07/02/01 平成18年度第2回医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録 平成18年度第2回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録    日時 平成19年2月1日(木) 18:30〜20:40 場所 厚生労働省7階専用第15会議室 ○事務局 定刻になりましたので、「平成18年度第2回医薬品等安全対策部 会安全対策調査会」を開催いたします。本調査会は、御覧のとおり、公開で 行いますが、カメラ撮りは議事に入る前までとさせていただいておりますの で、御理解と御協力のほどをよろしくお願いいたします。  また、傍聴される方々におきましては、傍聴申し込み用紙に記載してあり ましたとおり、その留意事項、例えば、静粛を旨とし、喧噪にわたる行為を しないこと等を厳守いただきますようお願いいたします。  本日御出席の先生方におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきま して、ありがとうございます。本日の議題に関する参考人を五十音順で紹介 させていただきたいと思います。国立がんセンター医長の國頭先生、納得し て医療を選ぶ会の倉田先生、千葉大学医学研究院教授の栗山先生、名古屋大 学大学院教授の下方先生、北里大学大学院教授の竹内先生、東北大学加齢医 学研究所教授の貫和先生、群馬大学大学院教授の堀内先生、太田西ノ内病院 院長の堀江先生、国立がんセンター東病院院長の吉田先生です。以上の先生 に参考人として御参加いただいております。また試験結果の報告・質疑応答 のため、アストラゼネカ社の方々にも御出席いただいております。  それでは、議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただき たいと思います。以降の進行につきましては松本座長にお願いいたします。 ○松本座長 本日は、大変お忙しい中、このような時間にお集まりいただき まして、ありがとうございました。それでは、まず事務局から本日の配布資 料の確認をお願いします。 ○事務局 お手元の資料の確認をさせていただきます。本日の「議事次第」「出 席者一覧」「配布資料一覧」があります。資料No.1「ゲフィチニブの承認から 現在までの経緯」、資料No.2「1又は2レジメンの化学療法治療歴を有する、 進行/転移性又は術後再発の非小細胞肺癌患者を対象にゲフィチニブとドセ タキセルの生存期間を比較する多施設共同非盲検無作為化並行群間比較第III 相市販後臨床試験結果概要」。参考資料No.1「ゲフィチニブ使用に関するガイ ドライン」、参考資料No.2「イレッサ錠250の添付文書」、参考資料No.3「タ キソテール注の添付文書」です。本日、資料番号を付していない、竹内先生 に御説明いただくための当日配布資料を1部用意しています。過不足等ござ いましたらお申し付けください。 ○松本座長 皆さん、資料はお揃いでしょうか。  それでは、これから議事を進めていきますが、その前に一言申し上げてお きます。本日、参考人として御出席いただいております國頭先生ですが、所 属される国立がんセンター中央病院において、これから御審議いただくゲフ ィチニブの第III相市販後臨床試験に分担医師としてかかわっておられます。 平成13年1月の薬事・食品衛生審議会の申合せにおいて、承認や再評価の調 査審議の場合に、委員が治験分担医師である場合の取扱いが記載されており ます。その内容は、「利用資料関与作成者である委員は、当該資料については 発言することができない。ただし、当該委員の発言が特に必要であると部会 等が認めた場合に限り、当該委員は意見を述べることができる」というもの ですが、今回はこれに準じた取扱いをしたいと存じております。すなわち、 先生は、臨床の第一線で肺癌の治療に携わっておられますので、臨床現場で の使用経験等を踏まえて、御意見を述べていただきたいと思います。ただ、 後半には議論のとりまとめを予定しておりますので、その段階では後ろの席 にお移りいただくようお願いいたします。  それでは、議題1の「ゲフィチニブに関する試験結果等について」に入り ます。本日の安全対策調査会では、ゲフィチニブの第III相市販後臨床試験の 結果を報告いただいた上で、御議論をいただきますが、まずこれまでの経緯 について事務局から説明を簡潔にお願いします。 ○事務局 それでは、資料No.1です。平成14年7月にイレッサ錠については 承認がなされました。その年の秋には間質性肺炎による死亡例が出て、その 10月には緊急安全性情報を発出しております。また、同年12月においては、 安全性問題検討会を開催いたしまして、さらに癌化学療法に精通した医師に より使用すること、投与開始後4週間の入院を基本とすること、といった通 知を発出しております。  その翌年の5月に、米国においてもこの医薬品について認可がなされたと いう状況です。平成16年12月中ごろには、英国のアストラゼネカ社本社に おいて、延命効果試験(ISEL試験)の結果が公表されました。その内容につ いては、全体解析では延命効果がなかった、ただ、東洋人においては延命効 果を示唆するような結果が得られている、ということでした。  これを受けてその翌年の1月から3月まで、計4回厚生労働省において検 討会を開催しました。その検討会で取りまとめた資料を別添で付しておりま すが、3ページ、4ページがその結論です。これについては後ほど見ていた だけたらと思っています。  2ページ目です。その年の6月に、米国FDAがイレッサに関する措置を 発表しています。その内容は、イレッサ治療によって、現在ベネフィットを 受けている方、過去にベネフィットを受けていたと主治医が認める患者さん に限定して使用すること、ということで措置を発表しました。また、イレッ サを市場からは回収しないということを発表したということです。  平成18年10月に、さらに新しい試験結果、コホート内のケースコントロ ールスタディが報告されましたので、安全対策調査会を開催して御審議をい ただきました。その結論としては、従来どおり安全対策を継続すること、試 験結果については医療関係者等に対して適切に情報提供すること等の御指示 をいただいたところです。  本日は第2回目の調査会を開催するに至り、第III相試験の結果を御議論い ただくという経緯になっております。 ○松本座長 ゲフィチニブの承認から現在までの経緯について説明していた だきましたが、御意見、御質問等ございますでしょうか。ないようでしたら 次に移らせていただきます。第III相試験の結果について、御報告をいただき たいと思います。本日は、アストラゼネカ社から出席をいただいております。 前の席にお移りいただけますか。            − アストラゼネカ社移動 − ○松本座長 用意が整ったら御報告をお願いいたします。できれば20分程度 でお願いします。 ○アストラゼネカ社 それでは、アストラゼネカ社の方から結果の報告をさ せていただきたいと思います。「1又は2レジメンの化学療法治療歴を有する、 進行/転移性又は術後再発の非小細胞肺癌患者を対象にゲフィチニブとドセ タキセルの生存期間を比較する多施設共同非盲検無作為化並行群間比較第III 相市販後臨床試験」の結果を御説明させていたただきます。  まず「肺癌とその予後」についてです。肺癌は、日本人における悪性腫瘍 による死亡原因の第1位となっております。また、進行肺癌の1次療法に最 もよく処方されているレジメンは、白金製剤をベースとした2剤併用療法で す。  2次、3次療法の化学療法には適していない患者も多く存在しております が、2次、3次適応患者においても、その後、積極的な治療を行わないBS C(Best Supportive Care; ベストサポーティブケア)の場合ですと、欧米あ るいは過去のプラセボとの結果ですが、生存期間の中央値は4.5カ月から5 カ月程度と報告されております。  本第III相試験は、ゲフィチニブの承認条件として実施された試験で、ドセ タキセルとの直接比較を目指しておりました。  「試験デザイン」についてですが、本試験は上皮成長因子受容体チロシン キナーゼ阻害剤と化学療法剤を直接比較した初めての試験です。多施設共同、 無作為化、オープンの並行群間比較試験です。進行再発の非小細胞肺癌患者 をゲフィチニブ群、ドセタキセル群に1対1に割り付けております。  試験計画書で規定される試験治療の中止基準である病勢進行などの事象が 認められた場合、その後、後治療が行われております。この後治療に関して は、今回規定はしておりません。これらの後治療の経過を経た後、最終的な 生存期間を評価するという形で、試験を実施しております。主要評価項目は 全生存期間です。その全生存期間においてゲフィチニブのドセタキセルに対 する非劣性を証明することが主要評価項目となっております。  主な解析は共変量を調整しないCox回帰分析で行っております。共変量 を考慮しない比例ハザードモデルに基づいたハザード比の信頼区間の上限が 1.25以下であれば非劣性が結論づけられると設定しています。  このCox回帰分析ですが、生存期間の解析によく使用されており、ログ ランク検定と同等の結果が得られるものです。最終解析の目標イベント数は 296イベントと設定しておりました。  被験者の主な選択基準ですが、進行/転移性又は術後再発の非小細胞肺癌患 者です。