07/03/02 第3回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 第3回 今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会 議事録 日時:平成19(2007)年3月2日(金) 10:00〜12:20 場所:厚生労働省専用第21会議室(17階) 出席者:  委員   柏女座長、奥山委員、榊原委員、庄司委員、西澤委員、吉田委員  厚生労働省   藤井家庭福祉課長、佐藤家庭福祉課専門官、鈴木家庭福祉課措置費係長 ヒアリング出席者:  全国里親会   理事  木ノ内 博道   里親ファミリーホーム全国連絡協議会 事務局長  西川 公昭   東京養育家庭の会 理事  若狭 佐和子  全国児童養護施設協議会   会長  加賀美 尤祥   副会長 桑原 教修   副会長 伊達 直利  全国情緒障害児短期治療施設協議会   会長  細江 逸雄   副会長 高瀬 利男 議事:  1. 関係者ヒアリング     ○全国里親会     ○全国児童養護施設協議会     ○全国情緒障害児短期治療施設協議会  2. その他 資料:  資料1 「全国里親会」児童養護についてお話したいことのポイント  資料2 「全国児童養護施設協議会」子ども家庭福祉・社会的養護に関する意見提出  資料3 「全国情緒障害児短期治療施設協議会」ヒアリング資料  資料4 児童人口1万人当たりの施設定員・里親定員(登録里親数×平均委託児童数) 及び在籍(委託)児童数(都道府県・指定都市別) ○鈴木家庭福祉課係長  それでは、時間となりましたので、ただ今から、第3回「今後目指すべき児童の社会 的養護体制に関する構想検討会」を開催させていただきます。  委員の皆さま方におかれましては、お忙しい中お集まりいただき、厚く御礼申し上げ ます。本日の検討会の委員の出席者は6名です。松風委員と山縣委員は欠席と伺ってお ります。なお、庄司委員は所用のため10時30分ごろに退席の予定です。  また、本日は関係者ヒアリングということで、「全国里親会」「全国児童養護施設協議 会」「全国情緒障害児短期治療施設協議会」の三つの団体から代表の方が出席されており、 各団体のご意見をいただくことにしていますので、ご紹介させていただきます。  まず、全国里親会の木ノ内理事です。続きまして、里親ファミリーホーム全国連絡協 議会の西川事務局長です。続きまして、東京養育家庭の会の若狭理事です。続きまして、 全国児童養護施設協議会からは加賀美会長です。続きまして、桑原副会長です。続きま して、伊達副会長です。続きまして、全国情緒障害児短期治療施設協議会からは細江会 長です。同じく、高瀬副会長です。  それでは、議事に入りたいと思います。柏女座長よろしくお願いいたします。 ○柏女座長  皆さま、おはようございます。年度末のお忙しいところ、お集まりいただきまして本 当にありがとうございました。今日から3回にわたって関係者の皆さま方のご意見を伺 わせていただくことにしています。今日は3団体の方においでいただいております。お 忙しいところ、ありがとうございました。私からも御礼申し上げます。それでは、これ からヒアリングに移りたいと思います。  まず始めに、今日お手元にお配りしている資料についての確認を事務局からお願いし たいのですが、よろしいでしょうか。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは、資料の確認をさせていただきたいと思います。まず「第3回議事次第」そ れから「配付資料一覧」。資料1として、全国里親会の「児童養護についてお話したい ことのポイント」それから資料2として、全国児童養護施設協議会の「子ども家庭福祉・ 社会的養護に関する意見提出」それから資料3として、全国情緒障害児短期治療施設協 議会の「『今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会』ヒアリング 情緒 障害児短期治療施設から」それから資料4として「児童人口1万人当たりの施設定員・ 里親定員(登録里親数×平均委託児童数)及び在籍(委託)児童数(都道府県・指定都市別)」 となっています。お手元に資料がない場合はお知らせください。事務局からお渡ししま す。資料4につきましては、前回の第2回検討会での配布資料3に指定都市を含めたも のになっています。ご了承願います。資料の確認は以上です。 ○柏女座長  皆さま、資料はありますでしょうか。資料の4については、最後のところに基礎デー タも入れていただいておりますので、それらも併せてご参照いただければと思います。  それでは、これからヒアリングに移りたいと思います。2時間ということで時間配分 ですけれども、事務局と相談させていただきまして、一つの団体の方に30分をめどに したいと思っています。本当に30分で切るつもりはありませんけれども、30分をめど にしたいと思っています。そうしますと1団体が大体30分ぐらいということになりま す。そこで、各団体から約15分をめどにご意見をいただいて、その後質疑応答の時間 を15分程度取らせていただければと思っています。それでよろしいでしょうか。それ では、そのように進めさせていただきたいと思います。順番は、並んでいらっしゃる順 ということで、最初に全国里親会の方からご意見をいただければと思います。よろしく お願いします。どうぞ前の方にお座りください。  それから、委員の方には3団体のヒアリングが終わって、もし時間があれば3団体を 含めた全体のご意見あるいはご質問をいただく時間も取れればと考えています。それで は、よろしくお願いいたします。  ご発言のときには、それぞれトークボタンを押していただければと思います。 ○木ノ内理事(全国里親会)  全国里親会の理事をしておりまして、千葉県で里親をしています木ノ内と申します。 この機会に児童養護について日ごろ考えていることを述べさせていただきます。要旨に つきましては、先ほど紹介がありましたように資料1として入っていますので、それに 基づいて話そうと思います。  まず第1の「児童養護の方向について」ですが、里親が確保できないから家庭的な養 護が実現しないというようなことがよく言われるわけですけれども、子どもの権利の視 点から、児童養護のあり方を全面的に「家庭的養護」に切り替えていただきたいという のが要望の第1です。今すぐということは困難だろうと思いますが、年限を区切って取 り組んでいただきたいと思います。  昨年9月にソウルで初めて里親大会のアジア大会が開かれました。大変注目すべきこ ととして、大きく家庭養護の舵取りをした韓国の取り組みがありました。どうしてこの ようなことが可能なのかと思ったのですが、理念から入っています。大きく理念を持っ て入っている。子どもは家庭的な環境で養育されるべきであるという理念から入ってい て大変感心しました。  子どもたちは大きくなれば必ず家庭を持つわけですが、そのモデルとなる家庭を知ら なければ、不幸の連鎖というか、不幸が繰り返されることになると思います。もう一つ は、やはり将来の問題だけではなくて人間としての豊かさ、生まれたばかりの赤ちゃん から愛着という関係で育っていく。愛着関係の育つ環境で養育されるべきであるという ことを強く感じています。  2番目ですが、「中長期的な取り組みの導入について」ということです。今お話しした 計画的な家庭的養護への全面転換と同時に、今後の対象児童数の需要予測と言ってよい と思いますが、企業などではマーケット的にはそういう発想をするわけですけれども、 このようなことをして後手の対応をなくしていただきたい。早めの対応をしていただき たい。ちなみに千葉県の社会福祉審議会に参加して「社会的養護を必要とする子どもた ちのために」という提言をこの3月にまとめたのですが、その中で需要予測をしており ます。そういう中から発想していただきたい。  私は会社生活が長いものですから、通常、企業でいえば3年・5年・10年というよう な計画を立てて、悲観論・楽観論それから中間論というような問題のとらえ方をして取 り組むわけで、そういったことをぜひお願いしたいと思っています。要保護児童の割合 について、厚生労働省は平成21年までに15%にするという目標を掲げています。画期 的なことではありますが、しかし行動計画ということがないのです。その辺を非常に残 念に思います。委託率については、目標を立てたのはよいのですが行動計画がない。あ ってしかるべきではないか。あるいはしかるべき機関にそういったことを命じるべきで はないか。目標を立てただけではかけ声に終わってしまう危険性を感じています。  少し急ぎますが3番目「『里親』の名称を『フォスター』にすること」と書きました。 なぜ里親が増えないのかというのはかなり大きい問題だと思うのですが、一つは、やは り里親の名称にあるのではないかという思いがあります。もちろん言葉だけではないの ですけれども、里親の非常に多くが、具体的なデータではないのですが7割ぐらいと言 われていますけれども、地域に里親であることを知らせずに、あるいは里子の名字も里 親の名字に直して養育しているということで、どちらかというと隠れているケースが非 常に多い。里親の発言は、積極的な活動をされている里親ですとそういうことはないの ですけれども、里親の大衆といいますか、そういったところは大変ナイーブな、いじめ に遭わないようにとか、地域の中で浮き上がらないということのために非常に配慮して いるというのが現状です。地域やコミュニティーということをよく言われますけども、 どうもその辺の疑問を感じております。そういうときに、ここに引用していますけれど も、一橋大学の学長をされた阿部謹也さんの『近代化と世間』という本を読んで、「日本 は世間なのだ」と思いました。ここに書いてありますが「日本は明治に入ってから全面 的に近代化が行われたが人間関係の分野はできなかった」、「世間が公共性の役割を担っ てきたが西欧のように市民を主体にした公共性ではない。世間で暮らす人は不安定な立 場におかれ、いつそこから排除されるか分からない危険性がある。そのため自分の下に 劣位のものがいないと自分の存在自体が危うくなり、何らかの形で劣位の存在を作るこ とになる」ということです。世間というのは贈与を中心としたもので、人の個性や人権 というよりは社会での地位というものが重んじられる仕組みなのだということで、里親 が地域でどのようにやっていくかというときに、この「世間」というキーワードが非常 に印象深いと思いましたのでご紹介しておきますが、いわゆる「フォスター」、「フォス ターペアレンツ」あるいは「フォスターチャイルド」ということで、新しい皮袋をつく って、国際社会に恥じない家庭養護を基本にした養護体制を構築し、思いも新たに取り 組むような姿勢が必要だと思っています。  もう一つ普段言われていないことを言いますと、私は千葉県の社会福祉審議会のメン バーで、里親部会で里親の認定に当たっていますが、その中で里親希望者を見ますと、 ほぼ8割が「子どもができないので里親になりたい」、「養子縁組を希望しているが児童 相談所に行って初めて養育里親という仕組みがあることを知った」ということなのです。 非常に里親が知られていない。8割と言いましたけれども、あとの1割は実子がいて、 虐待のニュースなどを聞いて、ぜひ里親をやりたいという人たちです。非常に明確な意 志を持って里親登録するのはほぼ1割ぐらいです。あとの1割は宗教関係者といいます か、宗教的な心情から恵まれない子どもを救いたいということで、大体8:1:1ぐらい の割合だと思っています。驚くほど里親が知られていない。名称ぐらいは知っているで しょうけれども、要保護児童の顔が見えていない。これはどうしてかといえば、私は施 設中心の弊害だと思います。施設が隔離していると言えばよいのでしょうか、要保護児 童の顔が見えない。要保護児童の現実を国民にきちんと知らせるべきではないかと思い ます。あるいは後で述べますが、施設をできるだけ社会に開放すべきだと思います。  続いて4「全国的な里親支援体制の構築について」です。一つは、主に児童相談所が 里親支援をしているわけですけれども、里親というのは大変手がかかります。児童養護 施設などと比べると大変時間や手間がかかる。それから、必要とされているサービスの 内容も違います。例えば「マッチング」ということが里親の場合には出てきます。施設 であればマッチングの必要はないだろうと思いますが、そういったことがある。もう一 つは、里親支援の一部は里親会が担っているわけです。里親会が任されているわけです けれども、養育に忙しい里親に支援ができるかといえば限界があると思います。