07/03/12 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会平成19年3月12日議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 器具・容器包装部会議事録  【日 時】  平成19年3月12日(月) 13:32〜14:43  【場 所】  厚生労働省共用第8会議室  【出席委員】(五十音順)       井口委員、河村委員、神田委員、品川委員、棚元委員       西島委員、早川委員、望月委員、鰐渕委員  【事務局】藤崎食品安全部長、松田基準審査課長、加藤補佐  【議 題】  (1)容器包装詰加工加熱殺菌食品の容器包装の強度試験について  (2)器具・容器包装に用いられる合成樹脂ポリ乳酸について ○事務局 それでは、器具・容器包装部会を開催させていただきたいと思います。  本日は、先ほど委員の出席について御報告させていただきましたとおり、菅野委員、土 屋委員、堀江委員より欠席の御連絡をいただいております。本部会の委員12名中9名の御 出席をいただいておりますので、本部会が過半数に達しておりますことを御報告させてい ただきます。  また、本日の議題1につきまして、参考人として財団法人食品環境検査協会神戸事業所 長の南保参考人に御出席いただいておりますので、御紹介させていただきます。  それでは、議事の進行を部会長の西島先生、お願いします。 ○西島部会長 それでは、まず議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いいた します。 ○事務局 今日配付させていただきました資料としましては、本日の部会の議事次第と書 いてある紙がございます。  次に、議題1の強度試験関係の資料として、資料2−1と書いてあるものがございます。 2枚目が資料2−2という形になっております。  次に、資料3−1としまして、ポリ乳酸の規格基準に関係するものとなります。1枚め くっていただいて資料3−2となっておりまして、本資料の19ページ以降が食品安全委員 会の健康影響評価の結果として資料3−3となっております。  あと、参考資料1としまして、器具・容器包装の現行の規格基準を束ねたものでござい ます。その他、参考資料としまして、平成18年度の容器包装等の報告書を委員の席上に配 らせていただいております。  以上が、配付資料でございます。もしお手元にないようでしたら、御連絡いただければ と思います。 ○西島部会長 配付資料につきまして、よろしいでしょうか。  不足はないようですので、審議に入りたいと思います。本日は2つございまして、1番 目が容器包装詰加圧加熱殺菌食品の容器包装の強度試験について。2点目が、器具・容器 包装に用いられる合成樹脂ポリ乳酸について御審議いただくことになっております。  それでは、まず初めに、第1点目の容器包装詰加圧加熱殺菌食品の容器包装の強度試験 について、事務局から資料に基づいて御説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、説明させていただきたいと思います。  まず、最初に、参考資料1をごらんいただけますでしょうか。今日の2つの議題につき まして、関係する規格基準を示したものでございます。器具・容器包装につきましては、 まず、食品衛生法の第18条に薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて必要な規格基準を定め るという形の規定がございます。容器包装の規格基準につきましては、この規格基準が設 定されないと世の中に出回らないというわけではないということでございます。後のポリ 乳酸のときに説明させていただきたいと思いますけれども、ポリ乳酸は今実用化をされて おりますが、本日はその規格基準を新たにつくるものという位置付けになっております。 この点が、器具・容器包装の規格基準の一点御留意いただきたい点でございます。  強度試験につきましては、議題1に関する部分として参考資料の2ページ目をごらんい ただけますでしょうか。ここに器具・容器包装として関係するものとして(1)と書いてござ います。ここに「強度等試験法」があり、本日の議題の熱封かん試験につきましては、4 ページに(1)と書いてございます。  43ページをごらんいただけますでしょうか。「E 器具又は容器包装の用途別規格」と書 いておりますけれども、今回問題となっておりますいわゆるレトルト食品、これは正式に は容器包装詰加圧加熱殺菌食品と規格基準等では命名しておりまして、これに関係する容 器は下線部にある規格基準に合格しなければならないと規制されております。この規格基 準について今から御審議をお願いするものでございます。  それでは、資料2に沿って説明させていただきたいと思います。  まず、3ページをごらんいただけますでしょうか。