1又は2レジメンの化学療法治療歴、その中では少なくとも1レジ メンは白金製剤を含む治療を施行された患者さんです。年齢は20歳以上、P Sで表す全身状態は0〜2の患者が登録されております。  「副次的評価項目」に関してです。有効性に関しては、無増悪生存期間、 治療成功期間、奏効率、病勢コントロール率の四つを評価しております。ま た、質問票を用いて随伴症状及びQOL、その中でも肺癌サブスケール、あ るいはQOL全体を評価しております。さらに安全性に関しても評価してお ります。  「臨床試験の実施状況」です。本試験は市販後臨床試験ですが、GCP下 できっちりと実施しており、結果的には逸脱例も非常に少なく、非常に高い 質を保ち、実施できたかと考えております。日本の50の実施医療機関で、合 計490例の被験者が無作為化されております。登録期間は2003年9月から 2006年1月。全生存期間のデータカットオフ日は2006年10月31日でした。 データカットオフ日までのイベント数は306と、目標の296を超えており、 全症例の63%のイベントが得られました。追跡期間の中央値は21カ月でし た。  次は「患者背景」因子です。割り付けられた症例は、日本における2次、 3次治療が対象となる非小細胞肺癌患者集団を適切に反映しているものと考 えています。65歳以上の患者が約4〜5割登録されており、男性がその3分 の2を占めております。PS2の症例に関しては、今回はやや少ない数字で したが、適切に反映しているかと思われます。  また今回割付時の層別因子として、性別、PS、後にスライドでお示しす る組織型を割付けしています。これらは非常に両治療群間でバランスがとれ ています。その他の項目に関しても、比較的バランスがとれた割付ができて おりました。  しかしながら、喫煙歴に関して若干のばらつきがありました。喫煙歴なし の患者さんはドセタキセル群でやや多く登録されており、喫煙歴ありの患者 さんはゲフィチニブ群でやや多く登録されていました。  登録前の「前治療」の状況です。前治療としては1レジメンしか行われて いない患者が8割以上を占めておりました。すなわち本試験では、約80%の 患者が2次治療の患者となっています。またその前化学療法での治療効果で すが、比較的治療効果がよい、薬剤によく反応する患者さんが登録されてい ると考えております。  「腫瘍の背景」です。層別因子とした腺癌あるいはそれ以外という部分は、 非常にきれいに割り付けられています。また、その他の項目に関しても、き っちりと均衡がとれている状態だと思います。  「投与状況」です。投与期間の中央値は、両群とも約60日でした。その投 与期間中に休薬、延期が認められた症例は、ドセタキセル群で約半数、ゲフ ィチニブ群で約4分の1の症例でした。ドセタキセル群においては約10%の 患者さんで減量が行われております。平均投与遵守率を計算したところ、お よそ100%とコンプライアンスの方は非常に高い治験でした。ドセタキセル の投与サイクル数の中央値ですが、3サイクルという結果で、最も短い場合 で1サイクル、最も長い場合で12サイクルの投与が継続されていました。  試験終了後の「後治療」の状況です。ゲフィチニブ群に割り付けられた症 例に関しては、その36%が後治療としてドセタキセルが投与されています。 40%の症例に関してはBSCを含む無治療あるいはゲフィチニブの投与が継 続されておりました。  一方、ドセタキセル群に関しては、約半数以上の症例で後治療としてゲフ ィチニブが投与されておりました。26%の症例がBSCを含む無治療、ある いはドセタキセルの投与が継続されているという状況でした。これを図示し たものが次のスライドです。  こちらは割り付けられた治療を示しています。その後、病勢の進行とプロ トコールに規定した中止基準を満たした症例が、その後の治療として、いろ いろな治療が行われております。  その治療は主治医と患者さんの間で検討されて決められた治療で、非常に いろいろな治療が行われているのが現状です。特にゲフィチニブ群において は、その約3分の1の症例がドセタキセルをその後に投与されておりました。 ドセタキセルに関しては、その約半数の患者さんでゲフィチニブは投与され ているという状況です。  このように後治療に関しては、無作為化された治療と異なり、非常に様々 な治療が行われているということで、全生存期間の解釈を複雑にする可能性 が否定できないと考えています。  続いて有効性の結果です。「主要評価項目である全生存期間」です。全生存 期間の解析対象は、割り付けられた症例全例を対象とするITT (Intention-To-Treat;無作為割付された全ての患者のうちGCP違反の1例 を除く)解析対象集団で行っています。主解析は共変量による調整を行わな いCox回帰分析で行いました。その結果、ハザード比は1.12、信頼区間は 0.89〜1.40という結果でした。  このことは最初に申しましたように、非劣性の限界である1.25が含まれて いるということから、統計学的には非劣性が証明されなかったということで す。また有意差検定の結果、P値は0.330ということで、治療群間に統計学 的な有意差があるということは示されませんでした。  生存曲線を見ますと、約18カ月付近で曲線が交差しています。このことか ら比例ハザード性が崩れている可能性は否定できませんが、本解析では、全 期間の平均としてハザード比を求めており、妥当な結果かと考えております。 1年生存率はゲフィチニブ群で48%、ドセタキセル群で54%でした。生存期 間の中央値ですが、いずれの群でも総じて良好な結果で、ゲフィチニブ群で 11.5カ月、ドセタキセル群で14カ月でした。  「全生存期間に関してサブグループ解析の結果」を示します。これらの項 目でサブグループ解析を行いましたが、これらはいずれも事前にサブグルー プ解析を実施することを規定していたものです。フォレストプロットで示し ており、ハザード比と信頼区間で示しています。信頼区間が1より小さい場 合イレッサが有意に優れているという結果が得られると説明できます。しか しながら、今回すべてのサブグループでそのような結果は統計学的に有意な 差を示したサブグループはありませんでした。  一方、ドセタキセルに関しては、前化学療法におけるベストレスポンスが SD(Stable Disease)という安定状態を保っている患者さんに関しては、 有意差が認められております。しかしながら、この有意差もほかの無増悪生 存期間、抗腫瘍効果では有意差が認められておりませんでした。  「副次的評価項目である無増悪生存期間」です。病勢が進行するまでの期 間の結果です。そのため、後治療の影響が非常に少ない評価項目です。対象 は抗腫瘍効果評価対象症例です。ハザード比は0.90、信頼区間は0.72〜1.12 で、P値は0.335でした。この結果、無増悪生存期間に関しては、統計学的 な有意差は認められませんでした。無増悪生存期間の中央値は、いずれの群 においても約2カ月程度でした。  「副次的評価項目である治療成功期間」についてです。何らかの理由で試 験治療を中止するまでの期間で定めています。本評価項目においては、ゲフ ィチニブ群とドセタキセル群で有意差が認められ、有意にゲフィチニブ群で 治療成功期間が延長することが示されました。ハザード比は0.63、信頼区間 は0.51〜0.77で、P値は0.001未満でした。  しかしながら、本評価項目はいろいろな因子が絡み合って評価されており ます。そのため、臨床的な効果をどのように表現するかは、解釈するために は非常に難しい評価項目となっております。  「副次的評価項目の抗腫瘍効果」です。奏効率においてゲフィチニブ群は ドセタキセル群と比較して有意に奏効率が高いという結果が得られました。 しかしながら、病勢コントロール率に関しては、両群とも約33〜34%という ことで有意差は認められませんでした。なお、今回この結果は主治医判定の 方を示しましたが、この効果に関しては、効果判定委員会の方でも検討させ ていただき、その結果と合致するものでした。  「副次的評価項目である随伴症状及びQOLの評価」です。肺癌サブスケ ールで評価された随伴症状に対する効果にゲフィチニブ群とドセタキセル群 で差は認められませんでした。ゲフィチニブ群ではドセタキセル群に比べて、 Trial Outcome Index(トライアルアウトカムインデックス;TOI)と呼ば れる指標及びFACT-Lという質問票の評価において、QOLの改善が見ら れた症例の割合が高いという結果でした。特に改善率で検討したところ、T OI及びFACT-Lによる改善率は、ゲフィチニブ群でいずれの項目におい ても有意に改善する、という結果が得られました。  「有効性のまとめ」です。試験実施計画書で、事前に定められた全生存期 間におけるゲフィチニブのドセタキセルに対する非劣性を示すという主要目 的は、今回達成されませんでした。ハザード比が1.12、95.24%信頼区間が 0.89〜1.40ということで、事前に非劣性であると結論づけるための信頼区間 の上限を超えておりました。全生存期間において両群間に統計的に有意な差 があることは示されませんでした。全生存期間に与える割付け治療中止後の 治療の影響を評価することは、非常に困難でした。  引き続き安全性について説明します。「有害事象」の発現に関してまとめま した。有害事象発現率は、ゲフィチニブ群、ドセタキセル群いずれも98%以 上ということで、ほぼ全例で有害事象が認められております。