07/01/26 第4回社会保障審議会人口構造の変化に関する特別部会議事概要 社会保障審議会人口構造の変化に関する特別部会 ○ 日 時  平成19年 1月26日(金)16:00〜18:10 ○ 場 所  厚生労働省 省議室(9階) ○ 出席者  〈委員:五十音順、敬称略〉 阿藤誠、大石亜希子、小塩隆士、貝塚啓明、鬼頭宏、榊原智子、樋口美雄、 前田正子                      〈事務局〉        薄井康紀 政策統括官(社会保障)        北村 彰 参事官(社会保障担当)、山田 亮 参事官(労働政策担当)        香取照幸 雇用均等・児童家庭局総務課長        楪葉伸一 安定局雇用政策課長        城 克文 政策企画官、佐藤裕亮 社会保障担当参事官室長補佐        高橋重郷 国立社会保障・人口問題研究所副所長 ○ 議事概要 1.開会  (城政策企画官)  定刻になりましたので、ただいまから第4回社会保障審議会人口構造の変化に関する特 別部会を開会いたします。  委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきましてまことにありがと うございます。  なお、樋口委員につきましては若干おくれるとの御連絡を先ほどいただきました。  また、佐藤委員につきましては所用により御欠席とのことでございます。  本日は御出席の委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを 報告申し上げます。  それでは、以後の進行につきましては、貝塚部会長にお願いいたします。  (貝塚部会長)  本日は御多忙の折、お集まりいただき、まことにありがとうございます。それでは、早 速、議事に移りたいと思います。  これまで、この特別部会では、昨年11月から3回にわたり人口構造の変化をめぐる論点 を議論してまいりましたが、このたび、厚生労働省において「希望を反映した人口試算」 を策定いたしましたので、これについて御説明いただくとともに、これを公表するに当た り、委員の皆様の御意見等を踏まえ、事務局の方で「これまでの議論の整理(案)」を取 りまとめてもらいましたので、委員の皆様に御議論いただきたいと考えております。  議題1.人口構造の変化をめぐる論点  (1)希望を反映した仮定人口試算の結果  (2)「仮定人口試算」の公表に当たってのこれまでの議論整理(案)  参考資料として、将来推計人口のモデルにおいて推定された女性未婚率及び出生児数ゼ ロの女性の割合の見通しとなっております。  それでは、早速、資料について事務局から説明をお願いします。  (城政策企画官)  まず資料1−1をごらんください。「希望を反映した仮定人口試算の結果」という資料 でございます。  名前ですが、潜在出生率に基づくとか、希望出生率とか、当初いろいろな案がございま した。内部でも検討し、委員の御意見もいただいて、いろいろ考えましたが、最終的に私 どもの案としまして「希望を反映した仮定人口試算」、後ほど説明いたします「議論の整 理」の中では単に「仮定人口試算」という言い方をするのではいかがだろうかということ で、こういう名前にいたしております。  1ページですが、この試算の基本的枠組みについて書いてあります。  試算の位置づけですが、国民の希望が一定程度かなった場合を仮定した人口試算を示す ことにより、構造の変化に関する諸問題及び諸施策に関する議論に資することを目的とし て、厚生労働省で試算をしたものです。  基本的枠組みですが、昨年末の将来推計人口と同じ枠組みを用いまして、出生率の仮定 については、国民の希望が一定程度かなったと仮定した場合の出生率に基づいて設定する ということです。  これから出生年齢に入る1990年生まれの女性が50歳になる2040年までに結婚や出生の障 壁が一定程度解消され、合計特殊出生率が回復するものと仮定し、ケースIからケースIV までを置いて推計しています。  その他の仮定(死亡率、国際人口移動、男女出生比)は、将来推計人口の中位の仮定値 と同じです。  次に2ページですが、合計特殊出生率の仮定について図で示しています。  2040年のところをごらんいただきますと、1.75ということです。将来人口推計の中位は2 055年で1.26ですので、そろえるために1.25と書いていますが、2040年まで戻しまして、ケ ースIからケースIVまでを設定して、それを延ばす形にしています。  途中の形はいろいろありうるわけですが、基本的には将来推計人口の中位と高位を見ま して、それを仮定した出生率の比で按分して間を埋めています。今回はそういうやり方に しております。  3ページですが、その試算の結果です。  総人口はこのグラフのような形でして、下の表の中で将来推計人口の中位と比較してい ます。表の一番下に中位が書いてあります。2005年の実績は1億2,777万人ですが、2055年 には8,993万人ということで9.000万人を割る見通しになっています。ケースIの場合は1 億を少し超える値、ケースIIの場合でも1億を少し割り込む程度の数字になっています。 総人口としては、この希望が実現した場合は1億ぐらいということです。  次に4ページですが、高齢化率(65歳以上割合)の推移と将来見通しです。  下の表をごらんいただきますと、2005年実績では高齢化率は20.2%です。中位推計では2 055年に40.5%で、人口の4割が高齢者という状況だと見通されていましたが、ケースIで は35.1%となります。  一番下に、20〜64歳の支え手と65歳以上の比率を示しています。2005年には3.0人で1人 を支えるという形ですが、中位推計では2030年には1.7人で1人を支える、2050年には1.2 人で1人を支える形になります。ケースIの場合は1.4人で1人を支える、ケースIIIでは1. 3人で1人を支えることになります。  次に5ページですが、年少人口割合(15歳未満)の推移と将来見通しです。グラフを見 ていただきますと、2005年は13.8%ですが、中位推計では2030年には9.7%、2055年には8. 4%です。今は8人に1人ぐらい子どもがいるのが、10人に1人になり、12人に1人になり という感じです。ケースIであれば2030年で12.6%、2055年でも12.7%で、8人に1人ぐ らい子どもがいるという状況がキープできるとみています。  一番下に出生数を記載しています。2005年で106万人生まれていますが、中位では2055年 には45万7.000人で半分を割ってしまいます。しかしケースIですと2030年まで100人をキ ープしていて、2055年でも86万6,000人となります。福利によって出生率が左右されますの で、子どもの場合は早い段階からこういった差が出てくる形になっています。  6ページは生産年齢人口(15〜64歳)の推移と将来見通しです。  下の表を見ていただきますと、現在、生産年齢人口の比率は66.1%ですが、中位の場合 は2055年には51.1%になると見込まれています。出生率が改善しても人口の比率はさほど 変わりません。ケースIでも2055年で52.2%となっています。2030年ではケースIの方が 比率が下がっています。子どもが増える分、生産年齢人口からみれば被扶養人口に当たる 部分が多くなりますので、一たん数値が低く出るということです。  ただ、人口の実数で見ますと、上のグラフですが、2055年の段階で約4.600万人と見込ま れているものが、実数では5.400万人で800万人ぐらい多いという結果になっています。  7ページは、以上の数字を一覧表にしたものです。  8ページ以降につきましては、それぞれのケースについて年齢階層ごとに5年刻みで人 口の数字を出していったものです。資料1−1については以上です。  次に参考資料をごらんください。将来推計人口モデルにおいて推計された女性の未婚率、 出生児数ゼロの女性の割合の見通しです。前回、こういうものが出ないかという御指摘が ありまして、できる範囲でつくってみたものです。  1ページはコーホート別の指標ですが、未婚率という欄がありまして、何年生まれの何 歳というのがあります。何歳の時に未婚率はどのくらいかというものを出したものです。 アンダーラインが引いてあるのは既に実績が出ている数字でして、一番上の1955年生まれ でしたら51歳ですので、各年齢の時の未婚率が出ています。50歳段階で5.8%が未婚という ことです。  1990年生まれで16歳、今回の参照コーホートではどうなっているかというと、25歳では7 8.4%、30歳で47.2%、50歳で23.5%となっています。16歳より若い年代については、この ような形になっています。  真ん中に平均初婚年齢を書いていますが、1955年生まれのコーホートの場合は24.9歳、 参照コーホートの場合は28.2歳となっています。  右端は出生児数分布です。1955年生まれであれば子どもの数0が13%、3以上が28%で す。1990年生まれでは0が37%、1が18%、2が33%、3以上が11%と見通されています。  2ページは、年齢層を縦に切って未婚率を見たものです。 