07/03/22 第1回ワクチン産業ビジョン推進委員会速記録 第1回ワクチン産業ビジョン推進委員会             開催日: 平成19年3月22日(木)             場 所: 赤坂プリンスホテル五色2階「橙光」 ○関血液対策課長  それでは定刻の1時となりましたので、ただいまから第1回目の「ワクチン産業ビジ ョン推進委員会」を開催します。  参加者の皆様方におかれましては、御多用のところお集まりいただきましてありがと うございます。厚く御礼申し上げます。座長選出までの間、私は血液対策課長の関でご ざいますが、私の方から議事を進めさせていただきたいと存じます。また、本日の会議 は公開での開催ということになりますので、よろしくお願い申し上げます。  まず開会に当たりまして、初めに事務局を代表しまして高橋医薬食品局長からごあい さつを申し上げるところでございましたけれど、一昨日以来、懸案事項がございまして、 その対処のためにスケジュール調整が相整いませず、まことに申しわけございませんが、 本日、急遽欠席ということになりました。また審議官の黒川についても同様でございま して、本日こちらに伺うことができませんで、まことに申しわけございません。高橋局 長よりはおわびを申し上げるとともに、委員の皆様方にくれぐれもよろしくお伝えする ようにと申しつかってございます。  というような事情もございまして、かわりまして私の方から、本来は局長の方から申 し上げるべきであったわけでございますが、ごあいさつを申し上げたいと存じます。 (高橋医薬食品局長代読)  それでは、第1回のワクチン産業ビジョン推進委員会の開催に当たりまして、一言ご あいさつを申し上げたいと存じます。  委員の皆様方におかれましては、まず本会議の委員に御就任いただきまして、また本 日は御多用中のところ御出席いただきましてまことにありがとうございます。心から厚 く御礼申し上げます。  厚生労働省におきましては一昨年の平成17年4月以来、ワクチンに係るさまざまな専 門家からなりますワクチンの研究開発供給体制等のあり方に関する検討会を設置し、本 日もこちらにお越しいただいております神谷齊先生に座長をお願いして、ワクチンの開 発あるいは供給をめぐるさまざまな論点について、10回にわたる検討を経て昨年6月に ワクチン産業ビジョンの案を公表いたしたところでございます。このビジョン案にも示 されているところでございますが、ワクチンの研究開発、生産、供給に当たりましては、 国民にとって必要とされるワクチンは何かという視点に立ちまして、ワクチンに係る我 が国の現状、特に臨床現場からの声に関係者一同が耳を傾けるとともに、諸外国の状況 についても的確な情報収集・分析が必要と考えられるわけでございます。こうした平素 からの地道な取り組みを通じて、個々のワクチンのニーズについてさまざまな立場の有 識者とワクチン関係企業、あるいは関係するメディアの方々等々の間で、取り組みの方 向性について認識を共有することの重要性が改めて強く認識されるようになってまいり ました。  また、ワクチンの研究開発のインセンティブという面から申し上げますと、ワクチン の将来需要の見通しの明確化ということが極めて重要でございまして、それにはワクチ ンに対する国民の正しい理解が不可欠であると考えられます。このためワクチンの開 発・供給をめぐる施策をフォローする検討の場を設ける場合には、国民にわかりやすい 透明なものとすることが重要であるといったこともビジョンの中で強くうたわれている ところでございます。  こうしたビジョンの趣旨を踏まえまして、今般、有識者からなる委員会を新たに設置 し、諸課題の実施に関して関係者の方々の意見を聞きながら、このビジョンに定められ たアクションプランを着実に実行するため、このワクチン産業ビジョン推進委員会を発 足させることになったという経緯でございます。  申し上げるまでもございませんが、ワクチンは感染症を中心とする疾病の予防、ある いは克服という側面から極めて有効な手段として重要な役割を果たしてきております。 例えば平成17年11月に策定されました新型インフルエンザ対策行動計画におきまして も、対策の重要な柱としてワクチンの開発・生産といったことが位置づけられていると ころでございます。また、グローバル化が進む今日、新型インフルエンザのようないわ ゆる新興感染症が世界的に流行することが予測される中で、危機管理という観点からも 我が国におけるワクチン製造企業を自国の産業の中にいかに位置づけていくかというこ とも重要な視点となるものと考えられます。  また、さらに昨今のワクチン開発におきましては、特に海外メーカーによりさまざま な新しいワクチンの開発が進められておりますが、こうした開発努力の成果が我が国の ユーザーにも利用できるようになったり、また我が国における新しいワクチンの研究開 発についても世界に遅れることのないように進めていく必要があるかと存じます。  ワクチンには通常の医薬品とは異なる製造上の特徴などもあり、このような情勢のも とで公衆衛生上、あるいは医療上の必要性に対応したさまざまなワクチンを確保してい くこと、そして長期的なワクチンの安定的な供給をはかっていくことが大きな課題であ ると考えております。今般、このワクチン産業ビジョンを基礎としまして、医学の専門 家、産業界、メディア、行政などの代表が一堂に会して個々のワクチンのニーズに基づ いて、今後のワクチン産業の進むべき方向性について継続的に議論し共通の認識を持つ ための場を設けることができたということは、今申し上げたような背景に照らしまして 大変意義のあることだと思っております。本日お集まりの皆様方にはさまざまな観点か ら率直な御意見をお聞かせいただき、また我が国のワクチン施策をさらに前進させてい くことができればと思っております。  活発で建設的な御討議をお願い申し上げまして、ごあいさつにかえさせていただきた いと存じます。どうぞよろしくお願いします。  それでは引き続きまして、今しばらく議事の進行をさせていただきたいと存じます。 まず、委員の方々の御紹介をいたしたいと存じますが、配付資料の中にクリップどめし てあるものを外していただきますと、委員の名簿が中に入っていると思います。めくっ てすぐのページでございますが、これに従いまして御紹介したいと思います。その場で 軽く会釈をお願いできればと思っております。  それではまず、飯沼委員でございます。伊藤委員でございます。庵原委員でございま す。岩本委員でございます。大石委員でございます。大日委員でございます。岡部委員 でございます。倉田委員でございます。相良委員は本日は御欠席でございます。そして 竹中委員でございます。竹本委員でございます。橋本委員でございます。それから松本 委員でございます。それから宮崎委員は本日は御欠席でございます。それから山口委員 でございます。それから山西委員でございます。また、本日は当委員会のアドバイザー としまして、国立病院機構三重病院名誉院長の神谷先生にお出でいただいております。  またオブザーバーとしまして、ワクチン販売業者の立場から(社)日本医薬品卸業連 合会より(株)バイタルネットの一条様にお越しいただいております。それからワクチ ン製造業者の立場から、まず(財)化学及血清療法研究所の岡様。それから(社)北里 研究所の荒井様。武田薬品工業(株)の今井様。(財)化学及血清療法の千北様。(財) 阪大微生物病研究会の高見沢様。そしてデンカ生研(株)の佐藤様にお越しいただいて おります。  続いて事務局側でございますが、医政局経済課長の武田です。それから医政局研究開 発振興課長の新木です。それから健康局結核感染症課長の三宅です。それから血液対策 課では血液対策企画官の植村、そして血液対策課長補佐の古賀が出席させていただいて おります。  参加者の御紹介は以上でございますが、引き続きまして座長の選出を行いたいと思い ますが、どなたか御推薦はございますか。  もし、委員の皆様方から特段の御推薦がないようでございましたら、事務局としまし ては富山県衛生研究所の所長の倉田先生に座長をぜひお願いしたいと思いますが、いか がでございましょうか。 ○全員  異議なし。(拍手) ○関血液対策課長  ありがとうございます。御異論がないようでございますので、それでは倉田先生、よ ろしくお願いします。座長席の方にどうぞお移りください。  それでは、これ以後の進行につきましてはただいま座長に就任されました倉田先生の 方から、どうぞよろしくお願い申し上げます。では、よろしくお願いします。 ○倉田座長  ただいま御指名を受けました倉田でございます。ほとんどのことは関課長が今、申し てくださいましたので足すことはないんですが、私はワクチンは国民の健康の安全保障 だと思っています。鉄砲玉にかわる、戦車にかわる、戦闘機にかわるんだと思っていま す。これは何があっても、近ごろはやり言葉の、経済競争原理とかいろいろな事情があ りますが、そういうものを全部すっ飛ばして、きちんと確保されて守るべきものだとい うように認識しております。いろいろ私自身もこのごろ開発に手を染めてきていますが、 その信念はいかなる状況にあっても変わりません。某大国が競争原理でいいかげんに作 り結局失ったワクチン5千万ドーズということもかつてはありましたが、そのようなこ とがないように、いいものが常に確保されること、そういう道を敷くのがこの会議だと いうように私は認識しております。そういうことで、ぜひ御協力をお願いします。  それでは議事に入らせていただきますが、事務局から配布資料の説明をお願いします。 ○古賀血液対策課長補佐  ではお手元にお配りしました一束の資料がございますが、一番上に「座席表」、続きま して「委員名簿」があるかと思います。続きまして「議事次第」が一枚、資料Aとして、 「運営要綱」一枚。資料Bとして、「設置について」。資料Cとして、「ワクチン産業ビジ ョンの要点」。資料Dとして、「ワクチン産業ビジョン」。資料Eとして、「米国疾病管理 予防センター(CDC)の予防接種の実施に関する諮問委員会」。それから参考資料1− 1、1−2、1−3、1−4までございます。過不足等がございましたら事務局までお 知らせいただければと思います。 ○倉田座長  では最初に、この委員会の開催趣旨等について事務局から説明してください。 ○古賀血液対策課長補佐  では、お手元の資料AとBに、「運営要綱」と「設置について」という資料をおつけし てございますので、そちらをご覧ください。  本ワクチン産業ビジョン推進委員会の目的としまして、ワクチン産業ビジョンに掲げ られました事項の着実な推進に資するための情報公開・討議を行うことを目的としてお ります。その検討内容でございますが、本委員会におきましてはワクチンを取り巻く現 状に関する話題全般。それからワクチン産業ビジョンのそれぞれの事項に呼応した取り 組みの実施状況。また開発優先度の高い個々のワクチンに関するニーズ、開発、供給、 知識の普及などに関連する事項。その他必要に応じて御議論いただきたいというように 考えてございます。  委員会の構成ですが、資料Bをご覧いただいた方がわかりやすいと思います。本委員 会は厚生労働省医薬食品局長が開催し、その運営には医薬食品局血液対策課が、本日御 参加いただいております関係課の協力を得て行うこととしております。そして委員の先 生方は、ワクチンの研究開発、臨床、製造、供給、接種事業、知識の普及等に携わる学 識経験者の方からお願いしているところでございます。また、ワクチン製造企業と流通 企業の代表の方からもオブザーバーとして御参画をいただいているところでございます。  本委員会におきましては、年2〜3回程度の開催を予定しておりまして、本日の第1 回でございますが、ワクチン産業ビジョンの紹介とともに、取り巻く全般的な事項につ いて先生方の御意見・御討議等をいただきたいと考えております。以後、第2回以降で はそれぞれの事項に呼応した取り組み実施状況についての情報交換やその他、開発・供 給等に関する状況などに関する討議を含めていきたいというように考えております。  以上でございます。 ○倉田座長  ありがとうございました。資料Aは本委員会の設置要綱というか、運営の要綱。資料 Bは検討課題。何のためにこの会を持つかということですが、何か事務局の説明で御質 問、あるいは御意見はございますか。  もし、ありましたらまた後でということで、それでは次回以降の具体的な進め方やテ ーマにつきましては、本日の議題3まで御討議をいただいた上で改めて全体を通しての 討議の際に御意見を伺いたいというように考えておりますので、よろしくお願いします。  それでは資料の記載内容につきまして、何か確認の上で特別な御意見があればお聞き したいと思いますが、よろしいですか。それでは議題1のワクチン産業ビジョンアクシ ョンプランについてですが、このまとめをやってくださいました座長であります国立病 院機構の三重病院の名誉院長であります神谷先生に説明していただこうと思います。ワ クチン研究開発供給体制のあり方に関する検討会、そこに資料Dというのがあると思い ますが、ご覧ください。 ○神谷顧問  神谷でございます。よろしくお願いします。後は座ってやらせていただきます。  先ほど関課長から御紹介がありましたように、このワクチンの産業ビジョンをつくり ました検討会は平成17年の4月4日に第1回を持ちまして、以降10回の会を重ねまし て、18年の6月21日にこの「案」とついたものができあがりました。その後、パブリ ックコメントを経まして、そして最近のデータ等を少し変更したものが今お手元に、皆 様方のところに配られた「案」の取れたワクチン産業ビジョンでございます。  これに従いまして御報告したいと思いますが、この検討会をやるに際しましては、2 ページ目を開けてください。そこに検討会のメンバーの先生方、それからワーキンググ ループ、この検討会の中で細かいことをやっていただいたワーキンググループの先生方、 それから関係各課の記載がここに書いてございます。そして、特に委員の先生方、ある いはワーキンググループの先生方はもちろんですが、血液対策課の関課長を初めとして 当時おられました佐藤補佐には大変お世話になりまして、この案ができあがったという ことでございます。それで、きょうは20分、私は時間をいただきましたので、その中で 主たるところを御紹介して、これからの検討の参考にしていただきたいと思います。  まず産業ビジョンの目的としては、先ほど倉田座長もおっしゃいましたが、ワクチン というのは感染症の脅威から国民を防衛するための効果的な手段ということで、投薬を するよりはワクチンの方がいいということをまず最初に認めた上で、人類の感染症との 戦いにおいてはワクチンは将来にわたって大きな意義を持つという考えのもとに研究開 発、及び供給を支える環境や体制を整備・構築するということは、国民の健康、あるい は感染症の脅威の克服には必須のことであると。そういう定義で始めました。  そして一方、そのワクチン産業の現状を考えてみますと、ほぼ今までのワクチンは国 内の需給により維持されてきました。国内ワクチン産業というのは、少子高齢化の環境、 あるいは売上の中心であった小児の市場の縮小化(これは出生人口が減ってきたという ことです。)、それから、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)によります薬事規 制環境の変化等により、大きな改革が迫られています。それで今後の感染症にも対応し た危機管理に当たっては、我々はワクチン研究開発、製造体制の維持ができるかの曲が り角に立っているというような危機観念を持った認識のもとにこれをつくったわけでご ざいます。  次は7ページを見ていただきたいと思います。ここの下の方に図がございますが、海 外のワクチンの主要企業の動向ということで、日本の企業はずっと同じ形で今まで来て おりますが、海外のワクチン企業は1980年ぐらいの時代と2000年のときを比べてみま すと、このワクチン主要企業の成り立ちは非常に変わってまいりました。そうしてこの ことによってどういうことになったかと言いますと、次は22ページを見ていただきたい んですが、表4というのがございます。外国のワクチンメーカー部門の売上げ別企業ワ クチンの売上げ比率というのがございますが、日本に比べますと外国メーカーの売上げ が非常に上がってきていると言いますか、非常に大きいと。額が一けた違う額で進んで いることがわかります。  それで25ページを開けていただきまして、図17を見ていただきたいと思いますが、 根底には製薬企業の研究開発投資ということがどのぐらい日本と外国で違うかというこ とが、このまとめの中でわかります。すなわち、ここにありますように国内のワクチン の研究開発費というのは67.7億円、これは2004年のデータですが、アメリカと比べた だけでも1/10しかないということになっております。アメリカは820億円というよう なことで、非常に大きな額を使ってやっているということになります。  次に10ページに戻りまして、市場規模のことですが、ワクチンだけに限ってここで比 較をしてみましたところ、世界のワクチン市場が約6,600億円ということですが、アメ リカは1,650億円、日本は600億円ということでありまして、市場規模としても日本は 非常に小さい。そしてその上にあります図4を見ていただきますと、2004年で見まして も医療用医薬品の占める全体の中でワクチンの製剤というのは、日本では1.1%にしか 達していないというような問題がございます。  その中身を見てみますと、次に13ページでございますが、図9というグラフがありま すが、日本のワクチン産業の中身というのは主にインフルエンザが中心になりまして、 そのほか定期接種のワクチンが左側にありますが、これを除きますとあとのその他のワ クチンというのはこの程度しかなくて、ほとんどインフルエンザで動いているというよ うな状況が現在までにございます。  それでは、こういう状況を今後は日本のお金の少ない中でどのようにやっていくかと いうことが非常に大きな問題であるわけですが、先ほども言いましたように、曲がり角 に立っているということが言われると思います。  それで32ページを見てください。ここに「ワクチン産業政策の基本的考え方」という のがございます。この会で討議しました大きな問題点の一つはここにございまして、「ワ クチン産業は日本に限らず諸外国においても国の感染対策の根幹を支えている産業とし て、特に危機管理や定期接種などに係るワクチンでは、公的な施策における一定の役割 を担うという性格を強く有するもの」というようになっております。さらに日本の場合 は、やはり国がこのワクチン製造を今後続けていくというようなスタイルではなくて、 民業であるワクチン製造企業がその役割を継続して担っていくということが前提だとい うことでありまして、そうしますと公益的な事業を実施することが可能なだけの収益を 確保できる産業としての体力が求められることから、公益的な産業のみならず収益を得 られる産業をも行いつつ全体としての発展を確保できるような産業構造を目指す必要が あるという結論になります。  それではワクチン産業のスパイラル、連鎖の発展をどのようにしていくかというとこ ろがその下にございまして、この図を見ながら見ていただきたいと思いますが、新たな ワクチンのニーズ、新感染症、予防接種法の枠にとらわれない年齢をターゲットにした 予防医療、新しい投与経路への期待に対応した開発を進めていく戦略が求められるとい うことになっておりますし、また危機管理的なワクチン、特に採算性があるものではな いということが多いわけですから、こういう必要なワクチンを製造する機能を健全に維 持する必要があります。こういうスパイラルが途絶えますと、ワクチンの国内製造体制 が維持できなくなる恐れがあるということでありまして、その下の図にありますように、 臨床開発の強化を図るためには国内市場の拡大も必要ですし、左側にありますように国 内ワクチンの製造企業と開発型企業の戦略的連携の確立ということが大事だということ。  もう一つは、外資との戦略的協力です。これは外国市場の展開と国内技術の移転とい うことも含めまして、外資との戦略的協力もないことにはこういうことが今後進まない だろうという考えでございます。  それで32ページにまいりまして、企業自身による戦略的な経営というのがございます が、この3番を見ていただきますと、平成14年の薬事法の改正がございました。それに おいて導入された製造販売業を営む者に対しては、製造販売する製品の市販後、安全対 策等を向上させるために必要な管理体制を構築することが求められているというのが現 状であります。