07/03/14 第34回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 第34回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日 時 平成19年3月14日(水)10:30〜11:30 2 場 所 厚生労働省第8会議室(6階) 3 出席者 [委   員] 勝委員、郷農委員、小山委員、齋藤委員、佐藤委員、              下永吉委員、菅井委員、鈴木委員、高橋委員、都村委員、              成宮委員、布山委員、松本委員、山川委員       [事 務 局] 青木勤労者生活部長、前田勤労者生活課長、              大隈勤労者生活課長補佐 4 議 題  中小企業退職金共済法第10条第2項第3号ロ及び中小企業退職金共済法の一部を改 正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令第2条第1項第3号ロ(1)の支給率を 定める件について(諮問) 5 議事内容 ○齋藤部会長 定刻になりましたので、ただいまから第34回労働政策審議会勤労者生活 分科会中小企業退職金共済部会を開催いたします。本日は臼杵委員が御欠席です。最初 に委員の交替がありましたので、御報告いたします。田村委員の後任として、連合の中 小労働対策局次長の高橋さんが就任されております。 ○高橋委員 連合の高橋です。どうぞよろしくお願いします。 ○齋藤部会長 それでは本日の議題は、お手元にお配りしてあるとおりで、支給率を定 める件です。この件について諮問がされておりますので、事務局から説明をお願いしま す。 ○前田勤労者生活課長 資料1が厚生労働大臣から審議会あての諮問で、支給率につい て「記」にあるように、平成19年度の支給率は0とするということでございます。内容 については後ほど御説明します。  付加退職金の制度は、資料3の参照条文をまずご覧ください。資料3の1頁、中小企 業退職金共済法第10条に退職金の額についての規定があります。第10条第2項で退職 金の額を定めており、まず1号で掛金納付月数が23月以下の場合には、掛金総額を下回 る額ということで、いわゆる掛け捨て、あるいは掛け損というようになっています。2 号の24月以上42月以下は、納付された掛金の総額相当額ということです。  3号は掛金納付月数が43月以上の場合で、イとロに分かれております。イが掛金月額 及び掛金納付月数に応じて政令で定める額ということで、これがいわゆる基本退職金で あり、予定運用利回りを1%として、掛金納付月数に応じて、金額が定まっております。 ロが付加退職金の部分で、毎年の運用収入に応じて基本退職金に付加する部分です。計 算については、計算月が掛金納付月数が43月又は43月に12月の整数倍の月数を加えた 月数となる月ということで、43、55、67と12カ月ごとであるわけですが、その年度の 計算月の時点で、仮に被共済者が退職したものとみなして基本退職金を計算して、それ にその年度の支給率を掛ける。それを毎年合算していったものを最終的に退職した時点 で支給する形になっています。  この第10条第4項で、支給率は厚生労働大臣が各年度ごとに厚生労働省令で定めると ころにより、当該年度の前年度の運用収入のうち付加退職金の支払に充てるべき部分の 額として算定した額をその年度に計算月を有することとなる被共済者の仮定退職金の総 額で除して得た率を基準として、当該年度以降の運用収入見込額その他の事情を勘案し て、前年度末までに労働政策審議会の意見を聴いて定めることになっています。  2頁は過去に予定運用利回りが変更したことに伴う経過措置を書いております。  3頁がその省令で、先ほどの法律の第10条第4項で付加退職金の支払に充てるべき部 分の額とありましたが、これについて省令の第17条で、前年度の運用収入のうち、付加 退職金の支払に充てるべき部分の額として算定した額は、その年度の前年度の機構の一 般の中退事業の勘定の給付経理の損益計算における利益の見込額の2分の1となってい ます。したがって、平成19年度の付加退職金の支給に充てるべき額は、平成18年度の 機構の一般の中退事業の勘定の給付経理の損益計算における利益の見込額の2分の1と することが、省令で決まっております。  