07/02/28 第95回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第95回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成19年2月28日(水)9:30〜 2 場所  職業安定局第1会議室 3 出席者    委員  公益代表 : 鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表: 市川委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表: 成宮委員、山崎委員、輪島委員   事務局  鳥生職業安定局次長、坂口需給調整事業課長、        篠崎需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐、        佐藤需給調整事業課長補佐 4 議題   (1)労働力需給制度について        (2)その他 ○清家部会長   ただいまから「第95回労働力需給制度部会」を開催します。本日は最初に公開で、労 働力需給制度についてご審議いただきます。その後、一般労働者派遣事業の許可の諮問、 有料職業紹介事業および無料職業紹介事業の許可の諮問にかかわる審議を行いますが、 許可の審査については資産の状況等の個別の事業主に関する事項を取り扱うことから、 これについては「公開することにより、特定な者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼ すおそれがある」場合に該当するために非公開とさせていただきます。傍聴されている 方には、始まる前にご退席いただくことになることを予めご了承ください。  議事に入ります。最初の議題は「労働力需給制度について」です。事務局において、 前回の派遣という働き方に関する追加資料と海外の労働者派遣制度に関する資料を準備 していただいています。なお、海外の労働者派遣制度については、委員の方々の要望も ありましたことから、次回と次々回の部会に分けて有識者からヒアリングを行いたいと 考えています。それでは、事務局から資料の説明をお願いします。 ○篠崎補佐  資料の説明をさせていただきます。本日の資料は1点です。「労働者派遣事業関係資 料」ということで、「3.派遣という働き方(追加資料)」、「4.海外の労働者派遣 制度」という形で用意しています。前回は派遣法の変遷、派遣にかかわる国内労働市場 等について資料を用意させていただきました。その中で、委員の中から、例えば派遣料 金の変遷、賃金の変遷についてというような依頼もありましたので、そういったところ について補足的に追加資料を用意いたしました。  それから、海外の労働者派遣制度については、前回準備が間に合わなかったものにつ いて、今回も完全なものということではありませんが用意をしています。  まず、「派遣という働き方」の追加資料から説明いたします。まず、2頁をお開きく ださい。今回の追加資料は大きく(1)から(6)、派遣労働者の年収、その推移、派 遣契約料金の推移という形で用意させていただいています。  3頁をお開きください。(1)「派遣労働者の年収」でございます。前回の資料の中 で、平成17年のアンケートにおける年齢別の年収というものをお出ししましたが、これ について平成14年のデータをお示ししています。平成14年のデータを見ると、派遣労働 者の賃金は40歳代前半までは年齢が上がるとともに緩やかに上昇しているものの、全労 働者と比較するとその上昇度合は低い。いちばん上の大きなカーブが一般の労働者で真 ん中が派遣労働者ですが、若干の賃金の上昇は見られるものの、全労働者に比べるとそ の上昇度合は緩やかです。  これについては、次の4頁に前回ご提出した平成17年の年齢別の年収があります。傾 向としてはこれとほぼ同様の傾向だろうと思っています。実額については、平成17年が 派遣労働者平均で292万円だったのに対し、平成14年は286万円ということで、若干の変 動はありますが、賃金が年齢に応じてどう推移するかについての傾向という意味では、 大きな変化は見られないのではないかと思っています。  資料の5頁、(3)「派遣労働者年収の推移」で、登録型と常用型に分けています。 このグラフのいちばん上で推移しているのが常用型、いちばん下に推移しているのが登 録型の平均年収、真ん中が登録型と常用型の平均という形になっています。これを見る と総体としては派遣労働者の年収は上昇している傾向にあります。  具体的に見ると、平成9年、平成13年、平成14年、平成17年をとっていますが、派遣 労働者全体を見ると平成9年には239万円だったものが、平成13年が236万円、平成14年 が288万円、平成17年が292万円と上昇傾向を示しています。いちばん上ですが、常用型 を見ると平成9年が323万円、平成13年は若干落ちておりまして273万円ですが、その後 は平成14年に343万円、平成17年に405万円となっています。いちばん下、登録型の平均 年収については、平成9年に198万円、平成13年に220万円、平成14年に246万円、平成 17年度に242万円となっています。若干のブレはありますが、傾向としては上昇傾向を示 しているのではないかと考えています。  グラフの作り方で若干の補足です。下の注に資料出所があります。これは各年、平成 9年、13年、14年、17年に行った労働力需給制度のアンケートに基づき、平均年収を記 載しています。その際、消費者物価指数による調整を行っています。平成17年の消費者 物価指数を100として、それにより調整を行っています。この間、平成9年からの消費者 物価についてはデフレの中で若干下がっていますので、平成17年を100とすると平成9年 が102.7という形になっています。こういった形で調整をした上でこちらのグラフを記載 しています。  次の頁、先ほどは登録型と常用型という形で平均年収を見ましたが、今度は主な業務 別という形で平均年収をとっています。こちらも需給制度のアンケートの中から、代表 的な業務について記載しています。グラフにしたものがソフトウェア開発、事務用機器 操作、一般事務という形で平均年収を記載しています。  まずいちばん上、ソフトウェア開発になりますが、平成9年は平均年収405万円、平成 13年が434万円、平成14年が420万円、平成17年が455万円という形で若干上昇傾向を示し ています。真ん中、一般事務については、9年はありませんが、平成13年が209万円、平 成14年が231万円、平成17年が228万円となっています。いちばん下の事務用機器操作は、 平成9年が194万円、平成13年が202万円、平成14年が231万円、平成17年が244万円とい う形で、主な業務別から見ても上昇傾向を示しているということでございます。  続いて、7頁をお開きください。「契約料金の推移」になります。[1]では「一般労働 者派遣事業」を示しています。これは毎年度、事業主から報告されている「労働者派遣 事業報告書の集計結果」から示しているもので、先ほどと同じく、消費者物価指数によ る調整後の数値をグラフにしています。こちらを見ると、グラフのいちばん上がソフト ウェア開発になっています。真ん中、平成11年度からグラフがありますが、これが全体 のグラフです。いちばん下が事務用機器操作となっています。全体が平成11年度からと なっているのは、平成11年のネガティブリスト化に伴い、専門的等の26業務以外も含め た派遣料金を事業報告に求めるようになりましたので、こちらについては平成11年度以 降のデータがあるということです。  これを見ると、いちばん上のソフトウェア開発ですが、平成3年から若干増減はあり ますが、傾向としては平成3、4年に比べると緩やかに低下をしている。真ん中の全体 で見ると、平成11年度が1万6,273円であったものが平成17年度、いちばん右ですが1万 5,257円となっています。いちばん下の事務用機器操作ですが、平成3年度が1万5,487 円であったものが、平成17年度は1万4,079円となっています。  8頁をご覧ください。「契約料金の推移[2]」です。こちらは特定労働者派遣事業とし て集計をしています。一般と同じように、特定労働者派遣事業においても全体とソフト ウェア開発、事務用機器操作について記載をしています。グラフのいちばん上で推移を しているのがソフトウェア開発になっています。こちらについては、平成3年度に2万 6,193円だったものが、いちばん右の平成17年度は2万9,955円ということで、年度によ って違いはありますが上昇傾向を続けています。先ほどの一般労働者派遣事業における ソフトウェア開発が若干緩やかに低下しているのに比べ、特定労働者派遣事業のソフト ウェア開発では上昇をしていることが特徴と考えています。  真ん中、平成11年度から出ていますが、これは全体になります。全体の派遣料金につ いては、平成11年度が2万4,812円であったものが、17年度は2万3,028円となっていま す。年度ごとに増減はあります。  いちばん下、事務用機器操作の派遣料金については、全体として横ばいになっていま すが、平成3年度は1万7,494円だったものが平成17年度は1万7,701円で、こちらのほ うはほぼ横ばいという状況になっています。以上が「派遣という働き方」の追加資料で す。  ここで前回提出した資料について訂正がありますので報告をしたいと思います。いま 配付はしていないのですが、前回、「派遣契約期間等」ということでグラフ自体は合っ ていたのですが、委員の皆様の中には前回の資料もファイルに綴じさせていただいてい ますが、その中の、前回提出資料の26頁をお開きください。(7)の「派遣契約期間等」 ですが、差換え後の資料を配付させていただいています。この枠囲みの中で、「現在は 雇用契約期間は期間の定めのない、通算派遣勤続期間は1年以上2年未満が最も多い」 と記載しています。