07/01/25 労働政策審議会労働条件分科会第73回議事録 第73回労働政策審議会労働条件分科会          日時 平成19年1月25日(木)          10:00〜          場所 厚生労働省低層棟2階講堂 ○分科会長(西村) ただいまから、第73回労働政策審議会労働条件分科会を開催しま す。本日は荒木委員、久野委員、廣見委員、島田委員、奥谷委員、山下委員、平山委員 が欠席です。また、山下委員の代理として君嶋さんが出席されています。なお、紀陸委 員は少し遅れて来られるそうですので、それまでの間、代理として松井さんが出席され ます。  本日の議題に入ります。本日の議題は、「労働契約法案要綱について(諮問)」及び、 「労働基準法の一部を改正する法律案要綱について(諮問)」です。本件は、本日厚生 労働大臣から諮問を受けたところです。内容について、事務局から説明をお願いします。 ○監督課長 お手元の資料No.1と資料No.2で説明します。資料No.1は、厚生労働省発基 第0125001号と書いてあるものです。厚生労働省設置法第9条第1項第1号の規定に基 づき、別紙「労働契約法案要綱」について、貴会の意見を求めるというものです。別紙 と書いてある「労働契約法案要綱」です。第一は「目的」です。労働契約法については 新しい法律ですので、法律の目的です。この法律は、労働契約の成立及び変更等に関す る基本的な事項を定めることにより、労働者及び使用者が円滑に労働契約の内容を自主 的に決定することができるようにするとともに、労働者の保護を図り、もって個別の労 働関係の安定に資することを目的とするというものです。  第二は「労働者及び使用者の定義」です。一、この法律において「労働者」とは、使 用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいうものとすること。二、この法律に おいて「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいうものとする こと。  第三は「労働契約に関する原則等」です。昨年末におまとめいただいた報告でまいり ますと、この部分が概ね報告の1の労働契約の原則。誠に恐縮ですが、お手元に「報告」 というのがあるかと思いますので、そちらと対比しながらご参照いただければありがた いのですが、この労働契約の原則という部分が第三になろうかと存じます。一、労働契 約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべき ものであるものとすること。2頁の二、使用者は、労働者に提示する労働条件及び締結 された労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとすること。三、 労働者及び使用者は、締結された労働契約の内容について、できる限り書面により確認 するようにするものとすること。四、労働者及び使用者は労働契約を遵守するとともに、 信義に従い誠実に、権力を行使し、及び義務を履行しなければならないものとし、その 権利の行使に当たっては、それを濫用するようなことがあってはならないものとするこ と。これは、いわゆる信義誠実の原則です。五、安全配慮義務との関係でご審議いただ いた部分ですが、使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働するこ とができるよう、労働契約に伴い必要な配慮をするものとするものとすること。  第四は「労働契約の成立及び変更」です。これは報告書でも、労働契約の成立及び変 更ということでご議論いただいたところであろうかと存じます。労働契約の成立につい ては一の(一)労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対し て賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立するもの とすることです。次の頁の(二)使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則 を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則の労働条件によ るものとすること。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と 異なる労働条件を合意した部分については、三(一)に該当する場合を除き、この限り でないものとすること。三の(一)は、後ほど三のところでご説明します。  二、労働契約の内容の変更です。(一)労働者及び使用者は、その合意により、労働 契約の内容である労働条件を変更することができるものということです。これは契約の 原則を(一)と(二)で書いていますが、(一)はいま申し上げたとおりです。(二) 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利 益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないものとすることというこ とです。ただし、次に書いてある方法による場合には、この限りでないということで(三) を例外的に書いています。使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合にお いて、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受け る不利益の程度。次のものが労働条件の変更の必要性、これは就業規則の変更、労働条 件の変更の必要性です。変更後の就業規則の全体の内容の相当性、労使の協議の状況、 さらにその他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働 契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとするという ことです。但し書です。労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっ ては変更されない労働条件として合意していた部分、特にお約束していた部分について は、三(一)に該当する場合を除き、この限りでないということで、特約は優先される ということです。  (四)就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法第89条及び第90条の定めると ころによるものとすることということです。これは恐縮ですが、昨年末の報告の4頁の (3)の(1)のロで、労働基準法9章に定める就業規則に関する手続は、上記イの変更ル ートの関係で重要であることを明らかにすることというご報告をいただいていますの で、これに基づいて、基準法の規制ですが再確認という意味でここに置かせていただい ています。  もう1点は同じ就業規則の変更のところで、年末の報告の(3)の(2)に当たりますが、 就業規則を作成していない事業場において、使用者が新たに就業規則を作成し、従前に 労働条件に関する基準を変更する場合には(1)と同様とする。(1)は判例法理に沿って明ら かにするということで書かれていますので、これも新たな作成に関する判例についてど の程度蓄積があるのかをいろいろと調べてまいりました。現在変更法理に匹敵するよう な秋北バス、大曲市農協とか第四銀行といった確立した判例というのは直ちには見付か らなかったというか、ないわけですので、ここの部分についてはこの要綱に盛り込まれ ていないというところです。  三、その他の労働契約及び就業規則に関する事項等です。(一)就業規則で定める基 準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とするものとする こと。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるものとする こと。これは、労働基準法第93条と同じ内容です。先ほど私がご説明させていただいた 中で、例えば4頁の2行目の但し書で、「労働契約において、労働者及び使用者が就業 規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、三の (一)に該当する場合を除き、この限りでない」ということで、これは特約が優先され ると申し上げましたが、三の(一)に該当する、就業規則よりも低い労働条件を契約で 結んでいる場合には、こちらのほうの就業規則が高い労働条件ですので、そちらのほう に行くというのを確認的に書いているといった趣旨でご理解いただければと考えていま す。三の(二)就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分につい ては、一の(二)、二の(三)及び三の(一)は適用しないということです。(三)使 用者が労働基準法第15条第1項の規定により明示した賃金、労働時間その他の労働条件 が事実と相違する場合には、労働者は即時に労働契約を解除することができる。これは、 労働基準法の第15条第2項の内容をこちらに持ってきたものです。先ほどの三の(二) は、労働基準法上の第92条第1項が就業規則は法令または労働協約に反してはならない と書いていますので、こちらを持ってきたものです。  5頁は、第五「労働契約の継続及び終了」です。一、労働契約の継続です。(一)使 用者が労働者に出向(在籍型出向)を命じることができる場合において、その出向が、 その必要性、対象労働者の選定状況その他の事情に照らして、その権利を濫用したもの と認められる場合には、出向の命令は無効とする。(二)使用者は、労働者と合意した 場合に、転籍(移籍型出向)をさせることができる。(三)使用者が労働者を懲戒する ことができる場合において、懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照 らして、当該懲戒が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められ ない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするということです。二、労働契 約の終了です。解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められ ない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするということです。これは、現 在の労働基準法第18条の2をこちらに持ってくるという趣旨です。  第六「期間の定めのある労働契約」です。一、使用者は期間の定めのある労働契約に ついて、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、 労働者を解雇することができないものとすること。二、使用者は期間の定めのある契約 について、その締結の目的に照らして、必要以上に細分化された労働契約期間で反復し て更新することのないよう配慮しなければならないものとすることということです。  