さらに資料4の3頁、この付加退職金の配分ルールについて、平成17年3月11日に 意見書ということでこの部会でまとめていただいており、3の(2)で各年度で生ずる 利益についての配分のルールを決めております。(1)で利益の見込額が年度ごとに解消す べき累積欠損金の額の2倍に相当する額以上のときは、その利益の見込額の2分の1を 累積欠損金の解消に、残り2分の1を付加退職金に充てるということです。(2)で利益の 見込額が年度ごとに解消すべき累積欠損金の額の2倍に相当する額を下回るときは、ま ず、当該利益の見込額のうち、累積欠損金の額に相当する額をその累損の解消に充てて、 残りを付加退職金に充てるというような形でまとめていただきました。  その後、この意見書をもとに資料4の1頁にあるように、労働基準局長から機構に具 体的な累積欠損金の解消計画の策定を依頼しました。資料5が累積欠損金の解消計画で、 平成17年10月に策定したものです。これによれば、平成16年度末の累積欠損金2,284 億円を13年間で解消するということで、まず、毎年180億円を年度ごとに解消すべき累 積欠損金の額の目安額として、現在の累積欠損金の解消計画が策定されております。そ こまでが付加退職金の配分についてのこれまでの議論と現在のルールです。  資料2に戻ると、具体的に平成19年度の付加退職金の支給率の算定です。平成18年 度の収支の見込みについて、この資料2の3頁に別紙とあります。現在まだ年度途中で すので、一定の推計を行いました。まず、掛金収入、退職金支出については、昨年11 月末までの掛金収入、退職金支出の実績をもとに12月から3月の推計値を加えました。 その際には過去3カ年の平均値を用いて推計を行いました。  2番目の責任準備金についても、1の掛金、退職金支出の推計をもとに、平成19年3 月末に見込まれる各被共済者についての責任準備金を算定して推計したということで す。  3の運用収入です。まず(1)で自家運用については、例えば国債などの債券等です が、昨年12月末時点で保有している資産について今年1月から3月の利払い日や償還日 が決まっておりますので、それをもとに推計しました。さらに、掛金収入や償還額から 退職金の支出分を除いた残額は、10年国債あるいは金融債の購入に充てると仮定し、そ の利回りについては昨年12月末の数値を用いて推計をしたということです。  一方、(2)の委託運用は金銭信託等で、時価評価を行うということで、今年1月末 時点の時価評価の額から、2月については今年2月の1カ月間のベンチマーク収益率を 用いて加算した額から運用収入を算出して、費用を控除しました。さらに3月について は過去の月次のベンチマーク収益率の期待収益率と標準偏差等を用いて、一定の安全を 見込んで運用収入を推計しました。  資料2の2頁が、これまでの推移と平成18年度の収支の見込みですが、平成18年度 の見込みとして、収入が4,707億円です。掛金収入は平成18年度は4,215億円で、平成 17年度が4,494億円ですので、それと比べて若干減少しております。大きな要因として は、平成17年度は適格年金からの移行が、通算月数120カ月という限度を撤廃したとい うことで非常に増えたわけですが、それと比べて平成18年度は適格年金からの移行が若 干減ったということで、それが掛金収入の減少の一番大きな要因です。運用収入につい ては、平成18年度の見込みが428億円ということで、平成17年度と比べるとかなり減 っております。  支出については退職金支出等は若干増えているような状況です。  最近の運用状況については参考資料の2頁にベンチマーク収益率の推移がありますの でご覧ください。平成17年度については、国内株式が47.85%、外国株式が28.52%で、 非常に上がったということで運用収入がかなり多かったのですが、平成18年度は平成 17年度に上がったところからスタートしているので、2月まででみた場合に、例えば国 内株式では1.99%で、ほぼ横ばいという状況になっております。さらに直近の昨日時点 で見ると、TOPIXは平成18年3月末と比べて若干のマイナスになっている状況で す。こういう状況で先ほどの資料2の2頁で平成18年度の損益としては、93億円の利 益の見込みになっております。  資料2の1頁に戻り、具体的な退職金の支給率の算定です。