07/03/02 有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会 第4回速記録 第4回有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会議事録                         平成19年3月2日(金)10:00〜                         於:厚生労働省第18〜20会議室 ○ 中垣審査管理課長  定刻になりましたので、ただいまより第4回「有効で安全な医薬品を迅速に提供する ための検討会」を開催させていただきたいと存じます。  本日は、青木委員、飯沼委員、大澤委員、松本恒雄委員、南委員及び森田委員より御 欠席との連絡をいただいているところでございます。  また、本日の検討課題として、バイオマーカーや再生医療など、専門性の高いものも ございますので、座長の御了承を得た上で、それぞれの分野の専門家として、医薬基盤 研究所トキシコゲノミクスプロジェクトサブリーダーの宮城島利一さん、東京大学大学 院薬学研究科教授の岩坪威さん、国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長の山口照英さ ん、日本製薬工業協会研究開発委員会副委員長の後藤俊男さんの4名の方に参考人とし て御列席いただいております。  後ほど、バイオマーカーについては宮城島さんと岩坪さんに、再生医療については山 口さんに、現状や将来展望についてプレゼンテーションをお願いすることとなっており ます。  それでは、座長の高久先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○ 高久座長  最初に、本日の配付資料の確認を事務局からよろしくお願いします。 ○ 山本審査等推進室長  お手元の資料に従いまして確認をお願いいたします。本日の議事次第のところに配付 資料の一覧がついておりまして、座席表の下の開催要項が資料1。名簿が資料2。資料 3として、薬事法関係手数料令の一部を改正する政令に関する意見募集についてという 資料がございます。資料4といたしまして、前回も配付しております論点整理。資料5 といたしまして、第4回検討会の検討課題として本日の主要な資料をまとめてございま す。資料6としては、資料6−(1)、(2)、(3)ということで、今日プレゼンテーションいた だく3先生につきまして、宮城島さんにつきまして(1)、岩坪さんに関しまして(2)、山口 さんに関しまして(3)ということでお手元に用意させていただいております。お手元に足 りない資料等がございましたら、事務局にお申しつけください。 ○ 高久座長  それでは、本日の議題に入りますが、議事(1)の報告事項です。新薬等の承認審査 手数料の改正について、事務局の方からよろしくお願いします。 ○ 中垣審査管理課長  それでは、資料3に基づきまして御説明申し上げたいと思います。前回の本検討会に おきまして、承認審査の手数料について御質問がございましたので、その改正を含めま して御報告させていただきます。  資料3の1ページ目から、2月15日付で厚生労働省として始めました手数料の改正 に関係しますパブリックコメントの資料を用意しております。また5ページでございま すが、医薬品機構で行っております治験相談手数料の改正について、同様に2月15日 からパブリックコメントを行っているところでございます。その背景を一括して御説明 申し上げたいと思います。  2ページをごらんいただきたいと思います。第1回の本検討会でも御紹介申し上げま したが、いろいろなデータによりますと、欧米におきます販売時期と我が国におきます 販売時期の平均をとってみると約2.5年、残念なことに日本が遅れているということが 示されています。また、その2.5年を分析いたしますと、1.5年が申請まで、1年が申 請から承認まで、すなわち審査の期間の遅れであると分析しているところであります。 したがいまして、申請まで、あるいは審査を早くすることが重要な課題になっていると 認識しております。  丸の2番目、独立行政法人医薬品医療機器総合機構でございます。16年4月に発足 以来、審査体制を強化してきたところでございますが、医薬品医療機器の審査全体を見 ましても、200名程度の職員からなっているところでございます。先生方御存じのとお り、アメリカのFDAは2,000名を超える要員を抱えているところでございまして、体 制の強化、あるいは単に人の増加だけではなくて、質、あるいはやり方の改正が求めら れていると考えている次第でございます。  他方、8ページをごらんいただきたいと思います。総合科学技術会議、これは議長を 総理大臣が務めまして、科学技術担当大臣ほか、関係大臣と有識者からなる会議でござ いますが、ここの総合科学技術会議におきまして、昨年の12月25日に意見具申が関係 大臣に対してなされております。  その抜粋でございますが、その中に医薬品機構の承認審査の迅速化・効率化という項 がございまして、機構の治験相談、承認審査の遅延を解消するためには審査手続の透明 性・効率性の向上とともに質の高い人員をふやす必要があるという意見が出されており ます。そのため、機構は審査人員をおおむね3年間で倍増するという方針を打ち出して おります。その際に製薬企業からの審査費用の増額により民間活力の活用を含む審査体 制の拡充を図るべきだという意見具申が厚生労働大臣に対してなされたところでござい ます。医薬品機構及び厚生労働省といたしましては、この意見具申を実現すべく関係省 庁と協議してきたところでございまして、その了解がほぼ得られたことから、最初に申 し上げました手数料の改正、それに伴う人員体制の拡充に具体的な作業として入ってい るところでございます。  手数料についてどうなるかということでございますが、3ページをごらんいただきた いと思います。新医薬品の手数料の単価の比較ということで、現行と改訂案とがござい ます。幾つかの類型ごとに手数料が変わっているわけでございますが、通常、新薬と言 われる普通の新有効成分を含有した医薬品というのは、一番上にございます「新医薬品 (その1)(オーファン以外)」というところに該当するものでございます。これで申し 上げますと、984万円という現行の手数料が2,379万円ということで、2倍ちょっとの 値上げという形になるわけでございます。  審査手数料につきましては、それ以外の手数料もございますので、代表的な例として どうなるかということでございますが、7ページをごらんいただきたいと思います。新 有効成分を含有する医薬品を申請した場合に必要となるいろいろな手数料、すなわち審 査というのが一番通常のものでございまして、その次に「適合性調査(書面)」と書い てありますが、これは動物試験をやる基準でございますとか、臨床試験をやる基準でご ざいますとか、いろいろな基準が審査にあるわけでございますが、その基準に合致して いるかどうかというのを、書面をチェックすることによって調べていくという手数料で ございまして、これが656万円程度です。  また、国の手数料というのは、審議会関係でございますとか、あるいは最後にいろい ろな手続をやるための手数料でございますが、審査手数料だけですと、先ほど申し上げ ましたように2倍強、241%。全体を足してみますと1.8倍程度の値上げになるのでは なかろうかと考えている次第でございます。  また、相談の手数料でございますが、6ページにございまして、これもいろいろな区 分ごとにその手数料がそれに要する時間、手間を考えて設定されております。典型的な もので申し上げますと、上から6番目でございますが、医薬品第I相試験開始前の相談。 すなわち品質試験、動物試験をある程度やって、これから第I相試験に入る前に、その 第I相試験に入る準備が整っているのか、また、第I相試験の試験計画というのは、こ れがこれでいいのかどうかということを相談するわけでございますが、その相談手数料 で見ますと234万円から420万円と2倍弱の値上げという形になっているわけでござい ます。  このような形で手数料を上げさせていただいて、それではそれに基づいて何をやって いくのかということでございますが、4ページをごらんいただきたいと思います。まだ まだ検討しなければならない事項というのは多々あるのだろうと考えておりますので、 あくまで4ページというのは現段階における考え方だと御理解願えればありがたいので すが、主な取り組みとして、最初の丸でございますが、承認までの期間を今後5年程度 で欧米並みに短縮を図るということです。すなわち、最初に申し上げました2.5年を短 縮するということです。1.5年が申請まで、1年が審査まで、審査の期間と。この2.5 年を短縮しようというのが目標でございます。  そのためにやる事項としては、2009年度までの3年間で230名から240名、審査官 を増員したいと考えておりますし、治験相談にタイムリーに対応できるような体制を構 築したいと考えております。また、申請に要する資料としては、大きく分けますと品質 に関する資料、動物を用いた試験の資料、人による臨床試験の資料と3つあるわけでご ざいますが、最終段階で行われる臨床試験をやっている間に、品質に関する資料、動物 試験に関する資料について、まとまったものについては提出していただいて、臨床試験 の進行と同時に審査と同じような形でチェックしていこうというのが事前評価制度でご ざいます。そういうことで審査期間の短縮を図るということを考えているわけでござい ます。  その次でございますが、人を増やせばいいわけではないと考えておりまして、当然、 質を改善しなければならない。そのためにはトレーニング、研修が重要だと考えており ますし、また、プロジェクトマネジメント、あるいは海外との連携強化ということを考 えているところでございます。以上、報告させていただきます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。審査の手数料を改正する、値上げをするということ について、どなたか御意見を、どうぞ。 ○ 寺脇構成員  前回休んでおりましたので、僭越ながら最初に発言させていただきます。今、課長の 方から、手数料を増やして審査官を増やすという御提案がありましたが、非常にリーズ ナブルな考えではないかと思っております。審査官を倍増する上で、今発言がありまし たが、審査官の資質を担保するということは大変重要だと思うのですが、審査官の先生 方は、私が推察するに、医学や薬学の基礎の研究者が多いのではないかと思うわけです が、臨床現場をよく理解した審査官の育成にも努めてもらいたいと考えております。病 と向き合う患者さんのお気持ちをよく理解できれば、医薬品の審査のあり方にもおのず から変化が生まれるのではないかと考えております。