07/02/27 介護予防継続的評価分析等検討会第2回議事録 第2回介護予防継続的評価分析等検討会議事録 1. 日時・場所 平成19年2月27日(火)15:30〜17:30 厚生労働省専用第15会議室 2. 出席委員 石田、植田、大川、大久保、大渕、坂元、杉山、鈴木、高橋、竹澤、 辻、津下の各委員(丹後委員は欠席) 3.議題   (1)継続的評価分析支援事業の実施状況について(報告)   (2)特定高齢者の決定方法等の見直し等の検討について   (3)その他 ○ 鈴木老人保健課長より出欠状況等の報告。 (辻座長) それでは、議事に入りたいと思います。今回の議題は、継続的評価分析支援事業の実 施状況についての事務局からの報告、並びに特定高齢者の決定方法等の見直し等の検討 などを予定しております。 それでは、事務局の方から資料の説明をお願いいたします。 ○ 大澤課長補佐より、資料1及び参考資料1に沿って説明。 (辻座長) ただいまの御説明につきまして、御意見・御質問があればいただきたいと思います。 どうぞお願いいたします。 特によろしいでしょうか。前回の検討会を踏まえましての、若干の質問表の修正、並 びに調査の現状、今後のスケジュールということで御説明いただきましたけれども、何 かございますか。よろしいですか。 それでは、御報告いただいたということで、次の議題に移らせていただいてよろしい でしょうか。 それでは、議題2でありますが「特定高齢者の決定方法等の見直し等の検討について」 ということであります。資料といたしましては、まず最初に現状の認識、特定高齢者の 把握事業が行われてから1年弱が経つわけでありますけれども、その現状がどうだった かということについて、この資料2−1「介護予防事業の実施状況の調査結果(平成18 年11月30日時点の調査)」を御説明いただきまして、その現状に基づいて資料3の方 で見直し(案)というものを事務局から出していただきます。 その際、新しい見直しの根拠といたしまして、あるいは見直しをするとどのようにな るかというシミュレーションを含めまして、資料4として「『基本チェックリスト』に よる特定高齢者候補者の選定基準について」ということを、本日御出席の鈴木隆雄先生 に出していただいておりますので、これも併せて適宜鈴木先生に途中で御報告いただき ながら、資料2、3、4と一括で御説明いただいた後、まとめて御議論いただきたいと 思いますので、よろしくお願いいたします。 ○ 藤井企画官より、資料2−1、資料2−2、参考資料1、参考資料2−1について 説明。 ○ 鈴木委員より、資料4について説明。 ○ 藤井企画官より、資料3、参考資料4−1、参考資料4−2について説明 (辻座長) どうもありがとうございました。  簡単にまとめますと、ポイントは資料3の10ページ、別紙2だと思うんですけれども、 特定高齢者施策を設計するに当たって、特定高齢者と呼ばれる方々の地域における出現 頻度は、恐らく5%ぐらいだろうということを最初から想定して、それに沿っていろん な基準をつくったつもりだったのですが、実際に始まってみたら0.14%という非常にけ た違いに低い状況があったわけです。その理由は何だろうかということで、基本健診の 受診者を中心に把握作業を行ったことによって、健診には元気な人しか来なくて、ハイ リスクな人たちにターゲットを絞ることができなかった。そういった問題もありました。 また、もう一つは選定や決定の基準が厳しかったのではないかという問題です。そこ で、基本チェックリストを実施した方々の中で候補者になる方が5%いたのですが、そ の後の様々なプロセスでその1割以下しか最終的には該当しなかったという大きな問題 があったわけです。 ですから、今回、新しい目標という形でこの数値を出したということであります。 それを満たすやり方といたしまして、大きく言って3つのアプローチがありまして、 課題として矢印で色づけしておりますけれども、まずブルーの方では把握の機会を広げ ていくということであります。緑の矢印は選定に関わるさまざまな基準システムを変え ていくということであります。赤は参加率を高めていくような、そういったさまざまな ものがあります。今回見直しとしてお諮りしたいのは緑の部分です。候補者選定基準の 緩和、特定高齢者決定基準の緩和、生活機能評価の判定区分の文言の見直し、この辺を 中心に御議論いただきたいということであります。 ただ、ブルーの部分に関しましては、資料3の6ページに書いてあります。また、赤 の部分につきましても、7ページに書いてありますので、それぞれまた御議論いただき たいとは思うのですが、まずは1つ切り離しまして、最初に緑の部分、選定基準の緩和、 決定基準の緩和、判定区分の文言の見直しにつきまして、特に11ページ、12ページの 別紙3で詳しく書いてありますけれども、この辺のところをきっちり最初に皆さんに御 議論いただきまして、そこがフィックスされたら、残った時間でそれ以外のブルーの部 分とか赤の部分についても御議論いただきたいと思います。まずはこの緑の見直し基準 の緩和というところについて御議論をいただきたいと思います。 よろしくお願いいたします。津下先生、どうぞ。 (津下委員) あいち健康の森の津下と申します。今、鈴木先生からシミュレーションを出していた だいたことに関して質問をさせてください。まず、基準を緩和するということで、その 条件を見させていただいたところ、介護予防事業に値するような対象者でなければ意味 がないわけです。全体として該当者が増えるという話はありましたけれども、個々の項 目において現行の基準を比較するとどうなりますか。例えば運動器のところで、5項目 のうち3項目に該当というのは、個人的な感想で言えば妥当性は高いとは思うのですが、 現状の5項目のうち5項目該当する場合と比較するとどのぐらい増えるのか。それから、 栄養関係等それぞれどのぐらいボリュームが増えるかということを教えていただければ と思います。 (辻座長) 鈴木先生、お願いします。 (鈴木委員) 基準を変えると、どのぐらい増えるかということですけれども、例えば運動器5項目 すべて該当する人というのは、平成17年あるいは18年度に追跡を行った。そのデータ が基になりますが、それでいいますと5項目すべてに該当している人は3.3 %でした。 それを4項目以上にしますと12.6%、3項目にいたしますと26.5%の方々が、運動器該 当という割合に対応いたします。 栄養改善2項目、これは変わりませんので、この基本チェックリストのパイロット調 査でも2.7 %でこの数字は動きません。 口腔機能は2項目以上ということですが、この基本チェックリストの3項目ですと6. 8 %が該当しておりましてけれども、2項目以上になりますと23.0%です。そういうふ うに基準緩和しますと割合が増えます。 ただ、その場合に最終的に特定高齢者の候補者という形になりますと。先ほど言いま したように、現状ではこのパイロット調査の母集団を使ってやりますと13.2%という数 字を申し上げましたけれども、今の条件、すなわち10項目以上該当とか、運動器3項目 以上で、栄養が3項目該当、口腔器3項目にしますと、それに該当する方は、ここの悉 皆調査でやると40.6%という数字になるわけです。ただ、実際に受けて来られる方々は 悉皆ではありませんので、当然この数字は想定される母集団によって変更、それも全部 シミュレーションしたというのが先ほどのストーリーになります。 (津下委員) どうもありがとうございました。 (辻座長) ほかにございますか。実際にお使いになる市町村の立場ということで、竹澤委員ある いは坂元委員、何か御質問、御意見はありますか。 坂元委員、どうぞ。 (坂元委員) 川崎市でも、基本検診の実施時に、この基本チェックリストをやっているのですけれ ども、この基本検診の受診率を上げる目的で、川崎市は65歳以上全員に対して、個別通 知で受診を勧奨しております。さらに毎年2回全戸配付の市政便りで健診の勧奨をやっ ているのですけれども受診率が上がらないという状況です。これ以上基本健診の受診率 を上げる方法について、我々としては苦慮しているところです。 現在、市内医療機関で基本検診のチェックリストをやっていただいておりますが、基 本健診とは別に基本チェックリストの判断費用を付けております。ただ、これが今後議 論になると思います。今後これがもしなくなってしまうと、医師がやるインセンティブ がなくなってしまうということがあります。 また担当の者に聞くと、チェックリストを老人会とかいろんな場所でやっていただい て、受診を進めても、その先の受診を受けていただけない方がかなりある。これは、他 の政令指定都市に聞いても、受診率向上が大きな悩みの種だという情報を得ています。 以上でございます。 (辻座長) ありがとうございます。何かありますか。どうぞ。 (藤井企画官) 今、坂元委員の方から、このシステムは今後もシステムとして回っていくのかという お話を伺いましたが、1つのポイントが平成20年だと思うのですが、18年、19年、20 年ですけれども、20年から今、基本検診を行っていただいております老人保健事業の方 が、実は生活習慣病に関しましては、特定健診という形で財源が医療保険者の方から出 てくるんですけれども、そのこともにらみまして、こちらの生活機能評価の部分につき ましても、介護保険財源の中で市町村さんに事業計画として組んでいただいて、それな りの財源を担保させていただいているという形がございます。 当然ながら、そちらと一体的にやるためには、どういうふうにすればいいのかとか、 あるいはそれぞれ別個にやるといった方法などもいろいろあると思いますが、それは今 後調整いたしますが、財源自体は確保していただいておりますので、この介護予防事業 として、生活機能評価をやっていただくというところにつきましては、少なくとも第3 期の間に変更するといったようなことはないというふうに、市町村さんの方には御説明 をさせていただいている次第でございます。 (辻座長) 竹澤委員あるいは石田委員、いかがでしょうか。何かありますか。 (竹澤委員) 今年から取り組んでいて、実際地域の中ではこの新しい仕組みを18年度から取り組ん だ中で、なかなか市民の方もこれに乗ってくるのに時間がかかるかなと思っています。 確かにおっしゃったように、医師会の理解だとか、市民の理解、特に今、私どもで時 間がかなりかかるのは、対象者に対してそれぞれの介護予防事業に参加するための説得 に保健師が行っておりますけれども、それにかなり時間がかかるという状況でございま す。 確かに候補者の25%を上げるということは、大変結構な話なのですが、本音のところ でその後のフォローをどうしようかというのが、現場のところでは大変大きな課題とい うところでございます。 以上です。 (辻座長) 石田先生、どうぞ。 (石田委員) 稲城市の石田と申します。入口の特定健診の対象者、あるいはチェックリストの対象 者を広げるということは、私は賛成です。日ごろから単独事業で多くの対象者について は、感覚的には把握しているのですけれども、ある意味ではシステマティックには把握 できていないということもあります。住民への浸透ということは、啓発も含めてやらな ければならないと思っています。 従来の健診方法、いわゆる老人健診に加えて、こういったチェックリストを重ねてや るという意味では、まだまだ稲城市の中でも後の活用というのは非常に難しい状況にあ るのですけれども、1年やってみて、多少は浸透してきたかなというのが実感です。 私の考えでは、入口を広げるということが非常に重要だと理解はするところですけれ ども、先ほど課題が言われましたように、結果特定高齢者となった後の体制であるとか、 事業参加、あるいは自治体の事業への受け皿というものは、次の課題になるのかなと思 います。これはまた後でお話したいと思います。 (辻座長) 高橋委員、どうぞ。 (高橋委員) 後で包括的なコメントをしようと思っていたのですが、確定の問題で、私の大学のキ ャンパスのフィールドの近くなのでウオッチングしていて、和光市が平成14年からやっ ているのは、大変面白いアプローチで、要するに1号被保護者還元事業という名前で、 1号被保護者を400 円上積みして、それを財源にして全65歳以上に、その当時ですか ら3グループに分けて和光市オリジナルのものを出して、それで驚くべきことに回収率 は6〜7割なんです。1号被保護者還元事業というのは保険者の意思だと思うのです。 それがあるから7割返ってきて、そしてそれについてそれを戻していく。 もう一つ、和光市で非常に重要なのは、その残った3割がむしろハイリスクだという 判断をして、民生員さんや保健師さんをつくってリーチアウトさせる。この方式を今ま でもずっとやっていて、14年からやって3年で軽度認定率は見事に下がっている。今年 はもう既に絶対数が落ちている。あそこはこれから超高齢地域ですから、そういう意味 ではやはりパッケージングなのです。 やはり保険者が介護予防を政策的に、全市民に対して考えているか。そうすると7割 というのは、ある意味では恐るべき数字なのだけれども、和光市は人口7万程度ですか ら、だからできるということもあるけれども、そういう意味でそれを保健福祉事業や市 町村特別給付等の独自財源をとにかく確保してやる。これは政策意思です。介護予防を きちんと位置づけて、政策としてやる。そうすると、それは今までのよりオリジナルな ものをやるという政策判断があってやったという。そこら辺を、和光市だからできると いう話ではあるけれども、やはり現実にやっているところがある。これは是非いろんな 意味で学んでいただいた方がいいのだと思うんです。それを一言申し上げます。 (辻座長) ありがとうございました。ほかにございますか。 それでは、各論的な話なのですけれども、基準の見直しに当たって、それぞれ専門の 先生方にも関わっていただきましたので、この御専門の立場からコメントいただきたい と思うんですが、まず大渕先生、運動器の機能向上、5項目、3項目という辺りを含め て、御意見いただけますか。 (大渕委員) もともとのパイロットスタディのところからそうだと思うのですけれども、質問項目 を立てたときに、例えば階段を手すりや壁をつたわらずに登っていますか。本質的な従 来の評価で言うと、登れますかという能力評価を見るようなところだったと思うのです けれども、これを廃用症候群ということを想定して、登っていますかというふうに文言 を変えてきたわけですけれども、それによって多分基本の最初のパイロットスタディの ときには、ちゃんと聞けたという部分もあって、その辺の意図が伝わったのかと思うの ですが、実際ふたを開けてみたときに、やれている、やれていると、能力を聞かれてい るんではないかと思って、立ち上がっていますかというと、できますと言っている人も 割と多いような気がするんです。それは私たちも、手足をつかまらないで立っています かと言われると、結構怪しいものがあると思うのです。