重篤な有害事 象、有害事象による中止に関しては、両群ともほぼ同程度の発現率でした。  一方、重篤な有害事象による死亡は、ゲフィチニブ群で4例認められてお ります。このうち3例は因果関係があると主治医から報告されており、この 3例は、いずれもILD(急性肺障害・間質性肺炎)によるものでした。一 方、毒性を判断するCTCグレードというものですが、3以上の有害事象の 発現に関しては、ゲフィチニブ群で約40%、ドセタキセル群で約80%という 結果でした。  「主な有害事象」に関して、このスライドと次のスライドでまとめました。 この合計は有害事象発現率で、二つ目の欄はグレード3以上の有害事象の発 現率、黄色で示したのはグレード3以上の副作用の発現率を示しております。 ゲフィチニブ群で特によく見られた有害事象として下痢と肝機能異常が挙げ られるかと思います。一方、ドセタキセル群の方では、疲労、食欲不振等が 高い頻度で認められていました。  次の表でも示しますように、ゲフィチニブ群で未知あるいは新たに注目す べき有害事象の発現は認められておりません。すべての有害事象が既知の有 害事象で、過去のゲフィチニブの臨床試験のデータや、最新の添付文書の記 載と合致しているものと考えております。  さらに別の有害事象ですが、ゲフィチニブ群では、特に発疹、ざ蒼などの 皮膚関連の症状の発現率が高いという結果でした。ドセタキセルの方では脱 毛症が高い頻度で認められておりました。  「血液毒性」に関して、特に注目しています。好中球減少症ですが、ドセ タキセル群では約8割の患者さんに好中球減少症が認められています。また 発熱性の好中球減少症に関しても、約7%の患者さんで認められていました。  ゲフィチニブ群では約10%の患者で好中球減少症が認められていましたが、 このうち23例は因果関係を否定されています。すなわちゲフィチニブによる 治療終了後、安全性の追跡期間中に、他の治療に変わった後での発現でした。 4例の発熱性好中球減少症に関しても、同様でした。  次に「急性肺障害・間質性肺炎として分類された事象」に関してまとめま した。今回、ゲフィチニブ群では14例の患者さんから、ドセタキセル群では 7例のILDが報告されています。発現頻度に関してはゲフィチニブ投与群 で高いという結果でした。しかしながら、グレードに関しては両群とも同程 度で、グレード3、4以上に関しては、同程度かと考えております。死亡例 はこの3例ですが、ILDによる死亡、と主治医から報告されています。  今回、ゲフィチニブ群におけるILDの発症率は5.7%、死亡率は1.2%で、 これらの結果は、過去に我々の方で調査した特別調査の結果や、現在添付文 書に記載されている発現率、死亡率と何ら変わるものではないと言えるかと 思います。  「安全性についてのまとめ」です。ゲフィチニブの安全性プロファイルは、 最新の添付文書の記載内容とほぼ同様でした。ゲフィチニブ群でILDによ る3例の治療関連死が報告されており、ドセタキセル群に関しては報告され ていません。  本試験によるILDの発現頻度及び死亡率は、最新の添付文書に記載され ている数字とほぼ同程度でした。ドセタキセル群では好中球減少症あるいは 発熱性好中球減少症が見られましたが、治療関連死は報告されませんでした。 以上です。 ○松本座長 御報告ありがとうございました。御議論をいただく前に、ただ 今の報告に対して御質問等はございませんか。 ○堀内参考人 今の御報告の中で、患者背景として、これまでのいろいろな 議論の中で、遺伝子変異が、有効性といちばん大きな関連がある因子になり 得るのではないかとなっていると思います。この中にそれが入っていないの ですが、この前のISELの検討会のあとで、今回の第III相試験についても EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異については調査をするために検 体を回収していると回答されていたと思います。すべてが回収されるわけで はないでしょうから、全体の2割ぐらいをメドにやろうとしているという話 がありました。それらのデータはどのようになっているのか教えていただけ ればと思います。 ○アストラゼネカ社 先生の御指摘のとおり、全体の約2割、100例強の患 者さんから組織あるいは血清をいただき、現在EGFR遺伝子変異に関して 解析をしているところです。結果については、まだ出てきておりません。 ○堀内参考人 ISELのときもそうでしたが、遺伝子の解析が大変遅いよ うに思います。今、いろいろな病院では、遺伝子変異をチェックして、それ から投与するようにしている所もかなりあると思います。既にこの調査は昨 年10月31日にデータのカットオフということですし、登録期間は2006年 1月までです。ですから、十分に解析ができる時間の余裕があったのではな いかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。 ○アストラゼネカ社 検体の回収に関しては、それほど早急にできなかった という事情があります。また解析方法に関して、遺伝子変異の解析が適切で あるかということに関しても検討を加えておりましたので、その辺りで実際 の解析をするのが遅れたという事情があります。 ○松本座長 その点はまた後ほど話題になると思いますが、ほかにありませ んか。事務局に確認したいのですが、本試験の信頼性確認みたいなものはど うなっていますか。 ○安全対策課長 この試験は承認条件で行われている試験で、今後、この試 験をこの委員会で詳細に解析していただく上で、この試験にかかわる資料の 信頼性が確保されていることは、大変重要だと考えています。私どもとして は、今回の資料が、省令で定められている、この市販後の調査の基準に従っ て収集され、作成されたものであることの確認を速やかに行いたいと考えて います。 ○松本座長 本試験の信頼性について、きちんと確認するようにしてくださ い。ほかにありませんか。 ○貫和参考人 先ほどのスライドに関しての質問です。スライド17番でゲフ ィチニブ割付け群で、奏効率としては明らかな有意な差があって、そこを議 論してほしいということにもかかわらず、長期においてその差がはっきりし てこなくなるということは、こういう場で公開されていますので、少し説明 をしていただかないと、その理由が理解されないのではないかと思いますが、 会社側から御説明いただけますか。 ○アストラゼネカ社 まだ最終的な検討はできていませんが、最初の患者背 景で説明した前治療に対するレスポンスですが、化学療法剤に比較的良くレ スポンスする患者さんが登録されているという状況がありました。その部分 も一つのSD症例が、比較的多かったという状況に反映しているものかもし れないとは考えています。ただ、それが決定的な因子であるかどうかについ ては、まだ分かっておりません。 ○貫和参考人 現実の臨床の場で使っておりますと、耐性という言葉が使わ れておりますが、最初はゲフィチニブが効いていても効かなくなるというこ とに対しての説明が補充されないと、非常に混乱を招くのではないかと思い ます。 ○松本座長 その点、よろしくお願いします。ほかにございませんか。 ○松本座長 それでは、本日のこれからの進め方ですが、まず試験結果につ いて、統計と臨床の先生方から御意見をいただき、議論をいただきたいと思 います。その後、今後の方針について検討していただきたいと思いますが、 いかがでしょうか。         (異議なし) ○松本座長 それでは、試験結果についての御意見をいただきたいと思いま す。まず統計の専門家である竹内先生から、試験結果について御意見をお願 いします。 ○竹内参考人 北里大学の竹内と申します。今、発表していただいた試験に 対して、統計的にどのようにして私どもが考察していったかを発表させてい ただきたいと思います。  最初は、企業の解析結果に対する見解です。まず第1番目としては、比較 群間のバランスはとれており、無作為化が正しく機能し、群間の比較可能性 が確保されていると考えられます。  次は、企業の方が先ほど言われたように、Cox回帰モデルが応用されて います。その場合にはハザード比で解析結果が表されます。ハザード比の説 明ですが、瞬間的な死亡比率を指しています。Cox回帰モデルでは、時間 の経過にかかわらずハザード比は一定であるという比例ハザードを前提とし て解析をしております。実際にそういう前提が成り立っているのかどうかを、 私の方で検証しました。その結果、その前提が成り立っているとは考えにく いという結果が得られましたので、今回の主たる解析結果から治療効果、す なわちゲフィチニブのドセタキセルに対する非劣性を評価することは難しい と考えております。  これは先ほど示された生存時間曲線です。生存時間曲線とは何かを御説明 します。生存時間曲線は、時間が経過するに従って生存率がいかに変化して いくかを表している曲線です。すなわち臨床試験の最初では全員の被験者が 生存していますので、生存確率は1となります。しかしながら、時間が経過 するに従って、臨床試験の被験者が亡くなっていきますので、その生存率が 時間によって変化していきます。青い線がドセタキセル群で、赤い線がゲフ ィチニブ群の生存曲線です。先ほど御説明がありましたように、約10カ月、 または15カ月まではドセタキセル群の方が、ゲフィチニブ群に対し生存率は 上回っています。