07/03/29 社会保障審議会福祉部会議事録(平成19年3月29日開催)            社会保障審議会福祉部会議事録 1 日時:平成19年3月29日(木)16:58〜19:04 2 場所:霞が関東京會舘「ゴールドスタールーム」 3 出席委員:岩田部会長、石原委員、石橋委員、井部委員、江草委員、小島委員、        京極部会長代理、鴻江委員、木間委員、駒村委員、白澤委員、        高岡委員、鶴委員、福田委員(代理:田中栃木県保健福祉部長)、        堀田委員、村尾委員、森委員   欠席委員:中島委員 4 議事 (1)人材確保指針の見直しについて (2)介護・福祉サービス従事者の現状 5 審議の内容 ○岩田部会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「社会保障審議会福祉 部会」を開催いたします。 お花見日和の夕刻に大変申し訳ないです。どうぞよろしくお願いいたします。 まず、本日の委員の出欠状況について、事務局より説明をお願いいたします。 ○矢崎総務課長 本日の委員の先生方の出欠状況でございますが、福田委員が御欠席で ございまして、福田委員の代理として、栃木県保健福祉部長の田中さんがお見えでござ います。なお、中島委員、駒村委員につきましては、所用で遅れるという御連絡をいた だいております。 また、本日は介護労働力をめぐる現状についてお話いただくということで、財団法人 介護労働安定センターの野寺康幸理事長、社会福祉法人大阪府福祉人材センターの上田 哲夫所長にお越しいただいております。 それでは、部会長、以後の御進行よろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 それでは、早速、本日の議事に入りたいと思います。 まず初めに、これまでこの部会でも御議論いただきました「社会福祉士及び介護福祉 士法等の一部を改正する法律案について」事務局より報告をお願いいたします。 ○木下福祉基盤課長 福祉基盤課長でございます。 私の方から「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案について」の中 身について、御説明をさせていただきます。 資料1でございます。A4の横長の資料でございます。 この法律案につきましては、昨年12月12日に当部会におきまして、社会福祉士及び 介護福祉士の在り方についての意見書をおまとめいただきまして、それに沿いまして、 法案の作成作業に入りました。 3月13日に政府としての閣議決定を終えまして、14日に国会に提出をしている。こ ういう状況でございます。今後の審議は、参議院先議ということで、法案の順番で幾つ かの法案がございますので、4月中にも審議に入れるかなという状況にございます。 資料の2ページ目をお開きいただきたいと思います。 「I 見直しの背景・ポイント」でございます。昨年まで当部会で御議論いただきま したところのベースとなる部分でございます。 「見直しの背景」は、介護・福祉ニーズの多様化に対応して、特に資格の在り方につ いて、対応した形でレベルアップを図るべきであるということが求められております。 そこで、1つは、この表の中の左側にございますように、介護福祉士に関しては、特 に介護保険制度あるいは障害者の自立支援制度、そういったものが導入をされて、認知 症ですとか、あるいは身体障害の多様化、そういったものにきちっと対応できるような 資格にしなくてはいけないというのが介護福祉士です。 もう一方、右にございますように、社会福祉士に関しては、特にサービスの幅が広が ってきておりまして、特に最近では、権利擁護ですとか、あるいはサービスの利用支援 といった面について、きめ細かい相談事例が増えておるということで、それに対応した 資格にすべきであるということで、そういった背景の中で「改正案のポイント」として は、4つほど挙げてございます。 1つは後ほど細かく御説明いたしますが、まず定義規定の見直しということでござい ます。これに関しては、部会でもさまざまな意見があり、実態を反映していないという 御意見もございました。それについての見直しを図るというのが1点。 2つ目が、義務規定ということで、これは定義規定と密接に関係いたしますけれども、 資格を持った方がサービスを実際に行う場合に、どういう考え方、理念の下で働くかと いうところが、義務規定でございまして、それを幾つか追加しております。 3つ目が、特に御議論を呼びました資格の教育の問題でございまして、1つは介護福 祉士の資格取得方法を、国家試験に統一化するということで、一元化ということでござ います。 2つ目が、社会福祉士についても、同様に資格取得方法について、見直しを図りたい ということでございます。 4つ目が、社会福祉士の任用・活用。特に進んでいない任用・活用について、推進を 図るということで、4つほどポイントが挙げられております。 3ページ目にその具体的な内容が出てございます。「II 定義規定の見直し」で、ま ず介護福祉士でございますが、1つは「現行」をごらんいただければと思いますが「専 門的知識・技術をもって、入浴、排せつ、食事その他の介護等を行うことを業とする者」 ということで、定義がございます。これに関しては、身体介護に随分偏っている表現で ある。むしろ、心身という形で心のケアも含めた定義に、実態に合った形で見直すべき である。こういう御意見が多数ございまして、それを踏まえて「専門的知識・技術を持 って、心身の状況に応じた介護等を行うことを業とする者」という形に見直しをしたい ということでございます。 社会福祉士に関しては、社会福祉士の行う業務としては、相談援助がまず中心的な部 分でありますが、併せて、自ら相談を解決する部分だけではなくて、つなぐ役割、ネッ トワークの部分ですとか、あるいは地域の福祉資源の開発をする部分、そういったかな り幅広い役割があるはずでありますが、それが定義規定においては、十分反映されてい ないこともあり、現行を改正案のように、福祉サービスを提供する者または医師その他 の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連絡及び調整その他の援助を行う ことを業とする者というふうに、これも実際求められる社会福祉士像に合わせた形で見 直しを図りたいということでございます。 4ページ目が義務規定でございます。義務規定に関しては、これは定義とも密接であ りますし、むしろ、定義で挙げられるべきではないかという御意見も多々ございました。 これは法制的にも十分に法制局においても議論をさせていただきまして、結果的に、定 義規定に盛り込めない部分も含めて、義務規定に落とし込んでございます。 「現行」が「◆信用失墜行為の禁止」「◆秘密保持義務」「◆連携」あるいは「◆名 称の使用制限」という形で、4つの義務規定がございます。これに追加をいたしまして、 赤字で書いた部分でございますが「◆誠実義務」。具体的に個人の尊厳を保持し、自立 した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実にその業務を 行うという点。 「◆連携」といたしまして、もともと医師その他の医療関係者との連携という規定は ありますけれども、福祉サービスの提供者との連携は明示をされていません。前提とし ては、当然だということだったんだろうと思いますが、それは明確化をして、福祉サー ビスを提供する者または医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者と の連携という形で書いてございます。ただ、その前提として、どういう方々に対して、 どういう考え方でというのが、認知症であること等の心身の状況その他の状況に応じて ということを挙げさせていただいております。 それから、もう一つは「◆資質向上の責務」ということで、言わば資格を取っても、 その後の自己研さんという形に努めるということで、具体的には知識及び技能の向上に 努めなければならないということを挙げさせていただいております。 社会福祉士に関しましても、同様でございまして「◆誠実義務」で、個人の尊厳の保 持ということを挙げておりますことと、それから「◆連携」のところで、先ほど申し上 げましたネットワークの部分と地域の資源の開発という部分、そういったものを連携の 中に盛り込みまして、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービスを提供する者 または医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携という規定 を置いてございます。 それから「◆資質向上の責務」ということで、自己研さんということでございます。 6ページ目でございます。6ページ目が「IV 資格取得方法の見直し」で「(1)介護福 祉士」に関する部分でございます。 まず基本的には、考え方として、すべての者は一定の教育プロセスを終えた後に、国 家試験を受験するという形で、資格取得方法を一元化するということでございまして、 いずれにしても、すべてのコースで国家試験に合格しなければ、介護福祉士になれない ということをまず基本の考え方に置いております。その上で、それぞれのコースについ ての資格取得のカリキュラムについての見直し、時間数等を図っております。具体的に は、養成施設ルートに関しては、1,650時間については1,800時間に引き上げた上で、 国家試験を課すということ。それから、福祉系高校につきましても、養成施設と同様に、 1,800時間まで、1,190時間を引き上げることを考えております。それから、もう一つは、 実務経験につきましては、新たに600時間、6か月以上の養成課程を終えた上で、国家 試験ということでございます。勿論、実務経験ルートについては、働きながらというこ とでございますので、通信課程等も含めて、できるだけバリエーションのあるような形 の養成課程にしたいということでございます。この中で、国家試験を課す養成施設ルー トに関して、幾つか の経過措置を置いてございます。それが7ページ目でございます。 まず試験を課す時期の問題でございますが、さまざまにあるのは準備期間ですとか、 ございます。それから、現在養成施設で学ばれている方もございますので、そういった ことも配慮して、実際に国家試験を課す時期は、24年度ということです。実際上は25 年1月の試験から、養成校を卒業をされた方は、国家試験を受験するという仕組みでご ざいます。それが1つ。 もう一つは、法制的な面でクリアーしなければならない問題がございまして、経過措 置として挙げております。その問題といいますのは、この中で2つ目の○にございます が、当該養成施設ルートに関しては、1つはフィリピンの方が日本に入ってきて、介護 福祉士を目指すという扱いについて、フィルピンとの間での経済連携協定、EPAの協 定というものを昨年9月9日に小泉前総理とアロヨ大統領との間で調印をしております。 それを踏まえて、具体的な条約案について、両国で審議をすることになっておりまして、 それが日本におきましては、12月の臨時国会におきまして議論をし、条約を批准したこ とになっています。 一方、フィリピン側は、向こうの事情もさまざまございまして、本来2月の議会、上 院議会だったんですが、実はそれが十分に時間をとれなくて、結果的には、まだ批准を しておりませんで、この夏、7月以降に延びる見込みとなっております。ただ、フィリ ピンが入る場合のルートとしては、1つは養成施設ルートでございまして、現行のルー トで、養成施設の卒業者は国家試験を経ることなく、介護福祉士の資格を取得すること ができるという現行制度を前提として、協定を調印しております。その調印の下で、フ ィリピン側も議会の方の審議に備えているという状況でございますので、したがって、 現在、提出をしている法案の中では、まず国際法であるフィリピンとの協定に違反しな いような形で、国内法の整備をしなくてはいけない。