だから、本来はもっと引っかか ってもいいと思うのですけれども、そういう問題があると思っているのです。 ですから、今回は現実に合わせて出現率を見直すというのは大事な作業なので、特に 今の5項目でいいますと3項目がそれに当たるようなものになりますので、5分の3と か、そういった大英断というのは必要かと感じているところでございます。 あともう一点ですけれども、今、東京都では、介護予防に先立ちまして、おたっしゃ 健診という形で進めておりましたけれども、やはりこのような仕組みによって、今、全 部を報告申し上げることはできないですけれども、毎年の介護予防ケアプランのような ものを立てた数を出しているのですけれども、それが16、17と激増したのですが、今回 18年で激減しているということがあって、やはりそういった仕組みの見直しとか、基準 の見直しということをすれば、変わってくる部分があるのではなかろうかというふうに 思っております。 以上です。 (辻座長) 杉山先生、栄養改善の辺りで何かコメントありますか。 (杉山委員) 栄養改善は、基本チェックリスト2項目のところは変わりませんが、健診における血 清アルブミン値が3.8g/dl 以下というところまで対象者を広げて検討されるというお 話でございますが、これは連続的な数値のどこで切られるかということで、より介護予 防を重視して特定高齢者施策では行うというふうに考えさせていただいています。 ただし、介護保険の居宅並びに施設サービスの方は、3.5g/dl以下ということで変わ りませんので、その部分と混同されてとらえられますと、非常に混乱が起きるかと思い ますので、通知されるときにはその部分をはっきりさせていただきたいということです。 それから、かなり取り組みの地域差が大きく、先ほど高木委員や稲城市の石田委員か らもお話があったように、この目標値に向けてしっかりと取り組んでいらっしゃるとこ ろもあれば、非常におざなりにやられているところもあるように思いますので、目標設 定をきちんとしていただいて、それに近づくように推進していただきたい。 例えば血清アルブミンも3.8g/dl にまで持ち上げたときに、太っているのだけれども タンパク質が足りない者と、基本チェックリストの2項目で把握されると低体重者では、 個別の栄養改善対応の仕方がかなり違ってくると思います。だから、一般高齢者施策と 合体してやることも可能であるとされていますけれども、介護予防サービス計画と連携 させて、居宅においてその人がどのように食べていけるのかという日常的な生活での個 別の取り組みをきちんと支援するのが特定高齢者施策だと思いますので、その部分には、 もう一度混同が起きないように御通知を願いたいと思います。 (辻座長) 何かありますか。どうぞ。 (藤井企画官) 非常に重要なポイントだと思います。一般高齢者施策と特定高齢者施策、それぞれ両 輪になっているものだという趣旨をお話しつつ、やはりそれぞれの目的というものを認 識していただくことが大切だと思いますので、介護予防の担当者会議等につきましても、 今のことも含めて情報提供をきちんとさせていただいて、またそれに沿って御支援など ができるように考えさせていただきたいと思います。 (辻座長) 血清アルブミンの基準値で3.8 、3.5 の話なのですが、今日、資料を持ってくればよ かったのですが、1月末の疫学学会で発表した我々のデータなのですが、仙台市内の70 歳以上の地域住民を健診したデータがありまして、それが5年前に「寝たきり予防健診」 という名称で、介護予防に関わる健診をしまして、その後ずっと介護保険の認定状況を 調べているのです。 そのデータでは血清アルブミン値が3.5 未満の方というのは、1%程度しかいないの です。その方々をずっと追跡しますと、3.5 以上の方に比べて、その後4年間の介護保 険の認定発生率は4倍に上がるのです。非常に高いです。ところが、1%ぐらいしか該 当者がいないというのでは、かなりハイリスクだと思うのです。 そこで、3.6 、3.7 、3.8 とずっと広げてみたのですが、そうすると3.8 ぐらいにな ると該当者が10%ぐらいになります。3.8 以上の方と3.8 未満の方でその後の要介護 の発生率を比べると2倍の差がありまして、統計的にも有意になる値なのです。 ですから、3.8 辺りが妥当な値なのではないかと、この前の学会で発表させていただ いたのですけれども、似たようなデータを鈴木先生もお持ちですね。 (鈴木委員) そうですね。辻先生も実施しておられるように、私どもも70歳以上の高齢者の方は、 介護予防を中心とした健診を組み立ててやっているのですけれども、やはりアルブミン 3.8 で切って、その以下の人と、3.9 以上の人と分けてやりますと、もう明らかに生活 体力等が横断的にも違っておりますし、やはり3.8 というのはかなりいい1つの基準値 かなと思っております。 (辻座長) それでは、植田先生、口腔機能の点でいかがでしょうか。 (植田委員) この候補者選定基準を取り決めるときにも、既に口腔に関しましてはちょっとハード ルが高過ぎて、ある程度該当者はゼロに近い状況だろうと予想されていたのですが、現 実ふたを開けてみて、やはりそういう感じがあって、先ほど鈴木委員の方から御報告が あったように、ある意味本当に現実をすごく見据えた形でもって数字を提示していただ いたと思ってします。今回に関しましては、このような形で是非やっていただきたいと 思います。 あと、実際口の中の衛生状況ですとか、あるいは嚥下機能を推し図る嚥下の飲み込み の検査といったものは、一般医科の先生方を始めとした介護スタッフの方も是非関心を 持っていただきたいという。これは決して歯科の健診事業ではありませんから、当然そ ういった方々をすべて含めて、是非関心を持っていただきたいという意味で、こういう 項目を残していただいて、今後も継続していただくことを是非お願いしたいと思ってい ます。 実際、ちょっと細かい話になりますが、先ほどもおっしゃっていた、医療を優先する ようなところがどうしても介護の現場の方にあるものですから、ちょっと介護現場の方 が萎縮してしまって、なかなか介護サービスというプランを立てづらいといったような ところがありますので、先ほど出ました、決して医療のみ優先というわけではなくて、 支障があった場合にという過程を強調させていただければと思っています。 2点なのですが、配置基準ということで、これは資源を確保するという意味でのこと なのですが、ちょっと基準がなくて、特に小じんまりとしたところではナースの配置基 準のようなものが、何十人に対して何名と決まっていると思うのですけれども、それが ちょっと高くて、特に小じんまりしたところではその配置基準に満たない部分があって、 サービスの提供が十分満たさないのでできないといった声も聞かれることがございます。 3点目は、現実的には書類がかなり繁雑でして、現場の人たちが実際はそういったサ ービス、医療者に対するいろいろな情報提供したい部分があるのですが、どうしてもそ の時間が取れず、書類が繁雑過ぎるといった声も聞かれています。 あと後半の支援をどうしようということは、これはもう現場の方たちの今後の努力を 期待するといった辺りで、我々も含めて努力を積み重ねていきたいと思いますが、今、 言った3点はなかなか現場でも対処し切れない部分であるということで、意見として述 べさせていただきます。 以上です。 (辻座長) 何かございますか。どうぞ。 (藤井企画官) 後半の配置基準、あるいは書類というところ、先生御指摘いただいているように、予 防給付の中でのサービスのことも含めておっしゃってくださっているのだと思います。 