07/03/05 第5回 ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会議事録 第5回 ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会          日時 平成19年3月5日(月)          10:00〜11:30        場所 厚生労働省専用第21会議室 ○中央産業安全専門官 時間より少し早いのですが、皆様お揃いでいらっしゃいますの で、ただいまより「第5回ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会」を 開催させていただきます。まず、議事に入ります前に、配布資料の確認をさせていただ きます。まず、1枚紙で、議事次第がございます。議事次第の下に配布資料と書いてあ りますように、本日の資料は、本検討会の報告書(案)でございます。2つに分かれて おりまして、1つが報告書(案)の本文で、17頁まであります。もう一綴りが資料にな っていまして、資料1から21まで、62頁です。  それでは早速議事に入っていただきたいと思いますので、議事の進行を平野座長にお 願いしたいと思います。 ○平野座長 早速議事に入りたいと思います。本日の議題は、報告書の検討です。これ まで4回議論を重ねてきましたので、それに沿っているかどうかということを皆さんに ご検討いただくということになります。  それでは事務局のほうから説明をしていただきたいと思います。 ○副主任中央産業安全専門官 それでは私のほうから報告書の説明をさせていただきま す。「ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会報告書(案)」です。目次、 委員の名簿が付けてあります。1頁ですが、1「検討の経緯」です。ボイラー等の自主 検査等に関しまして、規制改革・民間開放推進3カ年計画において、次のように盛り込 まれたということです。自主検査の導入・拡充。労働安全衛生法の認定制度では、ボイ ラー及び第一種圧力容器について、高圧ガス保安法のような自主検査が認められていな い。したがって一定の安全管理基準を満たす事業者において、自主検査が可能となる認 定制度・基準について、安全の確保を前提に検討する。その結果、認定制度・基準が整 備された場合には、認定基準に合致する事業者について、自主検査を認める。このよう に記述がされています。本検討会においては、労働安全衛生法のボイラー、第一種圧力 容器の性能検査について、自主検査とすることが適当か。適当な場合、その認定制度・ 基準について検討を行うこととしたということを記述しております。  2頁の2です。「ボイラー及び圧力容器等の定期的な検査に係る現行の制度」ですが、 この部分は簡単な説明に留めたいと思います。ボイラー及び第一種圧力容器というもの がどのようなものかということについて、資料2に記述をしまして、これらが、爆発や 破裂の危険があり、過去にも災害が発生している、それを資料3につけております。ボ イラー及び第一種圧力容器については、使用開始後、一定の期間ごとに、登録性能検査 機関が実施する性能検査及び事業者が実施する定期自主検査を義務付けているというこ とです。2頁の下から、性能検査の項目が表になっていますが、本体では割れとか腐食 などについて、自動制御装置、安全弁・圧力計などの付属品について、書類の審査と実 機の検査によって合否を判定するというものです。  3頁のイです。登録性能検査機関の基準などを書いています。法定の検査設備、資格 を有する者が一定の数いて、検査をするというようなことを要件としています。  4頁の登録性能検査機関につきましては、cですが、公正に性能検査を行うことが義 務づけられておりまして、例えば、親会社や自らが所有するものについては、性能検査 を行わないこととなっております。  次に連続運転の制度について、(2)に記述をしております。性能検査を受けるときには、 原則1年に1回運転を止めて受ける必要があるわけですが、所轄の労働基準監督署長が 認定をした場合には、運転を止めることなく、連続運転を行うことができるということ です。この設備を停止しての開放検査は2年ないし4年に1回ということになりまして、 それ以外の年は運転時の検査ということになります。丸に書いたような絵になっていま すが、2年ないし4年に1回運転を止めて開放検査をする、残りは運転時検査になると いうことです。4頁の下、2年連続運転の認定基準についてですが、事業場の組織、安 全管理、ボイラー又は第一種圧力容器の運転管理及び保全管理などが適切に実施されて いるということが、要件の1つです。ほかにも重大災害、法令違反がないことと定めて おります。4年連続運転になりますと、これに加えまして、適切なボイラー又は第一種 圧力容器の経年損傷の防止対策を講じていることがdで、cは、腐食などについて、8 年以上の余寿命を有することということで、きちんとした管理がされていることが、認 定の要件となっています。  5頁の下ですが、4年に1回の設備を停止しての検査周期を国際的に見ますと、アメ リカ、ドイツとは周期がほぼ同じということで、ドイツは少し厳しい圧力テストも要求 されている。イギリスは日本よりも周期が少し長いですが、フランスは短いというよう なところです。これは資料4の23頁に出ております。こうした連続運転の認定を受けて いる事業場が2年連続運転で174、4年連続運転で56事業場がありまして、石油精製の 事業場はほとんどが認定を受けているという実態になっています。ポイラー、第一種圧 力容器が認定を受けているものが1万2,000基というような実態です。この認定につい ては、認定の取消しというものがありまして、先ほどの認定の基準を満たさなくなった 場合で、先ほどの重大災害、法令違反があった場合なども、この取消しに該当するわけ です。保全管理、安全管理について適合の確認により認定を受けておりますけれども、 これらについて、認定を受けることなく変更したという場合も、取消しの場合に該当す るということです。5頁のいちばん下、詳しく資料5の27頁に出ておりますが、認定の 取消しが計16件、平成17年と18年で7件発生しているという状況です。  次に6頁です。高圧ガス保安法の設備についての説明を入れております。高圧ガス保 安法は、ゲージ圧力、1MPaと書いておりますが、これは大気圧との差で10気圧という 圧力のものについて、製造設備について定期的な検査などを義務づけている法律です。 (1)にありますように、この定期的な検査を保安検査といいますが、高圧ガス災害が発生 するおそれのある特定施設については、定期的に検査を受けなければいけないというこ とです。