今回の経緯と改正の趣旨につきまし て簡単に説明させていただいております。レトルト食品に代表されます容器包装詰加圧加 熱殺菌食品につきましては、今、参考資料で申し上げましたところのように、規格基準と して設定されておりますけれども、製造技術が著しく進歩した結果、本規格基準の制定当 時から使用してきた袋状の容器以外の、いわゆるカップ状であるとかトレー状を含む箱状 の容器も開発されてきております。この袋状の容器を想定した、熱封かん試験につきまし ては、箱状の容器の強度試験とする際には以下の(1)から(3)までの問題点が指摘されている ところでございます。  (1)としては、いわゆる試験法で定めております試験片の採取が困難な容器があるという こと。この試験片につきましては、先ほどの参考資料の2ページ目、また資料2の12ペー ジの試験片のサイズ等を示しておるところでございます。  (2)としまして、容器の剛性がふた材と胴材とで大きく異なり、安定的に引っ張る力を掛 けることができない。これも資料2の12ページにございますように、試験片を上下に引っ 張るという形で試験法が規定されております。以上の例としまして、お手元の白い容器を ごらんいただけますでしょうか。試験片を示したものでございますが、こういうものが該 当するものと考えております。  (3)としまして、熱封かん部の折り曲げ加工等により容器の強度を高めている場合には、 この熱封かん強度試験では強度測定としては不適切ではないかという指摘がございます。 お手元には箱状で示させていただいているような容器等が、この例に該当するものでござ います。  このため、容器の強度試験法として、新たに内圧強度試験を設定し、箱状の容器には内 圧強度試験を適用するための規格基準の改正を行うというのが今回の趣旨でございます。  この強度試験につきましては、4ページで規格基準を2として説明させていただいてお ります。規格基準では(1)から(5)までの規格をすべて満たすことが要求されております。 特に(1)遮光性、気体透過性のないもの。(2)加圧加熱と同一の条件で加圧加熱を行ったと き、破損、変形、着色、変色などを生じないものであること。(3)耐圧縮試験を行うとき、 内容物または水漏れがないこと。(4)熱封かん試験、(5)落下試験というような5つの条件 がございます。  特に(2)(3)(4)の試験等それぞれの試験の趣旨は記載のとおりでございます。特に条件 の(1)(2)(5)につきましては、容器の形状によらず試験の実施が可能でありますけれども、 (3)耐圧縮試験につきましては、容器の形状が袋状の容器と箱状の容器とで異なる試験方法 が設定されております。この試験法は参考資料の3ページ目に耐圧縮試験という形で載っ ておりまして、4ページに掛けて図を示しておりますとおり、試験の方法が違っておりま す。  あと、(4)熱封かん試験につきましては、先ほども申し上げたような(1)〜(3)の問題点が指 摘されております。  このため、熱封かん試験に代わるものとして、内圧強度試験という代替試験法を設定す るものとしておりますが、その内圧強度試験につきましては5ページの3に示しておりま す。試験の概要につきましては、密封済みの容器包装に一定量の圧縮空気を容器が破裂す るまで挿入し、容器包装が破裂したときの最大圧力をその容器の強度とするという形にし ております。試験装置は図のようなものでございます。  この判定基準は、破裂時の最大圧力が20kPa以上であることということになっています。 この基準値につきましては、以下に述べるような形で設定しております。  まず、容器を加圧加熱する際には、容器内には飽和蒸気圧と容器内にある空気の膨張に よる圧力というものを考慮する必要がございますけれども、容器の加圧加熱の方法としま しては、いわゆる定圧制御と等圧制御、等圧制御というのは定差圧制御とも呼ばれますが、 その2通りがございます。定圧制御としましては、殺菌開始から冷却終了まで一定の圧力 を掛け続けるものでございまして、これは主に袋状の容器に用いられているものでござい ます。袋状の容器は柔軟性があるため、殺菌装置内で容器全体に均一に掛かる外圧に対し ては高い抵抗性を持つとともに、容器内の残存空気が膨張することにより容器内の圧力と 殺菌装置圧力との差圧をある程度吸収することができるというものになっております。こ のため、通常容器内圧が外圧よりも高くなるように定圧制御するという形になっておりま す。  これに対して、箱状の容器につきましては、特に含気包装製品につきましては、内外の 圧力差により容器が変形・破損しやすいので、殺菌開始から冷却終了まで容器内の圧力変 化に対応して殺菌装置内の圧力を変化させながら殺菌をする必要があると。これは先ほど 申し上げた等圧制御という形になります。  