前回ご説明の際には、「雇用契約期間は3カ月以上6カ月未満が1 番、通算派遣勤続期間は3年以上5年未満が最も多い」と記載してしまいました。そち らは誤りで、現在の雇用期間は「期間の定めのない」、通算派遣勤続期間は「1年以上 2年未満」が正しい記載であります。グラフのほうは前回も合っていますので、正しい ものです。訂正は以上です。  それから、前回の部会の中で、委員より「資料の中を見ていて」というご発言があり ました。当方が提出した資料の中で、審議会の建議等を引用した部分ですが、平成15年 改正前までは「常用代替を防ぐ」という文言が盛り込まれているが、平成15年の改正時 には「常用雇用との調和」という文言に変化している。これはなぜだろうというご発言 があったかと思います。これについてご説明したいと思います。常用雇用との調和とい う考え方については、法律制定時以来、実は法の第25条という中で「運用上の配慮」と いう規定があります。「派遣制度を運用するに当たっては、我が国の雇用慣行との調和 のもとに行われるように配慮しなければならない」といった趣旨の条文があります。こ れは法律制定以来変わっていない。この調和を図るということは具体的にどういうこと かというと、「常用代替を防ぐ」という考え方が含まれていますので、15年改正以前、 15年改正時、15年改正以降についても基本的な考え方は変わっていないと考えています。 建議自体の中に文言が盛り込まれているかどうかは別として、常用雇用との調和を図り、 その中で、常用代替を防ぐ考え方があるというのは一貫したものであると考えています。 前回の資料の関係の補足は以上です。  続いて9頁以降、「海外の労働者派遣制度」についてご説明したいと思います。こち らは海外の派遣制度をご説明するとともに、派遣制度のみならず、派遣労働者であって も有期労働契約や解雇法制等の適用になりますので、そういったところも見ないと比較 がしづらいということで、参考として、海外の有期労働契約法制や解雇法制についても お付けしています。  10頁をお開きください。「海外の労働者派遣制度」ということで、米、英、独、仏、 日本という形で比較させていただいています。まず、いちばん左のアメリカですが、ア メリカ、イギリスともに基本的には厳しい規制がないことになっています。特にアメリ カの場合については、根拠法で、州レベルでいろいろな規制をしている場合があるよう ですが、連邦レベルの法律は「なし」となっています。縦に行って、許可・届出制も連 邦レベルの規制はありません。適用除外業務、派遣期間の制限、派遣元と派遣先の連帯 責任、みなし雇用制度、これも連邦の規制はなしとなっています。次頁で、これも根拠 法がないこととの絡みですが、均衡処遇も連邦の規制はなし、利用目的制限も連邦の規 制はなしとなっています。派遣労働者数は291万人、全労働者に占める派遣労働者の割 合は2.2%となっています。  戻ってイギリスでございます。イギリスの根拠法は職業紹介法ということで、1973年 の法律に基づいて根拠法となっています。実質上は「規制緩和・契約除外法」という19 94年の法律により、大半は廃止をされている状況です。許可・届出制については原則不 要、以下、適用除外業務はなし、派遣期間の制限もなし、派遣元と派遣先の連帯責任も なし、みなし雇用制度もなし、次頁の均衡処遇、利用目的制限もなしとなっています。 派遣労働者数については120万人、全労働者に占める割合は5%となっています。  10頁、ドイツをご説明いたします。ドイツの根拠法は労働者派遣法です。許可・届出 制について、原則として許可制になっています。適用除外業務としては建設業務が挙げ られています。ただし、建設業者間で建設産業に係る、統一労働協約の適用を受ける労 働者の派遣を行う場合は可能となっています。派遣期間の制限はなしとなっています。  派遣元と派遣先の連帯責任ですが、「派遣先は派遣元の社会保険料の未払いにおいて 連帯責任を負わなければならない」とされています。それから、みなし雇用制度があり となっています。具体的には、派遣先が無許可の派遣元から派遣労働者を受け入れた場 合に、そのような制度の適用になると聞いています。  続いて均衡処遇ですが、派遣先労働者との賃金、労働条件の均等についての規定があ る。利用目的制限についてはなしとなっています。ただし、カッコ書きで記載していま すが、派遣先の労使協議会は派遣労働者の利用に関する事前の共同決定権を有している と聞いています。派遣労働者数は34万人、全労働者に占める派遣労働者の割合は1%と なっています。  10頁に戻って、フランスをご説明いたします。フランスについては、根拠法は労働者 派遣に係る1990年7月12日法、許可・届出制については事前届出制となっています。 適用除外業務はなし、派遣期間の制限は原則最長18カ月となっています。派遣元と派遣 先の連帯責任については、「派遣先は派遣元の社会保険料の未払いについて連帯責任を 負わなければならない」とされています。みなし雇用制度はありとなっています。カッ コ書きになっていますが、派遣業務終了後に、派遣先が当該派遣労働者と雇用契約を締 結することなく、又は新たに労働者派遣契約を締結することなく、引き続き派遣労働者 を就業させた場合に制度の適用があることになっています。  次頁は均衡処遇ですが、派遣先労働者との賃金、労働条件の均等について規定されて います。それから、利用目的制限があり、一時的休業者の代替、業務の一時的な増加に 対応するため等の場合に限り利用可能となっています。それから、2005年より社会的弱 者の就職促進を目的とすること等が追加されています。派遣労働者数は59万人、全労働 者に占める派遣労働者の割合は2.1%となっています。  日本については従前もご説明していますが、この表でもご説明させていただきます。 まず、根拠法は労働者派遣法。許可・届出制については許可・事前届出制となっていま す。適用除外業務は港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院等における医療の業務( 紹介予定派遣の場合等を除く)となっています。派遣期間の制限には2種類ありますが、 26業務等については制限なし、26業務等以外の業務については原則1年、最長3年とな っています。派遣元と派遣先の連帯責任はなしとなっていますが、派遣元が派遣先への 労働・社会保険の加入の有無の通知をするという規定はあるということになっています。 みなし雇用制度はなしですが、カッコ書きで、雇用申込み義務があるとなっています。 均衡処遇についてはなしですが、「福利厚生等に係る派遣先の労働者との均衡配慮」と いう規定があります。利用目的制限についてはなしとなっています。派遣労働者数は労 働力調査ベースの数字ですが102万人、全労働者に占める派遣労働者の割合は1.66%と なっています。  以上、5カ国を比較しましたが、基本的に米・英が似かよった形であまり大きな規制 はない。独・仏というのは細かい違いはありますが、基本的にはいろいろな規定が設け られているという状況になっています。11頁の派遣労働者数と全労働者に占める派遣労 働者の割合をご覧いただきたいと思います。イギリスが5%となっていますが、アメリ カは2.2%、フランスも2.1%、日本も1.66%ということで、概ね1〜2%となってい ます。  12頁、参考で「海外の有期労働契約法制、解雇法制」と整理させていただいています。 まずアメリカですが、アメリカは有期労働契約に係る規制はなし、解雇に係る規制です が、随意雇用原則により、原則として随意に労働者を解雇することが可能という仕組み になっています。  イギリスについては、有期労働契約に係る規制はなし、解雇に係る規制は「解雇は公 正でなければならない」とされています。解雇の理由について、被用者が剰員である場 合は解雇は許容される。1年未満の勤続しか有しない被用者等は適用除外となっていま す。  ドイツの有期労働契約に係る規制は[1]、[2]とあります。まず[1]、短時間労働及び有期 労働契約に関する法律上、一時的な経営上の必要性があること等、客観的な理由がある 場合には有期雇用が認められる。[2]客観的理由がない場合には、使用者とそれ以前に労 働契約を締結していない場合に限り、更新(3回まで)を含め、2年を限度に有期雇用 が認められるとなっています。  解雇に係る規制について、ア、法律又は良俗違反の解雇は無効。イ、解雇は社会的に 正当性がある場合にのみ許容される。社会的に正当性がある解雇事由として、以下の緊 急の経営上の必要性が必要。 ・労働者をもはや契約に従って活用できないという帰結をもたらす企業家の決定。 ・活用可能性が永続的又は予測し得ない期間失われること。 ・時間外労働及び社外労働の廃止、他の空席の労働ポストへの配転等を行っていること。 ・被解雇者の選定に当たって社会的選択が行われていること。  ウとして、[1]労働者数10人以下の事業場。[2]勤続6カ月未満の労働者は適用除外とな っています。  続いてフランスです。フランスの有期労働契約に係る規制ですが、[1]労働法典上、期 間の定めのない労働契約が原則。有期労働契約は労働者が休業した場合の代替等一定の 場合にのみ、締結が認められる。[2]有期労働契約は、更新(1回まで)を含め18カ月を 限度に認められる。  続いて、解雇に係る規制です。解雇理由に以下の「真実かつ重大な理由」がない場合 は違法となる。 ・解雇が雇用の廃止・転換又は労働契約の変更に対する労働者の拒否を原因とすること。 ・雇用の廃止・転換又は労働契約の変更が特に経済的困難又は新技術の導入及び企業競 争力の保護を目的とする再編成の結果として行われたこと。 ・解雇を回避するために使用者が適応義務及び再配置義務を履行したこととなっていま す。  日本における有期労働契約に係る規制です。有期労働契約は3年を超えてはならない (専門的知識等を有する労働者は5年)、ただし更新は可能となっています。それから、 解雇に係る規制です。