第七「その他」です。これは審議会の報告書には直接書かれていない部分ですが、船 員、国家公務員、地方公務員等については労働法の体系においては、こういうところを 切り分けて整理するのが従来ですので、今回もそういった考え方に沿って整理をしてい くということです。二、施行期日です。この法律は公布の日から起算して3カ月を超え ない範囲内において、政令で定める日から施行するということです。但し書のところは 前後しますが、7頁の三「関係法律等の一部改正」です。労働基準法第89条は就業規則 の記載事項を書いていますが、就業規則の記載事項に出向に関する事項を追加すること 等の労働基準法の関係規定についての改正を行うほか、関係法律の規定について所要の 整備を行うということです。  6頁の施行期日ですが、但し書で三のうち労働基準法第89条に定める出向に関する事 項を追加することについては、「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において 政令で定める日から」と書いています。労働基準法第89条は罰則がありますので、整備 していただくまでに通常時間がかかるということで、1年程度という施行期日を考えて います。以上が、労働契約法案要綱です。  資料No.2の厚生労働省発基第0125002号です。厚生労働省設置法第9条第1項第1号 の規定に基づき、別紙「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」について、貴会の意 見を求めるというものです。1頁の別紙「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」で す。第一は「時間外労働」です。この時間外労働の限度基準で定める事項に、割増賃金 に関する事項を追加するというものです。注は法律ではありません。限度基準ですので 告示です。限度基準においては、特別条項付き協定を締結する場合の延長時間をできる 限り短くするよう努めること、特別条項付き協定では割増賃金率も定めなければならな いこと及び当該割増賃金率は法定を超える率とするように努めることを定めるというこ と。これは法律ではありませんが、こういうことを定めていくという内容です。  二、使用者は、政令で定める時間を超えて時間外労働をさせたときは、その超えた時 間について、政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないと いうことです。時間と率については、後ほど審議会で改めてご議論して決めていくとい うことです。注、政令で定める時間及び率については、労働者の健康確保の観点、中小 企業等の企業の経営環境の実態、割増賃金率の現状、長時間の時間外労働に対する抑制 効果等を踏まえて定めることとする。これは政令で定める事項ですが、ここに書かせて いただいています。これについて報告書で申し上げますと、いまご説明させていただい たところは年末にいただいた報告書の7頁の真ん中辺りに対応するところです。  三、使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組 合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表す る者との書面による協定(以下「労使協定」という)。報告書では労使協定と書いてい ますが、労働基準法の法律では労使協定というのは全部決まったこの言い方でやります ので、こう書き直しています。それにより、先ほど申し上げた二の割増賃金の支払いに 代えて、有給の休日を与えることができるものとすることです。  第二「年次有給休暇」の関係です。使用者は、年次有給休暇の日数のうち5日を超え ない部分については、労使協定により当該事業場における上限日数や対象労働者の範囲 を定めた場合には、1時間を単位として年次有給休暇を与えることができるものとする ことということです。これは、昨年末にいただいた報告書の8頁の上の4に該当します。  第三「自己管理型労働制」です。これは労使委員会が設置された事業場において、労 使委員会が委員の5分の4以上の多数により四に掲げる事項について決議し、かつ、使 用者が当該決議を行政官庁に届け出た場合において、三のいずれにも該当する労働者を 労働させたときは、当該労働者については、休日に関する規定は二のとおり適用し、労 働時間、休憩、時間外及び休日の労働並びに時間外、休日及び深夜の割増賃金に関する 規定は適用しないものとすることということです。  二は休日がどうなっているかということですが、使用者は、一により労働する労働者 (対象労働者)に対して、4週間を通じて4日以上かつ1年間を通じて週休2日分の日 数(104日)以上の休日を確実に確保しなければならないものとすることとし、確保し なかった場合には罰則を付するものとすること。これが法律の要綱ですので文書を書い ていますが、実際に法律になる場合は罰則の条文は後ろになりまして、前半の部分は第 35条を読み替えるとか、現行の労働基準法第35条に104日を書き足して適用するわけ ですが、罰則のところは、書き足したあとの労働基準法第35条に違反したら罰則を付け る、という条文が実際にはできてくるということです。この方については、第36条の 36協定というのは最初のところでご説明しましたように、適用外ということです。  三、対象労働者ですが、次のいずれにも該当する労働者とすることということです。 年末にいただきました報告書では、8頁の真ん中の(1)の制度の要件に書いてあるこ とですが、労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者。業務上の重要な 権限及び責任を相当程度伴う地位にある者。業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関 し使用者が具体的な指示をしないこととする者。年収が相当程度高い者です。三の柱の 「次のいずれにも該当する労働者」というのは、全部要件を満たしてくださいという意 味ですので、1つでも外れていれば対象にならないということです。(四)の年収につ いては注です。これは昨年にいただきました報告書の内容ですが、対象労働者としては 管理監督者の一歩手前に位置する者が想定されることから、年収要件もそれにふさわし いものとすることとし、管理監督者一般の平均的な年収水準を勘案しつつ、かつ、社会 的に見て当該労働者の保護に欠けるものとならないよう、適切な水準を検討した上で厚 生労働省令で定めるということです。厚生労働省令で定める場合においては、また審議 会でご議論いただくことになると思います。  四、労使委員会は、次に掲げる事項について決議しなければならないということで、 ここからは労使委員会の決議の内容について説明が続いています。昨年末にいただきま した報告書では、8頁の下が該当する部分です。(一)対象労働者の範囲。(二)賃金 の決定、計算及び支払方法。(三)週休2日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日 を特定すること。(四)労働時間の状況の把握及びそれに応じた健康・福祉確保措置の 実施です。この健康・福祉確保措置については、注「週当たり40時間を超える在社時間 等がおおむね月80時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には、医師による 面接指導を行うこと」を必ず決議し、実施することを指針において定めるということで す。(五)苦情処理措置の実施です。(六)対象労働者の同意を得ること及び不同意に 対する不利益取扱いをしないこと。(七)は(一)から(六)までに掲げるもののほか、 厚生労働省令で定める事項です。  五、対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定めると いうことです。注、指針においては、使用者は対象労働者と業務内容や業務の進め方等 について話し合うことを示すこと。これらは、指針の内容に盛り込むと書いてあります。  六、行政官庁は、制度の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、使 用者に対して改善命令を出すことができることとし、改善命令に従わなかった場合には 罰則を付すということです。労働基準法ですので、個々による行政官庁というのは労働 基準監督署のことです。  5頁の第四「企画業務型裁量労働制」です。中小企業については、労使委員会が決議 した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項に ついての企画、立案、調整及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該 業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制 を適用することができるようにするものです。注、中小企業については、厚生労働省令 で定めるということです。  二、企画業務型裁量労働制の対象労働者の労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の 実施状況に係る定期報告を廃止する。注、企画業務型裁量労働制の苦情処理措置につい て、健康確保や業務量等についての苦情があった場合には、労使委員会で制度全体の必 要な見直しを検討することができるよう指針の改正ということで、そういう見直しをす るということです。  第五「その他」、その他所要の整備を行うということです。「附則」です。施行期日 です。第二の年次有給休暇の時間単位の取得の部分については、平成20年1月1日から 施行するということです。そのほかの部分は、公布の日から起算して1年を超えない範 囲内において、政令で定める日から施行するということです。経過措置及び関係法律の 整備は、必要な経過措置があれば経過措置を定め、関係法律についても必要な整備があ ればそれを整備していくというものです。以上が、労働基準法の一部を改正する法律案 要綱の説明です。 ○分科会長 ただいま事務局から説明をいただいた2つの法律案要綱について、意見交 換を行いたいと思います。質問を含めまして、自由にご発言ください。 ○田島委員 説明に従って、契約法のほうから発言をします。前回の12月27日の最終 報告に、労側意見としては、例えば「認められない」という形で意見表明をしているの が、ほとんど入っていないなと。それから、課長の説明は雇用の終了とか就業規則につ いて、労働基準法から持ってくる、持ってきたということを言っていますが、それは労 働基準法を外して持ってくるのか、あるいは併記の形でやるのかというのは、持ってく る、持ってきたを使い分けて発言をしているのかを確認したい。  それと、労働契約法案で労働者の定義について、労働基準法と同じ書き振りでかなり 狭い範囲になっている。いまは雇用の多様化とか、単に労働契約ではなくて事業契約な どにして、実質的には社会保険逃れとか純粋な成果主義的な仕事が増えているわけです。 