今回の介護予防事業の中では、適切な配置ということで実際にやらせていただいて、そ の中で先ほど先生からおっしゃっていただいたように、歯科衛生士等も含めました人の 確保というのが重要だということも、自治体の方からも言われておりますので、そうい ったようなことにつきましても、何らかの支援をしていきたいと思っております。 予防給付の中での配置基準等につきましては、また次回に向けましての1つの課題と して認識しておきたいと思っております。 (辻座長) 大川先生、全体としていかがでしょうか。 (大川委員) 私は医師の判定のところについて意見があるのですけれども、参考資料2−2と資料 3で言いましたら12ページ及び4ページの比較なのですが、これを拝見していましたら、 ちょっと違うのではないかという気がしまして、参考資料の横長の判定区分を拝見しま すと、生活機能低下あり、なしのところも含めて、それから資料3の4ページもそうだ と思いますが、12ページの流れ図を拝見しますと、医学的観点から事業利用の適否とい うのは、生活機能低下がありの後が適否を判定するというふうになっていますので、恐 らくこの内容でいけば、12ページの方が適切に表している流れ図かとも思うのですが、 まずはどちらの方を考えればよろしいのでしょうか。 (辻座長) どうぞ。 (藤井企画官) 申し訳ありません。今、御指摘いただいたのは、資料3の4ページのところの見直し (案)というところと、同じ資料の12ページのところと、参考資料2のところを御指摘 いただいたと思います。 資料3の4ページで申し上げますと、まず一番最初に生活機能低下がありということ を御判断いただいて、その中で、ありなのですけれども、最終的にチェックをしていた だくところにつきましては、ア−(イ)の不適当だというときにチェックをしていただ く。それ以外のものについては、利用が望ましいところにチェックをしていただく。 同じように、生活機能低下がないという場合には、イに直接をチェックしていただく といったようなことを書きぶりとして書かせていただいているつもりでございまして、 それを矢印を付けて書かせていただくと、12ページの該当基準で生活機能低下がある中 で医学的観点から見て利用の適否がOKだという場合には、(ア)にチェックを付けて いただく。あるいは不適当だという場合には、(イ)にチェックをしていただく。同じ ようなことが、参考資料2−2、矢印の向きが違っていて恐縮なのですけれども、一連 同じ内容を書かせていただいているつもりでございます。 (大川委員) 幾つか質問があるですが、1つずつ質問させていただきますと、まず生活機能低下が ないというのは、これは医師の判断は何も入らずに、12ページでいきますと、A〜Fの いずれにも該当しない者が、余り表現は適当ではありませんが、それが自然に生活機能 低下なしというふうに、自動的に判断されるのであって、ここに医師の判断は入らない のではないかという気がするのです。 (藤井企画官) この辺りを総合的に見ていただこうというところなのですけれども、特にお口の中の 所見ですとか、アルブミン値ですとか、あるいは口腔衛生の所見、飲み込みの所見等々 につきましては、医師に御判断をいただきまして、それを踏まえて御判断いただくとい ったような流れを想定させていただいております。 (大川委員) ということは、このA〜Fのいずれにも該当しない場合も、この矢印が生活機能低下 ありの方に行く矢印もあるというふうに考えてよろしいのでしょうか。 (藤井企画官) 実施要領の上では、この辺り御判断をある1つの基準に基づいてやっていただくとい う判断基準をきっちりお示しした方がいいと、その方が混乱が起きないと考えているも のですから、特定高齢者の決定基準に該当している方につきまして、生活機能低下があ ると御判断くださいということをお願いしたいと思っております。 (大川委員)  そうしましたらば、そういうふうに判断するとしても、一番大事なのは生活機能低下 があるというふうに、A〜Fの項目の関係で該当者が出た場合に判定を2種類、介護予 防事業の利用が望ましいか、そうでないかと分けていくということかと思うのですが、 御説明がありましたように、恐らく評点がどうかということは、かなり意識を決定する ところではないかと思うのですが、私も医者ですけれども、どうしても病気のことを中 心として今まで見てきていましたけれども、生活機能という観点でこれから医療従事者 もかなり見てほしいという大きな方向性はあるのではないかと思います。 そのときに、介護保険関係で言えば、もう一つは主治医の意見書には病気の安定性と 生活機能の向上の可能性は両面から見るということも入っているわけですから、流れと してはそれでよろしいのではないかと思います。 まず4ページで話をさせてください。4ページのイの方で生活機能の低下なしという ふうになっておりますけれども、低下なしというのは低下が全くないと普通は取ってし まうのではないかという気がします。以前は、著しい低下はないということであって、 ここで生活機能の低下なしというふうに言い切ってしまいますと、全く何もする必要は ないということになるわけです。 そもそもこのチェックリストを使ったときに、このチェックリストは心身機能と活動 の一部分を見るものであって、ほかの活動参加に関してはもっとケアマネージメントな どでもきちんと見ましょうということになっていたわけですから、このチェック表で問 題がないからといって生活機能の低下がないとは言い切れないわけですから、ここでな しと言い切ることに関しては、ほかの人たちの今後の生活機能向上に向けてのアプロー チをしようという意欲を少しそぐ危険性があるのではないかと思いますし、生活機能と いう考え方自体が非常に誤解されて伝わるのではないかということを、非常に危惧いた します。ですから、低下なしと断定してしまうより、もっと適切な表現の方がいいので はないかと思います。 そもそもイの中の解説として、生活機能の低下所見を認めないかというふうに書いて ありますが、低下所見を認めないのではなくて、ただこのチェックリストで該当しない ということしか示していないわけですから、そういう観点で表現を考えていただければ ありがたいと思います。著しい低下なしでもいいのかもしません。 次にア−(イ)の方なのですけれども、これは医者が不適切だということで、余り介 護予防事業を進めなかった例があるということだと思うのですが、ここのアのところで 2つに選択するときに、実は2つの面があって、リスク管理上どうなのかという面と、 向上させる必要性、可能性があるかという2つの面を医者は判定することになると思う のです。 主にリスク管理の面を考えていらっしゃるのかなと思うのですけれども、こ ういうふうに生活機能のチェック表で低下が認められた場合、対応すべきなのはこの介 護予防事業だけではなくて、本来は一般の医療の中でもっと対応できる面もあるわけで すから、そういう面にもっと医療も関与すべきだというところは、今はすぐに難しいに しても、将来的にはそういう観点はもっと医療の面で、だから、医療の中における介護 予防というところを、今後はもっと進められればいいと思います。 