手前みそですが、薬学教育も6年 制になりまして、我々も実務実習の教育システムを今構築しつつありますので、何らか のお手伝いを我々の会としてもできるのではないかと思っております。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか。 ○ 池田構成員  ただいまの意見は非常に重要だと思うのですが、臨床の現場、あるいは患者さんと実 際に向き合っている、そういう経験のある人が審査の場に立ち会うということはぜひ必 要だと思いますので、そういう人材も本当にたくさんリクルートしてほしいと思います が、1つ御質問させていただきます。専門性の高い審査員の育成、これは絶対に必要だ と思うので、それに積極的に取り組まれるということで非常に結構だと思うのですが、 研修制度の導入というところ、具体的にどのようなストラクチャーで研修制度をつくら れることを考えていらっしゃるか、少し御意見を御披露していただけたら、ありがたい のですが。 ○ 医薬品医療機器総合機構理事  今考えておりますのは、FDAで研修プログラムというのがありまして、そちらなど を参考にしようということです。先日、FDAの方に来ていただいて、その研修プログ ラムの教えを請うたわけでありますが、FDAが考えておりますのは、採用した方にベ テランの担当者を決めて、当初の3カ月間を一生懸命つきっきりで業務を教えるという やり方です。その次の6カ月間は、ある程度は担当者に任せますが、なおかつベテラン が目をつけてやると。それ以外にもいろいろなテーマで研修会を開いて、いろいろな事 例で討議をして、言うなればロールプレイみたいなものをやって研修をやっていく。ま た、いろいろな学会にも出ていく。こういったプログラムがありました。  そういったものを参考にしながら、この19年度の前半にどういうプログラムがいい のかということを検討し、19年度の後半には新しいプログラムで始めたいと思ってお ります。さらに、この4月から入ってくる者もおりますので、そういった人たちに対し て教材をつくって、どういう審査をしたらいいのだろうかという審査基準みたいなもの をあわせてレクチャーしていくと。こういうことを考えております。 ○ 池田構成員  今おっしゃられたのは、新たに採用された方たちを質の高い審査員として育成するた めのプログラムというふうに伺いました。それは非常に大事だと思うのですが、もう一 つ、この領域に、例えば臨床経験のある、あるいは臨床薬剤師、あるいはいろいろな方 たちが入ってきて質の高い審査をするようになるためには、私個人的な意見ですが、一 つには待遇の問題があり、これはサラリーに関係すると思うのです。当然のことだと思 います。  それともう一つは、どういうモチベーションをその場で持てるかということに尽きる と思うのです。そういう領域の仕事は物すごくやりがいがあって大事だというところを、 ここにいらっしゃる方は皆さんそう思っていらっしゃると思うのですが、臨床の現場に いたり、薬学をやっている方たち、若い人たちに知らせるためにもうちょっと努力がで きないだろうかということがあります。研修制度も、入ってきた人たちだけを対象にす るのではなくて、もう少しいろいろな方たちにオープンにするような形で構築したらど うかと思います。時間は多少かかるかもしれません、今は2〜3年の間に倍増しよう、 200〜300人一気に増やそうということだと思いますが、その辺りの底上げのプログラ ムも考えていただいた方が将来的にはいいのではないかと思います。いかがでしょうか。 ○ 医薬品医療機器総合機構理事  もう少しPMDAというものを皆さん方によく知っていただくということ、それも魅 力ある仕事をやっているということをぜひ知ってもらうようなことを心がけたいと思っ ております。入ってきた方々が審査し、患者さんにいい薬を早く出せるのだと。あるい は、種々のガイドラインのようなものを研究していくのだと。こういった魅力ある仕事 をやるのですというメッセージを伝えるとともに、各大学に、こちらの職員、部長以下 と言いますか、それが出向いていって、機構の仕事を学生たちに紹介する、こういった ことも必要ではなかろうかと思っております。 ○ 高久座長  中垣課長に頼まれて各学会に出したのですが、文書だけではなくて、関連の深い学会 の評議員会などでそういう宣伝をされると良いと思います。そのときには、2年とか3 年でもいいから、キャリアパスとしてということで話すと良いでしょう。医師主導の治 験などに皆さん興味を持つようになりましたので、機構で働くことが将来戻ったときに 重要な役割を病院の中で演じる様になることが明らかになると、若いドクターで、機構 の窓口で少しやってみたいという人が出てくると思います。池田先生がおっしゃった様 に、宣伝が重要ですね。 ○ 柴崎構成員  人員の増加のとき、企業で実際に新薬の開発研究を経験された方の経験というのは非 常に大きいと私は思うのですが、採用する枠の中に民間での開発研究をされてきたよう な方というのは、これはいろいろな点で難しさはあるとは思いますが、どのように考え ておられますか。 ○ 医薬品医療機器総合機構理事長  PMDAの立場としましては、我々の業務を遂行する上に必要な専門性をきちんと持 っている方を採用するということで、それが大学からであろうと、研究所であろうと、 企業であろうと、分野は別に問わないのですが、我々の要求するレベルで、ただ、企業 からの採用につきましては、独立行政法人のPMDAの法律をつくる際の国会審議の過 程で、過去のいろいろな経過を踏まえて、企業との癒着関係みたいなものがないような 措置なり、そういう体制をきちんとつくった上でやるべきだということが指摘されてお りましたので、現在、私どもの就業規則の中でも一定のルールをつくりまして、そのル ールをきちんとクリアした方については採用していくという形をとっております。  今回の、昨年末に出ました総合科学技術会議の報告の中でも、民間との人事交流と言 いますか、そういうものの活用も検討すべきだという御指摘もありまして、私としては 優秀な人材をどこからでも採用したいというスタンスであります。ただ、企業からの場 合はそういった過去の経緯がありますので、一定のルールをきちんと決めて、それをク リアした方を採用するということで、これは逆に言いますとPMDAの業務がきちんと 公正にやられているとか、あるいは透明性が高いとか、そういったシステム、体制がき ちんとできているのとセットの話だと思いますので、この点はまた関係者、いろいろご ざいますので、十分議論しながら対応していきたいと思っています。 ○ 柴崎構成員  どうもありがとうございました。 ○ 佐藤構成員  学校教育の問題、今いろいろな委員の先生方から御指摘があったかと思うのですが、 その中で治験と市販後のことを考えますと、恐らく臨床薬理学、あるいは市販後で言え ば薬剤疫学といった分野が極めて重要になるかと思うのですが、そういう分野を標榜す る大学の講座が、医学部・薬学部問わずほとんどないというのが今の日本の現状です。 そういうところできちんと学んだ学生がいないことが、人材が足りないことの一番根底 にあるのではないかと思っております。これは厚生労働省というよりは文部科学省に申 し上げるべきことなのかもしれませんが、そこの点を踏まえて、文部科学省とも連携を 図りながら、そこの部分の拡充に努めていただければと思っております。この点につい てはいかがでしょうか。 ○ 高久座長  臨床薬理学の講座があるのは浜松医大と大分医大と自治医大ぐらいで、余りないです ね。 ○ 佐藤構成員  薬剤疫学も正式な講座は1つ、京都大学だけで、あと、東京大学に寄付講座が1つあ るという現状でございます。 ○ 高久座長  なかなか難しいかもしれませんが、国立大学が独立行政法人になって、寄付講座は自 由に受けられますから、どこかのメーカーさんが寄付講座で臨床薬理や薬剤学の講座を つくられれば人材がふえると思います。  そろそろ予定した時間になりましたので、議題(2)の検討課題に入りたいと思いま す。前回の検討会から、資料4の論点整理に示されていますいろいろな課題について検 討を行っているところですが、今回は論点3−(1)に関連して、論点3−(1)は最適な治験 を実施するための方策ということですが、その中で1つがバイオマーカーについて、さ らに次に論点9、再生医療等に関する取り扱いということです。この課題は題名のとお り再生医療について、それぞれ事務局の説明並びに、本日、講師として何人かの方がい らしていますので、その方々のお話をお聞きして、その後、委員の方々のお話をお伺い したいと思います。  まず、バイオマーカーについて、事務局から説明よろしくお願いします。 ○ 山本審査等推進室長  事務局から説明に入ります前に、冒頭の配付資料に誤りがございましたので訂正させ ていただきます。座席表で井村委員のお名前が事務局の手違いで抜けておりまして、望 月先生の横に井村先生はお座りで、それが落ちておりましたことをおわびとともに訂正 いたします。  それでは、資料5に基づきまして、バイオマーカーのところを説明させていただきま す。資料5をおめくりいただきまして3ページに、前回にも配付いたしました第4回の 検討課題ということで、この論点3の(1)で医薬品の特性に応じた治験実施方法(新たな 評価指標導入)という視点におきまして、バイオマーカーについて本日御議論を賜るも のでございます。あわせて、論点9について後ほど御議論いただくということで、この 資料をつけております。  4ページ目からがバイオマーカーの資料でございまして、5ページ目をおめくりいた だきたいと思います。バイオマーカー等の利用による開発の迅速化ということにつきま しては、よりスピーディーに、より低コストで新薬の安全性と有効性を実証することに 関しまして、前回も御紹介いたしました米国FDAのクリティカルパスレポートの中で の指摘でありますが、実際には応用科学部門の作業が十分に行われてきたとは言えず、 開発者は21世紀の候補物質の評価のために20世紀のツールや概念を使用しているとい うことでありまして、新しいツールということで評価のツール、あるいは開発のツール ということでの新しいバイオマーカーということが今非常に着目されているという状況 ではないかと思います。  このバイオマーカーにつきまして定義いたしますと、測定可能な特性であって、ヒト や動物の生理プロセス、薬理プロセス、あるいは疾患プロセスを反映するものというこ とで、ここに記載がございますが、既存の古典的なものといたしましては肝機能障害に 関するGOT、GPTのような肝機能検査値、あるいは糖尿病と血糖値といったものが あるわけでございます。  6ページでございますが、実際に新しいバイオマーカーとしてどのようなものが開発 されつつあるかということについて、米国のクリティカルバスレポートの中に多く事例 が紹介されておりますが、まず疾患に関するバイオマーカーにつきましては、例えば前 立腺がんにおきますPSA、前立腺特異抗原といったものがあるのではないか。