2005年の国勢調査の結果ですが、20〜24歳では未婚率が89%、25〜29歳では59%、50歳 台では6%、60歳台では4%、70歳台では4%、80歳台では3%となっています。  これは出生に用いる未婚という概念でやっておりますので、下の注に書いてありますよ うに、50歳以上での婚姻は考慮していない粗い数値です。  2030年を見ていただきますと、20〜24歳では89%、これは2005年と比べて変わらない。2 4〜29歳では63%、これは4%ぐらい上がってる。35〜39歳では29%、50歳台では20%、60 歳台では13%、70歳台では6%、80歳台では5%で、70歳台と80歳台ではそんなに変わら ないという状況です。  2055年になりますと、若い世代はそれほど変わりませんで、89%、63%、39%という形 です。50歳台でも24%、60歳台でも24%、70歳台でも23%、80歳台でも17%で、4人に1 人ぐらいが未婚という状況になろうかということです。55歳で結婚される方もありましょ うが、そういうケースは考慮しておりません。  3ページは、出生児数ゼロの女性の割合を年齢層別に見たものです。  2005年時点では、若い世代で子どもゼロは92%、50歳台で10%、60歳台で8%という現 状です。  2030年では、若い世代はそう変わらないのですが、35歳台、40歳台、45歳台、50歳台と、 ごらんのような数字で高く出てくるということです。  2055年になりますと、先ほどの未婚と同じように、中年から高齢の世代にかけても37%、 36%という数値となっております。参考資料については以上です。  続きまして、資料1−2「これまでの議論の整理(案)」をごらんください。  原案段階で各委員に送付しまして、御意見をたくさんいただきました。それを極力反映 して、こういった形にまとめさせていただいております。  1ページをごらんください。「仮定人口試算」公表に当たってのこれまでの論議の整理 という題にさせていただきます。  1.人口構造の変化と社会経済等への影響について、ずっと御議論いただいてきたこと について書いています。  ○ 人口減少の動向ですが、「将来推計人口」の中で見通されている数値を記載してお ります。その下に人口構造の変化について説明しています。  1 団塊世代が後期高齢者となる2030年ごろまでは高齢者数が急激に増加し、特に後期 高齢者数は2005年の約2倍に増加するが、団塊ジュニア世代がなお現役でいることから、 生産年齢人口は大幅に減少するものの、いまだ全人口の6割弱であり、65歳以上の人口比 率も3割強にとどまる見通しです。  2 一方、2030年〜2055年においては、人口の山の裾野も含めると団塊世代とほぼ同数 となる団塊ジュニア世代が団塊世代と入れかわり高齢者となることから、高齢者数は概ね 横ばいで推移するという見通しです。  一方、団塊ジュニア世代の子ども世代には現在のところ出生数の山が出現していないこ とから、2030年ごろを境に現役世代人口はさらに急激に減少すると見込まれており、その 結果、2055年には生産年齢人口比率は約5割、65歳以上人口比率は4割を超えると見込ま れています。  2ページをごらんください。  ○ 労働力人口の減少についてです。生産年齢人口の減少に伴い、労働力率が現状のま ま推移した場合には、今後、労働力人口についても減少が見込まれることとなる。  もちろん、労働力人口の減少による影響は、技術革新や資本増加によりカバーすること は可能ですが、今後の生産年齢人口の減少は相当大きなものと見込まれており、その影響 は軽視できない。中長期的な経済成長の基盤を確保する観点からは、人口、労働分野にお いて以下の対策が必要とか考えられます。  1 2030年までの人口構造について見れば、2060年における24歳以上の世代は、現在、 既に生まれており、その数と今後の減少はほぼ確定している。したがって、この間の現役 世代人口減少の影響をカバーしていくためには、若年、女性、高齢者等、すべての人の意 欲と能力が最大限発揮できるような環境整備によって、労働市場への参加を促進すること が必要だろうということです。  2 2030年以降に支え手になっていく世代はこれから生まれる世代ですから変動する余 地がありますが、新人口推計によれば、生産年齢人口はそれ以前と比べて急激に減少する と見込まれています。  この減少をカバーするためには、何よりもまず、これから生まれる子ども数の減少をで きる限り緩和することが最重要課題であり、次世代育成支援の観点に立った効果的な少子 化対策を強力かつ速やかに講じていくことが不可欠であるとしています。  ○ 生活の姿や地域の姿を記載できないかという御指摘がありましたので、ここに載せ ております。  新人口推計に見られる人口構造の変化は、世帯の状況や地域の姿にも大きな影響を与え るものと考えられる。  一例を挙げれば、女性の未婚率に着目した場合、2030年以降、中高齢層での未婚率の上 昇が著しく、2005年の50歳台女性の未婚率が6%であるのに対し、2030年では20%、2055 年では24%に上ると見込まれている。  単純に考えれば、男性も同様に概ね4人に1人以上が未婚となることが想定され、離別 の増加や死別も考慮に入れれば、中高齢世帯のうち4割以上が「単身かつ無子世帯」とな ることも想定される。こうした世帯においては、例えば、男女ともに老親の介護や自分自 身の介護が課題となるなどの問題も懸念されるということがあります。  同様に、毎年の出生数は、2030年には約70万人、2055年には50万人弱となると見通され ており、通常の地域社会において平日昼間に目にする子どもの数は少なくなり、地域社会 の支え手も相当部分が高齢者になるということが想定される。また、子ども自身の立場で 考えても「仲間と一緒に豊かに育つ」という健全な育成環境が確保されなくなるおそれが あるとともに、社会全体としても文化の継承者が少なくなり、未来への希望が薄れていく ことが懸念されます。  今後、このような世帯や地域社会のすがた、くらしの変化という視点からさらに分析を 進め、これに対応した社会の在り方を検討していくことが有効である。特に、どのような 変化が起こるのかということをわかりやすく国民に提示していくことにより、国・地方を はじめ、経済界や労働界、地域社会等において、大幅な人口減少のトレンドを変え、将来 の国民の暮らしを守るという観点からの少子化対策の必要性が広く認識されるよう、機運 の醸成を図ることも喫緊の課題であるとまとめました。  2.国民の結婚や出生行動に対する希望と現実の急速な少子化の乖離ですが、仮定人口 試算に至る考え方の整理をしています。  ○ 急速な少子化をもたらす要素のところでは、先ほどから説明しております仮定値の ことを書いております。  ○ 結婚や子ども数に関する国民の希望ですが、未婚者の9割は結婚したいと考えてい る。既婚者及び結婚希望のある未婚者の希望子ども数は、男女とも2人以上ということで すので、現在の急速な少子化の進行は、決して国民が望んだものではないと考えられると しています。  4ページをごらんください。  ○ 結婚や出生行動に対する希望を反映した仮定人口試算の実施ですが、出生率の低下 は様々な社会的・経済的要因が複雑に作用して生じており、特効薬はないと考えられる。 現在の急速な少子化の進行に対処していくためにも、まずはそのメカニズムについて冷静 に探っていく努力が必要である。  こうした観点からは、これらの結婚や子ども数についての国民の希望が一定程度実現し た際の将来の人口の姿を何ケースか試算し、過去の実績値のトレンドを統計的に将来に投 影する新人口の結果と比較検討していくことは、各要素の重要性の把握につながり、施策 の立案等に際しても有効であると考えられます。  この場合に試算の前提として仮定される出生率は、国民の希望が一定程度実現した場合 であって、生物学的なヒトの出生力を示すものではなく、また、施策が奏功した際の社会 的に達成可能な上限を示すものでもありません。  名前につきましては、この「希望を反映した仮定人口」とし、以下「仮定人口試算」と いう形にしております。  ○ 「仮定人口試算」の性格ですが、結婚や出生行動は、国民一人一人の選択に委ねら れるべき性格のものであることは言うまでもありません。  この試算の前提となる出生率は1.75ですが、これは仮定値であって、いわゆる「出生率 目標」といった数値ではないことについて十分留意が必要であると書いています。  ○ 前提値につきましては、ケースIを設定した上で、新人口推計の仮定値との乖離が、 2/3程度解消するケースII、1/2程度解消するケースIII、1/3程度解消するケース IVを設定しています。  また、出生率の回復過程については、今回の「仮定人口試算」では、新人口推計の高位 推計と中位推計の各年の出生率を2040年時点の各ケースの合計特殊出生率で比例配分する こととしています。  5ページをごらんください。  ○ 「仮定人口試算」の結果ですが、先ほど口頭で説明しました結果を文字で記載して おります。  総人口については、ケースI・IIであれば2055年段階でも概ね1億人前後が維持される。 65歳以上人口比率については、ケースIからIVのいずれでも4割を下回る。 