ところが、約18カ月を過ぎたところで、ゲフィチニブ群の 方がドセタキセル群に対して生存率は上回っているということを、この生存 時間曲線は示しています。  そこで私たちが実施した追加解析ですが、ドセタキセル群に対するゲフィ チニブ群の治療効果が、実際に時間に依存して変化しているのかどうかを検 証するために、時間ごとに生存率の比を評価しました。その結果は、次の表 で示します。  簡単にこの表について御説明します。縦軸のゼロは、ドセタキセル群とゲ フィチニブ群が、瞬間的に死亡する確率が同じであることを示しています。 ゼロ以上が、ドセタキセル群がゲフィチニブ群に対して生存率が高い。ゼロ 以下のところが、ドセタキセル群に対してゲフィチニブ群の方が、生存率が 高いという意味合いを持っています。先ほど示したこの生存曲線カーブは、 本日議論されている臨床試験から得られたわけですが、このデータを利用し て、瞬間的な死亡率が、時間的にどのように変化しているかを示しているの がこの図です。実線で示しているのが実際に先ほどの生存時間曲線から推定 したドセタキセル群に対するゲフィチニブ群の治療効果です。上の点線は上 限の信頼区間95%、下の点線が、下限の95%の信頼区間を示しています。  この図が示していることは、約10カ月又は12カ月まではドセタキセル群 の方が、ゲフィチニブ群に対して生存率が非常に高くなっていることを推定 値が示しています。95%信頼区間の下限から判断しても、やはり10カ月前で は、ゲフィチニブ群に対してドセタキセル群の生存率が非常に高くなってい ます。ところが、1年を過ぎますと生存率がゲフィチニブ群の方が、ドセタ キセル群に対して、非常に高くなってきています。  この図が示していることがもう一つあります。臨床試験の初期のころは、 非常に情報量があります。というのは、患者さんが非常に多く臨床試験に残 っており、その95%信頼区間が非常に狭くなっています。ところが、24カ 月ぐらいになってきますと、ほとんどの患者さんが死亡していますので、情 報量が少なく、推定値ではゲフィチニブ群の方が、ドセタキセル群に対して、 生存率が非常に高いと示していますが、その推定値の信頼度は、データ数が 非常に少ないので、95%信頼区間は広くなっており、不安定な結果である ことを示しております。  追加解析結果の解釈ですが、第一に、早期1年未満における生存率につい ては、治療効果の95%信頼区間から判断してドセタキセル群が、ゲフィチニ ブ群よりも優れていることが示唆されています。  第2番目に、24カ月前後では、治療効果の点推定値は、ゲフィチニブ群は ドセタキセル群に対して良い結果を示しています。しかしながら、情報量が 非常に少ないため、95%信頼区間は大変広くなっています。そのため、こ の時点においては、ゲフィチニブ群はドセタキセル群よりも優れているとい うことは、積極的には言い難いという結果が、この臨床試験からは示唆して いると解釈しています。  まとめです。最初に、具体的にどのような人が、どのような治療で、より 恩恵を受けているかということは、先ほどから議論があったような予測因子 及び予後因子の探索など、非常に詳細な解析が必要になってきます。ところ が、私の方がデータをいただいたのが先週の木曜日の午後でしたので、現在 解析中ですが、結果の頑健性又は検証等で時間が要りますので、現在、実施 している最中です。ただし、いずれも探索的な解析ですので、ここから得ら れた新たな仮説については、別途検証すべきであると判断いたします。  第2番目に、予測因子及び予後因子を特定できたとしても、治療効果が時 点ごとに異なっている結果の場合、治療選択はリスク・ベネフィットバラン ス、すなわち早期の生存率を重視するのか、2年後の生存率を重視するかに 基づく判断によって決定されるのではないかと判断いたします。  最後に、少なくとも現時点では、今回の試験対象集団では、平均的な意味 で、早期生存率については、ドセタキセル群が優れていることが示唆されて います。24カ月前後では、ゲフィチニブ群の生存率は良かったのですが、情 報量が少ないため信頼区間が大きく、現時点では積極的には言い難いと判断 しています。以上です。 ○松本座長 ただ今の竹内先生の御説明に対して御質問があればお願いしま す。 ○堀内参考人 今のお話の中でCoxの回帰分析は、これによると妥当では ないだろうというお話でしたが、そうしますと、このようなケースの場合に は、どういう分析が最もフィットすると考えられるでしょうか。 ○竹内参考人 今後共変量、いわゆる重要な予後因子等を、Cox解析で調 整し、調整因子ごとに比例ハザード性が成り立っているのかどうかを検証し ながら、解析していくのが妥当かと思います。その作業は現在やっておりま す。ただ、この時点で結果はどうかということは、もう少し時間をいただか ないと発表できないと思います。現在、先生が言われるように、企業の方が 発表された解析手法はプロトコールに書かれておりますので、その解析に対 して、追加解析を実施しこういう結果が出てきましたので、その結果をもと にして発表させていただいた判断をするのが妥当であると、現時点では考え ます。 ○堀江参考人 先生の分析では、トータルのデータでおやりになっています が、例えば、女性で、腺癌で、非喫煙というのに限定しての対比ということ では、まだできていないのでしょうか。 ○竹内参考人 解析いたしました。ただ、データをいただいて、まだ間があ りませんので、実際にデータを読み込むだけでも1日以上かかってしまいま した。私がいただいたデータが会社の方が解析されたデータと全く同じもの だということを確かめなければいけないということもありますので、この場 で解析結果を申し上げるのは適切ではないと思います。なるほど女性で腺癌 で非喫煙者の方は、それ以外の被験者の方と比べて効果はありました。しか しながら、ドセタキセル群とイレッサ群との比較に関しましては、いろいろ 検定はしているのですが、その解析結果が今のところは、まだ、必ず2人、 3人で本当にプログラムが合っているのかどうかも検証できておらず、この 場で発表するのはまだ不適切であると思います。 ○栗山参考人 データの解析に最初想定していたやり方だとクロスするとい うことで、不適切であるという御判断だったと思います。確かにそういうこ とはそんなに多くはないのではないかと思います。このトライアルでは、後 治療がAという薬とBという薬を比較して、あとでAのあとにBというわけ ではないのですが、B’のようなものが入ってきますが、そういう影響とい うのは相当きているのではないかと思うのです。伺いたいのは、使用期間は A、Bともに60日ぐらいとデータに書いてあったと思いますが、次の後治療 はいつごろから、どのぐらいやったかという実態が分かれば、先ほどのグラ フでクロスする所との関係が分かるかと思うのですが、その辺いかがですか。 ○竹内参考人 その辺も私たちの方で検討させていただいたのですが、プロ トコール上はドセタキセルを使った患者さんは、次にはドセタキセルを使え ない。ドセタキセルを使った患者さんはイレッサを使えない。イレッサを使 った患者さんはイレッサを使えない、ドセタキセルは使えない。ただし、患 者さんの要望があった場合はこの限りではないという条件があります。  また後治療も現段階では十分検討してはいないのですが、いろいろな後治 療がされています。私から先生方にお聞きしたいのですが、データ解析でも し何らかの結果が出てきたとしても、臨床的に意味があるかというと、私の 方は判断できない状況です。まずこの臨床試験を始める前に、結果に影響を 与える因子、先ほど企業の方も示していたように腺癌又は非腺癌、スモーカ ーまたはノンスモーカーとかの因子は、初めから予測されて、両群にきれい に分かれているのですが、後治療に関してはこの臨床試験では、デザイン上、 たぶんコントロールできないと思います。ですから、私の方からお聞きした いのは、もし結果が出て、統計的に意味があっても、臨床的に意味があるの かなという気はします。 ○栗山参考人 それは臨床の現場で患者さんの要求があった場合に、1回使 った薬は使えないのだと言っても、できないという現状を反映していること だと思います。  私が伺いたかったのは、まとめの最後の先生のスライドの2番目で、「予測 因子及び予後因子を特定できたとしても、治療効果が時点ごとに異なる結果 の場合、AかBかという治療法の選択は、リスク・ベネフィットバランス、 早期の生存率を重視するのか、2年後の生存率をより重視するのかに基づく 判断によって決定されることとなろう」とありますが、これだとあらかじめ Aを選択すると早期、Bを選択すると2年後という印象を与えますが、現場 ではAとBの両方を使っているわけですね。そういう可能性があるのではな いかと思って、簡単には言えないのではないかと思います。 ○竹内参考人 今現在、二つの生存曲線があり、その生存曲線を見ていくと、 初期の方は明らかにドセタキセル群の方がよく、クロスしている後ではイレ ッサ群の方がいいことが伺えます。ただし、データをいただいて間もないの で、詳細な解析ができていない状態です。具体的に生存曲線カーブから、現 時点で何が言えるのかということで、時間によって治療の効果が違っていま した、ということだけを述べました。  まだはっきりしていないのが、実際にイレッサを使って、ずっと反応され る方もおられると思いますし、そこが先ほど議論になった、EGFRのミュ ーテーションに反応した方、反応しなかった方という情報が分かってくると、 もう少し詳細な解析結果が出てくると思います。