つまり、国家試験を課すというこ とは、基本的には協定から見れば、約束をしたことに対しては、違反をするという法制 的な問題が生じるということになります。それを解決するために、考えましたのが、養 成施設の卒業者は、当分の間、准介護福祉士の名称を用いることができるという考え方 をとりました。この仕組み自体は、下の図にありますように、現在の1,650時間を評価 して、現在は介護福祉士の資格を与えているわけでありますが、今回1,800時間に引き 上げた上で、国家試験を受験はしていただきますが、仮に落ちた方、あるいは何かの事 情で受験できなかった方については、当分の間、これまでと同じような形で、介護福祉 士に準じる資格として、准介護福祉士を与えるということでございます。この准介護福 祉士は、介護福祉士と同様の業務を行うことにはなりますけれども、ただ、法律上は、 1つは業務の仕方といいますのは、若干、段差を設けておりまして、准介護福祉士は、 介護福祉士の技術的援助・助言を仰ぐという形になっています。ただ、看護のように、 具体的な個別指示で相談をするということではなくて、必要に応じて相談をすることに なる。それが1つ。 もう一つは、赤の部分で書きましたように、准介護福祉士は、介護福祉士となるよう に努めなければならないという規定を法律上置いております。いずれにしても、国家試 験を受けていただいて、合格しなければ介護福祉士にはなれないという基本的な方針に は変わりはないということで、あくまでもフィリピンとの協定上、そごを来すので、当 分の間、国家試験に課し、合格しなければ介護福祉士になりませんという方針の下に、 いずれにしても、協定として見直しをした上で、この准については、いずれのときに、 環境が整えば解消すると考えております。あくまでも暫定的、経過的な措置であると考 えております。 8ページ目でございますが、福祉系高校ルートでございます。このルートは、先ほど のルート図にございましたように、1,190時間を1,800時間に引き上げることが、まず 大前提でございます。その上で、経過措置を設けておりますのは、真ん中にございます ように、平成21年度から25年度までの入学者に限って、1,190時間の課程を卒業した 後に、9か月の実務経験。これはこの部会の意見書の中で盛り込まれた部分でございま すが、これを時限的に5年間の時限措置にしようと考えております。こうすることによ って、実際上は新しいカリキュラムに移行するのが21年度でございまして、その時点で、 1,800時間に移行する高校と、そうではない高校に分かれます。分かれて、1,190時間を 残したところは、9か月の実務経験をして、28年の3月の卒業生まで福祉系高校の1.1 90時間のルートは続いていく。こういう整理になるわけであります。 併せて、高校につきましては、これまで明確な養成施設と同様の基準があるわけでは ございませんで、これを今回の1,800時間の見直しに併せて、1つは基準を、文科大臣 と厚労大臣の両省の基準の省令を決めていこうと考えております。そうなりますと、指 導監督につきましても、両大臣が高校についても、指導監督をするという仕組みに変え るということでございます。 もう一つ、実務経験ルートにつきましては、3年プラス6か月ということでございま す。24年度から施行になりますが、具体的なスケジュールは、目で見ていただいた方が わかりやすいので、Dのところを見ていただきたいと思います。ここのところで、まず ポイントは、1つは新しいカリキュラムがいつからかというところが、21年度のところ に、縦のブルーのラインが出ております。これが新しい1,800時間の課程がスタートす る時期であります。したがって、色で色分けしておりまして、旧課程が赤、新課程がブ ルーになっておりまして、グリーンのラインが新しい国家試験を課す場面の施行時期で、 24年度になっております。したがいまして、養成施設で見ていただきますと、20年度に 入学をされた方は、旧カリで試験なしということで、現行どおり。21年度に入学された 方は、23年の3月に卒業されますが、これは新しいカリキュラムではありますが、国家 試験はなしということでございます。逆に23年度に入学された方は、新しい国家試験を 課させるということになります。そのように見ていただきますと、福祉系高校も同じよ うに赤のラインとブルーのラインで分かれるわけであります。実務経験ルートにつきま しては、3年間、まず、現行ある方については、国家試験でありますが、24年度から6 00時間を付加することになります ので、これは考え方として、24年4月1日までは、600時間が不要で、現行どおり、そ のまま国家試験を受験する。ただ、24年4月以降は、プラス600時間という形になりま す。したがいまして、プラス600時間といいましても、働きながら取っていただくこと になりますので、24年にかかるかどうかというのがわかる時点というのは、もうちょっ と前に、当然わかりますから、例えば22年度ぐらいから通信講座とかを受けながらやる というのが、多分、現実的な姿かなと思っております。 社会福祉士に関しては、10ページでございますが、御議論いただきましたように、実 践力の高い資格にしたいということで、1つは実習部分等の基準をきちんと設けていく ことが、この部会でも御議論いただきましたので、福祉系大学ルートにつきましては、 そういう形で、黄色にありますように、指定科目履修で実習等に基準設定ということで す。 養成施設については、1,050時間を1,200時間に若干厚みを持たせるということ。行 政職ルートにつきましては、5年を4年に変えて600時間、6か月以上の養成課程を経 る。これも通信等も含めて、バリエーションのあるものにしていくということです。 11ページ目は、今、申し上げたことを書いてございます。同じように基準づくりも、 両省で行うことになっておりますし、行政職ルートも若干の経過措置、5年間の経過措 置を設けているということです。 12ページは、ルート図には出ておりませんけれども、社会福祉士主事から社会福祉士 へのステップアップについても、盛り込んでおります。社会福祉主事の養成課程を修了 した後、2年間の実務経験プラス6か月の養成課程。これも道をつくろうということで、 21年度から施行。 任用資格として、従来あった児童福祉司に加えまして、身体障害者福祉司、知的障害 者福祉司についても、社会福祉士の任用資格として位置づけようということでございま す。 13ページ、14ページは、この部会での意見書に盛り込まれた事項で、今回の法律 等におきまして対応した部分と、残されて今後議論する部分を色分けしたものでござい ます。黄色の部分が今回の法律でございまして、白抜きの部分は、現在、検討しており ます教育カリキュラムの問題あるいは教員の要件も含めた問題。国家試験の在り方の問 題も多数議論いただきまして、新しく委員会を立ち上げて議論していただく。介護技術 講習の見直し。これも多くの議論をいただきました、更にレベルアップを図る専門介護 福祉士の在り方をどうすべきかということも検討会を立ち上げて議論をしたいと思って おります。ルート図に部会での議論もございましたが、介護職員基礎研修、ホームヘル パー研修も含めた部分でありますが、これは500時間の研修がございます。これについ ては、部会の意見でも教育の1,800時間の養成施設ルート、あるいは福祉系高校ルート がカリキュラム全体を見直しますので、それに併せて、500時間が適切かどうか、ある いは教員要件等が必要ないかどうか、そういったことを議論した上で、この介護福祉士 のルートで対応することになっておりましたので、これは今後、具体的にカリキュラム、 教員の要件等が決まりましたら ば、それに併せて、見直しをして、介護福祉士のルートにつなげていく。したがって、 今回の法律案には盛り込んでおりません。 14ページが社会福祉士でございます。これも同じような形での検討が残されておりま す。 更に、介護の担い手の人材確保として、本日から御議論いただく人材確保指針に ついての見直し、これも部会での意見書でもございましたが、処遇をどうするか。介護 福祉士のレベルを上げたけれども、それに伴って、きっちりとした社会的な評価をする。 それが1つの処遇でありますので、そういった面で、介護保険での扱いをどうするかと いうところについても、今後、対応する。21年度が介護報酬の見直しですから、それま でのところで、さまざまな議論をしたい。 任用要件、施設長など、こういったところも、どういう形でステップアップしていく のかというところを見据えて、議論しなければいけないと思っております。 以上が社会福祉士、介護福祉士の法案の概要でございます。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 ただいまの報告について、何か御質問がございましたら、どうぞ。 ○石橋委員 社会福祉士、介護福祉士の一部改正法案に関しましては、介護福祉士制度 ができて20年ということで、我々職能団体としても、他の専門職と同様にすべてのもの が一定の教育を得て、そして、すべて国家試験を受けるという資格取得方法の一元化の 方向性について法改正が望ましいと考えておりましたし、これまで、審議会の方で検討 されてきました内容につきましては、賛成するということです。 ただし、准介護福祉士の創設に関しまして、職能団体としては、将来的に介護福祉士 の処遇の低下につながる懸念や、また、介護の現場の混乱につながることも考えられま すし、他の医療・福祉等の専門職に比べて介護福祉士だけが国家試験に不合格になった 場合は、准介護福祉士の資格を与えるというのは、社会的評価の面から見ましても、い かがなものかなと考えておりますし、資格全体のレベルアップに反するとの懸念から、 社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正に当たりまして、准介護福祉士の部分につきま しては、早急に削除していただきたいと思っております。 それから、当分の間という説明がありましたけれども、そこにつきましても、少なく ともいつの時期なのかという期限を明記することが必要だと思っております。この件に つきまして、我々職能団体としては、3月14日に厚生労働大臣あてに要望書を提出させ ていただいたことを、まず御報告させていただきたいと思います。 ○岩田部会長 小島委員、どうぞ。 ○小島委員 私どもも、今、石橋委員が指摘されました准介護福祉士の問題は、極めて 問題があると思っております。この部会で、昨年末に意見をとりまとめる段階では、ほ とんどこの問題は議論になかった。今回の法改正の趣旨は、まさに、今、言われました ように、資質の向上をはかるため、国家試験を受けることに一元化するということです。 そういう観点からしますと、准介護福祉士の創設ということについては、極めて問題 があると思っております。私ども連合に加盟する組合員の中にも介護福祉士の皆さんが 何人かおられます。そういう人たちの御意見を伺ってみると、介護現場では、もし、准 介護福祉士が暫定的あるいは当分の間という形でも出てくることになれば、相当混乱が 生じるのではないかと危惧しています。今でさえ介護福祉士の資格を持っていても、賃 金、労働条件、処遇に問題があるので、今回の法改正の趣旨が、そのとおり進むかどう か、極めて懸念を持っております。現場からは、今回の准介護福祉士の創設については、 強く反対という意見が出されています。 フィリピンとの協定という外交上の問題もあるという説明ですが、そこは早急に解消 し、今回の法改正の趣旨を生かしていくべきであると思っております。 私も福祉部会のメンバーとして、とりまとめに参加した立場からすると、今回の准介 護福祉士の創設については、強く反対という意見を述べておきたいと思います。 質問が2つほどあります。