そうい う部分で言えば、児童相談所の機能を分化して民間組織に任せる「フォスターケア協会」 というものが設置されればどうかと思っています。業務については、里親のPRや拡大、 登録時の研修、マッチング、各種相談の対応や自立支援というようなことで、段階的に は全国里親会にフォスターケア事業部のようなものをつくって、その後全国的な組織を 構築していくというようなことがあればよいというのが個人的な思いです。里親につい て先進的な国々には、すべてエージェンシー機能が発達しているのです。行政の代行を 担っている。医者や弁護士、あるいは教育関係者がソーシャルワーカーと一緒になって 取り組んでいるということです。日本の里親会という仕組みは大変クローズドです。内 輪の問題に終始している。里親会の運営に当たっても非生産的なところが大変多く見受 けられるという思いがあります。  5番目は「ファミリーグループホームの制度化について」です。各地で見られるファ ミリーグループホームを国の制度にしていただきたい。それから支援をしていただきた い。ただ、施設型の小舎制や分園型に取り組まれていますけれども、施設と一緒にしな いで家庭的な養護を重要視し、その中でファミリーグループホームの制度化を図ってい ただきたいと思っています。今回、全国ファミリーホーム全国連絡会からも来ています ので、私の後にご意見をいただきたいと思っています。  6番は「親族里親の制度を前向きに見直すこと」ということで、5年前に親族里親が できましたけれども、大変よい制度だと思います。子どもの愛着関係ということで言え ば、親族に養育されることが最も望ましいだろうと思います。親族の中で養育されるた めの制度の改善・充実を図っていただきたい。親族里親ではないのですがニュージーラ ンドの例で最近話題になっているのですが、ファミリーグループカンファレンスという ような家族関係者によって問題解決を図る方法があります。これは原住民のマウイ族の 中にあったノウハウだと言われていますけれども、それを紹介するビデオなどもあり、 なるほどと思いました。親族の中で養育することがうまくできれば、施設や里親の資源 がもっと有効に活用されるわけですので、できるだけ親族の中で子どもたちがうまく育 てられるようにお願いしたいと思っています。  7番目は「専門里親の制度改善について」です。これもつくられて5年になりますけ れども、里親の元には養育の難しい子どもたちが多くいます。必ずしも専門里親に限り ません。被虐待児童で手のかかる、あるいは現在知的障害であるとか障害児、あるいは ボーダーというような発達障害の子どもたちも多いのですけれども、そういうことから すると専門里親の条件を緩和して、できるだけ多く、例えば現在の里親の半分ぐらいは 専門里親となれるようにしていただけないか。専門里親の条件は、例えば養育期間が2 年となっていますけれども、今2年で家族の再統合というのは大変難しい状況がありま す。それから養育人数は2人までとなっていますけれども、例えば養育している実績が ないと専門里親にはなれませんので、そうすると、もう一人ないし二人は養育している のです。そこに新たにということになれば、現実的には大変受け入れ難い状況になって いるわけです。併せて、対象児童に障害児童も含めていただきたい。ただ、現実の里親 として非常に悩ましいのは、地域に専門里親ということが知られてしまうと、「お宅で預 かっている子どもは虐待児なの。性的な虐待を受けたことがあるの」などと、子どもた ちにあまりよい影響を与えないということがあり、里親の間で問題になっていますので、 ご承知おきいただきたいと思います。  その他、駆け足でお話しさせていただきますが、各論に入りますと、社会福祉司の質 をもう少しきちんとしていただきたいと思います。増加しているという意味ではよいの ですけれども、もっと質を重視して人間関係のスキルをきちんと持った方をお願いした いと思っているのが一つ。それからもう一つは、社会が里親を支援しやすくなるような フレームをつくってもらいたい。市町村や会社です。例えば自民党が何かの問題で取り 組んでいましたね。子どもを増やすということで税制上の控除をするとか。アイデアそ のものはまだ具体的にないのですけれども、市町村や企業に里親を支援するような仕組 みをうまくつくってもらえないかと思っています。  各論の3番目ですけれども、児童養護施設と里親が連携するような、いわゆる開かれ た施設ということもありますし、子どもたちの自立後の問題もありますが、里親と児童 養護施設の連携は全国的にあります。たとえば東京であればフレンドファミリーホーム ですし、千葉県でいえば「ふれあい家族」ということで、里親と施設が連携して取り組 んでいるわけですけれども、このようなものを全国的な組織に統一した格好でやってい ただきたい。それから施設運営についても開かれた、例えばボランティアを入れて子ど もたちが家庭を体験できるようなことを、ぜひ心がけていただきたいと思っています。  4番目には「ハーグ条約への批准」ということを書いていますけれども、これは国際 養子縁組の問題です。国際養子縁組が野放しと言うと語弊があるかもしれませんけれど も、チェックされない中でいろいろな業者があったりします。私は、子どもの人権から 言って、やはり国際養子縁組の国内法の整備をきちんと図っていただきたいと思ってい ます。  5番目です。里親制度の中で養子縁組が制度の外に置かれているわけですけれども、 本来、養子縁組というのは子どもにとっては愛着関係や安定した仕組みとして重要だと 思います。養子縁組を促進し、なおかつ支援するような方策を講じていただきたいと思 います。この他にも、養育後の、措置解除後の問題というのが里親に大変負担となって いますので、自立支援の問題。あるいは最近不法滞在の外国人の子どもが非常に増えて います。一時的に里親が預かったりするわけですけれども、これは法務省の管轄になる のでしょうが、いたずらに親子分離をしないでやっていただきたいということであると か、各論で言えばきりがないわけですけれども、今回のお話として児童養護に対するグ ランドデザインということで言えば、家庭的な養護を中心に再構築をお願いしたいと思 っています。私からは以上です。 ○若狭理事(東京養育家庭の会)  続いて私の方から、先ほどの里親ファミリーホームについて、もう少しお話させてい ただきます。今日は、本来ならば会長や副会長がこちらでお話させていただければよい のですが、ファミリーホームとして大勢の子どもたちを育てているもので、会長も副会 長も今日は子どもの事情でどうしても出席できないということで、代わりに私が来させ ていただきました。  今、木ノ内さんの方からは施策的なことや少し将来的なこともお話しいただいたので すが、私たちは現実に、今里親として抱えている問題など現場の声をお届けたいと思っ ています。里親ファミリーホームについて、後ろの方にたくさん資料を付けさせていた だきましたので、ぜひ読んでいただきたいと思います。いろいろな面から書かれていま すが、まず、里親ファミリーホームというのは、実際に里親を続けて来られていて、子 どもを養育する上で、もっと里親を専門的にやりたい、この子どもたちに家庭をもっと 味わわせてやりたいという思いの強い里親さんたちの集まりで、全国に広がっています。 全国に広がったファミリーホームを目指す里親さんたちを「里親ファミリーホーム全国 連絡協議会」という形で取りまとめています。もっと専門的に里親をやりたいという思 いの方のところに、子どもが4人ないし6人というふうに自治体の方から委託をしてい ただきますと、家事や子育てに対する負担が大変大きくなって、果たしてそれでいいの かどうかということもよく言われているのですが、そういう精神的や肉体的な負担より も、何よりも子どもたちを家庭に迎えたいという思いの強い里親たちだと思っていただ いてよいかと思います。  私たちが今一番訴えていることは、精神的や肉体的な負担については、自分たちの力 や組織的にでも、いろいろな社会資源等と連携したり利用したりすることで何とかなる かもしれないのですが、一番難しいのは金銭的な問題です。普通の養育里親の里親制度 のことにも関連すると思うのですが、実際は子ども1人を育てるのに生活費や学費など は国や自治体の方からお金をいただいていますが、実際は里親の方から子どもにかかる お金が出ていることも多く、それが1人や2人の子どもであれば里親の方から負担して も構わないのですが、4人〜6人、それも4人〜6人育て上げれば終わりというわけでは なく、終われば次の子どもとどんどん受け入れている家庭にとっては、里親の金銭的な 負担はかなり多いということです。そういうところに各自治体で定められているファミ リーホームやファミリーグループホームの制度などは、お金を加算してくださっている。 それがある県と全くない県では里親の負担にかなり違いがあるということで、そういう ところはもう少し国の制度として認めていただくことで、何とかもっと里親が頑張れる のではと思っています。  ファミリーホームについてのメリットは、19ページのところから書かれていますので、 ぜひ読んでいただければと思います。時間もないので。 ○柏女座長  よろしいですか。はい、ありがとうございました。里親制度全体についてと里親ファ ミリーホームについてのご説明をいただきました。それでは、何か委員の方からご質問 はありますか。はい、庄司委員どうぞ。 ○庄司委員  私の時間がないので、先に少し感想や意見を述べさせていただきたいと思います。  一つ、今日は全国里親会のヒアリングということであったわけですが、会長、副会長 が来られないというのは、どうしてなのか。十分話し合って理事である木ノ内氏が来ら れたということであればいいわけですが、木ノ内氏が話した中で、これは全国里親会の 見解と考えてよいですか。 ○木ノ内理事(全国里親会)  いいえ、全国里親会を通じてその中の職員のヒアリングをお願いしたいと聞いていま すので、そういった公なことではなく、職員としての見解を述べたわけです。 ○庄司委員  なるほど、わかりました。そうすると全国里親会として、必ずしも検討している内容 ではないということですか。 ○木ノ内理事(全国里親会)  はい。そういったことが求められていたのですか。 ○柏女座長  一応そのつもりでいたのですが。 ○木ノ内理事(全国里親会)  そうなのですか。 ○庄司委員  関係団体へのヒアリングということですから、普通はそうなっています。  この内容については、もちろん概ね賛同します。ただ、それを踏まえた上で、あまり 細かいことを言うのは嫌ですが、親族里親のことが韓国との関係で出ました。韓国の里 親制度は、ぜひ資料があれば見てほしいのですが、韓国は国際養子縁組として子どもを 送り出す国だったのです。この数年でそれをやめて、国内で見る。そのときに里親が活 用されているとなりました。しかし、日本でいう養育里親、一般の里親に委託される子 どもは、7〜8%です。ほとんどは親族里親です。親族里親のメリットは、木ノ内氏がお 話になったように実親とのつながりを保持する、あるいは文化的なアイデンティティー を獲得するというメリットがあります。しかし、欧米やオーストラリアで聞いたのです が、親族里親のデメリットもあります。研修の問題などもあって、親族里親がそれだけ で広まるのはどうかという意見もかなりあります。  それから、ここでファミリーグループカンファレンスが紹介されています。これは他 の委員の方が詳しいのかもしれませんが、私の理解ではどういう方針を決めるかという 話し合いということで、その中に親族で見ていくという場合に、それはそのまま連続す るということもあると思いますが、当事者が参加することによって、日本でいえば施設 に入るのか、里親に委託するのか、親族で見ていくのか、そこの部分として使われるの かと思っていたので、親族里親としてファミリーグループカンファレンスが入っている というのは、私は知りませんでした。それから専門里親制度は、専門里親に登録される 人が増えて委託される子どもの数はなかなか増えない。 ○西澤委員  聞きたいことをいったん整理してから。委員の話でいつまでも議論ができないです。 ○庄司委員  すみません。 ○西澤委員  話の腰を折ってすみません。質問があるのです。 ○庄司委員  では、もう一つ。養子縁組との関係をどのように考えるのか。ハーグ条約と最後の(5) ですが、里親と養子縁組との関係をどう考えるのかというところをお話しいただきたい と思います。 ○木ノ内理事(全国里親会)  必ずしも関係をどう考えるということよりは、養護のあり方として非常に安定的な、 大変素晴らしいものが、実は養子縁組だろうと思うのです。が、子どもがいない家庭が 勝手に「養子縁組をするのだからここは知らない」というのではなくて、子どもにとっ て大変安定した愛着形成ができる仕組みをもう少し支援して、制度としても取り入れて いいのではないかということです。必ずしも里親制度の中に、こうあらなければいけな いということではありません。 ○柏女座長  はい、どうぞ。 ○西澤委員  庄司委員、話の腰を折って申し訳ないです。聞きたいことは一杯あるのですが、まず 一つは、大枠はとても賛成させていただきます。ただ、細かいかどうかわかりませんが、 例えば里親の登録数と委託数の割合を見ると、少し最近上がってきていますが、委託数 は40%くらいです。60%くらいは登録していても使われないということで、その背景要 因は、一つ想像するには先ほどおっしゃった自分に子どもができないから里親をしたい。 つまり、子どものために里親をするのではなく、自分のためにしたいという登録もその 中に背景要因としてあるのかと想像しているのですが、その可否と、それから他に要因 があったら教えていただきたいです。  もう一つ、今日は制度のことがいっぱい出てきたのですが、私も里親の援助に携わっ ていますが、実際に愛着障害の子どもというのはとても大変な状況で、その中で里親が やっていくときにどの程度うまくやれているのか、あるいはどんな点が非常に困ってい るのかというソフトの部分です。そういったことに対するサポートというのが、どうい うものを期待するかという辺りのことについて少し伺いたいです。というのは、アメリ カなどを見ていると愛着障害のひどい子どもの場合には、一対一の親密な関係というの はかなり負担になるので、むしろ施設、グループホームの方がいいだろうという見解も 出ているのです。その辺りはどうお考えかということを少し教えていただければと思い ます。 ○木ノ内理事(全国里親会)  委託率の問題は確かに低いということがあるわけですが、現状は地方自治体の制度の 中で5年ごとの見直しというのが基本だろうと思うのです。登録はしているが、もう少 しタイミング的に待っていていただきたいということがあったり、この時期にこういう 受け入れ方は少し今難しい、例えば「今、思春期を迎えた子どもが1人いて、大変難し い状況なので、ごめんなさい」というようなことがあったりなどということです。いろ いろな無理難題を言って委託を受けない比率が高いのだということではなく、その里親 の今の事情によって「今、これだけにしてほしい」、あるいは養子縁組した段階で里親委 託をしていないように見えるが、長期的には里親をやっていきたいのだというケースは あるので、委託率の問題でいいますと常に今すぐ受け入れられる人がそのまま登録して あるとは考えないでいただきたいと思っています。  それからもう一つ、制度の問題で大変難しい子どもたちということがありますが、発 達障害的な子どもたちが非常に多いと思います。それから、愛着障害ということでいい ますと、要は里親にはそれまでそういった知識はなかった。そういった愛着上の問題が あって、この子どもは育てにくいのだということについての判断というのは、本当に近 年、この2、3年ぐらいでしかないと思うのです。そういう意味でいうと里親は非常に 孤立している状況だろうと思います。先日もある小児精神科の先生とお話をしたのです。 もっと連携を取りたいと先生の方からアプローチがあったのでびっくりしたのですが、 私たちはその辺では大変持て余しているというとおかしいのですが、養育上に出てくる 困難に対して、問題解決が、例えば児童相談所だけでは解決しないことが非常に多いで す。例えば、そういった情緒障害なども含めてなのですが、片方では無国籍の子どもで あるなど、法務省との連携を取ろうとするときに、実は児童相談所が必ずしも手馴れて いないのです。そういう問題もあるなどして、実は里親の置かれている現状というのは 非常に多岐にわたる問題に対して、どうしていっていいのかわからない中で手探りの状 況だろうと思います。里親会の中で、最近は里親サロンなどの形で問題を共有し合って いる段階で、大変困難な状況だろうと思っています。 ○柏女座長  はい、吉田委員どうぞ。 ○西川氏(里親ファミリーホーム全国連絡協議会)  私から、委託率について少しご説明をさせていただきたいのですが。 ○柏女座長  では、手短にお願いします。 ○西川氏(里親ファミリーホーム全国連絡協議会)  里親の委託率についてお話させていただきます。4年ほど前ですが、全国里親会とし てこの調査をしました。サンプル数は約7,000ぐらいでしたが、大体5,000ぐらいの調 査結果が上がりまして、その内訳を検討した結果、今、木ノ内から5年ごとの再認定と いう話がありましが、それができていない都道府県もあります。  それから一番大きな要因として上がってきたのは、これは里親の委託率という考え方 ではなく、里親の活用率という発想に転換していかないといけないと。活用率というこ とでみていきますと、現在委託はされていませんが、かつて委託を受けたことがある里 親さん、現在委託中の里親さん、あるいは養子縁組完了の里親さんといったケースにつ いても含めまして、現実的に里親を活用しているかいないかということになりますと、 大体7割は活用されているという結果が、数年前に出ました。以上です。 ○柏女座長  はい、ありがとうございます。では、吉田委員の次に奥山委員です。少し時間が押し ていますので、手短にお願いできればと思います。 ○吉田委員  大変詳しく教えていただいてありがとうございました。一つ教えていただきたいので すが、話の中で最初の里親の名称や専門里親との関係で、どうも里親であることが世間 に知れてしまうことを懸念したり、被虐待児であることが知られることを懸念したりと いうお話があったのですが、そういう意味で里親の存在というのはかなりクローズにし たいというご意向があるのかどうか。お話にありましたように、里親は社会的養護の一 つだと位置付ければ、社会に開かれた里親という方向もあると思うのです。もう一方で 残念ながら里親家庭での事故や権利侵害というのも聞こえてきていますし、そうなって くると外部の目を里親養育の中にどう導入してくるかということも、一方では大きな課 題だと思うのです。そうした状況を見ると、最初におっしゃったような世間からなるべ く知られたくないという意識のままで果たしてよいのだろうかと。その辺りをどうお考 えなのかということです。 ○木ノ内理事(全国里親会)  決して良くないだろうと思っています。しかし、現実は里親や里子という言葉の持つ 世間のイメージからすると、「あの子どもは里子なのだ」などということが必ずしもプラ スイメージではないのです。その中で孤立するような使われ方をしているのではないだ ろうかと思います。里親そのものが開かれてあるべきだろうというのは、大変重要なこ とだろうと思います。里親が虐待する可能性もあるわけですから、クローズドであって はいけないのだろうと思うのですが、しかし現実には学校ないしは地域の中で、「うちは 里親をやっているから」あるいは「この子どもは里子だから」とオープンにしてやれる ほど、地域が育っていないといったらおかしいのでしょうか、人権意識はないのが現実 でないかという思いがあります。 ○吉田委員  もう1点。 ○柏女座長  はい、手短に。 ○吉田委員  今の点に関連して、例えば里親のところに児童福祉司が訪問に来るなど、里親養育に ついて、施設のような第三者による評価であるなど、そういう方向に行くということに ついて、里親自身どうお考えなのですか。もちろん、個々に違いますが、受け入れの素 地というのは、ありますか。 ○木ノ内理事(全国里親会)  これは里親の個々の問題になるかと思うのですが、できれば来ていただきたいのだが 来ていただけていないというのが、現実だろうと思います。児童福祉司が里親宅を訪問 するのは、年に何回あるでしょうか。ほとんどないのが現実です。来るとすれば、保健 師が来るケースはあるのですが、児童福祉司の方がお見えになることや児童相談所の職 員が訪問するという形はほとんどないと思っていいと思います。 ○柏女座長  では、奥山委員お願いします。 ○奥山委員  今、吉田委員がおっしゃったことと一つは重なるのですが、三つほど少し教えていた だきたいと思います。  家族的な養育に社会的養護が向かっていきたいというのは、大きな柱でとても重要な ことだと思っています。その中でまず吉田委員がおっしゃったところで続けますと、権 利意識を社会が高めるためにどのようなことが必要とされるか、つまり何をしたらいい のかというご提案があったら教えてください。例えば教育の中にそういうことをきちん と組み込んでいく等も考えられるかもしれませんね。今、社会的に小学校なども少し開 かれつつあります。そういう所に里親が行って講演するなど、そういうことも含めて、 何かお考えがあったらお聞かせいただきたいと思うのが一つです。  二つ目はもう少し本質的な問題なのかもしれませんが、以前専門里親のことで少しか かわらせていただいたときに、里親はボランティアなのか職業かというところで、かな りの議論があった覚えがあるのです。里親会でないとしても、現在の皆さんの意識とし て、職業としての里親というのをどうお考えになられるかということを一つお伺いした いです。その際、先ほど来、出ています養子縁組を求めての、自分の子どもが欲しくて の里親と、本当に養育をしたい里親と、その辺を一緒に考えていいものかどうかという のが一つ、制度として最初からそれを二つに分けてしまう方法はないのかということも 含めて少しお伺いできればと思います。  三つ目は西澤委員がおっしゃったこととも少しかかわるのですが、私も去年3件ほど 里親での重症虐待ケースがあって少し心を痛めております。やはり相当愛着で難しい子 どもだったのだろうと思っています。一見そうではないのですが一対一の関係を取ろう とすると難しい子どもというのも少なくないと思うのです。その際に私がとても気にし たのは、里親のご家庭をきちんとアセスメントできていないことです。そして、同時に 子どものアセスメントができていないのです。だからマッチングがうまくいっていない ということなのだと思うのです。そこをどうしたらよいか。例えば児童相談所にそれを やりなさいと言っても、今の児童相談所に全部というのはとても負担だろうと思うので す。もちろん児童相談所がやれればいいのですが、何かしらそれをカバーするようなア イデアなどがあったらご意見を伺いたいと思います。 ○木ノ内理事(全国里親会)  はい、わかりました。1番目については教育、学校や地域の中で里親がきちんと評価 されるには、大変本当に難しい問題があるだろうと。表面上里親制度を論じている人た ちの中にはなかなか見えない、実は里親をやっていることによってある種後ろ指を指さ れるようなことについて、どうやったら払拭できるのかというのは大変難しいと思いま す。そういう中で学校の先生に対する意識改革をお願いするとか、地域の中でもコアに なる人たち、それから企業です。私も会社にいて「随分おめでたいことをやっているね」 ということをよく言われます。企業も理解が乏しいと言ったらいいのでしょうか、「随分 大変なことをやっているね」ということでしか理解がないのです。できれば市町村や企 業、ここにも少し書きておきましたが、何かうまくそういったものを支援できるような 仕組みを作っていくことや意識を高めることをやっていただきたいという思いは一つあ ります。  2番目の専門里親を職業里親とするかどうかということですが、いろいろな考え方が あると思うので一概に言えませんが、里親を職業的にやるかどうか。今、施設型の小舎 制で6人以下でやっているところがありますが、果たして職業として子育てをすると割 り切っていいのだろうか。ネクタイを締めて会社に行ったふりをする父親など、職業的 にやるのではなく、やはり家庭というのは父親が仕事に行く、その中で「あなたのため にこれだけのごちそうを作るからね」ということで、給食をするのではないのです。そ ういう食べることについても給食ではなく一人一人に込められた愛情といいますか、愛 着というものを独自に形成するには、職業というものが持つ冷たさ、労働ではないだろ うと思うのです。この辺のところは、非常に私も難しいです。シャドーワークといえば そうかもしれません。主婦の仕事はそうかもしれませんが、家庭の持つ、あるいは夫婦 がいる非合理的な家庭というものが、実はその中に育つことによって次の家庭モデルが できるのだろうと思いますので、職業にすることによって何らかの弊害が起こるという ことの方が大きいのではという思いがあります。  