現時点においては、生存曲 線カーブの中には、いろいろな因子を持った患者さんが含まれておりますの で、そこをいかに統計的に調整していくかの作業については時間的に余裕が なかったというのが現状です。 ○松本座長 よろしいですか。 ○吉田参考人 ドセタキセル群の半数近く、ゲフィチニブが入るという状況 ですよね。私が危惧するのは、それがランダムに入るわけではないのです。 おそらく担当医が、女性とか非喫煙者とか腺癌だとか、そういうふうな患者 さんにゲフィチニブを使って、ほかの患者さんにはほかの化学療法をすると いうことは大いにあり得ると思います。そうすると結局、片方のゲフィチニ ブの後治療がセレクティブになってしまい、正しい評価ができていない可能 性もあるので、先生のところにもしデータがあるのであれば、またその辺の チェックをして、後で教えていただければと思います。よろしくお願いしま す。 ○竹内参考人 これは私からの要望ですが、もし先生方でこういう因子に興 味があるということを、こちらの方に御指示いただければ、そこを重点的に 見ていきますのでよろしくお願いします。 ○松本座長 今後の検討をよろしくお願いします。 ○竹内参考人 はい。 ○松本座長 ほかにございませんか。 ○下方参考人 奏効率が、かなりこの両群で違いがあったように思いますが、 この奏効率が予後に大きく影響する可能性があると思います。ゲフィチニブ 群で奏効率が22.5%、ドセタキセル群で12.8%と、倍近い違いがありますが、 それが生存に関与してこなかった要因というのは推測できるのでしょうか。 ○國頭参考人 実際の臨床現場で使っている者として推測を申し上げます。 以下、イレッサと言わせていただきます。イレッサのような薬剤が効く人は、 EGFR変異のある腫瘍を持っている人と相当重なると思われています。そ ういう効く人には非常に効果があるけれども、それがない腫瘍にはほとんど 全く効かない。ドセタキセルのようなサイトトキシックエージェント(殺細 胞性薬剤)は、すべてとは言わないまでも、大多数のポピュレーションで少 なくともちょっとずつは効く。だから今までの化学療法と化学療法の比較で は、大多数のポピュレーションにちょっとずつ効く、そのちょっとずつが多 いほうがいいということだったのです。ところが今回は治療のコンセプトが 違います。2割の人に効いていれば、ほかの8割の中の6割にちょっとは効 いているだろうという薬と、2割の人に効いているけれども、ほかの8割の 人には全然空振りという薬と、やはり違ってくると思います。  タルセバのBR21のトライアルでも、レスポンスは10%くらいでした。あ の10%がむちゃくちゃ効いていて、ほかの人は全然効かないと仮定すると、 シミュレーションをかけると無治療群とサバイバルカーブはほとんど重なる らしいです。私も拝見しました。そうするとタルセバでサバイバルカーブが 開いたのは、残りの9割の人でもちょっとは効いているというところがあっ た。もしかしたらイレッサもちょっと効いているところがあるかもしれない が、あまりにも弱いので出てこない、ということも推測されます。  私は先ほど竹内先生からこういうことをお聞きしたと理解しています。要 するに比例ハザードが証明されるポピュレーションを見つけるというのは、 例えばイレッサが効かないポピュレーションだと、ドセタキセルと何もしな い比較になってしまうので、そうするとドセタキセルの効果を比例ハザード で見られる。イレッサが効くポピュレーションだと、イレッサからの効果と ドセタキセルの効果を、非常にセレクテッドなグループに対して比例ハザー ドで見られる。あれは全部が重なっているのでクロスしてよく分からないけ れども、それを分けることができれば、この人に対してはこっちの効果、こ の人に対してはこっちの効果というのは分かるだろうと理解したのですが、 合っていますか。 ○竹内参考人 もし比例ハザード性できっちりと評価しようとすれば、いま 先生が言われたようなことをしないといけないと思いますが、まず全体とし てこういう結果がありました。実際にこういうような生存曲線が各群で書け ました。それに対してドセタキセルとイレッサがどういう効果がありますか という質問があった場合には、いま企業の方がされた共変量調整で、解析し てみるという作業になっていくと思います。 ○下方参考人 先ほどのところに戻りますが、分子標的薬とサイトトキシッ クの薬剤との比較を、奏功率で見るというのは非常に難しいと思うのです。 このゲフィチニブの奏功率はかなりいいなという気はしたのです。 ○國頭参考人 たしか最初のフェーズIIのIDEALトライアルでしたか、あの レスポンスレートは日本人では27.5%でしたから、まあ合っている。むしろ フェーズIIからフェーズIIIになるに従ってちょっと下がるのはそうなので、 それを見込むと大体再現性があるレスポンスレートだろうと、私はこれを見 て解釈しました。  ただ、問題は、ステーブルディジーズの人の割合が非常に少ない。だから メジャーレスポンスを得られない患者さんの多くが、プログレッシブディジ ーズで病気が進行してしまう。今まで私たちは感覚として、小さくならなく ても、差し当たり抑えている人にはベネフィットがあるのではないかと思っ て継続投与していましたが、これだけNCの患者さんが少ないということに なると、もしかしてそういう患者さんは何もしなくても一定期間、病気がお となしくてNCなのであって、効く、効かないというのは画然と分かれてい るのかもしれないというふうにも思ってしまいます。それはまた別のデザイ ンで検証しないと分からないことだろうとは思います。 ○松本座長 ほかに竹内先生に対して御質問はございませんか。臨床系の先 生方から御意見をいただきましたが、改めて今度は臨床側からの御意見を述 べていただきたいと思います。國頭先生からお願いできますか。 ○國頭参考人 いろいろとデザインが今までと違うので、今、考えれば非常 に異なったコンセプトの治療を比較したということになります。極論すると 例えば化学療法と手術を比較するようなものですので、果たしてそれがCo x回帰の分析をしてハザードレーシオを出して、Pバリュー云々というのは 妥当であるかどうか、今から考えるとかなり疑問があるところがあります。  私は、少なくともこの試験が始まるときはそうかと思っていたのですが、 今から考えると、この手の試験でサイトトキシックエージェント(殺細胞性 薬剤)とターゲットべースドドラッグの比較試験というのは、ほかの癌種を 見てもあまり例がないと思います。ただし、その言い訳はともかくとして、 このデータをそのまま見ると主にセカンドライン、おそらくサードラインだ ったとしても、背景について私は詳細を知りませんが、セカンドラインのス タンダードと言われるドセタキセルが入ってないサードラインですから、大 体セカンドラインの患者さんで、アンセレクテッドな(特に選択をかけない) 非小細胞肺癌の患者さんでは、あのサバイバルカーブを見ると、どう見ても イレッサの方が下に行っています。非劣性が証明されなかったわけですから、 この段階ではプラチナの後の2番目の化学療法としては、差し当たってはま ずドセタキセルをお勧めする。それはイレッサの方が飲み薬で便利だとか、 もしくはQOLがちょっといいとかいうデータもありましたが、それでもド セタキセルをお勧めすると結論するのが妥当だろうと思います。ただし、そ の例外として、こういう患者さんではイレッサの方がいいというサブセット が出てくるかどうかは別問題です。  それが終わった後、ドセタキセルが無効となった後にイレッサが意義があ るかどうかということは、この試験のプライマリーの結果は何も教えてくれ ない。ただ、セカンダリーの結果としてレスポンスが2割ちょっと再現性を 持ってあるということは、その集団を正しく選定することができ、リスクベ ネフィットを十分検討することができれば、セカンダリーのことからすると イレッサの意義はあるというふうに判断するのが、たぶん妥当であろうと思 います。ただし、この試験はそもそも、それを見るものではなかったという ことになります。 ○松本座長 こちらから指定しては恐縮ですが、栗山先生、下方先生、貫和 先生、堀江先生の順にコメントを一言お願いします。 ○栗山参考人 この検査の結果を見てですか。 ○松本座長 ええ。この結果に関して臨床の立場からのコメントをいただけ ればと思います。 ○栗山参考人 私どもの施設は、このトライアルに入っておりませんし、プ ロトコールも詳しいことは分からないのですが、この結果は今まで私どもが ゲフィチニブを使ってきた現場の感覚と、よく合っているなという感じがし ていたのです。つまりセカンドラインのものに何を選ぶかといった場合に、 受け入れられればドセタキセルをまず推薦していましたし、それでない患者 さんには、ゲフィチニブをあげてこういうものもあるよという話をしていた ということです。ですから、この両者の間が非劣性であるということが証明 されれば同じような重みづけをしてプレゼンテーションするのですが、今ま ではそういう事実がなかったのでそうはしてこなかった。その意味で、今回 の結果は今までの現場の感覚と同じかなと思いました。  もう一つは、多少差があってドセタキセルの方がいいというのは分かった のですが、先ほど出ていたゲフィチニブでQOLが少し良いということが、 延命と比較してどれだけの重みがあるかということは、患者さんによって異 なるということをいいたいと思います。