この法文の中では、准介護福祉士の役割といいますか、介 護福祉士との関係でいえば、介護福祉士の技術的援助及び助言を受けて、介護等を業と する者という位置づけになっています。もし、職場等に准介護福祉士しかいない場合に は、介護福祉士の助言というのは、どういう位置づけになるのかというのが1つです。 もう一つ、准介護福祉士については、概要の7ページにありますように「介護福祉士 となるように努めなければならない旨を法律上規定」と書いてあります。それは具体的 にどういう努力義務なのか。もう一度国家試験を受けろということだと思いますけれど も、具体的に、どういうふうに努めなければならないという趣旨を生かしていくのかと いうこと。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○木下福祉基盤課長 准介護福祉士は、介護福祉士に技術援助及び助言を受けなければ ならない。職場にいなければどうなのかということですが、基本的には職場ですが、た だ、いない場合には、地域の中でのネットワークとして、介護福祉士がいるような職場 と施設ができるだけ連携をとりながら、特に通常の業務で助言の必要のない部分は、判 断として必要ありません。必要な場合は得るという形で、ネットワークの中で対応する ということを考えております。 もう一つは、努めなければならないというのは、いわゆる努力義務規定なので、介護 福祉士全体として准介護福祉士さんが自己研さんに努める。この法律自体はそれぞれが 自己研さんして、レベルアップするという全体としての法制の構成の流れになっており ますので、その意味で、准介護福祉士さんも介護福祉士の資格を取っていない場合には、 職場においても、お互いに取るような形で研修等を通じまして、努めてくださいと。次 に1回落ちても、再チャレンジしてくださいということで、全体として、職場もそうで すが、学校、養成校を含めて、そういう形での機運といいますか、行動を起こしていた だければということで、実際上は努めるということを達成したいと思っております。 ○岩田部会長 よろしいでしょうか。森委員、どうぞ。 ○森委員 私は保険者という立場で、この問題は、現場にとって介護保険制度を永続、 持続可能な制度としてやっていくときに、やはり信頼をかち得ていかなければいけない。 例えば介護保険の法改正は、5年に一度ということを含めてやっていかれて、今回の准 介護福祉士の問題は、私ども現場のいわゆる保険者として、いかにして、利用者あるい は保険料をいただく皆さん方から信頼できる制度にしていかなければいけないというこ とを常々考えている。そういう中での准介護士の取扱いは、現場の中で、悪く言えば、 業者の方が准介護士をということだけで取り組まれてしまうと、ある面では質の問題が 生じる。 今回の法改正は、そういう点ではすごくいい法改正をしていただける、質を高めると いうことに対しては、私ども現場としては大変喜んでいます。しかし、准介護福祉士が 混在することによって、どういう問題がこれから起こってくるのかということです。 もう一つ、これは福祉部会ですけれども、以前、中村さんが老健局の局長さんをやっ ておられたときに、堀田先生もお見えでございますが、2015年の高齢者福祉の問題は認 知症を含めて、これからの大きな課題を解決していくという理念が、私はこの中にもは っきり打ち立てておられると思っていますので、そういう点で、是非とも信頼できる制 度にするための質の担保をどういうふうに考えていらっしゃるか。これを是非お伺いし たいと思います。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○中村社会・援護局長 委員の皆様から、いろいろ御意見、御質問を賜りまして、どう もありがとうございます。 先ほど基盤課長からも御説明いたしましたように、閣議決定をして、法案を提出する ことができましたので、この点については、委員の皆様に御礼を申し上げます。 この部会の意見書を踏まえて、法案作成に当たりましたけれども、法案作成過程にお いて、先ほど協定との関係などを御説明申し上げましたが、その点につきましては、私 ども厚生労働省としての責任で、ここの部分は法案提出上どうしても法制的にもクリア ーしなければならない。こういうこともございましたので、そういう判断をし、法案作 成をし、与党の審議も経て、また閣議決定もさせていただいたということで、まずその 点の経過の御説明をさせていただきます。 したがって、ここの部分について、全体としては、先生方の御意見を法律をつくると きに踏まえつつやりましたが、准介護福祉士の部分については、私どもの政府内部の調 整、法案提出する過程で、厚生労働省の判断としてさせていただいたということを、ま ず御報告させていただきたいと思います。 今回の法改正の基本的な考え方は、今、森委員からもお話がございましたように、資 料の最初の方でも書かせていただいていますように、介護福祉士の資質の向上を図る。 介護福祉士についてだけ申し上げますと、介護福祉士という国家資格の質の向上を図っ て、専門的な介護ができる介護福祉士の評価を高めて、それにふさわしい処遇の確保を 行うという好循環をつくっていこう。そういう仕組みを構築したいと思っております。 そのために、まず資格制度の見直しをしたわけでございまして、確かに好循環をつく るためには、この会の後半から人材確保のために何をしなければならないかの御議論に なるわけですが、それと対になってやっていかなければならないと思っております。こ の資格制度だけで完成ではなくて、これに併せて、さまざまな政策を組み合わせて、好 循環をつくっていく。こういうふうに考えています。 そのために、今度の介護福祉士の定義、義務規定の見直しをさせていただきましたし、 資格を取得していただく仕組みも、一定の教育プロセスを経た後に、一律に国家試験を 受けていただく。こういうことを実現し、この資格制度を確立することによって、好循 環をつくりたいと考えているわけでございます。 そういった中で、准介護福祉士ということで現場が混乱するのではないかとか、処遇 の低下につながるのではないかという御指摘、御懸念をいただいているわけですが、そ ういった意味で、政策の基本としては、質を高める、またそういったことを担う資格と しては、介護福祉士が基本である。それは老健局のときに、介護保険部会でも、これか らの介護の担い手は、基本的に介護福祉士を基本とするということで、この部会でいた だいた御意見もそうだと思いますが、基本形が介護福祉士であることは、いささかも変 わっておりません。それが第1点でございます。 第2点は、そういった目で准介護福祉士を見させていただきますと、先ほどの7ペー ジの資料でもおわかりいただけますように、基本の資格の完成形である介護福祉士の資 格を目指す、言わば途上にある。資格としても、途上にある方の位置づけである。どう 見てもそうとらえられるわけでありますので、介護分野における施策に組み込まれる資 格、あるいは介護分野の施策として考えるときの中心的な資格としては、まず介護福祉 士を基本とするということでございます。そういった意味では、准の方は、この図でご らんいただきますように、完成形に向かって途上の方でありますので、法律上も完成に 向かって努めていただくことを明記しております。 私ども、そういう義務規定を明記させていただいたということは、介護福祉士をつく る任に当たっている養成校の方、あるいは介護福祉士を受け入れようとしておられる事 業者の方、介護福祉士になろうとしている中で准の状態にある方々に、本来の資格にな るように努めていただく規定を置いたことは、資格のない方と介護福祉士と准の関係を 明確に示しているものではないかと私どもは考えています。 部会のときに、ここまで御議論いただけなかった点は、申し訳ない点があるわけです が、限られた時間の中で、法案提出作業をさせていただきました。 客観情勢からいいますと、これをつくらない。この踊り場をつくらないでは、政府と しては法案が出せない状況に、協定との関係になっております。 先ほど御紹介いたしましたように、フィリピン側の状況もありますので、もう一回交 渉し直せばいいのではないかというお話があるかと思いますが、多分、それは今のまま でいくと数年単位で先になってしまうということもございまして、定義、義務規定、我 が国における資格取得方法の一元化、社会福祉士等における任用、活用の強化というこ との全体を考えれば、多分いろいろな点で御意見は賜るとは思いますけれども、法案提 出をした方が、全体として、先ほど申し上げた意味での好循環に貢献するのではないか と考えて、提出させていただいた次第です。 もう一つは、介護保険制度でも、事業所における情報開示が進んでおりますので、や はり利用者の方が、私どもも、今、申し上げたスタンスは、法律の立法、審議の過程、 また法律が通った後でも、いろいろなところできちんと御説明していくつもりでありま すので、そういった意味では、サービスを利用者の方が選ぶという世界の中では、7ペ ージの図を見ていただきながら、利用者の方に判断していただくときに、混乱は余り生 じないのではないか。そういう点も、私どもは中で議論しながら、このような形でまと めさせていただいた次第でございます。 どうか委員の皆様方に御了解賜りながら、また、いただいた意見は、できるだけこう いう仕組みをとらなくてもよくなるような、客観的な状況になるように、私どもも最大 限の努力をしてまいりたいと思いますので、その点御理解を賜りたいと思っております。 説明が長くなりましたが、以上でございます。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○石原委員 私ども介護現場におりますと、現在、介護を担当しておりますスタッフは 介護福祉士の資格を持つものもそうでないものも混在して同じような仕事をきちっと遂 行しているわけです。これは介護福祉士の資格が業務独占ではなく名称独占であるため のある面でのいい結果ではないかと思います。 介護の現場では、尊厳を支えるケアを実践するためには全ての人が尊重されることが 基本です。 准介護福祉士の問題で唯一、気をつけていく必要がある点は、介護者の中に差別意識 が生まれないようにすること、仕事上での差別が生まれないようにすることだと思いま す。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 この問題に余り時間を使えませんけれども、一言ずつお願いします。まず、田中さん どうぞ。 ○田中栃木県健康福祉部長 栃木県でございます。福祉系高校もコースとして持ってい るんですけれども、やはり今後の少子化の中で、今回600時間近いカリキュラムの増と いうことで、いい生徒さんを集めたいと思っているんですけれども、一方で、カリキュ ラムだけが長くなって、魅力のあるコースを見てもらわないと、なかなかいい人が集ま らないのではないかなと思っています。 1つだけ確認なんですけれども、今回の准介護福祉士は、落ちてしまった人がいくべ きコースなのか、あるいは難しくなったコースを卒業したことについて、一定の評価を してもらおうという措置なのか。立法趣旨は、どちらの方がメインとして考えるべきな のか。今後、地元等で説明していかなければいけないんですが、考え方として、増えた 分の評価ということでいいのか、その点を確認させてもらいたいです。 ○木下福祉基盤課長 法律上は、養成施設の卒業、要するに、カリキュラムを履修した というところで評価をして、与える資格であります。ただ、先ほど申し上げたように、 介護福祉士となるように努めるということなので、まずは国家試験を受けて、介護福祉 士になっていただくことを前提にしておりますけれども、法律上は、今、申し上げたよ うな性格になっております。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○京極部会長代理 前半においては、やや疑問視の意見が多くて、局長のお話で大分わ かりました。 