あるい は、同じように不妊治療やC型肝炎の治療についての疾患のマーカーといったものが着 目されているところでございます。  安全性に関するバイオマーカーとしては遺伝子レベルの毒性予測、トキシコゲノミク スを活用して、それで動物試験を用いずに安全性指標を構築するということが期待され ておりまして、これにつきましては後ほど宮城島先生の方からさらに詳しくお話しいた だけるものと思っています。  新しい画像技術の応用ということにつきましても米国のレポートでは指摘がございま して、画像診断を応用した認知神経性疾患の診断。同じように、関節リウマチ、あるい はがんに関する画像技術の応用といったものがございまして、これにつきましては岩坪 先生にさらに後ほどお話しいただけるものとしております。  ファーマコゲノミクスということで、遺伝子レベルで副作用の発生についての個人差 をある程度予測しまして、それで副作用を減少するといったファーマコゲノミクスの利 用といったものも現在開発されているところでございます。  7ページでございますが、このようなバイオマーカーの取り組みにつきまして、ここ で御議論いただくための論点の整理ということで紙を1枚つくっております。このバイ オマーカーの特徴といたしましては、医薬品等の開発において汎用性が高いものである ので、医薬品の開発の迅速化ということにもつながりますし、さらには疾病の診断技術 の向上など医療全体への貢献ということも期待されるようなものでございます。  ただ、このバイオマーカーにつきまして、実際に新しいバイオマーカーを探索し、さ らに実際に使えるものとして検証することにつきましては多大な時間、コスト、人材を 投入しないとなかなか確立できないといった難しい側面もあるということがございます。  さらに、新しいバイオマーカーについて、実際に医薬品に応用する、あるいは診療技 術に応用すると言いますと、これは医療現場で簡便に利用できるような普及、実用化に ついての開発をしなければいけないといった課題もございます。  このようなことから、新しいバイオマーカーに関しまして、取り組みとしては企業、 あるいは研究者の方の自主的、競争的な取り組みに期待していればいいのか、それとも 国全体としての共通基盤に対する産学官の協力した取り組みというものが必要なのだろ うかといった論点がございます。競争的、自主的な取り組みを基本とする場合について の公的な官の役割というものはどんなものがあるのだろうか。あるいは、産学官が一体 となって取り組もうとする場合の対象の選定、実施体制、あるいは国際的な協調につい てどのように考えたらいいのかという課題、こういったものがあるのではないかという ことで、論点の整理ということでこのペーパーをまとめさせていただいております。以 上でございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。引き続きまして、医薬基盤研究所トキシコゲノミク スプロジェクトのサブリーダーである宮城島利一さんに御説明をよろしくお願いします。 ○ 宮城島参考人  それでは資料6−(1)に沿って説明させていただきます。  御存じのように、医薬品の開発については、この検討会でも議論されたと思いますが、 数多くの医薬品候補化合物が生まれるわけでありますが、まだ実際には非臨床試験で多 数の動物を用いまして種々の試験をやっていますが、まだまだ毒性が原因で開発中止に なった例、あるいは予期せぬ副作用が出て販売中止になるものが少なくありません。し たがいまして、製薬会社として医薬品開発をやみくもにやっても、期間や費用が増大す るだけです。  そこで、私たちとしてはより有用な医薬品を早く開発しまして、より早く医療の現場 へということで、最新の技術でありますトキシコゲノミクスを安全性の向上のために利 用したいと考えて進めてきました。  これも御存じだと思いますが、製薬協の研究開発段階別の化合物数と承認取得数とそ の開発中止の理由ですが、非臨床試験から臨床試験のギャップ、あるいは臨床試験から 承認のギャップというのはまだまだ大きく、その理由としましては、これはアメリカの 1991年と2000年の比較ですが、毒性、あるいは安全性というのがまだまだ多いです。 一方、薬物動態はかなり減っているのですが、毒性の原因というのは非常に多いのが現 状かと思います。  なぜ、そういう毒性、安全性の原因が多いか。これはいろいろな原因が考えられると 思うのですが、2ページ目の下の図を見ていただきたいと思います。先ほど、審査管理 課の方からお話がありましたが、今までの毒性、安全性の判断というのは、GOTとか GPTとか、そういう血液の生化学値や病理組織、いわゆる古典的な毒性的なパラメー ターを利用しまして判断してきました。特に、その判断というのは毒性学者の経験によ るものが非常に多かった点があるかと思います。  このような判断というのは、毒性が顕在化している毒性変化には大変有効ですが、残 念ながら、その時点ではまだ現れていない毒性の予測とか、毒性の発現メカニズムにつ いては必ずしも有用とは考えられません。  そこで私たちとしては、ちょうど2000年ごろ、トキシコゲノミクスという科学が発 展してきましたので、特に毒性発現メカニズムの解明や毒性発現リスクの早期評価・予 測が期待できるというもので、従来の毒性学と同時にトキシコゲノミクスを利用するこ とを考えてみました。  トキシコゲノミクスというのは、そこに書いてありますように、トキシコロジー、い わゆる毒性学と、ゲノム、遺伝子情報と、ミクス、いわゆる包括的手段、その造語であ ります。医薬品による遺伝子発現の変化をとらえて毒性評価をしようというので、今ま での経験的なパラメーターを使うのと違うところがあります。  それでは3ページ目。トキシコゲノミクスの研究というのは、この短い時間で説明す るのはなかなか難しいのですが、大規模な安全性データベースを構築する必要がありま す。それにはモデルの毒性化合物に関する毒性データと、それに対応する遺伝子発現デ ータの蓄積が必要です。これを蓄積するために多大な時間と費用が必要です。例えば、 1化合物を実施するには、毒性実験から遺伝子発現解析をやりまして、データベースを 蓄積するまで約半年近くかかりますし、1化合物、私たちのプロトコールですと3,000 万円近くかかりますので、費用も時間も大変なものになります。  また、最近進歩しましたマイクロアレイ技術を使うことです。マイクロアレイという のは、ここの1センチ平方ぐらいの基盤状である数万個の遺伝子の動きを一度に測定す る技術であります。私たちが使っているマイクロアレイは、ラットで約3万の遺伝子、 ヒトではこの中に5万の遺伝子が搭載されております。  あと一つ重要なことは毒性学と情報科学の融合でありまして、そこでいかに連携プレ ーをやって、いいシステム、予測をするかということであります。そこで私たちは産官 学の共同プロジェクトを考えてスタートしました。  3ページ目の下ですが、このトキシコプロジェクトというのは平成14年度から5年 間の期間限定で、ことしが5年目の終了であります。  研究費は、ここに書いてありますように、厚生労働科学研究費の補助金と参加企業の、 これは15社ですが、共同研究費で、ほぼ同額の資金で行ってきました。  体制は、国立医薬品食品衛生研究所と、現在実施している独立行政法人医薬基盤研究 所、製薬企業15社。発足当社は17社だったのですが、合併で現在は15社です。  実際に実施している人員としましては、年によって若干変化はありますが、常駐して いる研究者は、企業研究員、遺伝子発現解析をやっている技術員、システムをつくるシ ステム開発員を含めて約30人です。動物試験等は外注しております。  目的は、先ほどもお話ししましたように、毒性データと遺伝子発現データを集積して、 安全性データベースを構築し、そのデータベースを基に安全性を評価・予測しようとす るものであります。  4ページ目です。研究について簡単に流れをお話ししますと、毒性を有する化合物を まず選択することですが、私たちは肝臓と腎臓で副作用が見られた医薬品や化合物、 150を選択しました。それを使用し、毒性試験はラットで行い、対象臓器は肝臓と腎臓 にしました。それ以外にはラットとヒトの肝細胞を使いました。私たちの特徴は、時間 変化と用量の変化を確実にとらえるために豊富な用量、あるいは経時変化については多 様な時点などの実験条件を設定しています。これはアメリカでも、ヨーロッパでもない ような条件であります。  次いで遺伝子発現解析を肝臓や肝細胞を用いてやるわけですが、この大事な点は、信 頼性のあるデータをとるために同一プラットで行うということです。そこで私たちは、 すべてのデータを同一プラットで厳密な精度管理のもとに、非常に高度な品質のものを とっております。それらの毒性データ、遺伝子発現データをもとに安全性でデータベー スを構築して、その評価システムを開発しております。  簡単にデータの中身について御紹介します。化合物は150、データの規模は7億 3,000万件という莫大な数になりまして、遺伝子発現データは、先ほど述べましたよう に、同一プラットで精度管理し、マイクロアレイを2万5,000枚以上使いまして、ラッ トやヒトでそのような遺伝子が含まれたデータをとっております。  もう一つ貴重なデータというのは、それに付随する毒性データでありまして、同一プ ロトコールで、GLP準拠でデータをとっておりまして、すべての時点や用量でデータ を取得しているところであります。それに化合物の情報や最新の遺伝子アノテーション 情報が集積されて、データベースをつくっております。  次は5ページですが、こういうデータをもとにどのような戦略で解析して安全性予測 をするかと言いますと、莫大なデータですから、一つ工夫しているのは、莫大なデータ から毒性関連性遺伝子情報を効率的に抽出する機能です。遺伝子を選択して、それから 解析や安全性予測を行います。安全性予測は製薬企業で一番効率化になると思われる単 回のデータから長期連投の安全性予測ができないかと。毒性フェノタイプで見られない ものも初期段階で遺伝子の判断ができないかということと、いろいろな医薬品候補化合 物のランクとか、選択づけに使うために、毒性の種類とか、強さ、あるいは安全性の類 似化合物の予測を行うこと。vivoとvitroの反応性の比較をやること。あと、今日の テーマであります、このデータベースを使いまして安全性バイオマーカーの探索という ことができるようなシステムを考えましてつくり上げました。これらについては、この 3月で5年間のプロジェクトが終わりましたので、4月以降、参加企業の製薬企業で使 うことになっております。  このデータベースからどんなことができるか。幾つか検証しているのですが、簡単に 例だけをご紹介させていただきます。5ページの下ですが、データベースの中からアセ トアミノフェン型の肝障害のバイオマーカーというものを抽出してきます。