整理解雇については、判例法上、次の基準を満たさなければ、「 解雇権の濫用」として違法・無効とされる。 ・人員削減の必要があったこと。 ・解雇回避努力義務を尽くしたこと。 ・被解雇者選定基準に合理性があったこと。 ・労働者又は労働組合との協議を尽くしたこととなっています。  有期労働契約法制、解雇法制についても、米・英については総観すると緩く、独・仏 については厳しいとなっています。  いちばん下、「OECDにおける雇用保護規制の非厳格度合」となっており、順位が 書いてあります。これは順位が1位ということで、高いほど雇用保護規制が非厳格、解 雇しやすい、保護されていないということです。アメリカは1位、イギリスは2位、ド イツは23位、フランスは20位、日本は19位となっています。これはOECDが作成した ものであります。  11頁に戻って、全労働者に占める派遣労働者の割合を見ていただくとわかると思いま すが、先ほどのOECDにおける雇用保護規制の非厳格度合に大きな違いがあるにもか かわらず、実際の全労働者に占める派遣労働者の割合というのは、イギリスは若干多い ですが、各国ともほぼ同様になっているというのが特徴的かと考えています。資料の説 明は以上です。 ○清家部会長   ありがとうございました。議論は後ほどしていただこうと思っています。まず、とり あえず、ただいま事務局から説明がありました資料についてのご質問があれば最初にお 願いします。いかがでしょうか。 ○古市委員   海外の派遣制度の紹介をしていただいて、大変興味深く聞きました。ただ、「未定稿」 と書いてありますので、できれば隣の韓国の様子も教えていただければうれしいと思い ます。韓国も多分OECD加盟国だと思いますので、もしそういう事が出来ればお願い したいと思います。もし出来なければ、先ほど部会長が次回と次々回で専門家のヒアリ ングをしますというお話がありましたので、韓国の事情がわかっておられる専門家のお 話が聞けたらありがたいと思います。 ○清家部会長   いまの件、事務局はいかがでしょうか。 ○篠崎補佐   韓国の状況は確かに調べていません。いろいろ、ニュース等でわかる範囲内かもしれ ませんが、情報を集めてみたいと思っています。ヒアリングのほうは、いま学識の方の 依頼をしているところですが、ここにあります米、英、独、仏、特にその専門家という 形でお願いしています。韓国についてはなかなか、その先生方にというのは難しいと思 いますので、事務局で努力したいと思います。 ○清家部会長   よろしくお願いします。古市委員、よろしいですか。 ○輪島委員   韓国のことがお知りになりたいということですが、あまりよくわからないのでご趣旨 だけ教えていただけますか。 ○古市委員   ちょっと漏れ聞いたことなのですが、日本の法律はどちらかというと建設業法に似た ような、派遣業を行う業法みたいな法律だと思います。韓国はどうも、業法というより も、派遣で働く労働者を保護する観点が法律の名称に入っていて、なおかつ法律の中に もあることを聞いたことがあるのです。もし、そういうことがあれば詳しく知りたいと 思いました。 ○清家部会長   輪島委員、古市委員よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。 ○成宮委員   年収のところの数字ですけれども、常用型はいいのですが、登録型の場合には必ずし も年間を通して就業しているとは限らないと思います。ここで比較している数字のベー スというのは、年間を通して就業している場合の数字ですか、それとも単純に平均的に 見ているのですか。 ○篠崎補佐   これは単純に平均的なものです。ただ、アンケートで見ると登録型であっても週5日 とか、フルタイムということではないですが、平均的なものとしてかなり長い時間働い ている傾向があります。 ○清家部会長   そうすると、年収のデータの読み方というのは時間当たり賃金と労働時間の影響、両 方入っているという理解でよろしいということですか。 ○篠崎補佐   はい、そうです。 ○清家部会長   成宮委員、よろしいですか。 ○成宮委員   そうすると、やはり、若干登録型と常用型の乖離の幅は少し目減りさせて考えないと いけないかもしれませんね。 ○清家部会長   時間賃金で見た場合はということですね。事務局、それについて、何か補足的なデー タ等はありますか。 ○篠崎補佐   いま、直ちにはデータをそろえていませんが、年収でとったものともちろん時給制の 人に聞いたものとがあります。時給のもの、日給のものがありますので、そういう点も 確認してみたいと思います。 ○清家部会長   出来れば、それはまたデータがあればということでよろしいでしょうか。ほかにいか がですか。とりあえず、ただいまの資料についてのご質問等はよろしいですか。 ○輪島委員   海外のほうで「みなし雇用制度」という表現があります。この「みなし雇用」の意味 合いはあまりなじみがない、みなし雇用とは何だろうと思います。その意味合いを教え ていただけますか。 ○篠崎補佐   海外のことですので、正確に把握しているというわけではありません。例えばドイツ の場合については、無許可業者から受け入れて実際に使用しているということですので、 派遣先に当たるところがほぼ使用関係、直接もともと雇っているような関係にあること からして、使用者とみなしているということではないかと推測しています。実際にどう いう運用等がなされているかについてまでは把握できていません。 ○輪島委員   雇用者と言うのであればみなしではなく、雇用者ですよね。だから、みなしというの は派遣先が雇用主と実態上変わらない。 ○成宮委員   多分、この言葉というのは各国の制度の解説をする問題ではなくて、派遣という形を 取っているけれども、ある一定の要件があるものについては、派遣ではなくて、派遣先 が直接雇用しているというようにみなすべき、そういう状態を規定しているか、してい ないかです。 ○鎌田委員   ここで言う、項目で言う「みなし雇用」というのはどういう趣旨で書かれているかと いうのは、各国の法制がさまざまなので、正確には言えないと思います。  ドイツに関したものを想定して「みなし雇用」と言う場合には、ドイツは無許可での 派遣については、派遣元と派遣労働者との間の労働契約関係は無効となります。これは 法的に、有無を言わさず無効になります。そうすると、派遣労働者の法的地位が損われ ることになりますので、それを救済する趣旨で派遣先に有無を言わさず労働契約関係が 創設されるということになって、それをいわゆる「みなし」と言っています。ただ、実 態としてそれがどの程度機能しているか、どういう役割を果たしているかというのはい ろいろ議論もあろうかと思います。みなしというのは、まさに派遣先が法定によって雇 用関係を創設されるという意味で「みなし」と言っています。 ○長谷川委員   雇用契約があるのと同じということ。 ○成宮委員   そのようにみなされる場合ということですか。 ○鎌田委員   もちろん当事者の合意はないのですが、法律上創設される、擬制されるということで すね。 ○長谷川委員   それは要するに、派遣元が無許可だった場合は雇用契約関係は無効として、派遣先の 雇用とみなすという「みなし規定」が法律に入っているということですか。 ○鎌田委員   入っています。 ○清家部会長   よろしいですか。 ○北村委員   アメリカとイギリスに関しては非常に自由であるという印象があります。そうすると、 業者の規定もなし、届出制もなしということになると、この2.2%や5%という数字は どこから出てくるものなのでしょうか。 ○篠崎補佐   これは「国際人材派遣協会」というところがあって、そこの調査によるものです。具 体的に、どういうように把握したかというところまではわかりません。多分、民間の業 界団体等を通じてではないかと思います。いずれにしても、国際人材派遣協会の調べに よるということで記載しています。 ○清家部会長   課長も何か発言されますか。 ○坂口課長   いわゆる、事業規制的な法律のもとに置かれてはいないけれども、派遣という人材ビ ジネスをやっている事業者がいて、いま補佐が申し上げた、CIETTという国際的な派遣 業者の団体機関に入っているので、そういった所の調査でということであります。 ○北村委員   そうすると、これは協会が把握している数であって、実態については実はわからない という言い方もできるということですか。把握しにくいものであるということになりま すか。 ○篠崎補佐   詳細まで実は把握していないのですが、協会に加盟している団体の労働者数だけだと は限らないので、違った方法で把握しているかもしれません。そこはすみません、どこ まで捕捉しているかというところまでは承知していません。 ○長谷川委員   鎌田先生に教えてほしいのですが、例えば、厚生労働省が海外の労働者派遣制度を調 べて、アメリカで根拠法が記載されていないのですが、派遣労働者か、そうでないかと いう仕分けのときのアメリカの場合の根拠というのは何の法律があるのですか。アメリ カのことは全然わからないのですが、例えばアメリカの派遣というのは、どちらかとい うと日本のお試し雇用に似ていて、ある一定の何カ月間か派遣でいくと、あとはそのま ま直雇用になる、紹介派遣によく似ているというように聞きます。制度を勉強したわけ ではないのですが、そのような聞き方をします。アメリカの場合、何の法律の根拠もな いとなると、何をもって派遣労働者と通常の労働者を仕分けするのですか。 ○篠崎補佐   法律上の定義がないのではないかというご指摘だと思います。それをどうやって把握 するのかという把握方法も、実は承知しておりません。また、わかる範囲で調べられれ ば調べますし、ヒアリングの機会でアメリカに関して調べている学識の方にも来ていた だきますので、その中でもまたご質問等をしていただければと思います。 ○長谷川委員   もう、いまはいらっしゃいませんが、私どもが加盟の電機連合で研究所があったとき、 そこの小林さんが、アメリカの派遣調査をされていました。