箱状の容器におきまして、内圧よりも外圧に対する抵抗性の方が高いので、外圧の方が 若干高くなるように圧力は制御されておりますけれども、熱水式殺菌装置、これは殺菌釜 内を湯で満たして殺菌する方法ですが、この装置内に満たされた水の水頭圧により、殺菌 装置内の上部と下部に配置される容器の間には、圧力に差が生じます。この圧力差は殺菌 装置の構造及び大きさにより異なりますが、通常大型の殺菌装置、直径1.3mぐらいのもの ですが、使用した場合最大で10kPa程度の圧力差が生じます。このため、圧力設定を低め にした場合、殺菌装置内の上部の容器内では、内圧の方が外圧よりも10kPa程度高くなる 可能性があります。このため、安全率を見込んでその2倍の20kPaの耐内圧強度があれば、 加熱殺菌中の容器の密封性は確保されていると考えて、基準値を設定したものでございま す。  次に4としまして、3ページ目の(3)の例として挙げさせていただいたものを以下に述べ てさせていただきます。サンプルで示したように、熱封かん部ではなくて、折り曲げ加工 等により強度を高めている容器では、図にありますように、いわゆる熱シール部で容器内 の圧力を受けるものではなくて、内部からの圧力は面で受けております。そして、その容 器は図にありますように、フラップシールというところで固定することによって強度を補 強しております。このような容器に対して、熱封かん試験強度を実施する際は、いわゆる 加熱滅菌時あるいは流通時のパッケージの形状ではなくて、フラップ固定というシールを 一度分解して、あるいは上部と下部の折り曲げたところを伸ばして試験片を採取するとい う形になります。このため、8ページの表1にございますように、熱封かん試験では平均 値としましては、上部シールは24.8N、下部は9.2Nと、下部の方は低くなっておりまして、 熱封かん試験の23Nを満足しない形になりますが、内圧強度試験では平均で申し上げます といずれも42kPaという形で、いわゆる熱封かん試験では容器の強度を測定するのに不適 切なものというような例となっております。  このようなことがありましたので、基準案としまして、いわゆる強度等試験に内圧強度 試験法を新たに提示して、更に「ただし、箱状の容器包装にあっては強度試験法中の内圧 強度試験を行うことができ、破裂時の最大圧力が20kPa以上であること」という基準の改 正を提案させていただくものでございます。実際の基準値は、15ページにございます新旧 対照表で比較していただければと思います。  説明は以上でございます。 ○西島部会長 御説明ありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問・御意見等がありましたら、お願い いたします。いかがでしょうか。参考人の方から何かございますか。 ○南保参考人 今のお話の説明で、補足的なことをお話しさせていただきますけれども、 現状はこの部分を15mmの幅でこのように切断しまして、これを引っ張り強度試験という 形で両方から上下に引っ張る。これが、たしか数値が23N以上あればよろしいということ になっているのですが、今回の蓋付のラミコン用とかテトラリカルト用という紙状の容器 包装の場合は、15mmの幅に切ってこういうふうにほどく場合は、蓋と胴体の部分が包材 が違えば、逆に弱いところでは長く引っ張られて本来のラミコンのシールの部分の測定が 得られなくて間延びするとか、そういう不都合さがあるというか、要は正規の測定法に適 していないということです。今回こういう紙状になった場合は、このやり方ではフラップ シールで固定されているのですが、これを外してA・BとC・Dで測定していますね。そ うすると、この部分だけが解体することによってシールそのものが本来の製品の状態での 測定は得られないということです、内圧の強度試験ということで針を刺して測るという方 法を採用したのではないかと思うのですけれども。 ○西島部会長 ありがとうございます。そうすると、この耳のところはとらずに刺して測 るということですね。 ○南保参考人 この測定方法は、一般的に大手の工場で蓋付の内圧強度を測定されるとき に、どの部分が一番弱いかなということで用いるコンパクトな測定装置ですが、その装置 内では圧縮空気、コンプレッサーも全部一体もので、合わせると23万から30万円ぐらい のセットがあります。そういうもので直ぐに針を刺してコンプレッサーを通じて測定する というようなことであれば、すごく簡易的にその場で、一番弱い部分のシール強度が破裂 するということですから、今までみたいに15mm幅で切っていくと、その部分だけの測定 であって、容器そのもの全体で一番弱いところが測定されないということですかね。だか ら、内圧の強度試験の方法がシールした箱状に関してはベターだろうと思います。 ○西島部会長 ありがとうございます。そういう御説明ですけれども、御質問あるいは御 意見ございますか。よろしいですか。  それでは、特に御意見がないようですので、ただいま御報告がありました報告案をもち まして、当部会の報告ということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょう か。 (「異議なし」と声あり) ○西島部会長 ありがとうございます。  それでは、続きまして、本日の2つ目の審議事項でございます器具・容器包装に用いら れる合成樹脂ポリ乳酸について、審議に移りたいと思います。  まず、事務局から資料の御説明をお願いいたします。 ○事務局 前の議題で1点説明を忘れたところがございまして、この規格基準の改正、強 度試験の改正につきましては、食品安全委員会では健康影響評価を行うことが必要でない ときに該当すると整理されておりますので、その点を資料の10ページに記載させていただ いております。  次に、ポリ乳酸の説明に移せていただきたいと思います。3ページの資料3−2をごら んいただけますでしょうか。今回、規格基準を作成するに至った経緯として、国内におい て汎用される見込みである旨の説明をさせていただいております。法律上、容器につきま しては、いわゆる個別の規格基準がないと使用できないとう規定になっているわけではご ざいませんので、現時点では一般規格に適合する必要があるという整理になっております。  汎用される場合には、例えば、プラスチックの種類ごとに個別の規格を今までは作成し てきております。参考資料1の29ページをごらんいただけますでしょうか。(1)に合成樹 脂製の器具または容器包装と書いてございます。28ページにDとして、器具もしくは容器 包装またはこれらの原材料の材質別規格の1として、ガラス製、陶磁器製、またホウロウ 製の器具または容器包装の規格基準となっておりますが、2番目にプラスチック、合成樹 脂製の器具・容器包装の規格基準がございます。そして、このプラスチックにつきまして は、資料3−2にございますように、いわゆる一般規格を満たさないといけないわけでご ざいますけれども、それが参考資料の29ページから下線を引いてあるところで規定されて いるものでございます。今回の審議におきましては、この中でいわゆる個別規格としてポ リ乳酸の規格基準を設定するものでございます。一般規格につきましては、3ページの資 料にありますように、材質試験、溶出試験が規定されております。  次に、ポリ乳酸の概要でございますけれども、ポリ乳酸の構造式、製造用原材料のモノ マーである乳酸あるいはラクチドの化学構造式等を4ページに記載しております。このポ リ乳酸は、植物資源を原料として製造可能なポリマーでございます。ただ、乳酸にはD− 乳酸とL−乳酸の光学異性体があることから、米国ではポリマーとしてはD−乳酸の含量 が6%以下のもの及び6%を超えるものの2種類に大別されております。このポリ乳酸は 食品用の器具・容器包装のほかに、雑貨であるとか、農業・土木資材等に今現在使用され ております。  「2.食品分野での使用状況」につきましてですが、現状の使用状況を5ページの表に まとめておりますけれども、まず、いわゆる飲料用のコップ、食器、スプーン、フォーク などで実用化されております。これらにつきましては、食費衛生法上いわゆる器具という 名称で飲料用のコップ、食器、スプーン等は分類しております。また、容器包装としまし ては、卵パックであるとか、野菜や果物等の農産物の袋やあるいは総菜パック、弁当用の トレーというような菓子類等のトレー等、これらをいわゆる食品衛生法上、容器包装と分 類しております。  米国・欧州等ではこれら使い捨て食器のほか、いわゆる野菜、サラダ、パン、ヨーグル ト等の容器包装としても実用化されております。なお、欧米では酒類の容器としては実用 化されておりません。  なお、今国内では非常に少量のポリ乳酸が実用化されておりますが、この使用量につい ての公表データは今の時点では入手できておりません。  ポリ乳酸の種類によって、どのような器具あるいは容器として使われているかを示した 表が5ページに載っておりますが、表の中でD体含有量と書いてありますのは、D−乳酸 の含有量でございます。この6%以下あるいはそれを超えるかによって、あるいは6%以 下となってもさまざまなグレードのものが出回っております。  この容器の諸外国での規制状況でございますけれども、米国でNature Works社製のポ リ乳酸が、FDAのFCNの登録申請制度により認可されております。また、その認可の 際には2種類認可されておりまして、D−乳酸の含有量が6%以下のもの、これはFCN178 と呼んでいるものでございます。及び6%を超えるもの、これはFCN475とされておりま す。これは、いわゆる米国では特定の会社にFCNの登録制度として登録申請されている わけでございますが、欧州におきましては、容器包装に使用できるモノマーとして乳酸が 認められておりますので、乳酸から製造されるポリ乳酸も容器包装として使用できる形に なっております。  なお、米国ではFCNでの登録申請という形とともに使用条件としまして、D−乳酸が 6%以下のものにつきましては、注1にありますような、BからHまでの条件での使用が 認められております。  