20歳〜64歳人口と65歳以上人口との比率は、ケースIでは1.4対1、ケースIIIでも1.3対1。 15歳未満人口については、ケースIでは、2030年・2050年のいずれの年でも総人口の1/ 8以上が維持できる。年間出生数は2030年で約100人という結果になっています。  15歳〜64歳人口については、2030年では比率・実数とも大きな差はない。2055年におい ては比率では大きな差はなかったが、実数ではケースIでは2055年で約800万人増となって います。  また、新人口推計では15歳〜64歳人口が2030年〜2055年で年平均約85万人ずつ減少する と見込まれているのに対し、ケースIでは年平均60万人弱の減少にとどまるという結果と なりました。新人口推計では、2030年までは年平均70万人弱の減少ということです。  3.経済が持続的に発展でき、かつ、国民の結婚や出生行動に対する希望が実現する社 会の姿はどういうものであるかということを記載しております。  ○ 労働力人口の状況です。  上記のように、1980年代以降の継続的な少子化に進行により、今後新たに労働市場に参 加する世代の人口は継続的に減少していく。これを緩和していくために、若者、女性、高 齢者の労働市場への参加を促進していくことが必要であるということです。  6ページをごらんください。  ○ 女性の労働力率の動向ですが、これは前回お示ししたデータ等の関係です。  我が国では、近年25歳〜39歳層の女性の労働力率が上昇していますが、未婚者と有配偶 者に分けて推移を見た場合、労働力率の変動はあまりなく、これまでのこの層の女性労働 力率の上昇は、主に未婚率の上昇によるものと考えられます。  これは、第1子の出産を機に仕事を辞める女性が7割を占め、有配偶者の労働力率が50% 前後と低いままであることにみられるように、仕事と子育ての両立が依然として困難なた めと考えられます。  このような構造を残したままで、国民が希望する結婚や出産行動の実現と、今後の安定 的な社会経済の発展の基礎となる労働力確保を同時に図ることはできません。  例えば、現在の未婚者と有配偶者の労働力率に変化がない場合、国民の希望に基づいて 生涯未婚率が10%程度になるように設定すると、労働力率は計算上は50%台後半から60% 台前半に低下することになります。  ○ 国民が希望する結婚や出生行動と就労に関する選択を実現でき、今後の安定的な社 会経済の基盤となる労働力の確保を図ることのできる構造改革に向けて  表題が長くなっておりますが、はっきりと書くとこのようになります。  上記とは逆に、未婚率を国民の希望する生涯未婚率が10%程度になるように設定しつつ、 35歳〜39歳層の女性労働力率を全体の労働力人口の減少を緩和させる程度まで引き上げる ためには、現在50%程度である有配偶女性の労働力率を70〜80%程度まで引き上げること が必要になります。  一方、今後、子どもが欲しいと考えている女性について、就業形態の希望を見た調査で は、約6割の女性が出産後も継続就業を希望している。「労働力調査(詳細結果)」で、 世帯主の配偶者の潜在労働力率をみると、平成17年では、25歳〜34歳層で66.3%、35歳〜4 4歳層で73.8%となっている。特に25歳〜34歳層では、平成14年の調査開始時から、緩やか ながらも上昇を続けており、こうしたことからみても、これらの年齢層における就業、あ るいは就業継続に向けた取り組みが重要な政策課題であると同時に、国民の希望に沿った ものであると言えます。  今後の我が国の人口構造の変化を持続的な発展の基盤となる労働力の観点からとらえる と、女性の労働市場への参加を促進しつつ、同時に2030年以降の現役世代人口の減少度合 いを緩和することをともに成し遂げることが必要となります。  このためには、女性の未婚者と有配偶者の労働力率の大きな差をもたらしている仕事と 子育ての両立の困難な現在の構造を、女性が安心して結婚、出産し、男女ともに仕事も家 庭も大事にしながら働き続けることができるシステムへと変革することが不可欠です。  外国の例を見ても、現に労働力率も出生率も高い国があり、また、一旦低下した出生率 が各種施策によって上昇に転じている国もあることを考えれば、これは決して不可能では ないと考えられます。  ○ 結婚や出生行動に影響を及ぼしていると考えられる要素  国民の結婚や出生行動に関する選択には多様な要素が関係していると考えられ、そのす べてについて分析、考慮を加えることは難しいが、近年進められている各種の調査結果・ 研究結果から示唆される「国民の結婚や出生行動に影響を及ぼしていると考えられる要素」 について、可能な限り整理を試みました。  まず結婚に関係する要素ですが、家庭生活を送っていく上で必要な経済的基盤の有無及 び雇用・キャリアの将来見通し・安定性などが考えられます。  調査・研究結果としては、男性では年収が高いほど有配偶者率が高い。正社員に比べて 非典型雇用の場合は有配偶率は低い。男性未婚者では正規雇用者に比べてパート・アルバ イトの結婚意欲が低い。  男女雇用機会均等法施行以降に就職した世代の女性では、最初に勤務した勤務先での雇 用形態が正規と非正規で比較すると、非正規雇用の未婚者割合が高く、また、利用可能な 育児休業制度の有無で比較すると、その制度がなかった層で未婚割合が高い。  1歳児の入園待機者が多い自治体ほど女性の結婚確率が低いとなっています。  その下に、この結果に対するコメントを書いています。  第1子出産後に就労女性の7割が離職し、多くの家庭が男性の片働きとなるという構造 の中で、収入が低く雇用が不安定で、家庭生活の経済的基盤を構築できない男性の未婚率 が高くなっている。  また、同様の構造の中で、非正規雇用や育児休業制度が利用できない職場、保育所待機 自動が多い地域など、子どもを生んだ後の就業継続の見通しが描きにくい場合に女性の未 婚率が高くないっているということです。  8ページをごらんください。  次に出産ですが、第1子出産に関係のある要因として、子育てをしながら就業を継続で きる見通しの有無及び仕事と家庭生活の調和の確保がどのくらいできているかということ が考えられます。  これに関する調査・研究結果です。  ・育児休業が利用可能で、取得しやすい職場に勤める女性の方が出産する割合が高い。  ・男女雇用機会均等法施行以降に就職した世代で、育児休業の利用が可能な職場に勤め ていた女性は、それ依然に就職した人とほぼ同程度に出産を経験している。  ・労働者が勤務先に育児休業制度があると答えた場合、少なくとも子どもを一人産む確 率がその他の場合より高く、無職の女性より出産確率が高くなる。  ・男性が長時間労働をしていた家庭では、労働時間が増えた家庭よりも減った家庭の方 が子どもが産まれた割合が高い。  ・女性の勤務が長時間労働の場合は、第1子を産むタイミングが遅れ、出産確率も低下 する。  下のコメントですが、労働者が勤務先に利用可能な育児休業制度があると答え、出産後 な就労継続する見込みがある場合には出産確率が高い。また、男女とも長時間労働によっ て出産確率が低くなる。  現状では育児休業取得者の大多数が女性であることから、女性の育児休業取得可能性と 出産確率との関係の調査になっていますが、育児休業制度は男性も取得する前提で考える べきであるということです。  また、別の調査で、育児休業制度・勤務時間短縮等の措置、家庭内での夫の育児・家事 分担、保育所の利用は、それぞれが単独で導入されても効果は少なく、相互に組み合わせ ることで就業継続を高めるという結果になっており、就業継続の見通しには、企業お取り 組みだけでなく、保育サービス等の地域の取り組み、育児・家事分担等家庭内での取り組 みも影響することに留意する必要があると思われます。  次に、第2子の出産に関係があると考えられる事項です。  まず1つは、夫婦間の家事・育児の分担の度合いが要素としてあげられます。  調査・研究結果ですが、子どものいる世帯で、妻から見て夫が家事・育児を分担してい ないと回答した世帯では、分担していると回答した世帯に比べ、妻の子どもを持つ意欲は 弱まる。また、夫の育児遂行率の高い夫婦の方が、追加予定子ども数が多い。  調査結果に対するコメントです。  第1子の場合とも重なるが、特に、子どものいる世帯で夫の家事・育児の分担度合いが 低い場合に、出産意欲が弱まる結果になっています。  また、別の調査では、夫の労働時間が長いと家事・育児参加が減少する結果となってお り、家事・育児の分担とワークライフバランスが裏表の関係になっていることも留意する 必要があります。  夫の家事・育児の分担は妻の就業継続とも密接に関係しており、夫の育児遂行能力が高 い夫婦の方が妻の就業継続割合が高い結果となっています。  もう1つ、第2子の出産に関する要因として育児不安の度合いがあります。  調査・研究結果ですが、子どもが1人いる母親の場合、育児不安の程度が高まると、追 加予定の子ども数が減少する。子どもが2人いる場合も概ね同様の傾向である。  男性の育児分担が非常に少ない現状の中で、母親の育児不安が高まると出産意欲が弱ま る結果が出ています。子どもが1人いる父親についても、母親ほどではないが同様の関係 がみられ、男女を通じた問題ととらえるべきだろうということです。  