アメリカの派遣の労使関係 で「四角関係」とかいう労使関係論を、何回かいろいろなところに書いていて私も読ん だことがあります。アメリカも派遣という働き方が何かあるのだと思います。どこのテ ーマなのかわからないのですが、派遣の労働者の労使関係をどう捉えるかというときに、 これは結構重要な点だと思うので1回調査してください。おそらく経団連の松井さんも 言ったか、書いたか、聞いたかしたような気がします。 ○輪島委員   聞いてみます。 ○鎌田委員   専門家が今度おいでになるということですが、私の記憶では、アメリカの労働省が「 特別労働力調査」をやっています。そこで派遣について、要するにエージェンシー・ワ ークと言うのかな。「派遣事業所から送られて働いている方」というような統計上の定 義を作って、調査もされています。いちばん新しいものがいつごろのものかはよくわか りません。法律上の定義はなくても、アメリカの労働省で定義をしてやっています。  CIETTのほうも、おそらく何らかの形で定義をしてやっていると思います。この2.2と いうのがCIETTのデータだと思いますので、もし近々のアメリカの労働省のものがあれ ば、特別調査なので何年かに1遍しかやっていないのですが、それも合わせて紹介すれ ばいいかなと思います。私の記憶では、CIETTよりも低い数字が出ていたような気がし ました。ちょっとそれはわかりません。 ○清家部会長   おそらく、先ほどのご説明ぶりから言っても、この比率と、例えば解雇の難しさ、労 働契約法制の厳格さと関係があるかないかというようなことをおっしゃりたいのだろう と思います。そういう意味で、比率の数字というのは大切な数字だと思います。次回の ヒアリングも含めて、その定義等を精査したほうがいいかと思います。いまの段階では、 そういうことでよろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。 ○輪島委員   次回からの海外の法典ですが、どういう専門家なのかがいまいちよくわかりませんの で、どれだけ聞けるのかがよくわからないという点で質問します。ヒアリングに呼んで ほしいという意味合いではありませんが、例えばマンパワーというのはワールドワイド に展開しているわけです。その会社はその国の派遣制度に合わせて商売をしているので、 そこでやりにくい国とやりやすい国があるのではないか。例えばアデコとか、今度ラン ドスタッドが入ってきます。これはヨーロッパでやっていますよね。そういうところで、 どのように思っていらっしゃるのか、日本はやりにくいという話なのかどうかも含めて、 ちょっと調べていただきたい。それぞれの日本法人のところで、例えば弁護士などのと ころで各国の派遣法を横で見ているのかどうかがあれば検証してみてほしいなと思いま す。 ○長谷川委員   そういう派遣会社や企業法務の専門弁護士だとわかると思いますが、労働弁護のとこ ろではどうでしょうか。 ○清家部会長   その辺は、ヒアリングの対象等については、また事務局で少しご検討いただくという ことでよろしいでしょうか。いまご質問に出たようなことがわかるような形で、ヒアリ ングだけでわかるかどうかはわかりませんが、事務局でもいろいろお調べいただくとい うことでよろしいでしょうか。それでは、そのようにさせていただきます。ほかに、資 料についてのご質問はよろしいでしょうか。  それでは、議論に移りたいと思います。本日も前回に引続き、派遣という働き方など についてご議論いただきたいと思います。本日の議論の進め方としては、1つは労働者 派遣のような、「いわゆる間接雇用」という形態について議論していただくのがいいの ではないかと思っています。そのあとで、派遣という働き方について、1つは常用型・ 登録型という切り口、それから専門的な26業務とそれ以外という切り口があるというこ とが前回までの議論で出てきていますので、この切り口を念頭に置きつつ、ご議論いた だければと思います。  まず最初に、いわゆる間接雇用についてどのように考えるか、そのニーズであるとか、 そういった働き方の労働者の保護の観点からどうなのかといった点について、ご意見が あれば伺いたいと思います。 ○輪島委員   鎌田委員にお伺いします。まず、直接雇用と間接雇用という概念が整理されているの かどうか。昔、馬渡先生の本を読んだときは、結局サービス経済化が進展すると、直接 雇用というものからニーズとしての間接雇用というものが出てくる。そういう意味合い では、必然的な雇用形態であるという記憶があります。そういうもので間接雇用が派生 してくるものなのかどうか。法的に言うと、いまは三角雇用関係を持っているのは派遣 法以外にはないという整理でいいのかどうか。そのことをまず教えていただきたいと思 います。 ○鎌田委員   少し難しい質問です。まず、間接雇用というのは何かということなのですが、法律に 「間接雇用」という文言はないので、広く確立された定義というのはないと思います。 一般に、間接雇用でどういった特徴を捉えて言っているのかというと、いわゆる雇用と 使用が分離しているというか、指揮命令はするけれども、雇用主ではないという特徴を 捉えて間接雇用と言っているわけです。  ただ、間接雇用と言った場合に、直接雇用との対比で、ユーザーが直接に指揮命令を して使用しているものについて用いている。あるいはそうではなくて、他の企業の従業 員を間接的にという、いろいろなニュアンスはあると思います。基本はやはり、使用と いうことと雇用ということとが分離しているということではないかと思います。  具体的に、法律上、間接雇用といういまのような特徴のある雇用関係というか、労働 慣行に対して、どのような法的規制、あるいは法律が対象にしているかというと、1つ はいま輪島委員がおっしゃったように労働者派遣法です。あと、職業安定法の第44条に 「労働者供給事業」というものがありますが、これがやはり間接雇用の対象になると思 います。  それから、これは商法に規定があるのですが、「労務下請作業請負」という概念があ ります。これは全く商法的な観点で、商行為の類型ですので、労働とは直接関係はしま せんが、解釈においては、商法上の労務下請などは、労働者供給事業、あるいは労働者 派遣事業に当たると考えれば、それも1つの対象ということになるかと思います。  いちばん問題になってくるのは、請負と派遣、あるいは労働者供給事業の区分という 問題です。これは何度も議論されていますように、区分基準をどうするかということで 処理はされています。法的な仕分けでいくと、いわゆる典型型な請負、法律上許されて いる請負については、間接雇用ではなくて直接雇用というように捉えられています。し かし、実態において、それをどういうように捉えるかというのはいろいろな問題がある と思います。それでお答えになっているでしょうか。もし、足りないところがあったら またお答えいたします。 ○輪島委員   法律には間接雇用というものがないけれども、ニュアンスとしての間接雇用というの は、派遣法を見れば、派遣元と派遣スタッフは直接雇用ですよね。雇用と使用が分離し ている派遣形態であるけれども、間接雇用と言ったとき、派先が労働力を使用している のだが、主体が派先のほうにあって、間接的に使用者性を担保しない働き方というよう に聞こえます。請負のほうも請負会社と請負労働者は直接雇用だけれども、注文主のと ころに入ってくると、そこが三角ではないけれどもというように、間接雇用という言葉 が少し大きな概念で議論されているように聞こえます。その点はどうなのでしょうか。 ○鎌田委員   法律上、使用と雇用が分離することで認められているのは、労働者供給事業は労働組 合によるものだけは認められていますので、一応合法のものもあるのです。だから、合 法な労働者供給事業と労働者派遣だけなのです。いまのご質問の趣旨は、しかし間接雇 用と言った場合は法律上の定義はありませんので、いま言ったような類型以外について も広く、ユーザーが利用していながらも法律上の使用者の責任を負わないというニュア ンスで使われているのではないかということですか。これは使い方の問題なので、ここ で言う間接雇用ということで議論した場合、そういった広がりまで持って議論している のかどうかというのは皆さんの認識の問題です。ただ、法的に言えば、いま言ったよう な2つの類型を考えるのかなと思います。 ○坂口課長   いま、鎌田委員もおっしゃったように、事務局側も法律的な定義のない間接雇用とい う言葉をたまに使ったりして、皆様に混乱を招いているかもしれません。その責任を含 めて発言します。  いま、鎌田委員もおっしゃったとおり、間接雇用という定義はそもそも法律的にはあ りません。我々として、こういったところで議論していただくのにということでいくと、 直接雇用との対比で「間接雇用」と使おうとしているので、その意味では鎌田委員がお っしゃった雇用と使用が分かれている、言わば派遣のような形態かと思います。本来的 な請負については、人に着目していない、仕事に着目して、仕事をアウトソースすると いう形なので、その形態そのものが間接雇用とはやはり言えないのだろうと思います。  ただ、私どもも指導監督をしており、世間でもいろいろ問題になっている偽装請負と いう形態は、事実上「請負」という言葉が入っていますけれども、それが事実上の派遣 と同じような形なので、そこに使用概念が実態として入っているので、それを引っくる めて、間接雇用のような問題があるではないかというときに、「間接雇用」という言葉 が使われているきらいもあります。そのときには、輪島委員がおっしゃったように、ち ょっと広めの話になっているということはあるかと思います。純粋に、いま部会長の切 り口でお話になったような形からいくと、雇用と使用が1対1の関係にある直接雇用の 形態と、派遣のような雇用と使用が分離している形態をどう考えるかという点について は、またご議論いただければと思います。 ○輪島委員   長谷川委員が、労働条件分科会でいろいろ議論されたと思うのですが、正規と非正規 で、派遣は非正規で、パート、アルバイト、派遣と並べます。でも、派遣スタッフは派 遣元の正規労働者、そこが直接雇用と間接雇用と、正規と非正規。非正規も企業側にと って、派遣先という立場に立つと派遣スタッフは非正規です。しかし、派遣スタッフ側 から見れば、派遣元との直接雇用だし、正規雇用で、雇用契約があっての働き方なので、 そこでどうしていつも非正規と言われ、そういう分類になるのかというところの整理が、 あまりよくわからないのです。 ○長谷川委員   それは便宜的に使っているのだと思います。いまの「直接雇用」「間接雇用」という 言い方も、法律の中では出てきません。労働基準法上、使用者と労働者とか、そういう ことも出てきません。だから、いま鎌田委員が言ったように、直接雇用と間接雇用とい うのも出てこなくて、分類するときにそのように使っているのだと思うのです。  だから、正規と非正規もそうなのです。うちで正規が2割ぐらいで、期間の定めのな い雇用、一時金も退職金も出る人たちが2割で、あとの8割が派遣だったり、パートタ イマーという業界があるのです。そこは「正規と非正規と言わないでくれ」と言います。 あと典型とか非典型と言うなというのですが、私はそういうことをむしろ言わないでく れと言っているのです。  労働者を見るときに、例えば期間で見ていくというのがあります。期間の定めのない 雇用と、期間の定めのある雇用で見るとか、労働時間で見れば、週40時間の人と、それ より短い人、1日8時間で見るか、6時間で見るかという見方があります。それはいろ いろな切分けがあるのですが、それをもう少し大まかにすると、正規と非正規がありま す。  厳密に言うと、調査などですと、典型とか非典型で調査しているものが多いです。非 典型のところにくるのが、契約、パートタイマー、派遣、請負ときています。そこは厳 密にするのか、どうなのか、いろいろなことをやるときの区分の1つとして使うのか、 それ以上でもそれ以下でもないと思います。  少し前に戻すと、今回の間接雇用、直接雇用という問題もあるのですが、第44条をど う見るかです。派遣労働者の問題と請負労働者の問題を、労働者に着目してものを考え るときに、第44条をどのように見るのかが、今回派遣労働者の問題を考えるときに、重 要なポイントになるのかと思っています。  いま言ったように請負ですが、かつての鉄や造船などの請負というのは、民法できち んとわかる典型的な請負であったわけです。自分たちで道具も持って、必ず業務をきち んと納入するというものでした。ところが最近わかったのですが、単なる労務供給のよ うなものが、業界の名前を言うと悪いのですが、最近騒がれている○○業界、○○業界、 ○○業界、それと同じように、労務供給だけをやっているのが、そういうところにも登 場してきているのです。  完成品を納入するのではなくて、労働者だけを供給するという請負が登場してきてい て、何なのだろうかという議論があります。そういう意味で、第44条をどう見ていくか があるのです。第44条と派遣法の関係とか、偽装請負と言っていますが、そのような請 負と第44条の関係をどう見るのかというのは、きちんと議論する必要があるのかと思っ ています。  私たちが俗人的に使っている話と、法律の話は違うと思います。法律でギチギチに言 っていけば、使用従属関係があるのかという話だと思います。派遣労働者というのは、 もともとは派遣会社の職員ですから、使用者と労働者の関係は派遣元にあるわけです。 だから、自分のところの労働者を派遣先に出してやるわけです。そのときに、必ずしも いまの派遣労働者の働き方が、派遣法でいうところで想定したようになっているかどう かというのはあると思います。  だから、派遣労働者の均等待遇というときに、派遣会社の職員との均等待遇なのか、 それとも派遣先で同じ仕事をしている労働者との均等待遇なのかという、議論になって、 次のところにいくのではないかと思います。それは鎌田委員たち、労働法学者の人たち の知恵を借りなければわかりません。 ○清家部会長   どうでしょうか、1度事務局に簡単なポンチ絵でもいいのですが、マトリックスか集 合の図のような、直接、間接という軸と、正規、非正規というような軸で、どのように 区分けされて、いま我々が議論しようとしているのはここなのだとか、両方が重なるの はここだとか、もう少し広げてここなのだとか、そういうイメージがわかるようなマト リックス図か集合図を次回ぐらいまでに作っていただいたらいいと思うのです。皆さん、 いろいろなアイディアをお持ちだと思うのですが、ここで議論している間接というのは どういう範囲なのかとか、そういうことは揃えておいたほうが、議論を建設的に進める ためにはいいと思いますので、それはやっておいたほうがいいと思いますので、お願い できますか。 ○長谷川委員   先生、そのときに商法上のことも出しておいていただけるといいと思うのです。あと 民法の請負と。 ○清家部会長   例えば間接ということについて話を伺っていると、狭く取ると、間違いなく間接とい う話をしていいような部分というのは、派遣の中の派先と労働者の関係です。しかし、 それ以外の請負のところは、建前上は使用者ではないわけですから、本当はそこを間接 と言ってはいけないのだけれども、問題認識としては間接と言うことが多いというよう な話であれば、議論を幅広く、前広にするためには、そこまでも間接に含めて議論して もいいかもしれませんね。その辺の合意を我々の間でつくっておいたらどうかと思いま す。輪島委員のご意見は、できるだけそれは広げないほうがいいということですか。 ○輪島委員   おそらくこれから議論するので、部会長がおっしゃったように、どこの話をしている のかというのをお互いにわかるような形にしておかないと、全然違う話で、噛み合わな い話をしていてもしょうがないという趣旨です。 ○清家部会長   では、そういうことでよろしくお願いします。他にいかがでしょうか。 ○輪島委員   いまの安定法第44条のところはどう整理するのかという点で、議論になるというのは よくわかりました。もう1つ事務局にお願いなのが、鎌田委員に解説をしていただきた いと思うのは、PEOという共同雇用責任方式で、それはいまの安定法があって労働者 供給事業が原則禁止になっていて、それの特別法が派遣法で、派遣のところは雇用と使 用が分離した形で、ここでいいですと、職業安定法と派遣法が別にあります。そのこと とは別に、PEOというのはアメリカだけなのでしょうか。派遣先と派遣元の両方が使 用者であって、共同責任を持っていると。 ○坂口課長   アメリカだけかどうかは私もわからないのですが、先ほども海外のところで話題に出 ていたように、アメリカでそのような形態が見られるので、実際上の使用者責任が移っ て、一定の派遣を紹介型派遣のような形態との類似の形で、共同責任というような形態 が多いのはアメリカだと思います。  日本の場合は、先ほど鎌田委員のほうからもあったように、一定の労供という形は労 働組合以外については認められていないので、両者の雇用の形になると労働者供給にな るので、安定法上も問題がありますし、日本の場合の使用者概念として、そういうもの は認められていないということです。 ○輪島委員   わかりました、現行法上それが認められていなくて、職業安定法があって、第44条が あって、労働者供給事業は原則禁止となっていて、それの例外が派遣法で、それを取り 出して、いま派遣法の議論をしています。別にアメリカというのは共同雇用方式がある ので、2つ目の例外としての共同雇用というものがあり得るのかどうかということも、 長谷川委員のおっしゃった安定法第44条の議論をするときに、一緒に議論ができればい いということですか。 ○長谷川委員   そうではなくて、請負の姿が少し変わってきています。そうすると、こういう派遣労 働者と請負労働者、間接雇用というか、そのような労働者の労働法制をどう考えたらい いかというときに、アメリカでは共同責任、四角関係というのがありますということで、 それと第44条がピッタリいくという話ではありません。  要するに労働者の保護を考えたときに、使用者責任を労働者にどこまで負わせるのか というときに、1つの例としてアメリカの四角関係というのがあります。それが良いと か悪いというのではなくて、アメリカの調査などで、それを見ることは必要なのではな いでしょうか。  何でかというと、前回の派遣法の改正のときに、派先に、例えば福利厚生のところで 均衡考慮で入ってくるわけですが、もっと派遣労働者のことを議論していけば、能力開 発だとか、いろいろな話になってくると思うのです。そのときに、あとは労使関係でも いえば、四角関係をどうしていくのかというのは、参考になるのではないかということ です。  第44条の話は、むしろ請負なども姿、形が変わってきているので、第44条と派遣とか、 請負をどう見るのかを、1回議論しておいたほうがいいと思います。 ○清家部会長   他にございますか。 ○市川委員   私も職業安定法第44条との関係をいつも考えてしまうのですが、少し話が前に戻るの ですが、日本は職業安定法第44条の例外で、これは供給事業を認めるという形の派遣法 なのだけれども、ドイツやフランスというのは、労働者供給事業は原則禁止なのか、そ の例外として、こういう形なら派遣を認めるといっているのか、そういう原則は実はな いのか、その辺はどうなっているのでしょうか。 ○鎌田委員   今度ドイツの専門家の方が来られるので、確認していただきたいのですが、ドイツで は、日本でいう労働者供給事業の禁止の規定はありません。しかし、労働者派遣にかか わることについては、ドイツでも禁止されています。なぜかというと、職業紹介に当た るということなのです。職業紹介とどう区分するかというのが、派遣のポイントなので す。  