そのバイオ マーカー候補は130の遺伝子のセットになります。それを用いまして、データベースか らどういう化合物が肝障害にかかりやすいかというのを解析しますと、例えばブロモベ ンゼンとか、クマリンとか、当然ながらアセトアミノフェン、メタピリレンという、文 献上でも肝障害の強い化合物が予測できましたので、こういうバイオマーカーを使うこ とによって、例えばこういうアセトアミノフェンの肝障害の予測もできると考えており ます。  下の例はまた別の方法で、非遺伝毒性的肝発がんの予測をした例ですが、非遺伝毒性 的発がんの化合物の特徴的な遺伝子を112、データベースから抽出して、どのぐらいデ ータベースの中の化合物の発がんが強いか、弱いかというのを判別するようなシステム をつくりました。用量、あるいは時間的経緯で発がんのリスクがわかるようなことがで きましたので、マーカーを使うことによって、例えば安全性の予測ができるのではない かと確信を得ているところであります。  6ページ目です。トキシコゲノミクスのデータベースをつくって使用例を話したので すが、では外国はどうなっているかと言いますと、6ページの上の図の中で、私たちは 2002年にトキシコプロジェクトを開始して、今年で一応終わりです。4月からまた新 たなプロジェクトの開始予定ですが、アメリカでも2000年くらいからスタートしたの ですが、むしろアメリカの方は現在、トキシコのような、あるいはファーマコゲノミク スのデータに関するとガイダンスが出され審査資料に使うにはどうしたらいいかとか、 あるいはそういうための技術の標準化の方の検討についてはかなり加速度的に進んでお ります。  一方、去年くらいからはFDA、あるいは製薬企業、ベンチャーが中心になりまして、 肝毒性の予測マーカーをつくる開発にも着手しています。もちろんこれはゲノムばかり ではなくて、プロテオーム、メタボロームという別の手段も使ってアメリカではスター トしております。また、欧州でも同じような動きがありまして、例えば製薬企業、大学 と、私たちとほぼ同じような形で毒性予測というのを産官学協力して進めているのが現 状であります。このように積極的にデータ蓄積して使おうというのがアメリカの現状か と思います。  今までのお話を整理させていただきますと、6ページの下に書いてありますように、 このように安全性予測ができましたが、これからいかに臨床に使うかということが大事 かと思っています。そのためには、7ページに書いてありますように、研究開発におけ る評価ツールの確立をすること、さらにヒトへの外挿性の向上を図るということ。それ には、特に先ほどお話がありましたように、安全性マーカーを探索する。あるいはそれ と同時に毒性メカニズム等を解明していくことが非常に大事ではないかと思います。そ のためには、今までつくってきました私たちのデータベースというのは非常に有用であ ると考えておりまして、さらに産官学の綿密な連携プレーをやって進めることが大事か と考えております。 ○ 高久座長  引き続きまして、東京大学大学院薬学研究科の岩坪威さんに、10分ぐらいでお願い します。 ○ 岩坪参考人  アルツハイマー病に関してお話をさせていただきます。資料6−(2)でございます。  アルツハイマー病は御存じのように、物忘れ、認知症症状が出てくるということで非 常に問題になっているわけでございますが、臨床症状以外の客観的マーカー、画像診断、 生化学マーカーを用いて評価するという話でございます。  アルツハイマー病というのは脳が萎縮して、症状の上では認知症が起こってくる病気 でございます。真ん中の絵がかなり進んだアルツハイマーの患者さんの脳でございます が、真ん中の側頭葉の内側に、一番記憶にかかわっているところで海馬というところが ございます。一番右に海馬の顕微鏡写真が出ているのですが、アルツハイマーで何が起 こっているかというと、神経細胞が抜け落ち、脳が萎縮するわけです。  もう2つ、非常に重要な変化が出ておりまして、神経原線維変化、これは神経細胞の 中に黒くたまっているもの。それから、老人斑という、アミロイド物質というたんぱく 質がたまったしみ状の構造がある。これは昔から知られておりましたが、病気の原因の 上でも非常に重要だということがわかってきました。  この中でも特にβアミロイドというのが今、創薬のターゲットとして非常に重要視さ れており、いろいろな段階をとめる創薬が現に進行しております。もちろんターゲット はβアミロイドに限るものではございませんで、今、いろいろな治療薬の創出が試みら れております。  その下の時系列の絵を見ていただきます。これは重要なのですが、一番上の段には臨 床症状の進行が大体どんな時間経過で起こるかを書いてあります。痴呆、認知症に至っ たものですが、これが本当のアルツハイマーでございます。最近はこれに先立つまだ軽 い物忘れだけの状態、軽度認知障害、MCIと申しますが、こういう状態で患者さんの 症状をとらえることも可能になってきております。  ところが、その下の2つの段の病理変化をみると、既にMCIの状態でも、アルツハ イマーはほとんど完成していると言ってもいい。病気の一番の原因になりますアミロイ ドの蓄積というのは10年から20年先立って起こっているんだということで、本当に有 効な根本治療薬、予防薬を効かせるためには、理想的にはこのあたりで検出して治療を 開始しなければいけないわけです。  3ページ目をごらんいただきますと、今後、治療薬の開発をやる上で一番大事なこと は何か。結論は正しい診断と進行度評価の標準化ということが重要だと言われておりま す。ここからはアメリカでの今の流れの御紹介になりますが、既にいろいろな治療薬が 開発されて、臨床治験に入っているものもございます。ところが、臨床治験における問 題点が幾つかございます。一番大事なのは症状なのですが、これを指標にすると余りに ばらつきが大きくて評価が不確実になると。特に、これは検者、あるいは患者さんの状 態に応じても非常に指標がばらつきます。期間も長くかかって、N数も多く必要になる。  2番目が、特にこういう早期の状態ですと、評価に長年月を要する。3番目は、発症 してしまいますと、既に中身は進行しているということで、客観指標を制定して治療薬 の効果も正確に検出しなければいけない。求められているのはこの進行、あるいはアル ツハイマーが発症するところを忠実に病気の本質を反映する、いわゆる代理バイオマー カー、サロゲイトマーカー、これに基づく評価法が必要だということでございます。  そういう中で、その下のパネルでございますが、アメリカで今試みられているのはA DNIというプロジェクトがあります。メガファーマ、あるいは大学の研究者、NIH、 それぞれ薬物療法など開発中ですが、開発はできても評価基準づくりというのは非常に 大きな仕事ですので、単独ではできない。この3者が一体となってアルツハイマー病の 効率的な治療法確立を画像診断、すなわちイメージングと生化学マーカー、この2つを 柱にして実現するための大規模な観察研究として、The Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative、ADNIというのを開始したわけです。  この目標とされるところは4つ書いてありますが、まず正確なデータベースをつくる。 2番目には、臨床治験でどういうふうにデータ処理・取得をすればいいか、最適化を行 う。3番目には、この2つのマーカーの標準的方法、これを用いる方法を確定する。4 番目には、一番大事な臨床症状と客観マーカーを結びつける。最終的には、アメリカで はFDAによる治療法の承認促進に役立てようということでございます。  次のページをめくっていただきまして、アメリカでどういうふうに具体的にやってい るのか。これはなりかけのMCIの方を400名、なってしまったばかりのアルツハイマ ーの方200名、なっておられないコントロールの老年者200名に参加していただいて、 この方々にまずはMRI、この下にパネルが出てございますが、脳の萎縮の形態評価を すると。これを基盤にしております。  2つ目にはFDG PET、これは脳のグルコース(ブドウ糖)の代謝、すなわち機 能を見る検査です。バイオマーカーに関しては血液や脳脊髄液を採取して調べてゆく。 最後にβアミロイドイメージングというのがございます。次のページに絵がございます が、先ほど申したアミロイドの蓄積を、このPETスキャンを使って非侵襲的に見る。 こういうことが今できようとしておりますので、こういった種々の検査で評価していく ということでございます。  その下は予算のことですが、非常に規模の大きな研究で、5年で6,000万ドルが拠出 されています。現時点で86%の被験者が登録を完了してプロジェクトは動いておりま す。実際にどんな検査をするのか、そのイメージを示します。  下のパネルはMRIですが、これは御存じのように非常に精密に脳の形態を撮ること ができます。例えば側頭葉の内側の海馬というところがどのぐらい経時的に萎縮してい ったかというのを計量できるわけでございます。例えば、ここの例では海馬の容積とい うのは正常時で3.3、これがMCIの段階で既に2.2まで萎縮しています。その下は赤 で、MCIの人のどこが正常人と比べて萎縮しているか。MCIでは海馬だけにとどま っている萎縮がアルツハイマーになると青いところまで萎縮が広がっていく。こういう のを計量的に見ようということでございます。  次はPETスキャンです。ここに2つの絵が出ておりますが、下の段が、先ほど申し ました脳の代謝活性、ブドウ糖の消費を見る、いわゆるFDG PETスキャンという ものでございます。赤いところが活動が高いところですが、左から3番目にありますア ルツハイマーですと、この頭頂葉というところで早くから機能が落ちてくる。  上の段を見ていただきますと、これが新しい技術でございまして、脳のアミロイド蓄 積を可視化できる。これをPETスキャンで見るという「アミロイドイメージング」で ございます。下に化学構造式がございますが、ピッツバーグ・コンパウンド−Bという のが既に臨床で使われ始めておりまして、これがアミロイド物質に非常によくくっつく わけです。このPIBにラジオアイソトープを背負わせたものを患者さんに注射いたし ますと、脳に入る。しばらくするときれいに出てまいりますので、脳に入っている間に PETスキャンを撮ると、アルツハイマーの方でもビジュアライゼーションができる。  左から2人目の方はまだ認知症症状はないのですが、既にアミロイドの蓄積が始まっ ているらしい。こういうこともわかるようになりました。  下のパネルは体液バイオマーカーでございます。これは既に確立しているものでござ いますが、例えば脳脊髄液中のタウたんぱく質というものをはかると、アルツハイマー では非常にきれいに上がっているということがわかっております。