07/02/26 看護基礎教育の充実に関する検討会第8回議事録 照会先:医政局看護課 岩澤(2599)柴田(2599) 電話:03−5253−1111                  直通:03−3595−2206 第8回看護基礎教育の充実に関する検討会 日時 平成19年2月26日(月) 14:00〜 場所 17階専用第15会議室 ○柴田指導官 ただいまから第8回「看護基礎教育の充実に関する検討会」を開催 いたします。委員の皆様方におかれましてはご多忙にもかかわらず、当検討会にご 出席いただき、ありがとうございます。なお、本日は南委員よりご欠席との連絡を 受けております。それでは座長、議事の進行をお願いいたします。 ○遠藤座長 早速、議事に移りたいと思います。第7回の検討会でカリキュラム改 正案についてご議論をいただいたわけですが、本日は前回までにいただいた意見に ついて検討を深めるとともに、看護教育における教育及び実習指導者の資質につい て、ご議論をいただきたいと思います。これについては新たな課題となるかと思い ますが、限られた時間ですので、建設的なご議論がなされるよう、ご協力いただき たいと思います。それでは、最初に事務局より資料の確認をお願いします。 ○看護課長補佐(岩澤) それでは、お手元の資料の確認をお願いします。議事次第、 検討会メンバー、座席表、資料1は「看護師教育に関する資料」、資料2は「保健師 教育に関する資料」、資料3は「助産師教育に関する資料」、資料4は「保健師・看 護師統合カリキュラムに関する資料」、資料5が「助産師・看護師統合カリキュラム に関する資料」、資料6は「保健師・助産師合同カリキュラムに関する資料」、資料 7は「教員実習指導者及び実習環境についての資料」、資料8はこの検討会の「報告 書骨子(案)」です。参考資料は「看護師等養成所の運営に関する指導要領」です。 そのほか前回の議事録(案)を配布しています。乱丁、落丁がございましたら事務 局にお申し出ください。  そのほかに菊池委員より提出の「2006年看護教育基礎調査速報の概要」がありま す。 ○遠藤座長 かなりいろいろな資料が出ておりますが、前回、既にご議論いただい て宿題になっていたところを、一部修正をして出しているものもありますので、内 容について事務局より説明をお願いしたいと思います。 ○看護職員確保対策官(小野) 資料1〜6をご説明いたします。資料1〜3はそれ ぞれクリップ止めしていますが、前回のワーキンググループリーダーの先生からご 報告いただいた看護師、保健師、助産師それぞれの改正案について、前回の議論を 踏まえて修正したもので、赤字が修正の箇所になっています。  資料1の全体の看護師教育に係る改正(案)です。資料1−1では、前回との相 違点は2点です。1つは、前回は看護師の指定規則の改正案について、基礎看護学 をほかの専門分野と独立させた分野とするかどうかということで、2案作成してお りましたが、これについては、このようなかたちで独立させた分野としたほうがよ ろしいのではないかと考えて1つの案に絞っています。もう1カ所は、前回は備考 欄を設けて、そこに基礎看護学と統合分野で含む内容それぞれを列記していました が、そこの取捨選択に明確な理由がなかなか難しく、考え方としては指導要領に明 確にされていることから、備考欄を削除しています。     資料1−2は、特に変更はありません。  資料1−3の「看護師等養成所の運営に関する指導要領」ですが、右側の上から、 まず専門基礎分野の「人体の構造と機能」の留意点は、前回のご指摘を踏まえて、 「臨床何とか学」という表記ではなく、「臨床で活用可能なものとして学ぶ内容と する」と修正しています。その下の「基礎看護学」の部分の留意点については、 前回は「看護学総論」としていましたが「看護学概論」「援助技術論」を「看護技 術」と用語の訂正をしております。次の頁の下ですが、前回議論した単位数を基に 計算した改正後の時間数については3,135時間ということで、現行に比べて240時間 の増になっています。  資料1−4の「技術項目と到達度について」は特段の変更はしておりません。以 上が看護です。  次は資料2の保健師のグループです。資料2−1は、前回示したものに保健師と 看護師教育を併せて行う場合の単位数を括弧で入れています。これは現行も入って いるものを新たに改正案にも加えたものですが、それぞれ看護師教育との重なりを 考えて、地域看護学については合計12となるところを10単位で、「保健福祉行政論」 は4単位となるところを2単位に、合計22単位で、26−4の22単位としておりま す。もう1カ所は備考欄の用語の修正で、前回は「継続訪問」としていたものを、 このような表現に直しております。  資料2−2は特段に変更はありません。  資料2−3です。右側の下にある臨地実習の点は、先ほど申し上げたことと同じ 意味での用語の変更です。右の下に時間数について、看護と同様に計算をして850 時間ということで、現在より175時間の増となっています。  前回はこれ以外にも「保健師教育の技術項目と卒業時の到達度」を配布しました が、先生からご説明いただいたとおり、暫定版で、今後内容について検討を進めて いるという整理にさせていただきましたので、今回は配布していません。  資料3−1の助産師教育です。これは前回示したものに、同じく助産師と看護師 の教育を併せて行う場合の単位数を書き入れています。特に現行と変更なく、 「基礎助産学」の単位数を1単位減らして、合計23単位を22単位にしています。  資料3−2は特段の変更はありません。  資料3−3は、右下に2カ所あります。これはほかと同様に合計の時間数の765 時間を入れているのと、右下に前回のご指摘を踏まえて、手引きの改正案の用語の 修正をしています。  資料3−4は特段の変更はありません。  資料4です。これは保健師・看護師を統合カリキュラムで運営している養成所の プログラムの改正案です。現在10校で採用されています。右側の改正案を上から説 明しますと、最初の「人間と生活、社会の理解」と専門基礎分野の「健康支援と社 会保障制度」は、看護のほうの用語の修正を踏襲したものです。「健康支援と社会保 障制度」の単位数の増ですが、これは保健師教育で、「保健福祉行政論」の単位数が 増えていることを踏まえたものです。  統合分野ですが、まず「在宅看護論」と「地域看護学」の内訳が赤字になってい ます。これはちょっとややこしいのですが、今までは専門分野の「地域看護学」で、 保健師の「地域看護学」と看護師の「在宅看護論」を併せて表記していましたが、 在宅と地域看護学をそれぞれで必要な単位数を実施するということで独立させて表 記しています。単位数については、左側の専門分野の「地域看護学」の実習ではな いほうが14になっていますが、右側でいきますと、実習ではない部分について、「在 宅看護論」が4、「地域看護学」が2+8で10で、14単位と変わっておりません。  実習については、「地域看護学」の臨地実習が左側では5単位となっていますが、 保健師の実習を増やしている関係上、右側では臨地実習の「在宅看護論」が2単位、 「地域看護学」の実習が2+4で6単位、合計8単位になっていますので、5から 8に3単位増えたということになっています。  もう1つ、看護師のほうで「統合分野」を設けた関係上、その分、右側に統合科 目と講義、演習が4単位、実習3単位で7単位の増となっています。合計単位が111 から122ということで、11単位の増となっています。それをレビューしますと、専 門基礎分野の1単位の増、あとは「地域看護学」の実習の3単位の増、「統合分野」 の7単位の増で、合計11単位の増となっています。  資料5です。これは助産師と看護師を統合カリキュラムで運営する養成所に該当 するためのプログラム改正案です。実は現在採用されている学校はありませんが、 規則上、作成することになっていること、また、将来的にはそういった学校も出て くるかもしれないというものです。右側は改正案です。右側の上のほうの用語の修 正は先ほど説明したものと同じです。「地域母子保健」の1単位の赤字の部分ですが、 「地域母子保健」1単位と、いまは統合分野のほうに移っている「在宅看護論」の 4単位について、1+4の5を、現行の専門分野の上の欄の「地域看護学」の5単 位で、1と4をやっていますので、それをばらけさせただけです。「助産学」9単位 の赤字になっていますが、これはちょっとややこしく、現行の「助産学」は6+1 で7単位のものを8単位に1単位増やしていることと、あとは「地域看護学」の部 分が1単位増えて9単位となっています。  統合分野の赤字の部分は、「在宅看護論」については左側の現行の「地域看護学」 に含まれているのを取り出して明記したもので、特に単位数は増えていません。ま た統合科目(仮称)については、看護師のほうで4+3で7単位となっているもの を、そのまま増やして、合計で8単位増えており、時間数は285時間の増となって います。  資料6です。保健師と助産師を1年で両方教育している養成所が2カ所あり、そ この合計時間がどうなるかを単純に計算したものです。これは運営上、何かしらの 取り決めがあるわけではなく、2つの表のうちの上の表は、そのような運用をして いるところがあるということです。単純に保健師・助産師の合計時間を足すと1,395 時間になり、それが同様の計算をすると1,615時間になります。参考で示している のが、そのようなカリキュラムでやっている2つの養成所の現在の教育の時間数は こうなっているということです。以上で説明を終わります。 ○遠藤座長 今までは議論をする際に、看護師、保健師、助産師、それぞれを分け ましたが、本日は統合カリキュラムの問題もありますので、看護師、保健師、助産 師をまとめてご議論いただければと思います。とりあえず、ただいま事務局から報 告のあった内容は前回の議論を踏まえて修正したものです。ご意見ではなく、ご質 問があれば、まず承っておきたいと思います。 ○羽生田委員 看護師の2年課程のカリキュラムはどうなるのですか。 ○看護職員確保対策官 2年課程のものについては、今回ご議論をいただいて、後 に事務的に整理したいと思っています。 ○羽生田委員 3年課程の上に見合って、整理するということですか。 ○看護職員確保対策官 はい、その方向です。 ○遠藤座長 ほかにご質問はございますか。それでは早速、内容についてご審議い ただきたいと思います。前回、基本的な骨格については議論をし、文言等々の指摘 もいただきましたので、それを修正いたしました。そこで、内容および文言の問題 が1つあるかと思います。  もう1つは、既にお話が出ましたように、時間数がかなり増えていますので、こ の時間数について、どう考えるかということも1つの議論の対象になるかと思いま す。どうぞご自由にご発言ください。 ○羽生田委員 前回はワーキングチームが検討された結果をご報告いただいたとい うことで、私のほうからは特にコメントはしませんでした。その結果に基づいて、 養成所を抱えている医師会としては、現在、全国の養成所がどの程度このカリキュ ラム増に対して対応が可能かということで、先週意見を出してくれとお願いしたと ころ、かなりのところから新たなカリキュラム増に対する意見が出てきました。  意見の全てが、「カリキュラム増をそのまま受け入れることは不可能である」とい う回答でした。現在の状況の中から、専任教員の数、あるいは実習病院の確保等々 が非常に厳しい状況の中で、実習も含むカリキュラム増に対して、とても対応しき れないということで、非常に強く言っている学校については、「このまま養成を続け られるかどうかが不安である」「場合によっては閉校も考える」という非常に厳しい 意見が来ています。あるいは養成数をかなり減少するとか、非常に厳しい財政状況 の中で学校が運営されているわけで、そこは国公立とは全然違う、いわゆる運営と いう面での金銭的な補助がほとんどないなかでやっているわけです。  大学が増えれば養成所の専任教員も増えるという話も当初はありましたが、大学 が増えても専任教員はほとんど増えない状態でずっときてしまいましたので、実際 に専任教員自体を探すのも難しい。