累積欠損金の解消計画に おいて、年度ごとに解消すべき額は当面180億円で、180億円まではまず累積欠損金の 解消に充てるルールになっていますが、平成18年度の利益の見込みが先ほど申し上げま したように93億円で、180億円を下回っていますので、平成19年度の支給率について は0とせざるを得ないという見込みになっております。それをもとに資料1で厚生労働 大臣からの審議会に対する諮問としては、平成19年度の付加退職金の支給率を0とする ということで諮問をさせていただいております。説明は以上です。 ○齋藤部会長 ただいまの説明について、何か御質問、御意見がありましたら御自由に お願いします。 ○佐藤委員 一昨年に意見書も出しているので、基本的には反対はしませんけれども、 世間は非常に景気が良くなって、いざなぎ景気の期間も超えた。いま春闘の時期ですが、 大企業の先端技術なり、製造業の大手については、結構いい利益を上げて賃上げも行わ れております。そういう状況の中で、この中退の問題を論ずるときに、累損の解消につ いては、かなり早いペースで進んでいるように見受けられると思います。そういう観点 からすると、そういうことを決めたわけですから、それ以上なかなかものは言いにくい のですが、零細あるいは中小の労働者にとっては、労働賃金もその他の労働条件もあま り良くなっていないということから考えると、もう少し予定運用利回りを見直す。ある いはこの意見書では言っていますし、それから基準局長から勤退機構に出された文書な りの中期計画の問題もありますが、少し前倒しをするなりして、何とか付加退職金を付 ける方向を早めるなどの考慮をいただきたいと申し上げておきたいと思います。 ○齋藤部会長 ほかに何かありますか。 ○成宮委員 資料2の収支の見込みの表で、平成18年度の運用収入の見込みが428億円 ですが、これは利回りとしては1%ぐらいですか。 ○前田勤労者生活課長 1.3%ぐらいです。 ○成宮委員 1.3%ですか。 ○前田勤労者生活課長 はい。 ○成宮委員 そうすると今の期間の計画で毎年180億円平均で返す、取り戻していって というときの必要運用利回りが2.2%という前提でしたので、今回はそれに届かなかっ たことが、こういう計算に現れてきていることだと思いますが、ちなみに今回の計算に は関係ないのですが、平成19年度の予算を立てるに当たって、平成19年度の運用利回 りの見込みはどれくらいで計画をされているでしょうか。もし今の時点で分かれば教え ていただきたいと思います。 ○前田勤労者生活課長 平成19年度についても、株の動向などはなかなか見通しが難し い面があるわけですが、当面、現在の累積欠損金解消計画で、2.2%を毎年の目標として いるので、そこを平成18年度については残念ながら達成できない見込みですが、平成 19年度についてはそれを達成できるように機構で適切な運用をやっていただくように と考えております。 ○成宮委員 一応2.2%ぐらいで想定していかざるを得ないということですね。これは 資料6などの過去の例を見ていると、平成17年度は8.34%で回って、今年が1.3%ぐら い、やはりとても難しいですね。 ○齋藤部会長 ほかに何かありますか。 ○山川委員 結論でなく質問です。先ほど収入の点で適格年金からの移行が昨年度は非 常に多かったけれども、今年は一段落したというようなお話を伺ったかと思いますが、 それについては適年の廃止の時期との関係で、もう動きは一段落したと考えられるので しょうか。それともそれはある意味一過的なもので、また復活というか、移行者が復活 するという予想、予想は難しいのですが、そういうこともあるのでしょうか。 ○前田勤労者生活課長 実は適格年金の廃止が、平成24年3月になっております。平成 14年に確定給付企業年金法が施行され、それに伴って適格年金の廃止が決まったわけで すが、平成14年3月末の時点で適格年金が73,582件契約がありました。昨年、平成18 年3月末の時点で、45,090件となっており、28,000件ぐらい減っている。そのうちこの 中退制度に9,000件ぐらいが移行して、あとは確定拠出、確定給付に若干移行している わけですが、平成17年度末の時点でまだ45,000件残っており、今後平成24年3月に廃 止されるということで、引き続きまだ移行については平成23年度までの間は一定程度見 込まれるという状況かと思います。 ○齋藤部会長 何かありますか。 ○勝委員 先ほどの運用利回りの件で質問です。1.3%ということで、最後のベンチマー クを見ると、ベンチマークに比べて相当程度負けている形に見受けられますが、2.2%の 予定だったものが、1.3%に留まったということの主因として、どういうことが挙げられ るのでしょうか。運用の効率化、運用の体制強化が累損の解消及びこの制度の安定的な 運用という意味では、非常に重要なポイントですし、景気が良くなったのに、こういう ところで1%に留まっているということで、予定運用利回りは、いずれは見直さなくて はならないわけです。その前提として、やはり運用体制の強化は必要だと思います。そ れとも絡めてこの1.3%に留まった理由は、過去の国債がかなり多かったことがあるか と思いますが、その辺を教えていただければと思います。 ○前田勤労者生活課長 まず、この一般の中退事業について、基本ポートフォリオを定 めておりますが、その中で国内債券が79%、国内株式が10%、外国債券が5%、外国株 式6%。これは外部の専門家も入れたALM研究会などの議論を経て、そういう基本ポ ートフォリオを決めており、それに則って運用しています。ベンチマークについては、 国内株、外国株など主に委託運用に係る部分はそちらの影響を受けるのですが、国内債 券が79%ぐらいあり、過去の債券などもあるので、自家運用で大体1%台の利回りです。 委託運用の部分についても、2月末時点のベンチマークはこうなっていますが、その後 現時点ではマイナスになっているところもあり、一定の安全を見込むと、1%に若干い かないような見込みを立てており、全体としては1.3%程度の見通しになっております。  資産の運用については、先ほどの外部の専門家も入れた研究会でポートフォリオ自体 を検討し、検討委員会で機構内部での運用体制を整備しております。さらに外部の人か ら資産運用についての評価も受けております。実際の運用について、委託している部分 については、委託している運用の実績等によって、資産の配分等を見直すということも やっており、運用体制についてはかなり機構で整備しております。今後、より一層適切 な運用に努めていきたいと思っております。 ○都村委員 意見書を踏まえているという点からすると、諮問に対する答申というのは このようになると思いますが、やはり中小企業というのは日本経済の担い手ですし、ま た新たな雇用機会創出の担い手でもあると思うのです。先ほど佐藤委員もおっしゃいま したが、やはり中小企業で働く人たちの福祉の増進をより一層図る、拡充するというこ とは大変重要なことであり、この中退制度もその1つだと思うのです。どうしてもこの 中退制度は景気の影響を受けるので、累積欠損金が少しずつは減ってはいますが、この 10年ぐらいずっと発生しているわけです。今後運営改善、あるいは仕組みでさらに検討 する部分があるかどうか、あるいは加入者の促進をもっと図れないものかどうかなど、 そういう点に努めて、長期的に安定することはもちろんですが、より一層拡充するとい うような制度にすることが必要ではないかと思うわけです。去年からでしょうか、人口 減少社会に入っていて、労働力人口も減少過程に入っています。ですから労働力の確保 という観点からも、やはりそういう中小企業で働いている人たちの福祉を増進する、あ るいは退職に際しての生活の安定を図るというような制度の拡充が望まれるのではない かと思います。 ○小山委員 今回、数字上は先ほど佐藤委員も言われたとおり言いようがないのですが、 今後のあり方ということで、いま都村委員もおっしゃいましたが、予定運用利回り1% のままで本当にいいのかどうか。実態はあまりにも株価の動きに翻弄されているわけで、 まず根本的な制度のあり方、もっと改善すべき点など、厚生労働省として今後この制度 をより良くしていくために、こう考えている、あるいはこう検討を進めていく、そうい う今後に向けたお考えを是非お聞かせいただきたいと思います。 ○前田勤労者生活課長 この機構が独立行政法人化されたのが平成15年10月で、中期 目標期間、中期計画期間は5年間が基本となっており、平成19年度までが現在の中期目 標、中期計画期間となっています。この間については、この部会で御議論いただいた配 分ルール、あるいは累積欠損金解消計画があるので、平成19年度の支給率についてはこ れにより行い、今日諮問させていただいたような形になっているということです。