ただ、体液バイオマ ーカーの問題点は、脳脊髄液ではある程度証拠をとれるのですが、容易にかつ非侵襲的 にとれる血液ではなかなかいいマーカーがないということが課題です。  最後のパネルは概念図でございます。何がこの研究を通して求められ、見ていくかを 示しています。例えば黒い線を見ていただきますと、これはMRIで脳がどんなふうに 萎縮していくかという、正常人での加齢におけるコースを示しているのですが、MCI になった方ですと赤線のように、側頭葉からどんどん萎縮してくる。アルツハイマーで は大脳にも広がっていく。こういうのを経時的に定量化していく。この緑の線は薬物投 与、臨床治験をしたときのイメージでございます。臨床治験時に、例えばMCIからア ルツハイマーに移行することに対応する変化が軽減された場合には薬物は効いているだ ろうと判断していくということでございます。  体液バイオマーカー、いわゆる生化学マーカー、あるいはアミロイドイメージングと いうのは、こういった発症前後よりさらにさかのぼった時期に評価が可能ではないかと いうことで、新しい指標もこういう活用の中から見つけられていくものと思われます。 以上でございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。今、事務局、宮城島さん、岩坪さんから説明をいた だきました。これらのお話について、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。非常 にお金がかかるということだけはよくわかったのですが。 ○ 松本(和)構成員  宮城島先生にお尋ねしたいのですが、このトキシコゲノミクスを医薬品の安全性の予 測に導入するというのは非常に魅力的なのですが、このためには膨大な基礎データを蓄 積する必要があるとお伺いしました。米国ではこの点でかなり進んでいるということで すが、人種差があるということから、日米共通のデータを使用するということは可能な わけでしょうか。 ○ 宮城島参考人  これからは日本だけでやっても効率的でないので、日米欧、データベースを含めて協 力していくことが大事だと考えております。 ○ 松本(和)構成員  共通なものをつくることは可能であるということですか。人種差を考えないで利用で きる。 ○ 宮城島参考人  私たちの場合はまだヒトを考えてはおりませんので、実際ヒトをやるときには考えな いといけないと考えております。 ○ 松本(和)構成員  もう一つ、先ほど肝臓と腎臓ということで先生はデータベースを築かれたということ ですが、ほかの臓器に関してはまたそれぞれに構築する必要があるということになりま すか。 ○ 宮城島参考人  その次に今考えていますのは、ヒトへの外挿を含めまして、血液が大事ではないかと 考えております。 ○ 池田構成員  新しいバイオマーカーを見つけるのに、岩坪先生のお話は、患者さんなり、健常人の 方を使われて、そして研究を進められているので非常に説得力がありまして、バイオマ ーカーも本当にヒトに使えるものになるだろうなという希望が持てます。動物を使った ものをやって、ヒトへの外挿という格好で進めるのがオーソドックスなのですが、例え ば非常にたくさんの臨床試験なり治験というのは実際に行われているわけですね。その データを十分に生かすような方向で、その過程でサンプルを何らかの形で患者さんから 了解を得ながら進めていくというようなやり方の方が、私は臨床医なのでどうもそうい うような思考になるのですが、患者さんなり、治験に参加してくれる方の協力が本当に 得られれば、そのデータをむだにしないで使っていくという方向の方がいいような気が します。そのためにはいろいろな整備をしなければいけないと思うのですが、そのとき に、遺伝子の解析をするか、あるいはメタボローム解析みたいなもので、血液でメタボ ロームを解析する方がむしろいいのではないかということをちょっと思ったのですが、 その辺、機構の方、あるいは厚生労働省の方も含めて御意見を伺えたらと思うのですが。 ○ 高久座長  どなたか御意見ありますか。なかなか難しいのですが、例えば先ほどの人種の問題で す。よく例に出るのはイリノテカンの代謝酵素、酵素の名前は忘れましたが、そのジェ ノタイプがイリノテカンの副作用と関係があると最初に日本人が報告して、アメリカで もコンファームされています。そういう事実が今どんどん出てきているのですね。そう いうデータを集めると、人種差がある場合もあるけれども、ない場合の方が多いという ことがわかってきていますし、アメリカには東洋人も結構いますので、よくデータを解 析すれば人種差の問題も解決されるのではないかと思います。 ○ 宮城島参考人  今の御質問ですが、一つは、まず製薬会社は動物を使わなければいけないということ。 そのためにまずラットのデータをとりあえず第一段階として構築したということ。そし てヒトに展開するには、幾つかのアプローチがあるのですが、まずメカニズムを解明し ていくことが動物からヒトへ行く大事な点です。その次は、先生がおっしゃるように、 ヒトのサンプルを使うこと。これについては、日本としてはまだ大きな課題があります。 どういうふうに解決していくか、利用していくかということが4月以降の大きな課題と 考えております。  もう一つ、私たちはゲノミックスが中心だったのですが、あと、プロテオーム、メタ ボローム、当然そういう考えもあります。ただ、今技術が確立しているのはゲノミック スです。ですから、プロテオーム、メタボロームを検討しながら、どこかでそういうよ うなものをプラスしていくことが大事かと思っております。 ○ 望月構成員  トキシコゲノミクスのお話をお聞きしまして、今まで私も動物実験のデータから実際 に臨床で使われるようになって以降の毒性、あるいは副作用の予測というのが、なかな かうまく外挿できていない例がたくさんあるような気がいたしまして、このプロジェク トが進むことでそういう外挿性に関してきちんとした成果が確立していくというのは非 常にありがたいことなのではないかなと思いました。  その中で、先ほど、150の脱落化合物を対象に研究を今詰めていらっしゃっていると いうことだったのですが、こういう化合物の提供者というのは、それぞれの製薬企業が この会員になっているというか、コンソーシアムに入っている製薬企業が提供されてい るということですか。 ○ 宮城島参考人  そういう化合物もありますし、現在販売されていて、何らかの肝障害が出たという化 合物も含まれています。製薬企業が提供しているのは、開発中止の化合物です。 ○ 望月構成員  私は産官学が共同してというところで、企業が自分のところのドロップした製品を自 分のところだけで抱えるのではなくて、拠出し合って、それをメカニズムも含めてお互 いに研究して、そこからきちんとした外挿のできるゲノムの研究というものが進むとい うのが重要なことかと思っています。先ほどからお金がかかるとおっしゃっていました ので、諸外国の例なんかを見ても、産もお金を出すけれども、国がかなり強力に推進し ていらっしゃるというところは考慮していく必要がある部分かなと思いました。 ○ 後藤参考人  バイオマーカーにつき、産業側から一言述べさせていただきます。競争している医薬 品企業同士で薬効バイオマーカーでのコンソーシアムを作るのは、知財の問題もあり非 常に難しいと考えています。ただ、岩坪先生のお話にあったアルツハイマー病のように、 開発医薬候補品はあるけれどもなかなか薬が出ない疾患では、世界中の医薬品企業共通 でバイオマーカーを何とか見つけたいという強い意志があります。米国でANDIのよ うな医薬品企業を含めた組織が出来、日本でもJANDIが立ち上がり、PETイメー ジングも含めたアルツハイマー病の診断、バイオマーカーの確立、治療法の確立が進展 することに期待しております。  一方、医薬品の副作用につきましては、先ほどからのお話にありましたように医薬品 の研究開発において薬効以上に予測がつきにくいところがございます。望月先生のご指 摘のように、特に我々が知りたいのは前臨床で予測ができなくて臨床で副作用が起こっ たようなケースでのバイオマーカーの探索です。医薬基盤研トキシコゲノミクスプロジ ェクトでは日本の医薬品企業同士がコンソーシアムを組んで、動物でのトキシコゲノミ クス研究を進めました。この研究は米国よりも早く取り組みましたので、ぜひヒトへの 外挿、特にヒト細胞を使った副作用予測バイオマーカーの確立に向けて研究を進めてい ただきたいと思います。  このようなバイオマーカーの産学官連携での共同研究は、日本だけでなく欧米でも進 展しています。それらのデータをもとに、より効率的な研究開発を進め、有効で安全な 医薬品の創製に努めていくつもりです。 ○ 佐藤構成員  岩坪先生に教えていただきたいのですが、アメリカのプロジェクトを大変興味深く伺 ったのですが、ちょっと聞き漏らしたかもしれないのですが、3ページの下のところに、 「FDAが近未来には“disease modifying drug”へのレベルアップを求める」と書か れているのですが、この辺についてもうちょっと教えていただけますか。 ○ 岩坪参考人  現在、FDAは、御承知のように、アルツハイマー病については認知症状、記憶障害 等の改善というところのみを公式に認めているのですが、このADNIのプロジェクト の進行をにらんで、本年4月3日にADNIの客観指標の暫定版をもとに今後、客観マ ーカーとしてどういう線を認めていくか。そういう合意点を探る会議が開かれる予定で す。 ○ 佐藤構成員  例えば降圧薬が血圧を下げるということで承認が得られるのだけれども、最終的には 心筋梗塞などの予防につながるかというところがエンドポイントになるわけですが、そ れと似たような感じだと思ったのですが。 ○ 岩坪参考人  おっしゃるとおりでして、結局、エンドポイントはMCIという、まだ認知症でない 状態から本当のアルツハイマー病、認知症になるというところへのコンバージョンをい かに防ぐかというところにありますので、それをこういう画像、あるいは生化学マーカ ーがどうプレディクトするか。そういうことを探ろうというプロジェクトでございます。 ○ 佐藤構成員  そうしますと、その場合には市販後にそれが本当に真のエンドポイントにおいてそう であるかということを確かめることが重要ということになりますか。 ○ 岩坪参考人  非常に重要になってくると思います。 ○ 高久座長  企業とアカデミーの研究者とが合同してやらないとこのプロジェクトは進まないと思 います。トキシコゲノミクスのプロジェクトの場合に、製薬企業さんがたくさん入って いますが、特にマイクロアレイなどを使うときには別の企業、例えば東レさんとか、タ カラさんとか、ああいう特別な技術を持っている企業がありますね。そういうところも 入っているのですか。 ○ 宮城島参考人  そういうところは入っていないのですが、マイクロアレイ会社には技術、特にアメリ カの技術を直接いろいろ聞いて、最新の技術でやるように協力していただいています。 