そういうふうに考えると、本当は3種類ぐらいにこのアの中を分けた方がいいと思っ ていますが、余り複雑にするなということと、今の体系を余り崩すなということが基本 方針のようでございますので、ア−(イ)のところは介護予防事業の利用は不適切とい うだけではなくて、本当は医療面でもっと対応する必要があるものも含まれていると思 いますので、少なくとも少し詳しい解説書なりをお書きになるときは、そこのところも 記載を加えていただければよろしいのではないかという気がいたします。 もう一点、医療に関してなんですが、やはり私は医者がどういうふうに関与するのか が非常に大事なところだと思うので、しつこいぐらいに申し上げて恐縮なのですけれど も、医学的理由で一個一個の介護予防事業の利用は不適切というところをチェックして いくことになるだろうと思いますけれども、このチェックが非常に確実にできるような チェックリストなり何なりをきちんとつくっておかないと、むしろマイナスになる危険 性もあるのではないかと思っておりますので、この辺の具体的な活用の手順もある程度 一般化なさった方がよろしいのではないかと思います。 以上です。 (藤井企画官) 工夫をした方がいいという御提案をいただいて、事務局としてもどう変えたらいいの かというのが、具体的なものをいただけなかったので苦しんでおりますけれども、文章 として書かせていただくときに、やはり市町村さんの方で判定表というものに加工して いただく必要がありますので、それで100 %すべてのことを表現できるということにな ると非常に長くなるのかなと思って、こういう割り切り方が不十分だという趣旨だと思 うのですけれども、最終的には今、大川委員がおっしゃっていることと、自治体さん、 あるいは私たちが考えていることは、将来的には同じ方向だと思いますので、例えば以 前生活機能評価のガイドラインなどを出させていただいておりますが、そういうところ できちんと指針を書かせていただいて、それを周知をする努力をさせていただくといっ たような形ではいかがでしょうかというのが、今、私が思いついた先生に対するお答え なのでございますけれども。 (辻座長) どうぞ。 (坂元委員) 私も大川先生の意見に若干賛同するのは、実際にやったときに医学的理由となると、 市町村でいろんな事業をやっている経験から、医学的理由というと医者は非常に広く解 釈してしまうのです。ということで、例えば最初の方に症状の悪化ということを入れて おかないと、例えば治療しているからいいのではと取ってしまう場合もなきにもあらず なんです。よろしくお願いいたしたいと思います。 (辻座長) 津下先生、どうぞ。 (津下委員) 関連してなんですけれども、別紙2のところで、基本健康診査以外のルートを考えて おられるということが案として挙がっているのですけれども、その場合にも医師の判断 を必須といいますか、健康診査以外のルートを想定した場合に、医師の判定の取扱いは どうなっていくのかということがあります。現状は基本健康診査のときに生活機能のチ ェックも行って、医師の判定を行っているということなのですが、今後入口のところを 変えた場合に、医師の目をいつどのように通ることにすべきかを整理する必要がありま す。 現場の医師の意見としては、介護予防の対象者判定をする中で、どのようなプログラ ムの提供があるかとか、現場を知らないまま判断するというのは非常に難しいというこ とです。どのぐらいの事故が起こるのだとか、そういうことを知らないまま判定しなけ ればいけないので、すごくジレンマを感じるということを聞いております。今後、安全 性を重視するということも言うということであれば、どのようなプログラムを提供され ていて、どのようなリスクが想定されていてというような判断基準を明示していくとい うことも一方で必要だろうと思います。 ですから、この医師の判定が生活機能の低下の有無の判定で必須と考えなければいけ ないのかを検討する際には、ほかのルートを考えたときにも考え直す必要があるのでは ないかと思います。 (辻座長) どうぞ。 (竹澤委員) この場合も医療を優先すべきということで御判断されても、一旦フォローして、御本 人にそういうことだけれども、こういう事業があるけれども参加されるかということを もう一回、医療優先といったケースもフォローさせていただいて、そしてもう一回本人 が参加したいということであれば医師に相談するという形を取って、参加していただい ているような状況もございます。 (辻座長) それでは、まとめてどうぞ。 (藤井企画官) 一番最初に坂元委員の方がお話いただきました、実は私、先ほどはしょってしまって、 資料説明をやってないものが1つあるのですけれども、参考資料3というのをお手元に 置いていただけると幸いなのですが、これもちゃんと御説明してお諮りするべきものだ と思いますが、保険事業の実施要領新旧対照表と書いてございまして、本日御議論いた だいている内容を実際に自治体の方に御連絡を申し上げて、これに基づいて今回のチェ ックリスト、あるいは今の基本健診に入っていますので、それをやってくださいという ものが案なのですけれども、そこの2ページをごらんいただきますと「ア−(イ)医学 的な理由により次の介護予防事業の利用は不適当」と書いてございます。ここまでは同 じなのですが、その下に生活機能の低下はあるが、心筋梗塞、骨折等の傷病を有してお り、(1)、これは先ほど坂元委員がおっしゃったそのままなのですけれども、介護予防事 業の利用により当該傷病の病状悪化のおそれがある。(2)、介護予防事業の利用が当該表 病の治療を行う上で支障を生ずるおそれがある、等の医学的な理由により、介護予防事 業の利用は不適当ということを書かせていただいて、周知をさせていただいたらどうで しょうかということを、私の説明が不足しておりました。こういうものも含めて、今の 御判断でよろしいかどうかということをお願いいたしたいと思います。 もう一つ、津下先生の方からお話がございました、実際に介護予防事業をやる上で、 確かにリスク管理的な観点から今回判定をお願いしているという側面は非常に強うござ います。先ほど大川先生もおっしゃっていたのですけれども、医師がごらんになられて、 やはりこの方は生活機能がこれからどんどん下がってくる可能性があるから、参加した 方が望ましいですよという方も当然いらっしゃると思いますが、そこで一般高齢者施策 と特定高齢者施策というものがありまして、特定高齢者につきましてはこの基準で、あ るいはそのほかでも実際に医師から、医師だけではないかもしれませんけれども、この 基準では該当しないけれども取組が望ましいという方は、一般高齢者施策の中でどんど ん介護予防事業としてやっていただくといった方法があり得るのではないかと思います し、むしろそういうふうにやっていただいた方がいいのではないかと。そのときに、一 般高齢者施策としてやっていただく中で医師の判断が必要かどうかといったようなこと につきましては、それぞれの対象者となる方の状況などにつきまして、自治体さんに御 判断いただくことも必要かなと考えております。 (辻座長) よろしいでしょうか。大久保先生、何か御意見ございますか。 (大久保委員) 特にはないのですが、今回25%にして、最終的に5%になるというのは、どこかで一 回検証されるのですか。 (藤井企画官) 実は、今回4月の施行を考えておりますものですから、一応検証はこれからする予定 はないのですけれども、申し訳ありません、これは鈴木先生とも御相談させていただき ながらだったのですけれども、いろいろな基準を実際の集団で、というのは具体的に言 いますと自治体さんの方でお持ちになっているチェックリストで電算化されているもの などに当てはめていただいたりという作業を何度か繰り返しておりまして、その結果鈴 木先生がさっき御説明いただいたような数字が、我々としてもそれなりに非常にリーズ ナブルな数字だということを考えさせていただいている次第でございます。 