07/03/13 第96回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第96回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成19年3月13日(火)13:30〜 2 場所  職業安定局第1会議室 3 出席者    委員  公益代表 : 鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表: 市川委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表: 成宮委員、輪島委員   事務局  鳥生職業安定局次長、坂口需給調整事業課長、        篠崎需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐、        佐藤需給調整事業課長補佐 4  議題  (1)労働力需給制度について        (2)その他 ○清家部会長   ただいまから第96回労働力需給制度部会を開催します。なお本日は山崎委員がご欠席 と伺っています。また鎌田委員は少し遅れてお見えになると伺っています。  本日は公開によりまして、「労働力需給制度について」をご審議いただきます。まず 初めに海外の労働者派遣制度についてのヒアリングを行いますが、本日は、このケース についてお詳しい有識者の方をお招きしていますので、ご紹介させていただきます。最 初にドイツのケースについて、大阪経済大学経済学部教授の大橋範雄先生に来ていただ いています。ありがとうございます。アメリカのケースにつきましては、独立行政法人 労働政策研究・研修機構副主任研究員の池添弘邦先生に来ていただいています。よろし くお願いします。最初にドイツにつきまして、大橋先生より20〜30分程度ご説明いただ き、続きましてアメリカについて池添先生より20〜30分程度ご説明いただきます。その 後、両方のご報告について質疑の時間をとりたいと思っています。早速ですが大橋先生、 よろしくお願いします。 ○大橋教授   大阪経済大学の大橋です。私が報告しますのはドイツの派遣法についてですが、これ は日本の派遣法に非常に影響を与えたと言われています。時間も非常に限られています ので、レジュメにはこういうふうに書きましたけれども、主にドイツの派遣労働がどう いうふうになっているのかを、政府の統計資料を使ってご報告したいと思います。ただ、 統計資料と言いましても、私の専門は労働法で統計はさっぱり分かりませんので、ここ におられる鎌田教授にも教えていただきました。  ドイツでは1972年に派遣法ができ、73年から施行されています。当時は労働界のみな らず労働法学者、キリスト教関係の人たちから、これは人身売買だということで極めて 強い批判がありました。そこで連邦政府は連邦議会に派遣法の適用状況について2年に 一度報告して、こういうふうになっていますということを、きちんと議会でコントロー ルするという約束で始まったわけです。それが80年代の初めに、今度は違法就労闘争法 という法律ができたときに、この適用状況も一緒に報告するということになり、それ以 降、4年に一度報告が出されています。  それで今まで10回にわたり、10次の報告がなされていますが、1次から8次ぐらいま でに関しては私は書いて自分の本にもしておきましたし、9次報告に関しては鎌田教授 も書かれています。今日お話するのは10次報告です。調べたところ、いちばん新しいも ので2005年に出たものですが、これを基にどうなっているのかをお話しようと思います。  その話に入る前に、よく言われていることですが、ドイツの派遣法では派遣元は全部 許可制であると言われています。この点についてお話すると、確かにドイツの派遣法は その1条において、業としての派遣を行う者は、連邦雇用機構の許可を必要とするとな っています。「連邦雇用機構」と私は訳していますが、職安みたいなものです。この許 可なしに派遣をした場合、これを違法派遣と言うというのがドイツの派遣についての基 本的な考え方です。  細かいことについては時間がありませんし、鎌田教授も私も書いていますから、そち らを参考にしていただければいいのですが、特に80年代の半ば以降、労働法の弾力化に 伴って派遣法も弾力化していきます。規制緩和と言ってもいいのですが、その中で許可 の取得について原則はそうですが、その範囲が広がってきたわけです。最初は例えば20 人以下の労働者を雇用している場合、不況によるリストラを回避するためであれば許可 は要らないというところから始まり、今日では50人以下の場合で解雇を回避するとか操 業短縮を回避するために、派遣を使う場合は許可は要らないとなっています。またコン ツェルン内での派遣も許可は要らない。その他、日本で言うと共同企業体と言うのでし ょうか、ジョイント企業も要らないというふうに増えてはいますが、原則として許可が 要る。ですから、日本のように届出制でできるということはないわけです。それが第1 点目です。  なぜ許可制にしたかというのは、先ほども話したように、これに対してドイツ社会に 非常に不安があったわけです。ですから大丈夫ですよ、きちんと国家が点検して、変な 派遣業者は許可を取り消しますとしたわけです。  その続きで言うと、ドイツでは許可を取り消されたり、あるいは無許可で派遣をした 場合には、派遣法の10条1項に規定があって、自動的に派遣先との間に労働契約関係が 擬制される。派遣先と労働関係が成立すると考えていただければいいわけですが、そう いう自動規定があります。ですから政府側としては、こういう形で許可をしているから 大丈夫なのだ、きちんと統計資料も国会に出して公にしますよということです。  では一体、どの程度許可申請があるのかというと、9次報告のときには年平均520件で、 4年に一度ですから2,081件ありました。それが10次報告(2000〜2004年末)は3,643件 あり、年平均729件ですから増えているのです。派遣元の数はどうかというと、ここに 書きましたように2000年12月の段階で1万2、4年後の10次報告で1万1,953ですから 約20%増加しています。  ただし、これはドイツの派遣の特徴ですが、先ほど言ったように10条1項で無許可派 遣をやると派遣先が使用者になってしまいます。つまり労働契約を締結することになり ますから、派遣元にとってみるとお客さんに迷惑をかけることになるので、念のために 取っておこうという傾向が強いのです。それは統計資料にも出ていて、3分の1は1年 間に1人も派遣しない。つまり兼業派遣業者です。ですから私は、どちらかというと在 籍出向みたいな感じのものかなという気もしているのです。そういうふうに業としての 派遣をすると言って許可を取っていますけれども、2004年12月の段階では、1年間に1 人も派遣しなかったというのが、1万5,070の派遣元のうち5,012の業者がそうでした。  もう1つ特徴的なことを言いますと、全体の派遣の中で兼業派遣元の数が53%ですか ら、半分は兼業ということです。ですから2004年6月30日の段階ですと52%が1年間に 1人も派遣していない。38%は1年間で20人以下の派遣しかやっていない。こういう現 状です。  派遣元の規模も極めて小さいのです。9次報告時点(2000年以前)の段階では、50人 以下の派遣労働者しか雇用していないというのがほとんどでした。10次報告(2000〜20 04年)では16%の派遣元が50人以上の派遣労働者を採用したにすぎないわけです。 専業派遣元の30%だけが50人以上の派遣労働者を採用していますから、専業派遣元でも、 そんなにたくさん派遣労働者を雇用しているわけではないということです。これは9次 報告(1999年6月30日)の段階では、58%の派遣元が10人以下の派遣労働者を雇用して いるにすぎない。こういう現状があります。  それでは派遣労働者というのは、一体どのぐらいいるのか。言い忘れましたが、ドイ ツは基本的に最初から派遣の対象業務は自由なのです。ところが、1982年に建設業にお ける派遣は弊害が大きいということで、これは部分禁止されました。その部分禁止の範 囲がだんだん狭まってきていますが、それ以外は全部可能なのです。しかし、季節によ ってかなりぶれます。2頁の最初のところですが、2000年の段階で32万8,911人ですけ れども、それが2004年の段階では38万5,256人です。しかし、その2004年でも8月の段 階が43万人ちょっといるのです。  ドイツの場合、どんな所に派遣が行っているのかというと、いちばん多いのは製造業 です。