そうすると労働契約ではなくて、事業契約を結びながらも実質的には労働契約のような 人たちに対して、きちんとカバーをしていかなければ現在の雇用の劣化に対して対処で きないのではないかと思いますので、労働者あるいは使用者の定義は本当にこれでいい のか疑問に思います。  総論のところでもう一点、前回の意見で反映されていないのが均等処遇の問題です。 使用者側の委員の方たちは、均等ではなくて均衡だよと。しかし、それも必要ないと発 言をしていたと思いますが、労働者性の定義の問題とセットになるのが雇用の多様化で、 正規の社員、契約労働者、パート、派遣、請負とさまざまな形で広まっています。どう いう名称であれ、同じ働き方なら処遇は一緒にしようよという形がなければ、労働契約 法の意味は成さないだろうと思いますし、この均等の問題が全く原則のところに触れら れていないというのはどういうことかをお聞きしたいと思います。 ○監督課長 最初に均衡のところです。昨年末にいただきました報告書においては、均 衡についてさまざまなご議論があったと私どもは承知しています。報告書においては労 働条件に関する労働者間の均衡のあり方については、労働者の多様な実態に留意しつつ 必要な調査等を行うことを含め、引き続き検討すると最終的にはおまとめいただいたわ けですので、私どもとしては均衡のあり方について多様な実態に留意しつつ、必要な調 査等を含め、引き続き検討させていただきたいと考えています。  対象者の範囲は、確かに基準法の範囲と同じということで法案要綱に書いています。 これについても、審議会でいろいろとご議論があったことは承知していますが、労働契 約法制が対象とする労働者の範囲については、経済的従属関係にある者を対象範囲にす ることについて引き続き検討するということで、これも私どもとして検討させていただ きたいと考えています。  労働基準法から持ってくるというところですが、立法技術的にいろいろな考え方があ るわけですが、私どもは年末までの審議会でも一部ご説明した部分があろうかと思いま す。例えば、労働基準法の第93条に関していま考えているのは、資料1の4頁の三「そ の他の労働契約及び就業規則に関する事項等」の(一)の就業規則に定める基準に達し ない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とするものとすること。こ の場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるものとすること。こ れは、労働基準法第93条と同じ規定ですので、この部分については私どものいまの検討 状況を申し上げますと、この内容は労働契約法に書く。基準法については全く同じ内容 ですので、労働基準法には労働契約法第何条に定めるところによる、これは労働契約法 の何条の規定を見てくださいという規定を置くことを考えています。労働基準法第92 条第1項と(二)に書いてあることが若干違っているというか、効果の部分については 労働基準法に書いていませんので、少し内容が変わりますので場合によっては両方の法 律に書けるのではないかと考えています。  (三)労働基準法第15条の第2項については、契約法にこの条文を持ってくるわけで すが、労働基準法上においては第1項と第3項は、そのままの形で連結して残るという 手続になろうかと思います。いずれにせよ、両方の法律を見ることによってわかるよう な形にしたいと考えています。内容的には、別に労働基準法からドンと引っ張ってくる わけではありませんので、これで制度の中身が変わるわけではありません。ただ、契約 法の体系として民事的効力のあるものは、一覧性という観点からこちらに持ってくるの が適当である。法律の性格からしても、そうだろうと考えています。 ○田島委員 いまのお答えの労働者の多様化の問題について、これから調査をして検討 していくとしていますが、これほどワーキングプアとかさまざまな問題が出ている中で、 これから調査検討という形で本当にいいのかなと。逆に、厚生労働省の怠慢になってし まうのではないか。いまも雇用の多様化とか非正規化といいますか、非典型化が広がっ ている中で、契約法を作るのだったら均等の問題をしっかりと打ち出すことが必要です し、この間の審議会でも労働側の委員はそのことを主張していたのに、未だに調査研究 ということで本当にいいのかなと、いまの課長のお答えを聞いて感じた点です。 ○渡邊(佳)委員 労働契約法案の要綱及び労働基準法の一部を改正する法案について、 商工会議所としての意見と若干質問をします。前回の分科会において、労働契約法制の 内容はルールの明確化と称して、使用者に義務や手続を課す内容であり、第二の労働基 準法になる懸念があるということを申し上げました。いままでの審議は労働契約法あり きで進められていまして、労使で本質的な議論はまだしていないと考えています。この ままでは将来にわたり、企業への規制を強化する恐れがあることを申し上げました。現 在では規制緩和というのが大きな社会的な流れになっていますが、その法案要綱の内容 は規制緩和の流れに逆行するものではないかと考えています。  また、労働時間法制については労使の主張が真っ向から対立したままで、双方の意見 が併記された箇所が多数あります。特に重要な項目については政令、省令の審議に先送 りされていまして、もっと双方が納得するまで議論を詰めるべきではないかと思います。 テレビや新聞でも連日報道されていまして、多くの中小企業、中堅企業から不安の声が 寄せられています。したがって、今回この2つの法案要綱を分科会として答申すべきで はないと考えています。  なお、労働契約法、労働時間外労働、自己管理型労働は、これまでの分科会でも一体 として論議してきたはずでありまして、今後どれかを切り離して法制化するようなこと はすべきではないと考えています。商工会議所として意見を申し上げましたが、この要 綱案についていくつかの疑問点がありますので、質問したいと思います。  まず、労働契約法案要綱についてです。法案要綱の1頁目の労働契約法の目的におい て、労働者の保護という文句がありますが、昨年末の報告にはなかったはずです。労働 者保護となりますと、第二の労働基準法のような感じがしてならないわけです。なぜ、 このような文面を盛り込んだのかということを質問したいと思います。2点目は、労働 契約法というわりには肝心の労働契約とは何かということが、はっきりと定義付けされ ていません。この点に対しては非常に問題ではないかと思います。そもそも労働契約と は何かについて、労使でしっかり議論した覚えもありませんし、また就業規則変更法理 との関係でしか労働契約が書かれていないので、非常にわかりづらいと思っています。 3点目は、昨年末の報告には就業規則を作成していない事業場についての記載があった のに、法案要綱から記載が消えているのはなぜかということを質問したいと思います。 4点目は、昨年の報告では労働契約法は、労働契約が円滑に継続するための基本的なル ールと言っていましたが、現在従業員数が10名未満の事業場は就業規則の作成がない、 労働契約がこうした企業を視野に入れていないということを質問したいと思います。実 質的には何の関係もないということですが、その辺のところも若干質問したいと思いま す。  第3は、労働基準法改正の法案要綱についてです。1点目は、これまでの審議で時間 外労働の割増率の引上げは認められない旨を表明してきました。法案要綱では、割増賃 金の率や時間は政令で定めることになっていますが、具体的にどういう内容が想定され るのかを質問したいと思います。2点目は、自己管理型労働制について本来は働き方で 区別すべきであり、年収要件という関係ない項目は削除すべき旨を表明してまいりまし た。法案要綱では、年収要件は省令で定めるとありますが、どういう内容が想定される かを質問したいと思います。3点目は、企画業務型裁量労働制は中小企業にも活用され るよう、対象労働者の要件は拡大すべき旨を表明してまいりました。法案要綱では、中 小企業は省令で定めるとありますが、どういう内容が想定されるのかを質問したいと思 います。いろいろと質問してまいりましたが、労使が歩み寄れる状態まで議論は尽くさ れたとは考えていません。以上です。 ○監督課長 多岐にわたるご意見とご質問ですので、順次説明します。  最初の労働契約法が規制的であるかどうかというご議論でしたが、審議会のご議論の 中で審議会の報告書の6頁に当たります。もしない場合には、バインダーの第72回に入 っていると思います。報告書の6頁に、労働契約法に関する国の役割は同法の周知を行 うことに止め、同法について労働基準監督官による監督指導を行うものではないことと 書いてあります。法律の要綱の説明の中にも労働基準監督官という単語は一度も出てき ていないわけで、監督指導を行う場合は当然法律に書かないとできないわけです。何も 書いていないということは監督指導を行わないということですので、これは規制的な性 格のものではないという審議会のご議論を踏まえた要綱。何も書いていないということ で、それはそういうことを表わしているとご理解いただきたいと思います。法律で、こ ういうことは監督官はやりませんという条文は書かないものですから、何も書いていな いということがまさにそういうことであるということです。  2つ目の目的規定の労働者の保護です。何と申しますか、労働契約法というのは労働 法の体系ですので、労使対等の姿もあるべきものでありますが、労使間の情報の質・量 や交渉力の格差があることは現実で、それを補完するというか法制するのが労働法の役 割です。この労働法の分野では、こうした労使の格差が現実にあることを前提とした立 法体系ですが、そうした中で規制的にやるものとやらないものがあるわけです。ですか ら、労働法の体系ではあるけれども、労働契約法というのは規制的なものではないとい うことですので、労使自治を前提に円滑に労使関係、労働契約の内容が決定するといっ たご審議の内容を、ここに書いてありますように、労働者及び使用者が円滑に労働契約 の内容を自主的に決定することができるようにするとともに、労働者の保護を図り、最 後がいちばん大きな究極の目的ですが、もって個別の労働関係の安定に資するというこ とを目的とするということです。なお、労働者の保護というのは例えば私どもにある法 律で、会社分割に伴う承継法というのがありますが、これも別に労働基準監督官が出て いって何とかするという法律は全然ありませんが、ここの目的規定にはバンと労働者の 保護を図ると書いてありますので、ここに書いてあるから監督官が出ていくとか、そう いうことはないことはご理解いただきたいということです。  労働契約の定義については、現在の法律でいろいろなところで労働契約が使われてい ますが、労働契約の定義という形で1条を立てて置いている法律はないわけです。どう いう書き方をしているかというと、十分に説明をしておけばよかったと反省しています が、法案要綱の2頁の第四の一の(一)で労働契約は、労働者が使用者に使用されて労 働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意するこ とによって成立することが労働契約であるという形で、労働契約の範囲はここの法律の 中では明確にしているという具合に私どもは考えています。