同じ調査で、父母ともに、配偶者の育児や子どもとの関わりに対する満足度が高い場合 には育児不安は低くなる、保育所・幼稚園から母親に対するサポート度が高いほど育児不 安は低くなる結果となっており、家庭内あるいは地域の育児を支えるサポートを厚くする ことが重要と考えられます。  出産で特に第3子に影響があるものですが、教育費の負担感ということがあります。  調査・研究結果ですが、予定数以上の子どもを持たない理由として教育費負担感をあげ る者の割合を予定子ども数別に見ると、予定子ども数を2人とする者のところから教育費 の負担感をあげる割合が高まるということです。1970年代以降の生まれでは、予定子ども 数が0人、1人とする者についても割合は高くなっています。  この調査結果から、特に3人目以降について教育費の負担感が強く意識されていること がうかがわれます。  同じ調査で、出生別にみると、後に生まれた世代ほど教育費負担感をあげる者の割合が 増えていること、また、1970年代以降の生まれでは、1人目、2人目から教育費の負担感 が強く意識される傾向が出ていることにも留意が必要であるとしています。  結婚や出生行動には、例えば若年層における未婚化の要因について、「人間関係構築力 や社会的なサポート資源の不足が重要な要因ではないか」との指摘もあり、上記に整理し た以外にも様々な要因が影響していることが考えられます。  したがって、今後のこの分野での調査・研究の進展が求められるが、同時に、上記で整 理を試みた要素は、これまで述べてきた今後の人口構造の変化に対して我が国の社会経済 が取るべき対応の方向性と重なるところが多いと考えられます。  「男女とも家族を大切にしながら働き続けることができ、それを地域が支える社会」を 構築することが、人口構造が急激に変化していく中で我が国が持続的な発展を図っていく 上で不可欠であろうとまとめてみました。  4.当面焦点を当てて取り組むべき政策分野  ○ 要素別の乖離の状況をまとめております。  現時点における結婚や出生行動に対する国民の希望と、新人口推計において参照コーホ ートとされている1990年代生まれ世代について仮定されている未婚率や出生児数を下の表 で比較しています。  新人口推計の欄を見ていただきますと、生涯未婚率は23.5%、出生児数は、0子が18.2%、 1子が23.7%、2子が43.3%、3子以上が14.8%です。  国民の希望の欄をごらんいただきますと、生涯未婚率は10%未満。出生児数については、 未婚者の希望としては、0子が5.3%、1子が7.3%、2子が61.3%、3子以上が23.9%と なっています。  既婚者の希望について、現存子ども数別に追加予定子ども数ですが、現在0子の場合は +1.32人、1子の場合は+0.64人、2子の場合は+0.08人、3子の場合は+0.02人、4子 の場合は+0.04人となっています。  ○ 焦点を当てるべき要素をまとめました。  上記のような新人口推計との乖離状況に照らせば、国民の結婚や出生行動に対する希望 を実現するためには、当面は、「結婚したい」、「子どもを持ちたい」、「2子目がほし い」といった希望に焦点を当てることが効果的と考えられます。  ○ 速やかに取り組むべき政策分野についてまとめています。  これまで述べてきたような調査結果・研究結果の整理や要素別の乖離の状況に鑑み、以 下のことを書きました。  ・若者の経済的基盤の確立(正規雇用化の促進、就業形態の多様化に合わせた均衡処遇 の推進等、就業・キャリアの安定性確保)  ・継続就業環境の整備(育児休業制度、短時間勤務制度の普及等)  ・親の家事・育児時間の増加(長時間勤務の解消等)  ・育児環境の整備  ・育児不安の解消(地域における育児支援、家庭内の育児負担の分担等)  こうした分野について、効果的な施策を具体的に整理・検討することの重要性が示唆さ れていると思います。  また、経済的インセンティブについては、子どもの世代に負担を先送りしないよう、必 要な財源を確保することが当然の前提となるが、真に効果のある施策は何かという観点か ら、具体的な施策の在り方について引き続き検討していくことが課題であるとしています。  なお、今回の「仮定人口試算」において前提とした値は、あくまでも国民の希望を反映 したものである。したがって、この数値は、子どもを産み育てやすい社会を実現していく ことにより達成される可能性があり、かつ、それなくしては達成されない水準であると考 えるのがいいのではないかということです。  また、今後の施策の状況や子育て環境等の社会状況の変化等によって、さらに国民の希 望も変化し、上昇や低下があり得ることについても留意が必要である。社会状況の悪化に 伴ってこうした国民の希望がさらに低下すれば、改善の余地がさらに少なくなることとな り、さらに一層の少子化を招くことにもなる。  幸い、現在までのところ、未婚者の9割は結婚の希望を持ち、希望する子ども数も2人 を維持している。希望の低下が一層の少子化を招くという悪循環に陥らないためにも、国 民の希望ができるだけ実現するよう、早急な対策が必要と考えられるというまとめにさせ ていただいております。以上です。  (貝塚部会長)  これまでの説明について、御意見、御質問をお受けしたいと思います。どうぞ御自由に お願いいたします。  (阿藤委員)  資料1−1の2ページですが、2040年、55年のTFRはケースIからIVまで決めて、そ のプロセスについて、2つ目の○の「実際の将来推計の高位推計と中位推計の出生率を機 械的に比例配分した」というのは意味がよくわかりません。中位推計と仮定値の最終値の 比例で全部決めてしまえば決まると思うのですが、高位推計と中位推計の比例配分という のはどういう意味なのですか。  (佐藤参事官室長補佐)  まず2040年の値をケースIからケースIVまで1.75、1.60、1.50、1.40と決めております。 それに対して中位推計の2040年の出生率が1.25、高位推計が1.54となっています。2040年 の時の出生率から、2020年の中位推計と高位推計の値を見て、2040年の比でケースIの値 を求めていく。そういった形ですべて設定していくという形をとらせていただいておりま す。  (貝塚部会長)  2040年との差異ですね。それと同じような比率で左へ動かして出していってるというこ とですね。  私の印象では、高齢人口とか年少人口を実数ないしは比率で見ていくと、それなりにシ ョッキングな結果だという気がするんですね。人口推計にはいろんな側面があって、それ ぞれのケースにはそれなりの意味があるんですが、これは将来の問題について多角的にこ ういうケースを使わなくていかんことは、そのとおりですがね。今後の時代の中でどのケ ースが重要なのか、どれも同じように重要と考えるのか、その辺のところが政策的に問題 になってくるんでしょうね。  (鬼頭委員)  大変な作業を短い時間でやっていただいて、一つの目安になるのかなと思って伺ってお りました。この会の初回でも伺ったことなんですが、希望子ども数、ないしは予定子ども 数というのはどういう意味なのか。それによって実態との乖離をどう埋めるかというのが 随分変わってくるのかなと思いました。  手元の資料で少子化以前の水準と2002年の水準を比較してみたんですが、1973年の合計 特殊出生率は2.14あったんですね。その時の予定子ども数はないんですが、1977年が2.17、 82年が2.20ですから、2ということで計算してみますと、その年の実態と希望数との乖離 がわずかでしかないんですね。2%ぐらいしかないわけです。  手元にあるのは2002年の出生動向基本調査のデータですが、希望子ども数が2.13で、余 り変わってないんですね。この30年間、日本人の希望子ども数は平均すれば2.1、2.2で、 これは変わってない。ところが実態は2002年の合計特殊出生率は1.32ですから、38%も低 いわけです。この傾向はずっと続いて、予定子ども数は2.13から2ぐらいの間で動いてい て、1974年以降、合計特殊出生率はどんどん下がって乖離が広がっている。きょう発表さ れた研究は、その乖離を埋めましょう、希望をかなえるにはどうしたらいいかという議論 だと思うんですね。  77年と2004年の間で見てみますと、女性の初婚年齢は25歳から27.8まで下がった。生涯 未婚率は50歳、54歳で見てますけど、2.7%から5.3%で倍増してる。ところが避妊実行率 を見ますと、77年は60%なんですが、2004年には52%ですから下がってるんですね。中絶 の実施率も15歳から49歳の女性については77年は1000人につき21件だったのが2004年には 11件に下がってる。出生に対する避妊の件数も77年は37%だったのが2004年は27%に下が ってる。  これだけ見ると、子どもを産む意欲はありそうだ。しかし結婚がおくれたり生涯結婚し ない人がふえてきたことが出生率の低下に影響してる。これはよく知られていることなん ですが、これで、予定子ども数と実際の合計特殊出生率の間の38%を説明できるのか。  伺ってもわからないし私自身もよくわからないんですが、希望子ども数というのは何な のか。