会に提 出し、かつ成立を期すということでは、いろいろなことを配慮しなければな らないことがありますので、ご理解をいただければと思います。  いずれにしましても、真摯に積極的にご議論いただいた委員の皆様方との 連絡、連携等をおろそかにしないように、失礼のないように努めていきたい と思います。いま会長からございましたように、現にお集まりの皆様方につ きましては、4月10日付で任期満了となりまして、今日が最後の審議会とい うことになります。本当に大変ありがとうございました。具体的に申し上げ ますと、公益代表の齋藤(邦)委員、諏訪委員、西村委員、横溝委員、本日 はご欠席の和田委員、それから労働者代表の岡本委員、ご欠席の丸山委員、 使用者代表にきましては佐々木委員、先ほど退席されましたが、柴田委員、 ご欠席の内海委員、以上の方々がご退任ということになります。委員の皆様 方にはお忙しい中、特に先ほども審議がタイトで大変というご意見もいただ きました。課題が難しく、かつ緊急性を要するようなテーマだということも ありまして、日程上ご無理をいただいたこともあろうかと思いますが、ご理 解をいただければと思います。  お陰様で精力的なご議論をいただいて、今国会に法案が提出できた次第で ございます。これまでのご尽力に心から感謝を申し上げたいと思います。ご 退任の委員の皆様方には、今後ますますのご健勝、ご活躍を心からお祈り申 し上げたいと思います。なお、委員を退かれましても、引き続き労働行政に 対しますご理解、ご支援、ご指導を賜りますれば、幸いでございます。また 引き続き委員をお願いいたす方々も多数おられますが、まだまだ国会の審議 も残っておりますが、審議の結果で成立させていただいた暁には、その円滑 な施行も重要なことでございます。引き続き積極的なご議論をいただければ と思います。簡単ではありますが、私からお礼のご挨拶をさせていただきま す。本当にありがとうございました。 ○菅野会長  本当の最後ですが、本日の会議に関する議事録につきまして、運営規程第 6条により会長のほか2人の委員の署名が必要です。つきましては労働者代表 委員の古賀委員、使用者代表委員の紀陸委員に署名委員になっていただきた いと思いますので、よろしくお願いいたします。不手際で長時間オーバーし て申し訳ございませんでした。本日の会議は以上で終わります。ありがとう ございました。 照会先 政策統括官付労働政策担当参事官室 総務係 内線7717