あと農業なども結構いるわけです。昔からドイツは伝統的に収穫だとか種蒔きと いうときに、ポーランドあたりから農業労働者が来ていましたから、そういうのがあっ て農業労働の分野に従事している派遣労働者も結構いるということです。あとホテルや レストランです。いずれにしても季節によって数がかなりぶれるわけです。  ドイツの派遣のもう1つの特徴は、補助労働の分野での派遣が多いことです。ただし、 この補助労働でどんな分野に行っているのかは、1次報告から10次報告に至るまで詳細 な報告がありません。ですから、ただ単に補助労働となっていますが、製造業、補助労 働、最近では事務・管理部門といったところへの派遣です。製造業で言うと金属・エレ クトロニクス分野への就労が大きな割合を占めています。これが2頁の就労分野のとこ ろに書いたところです。  次に、派遣労働者の労働契約の期間というのは大体平均してどんなものか。ドイツで は2004年から法律が変わりましたが、それ以前は原則として、派遣労働者も期間の定め のない労働契約を結ばなければいけないとなっていました。基本的に派遣労働者の契約 上の使用者というのは派遣元ですから、これと派遣期間の長さは関係ないというのがド イツの建前なのです。ただ、現実には大いに関係しているところもあるのです。問題は、 ドイツでは派遣の期間は3ケ月で出発しました。派遣に対して非常に反対が強かったか ら、これは本当に臨時的な必要に対してだけやるものですからということで3ケ月とし ました。それが十数年続いたのですが、85年のいわゆる規制緩和の走りから6ケ月にな り、9ケ月になり、1年になり、2年になり、そして1年も経たないうちに今は期間の 定めはなく、全業種で無制限なのです。  その派遣期間を延ばすときに、それに対して批判がありました。そのときの政府側の 言い分は、派遣期間が延びたほうが雇用の安定が図られるということでした。ところが、 政府が出している今の資料を見ても、圧倒的多数が3ケ月以下しか労働契約の存続期間 がありません。ですから派遣期間が延びても、いまのところドイツでは派遣労働者の雇 用の安定にはつながっていないのです。それがどの程度かというのが、2頁の下の3分 の1ほどのところにあります。これは2000年と2004年、つまり9次報告時点と10次報告 時点を比べてもあまり変わりなく、6割ぐらいが3ケ月以下の契約期間です。  その派遣労働者というのは、最近はドイツのほうも位置づけが変わり、未来永劫にわ たって派遣労働者として使うのではなく、正規雇用へのステップとして使うということ を盛んに言うようになってきています。これは特に規制緩和との関係で、今まで規制が あったものを撤廃するにあたり強調するようになってきたのです。  ところが、いま働いている派遣労働者が、派遣労働者になる以前にどういう仕事をし ていたのかという調査があります。2004年の上半期の調査によると、7.6%だけが前職 で一度も派遣を経験したことがない。ということは、9割以上は前職かその前かを問わ ず派遣で働いたことがあり、それでまた派遣になっているというのが現実のようです。 2004年の同じく上半期の時点で、新たに派遣労働者となった者のうち、61%は派遣労働 の経験者であると言っています。  また派遣労働者のうちの11%が、就労前の1年以上は無業者で職に就いていなかった という統計が出ています。これは、たぶんドイツでも派遣労働者になったのは、正社員 になれなかったから派遣として就労したということを、統計上裏付けているのではない かと思われます。  次のは先ほども言ったように、日本で言えば職安に当たるような所が、派遣について 違法がないかどうか監督しているわけです。どこがどれだけやったかというのが、この ニーダーザクセンーブレーメン、バイエルンなどの州ごとです。必ずしも全部州ではあ りませんが、ほとんど州ごとです。ちょっと違うかもしれませんが、簡単に言うと職安 と考えていただいてもいいと思いますが、派遣法第7条で、職安に立入権限まで与えて います。だから、それに基づいて立入調査しているわけです。  もう1つの特徴として、人材サービスエイジェンシーとでも言うのでしょうか。PSA というのができたのです。これは派遣法の中ではなくて、向こうも労働市場改革法とい うのができて、それに基づいて社会法典の第三編37条Cに、ペルゾナルサービスエイジ ェンシー(PSA)を設けました。これはどういうことかというと、各職安が派遣労働者 を雇って派遣をする。ただし、これは通常の派遣業者と違って国の機関がやるわけです が、日本で言えば紹介予定派遣に当たるでしょうか。特に中高年が多いのですが、職業 紹介してもなかなかできない人たちに対して、まず職安が派遣労働者として採用して、 正規に行けるようにしようというものです。だから通常の派遣業とは根本的に違うと思 いますが、そういう制度ができているのです。まだできて日が浅いので、どんな程度か というのは3頁から4頁にかけて統計上の数字が出ています。  もう1つ、ドイツはいま言いましたように、基本的には規制緩和の方向で派遣が自由 にやれるようになった。ただ、その弊害がありますから、自由にやるだけでは労働者は たまったものではないというので、その代わりに2004年の現行派遣法から、均等待遇原 則というのが導入されました。これはややこしいのですが、基本的に派遣労働者と同種 の労働に従事している派遣先の正規従業員と、賃金だけでなく、その他のことでもすべ て均等に扱いなさいと。  ただし、ここはドイツは徹底しているのですが、派遣労働者の労働契約上の使用者は 派遣元です。ですからこれを派遣元に求めているのです。派遣先に直接求めているわけ ではない。ただし、派遣元がこの条件を満たせない場合には許可が取り消されます。こ れは派遣法の中にあります。許可が取り消されると派遣先が直用ということになります ので、結果的には派遣先なのですが、こういう規定を入れたわけです。これがどの程度 うまく機能しているかというのは、まだ2004年からですからあまりよく分かりませんが、 法理論上はそういう形で平等原則を入れているということです。  これは他のEU諸国はそうなっていたようで、ドイツだけはここは抵抗していたのです。 なぜかというと、派遣労働者の労働契約上の使用者は派遣元だから、これとの間の契約 で決めるのだ、派遣先とは関係ないんだということを言って、派遣法ができてから30 年間入れなかったのですが、時代の流れと言いますか、EUの中で入れたということです。 これが特徴でしょうか。  あとは、これは直接派遣法の関係ではありませんが、向こうの特徴的な制度として従 業員代表委員会というのがあります。昔は経営協議会とか経営評議会と言われていまし た。ベトゥリットスラートというものです。これも労働者の労働条件で雇入れとか解雇 など、諸々で非常に重要な役割を果たすわけですが、これも派遣先の従業員代表委員会 の選挙権を派遣労働者にも認めたのです。これは派遣法の改正とともに、従業員代表委 員会などについて規定している経営組織法の規定を改正しました。  要するに、簡単に言えば、3ケ月以上そこに働いている者に対しては選挙権を与えろ と変えたものですから、派遣であろうとパートであろうと正規であろうと、そこで働い ていれば派遣先の従業員代表委員会の委員の選挙権を認められる。被選挙権はありませ んが選挙権を認めようということです。契約上の問題については直接の口出しはできま せんが、働く場における労働条件について、派遣先の従業員代表委員会がかなり関与権 を保障されている。実際にそれがどの程度機能しているかわかりませんが、いまのドイ ツの派遣法で言うと、規制緩和されて派遣期間が撤廃され、今まで理論上は登録型派遣 はできなかったのですが、これも理論上はできるようになりました。  その他、諸々の規制緩和が行われたのですが、他方、いま言ったような均等待遇原則 の導入とか経営組織法を改正して、派遣先の従業員代表委員会が派遣労働者の労働条件 についても関与する。そういう権限を認めるようになってきた。ちょっと短いので総花 的になりましたが、そういうところです。後ほどご質問があれば分かる範囲でお答えい たします。 ○清家部会長   ありがとうございました。引き続き、池添先生、よろしくお願いします。 ○池添副主任研究員   池添でございます。改めましてよろしくお願いします。海外の労働者派遣制度につい て、お話をせよということでご依頼を受けましたが、ご承知のように、アメリカ合衆国 (以下、アメリカと言う)のような連邦国家のレベルにおいては、労働者派遣事業ある いは派遣労働者に関する保護、規制などの制定法というものはありません。