3番目ですが、里親による虐待は、確かにあるかと思います。現実のところでは登録 はするけれども、登録の認定の段階でもどれだけのことをして里親認定をしているかと いうと、非常に寒い感じがします。これも都道府県によって差があるのです。中には夫 婦間で相手の長所・短所を聞くなどいろいろな工夫をしてやっているようですが、里親 認定の方法をもう少しきちんとするべきだろうと思います。最低基準が設けられて5年 経ちますが、まだまだ浸透していないです。私はもっと合理的な認定の質問があると思 います。  もう一つは、研修です。登録時の研修をきちんとすべきだろうと思います。ほとんど の県では、されていないのではと思います。登録時の研修をしっかりやる必要があるだ ろうと思います。  それからアセスメントの問題ですが、里親のアセスメントは重要です。これについて は望むところだろうと思うのです。里親はほとんど放っておかれているのが現状ですの で、どういう評価がもらえるのだろうかというのは、大変皆さん熱心にやっているわけ ですから。ただ残念なことにクローズドにならざるを得ない、孤立してしまうという状 況の中で、実はアセスメントしてほしいと思います。  もう一つは里親と子どもを同時に見るのではなくて、海外の事例などを見ますと里親 の方を担当する福祉司と子どもの方を担当するというのが別々でなければ、子どもの言 い分、親の言い分というのがあるのだろうと思います。先日、里子に聞いてみましたら、 「私は里親の家を転々としたが、里親制度について聞いたことがない」という子どもが いました。そういう意味でいうと、子どもの人権ということから考えて、もう少しきち んと説明し、納得のいく状況の中で養育されるべきであるし、そのためには子ども担当 の福祉司もしっかりいて、別々にアセスメントされるべきだろうと思います。以上です。 ○柏女座長  はい。 ○若狭理事(東京養育家庭の会)  一言いいですか。先ほど西澤委員や奥山委員のお話で、難しい子どもを育てるのに専 門里親などありますが、一対一だけでは難しいというところがあったと思うのです。里 親ファミリーホームで何人もの子どもを養育されているご家庭は割と難しい子どももか なり入っていて、それがとてもいい形で育っているという現実があります。それがどう いうふうに証明できるのかというと私もよくわからないのですが、とにかく大家族のよ さというのがとてもあって、そういう家庭は表にも開いていますし、他からの評価を受 けることもいとわないです。家庭そのものを提供しているような家庭があります。里親 を別々に考える方法ではなく色分けしていって、色分けの間で研修や支援などをする。 最初からそんなにできる里親はいないので、最初は支援を厚くして、それから研修など を重ねていく中で里親に力を付けていってもらって、外に開けて自分でいろいろな資源 を活用できるような里親になってもらうというシステムがあると、この里親ファミリー ホームも生きてくるのではと思っています。 ○柏女座長  はい。ありがとうございます。まだまだご質問があるのではないかと思いますが、少 し時間をオーバーしていますので、全国里親会のヒアリングはこれで終了させていただ きたいと思います。もし、時間がありましたら最後まで聞いていただければと思います。 よろしくお願いします。ありがとうございました。 ○藤井家庭福祉課長  冒頭、庄司委員から、会長、副会長が来られていないというお話がありましたが、そ こは私どもの方から全国里親会にお願いするときに、必ずしも会長、副会長においでい だたく必要はないと申し上げたことですので、それだけよろしくお願いします。 ○柏女座長  はい、わかりました。ありがとうございます。  それでは全国児童養護施設協議会、お待たせいたしました。どうぞ、よろしくお願い いたします。 ○加賀美氏(全国児童養護施設協議会)  時間がタイトな中でのことですので、早速私の役割を果たさせていただきます。全国 児童養護施設協議会は3名で参りましたが、会長、副会長2名ということで、それぞれ の役割を一応分けながら果たしたいと思っています。  まず、私の方から概要といいますか、今の社会的養護の子どもたちのほとんどと言っ てもいいような状況の中で、子どもたちを受け止めて続けてきた児童養護施設として、 このヒアリングで何を申し上げるかと大変責任が重いと思いつつ、ここへ参ったわけで す。  少し本論に入る前にとてつもない話になってしまうかもしれませんが、昨日寝る前に 少し報道番組を見ていたら、給食費を払わない家庭が非常に増えていると。その金額は なんと200億円を超えているというお話だった。それをぼんやり見ながら、ふと、おと とい私の施設の中で起こった小さな揉め事のことを思い出しました。今度中学2年生に なる野球部に属している子どもです。小学4年生のときに入所してきました。その子ど もの母親というのは、今里親会の話があったので適切でないかもしれませんが、いった ん里親に引き取られて、そこで養育しきれなくなって、児童自立支援施設に送られ、そ こを卒業して、母親になった家庭でした。そしてその家庭で、相当虐待的な環境の中で、 子どもは逃げ出した。その子どもが私どもの施設に来て小学校4年生から今やっと中学 2年生になろうとしています。その年齢になった子どもです。  実は私がおととい1階で事務をやっていたら、2階で珍しくガタガタ音がしている。 少し事務を片付けてから2階に昇っていったら、大学を卒業して3年目のケアワーカー、 メインになってやっと子どもたちとも慣れてきた児童指導員と、その子どもがいた。子 どもは大きな声で泣きわめきながらその指導員を責めている、そういう場面にぶつかっ た。ふとOという指導員の顔を見たら、口の端から血がにじみ出ていた。また何かやら れたなと思ったのですが、それでも何とかそこをいさめて、ともかく暴力はやめようよ という話で終わったところだったのです。その後様子を聞くと、その中学2年生の子ど もが小学校4、5年生の子どもたちを相手に遊んでいた。ちょうど食事前の忙しい時間 で、職員もあまり目が届かなかったところで、その子どもが小さな子どもに暴力的な行 動を始めた。遊んでいるうちに逆切れしたという状況だったようです。そういうところ で暴力をしてしまったので、ちょっとタイムアウトしようと思って、こちらへおいでと 連れていったところが、そのタイミングで少し小競り合いになり、彼が数発顔を殴られ たという場面でした。それが実態だったわけですが、そんなことが日常的に起こるのが 児童養護施設の毎日です。彼はその後私のところに来て、ごめんなさい、子供に殴られ るというよりも、子どもに殴らせてしまうような下手なケースワークをしてすみません と謝ったのですが、そんなことが毎日のように起こり得る可能性のある児童養護施設の 現場であれば、まさに代理受傷そのものが日常的に起こっているのが児童養護施設かな と思ったところです。  その子どもの母親と、先ほどの200億の給食費の未納のこととがつながってそういう 発想になったのですが、彼女もまた家庭にいるときに子どもの給食費をお金がなくて払 えなかったという話だったのです。実は昨日の話は払えないのではなくて払わないとい う報道だったと思いますが、そんなところから、前回の社会的養護の専門委員会、あり 方委員会の中で私も申し上げたのは、今の要保護児童の問題は、一般子育て群とも連続 した問題になっているという話を申し上げて、最終的な報告書の中にそのような連続性 の問題、今の一般家庭、子育て家庭といわゆる従来我々が抱えていた社会的養護の子ど もたちの問題は連続した問題である。そういう状況になってしまったということとつな がって、昨日ぼんやりテレビを見てきたことを思い出して、今何をお話しようかと思っ てとりとめのない話から始まってしまったわけです。  その後日談。O君と少年との翌日の姿を職員から聞いたところが、翌日になったらそ の中学生は朝学校に行く前にO君の後を、O君O君と言って背中を追いかけながら、 自責の念を表出していたというから安心はしたわけですが、そういう状況がひっくり返 ると施設内で虐待が起こってしまうという状況があるのも児童養護施設の現実だと思っ ています。それくらいかなり逼迫した状況にある社会的養護の現場の話を私はあえて申 し上げたとご理解いただければと思います。  お手元に今日あわてて資料を1枚付けました。児童虐待相談件数と児童福祉施設の状 況のグラフ、これは別に珍しくないというか、ここにいらっしゃる委員の皆さんもご存 じのことです。ただ私がまず役割として今日の社会的養護の現状をお伝えするのに共通 理解をいただく意味で申し上げています。一番上の横線が児童入所施設の定員数です。 概ね5万。それに対して真ん中のグラフが児童相談所の児童虐待相談処理件数の推移で す。平成9年から平成16年度までですが、これを見ると大体平成16年度が3万3,000 件くらいの虐待通告相談処理件数だった。17年度が3万4,000です。これに17年度か ら福祉事務所が窓口になりましたので、福祉事務所の窓口の件数が4万400件だったと 思いますが、合わせると一気に7万数千件ということになりまして、16年度から比べる と倍増した。これは何を表出しているかというと、つまり虐待相談通告等の受け皿が増 えれば、虐待防止の活動としてそういうものが増えれば増えるほど、虐待の通告相談処 理件数が増えるだろうという予測があるわけです。これは欧米の事例を披見してもその ことはそういうふうに理解できると思っています。特にアメリカの350万件等の数字か らすると、日本のこの数字は氷山の一角といえると思います。その虐待通告処理相談件 数に比較して、虐待を理由に児童福祉施設に入所した児童の数が一番下のグラフです。 概ね一番上の5万件足らずの所ですが、そのキャパの1割程度しか毎年入れないという 状況だというのがこの数字です。これが何を表すかというと、これもあえて私が申し上 げるまでもなく十分ご理解いただいていると思いますが、虐待相談件数が増えれば増え るほど入所数との乖離が広がっているということは、入所してくる子どもたちの心的課 題も含めて、抱える重い課題の順に児童養護施設に送られてくるということに当然なり ます。一方で入りきれない子どもが再び家庭に戻されるというグラフだと解釈できます。 つまりこういう状況にあるのが、今日の社会的養護を要する日本の子どもたちの状況だ といっていいと思っています。  こういう中で私ども全国児童養護施設協議会はお手元にお配りしている、『子どもを未 来とするために』という小冊子を出しました。委員の皆さんしか渡っていないかもしれ ません。傍聴の方には行っていないかもしれませんが、「児童養護施設の近未来像II」と いうのが中身です。これはこうした今日の子ども家庭の実態、そこから送られて来る子 どもたち、社会的要保護児童の実態に対して、児童養護施設はどうあるべきかというこ とが中心の議論でした。その中でまず象徴的に枕詞のように申し上げたのが、入所して くる子どもたちは家族の中の養育の不全の中にある。養育不全の中で人と人とのかかわ りのすべを失った、あるいはもぎ取られた子どもたちです。その子どもたちを受け止め られる児童養護施設はどうあるべきかという議論です。となると当然のことですが、ま ず個別的な援助を要する子どもたちで、抱える課題がすべて個別化している。つまり奥 山委員がよくおっしゃったオーダーメイドのケアを必要とする子どもたちです。従って 個別化がまず第一点。先ほど里親の方で、個別化の問題の一つの社会的養護のあり方と して里親制度の問題があって、当然これからの流れとして欠かせない視点だろう。個別 化の問題。個別化を担保できる仕組みとしては小規模化であろう。小規模化を進めるべ きであろう。しかし小規模化した小さな閉鎖的な集団で、さまざまな課題を負った子ど もたちが入所する施設であれば、当然そこは広く社会化されるべきであるということか ら、地域化といった三つのことを枕詞のテーマとして近未来像の中でうたって参りまし た。従って個別化・小規模化・地域化ということをシステムとして、今後児童養護施設 のあり方の一つの構成として打ち出したところです。もちろん先ほど申し上げました一 般家庭の子どもたちの問題も、今日要保護される子どもたちの問題も、既に連続した問 題として日々起こってくるという流れからいえば、これは単に養護施設のシステムの形 の問題だけではなくて、広く養護施設が地域社会の中での社会資源として、広く重層的 な社会的養護のシステムの構築を目指すべきであろうといったことも、この「近未来像 II」の中には語っています。