ですから、例えば具体的にどのように問題になってくるかというと、いまはなくなっ たのですが、ドイツの派遣法には派遣期間という定めがあったのです。それがあった理 由の1つは、派遣期間が短期のものに限って認めるというのは、長くなるのなら職業紹 介だという考え方なのです。つまり、長く同一の派先に使われるということであれば、 それは職業紹介として対応すべきではないですかという考え方なのです。ただし、臨時 的、一時的に、他の企業の労働者を使うということであれば、これは認めてもいいので はないかという考え方です。 ○市川委員   何でこのようなことを申し上げたのかというと、職業安定法第44条の「何人も云々」 というのは、「自己の雇用する労働者を他人の云々」と、直接、間接という概念がどう かという問題として、使用者が雇っている労働者は、きちんと自分で責任を持って使い なさい、それが日本の原則なのだということまで読めるのか。  もし読めるのだとしたら、派遣法というのはここまでいろいろ規制を付けた例外なの だ。でも、あくまでも原則は自分の雇った労働者は自分で使うというのが、職業安定法 第44条の原則なのだ。労働側としては、ここをきちんと担保したい気持です。いまの第 44条が、最近は「そんな法律は知らない」というような、派遣法などは意識するのです が、第44条はあまり意識されないので、そこを勉強させてもらいたいという気はしてい ます。 ○清家部会長   他にございますか。先ほど長谷川委員が少し言われたのは、輪島委員が言われたよう に、第44条の例外として派遣法があるのだけれども、最近の動きを見ると、例えば請負 が事実上労働者供給をしていて、請負は第44条の例外として認められたものではないの に、事実上の供給事業をしていることをどう考えるかということですね。 ○長谷川委員   鎌田委員、いまの請負というのは民法で言っている請負ですよね、商法ですか。 ○鎌田委員   実は少し法律的に難しい話なのですが、派遣法の適用範囲をどこまでにしますかとい う話なのです。つまり、いま請負と派遣の区分というように問題を立てていますが、そ の場合の請負というのは民法ですかと質問されるのですが、それは正確ではなくて、つ まり両当事者、この場合は発注者と請負会社ですが、請負契約を結んでいようがいまい が、かかわりなく行政あるいは裁判所は、派遣法の適用があるかないかというのを客観 的に見ます。  それは、例えば労働者性の判断でも同じなのですが、委託で個人請負の人を雇ってい るとします。そうすると、この個人請負は民法上の請負ですか、それとも労働契約です かという問題の立て方をしません。請負、委託、委任にかかわりなく、労働基準法の適 用があるかないかだけで判断します。それは客観判断です。  いま請負というふうに問題になっているのは何かというと、民法上の請負の場合もあ るし、委任の場合もあるし、そのほかの委託という無名契約の場合もあるということに なります。要するに、労働者派遣法の適用範囲をどのように決めるかで、その決める基 準というのは例の労働省告示37号というもので、客観基準を定めているという格好にな っています。 ○輪島委員   商法上の請負と、民法上の請負は違うと。私の理解は、民法の中に契約形態というの が3つあって、請負契約、委任契約、雇用契約があると、それを実態判断をしましょう と。民法の第632条に請負契約という規定があって、その中で業務請負なのかどうなの かを見る。ただ、派遣と請負については、1985年に派遣法を作ったので、派遣と実際の 請負の区分をしなくてはいけないから、告示を作って、37号で、請負と派遣の区分基準 を作りました。  現行では派遣法があるので、派遣法によって、請負と派遣の区分基準ができているの だから、そこをもって、派遣法を根拠にして行政が指導している。民法を根拠にして何 をしているわけではないというのが、いまの流れだと思っていて、頭に戻りますが、商 法上の請負と、民法上の請負というものがあって、それは概念が違うものなのでしょう か。 ○鎌田委員   商行為の中に「労務請負」とか、「作業請負」という言葉があるのです。これは戦前 にできているのです。労働者供給事業が職安法ができたときに問題となったのは、作業 請負との区分をどうするかという観点で問題になったのです。  ですから、いわゆる民法上の請負というよりも、さらに作業とか、労務の供給を目的 とした請負というのが、商慣行としてあって、それは商法に定められているのですが、 労働者供給事業の禁止規定を設けたときに、それとの仕切りが問題になったということ です。 ○坂口課長   いま一度整理させていただきます。話はより広がって複雑になってしまうのですが、 先ほど労働者供給事業の禁止そのものは、職安法第44条の立法趣旨からいくと、本来そ ういう労働者供給を事業として行うというものについては、中間搾取であったり、強制 労働の弊害を及ぼすということで、そういう労働者供給という事業そのものを禁止して いるということなので、規定そのものからいくと、直接雇用以外は駄目だという形を規 定しているわけではないわけです。  逆にいうと、間接雇用というかどうかはともかく、日本の場合も在籍出向という雇用 の形態も、実態としてあることは事実です。ただ、先ほど来申し上げているように、そ ういうものを認めて、供給事業そのものは認めていない、あるいは労働法制そのものの 全体の構成が、使用者概念というのを、ダブルの雇用が成り立つような形での法制とし て、全体が成り立っていないことから考えると、典型的な雇用形態は直接的な1対1の 雇用関係で、逆にいうと派遣のような形態で分かれるということになると、まさしく派 遣法の中に、労働基準法、労働安全衛生法の使用者責任規定の特例を置いているような、 一定のルールを作らなければいけないという形が、労働法制全体としては出来上がって くる必要があることにはなると思います。 ○清家部会長   そうすると、先ほど来、長谷川委員、市川委員がおっしゃっている、職安法第44条と の関連で議論すべしというのは、もう少し具体的にいうと、どういう点で議論すべしと いうことになりますか。 ○長谷川委員   第44条は「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はそ の労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させては ならない」といっているわけです。だから、労働者供給事業ができるのは、第45条で規 定が出てきていて、あとは派遣となるわけです。  法律体系はそのようになっているのですが、現実に起きているいろいろな事柄はどう いうことなのか。そうすると、派遣のところは派遣法との関係で見ていけばいいのだと 思うのですが、最近は請負が非常に問題があるわけですが、鎌田委員が先ほど言ったの は、派遣法に抵触しているかどうかというところで見ているというのですが、それだけ なのか。  それだけだといえばそうなのですが、ではこの第44条というのは、法の持っている規 定はこのとおりなのですが、実際は偽装請負、派遣法に抵触するようなものが行われて いる。それだけなのだろうか。それだけだといえばそれでいいのですが、ここはもう一 度法律体系を整理してください。第44条というのは何なのかというのと、第44条から飛 び出してきた特別としての派遣法、現実に起きている派遣と請負の偽装請負、それをも う少しきちんと整理してもらえればいいと。その上で、いま起きているようなことを防 ぐためには、何らかの労働者保護が必要なのかどうかという議論をしていただければと 思います。 ○鎌田委員   私の先ほどの発言では、いわゆる偽装請負にかかわるものが、すべて派遣法との抵触 の問題だけと限定しているわけではなくて、労働者供給事業だと見なされる場合には、 もちろん供給事業禁止違反ということになりますので、そうすると派遣以外で労働者供 給事業とは何なのかという定義にもかかわるかと思うのです。  それで、第44条の趣旨という話が先ほどもありましたが、私の理解では、職安法第44 条は労働者供給事業は原則禁止を定めているのですが、その趣旨は何かというと、かな り議論があると思うのです。  これはあくまでも私の理解なので、皆さんにご検討いただきたいと思うのですが、1 つは、第44条というのは、労働の民主化という、戦後GHQが戦前に日本にあった封建 的労働関係を撤廃、根絶するという強い意思で設けられたと考えられるのです。その場 合、封建的な労働組織とは何かというと、いわゆる労働ボス、現在でもないわけではな いと思うのですが、親分、子分関係のようなもので、労働組織を構成している。典型的 には、かつては建設だとか、いまはないのかわかりませんが、港湾といったところで、 労働組織を、それが労働者供給事業なのだという狭い考え方です。  反対に、先ほど市川委員が少しおっしゃったかと思うのですが、そのように狭いもの ではなくて、第44条とは、労働者を使用する者は雇用主でなくてはならないという、直 用雇用原則を定めたものなのだ、そのように考える考え方もあると思うのです。しかし、 いまでもそのように考えておられる方もいるのかと思いますが。  私などは、使用者と雇用主、使用者が曖昧であることが非常に問題だと思うのです。 労働者にとって、誰が使用者なのか曖昧というのは、非常に問題になるだろうし、さま ざまな使用者としての責任を本当は負わなければいけない人が、負わないということが 出てくるので、そういったような弊害に対して、一定の規制をするという考え方もあり 得るのではないか。そのように思っています。  それ以外にもあるかもしれませんが、ただし、労働者派遣法が成立したときの背景の 1つに、業務処理請負業というのが広く行われていて、それが労働者供給事業と行政に 認定されて、いろいろと厳しく規制をされたというときに、派遣法というのができる背 景の1つに、誰が使用者なのかが曖昧であることを整理する観点からできているという 意味で、派遣法というのは、どういった労働条件について、誰が責任を負うのかという ことを厳しく規定しているのだと思います。 ○長谷川委員   いま鎌田委員が言ったように、この第44条の読み方は、かなりいろいろと意見のある ところです。市川委員と私が言ったのは、2つを言っているのです。労働の民主化とい うことと、つまり、強制労働や中間搾取など職業に対する介入が不当に行われないとい うことです。  もう1つは、基本的には、雇用というのはそういうものですということを、広くここ で読むことができるのではないかと思っています。ここの読み方については意見が分か れるとは思います。 ○清家部会長   そうしましたら、内容についての議論はこれからあれですが、1つは、ここは基本的 には派遣事業の話をするところではありますが、ただし、偽装請負というのは派遣との 偽装という話ですから、そこで派遣法との関係の議論は出てきますということですね。  さらに、そこに加えて偽装請負の問題は、それとはまた別に第44条との関係というか、 労働者供給事業との関係で議論になる部分もあるので、そこまでを含めて議論するかど うかということだと思うのですが、使用者側はそれでよろしいですか。 ○輪島委員   基本的にはいいと思いますが、前回の資料の「労働者派遣法の変遷」のところでいう と、いちばん最初の昭和60年の派遣法制定から、3頁に「以前の状況」というものが、 [1][2][3]とありますので、そこの整理からすれば、いまの戦前の状況と、昭和22年に職業 安定法ができて、そこで第44条ができたところと、戦後から昭和60年までの状況を整理 しないと、それが、この中で整理をした上で議論の材料になるということかと思います。 ○長谷川委員   第44条は直雇用原則だという読み方をするという見方はあります。ただ、職安法第44 条というのは、どういう経過でこのようなものができてきたのかということは、1回見 ておくことは必要だと思います。 ○輪島委員   直用原則を強く意識してこなかったので、そこら辺は再度勉強して、例えば学説を並 べていただくとか、少し整理をしていただければと思います。 ○清家部会長   取りあえずは、これからそこまで含めて議論していくということでよろしゅうござい ましょうか。                   (異議なし) ○清家部会長   そのようにしたいと思います。いわゆる間接雇用の問題について、他に何かご意見は ございますか。また後で戻ることもあろうかと思いますが、もう1つ具体的に、今度は 派遣という働き方について、常用型、登録型という切口と、専門的な26業務とこれ以外 という切口があるのではないかということが、前回ここで議論されたので、それを少し 念頭に置きつつ、さらに議論を深めていきたいと思います。この点についていかがでし ょうか。あるいは、いまの間接雇用の問題をもう少し別の視点から議論していただいて も構いません。 ○輪島委員    常用型の派遣と、登録型の派遣という2つの類型があるわけですが、前回の資料でい うと、派遣事業所からすると特定の事業所のほうがよほど多くて、15頁でいくと、2万 7,000社が特定派遣で、2万社が一般派遣で、合計4万7,000社です。事業所数からする と特定のほうが多いです。16頁でいうと、売上げは、一般と特定のシェアを見ると、右 側の数字です。派遣先からすると、17頁は特定は大体横ばいで推移していますが、一般 が増えていると読むのだと思います。  それで改めて常用の評価をするべきなのではないかと思っていて、登録型は1999年以 降は自由化業務が解禁になって、さらに増えているのだと思いますが、基本的に常用型 の派遣というのが、派遣という働き方の中でメジャーに取り上げられないというのが残 念に思っています。もう少し評価をされるべきだと思っています。  非典型的な雇用とか、間接雇用だと言われますが、名前の如く常用型なので、このよ うな派遣をもう少し伸ばしていく姿が、あるべき1つの方向性なのではないかと思って います。 ○長谷川委員   輪島委員の意見は、非常にそうだと思いつつ、派遣業者に聞いてみればいいと思うの です。おそらく事業として成り立たないのだと思います。おそらく、やっている事業所 は両方やっているのだと思うのです。そのときに、どちらで収益が上がっているかとい ったら、登録で上がっているのだと思うのです。それが、このグラフに端的に表われて いるのではないかと思います。一般と特定と分けていますが、一緒にやっているところ は出ないのでしょうか。 ○坂口課長   特定はまさしく常用のみということなので、合わさっているのは一般に入ってしまっ て、一般で登録のみという形では取れていないです。 ○長谷川委員   そうですね、おそらく事業者から聞けば収支を聞いた場合にどうですかといったら、 どの業者もためらわずに、常用では難しいと言うと思います。 ○輪島委員    この間、特定の派遣業者の人に聞いた話は、ある一定の規模があれば回っていく。つ まり、特定でやって、例えば100人なら100人、自分のところの100人のスタッフを常用 型にして、それを5社とか10社の派遣先が確保されていれば、それで回っていくのです。  何で毎月200社も増えていくのですかねと話をしていたら、特定で小さくても、自分 の力量で、100人でも、50人でもいいのですが、その人たちが毎月派遣されていれば回 っていくので、規模が大きくなくても、売上げが毎月立っていくので、職業紹介は毎月 10件ずつ職業紹介しないと売上げが立たないけれども、100人なら100人、200人なら200 人のスタッフが、翌月も98人とか、95人という派遣で回っていれば、それなりに回って いくので、小さくてもやれると聞いたので、特に東京でやっている大きいところが、常 用型と一般なのかもしれませんが、2万7,000の常用型のところは、そうやって回して いけばできるものらしいので、そのように思っています。 ○長谷川委員   おそらく、これを作ったときは、いま輪島委員が言ったような思いで作ったのではな いかと思うのです。結局、すごく参入してきて、熾烈な競争をしています。特に都市部 は熾烈な競争をしています。  そういうときに、いま輪島委員から聞いたところは、着実にやっているところだと思 います。ただ、これぐらい毎月参加してきて、競争が激化しているときに、それで事業 としてそのようになるのかどうか。私は協会の人、そういう事業を展開している人から 聞くと、どこで収益が上がってきているのかを聞くと、よくわかるのではないかと思い ます。本当は輪島委員がいうような形が、私はいいと思うし、もともと派遣法はそのよ うなことを期待していたと思うのですが、違う方向にいっているのは、派遣を受け入れ る企業と、派遣事業者との間で思惑が違っている現象が起きているのではないかと思い ます。 ○坂口課長   事務局からデータ的なことも含めてですが、いま両委員がおっしゃっている案件です が、いずれにしても個々の事業所なので、千差万別なのです。まず、一般と特定でいく と、前も話題になった稼働率、実際に実績があったところということからいっても、私 どものほうに事業報告を出していただいたところの中で派遣の実績があるのが、一般だ と76%ぐらいですが、特定ですと56%程度で、若干特定はそのようなきらいがあること も念頭に置きながらですが、先ほど輪島委員がおっしゃったとおりで、売上高は全体と しては低いのですが、派遣先の件数が平均的に、一派遣元事業所当たりどうかというこ とで事業報告を見ると、一般の派遣事業だと、一派遣元当たり55.3件です。特定派遣だ と4.2件ということなので、先ほど来話が出ているように、特定派遣の中でも、うまく いっているところとそうでないところがあるのですが、おそらく輪島委員が例示で出さ れたものも、特定派遣で技術者のような方の派遣をされているところだと、そんなに派 遣先の数はないけれども、そこでうまく技術者の派遣という形で、26業務ということも 絡めながら一定の売上げを得ているところはあるのは認識はしておりますので、そこは 実際上の特定派遣の中でも、そもそも実績がないところもあれば、そういったところも あるということです。 ○輪島委員   長谷川委員がおっしゃったように、いま問題が顕在化していて、そのことを労働者保 護の観点で議論しなくてはいけないというのはよくわかるのですが、本質が変わってい るのかというと、特定派遣が2万7,000社と多くて、4.2社の派先で回っているものも、 確実にシェアとしてあるというある意味の健全性は、失われていないので、派遣の本質 が失われてしまって、このように変わっているというよりは、本質はありながら新しい ものも入っているので、そこの議論は必要だろうという立場だということです。 ○長谷川委員   私もあるところから、派遣労働者を組織している組合があるので、そこはいま輪島委 員がおっしゃったところと全く同じで、うまくいっています。非常にうまくいっている し、能力開発もうまくいっているし、全国展開もしているのです。そこは派遣という働 き方が、いまの経済社会の中で要請されているのではないですかと、まさにそうだった と思うし、1985年に派遣法ができたときの趣旨もそうだったと思うのです。自らの会社 で不足している労働者を派遣でという、そこはそういう意味でうまくいっています。  それが、ある1つの業界なので、IT産業だけです。それが他のところでそうなって いるかというとなっていません。結果的に、登録派遣のところが、さまざまな労働者保 護のところでいうと、労働者から見ると、いろいろと問題が起きている。常用のところ の特定派遣のところは、比較的労働条件もきっちりしているし、労働組合も組織しやす いというか、意外と組合もできているというのが事実です。そこは非常にうまくいって いるところ、派遣法の立法趣旨に沿って運営されているところと、立法趣旨から少し外 れているところを、もう少し分析して議論すればいいのかと思います。 ○鎌田委員   事務局に確認したいのですが、常用型、登録型というお話があったのですが、それが 大きく問題になっているのは、いちばん法律上違いが出てくるのは、特定労働者派遣事 業と、一般労働者派遣事業です。