この原則は、県知事、指定された機関などの第三者検査ということですけれど も、認定を受けることによって、自主検査ができるという仕組みになっております。こ れを認定保安検査実施者と言います。この認定の基準につきましては、7頁です。主な 基準についてですが、例えば、dにありますが、事業所の保安検査の実施について次の 基準に適合していることということで記述されております。事業所については、まず検 査組織・体制が適切に整備されていることということで、これは一定の知識、経験を有 する者が実施する、あるいは検査設備がどのようなものが必要かということが書いてあ ります。  (c)は、検査管理と書いてありますが、これは検査の監査のことです。監査の体制 が事業所に整備をされていることも認定要件に入っております。以上が事業所です。  更にcのところに、企業の体制と書いてあります。本社の体制として、(b)に、先ほ どの検査管理という監査が出てきまして、その事業所の監査を行う組織に対して、監査 が適切に実施されるように、文書化され、実施されているかどうかということを本社に ついても見るという基準になっています。ただ、この部分は、企業内の監査だけでも可 となっております。  (c)は、後に出てくるコンプライアンス、あるいは遵守の体制のことですが、法令 違反などに関する報告の受付などの組織が設置され、運営されていることという要件も 入っています。  この高圧ガス保安法の認定の取消しにつきましても、災害が発生した場合、あるいは 認定要件に該当しない、eの虚偽の届出というのがありますが、こういう場合には取消 しを受けることになるということで、現在までに93事業場が認定を受けておりまして、 12事業場で認定の取消しがあったということです。  次に大きな3番です。「石油精製業界の要望について」です。ボイラー及び第一種圧力 容器の性能検査につきまして、一定の基準を満たす事業者に対し、自主検査を認めるこ とを要望している石油業界、石油連盟に対しましてヒアリングを行って、その要望内容 を以下に書いています。資料では36頁がいちばん見やすいと思います。現行制度が左に ありまして、右側が自主検査にした場合です。本文のほうでは、まず現行制度下では、 次のような手順で性能検査が第三者機関により行われています。まず(1)として、登録性 能検査機関との受検日程の調整を2ヶ月ほど前にする。(2)が一次社内検査、清掃を実施 し、(3)二次社内検査を実施しまして、社内検査の結果の合否を判定する。そこまで行い、 性能検査を受けるということになります。  (2)は自主検査とした場合に、どのような手順になるかということです。まず検査 機関との調整は不要で(1)の一次社内検査から始まりまして、(2)の二次社内検査を行うと いうことです。付け加えられましたのは、(3)の社内検査について監査を行うということ で、社内監査組織が一次社内検査、二次社内検査に立ち会うとともに、自主検査報告書 の審査を行いまして、機器ごとに総合判定を行う。二次社内検査、書類審査については、 第三者機関など、外部の監査委員がいつでも立ち合うことができると、そのような内容 で要望しているというものです。  資料8でいいますと、32頁の下の部分に、石油連盟ではこういった自主検査制度を導 入することによって、次のような定期改修期間を短縮できるメリットがあるということ です。ア、工程変更が柔軟になり一連の工程を連続して予定できる。イ、受検設備全数 の社内検査終了を待たずに、性能検査を実施できる。ウ、性能検査立ち合いのための担 当者が拘束されなくなる。エ、性能検査の後、当日後刻に全設備をまとめて合格内示の 連絡が行われるが、それを待つことなしに、復旧工事に着手できるということで、時間 の短縮ができるということです。このコスト削減効果ですが、9頁の上です。業界によ れば設備を止めての改修工事の期間を1、2日程度短縮できるということで、標準的な 製油所の1日の機会損失が5,000万円であるということからすれば、業界全体で年間4 億円程度というコスト削減に相当するというふうに見積もられています。  次に4です。「石油精製業界の設備及びその安全の現状」ということで、これはデータ を中心に記述をしています。石油精製業の主要な設備の建設年代で、43頁のグラフにあ りますように、1963年から1972年までということですから、35年以上設置してから経 過したような設備がいちばん多くて、全体の53%を占めているということです。次に多 いのが、25年以上経っている設備が24%ということで、この2つを合わせますと、大体 4分の3ぐらいが20年を超えているということになります。  次に資料10です。これは安藤先生にも資料提供をいただきまして、初めて出しており ますので、詳しく説明をしたいと思います。この資料44頁につきましては、石油精製業 の4年連続運転の認定を受けた、ボイラー、第一種圧力容器についてまとめたものです。 腐食の箇所などによってカウントをしまして、その機器でいちばん重い腐食などの箇所 によって、A区分からC区分に分類をしています。Cがいちばん重いというか、補修と か改造などをせざるを得ない程度まで腐食した機器ということで、Aが腐食の程度が軽 度なもの、Bはその中間です。腐食のないものもあるということで、この表4ランクに 区分をしているということです。この中でC区分の数字の、10年以上20年未満のとこ ろを見ていただきたいのですが、これだけの年数が経ったもののうちの19%がC区分に なっております。それがもう少し年数が経って20年以上30年未満ということになりま すと、29.5%ということで、大きく増加をしており、それが30年以上になってもそれほ ど増加はしていないということです。つまり、損傷の率が20年を境に大きく増えている ということです。B区分につきましても、同じような傾向があるということになってい ます。このデーターを受けまして、本文の9頁の真ん中辺りですが、石油精製設備のボ イラー及び第一種圧力容器について、設置後年数とその腐食状態の分析結果を見ると、 設置後年数が20年を超えると、腐食状態の悪いものの割合が大きく増加しているという ことです。一般に、その下に図がありますが、設備の設置後の年数と故障率の間には、 バスタブの形に似た故障率曲線が一般に存在するということで、20年を超えた設備のと ころで、故障率が急に上がっているというのは、まさにこの絵でいうところの第II期か ら第III期というところに移っていると考えられます。この第3期の摩耗故障期間に達し ているということになりますと、これは急激に故障率が増加しますので、十分な維持補 修を行い続けないと、故障率を低く押えることができないと、こういうことになるわけ です。  次に10頁です。石油精製業界の保安防災コストの推移です。