06/12/27 第4回厚生科学審議会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会議事録 第4回 科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会 厚生科学審議会科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会 ○ 日  時  平成18年12月27日(水) 14:00〜17:00 ○ 場  所  厚生労働省 省議室 ○ 出 席 者   【委 員】矢崎座長         飯沼委員 位田委員 川村委員 新保委員 祖父江委員          辻 委員 中村委員 西田委員 丸山委員 南 委員          森崎委員 山縣委員   【事務局】 文部科学省 二階堂専門官         厚生労働省 藤井厚生科学課長 林研究企画官 吉川課長補佐 ○ 議  題(1)疫学研究に関する倫理指針の見直しについて (2)その他 ○ 配布資料   資 料 1 疫学研究指針の見直しにあたり検討すべき事項    参考資料1 生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会委員名簿   参考資料2 科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会委員名簿  【林研究企画官】  それでは、定刻になりましたので、まず傍聴の皆様方、傍聴に当 たりましては、既にお配りしている注意事項をお守りくださるようお願いします。  ただいまから、第4回科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに 関する専門委員会及び厚生科学審議会科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門 委員会を開催させていただきたいと思います。  本日は小幡委員、永井委員がご欠席です。それから、飯沼委員、辻委員、中村委員、 南委員よりおくれる旨のご連絡をいただいております。  それでは、以降の議事進行につきまして、矢崎座長、よろしくお願いいたします。 【矢崎座長】  本日は、年の瀬も押し詰まった、あす、御用納めというときに、また お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。きょうは論点整理を大体、済 ませようということで進めさせていただきますので、よろしくお願いします。  それでは、初めに資料の確認をお願いします。 【吉川課長補佐】  本日の配付資料でございますが、資料1といたしまして検討すべ き事項、資料は以上でございます。参考資料といたしまして名簿をつけております。そ のほか、委員のお手元に前回、第3回の委員会の議事録のご確認をお願いしたいという ことで、議事録(案)をお配りしております。期日につきましては、年末年始のお忙し いところ恐縮でございますが、1月5日までに訂正等ございましたら、厚生労働省の厚 生科学課のほうまでファックスにてお寄せくださいますようお願いいたします。  以上でございます。 【矢崎座長】  それでは、本日、議論を進めたいと思いますが、大体、論点の8まで は皆様のお手元の資料に、二重枠で今後の方針というのをまとめて書かせていただきま したが、もし時間があればまた振り返ってご議論あるところがあればしたいと思います が、きょうはとりあえず残された論点について審議を進めていきたいと思います。  前回、論点9の34ページになりますが、指針の適用範囲について、これが一番大き な課題でございましたが、前回、川村先生にいろいろ大変貴重なご提案をいただきまし て、ありがとうございました。前回の議論を踏まえて、事務局からよろしくお願いしま す。 【吉川課長補佐】  それでは、資料1の35ページをごらんください。前回、川村委 員よりご説明をいただきまして、事務局でその提案を踏まえまして、今回、検討のポイ ントをまとめさせていただきました。  前回、少し議論が散乱していたようなことがございましたので、ポイントを3つに絞 らせてご検討をいただければと思いまして、そのようにご提案をさせていただいており ます。  まず、1番目でございますが、疫学研究指針と臨床研究指針ということでございまし て、現在、疫学研究指針の後に臨床研究指針が策定されたという背景もございまして、 どちらの指針の適用になるのかよくわからないといったような混乱が生じているところ がございます。  これにつきましては、前回の委員会で川村先生よりご説明をいただきましたご提案に 基づきまして、整理をさせていただきました。すなわち、臨床の場とフィールドの場と いうような考え方がありまして、現行、混乱が生じているのはこの臨床の場というよう なもので行われる、この4つのマトリックスすべてが臨床研究指針に該当するのではな いかといったようなお考えの研究者もいらっしゃるということで、ただそうはいっても、 いわゆる疫学研究の指針ということで見るべきであろうという内容もあるのではないか というご提案でございました。  すなわち、臨床研究指針と疫学研究指針の境目を考えるに当たりまして、まずはこの 「臨床」の場というところにおける研究のうち、診療・診断・予防、こういったような、 いわゆる「既存資料等」を用いて、この「既存資料」というのは研究の目的では採取す るものではなく、例えば診療の中で得られるようなデータ、資料、こういったようなも のを用いて、それを研究に活用すると。こういったようなものを行う観察研究であって、 さらに疫学研究、これはいわゆる量的な研究。