部会長代理ということではなくて、審議会の一委員として発言いたしますと、今度の 附則の准介護福祉士は、確かに審議過程では出てこなかったことは事実だと思います。 ただ、本則において、ここで議論されたことのほとんどが入っているということも確認 していいのではないかと思います。 附則については、江草先生がいらっしゃいますけれども、介養協の側からは、自分た ちが試験を受けさせられて不利になったという強い御意見がありました。正直いいます と、得したのは福祉校と現場ではないかという感じがあって、あれだけカリキュラムの 時間を増やして何もない。しかも、落ちたら、その学校がひどい学校にさせられてしま うような感じもあって、議論としては、フィリピン問題は別として、私は内容的には審 議会の中であったのではないかと伺っています。そういう点では、むしろ、今回、附則 で明確になって、かえって、はっきりしたのではないかと感じております。 特に准という言葉は、准看護師を想定するような感じなので、私は余り好きではない 言葉なので、准看廃止論なんですけれども、しかし、性格的には、正看と准看の違いと、 今度の介護福祉士と准介護福祉士は、言葉は似ていても、全くアナロジー的に一致する と考えてはいけないので、先ほど福田委員の代理の方がおっしゃったように、より高い 時間をやって、何も資格を与えないのはひどいのではないかということで、准を付けて いるわけなので、そういう面では、むしろ、よろしいのではないか。 むしろ、今まで介護福祉士を取って、自動的に卒業して取った人たちは、もうちょっ と訓練しないと危ないのではないか。試験を受けてなった方々、あるいは准介護福祉士 の方がレベルが高いという構造ですね。そうしますと、これは附帯決議になるのかわか らないけれども、今まで自動的に取ってしまった人たちはどうするのか。この人たちに もっと訓練をして、法律的にはできないんですけれども、そういう研修を受けない人は、 介護福祉士の名称独占は許さないとか、そこまではいかないんでしょうけれども、少な くとも、義務的に努力していただかないとならないので、そちらの方も大きな問題では ないか。60万人いらっしゃるわけですから、試験以外で入った養成課程の方々に対する 配慮といいますか、その方が大事だと思います。かえって、落ちた方に准と付けて、片 身が狭いかもしれないけれども、この法律を見ますと、介護福祉士になるように努力す るということですから、例えば研修あるいは試験をもう一回受けることに対して、現場 の方ももっと保証してやらせなければいけないという法的な裏づけがある。今までのよ うに、施設長さんには内緒で受けにいくことがなくなるわけなので、私はかえって、全 体の資質向上には役立つと思います。 ヘルパー2級もいずれなくなってくるかもしれ ないし、そのときに、准というのも、まんざら捨てたものでもないのです。今の養成機 関よりはるかに上ですから、私は非常に妥当な線ではないかと思って聞いておりました。 法律的な海外との関係の問題は、外交上の問題でございますので、この場で審議する 課題ではなかったから、出ていなかったんですが、いずれこういうことになるかなとい う感じはしていましたけれども、とりあえず、私の意見を申し上げました。長くなりま したけれども、よろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 時間が1時間を経過しそうなのですが、おっしゃりたいと思いますので、 簡潔に一言ずつお願いいたします。 ○江草委員 一言申し上げます。 私は大きな流れとして、大変な前進であると思っております。ただ、今お話の准介護 福祉士については、全く懸念を持たないわけではありませんが、先ほどの課長のお話の 中に、環境が整えば解消という言葉があったり、この文章の上にも当分の間とあります。 この当分の間と環境が整えば解消については、今ここで議論することでもありませんけ れども、可能な限り当分の間であってほしいし、環境を整える方向にいってほしいと思 っております。 以上です。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○井部委員 私も介護福祉士の質の向上を目指して、制度の改正は大変賛成なんですけ れども、今、議論になっております准介護福祉士ですけれども、すぐに連想するのは、 准看護師であるわけです。准看護師は地方自治体の知事の試験を受けて、合格した人が 准看護師になるわけで、試験に落ちた人に准が付くのは、横並びに見ますと非常に混乱 します。つまり、看護師の国家試験を受けて落ちた人は、ただの人、普通の人なんです。 幾ら大学の看護学校を出ていても、普通の人なんです。その人に准は付かないわけであ りまして、そういう点からいうと、非常に矛盾していると思うので、私たちは准看護師 を准看と言いますけれども、今度は准介と言うんでしょうか。そういう点で、私は名称 をもう少し工夫する余地があるのでないかなと思っております。 ○岩田部会長 鴻江委員どうぞ。 ○鴻江委員 将来的には、国試によります介護福祉士に集約をしていただきたいという のがあるわけですけれども、現場におきましては、混乱するほど、資質向上に向けて努 めたいけれども、人がいないというのが第一でございます。そういった中で、こういっ たEPAも出てきたわけですけれども、それを考えるならば、名称の部分は、こだわる 部分はあっても致し方ない対応なのかなと思っておりますし、また、この中で1,800時 間の研修の内容とワーキングチームで、人ももんでいただきながら、またさまざまな研 修を受けることによっての資質向上に努めていただければよろしいのではないかと思っ ております。 以上でございます。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 これは報告事項ですから、これについて、何か結論を出すということは、私たちの仕 事ではないわけですけれども、この間2つの専門資格の質の向上について、この部会で 議論して、一定の結論を出した問題ですから、その趣旨が多少外れてくるかもしれない ということに対しての皆様方の危惧は当然だと思います。しかし、現実的に現場では人 がいなければ困るという問題や、国際的な問題がある中で、法律案そのものとして、私 どもの考えたものとは別の准介護福祉士という経過的なものが挿入されたという報告を 受けたわけです。 この部会としては、今、出ました御意見を行政の方に十分配慮していただきまして、 特に当分の間ということを明確にして頂きたい。また、准という意味は経過的途上とい うことで、准看と違うというご説明ですが。現場の混乱や、先ほど差別という言葉があ りましたけれども、そういったことをできるだけ回避して頂きたい。介護のユーザーが 信頼できる介護者として、ラベルとして、名実ともにそれが働くような形で、今後、御 努力いただきたいということを、この部会で今までいただいた御意見とともに、明記し ていただいて、しばらく見守っていくといいますか、特に現場でのさまざまな混乱を回 避するような方向での御努力をお願いしたいということに、とどめざるをえないと思い ますが、よろしいでしょうか。 ○村尾委員 済みません。社会福祉士について、一言よろしいでしょうか。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○村尾委員 社会福祉士のことで、一言だけ申し上げさせていただきたいと思いますけ れども、このたび、かねて懸案でありましたことだとか、いろいろ議論が出ました定義 だとか、義務規定、それから、任用とか、その辺りを大変明解に書いていただきました ことについて、職能団体として御礼を申し上げたいと思います。 要望ですけれども、14ページのこれからの意見書に係る課題ですが、13ページの介護 福祉士のところでは「専門介護福祉士(仮称)の検討」というのがありますけれども、 社会福祉士につきましても、こういう事項につきまして、検討の項目として取り上げて いただければと思います。 それから、今後、議論する際に、余りにもデータがなくて、私どもは会員だけの調査 を緊急にいたしましたので、その報告の機会をつくっていただければとありがたいと思 っております。 今、こういう調査はなかなかできませんので、名簿が使えるところで、定期的に基礎 データを集めるようなことをしていただければとお願いをしたいと思います。 以上でございます。 ○岩田部会長 それでは、御意見として伺ったということで、本日の議題に移りたいと 思います。 懸案であった「(1)人材確保指針の見直しについて」ということですが、見直しと 介護福祉サービス従事者の状況について、まず事務局より説明をしていただきまして、 そして、続けて、今日来ていただきました野寺理事長と上田所長から御報告をいただき まして、その後、ここでのディスカッションに移りたいと思います。 ちょっと時間が押していますので、なるべく短目にお願いいたします。 ○成田福祉人材確保対策室長 それでは、まず資料2の「『社会福祉士養成課程におけ る教育内容等の見直しに関する作業チーム』の設置について」の御報告をさせていただ きます。 1ページの「趣旨」にございますように、昨年9月から、この福祉部会において、社 会福祉士の制度の在り方について御議論いただき、昨年12月に社会福祉士の養成課程に おける教育の内容等について、専門家・実践者による作業チームを設置して検討するよ うにという御意見をいただいております。 これを踏まえまして、先般、作業チームを設置いたしました。表紙に書いてございま すように、3月6日に第1回の会合を開催しております。今後、秋をめどにとりまとめ を行っていただくようなスケジュールで検討をお願いしていきたいと思っております。 2ページに検討事項が書いてございますが、教育カリキュラム、実習の在り方、教員 や実習指導者の要件、国家試験の在り方、実務経験の範囲等について御議論いただきた いと思っております。3ページに委員の名簿を付けております。  次に、 人材確保関係の資料は、資料3と資料4でございます。この後、2人の方にプ レゼンテーションをお願いしておりますので、ポイントだけ御説明させていただき、資 料は後ほどご覧いただきまして、次回以降の御議論、御検討の際の参考にしていただけ ればと思います。 まず資料3の「人材確保指針の見直しについて」でございます。1ページでございま すが、社会福祉法におきましては、厚生労働大臣が社会福祉事業従事者の確保を図るた めの措置に関する基本的な指針を定めなければならないと規定されており、現行の指針 は、平成5年に策定されております。 一方で、昨年7月に介護福祉士制度の見直しに関する検討会を開催いたしまして、こ の報告書におきましても、介護福祉士の資格取得後の能力開発、魅力と働きがいのある 職場づくりの重要性といったようなことについて、御指摘がございました。 また、この福祉部会におきましても、昨年12月の意見書におきまして、総合的な福祉 人材確保対策を講じていくべきであり、引き続き、本部会において審議を行い、指針の 見直し等について検討を行っていくこととされております。 2ページ以降は、参考資料でございますので、項目だけ御紹介させていただきます。 まず2ページの別添1は、指針の根拠となる社会福祉法の法律の規定、3ページの別 添2は、現行の平成5年に策定された人材確保指針の概要、5ページの別添3は、昨年 7月の介護福祉士の見直しの検討会で出された報告書の概要のうち、「資格取得後の生 涯を通じた能力開発とキャリアアップ」と「魅力と働きがいのある職場づくり」につい ての内容を御紹介したもの、7ページの別添4は、12月にいただきました福祉部会の意 見書の人材確保対策に関する部分の抜粋でございます。 8ページからは、現行の人材確保指針の全文でございます。 