かつては3人が最適だと思われていたけど、乳幼児の死亡率が下がったから2人で も後を継いでもらえるかなという程度の漠然とした数字なのか。そこを知りたいんですが、 そこがわからないと乖離が埋まらないんじゃないかと思ってるんですけどね。計算では出 てくるんですが。これは感想ですけど、非常に難しい話だなということです。  (貝塚部会長)  昔は現実に近いような数字が出ていたのが、だんだん乖離してきたんだけど、希望とは 何であるかということなんですよね。昔は現実的な希望であったのが、だんだん願望に近 いようなものに移ってる可能性があるんですね。この概念はシュイッキーなところがない わけでもなくて、ここの部分をどう解釈するかというのが重要な気がするんですね。希望 を反映した仮定人口というのはリアリティとして何であるかというあたりが、昔と今とで は変わってきているような気もするわけですね。その辺に不安な要素があるというのが私 の感想です。  (阿藤委員)  結婚行動についていえば、生涯結婚希望90%というのは20代ぐらいのサンプルに聞いた 話で、40歳代の人に聞いたとしても出生にはつながらないかもしれないし、もっと低くな ってますね。希望というのは、再生産年齢の出発点ぐらいでは高い希望を持ってるけど、 この30年間で起こってることは、結婚や出産を先延ばしにする。さっき結婚年齢でおっし ゃったけど、未婚率が上がってるということは先延ばしをずっとしてるということで、再 生産年齢の出発点での希望と現実の行動の乖離はどんどん起こってる。結婚についてはそ ういうふうに言えると思うんですね。  (樋口委員)  希望子ども数は余り変わってないというのは、そのとおりなんですね。子どもの数だけ じゃなくて、外で働きたいとか、ほかの希望というのもあるわけです。外で働きたいとい う女性の希望はすごく高まってる。経済が発展すれば、いろんなところで希望が拡大して いくと思うんですが、希望の拡大に伴って選択肢が拡大してきたかというと、フィージビ リティの方が拡大してこないところがあって、どこを犠牲にするかというと、希望数から 現実の子ども数が減って、その差が大きくなっていく。  ほかの国では経済が発展すると同時に選択肢の方も拡大していった。かつては仕事をと るのか子どもをとるのかという二者択一だったわけですが、両方を同時に選択できるとい う選択肢が拡大して、それが実現することになった。日本はそれができなったということ がギャップを拡大しているのではないか。経済発展をしていく上では選択肢を拡大してい くという視点が一番重要で、それができなかった。そこを対策としてどうするのかという ことが問われているのではないかと思います。  (貝塚部会長)  子どもの数について希望があるけど、いろんな希望が別にあって、ほかのことに対する 希望が強くなってくれば、子どもの希望数は実現されない可能性が高くなっていくという ことですね。  (樋口委員)  パイが拡大しないで希望ばかり拡大していったので、パイが一定のもとにおいてウエイ トをどういうふうに調整するのかということで、子どもを持つというウエイトが下がって いったのではないか。経済が発展するとともに選択肢自身を拡大していくという視点が重 要で、ウエイトは変わったとしても子どもの数はふえていくのではないか、ということが 特に90年代に起こってきた現象じゃないかと思うんですね。  (鬼頭委員)  理想の子ども数とか希望子ども数とか追加予定子ども数の違いは何かとか、希望とは何 かとか、そんな哲学的な議論をするつもりは全然ないんで、樋口委員がおっしゃるとおり 選択肢がふえてきたので、子どものかわりにほかのものをとるしかなくなってしまった。 両立できない。そういう点では、資料1−2にいろいろ提案されているので、それをやっ ていくしかないんだろうなと思うんですけどね。  (大石委員)  私の印象としては、どんな希望もない絶望よりはいいという感じなんですが、中位推計 で予測されている世界はどれほどミゼラブルなものかということを実感されてないんじゃ ないかという方が気になりまして、本当にこれでいいんですかということを世の中に出し ていく必要があると思うんですね。  現役1.2人で1人を扶養する世界になるよ、大変だというふうに数字として見ますけど、 1.2人のうち半分近くは単身者になりそうですよね。今の1.2人というのは現役がカップル になっていて、それで高齢者を支えているようなイメージになるかもしれませんが、ハー トナーも子どももいない単身者が1.2人を支えるというのは支える基盤の方も腰砕けにな ってしまいそうな状況でやっていかなくてはいけないということがあります。  生涯未婚率の方も主に女性の生涯未婚率をもとに出しているんですが、男性の未婚率の 方が女性よりも高い。結婚できる男性は何回か結婚するけど、できない男性はずっとしな いという状況がありますから、男性の生涯未婚率はこれよりも高くなる。ということは、 息子が2人いたとしても、1人はずっと結婚しなくて、運がよければ孫が1人ぐらい抱け るかもしれないぐらいの世の中になる。企業の従業員の家庭がこうになるんですよという のが実感としてイメージされるのかなというと、まだ足りないような気がするので、どの 程度の希望でも、これよりはましだということを訴えていかないといけないんじゃないか とういう思いを強くしたところです。  (小塩委員)  いくつか申し上げたいことがあるんですが、まず、先ほど阿藤先生も質問された「希望 を反映した仮定人口試算」なんですけどね。これは機械的な試算ということで、それは納 得できるんですが、そもそも合計特殊出生率というのは、その時点で観測される出生動向 をすべてのコーホートがとった時にどうなるかという極めてフィクション性の高い数字で すよね。それがどういうふうに推移していくのかを計算するのは大変なことだろうと思う んです。人々の希望がかなう姿をこういうふうに書けるのかなと、わからなくなるところ があります。  確かに機械的には試算できるんだけど、徐々に希望が実現していくという姿は、政策の 効果がすべてのコーホートに対して、かつ、すべての年齢階層に対して同じように徐々に 効いていくという、そういうフィクションが入ってると思うんですね。そういうところか ら出てきた合計特殊出生率というのはどういう意味のかと不思議に思いますし、それに基 づいて人口のレベルの推計もなさってるわけですが、果たしてそれがどういう意味がある のか、ぼやっとしたところがあるという印象を申し上げます。表や図を直せと申し上げて るのではなくて、解釈が難しいなという感想を申し上げた次第です。  仮定人口推計そのものについての考え方なんですけど、希望とか潜在とか目標というの は非常に難しくて、人によってとり方が違ってくると思うんです。仮に人々の希望が満た された時に出てくる数字と現実の数字の差に意味があるんじゃないかと思います。国民に 対して意味があるというよりも、政策を担当している人にとって意味がある数字じゃない かと思うんですね。人々の希望が実現されたら1.75になるんだけど、足元は1.25だという ことは、差の0.5が人々に悪さをしてるというか、政策なり社会的な制度が人々の行動を曲 げているというふうに理解できると思うんですよ。そうすると1.75に意味があるというよ りも、0.5をどういうふうに埋めたらいいかという議論を触発する材料として意味があるの ではないかという気がいたします。  もう一つは、今回の報告書を拝見すると、政策なり制度が人々の希望なり意欲に影響を 及ぼしているというのがよくわかります。世の中にあるいろんな制度が結婚、出生動向に 大きく作用していて、ひょっとすると制度が希望自体を引き下げてるという面があります。 この報告書の最後のところに書いてありますように悪循環を回避することが本当に重要な ことだと思いました。これは印象です。  (阿藤委員)  先ほどの比例的に上げるというので直感的に私が疑問に思ったのは、今まではコーホー トで議論してたのが、そこだけ突然、ピリオドで議論を始めているので、おやっと、だれ しもが思う感じがしたんですね。そのことだと思うんですけど、それだけコメントしてお きます。  (榊原委員)  先ほど鬼頭委員がおっしゃっていた「希望を反映した仮定人口試算」という考え方自体 への違和感というのは何がしか皆さん持ってると思うんですね。行政の文書の中でこうい った発想で報告書を出してくるというのは珍しい形なんだろうなと思うんです。私は希望 を反映した仮定人口試算という考え方についてちょっと違った見方をしてまして、これま でも少子化についての議論をする時に、子産み、子育て世代からの注文というかメッセー ジとして出てくるのは、産みにくい育てにくい今の日本社会を何とかしてほしいという部 分なんですね。産みにくい育てにくいとこれだけ言われてるのに社会は大きくは変わらな い。  新聞の投書欄でも30代、40代の結婚したい、子どもをもっとほしいと思ってる人たちか ら今でも日々そういう投書がくるというぐらい、十何年、少子化対策を打ってきたはずな のに現状は余り変わってない。そうした現状に対する、特に若い世代のニーズをきちっと くみ取った対策を打った場合、どんな社会があらわれるのかいったものをぎりぎり行政用 語の中で表現しようとすると、こういう形になるのではないかと私は見てるんです。