したがって、 概念的に派遣労働者、労働者派遣というものはどう言うかというと、少なくとも連邦レ ベルにおいてどういったものかというのは、法律に即しては言うことができないという ことになります。  ただし、一方で、これは今回お話するにあたって調査を尽くしていない点があるとい う意味で申し訳ないのですが、州法においては90年代後半の時点でマサチューセッツ、 ノースカロライナ、ニュージャージーが労働者派遣事業について規制しました。これは 制限的な意味での規制ということではなく、届出とか登録など手続的な規制を設けてい たということのようです。  ただ、今日お話するのは、以前、事務局の方との打合せにおいて実態を中心にお話を していただければということもありましたので、お話の柱としては派遣労働などを含め た非正規労働者の実態です。連邦労働省の労働統計局が出している統計的な数字を示し ながら、お話をさせていただこうと思います。  もう1つは、特に派遣労働者に対する制定法の適用関係がどうなっているのか。先ほ ど申し上げたように、派遣労働者に対して少なくとも連邦レベルでは保護を及ぼす。あ るいは利益を与えるという形での制定法は存在しないわけですが、既存の例えば差別禁 止法とか、労働時間、最低賃金などを定めた公正労働基準法など連邦の制定法の適用関 係、場合によっては共同使用者、すなわち派遣元と並んで派遣先の事業所、使用者に対 しても、派遣労働者に対して一定の義務を果たさなければいけないという形で、共同使 用者という概念が設けられている。その概念を通じて、連邦レベルの制定法の適用が及 ぼされている。そういう制定法の適用関係についてお話します。それが2つ目の柱です。 ただ、時間が20分か30分と限られているようですので、まず派遣労働の実態についてお 話をさせていただければと思います。  レジュメのほか、資料1、資料2です。英文で恐縮ですが資料1は労働統計局が出し ている、Contingent and Alternative Employment Arrangements,February2005という 統計資料です。資料2は、この同じ調査を過去において行ったものを日本語に翻訳しつ つ、私の所属組織の前身である日本労働研究機構から、『アメリカの非典型雇用』とい う書籍を出す機会がありました。その中で掲げられている統計数値を一部抜く形で資料 2を作成しています。  まず実態ですが、労働統計局のほうで独自に調査しているということではなく、 Current Population Surveyという、いわゆる国勢調査です。詳しくは存じませんが毎 月行われているようで、約6万世帯に対して調査をかけているということです。その調 査の中では雇用・失業の状況、どういった就業形態で働いているかについて尋ねていま す。そのデータを労働統計局が、資料1のような形での統計調査という形で出している わけです。  この統計調査では、非正規労働者の形態を2つ挙げています。1つがコンティンジェ ント労働者ということですが、資料2の1頁目を見ていただくと、原語はestimateです が、推計1、推計2、推計3とあり、どういう形でこの1、2、3を区別しているかと いうと、1年以下の雇用継続しか期待していないかどうか。実際に1年以下就労してい るかどうかということ。自営業者あるいはそれに類する独立契約者(Independent contractors)を含むか含まないかという要素により、いちばん狭い推計1、次が推計2、 いちばん広い推計3をとっています。つまり、雇用の期待と実際が短期のものであるか どうかを中心に、この推計でコンティンジェント労働者という括りをしています。  お話の中心である派遣労働者のほうは、代替的就業形態労働者です。資料2の2頁目 を見ていただくと4つの類型が掲げられています。これはあくまでも統計を取る上でこ ういう括りをしたということであり、先ほど申し上げたように、必ずしも制定法の定義 に基づいて用いられているものではありません。独立契約者、呼出労働者、派遣労働者、 業務請負企業労働者の4つの類型があります。  アメリカの統計調査は、先ほど申し上げた雇用期間の長さや期待、実際の就業類型、 直接の雇用者か、あるいは直接の雇用関係がなくして1つの企業で働くか、就業形態が 2つの軸でもって非正規労働者を見ている。派遣労働者はこの統計の中に含まれるわけ ですが、就業形態別のほうに定義が置かれています。  派遣労働者の定義ですが、Workers who are paid by temporary help agenciesとあ り、要するに派遣先にとっては外部の人材を、短期に外部の専門の業者からあてがわれ ることになりますが、派遣労働者はその外部の派遣業者から給与が支払われる。臨時的 か否かには関わりがないという定義が用いられています。  この派遣労働者の定義について1つ注意しなければならないのは、資料1の中に記載 があるのですが、まさに派遣会社の常勤のスタッフが調査において回答してしまった場 合、この派遣労働者というカテゴリーの中に含まれることもあり得ます。それから、こ の定義にありますようにテンポラリーではない、臨時の労働を行うのではなく派遣労働 者も含まれる場合があるということです。その2点について注意が必要です。  以降は代替的就業形態について申し上げます。特に派遣労働者を中心に申し上げたい と思いますが、資料2の2頁と資料1の2頁、14頁を併せて見ていただくと、資料2の ほうで統計調査が取られ始めた95年から2年置きに、97年、99年と数字が上から順番に 並んでいます。雇用労働者の総数に占める割合というのは1%、人数にして大体120万 人から130万人です。  最新の統計である資料1の2頁を見ると、下から2つ目の太字で書かれている Temporary help agency workersが0.9%であるということ。14頁のTable 5と書かれて いるところで、真ん中より少し右のほうにTemporary help agency workersとあり、ト ータルで大体122万人です。以前からさほど増減があるというわけではないことが言え るかと思います。  その一方で、例えば独立契約者、呼出労働者のほうが、2005年に公表された統計調査 においては7.4%とされていて、割合としては6%台から伸びている。人数にしても、 資料1の14頁の縦の軸で真ん中より少し左ですが、Independent contractorsは大体 1,034万人ということで、200万人ぐらい増えているという状況があります。  これは後ほど触れることになるかと思いますが、時間外労働手当、差別禁止、育児・ 介護休業といった制定法が適用される条件として、employee(労働者)であることが前 提とされているのですが、適用されない類型としては、このIndependent contractors (独立契約者)があるわけです。おそらく、こういう非正規労働者を活用する理由とい うのは、必ずしも偽装雇用と言えるかどうか分かりませんが、制定法の適用を回避し、 自らの労働者を雇用している場合には失業保険税や社会保障税といった、労働関係の税 金も使用者は支払わなければならない。そういった人件費を支払う必要がない、制定法 の適用がない、独立契約者を雇用している傾向があるのではないかと言えると思います。  レジュメの1頁目ですが、真ん中よりちょっと下のところで、代替的就業形態ごとの 傾向に話を移していきたいと思います。派遣労働者を中心に見ていきたいと思います。 派遣労働者はどういった職種で活用されているか、資料1の17頁をご覧ください。Table 8は大きく2つに分かれていて、上がOCCUPATION、下がINDUSTRYです。OCCUPATIONのほう を見ると、24.8%、Office and administrative support occupations、つまりオフィス 労働者、事務的な労働者、間接部門のサポート職種への派遣が非常に多くなっている。 次いでずっと下のほうにいって17.1%、Production occupations、製造関係の職種への 派遣が非常に多くなっているということです。  また産業別に見ますと、その下のところのINDUSTRYですけれども、最も多いのが31.9 %のProfessional and business servicesです。専門的な業種、業界だということです。 次が28.4%のManufacturing、製造関係の職種へ多く派遣されているということになろ うかと思います。  レジュメには書いていなかったのですが、ご参考までに申し上げると、私は今回の話 をするにあたって調べ損ねたという点で申し訳ないと思うのですが、派遣業者の事業所 の数がどれくらいかという統計数値を、90年代前半に日本の研究者が出しています。