資料4は「介護・福祉サービス従事者の現状」ということで、事務局で持っているデ ータを、御紹介したものでございます。 2ページだけ御紹介いたしますが、現在、約328万人の介護福祉サービス従事者の方 がいらっしゃると思われます。このうち、老人分野で約6割、右側に円で囲ってござい ますけれども、大体、老人分野の介護職員の方が110万人いらっしゃるということで、 今回の資料は、110万人の方を中心としたデータを付けてございます。 以下は資料項目だけ御紹介しますが、人数の推移、都道府県別の需給の状況、労働時 間、給与等の労働条件の状況、定着の状況や離職率、入職率等のデータといったような ものを付けております。 ○岩田部会長 それでは、財団法人介護労働安定センターの野寺康幸理事長様から、御 発言をお願いいたします。 ○野寺理事長 ありがとうございます。 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律があります。すべての介護労働者と介護 事業者に適用される法律でございますが、この法律は平成4年にできておきまして、私 どもの財団法人は、平成4年にこの法律にのっとって設立されたものでございます。介 護労働者の福祉の増進を中心にしておりますが、能力開発、雇用管理の改善ということ も延々やっておりますけれども、なかなか改善しないという現状でございます。 私が皆様に申し上げられることでございますけれども、簡単に申し上げると、皆様方 がそれなりに常識として持っておられることについて、私どもは毎年の調査がございま すが、それを中心に、少しだけ、そこを掘り下げて、あるいは皆様の常識とちょっと違 うかもしれない部分についても触れさせていただきまして、今後の御審議の参考になれ ばという気持ちでございます。 まず離職率がございますが、先ほど室長が御説明になった従事者の現状の資料の27 ページに、離職率がございまして、皆様方の過去の議論を参考にさせていただきますと、 介護の分野の離職率は高いと思っておられるのではないかと思います。どういうふうに 高いかということが問題なんですけれども、離職率は大体20%から22%ということであ りますけれども、全産業の労働者を27ページで見ますと、計で17.5%となっておりま す。ところが、介護の業界の特色は、8割以上が女性の従業員でございます。そうしま すと、むしろ、女性の全産業の離職率と比較した方が実態に近い比較になるのではない かということが言えるわけです。17.5%に相当する、この年の女性だけの全産業の離職 率は、21.7%でございます。したがいまして、これと比べると、それほど高くはないの でないか。むしろ、同じぐらいではないかということもできます。ただ、この部分は、 詳しく見てみないと、そう簡単に結論できないということであります。簡単なブリーフ ィングのペーパーを用意しましたので、御参考までに見ていただければと思います。 例えば離職率だけについて見ますと、2の(2)以下でございます。法人格別に統計 をとりまして、法人格別にその実態を見てみますと、中でも、非常に採用率が高く、か つ離職率も高いという部分が目立つわけでございます。法人格別では、民間企業、医療 法人、NPOといったところが、かなり高いわけでございます。また、規模別に見ます と、特に従業員が9人以下の事業所は、皆様方の常識を超えるような実態があることが、 だんだんわかってまいっております。 少し詳しく申し上げますと、1ページ以下にございますけれども、2職種、2職種と いうのは、介護職員、主として施設で働いている方、訪問介護員という介護の主な職種、 2職種でございますが、この2職種で介護の業界の労働者の約3分の2に当たるわけで ございますので、この方たちがどうなっているかというのが、この介護の現場の実態を かなり正確に反映していると思います。そういう意味で、2職種における正社員の過去 1年間の離職率、採用率を見ますと、全体では、採用率が30%強、離職率が26%強であ ります。これを民間企業だけに限って見ますと、採用率が65%で、離職率が35%。NP Oで見ますと、同じく採用率が50%で、離職率が26%という状況であります。更に、驚 くことに、9人以下の事業所がどうなっているかといいますと、採用率が100%であり まして、離職率が50%に上っております。ということでありますで、例えば9人以下の 事業所は、1年間にほぼ全員入れ替わって、半分ぐらい辞めていくという激しい状況な わけです。 更に、これを非正社員のうちの常勤職員、つまり、非正社員でありながら、正社員と 同じような労働時間を働くということだけについて見ますと、ちょっと長たらしくて恐 縮なんですけれども、全体の採用率が58%、離職率38%。同じように、民間企業では採 用が70%、離職が40%。医療法人では、76%、58%。NPOでは、71%、34%。更に従 業員9人以下の事業所では、非正社員、常勤職員を1年間に190%採用して、131%辞め ていくということであります。言わば、これを私はざる的な採用と言わさせていただき ます。ざるで水をすくうような形で、言わば人材を使い捨てしているということであり ます。改めて申し上げておきますけれども、介護の事業に参入しておられる事業者は、 ほとんどが善意でやっておられるわけです。動機は大変尊敬に値するんですけれども、 現実に小規模でありますと、特に、実際に経営者の理想や感覚とは裏腹に、労働関係の 法律でございますとか、後ほど申し上げますけれども、処遇の問題でありますとか、い ろんな面で、雇用管理上たくさんの問題を抱えられて、現実はこういう激しい実態が生 じているということであります。 一番前に戻りますけれども、全体で見ますと、介護の分野では非正社員というのが少 しずつ増えております。非常勤職員以外に、正社員、非正社員というとり方をしますと、 だんだん増えてきている。特に民間企業では6割を超えております。それから、社会福 祉協議会あるいは共同組合といった法人では、7割前後でございます。 もう少し、全体の、介護の従事者のイメージでございますけれども、先ほど来、議論 になっております資格の問題でありますが、現状では、少なくとも全体の半数近くがホ ームヘルパー2級であります。介護福祉士の資格を持っている方は、4分の1強という 数字でございます。したがいまして、後ほど申し上げますけれども、皆様の御議論が、 一体介護のどの部分の人たちについての資格なり、能力なのか。その辺をしっかり見極 められて、失礼ですが、御議論される必要があるのではないかと思います。 前職の経験でございますけれども、1年間見ますと、84%の方が前職があります。介 護関係であるものは、そのうちの3分の1。したがって、3分の2、全体で申しますと、 約半数強が介護以外の分野から流入していることになります。 これは介護の分野の特徴なんですけれども、現在の仕事に就いた理由は、半数以上が やりたい職種、仕事内容だからとお答えになっておられます。今の仕事につきましても、 半数以上が働き続けられる限り、働き続けたいということでありますが、ことに、現在 の事業所に残るかどうかについては、残りたいという方は、3分の1ぐらいにとどまっ ているということであります。何らかの不満があるということでございます。 もう一度2ページ目に飛びますが、離職率について、基本的なことを申し上げました。 2の(3)の真ん中辺の部分でございますけれども、離職率については、何が問題かと いうことでありますが、私どもの統計調査によりますと、離職者の中に占めます採用1 年未満の方は4割強でございます。それから、1年以上3年未満の方は、全体の3分の 1ぐらいであります。これは後ろの注で定義してございますので、後でごらんいただき たいと思います。採用1年未満の方の離職率は、施設系入所型の非正社員の場合には、4 5%でありまして、これが一番高いんですけれども、施設系通所型では正社員、非正社員 とも、訪問系では、正社員がいずれも4割を超えております。1年以上3年未満の方の 離職率は、半分以下であります。したがって、それらのこと、あるいはほかの調査等々 から、離職率について申し上げられることは、押しなべていうと、従業員9人未満の事 業者、特に民間企業、NPO、医療法人にあっては、先ほど申しましたように、高採用、 高離職のざる的な経営が常態として、あるいは意図的に行われているのではないか。や むを得ず、そういう形態をとらざるを得ないということもございましょうし、そういう ことでバランスをとっている、採算を合わせているということもあるのでありましょう。 採用1年未満の労働者の離職でございますけれども、職場における仕事面でのサポー トが必ずしも十分でないということが、特に1年未満の方については言えるのではない かと思っております。これが高離職の可能性につながっている。 それから、採用1年以上で3年未満くらいになりまして、若干、自信も経験も積んで まいりますと、かえって、自分で自覚した能力、経験の向上が職場で具体的な評価であ るとか、処遇の改善につながっていないということが原因で離職している可能性が高い と思っております。 雇用管理の改善でございます。現在も先ほど申しました介護労働者の雇用管理の改善 等に関する法律の中で、実は雇用管理責任者という者の設置が努力義務になっているん です。これはかなりの方が御存じないかもしれません。そういうことで、実際に統計を とって、どのぐらい普及しているかを調べたわけでございますけれども、制度は知って いるけれども、選任していないという事業所が非常に多いんです。全体では、法人格別 でございますけれども、社団法人、財団法人、社協以外の社会福祉法人、社協の割合で 高くなっておりまして、いずれも知っていながら選任していないところが、これらでは 4割を超えております。御参考までに、NPOでは4割をちょっと切っております。 非正社員について、就業規則を作成していないという、労働関係の基本でございます けれども、こういったところが全体で2割を切っておりますが、民間企業や医療法人、 NPOでは、4分の1、つまり、25%前後がつくっていないということでありまして、 更にそのうちの2割ぐらいが非正社員の労働条件については、採用時に口頭説明で済ま しているという、労働関係の常識からかなり外れた状況でございます。 年次有給休暇でございますけれども、制度がない事業所がかなりございまして、全体 で1割強でありますけれども、民間企業やNPOでは、2割以上に上っております。 健康診断でありますが、特に介護の分野では、言わば常識であろうと思うんですが、 事業所全体で全く実施していないというのは7%程度でございますが、民間企業では12 %強、NPOでは16%強ということであります。 健康保険・厚生年金の加入状況でございますが、加入していないという状況は、事業 所全体で2割強ですが、民間企業、NPOでは3割前後に上っております。 これらのことから、幾つか言いたいことがあるんですけれども、雇用管理責任者制度 というのは、言わば国の制度でございまして、同じく国が監督官庁であります社会福祉 協議会を始めとする、社会福祉団体等において、未設置率が4割。先ほど申しました高 いというのは、行政内部における相互連携体制が必ずしも十分ではないのかなと考えて おります。 先ほど申しましたように、多くの事業者が善意で事業展開をしているわけ であろうと思うんですが、やはり、現実に、先ほど申しましたように、民間企業、NP Oで、特に経営規模が小さいと、労働関係の常識の最低ラインもクリアーできないとい う現実がかなりあるのではないかと思いますし、これらの状況は、現在も足かせになっ ておりますけれども、今後も介護業界全体の、いろんな意味でのレベルアップの足かせ になり続ける可能性があるのではないかと思っております。 いずれにしても、介護の業界では、現実には非正社員、あるいは非常勤社員、こうい ったことを自ら望んでそういう形態にとどまっておられる方もかなりおられます。ある いは月収5万円程度で満足している方もいるんです。