保安にかけているコスト を見ると、平成6年頃がピークで、1,329億円あったということですが、平成15年には 587億円まで減少したということで、その後多少増え734億円が最新の数値ということ です。設備の定期修理にかかる費用も同様の傾向で、ピーク時から比べますと、平成17 年の数字が半分程度に留まっているという状況です。  次に製油所の人員の推移ですが、これについては、ピーク時の73%程度ということで、 内訳で見ますと、資料12の46頁です。ここに安全管理部門、保全管理部門、運転管理 部門と3部門挙げております。これらの中では保全管理部門の人員が71%と、いちばん 減少率が大きいということになっています。これはアウトソーシングが進んだためと説 明されております。この間の原油処理量がピーク時でいちばん減ったときでも、94%で あったということからしますと、コスト、人員の減少はかなり大きいのではないかとい うことが考えられますので、10頁の中ほどに、設置後年数が長い石油精製設備について は、設備の摩耗、経年劣化等による故障率が漸次高くなることは避けられないことから、 それら設備で故障率を一定に保つには、耐えず適切な維持補修投資を行うことが必要と なるが、石油精製業界の設備の定期修理にかかる費用及び製油所における人員数は抑制 傾向にあると記述をしています。  次に、事故災害の発生状況です。まず最初に、全業種において、ボイラー及び第一種 圧力容器の爆発、破裂等の災害を47頁に入れています。年間2〜6件、全産業を見ても それぐらいで、特にコンビナートの事業場も見当たらないという状況です。その原因は、 作業手順の誤り、日常点検の未実施などとなっています。一方、コンビナート関係はイ とウですが、高圧ガス製造事業所の事故、48頁に出ていますが、上のグラフ、下のグラ フともに最高の件数ということになっております。危険物施設については、49頁に出て おりますが、これも火災・漏えい事故については、平成17年で580件ということで、平 成6年ぐらいから見ると、倍ほどになって、これは過去最悪ということになっています。  石油精製業についての資料を50頁に入れております。労働災害の発生状況につきまし ては、50頁の下2つの欄ですが、製油所における労働災害による死傷者は増減をしてお ります。平成17年は、下から2番目が製油所の人数です。12名。下がいわゆる請負の 事業者の数が24名ということで、多発をしているという状況です。  51頁ですが、製油所における異常現象ということで、爆発・火災・漏えいなどは大体 10件台ということで、ずっと推移をしておりまして、少ない年は10件を切る年もあり ました。平成18年には、資料18に出ておりますが、1月に5人死亡のものがあったの を皮切りに、爆発・火災も12件と多発いたしまして、異常現象が23件という、近年に ないぐらい多くなっているという状況です。とりあえず、一旦ここで切ります。1から 4までの説明は以上です。 ○平野座長 それでは1〜4までについて、皆さんのご意見を伺いたいと思います。い まご説明いただいたのは今回の検討会の議論のバックグラウンドの話ですので、推定の 仕方がおかしいのではないかというようなことがありましたらお願いします。 ○小澤委員 あまり大したことはないかもしれないのですが、石油業界のほうで、経費 が下がってきて、アウトソーシングが進んでいるというときに、同時に検査技術そのも の、社内の自主検査をする人員の技術的な維持などはできているのかどうか、その辺は どうですか。何となく、技術をどのように維持するのかというのが、どこかに入ってい るというのは大事ではないかという気がするのですけれども。外に出しているというか、 例えば、ボイラー協会とかそういうところは、検査の専門家ですので、いろいろなもの を見て技術維持ができているはずなので、自主検査にすると、そういうものが、だんだ ん希薄になってくるという可能性もあります。そういう論点はどこかに必要なのかなと いう。順不同で言っているだけですから、どこに書いたらよいというのはわからないの ですが。 ○副主任中央産業安全専門官 いまのは10頁辺りになるのでしょうか。人員については ここで数しか書いてないのですが、要するに中身というものも問題で、そういう人たち の技術水準なりをきちんと確保していくことが必要ではないかということを、(1)辺り に書くことでよろしいでしょうか。 ○小澤委員 そういうことがいちばん大事だなというふうに思いました。 ○平野座長 数年前に、人員削減による安全部門の縮小はどうなっているのかというこ とについて議論をして以後ずっと注意しているのですが、安全部門の縮小にあたってど うも自主保安の内容を再検討されていないようです。いま小澤委員がおっしゃったよう に、見かけ上は人数が減っています。保安の担当者がどこに行ったかというと、検査会 社に行って、その検査会社が自社の業務を請け負うという、悪い構造になっているよう な感じが強いですね。このような対処法は、日本人の人事管理そのもののある種の暖か みであるかもしれないけれど、そうするからいま問題になっているいろいろな事件が起 こっていると思います。やはりどこかできちんと検討して、それでは日本流にするには どうしたらよいかということも含めて、いろいろな改善提案してほしいと考えます。 ○小澤委員 大事だと思いますね。 ○平野座長 議論をしても、おそれがあるとか何とかばかりで内容が明確にならない。 ○小澤委員 飛行機などでもアウトソーシング化してしまって、そこの検査そのものの クオリティーが悪くて。日航でしたっけ、エンジンが右と左が入れ変わって、そのまま 2、3年間気がつかなかったという話がボコボコ出ていますからね。それは飛行機だけ ではなく、ボイラーでも何でも同じ話になり得ると思います。 ○平野座長 そうです。うがった見方をすると、怒られるのかもしれないけれど、実は 日本の行政、官僚組織にも同じようなことがあって、よく見慣れた人がどこかの会社に いることがあります。しかし、日本には日本のいいところがあるので、うまく修正をす ればいいのではないかと思います。そのうちに、このようなことについてまた問題提起 していただくとありがたいと思います。ただ、労働環境をよくしていかなければいけな いのは当然のことで、事故はなるべく起きないような体制がほしいですね。今回は突っ 込んだ議論はできませんし、実際やってみませんとどうなるかわかりません。ほかに何 かご意見はございませんか。もしよろしければ、続けて後半の説明をしていただき、前 のほうに遡ってもいいので、また議論していただきたいと思います。 ○副主任中央産業安全専門官 それでは、第5以降についてご説明申し上げます。11頁 の5です。