産み やすい育てやすい社会を数字に置きかえて表現するとこういったものになるというものと して出してこられたと見ていて、これは新しいチャレンジかなと思ってるんです。  今の段階でこうしたものを出してくる意味というのは、政治を動かすために国民合意を 取りつけるための一つのメッセージとしての役割があるのではないかと思ってるわけなん ですね。最近、これだけ少子化が進んできたことで、与党の幹部であるような政治家の方 たちの間から、これまで少子化、子育て支援について余りやってこなかった。何をやった らいいのかわからないし、なぜみんなが結婚しなくなったのか、産まなくなったのかわか らなかったからだという言い方がしょっちゅうあちこちで聞かれるぐらい政治の中できち んと取り組んできたわけではないという事実はあったと思うんですね。  男性議員が多く、かつ年齢層も高いという日本の政治構造の中で、若い世代や子育てに 専念している母親たちとの接点がなく、その人たちの政治ニーズをくみ上げにくい日本の 政治システムの中で、こぼれてきた課題に対策を打ってもらわなくてはいけないんだよと いうメッセージを政治をやってる人たちに届く形で発信していくには、こういった形で言 っていくことは意味があるだろう。どうして結婚しにくくなっているのか、産みにくくな っているのかというところの分析というか論点をきちっと入れていただいてるのではない かと私は読ませていただきました。  社会をあげて子育てを応援するという言い方は政府の中でも2003年ぐらいから使われて はいるんだけど、子ども関係の政策を見ると、そういったシステムにはまだまだなってい ない。高齢者の介護、高齢者の福祉について社会化しようといって政策を大きく転換した 時のような転機が子ども関係の政策でも訪れてるんだと思うんですね。縦割りになってい て、ポツポツと断片的に行われている子ども関係の政策を、親たちの世代の働き方も含め て大きく転換するために、背中を押すためのメッセージがこの中にそれなりに入っている のではないか。そうしたことをきちっとやったら、ひょっとしたら1.75ぐらいまでの出生 率の回復は手が届かないものではないよということが言いたいのであって、精緻な学問的 な積み上げのところを云々しても難しいところはあるのかなと思っています。  一つ、ささいなことで注文があるのは、10ページの上から7行目の「男女とも家族を大 切にしながら働き続けることができ、それを地域が支える社会を構築することが」という のは大きなメッセージを出している部分だと私は読ませていただいたんですが、「それを 地域が支える社会を構築する」というところに「地域や社会全体が支えるような仕組みを 構築する」としていただきたい。最近、次世代育成支援法ができて、自治体や企業でもい ろいろな子育て支援をするような動きが出てきている中で、国の取り組みが十分ではない じゃないか、国の本気の取り組みを見せてほしいという言い方があちこちで聞こえてると 思うんですね。ここでも「男女とも家族を大切にしながら働き続けることができ」という 企業なり職場に向けたメッセージを入れ、かつ地域でももとやることがあるでしょうとい うだけにとどめるのではなくて、社会全体、国も含めた取り組みが必要だというところま で言及してほしいと思いました。  (阿藤委員)  資料1−2の1ページの上から2行目に「近年の少子化傾向や寿命の伸びを反映して、 今後、我が国は一層少子化・高齢化が進む」とあるんですが、少子化が少子化を進めるみ たいなトートロジーになってるような感じがするので、「少子化や長寿化が一層高齢化を 進めるような人口減少」、人口減少という言葉を入れた方がはっきりするんじゃないかと 思うんですね。  2ページの1に「若年、女性、高齢者等」とあるんですが、外国人労働者はどうなんで しょうか。このあいだ外国へ行ったら、ヨーロッパなどは外国人労働者を入れなければど うしようもないという有力な政策戦略として考えられてるんですね。日本ではそれがはっ きりしないんで、強く書けという意味ではないんですが、全く考えないというのは、これ から50年間の人口動向を見据えた時には非現実的だなと思うんです。外国人労働者につい て何らかの形で触れられないのかなと思っています。  4ページの最初の○に、この「希望を反映した仮定人口試算」を「仮定人口試算」と称 するとあって、以下「仮定人口試算」という言葉が使われてるんですが、希望を反映した のは出生率なんですから、「希望を反映した出生率仮定に基づく人口試算」なんですね。 それを「仮定人口試算」と書いて、わかるんだろうか。人口試算そのものは人口推計も含 めて仮定なんですよね。そこに「仮定」をつけて省略語としていっても何の答えもない。 せっかく出すからにはワーディングが世間に広まることを前提にして考えると、「仮定人 口試算」というのはまたトートロジーみたいで、人口推計そのものが仮定に基づいたもの であるのに、という感じがします。前回、だいぶ議論があったようですが、もう一工夫な いのかなという感じがいたします。  (樋口委員)  12月に新推計が発表されたあと、いろんなところで議論があって、議論が分かれてるか なという感じがするんですね。2055年に9千万人というのは最適人口規模に近づくんじゃ ないか、それほど気にする必要はないという議論もあったわけです。  今回、人口構造というテーマでこの研究会を設けられて、年齢構成の話もありますし、 結婚していないとか、子どもを持っているとか、いろんな構造が日本社会にどういうイン パクトを与えるのか。単に9千万人になるということじゃなくて、その構造が変わること が非常に大きな問題をもたらす可能性があるのではないかという楽観論に対してアンチテ ーゼを示したということで、この研究の価値はすごくあるんじゃないかと私は思っていま す。  単に人口を減少するだけだったら、バスが込まなくていいとか、住宅も値下がりするん じゃないかという話なんですが、そうじゃなくて、前回お願いして推計していただいたも のを見ると、出生児数ゼロという女性がこんなにふえるし、未婚のママも相当ふえるとい う数字ですから、今までの暮らしを前提にはやっていけないんですよという数字が打ち出 された。ということは、今後の政策を考えていく上でも重要なものになったのではないか、 それだけ高く評価できるのではないかと思っています。  参考資料の3ページの出生児数ゼロの女性の割合を見ますと、60歳台で37%、80歳台で3 0%です。この人たちをだれが介護していくのか、介護が大変だという記述が中にあったと 思うんですが、この人たちが亡くなった後の資産はだれが相続するのか。少子高齢化とい うのは、下の方のもらう人の数が減るわけですから、公的年金の場合は負担する人が減っ て、もらう人がふえて大変だけど、私的な資産移転を考えると、もらう人が減る分だけ1 人あたりのもらう額はふえるという話ですね。  これは財務省が考えればいいのかもしれませんが、年金が大変だ大変だという一方で、 これを年金の財源にあてたらどうかとか、リバースモゲージを日本でも普及させる必要が あるのではないか。女性は80歳台で30%ですが、男性は40%近く相続する子どもがいない という話になってくるのかなと思うので、このインフォメーションはすごく大きいという 印象を持ちました。  (貝塚部会長)  介護保険が出発した時に介護保険の必要性というのはリアリティとしてはっきりあった わけです。家庭内介護が大変になって、どうにもならないという現実があって、それを実 感できる部分がかなりあった。ここでの話というのは実感できる部分は直接には意外とな くて、刑法に反するようないろんな事態が単独世帯で起きてるんですね。単独世帯がふえ ていくと、今いろいろ起きてるような事件が頻発するというのが私の悲しい予測なんです けどね。樋口委員が言われたような社会構造の変化によって、昔では考えられなかったよ うなことが頻発していく可能性があって、刑事裁判をどうするのか。みんな有罪にしてき つい刑にするかといったら、社会常識で気の毒だという感情が強くなった時に、刑事法の 人はどう考えるのか。  相続の場合、資産税をかけるという考え方もありますよね。高額の資産に対して別個に 税金をかける。一番上の5%でもいいからね。把握が難しいんですが、いろんな税制上の やり方も考えられないわけではない。これが必要だということを実感を持ってわかるよう な形でプレゼンテーションをしないと、迂遠な話に受け取られる可能性もあるし、誤解を 生む可能性もある。  先ほど榊原委員が言われた点も、日本の政治プロセスの中で少子化の話を実感できる国 会議員がどのくらいいるかというと、極めて少ない。国会議員の先生方も介護保険のケー スは身近な問題だけど、少子化の話をうまくくみ取って政策にインプリメントされるプロ セスがボヤッとしている面がある。そこを政治家の先生方にも実感を持ってわかってもら わないと話が進まないような気がします。  (前田委員)  阿藤委員が外国人労働者のことを言われたので申し上げますと、横浜は人口がふえてる んですけど、人口の増加と減少地域がはっきりしておりまして、田園都市沿線の多摩プラ ザなどはふえる一方で、少し外れたところは減ってるんですね。  