参加会社ではないですが、全面的なバックアップをいただいてやっております。 ○ 高橋医薬食品局長  今、ちょうど担当課長がいなくなったので私が聞きますが、宮城島先生の方で、今の TGPのデータで化合物数が150。150というのは多分化合物の数で、一部何かくっつ いているもの、例えばほかの物質に変えるとか、そういったモディフィケーションや何 かがあれば、性質は同じなので、多分ここから引き出されている情報というのはモディ ファイしたものも同じだろうと推測や何かを立てられるのだろうと思います。そうする と、基本的には150と、そういったモディフィケーションで予想される、それぐらいの 化合物の数で、一応毒性の予想がつくと。そうすると、今、世の中でいろいろな医薬品 会社、これからもそうですが、開発するそういった物質の中で、この150の蓄積された 状態はどれぐらいのカバーができるのでしょうか。 ○ 宮城島参考人  まさに150というのは毒性、副作用を持つ典型的な化合物です。ですから、これから 構造と毒性の関係、あるいは構造とメカニズムの関係をやるには、同じ誘導体でも毒性 のないもの、あるいは毒性の弱いもの、そういうものを増やしたり、あるいはメカニズ ムでもそういう化合物群を増やしていく方がさらに予測精度が高くなると考えておりま す。来年度以降は、いわゆる対象化合物として、誘導体の化学構造、あるいはメカニズ ムを考えた上での化合物を増やすことが大事だと考えております。150はあくまでも副 作用を有する化合物を中心に選んでいるというところです。 ○ 高橋医薬食品局長  全くカバーができていないような化合物みたいなものは。 ○ 宮城島参考人  現時点では、ほぼすべての薬効群とか、あるいはモデル化合物が入っていますので、 基本的な化合物はカバーしていると考えております。 ○ 井村構成員  この化合物の中には環境化学物質とか、そういった種類のものも含まれているのでし ょうか。 ○ 宮城島参考人  私たちの場合は医薬品に限られていまして、一部、ほかのプロジェクトでそういう環 境物質、あるいは発がん物質を中心にやられております。 ○ 井村構成員  ほかでやられているプロジェクトの中では、今先生がおっしゃった、例えばQSAR とか、そういう構造活性相関みたいなものもプロジェクトの中に含まれているところが あると思うのですが、それとカップルさせれば、今御質問のようなことはかなりカバー できるのかなと思うのですが、最初からプロジェクトを組むときに、構造と活性の相関 みたいなものというのも組み込んでいくというやり方はプロジェクトの中に入っていな いのでしょうか。 ○ 宮城島参考人  それも一応考えているのですが、まず第一段階としては毒性化合物、第二段階として そちらをやろうと。そしてもう一つは、ほかのプロジェクトがあるのですが、最初から 遺伝子発現解析とか、毒性のプロトコールから全部同じにしなければいけないので、こ れからやる場合はそういうことも統一してやる必要があるかと思います。現時点ではほ かのプロジェクトのデータは統一できません。 ○ 高久座長  よろしいでしょうか。それでは、2人の先生方、どうもありがとうございました。再 生医療について、これも事務局の方から説明していただけますか。 ○ 山本審査等推進室長  お手元の資料の8ページから再生医療の資料がございまして、まず9ページでござい ますが、これは医薬品開発の歴史を図式的に書いたものでございます。新たな医薬品の 開発の契機といたしましては、まずは左の方で、天然物由来のもの、その誘導体による 開発ということでアスピリン、ペニシリンなどができてきています。ほかの疾患のため の医薬品にたまたま偶然、薬理作用があることを発見した。さらに有機合成でデザイン する。それから、受容体、あるいは遺伝子組みかえ技術、酵素、そういったようなもの に対応してということで、いろいろな新薬がここまで創生されてきているわけでござい ますが、さらに現段階では分子生物学の応用ということで遺伝子治療、再生医療、ある いは抗体医薬というものの位置づけがございまして、そういう点で再生医療というのは 新しい生物学の応用の一分野ということでこの1枚目では図示しております。  この再生医療につきまして10ページに定義を述べておりますが、患者自身の細胞・ 組織または他者の細胞・組織を加工して、失われた組織や臓器を修復・再生するといっ たようなものでございまして、培養皮膚、角膜といったようなものでございます。これ は下の絵にありますように、自分の細胞を使う場合とほかの人の細胞をいただいてきて 使う場合とあるわけでございますが、いずれにしても心筋、あるいは角膜、あるいは血 管といったようなものへの応用が現在、盛んに研究されております。  これにつきまして、次の11ページでございます。薬事法での現在のかかわり方では、 基本的に医薬品、あるいは医療機器に該当するようなものの開発ということであるわけ でございます。  これにつきまして、現在盛んに医療機関の中で研究がなされているものは、患者、あ るいはほかのドナーの方から採取したものを、その病院の中の研究室などに置きまして、 加工いたしまして、それで患者さんに投与するという研究です。この一連の医療機関の 中の流れにつきましては薬事法の枠組みではなく、実施されているわけでございます。  これをより高度な加工をするために、医療機関の外の会社でやっているような施設に おきまして高度な加工をして、また病院に戻して、それで投与するということになりま す。このように、医師のかわりに外部の事業者に加工を委託する、それで提供するとい う構図になりますと、この場合については薬事法の適用を受けるという形になっている というのが現在の薬事規制でございます。  次のページでございますが、再生医療に関しまして、自家というのは自分の細胞を使 った場合ということでございますが、自家の場合と、ほかの人の細胞を使った他家の場 合につきまして、そのリスクが相当違うのではないかということがございまして、その リスクについて図示したものがこの表でございます。まず自家の場合につきましては、 細胞をとった人に関する感染のリスクにつきましては、自分自身の細胞なものですから、 そういう点での感染リスクはないという点で自家製品については×がついております。  ただ、この自家製品につきましてもいろいろな型がございまして、一番下には例えば 皮膚とか軟骨とかという、もとの細胞の性質をもとの場所にそのまま使うようなもの。 それよりもう少し高度な使い方としては、口の粘膜の細胞からとったもので角膜をつく って、それで角膜を目に移植するようなもの。さらにもっと進んで、全身的なものとし て投与するものといったものがございまして、これに関しましては、全身を介する予期 せぬ副作用ということを考えますと、局所的に使用するものについてはリスクは少ない ということが言えるのですが、そうでないものについては自家だからといってもリスク がかなりあるのではないかということ。  あるいは、もとの細胞とは別の性質を有するのではないかというリスクを考えた場合 に、もとの細胞の性質をそのまま使う培養皮膚などにつきましてはリスクが少ないので すが、そうでない場合については大体同様ではないかということで、自家細胞につきま しては、こういったリスクの濃淡はあるわけですが、自家においては個別チェックを不 要にすることによって、より安全という考え方はないだろうかという議論もあるわけで ございます。それにつきましてここで示しております。  13ページ目でございますが、実際に再生医療に関しまして、どのような安全性、有 効性、品質のポイントがあるかということにつきまして、記載しております。  まず1で、ドナー由来の感染リスクがない場合につきましても、処理工程に付随する 感染リスク、あるいは製品そのもののそもそもの副作用等の有効性・安全性のリスク、 実際に製造する場合の品質が一定のものができないのではないかというリスクがあるわ けです。これに対しては、本質的には自家細胞・組織とは違う部分も製品にはあるわけ で、一定の規制が必要ではないかという視点もございますし、また、この分野につきま しては日進月歩の開発が行われておりますので、最新の知見を踏まえた柔軟なチェック というためには個々の品目ごとに見ていくということもあるのではないかというところ がございます。  実際に再生医療の場合には、医師・患者との関係が1対1という場合があるわけです が、外部に委託する場合につきましては、(1)で言っておりますように、加工を行う事業 者についてのチェックというものについても考えたらよろしいか。あるいは、医師の責 任のもとに外に加工を委託するという考え方が成り立つのだろうかという視点もあるわ けでございます。  このようないろいろな論点があるわけでございますが、米国におきましては、ちなみ に自家細胞だからといって特別な規制は他家の場合と特別に変えていなくて、同じよう に米国における薬事法に相当するもの、承認制で現在やっているところでございます。  このようなことで、再生医療の推進ということの中でどのようなことを今後考えてい かなければいけないのかということが論点ということでございますが、以下、参考とい うことで幾つか論点に関して少し詳しい資料を用意しております。簡単に資料の構成の みを御紹介いたしますと、自家細胞についての特徴については、まずリスクにつきまし ては(1)処理を加えることのリスク、(2)製品そのもののリスク等、(3)品質に関するリスク といったものがあるということ。実際の製品の特徴といたしましては、患者・医師・製 造者が1対1に対応するということ。あるいは製造がマスプロダクションに比べて比較 的小規模であるという特徴があるということがございます。  次の紙でございますが、参考2ということで、日米の細胞・組織利用製品、再生医療 製品を含めますが、それを比べた場合について、細かい表になっております。左上のと ころで、日本で、医療機関の外で行う場合というものにつきまして図示しているのです が、左側の軸のところで他家の場合と自家の場合というのを分けておりまして、横軸は 最小限の処理であるのかないのかということで分けております。一定程度の加工したも のについては自家でも他家でも薬事法の承認が必要ですが、最小限の処理の場合につい てはケースバイケースで使い方などについて分かれることがあるというような規制の仕 組みになっているところでございます。米国のFDC法などでやっている枠組みも基本 的には医療機関の外で行う場合については同じ枠組みをとっているということにつきま して、これは簡単に図示したものでございます。  参考3で、現行の規制について簡単に紹介しております。まず第1に細胞・組織利用 製品につきましては、感染性のリスクなどがあることから、通常の薬事規制に加えまし て、生物由来製品ということで1から4に掲げておりますような特別の規制を薬事法の もとで設けております。  