そういういろんなバライティーに 富んだ実態を正面から見つめられて、対策を講じられる必要があるのではないかと思っ ております。 人材確保の視点でございますけれども、少しはしょりますが、今、申しましたように、 介護分野では事業者、労働者ともに、押しなべて、大変顕著な能力の向上意欲を持って おられます。中身が正しいかどうかは別にしまして、事業所全体について見ますと、採 用時の研修を行っているのは、7割程度に上っておりますし、OJTについても8割。 過去1年間で何らかの研修を行っているのは、実に9割を超えているわけです。そうい うふうに、労働力能力の向上意識が非常に強い、労使ともに強いというのが、この業界 の特徴であります。 労働者の側から見ますと、一番の不安は、今、夜勤の問題がございますが、それを別 にしますと、実際に利用者の方に適切なケアができているんだろうかということを、一 番不安に思っておられまして、その不安を解消する手段としては、やはり労働能力の向 上あるいは研修しかないのではないかと、大部分の方が思っておられるわけでございま す。 現在の仕事を選んだ理由でございますけれども、生活を維持するためというのも勿論 あるんですけれども、かなりの方が資格や技能を生かすためということでございます。 そういうことで、先ほど少し申し上げました訪問介護員だけについて、別の統計をと ったんですけれども、現在の仕事の内容、やりがいの満足度を月収ランク別に比較して も、月収5万円の方から月収40万円の方まで、満足度というのは、ほとんど差がないん です。そういった特徴がございます。 ところで、1つ注目すべきは、実際に介護保険の指定サービス以外の事業をやってい るかどうかという部分でございます。事業所単位の調査ですが、全体では3割を超える 事業所が介護保険の指定事業以外の事業をやっております。中でも、社協であるとかN POは、ある意味で当たり前なんですが、5割を超えております。介護以外の事業、つ まり、介護ではない事業を実施している事業所は、全体では4割強でございまして、社 会福祉法人であるとか、医療法人、共同組合、これはある意味で当然なんですけれども、 6割前後。NPOや民間企業でも、4割前後以外の事業をやっているということであり ます。 人材確保につきましては、特に、介護労働者は、現実には先ほど申しましたいろんな ニーズがあります。全員が正社員で常勤で働きたいということを希望しているわけでは ございません。勿論、多くの方が月収等に不満を持っておりますけれども、5万円や10 万円で満足している方もいるんです。したがって、そういった現実の実態に見合った人 材の育成、確保が必要ではないかと思っております。 介護保険の指定サービス以外の事業でございますけれども、この事業所の割合は、介 護保険以外をやる事業所は、拡大しつつございます。したがいまして、保険対象事業、 非権対象事業、更には家庭における労働介護というものも、広い意味では、介護の重要 な分野でございますので、そういった分野、役割分担を前提にして、広い意味での人材 育成、つまり、一部の介護福祉士の方がレベルを上げるのは勿論必要でございますけれ ども、それ以外の部分が、なおざりにされることのないように、できればなと思ってお ります。 最後に余談にもなるんでございますけれども、介護というのは、そういうことで、介 護保険だけでカバーできる分野というのは、当然限られている。現状において、既に限 られてございますし、今後もそうではないかと思っております。そういう意味で、介護 保険の事業の担当分野というか、どこのどの部分を担当するんだということを前提にし て、人材育成を議論しなければいけないと思っております。 更に、現実にしばしば耳にするのは、ほかよりも努力して、質の高い介護をしようと 事業者も従業員も一生懸命努力しているにもかかわらず、そのプラスαの努力が処遇等 々の上で報われる体制になっていないということが問題であろうかと思います。これを 介護報酬制度の中で解決するのは、ある程度可能かもしれませんが、それでは限界があ るのかもしれません。そういった部分については、医療にならって、若干、特別料金を 取るとか、利用者負担の部分が出てきてもいいのかなというような感じがいたすわけで ございます。 雑駁でございますけれども、以上でございます。ありがとうございました。 ○岩田部会長 どうもありがとうございました。大変興味深い、また耳の痛い点もたく さんございましたけれども、こうした現実を踏まえて、私どもも議論していかなければ ならないと思います。 それでは、続きまして、大阪府福祉人材センターの上田哲夫様からお願いしたいと思 います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○上田所長 上田でございます。 私は数字を追いながら、大阪府下における求人・求職の動向について、御報告申し上 げます。後段の方で、大阪社協がやりました老人施設部会で実施されました介護職員の 業務に関する意識調査、これは特養ホームの職員さんを対象にやったわけですけれども、 この中から、この問題について、改めて少し見てみたいと思っております。よろしくお 願いします。 それでは、資料3ページから入っていきたいと思います。 「(1)福祉人材センターの有効求人倍率の動向」ですが、中央福祉人材センターが 調べております全国的な状況を先に載せております。これを見ますと、平成17年度に有 効求人倍率が1を超えております。16年度から17年度にかけて、景気回復の影響を受 けて、もろにこの辺の数値が上がってきております。 大阪においては、下段になりますけれども、もう既に15年度から1を超えております。 1.33、2.33、3.75、4.21という形で、これは大阪府の府下が都市部でありまして、もと もと事業所も多く、求人数が多いという中で、この間の景気回復、求職者が事業所に吸 収されるといった背景の中で、16年度、17年度は急激にこういった数値が上昇している ことが、ここの中では見てとることができます。 4ページにいきます。「(2)求人・求職登録者数の推移」でありますけれども、上 の方は、有効求人数です。緩やかに増えております。下の方が求職者数です。これは、 急激に落ち込んできております。ただ、18年度は少し私どもの方も登録について積極的 に取り組みましたので、若干、回復したという状況が生じておりますけれども、全体と しては、この辺の求人の増加、求職者数の減少が、先ほどの求人倍率を押し上げている といった数値になっております。 それから、月々の新規の求人・求職の関係です。求人数は緩やかに増加しております けれども、その一方で、求職が減少している。16年度でクロスをしております。873、6 88、441、412という形で、求職が下がってきております。 5ページにいきます。ここでは「(3)分別の求人・求職の内訳(平成18年11月末 現在)」を述べております。 求人事業者の状況ですが、老人福祉・介護保険関係で73%。そのほかに、児童・母子 が8%。知的障害が7%となっております。 一方、求職者の方を見ますと、下から2番目ですが、老人福祉・介護保険が30.6%。 そのほかに、児童・母子福祉、知的障害、この辺がかなり多い数値を示しております。 ですから、余り求人がないほかの分野の希望がかなり多いということがここで見てとる ことができます。ですから、随分と求人事業者と求職者の間には、すれ違い、ミスマッ チが生じているということが、この表の中からとらえることができます。 6ページにいきます。次は、求人の状況と求職者の状況を比較しております。まずヘ ルパーを除く介護職41%、ヘルパーは25%、併せて66%です。そのほかに、看護職が 9%、相談員・指導員が9%になっております。 ところが、就職を希望する側の方は、圧倒的に相談員・指導員になりたい。これが32 %を超えております。今は高齢施設での生活相談員、あるいは児童施設、障害施設での 支援になっておりますけれども、こういったところでの希望が非常に強い。求人がない にもかかわらず、相談関係の仕事をしたいという希望者が3分の1を占めるわけです。 そして、ホームペルパーの求人が多いにもかかわらず、なり手は5.7%という大きな数 値の格差が、ここで生じています。 この間、養成校とのお話の中でも、社会福祉関係の資格を持っているが老人施設に行 って、生活相談をしたい。そういった希望で入るわけですけれども、現場の方では、し かしながら、2、3年は介護の現場を踏んでもわらないと、相談できるものではないと いう形で現場に回す。そうすると、自分のやりたい仕事ではなかったという形で辞めて しまう。そういった実態があるということで、お話が出ておりました。この辺の問題は、 大変難しい問題がここの中に秘められているのではないかと思っております。 7ページにまいります。ここでは雇用形態別の有効求人倍率の推移について、述べて おります。 各分野とも1前後であるわけですけれども、老人・介護のみ、平成16年、17年と突 出しております。 更に下の方の職種別を見ますと、点々というのは看護職であります。15年の6.32か ら14.35、15.50にはね上がってきております。今、看護職は医療機関に比べまして、賃 金が非常に低い。大体3万円から4万円の差があるという形で、どうしても、医療機関 に吸収されております。夜勤が少ないということでの特性はあるわけですけれども、そ れがあっても、医療関係に流れてしまうという実態がここの中で出ております。 次にホームヘルパーの場合は、一定の1.66から9.26、15.50という形で急激に上昇し ております。これは先ほどの職種別の求人で、25%ありながら、希望者が5.7という、 こういった数値の開きがここの中での求人倍率を押し上げているということで、見てと れるだろうと思います。 介護職の場合は緩やかな伸びで、求人も多いが、求職者の方もそこそこあるという値 の数字がここの中で出てきているだろうと思われます。 8ページになります。ここの中では、雇用形態別の有効求人倍率について、触れてお ります。白っぽい線は、非常勤職員です。非常に雇用しにくい、人材難という数値にな っております。その次は、常勤でありながら、非正規である。そういった職員さんです。 2.13から始まりまして、9.75、15.70、そして、18年度11月には17.15という形ではね 上がっております。逆に正規の職員の場合の求人は、確保しやすいという状況がありま すので、緩やかに伸び、ほとんど変わらずに横ばいという判断ができるだろうと思いま す。まだ確保しやすい状況がある。 これは求職する側に、やはり正規の職員の採用を求めたいという希望が強いわけです ので、身分処遇が非常に不安定な非常勤であったり、常勤であっても、非正規、そうい ったところについては、どうしても避けたい。ここでもって求人難が生じている。それ を表しているだろうと思います。 最後に平均賃金ですが、15年度に比べて、わずかながら上がっております。しかしな がら、賃金水準は上がる傾向にあるというグラフにはなっているんでしょうが、一般の お給料に比べては、比較できる数値ではありませんし、また私たち身近に取り組んでい ます有料老人ホーム、特に大手の企業が参入してきている今の有料関係の老人施設の間 でも、2万円から3万円、多いところでは3万円を超える格差が生じております。特に、 特養ホームの場合は、30、40になっても、そこからの伸びがほとんど感じられない。そ ういった状況の中で、有料の場合は、40歳になったら、50歳になったら、こんなふうに 変わりますという非常にきれいなパンフレットの中に、将来の構想なども書いてありま すので、どうしても、そちらの方に気が向いてしまう。そういった状況になっているだ ろうと思います。 また、賃金の問題については、次の調査の中で、少し触れたいと思いますので、よろ しくお願いいたします。 次に冒頭に申し上げましたように「特別養護老人ホームにおける『介護職員の業務に 関する意識調査』報告書」について、お話を申し上げたいと思います。 