今の基準を決めていただいた後に検証するかというと、ちょっと時間的な余裕がない ということです。 (辻座長) ほかにどなたか、いかがでしょうか。 さっきの大川先生のお話で、現行では著しい生活機能低下というのがあって、今回の 改正案ではその著しいがなくなっているわけですけれども、このA〜Fのいずれも該当 しないからといって、生活機能がぴんぴんしているかというと、いろんな多様な集団で すから、やはり落ちている方はいらっしゃるわけで、あえてこの著しいという言葉を今 回削除した理由というのは、何あるのでしょうか。 むしろ特定高齢者という観点に立つ限りは、ハイリスクというのがつくわけですから、 著しいというのがあってもいいのかなと。先ほど大川先生のお話を伺いながら思ったの ですけれども、いかがでしょうか。 (鈴木老人保健課長) 多分、言葉の定義と受け方の問題なのかもしれないのですが、著しいということを申 し上げた場合に、何をもっと著しいと言うかというところが、やはり受け手によってか なり違う場合がございます。特に資料3の12ページの右側の現行というところですと、 著しい低下がありか、著しい低下がないか、どちらかになっていますので、普通の程度 の低下があった場合どうするのかというところが、かなり難しくなってきますので、そ れは著しい低下というか、低下というかはこちらの御議論で決めていただければいいの ですが、今回は何をもって条件に当たるか、当たらないかというところは明確に、A〜 Fまでの条件のいずれかに当たるものということを示させていただいて、それは先ほど 大川先生の御指摘にもありましたが、単にチェックリストのことだけではなくて、口腔 機能とかいろんな指針も含めてやっていただきますということにさせていただきました。 あと文言は決めだと思います。このA〜Fの低下を著しいと言うのか、言わないのか というだけの話です。ただ、単に右側の書き方だけだと、ちょっと現場で誤解が生じる おそれがあるので、左側のように変えたいということであります。 (辻座長) この辺も含めて何か御意見ありますか。よろしいですか。 それでは、基準の方も大分議論が出てきましたけれども、今度は資料3の10ページの 別紙2に戻っていただきますと、今まで主に緑の矢印の基準の話をしていたのですが、 その前のブルーの辺り、把握の機会を広げていく、特に6ページになりますし、あるい は実際に特定高齢者と決まった方の中で参加を促していくという右側の赤い矢印の辺り、 これは具体的には7ページの方に今後のことが書いてあるわけなのですが、そういう意 味では6ページ、7ページに戻っていただきますと、基本チェックリスト実施率の目標 を高めていくのだということが6ページに書いていますし、7ページでは決定者の介護 予防事業への参加率の目標を高めていくということが書いてあるわけなのですが、今回 の基準を変えていくという中で、単に基準を緩くしただけで参加者が広がるかというと、 必ずしもそうではなくて、むしろ基本チェックリストの実施率を高めていく、そしても っと虚弱な方々、ハイリスクの方々までアウトリーチも、先ほど高橋先生おっしゃって いましたけれども、いろんな努力をして地域の中でどちらかというと潜在しがちなニー ズを掘り起こしていく、あるいは医療機関とかと連携していく、そういったことからこ れから重要になってくると思います。 もう一つは、7ページの方でいきますと、参加者に魅力的なメニューをいかに開発し ていくか。あるいはそういった情報提供をいかにしていくかということが非常に重要に なってくると思うですが、その辺を含めて、この1年弱の御経験も含めて先生方から御 意見をいただければと思うのですが、いかがでしょうか。 高橋先生、その辺でもう一回いただけますか。 (高橋委員) やはりプッシュとプルという議論、座長のおっしゃるとおりで、さっきから申し上げ ていることをもう一度なぞるような言い方をして、大変書生論的な言い方をして恐縮な のですが、介護予防と介護給付の事業をどうも別々にお考えの自治体が多いのではない かという印象を持っておりまして、先ほど和光市の例を引き合いに出すと、これはもう 平成14年にはっきり介護予防前置主義というふうに言っているのですが、要するに介護 給付と介護予防の関係をきちんとリンケージさせるという政策的なスタンスをきちんと 決めているわけです。そうすると、例えばあそこでやっているのを拝見していると、国 の基準はあるけれども、保険者としてこれでカバーできないものがあるということにな ると、市町村特別給付とか、そういうことを活用して和光基準を設けてネットワークを 組むという政策判断をして、そのことが結果的に介護給付費の適正化、勿論クォリティ ー・オブ・ライフ、その上では高齢者の方々の生活の質を維持するという大目標がある わけですから、そこら辺の政策的な取組みのロジックというか、そこら辺をきちんと持 っていただかないと、これは幾ら緩めても同じことになる。 それはプルという方で言えば、どういう機会を提供するかということに関しては、介 護予防拠点、あるいはさまざまなプログラムをできるだけアクセス可能なところにどう 配置するかという、サービス提供体制の整備とリンクしていますから、和光市で面白い と思ったのは、例えば小規模多機能拠点に土日に独自事業を打って、特定高齢者の予防 事業もセットで委託する。そうすると小規模多機能も回るようになる。これもサービス 政策だと思うのです。 和光市の例えばかり申し上げているのは、たまたまそこを知っているからだけれども、 全国的にいろんな努力が行われているはずで、それを丁寧にフォローして、介護予防と 介護給付というものをリンクさせながら、そしてこれははっきりしているのは、和光市 でも3年で結論が出てしまったわけで、これは大川先生がおっしゃったように生活不活 発病については適正なプログラムを用意すれば、確実に認定率を下げられるし、しかも そのことをクォリティーライフの向上につながるのだということは、市町村の皆さんは まだ確信を持っておられないところがあるのではないかという印象があって、そういう 政策的フレームワークの中で、個々の事業をどう回していくかという努力を是非、そこ ら辺のアピールを国としてやっていただかなければいけない。やや書生論風の言い方で、 大変恐縮ですが、ある種の原点だと思うのです。国が決めたから、どうだこうだという 話ではないということをもう一度改めて確認したいと思っております。 (辻座長) ありがとうございます。 ほかに御意見いただけますか。石田さん、どうぞ。 (石田委員) 今回、1年間の地域支援事業の様子を、自治体中でいろいろ見させていただいた中で は、比較的うまく行っているところというのは、高橋先生がおっしゃったように、地域 支援事業の枠組みだけではなくて、幅広に実施していって、今までの既存資源を活用し ているところが目立っていいと思っています。 今回特定高齢者範囲が非常に狭かったので、地域支援事業としては非常に小さく見え るけれども、割と工夫しているところは多いので、そういった体制が既にあるというこ とは知っておく必要があるのだろうと思います。 私は、地域支援事業でやることの意義は、地域支援事業でやると平仄がそろえられて、 自治体間比較ができる。