07/04/02 第27回労働政策審議会安全衛生分科会議事録 第27回労働政策審議会安全衛生分科会 1 日 時 平成19年4月2日(月)17:00〜19:00 2 場 所 厚生労働省 専用第22会議室 3 出席者 (委 員)公益代表 和田委員、相澤委員、今田委員、北山委員、内藤委員  名古屋委員、平野委員 労働者代表 鈴木委員、高橋委員、古市委員、中桐委員、仲田委員、 眞部委員 使用者代表 伊藤委員、金子委員(代理)、豊田委員、松井委員、  三浦委員、山崎委員、 (事務局)      青木労働基準局長、小野安全衛生部長、山越計画課長、 高橋安全課長、金井労働衛生課長、平野化学物質対策課 長、荒木石綿対策室長、一瀬国際室長、小松建設安全対 策室長、半田環境改善室長、春日化学物質評価室長、矢 島生活習慣病対策室長、深田医療費適正化対策推進室長、 松岡医療保険課長(代理) 4 議事録 ○分科会長 ただいまから第27回の労働政策審議会安全衛生分科会を開催した いと思います。芳野委員、加藤委員、金子委員は所用のために欠席されていら っしゃいます。本日は労働政策審議会令第9条に規定しております定足数を満 たしておりますので、当分科会が成立していることをまず申し上げます。なお、 本日欠席の金子委員に代わりまして日本アイ・ビー・エム株式会社豊洲事務所 の健康支援センターの産業医をされていらっしゃいます中村様に代理出席をい ただいております。  議事に入ります前に、委員の交代がございましたので紹介させていただきま す。労働者代表の徳永委員が退任されまして、全国建設労働組合総連合書記次 長の古市良洋委員が就任されました。よろしくお願いいたします。  それでは議事に入りたいと思います。本日の議題は労働安全衛生法における 定期健康診断に関する検討会の報告書についてです。事務局から資料について 説明をお願いします。 ○労働衛生課長 資料の説明をさせていただく前に本日の資料ですが、「労働安 全衛生法における定期健康診断等に関する検討会」の報告書概要、その検討会 報告書、それに定期健診項目に関する考え方ということで、日本経済団体連合 会様からいただいた資料を卓上に置いています。安衛則における健診項目と標 準的な健診・保健指導プログラム(暫定版)に示された健診項目について、お 手元に配付させていただいています。  本日の議題の「報告書について」ということで、資料No.2の報告書に基づいて 説明をさせていただきます。検討会の参集者名簿があります。和田先生を座長 に4人の先生を参集者として検討をいただいたものです。次頁が目次ですが、 これについては省略させていただきます。  1頁目の「はじめに」です。そもそも検討会をなぜ開始したかという目的を書 いていますが、1段落目に、昭和47年に労働安全衛生法が制定され、現在はそ の法律に基づいて約5,000万の労働者に対して、健康管理が行われているとい うのは冒頭述べているところです。  2段落目として、昭和22年に制定・施行されました労働基準法及び旧労働安 全衛生規則では、結核等の感染症対策を主眼に置いて、定期的な健康診断を実 施していましたが、昭和47年に制定されました労働安全衛生法における健康診 断では、これまでやってきた胸部エックス線検査等に加えて、血圧測定が追加 されました。感染症以外の健康管理も実施されてきたということがここに書い てあります。とりわけ作業関連疾患としての脳・心臓疾患に対応する項目とし て、平成元年に血中の脂質検査、心電図検査が追加された。さらに平成11年に HDLコレステロール、血糖検査が追加されて現在の形になったことが述べられ ています。  3段落目ですが、定期健康診断については、およそ2人に1人が有所見の状況 にあること、さらに脳・心臓疾患により労災認定される件数が、近年、高止ま りしている加重労働対策とともに脳・心臓疾患の発症要因の対策を進めていく ことが求められるということが述べられています。  4段落目の一方の所です。肥満者の多くは糖尿病なり高血圧、高脂血症等の危 険因子を複数併せもって、危険因子が重なるほど脳・心臓疾患を発症する危険 が増大することが医学的にも判明しているわけです。特に内臓脂肪の肥満につ いては、こうした脳・心臓疾患のリスクと密接に関係しているとされていて、 これに着目した「内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)」と一般的に呼 ばれているわけですが、これの診断基準が示されまして、内臓脂肪肥満に着目 した保健指導が重要とされてきたわけです。  5段落目ですが、平成18年6月に制定された高齢者医療確保法、この法律で は40〜74歳の被医療保険者を対象に、特定健康診査・特定保健指導を行うこと が義務づけられた。さらにこの特定健康診査・特定保健指導を行うにあたり参 考とするプログラム(暫定版)が健康局の検討会において、平成18年7月にま とめられたということが述べられています。このプログラム(暫定版)ですが、 「内臓脂肪症候群」に着目して、脳・心臓疾患なり生活習慣病を効果的に予防 するための健診項目が、新たな医学的知見を含めて示されたということが述べ られています。  2頁ですが、労働安全衛生法の定期健康診断については、これまでも作業関連 疾患としての脳・心臓疾患に適切に対応するという観点から項目の追加が行わ れて、先ほどのとおりです。このプログラム(暫定版)の中で示された健康診 断の項目には、労働者の脳・心臓疾患の予防に資するものがある。これらを労 働安全衛生法上、どのように取り扱うべきか、さらに労働者に対する保健指導 を行うにあたっての特定保健指導との関係、これをどのようにするかといった 課題について、当局ではこの検討会を開催して考え方をとりまとめることとす る。そういった経緯なり、この検討会の目的が述べられています。  2.定期健康診断等の健診項目についての所で、これは具体的な話ですが、先 ほどの標準的な健診・保健指導プログラム(暫定版)の中で示されている主な 健診項目の中で労働安全衛生規則に規定されていない項目を中心に検討を行っ たということが書かれています。  まず問診項目ですが、喫煙歴です。1段落目の2行目ですが、喫煙は脳・心臓 疾患の強いリスクファクターであるというのが既にわかっています。4行目で喫 煙歴については、その有無を聴取することで、脳・心臓疾患のリスクの高い者 を把握して適切な対応をとることが可能となる。これについては既にほとんど の健診機関における問診票に喫煙歴を確認する欄が設けられて、これまでも実 際に確認されているという実態があるわけです。それを踏まえて2段落目に、 喫煙歴については、引き続き自・他覚症状、既往歴等の中で聴取することとし、 事業者は高齢者医療確保法の規定に基づき、医療保険者から求めがあった場合 には、特定健康診査に該当する他の定期健康診断項目の結果とともに、喫煙歴 及び後述の服薬歴の情報を合わせて提供することが妥当である。なお、定期健 康診断時に喫煙歴の聴取が徹底されるよう周知が必要という意見です。  なお、高齢者医療法の規定がここに書いてありますが、事業者は医療保険者 から求めがあった場合には、事業者健診の項目について、医療保険者に提供す る、そういったものが法令上規定されています。  (2)服薬歴です。服薬歴についても、重要な項目であるわけですが、3頁、 もう既往歴の中でチェックをされている場合が多いわけで、このため脳・心臓 疾患の既往歴とともに脳・心臓疾患に関係する降圧薬・高脂血症薬、糖尿病薬 の服薬の確認については、引き続き既往歴の中で聴取するといった意見をいた だいています。ただしその他の疾患の服薬歴については医師の判断でいいので はないかということです。  続いて健診項目です。まず腹囲です。1段落目の所で加齢や日常生活などにお ける通常の負荷による血管病変の形成、進行及び増悪という自然経過の過程に おいて、業務による過重な負荷が加わることにより、発症の基礎となる血管病 変等が、その自然経過を越えて著しく増悪して、脳・心臓疾患が発症する場合 があることは医学的にも広く知られているところですし、こういった考え方の 下で労災制度が行われているということもあるわけです。  2段落目ですが、最新の医学的知見によれば、脳・心臓疾患発症の危険性が肥 満・高血圧、高脂血症、高血糖の4つを合わせもつと、リスクが13.3倍にも高 まるといったことで、いわゆる Multiple risk factorといった状況が明らかに なっているわけです。  3段落目ですが、肥満の指標としては、これまでの各種の健診や調査研究にお いて、主にBody Mass Indexが用いられてきたわけです。しかしながら、近年、 内臓脂肪等もあるわけですが、腹囲と脳・心臓疾患の発症との間に関連がある とする報告が数多くなされている。後ほどまた文献を紹介しますが、そういっ たものがある。さらにBMIに比べて腹囲がより正確に脳・心臓疾患の発症リス クの把握ができると指摘されているということが述べられています。また、メ タボリックシンドロームの医学的な病態も明らかにされて、内臓脂肪の組織か ら分泌される生理活性物質が、いろいろな病態を引き起こすということも知ら れてきており、身体への影響が極めて大きいことが明らかにされているという ことを述べられています。  こうしたことから、国内的にも国際的にも、腹囲測定の重要性が認識されて いるため、日本内科系の8学会や、国際糖尿病学会、さらには米国の専門検討 委員会の診断基準にもこれが必須項目として取り上げられているということを 述べています。  