これは大阪社協の老人福祉部会が、特別養護老人ホームの介護職員さんを対象に実施 しまして、施設の現場において、先ほど野寺さんからもお話がありましたように、どう しても、離職する職員が多い。ですから、介護職員の資質を高めるところから、どんど ん拡大されてきている今の介護事業対応できない。人材の確保も危ういという状況の中 で、この意識調査をやったものです。 併せて、介護職員のやりがいとか生きがい、そういったものをどうやって仕事を続け ていくために、どんな意識の状況にあるのかということの条件整備を整えていく。そう いった意味合いでも、この調査を老人施設部会が独自に実施いたしました。回収率は73 %、2,859名の直接介護に関わる職員さんからの調査内容です。 3ページをお開きください。 ここの中で、全体の雇用、労働の実態が出ております。勿論、これは社会福祉法人で すので、一般のそれ以外の事業所が入っておりませんので、かなり、そういった意味で は、認可もされ、法人として整備された職場であるということが前提のお話になるだろ うと思います。 年齢といたしましては、20歳代以下が47.9%、これが最も多い。比較的若い年齢層の 職員が多いことがわかります。経験年数は3年未満。この介護職員が4割を超えている。 資格は主に介護福祉士50.9%、ヘルパー2級は52.3%を保有しているという数値が出て おります。 雇用形態でいきますと、正規の職員が65.9%。そして、パート・アルバイトが21.3 %。非正規・常勤の職員が12.8%です。正規職員が7割に満たない状況です。 それから、昨年1年間、半数以上の職員は施設内での研修に参加したことがない。こ れは後で出てきますけれども、研修参加の機会の多い施設の場合は、離職が少ないとい う結果が出ております。そういう意味では、昨年1年間、半数以上の職員さんが施設内 での研修に参加したことがないと答えております。 5ページをお開きください。 ここでは、職員の待遇の問題について触れております。更に職場環境の問題もござい ます。 まず、賃金に関して、7割近くの人が不満に思っているという数値が出ております。 5ページの下の説明になりますけれども、どんな不満を持っているかということで、 賃金、休暇の取得、勤務体制について聞いております。賃金については、67.2%が不満。 休暇の問題は、54.6%。勤務体制、夜勤等のさまざまなローテーションの問題だと思い ますが、60.1%が不満だと思っております。 更に職場環境ですが、仕事の裁量権、すなわち、自分の仕事における決定権限、能力 を活用する機会があるかどうか、確保されているかどうか。これは比較的低い評価をし た方が多かった。その辺での職場環境の整備の問題が、ここの中に出ているという判断 ができるだろうと思います。 17ページになります。 ここでは、バーンアウトの問題について触れております。文章が長いので、かいつま んで申し上げますと、年齢が低いグループほど、バーンアウトする数値が高いという結 果になっております。そして、正規職員がよりバーンアウトしやすい、資格のレベルが 高くて、年齢、経験年数がより長い、そういった層ほどアウトしやすい数値が高い。そ して、担当している利用者の数が多ければ多いほど、また夜勤の数が多ければ多いほど、 数値が高い。ですから、若い新しい職員が職場に入ったものの、こんなはずではなかっ たという形で、早い時期に辞めてしまう。あるいは最近の動向として、パート、非正規 の職員が増えている中で、正規の職員さんの責任がますます大きくなってきている。そ ういった中堅職員さんが悩みに悩んで、そして、将来の生活設計も十分でないという中 で辞めてしまう。そういった1つの老人施設の中での職員増ですが、この数値の中から 伺い知ることができるのではないだろうかと思われます。 いずれにいたしましても、これは大阪福社協の老人施設部会が積極的に、意欲的に、 どういった条件整備をすれば、これから離職率を少なくし、職員さんたちが元気よく仕 事を続けていけるのかという視点から行った調査でありますので、この内容をしっかり と分析しながら、私たち人材センターの方も、できましたら、4月に入ってから、この 調査から見る福祉施設における福祉人材の在り方、あるいは人材確保の課題というよう な、そういったテーマで研修会等をやっていかなければいけないと思っております。是 非この調査は、まだ途中でありますけれども、間もなく、冊子として完成する予定とな っておりますので、是非ともお受け止めいただきまして、御活用願いたいと思っており ます。 私の時間がきておりますので、これで終わらさせていただきます。ありがとうござい ました。 ○岩田部会長 どうもありがとうございました。短い時間で、急がせてしまって、大変 申し訳ございません。 それでは、お二方あるいは先ほどの成田室長からの資料の説明も含めて、御質問があ ればお願いします。 高岡委員、どうぞ。 ○高岡委員 先ほど野寺さんから発表いただいて、数字を聞いて驚いたわけです。野寺 さんから、大阪のいろんな数字の発表がありましたけれども、全国的に見られた状況の 中で、どういうふうにお感じになっているか。突然で失礼なんですけれども、お願いい たします。 それから、自分の大阪で大阪に質問するのも悪いんですけれども、有料老人ホームの 給与体系がすばらしい。30代、40代は相当の金額がもらえることになっている。それと 比較するとということでの給与体系の指摘があったんですけれども、有料老人ホームに 年功序列の給与体系は、今、実際にほとんどがやっているんでしょうか。そこだけ比較 の対象がそういうふうになったので、お聞きしたいと思います。 ○岩田部会長 お願いします。 ○野寺理事長 ありがとうございます。 最初の申し上げましたとおり、私どもの調査というのは毎年やっておりますけれども、 特に今日引用させていただきましたのは、昨年9月から10月にかけてやりました調査で ございます。全国の3万7,000の事業所、12万人の労働者を対象にやった調査でござい ますし、回答率は32%なんですけれども、NPO、社会福祉法人、民間企業のすべてを 対象にしておりますので、必ずしも大阪府の方の調査と平仄は一致しない部分があると 思います。むしろ、従来、予測はあったんですけれども、厳密に検証できない部分を中 心にやったものですから、NPOの問題であるとか、零細企業の問題を特に詳しく取り 上げたわけでございます。ただ、基本的には矛盾しないのではないかと思っております。 賃金については、私が申し上げる立場でしょうかね。どうでしょうか。 ○上田所長 私は相談窓口に上がってきております求人票の中から、幾つか有料老人ホ ームの処遇実態を見て、数字を申し上げておりますので、系統的にどんな給与体系であ るとか、そういったことについて、熟知したり、あるいは調べているということではご ざいませんので、申し上げられません。お答えしにくいです。 ○岩田部会長 そのほかいかがでしょうか。どうぞ。 ○京極部会長代理 いろいろ質問がございます。 最初に室長の方から出たことですが、社会福祉士の養成についても、大いに検討して いだたきたいと思います。なお言うと、大変立派な大学ですけれども、大阪市大と同志 社大学が2人ずつ入っているので、もう少しバランスよく委員を選んだらどうかという 感じがいたします。 それはさておきまして、今、介護労働安定センター及び大阪福祉人材センターのそれ ぞれの責任者からお話がありまして、まさに面目躍如たる報告で、大変参考になったと いうか、耳の痛いという表現を部会長は使いましたけれども、厳しい数値が出たと思い ます。ただ、1つ感じますのは、介護労働センターの調査は大変すばらしい、いい調査 ですけれども、一般の民間の調査は15%なので、それに比べると回収率は31%で良い方 ですが、問題は回答しないところに、更に問題がある場合もあります。それから、回答 した中で、例えば介護以外やっていないと回答した社協は、果たして責任ある人が回答 しているとは思えないので、いっぱい仕事がある中の介護なので、回答者がだれなのか によって、大分変わってくるのではないかということを感じました。 大阪府のデータも大変厳しいデータで、ただ、全国的にいいますと、東京も横浜もそ うでございますけれども、大都市部と、農村部という言い方はよくないんだけれども、 地方部の間に相当格差が出て、かつて看護の世界でもそうでしたけれども、看護協会の 幹部の方がいらっしゃいますので、大変言いにくいんですけれども、看護の場合は大変 政治力もありますし、元気がいいと思うんですけれども、介護福祉士会の方は、今日会 長もいらっしゃっていますけれども、もう少し元気があっていいのではないか。 結局、今の社会状況を反映していまして、景気が悪いときは、福祉の仕事もまあまあ よかったんですけれども、ここのところ好転していますので、非常に厳しさが目立って きたという感を受けております。これは行政側の対応が悪いのか、介護報酬の単価が低 いのか、あるいは経営者がもう少ししっかりするのか、あるいは先ほども申し上げまし たように、介護福祉士会なり、そちらがもっと頑張らなければいけないのか。いろんな 原因があると思います。 ただ、全体としますと、これは私個人の意見でありますけれども、例えば介護保険に ついは、半分は税金を入れているわけなので、一般市場の上に何でもいい。賃金が幾ら 低くてもいいんだ。厳密にいうと、いわゆる労働分配率ではなくて、役員報酬を除いた 労働分配率は幾ら低くてもいいということでは、困るのではないか。かつ、措置制度の ときは、逆にがんじがらめにし過ぎて、職員の単価から全部決めていた。それは問題が あって、逆に比較的安定的な給与と経営があったんですけれども、その辺がかなり規制 緩和という美名の下で、問題を起こしているのではないか。 他方、医療の世界を見ますと、同じように医療保険ですけれども、かなりきっちりや っていらっしゃるような気がしまして、どうも福祉の場合と医療の場合に格差がかなり あるのではないかという感じをいたしています。 したがって、今後、行政の対応としてどうするか。私は特に介護報酬については、ま ずは国民的に最後のみとりとか、大変重要な仕事をしている割には、評価が低いのでは ないか。財務当局は単価を下げることに一生懸命考えているようですけれども、ここは ひとつ踏ん張っていただいて、国民的世論を起こさないと、介護の分野はよくなってい かない。予算でもっと削るところはあるので、少し考えものだということを申し上げて 発言を終わります。 ○岩田部会長 堀田委員、どうぞ。 ○堀田委員 今の京極委員の御発言には大賛成で、待遇、特に賃金について、きちんと 確保されるように強力に財政当局に働きかける必要がありますし、これは現場からの声 が非常に大切だと思いますし、その点は非常に弱いと感じています。全体のために頑張 ることが必要だと思います。 野寺さんに教えていただきたいんですが、人材を集めるについては、1つは賃金を中 心とした待遇の問題。もう一つは、働きがいの問題で、基本的にはほかの労働分野に比 べると、賃金は余り高くはないけれども、やりがいがあるので、頑張ってやろう。そう いう魅力で人を集める職場だとは思うんですが、それにしても、結婚もできないような 賃金、見通しが立たないような賃金では、働きがいだけでは来ませんし、ましてや働き がいが命のところですから、これからすぐバーンアウトしてしまうのでは、全然人材確 保が期待できないと思います。働きがいの点について、ざるのような使い方というのは、 わからぬでもないけれども、随分、予想以上だなという感じでありまして、特に9名以 下の小さなところで、それが激しい。働きがいを生み出させるための経営者の態度につ いての質問なんですけれども、実際、小さなところ、グループホームにしろ、訪問介護 等の事業所にしろ、経営者がすごい情熱を持っておって、自ら先頭に立ってやっており、 徹夜の仕事も大体経営者がやっておる。