その中には当然のこととして、増え続ける要保護児童への 対応として、単に児童養護施設の枠組みだけではなく里親も含めて、すべての社会的養 護の枠組みを何らかの形で広げていこう。そしてその里親や児童養護施設は連携をしな がら、重層的な社会的養護のシステムを構築するべきだろうという議論をしてきたとこ ろです。そういう流れの中で、実はなかなか私どもが目指す「近未来像II」の実現は、 いろいろな形で進んできているとはいいがたい状況にあります。もちろん、社会的養護 のあり方委員会を契機に新たな予算等を取っていただいたり、小規模グループケアをは じめとする小規模化への制度・政策を厚生労働省としてご努力いただいたりして進めて いただいているところですが、なかなかこれも一朝一夕には進みません。しかも、小さ い形の施設になればなるほど、子どもたちが本来抱えている内的課題が表出されやすい 状況の中で、ケアワークする人たちの、先ほど申し上げたような代理受傷的な状況とい うのが増え続ける。そういうのが現実であることも我々は受け止めなければいけない。 そういう中でこれからの社会的養護のあり方をどうあるべきかということを、全国児童 養護施設協議会としてもう一度俎上に載せて議論を始めています。まず一つは、大きな 意味、マクロな意味でいうと、今日の児童福祉法をはじめとする子どもにかかる制度・ 施策は、戦後の収容保護のパラダイムといっていますが、そのパラダイムから抜けきっ ていない。その制度を引き続き使い続けてきた。もう一点が施設養護の内部の問題も含 めて、我々は本当に今の子どもたちに対しての養育論を持っているのかというと、残念 ながら否といわざるを得ない状況です。従って我々とすれば施設の中における養育のあ り方も含めて、議論を始めているところことです。あとバトンタッチをして、さらに今 後の具体的な施策等々についてのご意見を。 ○柏女座長  すみません。そろそろ20分たっていますので、手短にお願いします。 ○伊達氏(全国児童養護施設協議会)  それでは手短に少しお話をさせていただきます。副会長をしている伊達と申します。 まず資料2の8ページですが、児童虐待問題が起こって以降、社会的養護システムは大 変混乱をしていますし、今一番必要なことは、質を含めた量をどういうふうに確保して いくかということになっていると思います。この大変難しい問題を地方自治体だけが担 えるかというと、全国児童養護施設協議会で調査したところでは、地方自治体だけでや っていけると考えている自治体が9.8%しかなかったという結果が出ています。同じ資料 の3ページをご覧いただきたいのですが、例えば児童虐待に取り組む国々、先行した国々 の中ではやはり数が増えています。イギリスですと1995年から2005年の間に1万2,000 くらい増えています。今現在6万1,000くらいです。アメリカではこの前『Deep Blue』 という本が出ましたけれども、それによりますと50数万人になっているということで す。わが国も児童人口500人に1人の割合です。そうしますとこの量の問題にどう対処 していくかということが重要な課題になってくると思います。我々全国児童養護施設協 議会の方でも、何とか対応を図りたいのですが、この量の問題と質の問題で大変苦しん でいます。ただ今会長が申しました通り、方向性としては個別化・小規模化を図るため、 施設の小規模化をどんどん推進していく。それは二通りあって、一つは地域小規模児童 養護施設によって、新たに量に対応した入れ物を求めるという方向と、既存の大きな児 童養護施設の、特に居住部門を地域の中に展開していくことによって、子どもたち一人 一人に地域生活、あるいは家庭的養護を味わわせる。それから同時に子どもたちが出て いってしまった本体施設は、児童家庭支援センターを中心にして支援部門を立ち上げる。 この支援部門と居住部門のドッキングの中で、質的な向上、それから量的な向上を同時 に並行して図っていく方策が必要だろうと考えています。そこでともかく職員と研修体 制が大変重要になってきますので、このメモに挙げましたように2、3、4というものを 今後大急ぎで整備していっていただきたいと思いますが、なかなか地方自治体の動きも 鈍いようですので、児童相談所の一時保護所等に国が10分の10で整備の財源を付けた ように、ここは緊急的に10分の10が望めればありがたいのですが、それに近い形で大 きなてこ入れをして、そういう流れを世の中に作っていただきたい。そういう考え方を 取っています。以上です。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。では手短にお願いします。 ○桑原氏(全国児童養護施設協議会)  小規模の問題は、それこそ私どもの全国児童養護施設協議会にとりまして、これから の児童養護施設のあり方を探るという意味では非常に大きなテーマです。それをどうや って進めていくかは、施設だけでは到底できない状態で、行政も含めて後押しをお願い したいというのは、今会長、伊達副会長が申し上げた通りです。基本的に心に傷を持っ た子どもたちは、人によって癒される良質の空間をどうしても養護施設の中に立ち上げ ていかなければいけない。特にこれから、今もなお増え続けているそうした要保護児童 に対して、そのことを受け止められる質と量をきちんと確保したいということがありま す。そこに、それを受け止めていくスタッフの問題も先ほど若干出ましたが、インター シップを含めて職員をきちんと育てるようなバックアップも必要になってきます。特に 28条とか、そうしたケースで入ってくる子どもたちは、施設にやってきて本来の自分を 取り戻す過程の中には、どうしても大人の存在が必要で、その大人がいつまでも居続け られるような場に児童養護施設がなるようにと切に願っています。一方で、小規模化と いいながら現実にはその体制が十分でないためにバーンアウトしていく職員が現実にい るということも、全国の施設の中で報告されているという事実もぜひ受け止めていただ きたいと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。10分少し時間がありますので、ご意見、ご質問がありました らお願いします。 ○西澤委員  幾つかあるのですが、時間がありますので絞らせていただきます。一つは平成16年 のデータですが、全国平均で入所率が90%くらいだと思います。例えば都道府県によっ ては、このときのデータによると、栃木県とか京都府、大阪市、神戸市は70%台という 低いところもある。これは何か事情があるのか。つまり何かがうまくいっているからニ ーズがないのか。それとも逆に問題があるから子どもが入っていないのか。それは全体 の状況で知りたいということが一つ。二つ目は加賀美会長の方から重層的・社会的養護 システムとおっしゃいましたが、私もいろいろな養護施設に行かせていただいています が、すごく取り組んでいるところと、まあまあというところがあります。施設の中です ごく取り組んでいるところはやはりすごく重たい事例が行っている。そういうところで 一律の措置という今の体系に問題はないのかというのが二つ目です。三つ目は小規模化 は「近未来像II」でも述べられていますし、皆さんもおっしゃいましたが、実際遅々と して進まない。いろいろなファクターがあるのでしょうが、ただ単に制度的な問題とか エコノミカルな問題ということだけではなくて、もう少しポイントはないのか。小規模 化を促進するための一番重要な鍵は何なのか伺いたい。最後ですが、こういう状況の中 で先ほども里親による虐待の事件がありました。施設でもたくさん虐待の事件が起こっ ていることが表面化しているということで、それは施設の側としてもそれに対して対策 をしなければいけないと思っているのですが、数年前にどこかの都道府県で実態調査を しようとしたら、いろいろな絡みで圧力がかかってできなかったと聞いています。そう いう立場で今全国児童養護施設協議会として施設内虐待の問題に対して、どのようにア プローチしようとされているか、もしあればお聞かせいただきたい。 ○柏女座長  4点にわたってのご質問ですが。 ○加賀美氏(全国児童養護施設協議会)  入所率の違いというのは、都道府県の中の児童相談所体制も含めて、かなり温度差が あるという事実もあります。従って何ともいえませんが、ただ虐待の問題が顕在化し始 めてから、どうしても都会を中心に入所率がパンク状態。東京都は児童養護施設は満床 以上で、一時保護をしている割合が高まっているという事例もありまして、これは何と も判断はつきません。というのも、これからさらにそういう地域も満床状態になってい く。いわゆる社会的認知が進み、それでいわゆる虐待への理解が深まれば深まるほど増 えていくという、大変矛盾した状況にあるという現実も考えられますので、これからそ ういうところも満床状態になっていくのかなと思います。ややそういうところも増加し ているというところもあります。  それから、施設によってかなり格差があって、ケアの実態が違うということがあり、 このことに対して我々は今後どう考えるのかということですが、もちろん先ほど来申し 上げた近未来像も、今議論をしている制度沿革への議論、養育論の二つの委員会も、言 ってみればそういう施設間格差といったものも視野に入れながら、それをどう変えてい くのかというのが、全国児童養護施設協議会の組織としての取り組みの一つです。もう 一つはある意味では制度的な変革の中で、施設のインセンティブをどう考えながら、そ れに対して具体的な政策を立てていくのかといったことも、実は社会的養護のあり方委 員会のときもそういう話がありました。従ってそこもこれからの社会的養護のあり方と して議論の一つだろうと思っています。  施設内虐待の話がありました。これはまさに先ほど事例で申し上げたのですが、そん な実態が毎日のように起こる。入所児童の心的課題の重篤化の中で、職員の圧倒的なマ ンパワー不足に加えて、先ほど職員の質の問題がありました。質の問題についても十分 な援助技術、専門性を持った職員がいるという状況にないという現実の中で、施設の中 での不適切な養育実態も少なからず起こっていると考えれば、職員の資質の向上といっ たことも含めて、質・量的な改善はこれからも避けて通れない、社会的養護の大きな課 題だと思っています。それが一番のポイントだと思います。つまり今の現実は子どもた ちの抱える難しい課題に対応できるシステムを構築できてこなかった、いわゆる収容保 護パラダイムそのものの象徴だろう。その象徴としての施設内虐待というふうにとらえ ていいだろうと我々は考えています。 ○伊達氏(全国児童養護施設協議会)  小規模化が進まない理由について、少しお答えしたいと思います。我々がいう収容保 護というニュアンスですが、これはシステムで考えれば、要するに保護を必要とする子 どもをどう処理をするか、対応するかという、一時保護で考えているシステムだと思い ます。ただ、これまで長い期間の中で世界的にも問題になってきたのは、どういうふう に社会に送り出すか、その流れの中でシステムをもう一度考えるべきではないかという ことだと思います。そうすると今、虐待問題で非常に多くの子どもたちの入所が必要に なっていますので、ここの部分が大きくバッティングしてしまっていて、大混乱を起こ していると思います。できれば子どもを受け入れるためのシステムをどうするのか、受 け入れた子どもたちをどういうふうにきちんと育てて社会に送り出していくのか、その 二つの行動の中でシステムを考えていかなければ、この問題は解けないと思っています。 ○柏女座長  ありがとうございます。奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  先ほど会長がおっしゃったような日常があるということで、非常に具体的によくわか りましたし、その中で今、緊急的に公的な機関、国とか地方自治体が何かしなければい けないというのもその通りだと思います。ただ、常々言われてきた最低基準が最高基準 になっているという問題をどう解決していくのかという問題もあると思います。確かに 法律で最低基準は決まっているのですけれども、それ以上のケアに上乗せが困難なのだ と思います。そのためにいったい何ができるのでしょうか?緊急の課題として、公的な ところが対応しなければならないのはその通りですが、長期に考えると、先ほども出た ように寄附が取りやすくなるとか、もう少し別の方策か何かで考えることができないの でしょうか。長期的な視点で、お考えがあれば教えていただきたいと思います。 ○柏女座長  いかがでしょうか。 ○伊達氏(全国児童養護施設協議会)  確かにそこの部分は全国児童養護施設協議会の制度のあり方の中でも議論が出てきて いるところですが、日本がどうしても金太郎飴になってしまうシステムの問題は、児童 養護ばかりではなくて他のシステムもすべてそうなのだろうと思います。ですから地域 化をきちんと図って、地域の人々の中で我々がやっている子育てが見えるようなことを、 どれだけやっていけるかによって地域の支援も得られるでしょうし、地域との連携もで きてくるでしょうし、そのための仕掛けのようなものをできるだけたくさんやっていく。 今の施設のシステムで一番やりにくいのは、ある意味子どもたちを中に囲い込むという 形でしか養護ができないように実は我々はされているわけです。だけれども、本当であ れば子どもは学校に行きますし、地域の子どもと遊びます。そういう地域の中でやる生 活を地域の人たちとともに考えるためには、地域の中に生活の部分をどんどん押し広げ ていかないと、新たな策のきっかけがつかめないのではないかと考えています。 ○桑原氏(全国児童養護施設協議会)  過日、京都府では、企業の方を集めて児童虐待についての学習会がありました。私は 初めての経験だったのですが、それぞれの地域を一定のエリアで分けて取り組まれたわ けです。そういうことによって、現実に虐待の実情を知ることと、一般的な子育て支援 という意味で企業も一緒になって歩いていこうと、そういう主旨の下に開かれたわけで す。そういうことで伝わっていく要保護児童の問題も含めて、地域に開かれていくとい う意味では、施設の役割がもう一つあるのかと思っています。  先ほどの西澤委員のご質問ですが、京都府も確かに70%台の充足です。ただ、京都府 の場合について言えば、新たに児童養護施設ができたことと、1施設が定員を減らしま したが、それ以上の定員で施設ができたということで、それを合わせていけば一定の割 合になるのかと思います。ただ、もともと京都や東北の充足が70%台という状況はあり ます。特に今の要保護児童の増加の中で、例えば京都府の長岡京市で起こったようなこ との、あの後の流れですが、在宅でずっとかかわってきたケースがあの後に幾つか出て きています。そのケースが施設に入ってきているわけですが、そういう流れを見れば、 もっと早い段階で施設に措置ができたであろうというケースが伺えるということは、断 言はできませんけれども、その辺の地域の温度差のようなものは感じております。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。 ○加賀美氏(全国児童養護施設協議会)  今の奥山委員のご発言について1分だけお願いします。施設間格差の問題もあります けれども、やはり具体的に新しい社会的養護のシステムをどうするかということを考え ていくときに、モデルがないのです。従ってきちんとしたモデルを国として積極的に組 んでいく必要があるのだと思っております。それについてお話をすると長くなってしま うので、そんなことを一言申し上げておきます。   ○柏女座長  それでは、まだまだご質問があるかとは思いますけれども時間がだいぶ押しておりま すので、この辺で全国児童養護施設協議会のヒアリングにつきましては終了させていた だきます。お忙しいところありがとうございました。もしお時間がございましたら、最 後までお聞きいただければありがたいと思います。  委員の方にご相談なのですけれども、時間的に各団体40分くらいを取っております。 そうしますと12時を少し超えてしまうことになるのですが、よろしいでしょうか。で きるだけ公平に時間を取りたいと思うので、このままで行きますと12時15分くらいま ではかかると思うのですが、よろしいでしょうか。すみませんが、ご容赦を賜ればうれ しく思います。  お待たせいたしました。全国情緒障害児短期治療施設協議会の方から15〜20分程度 でご報告を賜り、そしてご意見・ご質問をさせていただきたいと思います。それでは、 よろしくお願いいたします。 ○細江会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  よろしくお願いいたします。全国情緒障害児短期治療施設協議会会長の細江でござい ます。私の方から簡単に回答というか説明をさせていただきまして、高瀬の方から「近 未来像」をつくりましたので、その内容についてと、今後の情緒障害児短期治療施設の あるべき姿についてご説明を申し上げたいと思っております。時間があまりないので簡 単に参ります。  情緒障害児短期治療施設は略して情短施設と申しますが、1950年代の後半に、非行児 童の急増と低年齢化という社会的な背景を受け、軽度の非行児に短期の治療という形で 対応する目的により設置されました。1962年に岡山県に設置されて以来、現在31施設 ございます。特に2000年以降、児童虐待防止法等の施行もありまして増加が著しいと ころです。現在も各自治体が設置の検討に入っているとお聞きしております。情緒障害 児短期治療施設は他の児童施設と比較しまして歴史が浅いですが、家庭の代替機能とい うような意味よりも、生活と治療と教育の3部門の連携によりまして、生活環境を整え ながら心の成長のケアと心の成長のアンバランスさを補正して、発達を援助していくと いうことでやっている施設だと思っております。開設当初より、家庭支援のメニューが 用意されておりましたので、試行錯誤しながら家族の再統合については一定の力量を持 っていると自負しているところです。  もう一点、情緒障害児短期治療施設は医師、心理職員、児童指導員、保育士、教員、 家庭支援専門員、ケアワーカーなどさまざまな専門職が連携して、児童や家庭の再統合 の支援を行っていまして、これを総合環境療法という形で位置付けて、援助をしている ということです。  回答の1番「今後の情短利用児童の見込みについて」でございます。現在、被虐待児 童の入所が70%前後、それから軽度発達障害の児童が20%という形です。特に、虐待 と診断されて入ってきたところが、軽度発達障害であるという児童が非常に多いという ことでございますが、国の見解としてはこういった子どもが障害児施設で行くのか、あ るいは児童施設で持っていくのかというようなところは、論議がまだ十分なされている ところではないと思っておりますが、現実には入っているという現実対応をさせていた だいているということでございます。そういった意味で、今後増えていくと思っている のは、DV家庭が多いということだとか、少子化や核家族の進展によって家庭や地域の 養育能力が弱くなっているというようなところから考えれば、どうしても受け皿として 施設で受けて、ケアしていくという児童は今後も増えていくだろうと思っております。  2番目です。「治療機能の拡充」ということで、児童養護施設を含めた児童福祉施設に おいては、心理治療職員の配置や家族療法事業等の情短機能が拡充されております。情 緒障害児短期治療施設は心理治療や家族療法を実施してまいりました。その成果を受け て、他の児童施設の方へも波及していったのだろうと思っています。特に被虐待児童の 治療的なかかわりやその家族に対する指導や援助を通して、家族を再統合していくとい うのが私たちの治療目的です。私たちとしては当初から治療の機能の最も重要な点が個 別の指導であるというところをもってやってまいりました。現在もそこを視点に置いて やっているわけでございます。それを強くしてもっと拡充していくためには、マンパワ ーという問題が残されると思っております。  それから「家庭支援」についてということですが、先ほども申し上げましたが、情緒 障害児短期治療施設の特徴として家庭支援のメニューを持っておりまして、対象児童の 67%、被虐待児童の62%。他の施設では72%は家庭へ帰している。平均在園は約2年 (24.9カ月)というのが現状でございます。そういった意味では、私たちのところは他の 養護施設とは全く違うところであるのだと思っております。退所後のケアとしまして、 要保護児童地域対策協議会との連携や地域のネットワークの構築等についても、入所し ている時点から作っているというようなことで、後ほど高瀬副会長の方からお話ししま すが、ネットワークの構築等が非常に重要な課題になっていると思っております。  それから、「専門性のある人材の確保と資質の向上」ということでは、ここでは医師の 常勤化という問題を入れておりますけれども、現在、医師が常勤している施設が31施 設中16施設でございます。まだ、医師の中に、情緒障害児短期治療施設というものが あるという認識が十分に行き渡っていないという意味で、情緒障害児短期治療施設の医 師の方々には、各学会やさまざまなところで情緒障害児短期治療施設をPRしていただ いているということでございます。人材の確保としては、もう一点でございますが、先 ほど全国児童養護施設協議会の会長もおっしゃいましたが、情緒障害児短期治療施設も 虐待が7割余で入っておりますので、非常に暴れるというか荒れるというか、そういっ たことが日常化しております。そういった意味では指導員や心理治療職員の増員という ものは非常に切実なものがあります。人的な配置がなされないと、数年前、我々情緒障 害児短期治療施設は施設崩壊の危機に陥り、全国の施設と情緒障害児短期治療施設が連 携を取りまして、そこを乗り越えてきたというようなこともありますが、やはり人の問 題は大きいと思っております。  資質の向上の問題としましては、我々の協議会の中で全国の研修会や心理治療の職員 や生活指導、寮の職員の研修会、それから、最近はブロックごとに研修会を持ちまして 積極的にそういう交流研修をしておりまして、資質の向上を目指しているということで ございます。それから今日お持ちしましたけれども、毎年1回『心理治療と心理教育』 という機関誌を出しておりまして、これは実践報告と経験交流です。それによって、各 施設が学んでいくというような形でございます。それから、子どもの虹情報研修センタ ーの方で新設の情緒障害児短期治療施設の研修会を持っていただいておりますし、児童 相談所や情緒障害児短期治療施設の一種の専門研修や治療施設の専門研修等を積極的に 出して力を高めているということでございますし、各施設が独自に研修会を持ったり、 学会で発表したりというような形で、とにかく専門性を高めていこうという方向は持っ ております。  次に、小規模化の問題です。先ほど申しましたが、非常に大舎制の施設が多いわけで すが、危機がありまして、それを乗り越えて、やはり小規模グループケアというかグル ープホーム、あるいはユニット制の導入、そういったものを今、全国情緒障害児短期治 療施設協議会の中で研究をし、「近未来像」でも出しております。そういった方向を持っ ていければと思っているわけでございます。  次のページです。支援方法や援助プログラムの開発、精緻化ということでございます が、非常に新しい情緒障害児短期治療施設が増えて参りましたので、施設を改修した、 虐待の子どもがたくさん入ってきた、対応がわからないというような形で、かなり荒れ るというようなことが残っておりました。そういった意味で私たちは、一つは協議会が 独自で行動評価基準の作成をしております。ASEBAと申しますが、国際基準がありま す。これは社会的適応評価表というように一般化されていると思いますが、それを導入 する形でここ1・2年研究をして参りまして、各施設へ少しずつ調査をし、評価表を記 入していただきまして、そして研究をしているということでございます。これによって、 治療進度を数的に把握する、あるいは治療を行うことによる変化と改善点のポイントを 明確にしていく、あるいは子どもの虹情報研修センターの方で情緒障害児短期治療施設 の縦断研究をやっておりますので、それと虐待児童の状態像の比較研究をしていくとい うような形で役に立つ、そして診断と治療方針が見えてくる、そういう診断基準を作っ ていきたいと思っております。それから各施設において、今、非常に問題になっている のは性の問題でございます。具体的な事例というのはないですが、虐待を受ける子ども たちは距離が取れないというか、人との距離がうまく取れないので、子ども同士が接近 感情を持っていってしまう。そういうことから、性的な問題が生じてきてしまうような ことも2・3ありましたので、そういった意味では、性教育をどのように持っていくの かといったことも含めて研究をしている施設もありますし、企業にも出しております。  また、施設内の子どもたちの暴力についての研究もやっておりますが、最も大事なの は児童の人権の問題です。施設内の虐待というのは、私たちのところでは聞いておりま せんが、子どもの人権をいかに尊重していくかというようなプログラム等も研究の対象 として、各施設が取り組んでいます。  