さらに開発の段階でございますが、製品に関する規制に加えまして、臨床試験、治験 の段階におきまして、通常の治験の届け出を行う前に、さらに細胞・組織利用製品につ きましては確認申請ということで、有効性・安全性について十分なチェックをした上で 治験に入るという制度を現在とっているところでございます。  さらに、細胞・組織利用製品につきましては、感染被害ということに関しまして、医 薬品・医療機器ともに感染救済給付制度という機構法に基づきます制度を設けて、これ による対応をしているところでございます。  17ページで、現在の取り組みの現在進んでいることにつきまして、(1)に述べてお りますように、まず評価基準の策定ということを現在進めております。  さらに、この分野につきましては総合機構におきましても細かい相談業務の実施とい うことを今年度中に着手できる予定でございます。  治験実施手続についての合理化、製造・品質管理に関する規制の整備、こういったも のに関する作業を現在進めているところでございます。  最後の参考5でございますが、将来の見直しの方向としては、例えば治験届と確認制 度の見直し、あるいは情報提供の見直し、そういったものも考えられるのではないかと いうことにつきまして、このペーパーで示したものでございます。事務局の資料は以上 でございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。それでは、国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長 の山口照英さん、よろしくお願いします。 ○ 山口参考人  国立衛研の山口でございます。スライドとペーパーとどちらかを見ていただければと 思いますが、再生医療の現状と将来展望ということで御説明させていただきたいと思い ます。  この図に関しては、先ほどの事務局の説明とオーバーラップするところがございます が、細胞治療・再生医療というのは患者、あるいはドナー、他者から取り出しました細 胞・組織から細胞を加工、すなわち加工には培養、あるいは精製・純化などを行い、ま た、添加剤により分化・誘導などを行って、適切な目的とする細胞へ誘導した後に患者 に投与して患者の治療を行うという先端医療でございます。この途中の段階というのが 製造工程ということになるかと思います。  これは再生医療・細胞治療で用いられる細胞と対象疾患の例示を挙げたものですが、 これにかかわらずさまざまな治療法が行われておりますし、用いているそれぞれの細胞 に関しましても、目的とする細胞がこういうものであろうけれども、実際に使われてい るのは複数の細胞が含まれたものを用いて治療が行われているということになるかと思 います。  次と次のスライドで日欧の比較をさせていただきたいのです。どういうことかと申し ますと、日本では再生医療という言葉が使われているのですが、ヨーロッパとかアメリ カでは細胞治療、あるいはティッシュエンジニアリングという言葉が使われまして、よ り包括的には大きな概念の中で細胞治療に関する規制、あるいは開発が行われていると いうことがございます。  この図は関西経済連合会の昨年の資料をお借りしてきたものですが、日本における再 生医療材料の市場の将来予測ということで、ここに挙げられていますが、例えば血管が 一番多くて、その後、脊髄損傷、あるいは軟骨、末梢神経の再生、皮膚などが将来的な 大きな分野になるということですが、再生医療という言葉から組織再生、そういうもの に重点を置かれたものが対象になっているとお考えなのかなと思います。  これは昨年、ICHという活動の中で、ヨーロッパのEMEAという医薬品庁の方か ら教えていただいた最新のスライドですが、ヨーロッパにおける細胞治療・組織工学製 品というものの開発動向というのを借りてきまして、ヨーロッパの中で一番大きなウエ イトを占めているのは、がん・免疫医療で、例えば樹状細胞とか、活性化リンパ球とい うものが一番多い。そのほかに心血管系とか、皮膚とかがあり、オーバーラップすると ころがあるということだと思います。対象として考えているものは少し違うということ をここで述べさせていただければと思っております。  日米の違いについては先ほどの事務局の説明のように、米国というのは臨床研究もF DAの規制の下でやっているというところで、日本においては薬事法にかかるものとか からないものに分かれているのですが、EUに関しましては薬事法にかからないような、 要するに臨床研究については調査ができておりません。  ただ、医薬品と相当するものがsomatic cell therapy productsということで、もう 一つは医療機器に近い、ティッシュエンジニアリングのものというふうに2つに大きく 分かれておりますが、これまで細胞治療薬はヨーロッパ医薬品庁が規制をかけていたの ですが、組織工学製品というのは個々のヨーロッパの各国の規制がかかっていたものを、 それでは安全上、非常に問題があるのではないかということで、中央審査の方に移行し ようとしております。将来的には細胞治療薬、細胞組織工学ともにヨーロッパ医薬品庁 での審査になっていくのだろうと思います。  ここから各国指針の基本的なポイントと実際にどういうことが問題になっているかと いうことを説明させていただければと思いますが、各国指針の一番大きなポイントとし ましては、ウイルス等の感染因子の伝播。これは患者個人ばかりではなくて、患者個人 から医療従事者、あるいは個人の家族、一般大衆というパブリックヘルスの観点から安 全性を確保すべきだということで、これが一番重点の置かれていることだと思います。  もう一つは、規制は画一的に行うのではなく目的とする細胞・組織ごとにケースバイ ケースで行うと。例えば、先ほどからお話がありましたように、患者個人のオートな細 胞を使う場合と他者のを使う場合にはそれぞれリスクが違いますし、そのリスクに応じ た規制を行う。ただし、先ほど言いましたように、すべてのものを自己であろうが、他 家であろうが薬事法上のカバーをかけるというところは各国とも比較的共通していると ころかと思います。  この図は自己の場合にどんなリスクがあるかというのを先ほどの図の中でさらにつけ 加えたものですが、体外に取り出しました細胞に製造工程が入るわけですが、製造工程 には分化・誘導させるために添加剤、あるいは血清等が必要になる場合がありますし、 そういうものを添加すること、あるいは最終的に、製剤化というのは細胞製品ではなじ みがつきにくいかもしれませんが、適切な、例えばアルブミンを添加するとか、そうい うことも必要になってくるわけです。細胞というのは生もののまま患者に投与するとい うことから、そういう製造に用いたものを不活化・滅菌、あるいは除去というのはかな り限定的にしかできないということで、そういうもののリスクがあるということになろ うかと思います。  そのリスクを表でまとめました。これも先ほどの事務局のスライドに近いところがあ るのですが、細胞由来の感染リスクとしましては、自己由来の細胞を使う場合には、も との細胞は自己ですので、それは感染リスクが非常に低い。ただし、一つの想定される 懸念として、もともと患者さんの中にウイルス等が潜在していたとして、それが培養工 程に用いることによってふえてくるというリスクは確かにあると思われます。  これは細胞工程由来、あるいは工程由来不純物というもののリスクについては、他家 であろうが、自己であろうが、多分同等であると考えられます。もう一つは、細胞の免 疫原性の問題について、これは自己を使う場合、非常に分化・誘導が異なるものにして しまわない限りはほとんどないだろうと考えられます。細胞の異常増殖性等の、がんと か、そういうのを含めてですが、がんが起きるというわけで言っているわけではないの ですが、そういう目的外のものへの誘導等も含め、そういうリスクについては他者であ ろうが、自己であろうが、共通するのではないかと思われます。  もう一つの論点としまして、細胞組織製品が日本の国内で製品化が遅れているのでは ないかという論点に関連しまして、今、FDAでも一つの大きな審査のポイントとして 挙げられておりますのは、細胞組織製品というのは有効性をきちんと出せていないので はないかということです。これを説明するためにこのスライドを使わせていただきまし た。  これは我々の研究所の中で細胞治療薬の開発動向について調査をしているのですが、 2002年の時点で、そこの真ん中のピンクのところですが、米国で承認されているのは 合計6件ございました。その後、5年たっているのですが、米国で新たに承認されたも のはございません。多分、先ほど言いましたような有効性の担保というか、そういうこ とがきちんとできていないために、なかなか進んでいないというところが非常に大きな ポイントかと思います。それについて説明させていただきます。  細胞治療薬として投与する場合には、心筋梗塞でもいろいろなものにさせて心筋梗塞 部位の治療を行うわけですが、何が効いているのかということが非常に問題になると。 つくった細胞が心筋の血管になったのか、あるいは何か適当な因子を誘導して、その生 体内で血管が誘導されてきたのか。この辺が非常に明らかでないと。  そのために、例えば目的とする細胞というのは、実際に細胞集団として投与しますの で、例えばある細胞が血管内皮になるとしたら、その目的とする細胞を特定して、製品 の中に目的とする細胞がどれだけあるかを規定しないといけないし、また、細胞が産生 する何らかの物質が必要であれば、その目的とする物質の同定、あるいは定量という部 分は必要になるということがございます。  ですから、医薬品としての有効性を評価できる指標を開発するということが非常に重 要なポイントで、これが遅れているためになかなか開発が進んでいないのではないかと 思われます。  もう一つは、再生医療と細胞治療に関しては、各国とも革新的な医療技術の開発を促 進するという立場でエンカレッジしている。この点も非常に重要なポイントかと思いま す。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。今、事務局と山口さんからの御説明がありましたが、 御質問、御意見、何でも結構です。池田先生、何か御意見がありますか。 ○ 池田構成員  今の山口先生のお話をお聞きして全くそのとおりだと思うのですが、今、多くやられ ているのはTRという範疇で、それぞれの施設でやられていることが多いのです。TR というのは非常に実験的な医療ということですが、逆に言うと、これは本当にそれ以外 では治せない人を治そうとする究極的な治療なので、安全性はより以上担保しなければ いけないということもあるので、そういう面でGMPに準拠したような、非常に安全な プロセシングの施設を十分に基板整備しなければいけないのではないかと思います。