そして現在のワクチン製造企業の多くは、市販後、安全管理体制の確保 は提携販売企業に依存しているという状況であります。  さらに下の方に行きまして、将来の展望において、個々の企業により差はあるけれど、 ワクチン産業は総体として特殊な開発、製造技術を基盤とした製造業主体の業態として 発展するのか、開発・製造に加え市販後の十分な体制を確保した製造販売業として発展 するか、その岐路にあるだろうということで、これは委員会でも何回か討議されました し、また日本の企業の方たちもその中で御発言がありましたが、もう一つまだ認識が十 分でなかったのではないかと私は思っております。  それからさらに次に、このワクチン産業の将来像というのがありますが、この辺は後 でゆっくり読んでいただきたいと思いますが、この将来像の中でワクチン産業の克服す べき課題とか、あるいは戦略的な産業の姿というようなことを書いております。  次に37ページ、「国の役割」というのがございます。一方、産業の方にはこの委員会 ではそういうような問題点を指摘しましたが、そのほかに、では国は何をしてくれるか と。国は何をする必要があるかということも討議しました。それで「医薬品産業ビジョ ンにおける国の役割の基本的な考え方」というのがございまして、中に(1)〜(3)と3つあ りますが、国の制度の改善に関すること、及び市場競争原理が有効に機能することを阻 害している条件や要因、これは後でゆっくりと討議していただいたらいいと思いますが、 そういうようなものを排除しなければいけない。あるいは民間では採算が、なかなか手 を出さない分野への支援を国に十分に行ってもらう必要がある。国が国家戦略上、重要 だと思われる分野に重点的に支援するということが必要だということになっております。  次に(3)の国の関与の方向性というところですが、臨床現場のニーズや感染症動向 等に応じて迅速かつ円滑に開発され供給されるよう、恒常的に生産者を含む有識者が意 見交換・検討を行う討議の場を位置づけて、官民共同での開発・治験計画の策定を含め た具体的な検討を行う体制を整備することということで、この検討会をスタートしてい ただいたということだと認識しております。  次に39ページの(4)ですが、「規制における取り組み」というところですが、ワクチン に限らず医薬品等の開発のためには、我が国における治験を含む臨床研究基盤の整備を 推進することが望まれます。そのため、治験の信頼性及び被験者の安全性を確保しつつ 円滑に治験を実施するため、「治験のあり方に関する検討会」において治験を含む臨床研 究実施体制の整備について制度的な側面から必要な方策について検討を進めているとい うことでありますし、また治験・承認審査等の規制においても、一般の医薬品と異なっ たワクチンの特性を踏まえた円滑なシステムを構築することにより、ワクチンとして求 められる有効性、安全性を確認する一方で、科学的な評価の視点から製品の実用化が進 行されるような行政、そういうものが求められるということであります。  さらに次のページ、「新規ワクチンの開発においては」というところがありますが、臨 床試験で有効性、安全性が検証された者の数と市販後の実際の使用者数には大きな乖離 があるため、頻度の低い副反応等についてはその有効性、安全性の確保のために、特に 市販初期の段階では注意が必要である。こういう点もしっかりモニタリングしなければ いけないということになります。それから感染症以外のワクチンの需要と開発もこのワ クチンの討議でございましたので、今後は必要があるということもここで述べてありま す。  そこまでが大体この会議の大きなあらすじでありますが、次は資料Cを見ていただき たいと思います。あとの細かいところは読んでいただくこととしまして、資料Cの下の 方にアクションプランというのがございます。この産業ビジョンのところでは、検討会 をしてこの会議でもいろいろ討議をされましたが、これだけで終わったのでは今回指摘 された点は、それで終わってしまうので、今後こういうような推進委員会を開いていた だいて、その推進委員会でどういうことをやっていただくか、ここで申し上げたことが 成功していくかということについて、会議としてアクションプランをつくりました。1 〜7までございますので、読んでいただきたいと思います。  次のページの2をご覧ください。関係企業の戦略的連携による臨床開発力の強化とい うことが非常に大切であると述べております。関係企業の戦略的連携ということは、こ れは国内の問題だけでなく、国際的にも競争力があるような、だから国際的に手を結ぶ ことも必要だという意味が含まれております。  さらに研究開発企業との連携によるニーズに合った新ワクチンの臨床開発力の強化と 開発の効率化を図ることが必要でありますし、新ワクチンによる競争力の強化、新しい ワクチンをつくってそれを収益構造の転換によって事業の安定化と国内製造体制を確保 をしていくということも企業にとっては大事であります。外国企業との協力の促進、こ れをシーズの導入とか、外国市場への展開とありますが、こういうことをやっていかな いと、先ほどのお金の比較で見ても日本の企業はこれではつぶされるということを心配 しているわけでございます。  さらに5にまいりまして、ワクチンの薬事承認・実用化に向けた制度基盤の整備とい うことがあります。先ほどのワクチンビジョンの資料Dの、後ろの方の52ページ、そこ を見ていただきますと、ワクチンの開発に係るガイドライン等の日米欧の3極比較とい うのが書いてあります。ここで言っております(1)のワクチンの治験・承認審査に有 用な治験実施に係るガイドラインというものがヨーロッパ・アメリカとありますが、日 本にはこれが今のところありません。原案が少しずつできつつあるところですが、今後 このことについては検討が始まるようでございますが、52ページに書いてありますガイ ドラインの状況と比較しながら、日本ではぜひこういうものをつくっていただかないと 具合が悪いと思います。  さらに(2)としては、治験相談、審査に係る体制の質・量両面にわたる一層の充実 がないと時間がかかってしょうがないという話が出てくることになります。  さらに6番としまして、需給安定化のための調整機能の整備ということがございます。 感染症疫学的なデータに基づく需要予測と需給調整機能の確保ということでございます。 さらに需給安定化のための必要量を一定程度予備的に生産・確保するというようなこと が、今までインフルエンザでは多少そういうことがやられてきておりますが、これを幅 広く余裕を持って支えていくというようなことがやられないと、今後ワクチンの発展が ないだろうというようなことも考えられております。  最後に、「今後の対応」というところでありますが、こういう会を開いていただきまし て、この中で指摘しましたことを特に広くとらえてくださって、ぜひ現役の先生方で今 後の改善をしっかりつくっていただくということが、産業ビジョンをつくりました委員 会としてのお願いでございます。どうぞ今後ともこの議論の発展をしていただきますよ う、よろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。 ○倉田座長  神谷先生、ありがとうございました。それではただいまの神谷先生の産業ビジョンの 御報告につきまして何か御質問、あるいは御意見はございますか。この会に参加された 先生方がこの中にも半分以上いらっしゃいますので、いろいろ議論があれば医療の観点 からお話が聞けると思いますが、いかがでしょうか。 ○橋本委員  ビジョン案ができてから大分時間がたっているんですが、その間、パブリックコメン トとかを取ったりした結果、ビジョン案の方から内容的に大きく変わったようなところ はあるんでしょうか。 ○倉田座長  これは事務局の方がいいでしょうかね。 ○植村血液対策企画官  では事務局から御説明をさせていただきます。本文の趣旨、あるいはアクションプラ ンの内容などは去年の6月に案でお示ししたもの、基本的にそのままでございます。そ の後、パブリックコメントの募集などをいたしましたのと、それからビジョンの確定と ともにこの委員会を立ち上げる準備をしまして、その間にデータ的な部分、背景的なデ ータのアップデートをさせていただいて今日の資料になっておりますが、アップデート されたデータの内容も含めまして基本的なスタンスや趣旨は去年の6月案でまとめた趣 旨のものでございます。 ○倉田座長  よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。何かございますか。なければ、この関連 の話がありますから、それが終わったところでお伺いすることにしまして、次に米国A CIPの活動報告ということで、感染研の感染症情報センターの岡部さんからお願いし ます。 ○岡部委員  感染研の岡部です。お手元に資料Eとしてありますが、かなりこれからご紹介するス ライドの内容は入れかえてあります。というのは、最近ACIPに私どもの多屋が出席 して、新たな情報に入れ変えたためです。お手元の資料とは全部一緒ではないというこ とをご了承下さい。  アメリカのシステムがすべていいというわけではないと思いますが、一つのお手本に なるのはこのACIP(米国Advisory Committee on Immunization Practices:米国予 防接種の実施に関する諮問委員会)と思いますので、その御紹介をさせていただきたい と思います。これは毎年3回定期的に行われており、これまでに私と感染症情報センタ ーの多屋、それから横浜市立大学の横田教授、札幌市立大学の富樫教授らが2回にわた って参加しております。これは厚生労働省の科学研究費補助金で、「予防接種で予防可能 な疾患の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究」という研究班(主任研究者・ 岡部)の研究費によっての参加であります。  アメリカは米国連邦政府と州政府の役割で非常に州の役割の強いところですが、予防 接種に関しても連邦政府と州政府で少し役割が違っています。連邦政府は主なプランを 立てますが、ここにはCDCが技術的に関与します。製造承認に係るものでFDA(食品 医薬品局)が認可をします。