「自主検査制度の導入の可否について」ですが、本検討部会では、自主検査制 度を導入することが適当かどうかの検討に当たり、石油精製業界の検査技術力・管理能 力の観点、社内検査の公正性・独立性の確保の観点、昨今の安全、安心に関する社会的 環境の観点のそれぞれから、現状について評価を行った。(1)検査技術力及び管理能力 の観点です。これについては資料19の56頁になりますが、ここにあるのは平成18年度 のものも含んでおりますが、平成14年以降発生した爆発・火災事故のうち、設備の腐食・ 摩耗などによって発生したものを抽出して、全部で12件書いてあります。これを見ると、 自主検査を行っている高圧ガス保安法の設備はあるのですが、ボイラー、第一種圧力容 器では発生していないということです。また、発生状況、業界のコメントも入れており ますが、事故の発生の原因というものを見たときに、工学的に未知の現象であった、あ るいは予測不能であったというものは2、3例にとどまっており、大部分は過去の経験 の集積をやることで、経年損傷の防止、管理を適切に行えば防ぐことができた事故であ ると考えられます。  イですが、資料は61頁にあります。この検討会で登録性能検査機関に対してヒアリン グを行ったのですが、その結果をまとめたものを入れております。第三者検査機関が行 う判定において、「指摘」あるいは「指導」が石油精製業の事業場として出ているという ことです。この「指摘」というのは、その損傷の部分を補修しないと合格にならないと いうことで是正を求める事項です。そういうものが一定の割合であるということは、こ れは社内検査で可とされたもので、第三者の目から見て必ずしも十分でないものがある ということを示しているかと思います。  それから、12頁のウですが、これは連続運転の対象となるボイラー等については、余 寿命の評価・管理を適切に行うことが求められるわけですけれども、石油精製業の事業 場には当初想定していなかった腐食などが起こったり、主要構造部分の取替えを行った もの等が認められ、損傷の箇所が必ずしも適切に特定されていない状況があります。以 上のアからウを考慮すると、現状では、石油精製業界の検査技術力及び管理能力は、自 主検査を適正に行い得るに足る十分な水準に達しているとまでは判断し難い状況にあり ます。  次に公正・独立性です。社内検査で定められた検査手順、方法が遵守されることに信 頼性が必要だということで、ア、イと2つ挙げております。アについては、先ほどの資 料5、7で労働安全衛生法、あるいは高圧ガス保安法の認定の取消しが行われています。 その中にも石油精製業の事業場が入っているということです。  イについては、定期自主検査というのが労働安全衛生法にあり、これはボイラー、圧 力容器など、規模の小さいものについても実施の義務があります。6頁の上から7行目 辺りにあるように、監督署で監督を行った結果、定期自主検査の義務について違反があ るものの中に、石油精製業の事業場も含まれているということです。  13頁です。国際競争の激化など企業を取り巻く環境の厳しさを増す中、営利を優先し てあるべき検査がゆがめられるおそれはあらゆる業種に存在し、石油精製業においての み免れているわけではない。ア及びイのような状況を見ると、石油精製業界において経 営や競争が厳しいときであっても、社内検査の検査手順・方法が確実に遵守され、また、 社内の検査部門が会社の経営から独立して、公正な判断が行われるようにするための仕 組みが構築され、かつ、それを維持し続けるだけの体制があるとは言い難いと考える、 とまとめてあります。  次に3番目の安全、安心に関する社会的環境の観点です。ここではアのコンビナート 関係の事故が高圧ガス製造事業所、あるいは危険物施設などを見ても過去最も高い水準 にあり、平成18年は特に爆発・火災が12件と、近年になく多発している状況にありま す。企業活動において、社会の安全が脅かされることがないようにすることは企業の当 然の責務であり、製油所においてもあらゆる事故を防止することが求められており、特 に危険物を取り扱う設備を設置して運転するに当たっては、過去に経験がないものも含 め、さまざまな事態を想定して事故を防止することが求められています。このことから すると、製油所において事故が多発している現在の状況は、社会から厳しい目が向けら れるものであるとまとめております。  イは、社会全般の現象で、安全にかかわる問題事案がさまざま発生しています。(ア) はマンションの耐震強度の偽装というもので、第三者機関の検査・監査の充実・強化が 指摘される事例が発生しています。(イ)は第三者機関の検査・監査の有効性が指摘され る事例ということで、これはちょっと安全からは離れますが、損保、銀行、証券、そう いったところに対して金融庁の監査がきちんと効果を発揮しているものを挙げておりま す。  14頁の(ウ)は、一方で第三者機関の検査・監査が必要ではないかと考えられる事例 です。つい何日か前にもありましたけれども、電力会社が原子力発電所において定期検 査のデータを改ざんしたということ、あるいは、瞬間湯沸かし器の安全装置の不良で死 亡事故が発生したこと、それから、自動車会社のリコールが十分行われなかったという ことを挙げております。こうしたことから、企業活動に対する信頼を揺るがせる事案が 続発しており、第三者の検査・監査の重要性が見直されている状況にあり、石油精製業 界のみがその外にあって免れているわけではありません。これらを考慮すると、現在、 第三者による検査を行うことで事故が少なく管理されている現行制度について、自主検 査制度の導入という制度変更を行うことは合理的とは言い難く、社会的に受容される環 境にもないと考えられる、とまとめております。  (4)が以上をまとめた結論として、現在、第三者検査によってボイラー及び第一種 圧力容器の安全が担保され、連続運転の認定でも外国と比べて遜色ない程度の経済性が 実現されている。そういう現行制度について、自主検査制度を導入する制度変更を行う ことは、現状では適当ではないと結論付けられる、とまとめております。  6は「今後に向けた条件について」です。5でありましたように、現状で導入するこ とは適当ではないと判断されるわけですが、今後の石油精製業界に対する取組み、ある いは到達目標を示すことは安全水準の向上にも資するということで、その条件等を示し ておくことが適当と考えられる。以下にその条件を挙げております。先ほどの観点に沿 って申しますと、検査技術力及び管理能力の確保という観点でいうと、少なくとも次の ものが考えられます。条件1、石油精製業界は、設備の経年損傷による事故の防止対策 について取組みを強化するとともに、業界全体において、経年損傷による又は防止可能 な爆発・火災・漏洩事故の発生がほとんどないこと及びその他の爆発・火災・漏洩事故 の発生が低い水準で推移することを実績で示すこと。  