そこへもってきて、今回の看護基準の改定によ り、看護師すらいない状況が生まれてしまったわけです。その中でまた新たな専任 教員を探す、あるいは専任にするためには教員養成講習を受けさせなければならな い。もちろん時間的にも金銭的にも非常に負担を強いるわけです。いま医師会立の 学校で、学校だけで運営が成り立っているところはほとんどなく、医師会の本会か ら補助をして学校運営をしており、少ないところでも数百万円、多いところでは 6,000万円ぐらいの補助を学校に出して運営しているという状況です。これだけのカ リキュラム増でもかなりの影響があります。現在のカリキュラムの中でも、もう少 しやる方法があるのではないかという意見が、本日までファックス等で来ておりま す。それをまとめますと、今のようなことが実際の現場からあがってきたというこ とです。その辺についても皆様方に議論を詰めていただければと思います。 ○遠藤座長 早速、時間数の増加の問題が指摘されましたが、ただいまのような養 成所の抱えている実状が報告されました。 ○文部科学省医学教育課長 指定規則は文部科学省と厚生労働省が共同で示してい るもので、改正案について、看護系の大学、短期大学の関係者の方々にどのような 対応が考えられるのかということについて意見を伺うという方向だということを前 回のこの会議でもお話しました。前回以降、いろいろな関係者から伺いますと、い くつかの意見が出てきました。意見としてある程度集約できるものもあると思って、 今日は情報提供させていただきたいと思います。  まず1点は、保健師、助産師、看護師についての指定規則について新たに追加提 案されている教育内容については、看護学教育の充実を図るという観点から、「基本 的に同意できる」という意見が多々ありました。  一方で、短期大学あるいは大学で養成される看護師あるいは保健師、助産師とい うことですので、「自ら考え、行動できる豊かな人材を求める」ということに鑑みれ ば、指定規則に関して、基本的な考え方として、「各大学がそれぞれの大学の独自性 や大学教育としての教育内容を確保することを妨げないように」「指定規則によって 規定される総単位数については、是非最小限度の範囲にとどめていただきたい」と いう意見が多々ありました。  特に、羽生田委員の意見と重なる部分ですが、臨地実習の単位については、その 単位が増加することになれば、現実に年間35週、4年間の授業期間の中で行うこと が困難になる可能性があるということで、「臨地実習の時間を増やすことについては、 極めて慎重にお願いしたい」という意見もありました。  もう一点は、「改正案で提案されている学習の順序性、教育方法などについては、 それらが意図とする内容については、十分受け止められるものだ」と考えている方 が多い一方で、「順序性や方法について各大学が独自に取り組めるように柔軟な対応 ができる仕組みにしていただきたい」という意見もあって、大学教育の中で基礎看 護教育を行う観点からは、さまざまな柔軟性もお願いしたいという意見がありまし たので、ご紹介したいと思います。 ○菊池委員 いまの医学教育課長のご発言は、大学、短大の教育であれば、自ら考 え、行動できる学生を育てて看護師にするというお話でしたが、これについては、 もちろん私も賛成です。看護師という職業を考えたときに、仮に養成所であっても、 どこで養成されようとも、免許を取ったあとも継続学習をして自らの質を高めてい くことが必要になりますから、大学、短大に限らず養成所においてもそういう資質 を育てていくことは大事なことではないか、ということを意見として申し上げます。  看護の教育の実態という観点から、私は調査結果の速報を出していますが、この 結果を見ますと、今後、看護師に期待される役割を考えたときに、ワーキンググル ープで検討してくださった内容を充実していくことは、非常に大事なことだと考え ております。しかし、現行の枠の中でそれを教育していくことは、かなり難しいの ではないかということが、調査の結果から考えられますので、簡単に速報のその点 だけを説明させていただければと思います。 ○遠藤座長 手短にお願いします。 ○菊池委員 私の提出した資料ですが、この調査は昨年の冬に看護師教育3年課程 の学校692校に対してアンケートをして、366校から回答をいただいた調査結果です。    2頁ですが、看護師免許に関わる卒業の必修単位数及び時間数は、指定規則どお りに定めているところが3割で、7割のところはそれ以上の単位あるいはそれ以上 の時間をかけて教育をしているという実態があります。平均の単位数が96単位、教 育時間は2,965時間でした。また、学内技術演習の重要性がワーキンググループで 指摘されています。学内技術演習の有無を調べたところ、基礎看護学においては、 ほとんどのところが技術演習をしていると回答していますが、看護の専門分野別に 見ると、成人看護学の慢性期、これから重要になってくる介護の施設、療養型病床 群などの看護の学内技術演習は6割しかやっていない。精神看護学も36.9%しかし ていない。技術演習は基礎看護学を除くと、まだ不十分な状態です。  3頁です。その問題点としては、演習時間の不足や教員数の不足があって、なか なか充実できないということが出ています。実際に学内技術演習をしたあと、試験 をして、修得したかどうかを確認しているかについては、基礎看護学は9割の学校 養成所が試験を実施して確認していますが、それ以外の領域においては、そこまで はやっていないという状況です。  基礎看護学の学内技術演習ですが、初回の試験で通った学生は68.2%です。卒業 までには98.5%までに持っていっており、先生方は一人前になるようにという努力 をされています。そこの部分の教育も時間をかけてやっています。  臨地実習ですが、臨地実習の実習指導者、専任の教員ということが非常に重要に なってきますが、その実態としては、各分野別に専従の教員がいるかいないかを調 べたところ、それぞれの看護領域において、学校の半分は専任の教員がいないと答 えています。ですから、例えば病院に臨地実習に出ると、そこの病院にお任せ状態 となっており、臨地実習の教員が非常に足りず、十分な臨地実習ができていないこ とになります。実際の問題点としては、指導教員の確保、実習日程の調整、実習に 適した事例がないなどが挙げられています。今度ワーキンググループでは、現場が 求める看護実践能力と卒業時点の実践能力とのキャップをできるだけ埋めていく観 点から、夜間の勤務実習や複数患者の受持ち実習などを入れていくことが提案され ていますが、その実態については、現時点では実施している学校は5%以下、ある いは20%以下という状況で、まだそこには手がつけられておらず、これからの課題 という状態です。  4番目としては、臨地実習における看護技術の水準ですが、平成15年の厚生労働 省の検討会報告書の中で、臨地実習で看護学生が行う「単独でできる」「指導監督の 下にできる」「見学だけ」という看護技術の水準が80項目について設けられていま す。それを学校側が設定している水準と実際に臨地実習でどこまでやっているかを 比較したのが次の結果です。まず学校側が設定している水準については80項目中、 70項目の看護技術においては、推奨水準に合わせて学校側も同じような水準を設定 しています。ところが、実態を見ますと、80項目について実際に厚生労働省の検討 会報告書で推奨されている水準と臨地実習の実態を比較したところ、実際には実態 が推奨されている水準に追いついていない学校のほうが多いのが30項目、4割近く を占めています。それを表にしたのが5頁の表です。例えば、13の「口腔・鼻腔の 吸引」をみますと、厚生労働省の検討会報告書では、「教員や看護師の助言・指導に より、学生が単独で実施する」というのが推奨水準になっているのですが、実態と しては、その推奨水準より低い2の「教員や看護師の指導・監督下で学生が実施し た」が43.4%、「原則として見学だけした」が22.2%、「学生は見学もしなかった」 が5.9%で、水準としては1の項目になっていますが、実態としては2、3、4であ るという状況です。網掛けにしてあるのが、平成15年の検討会報告書の水準に照ら したときに、実際にはそこまでできていないという状態を項目別にみたものです。 その結果、6頁に卒業時点で「1人でできる」看護技術を、項目別に聞いています が、「1人でできる」学生が80%以上と回答した学校が5割を超えている技術は 80項目のうちの18項目にとどまっています。一方で、「1人でできる」学生が20%未 満と回答した学校が5割を超えた看護技術が16項目です。ほとんどできていない状 態の項目が2割で、十分修得していないということになっています。例えば、「皮内・ 皮下、静脈内注射の方法」についてみますと、静脈注射は2002年の行政解釈の変更 で看護師の診療の補助行為として取り扱うと変更されていますが、それについては、 多くの学生が卒業時点では1人でできない状態です。  最後の、看護師の養成期間に対する意見については、「現在よりも期間延長したほ うがよい」と、期間延長を支持する意見が62.8%を占めています。これは3年前の 結果よりも多かったという状況です。 ○遠藤座長 今までのご議論で、養成所については、専任教員を増やすことを含め て、「時間数が増えることはなかなか難しいのではないか」という意見が出されまし たし、文部科学省の検討会においても、「臨床実習の拡大は慎重にしてほしい」「総 単位数は最小限度にして自由度を各大学に持たせてほしい」という意見が出ていま す。  そういう観点から、いま菊池委員からの報告はどのように読み取れますか。例え ば臨地実習については、指導員の確保が難しいというのは、まさに従来出ていた議 論と同じだと思いますが、それについて何かご意見はありますか。 ○菊池委員 例えば、臨地実習の教員については、あとの議論でそういうものをき ちんと充実する必要があって、今はいなくて困っているということで伝えようと思 っていました。全体として言いたかったことは、充実はしなければいけないのです が、今の看護師の教育年限の中で、実際にその中で単位数を増やすことが現実的に は難しいのではないか。その辺は羽生田委員のご意見と一致する部分もあるかと思 います。これからの看護に期待されている役割を考えると、抜本的なことをきちん と考えることが必要ではないか、と主張したいと思って出した資料です。 ○遠藤座長 羽生田委員、何かございますか。 ○羽生田委員 各医師会立の養成所に意見を求めたところ、ワーキングの出してい る方向性は、非常にいいものだという評価をされています。ただ、実際に時間、専 任、実習指導者等の数の問題は、とてもこれに対応することはできないということ で、その辺を是非再考していただきたいという意見が多かったのです。  1つには、現在の会の中で、もう少し何かできないか。卒業して実際に業務に就 いたときの乖離が大きいという話が、この委員会の主だったと思います。1つには、 この医師会のアンケートの中でも、卒後教育の充実をするのが一番確実な近道であ るということで、卒後の研修をしっかりした制度としてやっていくほうがいいので はないか、という意見がかなりを占めています。  あとは今回は新しく到達目標でかなり項目が多く出ていますが、この項目を、今 の菊池委員のお話でも、ほとんど達成していない。でも達成している子もいるわけ です。達成していない子たちをどうするかがいちばんの問題で、カリキュラム増で はなく、自分たちで何が足りないのか、学校での専任教員が把握する部分と、実習 指導者が把握する部分を、自分できちんと自己判断をして、その3つを足した時点 で、通常の現在のカリキュラムが終わったあとに、彼らには別なかたちで、自分の 足りない部分だけ実習をするという学校ごとの教育のやり方があって、そういうか たちで十分補えて、かなりの乖離の縮小にはなるのではないかというところで考え ていただければ、いまのワーキングが出した7単位よりも、もっと少なくてもそれ が可能になるのではないかということがきておりますので、その辺をお考えいただ きたいと思います。 ○小山委員 看護師のワーキングでは、6回までのここでの検討会で、大変問題だ と言われていたことを、どのように改善できるだろうかということで考え、結果を 報告しました。しかし、実施には4つの条件が必要であると申しました。  その1つは、教員を増やすということです。それがどのぐらい実現可能かという ことを、まず踏まえた上で、もし無理なら次のところはどうかということで考えな ければいけないと思っています。全国の養成所の教員を増やすと予算が伴いますが、 このカリキュラムを執行するに当たって、どのぐらい可能かという辺りを、厚生労 働省の方から伺えればと思います。 ○遠藤座長 というご質問ですが、事務局として答えられますか。 ○看護職員確保対策官 いまの段階で、いくらということは難しいかと思いますが、 カリキュラムの改正について、当然それがスムーズにいくことは大切ですから、様々 な予算上の制約がありますが、その範囲内でできることはやりたいと考えておりま す。 ○小山委員 教員だけではなく、実習指導者が非常に重要です。事故を起こさない で実習の時間数を増やす必要がありますが、学校の教員が出ていくのは大変難しい 現状が、いまの調査報告でも再度明らかにされたかと思いますので、実習指導者も きちんと予算化してつけるということになりますが、いかがでしょうか。その辺の 回答によってそれが無理であれば、実現可能なように、今日、単位数を減らさなけ ればなりません。ワーキングからは、あくまでもそのような条件付きでしたので、 それがどのぐらい可能なのか。1校だけではなく、全国の養成所で、あまり可能性 がないとすると、これから数年間のカリキュラムに負担がないようにするには単位 数をどことどこが削れるだろうかの検討に、次のステップで移らなければならない と思います。 ○遠藤座長 予算額の問題をここで決めることは無理だと思いますので、そういう 意味では、全体の流れを次回までに反映して、修正するかたちで対応するしかない と思っています。 ○草間委員 この指定規則を基本的にどう考えるかということが大変重要ではない かと思います。先ほど医学教育課長あるいは医師会の羽生田委員からもお話があり ましたが、指定規則は、いま看護師の養成を専門学校でしようと、大学でしようと、 指定規則はあくまでも看護師、保健師、助産師に必要とされる最低限の教育項目を 規定しているものと受け取っています。したがって、もし大学が大学の特徴を出そ うとすれば、別の意味で付加価値をつけるべきで、大学で看護師を養成するから指 定規則とは別というのはあり得ないと思います。指定規則は最低限の基準を決めて、 質の保証を図るものと考えるべきだと思います。  今までの7回の中で研修が大変重要だということも、既に議論になったわけです。 看護師にさまざまな技術が要求されているときに、これだけのことは必要でしょう というかたちで、7回の検討会で話し合った結果を踏まえて、ワーキンググループ で出してくださったものだと思っています。  私は前回は欠席しましたが、理想的なカリキュラムというのがあって、それに対 して、フィージビリティも考えてということで、今回のようなものを出されたと理 解しています。そういう意味では、できないから変えましょうということはないと 思います。7回の検討会を経て出てきたものが1つの案だと考えるべきで、出てき たものが現実的にできないので、現実に合わせましょうという考えでは、看護教育 はいつまで経っても変わらないと思います。その辺は最低限必要なものはこれだと 決まったら、できないではなく、どうしたらできるかということで考えていただき たいと思います。 ○遠藤座長 ご意見としてはよくわかりますが、先ほどのお話ではワーキングの報 告はフィージビリティが可能であればという条件付きの報告だということですし、 ここで決まったものは、実際にその基準で教育が行われるという制約条件を持ちま すから、そこはフィージビリティを無視して意気込みだけを載せるという性格のも のではないと思いますので、フィージビリティを無視することは適切ではないと思 っています。せっかく議論してきたわけですから、お気持ちはよくわかります。 ○坂本(憲)委員 前回、時間数が多くなったカリキュラムを案として出していただ きました。実際問題として1,000時間ぐらい増えているわけです。教育というのは 時間をかければより充実したものになるという前提で、不備な点もあるから、この ように多くなると思いますが、1,000時間ぐらいを1度に増やすという案に対して、 もちろん足りない分は増やしていくというのは大賛成ですが、現実的に1,000時間 以上増やすとなると、今の時間数でも看護師は忙しくてあっぷあっぷで、とてもや っていけないという話がずっとありました。そこの部分の調整をどうするのか。最 終結果として3年を4年にすればそれだけの時間が必要だということに結びつくの かもしれませんが、そうなると授業として、いろいろな部分にお金がかかるし、授 業料ももっと増えていくわけです。ですから、この1,000時間が、本当にいま求め られている技術の内容につながっていくのかというのが、私には読めなかったので す。もし、この1,000時間が認められたとしても、いま求められているものと、充 実をさせたものとの結果みたいなものがついていかないと、また何年かしたら同じ ように、時代の進歩や医療技術の進歩によって、ここの部分が足りないということ が出てくるのではないかと思います。時間数増加で追いついてやっていけるのかと、 わからないなりに感じました。 ○遠藤座長 おそらくいろいろなご議論が出るかと予想しておりましたが、集約は されておりませんが、ご意見は出尽くしたかと思います。基本的にフィージビリテ ィを無視することはできないと思いますが、これまでご議論していただいたワーキ ンググループの案については、できるだけ尊重するという方向性をとることも当然 だと思います。その辺をどのように折り合いをつけるかということになるかと思い ます。とりあえず、皆さんのご意見はひと通り承ったということにしたいと思いま す。また新たにご意見があればファックス等で事務局に出していただくというかた ちにして、次回までにその辺を調整するかたちで対応させていただきたいと思いま すが、そういう方向でよろしいでしょうか。 ○坂本(す)委員 今回、私たちが一番気になったところは、カリキュラムの話とも 関係してくるのですが、職業と教育との乖離です。そういう意味では、今回いろい ろな部門から出たカリキュラムをみんな追加して、「では、こうしましょう」という 話にはならないと思います。医師会等のいろいろなお話を伺うと、現場が大変で無 理だと言っている状況を無視して「このままいきましょう」という話にはならない ということは重々承知しています。ただ、今回私たちが立ち上げて、いろいろなこ とを数回やってきた中で、一番の問題は、基礎教育をきちんとしていない点です。 どこを踏まえて基礎教育と捉えるかということが大変不安定な状況です。10年前の 医療と今の医療は同じではないのです。これはきちんと認めなければいけないと思 います。  それに対して、医師会の先生からも言われたように、自分1人で実習してこいと いう状況はなく、絶えずお尻を拭いてもらっているような実習になっています。そ ういう意味では2つ問題があって、基礎をきちんとすることと実習の方法をどのよ うに新たなものとして立ち上げるかを追加していただかなければ、1回カリキュラ ムを、現場がいいからこのようにしましょうということだけで終わることにはなら ないと思います。基礎教育についての保健師、助産師の絡みも含めて、ちゃんとす ることと、臨床研修をどのようにするかを追加する。これを次回からやることによ って、現場が大変混乱するようなら、きちんと現場の理解を求めて進めていくかた ちにすればよいでしょう。現場の意見というのは大変重要だと思います。 ○遠藤座長 基本的に座長提案を支持していただいたと受け止めます。 ○小山委員 前回、「看護師のモデルは積上げ型ですか」という浅田委員の質問に対 して、そのようであるかのような回答をしたかもしれず、それに対して、大学の教 員たちのご意見が出たかと思います。積上げ型で時間割を組んでいくのは大変難し いので、厳密な意味での積上げ型ではなくて、むしろ漸進型というか、次第に上が っていくという意味であると修正させていただきたいと思います。 ○遠藤座長 わかりました。そういう意味でフレキシビリティがあると。 ○村嶋委員 坂本(憲)委員の発言で1,000時間増えたということですが、表の見方 の違いがあるのだと思います。93単位が看護師のほうは100単位になっただけです ので、時間にして300時間かと思います。ですから、そこは誤解がないようにお願 いしたいと思います。  私からは2点あります。先ほど医学教育課長、羽生田委員から、各大学、養成機 関の自由度を尊重するというご意見がありました。それは私も確かだと思います。 その場合には、どのカリキュラムを各大学や養成機関が選択するかについても自由 度が尊重されるべきだと思います。大学は統合カリキュラムの全てを看護師、保健 師の卒業要件にしていますが、むしろ看護師だけを卒業要件とするような自由度も、 各大学に認められていいのではないかと思います。  それから、暫定版だという理由で保健師のほうだけは卒業時の能力が今回外され ましたが、暫定版ではあっても、保助看並んでこれが出てきたわけですので、是非 復活をしていただきたいとお願いします。 ○遠藤座長 後半については事務局と相談して対応を決めたいと思います。 ○浅田委員 専門分野I、II、IIIというか、統合分野との関係ですが、全回とは違 うところを、もう一度説明をお願いします。 ○小山委員 前回とは違っておりませんが、カリキュラムの説明が「積上げ型」で はなく、「漸進型」であり、実際に時間割を組んでいくうえでは、おおよそこの順序 で進んでいきます。はっきりと積上げとなると、それが終わらないと次のステップ には行けないという意味になりますので、言葉を換えたいという意味です。 ○浅田委員 それはすごく曖昧だと思います。 ○遠藤座長 ご発言の背景は、浅田委員がおられたかどうかわかりませんが。 ○浅田委員 それは伺いました。つまり、ここで出してしまえば、当然そういうこ とが前提であれば、先ほど言われたことは逆というか、当然階層性があるようなか たちでいうのなら、それが望ましいということで、保証しないのはおかしいわけで す。先ほど言われたナショナルミニマムというのであれば、それを保証するために は、それを達成するために最善のカリキュラムを組むべきで、それはある程度階層 性が想定されているのなら、それを崩してまでやる理由がどこにあるのかをちゃん と説明しなければいけません。実際に組むのは難しいからというのは理屈にならな いので、そこを明確にしていただきたいと思います。  もう1つ言わせていだくと、卒業時と勤務とのギャップです。先ほどの報告を聞 くと、実際問題として、今のカリキュラムで達成されていないということと、今の カリキュラムが不足しているということは別問題です。それがごっちゃになってい ると思います。いま、達成されていないとすれば、どう改善するかということはい くらでも言えると思います。足りないものに関しては何なのかということは加わっ たものだと思いますが、本当に足りないものがどうなのか。それがミニマムなのか ということに対して、坂本委員から疑問が出たと思います。そこを明確に切り分け ていただきたい。  もう1つは、改正を前提として話をされていますが、いまの話でいうと、4月か ら実際にやったとしたら、本当に実現できるのですか。現実問題としてできるのか どうかについて、もう少しきちんと言っていただけないでしょうか。 ○遠藤座長 それでは、最初に2つについては、今後これをまとめ上げる段階で貴 重なご意見として考慮させていただきたいと思います。最後の4月から実行できる のかというご質問は事務局からお答えいただきたいと思います。 ○看護職員確保対策官 この4月からということは一切考えておりません。まとめ ていただいたものは、できるだけ早く実施したいと思っていますが、それについて は早くても来年の4月と考えておりまして、今年ではありません。 ○浅田委員 そのときに先ほど予算の問題とかいろいろ出ましたが、当然それに伴 っていろいろな措置が必要だと思いますが、それも1年間の中でやるということが 前提でということでよろしいのですか。 ○看護職員確保対策官 はい。 ○遠藤座長 実はもう1つ大きなテーマが残っております。ただいまの単位数の問 題については、必要であれば修正させていただくということですが、もう一つは文 言とフォーマットを前回提出したものを若干修正しました。例えば、備考をなくし たとか、いろいろとご意見をいただいたものについて文言を変えましたが、これは 事務局提案でよろしいでしょうか。 ○菊池委員 前回のご説明で指定規則は大学も養成所も適用されるけれども、資料 1−2以下の指導要領以下のことは養成所のみ適用で、大学は参考にしている程度 というご説明だったかと思います。そうしますと、例えば資料1−4の到達度、卒 業時点でどのぐらいできる状態になっているかということについては、大学は参考 にするところもあれば参考にしないところもあるので、その辺は養成所と大学とで は状態が違っていることも想定されるということでしょうか。私としては、そうい うふうにならないように、少なくともどちらを卒業しても同じ到達度以上にはなっ ておいたほうが良いと思います。 ○看護職員確保対策官 厚生労働省の立場といたしましては、法令上のかかり方と しては養成所だけということですが、是非とも大学でもこれについてはご配慮いた だきたいと思っている次第です。 ○遠藤座長 よろしいですか。 ○菊池委員 文部科学省はどのように。 ○文部科学省医学教育課長 今、厚生労働省からご説明があったとおり、これらに ついては基本的には養成所にかかるものですが、それらを参考にしながら大学の運 営が行われるということはあると考えています。ただ、それが法令的に義務的にか かるものではないということです。 ○遠藤座長 それでは、一応、文言あるいはフォーマットについてはこのようなか たちでよろしいでしょうか。 ○浅田委員 大学は必ずしもそれは参考にする程度だと言われるのは疑問なのです。 これは、局長がいらっしゃるのですが、国家試験の役割というところでおっしゃっ たと思うのですが、指定をしている以上はそのことが保障されているのだというこ とが前提であって、プラス科目の試験があるわけですから、片方は参考程度で片方 はきちんと基準だというのはどうも納得がいかない。そうしたら、我々は大学を出 た看護師さんではなくて養成所を出た人にお願いしますと言えるのかというとそう ではないわけで、そこはきちんと言っていただかないといけない。養成機関である ということを前提とするのであれば、そこはきちんと守るようにしていただかない と成り立たないのではないでしょうか。そうでなければ、国家試験そのものの意味 づけも違うように思うのですが、それはいかがですか。つまり、参考程度であって もそれは保障したと認められるわけです。 ○医政局長 国家試験の受験資格は省令で定めた指定規則に則った学校、大学を卒 業したことを前提としております。今、委員がおっしゃったのはその指定規則レベ ルでどの範囲までを決めるかということだと思いますが、卒業時の到達度と技術項 目といったような詳細にわたるところまで省令で縛るかどうかという、それは考え 方、政策の一つだと思うのですが、少なくとも、かつては時間数、今は単位数でカ リキュラムの大綱を省令で定めるというところまでを要求水準としていた、それ以 上のことについては局長通知みたいなかたちで指導してきたということで、各学校 はその指導に従ってやっていただいているのですが、大学は学校と違ってそれぞれ 大学の独立性が相当強いものがありますので、それを尊重していただくということ で、厚生労働省としてはお願いをするということで行ってきて、それが国家試験の 要求している大綱をはみ出るものではないという理解でやっていました。しかし、 そこは政策の考え方ですから、もっと細かく縛るべきだというのは一つの見識では あろうかと思います。 ○浅田委員 それはわかりますが、できればそのようにきちんとしていただきたい。 つまり、先ほどの調査報告もそうですが、指定規則でやっていても到達していない という現実がある中で、一方でそれは到達しているのだとみなしてやっている可能 性が高いわけで、それがものすごいギャップを生み出すわけです。だから、そこの ところはきちんと各チェックをしていただくことが必要なのではないかというのが 私の意見で、それは養成機関が多様になっているからこそ必要なのだと思います。 ○遠藤座長 わかりました。貴重なご提言ありがとうございます。おそらく、まだ ご議論はあるかと思いますが、実は、すでにご議論が次の案件に内容的には入って います。これから議論していただくのは「教員・実習指導者及び実習環境について」 ということですので、すでに話がこれに触れられていますので、この問題について ご審議いただければと思います。事務局、ご説明いただけますか。 ○看護職員確保対策官 すでにこの点についてご議論いただいているところであり ますのでざっとまいります。教員・実習指導者及び実習環境についてということで、 今までのご議論を踏まえまして3点の論点を用意しております。  1点目は専任教員です。○印が4つありますが、これについては資料7のほかに 参考資料1もご覧いただければと思います。1つ目の○印の実習指導をする専任教 員を増員し実習の指導体制を充実することが必要ではないかという話ですが、これ は現行の法令上、参考資料1の6頁の(7)と(8)に専任教員及び教務主任に関 するルールが決まっておりますが、これをどのように考えたらいいかという点です。 参考資料1の6頁はそのままにしておいていただきまして、資料7の4つ目の○印 ですが、専任教員規定の「当分の間」を削除することを考えているが、何年間の経 過措置が必要かとなっております。これは参考資料1の6頁の(7)にある「当分 の間」という文言です。これは看護師及び准看護師の専任教員の数につきまして、 前回の改定で増員しているところですが、それに経過措置で「当分の間」をつけて おります。これを削除する方向にしたらどうかと思っておりますが、これはどの程 度の経過措置を認めれば現場で無理なくこういうことが達成できるのだろうかとい うことを検討したいということです。資料7の2つ目の○印ですが、これは専任教 員の指導力についてです。参考資料1の5頁に、それぞれの専任教員はこういう方 であるべきだということが決まっていますが、専任教員の指導力を向上させる必要 があるのではないかという問題意識ですので、資料7の○印でこういうことをして はどうかということを書いております。3つ目の○印ですが、これらの教員と臨床 現場の距離の問題でありまして、隔たりを少なくするために臨床実践力を向上させ る必要があるのではないか、こういう点について具体的にどういうことをすればい いのではないか、というご提案などをいただければと思います。  資料7の2枚目ですが、論点の2は「実習指導者について」です。この実習指導 者につきましては、現行制度上は、参考資料1の12頁の第7の1に「実習指導者」 を書いておりますが、これに要件などが書いてあります。14頁の一番上のオが看護 師の養成所についてですが、実習指導者の数についてここで規定をしております。   論点に戻っていただきまして、「実習指導者について」ということで4点あります。 養成所における実習指導者を増員する必要があるのではないか、病院に専任で配置 する必要があるのではないか、指導力を向上させる必要があるのではないか、動機 づけが必要ではないか、といういままでのご議論で出された点についてまた具体的 なお考えを聞かせていただければと思います。  論点3は「実習環境について」ですが、これもいままでのご議論を踏まえまして 3点あります。侵襲性の高い看護技術などについても経験できるようにする必要が あるのではないか。2点目は、これは例えばシミュレーターなどを活用することに よって、実習ではなくて演習を工夫する必要があるのではないか。3点目は、母性 看護学あるいは小児看護学の実習のあり方について見直す必要があるのではないか という点です。それぞれありますが、具体的なお考えを聞かせていただければ幸い でございます。 ○遠藤座長 いまご報告がありましたように、ここに書いてあるものはこれまでこ の会議の中で出てきたものについてまとめたもので、中身そのものは、これはやる 必要はないというものはないかと思いますが、具体的にどうするかということ、あ るいはここで抜けていることなどを中心にご意見を承れればと思います。 ○太田委員 専任教員の数については、新しいカリキュラムで時間数が増加する際 に、実際に現場ではそれに対応できる教員数ではないということが出されていて、 この提案書では「当分の間」を削除するというかたちで提出されていますが、現実 的に教員数は前回のカリキュラムで、領域別実習調整者等でこの人数で「当分の間」 期間限定でされる。実際的に、現在の看護師養成所では看護教員数が前回の指定規 則の変更からどれぐらいの数に充実してきているのかというような実際のデータが あれば教えていただきたいと思います。 ○看護職員確保対策官 現時点では、この点につきましては概ね達成されてきてい るところです。数字は手元にないのですが、私が記憶している範囲では、例えば先 ほど羽生田委員からお話をいただいた医師会立の学校では9割方に達しております。 ただ、この規定は、前回の改定のときに国立病院の看護学校のところが国家公務員 の定員の関係で増員が難しいという事情もありましたので、これを設けたという経 緯があります。今回、国立病院の学校が独立行政法人化されましたので、そこのと ころの国家公務員定員法の問題は関わらなくなったという状況です。 ○太田委員 そうしますと、現行のカリキュラムでこの規定をほぼ満たしつつある ところで、先ほど羽生田委員が言われたように、現実の現場で時間数の増が難しい ということであれば、この「当分の間」を削除するだけでは解決できない問題がそ の中に含まれていると思います。 ○羽生田委員 先ほど申し上げましたように、看護師自体が足りない。看護師の免 許がなければ専任教員にはなれないわけでありまして、専任教員を募集したときに もなかなか集まらないのが現状なのです。集まったとしても、最低半年以上の専任 教員養成コースに行かせるわけで、その間は生徒とは全く関係ない環境の中で専任 教員講習だけに行くということで、学校からそちらへ出向させることになるわけで すから、そういう中では非常に厳しい運営状況、人手がないというところで、いま のカリキュラム増で専任も増えてということが実際に可能であれば、基礎看護の充 実という意味からすればそれも一つの方策だろうと。当然、私どもも看護技術等の 充実については反対しているわけではありませんが、現実にいないわけです。です から、カリキュラムが増えます、専任も増やしてください、ということになっても その辺はなかなか対応しきれない。それから、実習指導者についても、病院の中で 専任の実習指導者を置くことすらなかなか大変で、特に病院の場合には、実習病院 といっても実際は看護業務に追われて生徒まで十分に指導できる実習指導者がいな いのが現実なのです。ですから、その辺も含めて考えなければいけない。私として は、卒後教育をどういうカリキュラムでやるのか、あるいはそれを指導する人をど うするのかという点が当然出てくるわけですから、医師の卒後研修にしても、卒後 研修の指導者のカリキュラムを組んでいろいろな病院に配置をするということを行 っているわけですから、むしろ、学生が卒業してきたらある程度みれるというとこ ろまで考えての卒後研修というものまで考えていかないと実際のところは回らない のではないかと思うのです。いまの看護師が2割も3割も多いということであれば この辺まで力が及ぶだろうと思うのですが、現実には非常に難しいというところだ と思います。 ○遠藤座長 そうしますと、卒後教育というかたちで充実させていくということで、 この文言から言うのであれば「当分の間」を削除することに対しては必ずしも適当 ではないという理解でよろしいですか。 ○羽生田委員 実際問題は、いま厚生労働省から話がありましたように、8人とい うことになって、実際にはそうなってきているわけです。あといくつかが残ってい るということで、そこもできるだけ増やす努力はしているのですが、期限が切られ るとそこまで慌てて余計しなければならないのですが、ある意味、「当分の間」の期 限が短く設定されるのは仕方がないとは思います。 ○遠藤座長 わかりました。ほかにご意見ありますか。 ○坂本(す)委員 私は、この人数の問題もあるのですが、いまは学生が臨床に手を 出せない状況で実習をしているのです。例えば、患者さんにいろいろなことをあま りしてはいけないとか、個人情報保護法のことがあるからという理由があるのです が、もう少し主体性といいますか、自ら考え行動できるナースを育成するには臨床 現場でいろいろなことができるような環境をつくれないかなと思うのです。そうい う点もいかがなものでしょうか。ただこのまま人を増やして、学生にカリキュラム を増やして、何かできる道を歩めというのはもう少し環境を変えていかないと無理 なのではないかという気がします。 ○遠藤座長 大変重要なご指摘だと思います。 ○山内委員 論点3なのですが、2番目のところにいまのこともありまして必ずし も実際の患者を思って実習、演習ができなくなっている現実もありますので、いろ いろな演習の工夫ということで先ほどシミュレーターという言葉もいただきました が、シミュレーターという物だけが置いてあっても、「さあ、やりなさい」と言うの はある程度できるようになった者が繰返しするものと、これから入門するというも のを同じに扱えませんので、物だけではなくて、人の充実をおく。設備だけが走っ ても現実には動かないと思いますので、シミュレーターのような工夫はもちろんで すが、それが運用できるような人員の充実もお願いしたいと思います。 ○榮木委員 坂本(す)委員からも、臨地実習で実際に手を出して学生が実習をする ような場になっていないということは確かに現実なのですが、臨床サイドももう少 し協力することで何らかの形で学生が手を出せる場面をつくることは可能な状況だ ろうと考えています。ですから、臨床サイドがどういうかたちで臨地実習に関われ るかというシステム作りも少し考える必要があるのだろうと思います。医療行為に 関わる部分は手を出さないところはあるのでしょうが、基本の部分で臨床実習の指 導者がきちんとつくことでできる行為もまだあるはずなので、臨地実習のあり方そ のものをもう少し考えていく必要があるのだろうと思います。 ○菊池委員 いまと同じ意見なのですが、臨地実習のときに学生がもう少し手を出 せるようになるためには実習指導者を専任で配置して体制をきちんと整えないと、 病院側も医療安全の観点でいろいろと考えなければいけませんので、そういう体制 をきちんとして臨地実習がもっと効果的にできるようにすることが大事と思います。 実習指導者を専任で配置する必要があると思います。  もう1つの意見ですが、確かに、今は看護師の手厚い配置を求めるところが求人 をしていて、なかなか得られないという状況があります。目前のことを考えると確 かにそういう状況がありますが、もう少し中期的な視点で看護師の確保を考えたと きに、そもそも新人の看護師が自信をもって臨床現場に入職していなくて、何もで きない状態で入職して、そのために不安になって、医療事故を起こすのではないか とか、そういうことで不安になって、今は9.3%が1年以内で辞めているという状況 があります。看護師の確保という観点からも、基礎教育を充実して新人の定着をよ くすることを考える。中期的に考えれば専任教員を多くしたり、実習指導者を専任 で配置するということで、そこに若干のマンパワーがもっと必要になるということ はありますが、そういう条件を整備することで新人として病院に就職した人がより 定着してマンパワーが確保できるということがありますから、もう少し中期的な視 点で考えて実習指導や専任教員の増加を考える必要があると思います。  そういう意味で、専任教員規定の「当分の間」につきましても、今の人数でさえ 教育が不十分だと言われているわけですから、是非、「当分の間」の経過措置を外し ていただいて原則的な人数以上にする方向で考えたほうが良いと思います。  それで、これは事例なのですが、数は少ないのですが、実際に実習指導者を専任 で配置している病院もあるわけです。そういうところは、養成所から学生が実習に 行ったときに、学生自身も非常に安心して実習ができます。ですから、学生も専任 実習指導者がいる病院に就職したがります。病院側からすると、そういう人を置い た病院が選ばれる病院になっているということもありますので、条件をきちんとし て教育や臨地実習をすることで新人のマンパワーも確保できるということです。 ○小山委員 今は、「当分の間の6名」を消すということで8名となっています。 8名の教員でやるということは、大学ではそれぞれの科目に最低2〜3名以上いまし ても大変でございます。看護教育の場合はただ講義をするだけではなく、実習場の 見回りをするだけではなく、安全な技術を身に付けるために、学内演習でも一人ひ とりの学生に対して見守って、それで事故がないようにするのです。8名というの は1科目につき1名です。これから先、基礎看護教育4年制を見越してするのであ れば、教員の養成もできるだけ早く整備するという意味で最低2名ということで、 2倍にすることは非常に重要なことでございます。しかし、「8名でいいでしょうか」 という議論でここが動いたら、それは今まで教員8名以上の養成所はたくさんあり ますが、教育現場では大変な思いをされております。その数をどのぐらいかという ことは予算が伴いますので言えませんが、「8名になったからこのカリキュラムがう まくいき実践能力がつきますよ」では決してないということを申し上げておきたい と思います。 ○浅田委員 その新しい案でいうと何名必要だとお考えなのですか。それが知りた かったのです。それは作られた方に聞いたほうがいいのでしょうか。 ○看護職員確保対策官 今のところ、事務局として定量的な数は持っておりません。 ○浅田委員 では、もう1つお聞きしたいのですが、教員の増員のところで学生数 をベースに教員数を算定していますが、今度の場合はその増員はこの基準でやるの ですか。つまり、一方では専門性で8名ということを決めていて、片方では教員数 をベースにして増員するかどうかという、2つのスタンダードを使っているのです が、それはどのようにお考えなのですか。 ○看護職員確保対策官 それも先生方からご意見をいただいている中で考えてまい りたいと思っています。いまのところ、確立したアイディアは持っておりません。 ○浅田委員 そこのところがないときちんと決められないと思うのです。 ○遠藤座長 ですから、そこも含めてフリーハンドなわけです。 ○浅田委員 看護学校に何名いるかわかりませんが、例えばその学生数に対して、 20名が一つの基準値かどうかわからないのですが、そうだとすればそれで人数が出 てきますよね。同時に、専門科目として専門性を持っている人は最低1科目には 1名要るということになった場合に、いまのカリキュラムでいうと8名では足りな いということになると思うのです。つまり、そこのところをきちんと出していただ かないと先ほどの実行可能性というときの問題にかかわってくるので、そこをきち んと提案していただきたいと思うのです。例えば、専門性でいうと何名要るのだと。 あとは、学生数に関しては、私はよくわかりませんが、20名で1名がいいのか、 15名で1名がいいのか。先ほどおっしゃったように、教えるだけではなくて実習も 担当するということであれば、20名で1名というのは大学の基準よりあれかと思う のですが、そういう意味でいうと、そこのところはどういう数値が妥当なのか学校 のほうに聞いていただきたいと思います。 ○遠藤座長 この条件を満たしたときにどのぐらいの増員になるのかという、粗々 のシミュレーションのようなものができるかどうかですね。 ○浅田委員 そうです。 ○羽生田委員 専任教員は8名ですが、講師というのは医師がそれぞれの専門科目 に全部張りついていますので、医師会の場合には延べにすると40人から100人ぐら いの医師がそれぞれの科目に講師で行っているのです。ですから、専任は8人です が、実際の授業に参加している人数はそういうかたちでやっております。ただ、看 護学自体は医師は教えておりませんので、疾病論についてだけ医師が入っています から、この100単位全部を専任でやっているということではありません。 ○浅田委員 はい。だから、逆にいうと、看護学の専門として何名必要なのかとい うことだと思うのです。 ○遠藤座長 事務局は対応できますか。 ○看護職員確保対策官 今すぐというのはなかなか難しいかと思います。 ○遠藤座長 わかりました。では、それは検討していただきたいと思います。 ○草間委員 先ほどから座長がフィージビリティとおっしゃるのですが、フィージ ビリティというのは何なのかはっきりさせておく必要があると思いますけれども、 何となく皆さんはそれぞれ違うイメージで持っておられるのかなと思うのです。と りあえず、今の専任教員についてですが、当分の間6人というのは前回の改正のと きに付加されたものですね。この検討会を立ち上げるときに、とにかく基礎教育を 充実させましょうということが大きな目標だったと思うのです。そのときに、場合 によっては時間数あるいは教育年限等も検討しましょうということで私は年限の延 長もあろうと考えておりました。今回はフィージビリティということで、あるとこ ろで収めましょうということのようですが、専任教員に関しては、前回の改正のと きに8人以上で「当分の間」とついていてすでに80%行っているとしたら、また今 回の改正で「当分の間」と残すのは一体何なのだろうと思うのです。だから、そう いう意味では、少なくとも「当分の間」というのは取っていただいて、看護の専任 の教員が8人以上というのはあくまでも最低の基準であると考えるべきではないか と思います。そういう意味では、前回の改正のときにつけた「当分の間」を今回も 残すということについては反対です。 ○村嶋委員 看護の教育には講義と演習と実習とがありまして、看護の教員が技術 を教えるときに実習と学内の演習とが随分重要になってまいります。ですから、医 師の方たちが講義を担当されるのは確かにわかるのですが、専任教員の数というの は、中での演習や実習に要る人数、看護学を教える部分の人数をもとに考えていか なければいけないのだと思います。そういう意味で、この「当分の間6人以上」と いうのを省くのは当然だと思いますし、今回は100単位でいろいろ充実しているわ けですから、看護課のほうに人数を算定していただいて、その人数を新たにつける。 そして、「当分の間8人以上」といいますか、そういう提案も考えられていいのでは ないかと思います。 ○遠藤座長 具体的な提案をしていただいたわけですが、ありがとうございました。 ○堀内委員 論点3の実習環境のところについてなのですが、(3)に分娩数や入院患 者の減少で確保が困難というところがあります。それに関連して、指導要領の13頁 にあるように、助産師の養成所の場合は病院や診療所及び助産所でということが可 能ですので、それと関連して、看護師養成所は小児看護学、母性看護学は「病院を 確保する」というだけになっていますが、ここの部分を「病院、診療所を含む」と いうかたちにすれば実習場所をもう少し拡大できるのではないかと思います。ただ し、診療所で実習する際には指導者が問題になってきますので、診療所を使う場合 には、「臨床指導者」だけに限らず、「学生の指導を担当できる適当な助産師あるい は看護師が定められていること」というふうに、そこのところを少し緩和していた だければ実習場所の拡大が可能なのではないかと思います。 ○遠藤座長 建設的なご意見、ありがとうございました。先ほど、論点3のところ で、学生の看護実践能力を高めるために心身への侵襲性の高い看護技術等について も経験できるようにする必要があるのではないかということで、専任の教員がいる ことがそれに対してはプラスになるだろうというご意見があったわけですが、これ はほかに方法はないものなのでしょうか。