一方、D−乳酸が6%を超えるものにつきましては、CからGが認められておりまして、 6%の上下を挟んで、Bの沸騰水滅菌あるいは冷凍・冷蔵で使用する際に容器ごと再加熱 する目的の調理済み食品というものの使用について、制限が違っております。  4として、食品安全委員会の評価結果があります。これは平成17年5月に評価結果が通 知されております。この評価の概略は資料の19ページ以降をごらんいただけますでしょう か。資料3−3として「記」以下に評価結果が記載されております。安全委員会での健康 影響評価としましては、ポリ乳酸を器具または容器包装として使用する場合に考慮すべき 物質及びそのADIは以下のとおりである。ラクチド0.1mg/kg体重/日。ただし、D−乳 酸の含有率、添加剤等の組成及び使用条件で溶出性、分解性が大きく変化する可能性があ ることから、適切な管理措置の設定が必要であるという結論をいただいております。  ここで安全委員会の評価を簡単に説明させていただきたいと思います。まず、21ページ は先ほどの資料と基本的に同じものでございますので省略させていただいて、22ページを ごらんいただけますでしょうか。ポリ乳酸の特性としてここでまとめられておりますけれ ども、特に「2−1.ポリ乳酸の特性」の最後でございますが、ポリスチレンあるいはポ リエチレンテレフタレートと同様の透明性、機械的特性を有しているが、耐衝撃性、柔軟 性が低く、非晶質の状態では耐熱性が低いとされているというような特性として評価され ております。  あと、分解性の説明では、20%エタノール溶液中で著しく分子量が低下する一方、オリ ーブ油の脂溶性では分子量の変化は認められなかったという特性になっております。  製造用原料として23ページに乳酸あるいはラクチド等の特性、あるいは2−3の製造用 添加剤として、(1)2−エチルヘキサン酸スズ(2+)塩が記載されております。  ポリ乳酸の製造方法につきましては2−4にまとめられております。図2にございます ように、通常は乳酸から直接構成するよりも、ラクチド経由でポリ乳酸は合成されている ものになっております。  次に、溶出試験でございますが、食品擬似溶媒を用いた溶出試験の結果を表4でまとめ ております。この試験法は米国FDAのガイダンスに準拠した試験でございますけれども、 この結果としましては、アルコール性溶液で著しく乳酸の溶出が増大しており、また、D −乳酸を多く含む樹脂においては、更に溶出量が増大していたという結果になっておりま す。  また、溶出したものの化合物は何であるかというものが25ページの表4の下にまとめら れておりまして、主な溶出物は乳酸あるいはラクチド及び乳酸オリゴマーであると報告さ れております。  添加剤の溶出といたしましては、2−エチルヘキサン酸スズが触媒として用いられており ますが、その物質についての溶出試験は表5、表6にまとめられておりまして、いずれも 検出限界以下ということになっております。  プラスチックの一般規格に適合する必要がありますが、規格試験の結果を表7、表8に まとめてございます。材質試験でのカドミウム、鉛、溶出試験では重金属、過マンガン酸 の消費量等、いずれも規格基準を満たしているものでございます。  3−4としまして、溶出試験のまとめが示されております。  次に、これらの安全委員会での毒性評価につきまして、簡単に申し上げさせていただき ます。まず、4−1としてポリ乳酸、ポリマーとしての特性試験をまとめております。吸 収、分布、代謝及び排泄にありますとおり、ポリ乳酸の生体内での分解は酵素的または非 酵素的な加水分解と代謝の2段階で生じることが報告されております。また加水分解され ることで高分子鎖が切断され乳酸となり、最終的に多くの臓器で二酸化炭素と水に代謝さ れるとまとめられております。  毒性試験は、急性毒性試験、遺伝毒性試験、細胞毒性試験、局所刺激性試験、皮膚感作 性試験等がまとめられております。これがポリ乳酸の毒性試験のデータでございます。  4−2、製造用原料である乳酸について評価されておりまして、乳酸の現状としまして は、いわゆるJECFA等で評価が実施されており、ヒトにおける通常の摂取後の代謝経路は 十分に確立されており、乳酸は炭水化物の代謝の重要な中間体である。しかし、最大耐量 の確定はできておらず、生後3か月の乳児では、少量のDL−乳酸またはD−乳酸を利用 することが困難であるという幾つかの証拠があるというような評価がJECFAでされてお ります。その上で、JECFAとしては乳酸のADIは設定する必要はない、しかし、乳児用 の食品にD−乳酸、DL−乳酸を使用すべきではないという判断となっております。  また、米国におきましては、GRASとして扱われております。  欧州におきましては、乳幼児の食品に対してはL−乳酸のみを用いるべきであるとなっ ております。