そ れによると1989年の時点で事業所数は約1万2,500ぐらいだということでした。その後、 どのように推移しているのかは分かりませんが、特に法規制がない。州レベルであって も緩いものであるということを考えると、事業所数は増えているのかもしれないという 推測が成り立つかと思います。  派遣労働者を実際に属性別に見てみます。資料1の15頁です。縦の軸で真ん中より少 し右のところで、Temporary help agency workersとあり、16歳以上のトータルを見る と、多くなっているのが25〜34歳の層、次いで35〜44歳の層が多くなっている。性別で 見ると男性のほうは25〜34歳の層が15.2%であるのに対し、女性のほうは確かに25〜34 歳の層は14.6%で高くなっているわけですが、男性と比べるとやや他の年齢層、すなわ ち35〜44歳、45〜54歳の層でもある程度見られるという状況になっています。理由別は 古いデータなので省略します。  人種別に見ると、同じ頁の下のほうです。独立契約者、請負企業の労働者、派遣労働 者など、どの職種であっても白人が非常に多いのですが、派遣労働者に関して言えば、 そのほかの就業形態と比べて、黒人、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニックも非常に多 くなっています。  その下のFULL-OR PART-TIME STATUSで見ると、いずれの職種もフルタイムの労働者が 多くなっていて、派遣に関しては80.4%がフルタイムで働いている。なおOn-call workers(呼出労働者)ですが、必要な時に企業の求めに応じて呼び出されて、その期 間だけ働く労働者については、フルタイムとパートタイムで、フルタイムが55.8%、パ ートタイムが44.2%と、ほかの就業形態と比べてやや二分されているという状況にある かと思います。  16頁を見ると、学歴別の状況を見ることができます。Temporary help agency workers のところですが、大学へ進学していない高卒の方が30.9%、カレッジに入った、あるい は短大のディグリーを取ったという方が25.1%で多くなっている状況です。  一方で、Independent contractorsやOn-call workersに関しては、就学中の者も見ら れるという状況にあるわけです。  賃金ですが、派遣労働者の賃金がどのようになっているか。資料1の20頁を見ていた だくと、Contingent workersとWorkers with alternative arrangementsの2つの大き なカテゴリーがあり、右側のTemporary help agency workersですが、フルタイムで見 ると、4つの就業類型のうち最も低くなっている。これは性別、人種別、すべてのトー タルで低くなっています。これは週給額で中央値ですが414ドルです。ただ、性別ある いは人種別に見ると、派遣労働者の中でも属性によって賃金額が異なる状況が見られる ということです。  続いて健康保険や年金ですが、こういったベネフィットについてはアメリカは国家が 規制するということではなくて、個別の使用者がその労働者に対して私的に与えるとい うシステムを取るのが通常です。資料1の18頁のTable 9です。  いちばん左のCharacteristicの上がContingent workers、下がAlternative arrangementsで、下から3行目のTemporary help agency workersというところですが、 health insurance(健康保険)の適用に関して見ると、Provided by employerというの は8.3%に止どまっている。その右側にIncluded in employer-provided pension plan というのがありますが、3.8%に止どまっているということです。  On-callや業務請負会社の労働者など、ほかの就業類型に比べても低い。これは使用 者が労働者に対して私的にベネフィットを与えているわけですが、ベネフィットを受け る資格要件というのがあって、例えば資格要件に関しては連邦の制定法が活用されてい るわけです。エリーサという法律ですが、1年間に1,000時間就労した人に対して、あ るプランの適用を認めるようにしなさいということです。ただ、短期の臨時的な就業で あるために、おそらく1,000時間というルールをクリアできずにいる派遣労働者が多く なっている。そのために使用者、派遣元が与えるベネフィットの適用率が低くなってい ると推測されます。  統計調査を見ることの最後に、代替的な就労形態としてIndependent Contractorsと か、派遣労働者という就業形態で働きたいかどうか、今後の志向を聞いた部分が、資料 1の19頁のTable 11です。いちばん右側にTemporary help agency workersとあり、い ちばん上がPrefer traditional arrangementとなっています。つまり通常の伝統的な雇 用形態がいいと答えているのが、派遣労働者の場合は56.2%で、半数以上が派遣ではな くて普通に雇われる働き方がいいと答えているわけです。  ただ、ほかの就業形態の独立契約者とか呼出就業者と比べると、派遣でない従来の伝 統的な働き方がいいのだということ。派遣でないということは独立契約者や呼出就業も 含まれるのかもしれませんが、伝統的な通常の雇用形態がいいという方が半数以上を占 めている状況があるわけです。  統計的な側面から見た実情は、今までお話したようになっているわけですが、その他、 過去に私がアメリカの企業、特に日系企業あるいは雇用労働関係の弁護士などから伺っ た話によると、レジュメの2頁目のいちばん上ですが、企業としては、基本的にテンポ ラリー、臨時のスポット的な活用でもって派遣を利用するのであると。ただ、派遣就業 中のパフォーマンスが良い場合、その派遣労働者を自分の会社の労働者として採用する 場合がある。したがって、この場合には派遣就業というものは結果として、試用期間や 紹介予定派遣という形で機能することになるわけですが、ただ、派遣はあくまでも派遣 であるという前提があり、臨時的なものであるということ。  しかも、過去にお話を伺った企業の方によれば、その運用というのはかなり厳しい。 1回の派遣で2回も3回もパフォーマンス・レビューをした上で、本当にこの人は自社 の労働者としていいのかどうかを判断すると言っていました。日系企業という一定程度 の条件は付くわけですが、紹介予定派遣あるいは試用期間というふうな形で派遣就業が 機能する幅は、あるにしても狭いものであるということが言えるかと思います。  その紹介予定派遣という場合、派遣でなくて雇用の斡旋、職業紹介という形でも機能 するのではないか、というお話が出るかもしれませんが、冒頭に申し上げたように特に 法的な規制は存在しないので、実態上、派遣会社と雇用の斡旋会社(Employment Agency) が合わさった会社というものが存在することが、事実としてあるようです。  ただ、結果としての紹介予定派遣、試用期間というものが機能するかどうかというの は、派遣元会社と派遣先の会社との派遣就業に関する契約、あるいはその都度の交渉合 意によって決まるものですので、どういった形での規定を含むのか。あるいは手数料は どのように決まるのかというのは職種によっても違うでしょうし、その時々の経済情勢、 企業の経営状況等によって左右されるものであると思いますから、詳細は承知していま せん。  最後に、労働関連事業、非正規労働者に係る規制というところを簡単にお話して、終 わりとさせていただきたいと思います。労働者派遣・職業紹介、それから先ほどの統計 のところでは類型としてお話しませんでしたが、労働者リース(Employee leasing)と 呼ばれるものがあります。例えば自分の会社のアドミの部門を一気に他の会社に売り渡 す。売り渡すにあたって、そのアドミの部門で働いていた労働者を全員解雇する。解雇 するし他の会社に売り渡すわけですが、売り渡した他の会社から以前と変わらない形で 働いてもらう。リースバックをするということです。それをEmployee leasingと言いま すが、そういった事業に関する規制がいくつかの州で見られる。  職業紹介に関しては多くの州で規制があるようですが、労働者派遣に関しては労働者 供給事業に係る規制を行う州があったり、あるいは労働者リースに関しては、いくつか の州で免許制、登録制といった形があります。