ただ、 今後平成20年度から新たな中期目標、中期計画期間に入ることで、当然中期目標、中期 計画を新たに策定することになるので、その際に制度加入の問題なども含めて、さらに 新たな目標・計画を策定していくことになります。その点、まず見直しが必要かと思い ます。累積欠損金の解消計画についても、平成17年10月に策定したわけですが、それ についても経済情勢の変化、目標達成の進捗状況を踏まえて、中期計画の策定時に、必 要な見直しを行うことになっております。平成17年度はかなり累積欠損金が解消されて おりますので、その当時と状況が変わってきております。今回の中期計画の見直しに合 わせて、その部分についても、見直しを検討する必要があると思っております。  さらに予定運用利回り等の問題については、一般の中退の予定運用利回りをこの部会 で御議論いただき平成14年10月に1%として、建退共、林退共も平成15年度に見直し を行ったわけですが、それから4年ぐらい経っておりますので、脱退率の計算など財政 再計算をした上で、検討すべき時期にきておると考えております。そういう今後の中期 目標、中期計画の策定に合わせて、必要な検討を行っていきたいと考えております。 ○齋藤部会長 ほかにありますか。 ○小山委員 是非、再検討すべき時期だろうと思います。この制度をより良くしていく、 より充実させていくという立場で、次年度の検討を精力的にやっていただくようお願い をしたいと思います。 ○勝委員 いまの意見に関してですが、資料6の1頁でもわかるように、もちろん中小 企業の福祉の向上というのは非常に重要で、予定運用利回りの引上げは望ましいわけで すが、過去の経緯を見ると、逆ざやが10年間続いたと。つまり予定運用利回りを上げる ということだけに目がいってしまうと、その解消にさらに10年かかってしまうという中 期的な制度の安定性、スタビリティに関して非常に大きなマイナスのインパクトを与え てしまうことを考えると、やはりその辺のバランスをとって今後考えていきたいと思い ます。なおかつ累積余剰金が0になればいいというものではなく、何か不測の事態が起 きることも考えて、ある程度の準備金というような形でプラスにもっていくことを念頭 におくということも重要なのではないかなと思います。これは意見です。 ○佐藤委員 いま格差社会と言われ、今日は中小企業のみなさんの議論をしているので すが、本当に労働条件その他賃金も含めてほとんど改善されていないのが実態なのです。 そういう意味ではこの制度そのものはそういう目的ではないけれども、所得再分配の制 度の中にある程度位置づけて、ものごとを考えることもできると思います。そういうこ とから考えると、中小企業労働者にとって、これが魅力ある制度なのかというと、今は なかなかそうなっていないと思うのです。意見書があるので、もう拘束されているとい うことは十分承知の上ですが、やはりこれからの日本の経済の中で、中小企業が果たす 役割はいろいろとあると思いますから、十分念頭に入れてやってもらいたいと思います。  もう1つは、株のことはよく分からないですが、中国のあのようなことがありダーッ と株安になったと思ったら、今はすぐ回復する力があるのです。そういうことから言う と、一旦上がったものから、今度は元に戻るものだから、それほど上がらないようにな ると思うのです。予想によっては株価も相当高い所まで行くのだと言う経済研究所の人 達もいます。国内総生産も非常に高い所へ行くのだというような予測もあるので、そう いう良い面を汲み取っていただき、魅力ある制度にしていくように御検討をお願いした いと思います。 ○成宮委員 佐藤委員のおっしゃることも、都村委員がおっしゃることも非常によく分 かりますし、そのとおりだと思いますが、一方で勝委員がおっしゃったように、累損は 今これだけの数字といっても、それは実現している数字ではないわけですから、明日は 倍になるかもしれないし、半分になるかもしれない。いざ開けてみようとしたときに、 どうなるかというのは、今日の時点で得たものが、実は手元にきちんと保証されている ものではないという意味では非常に怖い数字だと思います。先ほども言いましたように、 1年前に8.3%で回ったものが、今年は1.3%いくかどうかというようなことですから、 やはりそういう危うさをよく踏まえて運用を考えていかないと。