4段落目ですが、このため、個々の労働者についても腹囲、血圧、血中脂質、 血糖を併せて測定することで、作業関連疾患である脳・心臓疾患を予防するこ とが可能になることから、労働安全衛生法上も腹囲の測定は必要なものである と述べられています。  5段落目ですが、これは事後措置について述べていますが、補足いたしますと、 この事後措置については、労働安全衛生法第66条の5に規定されているもので、 その内容は事業者が定期健康診断から得られた医師の意見を勘案し、必要があ ると認めるときには、労働者の実情を考慮して行っている措置です。これにつ いては、労働安全衛生規則の保存様式の中で、もうすでにBMIを記載すること になっているわけです。そのBMIそれのみで事後措置を求められることはなか った。それはどういうことかと申しますと、BMIについては、労働安全衛生規 則の保存様式の中に記載することになっているので、これは当然医師が診て、 それを踏まえて結果を総合的に判断するわけです。即ちBMIはその中にあるの で医師が診てそのBMIの結果を把握していることになるわけです。しかしなが ら、医師は総合的に1つの健診項目にとどまらず、全体的に判断をし、意見を 述べるので、BMIだけ取り上げて意見を述べるということは想定されないわけ です。  こういったことから、当然のことながら、ここに書いてあるとおりBMIがそ れのみで事後措置を求められることはなかったということで、これと同じよう に腹囲のみで、事後措置を行う必要はないというのが委員会としての意見です。 また、安全配慮義務についても、腹囲を測定することにより、拡大するもので はないということも意見としていただいています。  6段落目ですが、このように本検討会としては、腹囲を定期健康診断の項目と して、労働安全衛生規則に規定することが医学的に妥当と考える。  7段落目は、腹囲については直接測定するのが基本と考えられるが、今後運用 上、柔軟に対応できるように自己測定など、腹囲測定の省略基準を設けるとか。 4頁、着衣による測定、自己測定の簡便な方法を認めるなど配慮することが望ま しいと考えると述べられています。  最後に40歳未満(35歳を除くわけですが)、これについては他の健診項目と 同様に、省略可とすることが妥当である、という意見をいただいています。 (2)の血清尿酸ですが、この血清尿酸については、4行目、他の健診項目から 得られる情報を併せて、脳・心臓疾患のリスクファクターの状況をより適切に 把握することが可能となるということですが、しかしながら、次の段落で、腹 囲や血中脂質等の他のリスクファクターと尿酸値は連動するため尿酸値を測定 する必要はないのではないかという意見もあり、本検討会においては追加する までにしていないといった意見をいただいています。  (3)のLDL-コレステロールですが、まずLDLコレステロールは、いわゆる 悪玉コレステロールと言われ、診療ガイドラインでも単独で動脈硬化性疾患の 強いリスクファクターとなると指摘されていて、脳・心臓疾患のリスクを評価 する重要な項目である。2段落目に日本動脈硬化学会のガイドラインにおいても、 治療目標値はLDLコレステロールを主体として、血清総コレステロールを参考 値とするといったことがありますので、LDLを定期健康診断項目に導入するこ とが妥当である、という意見もいただいています。この項目についても、一部 省略可とすることが妥当という意見をいただいています。  (4)のヘモグロビンA1c及び血糖・尿糖ですが、1段落目の2行目で、糖尿 病の疑いがある者を把握するためには、従来、空腹時血糖が用いられてきたが、 健診受診者の状況によっては、必ずしも正確な値を得られない場合もあり、空 腹時血糖だけでは糖尿病の疑いがある者を正確に把握することは難しいことが あるというのがまず述べられています。  2段落目ですが、一方のヘモグロビンA1cは過去1〜3カ月程度の平均血糖値 を反映しており、採血の前日や当日の食事の摂取に影響を受けないため、ヘモ グロビンA1cを測定することで糖尿病の疑いがある者を正確に把握することが 可能とされているということが述べられているわけです。  5頁、こうしたことから、空腹時血糖を測定できない場合については、食事の 影響を受けないヘモグロビンA1cの実施が望ましいと考えられるが、スクリー ニング検査である定期健康診断の必須項目としては、費用対効果などを総合的 に勘案すると、簡便な尿糖検査を血糖検査とともに実施することで、血糖検査 だけで把握できない糖尿病の疑いのある者や、耐糖能異常を把握することも可 能となることから、現在省略可能の定期健康診断では、血糖を測れば尿糖は省 略できることになっていますが、その省略可能な尿糖検査を必須とする。それ で妥当であるという意見をいただいています。  (5)の血清クレアチニンですが、これは省略いたしますが、最後の2行目の 「このため」の所です。新たな健康診断項目として、全ての労働者に対して一 律に実施する必要はないという意見をいただいています。  (6)の医師の判断により実施する項目、具体的には尿潜血・ヘマトクリット 値・眼底検査です。これについても2行目で定期健康診断として、全ての労働 者に一律に実施するものとまでは言えず、医療機関において実施するのが妥当 であるという意見をいただいています。以上が健康診断の項目です。  3.保健指導です。冒頭ですが、労働安全衛生法に基づく保健指導は、事業者 の努力義務として位置づけられ、労働者の健康保持・増進に大きな役割を果た しているが、一方、高齢者医療確保法では、医療保険者に特定保健指導の実施 が義務づけられていると述べられています。労働安全衛生法ですが、例えば視・ 聴力の検査ですが、こういった作業起因性の健康障害及び作業適性にかかる保 健指導が行われる、後者の高齢者医療確保法では、健診項目において視・聴力 等の項目を必要としていないために、こうした項目に対する保健指導を前者で 行うことになる、ということが述べられています。  さらに高齢者医療法に基づく特定保健指導と労働安全衛生法に基づく保健指 導の実施方法等が整理されていない場合には、労働者の生活習慣に関しての保 健指導を重複した形で受けることになる、具体的には2回保健指導を受ける場 合も出てくるということが言われています。  6頁の「また」以下です。また、労働安全衛生法に基づく保健指導は産業医・ 保健師等により行われているが、同法に基づくいわゆるTHP指針により行われ ている保健指導等については、事業者又は労働者健康保持増進サービス機関等 において、保健指導・栄養指導・運動指導にかかる専門的な人材によりサービ スが提供されていることが述べられています。こうしたことを踏まえ、労働安 全衛生的な観点から特定保健指導と労働安全衛生法上の保健指導のあり方及び 専門的な人材の活用等についての検討を行ったということが述べられています。  具体的な1点目ですが、特定保健指導と労働安全衛生法に基づく保健指導の 実施についてです。まず、労働安全衛生法に基づく保健指導は、産業医・保健 師等が中心となり事業者の努力義務として行われている、その内容としては生 活習慣のみならず労働者の作業環境等の背景も考えた包括的な保健指導となっ ている、また、労働者を対象とする高齢者医療確保法に基づく特定保健指導は、 生活習慣の改善が主の目的であるため、生活習慣の指導という面では両者は一 致する、こういったことが述べられています。このため、労働安全衛生法にお ける保健指導と特定保健指導を併せて実施することにより、労働者に対してよ り効果的、効率的な指導ができるので、医療保険者においては、労働安全衛生 法に基づく保健指導を行う際に、特定保健指導の実施を希望する事業者に対し て、特定保健指導の委託ができるようにすることが望ましいという意見が述べ られています。  この最後の3行の所、「医療保険者においては、特定保健指導の委託ができる」 の所を補足させていただきます。健康局で検討を進めている標準的な健診保健 指導プログラムですが、今年の3月に暫定版から確定版になっています。その 中で医療保険者は、特定保健指導を人員なり施設あるいは指導内容等を委託基 準に合ったものにアウトソーシングできる。即ち基準に合ったものに特定保健 指導をアウトソーシングできるとなっていますが、このアウトソーシングの基 準として、人員の基準では業務統括者として常勤の医師なり、保健師、管理栄 養師がいるということが確定版では示されています。このため、専属産業医が 専任されて、その他の基準も適合している事業者であれば、医療保険者から保 健指導を委託されることが考えられるといったことを述べています。この場合 は当然のことながら労働安全衛生法と保健指導と特定保健指導が一緒にできる といったことが述べられています。  (2)の人材の活用についての所です。(1)は、どちらかというと専属産業医 なりがいる所ですが、専属産業医のいない場について、(2)で冒頭述べていま す。専属産業医等のいない事業者については、医療保険者との連携を図り、THP で養成した産業保健スタッフの人材活用の観点からの産業保健スタッフを有す る医療機関や健診機関に医療保険者から特定保健指導を委託してもらうことに より、特定保健指導のみならず、産業保健の視点も加味した保健指導を労働者 が受けられることになるといったことが述べられているわけです。  ご存じのとおり、多くの事業場では、専属ではなくて嘱託などの産業医を専 任しているわけですが、そのような事業者は特定保健指導のアウトソーシング 先にはならないわけです。しかしながら、嘱託産業医やTHPで養成された産業 保健スタッフがいる医療機関などの施設が特定保健指導のアウトソーシング先 となり、事業者がそこでの保健指導、例えば産業医のいる医療機関での特定保 健指導を望む場合、もちろん医療保険者の判断もあるわけですが、そういった 関係者の合意が得られれば一体的に実施することも可能であるということが述 べられているわけです。  