緑区のある小学校は日本人の子どもが減りましたので統廃合で廃校するんですが、廃校 になった小学校の1階には高齢者施設を入れて、2階、3階にはインド人学校ができます。 IT企業系に勤めるインド人が多くて、子弟の教育が問題になります。都内にもインド系 のインターナショナルスクールがあるんですけど、手狭で校庭が少ないということで、第 2のスクールとして幼稚園から高校まで本格的な学校がオープンします。横浜は外国人籍 の子どもたちが多いので、何カ国語を使うような保育園があります。  一方で危惧しますのは、ニートやフリーターの30代前後の人たちの就労支援を本格的に やろうとしますと、そういう人たちに手間暇かけて育てるよりも外国人を連れてくるのが 早いじゃないかという議論が起こるんですね。女性活用を進めるには育児休業とか代替要 員でコストがかかると必ず言われますし、外国人労働者の導入が現実に起こっています。 ひと昔前の低賃金労働じゃなくて、かなり教育レベルの高い人たちが入り込んでまして、 中国系の学校も満杯です。教育を受けて日本語ができる既存の女性や若者の活用を重点的 にやることが必要ですので、そこが二の次にならないようにしたいと思います。  1.57ショック以来、少子化対策を20年やって、ジリジリ減っているわけです。横浜もこ の3年の間に保育園を102カ所つくって保育所定員を8千人ぐらいふやしたんですが、待機 児童は減っていません。報告書の最後に「早急な対応が必要だ」とありますが、少しずつ 順次というのでは解決できない段階になっていますので、ここで大きく資源を投入して本 格的に取り組むことが必要で、少しずつでは難しいということを書いていただければと思 うんですね。  保育所をつくってる間にも実感しておりましたのは、親の就労環境悪化や長時間労働が 急速に進んでおりますし、非正規労働者がすごくふえてるということも感じますので、保 育園整備、就労環境の整備、若者の経済的自立の確立は早急に抜本的対策が必要であると いうことを強調していただきたいと思います。  ニート、フリーターの対策とか育児環境の整備とかいろんなものを総合的にやらなくて はいけないので、総合戦略で時間をかけずに、金銭的な資源、人的資源も含めて投入しな くてはいけない危機的な状況にあるということを強調していただけたらありがたいと思っ ております。地方自治の現場でいろいろやってますけど、お金と人手がないんですね。新 たな行動パターンが必要だということを書き込んでいただければと思います。よろしくお 願いします。  (楪葉課長)  職業安定局の雇用政策課長でございます。阿藤先生、前田先生から外国人労働者につい ての御指摘がありましたので、今現在のデータ的なことを紹介させていただきます。外国 人労働者の把握できている数は約60万人でございます。不法に入ってきている者が約20万 人だといわれております。ニートにつきましては64万人ということで、ここ数年間、同じ 数で推移しております。フリーターにつきましては200万人を超えている状況にございます。 現役世代の人口減少をカバーするという観点からしますと、外国人労働者の頭数の問題、 定住に伴う社会コストの問題、労働市場の二重構造化の問題等もございますので、慎重な 扱いが必要かと考えております。  (貝塚部会長)  アメリカでは移民がものすごいですからね。移民の比重が高くなれば社会構造が変わり ますよね。地域的に変わる部分と変わらない部分があって、格差問題がもっと複雑な形で 発生するんじゃないかという気がしますね。移民の中にも格差があって、工学とか自然科 学の人が日本に来てくれるかという話もありますけど、企業がいい待遇をすれば、やって くるでしょうしね。昔とは違う部分もあるんですが、所得の低い人も入ってくる可能性も ある。外国人労働者の話をどこかで多少におわせるかですね。  (鬼頭委員)  少子化対策については社会保障審議会だけでは動かせない部分があるのかなと思うんで すね。いろんなところとトータルに連携していかなくてはいけない。昨年の冬に法務省の 出入国管理の担当の方からお話を聞いたんですが、留学生については日本で卒業して、職 が決まってない人の滞在期間を延ばしてやるということで弾力的にやってきているようで す。日系人はかなり自由だけど、そうでない人については非常に厳しい。単純労働力は均 一的であって、看護師とか介護士も入ってくるけど、条件が厳しいですよね。日本の基準 に合わないというか、そういう面でも考えなくてはいけないことがある。  離婚後の出生児の戸籍の問題が議論になってますけど、そういう点でも安心して子ども を産めるようにしなくてはいけない部分もある。男性が育児休業をとることに対する抵抗 感がある。伝統的な家族観、ジェンダー観に縛られてると思うので、そういうものを根底 から変えていかない限りは出生率は上がらないのではないか。樋口恵子さんという方は少 子化というのは女性のストライキであるとおっしゃってますけど、女性にしわ寄せがきて るということをおっしゃりたいんだと思います。  ここでは、働き方を含めて変えていくような提案ですね。この調査研究結果のまとめと か提案というところの端々に出ていると思うので、これを本当に訴えていければいいんじ ゃないかと思います。  (阿藤委員)  外国人労働者の件は政府としては難しいと思うんですが、別途議論が必要であるとか、 一言でもほしいなというのが私の願望です。  テクニカルな話として、資料1−2の2ページの下のパラグラフに「中高齢世帯のうち 4割以上が単身かつ無子世帯となる」とありますが、中高齢世帯という言葉はそもそもあ るのかどうか。中高年人口の4割が単身世帯に居住するとか、そういうことなのか。この 文章を生かすとすれば、その辺の厳密さはあるかなというのがあります。  10ページの表に「国民の希望」とありますね。これは調査データですから、年齢層はど こを対象にして、女性か男性かとか、どこかに出しておかないと、余りにも漠然とした数 字になるので、それを示したらどうかということです。  6ページの一番上の○の「女性の労働力率の動向」というのがあるので、この文書はな かなかいいなと思ったんですけどね。女性の労働力率は未婚者によって上がってるという ことで、それによって出生率が下がるという少子化スパイラルが起こってる。それが二者 択一状況のあらわれで、仕事か家庭を選ばざるを得ないということになってしまってる。 そこが一番重要な問題で、それをいかにして克服していくかということではないかと思っ ています。  (貝塚部会長)  中高齢世帯というワーディングの根拠は何かあるんですか。  (城政策企画官)  そういう言葉があるのかといわれると困るんですが、50歳以上では4人に1人が未婚と いうデータがあります。男性も含めて考えますと、結婚しておられる方は男女合わせて1 世帯、未婚の方は男性で1世帯、女性で1世帯ということですので、世帯数で数えると4 割ということが言いたかったというのがございます。「中高年の者を世帯主とする世帯の うち」とか、そういう言い方を厳密にしていくのかなという気はしておりました。  (貝塚部会長)  具体的にいうと、55歳以上の人が世帯主である世帯というんですかね。それならわかる んですけどね。  (阿藤委員)  3世代世帯になってたりすると、世帯主が違うかもしれませんよね。  (貝塚部会長)  お役所の文書では初めて登場した言葉だから、正確に。注をつけるなら注でもいいんで すけどね。  (小塩委員)  今回の報告をこれから発表されると思うんですが、少子化対策を考える時に、今までボ ヤッとしていたところをかなり明確にしたところがあると思うんです。いくつか気づいた ところを申し上げますと、一つは、先ほどの私の発言の繰り返しになるんですが、人々の 希望と現実との差に注目して、どれだけ政策なり制度が悪さをしているかというのがよく わかるんですね。みんなボヤッとそういうことを考えてるんですけど、実際に1.75という 数字が出て、はっきりわかるということです。経済学者の中には、結婚とか出産というの はカップルのボランタリーな意思決定の結果ですから、余り政府は口を差し挟むものでは ないという議論をする人もいるんですけど、政策が悪いことをしているというのがはっき り出たというのは大きな点だと思います。  2番目は、人口減少の話をしてるんですけど、人口減少そのものではなくて、家族とか 世帯の変化が物すごくでかいものですよというのをはっきりと示したというのは大きいと 思います。一生独身で過ごす男女が物すごい比率でこれからふえていくということを考え ると、今は世帯を単位にしている社会保障の仕組みも見直さなくてはなりません。先ほど 樋口先生は資産の世代間継承の話を指摘されましたけど、遺産を残すことができる単身世 帯のおじいちゃん、おばあちゃんは少ないんじゃないかと思うんですね。貧困のまま結婚 もしないで、年金や医療保険の保険料も十分払えずに、公的なセーフティネットから外れ たまま老後を過ごして寂しく死んでいくという人が無視できないウエイトでこれからは確 実に生まれてくることの方を心配すべきだと思うんですね。この部会の後半に出てきたテ ーマなんですけど、それがはっきり出たというのは大きいと思います。  