ほとんどの場合に失業保険や労災保険と いった労働関係の税金を徴収する、財政を健全なものにするという関係で、労働者リー スの会社を適用対象とする目的のために規制を行っているようです。  非正規労働者の保護に関する制定法ですが、過去の専攻研究、特に参考文献に掲げて いる藤川論文などですが、連邦レベルで非正規労働者に対する保護、制定法の適用を及 ぼさせるための法改正を行う、という法案が幾度も出されていますが、労働市場のパフ ォーマンスというものが阻害される。懸念されるという慎重論が大勢を占めていて、い ずれも立法化されていない状況にあります。  一方で州レベルの制定法ですが、イリノイ州やロードアイランド州ではTemporary helpあるいは非正規労働者に対する保護法だという形で、法律のタイトルを付けて制定 法を設けているのですが、例えば交通費の徴収や給与の支払い方法、あるいは現場で貸 与された用具の費用の徴収などの禁止という保護を定めるのみで、実質的に労働者の労 働を保護する類の規制は行われていない。実質的な保護は乏しいのが現状であるようで す。  派遣労働者は派遣元の労働者ですが、派遣先で就業している場合、その派遣先の使用 者は労働者に対して制定法上の保護を及ぼさなくて良いのかどうかというのが、労働者 の制定法の人的適用範囲、労働者の概念との関係で問題になる場合があります。基本的 には制定法では、自らが雇用契約を締結して雇い入れている者を労働者適用範囲とする と定めていますが、例えば差別禁止法では個人の雇用機会に対して差別的な介入をする ことが禁じられていますし、また同じく差別禁止法に関してはemployment agencyも差 別を行うことが禁じられているという意味で、派遣先あるいは職業紹介の場合は雇用斡 旋の機関も、制定法の差別禁止といった義務に従わなければならないことがあるわけで す。特に、派遣先の使用者に関しては共同使用者概念というのが用いられていまして、 ここに掲げてあるような公正労働基準法、家族・医療休暇法、職業安全衛生法、差別禁 止法に関しては基本的に派遣先の使用者、事業主がその派遣労働者の労務遂行に対して 指揮監督、管理監督をしている場合には、その派遣労働者を自らの労働者として扱い、 各制定法が定める義務を履行する。それからベネフィットなどを提供することが解釈に よって定められています。  最後に、労災補償、年金・健康保険、税金の関係の責任については基本的には派遣会 社、労働者リースの会社が負うということですが、労災補償については派遣先も責任を 負うということです。ただ、アメリカの労災補償制度というのは州の制定法によって行 われていますが、労災補償が適用になるということは青天井の不法行為の損害賠償請求 を受けないという排他的な救済ですので、派遣先に労災補償が適用されるということは、 派遣先にとってはむしろこれは良いこと、有利なことであると言えるわけです。また労 働関係の税に関しては、派遣元が失業保険税が未払いであった場合、派遣先も共同使用 者として法的な責任を持つと定める州がいくつかあるようです。時間が30分ギリギリと いうことで最後は駆け足になってしまいましたが、以上で私の話を終わります。 ○清家部会長   どうもありがとうございました。ただいま大橋先生、池添先生お2人のご報告を伺い ましたが、それぞれどちらの先生のお話についてでも構いませんので、ご質問をお願い したいと思います。どなたからでも、どうぞよろしくお願いします。 ○輪島委員   1つ目はドイツ法で、いわゆるみなし雇用、つまり派遣先が雇用の義務を負うという のは、1972年の法律の制定当時からあった概念なのかどうかということです。2つ目は 兼業の派遣元があるというご紹介でしたが、この兼業というのは基本的にどこと兼業し ているのが一般的なのかです。  3つ目は、派遣元と派遣労働者は期間の定めのない雇用が原則で、ただ、それで派遣 になったときは派遣先に行くわけですが、原則と実態が少し違うというご指摘でしたが、 そこをもう少しご説明いただければと思います。4つ目は、均等待遇原則です。規制緩 和と規制強化とのバランスの中で入ってきたものだと理解をしていますが、日本でいろ いろ議論されている中で言うと、実態としてなかなか理解できないというか難しいなと 思いますが、ドイツで行われた議論がどういったものであったかをご紹介いただければ と思います。以上です。 ○大橋教授   まず最初の違法派遣の場合に、派遣先との間で労働関係が成立したとみなす規定は、 1972年の法制定のときから一応目玉商品としてありました。裁判で認められている判例 はいくつもありますし、私も紹介しましたが、何件あるのかという統計はないです。し かし、なぜこんな規定を置いたかというと、ドイツでは派遣というのは私的職業紹介だ ということで長い間禁止されていたのです。それがご承知のように、外資系の派遣会社 がこれは職業の自由に違反するということで、連邦憲法裁判所に憲法違反だという訴え をしたのです。1967年に連邦憲法裁判所はその訴えを認めまして、それは経済的要請も あったからでしょうけれども、それからは国内で派遣法を作って野放しにするのではな くてという議論ができまして、1972年にできたわけです。その前提はいまでもそうです が、派遣というのは派遣元と派遣労働者との間にだけ労働契約が成立するのだと。だか ら、派遣元というのは契約上の使用者としての実態と責任を持っていなければいけない。 これを欠いた場合には、もう派遣ではないのだ。ということは、職業紹介になるわけで す。ですから、業としての派遣を行う者は許可制である。その許可がないというのは、 使用者としての適格性を欠いていることになるから、その場合には実際に指揮命令権を 行使して使っている派遣先が雇い主になるのですよと。簡単に言えば、そういうことか ら建前上はできているわけです。ですから、これは出発当初からできていました。  2つ目の兼業派遣ですが、ドイツは派遣と言いましても二通りあります。いま言いま したように、製造業への派遣が結構多いのです。ドイツは20世紀の初め、あるいは19世 紀からあったのですが、同業者組合がありましてマイスターが職人とか徒弟を雇ってい るわけです。それで業務の繁閑があって、お互いに同業者間で労働者を貸し借りしてい たわけです。製造業に圧倒的に多いというのはライアルヴァイトと言いますが、これが 一方でできている。これは当然、兼業ですよね。それから高度成長期、ドイツの場合は 1950年代から外資系の派遣が事務部門に出てきたわけです。これは派遣が私的職業紹介 で禁止されていましたから、日本と同じように請負という形で入ってきたのです。この 2種類がありまして、外資系というか事務部門に来たのはどちらかといえば大体専業派 遣で、製造業は兼業が多いということです。  有期というのは、正当な理由がある場合は有期であってもよろしいと。では、正当な 理由とは何かと言いますと産休のときの代替要員とか、労働者側からいいますと学生の 場合、夏休みとか冬休みの間しか働けない。この場合であれば有期の労働契約をしても いいけれども、それ以外は駄目ですよと。これは派遣だけではなくて、ドイツは有期の 場合は合理的理由が必要であるとなっていますから、それも適用されたということです。  均等待遇原則は、使用者側の反対が強いです。ドイツはいろいろ議論していたのです が、時間切れみたいなところがありまして、むしろEUに押し切られたところが強いと思 います。EUのほかの国ではこれはなっていますから、同じ所で同じ者から指揮命令を受 けて、同じ仕事をしているのに待遇が違うのはおかしいということでドイツは抵抗した のですが、契約関係が違うからと。けれども、そちらに押し込まれた。これは、どのぐ らい違うのかといいますと日本とは単純に比較できませんが、調べたドイツの学者の文 献を読みますと、賃金で大体22%から40%ぐらい派遣は低いと言われています。日本だ ったらいろいろなものを入れるともっとあるとは思いますが、ドイツはいろいろなもの があまりありませんから、それでもこれは同じ仕事をしているのにと。  もう1つはドイツの場合は、比較的に均等待遇が入りやすかったのは職業協約となっ ていますから、賃金も産業別の賃金です。例えば旋盤工なら旋盤工で、同じ資格を持っ ている場合は協約賃金が決まっていますから、あれを中央で決めますと7割ぐらいはそ れで決まると言われています。そうすると、同じ派遣で行って同じ資格を持っている。 あるいは資格は上なのに、向こうの正規より賃金が低いのはおかしいだろうというのが 通りやすいと思います。だから、通したのだと思います。  