5行目の「このため」以下ですが、このため行政においてはTHPで養成した 産業保健スタッフの活用が推進できるように、産業保健における保健指導の体 制整備に努めることが必要だということが述べられています。この際、THPに おける人材養成の段階で標準的な健診・保健指導プログラムの観点を加えるこ とが望ましいということが述べられています。また、産業保健の中心的な役割 を担う産業医の講習においても、そういった観点を含めて研修を行うことが望 ましいということが述べられています。  4.の健康診断結果の取扱い等についてです。まず健康診断結果の保存方法・ 提出方法の取扱いについては、労働安全衛生法において事業者に対して健康診 断結果の保存を義務づけているわけですが、その保存については紙によるのか、 あるいは電子媒体によるのかといったことについては、特に定めていません。  一方、高齢者医療確保法においては、大量の情報を処理するために、標準的 な電磁気様式での保存・提出が検討されている状況にあるわけです。高齢者医 療確保法では、医療保険者が労働安全衛生法に基づく健康診断の結果を、事業 者に対して求めることができる、先ほど申したとおりです。労働者の健康診断 結果の情報については、標準的な電磁気様式での提出が期待されているという ことが述べられています。  しかし、労働安全衛生法において、標準的な電磁気様式での保存・提出を規 定すると、特に中小事業者を中心として、事業者の負担が大きいため、事業者 に対して一律に法令上求めるのではなく、事業者自ら標準的な電磁気様式で健 診結果を提出できる健診機関を選定するなど、データの提供などが大きな負担 とならない範囲で、医療保険者に協力をすることが妥当と考えているというこ とが述べられています。  次の段落ですが、特定健康診査の情報提供を円滑に実施するために、高齢者 医療確保法に基づく特定健康診査、労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の 健康診断の結果を、電子的に入・出力できるシステムが開発され、健診機関が 容易に入手できることが望まれる、こうしたことで健診機関において、事業者 へ提出するデータと医療保険者に提出するデータの各々を簡単に作成すること が可能となり、事業者の負担軽減につながるということが述べられています。  さらに次の段落です。健診機関がこうした電子化に対応できない場合であっ ても、中小企業等の事業者が定期健康診断の実施時に、労働者に対して定期健 康診断の情報を医療保険者に提供する旨を明示し、黙示による同意を得ること で、特定健康診査項目以外の定期健康診断項目の情報提供が可能となるという ことが述べられています。これを少し補足させていただきますと、定期健康診 断項目であって、特定健康診査の項目ではない、先ほど申しましたように視力・ 聴力検査などが該当するわけです。本来的にはそれらを除いて、医療保険者に 健診データを提供することになる。それが法令に基づいてなされるわけです。 しかしながら、その手間を省くために、定期健康診断項目全部を労働者の同意 を得て、医療保険者に提供することが考えられるのではないか。これは1つの 例として、労働者に黙示の同意を得る。黙示の同意というのは、例えば事前に 印刷物を渡して、このデータ全部を医療保険者に提供します、あるいは会場に そういった旨を表示しておくといったことで対応できるものと考えています。 これはあくまでも一例を示したものですが、そういったことであまり負担をか けずに情報提供が可能となるのではないかということが述べられています。  下から4行目の「あわせて」の所ですが、あわせて医療保険者においては、 この場合ですが特定保健指導の実施等に必要なデータ以外は、情報の漏えい等 がないように廃棄する、余分なデータはすぐに廃棄していただくといった配慮 が必要だということが述べられています。  (2)の個人情報の保護についてです。1段落目の所ですが、高齢者医療法で 行われる特定健康診査・特定保健指導では、健康診断結果を継続的に管理し、 経年的に有効活用をすることが重要な点とされている。その中で労働者の健康 情報については、事業者から医療保険者へ、医療保険者から医療保険者への移 動が考えられる。労働者の継続的な健康管理という観点からは望ましいものの、 健康に関する情報は労働者の個人情報であるということに留意しつつ、医療保 険者はその保管・管理に際して情報の保護と利用の均衡に十分配慮するべきだ と述べられています。これについては保健局の検討会でもいろいろ検討されて います。  2段落目ですが、また雇用管理に関する個人情報のうち、健康情報を取り扱う に当たっての留意事項としては、産業保健業務従事者以外の者に健康情報を取 り扱わせるときは、これらの者が取り扱う健康情報が利用目的の達成に必要な 範囲に限定されるよう、必要に応じて健康情報を適切に確保した上で提供する と、これはすでに導入されています。こうした留意点について、より理解を得 る努力が必要であるといった意見をいただいています。  7頁、まとめの所です。本検討会では先ほどの暫定版の中で示された項目につ いて、労働安全衛生の視点も含めて医学的、科学的な観点から検討を行った、 さらに労使団体、健診機関の団体からの意見聴取を行ったということが述べら れているわけですが、その結果を要約すると下記のとおりとなります。この四 角に囲った所で、1つ目、腹囲を健診項目に追加ということで、40歳未満35歳 は除きますが、医師の判断により省略可とするなど測定の省略基準を策定、簡 便な測定方法を導入。2点目でコレステロールを健診項目から削除し、LDLを 追加。これも40歳未満は医師の判定による省略可です。  次は尿糖の省略基準です。これは、血糖検査を受けた場合は、医師の判定に 基づき省略可、この省略基準自体を削除するというのが3点目です。その他、 喫煙歴、服薬歴等の聴取を通じて、徹底してしっかりと健診機関でやっていた だくといったことを結論としていただいています。 さらにその四角の下ですが、今後、労働安全衛生規則の改正等を行うに際して は、早い段階から事業者等に規則改正の内容及び定期健康診断と高齢者医療法 に基づく特定健康診査の関係等の周知を十分に行い、十分な施行が行われるよ う配慮が必要である、また、保健指導についても、本検討会の示した方向に沿 った対応がなされるよう期待したいということが述べられています。  次の段落ですが、定期健康診断項目に、見直しを行う必要がある他の事項に ついては事務的にその見直しを行うことが適当ということも述べられています。  おわりですが、今回は「標準的な健診・保健指導プログラム」で示された健 診項目の中で、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目となっていない項 目に範囲を絞った形で検討を行ったところである、しかし、労働安全衛生法に 基づく定期健康診断項目や事後措置・保健指導のあり方については、時代とと もに変化する医学的な知見を踏まえ検討をする必要があり、その際、国全体の 健康保持増進にかかる政策や、健康診断等の実施義務のある事業者、特定健康 診査等の実施義務のある医療保険者及び健康診断の受け手であり、自己の健康 管理が求められている労働者それぞれの役割分担も踏まえ、今後のあり方を検 討することが望まれるという意見が述べられています。  9頁ですが、検討会の開催状況が記載されています。5回の検討会を開催した ということです。10頁ですが先ほどの関連文献でして、それぞれ先ほどのとお りですが、5頁の論文の内容が書かれていますので、補足させていただきます。 Kobayashi、Nakamura、その他の論文の所です。  11頁の5)の文献の内容ですが、冠動脈血管撮影、心臓を養う血管ですが、 心臓の周りの血管の造影を行った65名を対象とした調査である。この65人は 日本人の中年男性で、non-obeseということで肥満者ではないということですが、 65名のうち50名は冠動脈疾患を有している。冠動脈疾患というのは、狭心症 とか、心筋梗塞とかいった類のものですが、そういった疾患を有している群で、 15名はそういったものがなかった群です。   この文献によりますと、冠動脈の疾患を有する群は、有さない群と比較して、 内臓脂肪の面績が有位に広かったということで、内臓脂肪が心臓疾患と関係す るということが述べられているものです。  12頁には3回目の検討委員会で、関係団体の意見をお伺いしています。日本 経済団体連合会、東京商工会議所、13頁で全国中小企業団体中央会、日本労働 組合総連合、全国労働衛生団体連合会、それぞれから意見を伺っていますが、 もし追加等がございましたら、後ほどご指示いただければ幸いでございます。 私からの説明は以上です。 ○分科会長 ありがとうございました、内容が豊富ですが、要領よくわかりや すく説明していただいたと思います。ただいまの説明につきましてご意見、ご 質問を受けたいと思います。どうぞご自由にご発言ください。 ○松井委員 詳細な説明をありがとうございました。また、分科会長が座長と なって精力的にご議論してくださったことに感謝を申し上げます。ただ、私ど もとして、11月のヒアリングのときにも申し上げたわけですが、そもそも今回 の高齢者医療確保法が求めるというような形になって、それに基づいた新たな 役割分担の下で、事業者に対する義務づけが十分考えられたのかというと、そ の辺は8頁の終わりのほうに少し触れられているだけでしかないのではないか という気がするところです。  