連邦法にはNational Childhood Vaccine Injury Compensation Act、Vaccine for Children Programといったようなものが幾つかこの連 邦法の中にあって、州政府はそれで実際にワクチンを配分し、学校法との関連でワクチ ンを行い、実際の現場のことを行っております。連邦で決めたことが必ずしも全部の州 がそのとおりに従って取り組んでいるわけではなくて、一部異なった方法をとるような ことも実際にはあるようです。  スライドは連邦政府におけるワクチン関連の諮問委員会ですが、ワクチン並びに生物 製剤に関する諮問委員会、これはFDAのものです。保健社会福祉省の方で予防接種諮 問委員会、米国小児予防接種に関する諮問委員会、そして市民団体と幾つかのものがあ り、CDC(疾病管理予防センター)が予防接種の実施に関する諮問委員会、これから 御紹介するACIPというものを組織しております。このACIPが、総合的にかなり 大きい役割を果たしているようです。  CDCの中にはNational Immunization Program(NIP)という部門があり、そこ がこのACIPの事務局となっていろいろな作業をやっております。このNIPという 部門は、ワクチンで予防可能な疾患についての戦略を練るところと言っていいかと思い ますが、予防接種率に関する検討、予防接種関連のいろいろな分野との人材交流、そし てこれはサイエンスに基づいてやるので、予防接種に関する研究とその発展を行います。 そしてワクチン接種システムの向上、ワクチン実施時の安全性を最大限に確保するため の研究なども行っています。そしてミッションを達成するための作業環境を整備・維持 するといったようなことが、このNIPの一つのミッションゴールと戦略であるとして 掲げられております。  このNIPという部署は広く予防接種に関することを各ユニットでやっているわけで すが、具体的には感染症の予防接種で防げる疾患の感染症流行調査、ワクチン接種に関 するサーベイランス、接種率の調査、そして予防接種プログラムを実際に策定し、その 実行と改善を行っています。そのほかにもワクチン供給体制の問題であるとか、実施の 調整であるとか、その後の安全性効果の調査、非常に多岐の実務と研究を行っておりま す。その中にはもちろん情報提供といったことがあり、CDC、NIPの出すパンフレ ットや冊子が米国小児科学会のものと一緒になって、予防接種分野に相当な影響力を及 ぼしています。もちろん、そのためには日ごろから中長期的プランの策定もやりますし、 ここが直接ワクチンの開発をやるわけではありませんが、どういうようなものが必要か といったようなことについての議論が常に行われております。  続いてNIPが事務局作業をしているACIP、予防接種の実施に関する諮問委員会、 についてご説明します。ACIPは、保健社会福祉省、日本で言えば厚生労働省になる と思いますが、ここの長と、CDCに対して助言を行うというような立場にある組織で、 保健社会福祉省やCDCから独立した機関となっています。ACIPには15人の構成員 がいて、ここがいろいろな討議をして最終決定をするわけですが、そのほかに関連の行 政担当者、いろいろな協力機関、ワクチンメーカーなどからの代表者、NIPのスタッ フ、あるいはNCID、ここは感染症のサーベイランスなどをやっているところですが、 そこのスタッフが議論に参加します。スライドには書いてありませんが、議論は公開で すので、一般の方、メディアの方等々も含めて議論に参加することができます。しかし 周囲は議論には加わるんですが、最終的な投票権は構成員15人にあり、ここで決定が行 われます。委員会は、実に年に3回定期会議を開催しています。これの予算は保健社会 福祉省、つまり連邦政府から出てくるんですが、実際の運営はこのNIPがやっている ということです。  スライドはACIPの位置づけを示したものです。米国における予防接種政策の立 案・管理・普及・調整はCDCがやるわけですが、NIPはCDCの予防接種担当部門 として考えられています。そしてNIPは事務局としてつくった予防接種プログラムに ついてはいろいろな分野の専門家との協議を行います、これがACIPになるわけです が、ACIPでの議論を経て実施されることになります。ACIPはリコメンデーショ ンを連邦政府宛に出すわけですが、今までこのACIPの決めたことを連邦政府がリジ ェクトしたのは天然痘ワクチンの取り扱いに関して1回か2回ぐらいだそうです。なお 参加者は各分野の専門家で学会の代表もいるわけですが、それはそれぞれの有識者とい うような形で参加しているそうです。  実際の業務をスライドに示してあります。ワーキンググループが設置され、そこが細 部にわたって調査・方針に関するオプションの準備を行って、草案の策定をしています。 その結果でてきたものについては、MMWR(CDC発行の Mortality and Morbidity Weekly Report)に定期的に、あるいはアドホックに掲載されます。Vaccine Preventable Disease、Vaccine for Children Programとスライドに書いてありますが、これは小児 予防接種プログラムそのものの策定を行う、といったようなことが具体的な業務として 書かれております。  この委員会の構成は先ほどもお示ししましたが、15人の投票権のあるメンバーは委員 長が1、そして委員長以外の構成員が14名で民間代表となります。官の代表は執行行 政官が1名、そのほか8名の行政担当者、そのほかに協力機関、これは学会等になるわ けですが、あるいは企業の代表者等も含めてこれが25名。全部で49名、約50名ですが、 最終的な決議はこの投票権のある15名で行われます。ここの行政担当者というのはちょ っとここに書いてありますが、インディアン健康局、保健資源事業局、社会福祉保険・ 低所得者保険局、食品医薬品局、国防総省、国家予防接種プログラム、NIH、在郷軍 人局といったような方がこのリエゾンとなっています。  会議の実際はここに委員長が座り、それを取り囲むような投票権のあるメンバー、そ してその周辺にリエゾンの方がいっぱいいます。オブザーバーとして、ここは約200名 と書いてありますが、オブザーバー参加は事務局に依頼して頼めば原則としてオープン であると言っておられました。したがって、一般の民間の方も、メディアの方も、それ からアメリカ合衆国に近い国の方も出席しています。最近では日本がオブザーバーとい うような形で、これはウェルカムであるとして、参加をときどきさせてもらっています。  スライドは2007年のワクチンスケジュールでありますが、毎年々更新されて新し いものにしています。これは実際にNIPが計画したものについてACIPが討議し、 そして米国小児科学会あるいは関連学会がこの議論に加わって作り上げていくというよ うな形になっています。  この間、2007年の2月にこのACIPが開かれたのですが、これには感染研の多屋と 札幌市立大学の富樫教授が参加しました。そのときの話題を少しスライドに書いてあり ますが。例えばA型肝炎曝露予防にA型肝炎ワクチンを用いることに関する検討、ガン マグロブリン製剤との比較検討、これには今後のディスカッションが必要と言った結論 であったり、ロタワクチンの腸重積が問題になったけれど、現在ロタワクチンは再開さ れ、その副反応に関する詳細な検討をここでやり、腸重積との関連はなかったとするプ レゼンテーションが行われています。ときどき話題になるチメロサールの問題も再び今 回は討議の対象になっており、自閉症の子供を持つ母親からのコメントもあったとあり ます。こういう方々も発言の機会があるということになります。  インフルエンザについては疫学・薬剤体制、ワクチンの干渉対象、あるいはパンデミ ックインフルエンザワクチンの優先順位、それから開発がずっと続けられている生イン フルエンザワクチンに関する検討、その他インフルエンザに関連するプレゼンテーショ ンがここにいろいろ述べられております。  米国では生後2ないし4カ月にDPT、あるいはIPV、Hib、肺炎球菌、B型肝 炎ワクチンが同時接種として行われていること、5種混合ワクチンに関する発表、ワク チンの副反応に関するシステムの報告、などいろいろなことに関する討議が行われます。  スライドは成人の予防接種に関する一覧表です。ヒューマンパピロマウイルスの3ド ーシスが行われています。これに関して子宮頸がんの減少その効果などについて発表さ れています。エージェンシーアップデートというところではいろいろなエージェンシー がここでプレゼンテーションをしております。  これはこの間、参加した2名(富樫、多屋)の感想ですが、ACIPに出席して。米 国では小児への予防接種はもちろん、例えば帯状疱疹の予防ワクチンであるとか、子宮 頸がん予防ワクチン等、成人に関する話題が次第に大きくなってきているということ。 ACIPは年3回定期的に開催されているんですが、既に3年先まで日程が決められて いて、それに対して定期的にきちんと準備を行い、むしろ3年先のことを考えながらや っているというようなことが印象深かった、とのことでした。  ACIPの開催に当たっては各疾患ワクチンに関して、CDCを中心にして十数名の 専門家からなるワーキンググループがつくられて、そこで数カ月あるいは年にわたって 多くのエビデンスが収集され、研究が行われ十分検討なされた上でここでのプレゼンテ ーションがなされています。  その結果、例えばあるものに対しては、あと1年間の研究が必要であるといったよう なリコメンデーションが行われたり、これは直ちに現実に向けて動くべきであるという ようなリコメンデーションが行われます。これらは公開の場でそういうディスカッショ ンが行われて、最終的には先ほど申し上げましたボーティングメンバーが採決を行って います。ACIPで決められた内容がすべて国の決定になるわけではないんですが、先 ほども申し上げましたように、国はここでの意見を採用しようという姿勢にあるといえ ます。事務局作業としては膨大だというように思いますが、あらかじめいろいろなこと を定期的に討議するものであって、その場その場で起きた問題について初めて委員会を 構成して招集するというようなものではない、ということが言えると思います。  これから私たちは国内でどういうようなことをなすべきかということをスライドにま とめてありますが、厚生労働省、メーカー、実際の臨床の立場の人が一堂に集まって、 少し長期的にものを眺め議論していくということが必要ではないかということが言える と思います。