それがすさまじい勢いでやっておるので、何と かほかの職員もついていってはおるんだけれども、やはり限度があって、バーンアウト してしまう。しかも、賃金についても、十分に払えていない。そういう事業者が一方の イメージとしてあります。それは経営者がそれだけ頑張ってやっても、なかなかいい待 遇ができない基礎の報酬の定め方という大きな問題があるだろう。一方で、そういうグ ループがある。 もう一方で、これはグループホームも含むいろんな施設で、例えば地 方議会議員が市長と話をつけて、補助金をもらって、名誉のためにやっておる。さっぱ り経営に熱が入っていないので、やっている方もひどい使われ方をして、やりがいを持 てない。待遇も悪い。そういうところもイメージとしてある。その辺りがどれぐらいの 比率で、どうなっておるのか。この統計はなかなかとりにくいし、メルクマールもない だろうと思うんですが、例えば経営者が自らやっておる小規模企業と経営者自身はほか のことをやっている企業。そういったような区分で見ることができないだろうか。その 辺りの実態を野寺さんはどのように見ておられるのか。おわかりの範囲でお教えいただ きたいと思います。 ○野寺理事長 御質問ありがとうございます。 簡単にいいますと、経営者の側は、例えば理念を十分職員に周知させていると思って いる場合が非常に多いです。6割以上がそうです。ところが、働く側は、必ずしもそう でもなくて、理念が十分行き渡っていると思っているのは、4分の1ぐらいです。した がって、感覚的にそこにギャップがあります。 もう一つは、働く側の問題意識とすると、現場で抱えた問題について順次上に上げて いく。それが経営のトップまでいって、そして、フィードバックされる。そういうシス テムが十分機能していないということです。現場で起こった小さな問題、例えば「ヒヤ リ・ハット」もそうですが、あるいは利用者からの苦情もそうですが、それを直接の上 司に告げる。そして、そこで問題が解決しない。その場合は経営者までいって、そして、 どうするか。態度を決めて、そして、買い取るというか、対処方法はもう一度下まで戻 ってくるといったようなシステムが十分機能していると、かなりの部分のバーンアウト なり、問題は減るのではないかと思っております。勿論、賃金があれですけれども、賃 金だけではないという業界の特徴があると思っております。 ○堀田委員 同じ質問で、9人以下の規模の事業所になりますと、下から経営者に問題 点が上がっていくとか、そういうピラミッド型というよりは、経営者自身が現場の中で、 第一線に立ってやっている。そこで実情がわかっていることが、小さなところでは多い のではないかという気がしますけれども、そういう点はいかがですか。 ○野寺理事長 むしろいい面では、つまり、うまくいっているサイクルではおっしゃる とおりなるんです。ところが、悪いサイクルの場合の例は、経営者が突っ走って後がつ いてこれない。経営者が御自分の実際の介護の経験等にのっとって、それをある意味で、 硬直的に押しつけられる。それが受け入れられないというようなケースが、失敗のサイ クルでは目立っているように思います。 ○岩田部会長 白澤委員、どうぞ。 ○白澤委員 大変貴重なデータで、大変驚いているんですが、京極委員もおっしゃった ように、審議会の前の意見書とも随分関係があると思うんですが、措置から契約のもと で、介護保険の導入の中で、やはり一定の規制緩和の結果として、こういう問題が生じ ている部分と景気が影響していると思います。その意味では、財政的な問題は非常に大 きいのではないか。これはどんなことがあっても、頑張っていただきたいなというのが 1点。 今、堀田委員がおっしゃっている施設の経営者の意識は、どう変えていったらいいか。 例えば、今、介護サービス情報の公表とか、そういう議論だけで済むのか。もう少し一 定の要件づくりが必要になっているのではないかということで、こればできれば野寺理 事長から少しお話をいただければ大変ありがたいというのが1点。 我々職能団体や、あるいは養成施設は、もう少しこういうものにどう働きかけをして いくかのという、意見書の中の議論を踏まえて、やはり雇用の問題や採用の問題には、 働きかけていかなければならない。その中で、1点、是非、上田委員にお聞きしたいん ですが、6ページにあります、これは我々社会福祉士の観点からいうと、相談員や指導 員が9%で、32.6%が求職している。この議論の中で、これは大学などの卒業生も含ん だデータなのかどうかというのを、少しお話をいただきたい。 この2点、質問と意見でございます。 ○岩田部会長 私も上田さんに、今、白澤委員がおっしゃったことと同じですけれども、 相談員・指導員の求職者が多いのに求人がないというか、要するに、社会福祉士の資格 保持者の問題なんだろうと思うんですが、福祉の大学をつくり過ぎたのか、それとも市 場の人材センターの位置ですけれども、介護もそうだと思うんですけれども、労働市場 が必ずしもオープンではないのかなという気もします。全体としての労働市場の形成は、 どういうふうになっているか。そういうふうにオープンな労働市場で、求人・求職のや りとりがされているのか。もうちょっと縁故とか、学校の囲い込みとか、卒業生ルート というのが基本的には多いわけですが。その辺は、人材センターとしては、どんなふう に思っていらっしゃいますか。 ○上田所長 保育所とかあるいは児童養護施設等々ですと、かなり昔からパイプがあり まして、実習生を受け入れる。その中でさまざまな形で連携をとりながら、大阪の場合 ですと、児童施設の場合は、学校側との定期的な懇談などもやっておりますので、そう いったパイプは太いものがあります。ところが、こういった老人介護関係の施設の場合 は、新しくたくさんできたということもありますので、なじみも少ないですと、パイプ が非常に薄いという中で、余りそういった意味での安定的なパイプ、連絡網がないと言 えます。 それから、社会福祉士の関係なんですけれども、この間、私どもの方と施設関係者と の懇談会を始めているわけですけれども、その中で、やはり社会福祉士養成校の場合は、 ソーシャルワーカーを目指す子が多い。また、そういった意味で、自分の進路を定めて きている。ところが、老人施設の中で、具体的に働いてもらう場がはっきりと位置づけ られていないといいますか、特定化されていないというのがありまして、せっかくそう いったものを目指しながら、現場では生かされないということでの失望感とか、あるい は学校側もそういうことでは進めにくいことがあるという話が、意見交換会の中では出 ておりました。やはり数年間は現場で経験を持ちながら、取り組んでいかないといけな いという実態があるだろうと思います。 ○野寺理事長 ちょっと補足しますと、最近起こっている傾向なんですけれども、福祉 関係では、どちらかというと、ほかの業界に比べるとハローワークに依存する率が高い んです。ところが、ここへきて、非常に求人難になりまして、施設系では、特に福祉関 係の専門学校等と従来以上に密接な連携をとって、言わば、言葉は悪いんですけれども、 囲い込み的にリクルートしている傾向が少し強まってきているように思います。 ○岩田部会長 ちょっと時間がありませんので、最後の御質問にします。 ○中島委員 2人の御報告はとても勉強になりました。ありがとうございました。 やはり働きがいというのは、いろんな側面があると思うんですけれども、今日拝見し て、非常に劣悪な労働条件で、確かに必要最小限の労働条件は、働く人間として、しっ かりと確保することはとても重要で、そういう意味での待遇の改善は、私も賛成なんで すけれども、その中で、野寺さんもおっしゃっていたように、努力した職員が報われる 仕組み、そこのところをもう少し制度的にしっかり担保していくことが必要ではないか なと思います。 いろんなサービスがありますけれども、保険でカバーできるサービスもありますけれ ども、そうでない、お年寄りの中には高所得者の方もいる。そういう方たちが要求して いる質の高いサービス、そういうものを提供して、そこから料金を取ることによって、 内部補助的に、採算の取りにくいサービスに回していくというような経営上の工夫も必 要だと思います。 それに関して、申し上げたいのは、やはり規模の小さいところは、そういう意味では、 相当経営的には苦しいかなと思います。ある程度の規模がないと、サービスの多様化は なかなか難しいし、人事ローテーションとか、そういうものも大変なので、どうしても 1人に負担がいきやすい。そういう意味では、もう少し経営形態の流動化というか、あ る程度経営統合的なものも、社会福祉法人ということで難しいのかもしれないんですけ れども、そういう意味で、ある程度の一定規模の法人が事業できるような形に、もう少 し統合しやすいような仕組みをつくるということも必要なのではないかと思います。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○駒村委員 済みません。資料がもしあれば、事務局に用意していただきたいんですけ れども、上田さんの提示されている8ページの求人側の体裁と平均賃金の動きは、当然 こうなって上がっていくんだろうなと思います。条件をいろいろコントロールすると、 本当に上がっているかどうかをチェックする必要があると思うんですけれども、これは 全国にどういう傾向にあるか。その辺のデータがもしあれば、どういう傾向になってい るのか、これは勿論財政にはね返る話だと思いますので、是非教えていただきたいなと 思いました。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 お二方に大変興味深い御報告をいただいたものですから、恐らく御質問、御意見があ ると思いますが、今日のいろんな資料を基にしまして、次回、更にどういう確保対策を すべきかということまで踏み込んで、少し議論を続けたいと思います。 それでは、最後に平成19年度予算の概算要求等について、若干御報告があるそうです ので、事務局よりお願いいたします。 ○矢崎総務課長 長時間の御審議、どうもありがとうございました。 時間も押しているので、資料の御紹介だけにしたいと思います。 1点目は、19年度予算でございまして、本審議会の関わりで申し上げますと、介護実 習のモデル事業、あるいは潜在マンパワーの掘り起こし、そういうことも取り組もうと しております。 2点目は、今国会に提出させていただいております法案がもう一本ございまして、生 協制度の改正でございます。共済事業の契約者保護の強化、ガバナンスの強化とともに、 福祉医療事業についても、法律上、位置づけて対応していくといったような内容になっ てございます。 3点目は、社会福祉法人関係です。これは先ほども法人経営の在り方という議論がご ざいましたが、私どももスケールの問題も含めて、新しい福祉法人経営の在り方を考え る必要があるという中で、まず、法人経営の会計面を含めた弾力化や公益事業の取組み がしやすくなるような制度改正を考えてございまして、3月30日、所要の通知改正を行 うという内容でございます。 取り急ぎでございますが、また見ていただきまして、何かございましたら、私どもの 方に言っていただければと思います。 ○岩田部会長 それでは、最後に次回の日程について、御案内いただきたいと思います。 ○矢崎総務課長 次回の日程でございますが、4月20日金曜日10時からとさせていた だきたいと思います。会場等については、調整中でございますので、調整でき次第、追 って御連絡申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 いつも時間に追われているような感じで申し訳ありませんが、今日は遅 くまで、どうもありがとうございました。また次回よろしくお願いいたします。 お二方、どうもありがとうございました。  照会先:厚生労働省社会・援護局総務課       03−5253−1111(内線2814)