あるいは効果がよく見えるという意味では、例えば稲城市だけ 一生懸命やってうまくいったといっても、それが本当に効果があるかは並べてみないと わからないという意味では、地域支援事業の中でやる必要があると思います。 3点配慮が必要ではないかと思います。1つは、既に1年経過していますので、包括 支援センターで介護予防ケアプランの作成が一部進んで、特定高齢者についても実施が されていて、なお新予防給付の対象者についての介護予防ケアプランの作成が進んでい て、現行体制はそれを前提に組んでいます。これが0.14%から5%になるということは、 30倍を超える規模の対象者が発生する。これは、ある意味では介護予防ケアプランの作 成についての工夫も必要だと思いますし、包括支援センターの体制整備も、今以上に我 々には求められるということです。 次に、予算の作成提案などが進んでいる中で、か なり大がかりな変更が余儀なくされるという不安があります。 3点目には、介護予防事業の設定が既に進んでいて、現在のボリュームで既に予算化 もされ、事業設計もされています。これについては、人的確保も含めて相当体制の変更 が求められるので、そういった点での配慮、あるいはプロセスの例示、うまくいってい る自治体の事例の告知なども含めて支援が相当必要なのではないかと思います。 (辻座長) ほかにどなたかございますか。竹澤委員、どうぞ。 (竹澤委員) 1年間通じてのうちまとめなのですが、こういう予防事業をやるのを市民が一番喜ば れるのは、身近なところでやるというのは非常に効果があって、参加も高いと思ってい ます。 それから、これは年間通じていつでも参加できる体制が決めたらいいと思います。 評価の件ですが、今年度1年やってみて、余り体力的とか運動器の評価は余りないの ですが、実は精神的な部分はみるみる、だれでもわかるなと、家族も評価するぐらいで、 非常に評価がよかった面がうちも出ています。 特にあと大切にしているのは、教室を終了した後に継続的に支援しないと、参加して いる間はいいのですが、あと終わったとまた閉じこもるということがありますので、後 のフォローも大事にしていきたいと思っています。 以上です。 (辻座長) ありがとうございました。 大渕先生、どうぞ。 (大渕委員) 運動器の立場から1つ提案なのですけれども、まず青いところにつきましては、私た ちがいろいろ経験していて思うのでは、体力測定を実際に、皆様方にもやっていただい たと思いますけれども、片足立ちなどをしますと、ふだん気がつかないところが気づく というところがかなり強いと思います。というのも、老年症候群ですとか、生活不活発 病というのは、幾つかの原因が重なって出ていますので、余り本人としては意識してな いというもともとの特性を持っておりますので、そういったことで気づかせるというの には、非常に体力測定というのは役に立ちますので、ここの中には出てきていませんけ れども、運動器だけでなくて構わないと思うのですけれども、そういった客観的なチェ ックができるような体制をつくるということが1つ提案です。 それから、赤い部分につきましては、特に今回の特定高齢者の低いレベルの方の場合 ですと、自分に対する自信をなくしていって、このままでいいよといって断わる方が多 いと思うのです。今までいろいろやってきたけれども変わらないとか。そういう期間が 長い方が多いと思われます。その方たちについては、自信をつけてあげるということが 一番なのですけれども、そのために同じ年ごろでやっている人たちが実際に元気になっ た事例ですとか、とかく私たちは公平に御説明しなければいけないと思って、ポジティ ブな面とネガティブな面と等価で御紹介しますけれども、どちらかというとこういう方 々はデメリットを非常に感じている方が多いので、もうちょっとポジティブの方を強調 するようなキャンペーンを進めていくべきではなかろうかと思っております。 以上です。 (辻座長) ありがとうございました。 植田先生、どうぞ。 (植田委員) 青色の矢印のところで受診を増やすということなのですけれども、口腔に関してはな かなか、そうは申しましても一般のスタッフの方々が関心を示しにくいという点もあり まして、その点は歯科の診療所が全国に六万数千津々浦々までありますので、医師の診 療時におけるチェックという矢印の欄がありますが、よければそういった歯科診療室を 思う存分活用していただいて、そこからの情報提供というものを受け入れられるような 体制づくりも是非活用していただければありがたいと思っています。 (辻座長) ありがとうございました。ほかに何かございますか。 (大久保委員) 緑のところで、基準はこれでいいのですけれども、特定高齢者という概念があって、 それをどうこのリストによって同定していくかということですが、今回基準を緩めたと いうことは、ある意味で感度を上げたわけで、ということは逆に特異度を下げたわけで す。つまり、特定高齢者ではない人が入ってくる可能性があるわけです。この事業の中 には介護予防プログラムの評価というものがありますが、今回評価として特定高齢者で はない人が入ってくる可能性があり、そういう人たちを含めた評価をする上で、当初の 厳しい基準での評価と今回少し緩くなった上でのプログラムの評価というのは、どちら 側にシフトするのかなと。つまり軽い人が多く入ったことによってプログラムの評価が 上がるのか。それとも、軽いからこのプログラムをやっても実は余り変化しないのか。 つまり、この緑を入れることによってプログラムの評価が変わってくるので、少し赤 や青を変更するのとは違うと思いました。 (辻座長) そこが、実は、まさにこの検討会の最大の任務なのではないかと思います。そういっ た意味で、今日はほとんど基準の話だったのですが、資料1のように継続的評価分析と いうのがあるわけなのですけれども、今回の見直し前から調査対象になっている方々が いるわけですし、また、見直し後も追跡していくわけです。 ですから、もともとの基準で把握された方々と、これからの基準で把握された方々と、 それぞれを追跡していくことは、まさにこの検討会の課題であり、これから1年とか2 年かけてやっていくべきなのではないかと思うのです。 また、基本チェックリストが完璧なものかというと、そうではないと思うのです。今 後も修正の余地は十分あると思いますし、そのためのデータもこの検討会を通じて出し ていくべきです。あるいは先ほど鈴木先生からも御紹介をいただきましたけれども、こ の基本チェックリストをつくるに当たってパイロット調査を全国の12市町村でさせて いただいて、その1年後の状況についても今回、鈴木先生の方で再調査していただいて おりますので、予測妥当性などもこれから詳しく見ていく中で、先生の今のお問いかけ というのは、まさに検討会の中心的な課題そのものだと思うのです。 どうぞ、鈴木先生。 (鈴木委員) 今の大久保委員と辻座長のやりとりと絡むことなのですけれども、実は今回国のこう いった目標の設定でどういうふうに基準を変えていくかということをやらせていただい て、その中のシミュレーションや、実際の数値分析の中で気づいたことですが、今回は 基準を緩めたように見えるのですけれども、一番重要なことは、本来特定高齢者に当た るべき人に正しくスポットが当たっていないということなのです。基準を緩めたからい いだろうと、いうのではなくて、最初に辻先生がおっしゃったように、緩めたように見 えるけれども、大事なことは特定高齢者となるべき人は漏らしてはだめだというのが大 事なことだと思うのです。 本来、悉皆調査でやると、13%以上の人が特定高齢者として当たるはずなのに、現実 には5%ぐらい、半分以下になっている。