こういう内容で成立する契 約を、労働契約と呼びますよということです。  10人未満の事業場が、新しく就業規則を作るときです。先ほどの説明の中では、判例 に沿った形で要綱作業をしましたと申し上げましたが、これについて非常に紛争になっ た判例は現在はないというわけです。では、10人未満の方の所に非常に紛争が多いのか というと、これまたないわけです。10人未満の事業場の方で適用されるのか、されない のかというのは、基準法の就業規則の規定も10人未満の方にはその義務がないわけです ので、別に就業規則は作らなくてもいいというわけです。ただ、義務がないからといっ て就業規則を作ってはいけないと言っているわけではなくて、就業規則を作っていただ いている事業場について変更法理は当然に適用になるわけですので、10人未満の事業場 は適用にならないわけではなくて、就業規則を作っていただいて、こういうことでしっ かりやっていこうという中小企業の皆様には適用されるわけであると考えています。労 働契約の関係は以上です。  労働時間の関係のご質問が、いくつかあったかと存じます。まず、時間外労働の政令 の具体的な内容です。これについては、年末までの審議会の場でも多様な意見があった のではないかということで、具体的な時間及び率については労働者の健康確保の観点、 中小企業の経営環境の実態、割増賃金率の現状、長時間の時間外労働に対する抑制効果 等を踏まえて定めると書いています。この政令を定めるに当たりましては、当然審議会 で改めてご審議をしていただくことになるかと思いますので、その段階で具体的な内容 が詰まっていく。これは政令を書かないと何時間かがわからないわけですので、政令作 業ですから当然に法律の施行までには具体的にご意見を頂戴して、ご議論していくとい う手順になろうかと思います。  年収についても同様で、厚生労働省令の具体的な内容ですが、審議会の年末の報告の 中では、管理監督者の一歩手前に位置する者が想定されることから、年収要件もそれに ふさわしいものとすることとし、管理監督者一般の平均的な年収水準を確保しつつ、か つ社会的に見て当該労働者の保護に欠けるものとならないよう、適切な水準を検討した 上で省令で定める。この適切な水準を検討するという検討については、審議会でご審議 いただくということですので、法律の施行までにその内容については、審議会で明らか になっていくということです。  同じく中小企業の範囲についても、審議会のほうで改めてご議論いただいて施行の日 までに決めていくということで、いま現在直ちにこれがいくらと決まっているものでは ないということで、昨年末にいただきました報告書に沿った形で、私どもとしては進め させていただくということです。 ○石塚委員 話が拡散してしまうので、労働時間は山ほど言いたいことがありますが、 労働契約法のほうから議論を進めたいと思います。質問を3点ばかりします。  法案要綱の3頁にある中身です。1点目は3頁の1行目から2行目でしょうか、労働 契約の内容は、その就業規則の労働条件によるものとするものとすることと書いてあり ます。先ほどの課長のご説明では、「労働条件によるものとすること」と、間の「もの とする」が抜けて説明されました。抜けた、抜けない話は別にどうでもいいですが、先 ほど基本的なご説明として判例法理に沿った格好で法案要綱を作ったとありましたが、 「労働条件によるものとするものとすること」といいますが、本当に判例法理に沿って いるのか、やや疑念を感じざるを得ないというのが私の意見ないし質問です。判例法理 については、基本的な大本の秋北バスからいけば、これが合理的な労働条件を定めてい るものである限り、経営主体と労働者の間の労働条件はその就業規則による、というこ としか言っていないわけです。秋北バスにおきまして、労働契約内容に関して言及しな いわけです。これが基本原則です。  労働契約内容に言及している判例法理がいろいろありますが、例えば電電公社帯広事 件を取りますと、具体的に労働契約の内容を成しているという表現を使っています。昨 年末の議論を思い起こしますと、報告書においては労働契約の内容となるという表現に なりました。労側の意見としては、この「なる」というのは極めてあたかも自動的に置 き換わるようで気持ち悪いし、これは変だという主張を行ってきたわけです。そういう 点から見れば、この就業規則の労働条件によるものとするものとすることというのは一 歩前進のように見えますが、本当にこれが判例法理に対して足しも引きもしないことに なっているのかについて、やや疑念を持っているところがありますので、いわば忠実に 判例法理に沿った法案要綱にしていただくように、質問というよりも要望になりますが、 意見として申し上げておきたいと思います。  2点目は、3頁の二の(二)です。使用者は労働者と合意することなく、就業規則を 変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更すること ができないものとすること。ただしとなっています。質問ですが、これを素直に読めば 判例法理に基づくものとして、原則として不利益な変更をやることができない。ただし、 秋北バス以来の判例法理はできないことが原則であって、例外的にただし云々と言って 一定の要件を求めて、例外を設けていると私どもとしては判例法理を読んでいますが、 この法案要綱はそうしたものとして理解をしていいのかどうか。この点について念押し か、あるいは質問ですのでお答えいただきたい。私どもとしては、そう読みたいと思っ ています。  3点目は、3頁のいちばん左の(三)に、いろいろな条件が書いてあります。変更後 の就業規則を労働者に周知させ、かつ就業規則の変更ということで、4つを書いていま す。労働者が受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容 の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事項の4つプラス アルファーと、やや曖昧な格好で書いています。  私どもとしてずっと言ってきたことがありますが、確かにいろいろな判例法理があり ますが、いちばん明解に言っているのは第四銀行事件の判例法理で、7つのものを言っ ています。1番目は、就業規則の変更によって労働者に被る不利益の程度、2番目は使 用者側の変更の必要性の内容程度、3番目は変更後の就業規則の内容自体の相当性、代 償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合との交渉の経緯、他の労働組 合または他の従業員の対応、同種事項に関わる我が国社会における一般的状況等を相互 勘案する。これが第四銀行事件における判例です。すなわち、ここに7つの要件が入っ たわけで、読み方によりますが、4つプラスアルファー程度しか読めないわけで、第四 銀行事件の判例法理との関係においてこれをどのように解釈すべきなのか。7つのこと が、ここに入っていると思っていいのかどうかについて質問したい。以上3点です。  いずれにしても私どもが言いたいことは、我々は継続的な主張を繰り返しませんが、 基本的に就業規則というものを使った労働条件の変更を使うということは、学説上から してもおかしいと思っています。ただし、実務上、判例において、こうしたことが定着 している事実を見れば、あながちそれは否定できないという立場に立ったわけです。そ うした意味において、判例法理に対して足しも引きもしない法案要綱であれば、いわば 認めていくというか一定程度是認せざるを得ないと思っていますが、どうも見ています と私どもの読み方が間違っているかわかりませんが、やや判例法理に対して逸脱とは言 いませんが少し曖昧な点がありますので、私どもとしてはこの判例法理を大事にしたい と思っていますから、以上の質問に対して明解にお答えいただきたいと思います。 ○監督課長 最初の点は、労働契約の内容をなすということです。判例においてはいろ いろな言い方で、「なす」と言っているものもあれば「なっている」「なしている」と いうのもあるわけで、(二)においては就業規則で労働条件を補充していくというもの ですので、労働条件によるということで、外側からそういうものとして労働条件が労使 の間にあるという具合に表現すればいいかと思います。私どもとしては判例に書いてあ ることをそのまま表現していると理解しています。  2番目の(二)と(三)の関係については、秋北バスの「ただし」ということで、こ れは「原則としてできない。ただし・・・」の秋北バスについて(二)と(三)で書い てあるということです。それと4つの要素と第四銀行事件が7つありますが、お手元の バインダーにあると思います。一応、分類を申し上げますと第四銀行では7つ書いてあ って、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度とあります。これは、労働者 が不利益を受ける程度ということで受けています。使用者の変更の必要性の内容程度と いうのは、労働条件の変更の必要性で受けているわけです。変更後の就業規則の内容自 体の相当性については、変更後の就業規則の内容の相当性で受けています。  代償措置その他関連するその他の労働条件の改善状況については、就業規則の内容で あると考えていますので、そこで受けています。労働組合との交渉の経緯が第四銀行で 書いてありますが、これは労働組合等との交渉の状況と受けています。七番の労働組合 または他の従業員の対応というところについては、労働組合等との交渉の状況というと ころで受けています。同種事項に関する我が国一般社会における一般的状況等について は、就業規則の内容に当たると思いますので、変更後の就業規則の内容の相当性のとこ ろで受けているという理解に立っています。 ○谷川委員 ただいまのことと関係するのですが、第1点目が労働契約の内容の変更の 中で、変更の合理性について考慮要素4つにまとめられています。石塚委員の質問にも 関係してくるわけですが、その4つが不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、そ れと労働組合との交渉状況と挙げられているのですが、ここでいう不利益の程度という のは内容の相当性の中に含まれているのではないかと考えます。そうすると、ここであ えて不利益の程度を取り出して、1つの考慮要素にしている。その真意は何であるのか をお伺いしたいのが第1点です。  2点目は就業規則を作成していない事業場において、使用者が新たに就業規則を作成 する場合の取扱いについての記載が年末の報告書の中にあったわけです。この要綱案の 中では削除されている。削除された理由は何で、その場合の取扱いがどのようになるの か、その2点をお伺いしたいと思います。 ○監督課長 最初のご質問ですが、労働者の受ける不利益の程度については、個々の労 働者の不利益の程度で、就業規則の変更によって、その労働者の方が被る不利益の程度 です。こちらの変更後の就業規則の内容の相当性というのは、その就業規則の全体の内 容が相当であるかということで、全体の関係と個々の関係ということで区分けできてい るのではないかと考えられます。  