それが結局は安全なワクチンの推進と感染症の対策に寄与するのではない かと考えます。それぞれの立場でいろいろなことを持ち寄るわけですが、これが一堂に 会して議論を続けることは意義深いことと思います。  本日はアメリカのACIPの紹介をしましたが、これに類似した組織や動きは日本は 今のところないわけで、こういうようなものの充実が今後必要ではないかと考えます。 加えて言えば、審査機構の改善・充実、感染研の充実も必要です。研究としての医薬基 盤研の充実等々も必要です。そしていろいろな分野の人が一堂に会する場があるという ことは、結局は国民の健康維持、あるいは感染症対策に役立つのではないかというよう に思います。以上です。 ○倉田座長  ありがとうございました。ただいまの岡部委員の説明に対して何か御質問がありまし たらどうぞ。これはCDCのImmunizationのプログラムは確か360〜400名ぐらいおり ますよね。予算は確か、7〜8年前で850億円ぐらいあったと思いますが。ですから、 こういうことを何か一つやるにも徹底して数人の人がやるということは可能になるわけ ですよね。情報センターはいかがですか。 ○岡部委員  今、インフルエンザの問題なんかもなっていますが、そういうのを含めてスタッフが 20数名であります。 ○倉田座長   でも、それはワクチン専門じゃないでしょう。 ○岡部委員  そうです。感染症サーベイランスすべてへの対応です。 ○倉田座長  そういうことで、かなりあちこちと大きな差はありますが、何かこれについて感想で も、あるいは御意見でも何でもいいんですが、ありましたらぜひ。 ○松本委員  済みません、一つだけお聞きしたいんですが、先ほどオブザーバー200名という話が ありましたけれど、私の聞いたところオブザーバー200名の方もその会議で意見を言え るような状況だと聞いているんですが、いかがですか。 ○岡部委員  それはそのときに「はい」と言って手を挙げればいいのと、それからあらかじめ自分 はこういう意見を言うということで、意見を言う場があります。相当委員長がうまくハ ンドリングをしなければ難しいと思いますが、それこそアドホックに親の方が、自分は こういう副作用があったのでこういうものを調査してほしいというようなものがあった り、一方ではある病気にかかった方がこれについて何とかしてほしいというような、一 般の方の発言も当然許されております。 ○倉田座長   ほかにいかがですか。 ○竹中委員  先生の最後のスライドに、感染症研究所と基盤研の充実が出ていましたが、アメリカ ではこの2つに対応するような研究基盤は、どこでしょうか。 ○岡部委員  まずそれはFDA、CDC、それからNIH、総合してやっていると思いますが、ワ クチンということを中心にして一番重きをやっているのはこのCDCの中のNIPとい うところが中心的な役割をやっています。 ○倉田座長  研究という意味ではNIHの中に2,000人ぐらいいますから、その中でワクチンをや っている人はかなりいますよね。ほかにいかがですか。 ○橋本委員   こういうのを日本でつくろうとすると、審議会のような形になるんですかね。どうい うものにすればこういう機能が果たせるのかというのが、ちょっと全然イメージができ ないので行政の方かどなたかに教えていただければと思います。 ○倉田座長  大変いい意見が出ましたから、いかがでしょうか。 ○植村血液対策企画官  それでは事務局からですが、昨年、一昨年来、ワクチンビジョンを議論した際にもこ ういう機能、アメリカならアメリカのこういう機能をどう日本で実現する、あるいはど ういう姿なら日本で実現できるのかというようなことも議論としてあり、それで日本版 ACIPのような機能をどう持っていったらいいかということが一つの大きな課題とし てビジョンの中で議論されたところでございます。そういう意味から、ビジョンの中に アクションプランをつくるとともに、フォローする委員会組織を持とうというようなこ とが、まず次のステップとしてそういう場を持とうということが討議されて、それで今 日のこういう委員会の場になってございます。今後もそういう課題を掘り下げていく中 で、日本としてはどういう進め方が考えられるのかという議論も深まっていくというよ うに、ビジョンの際からずっと議論になったところでございます。 ○倉田座長   よろしいですか。 ○関血液対策課長  ちょっと先ほどの議論の追加ですが、資料の方で申し上げますと、先ほど神谷先生に 説明していただいた資料Dの中で、参考資料編の47ページをご覧いただきますと、関連 して「米国におけるワクチン研究開発の現状」という資料がございまして、例えば先ほ どちょっと議論になりましたNIHの中にあるNIAIDの状況など、47ページの下か ら5行目、6行目ぐらいのところに若干の記述がございます。御参考までにこういうと ころもご覧いただければと思います。 ○倉田座長  ありがとうございました。おわかりですか。机の上に配られたものの、47ページの下 の方です。ほかにいかがですか。 ○三宅結核感染症課長  健康局の結核感染症課ですけれど、先ほどACIPの日本版としてどういうようなこ とが考えられるかというお尋ねですが、一つは審議会というような形でやるというのも 考えられるかと思いますが、もう一つは現在、健康局の方で「予防接種のあり方に関す る検討会」というのも発しております。ここで昨年もMMRの関係とかいろいろ御議論 いただいて、こういうように変えた方がよかろうと。これは局長の諮問機関という形で やっております。どういうような形が行政としていいのか、あるいは民間の方々にもい ろいろ広く参加していただくというような形で、国民的なやり方という持ち方というの もあるかと思いますが、今後の検討課題だというように認識しております。 ○倉田座長  今までの足かけ3年、それでこういう立派な報告書ができてきて、いろいろな問題が 浮き彫りになって、今、課長が言われたように、やるなら速やかにやらないと、またこ れは1年、2年先に行くと過去の話のようになってしまいますので、そこはまた皆さん の貴重な御意見を集約して事務局の方でいろいろ問題になっていることをきちんと立ち 上げていただければということになると思いますが。それにつきましても、この資料を 帰りましてよく読んでいただいてお考えいただくことが大事だと思います。ほかに何か 御質問、あるいは御意見はございますか。よろしいですか。  それではまた後で御質問の機会をつくりますが、次に議題3の「危機管理ワクチンの 開発状況と技術的課題について」、事務局から説明をお願いします。 ○古賀血液対策課長補佐  はい、それでは御説明します。この危機管理ワクチンにつきまして、先ほど来の御議 論の中にもありますように、今後、新興感染症が起こっていく中で、採算の見込みが難 しいワクチンについてどのようにサポートしていくかということで、ワクチン産業ビジ ョン、この資料Dの中の44ページの中にもアクションプランの一つとして、研究開発、 生産に対する支援というものが掲げられているところでございます。  この部分につきまして、昨年からの動きについて御報告させていただきたいという趣 旨でございまして、参考資料1−1としておつけしておりますのが、「希少疾病用医薬品 の指定基準の取扱いについて」と題した資料でございます。こちらは現在、医薬品及び 医療機器におきまして患者数の少ない難病を対象とするものにつきましては、その必要 性が高いにもかかわらず市場性・採算性が低いということから、研究開発については一 定の支援を行う必要があるということで位置づけられているわけでございますが、その 中に昨年3月31日付でございますが、この機能1・2とあります、感染性の疾病の予防 の用途に用いる医薬品として、国内ではまれだが海外で発生している感染性の病気の予 防に用いるワクチンであること。また、遺伝子の突然変異等により新たに発生する、ま たは再興する可能性が否定できない感染性の疾病であって、一たん発生すれば国民の生 命・健康に重大な影響を与える恐れのあるもの。例えば新型インフルエンザ、そういう ものを念頭に置いたワクチンについても「希少疾病用医薬品」と位置づけて、その支援 措置を講じるということが明確にされたというものでございます。  それを受けまして、資料1−2でございますが、昨年6月9日に、こちらに示されて おります国内のインフルエンザ製造メーカー4社から、新型インフルエンザ(H5N1 型)の予防としてインフルエンザワクチンが希少疾病用医薬品に指定されたということ でございます。  この希少疾病用医薬品の実施におきましては、資料1−3にお示ししておりますが、 この新型インフルエンザワクチンの臨床試験を実施するに当たりまして、日本医師会の 治験ネットワークの御協力を得まして、4社のうち具体的には阪大微生物病研究会及び 北里研究所の2社のワクチンにつきまして、この医師主導治験という体制によりまして 臨床試験が実施されてきたというところでございます。  そして、これらの臨床試験を経まして、最後に資料1−4でございますが、本年2月 1日付のこれは開発4社からの記者発表資料でございますが、この「新型インフルエン ザワクチンH5N1型の開発状況に関するお知らせ」として、最初の段落の最後の2行 ですが、「その成績等を基に本年1月31日までに3所社が沈降インフルエンザワクチン の製造販売承認姿勢を行うことになった」ということでございます。  それで、ページをおめくりいただきまして、最後の「2.国の支援」でございますが、 新型インフルエンザの開発におきましては、オーファンドラッグとしての指定を受けた ことによりまして、国による開発研究費の一部負担であるとか、それから医薬品医療機 器総合機構におきます優先的な治験相談などの事前相談を、6回ほど指定後に行ったと いうことを聞いておりますが、そういうサポートなどの優遇措置をうけ承認申請に至っ たということでございます。  アクションプランに示されました、最も必要なワクチンに対する支援ということで、 こういう動きがあったことを御報告させていただくということでございます。以上でご ざいます。 ○倉田座長  ありがとうございました。具体的な目の前の問題が飛び出してきましたが、今の御説 明で何か御質問あるいは御意見はございますか。 ○橋本委員  優先的な治験相談で事前相談が6回というお話が出ましたが、これは事前相談と治験 相談の全部を合わせてミーティングが6回あったという趣旨でよろしいんですか。 ○古賀血液対策課長補佐  全部で6回と聞いています。また、4社ありますが、この4社が一堂に会する場合と、 各個別のものとで計6回というように聞いております。 ○橋本委員  非常にこのインフルエンザワクチンの開発はすごいスピーディに行ったということで すが、すべてのワクチンで治験相談とかそういうのを6回ぐらいやっていかないと、や はりこれぐらいのスピードで開発できないということになると、この前の総合機構が出 されていた計画だと2011年でやっと1成分当たりに6回という数字で、要は大分先にな らないとワクチンというのがスムーズに出て行くような環境にはなっていかないのかと 思うんですが、そういうあたりで例えばもうちょっとワクチンに関してスムーズになっ ていくような治験相談体制のさらなる充実のようなことを考えておられるのかどうか、 そのあたりをお伺いしたいと思います。 ○倉田座長  事務局はいかがですか。 ○植村血液対策企画官  先ほどビジョンの御紹介の中でも、神谷先生の方から触れていただきましたが、ちょ うどビジョンのテキストで申し上げますと、先ほどの危機管理上必要なワクチンの支援 の話が44ページにございますが、その反対側の45ページに「薬事制度等における取組」 ということで、その中ほどの(3)のところに治験相談、承認審査においての審査体制 の質と量をともに一層の充実を図るということが、これはもうビジョンの議論のときか ら述べられているとともに、またこういう経験を積み重ねていくことによって先ほども ございましたように、(1)にもございますが、ガイドラインの作成、普及等を行ってい くというようなことが進んでまいりますと、治験相談の回数という問題よりはむしろ方 向性なりも明らかになって進んでいくだろうと。この辺は薬事の審査後におけます体制 の整備と環境が進んでいくということは、ビジョンの中でも御議論されて今日に反映さ れたところでございます。 ○橋本委員  ガイドラインの作成がどれぐらいのスケジュールで出てくるのかというがちょっとわ からない状況ですが、例えば今回これだけ治験相談をやって当局とメーカーの方とがデ ィスカッションをした結果、これだけ早いスピードで申請まで持ってこられたという例 であるわけですから、例えば企業秘密に属する部分というのはもちろんあるので、そう いうところはともかくとして、例えばテーマとしてこういうことを治験相談の中で議論 していったんだということがある程度開示されてくると、ほかのメーカーにとっても非 常に参考になるような部分が出てくるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○倉田座長  その点で開示していくようなお話というのがあればお願いします。 ○植村血液対策企画官  審査当局の審査という部分の厳正さ、公平さというものがございます。また審査の場 合には審査の結果が審査報告書という形で公開されるというところがございますが、も う一つちょうどインフルエンザの開発にかかわっております4社がほぼ日本の国内での 企業の主なメンバーが皆さん揃っておられるようなところもありまして、そういう意味 では個々における経験なり蓄積というようなものはワクチン産業全体にもフィードバッ クするチャンスは大いにあるのではないかというところで進んでいるところかと思いま す。審査自体は一定のルールに基づいての対応で、その報告書なりの公表という形をと らせていただく。これはどうしても公平さ、公正さというところからやむを得ないとこ ろでございますが、個別企業とのやり取りは先ほど業者共同で相談するというようなと ころもございましたが、そういうやり取りの中でこれは単にインフルエンザだけの問題 に限らず、いろいろな部分への波及効果は期待されるのではないかというように考えて おります。 ○橋本委員   4社の中でそのノウハウが非常に蓄積できたという部分があると思いますが、もう一 つやっぱり今は大学とかのシーズを出していこうというときに、新しくできたベンチャ ー企業が主体となって開発していくというケースが出てくるのではないかと思います。 そういうことを考えた場合に、既存のメーカーである4社だけにノウハウがたまってい いよというのではなく、そういうベンチャー企業がスムーズに開発していけるようなガ イドラインの整備の考え方であるとか、手続きなどにしてもベンチャー企業から見たら 全くわからない部分が山ほどあると思いますので、そういうあたりの手続きの明確化と いうことも十分に考えていただきたいなと思います。 ○倉田座長   その点はいかがですか。事務局、手続きその他の公開ということですが、総合機構の 方で非常にわかりにくいようなことになっていますか。 ○植村血液対策企画官  できるだけ審査についてもガイドライン、手続き等を公にした形で、例えばウェブ上 いろいろなものの情報が取れるような体制も進んできているかと思いますが。またワク チンの開発ということについて言えば、新型インフルエンザワクチンの開発というのは 非常に貴重な経験をしながらというところもございます。そういう経験を積み重ねなが ら御指摘のような点の部分も今後は走りながら、やりながら考えていくテーマの一つで はないかと。貴重な御意見をどうもありがとうございます。 ○倉田座長   ありがとうございました。ほかに何かございますか。 ○神谷顧問  今の新型ワクチンは私たちが日本医師会の治験センターを中心としましてフェーズII /IIIの治験をやりました。それは阪大微研で、今の資料1−2にそれぞれの会社の名前 が載っておりますが、私たちがやりましたのは阪大微研のワクチンと北里研究所のワク チンで、接種方法としては片方のグループは筋注、片方のグループは皮下注という形で やりまして、一応データが、ここにも1−4の資料の2枚目ですが、(2)のところで「有 効性について第I相試験で得られた成績と同様の傾向を示す成績が得られており」と書 いてありますが、まだ今これは機構での製造審査が行われている最中なので、これ以上 細かいことは余り申し上げられないんですけれど、私たちの臨床の方から見たデータと しては十分に使用に耐えられるであろうと思われるワクチンができております。あとは 今後は使用方法とか、使用の量とかが機構の審査によって決まってきますので、もうし ばらくは、もう数カ月はかかると思いますが、それによって報告するということになる と思います。安全性においてはフェーズIと同じように全く安全なワクチンですから、 これが世に出てくればたとえウイルスが変異した場合にも製造ラインは同じライン、同 じ方法で、ウイルスだけ変えてやるということができます。しかし、きょう新型ウイル スが見つかったからといって、明日からワクチンができるというわけではないので、や はりその間のつなぎはほかのことで必要だというような状況にあるというように理解し ております。 ○竹中委員  ワクチンの治験の迅速化について教えていただきたい。 ○神谷顧問  それは迅速化と言いましても、まずは治験に参加していただく方がきちんと集まらな ければいけないということがありまして、これは大人のレベルで、しかも一般の方もも ちろん入っておられるんですけれど、中心は医療従事者の方が重要なメンバーになるだ ろうということで、そういう医療従事者の方を中心にしてやりましたので、まず対象が 集まるのが早かったということ。それから医師会の治験センターで相当人数を抱えて、 アルバイトの方もたくさん雇って、皆本当に夜中までかかって働いて何とか半年ちょっ とできるというようなことですが、安全性ということを片方では考えながらやっていか なければならないので、臨床治験というのはそれほど簡略化するわけにはいかないとい う部分があります。したがって、時間的にスピードアップをするといっても、やはり1 年というのは一つの大体かかる期間というように考えられると思いますが、このワクチ ンについては特に国も危機管理で急いでいるということもありまして、何とか半年でと 言われて、それを私の立場としても大変でしたが、皆さんが大変努力をしてくださった ということだと思います。だけど医師主導治験というのは、以前に比べたら少しスピー ドは早くできるかもしれないと思いますが、労力はかなりかかるということも覚えてお いていただきたいと思います。 ○倉田座長  ありがとうございました。ほかに何かありますか。  では、なければ今までの議題になった点について、先ほど飛ばしてきたことについて もよろしいんですか、何か御意見あるいは御質問がありましたらどうぞ。 ○岩本委員  一つ教えていただきたいんですが、岡部先生のスライドの資料の6番、アメリカの定 期接種の表があるんですが、日本より定期接種になっているものが多いようです。アメ リカの公的予防接種への補助というのは日本と同じようだと考えてよろしいんでしょう か。 ○岡部委員  スケジュールはこういうように決められているという一覧表が、その資料です。費用 に関しては、聞いているのではワクチンの購入のお金という予算もCDCが持っている ので、それを州政府に配分して州がそれをもって実施するというようなやり方になって いるとのことです。個人負担ということでは、そういう意味ではこの表で決められてい るようなものはかからないというようにしているようです。 ○岩本委員  わかりました。このワクチンビジョンの13ページを見るとインフルエンザワクチンの 比率というのがものすごく大きいということと、現状から、かなりワクチン開発に議論 が行くのは当たり前のことだと思います。一方で、日本ではさまざまな努力によってA 型、B型肝炎が減少している反面、免疫のない人たちが増えています。そういうことに 対して今後日本は、A型やB型の肝炎ワクチンなどを国として補助していきながら、す なわちワクチンの供給と国の補助という側面で産業を活性化するようなことを考えてい くのか、それとも国民に対して、少なくなった病気に対してはもう政府補助ができない から自分たちのお金でワクチンを射ちなさいという方向で行くのか、その辺のことは非 常に大事なことだと思います。既にあるワクチンをどのようにうまく使うのかという面 からの産業ビジョンも非常に大事だと思いますが。 ○倉田座長   その辺は事務局はいかがですか。何か方針はありますか。 ○関血液対策課長  まさにそういうことを検討していく仕組みというか、検討をすることは重要かと思い ますが、先ほど結核感染症課長の方からもお話があった予防接種を実際にしていく上で 制度上どう位置づけながらやっていくかという話との接点になると思います。ですから、 そういうことをどのように議論していくのかというあたりもこれからの展開の中では重 要な課題になると思っております。  それから、先ほどの岩本先生の御質問のアメリカでの状況ということで、これは資料 に結構いろいろなことが書いてございまして、先ほどもちょっと御紹介しましたが、先 ほどの岩本先生の御質問に関しては厚い方の資料の48ページをご覧いただきますと、米 国の状況として、下から1/4ぐらいのところに、岡部先生からお答えしていただいた 「CDCが購入して」という部分ですが、Vaccine for Childrenの方では、ものとして は連邦政府が買って提供するという仕組みについて、予算規模が2003年で1千億円相当 であるということも含めて御紹介してございます。こういうデータもまた随時アップデ ートしていきながら御紹介しておきたいと思いますが、また改めて資料のところも含め て後日ご覧いただければと思います。 ○倉田座長  ありがとうございました。岩本先生、よろしいですか。 ○岩本委員  はい。 ○倉田座長  ほかに何かございますか。どうぞ。 ○庵原委員  先ほどの岩本先生のと関係があるんですが、ちょっと岡部先生に御質問をしたいんで すが。ACIPの先ほどのスケジュールもそうなんですが、キャッチアップというのを 必ず入れていますよね。要するにその年齢で打てない人にワクチンを打っていくと。例 えばパピローマの場合ですと11〜12歳になっているのが、20歳ぐらいだと「ちゃんと 打ちなさい」というように、そのときのキャッチアップのその費用も政府が面倒をみる という形ですか。いわゆるスケジュールのところだけを政府が面倒をみているのか、キ ャッチアップの費用は一体どこが負担する形になっているんですか。日本だと定期接種 の年齢を超えてしまうと、任意で親が負担しなさいとか、自分で負担しなさいというこ とに。それでアメリカはキャッチアップをリコメンドしている以上は、そこはだれが負 担するのか。リコメンドしているということは政府が負担しているということに、そう いうことですか。その辺の確認ですが。 ○松本委員  少しわかるところだけお話をさせていただきますが。ヒューマンパピローマウイルス ワクチンに関してはいろいろな仕組みが今は考えられております。まずACIPからリコメ ンデーションが出まして、州政府がお金を出している場合もありますし、先ほどのよう に11歳、12歳はVFCと言いまして、子供さんに対する補助の団体がありまして、そ こから出す。あるいは州によっては州からお金を出したり、また民間保険からも出して います。とにかくこのACIPでリコメンデーションが出ますと、民間保険でも償還プ ログラムに入れやすくなるような仕組みになっていると聞いております。ただ、州によ ってはACIPからリコメンドが出てもお金を出す・出さないという議論は今あるのは 確かです。どれぐらいお金を出すか、うちは全部出すけど、うちの州は半分しか出さな いとか、そういう議論もあるそうです。このように色々なワクチン接種費用の償還の仕 組みがあるというように聞いております。 ○庵原委員  ということは、日本のように定期の枠を超えたらすべて任意で負担しなさいという、 そういう考え方はしていないということですね。 ○松本委員  そうですね。ここでリコメンドされた以上は。 ○庵原委員  リコメンドされた以上は何らかの金銭的なバックアップを絶えず考えていく必要があ るということ、そういうだけの縛りがあるということですね。このACIPの勧告とい うことは。 ○松本委員  そうですね。義務なのかどうかはちょっとそこがまた議論になるんですが、ただ、各 州あるいは各グループが普及するためにいろいろと努力をするというのは確かでありま す。 ○岡部委員  ありがとうございます。実際のワクチンの費用については今の松本委員の御説明のと おりだと思いますが、定期接種というものの考え方が全然違って、日本の場合には予防 接種法という法律で決められているからその枠組みの中でやると。そこの決まりから外 れたものは法律外の接種であるというのが基本的な考え方だと思いますが、このアメリ カのああいうスケジュールというのは一つの方式を決めてあるのであって、この間にや らなければいけませんよということでは逆にないわけで、むしろワクチンを接種してい なかったら学校に入れないとかそちらの方のレギュレーションで行っており、ワクチン をこの期間にすべてやるというようにはやっていないと思います。米国小児科学会なん かはこのスケジュールに従ってなるべくある一定の期間にできるようにするというよう な仕組みが一方であるので、その辺は日本の定期接種という考え方とは全く違うんじゃ ないかと思うんですが。 ○倉田座長   さらに詳細な点はまた乗りかかった船ですから、岡部先生、調べてください。それに 日本の要請書を改正する方向になるかもしれないし。よろしくお願いします。ほかに何 かございますか。 ○山口委員  やはり質問ですが、先ほど神谷先生が紹介された治験ですが、非常にユニークな方法 で今までにない治験の方法が進んだというように思って、短い期間でクオリティの高い 治験ができたというように非常に評価したいと思いますが、これはオーファンドラッグ、 主にされたのは日本医師会の治験センターですね。これからはオーファンドラッグとい うこういうものを、緊急を要するもののみされるのか、これからどうなんですか。いろ いろなものに対して日本医師会が医師主導型のワクチンの治験というのをやるようなこ とを考えておられるんでしょうか。 ○伊藤委員  日本医師会治験促進センターと国立病院機構の伊藤でございます。治験がこれだけ早 く進んだということは実際に医療現場で治験をやっていただいた医師と被験者になって いただいた方が、ナショナルレベルの危機管理として対応していただき、皆さんスケジ ュールに合わせてやりましょうと一致団結してやった結果だと思います。したがって、 何がインセンティブだったのかというと、皆さんのやる気がスピードにつながったとい うように思います。したがいまして、小児科の先生方や国民の方々が、ナショナルレベ ルでこれがどうしても必要なんだ、という熱意があれば今回の新型インフルエンザワク チンと同じようなスピードで動くんだろうと思います。どれが必要で、どれが必要でな いのかということはマスコミの方や、行政の方からも情報を出していただく必要があり ますし、小児科の先生方からも情報発信を、それとマスコミの方々にもそういう情報を 伝えていただくことがスピードにつながるというように思っております。そういう環境 が整備されれば医師会等も動くのではないかというように思います。 ○倉田座長  ありがとうございます。ほかに何か。 ○飯沼委員  今、伊藤先生がおっしゃったとおりでありますが、私は日本医師会の治験担当でござ いますので一つだけ追加しておきますと、神谷先生が中心になってやられたこの2社の 治験と、それから後続の治験の費用とは随分違うんですよね。かなり安く前の2つがで きたということは、スピードは速いし安くできたということはこれはすごいことだと思 って、神谷先生以下、皆さんの努力を非常に、「賞賛」という言葉を私が使ってはあれで すが、本当にいい仕事だったと思います。それだけ一言。 ○倉田座長  ありがとうございます。日本の審査もそういうスピードとそういう質的な予算を持っ ていけばいいという話だと思いますが、ちょっと余計なことを事務局にお伺いしますが、 昨年度、予算要求のところでここは全省庁が減だけど、医薬品の審査のところだけ増だ という、こういう分野の話のところで聞いたことがあるんですが、それは19年度から実 際にはどうなったんですか。ふえたんですか、ふえなかったんですか。予算要求の中で は人的要求でその分があるということをさるところで聞いていますが、そこは何か結論 は出ていますか。もう4月からですから出ていますよね。 ○植村血液対策企画官  済みません、詳細な資料を手元に持っていません。審査体制の充実という大きな課題 については、ワクチンに限らず医療用医薬品全般にわたっての審査の迅速化、それから そういう有用な医療用医薬品の迅速な提供という大きな課題を既に検討会を持って進め ているところでございます。あるいは治験の課題についても取り組んでいくということ で、予算の面、あるいは人員の面、ともに総力を挙げて局として取り組んでいる課題で ございます。 ○倉田座長  19年要求ではふえたんですか。要求しているのは数百人ですかね。 ○植村血液対策企画官  ちょっと手元に資料がなくて詳細はわかりません。申しわけございません。 ○倉田座長  そうですか。失礼しました。それではほかに何か今までの中で御意見はございますか。  なければ、ちょっと時間がまだありますので、今後の次回以降のことにつきまして事 務局から何か御意見はありますか。 ○関血液対策課長  この会議の進め方は、本日はこれまでの取組み、ビジョンの御紹介とか、あるいは危 機管理ワクチンということについてやってきた政策的な枠組みということを話題として 挙げたわけでございますが、今後この検討会をしていく上で、やはり年に2〜3回程度 ということを考えているわけでございますが、どのような形で議論していくのが関係者 にとって一番有益な検討ができるかということを考えてまいりますと、資料で申し上げ ますと資料Bになりますが、次回以降、できれば例えば具体的なワクチンを念頭におき、 今後どのようなワクチンを開発のパイプラインに乗せ、また関係者がいろいろな支援を していくかということを考えていく上で、資料Bの下半分、討議内容の(2)の「第2 回以降の会合では」というところですが、今のところまだやや漠然とはしておりますが、 ここに書いてございますようなことを考えてございまして、特に一番下の「・」、本委員 会で検討を深めるべきワクチンを選定して、そのワクチンについて開発・供給に関する 具体的事項を明らかにしていくと。その個別具体のワクチンについてどのように考える かという議論をしていくのも、具体性を持って議論ができるという意味では有意義なの ではないかと思っております。  