チェックリストの実施率も23%という数字で、 そんなに高くはないのですけれども、要は23%であっても、先ほど分けた最もハイリス クの第4グループですね。そこに全員が当たっていれば、実はこれは何にも問題のない 数値なのです。ですけれども、現実には、そこのところの抽出比率が一番少なくて、健 康な人のグループから一番多く出ているということなのです。勿論、実施率を100 %に すれば、皆さん全員出てきますけれども、例えば50%という今回の目標値であっても、 リスクの高い人の方にできるだけ地域なり自治体が頑張って当てていかないと、枠は広 げました。でも結局、特定高齢者として出てきた方は少なくって、特異度がどんどん下 がっていってしまうということが起きてします。 となると、今回、できるだけ理想的な形になるようにということで、数字の設定や基 準というのは緩和されましたけれども、やはり一番の根幹は、特定高齢者になるべき人 を地域の中でどうやって早く見つけていくかという一番根源的なところが問われている んだろうと思います。コメントです。 (辻座長) ありがとうございます。時間も大分迫ってきましたけれども、全体を通して、あとお 一人、お二人御意見あれば、いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 大川先生、どうぞ。 (大川委員) 介護予防ということなんですが、この1年間で、ある意味で、かなり二極分化したの ではないかという気がするんです。 1つは、今まで高橋先生、ほかの先生からも出たように、それぞれの地域で非常にい い取り組みをしていらっしゃるところがある。だけれども、片方では、例えばこういう チェックリストで挙がった人にだけ、どうしたらいいのかと考えていらっしゃるという ふうに、非常に極端に見えましたけれども、そういう2つの傾向があるんではないかと 思います 1つは、先駆的な取組みはどしどし紹介していただきたいんですが、そのときに単な る紹介ではなくて、こういうふうにやっているから、こう効果が上がったというのは、 分析をした上で、ちゃんと紹介をしていただかないと、何が適切なのかということの一 般化はなかなか難しい点があるので、そこは是非お役所の方でやっていただければと思 います。 それに関係することですけれども、予防重視に関しては、たくさんの先生方と、いろ んな委員会で御一緒させていただきましたけれども、十分に議論を尽くして、理念のと ころを徹底して議論したんだと思うんです。むしろ、具体的なやり方よりも理念に関し て、何年もかけて議論していって、生活機能の向上、そのときにはもっと生活自体を見 るんだとか、社会的な役割だとか、周りがどういうふうに関与するんだとか、そういう ことによって、状態がどんどん悪くなるということをかなりきちんと議論したのに、ど うもそれがどこかに飛んでしまっているような気がしているのでありまして、座長から も首を縦に振っていただいて、非常にありがたいんですが。 やはり、そういうところを地域の行政の方たちにも、実際にこの事業に関与している 方たちにも、お医者さんにも、それから何よりも一般国民にもっと徹底してわからせる 努力というものは、まだまだ余地があるのではないのか。やはり自助・共助によっても っとよくできる介護予防のシステムはできるんではないかというところがありますので、 今回の会議というのは、今日の論点は重々わかっているつもりで、恐らくほかのところ でやっていただくとは思うんですけれども、やはりきちんとした介護予防の理念のとこ ろをもっと周知徹底するということは余地があると思いますので、是非それはやってい ただければと思います。 もう一点、やはりケアプランというところがきちんとしなければ、幾ら抽出しても、 それに何をやって、どの程度効果が上がっているのかがはっきりしなければ、ここの選 択のところだけ議論しても、余り実がないのではないかと思いまして、このケアプラン の内容に関して、重点化、効率化と書いてある単語には、結構深い意味があるのではな いかという気も実はするんですけれども、これについて十分に議論がされて、いいケア プランが立つように、いいんだけれども、かといって、余り必要な高さばかりを考えて いると、それで個別性ばかり重視すると、介護支援専門の委員の方たちも大変だという こともあるでしょうから、ある程度パターン化するということも必要なのかもしれませ んし、その辺も御検討ください。 ちょっとしつこいようで申し訳ありません。ケアプランに関して、非常に重要なこと を申し上げたいのですが、やはり支援計画書の右の下の方に当事者の同意というところ がありますが、その同意に関しては、十二分に行われているかどうかということに関し ては、やはり十分な注意を払っていただきたいと思っております。 以上です。 (辻座長) ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。 それでは、特定高齢者選定の決定方法等の見直しにつきまして、ただいま御議論をい ただいたとおりでありますけれども、この内容で検討会としても、若干の文言の修正は あり得るといたしましても、大枠で御了解いただいたと考えてよろしいですか。 ○(「はい」と声あり) (辻座長) どうもありがとうございます。 それでは、本日の審議は、この程度に致したいと思います。どうも大変貴重な御意見 をいただきまして、ありがとうございました。 事務局から今後の検討会のスケジュール等を御説明いただけますでしょうか。 (鈴木老人保健課長) 今日は、大変御熱心な御討議をありがとうございました。 今後のスケジュールということですが、今日の1番の資料に出てまいりました継続的 評価については、先ほどスケジュールも出てきましたが、20年の夏から秋ごろに評価を するということでございますので、その前ぐらいに、少し方法も含めて御議論をいただ きたいと思います。 それから、今日の中心的な議論をいただきました評価基準につきましては、この会で という意味ではないんですが、今日は、ほぼこういう方向でという御議論をいただきま したので、パブリック・コメントがございますけれども、情報提供だけは市町村の方に させていただいて、早く対応していただけるようにしたいと思います。 あと、私の方から2点ぐらい申し上げたいんですが、1つは、今回、理想の悉皆調査 の状況と、やはり現実との間で若干ギャップがあったということを、政策担当者として も認識すべきだろうということで、ただ、現実のままで行くのではなくて、やはり現実 を少しでも理想に近づけるということが必要だということが1点。 もう一点は、スクリーニングをすることが大事なのではなくて、鈴木先生もおっしゃ いましたが、やはりその後、プログラムに参加していただいて予防していくということ が大事だと思いますけれども、是非、我々の方も情報提供も含めて、分析も含めてさせ ていただいて、心したいと思います。 本日は、誠にありがとうございました。 (辻座長) ありがとうございました。それでは、本日はこれで閉会ということにいたします。 どうもありがとうございました。 − 以 上 −                                                          照会先                          老健局老人保健課                           岩間(3959)、右田(3946) 1