条件2、石油精製業界は、設備の補修整備及び社内検査の水準を高めることについて、 必要な経費の確保を含め取組みを徹底し、業界全体において、社内検査での適正な判断、 適正な補修等が行われていること及びボイラー等の損傷状態について管理不十分が疑わ れるものはないことを実績で示すこと。  3つ目ですけれど、(2)で少し長々と書いてあるのは、コンプラアイアンスや内部統 制の確保について郷原委員、田中委員から情報をいただいた内容などを入れている部分 です。検査の公正・独立を確保するための体制及び実施です。アは国際企画ISO/IEC 17020 が検査の独立・公正を保つためのいろいろな基準を書いています。この規格の中には、 「4.独立性、公平性及び完全性。検査機関の要員は、判断行為に影響を与えるおそれ のあるいかなる商業的、金銭的及びその他の圧力からも免れていなければならない。業 務手順は、実施した検査の結果に、検査機関の外部の者又は組織が影響を与えることが できないことを確保するように実施しなければならない。」と、非常にザクッと書いてお ります。これをどのように具体化するか、また、その判断基準についてはこの規格では 述べられておりません。  ただ、先ほど外国の資料4にありましたけれども、欧米ではこういう一定規模の圧力 容器などについては、親会社あるいは取締役会から十分独立している検査員が存在する 基盤があり、そうした検査員が、社内検査について公正・独立を担保しながらやってい ると考えられます。日本ではそういう基盤は存在しませんので、他の仕組みを考える必 要があるわけです。一つの方法として、検査に対する監査制度で検査の公正・独立を確 保することが考えられますが、検査部門と同じ事業場又は企業の社員による監査がある だけでは、なかなかこの公正・独立を担保するところまではいっていないとこれまでの 資料で示されております。石油精製業界の提案でも、第三者機関の外部監査員が随時社 内検査の監査に立ち合うという方法を提案しておりますので、外部の者が参加した監査 ということで公開性、透明性、信頼性を確保することが、公正・独立の確保に資すると 考えられます。  イは、いまある仕組みを具体的にどうしていったらいいかです。現在あるコンプラア イアンスの確保という面で記述をしています。15頁のいちばん下ですが、一般的なコン プラアイアンスや内部統制のための企業の組織体制としては、倫理綱領の制定、企業倫 理担当責任者、あるいは部署を設けて教育訓練を実施し、内部通報制度を開設します。 3番目は企業倫理委員会、監査、実情調査等によってフォローアップ体制を取ります。 この3つの柱で体制を整備して実践することが肝要であるとされています。  現状についてですけれども、3本柱のうち2番目の遵守体制は比較的よく整備され、 一定の実践が行われているのだけれども、リーダーシップ、意思表示が十分でない点が ある。あるいは内部通報制度が作られているけれども、機能が十分でないのが現状です。 中堅企業以下では内部通報制度が作られていないところが多い状況です。3つ目の柱の フォローアップ体制については、少し形骸化していることも含めてなお発展途上の状態 にあります。  石油精製業界が自主検査導入の条件の提案において、不正防止のための担保措置とし て、企業トップ・現場のトップによる意思表明をすること、それから、企業倫理委員会 が機能すること、これは資料8でも挙げております。これらは、コンプラアイアンスと 内部統制の体制及び実践に関するものであり、現状では十分な状況にあるとは言えない のだけれども、今後この体制及び実践が優良な事業場であるということ、例えば、トッ プがいかなる経営環境にあっても、社内検査の手順・方法を現場が遵守することについ て圧力がないよう保証・支援する方針の表明、あるいは体制が整備されて、永続し続け るものとして取組みが行われているということが示されれば、この検査の公正・独立の 一定の担保になり得ると考えられます。  以上のことから、条件3、石油精製業界において、今後ア及びイをベースに、いかな る経営環境にあっても、社内検査の検査手順・方法が適正に守られる体制が整備され永 続する仕組みを検討し、その社内検査の仕組みを実施すること。また、業界全体におい て、その仕組みを実施することによって、不正等による認定の取消し事案が発生しない こと及び社内検査について、連続運転の事前審査時等に定めた検査箇所・手順・方法が 遵守されること、を実績で示すことを挙げております。  7は「現行制度の運用の改善について」です。自主検査の要望の中で、現行制度の問 題が業界から示されておりました。これらについて、自主検査とせずに現行制度のもと において運用を改善することで解消可能と考えられるものを挙げております。アは、自 主検査とすることで、性能検査受検日にとらわれることなく計画を立てることができる、 また、全数の社内検査の終了を待った上で、第三者による性能検査を受けることが必要 なくなることによって、設備を停止する期間が1、2日短縮できると業界が言っている。 これについては、現行制度の下でも第三者検査機関が検査の実施日時について、受検者 の希望に柔軟に対応し、随時検査を実施できるようにすること等により解消できると考 えられます。  イは、自主検査とすることによって、性能検査時の立ち合いのため、担当者が多数拘 束されることはなくなるとしております。これについては、性能検査機関に対するヒア リングの結果では、必ずしもそういうことを強いているわけではないようですが、今後、 現行の性能検査時の立ち合いの担当者を1名で可とすることを徹底することで、このよ うな負担は軽減できると考えられます。  ウは、自主検査化により、性能検査終了後の合格内示を待つことなく、運転に向けた 復旧工事に着手できるようになり、工事期間が1日程度短縮できると主張されています。 これについては現行制度のもとでも、合格の内示は原則として現場に出すようにしてい るということですので、これを徹底することで解消できると考えられます。  最後に、この3点について行政が中心となって、登録性能検査機関及び石油精製業界 の間の調整を行い、現行の性能検査の運用の改善の取組みが行われるよう 、本検討会で 提言するとまとめております。以上です。 ○平野座長 どうもありがとうございました。報告書を最後まで説明していただきまし たので、ここで皆さんからのご意見を伺いたいと思います。特に後半の説明の部分はこ の検討会の議論を集約した形になりますので、少し違うのではないかということがあり ましたらご発言ください。 ○郷原委員 6の(2)なのですが、前半の規格の問題と内部統制、コンプラアイアン スにかかわる問題と2つが書かれているのですが、コンプラアイアンス、内部統制の問 題を、ちょっといろいろな概念がごちゃごちゃになっていて、ここでこういうことを書 く必要があるのかなという感じがします。