つまり、学生が侵襲性の高い看護技術に ついて経験できるようにするための方法として、ここのところが1つのネックにな っていたわけです。それを坂本委員が盛んにおっしゃっていて、そのことは必要で すね、というご意見もあるのですが、具体的にどうすればいいのかというご意見は、 専任の職員がいればそれはプラスになるだろうというご意見があったわけですが、 それ以外には何かないものなのですか。 ○坂本(す)委員 来年しなければいけないことと、ゆっくりときちんと考えていか なければいけないことと、2つあると思うのですが、おそらく、こういう職業では、 一生懸命に学校で教えても現場に行ったら大変戸惑うというのは当然だと思うので す。その間をどうやって埋めていくかという教育体制を積まなければ、いつまで経 ってもビクビクして不安になるのだろうと思うのです。それで、私は、アメリカな どではどうしているのか聞いてみると、契約した病院でなくても、自分で実習場に 行って、そこでどういう患者を受け持たせてほしいかを自分で言って、それをやら せていただくやり方をしているということを聞いたことがあるのです。ついて回っ て、先生方が「危ない、危ない」という状況ではなくて、1人で放つようなやり方 が組めないかということを私は考えているのですが、今までのやり方を同じように していくのではなくて、学生が自分で考えて行動できるということを目標に置いて いるならば、もう少し自分で実習場のものを持ってきてやる。そして、環境として も、病院側もそういうことをやらせていくような、お互いに社会的に認識し合うよ うなやり方はできないのかということが1つあります。  もう1つは、昔は、病棟に行ったら、学生のころは採血をしたり、筋肉注射もし ていました。しかし、今はそれも触らせてくれない状況で、患者さんに「受け持っ てもいいですか」と言ったらそれも断わられる状況であれば、リアルな実習はほと んどできなくなってきているということがあります。だから、そこら付近は学生に やらせるところをもう少し踏み込んでもいいのかなと。これはどこでどのようにす るのかはわかりませんが、そういう気がします。 ○遠藤座長 そういう問題提起ですが、教えておられる先生方はいかがですか。 ○小山委員 卒業時の到達度が資料1―4にありますが、そこのところに「モデル 人形で胃チューブの挿入・確認」と書いてあるのは、倫理的な問題、事故というこ とから、新卒が現場で出会う状況が多いけれども実際の患者では実習させていただ けない。しかしながら、学内ではきちんとやりましょうと。人形ではあるけれども 十分に練習してという意味で、学内では1人でできるようにというところまでやっ てあります。これを到達目標に今回の改正でするのであれば、是非、それぞれの学 校に、最低限ここに必要な器具は備えるということが必要になるかと思います。そ れで学生たちが十分に自己学習し、そして現場で、また、させていただけるように という2段階のステップを踏むことによって、より安全な教育ができるかと思いま す。 ○浅田委員 実習の学生を受け入れるという話はよくわかるのですが、その実習を 受け入れた病院にとってのメリットは何なのですか。つまり、それがないから嫌な のでしょう。面倒くさいということだと思うのです。つまり、実習を受け入れて学 生が来ますが、例えば患者を受け持たせることによって病院にどういうメリットが あるのですか。 ○坂本(す)委員 今まではなかったのですが、最近受け入れ先が増加しているのは 7対1の影響ですね。だから、学生のころから病院をよく見てもらおうという感覚 で、受入れは大変よくなってきていると思います。そういう意味ではメリットはあ るわけです。随分前、私たちの年代のころは1つの労働力でした。だから、今はそ れがきちんと教育されていますので、労働力ではなくて、ある意味ではこれから病 院に就職してもらえるかということが1つのメリットだと。もう1つは、先輩ナー スや先輩ドクターと同じですが、自分の後輩を育てるということの一つの使命感は どの職業でも持っていると思うのです。 ○浅田委員 いま言われた分でいうと、アメリカの教師教育でいうと、PDSとい って、プロフェッショナル・ディベロプメント・スクールという大学と提携した学 校がいくつかあるのです。どういうことをやるかというと、学生は大学には来ない。 1年間そこで実習を受けているわけです。授業も大学に出向いていくわけです。そ うすると、場所も提供しますし、学校側にメリットがあるかということなのです。 そのときに、どういうメリットがあるかというと、大学の先生の授業も聞ける。つ まり、非常に近視眼になっているものをかなり長い目で見ることができる。同時に、 教えるという行為によって自分自身を見直すことができる。当然、学生は実践的な ものをやれる。全米で100以上の大学がそういう契約をやっているわけですが、そ ういうことだと思うのです。  つまり、病院にとってもメリットがある。そこの職員の研修に役立つようなこと ができる。同時に、そこで人が育って、いい学生が育つというかたちがとれないと 実習を増やすことはなかなか難しいと思うのです。いま大学の先生なり養成所の先 生たちが、そこの現場に行って最新の看護について学生とともにそちらの方々に講 義ができるようなかたちがとれるかどうか。そうすると、先ほど言った専任が必要 であって、そのための人数が要るということが当然出てくるわけです。そうすると、 自ずと実習校が増えていくし、実習のものができるわけです。  もう1つの問題は、資格上それができるかどうかということです。つまり、資格 上できる範囲とできない範囲がある。実際には資格を持ってやっていただくことが ないとなかなか役に立たないとすれば、私はそう思っていますが、自動車の仮免許 と一緒で、ある仮免許を与えた後でやっていただくということをやらないとリアリ ティは出ないわけです。そうすると、今の年限でいいかどうかも含めまして、例え ば准看であればここまでできるとか、2年間でその准看の仮免許を出しましょうと か、そういうかたちをとらないと、その心身の侵襲性の具体的な経験はなかなか積 ませられないと思うのです。それもきちんとロングタームでその病院で実習してい れば指導者は実力がある程度わかるわけですから、ここではやらせていいとかだめ だという判断ができるのですが、ぱっと来ていきなりやらせるというのは非常にリ スクが高いと思うのです。だから、病院側もとてもやらせられない、できないとい うことになるのではないか。そこのところを考えていただければ変わるわけで、そ れは条件とかかわってくると思うのです。だから、そこのところが実は問題で、お っしゃっていることはよくわかるのですが、むしろそこのところを考えないと、ア メリカ型の単に学生が探してというかたちではなかなか日本では受け入れられない のではないかと思ったものですから、それをお聞きしたかったのです。私が言った のはあくまでも教育のほうの参考意見ですので、そういうことができればと思いま す。 ○坂本(す)委員 おそらく、それは一気にはいかないと思うのです。今回のいろい ろなことでこれだけ話し合えてきたなかでは、羽生田委員の意見とか、いろいろな ことが現実だと思うのです。でも、改革、改善をしなければいけないということが 残りますから、そういう臨床実習の状況も踏まえてきちんと基礎教育を考えていく というものにこの会から移行していただきたいと思います。 ○遠藤座長 ありがとうございます。羽生田委員、どうぞ。 ○羽生田委員 いまの実習の問題は、私はいろいろな職種を担当しておりますが、 看護師たちに限らず、医師も含めて全部の医療関係職種が実習に困っているのです。 その線引きが昔は曖昧だったのが、今は免許がないと医療行為をさせないことにな ってしまいました。善い悪いは別として、先ほど言われたように、実際には学生の ころから筋注をしたという、そういうこともしてやってきたわけですが、今はそれ が全くできなくなった。ところが、厚生労働省は医療職が実習をするにあたって一 般の国民に理解を求める行為をひとつもしていない。実は、救急救命士の資格を持 っているけれども、その上に挿管をしていいという上の資格が新たにできて、これ については病院の麻酔科の医師と一緒に挿管をさせてくださいと患者に頼みに行く のです。消防庁は「病院実習、技術を向上させるために協力してください」という 張り紙を出しましたよ。厚生労働省はそれがひとつもないのです。ですから、ほか の病院でも、全部の職種が実習に困っているのです。これは国として是非やってい ただかないと実習は全部行き詰まってしまいます。 ○遠藤座長 厚生労働省もそういう対応をすべきだというご要望がありました。坂 本委員、どうぞ。 ○坂本(憲)委員 私も、坂本(す)委員の後にそれを言おうと思ったのですが、私た ちはたまたま技術のある人に当たるとすごいラッキーで、私も何回も刺されたこと があって、看護師さんがすごくお気の毒で、そのかたも焦っているし、ということ に遭遇いたします。技術は練習しないとうまくならないというところは確かにある わけです。逆に、ドクターもそうですが、いっぺんに修得できないわけですから、 国民も育っていただくのに理解を示す必要があります。その部分の情報が全くない わけで、そこは一体どうなっているのかといつも思っていました。 ○村嶋委員 話が少し変わって論点2の4つ目の○印についてなのですが、実習指 導者の動機づけ、インセンティブが必要ではないかということがあります。これは 臨地側の実習指導者のことをおっしゃっていると思うのですが、こういうものは学 生との相互作用でございます。私の場合は保健師ですので、本当に保健師になりた いということであれば、頑張って興味を持って実習するのだと思いますが、単に卒 業要件に入っているから行かないといけないということだと、学生の側にも動機づ けが高まりませんし、それを受ける臨地側の実習指導者にも熱意がわかないという ことになると思います。大学の場合は保健師の国家試験受験資格を得ることが卒業 要件になっているために、保健師に関心のある学生もそうではない学生も、全員が 市町村や保健所等の臨地実習の場へ行きます。そうすると、学生が大量に来るもの ですから、どうしてもさばききれなくて、「見学をさせておけばよい」ということに なりかねません。  実際に、北海道ではそういうことを憂えて保健師になる気のある学生だけに実習 を絞るとか、保健師の面白さをわかってもらうために、これだけの期間を実習して ほしいという現場のほうからの要望をきちんと出すとか、そういう動きが出てきて おります。そういう意味では、この論点2に関しては、養成機関側もやる気のある 学生を選抜して実習に出すなどの何らかの対応をするべきではないかと思います。 ○遠藤座長 重要な視点です。ありがとうございます。 ○石垣委員 私も、看護基礎教育において臨床実習の充実は非常に重要だと思いま す。しかし、現行のカリキュラム、履修年限の中では限界があるのではないでしょ うか。この検討会は、その前に「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討 会」があり、それにドッキングするかたちで、看護基礎教育の充実をはかることが 検討されているのだと思います。しかし、これまでいろいろ議論されてきたように、 まだまだ基礎教育と臨床とのギャップは大きく、その間に今後臨床研修制度の検討 が是非必要と思います。すなわち、看護基礎教育、卒後臨床研修制度と臨床での実 践能力の向上プログラムとがセットになって看護師の教育を考えていく必要がある と思います。  座長は、フィージビリティということをおっしゃいましたが、私もそう思います。 しかし、前回の検討会でも、多くの委員から検討が不十分だったという発言があり ました。10年ぶりのカリキュラム改正が、現場の混乱をできるだけ少なくし、将来 につなげられるものにするためには、結論を急がず、何らかのかたちで検討を継続 していくことを強く望みます。  また、現在、医療・福祉専門職の教育年限が延長されております。例えば、歯科 衛生士の教育が3年になったと聞いております。