国内では食品添加物あるいは医薬品製剤原料としての使用が認められており ます。  このような形になっているものでございますが、急性毒性、亜急性毒性、乳幼児での事 例等、いわゆる乳幼児40人にDL−乳酸を含む市販の食事を与えた場合での事例等が報告 されております。また、発がん性、発生毒性、催奇形性、遺伝毒性の試験についての結果 がまとめられております。  次に、ラクチドについての毒性試験がまとめられております。急性毒性試験、亜急性毒 性としてはイヌを用いた2週間亜急性、イヌを用いた13週間亜急性毒性試験がまとめられ ておりまして、この13週間亜急性毒性試験では、病理学的検査では100mg/kg体重投与群 において雌雄で胃の病巣が認められた。組織病理学的検査では胃粘膜の潰瘍形成が認めら れている。そのほかリンパ節、肝臓での出血、膀胱の病巣等も観察されたが、いずれも偶 発的なものと判断されております。  あと、遺伝毒性、局所刺激性、皮膚感作性等についてまとめられております。  33ページには、製造用添加剤の試験がまとめられております。この添加剤のうち2−エ チルヘキサン酸につきまして、特に発生毒性の結論として、本試験のNOAELは母体毒性 として250mg/kg体重、胎児毒性としては100mg/kg体重とされております。  その他、New Zealand白色ウサギをを用いた試験におきましては、本試験のNOAEL は、母体毒性としては25mg/kg体重、胎児毒性としては250mg/kg体重以上とされており ます。  遺伝毒性等については記載の通りでございまして、スズにつきましても暫定耐容1週間 摂取量(PTWI)がJECFAでは14mg/kg体重が設定されているということがまとめられて おります。  以上の毒性試験のデータをまとめた上で、5として食品健康影響評価としまして、乳酸 につきましては5−1で、器具または容器包装の原材料として使用された場合の乳酸の食 品健康影響評価としては、懸念される健康影響評価は想定されず、また乳児への影響に関 しても、ポリ乳酸から溶出する乳酸量を考慮した場合、容器包装からのD−乳酸の溶出に よる乳児への健康影響は極めて小さいものと考えられるという形でまとめられております。  ラクチドにつきましては、同じくラクチドのADIは、イヌの13週間亜急性毒性試験か らNOAELは100mg/kg体重/日に種差10、個体差10及び短期の毒性試験のNOAELとい うことで10を加味した安全係数1000を用いて、0.1mg/kg体重/日と設定されると考えら れるという形になっております。  評価としては、容器包装の原材料として使用される場合のラクチドの健康影響評価とし ては、容器包装からのラクチドの溶出量を考慮した場合、毒性評価から設定されるADI を超過する可能性は否定できないことから、健康影響を考慮する必要があるとまとめられ ております。  あと、触媒の2−エチルヘキサン酸スズにつきましては、現時点ではウサギの発生毒性で 認められた母体毒性に対するNOAEL25mg/kg体重/日が最大無毒性量であると判断される が、情報が不足していることから、ADIの設定には至らないものと考えられるとまめと られております。ただし、容器包装から2−エチルヘキサン酸の溶出量を考慮した場合、触 媒としての添加量が微量であること、溶出試験において溶出が認められなかった(検出限 界以下)であったことから、容器包装からの2−エチルヘキサン酸の溶出によるヒトへの健 康影響は極めて小さいものと考えられるとまとめられております。  無機スズにつきましては、結論として溶出試験で溶出が認められなかったこと(検出限 界以下)から、容器包装からの無機スズの溶出によるヒトへの健康影響は極めて小さいも のと考えられるとされているところでございます。  その他、結論等がまとめられております。  以上のような健康影響評価を踏まえまして、資料の7ページに先ほど申し上げましたと おり、ラクチドのADIが設定されておりまして、適切な管理措置の設定が求められてお ります。このため以下の検討させていただいております。  まず、ポリ乳酸の安定性を検討しております。ポリ乳酸の安定性としましては、先ほど から申し上げている資料3−3の表4等で、長期間または高温における影響を指摘されて おりますので、以下の検討を行っております。結果は、表1として9ページにまとめられ ております。この表1に試料4とされておりますが、これは10ページの表2の試料4と同 一でD−乳酸含量が11.3%のものとなっております。このものにつきまして、温度40℃を 1、3、6か月、60℃を1日、10日、95℃を30分、2時間等で安定性を見たものでござ います。この結果は、40℃3か月までは、溶出物として主にラクチド及び加水分解された 乳酸が検出されているような形になっております。しかし、乳酸が更に長期または高温に なると、ポリマーが分解して生成したオリゴマーの溶出が認められております。  