最後に、里親のお話がありましたけれども、私たちも里親に対してはさまざまなとこ ろで支援ができればいいと思っております。具体的には里親サロン等の開催が児童相談 所を中心に行われておりますので、そういったところへ私たちの子育ての経験や治療の 経験を持ち込んで一緒に研究、勉強していきたいという考えを持っております。  非常に急いでお話をしました。8番の「その他」についてですが、「子どもの未来をは ぐくむ」というものをまとめましたので、その内容については高瀬副会長の方からお話 をお願いします。 ○高瀬氏(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  横浜いずみ学園園長、全国情緒障害児短期治療施設協議会の副会長の高瀬と申します。  資料として「子どもの未来をはぐくむ」という情緒障害児短期治療施設の近未来像を 載せています。これは5年くらい前から計画し、練ってきたもので、ようやく完成する ことになりました。印刷に回すのが3月末までには何とかということで、今日皆様にお 配りすることはできませんでしたけれども、厚生労働省の方にA4サイズで印刷してい ただいております。すべてはお話できないのですが、これをまとめる際に非常に問題で あったことは、実は情緒障害児短期治療施設というのはいろいろなタイプがあるという ことで、医療現場が非常に近い情緒障害児短期治療施設があれば、児童養護施設から情 緒障害児短期治療施設機能を持った、あるいは一緒に共用している養護施設もあるとい う現状です。母体が異なることによってそれぞれの考え方がまちまちで、共通している ところは先ほど会長が話された総合環境療法、あるいは職種にそれぞれ最低基準が決め られているといったことで、いろいろな考え方があることが今回まとめる際に難儀した ことでございます。  その中で幾つか拾い読みをいたしますが、これからの情緒障害児短期治療施設の中で、 一つは「外来機能」の創設であります。実はこれだけ医師がいて心理治療者がいて、あ るいは最近はファミリーソーシャルケースワーカーなどいろいろな専門職がいるのであ れば、それを十分に地域に還元し活用していく必要があるのではないか。それが外来機 能の創設ということです。実際には通所とか、いわゆる措置という形で利用する子ども 以外に何とかできるのが、家族療法事業とか児童家庭支援センターです。児童家庭支援 センターは残念ながら情緒障害児短期治療施設で広がっていかないという問題が大きい のですけれども、家族療法事業で年間延べ1,400件くらいの外来を行っている施設もあ ります。そういうものがこれからさらに活用されるためには、措置体系も含めて大きな 問題なのですが、情緒障害児短期治療施設をもっと地域で活用できる方法はないだろう か、それによって学校教育、心理治療や医療、そして家族を巻き込んだ家族療法によっ て家族を支え、子どもを育て、問題を解決していく。しばらく前までは不登校の子ども が多く、今は虐待の子どもが多い、また、最近は軽度発達障害の子どもがどんどん増え ています。そういう子どもたちをトータルにケアできる施設として成長していかなけれ ばならないのではないかと思っております。  次に「地域貢献」ということですが、これも今まで情緒障害児短期治療施設は情緒障 害児といった名称の問題が根強くありまして、なかなかオープンにできずクローズドな 施設になりやすい問題があります。それから施設内学級を設けている施設が多いわけで すから、子どもも学校も含めてクローズドになりやすい、ましてや被虐待児や軽度発達 障害というような子どもたちにとって地域とどのような関係であるべきかを考えると、 私たちとしては、現在はある程度のクローズドは必要ではないかと考えています。しか し、機能そのものについてはさらに地域に対して貢献していく必要があるのではないか と考えております。特に子育てとか心のケアについての経験を生かして、いろいろな情 報を発信したり研修の機会を提供したりすべきではないかと考えています。  未来像の最後の方に、近未来というよりはもう少し先の将来なのですが、「子ども心療 センター」、先ほどの外来機能や地域貢献をもっと推し進めていくと総合的な子どもの医 療、福祉、教育といった面でのサポートができるセンター的な機能を設けていけるので はないか。ただ、この場合は児童相談所の機能の一部と非常に近く重なるところが出て くるということもありまして、住み分けの問題などが出てくるのではないかと思ってい ます。もう一つは民間施設が増えてきた中で、果たしてセンター機能をその民間施設に 任せ行政機能の一部を委託できるのだろうかという問題は、情緒障害児短期治療施設そ のものがもっと力を付けて育っていかなければこの構想は成り立たないものですので、 そういう意味でこの近未来像の主旨が実は外向きでもあると同時に、現在ある施設の中 身をもっと充実させていかなければならないということと、新しくできる情緒障害児短 期治療施設への指針になっていければということで、この近未来像を作成しました。  資料の最後に「平成19年度の厚生労働省・文部科学省要望アンケート調査結果」が 載っています。直近の18年10月1日現在の情緒障害児短期治療施設の数字が出ており ます。これについては時間がありませんので割愛しますが、いろいろな意味でのご参考 にしていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○柏女座長  ありがとうございました。それでは、ご質問がございましたらお願いいたします。 ○庄司委員  聞きもらしたかもしれないのですが、2点あります。  一つはこの近未来像のところでも少し触れていますけれども、前回の社会的養護のあ り方の専門委員会で議論になったのですが、乳幼児の治療機能を持った対応の場がない のではないかという話が出て、そのときに情緒障害児短期治療施設も低年齢児を見てい く方向にというような意見もありました。ここでは、就学前児と書いてありますが、本 当に情緒障害児短期治療施設でやるのが望ましいかどうかも含めて乳幼児についてどう お考えかということと、この近未来像のところで、外来ということが新しく加わってい ますけれども、今見た限りでは通所のことがあまり言葉で出てなくて、それは当然、本 来機能として通所が含まれているということなのか。特に情緒障害児短期治療施設での 通所の実態と、今後についてどのようにお考えかということをお話しいただきたいと思 います。 ○高瀬氏(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  確かに、前の社会的養護のあり方検討委員会の専門委員会のときに、低年齢の子ども たちをどう引き受けていくかという話がありました。私は、乳児というのはいかがなも のかという気がしますが、就学前の3・4・5歳の子どもたちの中には虐待を受けた子ど もたちもいますし、実際に引き受けている施設が数カ所はあるのです。その多くは児童 養護施設から情緒障害児短期治療施設になった、ある意味で今まで非常に小さい子ども も含めて見てきた経験のあるところが引き受けているように思います。学校が設置され ているところもありまして、幼児をたくさん引き受けてしまうことによって、学校教員 の配置の問題にも影響するかもしれません。ただ、私どもでやっている幼児の、特に未 就学児童の情緒障害児短期治療施設での治療の結果を見ますと、やはり早期に親元に帰 していけるという結果が出ています。1年未満で家族再統合が無事に済む。これはもち ろん情緒障害児短期治療施設だけではなくて児童相談所の働きもあると思うのですけれ ども、やはり早めに治療し早めに家に帰すということが、小さい子どもほどできるのだ という結果がわかってきました。  それから、外来機能の中に通所というのがあるのですが、この通所というのはいわゆ る措置権が児童相談所にあるものですから、多くは15名ぐらいの定員なのです。それ 以上は引き受け難いわけですので、それでは地域に広く外来機能をオープンしていない ということになるので、そういう意味ではオープンにできれば、なおよいのかなと。通 所が行われている施設は今現在31の情緒障害児短期治療施設のうち13施設で、定数は 180名ですが、約140名の子どもたちが通所を利用しているということです。通所の場 合には、比較的、施設内学校を利用できるという意味で、不登校の子や発達障害圏の子 どもたちなどの学校不適合の子どもたちが広く通所を利用できるということでメリット があるのではないかと思っています。 ○柏女座長  他には。奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  情緒障害児短期治療施設は治療型施設として非常に期待されている施設だと思います。 いろいろお話を聞かせていただいてなるほどと思ったのですけれど、ただ一つ、少し気 になっているところがあります。先ほど高瀬先生からお話があったように、非常にいろ いろなタイプがあるということに尽きるのかもしれないのですけれども医療モデルとの 整合性をどのように考えたらよいのでしょうか。特に、ご提出いただいた文書に、治療 契約をきちんと結ばなければいけないということがあるのです。実際に我々が一番大変 な子どもを情緒障害児短期治療施設にお願いしたいと思うときには、治療契約を結べな いような形がかなり多いのではないかと思います。それを、治療契約を結べなければ入 所できないということになってしまうと、非常に限られてしまいます。それから、確か に情緒障害児短期治療施設の中には、非常に限定された方たちを対象にされるというこ とで、それ以外のはざまの方々が養護施設に行く。要するに重症の方が養護施設に行っ てしまうという県もなくはないですね。例えば、土日は家に帰らなければいけないとい う施設もありますね。そうなると、家庭機能がしっかりしていないと情緒障害児短期治 療施設には入れないので家庭機能がしっかりしていない重症ケースが養護施設に行かざ るを得ないというようなことも実際に起きているわけです。その辺を、もう少し均一化 と言いますか、ニードに応える変化というのがどのようになされていくのかというのが 一つ。それから、別のよくやってくださっている情緒障害児短期治療施設に見学に行っ たこともあるのですけれども、今度は逆にとても大変な子どもが自立できないで思春期 を迎えておられました。将来精神的な問題が非常に強くて、自立できない子どもたちを どのような社会の中で対応していったらよいのか、情緒障害児短期治療施設の方はたく さんのケースをお持ちだと思うので、そこのところのご意見を少しお聞かせいただけれ ばと思います。 ○高瀬氏(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  非常に難しい問題を投げかけられているように思います。情緒障害児短期治療施設は 医療現場が非常に近い、例えば精神科の病院が隣に併設されているとか、そういう情短 では時には医師や医療が中心になって治療をしているという問題があります。  実は、私は医者でもありますし情緒障害児短期治療施設の園長でもあるのですが、ど ちらかというと黒子的な役割をしてセラピストが中心の施設であるべきではないかと。 それが児童福祉施設の枠の中でやっていくことではないかと思っているのです。  先ほど、治療契約という話でしたが、これは途中で「治療同意」という形に変えて、 似たようなものですが基本的にはやはり治療者側は子ども・家族に対して施設のことに ついてインフォームド・コンセントを行い、治療に対する動機付けをきちんとなされる べきではないかと思うのです。それが不十分であることによって、情緒障害児短期治療 施設の生活には制限や枠が設けられることが多いことから、子どもがそこに非常に行き 詰まりを感じて、無断外出・無断外泊が度々起きかねない。それによってもう1回しき り直しをしなければいけないということが出てくるわけですけれども、それを度々繰り 返していくことが、ある意味では情緒障害児短期治療施設が施設崩壊の危機を迎えたと きに、果たしてきちんとインフォームド・コンセントをやっているのだろうかという問 題もあったこともあって、治療契約あるいは治療同意という形を設けた方がよいのでは ないかと考えました。  それから限定的枠については各施設間の問題ということで、協議会全体の中でそれを 平均化していくということはなじまないのではないかと思うのです。そのような限定的 な枠を設けている施設においては、いわゆる地域の児童福祉施設や児童相談所等が、そ の施設に対しての要望をもっと出していかなければいけないのではないかと思うのです。 