ただ、実際にはどういう意図でやっているのかがわかりませんが、これを厳格に適用 しますと、派遣というのはドイツ法が最初に派遣法を制定したときの趣旨に戻るわけで す。つまり、派遣というのは臨時的なものに限られていると。だから、本当に臨時的必 要な場合であるから、場合によっては必要だから、正規より高い金を払ってもするとい う発想が最初の派遣法を作るときの理由だったのです。だから、そこに戻るだろうと。 ただ、均等待遇が本当に機能するかどうかは難しいです。私が読んだ文献の中だけでも、 こういう脱法的な方法もあるわけです。均等待遇で派遣労働者を、派遣先の正規労働者 の低いほうに位置付ける。ランク付ける。向こうは、先ほども言いましたように俸給が 協約ではっきりしていますから、逆に言うならば低く位置付けられたら低くなる可能性 があります。いろいろな脱法というか、そういうことはするでしょうけれども、一応20 04年1月1日施行の現行派遣法では、これが入ってきたということです。 ○古市委員   対象の職種は基本的に自由です。しかし、建設については問題があって、部分的に禁 止になりました。その後、禁止が少し緩くなっていますというご説明でしたが、どうい う理由で建設が部分的に禁止になったかということについて。 ○大橋教授    これは、最初は禁止されていなかったのです。1982年に派遣法の中ではなくて、いま は社会法典の第三編になっていますが、雇用促進法というところに第12条Aだったかに 入れまして、禁止をしたと思います。それはなぜかといいますと、建設業の特殊性があ りまして、例えばドイツの場合はいまは暖冬ですが、-20度、-30度となります。私の妻 の所は-35度で、私も体験しましたが本当に凍りつきます。向こうはマイナス何度かぐ らいになると、建設業はしないのです。夏も30度を超えると、小学校は休校になります。 建設業の場合は、特に冬場は仕事ができないことが多い。そうすると労働協約で、その ときにお金を出すことになっています。ところが派遣労働で建設業に行きますと、派遣 元が兼業でやっていれば別ですが、そうでなくて純粋派遣でいきますと、当時はほとん ど労働協約がありませんでした。仮にあったとしても、それは建設業との労働協約では ありませんから、そういう手当が支給されないのです。これはおかしいというのが出ま して、政府は最初に建設業を全面的に禁止する措置を取ったのですが、これに対してか なり反論が出ました。職員の場合は別に一緒ではないかというのが出まして、結局職員 は除いて現場で働いている労働者については、建設業における派遣を禁止しました。  少し緩くなってきたというのは、最近になりまして労働協約が共通であって、労働条 件が一緒ならば認めてもいいではないか。そうするとヴィンターゲルトといって、冬期 手当も支払えるしということになりまして、いまは一定の条件を整えた場合には建設業 でも可能な部分も出てきています。原則というか、全面的に自由ですが、唯一建設業の 建設労働者で労働協約の適応がない部分は禁止である。そういうことです。 ○市川委員   直接派遣に関係なくて恐縮ですが、alternative arrangementsの働き方でOn-call workersというのがあって、この定義を見ますと必要に応じて呼ばれて働く。この次の 派遣というのは、Temporary help agencyによって給料が払われたものと。このOn-call というのは直接仕組みがあるのでしょうか。やはりそういうagentみたいなのがいて行 うのか、まさか労働者個人に直接呼び出しが来るのではないとは思いますが。 ○池添副主任研究員   これは、どこかagentを通すということではなくて、おそらくOn-callの労働者を必要 とする業態、会社が、一定労働者を登録者としてプールしておくのだと思います。「こ の仕事をあなたはできるそうだけれども、この日は空いていますか」という形で、仕事 をしてもらいたい必要な会社が直接その人に連絡を取って、必要なときだけ来てもらう 形だと思います。 ○北村委員   アメリカの件について池添先生に伺います。わりにフレキシブルな派遣元と先、ある いは労働者の関係のように聞いたのですが、例えば派遣内容と賃金を決めるときに、そ の都度元と先の交渉で内容を決めていく例が多いというお話があったように思います。 その際、交渉で決める内容は人物をAさんと特定して、この人物についてのバリューを 決めるのか、それとも仕事内容を決めて誰が来ようとこの仕事はいくらと決めるのかと いったことはいかがでしょうか。 ○池添副主任研究員   そこまで詳細に、派遣労働の実態について調査をしたことがないので承知はしていま せんが、派遣労働者に来てもらって行わせる職務のマーケットバリューがいくらかとい うのは派遣先のほうで一応持っていますよね。でも、その派遣先でやる職務をどれぐら いのパフォーマンスの高さでできるかというのは、派遣元がある派遣労働者について持 っているわけです。例えばランク付けで言ったらA、B、Cランク。Cは遅いけれども Aは速い。どの労働者かということで、たぶん派遣料金は決まっていくと思いますが、 そうすることで結果的に時給とか賃金額とかベネフィットというものも決まっていくと 思います。そこら辺で派遣先が、どれぐらいのパフォーマンスの人が欲しいかというこ ととの鬩ぎ合いでおそらく決まっていくのではないかと推測します。 ○北村委員   わかりました。両先生に伺います。派遣料金と派遣労働者が受け取る賃金と、その差 や割合は派遣労働者には明らかにされているのでしょうか。 ○大橋教授   それは、請求して聞けます。これはなぜかといいますと、均等待遇を入れるときに均 等待遇かどうかがわかりませんから。少し話がずれますが、派遣元と派遣先との派遣契 約の中で、派遣先は派遣労働者に相当する職種に就いている正規従業員の労働賃金等々 について、書面で書く義務が派遣法上で新たに入れられています。 ○池添副主任研究員   制定法による規制が、少なくとも連邦レベル、州レベルでもほとんどの州にはないと いうことなので、法に則ってということであれば開示する義務は使用者にはない。個別 の派遣業者が、派遣労働者からの開示の求めに応じるかどうかというところだと思いま すが、開示されている事実があることは私の聴取の限りでは聞いたことはありません。 賃金額がいくらかということだけだと思います。ただ、当然派遣労働者もベネフィット の上乗せがある、自分にかかってくる税金の上乗分が派遣料金として派遣先から派遣元 へ払われているのは理解していると思いますので、ある程度の推測ができると思います。 ○北村委員   つまり、派遣業者の競争が生じてくると思いますが、その場合に派遣料金と賃金との 差異を、ある種競争の中での勝ち抜く材料として提示するという行動はないわけですね。 ○池添副主任研究員   それはないです。 ○清家部会長   よろしいですか。今日は、事務局の方もこちらに座っていらっしゃいますが、何かご 質問がありましたらどうぞ。よろしいですか。 ○輪島委員 大橋先生にお伺いします。ILOの181号条約がありまして、それができたと きのドイツの派遣法を直した事実、批准していないのですか。 ○大橋教授   あれは、鎌田先生のほうが詳しいのではないでしょうか。学会で報告しましたよね。 していないと思います。私は、いま全く念頭になかった。 ○輪島委員   直していないということはありますか。 ○篠崎補佐   批准はしていないようです。 ○輪島委員   質問を変えます。ドイツの派遣法と日本の派遣法を比べてみて、日本の派遣法はむし ろ最初は専門的、技術的な業務から始まって、それから181号条約の批准に伴って自由 化業務が入っている二階建方式というか、別のものをガサッと一緒くたに持っていてド イツとは違うわけですが、ドイツ法のご専門から見て日本の派遣法をどう考えていらっ しゃるのか。そういう意味でご意見があれば、お聞かせいただければと思います。 ○大橋教授   基本的には戦後、日本の労働法制が失敗したのは直接雇用です。あれは、なぜ直接雇 用かというと、指揮命令を出している者が、全面的とは言いませんが使用者としての責 任は負わなければいけない。それが直接雇用の基本だと思います。派遣というのは、日 本では労働者供給事業、ドイツでは私的職業紹介となっています。私個人的には、私的 職業紹介のほうがいいと思っていますが、日本では労働者供給事業であったものをその 中から一定の法的要件を備えたものを派遣として認めたという形になります。もし、派 遣というものを認めるのであるならば、派遣元がきちんと労働契約上の使用者であるこ とが前提となって初めて三面関係と言えるわけであって、派遣元が労働契約上の使用者 たる実態を有していないような形であれば、これは限りなく中間搾取になるのではない だろうか。