最近の患者さんの動向を考えると、 QOLを大変重く見る人もいます。全生存期間でいくとドセタキセルとゲフ ィチニブの50%生存率で、先ほどそれぞれ12カ月と14カ月であるというこ とでした。わずか2カ月ぐらいの差なものですから、化学療法をかなりやっ て、頭髪もすっかり受け落ち、造血機能もかなり抑制されても2カ月延期す ることを望むか、そうでないかとなると、人によっては後者を望むというこ とを強く言う方もおられると思います。ですから説明するときにも、このぐ らいの差はありますよということを今度はかなりはっきり言えるということ で、患者さんに説明するときの根拠が出てきたなと思います。人によっては、 それぐらいの差ならばこちらを選ぶという人が出てくる可能性はあるかもし れないと思います。 ○下方参考人 今回の結果から考えれば、原則的にはセカンドラインとして ドセタキセルを使うということは、今までとたぶん変わらない方向だと思い ます。ただ、例えば臨床的に、腺癌で、女性の方で、非喫煙者であると、場 合によってはEGFRの遺伝子変異も検討できて、それがポジティブである という患者さんが見えるときは、セカンドラインとしてもゲフィチニブも使 うということはあり得ると思います。  それと、今、言われたようにQOLの問題とかいろいろな問題を総合的に 考えて、実際、現場では判断されることだと思いますが、今回のこのデータ 自身から考えられることは、セカンドラインとして今までのドセタキセルが 使われていたということを、改めて立証できたのかなと考えます。 ○貫和参考人 私も臨床の現場の実感としては、今の栗山先生あるいは下方 先生の言われていることとほぼ同じであると思います。問題は、この試験が 承認後の試験として義務づけられていたというところです。その後、2004年 4月末にEGFRの変異が実際の標的ではないかという論文が出て、それが 先ほど國頭参考人が言われた、コンセプトが違うということになるわけです が、この試験にしても前回のISELにしても、非常に混乱したメッセージを 患者に伝えることになると思います。これは、私は製薬会社としては責任が 重いと思います。ですから、先ほど國頭参考人が言われたように、コンセプ トをはっきりした2次試験をできるだけ早く実施して、正しいメッセージを 伝えていっていただきたいと思います。 ○堀江参考人 今まで既に述べられている意見とそんなに大差はありません けれども、今回のデータを見せていただく限り、ゲフィチニブを使用した例 において、生存曲線が急に下がってくるというのは明らかなデータだと思い ます。したがって、この点を見ればドセタキセルを先に使うべきだというこ とが言えると思います。  ただ、今までの質問でも申し上げましたように、今までの日本におけるデ ータの中において、ある非常にレスポンスの高い症例がデータとして示され てきているという事実があるわけです。したがって、そのデータ自体につい て慎重にそれに対する対応は考えてもいいのではないか。先ほど堀内先生か らも御指摘があったように、アクティブ・ミューテーションのあるような症 例とか、女性で非喫煙者で腺癌で、という症例に対しての説明をするときに おいては、ドセタキセルでない選択がされるという可能性は残されるのでは ないかと思います。これは、限定した中での対応ということになるかと思い ますが、それは私の意見です。 ○松本座長 ほかの先生からも御意見をお願いします。吉田先生、いかがで すか。 ○吉田参考人 非劣性試験で証明されなかった場合の解釈はすごく大変で、 有意に劣性なのかは分からないわけです。同じであるかどうも分からないと いうことになりますので、基本的に私の考え方としては、要するに2次使用 としてゲフィチニブを全例に使ったほうがいいですよという根拠は、少なく ともないということは言えると思います。  もう一つは、無増悪生存期間というのを私たちは注目するのです。という のは、全生存期間というのはいろいろな結果を最終的に集約したものですが、 無増悪生存期間というのは、その薬がどれぐらいインパクトがあったかの指 標になります。今回のを見るとほとんど一緒なのです。ですから薬自体は、 セカンドラインで使ったときにインパクトは一緒なのだろうと思います。た だ、次にイレッサでフォローしたほうがいろいろメリットを受ける患者さん がいるらしいということ。それはまだ全然有意差がありませんから言えませ んが、そういったことを推測はできます。少なくとも私が結論的に何か言え るとしたら、そういうイレッサを、全例に使ったほうがいいという根拠だけ はないということは言えると思います。 ○松本座長 ほかに、この試験の結果について御意見がございますか。 ○堀内参考人 先ほどの話の続きになるのですが、國頭先生が言われたよう に、いわゆる化学療法剤と分子標的薬は考え方を変えなければいけない。そ れを一緒に比較すること自体が難しいだろうと思います。これは無治療でや っている患者と、日本人ですから遺伝子変異が3割から4割ある。それの有 効性を持った患者がトータルとして出てきているから、こういうような感じ に出てくるのではないかと思います。最後のところは有効な患者が残ってい るという見方をすれば、この結果というのは理解できるのではないかと思い ます。  したがって、分子標的薬というのはすべての患者に使えるわけではない。 有効性のある患者を見極めて使うことが大変重要であると思います。前回、 ISELのときもそうですし、その後に出たガイドラインを見ても、遺伝子変異、 EGFRのミューテーションが重要な役割をしているだろうということは言 われていますが、ただ、その時点では検査方法等で十分にそれをディテクト できないのではないか。感度の問題とかいろいろあったと思います。  ただ、現在では、ごく近々に論文が出ると思いますが、30分でニードルバ イオプシーで細胞が200分の1ぐらい入っていれば、それでディテクトでき るというSMAP法という方法が開発されています。私たちの病院でもそれを 臨床応用し始めていますけれども、そういうようにきちんと調べて有効なこ とが予想される患者に使う。それはこのイレッサだけでなく、今後、いろい ろな分子標的薬が出てきた場合に同じことが言えるのだろうと思いますが、 そういう考え方をきちんとする必要があるのではないかと思います。 ○松本座長 一通り御意見が出揃いましたので、これまでの御意見を踏まえ て、今後とるべき対応を含めて御検討いただきたいと思います。 ○國頭参考人 私は後では言ってはいけないらしいので、ここで申し上げま す。スタディ自体に関して、私は参加者ですので最初の設定を知っています。 確かイレッサが14カ月で、ドセタキセルが12カ月と見込んで、非劣性を証 明しようとしました。ただ、これはデザインからして先ほど吉田先生が言わ れたように、そもそもドセタキセル群になっているのは、プロトコール終了 後、医師がある程度正しく選んで当たりそうな患者さんに、後治療としてイ レッサを使っていますので、ドセタキセルと、その後医師が選んだイレッサ と、それとイレッサの比較ですから、その意味で勝ち目は初めからなかった。 アンダーパワードトライアル(underpowered trial)であったことはまず間 違いない。設定が甘かっただろうと思います。  もう一つ、ミューテーションについての議論は誠にそうなのですが、例え ば国立がんセンター中央病院が論文を出したときに、ミューテーションがあ る人のレスポンス率が82%、ない人は11%で、明らかに差があります。あり ますが、こちらにはドセタキセルがあります、ほかにも治療のオプションが あります、そういう人の11%と、ほかにはもう何もないという方の11%は、 自ずから意味が違う。治療選択する上で、ほかに殺細胞性抗癌剤が十分オー ケーであり、ドセタキセルが相当効くことが見込めるという方と、それも全 部使ってしまって、治療手段が尽きたという患者さんの立場と、自ずから違 うだろうと思います。それは混同してはならないだろうと思います。 ○松本座長 それを含めて最後にまとめていただきたいと思います。議論の 進め方として、安全性と有効性に関する今後の方針について、御意見を伺い たいと思います。最初にこの薬剤の安全性に関する今後の方針について、御 意見はございませんか。間質性肺炎の発症率などは、これまでの知見と比べ てどうでしょうか。事務局で答えられますか。 ○安全対策課長 アストラゼネカ社からのスライドで言うと、25枚目ですが、 急性肺障害・間質性肺炎として分離された事象というのがあります。そこで 発症率として5.7%という数字が出ていますが、これは添付文書の方には 5.8%という形をこれまでの知見としています。死亡率の単にパーセントだけ でも添付文書の数字の中より小さい数字ということですので、そういった意 味から大ざっぱに言って、これまでの知見の範囲内ではないかと考えていま す。 ○松本座長 この安全性について、何か御意見等ございませんか。先ほど事 務局から説明がありましたように、安全性についてはこれまでの情報と特段 の差異はないので、これまでの安全対策を継続するということで、よろしい でしょうか。                  (異議なし) ○松本座長 では、そのようにさせていただきます。次に有効性に関してい ろいろと御意見をいただきましたが、この点について何か御意見をいただけ ますか。