あと、オリゴマーは更にラクチド、乳酸等に分解され、微生物が存在すると二酸化炭素 または水になって消失すると考えられます。  また、表1を見ていただきますと、乳酸換算の合計量、いわゆる乳酸とラクチドとオリ ゴマーを合計換算したものは、アルカリ分解して得られた総乳酸の値とほぼ一致するもの となっております。  次に表2、40℃で6か月の保存に対して、長期間高温値におけるポリ乳酸の総乳酸溶出 量の比較をしたものでございます。これは特に試料4におきまして60℃、10日間で高くな っている等の結果になっております。しかし、結論として、ポリ乳酸は40℃では比較的長 期間安定であることが、この結果から判断されるものと考えております。  あと、60℃での結果でございますけれども、先ほど申し上げましたように、10日間の保 存では試料4におきまして少し高いものになっております。あと、95℃の保管では、やは り試料4におきまして約26となっておりまして、いわゆる60℃10日間と同様に比較的高 い値となっております。  資料の10ページ目、水以外の擬似溶媒につきましては、資料3−3にありましたような 形になっております。  このような安定性の結果の検討を踏まえまして、ポリ乳酸は40℃ではいずれの試料も長 期間にわたって安定であった。しかし、D−体を含有する試料では、試験温度がガラス転 移点を超える60℃以上では溶出量が増加しております。また、水に比べてアルコール溶液 での溶出が高くなっております。D−体含有量が高いポリ乳酸では温度やアルコールによ る溶出量の増加が著しく、これらの条件ではポリマーの分解が容易に促進されることが示 されております。このため、D−乳酸含有量が高い試料では、特に高温での使用に際して 制限を加える必要があると結論させていただいております。  このため、6のポリ乳酸の管理措置として、以下、個別規格を設定することをまとめて おります。表3におきましては、上の材質試験、溶出試験は先ほど示した一般規格の試験 でございますが、参考に挙げております蒸発残留物試験が、今回新たに個別試験として設 定しようとするものでございます。これは規格基準にあります30ppm以下という形になっ ております。蒸発残留物試験は試験結果等を踏まえて、11ページの(1)にありますように、 30μg/ml以下とすることが妥当と考えております。  次に、成分規格について、食品安全委員会よりラクチドの管理を求められておりますけ れども、先ほどの表1にございましたように、総乳酸といわゆる乳酸、ラクチド、オリゴ マー等の合計がほぼ一致しておりますので、ラクチドは、総乳酸を管理することによって 可能であると整理しております。  そして、ラクチドの摂取量がADI値0.1と指定されましたので、容器からの食品への移 行量である溶出限度値を以下に述べますように米国の考え方、あるいはEUの考え方をも って整理しております。  まず、米国での考え方に基づいて整理されたものを説明させていただきますと、溶出限 度値としまして米国の考え方に準じて日本でのデータを当てはめてみました。まず、国民 一人当たりの平均食品摂取量は3kg、平均体重を50kgとしていおります。市場での占有率 は現状では統計データがございませんが、極めて低いと考えております。将来的にどうな るかという数字は算出できませんけれども、米国では市場占有率5%を推定の際に使って おりますので、今回は5%を使っております。この5%は我が国での樹脂の占める現在の 市場占有率が、5%を超えるものはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタ レート、ポリスチレンのみですので、この5%という数字は市場占有率としては非常に大 きいものと考えております。  また、この食品中の濃度というのは溶出液中の濃度で換算すると、いわゆる食品1kgが 一辺10cmの立方体とみなすと表面積は600cm2となりますので、この換算係数のような補 正をしております。そのような補正をして計算した結果が、次の式でございます。ラクチ ドの溶出限度値としましては、27.8μg/mlと計算されます。  また、ラクチドはアルカリで分解されて2分子の乳酸を生成するために、その2分子に 換算すると1.25倍となりますので、最終的には総乳酸の溶出限度値としましては、34.8μ g/mlという形で、溶出限度値がこれ以下であれば、ADIで定められた値を暴露量が下回 ると計算されます。  一方、EUの考え方で計算しますと、5.29μg/mlとなります。しかし、EUのヒトの暴 露の評価の考え方は、すべてのポリマーにおいて使用可能なモノマー及び添加剤のリスト に基づく管理措置であるため、樹脂ごとの管理措置を講じておりません。したがって、食 品と接触するすべての合成樹脂が当該物質を含有する可能性があるとして暴露評価を行う ものでございます。ただ、EUの考え方の計算では、食品摂取量のうち合成樹脂に接触す る可能性のある食品は1kgとしております。