特に内部統制は私のここでの話の中でも説明 をしましたけれども、いまは金融商品取引法で義務付けられているのは、会計上のリス クに関する部分だけなのです。会社法上は、取締役会の決議事項になっているのです。 内部統制について決議をしないといけない。ただ、法律上義務付けられているわけでは ないのです、決議をしなければいけないというだけですから。非常に微妙でデリケート な問題なので、ここであえて内部統制という言葉を持ち出す必要はないのではないかと。  それから、コンプラアイアンスについての私個人の考え方をお話しましたけれども、 一般的なレベルで言えば、経団連の話ですね、この辺が一般の認識だと思います。報告 書の内容としては、そういうレベルで書いておけば十分でないかと思います。 ○平野座長 報告書は権威があるものですから、郷原委員にお手伝いいただいて修正し ていただきたい。コンプラアイアンスとは一般の企業では、ただ法令遵守だと、そうい うニュアンスで理解しているようですので、前回、郷原委員にご説明いただいたように、 その理解は世界的な常識とは少しずれていることを明らかにしておいていただければ、 この報告書のいい点が出てくると思います。 ○郷原委員 そうであればこの場所に書く必要が。 ○平野座長 ずれがあるという指摘も大切ではないかと思います。 ○郷原委員 それとこの問題ですね、ボイラーの自主検査制度の関係でその話がぴった りくるかなという感じがするのです。ちょっと自主検査制度の話とかなり飛躍があるの ではないかなと。自主検査の話はとりあえず安全をきちんと守らないといけない。最後 に、そのためには手順の方法を遵守と書いてありますね。この結論に至るまでに、社会 的要請の適応という話がちょっとややこしくなってしまう。一般論の中に出てくるので あれば。 ○平野座長 先ほどの小澤委員とのやりとりと関係があるのですが、日本の場合は自主 検査でかなり自主的な検査を認めたとしても、どこかで法律に書かれているところがあ って、それを守っていれば事故を起こしたときに、責任の一端は行政でとってくれとい う方向に動きがちです。 ○郷原委員 それなら書く場所を変えたほうがいいんじゃないかなと。6は条件ですよ ね。今後こういう自主検査を認めるとすれば、こういう条件が満たされなければいけな いと書いてあって、その中でコンプラアイアンスという一般論みたいのが出てくるから ちょっと違和感がある。1つの観点として、こういうことを考えるに当たって、コンプ ラアイアンス、内部統制という言葉はその文脈からいったらおかしくない気がします、 コンプラアイアンスは非常に重要な問題なので。それに関して単なる法令遵守だけでは なく、こういう観点からも考えるべきだと。そのことで自主検査との関係はどうなのか ということを5のところに書いたほうがわかります。 ○副主任中央産業安全専門官 (2)がそういった問題をかいていますね。 ○郷原委員 そうですね。この中に書くのだったらまだ構成としてはいいんじゃないで すか。 ○平野座長 コンプラアイアンスそのものの意味、その他についてはむしろ資料におと すという感じですかね。 ○郷原委員 そうですね。それは資料にして、それで、(2)の中にそれを引用する形で ちょっと触れておくと。 ○平野座長 いかがですか、同じポイントでもよろしいですし、他の観点でも。整理し ていくと文章で表すには複雑怪奇なところがあるので、毛利さん、苦労されたと思いま すが、よろしくお願いします。 ○郷原委員 それともう1つ、(3)の安全、安心に関する社会的環境の観点に具体的な 事例として挙がっている電力会社のデータ改ざんの問題、湯沸かし器の安全不良の問題、 自動車会社のリコールの問題、それぞれ全部性格が違いますよね。電力会社の問題は安 心の問題であって、安全の問題ではない。客観的に危険だというわけではない。データ を改ざんしていたということ自体が、事業者のデータに対する取扱いに非常に不信感を 招くという話です。  2番目の瞬間湯沸かし器の話は、まさに危険を通り越して人が死んだ話ですよね。自 動車会社2社の、乗用車、トラックのリコール、これは平成18年8月のトヨタの問題で すね。平成15年10月と、ちょっと具体的にわからないのですけれども、トヨタ。 ○副主任中央産業安全専門官 三菱ふそうトラックバスです。 ○郷原委員 両方とも三菱ですか。平成15年は三菱で、平成18年8月はトヨタですよ ね。これはちょっと違うのですね。三菱は人が死んでいる。トヨタはちょっと怪我をし て、リコールかくしではないんですよね、トヨタは。これはリコールの判断が遅れたと いうだけの話です。この2つを、自動社会社2社によりと書くのは極めてミスリードで す。全然事例が違うと思います。三菱のほうはパロマのケースに近いわけですね、人命 に関わる問題ですから。トヨタの問題は、データ改ざんとは違うけれども、問題の性格 としては、自動車会社がリコールという問題にどういう姿勢で取組むかという問題です よね。ちょっとここの事例を整理しないといろいろな性格の問題がごちゃごちゃになっ ている感じがします。安全と安心とを整理して考えたほうがいい。今回はボイラーの問 題で、明らかに安全の問題ですよね。安心というレベルの問題ではないと思います。本 当に危険に対してどう対処するかという問題ですから、データ改ざんの問題をここに入 れると話がぼけるのではという感じがします。 ○小澤委員 基本的には労災なんかもそうですが、ヒヤリ、ハットをどうやって防いで いくかということが、大事故を防ぐことに必ずつながっていくと思うのですね。データ 改ざんをするということは、実は非常に根深いところで大きな事故を引き起こす可能性 があると。  関電の補修のときに、配管をやるときに最初違うパイプを付けて、その刻印を打ち直 すということまでやったのですね。そういうものが、結果的に、風土そのものが大事故 につながっていく危険性があるという意味で、データ改ざんをやるのはその第一歩とし て非常に危ないことだと思うのですね。それから、整理するというのは特に問題はない のですけれど。 ○郷原委員 安心の問題が安全に直結する場合もあるわけです。安心だけで完結してい る場合はいいのです。不二家の問題なんかは安全ではなくて安心なのですね。安心もな んか少し過敏症ではないかという気がするのですけれど。いま言われたように、それ自 体がひょっとすると大きな危険に結び付くようなものは安全の問題であって、だからこ れは安心できないという話なのです。 ○小澤委員 はい、そうですね。 ○郷原委員 いま問題になっている電力会社のデータ改ざんはあまりそういうレベルで はない。