ここにも書いてありますように、本来、時代とともに変化する医学的な知見 を踏まえ、研究をする必要があるということですが、その医学的な知見に基づ いて、保険者に対しての義務づけが行われるということを、私どもからすると、 どうにかこうにか事業者にもやれと、結論的に言うと、そのように結論が出て きたようにしか思えないのです。  分科会長にお願いをしたいのですが、こういった新たな役割に基づいて、ど のぐらい事業者の負担が変わっていくべきなのか。あるいは労働者がやるべき ことはどうなのか。もう1つ申し上げたいことは、健診項目は結果的に拡大す るわけですが、それは企業が知ることで最終的には、それに基づいて何らかの 措置をとらなくてはいけないということになると思うのです。その場合に旧来 の指標で、大体が不可能とまで言い切れるのかどうか。その辺を教えてほしい ということです。  もう1つ、引き続き申し上げて確認をしたいのですが、内科8学会でいろい ろ決めたということで、この検討会はされているのだと、結論は私にはそのよ うにしか思えないのですが、結局内科8学会でやったところは11頁に少しデー タは出ていますが、11頁のデータについて、注で1,193名に対して行ったCT 検査に基づいて、さらにBMIはやっていたけれども、では腹囲について748名 で男性の場合は554名、女性は194名、200名以下でやった結論が、内科8学 会の何らかのものに出てきていると思うのですが、医学的に見て、あるいは科 学的に見て、このくらいの数値に基づいたものによって、安全衛生法に基づい て事業者に義務づけるというのは、罰則つきで全部やれということですから、 そういうことについての配慮があったのかどうかということ。  もう1つ申し上げたいことは、医療保険者については、今回の健診において、 もちろん今まで対象となっていなかった、あるいは保険者にとっては対象とな っていなかった、被扶養者についても行うということですが、いちばんマック スの所で8割、できそうにないところは6割でいいという違いもあるというこ とが、いいですか、安衛法で義務づけるのは100%やれが、それ罰則つきですね。 医療保険者に対して行うのは、義務化といっても罰則つきではなくて、さらに 低いところは6割やれば、ある程度よろしいという違いについても踏まえた議 論が行われたのかどうか教えていただきたいと思います。以上です。 ○分科会長 私に対する質問ということでよろしいですか。まず、第一に、い ろいろ疑問をもたれることは当然かもしれません。しかし、我々の議論におい ては、第一に事業者がこれまでの歴史的な経過から見て、当然のことながら作 業関連疾患に対しては当然責任を持つべきである。それが基本的な考え方です。 そのために現在面接指導、その他の制度を着々と進めているところです。いち ばん問題になるのは、やはり脳・心臓疾患であって、それをいかに少なくする かが非常に重要なことです。もちろん今回の特定健診・特定保健指導もそれを 目指しているわけですが、作業関連疾患という立場から見れば、当然事業者が 責任を持たなければいけないだろう。これが出発点です。  あとはいろいろご質問がありましたが、前後するかもしれません。代替えが 必要かどうかということです。これは現在の医学的な進歩によりまして、現在 のところ行われているBMIよりも腹囲のほうがはるかに有効であるというデー タがかなりたくさん出てきているわけです。私がそれについて調べてみました。 現在文献検索は容易にできるわけです。腹囲と脳・心臓疾患のリスク、この2 つをインプットしてデータを取ったところ、全部でBMIとの比較において20 の文献が去年と一昨年に国際的に発表されています。20のうち16の文献は、 全て腹囲およびその関連項目指標のほうがはるかにリスクをきちんと把握でき るという文献でした。あと4つのうち2つは、どちらもよい指標である、とい う意見が確かにありました。  あとの2つは両方やったほうがいいという意見で、腹囲よりもBMIのほうが はるかに有効であるという論文は1つもありませんでした。そういうことで、 やはり代替えは非常に難しいだろう、やはり責任をもってリスクをきちんと把 握するためには、腹囲でやるべきであると、これは国際的にも国内的にも認め られた考え方であるということです。現在のように、これだけメタボリックシ ンドロームが有名になりまして、皆が関心をもっています。そういったところ で適切な健診が行われないということは、かえってまずいのではないかと考え たわけです。やはりメタボリックシンドロームを中心にしてやることに、その 利点が必要であれば述べますが、たくさんあるわけです。1つは先ほど述べたよ うに、4つ揃うと非常にリスクが高い、その出発点の医学的な理論は、すべて内 臓脂肪から始まっているわけです。内臓脂肪をきちんと測ることによって的確 に把握できる。それを腹囲でやってはどうかということが言われているわけで す。腹囲で十分できるということに、一応なっているわけです。  あとは内臓脂肪との関係においては、その病態、成因と言いますか、それも 明らかにされています。内臓脂肪から活性化因子が多く出てきて、それで血圧 も高くなれば糖尿病も出てくるし、そのほか高脂血症も出てくるのだという理 論的な背景も、もう十分解明されています。したがって、私たちとしては現時 点においては、これは早急に考えるべき事項と考えたわけです。  もう1つ、メタボリックシンドロームでいいところは、メタボリックシンド ロームは一気にくるわけではありません。まず内臓脂肪が溜まってきて、それ からしばらくすると高血圧になり、それから糖尿病になるという段階を踏んで くるわけです。最終的に何年も経つと小さな血管、網膜障害、足の壊疽とかが 段階的に出てくるわけですから、それをきちんと把握することによって、労働 者自身も自分がどの段階にあるかということがすぐに把握できるわけです。こ の場合、そのうちに高血圧が出てくるだろうとか、それによって動機づけがで きるし、それできちんと対処できる、管理ができる。個別の対応ができるとい うこと、それが非常にいい点で、そういった利点があるということです。  今までのように高血圧とか糖尿病とか、事業所においても、それに基づいて 個々の対応をしていたわけです。しかしその場合、高血圧であったら160とか 170、下が110とかいうものを対象にしていたわけですが、メタボリックシンド ロームというのは、正常値よりもちょっと高い、血圧が130と85よりちょっと 超えた状態、糖尿病もほんのわずかある。コレステロールもちょっと高いとか、 今までの健診では対象にならなかったようなものが1つにまとまると、ものす ごく脳・心臓疾患のリスクが高くなる。13倍とかになってしまうのだというこ とです。したがって非常に軽いものも集めてきちんと対応したほうがいいだろ う。その基本として腹囲が存在するのだということで、これは緊急に考えなけ ればいけないものである、そうしないと、現在のようにこれだけメタボリック シンドロームが騒がれている中で、何の検討もしていなかったのではないかと 言われると、かえってまずいのではないかということで検討を始めて、結論を 出した、それが現状です。あと何かありましたか。 ○松井委員 新たな制度の下での役割分担に基づいてどうするかということに は、いま先生からは言及がなかったと思います。 ○分科会長 役割分担については、1つは事業者がこれは作業関連疾患に対して 対応するのは当然であろう、それはもう役割分担の1つであろうと考えたわけ です。労働者は当然それを受けなければいけない。これは安衛法では義務づけ ているわけですから、当然、労働者もそういった義務はあるということです。 そういったことで労使の義務がちゃんとあるのだといった建て前が前提になっ ているわけです。  現在のように、これだけ数少ない症例で大丈夫かというご質問であっただろ うと思うのですが、とりあえず現在のところ、きちんとした日本でのデータは これが基本になっていて、そして学会でもそれを用いているし、現在そういっ た基準に基づいて対応していても何ら差し支えがないという結果が出ているわ けですから、いまのところその基準で大丈夫だろう。ただ、女性については高 過ぎるのではないかとかいろいろ議論があります。しかし、それについては今 後、解決すべき問題かもしれません。とにかく緊急に対応しなければいけない ということで、現在8学会で認められている基準を用いたほうがいいだろうと、 一応考えたわけです。  確かに今回の特定健診・特定保健指導では義務づけてないわけです。しかし、 それは考え方でして、保険者が、被保険者に対して責任をもつかどうかという ことなのです。なるべく生活習慣病を少ないようにという指導をしましょうと いうのが特定健康診査、特定保健指導の目的だと考えられますが、事業者が行 う安衛法に基づく健診は、そんな悠長なことでは済まされないと思うのです。 きちんとした対応を事業者がとってほしい。そして、事業者の責任逃れではな くて、責任をむしろ前向きに考えて、是非とも積極的に進めてほしいというの が、我々の要望となったところですし、現在、問題になっている企業の社会的 責任の立場から考えても、社会的責任の中には、もちろん環境とかいろいろあ りますが、その中の1つの大きな柱として、自分の所の従業員の健康と安全を 守る、これが企業の社会的責任だと言われているわけです。そういう全体的な ことから考えても、企業は是非ともそういったことで対応してほしいというの が大体のことですが、何かあとご指摘のところがございますか。以上の発言は 会長としてではなく、検討会の座長としての発言です。 ○中桐委員 連合の中桐です。