特に、子どもの虐待を受ける・受けないの問題以前に、小学生まで、中学生まで、ある いは18歳までといった年齢も、実はそれぞれの施設で違うわけです。それを平均して、 先ほど会長がお話しした24.9カ月という平均入所期間ということがあるわけですが、こ れも1年半〜4年近くという幅があるわけです。全体で24.9カ月ですけれども、施設の 枠によって、あるいは子どもたちの内容によって入所期間もまちまちということもある と思います。  最後の、自立の難しさは、先ほど言ったように比較的小学校・中学校の年齢で家に帰 す。あるいは年齢制限を設けて年齢で家に帰す。私は個人的には反対で、きちんと治療 を終えてから出すべきではないかと思っているのですが。もちろん、それまでにご家族 と、家族療法も含めた相談を通じてそこまでで帰すということがなされるべきだと思う のですけれども。18歳近く、いわゆる高校生年齢になった子どもたちの自立の難しさは、 非常に大変です。幾つかの施設でステップハウスというような小規模グループケアをや っています。集団処遇の中だとなかなか自立をうまく促せない部分がありますので、情 緒障害児短期治療施設にも適用されてきた小規模グループケアを利用してステップハウ ス機能をそこに持たせていくというところが、幾つか出てきたように思います。 ○細江会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  それにプラスでよろしいですか。医療ケアというか、医療モデルでやっている施設が だいぶ多くなってきたのですが、児童福祉施設ですので、基本的には施設によってだい ぶ違うところなのですが、一つ、人数というか非常に入所率は高いのですけれども、限 定的に枠をつくってしまうというのは学校教育との絡みがあります。具体的に言えば学 校の方の学年の問題だとか、さまざまな学校教育の中のニードによって、施設の入所数 を変えていかざるを得ないというようなところもあるわけです。ですから、そこのとこ ろで福祉の関係と教育委員会という部分の連携がうまくいっているところは、ある程度 進んでいきますけれども、非常にそこのところが情緒障害児短期治療施設の難しさでは あるというところをご理解いただければと思います。  それから、自立できない18歳というかそれ以上のところをやれないかというのは、 基本的には治療施設という意味では続けてやれるところまでやりたいのだけれども、や はりそれも学校教育との絡みがかなり大きいということがあるのです。それから、自立 できない子どもはどうするのかということですが、それは本当に児童養護の方でお世話 になったり、里親にお世話になったりということが現状では行われています。以上。 ○柏女座長  では、あとは西澤委員のみということで。 ○西澤委員  私は、20数年前に情緒障害児短期治療施設で仕事をしていたので、情緒障害児短期治 療施設は身内のつもりでいるのですが、多分情緒障害児短期治療施設の中には私を敵視 している人が多いと思います。それは置いておいて、身内のつもりなのですが、少し厳 しいことを聞きたいと思います。  一つは、先ほど奥山委員が言われたことと関連していますが、充足率を見るといわゆ る老舗である最初の11情緒障害児短期治療施設は、ほとんどが公立ですが、そこに50% とか40%しか人が入っていない。とすると、これはもちろんそれぞれの情緒障害児短期 治療施設で違うとおっしゃるのですが、やはり情緒障害児短期治療施設として子どもの ニーズに応えていないことになるのではないか。その辺のリーグによるコントロールが 必要だと思うのが一つ。  もう一つは、通所の話が出ましたけれども、私が当時いたときは通所が何をするかと いう内容はわかっていませんでした。今どんなプログラムをやっていらっしゃるのか。 私はアメリカに行って初めて通所とはこういうことをいうのだということがわかったの です。多分厚生労働省もわからないで通所を導入したのだと思います。  それともう一つ。ケアワーカーの配置基準は、まだ1:5のままですか。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  はい、そうです。 ○西澤委員  それは施設によって変わっていないですか。つまり、例えば都道府県の独自努力によ ってケアワーカーの数が加配されているとか。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  あります。 ○西澤委員  それでいくと、大体全国平均は今幾つですか。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  3:1です。 ○西澤委員  3:1まで行っているのですか。それは、かなり都道府県が上乗せしているということ ですか。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  はい。 ○西澤委員  わかりました。ありがとうございます。ということで、先ほど申し上げた2点につい て聞かせていただければと思います。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  では、1点目は会長の方から。 ○細江会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  厳しいお話でございますけれども、全体に、公立がなかなか入っていないというとこ ろの分析をしますと、一つには、少しはっきり言いにくいところもありますが、職員の 勤務条件の問題かという気がしています。それとニードがあってもなかなか受け止めて いない。厳密に入所規程を設けていくという傾向はあるかと。そういった意味では、民 間の方が経営的な努力をしているというか、率直に言ってしまえば、経営の問題があり ますので、そこのところの日の丸的なところ。こんなことをここで言ってよいのかどう かわかりませんが、そういった部分は多少格差があるかと。それ以上のことは、ちょっ と私は十分に分析していません。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  私見ですけれども、やはり民間でなければ、これはもう活性化できないだろう。果た して公立にそれだけの意欲が十分あるのかなという思いを持たざるを得ないぐらいの数 字だと思っています。通所については、先ほど少し話しましたけれども、学校教育を利 用できるというのが非常に強みだと思っています。あとは個人心理治療がセラピストの 間で行われ、またグループ療法も学校教育の終わった時間帯にできるというのが「通所」 ですけれど。 ○西澤委員  厚生労働省が昭和50年代に「通所」を導入するときに、アメリカの施設に見学に行 っているのです。私もそこで通所プログラムを見たのですが、心理療法のプログラムと いうかグループ療法を中心にしているのです。それで日課をつくって、その間に個別療 法を入れたり、あるいは学校教育。情緒障害児短期治療施設でやっているのは学校教育 ではなくて、個別の、その子の学力に応じた学習援助プログラムです。そういうものを 1週間つくってというようなもので、これは今大変ニーズが高いと思うのです。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  同じものだと思います。学校教育も、実はもう少し個別化した学校教育だったらあり 得ると。 ○西澤委員  いや、少し違います。申し訳ありませんが、ここで議論はできないのですが、もう少 しそういう今の子どものニーズに合わせた通所というものを考えられた方が。唯一通所 があるのは情緒障害児短期治療施設だけですから。その辺をお願いしたいと思います。 ○柏女座長  それでは、吉田委員から補足的に。 ○吉田委員  ちょっと資料でお願いしたいというか、42ページになります。先ほど退所の話が出ま したけれども、退所先として、自宅・児童養護施設等と載っていますけれども、これの 退所理由別の資料はありますか。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  理由別というのは。 ○吉田委員  と言いますのは、先ほどお話にあった年齢の問題であるとか。 ○高瀬副会長(全国情緒障害児短期治療施設協議会)  わかりません。調べていないです。ただ、つい先週、情緒障害児短期治療施設の総会・ 施設長会がありまして、この資料を中心に議論がありました。それは、先ほど言ったよ うに、いろいろなタイプの情緒障害児短期治療施設があり、年齢制限の枠があり、ある いは虐待を受けたり受けていなかったりという施設ごとの差が数字から見えてこないと いう指摘を受けました。これは非常に恣意的に数を分析していけば出てくるのですが、 やれという施設長もいれば、ほどよくやれという施設長もあって、まだ全体にこれを本 当に突き詰めて言うと、下手をすると施設批判になります。つまり、先ほどの話でいけ ば、この子たちが家に帰っているけれども、果たしてどこまできちんと治療を終えたの かという問題にもなってくるわけです。年齢で区切っている施設はそういうことが言わ れてしまう。その数字は出てこないのです。ただ、先ほど会長から話があったASEBA という行動評価表。CBCL・TRF・YSRと、わからない人がたくさんいると思うのです が、そういうことによって子どもたちが入所の時点でどういう問題を持ち、それが半年 あるいは1年後にどのように変化してきたかという行動評価を、今近畿ブロックの情緒 障害児短期治療施設にお願いして試行的にやっているところです。それが全国規模でや られるようになると情緒障害児短期治療施設が一体どういう活用をされていて、それぞ れの施設ごとにどういう効果あるいは機能を生かせるのかといった指標が出てくるかも しれないと思っています。 ○柏女座長  それでは、まだまだご意見・ご質問があるのではないかと思いますが、時間も過ぎて おりますので、以上で全国情緒障害児短期治療施設協議会のヒアリングを終わらせてい ただきたいと思います。どうもありがとうございました。本来ならば、この後で全体に ついてのご意見・ご質問をいただく時間を取りたいと思ったのですが、時間も過ぎてお り、またこの後予定が入っている委員もいらっしゃいますので、今日はこの辺りで議事 を終了させていただきたいと思います。  3団体の皆さま方には、本当に年度末のお忙しいところ、おいでいただきましてあり がとうございました。お話を伺いますと、3団体それぞれの固有の問題もあれば、共通 した問題・課題、虐待の問題や、あるいはその地域に開いていくとか小規模化など共通 の課題も見えておりました。私たちはこの場では共通の課題について議論をしていくこ とになると思いますけれども、ぜひそれぞれの施設協議会や里親会も含めて、業界の中 で種別横断的なディスカッションができていくとよいと思いながらお話を伺わせていた だきました。ぜひ、これからもここで行われる議論に関心を持っていただければと思い ますし、またご指導・ご教授などいただくことがあるかと思います。よろしくお願いい たします。  それでは、今日はこれにて終了させていただきます。私の進行の不手際で、各委員に おかれましては時間が若干延びてしまってご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上 げたいと思います。  それでは、事務局から今後の予定について、よろしくお願いします。 ○佐藤児童福祉専門官  今日はどうもありがとうございました。次回は第4回になりますけれども、3月16 日の金曜日、午後3時〜5時ということで、厚生労働省9階の会議室です。後ほどご案 内いたします。  それから第5回は、3月22日木曜日、午後6時〜8時の予定です。同じく厚生労働省 の9階会議室ということになります。  それからもう1点、第6回ですけれども、4月3日の火曜日、夕方の5時ごろから予 定をしています。これはまた調整をさせていただきたいと思います。 ○柏女座長  5時ですか。 ○西澤委員  前に6時と聞いていましたけれど。 ○柏女座長  5時だと、私はちょっと。 ○佐藤児童福祉専門官  難しいですか。わかりました。また後ほど調整させていただきたいと思います。  第7回が4月16日の月曜日、これも同じく午後6時ごろということで調整させてい ただきます。以上です。 ○柏女座長  では、お疲れさまでした。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 連絡先 03−5253−1111(内線7807) 33