そういう点では、経済要請などでどうしても要るのだというのであれば少な くとも許可制にして、きちんと使用者としての責任を問えますよというものに対しては 認める。ドイツはいろいろ入っていますが、法令遵守しなかったり、いまであれば均等 待遇原則を守らなかったりということがあった場合には許可を取り消して、あるいは更 新の拒否で実際に指揮命令権を行使している派遣先が雇い主になるというのを少し入れ る。実際に均等待遇を入れるべきだと思います。  ただ、入れた場合には派遣というのは本当に臨時的なものに限ってくるだろうと思い ます。ドイツは臨時的ということに限定したものですから、職種は問わなかったわけで す。つまり、使用者責任が曖昧になるような労働形態は雇用就労形態の多様化と言われ ても、これはやはりまずいだろうと。絶対的にそんなことを言っても限界はありますが、 通常の使用者が使用者責任を負えるような形態であれば、そう変えることができればあ ってもいいのかなという気はしています。 ○清家部会長   いま、大橋先生が最後におっしゃった点について伺います。派遣期間の制限がないこ とと均等待遇の関係ですが、理論的に言えば均等待遇というのが確立されて、例えば同 じ仕事をしている人には派遣でも派遣先の直用社員でも同じ賃金が支払われることにな ると、当然派遣先企業としてはそれにプラスアルファーして料金を払うわけですから、 そんなに長く雇うというのは合理性がないわけですね。均等待遇が確立されるというこ とと、派遣期間の制限をなくすというのは、そういう意味で整合性があるとドイツ等で は考えられたのでしょうか。必ずしも、そうではないのでしょうか。 ○大橋教授   私がフォローした均等待遇に関しては、そういうのはちょっと見当たらなかったので す。ただ、均等待遇を主張した人たちの主張は、政府もそういうところがあったのです が、均等待遇によって違法派遣がなくなるというか、派遣の規制になるという意見のほ うが強かったと思います。ですから、いま先生が言われたように派遣という形で均等待 遇を実現したら、派遣元が存在し得ない、あるいは文字どおり本当に緊急に短期に必要 な場合にだけ余計に払っても来てもらうという意味で、派遣労働は規制されるのだとい う主張はありましたが、それに対して「いや、そんなことはないんだ」とか、使用者側 からはものすごく批判的です。ただEU全体がそうですから、ドイツはこれを入れたのが 最後だと思います。その辺はEUの中のドイツという形で動きますから、そうはいかない かもしれません。 ○清家部会長   どうもありがとうございました。大橋先生、池添先生、本日は本当にお忙しいところ、 私どものために貴重な時間を割いていただきまして大変ありがとうございました。改め て御礼申し上げます。本日のヒアリングはここまでとしますが、是非私どもの今後の議 論の参考にさせていただきたいと思っていますし、その意味で非常に有益なお話を伺っ たと思います。本当にありがとうございました。なお、次回の会合ではフランス、イギ リスの労働者派遣についてのヒアリングを行うこととしています。大橋先生、池添先生、 ありがとうございました。   (大橋教授・池添副主任研究員退室) ○清家部会長   続きまして、事務局から資料を準備していただいていますので、ご説明をお願いしま す。 ○篠崎補佐   前回の部会でいくつか宿題になっていたものについて、現段階において用意できるも のの準備をしています。まず資料2−1は前回、派遣労働者の年収のご説明をした際に、 例えば常用型と登録型では働いている時間等も違うのではないかということで、一律に 比較できないのではないかというご趣旨のご意見もありましたので、派遣労働者の賃金 について日額で推移を見たものです。その前に、3頁は前回、派遣労働者の年収の推移 ということで登録型と常用型、全体を示したものですが、一部修正がありましたのでま ずはそこをご説明します。前回は、全体を見ると派遣労働者の年収が上昇している傾向 とご説明しましたが、常用型の▲の平成17年の年収について誤りがありました。405万 円と記載していましたが、今回お出ししていますように337万円が正しい値です。しか しながら、全体で見ますと真ん中のグラフになりますが、平成9年から平成17年にかけ て上昇している傾向があるということですので、総括した枠囲みの表記としても派遣労 働者の年収は全体で見ると上昇している傾向と記載をしています。それから、前回の登 録型と常用型の推移を見たものです。  4頁をご覧ください。先ほどは年収でしたが、年収で見ますと登録型と常用型で、例 えば登録型の就労時間等々の比較ができないのではないかという部分がありますので、 これを日額で推移を見たものです。日額の場合は若干労働時間の差があるかもしれませ んが、通常1日8時間プラスアルファーですので、年によって大きな違いはないであろ うということで日額を使用しています。これで見ますと、いちばん上の▲が常用型です が、平成9年は1万794円。一旦平成13年に落ちていますが、その後平成14年は1万422 円、平成17年は1万919円という形で上昇をしています。■の登録型については、平成 9年が8,928円に対して、平成17年が9,810円となっています。全体ですが、平成9年が 9,130円であったものが平成17年は1万284円となっています。総括として、派遣労働者 の日額の賃金は全体で見ると上昇している傾向、年収でも全体で見ると上昇している傾 向でしたが、これは日額で見ても確認ができるのではないかと考えています。  資料2−2は、韓国の派遣労働者制度についてです。前回、韓国についてもというこ とでしたので、調べられる範囲でこちらの資料を用意しています。韓国の労働者派遣制 度について、根拠法は、派遣労働者保護等に関する法律という法律名になっています。 注にありますように、罰則の強化等を内容とする改正法案が2006年11月に国会で可決さ れて、2007年7月に施行されると聞いています。適用除外業務については製造業務、建 設業務、港湾荷役業務、医療等となっています。派遣期間等ですが、コンピューター処 理の専門家等の専門的な26業務は最長2年(派遣期間が2年を超えた場合、派遣先に雇 用義務あり)となっています。「雇用義務あり」としていますが、法改正前は雇用みな しという制度があったと聞いています。いまのが専門家等の専門的な26業務ですが、そ れ以外の業務は最長6ケ月となっています。  均衡処遇の規定がありまして、同種の労働者との差別的取扱いは禁止とされています。 派遣労働者数は5.7万人、全労働者に占める派遣労働者の割合は0.37%となっています。 全労働者に占める派遣労働者の割合は、どちらも2005年の国際人材派遣協会の調べによ る数値となっています。資料2−2の説明は以上です。  それから資料はご用意していませんが、前回の部会において直接雇用原則についての ご質問がありました。我が国の労働法において、直接雇用の原則があるかということで すが、委員の方から職業安定法第44条が直接雇用原則を要請しているものとする説があ る一方で、そこまでは言うことができない説もあるという趣旨のご発言がありました。 立法趣旨としては、封建的な労働関係を排除することは明らかであったと思いますが、 いま言った大きく2つの説がありますので、その法的解釈は割れている状況であるよう です。職業安定法第44条以外を見ましても、直接雇用が原則であるということを規定し ている条文はありません。労働基準法でも、あくまで使用者を基準法が規制する事項の 義務者として、また違反の場合の責任者としているだけですので、直接雇用を原則とし ているような規定をしているものではないということです。その他、直接雇用、間接雇 用についての概念の整理、民法・商法上の請負と派遣との関係の整理等々についてもご 指摘がありましたので、これについてはいまの段階で準備できていませんので、今後議 論を行う際には準備をしたいと考えています。  資料3は、これまでの議論とは直接関係ありませんが、最低賃金法の一部を改正する 法律案要綱(抄)ということで用意しています。こちらは、本日最低賃金法の一部を改 正する法律案について閣議決定をされて今国会に提出することになっていますので、労 働者派遣に関係する部分をご紹介したいと思います。要綱に第二、地域別最低賃金があ りまして、派遣中の労働者の地域別最低賃金を定めるものです。要綱を読み上げます。 