日本経団連さんからいろいろとご心配の向きの 意見が出ており、意見書もありますが、最初、多くの部分で我々と問題意識は 一致をしていたと思っています。最終の報告書を拝見しますと、費用対効果を 総合的に勘案したもの、またその一律の実施としないもの、中小事業者の負担 にならない程度にするという配慮の必要なものを織り交ぜて配慮していると思 います。  その意味で、中身として大変フレキシブルなものになっていますし、先ほど 会長の指摘にありましたが、事業者にとっても健康な職場、健康な労使でなけ れば事業の継続も、CSRもありませんし、発展もないと思うのです。そういっ た意味で大きな違いというのは、あまりないと思いますので、この報告書を基 に合意形成の努力を積み上げていくべきだと思っています。  最後に実は1点だけ労使では意見が異なっているものがあります。それは労 働者の自己保健義務の強化です。これについても報告書の最後に「今後のあり 方を検討することが望まれる」と明記をして、日本経団連さん以下、使用者側 の皆さんの懸念をここで言われているわけですが、この事業者の安全配慮義務 というのが対の関係にあって、労働者の健康管理の義務があるというわけです が、これについてはそういった安全配慮義務との対の関係で、一般論でどうだ こうだということではなく、個々のケースを検証して、はっきり申し上げれば 裁判官の判断に委ねて、判例を積み上げていくというべき性格のものではない かと感じています。以上です。 ○分科会長 ほかに何かご意見ございませんでしょうか。公益者側から何かご 意見がございませんか。 ○松井委員 中桐委員から安全配慮義務のところでご指摘がありましたが、そ こが意見が違うというよりも、安全配慮義務のここの書きぶりについて、3頁に BMIがあって、それのみで事後措置を求められなかったことと同様、腹囲のみ で事後措置を行う必要はないと書いて、さらにこれが安全配慮義務の範囲が拡 大しないと書かれても、私どもはまずそう思わない。結論だけ申し上げます。  なぜならば、それは中桐委員がいまいみじくも言われたように、これは最終 的に裁判官がどのように判断をしていくのかということによると思っています。 そういうことからすると、反対にBMIは別の言い方をすると、いまは身長と体 重で算式に基づいて判断をして、それが肥満であるかないか、あるいは痩せす ぎであるかないかとかを判定するものだと思うのです。内臓脂肪の量を直接把 握するという仕組みになって、それは分科会長のご説明とするのか、あるいは この検討会をまとめた座長としての意見なのか、それは置いておいたとしても、 これが直接重要で事業者が知っているのが必要であって、事業者はそれに基づ いて何らかの措置も求められるというのが、いまの安全衛生法上の枠組でいく と、そこは違わないと思うのです。そうすると、知った上で何もしなくてもい いということではなくて、反対にそれに基づいた形での何らかの事後措置を企 業側として、現実の問題として全くしないわけにはいかないのだと思うのです。 保健指導はこちらの報告書では事業者については努力義務であって、保険者は 義務であると、そのように書かれて、それは法律上そのようになっていること を十分知っているつもりなのです。  それでは現実の現場に行ったときに、そういう対応というのは本当にできる のですか、現場の企業側の声も結構多いのです。反対に、BMIよりも肥満を把 握したほうがどのぐらいリスクが多いのか、先ほど座長は20の論文のうち16 がそうなっていて、というご説明でしたが、では、企業側としては、それを入 れた場合に、さらにそれを見て産業医が少なくとも判断をしなくてはいけない と思うのです。その判断をするときに、どのぐらい多いのだということについ て、本当にわかるような仕組みになっているのでしょうか。その辺が何となく 危険だからもっとしなければいけない、ということで対応しなくてはいけない のか。  もう1つあることは、安全衛生法が改正されたばかりで、産業医の役割も徐々 に増えてきて、産業医が過重労働になりかねないという状況もある中で、こう いうものを入れてきたとき、それでも先生は、産業医はもっと勉強しろとおっ しゃるのかもしれないのですけども。では、それに対して、具体的にどういう 対応をして、こういう数値になったときに、どのようにやればいいかというこ とがかなり確立されていて、産業医師としても対応が可能で、どういう事後措 置が必要かがわかりやすくなっていて、それは企業としても対応できる所まで 至っているのでしょうか。そこら辺を確認したいのです。 ○分科会長 まず1つは、事業者がすぐ対応しなければいけないということで ございます。これは、もちろん腹囲、その他、血圧、そういったものをすべて 勘案して、産業医が勧告するわけです。したがって、すぐ事業者がそれを見て、 腹囲がこれだけだから対応をしろとかいうことは一切ないわけで、産業医がそ れに対してどのような勧告をするかということです。  もう1つは、BMIに関してです。幸い私は中央労災委員もやっていますから、 裁判のすべてに目を通しています。しかし、いまのところ健康診断に関して出 てきているのは、高血圧とか、そういう病気です。病気であったにも関わらず 対応をしていなかったということで、BMIが高かったから裁判で負けたとか、 裁判沙汰になったということは一切ありません。それはいままでどおりです。 BMIでするのと産業医が腹囲でするのとでは、医学的には、全体としての意義 は腹囲のほうが遥かにいいわけですが、考え方は同じでして、おそらくいまま で、産業医はそんなにBMIを中心に判断して勧告はしていないと思います。や はり高血圧とか糖尿病とか、多分そういうなれの果ての所で勧告しているのが 普通であって、お腹が出ているから、ただちにこれは、あなた、残業は駄目で すよなどとは医学的に考えられないわけです。  それからもう1つ、BMIに関しても、いま現在、産業医はそれに応じてきち んとした対応をしているわけですから、腹囲に関してできないということはな いはずです。産業医として、医師としてきちんと対応できると思います。しか し、それができなければ、先ほどおっしゃったように、産業医の勉強不足でし て、そのぐらいの資質のある産業医にこれから活躍していただきたいわけです。  それから、産業医が責任を取らされたという裁判の事例はいまのところ、私 自身が見た限りではゼロでございます。すなわち、産業医がそれにのってきち んと勧告をして、事業者がそれに基づいてやらなかった場合、それがいちばん 問題になるわけでして、産業医は別に、腹囲が高いから、すぐそれにのって事 後処置しなさいということは、いまのところ考えられません。BMIとまったく 同じだと思います。  それから、腹囲がどれだけだったら、リスクがどれだけ出るかということは、 先ほど述べたオービックなどの検索システムで検索しますと現在までの知見が 示されており、それにきちんと、このぐらいだと、このくらいのリスクがある から、これを見るには腹囲のほうがいいのだとか、そういうデータはあります から、是非それを勉強していただきたいわけです。場合によっては、ある程度 それを指針で示してもいいのではないかと考えております。これは厚生労働省 の考え方でございます。そういうことで、きちんと対応できると考えておりま す。 ○伊藤委員 商工会議所の伊藤です。この度の検討会の報告書で取りまとめら れて、我々が検討する健康診断に、腹囲の追加は必要だと結論づけられたと思 いますが、一部の方が検討会で、腹囲を健康診断に盛り込むべきではないとい う、強い反対意見があったと聞いております。逆に、それが強引にまとめられ たのではないかということと、今回の報告書が、「初めから健康診断に腹囲を追 加すべきという結論ありき」で走ってはいないか、ちょっと疑問を感じます。  それと、先ほどからお話しになっている、11頁ですけども。報告書の中で、 男性が85で女性が90ということはあまり謳っていないのですが、実際この資 料の中で100cm^2、これだから割ったときですよね。 ○分科会長 ええ。 ○伊藤委員 そのときの相関関係が、男性85で女性90にあったというのです が、座長が、BMIよりもこちらを優先すべきだと。これは素人考えですよ。180 cmの人と160cmの人で、内臓脂肪、内臓の部分は当然身長の大きい人が多いで はないですか。この辺が、平均身長170いくつの人がこうだと言うのならわか るのですけども。それと、先ほどのご質問から、産業医の方が分析されるとき に、身長・体重との相関関係の、ここにすべきだと何らかの指導があるのなら 我々もそうかなと。実際、85cmの人というと我々の回りにいっぱいいて、ほと んどの人に、産業医がそうだと結論を下したのは、我々事業主側は、お前痩せ ろと、強引な言い方しかできないですが、痩せなかったら出社に及ばずという、 極端な例に陥るのではないかと、そんな感じがいたしました。 ○分科会長 1つは、「腹囲がはじめにありき」ということは考えておりません。 要するに、現在の医学的な進歩において非常にアーヂェントな問題であると、 基本的にそういう認識から始まっていることでございます。それから、身長を 勘案しなくていいかということでありますが、身長が高かろうが低かろうが、 内臓脂肪という点では断面積を取ることによって観察できるわけでして、身長 の高い人が腹囲が大きいから駄目とか、そういうことは絶対ありません。内臓 の断面積の面積に応じていろいろな病気が出てくるわけです。身長が低い人で あろうと高い人であろうと、内臓の面積によって規定されるわけで、この場合 は身長は関係ありません。理由がある場合は、一応身長を勘案することになり まして。 ○伊藤委員 この報告書だと、100cm^2が、腹囲が男性は85、女性は90とな っています。 ○分科会長 そうです。 ○伊藤委員 これはわかります。ただ、身長の高い人が同じ85で。 ○分科会長 ええ。85だったら。 ○伊藤委員 あり得ないだろうと、僕は言いたいわけです。 ○分科会長 いや。身長は高かろうが低かろうが、85あったらリスクと考えて くださればいいです。背の高い人であろうと、低い人であろうと。 ○伊藤委員 極論言って、2mの人ですよ。 ○分科会長 たくさん脂肪があるかもしれませんが、断面積から見ればそれで 十分把握できます。身長が非常に高い人だから腹囲が多くていいとか、そうい う意味ではありません。内臓の脂肪の。 ○伊藤委員 だって、身長の高い人のほうが腹囲が大きくなるのは、これ当然 の。 ○分科会長 ええ。大きい人はそれだけリスクがあると考えていいわけです。 ○伊藤委員 内臓は、大きい人も小さい人も同じなのですか。 ○分科会長 ええ。内臓の脂肪面積によって規定されるわけです。 ○伊藤委員 それはわかります。 ○分科会長 ですから、背が高かろうが低かろうが、内臓の脂肪が、断面積100 であれば。 ○伊藤委員 では、大きい人も小さい人も内臓の容積は同じという意味ですか。 ○分科会長 容積ではありません。断面積です。100以上になればリスクがある というだけです。 ○生活習慣病対策室長 いまのは身長との関係のご質問だったのですが、身体 が大きくなればそれだけ腹腔内も縦に大きくなってくるわけで、要するに、身 長の分と腹腔の分の影響が同じようになってくるわけです。ですから、同じ断 面で見ることによって、代替というか、その大きさを比較することができるわ けで、おへその位置で、10cm×10cm、100cm^2の内臓脂肪の面積がある所が 1つのポイントになって、それでも多いか少ないかでデータが出ています。そう いう意味で、多少その所の影響は全体の量で測りますが、その分だけ身体が大 きくなっていますから、それだけその内臓脂肪から出てくる、身体全体に及ぼ す影響も同じように、比率によって変わっていくわけで、それだけ極端に変わ るわけではありません。 ○伊藤委員 身長が変わっても、内臓脂肪の量というのは絶対100なのですか。 ○生活習慣病対策室長 100、そのまま。 ○伊藤委員 その前後、100を中心に変わるのですか。 ○生活習慣病対策室長 はい。断面で見たときには。 ○伊藤委員 身長の大きい人は200になっても大丈夫ということにはならない のですか。 ○生活習慣病対策室長 はい。身長が多いからといって、そこは100という所 で代替できるということです。身長が変わっても3mとか4mになる話ではなく て、大きくなったとしてもせいぜい1.5〜2mくらいで人間の身長はある幅に 納まっているわけですから。ですから、その考え方の中でいけば、おへその位 置で、100cm^2という所でその大きさが代替できるわけです。 ○伊藤委員 これが体調に関わる脂肪の単位面積だと。表になれば。 ○生活習慣病対策室長 体積です。体積ね。 ○伊藤委員 そういう意味ですから、容量が大きくなるからという理論が。 ○生活習慣病対策室長 はい。身体も大きくなるけど、内臓脂肪も大きくなる けど、それは断面で代表できるということです。 ○伊藤委員 あとは、先ほどのメンバーの中で議論が。 ○分科会長 ええ。確かに一部の委員が反対されました。それで、国際的にも、 国内的にもまだわからないと主張されたわけですが、国内的にはちゃんと8学 会が全部認めているわけだし、そこに書いてあるように、国際的にも認められ ているわけです。それから、先ほど述べましたように、20のうち16は腹囲の ほうがいいという判断をしているわけでして、BMIのほうがいいという論文は 1つもありませんでした。また、健康診断は不要であるという考え方についてで すが、確かに外国では絶対やらないですし、労働者も希望しないわけです。自 分の粗を探すようなことはやってくれるなというのが外国の労働者の考え方で すから、それで賃金でも下げられたら大変だという考えが基本にあるわけです。 外国の労働者は定期健康診断を受けません。しかし、日本の長い歴史では、そ のような考え方はありませんし、労働文化も異なります。したがって、我々の 検討会としては、4人のうち3人の意見は一致しているわけでして、そういった 意味で、一部委員の意見は採用しませんでした。 ○松井委員 いま分科会長からお話がありましたので、反対に、中桐さんを含 めた労働側の委員の方に意見を聞きたいです。いま、定期健診などを事業者に 義務づけている所は、日本は世界的に稀である。さらに、そういうことがより、 いまは腹囲の話だけになっていますが、服薬歴だとか、それも限定した形で聞 くことになって、それ以外のものは、喫煙歴も含めて聞かないという整理にな っているようですが、それは実態として聞いているからいいだろうという整理 になっています。反対に、労働組合の現場の立場として、こういうものはどの ように考えておられるのですか。中桐さんは、大体これでいいとおっしゃった ように私の耳には聞こえたのですが、本当にそうなのか。これは会社側が図っ て、先ほど伊藤委員からもあったように、もう少し甘い物を食べるのをやめろ とか、脂っこい物はやめろとか、会社側がいらん世話のことまで言いかねない ことも起きそうなやつについて、労働側の委員の方々はいまどうお考えになっ ていますか。そこら辺について少し、ご意見を伺いたいのです。 ○中桐委員 今日ここにいる委員全体でミーティングをして、何かこれを議論 したことはありません。ですから、ここで聞いていただくしかないのです。ご 心配になっているような所ですが、事業者がそういうふうになったとしても、 君ちょっと、腹囲が大分あるから食べ物を気をつけてね、というようなことは、 それはいやがらせととるか、助言ととるか、いや、ハラスメントだととるか、 いろいろな受け止め方があるかもわかりません。特に女性の場合はあるかもわ かりません。しかし、それはあまり気にすることではないと思います。受け止 め方はいろいろあると思います。  それから、健康診断制度は確かに日本を含めて数カ国しかやっていませんし、 私個人としては健康診断が、事業所は義務ですが、労働者も義務になっている のです。ですから、受けたくないと言っても、受けなければ国に対しての責任 として、一応先ほどの義務のこともくるわけですね。ですから、1年に1度、先 頃問題になった先生も含めて議論したことがありますが、権利にしたらどうだ という意見がありました。そうすれば、権利は行使しないということで、罰せ られることはありませんから。そういう方法もあると、個人情報保護の検討会 の中で議論したことがありますが、そういう考え方もあると思います。しかし、 いまそういうこと、全般を話す時期ではありませんので。限られた日程の中で、 片方は実施を決めているわけですから、最初からそこにあったのだろうと言い ますが、決まっているわけですから、実施するのかしないのか、それについて どうするのかを決めなければいけないです。それで、労働者が2回も行くこと については、日本経団連も最初は反対したと思います。それは大変なロスにな りますし、逆に言えば、私の意見は少し真面目過ぎて、もう1日健康診断で休 みがあるなら、そのほうがいいよというような労働者もいるかもわかりません が、全体のことを考えると、やはり1回でやっていただいたほうが。これは労 使で考えなければいけないことですので、使用者側のほうもおそらく2回やる よりは1回のほうが受け入れやすいと思いますので、そのように意見をまとめ ました。ただ一部、担当者の間で議論したときに、2回受けてもいいよという産 業別組合が1つありました。そういうことをご報告したいと思います。 ○松井委員 6頁の「特定保健指導と安衛法に基づく保健指導」の所について の質問です。「生活習慣の指導という面では両者は一致する」と書かれていて、 それでなおかつ、「安衛法における保健指導と特定保健指導を併せて実施するこ とによって、より効果的、効率的な指導ができる」と、さらに、次の所が特に 気になるのですが、「医療保険者においては、安衛法に基づく保健指導を行う際 に、特定保健指導の実施を希望する事業者に対して、特定保健指導の委託がで きるようにすることが望ましい」と。ここまで書いてあるのはいいのですが、 こういうケースの場合、事業者においてメタボリックシンドローム対策を行う ような保健指導というのは、本来費用負担においては、事業者が負うものと考 えるのか、それとも保険者が負うのか。保険者が責任を負うときの考え方とし て、もう1つ、保険者は被保険者に対して料金を請求できる仕組みにまでなっ ているのですが、現場に落ちてきたときに、検討会ではここの依頼の部分につ いて、どんな結論になるように議論が行われたのでしょうか。 ○分科会長 1つは、安衛法に基づく定期健康診断の目的と特定保健指導の目的 はかなり違う所があります。例えば、作業起因性の疾患があるかないかを見な ければいけないのですが、特定保健指導はそんなことを一切言っていないわけ です。それから、労働適性があるかどうか。視力が落ちていないかとか、そう いったことがあった場合、やはり適性ということを考えなければいけないが、 医療保険者はそういうことを一切やっていないわけでございます。したがって、 本来であればいままでどおり、産業医が健康診断に基づいて保健指導を行った ほうがいいでしょうと。しかし、その中でもう片方、特にメタボリックシンド ロームに関しては特定保健指導でやれとのことですから、それは別々にやって もかまわないと思います。ただし、もしできれば、特に事業所に所属する産業 医が、ある程度そういったことを全部知っている産業医が指導するのがいちば ん望ましいでしょう。