今後看護の役割がますます大きく なるなかで、看護師の基礎教育の履修年限の延長を含めた議論がなされないままに、 このまま報告書を出すことには大きな不安を感じます。そして、平成20年施行とい うことになりますと、今年19年からその準備がはじまるわけです。現場では対応が できるのでしょうか。拙速を避けて欲しいと心から希望いたします。 ○遠藤座長 ありがとうございます。私がフィージビリティと言ったことについて 何度かご指摘がありましたが、決して現状をそのまま追認するという意味合いでフ ィージビリティという言葉を使ったつもりは毛頭ございません。あくまでもここで 議論されてきた内容は重きを置くのだということは大前提ですが、それがどこまで 可能なのかどうかということは一方で考慮しなければいけない重要なものであると いうことで申し上げたわけです。それから、石垣委員がおっしゃった拙速な結論は 避けるべきだということですが、この検討会そのものは今年度中に終了させるとい うことが1つありますので、カリキュラムをどう決めるかということについては今 年度中に検討しなければいけない。ただ、積み残しの案件がまだだいぶありますの で、それは今後また別のところで検討されるということだと思います。 ○草間委員 先ほどの村嶋委員のご発言に関連して医学教育課長に確認したいので す。村嶋委員のご発言で、大学は保健師をとることが卒業要件になっているという お話だったと思いますが、これはたまたま大学が統合カリキュラムでやればその要 件になっているというだけで、大学は必ず看護師と保健師をとらなければいけない という卒業要件にしているのでしょうか。 ○文部科学省医学教育課長 今まで文部科学省として看護系の大学を認可するにあ たっては、専門家の意見を踏まえて、保健師、看護師の2つの資格、さらにできれ ば、選択制ではありますが助産師ということも含めて、統合の中でカリキュラムを 作っていただくことを求めてきたということでございます。 ○草間委員 現状では卒業要件にしていると考えていいわけでしょうか。 ○文部科学省医学教育課長 卒業要件と大学の設置要件とがイコールなのかどうか わかりませんが、ほぼイコールだと考えれば、保健師国家試験を卒業後に受けて取 っていただくのが基本的なコースだと考えております。 ○草間委員 なぜこういう質問をさせていただいたかというと、ここの中でも議論 になったと思いますが、医療職については、いま医学部の学生を100人10年間増加 するということが設置審等で議論されていて、ほぼ決まったと思いますが、看護職 に関しても需要と供給とのバランスが大変重要だという議論が出てきていると思い ます。したがって、保健師の場合は、実際に就職できる、あるいは求められている 人数と、今年157校できれば1万3,000人ぐらいの保健師が誕生するわけですが、 1万3,000人の保健師を本当に育てる必要があるかどうかという辺りは大変重要な 問題だと思うのです。そういう意味では、需要と供給のバランスということが、特 に国家資格に関係する免許の場合は大変重要ではないかと思いますので、その辺は 文科省としても是非ご議論いただく必要があるのではないかと思います。これは文 部科学省への希望です。 ○遠藤座長 わかりました。坂本委員、どうぞ。 ○坂本(す)委員 その辺に絡みまして今回カリキュラムのことですが、看護の教育 と保健師の教育を一緒にしていることによって、保健師の実習等を見てみると、私 が何十年か前に受けてきた保健師の教育と私が看護大学で受け持っている人たちの 今のカリキュラムの保健師の教育とはものすごく違ってきていると思います。とい うのは、おそらく時間がないのだと思います。地域における看護についても在宅に おいての看護についても調査などはほとんどしていない。保健師の仕事は一体何か と考えたら、これから地域完結型医療になっていくと、その地域がマス的にどのよ うな状況になっているかをくまなく歩いて調査をするのがパブリックな職業に携わ る人の仕事だと思います。そういう意味においては、それが大変薄くなってきてい るというふうに感じますので、今回はそれは関係ないと言われるかもわかりません が、この間に及んでこれからは基礎教育をきちっと専門性のあるものもしていかな ければいけないと思います。是非、今回は終わりとしても、次のどこかにつなげて いただきたいと思います。 ○遠藤座長 貴重なご意見をありがとうございました。榮木委員、どうぞ。 ○榮木委員 看護協会の資料が今日出ましたが、もう少し早く出してほしかった、 この結果が最初にあったらよかったなと思いますが、5頁のこの結果を見ると臨床 で感じているそのままなのです。本当に何一つというか、学生はほとんどできない 状況で出てきている。それが今回の検討会が発足したそもそものことなのですね。 だから、その事態をどうするか。卒後臨床研修も確かに必要だろうと思いますが、 基礎教育の中でどこまでやるかということはもっと根本のこととして考えていただ かないと、臨床側としては受け入れられないですね。学生を育てるために臨床サイ ドも努力はしますが、これで教育する側が良しとするのかどうか、今回の検討会の そもそものところですから、もう一度考えていただきたいと思います。 ○遠藤座長 このことは、ここの議論でも常に出てきた非常に中心課題であったこ とは間違いないと思うのですが、それをまた反映したワーキンググループの報告書 であったとは理解しております。重要な課題であり、今後様々な機会で議論されて いくことだと考えています。小山委員、どうぞ。 ○小山委員 論点3の「実習環境」については、実を言いますと、これは条件の4 のところで申し上げたところと関連がありまして、基礎教育というときに、どうし ても教育者側に責任があるようなニュアンス的に感じとれたりも時々するのですが、 看護教育に関しましては実習が非常に重要であるということを考えると、本当に現 場の方々と協同しての教育であるのだということで、その実習の受入れ先の方々の 認識や態度などが非常に学生たちに影響を与えます。それプラス新人教育なのだと 思います。ですから、是非、このカリキュラムは病院の方々にもよく理解していた だき、実習の受入れも本当にスムーズにいくようにということをくれぐれもお願い したいと思います。お互いに両方で良い教育をやっていくという意識が大事だと思 います。 ○遠藤座長 受入れ側と教育する側との連携こそが重要だというご意見だと思いま す。大変良い視点でまとめていただきました。羽生田委員、どうぞ。 ○羽生田委員 昨年、私がこの検討会の出始めに申し上げたのですが、専任教員、 実習指導者、教える側の講習といいますか、研修といいますか、それがシステムと して全くない。私は教える側によって学生は非常に変わると思うのです。今回この 新しく出てきたカリキュラムの中に統合科目という科目がある。これは全人的な医 療という中での話がメインになるのだろうと思いますが、例えば整形外科に入院し ていましたと。整形外科に入院しているお年寄りは整形外科的な病気だけでなく、 高血圧があったり糖尿病があったり、いろいろなことがあるわけです。そのときに、 うちは整形外科の病棟だから整形外科しか看ないという、これは医者にもいえるこ とですが、看護師さんもそういう目で看れることを教える。これが総合科目の新た に作った意義だと思います。そうしたときに、それを誰がどれだけ教えられる人が いるかという話ですよ。ここにいらっしゃる方は皆優秀ですから当然できると思い ますが、実際に全国の養成所、あるいは大学も含めて、そういうものを本当に教え られますか。今は医者だってそういう方向に向かっていますが、これを本当に教え るのは非常に大変で難しいのです。ですから、私はそういう見方ができる先生方の 教育からやってもらいたい。それがここにつながる一番最初にするべきことではな いかと思っています。 ○堀内委員 私も、いまの総合科目に期待することというところと、先ほどの実習 環境の身体への侵襲性の高い看護技術がどういうときにできるかということを併せ て考えて、さらに統合科目の実習にすごく期待するわけですが、実習はその現場に 入ってある程度の時間をそこで学生が過ごすことによって、その現場の医療スタッ フからの信頼も得られますし、そのスタッフとともに患者のところへ行って、こう いう少し難しいケアもさせてもらえませんか、という、その学生がよそ者ではなく てチームの一員として活動することによって経験する可能性というものがどんどん 高まると思うのです。ですので、この統合科目の実習に期待するわけで、3単位で はありますが、これが例えば専門分野の何かと連動して同じ場所で1ランク上がっ たかたちでの実習が組めるようにするとか、時間数も3単位ですが、事前に2週間 ぐらいのウォーミングアップがあって本格的に3単位分の実習をするようにする。 十分な時間をとって、かつフィールドも少し馴染んだ一定のところで行うことで、 より難しい技術もできるチャンスが増えれば、その後、卒業した後の新人のギャッ プが少しでも少なくなるのではないかと思って、この統合科目の実習には私は非常 に期待しています。 ○遠藤座長 ありがとうございます。まだご意見があるかと思いますが、これまで ご意見もかなり細かな議論が出まして、収斂はしませんでしたが、ある意味で出尽 くしたのではないかと思います。事務局への宿題としまして、学生が増えた場合の 教員の増員及び「当分の間」を削った場合の増員がどのぐらいなのかということを 粗々で結構ですので概算を出してほしいということがあったわけです。 ○太田委員 座長のほうではそのようにおっしゃられたのですが、実際に私はワー キンググループに参加していたのですが、同じワーキングにいらした石垣委員から も先ほどおっしゃられたのですが、4回のワーキングで方向性は出ました。しかし、 個々の十分な内容が出し尽くされたかというと私は十分ではないと思います。基礎 教育に卒後研修の問題も絡みますと、卒後研修は卒後研修で独立して、基礎教育は 基礎教育で独立して議論されるものではありませんので、今回のこの検討会で積み 重ねたものを土台にして、その連動したかたちでもう少ししっかりと吟味、検討し ていくことは必要だと思います。 ○遠藤座長 今後の課題ですね。事務局、これはいかがでしょうか。 ○看護職員確保対策官 先ほど資料8のところで説明しようかとも思っていました が、今回ご議論いただきまして、目前のカリキュラム改正ということ以外の点につ きまして、また別途検討する機会は何らかのかたちで考えなければいけないという 問題意識は持っているところでございます。 ○遠藤座長 いまの回答でよろしいですか。 ○太田委員 目前のカリキュラム改正も含めて、本当にこの段階でカリキュラムが 改正されていいのかどうかというところは、現場からいくとまだ疑問の余地が残る のです。 ○看護職員確保対策官 私どもといたしましては、前回カリキュラム改正から10年 を経てこの場で様々なご議論をいただいた点がありますので、その点についてでき る限り早めに制度改正をしたいと思っております。ただ、一方におきまして、いま ご指摘いただいたような様々な準備の問題があると思いますので、それに現場がき ちんとできるようなかたちで考えたいということでございます。また、一方におき まして様々な論点があります。そういったもう少し視野の広いかたちでの議論とい うのは、これはまた今回の場とは別の機会というかたちになるのではないかと考え ておりますが、それはそれで何かしらの対応をしなければいけないと考えておりま す。 ○遠藤座長 いまのお話でよろしいですか。 ○太田委員 違うと思います。いままで出た議論でカリキュラム改正を実施してい いのかどうかという辺りをもう少し吟味していってほしいという意見です。 ○遠藤座長 それについてお答えをいただいたようには思うのですが、基本的には カリキュラム改正はこの3月末までに決めると理解してよろしいわけですね。 ○看護職員確保対策官 はい。 ○浅田委員 いや、それに対してそれは拙速であるという意見が出ているわけです。 ワーキングの方々も具体的な中身については議論がまだ不十分だとおっしゃってい るわけです。