これまでの御意見を参考にさせていただきますが、特に投与初期に ドセタキセル群が優れているということが示唆されたわけですけれども、こ のことからいろいろ御意見をいただきました。大半がそうだったと思います が、非小細胞肺癌の2次治療においてドセタキセルに優先してゲフィチニブ を投与することについては、どのように考えたらよろしいでしょうか。 ○堀内参考人 一般的にトータルとして言えば、そのとおりだと思いますが、 変異のある患者は優先して使ったほうが副作用も少ないし、よろしいのでは ないかと思います。その辺をこれから区別した議論をしたほうがいいと思い ます。 ○松本座長 その辺も含めて御意見がなかったものですから、ポイントとし て今後のことをどうするかということでお尋ねしました。そういうことを含 めて御意見がございますか。 ○堀内参考人 ですから私の意見は、ミューテーションしている患者はかな り効くケースが多いだろうと思われますので、その場合には早い時期から使 ったほうが、かえっていいのではないかという気がします。ですから、一般 的に言えばドセタキセルで結構だと思いますが、変異がある場合にはそれを 使う。ただ、耐性の問題がありますので今後の問題だと思いますけれども、 そのほうが治療としては有効であろうと思います。 ○松本座長 臨床の先生から出ている点で先ほど一度申し上げましたが、非 小細胞肺癌の2次治療において、ドセタキセルに優先してゲフィチニブを投 与することに関し、一般的には推奨されないと言ってよろしいかどうか。臨 床の先生から何か御意見をいただけませんか。 ○吉田参考人 推奨されないというふうに結論することもできなくて、私が 先ほど申し上げたように推奨する根拠がないのは事実です。だけど推奨され ないとやってしまうと根拠があるように思うのです。推奨しないという根拠 もないのです。そこのところは大事だと思います。 ○松本座長 そうですね。先ほど堀内先生が言われました。 ○國頭参考人 試験における「新しい治療」がイレッサです。新しい治療が 有意に負けているというところまで試験を継続することは、おそらく臨床試 験としては許されない。勝てなかったところでおしまいであって、引き分け だったらチャンピオンの勝ちというのがルールですから、この場合は、あく までも全体として見れば推奨されないということになってしまうと私は思い ます。ただし、かくかくしかじかと、この試験からもまだ出てくるかもしれ ませんが、この試験以外の情報からして、その一般論が当てはまらない患者 さんについてはということだろうと思います。だけど現実問題として、ここ に来られる患者さんは男性であるか女性であるか見れば大体分かりますし、 年齢も分かりますし、タバコを吸うかどうかというのは聞けば分かりますし、 EGFR変異があるのかどうかは検査すれば分かりますし、実際に分かる情報 を持っている患者さんですから、全部込み込みでどうだということを言って も、それは臨床的なインパクトは非常に薄いと言えると思います。 ○吉田参考人 普通の化学療法同士の比較の結果でしたら、國頭参考人の言 うとおりですが、先ほどから申し上げているように、セカンドラインのとこ ろが非常にクロスオーバーしていて、要するにそれすらも言えない非常に混 沌とした状況にあるので、そういう形で軽々に結論できるかどうか分からな いということで、その根拠がないと申し上げたわけです。薄いということで す。 ○國頭参考人 うちの院長に反抗してよくないのでしょうけど、ただ、私は この試験に欠点があったことはよく知っていましたけれども、この試験に入 ってくれと自分の患者さんにお願いしました。参加した以上はそのプライマ リーな結論は尊重すべきだろうと思います。ただし、途中の今からでも付け 加わる情報によって、プライマリーな結論、つまりアンセレクテッドなポピ ュレーションに対してという結論の価値が、大幅に減殺されているだろうと 思います。実際の臨床現場でいろいろな情報によって選択はするであろうと いうのは、そのとおりだろうと思います。 ○堀内参考人 まだ解析が十分ではないということは言えるのではないでし ょうか。 ○國頭参考人 いや、患者さんと面談してセカンドラインを選ぼうというと きに、全体としてドセタキセルの方が一般的だよという前振りをした上で、 だけどもこういうのがあるから、あなたの場合はどうこうという追加の説明 はするだろうと思います。全体として見ればドセタキセルだろう、とは申し 上げることになるのではないかと思います。 ○松本座長 それは、医療関係者にも情報として提供する必要があると考え てよろしいですか。 ○國頭参考人 そのために、この試験をやったのだろうと思いますので。 ○松本座長 ほかの委員の先生方もよろしいですか。 ○池田委員 少しお伺いしたいのですが、アンセレクテッドなペイシェント に、あるいはゲフィチニブが非常に有効だということが、エビデンスとして 明らかにアイデンティファイされない状況で、なかなか難しいと思います。 一般論としてしか言えないとすると先生の考え方はいいと思いますが、分子 標的療法という特殊な薬であることを鑑みて、例えばミューテーションがあ って非常によく効いたと、例えば80%でないのは10%だとしたら、その患者 さんたちは、要するにどのくらいの期間でリフラクティブになるかというデ ータを教えていただけますか。一般的にほかの分子標的でも引いたときに、 薬によってリフラクティブになる期間はずいぶん違うと思います。パーセン テージもずいぶん違うと思います。先生の御経験だと、ミューテーションが あって効いたと思われる患者さんがレジスタンスになる期間というのは、ど れぐらいと一般的に考えたらいいですか。 ○國頭参考人 はっきりデータをとっていませんので怪しいのですが、中央 値でいくと半年以上、1年以下だろうと思います。1年を超えてレスポンス が持続する人は、おそらく半数はおられないのではないかと思います。 ○池田委員 1年を超えて、要するにレスポンスがずっと続く人というのが、 逆に言うとそのレスポンスした中で半数はいるということ。 ○國頭参考人 半数はいるかどうか怪しいです。半年の段階だと、おそらく 半数以上の方はまだレスポンスだと思いますけれども。 ○池田委員 今の時点で最長、どのぐらいの期間レスポンスが続いている人 がいますか。 ○國頭参考人 発売されてから今まで、という方もおられるはずです。 ○池田委員 ずっとレスポンスが続いている人は。 ○國頭参考人 自分の患者さんでは残念ながらおられませんが、ほかの同僚 の患者さん等々ではおられます。ですから3年、4年ですか。 ○池田委員 そこはミューテーションがあって、それがずっといいレスポン スを続けているパーセンテージが、大体10%から20%ぐらいあるのか、それ によってずいぶん違うのではないかと思います。 ○國頭参考人 それは、もちろん1年よりは2年、2年よりは3年のほうが いいに決まっているのですが、ただ、ゲフィチニブを使っている方で仮に半 年であったとしても、非常に辛い状況から本当にディジーズフリーに近いよ うな状況になる方がおられますから、それが半年で終わったら意味がないと いうことではない。 ○池田委員 半年だから使うものではないとか、そういうことを言っている のではなくて、実際にミューテーションがあって、レスポンスがあった方が 本当にレジスタンスにならない、そういうフラクションがどのぐらいのパー センテージいるのかによって、この薬の分子標的療法としての価値がずいぶ ん変わってくるのではないか。そういうふうに思ったものですから、データ を知りたかったのです。 ○國頭参考人 それからすると、例えば血液腫瘍に対する治療薬などと比べ ると、大分弱いというか、集団として見ると奏功はそんなに長続きしない。 あっという間にセカンドミューテーションができてレジスタンスになるとい うのも確かにあります。もし間違っていたら訂正していただきたいのですが、 私の感覚だと1年以上レスポンスを続ける人は、おそらく半数ちょっと切る ぐらいです。大多数の人は、半年はいけそうだけれども、1年経つとかなり 怪しくなるぐらいのところです。2年を超えてレスポンスが続く方というの は1、2割ぐらいのレベルではないかと思います。もし間違っていたら訂正 してください。 ○松本座長 ほかに御意見はございませんか。もう一つ、先ほどから今回の 結果については、後治療や患者背景が大変複雑で解釈が困難であるという御 意見をいただいているわけですが、これはこういうことでよろしいですか。 ○竹内参考人 今現在では、詳細な解析結果は出ておりません。 ○松本座長 ですから、これは今後、さらに詳細な解析が必要であるという ことでよろしいですか。 ○竹内参考人 はい。ただ、先ほどありましたように、この試験全体として 見ると、後治療等ではこの臨床試験ではコントロールできなかった部分があ りますけれども、前半では明らかにドセタキセル群の方がイレッサ群よりも よかった、という結論は出せると思います。 ○松本座長 ほかに御意見はございませんか。時間もかなり過ぎましたので、 ここで調査会としての意見を取りまとめたいと思います。今までの御意見を 参考にして、一旦休憩をとり、その間、私が調査会の意見の取りまとめ案を 作成し、後でお示ししようと思います。よろしいですか。                  (異議なし) ○松本座長 今の御意見を伺うと、まとめられるかどうか分かりませんが、 一応、たたき台を作らないことには今日は終わりそうもありませんので、よ ろしくお願いします。