もう1つの10人未満のところですが、私どもは就業規則の変更法理ということでいろ いろご議論させていただいておりまして、新たに作成する場合も就業規則の変更法理と いうことで、判例等のベースにということで報告を受けていると理解していると考えて います。先ほどの説明の中でも触れさせていただきましたが、実際に新たな作成によっ て争われた裁判例がないということで、今回は書かなかったということです。10人未満 の中小企業の方でどうなのかというと、これは就業規則を作っていただいている事業場 においては、就業規則があるわけですので、そこは就業規則の変更ということでやらせ ていただこうということです。これは法律としてそういう範囲で適用があるということ です。  また、法律を作るときも立法事実といって法律の必要性の議論もあるわけです。私ど もも紛争の中で、今回も紛争の予防のためにということでも議論をしてきたわけですが、 実際に10人未満の中小企業が新たな就業規則を作るときに紛争が起こっているのかと いうと、それもそんなに私どもとしては把握する件数は起こっていないわけです。ここ で何か企業実務にものすごい混乱が生じるかということについては、私どもはないので はないかと考えています。 ○松井氏(紀陸委員代理) いま谷川委員が最後にご質問申し上げたのは、紛争が起き ている事例がないから、それは不要であるという回答をもらうことではなくて、仮にそ うなったときにどのような取扱いをすべきかということの内容を聞きたいという、その ようにまず理解してもらいたいと思います。ですから、その場合はどういう取扱いが考 えられるのかという趣旨であるということを踏まえて、回答をお願いしたいと思います。 ○監督課長 例えば企業内で就業規則のルールで、7、8人のところから10何人になっ た場合、従来あったルールがどこまで固まっているかというのは議論のあるところです が、従来あったルールを変更するのであれば、就業規則の変更法理が類推という形で適 用されるかもしれないと思います。また、ケースによっては、時間的な前後がどうなの かという議論もあるかと思いますが、就業規則を作って直後に採用するという場合もあ ろうかと思います。これは就業規則ができてから採用したのだという評価をすることが できれば、これは最初の「合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知 させた場合には、労働契約の内容は、その就業規則の労働条件によるものとする」とい うことになろうかと思います。それは8人ぐらいから10何人というこういう変動状況と 就業規則の作成状況、あるいはそこの会社が従来どのぐらいかっちりした形で労働条件 を決めていたかということでやる、ということになろうかと思います。  また、通常これも想定されるのですが、10人ぐらいの中小企業ですと、ここにお集ま りの方のこっちから半分ぐらいですので、個別にこういうことになりますよということ でご了解をいただくことも十分に考えられるわけです。これはそういった規定とか原則 の合意のところでご議論いただければいいのではないかと考えます。ただ、これももと もと就業規則が判例でもありますように、全部画一的統一的な処理というのも秋北バス の判例でもいろいろありましたように、そのようなことがありますので、個別の場合の 方は基準法でも就業規則の作成義務を置いていないわけですので、これは個々の合意も 全く十分に考えられることではないかと考えています。 ○田島委員 いいですか。その前にいまの就業規則のところなのですが、どうしても解 せないのが労働契約法の1頁の原則に、労働者及び使用者が対等の立場における合意に 基づいてというのが、いわゆる原則としてありながら、一方的に経営者だけで定められ る就業規則がなぜ活用されるのかというのは本当に疑問なのです。  いまの点で、不利益変更の程度や必要性という形に書かれながら、監督課長が紛争予 防のために作るのですよと。本当に紛争予防になるのでしょうか。いまの裁判制度でも 次の4頁で合理的なものであるときはと、この合理性は誰が判断するのかといったらば、 これでは全然わからないのです。ということは裁判で争わなければわからない。という ことだったら、いまの現状、ない状態と契約法を作ったときとどう変わるのか。この合 理的なものという、合理性があるというのはやはり使用者側が立証しなければいけない と思うのですが、その確認を取っておきたいと思います。 ○監督課長 いくつかご質問をいただきましたが、最初の点でまさに合意との関係です が、これはもちろん合意が原則でその点については3頁の(二)と(三)の関係で秋北 バスに沿った形で書かせていただいているわけです。だから就業規則の合意との関係と、 もう1つ紛争の予防に役立つかという点ですが、現在裁判所まで行かなければというこ ともあるわけです。ここで就業規則の変更というのは労働者の受ける不利益の程度や労 働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合との交渉の状況そ の他のという具合に書いています。  こういう交渉の状況ということで当然労使でお話をしていただくというのも中身に入 っていますし、逆にこういうことを考えてどういう変更をするのかということで、それ は当然労使でいろいろとご議論いただけるわけですので、この紛争の事前的な予防をき ちんと、内容が不利益があるのか、変更が必要なのか、相当なのか、交渉の状況といっ たことを事前に明らかにすることによって、事前にこういうことを気を付けておけばい いのかということで、紛争の予防になるということです。これは裁判実務との関係で言 いますと、合理性の証明については使用者にお願いするということになるので、これは 現在の裁判もそうなっていると理解しています。 ○新田委員 就業規則のところで、同じような質問になるとは思うのですが。昨日の新 聞社のウエブを見てみたのですが、やはり就業規則は経営者が決めて、労働者の意見を 聞くだけでよいと。新しい法律で就業規則が位置付けられることになるとそういった判 例法理ですということが周知されていない。法律でできるということで、周知も深まる であろうというのはわかるのですが、いまも田島委員が言ったように、これまでの就業 規則と今回の就業規則と、こういう解釈が出てくるはずがないということが言えるので すか。そこのところを聞きたいのです。 ○監督課長 すみません、こういう解釈というのはどういうことですか。 ○新田委員 労働者の意見を聞くだけでいいのだということで。 ○監督課長 わかりました。今でも労働基準法にありますから、そこは変わっていない ので、労働基準法では労働者代表の意見を聞くと書いてあるわけです。ところが、判例 の中では判例法理に沿って内容を決めましたと書いてあり、その中の判例では労働組合 との調整の状況を書いているので、判例によっては、例えばみちのく銀行事件だと73% の労働組合と意見をきちんと調整しましたかと。でもこういうことがあるのでと言って、 そこを考慮しているわけです。第四銀行事件でも組合との調整の状況ということで、具 体的中身を聞いているわけです。それはどういうことがなったのかということは、個々 の考慮の対象になるわけです。  ですから、一般的には労使で合意している場合には、それはもしかしたらいいのかと いう話がありますが、そうかといってみちのく銀行事件のように、多数で合意していて もそれはやはり違うのだという話もありますので、そこは判例に沿い、労働組合等との 交渉の状況ということで書いています。個々のところは労使で事前に話をしていただい てということを、この法律としては考えていきたいということです。 ○石塚委員 5頁の真ん中辺ですが、一の(二)に使用者は労働者が合意した場合に、 転籍させることができるものとするという、これは報告書の書き振りと同じ表現を使っ ているわけです。この「労働者と合意した場合に」というこの理解の仕方ですが、労働 側としてはいわゆる一般的な就業規則でも労働協約でもいいのですが、転籍させること があるということのベースは一般的な規定があって、かつ具体的にこうしたことが起き る場合には、個別労働者との個別合意、その都度合意をしてきた、それは必要だと思っ ています。  したがって、たぶん通例でいまでもそのようにされていると思いますが、一般的な規 定が根拠にあって、これは就業規則または労働協約です。その上でこうした事例が発生 せざるを得ない場合には、必ず個別労働者との合意をきちんととっていく。その合意が 整ってはじめてこれが起こり得るというか、実施されると解釈したいと思いますし、現 実はそうされていると思います。したがって、労側としては包括的合意だけでいいのだ という解釈には達したくないですし、必ずそうした一般的な規定の上で個別的な合意が きちんとやられて、こういうものがあると思っています。そのように労働者が合意した 場合にはというのはそのように解釈して、合意の意味内容をそのように解釈したいと思 いますが、これでよろしいかどうかという点についてご質問しました。 ○長谷川委員 いま石塚委員から5頁の(二)ですが、この書き振りは少し問題がある と思っています。なぜかというと、もともと民法の625条で使用者は労働者の承諾を得 なければその権利を第三者に譲り渡すことができないというのがあるので、こことの関 連でそこは少し問題があると思いますので、一言いっておきたいと思います。ここは625 条との関連をきちんと精査することが重要です。  もう1つ、就業規則のところです。12月27日以降、今日までいろいろなマスコミ報 道がされているわけですが、私はその報道の中でびっくりしたのが3頁の二の「労働契 約の内容の変更」に対して、就業規則を使うとやはりこういうことになるのだと思いま した。それはなぜかというと、就業規則を使って労働条件の不利益変更がバンバンでき ますというメッセージが、私は行われたと思っています。  そういう意味ではこの労働契約の内容の変更が現在どうなっているかというと、もと もと労働契約は使用者との合意が大原則です。就業規則による労働条件の不利益変更は できないのです。ただしというのが、いままでの秋北バスからみちのく銀行までの判例 の積み重ねがあるというのは現実だと思うのです。そのときに、この実務において現実 に現状が一歩もどっちにもいかない。1mmたりともどっちにも動かないという形で法律 を作るのであればやむを得ないかとは考えましたが、この27日から昨日までのいろいろ なマスコミの書き方、ここの読み方を見ていますと、就業規則で労働条件不利益変更が 使用側がどんどんできるとしか伝わってこないわけです。  この(一)(二)(三)が現状と1mmもここから全然動かないという内容であるのか どうかというのを、私はもう一度確認したいわけです。就業規則による労働条件の不利 益変更は原則できない。ただしという、変更した後の就業規則の内容が合理的であれば、 契約の内容をなすと、そういう形になるわけです。それはなるとも書いていないのです。 そのときの判断要素で判例の積み重ねがあって、第四銀行で7つぐらいまでに発展して くるわけですが、その7つの中から先ほど石塚委員が言ったように、私は7つ書けばい いなと思うのですが、7つの中からなぜ4つだったのかというのが、先ほどの質問に対 して課長が答えていたような状況だと思うのです。  