こういったようなものに該当するものは、 疫学研究指針の対象と考えてよいのではないかと。  このマトリックスの図で見ていただきますと、「臨床」の場の中で一段階薄いグレー の区分がございます。この部分は臨床研究指針ではなく、疫学研究指針ということで見 てはどうかというご提案でございました。ちなみに、事例のほうも川村先生よりご説明 を前回いただいておりまして、例えば患者コホート研究のような予後調査、それからあ とは症例対象研究のような副作用研究。これはもちろん法律に基づく市販後調査といっ たようなことがございますが、ここでは疫学研究は法律に基づくような調査を対象とし ておりませんので、薬事法に基づく調査は対象外ということでお考えいただければと思 います。  こういったような事例の内容の研究については、臨床研究の指針の適用範囲というこ とで整理をしてはどうかということが1つ。  それから、今、申し上げたとおり、「臨床」の場という場において、今、整理したよ うなほかに、疫学研究指針の対象ということで考えなければならないような研究という のがあるのかどうかと。もしあれば、そういったようなものをご提案いただければと思 っております。  それから、今回の整理につきまして、どのように指針の中であらわしていくかという ことでございますけれども、36ページの真ん中ほどにございますが、指針2の「適用 範囲に関する細則」というところがございまして、現行、幾つか研究事例という事例を ご紹介させていただいております。  その中に、今現在、臨床研究と疫学研究という項目はございませんので、こういった ような項目を追加し、以下の文章のようなものを追加してはどうかと考えてございます。 また、具体的な研究の事例、例えば先ほどのような副作用調査であるとか、こういった 詳細な研究事例を指針の規定の中で規定することは非常に難しい面もございますので、 そういったものをQ&Aというようなところでご紹介をしていくということとしてはど うかと考えてございます。  続きまして、2番目の論点でございますが、もう1つ、適用範囲として考えなければ ならないのが、診療と疫学研究ということでございまして、今現在、診療ということに 位置づけられるものについては、この疫学研究指針の対象外ということで整理をしてご ざいます。前回、診療と研究ということを考えてフリーディスカッション的にご議論を いただいておりましたが、今回、36ページの図のようにお示しをさせていただきまし たけれども、いわゆる診療の中の線引きとして、臨床研究と診療とどちらなのかと考え るようなものと、それから疫学研究と診療ということで考えるような、そういった2つ の研究のようなものがあるのだろうと。  例えば、極端な例で、聴診器を当てるようなもので研究なのかどうなのかというよう なことにもなってしまうというご意見もございました。そういったような介入的な行為 というのは、むしろ診療なのか臨床研究なのか、という線引きの中で考えていくべきも のでございまして、むしろ今回、この疫学研究指針の適用範囲を考えるに当たっては、 こちらの図でグレーに塗ってあるような、この2つの線引き、そしてその境目というの が、いわゆる症例等の情報を収集して、結果を得る行為。そこに着目をして、それがど ちらなのか、というようなことを考えていけば、おのずと整理ができるのではないかと いうように考えてございます。  37ページに移らせていただきまして、疫学研究指針の適用範囲ということで考えら れるものの最低限としての要件といたしましては、以下のような3つ、これが考えられ るのではないか。  1つ目が、有効性や予後等の知見が未知であるか、または既知の知見への検証。2つ 目といたしましては、受益者が対象者本人よりも将来の患者に比重を置いている。3番 目といたしまして、当然のことながら、疫学、いわゆる量的な研究ということで、1例、 2例の症例報告ではなく、ある程度の検体数をそろえ、それを収集、解析をしていくと いったようなことが、疫学研究指針の適用範囲として考えられる要件ではないかという ことをご提案させていただいております。  また、2番目の○でございますが、このような要件に該当する、いわゆる疫学研究指 針の対象として考えないような、診療というカテゴリーに入るようなものというのは何 かあるのかどうか。なかなか事務局でも思い当たるものがございませんでしたので、も しこういったようなものは研究の中で取り込むというよりも、診療の中で指針が対象に ならないということで整理をしないと、実施上、支障があるというようなことがござい ましたら、本日、ご意見をいただければと考えております。  また、そういったような事例につきましては、今後、いろいろ疑義照会等もあると思 いますが、適宜Q&Aなどのようなところでご紹介をし、これは該当しないということ をお示ししていきたいと考えてございます。  また、3番目の○でございますが、適用範囲の細則の研究事例というところで、現行、 診療と研究という項目がございまして、今現在、指針の対象外ということで、2つの事 例が挙げられております。  1番目は、特定の患者の疾病について治療方法を検討するため、当該疾病を有する患 者の診療録等の診療情報を調べる行為。これを踏まえ、当該患者の治療が行われる。  2番目といたしまして、特定の患者の治療を前提とせずに、ある疾病の治療方法等を 検討するため、研究者等が所属する医療機関内の当該疾病を有する患者の診療録と診療 情報を収集・集計し、院内または院外に結果を報告する行為。  