それはもちろん天才的 なファンドマネージャーを使って、登用してワーッとうまくいくかもしれませんが、大 失敗をするかもしれない。そこのリスクを、ある意味こういう公的なラストリゾート的 性格をもつべき中退共でやはり採用するわけにはいかないのではないか。そこの部分は 付加的にまた別途そういう所で稼げるかもしれないというオプションがあるのは大変好 ましいことだと思いますが、この制度自体は安全を第一においた発想で、もちろんさら に改善を検討をしていただくべきであるというのはそのとおりですが、その際にもそこ からは離れないようにしておく必要があるのかなと思います。  参考までに比較ですが、小規模企業共済という中小企業経営者の退職金共済を中小企 業基盤整備機構が運営しております。こちらも全体的な状況は中退共と似た状況で、累 積欠損を抱えていて昨年だいぶ縮まったけれどもという状況です。そこの付加退職金に 充てられる原資の計算式は、前年度ではなく当年度を予測、推測してやるという違いは ありますが考え方は一緒で、当該年度の運用収入と掛金の収入の合計から、当該年度に 支払を予定される共済金を引いて、それに責任準備金の積み増しの必要な額、あるいは 取り崩しが可能な額を加減して、さらにもう1つ剰余金をそこにプラスする。剰余金を プラスするというのは、今の状況は欠損金ですから、マイナスされると。そうすると当 該年度の収入と支出を加減すれば、幾許かのプラスが出ようが、マイナスが出ようが、 それよりも今の状況からいうと、2桁ぐらい大きいマイナスかドーンと初めからあるの で、雑な議論をすると累積欠損金がある限りは、ほぼ付加退職金は0になるというのが、 分子にきている。そして、あちらの運用利回りはこの1.3%よりはもう少し悪い。もう 少し保守的な運用をしていて、1を少し超えるぐらいで今年は終りそうです。こちらは 中小企業の経営者が自ら掛けて、自らの退職金の共済という形でやっていますが、やは り、かなり慎重な運営を心掛けざるを得ない状況になっているということです。 ○齋藤部会長 ご意見はほかにありませんか。 ○高橋委員 話はダブるかもしれませんが、今のこの景気の中で中小・零細に利益がな かなか下りていかないという実態があると思います。中小・零細の退職金というのは大 手に比べると10分の1、20分の1と勤続40年でも非常に少ないわけです。中小・零細 で働く労働者の処遇をまずどうやるのか、どうしなければいけないのかを考えなければ いけないと思っています。もちろん決まったことは決まったことですが、中期計画を立 てる際は、是非その点も加味していただき、立案をお願いしたいと思います。もちろん 私どもも意見を反映させて言わせていただくということで、よろしくお願いします。以 上です。 ○齋藤部会長 一言だけ私にも言わせていただきたいのですが、確かに前年が非常に運 用利回りを高くして、水準が上がってしまったので、平成18年度の運用が非常に難しか ったというのは分かることは分かるのですが、ただ1%の前半でしか回していないとい うのは、今までの例を見てもそんなに低い率では回っていなかったと思います。もう少 し高い率で回っていたと思います。何か去年の運用の仕方、平成18年度の運用の仕方に 甘えがあったのか、あるいはどういう所に欠陥があったのかは分かりませんが、何かお かしい所があったのではないかという感じがどうしても拭えないのです。だからこの制 度の基本というのは、やはりどれくらいを運用して、どれくらい利益を得るかに、この 制度のいわば基本、根本がかかっているわけですから、これから制度なり何なりを見直 すにしても、その辺をきちんとはっきり、利益が上がるような運用の仕方を常に心掛け るような体制なり、仕組みなりが根っこにないと、結局は机上の空論になってしまって、 またまた累損を増やす話になってしまうのではないかという感じがします。これからい ろいろ考えられるのでしょうけれど、そのときにはそういうことも含めて考えていただ けたらというのが、私の個人的な見解です。それだけは申し上げておきたいと思います。 今まで議論がありましたが、何かそれを含めて部長から、御見解なり感じがあればお願 いします。 ○青木勤労者生活部長 なかなか皆さんがおっしゃることはよく分かるなと思います。 