ところが、あるところの書き方を見ると、ここに「変更後の就業規則を労働者に周知 させ、かつ就業規則の変更が」ということで、要件が周知とその他のこちらの4つから 何かを取ればできるみたいな、そういう読み方もできるのではないか。現実あるところ では5要件という言い方を解しているところもあるわけです。ここの(二)と(三)の 読み方を、もう一度きちんと説明していただきたいと思います。  もう1点、4頁の三の(二)(三)で特に(二)ですが、3頁の(一)(二)(三) は基準法と契約法それぞれどういう法律案の法律の書き方になるのかというのが出ない と、判断するのが非常に難しいなと今日思いました。  事務局はプロフェッショナル集団ですから、自分たちは毎日のように基準法を開いて やって、契約法でこうやって、自分たちはおそらく新旧対照表だとか法律案を作ってい るから、頭の中には入っていると思うのですが、私たちはこういうものが基準法の92 条の第1項とか、そのようなものが基準法の15条第2項が現行はこうなっていますね、 改正で基準法はどうなるのか、契約法でどうなるかというのを3段階のものが示されな いと、本当に変わらないのかどうなのかということに対しては、私は不安があると思い ます。2日目で是非そういう作業を、難しいとしても、もう少しわかるようなものを作 っていただきたいと思います。 ○監督課長 ご意見とご質問で3点ありました。まず転籍の点については現在の実務で も基本的には転籍の申入れの際の個別合意が必要と考えています。グループ企業におけ る転籍の場合などにおいては、事前に転籍の内容が特定できる、個別合意が生じる場合 には、転籍の際の申入れではないという実務に沿ったもので、ご心配のような事前包括 というものはここには入らないという解釈です。民法との承諾の関係については検討さ せていただきたいと考えています。  2つ目の就業規則の変更法理ですが、判例ではご承知のように秋北バス事件、大曲市 農協事件、第四銀行事件等、積み重ねがあったわけで、私どもとしてはそこのところは 1mmも動かさないというところでやっているつもりです。この(二)と(三)の関係で も「使用者は労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不 利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないものとすること。ただ し」ということで、そういう具合につないでいるということです。  それと5要件の関係ですが、通常判例では3頁の(三)の2行目の「かつ」の後、就 業規則の変更がということで労働者の不利益を受ける程度、労働条件の変更の必要性、 変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更 に係る事情に照らしてということで、こちらのほうで判断されるということです。変更 後の就業規則の労働者の周知というのは、判例で一緒に書いてある場合もあれば別れて 書いている場合もあるのですが、これは就業規則を労働条件に書いているわけですが、 相手が知りもしない話をこうですよという話はないわけですので、当然これは労働者に お知らせをして、はじめて話が始まるという理解です。周知もしていない就業規則がい いなどという話はどこにもないとご理解いただきたいと思います。  三との関係の(一)(二)(三)は資料の要求がありましたので、それは検討させて いただきたいと思います。現在口頭でご説明させていただきますと、(一)については 基準法に労働契約法第何条の定めるところによるという、私どもはインデックス規定と 呼んでいるのですが、その両方のつながりを明らかにする規定を置くということです。 (二)については前半部分は92条1項と重なりますが、後半部分は契約法に独自の条文 なので、これについては両方の法律に重ねて書くという取扱いができるかどうかについ て、検討しているところです。私どもとしてはそのような取扱いでやりたいと考えてい ますが、私どもの手続上、内閣法制局等々の審査があるので、そういうのを経てご説明 させていただきたいと考えています。  (三)については労働基準法15条2項はなくなりますが、3項に帰郷旅費の規定があ ります。これについては契約法のこの条文で、解除した場合には帰郷旅費を払うという ところは残るつもりなので、これはそちらのほうで分かるようになるのではないかと考 えています。 ○分科会長 時間の関係もありますので、労働時間法のほうをお願いします。 ○長谷川委員 基準法の関係を少し質問したいと思います。基準法関係の1頁、一「時 間外労働の限度基準で定める事項に、割増賃金に関する事項を追加するものとする」と、 限度基準で定める事項になっていますが、45時間という時間となっているようですが、 限度基準、月45時間で年間だと360というのですが、なぜ45時間ということが巷で出 ているのか、時間外の限度基準で定める事項というのはどういうことなのか教えていた だきたいと思います。  時間外のところがなかなかイメージがつかないのですが、限度基準が45だか30で設 定しますね。限度基準のところまでは25%の割賃でいって、その限度基準を超えた時間 は労使で努力しなさいと。それで、ある一定の時間何10時間だかわかりませんが、政令 で決める何10時間を過ぎたら、それは法律で割増率を25よりももっと高く設定すると、 そういうことですね。だから、時間外が1、2、3となるわけですか。それともう1つ、 三の代償休日で、割賃に支払って休日を与えるというのは、どこのところからどんなふ うに与えるのか、それを教えていただきたいと思います。 ○監督課長 まず限度基準はいろいろな単位、週単位、月単位で決められているわけで すので、その限度基準です。ちなみに45という数字であればそれは月単位の限度基準で、 そのほかの単位で決められている限度基準を排除しているという趣旨ではないし、審議 会でもそういう議論は行われていなかったと理解しています。私どもは45と言われれば それは月単位の限度基準で代表選手としてあるわけで、そのほかのものも当然その対象 の範囲として、ご議論いただくと理解しているのが1つ目です。  2つ目の1、2、3というのはいまの長谷川委員のご発言のとおりではないかと私は 思います。1が25、2が労使の努力で上げていただき、一定時間を超えたら(3)になると いうことです。三の代償休日についてはいまの1、2、3でいうと3から1を引いた分 について、休日で与えることにしてもいいということです。 ○長谷川委員 1、2、3とあったら3のところだけが代償休日で、労使でやるところ にはそこはないわけですね。 ○監督課長 労使で割増賃金を決めた場合には、その決めた割増賃金を払っていただく というのは当然のことだと思います。 ○新田委員 いまの限度基準のところですが、この限度基準はなぜ設けられたのかとい ったときに、男女雇用機会均等ということで女子保護規定を撤廃するときに、男のよう な超長時間労働の中に女性も同じように放り込まれたら大変だということで、男女共通 の規制をしなければいけないということで、いままでの目安から大臣告示、いわゆる限 度基準として設けられたという経過があるわけです。  しかし特別条項さえ結べば限度基準を超えて青天井でいいです、というのが現状なわ けです。この特別条項付協定も、中小企業よりも大手のほうが随分活用していて、301 人以上の企業では特別条項付き協定が66.7%、30人未満だと28.1%という形です。大 きい所ほど特別条項付き協定で青天井的な働き方をしているという中で、もう一度特別 条項ありきではなくて、限度基準にきちんと抑えていくような形の施策そのものが必要 ではないかと思います。これを放置したまま超長時間に割増を与えればいいようなこと ではいけないのではないか。  したがって、25%の割増率そのものが結果的には人を採用するよりも割安になるから、 時間外労働はなかなかなくならない。使用者にとっても人を採用するよりも残業させた ほうがいいという形になってしまうわけです。そういう意味では今回の法案要綱で示さ れている3段階の割増云々というのは、ちょっとどうなのかと思うのです。いわゆる限 度基準そのものは局長名の通達なわけです。そこで限度基準ですよと言いながら、特別 条項があれば青天井ですというところに対してどうなっているのかということを、お聞 かせ願いたいと思います。 ○監督課長 いまご指摘いただいた限度基準特別条項ですが、これについては法案要綱 の一にありますように、限度基準において特別条項付き協定を締結する場合には、延長 時間をできる限り短くするよう努めるという努力規定を限度基準に盛り込めないか。具 体的には審議会での議論になると思うのですが、そのようなことをこの注という形で書 いてあるわけです。  また割増賃金率についても特別条項付き協定では割増賃金率について法定を超える率 とするよう努めることで、労使で一緒にご努力いただいて、労働時間を短縮することを 是非やっていただきたい。さらに一定時間を超える場合には法律で一律に割増率を引き 上げるという仕掛けになっていますので、なるべく長時間労働を抑制する観点から努力 していただいて、義務になるということで、2段構えで短縮に向けてやるのが適当では ないかと考えて、審議会報告に基づき法案要綱を作っています。それと、法案要綱には ないのですが、そのほかに予算措置として、私どもで特別条項を撤廃した中小企業に対 して、助成金の新設について検討し予算をいただいています。 ○小山委員 労働時間の問題で2頁の第三ということで「自己管理型労働制」という、 聞き慣れない表題で日本版ホワイトカラーエグゼンプションについての記載が載ってい ます。12月27日の報告以降、与党の中でのさまざまなご意見、それを受けて安倍内閣 総理大臣も、この日本版ホワイトカラーエグゼンプションについてはまだ国民に理解さ れていない。国会に提出すべきではないのではないかと述べられたと報道されています。 そういうマスコミを通じた世論等からも、この日本版ホワイトカラーエグゼンプション は、日本にはふさわしくないのではないか、さまざまな意見が出され、結局国会にはも う出せないという報道がされ、我々もそう受け取れるような雰囲気になっていたと思っ ていました。  だから今回の諮問にあたっては、この労働基準法の改正の中で、いわゆる日本版ホワ イトカラーエグゼンプション、報告の文章では自由度の高い働き方にふさわしい制度に ついては削除されて、この法案要綱が作成され、労働条件分科会に提起されるものと私 は信じておりました。そのままここに出されているわけです。  今日のある新聞によりますと、政府は与党に反発の強い労働時間規制の緩和策である 日本版ホワイトカラーエグゼンプションを切り放し、残業代の割増率引上げだけを先行 して、労働基準法を改正案に盛る検討に入ったと書いてあります。それを受けて厚生労 働省もそのことを検討するかのような記載がある報道もあるわけです。なぜ、こういう 状況の中でこの法案要綱が諮問されているのか、世論の状況、あるいは国会集辺の状況、 政府の中の状況等を見て、諮問自体がおかしいのではないかと私は思うのです。