派遣中の労働者については、その派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決 定された地域別最低賃金において定める最低賃金額を当該派遣中の労働者に適用される 最低賃金額とするものとすること。つまり、いままではあくまでも派遣元の最低賃金が 適用されたわけですが、この法案によりましては就業場所の所在地の最低賃金が適用さ れるというものです。  第三は特定最低賃金、いわゆる産業別最賃と言われるものですが、こちらについても 派遣先の産業別最賃がある場合は、そちらの最低賃金を適用するという内容の改正です。  参考1は、平成15年の改正の前段階で、平成14年の年末に建議をいただいています。 労働政策審議会の建議で労働者派遣関係の中のご指摘としまして、派遣労働者に対する 最低賃金の取扱いについて検討すべきという建議をいただきまして、そういったことも 踏まえて今回の改正につながったというものです。参考2は、最低賃金法の一部を改正 する法律案の概要を付けています。こちらはまた、適宜ご参照いただければと思ってい ます。資料の説明は以上です。 ○清家部会長   ただいま事務局からご説明がありました資料について、ご質問はありますか。 ○市川委員   資料2−1の3頁の年収の推移の全体、登録型、常用型の全体というのは、登録型と 常用型のトータルと考えていいのですか。 ○篠崎補佐   そうです。 ○市川委員   登録も常用も微減しているのに、全体が微増しているというのは人数の比率が変わっ ていると。 ○成宮委員   比率が変わっても、両方とも落ちていれば絶対値は。 ○篠崎補佐   細かい部分ですが、アンケートで登録型と常用型と区分けができる部分と区分けがで きなかった人がありますので、全体というのはそういったものもありますので、若干全 体が下がっている部分もあると。 ○成宮委員   関連で、4頁は前も出ていたのかもしれないけれども、平成13年の数字は異常値です か。非常に特徴のある数字ですよね。この年の常用型がドカーンと落ちて、登録型より もさらに下位にまでいって、あとはまた元に戻っている。この年に何か特別な事情があ ったということではなくて、むしろ統計上の異常なものがあったのかなという気がしま す。 ○篠崎補佐   おっしゃるとおり、アンケートですので具体的に何かが起こったのかもしれないとい うことがありますが、これも推測ですが、平成9年と平成13年の間にはネガティブリス ト化がありましたので、平成9年の時点では専門的な業務しかなかったということでい えば、賃金水準も全体としては高い方が多かったのであろうと。その後は常用型であっ ても、もちろん専門的ではない部分に常用型というものも可能になりましたので、それ だけではないかと思いますが、平成9年と平成13年にはそういう変化もあったのではな いかと考えています。 ○成宮委員   その前の頁でも、常用型のところでその年はかなり落ちているということが出てきて いるのだけれども、登録型よりもさらに下まで落ち込んでいるというのも、同じ理由で 説明できますか。 ○篠崎補佐   いま申し上げたのは全般的なものですので、登録型が変わっていないのではないかと いうことについては、十分なご説明になっていないというのはあろうかと思います。 ○清家部会長   この統計を使うのは注意したほうがいいかもしれませんね、とくにこの年のところと かは。成宮委員が言われたように、仮に制度の変更があったとしても、登録型よりも常 用型が低く出ているのは、ちょっと不思議なところではありますから、そこは注意した ほうがいいかもしれません。 ○北村委員   4頁ですが、先ほど8時間強ぐらいということで選定しているというお話でしたが、 これは時間あたり賃金にその数を掛けたものですか。それとも実態アンケートの結果で すか。 ○篠崎補佐   アンケートですので、そのものズバリ日額を書いてくださいということですので、そ の場合は残業代込みで書いたケースもあると思います。 ○清家部会長   ほかにいかがですか。よろしいですか。最後のところは、最賃法の改正案が国会で通 れば、すべて派先に合わせて地域も産別も最賃が適用されるということですね。 ○篠崎補佐   はい、そうです。 ○輪島委員   確認です。まずは法律の中身の確認ですが、例えば沖縄に派遣元があって派遣先が東 京で、派遣元に登録していたけれども派遣先が東京なので、最賃が当然東京と沖縄では 違うので、それは東京のほうが高い派遣先に適用されますということで今度は整理をす るという理解でいいかどうか。2つ目は、実態として派遣労働者が最低賃金の適用の関 係で、指導というようなものがあるのかどうかをお伺いします。 ○篠崎補佐   1つ目のご質問は、輪島委員がおっしゃるような形になります。ただ、実際に派遣元 が遠い場合があるかというのはあります。近辺の都道府県になろうかと思います。  2つ目は申し訳ないですが、実際の指導事例について、事務局としていまの段階では 把握していません。 ○成宮委員   最賃法違反で問題にされるケースは、非常に限られていますよね。だから、たぶんそ れが出れば結構話題になるのではないかと思います。 ○清家部会長   その場合、最賃法違反に問われるのは派元ですよね。 ○篠崎補佐   責任があるのは派遣元です。 ○長谷川委員   例えば派遣契約で、派先と派元の契約が沖縄だったら最賃で610円ですから700円ぐら いで契約しているとすると、基本的には派遣契約そのものでは最賃割れを起こしていな いけれども、実際は結果的に最賃割れを起こす例はありますね。最賃割れを起こしてい るかどうかは、労働者が訴えない限りは見付からないと思います。あとは誰かが告発し ない限りはね。契約で非常に低い契約。610円+20円の630円ぐらいで契約、そんな極端 な契約はないと思いますが、そうすると最賃割れを起こしていることはありますよね。 そういうのは見られますか。 ○成宮委員   派先から見れば、ディスカウントしているだけかもしれないではないかと。派元がデ ィスカウントしてくれた、特別サービスしてくれた場合は、あくまで派元の責任になる のではないですか。 ○長谷川委員   そこがよくわからない。最近はディスカウントがすごく流行っているらしいです。最 近は非常にうちは安いですよという話があるけれども、そのときに契約と賃金との関係 はどうやって見るのかなと思います。どれぐらいの費用、マージンをどれぐらい取るか という話と関係してくると思います。 ○篠崎補佐   先ほど成宮委員も申し上げましたように、契約の中で必ず賃金を出すという仕組みで はありませんで、ディスカウントしている場合もあります。ただディスカウントしたと しても、派遣元としては最低賃金以上の賃金を支払う義務は免れませんので、仮にそう いうケースがあれば個別に申告等を理由として、監督署の指導を受けることにはなろう かと思います。 ○成宮委員   どちらが悪いかという問題になりますが、法律的には派元が悪い。ダンピングという のは、コスト500円のものを300円で売るのはダンピングだけれども、300円で買った人 は咎められないで、300円で売ったほうが咎められるのですよね。 ○市川委員   通常、最賃法に引っかかる場合というか告発される場合は、どういうケースですか。 自ら労働者が裁判を起こすとか、監督署に訴えるとかが多いのですか。あまり臨検とい うことはないですよね。 ○坂口課長   通常は申告のケースがほとんどだと思います。 ○市川委員   いちばん心配しているのは、日系外国人を専門に製造現場で派遣で、うちの組合はた くさん来ているけれども、その辺は最賃ギリギリなのかなという感じがします。そうい う方たちは、あまり訴えないでしょう。ちょっと、そう思っただけです。もう少し調べ てみようかなと。 ○鎌田委員   判例などで問題になるケースでは最賃はほとんどないですが、つまり労働者ではない ということで働いている人たちがたまたま委託料金が最賃以下で、ところが何かの拍子 に労働者だと争って、労働者だと認めると自動的というか最賃以下と。少し前に研修医 の方たちが争った事件は、まさに研修医の報酬が最賃以下ということで争った事件です。 ○清家部会長   ほかによろしいですか。それでは、本日の部会は終了しますが、事務局より次回の日 程等で何かありますか。 ○篠崎補佐   正式には、また別途ご案内しますが、次回の部会は3月26日(月)13時半から安定局第 1会議室で予定しています。よろしくお願いします。 ○清家部会長   以上をもちまして、第96回労働力需給制度部会を終了します。  なお、本日の署名委員は雇用主代表成宮委員、労働者代表市川委員にお願いします。 どうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)