ただ個人的に申し上げると、皆さんよくご存じのように、世界カネ余り現象というのが あり、確か米国では3,600兆円の金融資産があり、日本が1,400兆円ぐらい、それだけ でも5,000兆円あります。中国は今非常に伸びておりますが、そういう国の成長率だけ で、先進国にある金融資産の利回りをどこまでカバーできるのかという、マクロ的なも ので申し上げると、やはりなかなか厳しいであろうと。その中でご存じのように様々な 投機的なお金が今流れておりまして、金、石油など様々な為替、もちろんその他の株式 等にも流れております。ですから世界的レベルで見ると、実はかつてのような高い成長 がないという世界で、先進国には余りに余っている大量の資金というものをどう回すか という話で、おそらく期待値としてはそう高くはないのではないかというのが、個人的 な感想です。ですからもちろん今皆さんがおっしゃったように、より高いものを目指せ というのはよく分かりますし、その中で私どもも機構も外部の専門家のお知恵も入れて、 一生懸命やっていく、日々研鑽というのは非常に重要だと思います。ただやはり上限は 自ずとあるだろうと。それ以上を期待すると、非常にリスキーなことになるに違いない。 つまり投機的な世界もあるので、その両方をよく考えながらということだと思います。 本日は大変示唆に富むご意見を頂戴いたしまして本当にありがとうございました。頑張 って機構とも相談しながら、努めていきたいと思っております。 ○齋藤部会長 それでは部会としては、大臣からの諮問について適当と認めて答申する ことにいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○齋藤部会長 それではそういうことにさせていただき、取りあえず答申文を配付して ください。 (答申文案を配付) ○齋藤部会長 どなたか読み上げてください。 ○大隈課長補佐 (案)、平成19年3月14日、勤労者生活分科会分科会長齋藤邦彦殿。 中小企業退職金共済部会部会長齋藤邦彦。「中小企業退職金共済法第10条第2項第3号 ロ及び中小企業退職金共済法の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令 第2条第1項第3号ロ(1)の支給率」について。 平成19年3月14日付け厚生労働省発基勤第0314001号をもって労働政策審議会に諮問 のあった標記については、本部会は、審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告す る。記、厚生労働省案は妥当と認める。以上です。 ○齋藤部会長 ありがとうございました。それではこの文案で答申することにしたいと 思いますが、よろしいですか。 (異議なし) ○齋藤部会長 それではそういうことにさせていただきます。なお労働政策審議会令第 7条第9項により、部会の議決をもって分科会の議決とすることができ、第6条第9項 により、分科会の議決をもって審議会の議決とすることができるため、本答申を審議会 の答申といたします。 (答申の手続のため、一時中断) ○齋藤部会長 答申をお渡しいたします。 (齋藤部会長が勤労者生活部長に答申を手交) ○齋藤部会長 どうぞよろしく。部長、何かありますか。 ○青木勤労者生活部長 御礼を申し上げます。本部会におかれては、ただいま平成19 年度の付加退職金の支給率につきまして、答申を取りまとめていただき、心から感謝申 し上げます。本日頂戴いたしました答申をもとにして、事務局において年度内に所要の 告示の整備を行うこととしたいと考えております。残念ながら平成19年度の支給率は0 とせざるを得なかったところですが、本日いろいろなご意見も頂戴いたしました。これ を踏まえて、今後私たちもしっかりやっていきたいと思っております。今後とも中退制 度の安定的な運営に努めてまいりたいと考えておりますので、皆様方のより一層のご理 解、ご協力を頂戴いたしますよう、お願い申し上げて御礼とさせていただきます。本日 は本当にありがとうございました。 ○齋藤部会長 それでは本日はこれで終了いたします。最後に本日の議事録の署名委員 は、小山委員と布山委員にお願いをいたします。本日はこれで散会いたします。どうも ありがとうございました。 照会先: 厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部 勤労者生活課(内線5376)