自 己だから安全だということは決してないので、プロセスの過程でいろいろなことが起こ るので、プロセシングというところをもうちょっとそれぞれの施設が重要視していただ けたらと思います。 ○ 佐藤構成員  リスクのことに関してですが、最初に、厚労省の方からの資料5の16ページで、医 療機器に関しては機構の健康被害の救済の対象にならないとお聞きしたのですが、今の お話を伺っていますと、どこまでが医薬品でどこからが医療機器かという線引きがもは や非常に難しくなって、似たようなものが片や医薬品、片や医療機器と分かれてしまっ て、たまたまというと語弊がありますが、医療機器の方に分類されたものについては救 済の対象にならないということで、将来、やや整合性に欠けてくることが起こり得ない かなということが気になったのですが、今後、医療機器についても救済の対象とするよ うな見直しを御検討される可能性があるかどうかということをお聞きしたいのですが。 ○ 宮島医薬品医療機器総合機構理事長  16ページの下の2行、要するに救済制度は2つありまして、いわゆる副作用の救済 制度と、16年4月から新しく始まりました感染救済の給付制度があります。この感染 救済の給付制度はまさに今のバイオ系統の請求を意識したもので、それは医薬品・医療 機器にかかわりなく、つまりバイオ製品ということであれば全部対象になるということ です。ですから、抜けていますのは医療機器の不具合によって起こるような健康被害で す。これは救済制度がないのですが、感染救済の場合には医薬品・医療機器かかわらず、 いわゆるバイオ系統の製品であれば対象になるという整理になっています。 ○ 佐藤構成員  そうしますと、山口先生の資料の5ページのリスクを5つの種類に分類されて整理さ れていますが、それの中で、工程由来の不純物と免疫原性、細胞の異常増殖等といった あたりのリスクが万が一起きた場合に対する補償が今の制度ではできないと理解してよ ろしいのでしょうか。 ○ 中垣審査管理課長  山口先生の資料の5ページの上の表を御指摘いただいているのだろうと思います。こ の場合、まず感染性の救済については、機器であっても、医薬品であっても、全く同様 でございますから、感染性の問題はないと。免疫原性はほぼ0に近いだろうと言われて いて、細胞の異常増殖というところのリスクというのが、そういう意味ではあるのかな と思いますが、一方では医薬品の場合においても、副作用を救済するということになっ ているわけでございます。副作用という概念と異常増殖という概念がどうなのか。また、 異常増殖というのがどの程度起こり得るのか。このリスクの大小がどの程度あるのかと いう点についてもまた専門的な御意見もいただければと思っております。 ○ 山口参考人  現時点で、今まで承認されたものはないのですが、先ほど確認申請のことが事務局の 方からありましたが、確認申請された中で、例えば異常増殖についての担保をいろいろ やってきております。したがって、そのリスクは現時点でそんなに高いわけではないと 思います。 ○ 望月構成員  私、この論点の理解ができていないような気がしているのですが、資料5の11ペー ジの図で、こうした再生医療は、先ほどの池田委員のお話でも、これしかないぐらいの レベルの患者様に対して、比較的研究的な位置づけで、医療機関内で細胞・組織等の加 工も行われているというのが現状で、それにつけ加えて、最近では医療機関外の事業体 に対して加工の部分を発注するというか、出すという形で、そこのところが薬事法とど ういう関係が出てくるかという理解でよろしいでしょうか。  そこで、薬事法での規制として、どういう規制の対象になるのかということと、この 場合、これを事業として営利目的でやっているという理解でよろしいですよね。そのと きには、PL法というのが別途カバーする法律として存在すると思うのですが、そこの 薬事法の規制とPL法のカバーする部分とをどう解釈していいのかがわからなくなって しまったのですが。 ○ 高久座長  どなたかわかる方、いらっしゃいますか。 ○ 中垣審査管理課長  申しわけありません。今、PL法を取り寄せて至急検討します。 ○ 望月構成員  申しわけありません。私もちょっとよくわかっていない部分がありますから。ただ、 基本的には、先ほど池田委員がおっしゃっていたように、リスクは自家移植であっても あると思いますので、少なくとも医薬品と同様の、GMPのカバーするような製造工程 を使ってきちんと製造するべきでしょうし、自家だから安全だという整理で薬事法の規 制を緩めてしまうというのはいかがなものかなと思っています。 ○ 高久座長  幾つかの大学病院で、細胞療法のときにGMP基準の施設を作って、共同利用みたい な形でやっていますので、当然、ヒトに使う場合には、そのことは要求されると思いま す。自家骨髄移植などは別でしょうけどね。 ○ 佐藤構成員  このリスクに関して、もう一つ、患者さんへの情報の提供をどのようにしていけばい いかということに関心があるのですが、恐らく今は十分な経験を持った医師が患者さん に個別に説明して、自分の医療機関の医師のコントロールができる範囲内で、まさに専 門性の高い先生がやられているので、恐らくそこで完結するのだろうと思うのですが、 その途中で製造業者による製品化の過程が入ると、そのあたりのリスクについて、何か 患者さんに説明するところが必要になってくるのではないかと思うのですが。 ○ 山口参考人  薬事法がかかるというか、業として病院外で加工して戻すというようなケースなので すが、それについては先ほどちょっと触れましたが、確認申請という申請をしていただ く中で、その資料の中に必ずインフォームドコンセントの審議をしております。ガイド ラインをつくる際も、そういう倫理の問題についての専門家の御意見を聞いてつくりま したし、確認申請の中で一番大きなポイントも患者へのインフォームドコンセントとい うことで、そこの部分はそういう形で見ております。 ○ 佐藤構成員  今まさにそれは任意でやられているというか、国の規制としてではなくてということ ですか。 ○ 山口参考人  各病院の治験研究としてです。 ○ 佐藤構成員  ですから、これが医薬品なり、医療機器になるときに、そこの、例えば添付文書に情 報提供のあり方をどうしなさいというふうに書くようなことが必要なのかなと思ったの ですが、その辺はいかがでしょうか。 ○ 高久座長  これはものによって随分違います。 ○ 中垣審査管理課長  まだ一つも、そういう意味では承認したことがない状況でございまして、これから審 査を行っていく上で、今の患者への情報提供という観点について、普通の化学物質とし ての医薬品とちょっと違うんだということなんだろうと思います。そういう点も踏まえ て審査していきたいと思っています。 ○ 倉田構成員  患者としますと、過大な期待を持たないような情報提供というのをお願いしたいと思 います。 ○ 高久座長  おっしゃるとおりで、医者の方も過大な期待をすることがあります。 ○ 高橋医薬食品局長  6ページのことをちょっとお聞きしたいのですが、6ページの下の方にあります有効 性の話です。6ページの下の方の図を見ると2つの見方があると。投与した細胞そのも のが血管内皮細胞に分化したのか、あるいは投与した細胞由来の増殖因子の作用によっ て、御本人がもともと持っていらした、あるいは心筋とか、そういった血管内皮細胞に 分化が誘導された、どちらかわからないと。結果としてはよくなったと。そうすると、 審査をする立場からすると、どちらかわからないから困るという見方はあるのでしょう が、臨床の先生方からいけば、何か入れて、最後、一番右端に治ったんだから、真ん中 のパスがどっちをとろうが、治ったんだからいいじゃないかと。真ん中のブラックボッ クスはほうっておいてくれという見方はもしかすると出てくるのかなと思うのですが、 それについてどうお考えですか。 ○ 山口参考人  かなりそういう議論はあるかと思うのですが、一つは、例えば先ほどちょっと申しま したが、投与するものが、実際に純化されたものではなくて、いろいろな細胞の集合で あったりします。そのときに、例えば血管再生を目指した治療で、投与した細胞の血管 内皮前駆細胞としてのマーカーを測ってみると、それが有効でない場合でも、有効であ る場合でも、ほとんど差がなかったとする報告もあります。そうすると、多分、血管内 皮細胞は効いていないのだろうという考え方が成り立つわけです。従って投与される患 者に、有効なものを治療提供するという観点からは問題があることになります。すべて 治療効果オーケーであれば別にいいのですが、有効でない場合と有効である場合がある ということがあれば、その有効なものをちゃんと規定していただく必要があると思いま す。それは承認申請のときには出していただく。治験の間に充分なデータを得る必要が あります。 ○ 高久座長  実際には、コントロールを置くのが難しいですね。骨髄細胞の移植では、かわりにど の細胞を移植するかが難しいので、結局、機序はわからなくて、今のところ主に病院単 位、研究グループ単位でやっているのが世界的な状況だと思います。角膜移植などはま た別だと思いますが、この図で示されたものについてはまだまだ臨床研究の段階です。 ですから、申請承認までにはなかなかいかないだろうと思います。しかし実際によくな る人がいることも事実です。寺脇さんとか、松本さんとか、何か御意見はおありですか。 ○ 松本(和)構成員  先ほどから既に言われていますように、自家細胞の場合、細胞・組織の場合でも、直 接利用する場合はいいと思うのですが、一度違った環境下で培養などの加工をするわけ ですから、それは新しいものとして対応すべきではないかと私はもともと思っておりま す。 ○ 寺脇構成員  こういう再生医療の安全性確保という面で、我々の働く場所がまたできるのかなと今 ちょっと感じたところです。 ○ 高久座長  それでは、少し早目ですが、次回の日程について。 ○ 中垣審査管理課長  山口先生が出された資料の5ページの下のスライドの、特に2002年までに承認の欄 でございますが、私が知っている限りで申し上げますと、アメリカは97年に規制が変 更となって、承認したというよりは経過措置として流通を認めているようなものもある かと思います。そういう意味で、もうちょっとここは山口先生と相談した上で、適切に 訂正した上でまた配りたいと思っております。 ○ 山本審査等推進室長  次回の日程でございますが、3月29日木曜日でございますが、14時からということ で、会場についてはまた追って御連絡差し上げたいと思います。 ○ 高久座長  それでは、本日はどうもありがとうございました。これで終わらせていただきます。                                 (了)                      照会先                      厚生労働省医薬食品局承認審査等推進室                      TEL:03−5253−1111