ですから、この方向性はきちんと報告で出されたらいいと思いますが、 改正までを含めて出すことに対してはもう少し議論の余地があるということを言わ れているのであって、先ほどの実行とか実現可能性の問題ではなくて、もともと根 本的なところでもう少し議論をすべきであるという意見が出ていると私は理解しま した。ですから、先ほどの事務局の答弁とは少しずれていると思います。 ○遠藤座長 事務局は、カリキュラム改正に3月末までに持っていきたいというこ とです。ただ、それ以外のさらに幅広い議論についてはまた別途新たな検討をする 場を設けたいと、こういう発言だったと理解しています。 ○村田委員 幅広いことの議論ではなくて、私が今までずっと伺っていて、現場の 方々からこれだけ悲鳴にも近いようなご意見が出ているのはもっと重く受けとめた いと思います。受けとめなければいけないのではないでしょうか。何か、本当に悲 鳴を聞いているような、胸が痛くなるような議論でした。これは、結果的に私たち 患者に全部かかわってくることですから、現場の皆さん方の実感、議論が足りない、 このままカリキュラムを改正されてしまったら何もならないではないかという、こ のことは確かに期限が決まっているかもしれませんが、その中でどうしたらこの悲 鳴を悲鳴ではなくできるかということを厚生労働省がもっと重く受けとめてほしい し、どうしたらいいかということは考えてほしいと思います。これは感想です。 ○遠藤座長 ただいまのご意見を含めて、このようなご意見が出ているわけですが、 事務局のお考えをいただけますか。 ○看護課長 この検討会も今回で8回目ということで、いま求められている看護師 の基礎教育をどうしていくかという議論がずっとされてきて、ワーキングの中で具 体的なカリキュラムの議論がされてきたと認識しております。ワーキングの中での 議論が十分ではなかったのではないかということもあるかと思いますが、そのこと よりも、本当に望ましい看護師のカリキュラムはどのような内容かということに関 して議論が十分にできなかったという思いが、特に看護師のワーキングにあるかと 思っております。保健師と助産師のワーキングはそれなりの議論がされて収束して いると思っております。看護師のワーキングにおいても、現行制度、現行3年間の 枠の中でのカリキュラムの改正案は一応まとまったと理解しております。本当に望 ましいカリキュラムについては十分に議論ができていませんが、現行制度の範囲内 ではここまでというワーキングのまとめが行われたと認識しておりましたので、今 後この検討会でのご議論をいただいた上で整理、まとめていくことができると思っ ています。しかし、委員の方々がこういったものではまだまだ無理なのではないか ということであれば、それはこの場でご議論いただければと思います。 ○遠藤座長 村嶋委員、どうぞ。 ○村嶋委員 保助看は、それぞれにいろいろな課題があるのだと思いますが、私は 現在の保健師の教育が今のままでは保健師の専門性が保てないということで大変危 惧をしています。その危惧が、保健師のワーキングのメンバーがまとまって、今の 26単位を出してきたということにつながっていると思います。そういう意味では、 保健師のほうは現在の混沌とした状況から少しでも抜け出すために、とにかく実習 を中心とした充実と保健師の科目の構造化、それは専門性の明確化につながります ので、是非早くやっていただきたいと考えております。 ○坂本(す)委員 私も太田委員と同じような気持を抱くのですが、看護師の先生方 の中では基礎教育はこれではいけないと思っているのだと思うのです。それに対し て3月31日までに作らなければいけないカリキュラムにどれだけを託そうかという ところが出てくるので、おそらく、それはカリキュラム全部でそこを切り替えてこ れでよかったですよという話にはならないというのがあるから、絶えずこれでいい のかというのが残るのだと思うのです。だから、厚生労働省の課長等に是非お願い したいことは、いろいろなことでこれから波及する問題があったというふうに捉え ていただいて、カリキュラムは、羽生田委員が言われたように、ものすごい大幅な、 現場が混乱するようなカリキュラムを今すぐ作れないということも踏まえて、その 間はどうするのかということと、もう1つ大きな基礎教育を考えるというところに 持っていけば、現場はある意味では納得するのだと思うのです。それなくしてカリ キュラムだけが見えてくると、いま大変問題になっているところがこのままでいい のかという状態で解決したのかと思われると、おそらく、まだ大変つらい悲鳴が出 てくるのではないかと思います。ある意味では、段階的にこれをやってこういうふ うになっていくのだ、ということを示す会議をやっていくのだということが見えれ ば、今回のカリキュラムにおいてはそんなにたくさんのものを追加していくという ことではなくて、若干、次の方向性を見て変えていくということでいいのではない かと私は思います。ただ、90%の課題は残しつつである、それに対しては何らかの かたちで方向性は見出だしたものをつけてもらわない限りは、とてもではないけれ どもこの3月31日に終わるという話にはならないと思います。 ○菊池委員 特に看護師のワーキングは望ましい単位数も議論ができていない、議 論が不十分だということと、出されたものについても、専任教員などいろいろな条 件整備が前提だというワーキングの座長からのお話もありましたので、これをこの ままカリキュラム改正につなげていくのは教育現場からすると非常に不安があるか と思います。坂本(す)委員がおっしゃったように、将来的にはこういう方向になる という、もう少し大局的なところで議論を詰めたものが見えれば、その前提として のここですよということで考えやすいかもしれないのですが、それが見えないとこ ろで、とりあえずというところだけを見せられると教育現場としても非常に不安だ と思いますので、一刻も早く全体的な、将来的なことを見据えた検討会を設置して いただくように厚生労働省にお願いします。 ○遠藤座長 事務局、いかがでしょうか。 ○看護課長 いま委員の方々がおっしゃるように、今回の検討会で議論されたもの の全てがこの3月まででまとまるという状況では当然ないと認識しております。今 後、残された課題については何らかのかたちでもう一度議論を始めていきたいと思 っております。看護師の実践能力を強化するということについては何らかのカリキ ュラム改正をすることが必要と考えており、それが、今回の検討会の成果だと思い ます。 ○小山委員 今日いろいろな意見が出たと思います。この100単位それぞれの案に 対してもいろいろな意見が出ました。それは現場からの意見で、太田委員は養成所 を代表してといいますか、養成所の実態の意味でおっしゃっているのだと思います。 看護師のワーキングのほうも、「条件つき」ということでしたが、その条件整備で次 回の検討会に厚生労働省がどのような回答を持ってくるかによって、もしかしたら この単位数を実現可能なほうに少し変更しなければならないと思っております。私 は、ワーキングのリーダーだったものですから、100単位という案を出しましたが、 一教育者あるいは検討会の委員としましては詰め込みが良い教育成果を生むとは思 っておりません。今度のカリキュラム改正には、基礎のところに「自ら考える」と いう文言を入れました。そうすることは時間的な余裕もある程度必要なのです。で すから、人数が増えないし、年限も増えないのであればどこをどのように調整でき るかという再調整があり、羽生田委員のところにたくさんファックスを送られた 方々も、より前向きにこのカリキュラムを受け入れることがあって初めて成功する と思いますので、是非、次に向けて代替案が出てくるといいと思います。今日1日 の議論の意見は無駄にしていただきたくないと思っております。 ○遠藤座長 その辺は重々わかっております。それでは、非常に多くのご意見が出 ましたし、後ほどまたファックスで事務局に送っていただくというかたちでご意見 をいただいても構いません。実は、もう1つ議題が残っておりまして、報告書の骨 子(案)があります。これについて事務局からご説明いただきたいと思います。 ○看護職員確保対策官 検討会の報告書の骨子ということで、次回はきちんと文書 にしたものをご用意したいと思います。もちろん、ここに書いてあることは本日の 意見を踏まえておりますし、先生方に事前にご意見を頂戴した上でということにさ せていただきたいと思います。報告書の骨子としてはこういう項目でと思っており ます。1つは検討の経緯、1つは基礎教育の現状と課題。これは中間まとめでだい ぶまとめていただいたものプラスアルファというかたちになると思いますが、それ を要約する。3点目としては、カリキュラム改正案について。今日もいろいろご議 論いただいたのですが、改正案そのものと、実施に際して留意すべき事項というこ とで、ここに書いてあるようなことを含めてということです。最後に、今後の課題 についてということです。こういった4点のものについて作成して、また先生方と ご相談させていただきながら取りまとめていく方向にしたいと考えております。 ○遠藤座長 以上のような骨子(案)を作成したいということですが、ご質問、ご 意見はありますか。 ○草間委員 今日、100単位あるいは26・22単位というものを出していただいてい るのですが、これについては現在の3年以上あるいは6カ月でもできると思って出 しているというふうに私たちは受けとってよろしいわけでしょうか。そうなります と、先ほどの小山委員のお話ではないですが、93単位でもかなり難しい。あるいは、 村嶋委員の22単位が26単位になったときに、今でさえきつきつだと言っていると きにこれが3年、6カ月、6カ月というこの期限でできる数字として出されている というふうに受けとって報告書を見させていただけばいいというふうに考えればよ ろしいわけですね。 ○遠藤座長 その辺はどのように解釈したらいいかということです。 ○看護課長 当然のことながら、ワーキングでは現行の範囲内でのご議論だったと 思います。3年間の中で100単位できるということですのでこういうものがつくら れたと認識しております。 ○遠藤座長 よろしいですか。おそらく、先ほどの単位数をどうするかという主た る議論において、意見が分かれている状況になっておりますから、報告書の文言を どうするかというのは第二義的な議論になるかと思いますので、それも含めて次回 に事務局案を出していただくというかたちになります。ご意見がある方はファック スで事務局へお知らせいただければと思います。そういうことで、本日はいろいろ なご意見が出ましたので、修正する箇所もあるかと思いますので、とりあえず、こ れは座長預かりというかたちで、事務局と相談しながらできるだけ皆様方のご意見 を反映するかたちで次回に案を出すということで進めてよろしいでしょうか。 ○坂本(す)委員 今日皆さんが意見を言った中のことを含めてカリキュラムの案を つくられるのですよね。 ○遠藤座長 そういうことです。 ○坂本(す)委員 そのままをオーケーしたということではないわけですね。現場が 大変混乱しているとか、このカリキュラムを受けられない状況があるのではないか ということがたくさん出たわけですが、そういうことですよね。 ○遠藤座長 もちろん、ワーキンググループ案をそのまま受けるということではあ りません。そこはどういう調整をするかは難しいのですが、適切な対応をいたしま す。では、そういうようなかたちで対応させていただきます。ご用意した審議案件 は以上のとおりですが、事務局から何かありますか。 ○柴田指導官 それでは、追加のご意見がありましたら3月2日金曜日までに事務 局へファクシミリ等でご連絡いただければと思います。次回第9回検討会は3月23 日金曜日13時から開催する予定です。以前、14時からとご案内しておりましたが、 13時からに変更となりましたのでお間違いのないようにお願いいたします。場所等 については決まり次第別途正式なご案内をお送りさせていただきますのでよろしく お願いいたします。お忙しいところをご出席いただきましてありがとうございまし た。 ○遠藤座長 ありがとうございました。座長の不手際で20分超過いたしまして申し 訳ございませんでした。