今後の 取扱いなどを含めて、厚生労働省としての正式な考え方をきちんと示していただきたい と思いますので、これは是非基準局長にお答えいただきたいと思います。 ○労働基準局長 ちょっと新聞を読んでなかったのであれですが、また新聞報道にある テレビ番組も見ていなかったのでわかりません。ですから新聞報道について直接お答え することは避けますが、お話にありましたように総理が国民の理解を得られていない、 提出すべきではないという話をしたとおっしゃいましたが、そういうことはありません。 国民のと言ったかどうか記憶はありませんが、要するにあまり理解を得られていないの ではないか、というお話があったとは認識しています。提出すべきではないというよう なお話はどこでもしていないと理解しています。私どもは審議会で議論をしてきたわけ でして、基本的にはそういった議論の積み重ねの上で、所要の措置を講じていくことは 必要だろうと思っています。  そもそもこの労働時間については非常に労働者、あるいは労使関係、それを取り巻く 状況が非常に変わってきたり厳しくなってきたりです。とりわけこの審議会でも資料を 出していますが、30代男性を中心に非常に長時間にわたる労働がかなり高止まりに定着 してしまっているという状況です。一方で政府を挙げて少子化対策を進め、国家の大課 題として取り組んでいます。そういったことを考えると、こういった労働のあり方をき ちんと見直していくことは待った無しであると思っています。  もちろん非常に厳しい企業経営の状況もあるわけです。そういったものに対応するた めにも働く人たちが意欲を持って、きちんと働くときは働く、休むときはしっかり休ん でリフレッシュしていくことが、いまこの日本の産業を支える人材をきちんと確保して いく面でも必要だろう。これはまさに待った無しだということでこれをお願いしている わけです。  確かに非常にこういったことについて、個々具体的な制度については当審議会におけ る議論を最優先にしています。この審議会以外の所への説明も年末までにできなかった こともあり、理解がまだ十分でないということも私どもは認識しています。それはとも かく、何としてもそういうことで理解をいただき、この審議会での具体的な議論をして いただく。そうすればさらに一層理解がいただけるのではないかと思っています。そう いう面で引き続きご議論いただき、私どもとしても努力をしたいと思っております。 ○小山委員 局長のお気持はわかるのですが、実態としていままでここで議論をしてき ました。我々は労働者代表委員として、日本の労働者全体を代表してここに参加してい るつもりです。その中で、いまの長時間労働を抑制していかなければならない。これは 皆さん共通の理解、共通の認識というものがあったと思います。その中でいわゆる日本 版ホワイトカラーエグゼンプションの制度が、本当に長時間労働を抑制する手段になる のかならないのか、という議論も重ねてやってきたわけです。そして、労働者側委員と してこのことには明確に反対であることをこの場でも何度も何度もお話をし、最後の報 告書の中にも記載しているわけです。  国民に理解されていないというのが説明不足だからではないわけです。この制度に誤 りがあるから批判をされているわけです。十分に与党内、あるいは野党内を含めて、国 会の中に説明が十分されていないから理解されていないわけではないわけです。この制 度自体に、長時間労働を助長するような制度として、労働時間規制の適用を除外しよう とすることに対する批判の声なわけです。労働者側委員として、このことを1年間にわ たって何度も何度も繰り返し申し上げてきたではないですか。それを説明不足などと、 そういうことではないでしょう。  ですから、ここはやはり労働者保護ということを仕事とする厚生労働省がきちんと判 断をして、かつての閣議決定で規制改革の要望として出されてきたことが仮にあったと しても、ここは厚生労働省としてきちんと判断をして、こうした長時間労働を助長する ような制度については削除する、という決断をすべきときなのではないですか。是非、 改めてそうした判断を含めて、厚生労働省のお考えをお聞きしたいと思います。 ○紀陸委員 使用者側としては審議会の場で繰り返し申し述べてきた点がありますの で、いまの小山委員のご意見を踏まえて申し上げたいと思います。1つは時間外労働の 件ですが、私どもとしては割増率の引上げによって、本当に長時間労働の抑制という実 が上がるのかどうか。これは組合の方々もきちんとお考えいただきたいと思うのです。 現実に働く人たちの多くが、いまの時間外割増率とか時間当たりの単価の面での割増金 額について非常に不満が強いのか。何回も申し上げていると思うのですが、そうではな いのではないかという気がしてなりません。  それよりも、いろいろな会社がございますが、会社の中で仕事のやり方や割振りを変 えていくことによって、おそらく特定の部や課の人に負荷がかかっているのが現実だと 思います。そういうところをどうやって変えていくか。そちらのほうが先ではないか。 一律にこの率を上げることによって、結局現実的にはいまでも相当に人件費負担の高さ に喘いでいる中堅企業に負荷がかかってくる。いろいろな意味でようやく財務体質の改 善が図り得てきた中小企業さんとかが、また一段、下手をすると海外に事業所を移して しまうような懸念が強いのではないか。そういう意味で会社の中における偏りの多い労 働負荷をどうやって減らしていくか。その論議が非常に大事だと思っておりまして、私 どもとしては基本的にこの時間外労働の割増しについては反対をします。  いまお話の自己管理型の労働制ですが、労働組合の方々ご自身も誤解されていると思 って致し方がない。理解が不足だということよりも、労働環境が変わっている状況をど う見るか。従来と同じような目線でこの制度を批判していいのだろうか。ホワイトカラ ーの方々はたくさんおられて、しかもその割合は非常に増えてきている。かつ、片方で 主に生産現場が主なのでしょうけれども、そういう方々の時間規制とホワイトカラーの 時間規制と同じでいいのかどうか。  そこの論議は私どもも何遍も申し上げてきたと思うのですが、もし違うとすれば、い ま現実に裁量労働制はありますが、裁量労働制のほかにこのエグゼンプトという要件を 1つ加えて、会社の労使がいろいろ選んでみて、こっちの労働のほうがいいと選べるよ うな選択肢を増やそうという趣旨です。これによって皆さん方がおっしゃるような、あ まねく一定の年収以上のホワイトカラーの人たちはノー残業でカットになってしまうと いう、そういう趣旨でないということを重々ご理解いただきたいのです。説明不足とい うことよりも、皆様方が誤解されているから、論議が進まないのではないかという感じ がしてならないのです。  かつ、ここで年収要件が命令で定めるということになっていますが、この場合でも私 どもは要件は最低限のバーで、あとは労使でその年収以上の方々を自分の会社の中でど ういう人を対象にするかを論議して決めていただく。仕事の内容や時間の割振りの裁量 度合によって決めていただく。そんなにたくさん増えるとは私どもも思っていません。 これも前から繰り返して申し上げているのですが、労使が自分の会社で決めることです から、そこにおいて現場の方とホワイトの方、ホワイトの中でもこういう働き方がいい ねという対象者を決めていただく。そういう仕組みです。そのほうがこれからどんどん 仕事のやり方が変わってくる。また個人の責任も重くなる。よく言葉でいう仕事と生活 の調和を実現するのであれば、こういう時間規制の選択肢を増やしていくメニューの拡 大を狙っているわけで、ここにおいてすべて残業代カットが多くのホワイトカラーにと か、とてもそのような話ではないはずなのです。その辺のことは重ねてご理解いただけ ればと思います。  かつ、年収要件はあまり高くすると、何のために入れたのだということになります。 だからその点は労使の話合いが自主的にできる余地を広げるという意味で、繰り返し申 し上げたいと思います。 ○長谷川委員 説明不足だとか理解と言われていますが、いま何が起きているかという と、私のところの連合にいろいろな方から激励のメールが頻繁に入ってきます。ホワイ トカラーエグゼンプションを是非我が国では作らないように頑張れとか。それといろい ろな調査を行っていますが、8割強の人がこのホワイトカラーエグゼンプションに反対 と出ています。これはいろいろなところでもコメントしているところです。  なぜみんなが反対かというと、紀陸さんはいみじくも自分で900万円は高いと言った のです。だから、日本経団連は自分が出したときに400万円から700万円の人は労使委 員会決議で、700万円以上の人は労使協定でと言っている。だから、400万円まではやは り下げたいわけです。  そうすると、厚生労働省は3頁の(一)(二)(三)(四)が4要件だと言っている のです。年収が相当高い者というので、いま言われているのは賃構の管理者の平均を取 ると900万円だから900万円という話がまことしやかに流れています。これを私はいま までこの間にいろいろな労働法の政策を見てみると、(一)(二)(三)を「主として」 と入れた瞬間から、年収は400万円にパッと下がるのです。それがなぜ今回わかるかと いうと、いみじくもこの審議会にかかっている中小の企画業務裁量労働です。5頁の企 画業務型裁量労働一のところに「企画、立案、調査及び分析の業務に主として従事する 労働者について」、「主」が入った瞬間からダーッと対象者の範囲が広がる。だから、 これだって、今回は年収が高いから大丈夫、ご心配なくと言うけれども、すぐ3年後の 見直しをやれば「主として」と入れれば、年収は400万円まで下がるということは明ら かなわけです。  現実に有料職業紹介のときバーゲニングパワーがある労働者ということで、1,200万 円でやりました。ところが2年後には700万円まで下がった。1,200−700=500で500 万円まで下がったわけです。900から500を引いたら400になるではないですか。だか ら、そんなふうになることはもうはっきりしているのです。だから、入れるときは大丈 夫と入れるけれども、3年したら必ず変わるというのがこの間の労働法の経過だったの です。  それに対して日本人の労働者が「嘘をつくな、もうこれ以上はいやだ」ということを みんなは言っているのだと思うのです。私はこんなにみんながいやだというものを、な ぜここで強引に、労側も全部反対しているものを入れなければいけないのかというのは、 私はやはり理解できないです。こんなにホワイトカラーエグゼンプションはいやだとみ んなが言っているのです。かつ、賃金が下がるだけではないのです。労働時間の1日8 時間の規制が確実になくなるわけではないですか。24時間働いていいですよという法律 ではないですか。なぜそんな法律をいま作らなければいけないのですか。  それと国際競争力と言いますけれども、日本の企業は世界で冠たる企業がいくつもあ ります。日本の法律で世界で闘ってきたわけではないですか。そして素晴らしい企業が いっぱいあるわけではないですか。アメリカの労働時間法制をやっているところの企業 よりも、日本の企業の優秀さが世界の中で証明されたわけではないですか。なぜそれを いま変えなければいけないのですか。こんなに日本のみんなで頑張ってきたのに、変え る理由などないではないですか。  