それで、本日ここで決められるかどうかわかりませんが、第2回を恐らく年度が変わ って夏前には開催できると思いますが、その際にどのようなものを選んだらいいかとい うことについても少し議論いただければと思っております。関連して、例えば資料Cで、 2枚紙のビジョンのサマリーですが、その最初の1ページ目のところのIの2の「ワク チン需要の展望」というセクションがございますが、ここで見ていただきますと、(1) 〜(4)までありまして、危機管理のワクチン、あるいは欧米で使用されていて現在日 本でまだ使用できないワクチンとか、さらには成人なども視野に入れたワクチン、それ から(4)として現在のワクチンの改良、ないしは投与経路の問題ということで書いて ございます。既にいずれかの企業が開発に取り組んでいて、例えば総合機構との治験相 談などをするとか、いろいろな相談もしているという段階まで行ったものというのは、 ある意味では企業秘密などもあって議論しにくいかという面もございまして、一方、道 ははるかに遠い先であるというものについては具体性を持った議論ができるかどうかと いうことで、そのように考えてみますと事務局の方で、例えばでございますが、(4)に ある経鼻インフルエンザウイルスワクチンといった具体的なテーマを設定した上で、ど ういうことができるのか、現状はどうなのかというようなことを議論するというのも一 つ効果的な方法ではないかと思っておりまして、どういうワクチンを選んだらいいかと いうことも含めて今後の進め方についての御議論などももしいただければ大変ありがた いと思っております。 ○倉田座長  ありがとうございました。資料Bの下段のところを元にして、具体的なこともポイン トが資料Cにあります。今、課長が説明してくれたように。それで、第2回以降のとこ ろでの議題というか、検討の内容の具体的なテーマを、こんなのはどうかというような 御意見があれば、優先度が高ければそちらから今のうちから用意して対応できるかなと 思いますが、いかがでしょうか。 ○岡部委員  ちょっとよろしいですか。例えばWHOではStrategy Advisory Group of Expert、 SAGEというミーティングがあって、そこでWHOが取るべき、あるいは取れるかも しれないというようなワクチンに関する議論がこれまた年に2回定期的に行われていま す。それが必ずしも実行されるわけではないんですが、現在使われているワクチンの現 状と分析をやって、それからこれから今、治験が進んでいるようなものについても話を し、それから将来取り得るべきものとして、項目としてこういうものがあるという議論 が続けられています。ですから、その場で全部議論が済むわけではないんですが、そう いうような組織での話し合いを参考にすれば、どういうような必要性が出てくるかとい うのは議論できるんじゃないかと思いますが。 ○倉田座長  ありがとうございました。これは岡部さんは委員ですよね。 ○岡部委員  日本からの委員ポジションはなくて、形の上では専門家のオブザーバー参加となって います。 ○神谷顧問  このワクチン産業ビジョンをつくった過程から思いますことは、先ほど紹介しました 冊子の2ページか3ページのところにワーキンググループメンバーというのが書いてあ りますが、この会だけで全部やろうと思うととてもできないので、やはりここで大きな テーマを決めていただいて、例えば新しいワクチンについてはどういうことを考えるか とか、あるいは大人のワクチンと子供のワクチンと分けて、大人には今後はこういうも のが必要だとか、子供にはこういうものが必要だということをグループ討議をやった上 でここに集めないと、なかなか進まないんじゃないかと思います。今後、事務局の方で 予算とかいろいろな計画があると思いますので勝手なことを申し上げたら悪いと思いま すが、そういうことを決めた上で少し違うグループでの討議をやった上でここに持って くるということも検討していかれるとうまく動くのではないかと思っております。 ○倉田座長  ありがとうございました。非常に大事な御意見ですが、ほかに何かありますか。 ○橋本委員  どのワクチンが選ばれるかというのが、企業がかかわっているのは全部避けるという ような趣旨であればいいんですが、企業が基礎研究をやっているようなものも含まれて くるというような話になると、どれが選ばれるかというのは非常に大きな影響があると ころもあるので、何か公募してもっと広くいろいろアイデアを集めてその中から選定す るとか、もうちょっとフェアな形にした方がいいんじゃないかという気がするけれど、 いかがでしょうか。 ○松本委員  今、神谷先生の御意見を私なりに解釈させていただいたのと、橋本委員からの御意見 を考えたときに、個別のワクチンを取り上げるのには橋本委員がおっしゃったように、 いろいろ問題があるのであれば、どのワクチンというよりは、先ほど神谷先生がおっし ゃったように、小児のワクチンとか思春期層のワクチンとかというように、各々の年齢 層でのワクチンに関してどういう問題があるのか等を、各年齢層でワーキンググループ をつくって議論し、この委員会に上げてもらい、もう一度議論できるような機会があれ ばいいんじゃないかと考えますがいかがでしょうか。 ○倉田座長  ほかにアイデアはありますか。ここで決定してもいいし、いろいろ挙げてもらって皆 さんにもう一回メールか何かで情報を送り、そしてこういうのはどうだというのを出し てもらって最終的に決めるというやり方もありますが、いかがでしょうか。 ○岩本委員  一つのアイデアではないんですが、さっき言ったことと関連しているんですが。決し て早い順番で挙げて御議論いただきたいということではなくて、私はワーキンググルー プをさせていただいたときに、例えばB型肝炎ワクチンというのが成功事例としてあが ってくるわけですね。組み換えワクチンで、安全性が高くて、その時点で非常に先進的 な技術が使われている。だけど日本の中で母子感染が減って、結局必要な子供たちだけ に射っていれば、これは必要量が減ってくる。B型肝炎は母子感染だけではないのでワ クチン政策の面からその必要性を考え、産業面からも考えていく必要があるのではない でしょうか?開発、産業化過程のモデルばかり考えていれば、新しいことを追求してい くのはいいけれど、それが普及した結果として病気が減った場合の対策を含めて考えな いと、安定した産業としては成り立ちにくいと思います。やはり先ほど岡部先生が言わ れたように、法律の論議はここではできないでしょうけれど、本当に日本のワクチン制 度はどうするんだという根幹のところをどこかで話し合う必要があると思います。 ○倉田座長  ほかにいかがですか。いろいろ違った次元の御意見が出ていますが、これはいろいろ 挙げていただいてその中から考えて、先ほど言ったように。 ○関血液対策課長  そうしましたら事務局でございますが、今後の進め方ということで、まずこの会は冒 頭からいろいろ御説明をさせていただいたり御議論いただいているところですが、やは り開かれた場としてこの会自体が何か勧告権限を持つということではなく、フォーラム として設置してここでの情報をそれぞれの取り組みに生かしていただくというような趣 旨で、それがひいては政策形成に影響を与えるというような趣旨でございますので、オ ープンにやっていくということが非常に重要かと思っております。  それで今、幾つか違った視点からの御議論が出ましたが、事務局としては少なくとも 海外の状況などの収集整理ということを次回までにするということは最低限必要かと思 っておりますし、それを踏まえて特に座長と相談させていただきながら、委員の皆様方 との間で、電子メールなども活用して、次回のアジェンダ形成に向けて少し予備的な作 業というものをした上で次回の検討会に臨むということ。その上で最低限、事務局とし ては海外の状況なども収集するということ。それから今、幾つか具体的に出していただ きました意見を踏まえて、少し座長を中心とした若干のブレーンストーミング的なこと をして、それを電子メール等で委員の先生方と共有しながらやっていければと思ってお ります。そういう成果について節目々に、年に3回開催するということになりますと、 この場はオープンで開催しますので、その状況などについてこの場でその都度、一般の 方々にも情報が公開されていくといった進め方ができればと思っており、もしよろしけ ればそのような方向で、事務局としては座長と相談させていただきたいと思っておりま す。 ○倉田座長  そういうところでよろしいですか。いろいろな問題は国のレベルでの法律を変えなけ ればいけないようなことも起きるかもしれないし、話題もいっぱい出てきているわけで すし、それからサイエンスとしてきちんともっと頑張れよという話もあるし、実際に今 施行されている子供のワクチンもこれでいいのかとか、いろいろなことがあります。そ れから高齢者のこともちょっと今ぶつかったわけですが、高齢者を大事にするようでい て実際の現場ではなかなか遠いかなと思いますが、そういう問題をこういうところで具 体的に話をしていくことが非常に重要なことだと思います。少し次元の違ったことがあ りますので、緊急性とかいろいろなことが当然ありますし、今、課長が言われたように、 いろいろな問題点を整理した上で皆さんからどこから始めたらいいかというようなこと について御意見をまたお聞きして、事務局から連絡してもらって。  次は大体いつごろ予定していますか。 ○植村血液対策企画官  冒頭の資料にもございましたように、年2回〜3回程度ということでございますが、 大体6月ごろぐらいに向けて今いただいた課題など少し事務局の方でも周辺を調べた上 で資料を整えまして、また座長とも御相談させていただきながら6月ごろを目指して次 回の開催に向けた準備に入りたいと考えております。 ○倉田座長   2回だと今はちょっといろいろ課題があるからこなすのは無理かもしれないけれど、 やってみて、それで少し勉強すると同時に方向性が出せればということで。では、全体 を通して何かございますか。何もなければ閉めたいと思いますが、ちょっと早いんです が。よろしいですか。また事務局で気がついたことがありましたら、何か宿題を出すか もしれませんが、よろしく対応してください。どうもきょうはありがとうございました。 (終了) (照会先) 厚生労働省医薬食品局血液対策課 TEL:03(5253)1111(内線2908)