3番目は、今まではよくわからなくて、これからこういうふうに議論しましょうという のがわかった点は、出生率の変化を、未婚率という結婚前の要因と夫婦の完結出生率とい う結婚後の要因に分けて、具体的にそれぞれどうなるかということに踏み込んで議論され たという点です。結婚前と結婚後に分けるというのは大胆すぎて、両者は互いに関連して るというのが普通の考え方なんですが、そうはいっても議論が非常に明確になります。  前回出た資料で今回は出てなかったものが一つあったのは、それぞれの希望出生児数を 実現するために未婚率と完結出生児数をどういうふうに調整したらうまくいくかという試 算がありましたよね。あれは非常におもしろい試算でありまして、政策のフィージビリテ ィを具体的に議論できる材料が出たというのは非常におもしろいと思います。今回の会議 では出なかったんですが、結婚前、結婚後というふうに要因を分解すると、少子化対策の 組み方も具体的に議論できるのではないかと思います。  (榊原委員)  先ほど前田委員がおっしゃったように、総合的な戦略として少子化の対策、次世代育成 の取り組みに抜本的に力を入れてやるべきであるということを私からもお願いしたいと思 います。その時にこの報告書も一つの検討の議論の材料になると思うんですが、1.75に着 目するというよりは、国民の暮らしや働き方がこれだけ変わり、暮らしのニーズがこれだ け変わったのに政策がそれに対応できていないという乖離があるんだという視点できちっ と使っていただきたいと思うわけです。  私は取材が仕事なので、なんで少子化になっていると思いますかということを各界の人 に今まで何度も聞いてきてるんですが、経済界の方々、政界の方々は「わかりません」と おっしゃる。行政の方々に聞くと「対策は打ってきたのになかなか変わりません」と一般 的にはおっしゃるわけです。十何年、少子化対策といわれるものは打たれてきてるんだけ ど、乖離を埋めるだけの政策がきちっと打たれていなかった。まだまだやるべきことはあ るんだというところを明確にして、これからの対応にこの報告書を使っていっていただけ ればなと思います。  この報告書にかかわる部分ではないかもしれませんが、今回いろいろなデータ、資料を 見せていただいた中で、女性は未婚だと働くけど既婚だと労働市場から一斉に退場すると いう日本的な現象が出ていて、これをこのまま放置していては日本の経済活力は維持でき ないというのがはっきりしたわけですね。この検討会でも。それをどう変えていくかとい う時に、今の日本の社会保障のシステム全体の転換も必要ではないかというところも含め て対応がいるんだろうと思うんですね。労働政策のあり方、年金も含めたさまざまな社会 保障の仕組みというのが、これまで世帯単位の議論があり、結婚した女性は退場する人た ちであって、支えて手ではないという前提で組まれてきたと思うんです。  マスコミ的な雑駁な言い方をさせていただければ、日本の社会保障というのは親孝行の システムとして成熟に発展してきた面があったけど、これからは働ける人はみんな働くん だ、国民皆年金、皆保険を実現するためには国民皆労働ということが必要である。やむを 得ない事情や大変な場面がある時には支えるけど、そうじゃない人はみんな働いた上で支 え手として参入してくるんだ、そして貢献した人はそれなりに制度からサポートをもらう んだというシステムに展開していくことが、この報告書からも見えてくるのではないかと 思いましたので、お願いしたいと思いました。  (大石委員)  今のにつけ加えますと、厚生労働省が進めようとしている労働政策と、この中で提示し ようとしている少子化対策との関係について、これから深く分析していく必要があるので はないかと思うんですね。労働時間の問題とか、正規雇用と非正規雇用の問題が少子化に どのような関係があるのか。どういう政策を進めると人々の結婚、出産行動にどのような 影響を及ぼすのかというところをトータルでつくっていっていただくことが必要ではない かと思います。  (貝塚部会長)  概算要求の時に少子化対策というのはどういう形になってるんですか。少子化対策とい うのはバラエティがあって、各局に散らばってると思うんです。概算要求の時に一つにま とめてバンと出して、財務省と折衝してプラスをつけるというやり方もあるんじゃないか な。  (薄井政策統括官)  内閣府に共生社会担当の政策統括官という部局がありまして、そこで少子高齢化問題も 担当しております。少子化関係の予算は厚生労働省の予算だけでなくほかもありますので、 それも含めてそこでまとめています。かなり大きな部分が厚生労働省の予算ですが、そう いうステップを踏んでいるところでございます。  (樋口委員)  報告書の全体的なことは皆さんがおっしゃったことに大賛成ですが、マイナーな点だけ 申し上げます。3ページの2に「希望と現実の急速な少子化の乖離」とありますね。現状 では乖離があって、これを埋めることが大切だという話だと思うんですが、鬼頭先生が先 ほどおっしゃったことはすごく重要な問題で、昔はそれほど差がなかったのが、すごく拡 大してきている。なぜそんなに拡大したのかというと、皆さんがおっしゃった制度の問題 とか社会環境の問題がありますので、それをぜひ入れていただきたい。そうするとさらに 迫力が増すのではないかという気がします。  これを入れないと、理想と現実は違うんだよ、差があるのは当たり前じゃないかという ことで話が終わってしまうとつまらないので、昔はそんなになかったんだ、ここのところ で広がってきてるという問題を提起することを入れていただけたらと思います。  (鬼頭委員)  先ほどからトータル2という話があるんですが、地方議会などでも、家族を昔の姿に返 せばいいんだとか、女性が家で子育てをすればいいんだという発言をする方がいるんです ね。昔は希望と現実が近かったのが、この30年間で大きく広がってしまった。それはなぜ かというと、社会の変化とか経済の変化とあわせて、制度がそれに追いついていけないん だというところを強調していただきたい。働き方を変えていかないとだめなんですよとい うことを言わないと、逆戻りをさせようという力が随分働いてる。2007年問題は、そこだ と思うんですけどね。  (貝塚部会長)  最初の序論的なところに、抽象的でもいいんですが、きょう出た御意見をはっきり書い たらどうか。社会保障の理念の修正、変更を迫るような状況にあるということを抽象的で もいいから掲げておいて、その具体例としてこういう問題が登場してるんだ、これにちゃ んと対応しないと今後の日本社会は大変なことになる。  (樋口委員)  サステナブルじゃないということですね。  (貝塚部会長)  社会としてサステナブルじゃなくなる面があるんですね。経済でサステナブルというの はわかりやすいんですけど、今は社会としてサステナブルでない面があちこちで出てきて るというのが深刻な問題なんですね。その辺のメッセージがわかるような形で抽象的に書 いておけば、あちこちで文句を言われないでしょ。そういう感じで多少工夫をしておいた 方がいいんじゃないのかなという気がします。  それでは、時間がまいりましたので、これまでにしたいと存じます。  昨年の11月以降、委員の御協力を得まして、人口構造の変化をめぐる論点を御審議、御 検討いただきましたが、皆様方のお知恵をおかりすることにより、本日、「希望を反映し た仮定人口試算」を公表することができました。  また、「これまでの議論の整理(案)」についても、委員の皆様方からいくつかの御意 見をいただきましたが、おおむね内容については御了解いただけたのではないかと考えて おります。  本日いただいた御意見を反映し、本部会の「これまでの議論の整理」として取りまとめ たいと考えております。委員の皆様にお許しいただければ、事務局を通じて皆様の御意見 を伺いつつ私の方で修正をするということでお任せいただきたいと考えておりますが、よ ろしいでしょうか。  (了承)  ありがとうございました。最後に、事務局から何かございますか。  (薄井政策統括官)  貝塚部会長をはじめ委員の皆様方には短期間のうちに、人口構造をめぐるさまざまな問 題点につきまして御審議を賜りまことにありがとうございました。この場をおかりいたし まして厚く御礼申し上げます。  おかげさまで、「希望を反映した仮定人口試算」を作成し、また、議論の整理をおおむ ね取りまとめることができました。今後は、これをもとに、少子化対策、労働施策等、さ まざまな施策の取り組みを講じてまいる所存でございます。  皆様方には、引き続き御指導、御助言を賜りたいと存じますので、どうぞ今後ともよろ しくお願い申し上げまして御礼の言葉とさせていただきます。  なお、次回以降の予定は設定しておりませんが、この特別部会は今回をもって閉じると いうことではなく、今後、新たな審議事項や報告事項ができましたら、再度御審議をお願 いすることもあろうかと存じております。その際にはよろしくお願いいたします。  本日はまことにありがとうございました。 (終了) 照会先 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室 代)03−5253−1111(内線7714、7692) ダ)03−3595−2159