特定と一般の違いは、先ほど課長から説明を受けたよ うに、特定というのは常用型のみ、一般というのは登録と常用の両方を含むということ です。つまり、それは事業所の中で、雇っている派遣労働者全員が常用型という場合に は特定ということです。それで、違いは許可か届出制かということがあるわけです。  ところが、つまり派遣会社の中にはもちろん登録型で派遣している場合もあるし、期 間の定めもなく雇っている派遣労働者を派遣している場合もあるわけです。そうした場 合に、現状の派遣法の中で、許可と届出以外で、常用で雇っている派遣労働者に適用さ れるルールと、そうではなくて登録型で、有期であっても1年以上の雇用の見込みのあ る者ですが、常用型で派遣する人に対するルールと、派遣法の中で違いが出てくるもの はあるのでしょうか。 ○篠崎補佐   法律上は、常用であるか登録型であるかということによって、労働者保護規定等の区 別はありません。ただ、唯一あるとすると、特定型の場合、他の事業と兼業していて、 いまいる労働者を直接雇用して、派遣でなくて使っている労働者を途中から派遣する場 合もあるので、そういう場合、新たに派遣労働者にしようとするとき、いま普通の労働 者を、あなたは明日から派遣労働者にしますということについては、当該労働者につい てそれを明示しなければならないとか、そういった規定はありますが、先ほどおっしゃ られたような、常用型とそれ以外ということに着目した、規制やルールのあり方は、現 在の派遣法上はございません。 ○鎌田委員   そうなのですね。議論は少しずれるのは、許可と事前届出という差はあるのですが、 期間の定めがなく雇っている場合と、登録で有期で雇っている場合で、保護の度合とい うのは違いがあってもいいのではないかということを考えるとき、派遣法の中にはその ような仕分けがないのではないかということになるのですね。 ○長谷川委員   鎌田委員の言うように、特定労働者だけのところは常時雇用されている労働者だけで す。だから、有期も無期も言っていないし、何も言っていないのです。要するに常時雇 用されているだけなのです。  でも、常用雇用の場合は、登録型よりは長期雇用になっていて、自分のところで能力 開発もやっているのです。IT産業で特定派遣でやっているところは、ほとんど期間も 長いし、期間も定めていないというところは多いです。でも、ここでも有期とか、無期 については一切触れていません。 ○鎌田委員   つまり登録といった場合、常用というのが期間の定めのないものなのかといったら、 そうでもなくて有期の場合もあります。ただし、1年以上雇用する見込みがあるとか、 そのような仕分けになっているのです。 ○輪島委員   すごくディテールになるのですが、いまの入口の話で、違いがあまりないという議論 なのでしょうけれども、その観点でいうと、出口は第40条の4と5で、明らかに違いが 出てきてしまって、常用型で雇おうと思っているのに声掛けをしなくてはいけないとい うことになっているので、長谷川委員に常用型を評価していただいて、ずっと続けたい、 ビジネスモデルとしても常用型をやっているのに、いま現場は何が起こっているかとい うと、派先のほうが第40条の4と5に悪乗りした形なのかもしれませんが、声掛けをし て、自社の社員にしてしまっている。常用型の派遣をしている人たちは全部抜かれてし まって、1,000人単位で抜かれてしまって、とてもやっていられないと。入口の話と、 いまの法体系でいうと、常用型には出口に非常に大きなアンバランスが付いてしまって いるのではないかというのがディテールです。 ○清家部会長   その辺は少し各論に入ってきましたが、どうでしょうか。 ○北村委員   非常に法令について詳しくないまま、素朴な印象なのですが、常用型は雇用需給のバ ッファー役というのは非常に大きいと思うのです。その分、このデータでもわかるよう に、どちらかというと数の少ない規模で、数の少ない派先に安定的に供給しているとい うことを考えると、声掛けが起きるのは、業者にとってはある程度必然のリスクだとい う気もするのです。安定的に派先が要求している人材というのが、常用型の業者さん、 特定業者さんからやって来る。何というか、バッファーとしてのリスクとして、ある意 味当然のなり行きという言い方では、大変失礼な表現になるかもしれませんが、そうい う印象があって、派遣というものの調整能力が、あまり安定してくると生じてこないだ ろうという印象があるのですが、それは変な印象でしょうか。 ○輪島委員   実態としてそういうふうにあって、そのようになることが必然になるというのは、常 用型の派遣元にとって喜ばしいことかどうかというと、それは喜ばしいことではないの で、ただ、実態としてそうなるということを織り込んでおかなければいけないリスクと いうことで言えば、それはリスクなのだと思います。ただ、実態として1,000人単位で 抜かれることも、ままあるので、それが喜ばしいことなのかということになれば、それ はそうではないです。   ○北村委員   それで、このデータの中で知りたいのは、常にそういうリスクを持っている常用型と なると、この人たちの賃金とか、派遣料に関してのデータがないのです。これはどうい うところでバランスしているのかを知りたい気がするのです。  全体の売上げとか、件数の推移はあるのですが、特定のほうが一般的に高いことは了 解しているのですが、これと同じ時系列でもって、この需給の動きの中で、派遣料と賃 金がどうなっているかというのはわかりますか。 ○篠崎補佐   賃金とその派遣料金の関係について、賃金はアンケートでとっていて、特定か一般か と、事業側からではなく労働者から見たものです。派遣料金は、一般と特定でとってい ます。今回お出しした一般か、特定事業かによって、派遣料金とともに賃金がわかれば、 それをうまく比較していけるのですが、一般か特定かの場合の賃金については、事業報 告で取り始めたのが平成16年なので、データが平成16年、平成17年しかありませんでし たので、この推移ということではお出ししていないということです。  ただ、平成16年、平成17年だけの単年度で見れば、派遣料金と一般と特定に分けた賃 金というのは、事業報告上データは出ますので、次回に整理をしたいと思います。 ○清家部会長   他にいかがでしょうか。 ○輪島委員   北村委員がおっしゃるように、常用型がそもそもバッファーとなっているのかという ことになると、派元にとってバッファーとして事業展開をしているわけではないという ことです。もう1つは、派先が常用型の派遣スタッフに、第40条の4と5の関係で声掛 けをして、派先の直接雇用になることは、採用自由の関係ですから、それも妨げること は基本的にはできないと思います。整理としてはそういうことだと思います。 ○北村委員   そういう意味でいうと、常用型の方というのは、それだけを聞く限りでは、私の理解 では非常にリスクを負っていて、それが派遣料金とか賃金という形で、何かコントロー ルされているのかという気持がありましたので、伺った次第です。 ○清家部会長   他にいかがでしょうか。 ○長谷川委員   輪島委員の声掛けの話というのは、派遣法が改正されてきて、直近の改正だったわけ ですが、私はもともと派遣法の趣旨というのは、我が国の派遣法は1985年だと思ってい るのです。1985年の中身でいけば、それでずっときていれば、おそらくそういう話もな かったと思うのですが、結局1985年以降、いろいろな改正をしていくわけです。  そうすると、派遣というのはどういうことなのだと、そこの議論になってしまうので す。だから、派遣というのは何なのか、第44条から特出しするわけですが、そこの議論 に必ず戻っていくのだと思うのです。  いま私たちは出口の話をしているのですが、出口にもいろいろな矛盾があって、そも そもといったら1985年の話になります。そこを今回は少し丁寧に議論することではない かと思います。 ○輪島委員   いまの点でいうと、前回の法改正の派遣法の第40条の4と5というのは、労働者保護 のために入れた趣旨です。それなのに、少なくとも常用型の26業務のところでいうと、 一方では労働者保護に資するのかもしれない、つまり派先の直接雇用になるのだから、 そうなのかもしれませんが、少し常用型の特定の26のビジネスについていうと、非常に 大きな矛盾を入れてしまっているというのが、実態としてはあることだけを申し上げた かったということです。 ○清家部会長   他にいかがでしょう、よろしゅうございますか。それでは、またこれからもいろいろ 議論していくことになるかと思いますので、本日の最初の議題の労働力需給制度につい ては、ここまでとさせていただきます。  次に「一般労働者派遣事業の許可の諮問」に移ります。冒頭に申し上げたように、こ こで傍聴されている方についてはご退席をお願いします。また、鳥生職業安定局次長に おかれましても、所用により退席されると伺っています。                (傍聴者・鳥生次長退席) ○清家部会長   事務局より何かございますか。 ○篠崎補佐   次回の部会については、3月13日(火)13時30分から16時を予定しています。同じく 安定局第1会議室で予定していまして、冒頭にございましたが、諸外国の制度について、 学識の方をお呼びして、ご説明と質疑という形にしたいと思っています。よろしくお願 いいたします。 ○清家部会長   次回の部会は3月13日の1時半から4時ということで開催させていただきますので、 日程の確保等をよろしくお願いいたします。以上をもちまして、第95回労働力需給制度 部会を終了いたします。なお、本日の署名委員は、雇用主代表山崎委員、労働者代表は 古市委員にお願いいたします。委員の皆様、どうもありがとうございました。         照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)