これはEUの考え方を踏まえての数値でござ います。このEUの考え方で算出したものは、先ほども言ったように5.29μg/mlとなりま す。これは、アメリカのFDAの考え方とEUでの考え方を比較しまして、日本では合成 樹脂ごとに個別規格を策定して管理していることから、EUのような全樹脂を対象とする 管理手法よりも、米国FDAの樹脂ごとの管理手法に類似しており、それに基づき溶出限 度値を計算する方が実態に即していると考えております。  以上のことから、総乳酸の溶出限度値は34.8とするのが適切と考え、このようなことか ら、規格値としましては30μg/ml以下とするのが妥当と考えております。  管理措置の2として、D−乳酸の含有量が高いポリ乳酸の使用条件を検討しております。 これは先ほど高温での安定性についての検討を踏まえて検討したものでございますけれど も、あと米国等での使用条件等も勘案しまして、資料の14ページにまとめてございますが、 我が国の器具・容器包装の規格基準には、アメリカにありますような容器の使用基準という ような形で設定されておりませんので、いわゆる同等の規制を掛けるために製造基準に制 限を反映させるのが適当と考えて、「F 器具及び容器包装の製造基準案」と示させていた だいておりますけれども、使用温度が40℃を超える器具又は容器包装を製造する場合は、 D−乳酸含有率が6%を超えるポリ乳酸を使用してはならない。ただし、100℃を超えない 温度で30分以内または66℃以下で2時間以内の使用にあってはこの限りではない。これは 先ほどの安定性のところで確認できた短時間での使用については安定性が確認されている ということで、この限りではないとさせていただいております。  以下は、規格基準の案でございます。  長くなって申し訳ありません。説明は以上でございます。 ○西島部会長 どうもありがとうございました。詳しい御説明でしたけれども、ただいま の御説明につきまして、御質問・御意見等がありましたら、お願いいたします。改正案が 15、16ページということになるわけですね。いかがでしょうか。  今日は、お手元にもう一つ資料がございますけれども、これはよろしいですか。 ○事務局 これは、資料3−2の8ページに参考として文献を引用しておりますので、そ れを参考までにつけさせていただいております。 ○西島部会長 わかりました。  河村先生、何か追加はございますか。 ○河村委員 今の報告書資料の12ページですけれども、市場占有率が5%を超えているも のは、ポリエチレンナフタレートではなくて、ポリエチレンテレフタレートだと思います。 ○西島部会長 12ページのどこでしたか。 ○事務局 真ん中のパラグラフの「参考」と書いてある5行上で「ポリエチレン、ポリプ ロピレン、ポリエチレンナフタレート」と書いてございますが、これがポリエチレンテレ フタレートです。 ○西島部会長 わかりました。ありがとうございました。  そのほか御意見等ございませんでしょうか。では、特にないようでしたら、この報告案 につきましても、当部会の報告ということにさせていただきたいと思いますが、よろしい でしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○西島部会長 ありがとうございます。それでは、部会の報告ということにさせていただ きます。  では、事務局からこの点につきまして、今後の手続について御説明をお願いいたします。 ○事務局 本日、挙げさせていただきましたこの2つの課題につきましては、今後パブリ ックコメントあるいはWTO通報等の手続をさせていただくとともに、食品衛生分科会に 諮らせていただきたいと考えております。  あと、先ほど1点申し上げるのをまた忘れてしまったのですが、ポリ乳酸につきまして、 今日御欠席の土屋委員からコメントをいただいております。ただ、内容としましては安全 委員会の評価書にあります細胞毒性に関してのコメントでございましたので、一応これに ついては本日の議題とは直接関係しないものと考えております。 ○西島部会長 分かりました。ところで、これが、そのサンプルなわけですか。 ○事務局 透明のものと食器がポリ乳酸でございます。一応、透明のものは食品容器にな り得るものかと思います。コップ等で使っているものは、器具、容器の両方に使われる可 能性がありますけれども、特に平たい容器につきましては、サラダとか惣菜等に使われる 可能性があると思っております。 ○西島部会長 ありがとうございます。  それでは、ただいまの審議は終了いたしまして、議題3でその他ということですが、事 務局から何かございますか。 ○事務局 いえ、ございません。 ○西島部会長 先生方もよろしいでしょうか。  それでは、以上をもちまして本日の部会を終了させていただきます。どうもありがとう ございました。 照会先:医薬食品部食品安全部基準審査課     (03−5253−1111 内線2453)