20分から再開したいと思います。休憩します。                   (休憩) ○松本座長 再開します。これから意見の取りまとめに入ります。                − 國頭参考人移動 − ○松本座長 なお冒頭に申し上げたとおり國頭先生には後ろの席に移ってい ただいています。皆様のお手元に「ゲフィチニブに係る第III相試験の結果及 びゲフィチニブ使用に関する当面の対応に関する意見(案)」を作成して配付し ました。ご確認ください。事務局から読み上げます。 ○事務局 読み上げさせていただきます。ゲフィチニブに係る第III相試験の 結果及びゲフィチニブ使用に関する当面の対応に関する意見。本調査会にお いて、企業から提出された「1又は2レジメンの化学療法治療歴を有する、 進行/転移性(IIIB期/IV期)又は術後再発の非小細胞肺癌患者を対象にゲフィチ ニブとドセタキセルの生存期間を比較する多施設共同非盲検無作為化並行群 間比較第III相市販後臨床試験」(以下「第III相試験」という。) の結果につい て検討を行った。  第III相試験の結果及びゲフィチニブ使用に関する当面の対応に関する意見 は、次のとおりである。 第1 第III相試験の結果について 1 結果の信頼性について  第III相試験については、無作為化が正しく機能し、群間の比較可能性は確 保されていると考えられた。  なお、第III相試験は、ゲフィチニブの承認条件として国内で実施された試 験であることから、その結果の信頼性について確認を行う必要があると考え られた。 2 有効性について  (1)第III相試験の主要評価項目である全生存期間については、市販後臨床試 験実施計画書に基づき、Cox回帰分析が行われた。  (2)企業から、上記(1)の解析の結果、(1)全生存期間におけるゲフィチニブ 群のドセタキセル群に対する非劣性を示すことはできなかった(ハザード比 =1.12(95%信頼期間0.89〜1.40))、(2)全生存期間において両群間に統計的 に有意な差があることは示されなかった、(3)全生存期間に与える後治療の影 響を評価することは困難であった、等の報告があった。注)として後治療は別 添参照です。  (3)上記(1)の解析は、全生存期間におけるドセタキセル群に対するゲフィ チニブ群の効果が時間の経過にかかわらず一定であることを前提としている が、第III相試験においては、当該効果が時間依存的に変化するという結果が 出ており、その前提が成り立っているとは言い難い結果であった。また、後 治療として、ゲフィチニブ群については87例(36%)にドセタキセルの投与が、 ドセタキセル群については130例(53%)にゲフィチニブの投与が行われてい ることが、結果の解釈を難しくしていると考えられた。  (4)(3)のことから、第III相試験の主要評価項目である全生存期間について、 ドセタキセル群に対するゲフィチニブ群の治療効果が時間依存的に変化する 現象を捉えることを目的として、時点ごとの生存率を評価指標として治療効 果を時点ごとに推測する解析を行った。その結果、投与初期における生存率 については、ドセタキセル群がゲフィチニブ群よりも優れていることが示唆 され、また、投与24カ月時点前後における生存率については、その信頼区間 が広いため、この時点前後においてゲフィチニブ群がドセタキセル群よりも 優れているということは積極的には言いがたいが、治療効果の点推定値の結 果からはゲフィチニブ群がドセタキセル群よりも良かった。  上記の結果及び臨床家の意見を踏まえると、1又は2レジメンの化学療法 歴(少なくとも1レシメンは白金製剤を含む。) を有する手術不能又は再発非 小細胞肺癌の患者の治療に際し、一般的に、ドセタキセルに優先してゲフィ チニブの投与を積極的に選択する根拠はないと考えられた。  なお、上記の結果については、患者背景、後治療の影響などが考えられる が、今回の解析結果からは、その理由を明らかにすることができなかったこ とから、これらの影響などについて、更に詳細な解析を実施する必要がある と考えられた。 3 安全性について  第III相試験における急性肺障害・間質性肺炎の発現頻度及び死亡率を含む ゲフィチニブの副作用の発現状況については、最新の添付文書等に記載され ているものと同程度であると考えられた。 第2 ゲフィチニブ使用に関する当面の対応について 1 上記第1の3のとおり、ゲフィチニブの副作用の発現状況については、 最新の添付文書等に記載されているものと同程度であることを考慮すると、 安全性に関しては、引き続き、少なくとも投与開始後4週間は入院又はそれ に準ずる管理の下で、間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分 に行うなど、添付文書に記載されている安全対策を継続しつつ、肺癌化学療 法に十分な経験をもつ医師による使用を徹底するなど、現在の安全対策を継 続することが適当である。 2 また、上記第1の2(4)の投与初期における生存率についてはドセタキセ ル群がゲフィチニブ群よりも優れていることが示唆されたという第III相試験 の解析結果を踏まえると、厚生労働省は、下記3の詳細な解析の結果が報告 されるまでの間、予防的な対応として、1又は2レジメンの化学療法歴(少な くとも1レジメンは白金製剤を含む。) を有する手術不能又は再発非小細胞 肺癌の患者の治療に際し、一般的に、ドセタキセルに優先してゲフィチニブ の投与を積極的に選択する根拠はない旨について、第III相試験の結果ととも に、患者に十分な説明が行われるよう、企業に対し、医薬関係者に速やかに 情報提供するよう指導することが適当である。 3 ゲフィチニブの臨床的有用性を評価するためには、上記第1の2(4)で示 唆された結果を確認するとともに、患者背景、後治療の影響、未整理のデー タなどについて更に詳細な解析を行い、その結果について検討する必要があ ると考えられることから、厚生労働省は、統計専門家に対し、第III相試験の 結果のうち有効性に係る詳細な解析を依頼し、その結果を当調査会に報告す ることが適当である。また、企業に対しても、同様に詳細な解析を行い、そ の結果を当調査会に報告するよう指導することが適当である。 4 上記3の詳細な解析を行う上で、第III相試験に係る資料の信頼性が確保 されていることが重要であることから、厚生労働省は、当該資料が、「医薬品 の市販後調査の基準に関する省令」に従って収集され、かつ、作成されたも のであることを速やかに確認することが適当である。 5 患者情報の把握、ゲフィチニブの有効性と関係するEGFR遺伝子変異 の解明等については、平成17年3月24日に開催されたゲフィチニブ検討会 における当面の対応についての意見を踏まえ、企業は、随時、医薬品等安全 対策部会に対応状況の報告を行ってきているが、より一層の取組みを図るこ とが適当である。  最後に別添で、先ほど注で示していた第III相試験における後治療について 書いています。ここは省略させていただきますが、本日企業から報告された 資料から抜粋して、後治療がどのように行われたかを示したものです。以上 です。 ○松本座長 この案に対して、御意見等がございますか。 ○貫和参考人 全般的なところは、本日の議論を十分に汲み取っていただい ていると思います。私、途中でも言いましたように、いちばん最後の5に挙 げているEGFR変異の解明に関しては、昨年4月から遺伝子解析は保険収 載になっているということを、使用している医師にちゃんと伝えて周知する。 そしてその信頼性に関しての情報も周知する。変異例における奏効率あるい は耐性出現の時期に関してのデータも示す。そして可能ならば変異が陰性の 症例に対して、ゲフィチニブがどれだけの効果があるのかしっかりとしたデ ータを出す。ここに書いてあるのは少しまだ甘いのではないかと思われます。 というのは、現在、非常に技術革新がある時代で、この17年3月からすると もう2年経っていて、十分それはクリアできる時期であり、こういう面で企 業は少し怠慢ではないか。 ○松本座長 企業の方も努力をお願いします。ほかにございませんか。先生、 よろしいですか。堀内先生もよろしいですか。 ○堀内参考人 ただいまの貫和先生の御意見に全く同感です。ここのところ はかなりマイルドな表現になっていますが、そこの意味は、いまお話になっ た内容であるということを是非、はっきりさせていただきたいと思います。 ○松本座長 ほかに御意見はございませんか。ないようでしたら、この意見 案を本調査会の意見とさせていただくことで、よろしいですか。                  (異議なし) ○松本座長 ではそのようにさせていただきます。ありがとうございました。 この試験結果につきましては、データの信頼性の確認や、詳細な解析の結果 が出てきましたら引き続き議論したいと思っています。事務局からほかに何 かありますか。 ○事務局 ただいま取りまとめられました本調査会の意見につきましては、 きちっとした形で公表したいと考えています。それからこの御意見を踏まえ まして企業に必要な対応を指示したいと思っています。以上です。 ○松本座長 続きまして、その他の議題として事務局から何かありますか。 ○事務局 特にございません。 ○松本座長 それでは本日の調査会は、これで閉会させていただきます。長 い間本当にありがとうございました。 (照会先) 医薬食品局安全対策課 丈達 (内線2748) TEL03-5253-1111(代表) 1