それは産業保健に関しても指導できるし、それから、メ タボリックシンドロームについても指導できるでしょう。いままでどおり、産 業医は当然そういった、職場における産業保健上の指導はとにかくしなければ いけないわけです。それと同時に、脳・心臓疾患に関係するようなことの保健 指導は当然しているはずです。ですから、それは必ずやってくださいと。しか し、両方やるというのが、片方はメタボリックシンドロームだけですから、そ ちらを重点的にやってくれというわけでございます。もし産業医がちゃんとし た知識を持って、そして、両方一遍にできればこれはいいことではないかと、 一応そう考えたことが基本的にあるわけです。 ○労働衛生課長 質問の趣旨は、特定保健指導と労働安全衛生法の保健指導を 同時実施した場合の費用負担の考え方だと思いますが、基本的に、特定保健指 導にかかる分は当然医療保険者のほうで対応していただくということで、費用 も当然医療保険者のほうで見ていただけるものと考えておりますし、残りの部 分について事業所の責任が出てきますので、当然事業所のほうでやっていただ くと、そういう整理で大丈夫ではないかと考えています。ただ、実際の高齢者 医療法に基づくいろいろな施策についての、労働安全衛生に対する影響、こう いうのはもう少し関係局なりとも相談しながら、なるべく事業所の負担になら ないように、我々としても努力したいと考えています。以上です。 ○松井委員 ちょっとものわかりが悪くて申し訳ないのですが、6頁に書かれて いるものは、安衛法の下でも、生活習慣の指導という所での問題はまったくな いわけではないですね。作業関連疾患ということで、将来悪くなっていくもの を抑えることで必要となっているわけですね。だから今回、この検討会の中で は、内臓脂肪の量を把握するための項目を事業者が見るという整理になってい るわけですね。そういう整理になっていながら、いまのご説明を聞くと、だけ れど、その保健指導をやるのは保険者だよと、そういうおっしゃり方をしてい ますね。労働衛生課長の説明としてもそういう整理ですね。ですけど、そこが 現場にいったときに、本当にそういう整理になるのかどうかという疑問点があ ることと、あとは、費用はそちらがやってよということは、それは決めればい いという話ですが、分科会長がご指摘になられたように、いま現在でも、いわ ゆる生活習慣病対策的な保健指導を企業として、事後措置としてやっているケ ースも結構あります。 ○分科会長 確かにありますね。 ○松井委員 それは別の言い方をすると、私どもからすれば、さらにここで腹 囲も測ってやりなさいと、それは事業者の責務だとなったとき、一般的にそれ を判断する産業医が、これはうちとは関係ないと思えるかというと、必ずしも そうならないのではないかと、現場ではそのように判断しにくいのではないか と私は考えています。 ○分科会長 産業医が指導しなくてもいいということですか。 ○松井委員 にはならないだろうと。産業医はよりコミットした形でやらなく てはいけないという可能性のほうが高いのではないかと、私どもとしては判断 せざるを得ないと思います。 ○労働衛生課長 高齢者医療確保法に基づく特定保健指導について、どこの保 健指導と言うわけにはいかないわけですが、いままでの保健指導がうまくいか なかったことから、しっかりとした保健指導をやろうということで、いまのと ころ保健指導のあり方も、動機づけ支援とか、あるいは積極支援ということで、 1回で終わらないような内容と保健指導を健康局は考えていると、そういったも のを労働安全衛生法の保健指導で全部まかなうというのは非現実的です。ただ、 特定保健指導の合間に、事業者として必要な保健指導を産業医にやっていただ くのは可能だと思います。あと、先ほど申したように、専属産業医がいる所は 多分、専属産業医に合わせて、特定保健指導と労働安全衛生法に基づく保健指 導を一緒にやっていただけるものと思いますし、これからも産業医の活躍は広 がるのではないかと思います。専属産業医でない場合も嘱託産業医のいる医療 機関に、医療保険者と事業者が相談して、うちの労働者には、お願いしますと いうことでうまくいけば、嘱託産業医でも一緒に保健指導ができると思います し、そういった面、まだ方針が出たばかりですので周知はしていないわけです が、労働安全衛生サイドにおいても積極的に、これからどういった保健指導、 対応があるのかといった周知とか、そういうのを一生懸命、関係部局とともに 行っていきたいと考えています。また、そういうご懸念があるようでしたら、 我が方にもいろいろ教えていただけたら参考になるので、よろしくお願い申し 上げます。 ○中村氏(金子委員代理) 腹囲が入ることは非常に重要なことで、BMIより も有効であると私も思います。ただここで問題となるのは、特定保健指導にお ける指導と産業保健における指導と、役割分担ははっきりとしておいたほうが いいと思います。ただ、その2つをまったく別々にやるのではなくて、お互い 協力することは絶対必要なことであって、協力体制あるいは情報の移行の体制 はとても大事なのですが、やはり、いまのところ曖昧になっている部分が多い と思います。役割の主体がどちらにあるかがはっきりすると、事業者側も安心 できると思いますし、お互いうまくいい関係がとれると思います。これは、ま ったく別の話ではなくて、できるときは協力いたしますし、やるべきことはや ると。ただ、責任とまでは言えないのですが、主体をどこに置くかがある程度 明確になっていると、事業者側は非常に安心できるのではないかと思います。 ですから、産業保健のほうでは、内臓脂肪から派生してきたもう少し下流のほ うを見て、それが業務との関連が非常に大きいですので、そこを中心に行う、 特定保健指導のほうではもう少し上流にあるほうを中心に行う、というように、 ある程度役割分担ができればいいと思いますし、その中での協力関係をしっか りと明記しておけば、情報提供などにおいても問題なくできるのではないかと 思っています。 ○分科会長 非常に貴重な意見だと思います。保険局と衛生課との話合いにな ろうかと思いますが、なるべくお互いスムーズにいくように考えていただきた いわけでございます。 ○生活習慣病対策室長 まさにご指摘いただいたような形で、そこの所の連携 をうまくできるようにと思っています。 ○伊藤委員 我々の団体としては中小企業の団体を代表しておりまして、もう1 つ別の問題があって、「定期健診のコストの増加」という所に非常に関心が高い 部分があります。 ○分科会長 そのとおりだと思います。 ○伊藤委員 厚生労働省の方々からは、定期健診に腹囲を追加しても、診療報 酬ベースでゼロ円だという説明を受けております。しかしながら、我々が実際 に見積りをとってみると、健診機関として、結果に責任を持たなければならな いことがあると思います。実行性の観点からチェックしたり、測定スペースの 確保を行わざるを得ないので、大体その額が、実際に私どもの会社でいただい ているのが1人500円です。それから、アンケートをとった段階で1,000円と いう所も出ていて、この辺をどう調整するかですね。この部分は企業が全額を 負担しなければならないために、企業の負担増枠を避けられない状況にあると、 その辺はどのようにお考えなのでしょうか。 ○分科会長 まさにそのとおりでして、如何にコストを増やさないかがまず1 つの条件だったわけでございます。したがって、8頁の所の「まとめ」にあるよ うに、他の、前々から暫定版においては尿酸とかヘモグロビンA1cとか、非 常にコストのかかるもの、それから、眼底とかそういうもの、クレアチニンと か尿酸とか出されていたわけですが、事業者が責任を持ってやる範囲を超えて いるということで、そういったものは我々の検討会で拒否したわけです。そし て、唯一残ったのが腹囲となるわけでございます。したがって、コスト面では 十分に考えて、これから非常に重要であるが、非常に高価なものは全部必要な いということで削除しています。1つは、腹囲を測るのにどれだけお金がかかる かということですが、それは業者がどう考えるかでございます。私が始めに考 えていたのは、どうせ医師の診察がありますから、そのときに、看護師あるい は医師がその場でサッと測れば、ただでできるのではないかと考えたわけです。 だから、そういうような簡便な方法を用いるか、あるいは申告制にすればそん なに費用はかかりませんから、そのようなことを入れるかは、これから指針そ の他で示してくれると考えています。ご承知のように、40歳未満ではレントゲ ンを省略するのは大体問題がないことになってきていますから、それでも費用 がある程度、安くなり、したがって、私自身はそんなにコスト高にならないと 考えているわけです。しかも、ほんのわずかな、200〜300円、あるいは増える としても、それはやはり現在の医学的な知見に基づいて、事業者がそのぐらい の出費はある程度しなければいけないか、しなくていいか、そのバランスの問 題だと考えるわけでございます。現在私たちは、事業所としてはそのぐらいの ことはやっていただきたいという要望です。 ○伊藤委員 例えば、作業場の観点から。我々は製造業ですから、ここのとき に一緒にやればいいという考え方もわかります。私たちが実際に見積りをとっ た段階でそういう数値が出ているのです。これがたかだか500円と考えるか、 当然、かける何人で払わなければならないので、それはやはり大企業と違って その出費が非常に大きい、それを何らかの手法でゼロにできるような指針とか、 そういうようなことができれば有難いのですが、実際には保険者の方々はそう 考えていないようです。 ○分科会長 保険者が考えていないのですか。 ○伊藤委員 考えていないのです。はい。 ○分科会長 それとも衛生機関が考えていないのですか。 ○伊藤委員 我々はゼロに考えています。こうやればできるではないかと言い ますが、実際上は、彼らはそれをお金にしたいと考えているのか、それともそ の責任感なのか、わかりませんが、実際に私どもは見積書をいただきましたの で。 ○分科会長 保険者がそう考えているのですか。 ○伊藤委員 そうなのです。 ○分科会長 保険者が考えるというのはおかしな話で、労働衛生機関がそう考 えているだけのことでしょう。 ○伊藤委員 そうです。 ○分科会長 保険者はそんなことを考えているはずはないわけです。 ○伊藤委員 それは言葉の間違いです。 ○分科会長 なるべく安くしたほうがいいわけですから。 ○伊藤委員 はい。 ○分科会長 だから、その辺の所は先ほども言ったように、全体を考えたとき、 バランスの問題が1つあるということですね。 ○伊藤委員 そうです。全体、どこのバランスのことでしょうか。 ○分科会長 バランスは、一つは従業員の健康とそれにつながる生産性とコス トのバランスで、もう一つは先ほど言ったように省略することもある、それか ら、もっといろいろな項目を追加するべきだという意見に対して、それは全部 する必要はないということであります。 ○伊藤委員 では実際、レントゲンをなくしていく方向も。 ○分科会長 それは、いまのところまだ審議中ですが、少なくとも40歳未満に 関しては省略することはほぼ決まっています。 ○伊藤委員 この問題は40歳以上に関してですか。 ○分科会長 ええ、そうです。 ○安全衛生部長 いまの所、報告書の3頁、いちばん下のなお書きの所で、腹 囲については、もちろん直接測定するのが望ましいのですが、今後、運用上柔 軟に対応できるようにということで、いま和田座長からもお話があり、自己申 告などの腹囲測定省略基準を設けるとともに着衣による測定ですね。いま伊藤 委員がおっしゃったのは、ブース云々というのはおそらくプライバシーもある ので、上着とかシャツを脱ぐということになれば、新たにブースを設けなけれ ばいけないということが当然あろうかと思います。着衣の上からやるのであれ ばそんなにコストはかからない、という議論をこの検討会の中でもいただいて、 あと、自分による測定ですか、当然そういう測り方は示さなければいけないと 思いますが、いわゆる簡便な測定方法を認めて、労働者の方にもできるだけ受 診していただく、事業者にもできるだけコスト負担を少なくするような測定の 仕方がないか、ということで議論がありました。それで、議論の結果として、 そういう配慮が望ましいということですので、我々としてもこういう大筋をい ただいておりますから、当然具体的な測定の方法、もし研修機関に対してもそ ういうご疑念があるのであれば、こういう測り方ができると、行政としてもこ ういうことを認めていることをしっかり通知して、周知を徹底したいと思いま す。そういうことであれば、コストが1人500円とかいうことはおそらくない かと考えます。 ○伊藤委員 ということは、費用の増加なしでいけると考えてよろしいでしょ うか。 ○安全衛生部長 ですから、自己測定とか、そういうことをやれば当然、我々 も一応見積りをとらせていただきましたが、ご説明しているようなことだと思 います。 ○伊藤委員 それを明確にしていただけると、どちらかというと、いいほうに なる可能性が非常に高いのですね。 ○山崎委員 いま、測り方にご配慮をいただいたのはいいのですが、逆にこれ だけ大事なことで、自己申告なり、着衣を着てと、そんな程度のものでいいの でしょうか。逆に言うと、自己申告も嘘を言う方も出ないとも限らないし、着 衣だって90、85と決まっていますが、5cmや10cmの差は出るかという気もあ ります。そういうことで、後々何か悪い結果が出たときに、何か配慮義務とい うことになっても困るので、その辺のことはどうなのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 いまご指摘いただいた所はすごく大切でして、我々は やはりちゃんと測ることが望ましいと思います。ただ、実際は準備事業とさせ ていただきまして、やはりいろいろな個人的な理由で、直接測るのはいやだと おっしゃる方もいますので、例えば着衣をした場合、これぐらいのときに、シ ャツ1枚あったらどれぐらいプラスすればいいのかとか、科学的なデータを基 にして変換をすると。あくまでも直接測るのがいいのですが、普通のシャツを1 枚着てたときにやった場合にはどうなるかという形でデータをつけて、そこで 変換できるような方法だとか、工夫することはできると考えております。 ○松井委員 胸部エックス線のお話もあったので、その件に関連して意見を申 し上げたいと思います。胸部エックス線を定期健診で行うかどうかについては、 結核予防法で多くの部分が不要であることが決まった後なのに、それをなくす という作業で、相当長い期間をかけて議論をして、その中で、それなりに医学 的知見についての再検証も相当行われた気がしております。さはさりながら、 今後、40歳未満について省略できる人を議論していくことになっていると思い ますが、それだけ、要するに、やめるということについては十分、ゆっくり議 論されているような気がするのですが、いまの議論にもあったように、それそ のものを忌避する人がいたりとか、そういうことについてあったり、分科会長 は、論文が20あって、そのうち16がそうだといっても、さらに義務づけをし て、反対に簡便法をとっていただくことは、コスト面ではよろしいかと思いま すが、例えば、基本的にはこれをBMIで代替したときのCost & Benefitはどう なのか、そういうものももう少し議論された上で決めていくべき問題だと思い ます。今回の検討会では、論文などの動向と、あと、内科学会で決めていて、 それをやることが結論になっていると思いますが、やはり私どもとしては、新 しい役割分担、そして、本当に現場に降りていったときにきちっと、そこら辺 がある程度クリアカットできるものでないと対応が難しいと、そういう意見だ けは申し上げておきます。保健指導の問題についても、川上と川下と言ってみ ると、川下のほうが悪いという前提でいくならば、大体それ以前に見て、企業 側としてはいろいろやっているはずです。そうすると、本当はこういうものも 医療的な対応になっている場合、保険局では、あるいは健康局という整理なの かもしれませんが、それは保健指導の対象にしないという整理になっています。 ではそういう場合、事業者のほうとしては最後まで、川下になればなるほど、 もしかすると、より作業関連疾患的にならないのかどうかという判断も必要に なってきます。先ほどおっしゃったようなことは理屈の上ではわかるのですが、 現場にまた戻してきても、本当にうまくできるのかどうかというのは、今後十 分議論をさせていただきたいと思います。以上です。 ○労働衛生課長 ご指摘の提案も我が方で考えていること、要するに厚生労働 省本省、あるいは、関係団体の3者と話し合ったことがちゃんと現場に降りて いかないのではないかと、そういった懸念だと思います。腹囲についてもこう いう意義があって、こういう測り方でいいとか、そういうのはちゃんと周知し なければいけませんし、特定保健指導と我が方の安全衛生法の保健指導との関 係についてもきっちりと説明して、それを周知していかなければいけないと。 これは労働サイドだけではなくて、健康・保険担当局とも連携して進めること だと考えています。以上です。 ○分科会長 そろそろ時間になりましたが、何か特別に発言しておきたいとい う方はいないでしょうか。 ○豊田委員 先ほどからいろいろお話を聞いているのですが、例えばBMIで限 界があるとしたら、限界の所ではBMIでやって、足りない所を腹囲でやるとか、 そういう組合せとか、ソフトランディングというのですか、そういう余地はな いのですか。 ○生活習慣病対策室長 明らかな肥満の場合とか、それから、明らかな痩せの 場合というのは、そこの所は対応できると思っています。ただ、先ほどから申 し上げたように、BMIと今回の内臓脂肪は明らかに違うものです。ですので、 そこの所、今回の基準の判定に影響がある所は、運用の仕方はいろいろとある のですが、やはり腹囲というものをしっかり見ないと、かえって見落としをす る可能性があるので、明らかな肥満、明らかな痩せを除いた所はちゃんとやっ ていく必要があると思います。おっしゃるとおり、BMIを使った、明らかな肥 満、明らかな痩せというものを除外する方法はあると思っています。 ○豊田委員 明らかな所は、例えばBMIを使って。 ○生活習慣病対策室長 はい。 ○豊田委員 グレイというか、そこから以降の所は、例えば腹囲と、そういう ことはあり得るわけですね。 ○生活習慣病対策室長 あり得ると思いますが、それはある程度両側の腹にな るので、数はかなり限定的にはなりますけど、そういう所はできると思ってい ます。工夫はできます。 ○豊田委員 被験者というか、受ける側にオプションというか、できるだけ選 択できるような方向、というのは望ましいのではないかと思います。 ○分科会長 貴重なご意見、どうもありがとうございました。  そろそろ時間がまいりましたので、本日の会議はこれで終わらせていただき ます。本件につきましては、引き続き次回の会議においてもご議論いただきた いと思っています。次回会議の日程等については、後ほど事務局のほうで調整 をお願いいたします。なお、議事録への署名は古市委員と伊藤委員にお願いし たいと思います。  それでは皆さん、本日はお忙しい中、ありがとうございました。 照会先:労働基準局安全衛生部計画課(内線5476)