昨日EUの専門家会議の人が我が連合に来ていました。いまや日本は労働時間法制の 見直しをやっているのですけれども、イギリスのオプトアウトみたいなものが導入され ると、いま労働者は反対していると言ったら、彼女たちはオプトアウトは聞きたくない、 話もしたくないとプーッとしました。そうすると、この制度というのは世界の中でアメ リカしかないのです。そんな認めてくれと言ったって、日本の労働者はいまいやだと言 っているのが現実です。だから、私は法案要綱から削除してほしいと思います。 ○紀陸委員 労働側の委員の方々にも理解が不足と誤解されている面があると申し上げ ましたが、それはまさにいまの400万円とか700万円とか、私どもの出した報告書を十 分にご理解いただいていない証左ではないですか。私どもはああいう数字には全然こだ わりがないのです。あくまでも1つの理解いただくための拠り所、イメージとして出し ているだけで、決して400とか700という数字に意味があると思っていません。  なぜあのように出したのか、日本の全体のサラリーマンの平均辺りが400万円です。 そこから下はこの制度は入れないというのが1つです。その上の700万円と書けている のは労使の合意のやり方、労使協定でやるのか、労使協定でやりすぎだったらば労使委 員会でやってくれと。中堅のところはきちんと協定でなくて、労使で委員会を作って、 本当の意味で話を詰めた上で導入する。そういう趣旨でこの2段階の仕組みを言ってい るわけです。決して額のところにこだわって、400万円以上でなければ駄目だとか、決 してそんな趣旨ではないのです。それは報告書にきちんと書いてあります。その数字だ けを取り上げて、その数字だけが独り歩きしているようですが、決して私どもの真意は そうではないということは、報告書をご覧いただければおわかりいただけると思うので す。そのところからすでに誤解が始まっていると思います。  もう1つ伺いたいのは、そういう誤解の上に批判がなされているわけでして、そこの ところがいちばん問題なのです。そういう批判があるにしても、先ほどから申し上げて いるようにいわゆるいまの基準法の立て付けの中で、生産現場の方とホワイトカラーの 方の働き方が違うというのはお認めになれると思うのです。現実にそうでしょう。いろ いろな組合の方がおられると思うのですが、ホワイトカラーを抱えておられる組合もた くさんあります。現場の方々の給与、賃金は時間リンクです。だけどホワイトカラーは 時間リンクではない、これは現実ではないですか。否定しようがないわけです。しかも 土曜も日曜も、夜も深夜も働いている方がいる。1日朝から晩まで座っているにしても、 ずっと座っているけれども、全然仕事をしないで夜とか夜中、土日にやっている。極端 に言っていますが。そのように仕事の成果と時間と賃金とリンクしていないホワイトカ ラーがいっぱい出てきています。  これをどのように考えるのか。そこは法律の仕組みの立て方の前提にある論議ではな いかと思うのです。そこをきちんと整理しないで長時間だからどうだとか、反対が多い というのでは、ちょっと論理的に整合性がないだろう。ここをどのように考えるかとい う答えがないと、きちんとした論議にならないのではないかと思います。 ○八野委員 使用者側の方たちは現場を誤解されているのではないか。本当に現場を見 ているのか。いま生産現場とホワイトカラーという言い方をされましたが、第三次産業 で働く人たちが非常に増えています。そういうところでは365日24時間という1つの範 囲を持ちながら、その中で仕事の時間を決めて働いていっているのが現状です。我々が 誤解しているということを言われていますが、もともとこの制度自体がこのいまの日本 企業社会の中で、どれだけの方がこういう制度を望んでいるのか、望んでいる方たちが 非常に少ないからこういう議論になっているのではないかと思います。  先ほどワークライフバランスと言われましたが、ワークライフバランスの中で最も重 要なのは時間です。そこに対する考え方を持っていかなければ、先ほどこれからさまざ まな労働社会を作っていかなければいけないということも言われていましたが、労働の 尊厳が保たれた労働社会を今後作っていくことが、日本の経済成長の下支えとなるし、 またその資源となる人を成長させることではないかと思っています。この特定の労働者 は、労働法制の要である労働時間の規制から対象を外すことが明確に出ている。またこ れを見ていると、対象者に関しては小さく産んで大きく育てる。年収については大きく 産んで小さく育てるということが目に見えて過去の例から出ているわけです。  もう一度原点に戻り、どのような時間で成果を上げていくのか、いま望まれているの はこういう制度ではない。これを何と言えばいいのかわかりませんが、自己管理型労働 制とか、ここで3回、4回名称は変わっていますが、内容は全く変わっていない。これ は原案を作る方も悩んでいるのではないか。どういうところで明確な対象労働者にして、 どういう業務にしていったらいいのかが分からないのではないか。そんな制度をいま入 れる必要は全くないし、労働組合はこれを容認することはできないと思います。  特に最近、日本の経営のリーダーが「法の適用を硬直的にすると、たちまち日本のコ ストが硬直的になる。何とか法制に無理があるのではないか。現行法を見直していった ほうがいいのではないか」というような経営リーダーも出てきている。そのような状況 の中で、このような制度を入れるというのは、労使の労働環境もまたは経済経営理念も 全く間違った方向にいっているのではないかと思っています。結論からいうとこの制度 は要らないのではないか、容認できないということです。 ○田島委員 関連していま八野委員が発言したとおり、冒頭に使用者側委員も渡邊委員 がこれほど労使が対立しているのを拙速にやっていいのか。法案化すべきでないという 形での発言がありました。労働側もやはりこういう問題点を抱えているのを法案化すべ きではないと思いますし、この点についてはいままで議論を重ねてきましたが議論する ところはしますが、法案化について諦めることがいまこそ必要ではないかと思いますの で、よろしくお願いしたいと思います。これは渡邊委員と一致しているので、これは労 使共通の意見だろうと思います。 ○原川委員 中小企業の立場から一言いわせていただきます。自己管理型の労働制につ いてということですが、先ほどワークライフバランスは時間ではないかというご意見が ありました。ワークライフバランスというのは仕事と生活の調和ですから、柔軟な時間 の使い方を実現するということであろうかと思います。長時間労働というのは好ましく ないというのは我々も認識しており、仕事のやり方をこれから変えていかなければなら ないということを、こういう新しい時間の制度で目指していこうということを我々は言 いたい。あまりにもいままで残業代を払わなくてもいい制度というような面だけが強調 されて、もう少し前向きな真摯な理解のための努力がなされていなかったのは非常に残 念だと思います。  ただ、こういう制度はこれからの新しい時代に、ホワイトカラーの働き方としては必 要だと考えていますが、中小企業の場合もこれから我々はワークライフバランスを実現 していくということで、一生懸命に努力をしているというところです。そういう意味で 年収要件については先ほど紀陸委員からも話がありましたが、我々としても命令で定め る場合には、中小でもこれが導入できる、手の届く水準、または基準で定めていく必要 がある。この制度は広く活用されるように、そういう方向で制度を考えていく必要があ ると考えています。  時間外の割増賃金の引上げについても一言申し上げます。このホワイトカラーが駄目 で、割増賃金率の改正だけを先行するというような話も出ていますが、我々中小企業に ついては再三申し上げていましたように、突発的な短納期発注という取引構造の問題が 大きな問題としてあるわけです。したがって、そういうことも考えますと、単に割増賃 金率を引き上げることで長時間労働が解決するという簡単な問題ではなく、もちろん長 時間労働は避けなければならない。しかし、中小企業の現実の経営に対して重大な影響 を及ぼすことも、しっかりと考えていかなければいけないと思いますので、この割増賃 金率引上げについては我々は反対です。 ○小山委員 議論はまた次回も続けることになろうかと思いますが、一言だけ言ってお かないと言わなかったと言われてはいけないので言います。5頁の第四の「企画業務型 裁量労働制」について、これは明らかに労働基準法の中にダブルスタンダードを持ち込 むことになるわけです。そうしたダブルスタンダードを持ち込むことは、以前からずっ と労働側委員が申し上げてきましたがやるべきではない。是非この項についても削除す べきだということを申し添えておきたいと思います。まだ先ほどのホワイトカラーエグ ゼンプションの問題も、まだまだ言いたいことはいっぱいあるのですが、時間のようで すのでやめておきます。 ○君嶋氏(山下委員代理) 小山委員からホワイトカラーについてまだ言いたいことが たくさんあるというお話でしたが、私から一言ホワイトカラーについてお話させていた だきたいと思います。これまで使用者側委員から主張してきたとおり、製造ラインの労 働者の働き方、1時間当たりの労働の均一性というものと、ホワイトカラー労働者の1 時間当たりの働き方の質というか、均一性に関してはかなり差があると思います。ホワ イトカラーについては生産性が非常に高い時間帯もあれば低い時間帯もあって、先進諸 国の中でも日本のホワイトカラーは生産性が低いという批判があったりするわけです。 そういった状況を踏まえると旧来の製造ラインを想定した労働時間法制では、対応し切 れないところにきているのではないかと考えます。  残業代を払わない制度だというところが非常に強調されてはいますが、個人的には逆 にこれはどんなに長く働いても残業代は付かないということであれば、かえって非常に 集中度が高まって、効率的な働き方ができるのではないかと考えています。長時間労働 になって健康に対する心配があるではないかということも、労働側委員から継続的にご 指摘がありますが、その点に関しては今回の提案の中の制度の要件として、休日確保を きちんとするということで対応していくべきであると思います。  労働者はこの制度に反対しているというご指摘もありましたが、そういった現場の労 働者が反対しているようなところでは、労使の話合いで、導入すべきではない制度で対 応すればいいのであって、働き方について選択肢を増やすことについてはそれほど制限 的な考え方をすべきではないのではないかと考えています。 ○分科会長 時間がまいりましたので本日の分科会はこれで終わりたいと思います。次 回の日程について事務局から説明をお願いします。 ○監督課長 次回の労働条件分科会は2月2日(金)13時から15時まで、場所は霞ヶ 関ビル33階東海大学校友会館「朝日の間」というところで開催いたします。よろしくお 願いします。 ○分科会長 それでは本日の分科会はこれで終了いたします。本日の議事録の署名は新 田委員と原川委員にお願いしたいと思います。本日はお忙しい中をありがとうございま した。 (照会先)  労働基準局監督課企画係(内線5423) - 1 -