しかし、積極的に改ざんするやり方をとることは、そういう会社は信用できな いということですね。その2つをちょっと区別して考えたほうが問題を整理しやすいと 思います。 ○小澤委員 整理することは別に構わないですが、非常に大事な基本的な問題だと思い ます。 ○平野座長 危機管理的な観点から言いますと、共通する点は、装置や設備に変なこと が起こった場合に、本来はそれを使っている人たちになるべく早く知らせて安全を図る というのが筋なのに、実は自社の生き残りのほうを先に考えて、誰か全然知らないとこ ろでやったとか人のせいにするとか、あるいはかくすというような心理的な動きで危機 に陥ってしまう。これらは、危機管理的にはほとんど同じ論理で処理できます。危機管 理は、自主管理、管理というか点検ですか、それと非常に近い考え方によるところにあ ります。自主点検をやるのだったら、何か起こったらどういうルートでどういうふうに 行動して、どういうふうに改善していくかということを明らかにしなければいけないの に、場合によったら自分の会社に都合のいいように対処するのではないかという心配が あります。  皆さんの感覚はそういうことをお感じになったので、これはちょっとまずいぞと。い ままでの制度と全く同じことができるのに、なんでいま自主管理だと。先生のおっしゃ ることはまさにそうだと思います。それは、自分のところに呼び込めば自分の企業の安 泰に働く可能性が強くなってくる。そういう警鐘みたいなものがあって、今回の結論を 容認したのではないかと思います。それは毛利さんのほうでどういうふうに整理するか、 いずれ整理しなければいけないと思いますが、わかりやすく報告書に盛り込む必要があ ると思います。 ○副主任中央産業安全専門官 わかりました。 ○平野座長 畠中委員、どうですか。法的な感じで言うと。 ○畠中委員 労災かくしなどを考えると、発生自体をかくさないまでも、例えば発生現 象を偽るとか、そういうのはよく聞く話なのですけれども、そういう態度が結局は安全 に対する態度に結び付いてくるのではないかと思います。だから、安心、安全を分ける という観点も確かにあるなといまお聞きしていたのですが、視点を分けるにしても、根 っこには共通な部分があるのかなという気がいたしますけれども。 ○郷原委員 自主検査とした場合に、かくすという危険性が高まるわけですね。 ○平野座長 そこは。 ○郷原委員 そこが問題ですよね。 ○平野座長 表面に出てこない。 ○郷原委員 自主検査というのは公表するか、公表しないかということに対して自主的 な判断が必要になってくる。ここがいまいろいろな分野でものすごく問題になっている。 何でもかんでも直ちに、そのまま公表すればいいかというと、そうではない。問題の性 格、重大性をまずきちんと調べた上で公表すべきもの、あるいはそれを消費者に、関係 者に知らせなくても自分たちでやっていればいいもの、いろいろあると思うのですが、 そこがきちんとできていないのですね。あらゆる分野でできていないのですよ。ですか ら、自主検査に持っていくことは、そこがちゃんと判断できますかという問題提供をし ないといけないことは間違いないと思うのですね。制度とか、社会の反応との関係でそ れが適切に対応できない場合もある。労災かくしで建設業の場合、いま労災事故に対す る指名停止がめちゃくちゃ厳しいのです。捻挫程度で2カ月の指名停止なんてあるらし いんですよ。そうすると、2カ月の指名停止というのはあんまりに痛手なので、かくし てしまうという動機につながってしまう。おそらく、これは程度に応じた対応になって いない。悪質性の程度に応じた、サンクションになっていないということが1つ問題が あると思います。ですから、自主的に公表するかどうかを適切に判断させるためには、 その効果が重大性に応じたものでなくてはならない。そこで問題となるのは、マスコミ の反応があまりに致命的で、ちょっとでも悪いことを公表すると、もう鬼の首を取った ように、ものすごい騒ぎになってしまう。もう少し先にいってしまう。それも1つのサ ンクションですね。そこのバランスを考えていかないといけない。そういう意味で自主 検査というのは、自主的な公表を前提とする制度だということは危険だと思います。 ○小澤委員 いまの電力会社のデータかくしをマスコミにたたかれたのはともかくとし て、改ざんするということは社内自身の、公表する、しないに関わらず、社内の記録そ のものが書き換えられているわけですから、それはものすごく危険なことであって、公 表する、しないの以前の問題。結果として、マスコミに変な伝わり方をしたというのは あるかもしれないですけれど。 ○郷原委員 データ改ざんはそうですね。改ざんという行為は、公表のレベルの問題じ ゃないのですね。 ○小澤委員 はい。 ○郷原委員 データをかくしてしまう、正確なデータを失わせてしまうわけですから。 ○小澤委員 そういうことですよ。 ○郷原委員 証拠を隠滅するとか、改ざんするという行為と。ところがマスコミではよ くあるのですが、非公表即ち隠蔽となっちゃうのです。 ○小澤委員 それはありますね。 ○郷原委員 不二家なんかまさにそうですね。あれは外部のコンサルタント会社が非常 にセンセーショナルな表現をして、消費期限切れの牛乳を使われたと言ってきた。それ をどう対応しているかという話ですね。ところが、それが直ちに隠蔽になってしまうの ですね。それだけに、やはりこういう問題というのは公表、非公表の問題なのか、改ざ ん、隠蔽の問題なのか。それと、さっきの安全、安心の座標軸の問題。両方からきちん と問題を整理していかないと、なかなか問題の所在がはっきりしないのではないかと思 います。 ○安藤委員 安心と安全を分けなくてはいけないという重要なご指摘だと思うのですけ れども、事故の関係を見ますと、ハインリッヒの法則が成立する場合が多くて、不安心 は不安全に拡大していくわけです。さらに、定期検査をやる予定であったというときに、 不思議と事故が多いのです。アレキサンダーキーランドにしろ、配管破裂にしろ、いろ いろな例を調べてみますと。そういう状況を考えながら安全と安心の関係を考えてみま すと、社内統制ができていればいろいろなものが挙がってくるのが、挙がらないという ことが起きている。ということは次のステップすなわち不安全に発展する可能性は十分 高いわけです。従いまして、安心と安全が全く別のものとは工学的には考えづらいと私 は認識をしているわけです。だから、小澤委員がおっしゃいましたように、その初期の 段階で社内統治がきちんと出来ていて、仕様書に従って作業が行われていれば、安全は 担保できるという気がするのですね。例えば期限を越えた原材料が使用されていると、 体の弱い人はあたる、ということになってくると解釈しているのですが。でも確かに両 者を分けるというのは貴重なアドバイスだと思いますが。 ○平野座長 いろいろ複雑な問題に入っていくと、限られた時間で結論にいくわけには いかないのですが、前回の委員会のいちばん最後にどうするかともう結論を出している わけですね。ですから、その結論を出す過程を報告書の中でなるべくわかりやすく書い て欲しい。提案なのですが、非常に難しくて、非常に複雑で、表現ができにくいところ は、場合によっては省略させてもらうことをご了解いただいて、あと毛利さんは少し大 変でしょうけれど、書けるところは書いていただきたい。 ○副主任中央産業安全専門官 はい。 ○平野座長 例えばコンプラアイアンスだったら郷原先生にご相談させていただいて、 それから、法律のことは畠中委員とか、各委員の先生方の特徴も把握しておられると思 いますから、それをやっていただいて、最終的にまとめの段階でここはどうするかとい うことだったら私が相談にのるという形でいかがでしょうか。 ○田中委員 いまの点、郷原委員のコンプラアイアンス、内部統制の話がありましたの で、15頁のイから16頁の前半の第2パラグラフぐらいまでは郷原委員がおっしゃる整 理の意味で前に持っていけるわけですね。このところは、条件3を説明する必要のある コンプラアイアンスだけにとどめる。あとは16頁の3つ目のパラグラフをちょっとだけ ここに残しておくと。そうすると、折衷案ですが、郷原委員がおっしゃるように整理し て、第3の条件に必要な情報だけはここにちょっと残しておくと読みやすいと思います。 郷原委員からご指摘があったように、内部統制といっても基本はコンプラアイアンスな のですが、内部統制の法的な、要請の部分がここでいう自主検査とぴしっと合っている わけではありませんから、社会的情勢はそうだということを、多分、これは原案を書い た方は言いたかったと思うので、その辺の趣旨を残しておけばいいと思います。  13頁の下から3段目のパラグラフで、事故の多発で「現在の状況は、社会から厳しい 目が向けられる」と、これは正しいことなのですが、実は我々議論のところで、事故が 起こったときの環境への配慮をあまり議論しなかったのですね。社会から厳しい目があ るというところに、事故があったとき非常に環境に悪影響が及ぶことによって、より社 会が厳しい目を向けている部分がありますので、ですから、環境への配慮かなんか、こ の辺にちょっと言葉があると非常にわかりやすいかなと思ったのですが、その辺はいか がでしょうか。 ○平野座長 どうもありがとうございました。入りそうであれば入れることにしましょ う。 ○田中委員 入りそうであればですね。以上です。ありがとうございました。 ○平野座長 それでは、こういう問題ですと、それぞれの専門の先生方いろいろご意見 があると思うので、最後のまとめに毛利さんから何か申し上げたいことがあれば、おっ しゃってください。 ○副主任中央産業安全専門官 貴重なご意見をいただきましたので、少し場所を移した り、記述を付け加えたりということで修正をさせていただきます。大きな報告書の方向 としてはこれでよろしいですね。少し表現をという趣旨ですね。 ○平野座長 そういうことです。最初どういう要請があったかというところから、バッ クグラウンドを4まで述べられましたが、その要請で始まって、どういう結論にいった かということはきちんとしていますので、その間の部分をどうつなぐかということにな ります。 ○副主任中央産業安全専門官 はい。 ○平野座長 おおよそのところは皆さんご賛同いただけると思いますので、あと詳細の ところでここはどうしたらいいかなということになります。 ○副主任中央産業安全専門官 そうですね。それは私のほうで作業をして相談をさせて いただきますので、よろしいでしょうか。 ○平野座長 コンプラアイアンスだけじゃなくて、ほかのところでも何かあったら、ご 専門の委員に是非聞いていただきたいと思います。これは公開するのでしょう。 ○副主任中央産業安全専門官 公開します。 ○平野座長 公開するときにあまりおかしなことを書いても。今度は我々が隠蔽体質だ と言われかねないので、注意する必要があります。全体的なことを言うと、規制緩和の 一環として要請されたことに対して、そこまでやらなくてもいいのではないかという返 答をしたわけですから、それに対してきちんと責任をとらないといけないと思います。 委員会がありますが、何かありましたら私のほうで対応させていただきますので、課長 さん、何かあったら私は、いつでも引っ張り出されますので、声をかけてください。 ○安全課長 そういうことにならないように、事務局で先生方の御意向を十分社会に普 及させたいと思います。 ○平野座長 普通は安全まで犠牲にして、規制緩和をやることはないよというのが社会 的には正しいと思います。 ○小澤委員 社会的には受け入れられる話だと思います。 ○平野座長 社会的にはね。そこはちょっと私としては気になるところではありますが、 いかがでしょうか。 ○小澤委員 経済性を重視して、安全性をないがしろにしたと報道されている例がいっ ぱいありますから。 ○平野座長 それはそうですね。 ○安藤委員 釈迦に説法になりますけれど、GDPの高い日本においては、安全の確保 が先で、次に経済性の追求というのが順番じゃないでしょうかね。GDPが日本の10 分の1、100分の1だと、そうも言っていられないでしょうけれども。 ○郷原委員 コンプラアイアンス研究センターで安全と競争を考える研究プロジェクト をやっているのですね。去年の12月2日にキックオフ・シンポジウムをやりまして、そ の中で効率性だけではないのですけれど、競争というのは安全とどう調和させるべきか と議論したのですが、競争を考える上で、安全というのが更に上位概念だということが 当たり前なのですが、あまり認識されていないのです。競争のほうが自己目的化してし まって、競争は不可侵なものになってしまって、改めて環境を整備していかなければい けないと。シンポジウムの載録した我々の季刊誌が間もなく出ますので、是非ご覧いた だきたいと思います。 ○平野座長 それでは今日の検討を終了して、事務局に以後の進行をお願いしましょう。 ○副主任中央産業安全専門官 それでは、報告書の、多少修正がある点については、い ま申し上げたように事務局で修正をして、各先生のご了解をいただくと。その上で公表 ということにいたしたいと思います。これまで5回にわたって検討会の開催をしていた だき、本当にご協力いただきましてありがとうございました。報告書の公表をもってこ の検討会も終了となります。平野座長、本当にどうもありがとうございました。各委員 の先生方も、本当にどうもありがとうございました。 ○平野座長 ありがとうございました。                    (照会先) 厚生労働省労働基準局安全衛生部 安全課機械班(内線5504)