実は、この2番目のほうの規定が、「医療機関内の」と書いてあるところもありまし て、医療機関内だけなのかとか、または院外に結果を報告する行為なので、これは指針 の対象外ですとか、そういったようなご意見もいろいろいただいているところでござい まして、この2番目の事例が、非常に解釈が難しく、また現行、混乱を生じているとい ったような事態がございますので、ここはあくまでも1例を示しているものでございま すから、これは一たん削除をし、先ほど申し上げたとおり、必要な事項については、や はりわかりやすいように具体的なものをQ&Aで示すといったような方向で対応しては どうか考えてございます。  続きまして、3番目の論点でございます。単に症例数等の集計を行う調査等の取り扱 いということでございまして、いわゆる統計調査的に症例数等の集計だけを行い、それ 以上の解析またはその解析結果に基づくような結果の考察を行わない調査等。厳密には 研究ではないととられるかもしれませんが、こういったようなものについても情報を集 め、収集し、集計するといった行為の経路についてまでは疫学研究と同じような手法を とるということもかんがみまして、疫学研究指針の対象ということで整理をしてはどう かと考えております。  すなわち、集計をした結果、またそれを解析して、何らかの研究ということでお使い になることもございますので、そこは一たん集計をして、それでまとめてしまえば指針 の対象外ということではなくて、一応、ここは指針の対象というふうに整理することが 妥当ではないかというご提案でございます。  また、ただ調査という扱いでございますので、中によっては次の論点でご議論いただ きますが、倫理審査委員会といったような付議までは必要ないというものがあるのでは ないかと考えてございます。  一応、適用範囲の検討のポイントにつきまして、ご説明は以上でございます。 【矢崎座長】  指針の適用範囲につきましては、議論の進め方が難しいということで、 事務局で今、申し上げた3点に整理して議論を進めたいと思っております。  一番大きな疫学研究と臨床研究の仕切りでございますが、前回、川村委員からご提案 があった35ページの8つのブロックのうち、臨床の場では観察研究で質的ではない量 的研究。それから、フィールドの中では、左側の量的研究。質的研究は臨床研究に入る か、あるいは定められたガイドラインに従って研究を進めるというくくりになっており ますので、こういうくくりでまとめさせていただいてよろしいかどうかということでご ざいますが、ご意見、ございますでしょうか。 【川村委員】  ちょっとよろしいでしょうか。前回のこの会議で説明させていただい たものは提案というよりは、現況の指針を、特に38ページから39ページでうたって います表組みのところを中心に解釈するとそうなってしまうということでありまして、 積極的にこれを提案したというよりは、現在、読んで解釈するとこうなってしまって、 煩雑なので、図示するとこうなるということです。  ほんとうに疫学研究と臨床研究という区切り方がいいのかどうか、ちょっとやりなが ら疑問には感じたんですけれども、現行の指針の使う範疇を守る限りはこんな区切りに なるというふうに、解釈といいますか、わかりやすく説明するためにまとめたものでご ざいます。 【矢崎座長】  ありがとうございました。私にとっても大変考え方の整理になる、図 示されたブロック別の研究の区分けでございます。こういうふうに分けると、区分けが しやすいのではないかということでございますが。  そのほか、いかかでしょうか、はい、どうぞ。 【丸山委員】  1つ、教えてほしいんですが。産業保健の事例がここには出てきてい ないんですが、産業医の方が集められたデータを整理して、これまでの区分けですと将 来のみずからの産業医活動のために使うなら、それは事業であって指針の対象ではない けれども、広く報告するものであると疫学研究倫理指針の対象である、適用を受けると いうような整理だったかと思うんですが。産業医、あるいは産業衛生活動において、そ の区別というのが診療の場面とか、地域保健と同じようにというか、それにもましてと いうか、区別が難しいように感じていたんですが、そのあたりを公衆衛生なり、疫学の 専門の先生からちょっと教えていただければと思うんですが。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。はい。 【川村委員】  私自身も産業医であり、学校医でありますけれども、産業医学ないし は学校医学というものが医療としての特別な、高度な診断とか治療というものを直接伴 わないことが多いので、私の解釈としてはフィールドの中に含めてきております。ただ し、会社の中に診療所があって、介入を行える余地があると、医療的な介入を。そうい う場合は、会社の診療所なり、医務室というのは医療機関として位置づけられる場合が あるので、そのときは臨床指針の適用になると思いますけれども、いわゆる従業員の健 康診断データを集約したり、あるいは休職の日数を集計したりというような産業医学の 中で日常活動で集まるデータを使ってやったり、あるいは職場に対して介入をしていく というようなことは、どちらかといえば疫学研究の指針の対象、フィールドにおける研 究と、業務と。研究と業務の境目は多分、この後の診療と研究の境目と同じ問題が起き てくるかと思いますけれども、一応、今のところ、この指針を読む範囲では、いわゆる 医療行為そのものも伴うか、伴わないかで分けていると理解しています。 【矢崎座長】  よろしいでしょうか。 【丸山委員】  私のこれまでの理解ですと、臨床研究指針と疫学研究指針の区分けの 際には、医療の要素が強いか弱いか。35ページの上の図にあります臨床かフィールド かという区分けが適切な区分けだと思うんですけれども、それは医療を事業としてやる ときは診療ということになるからそうであって、何かちょっとややっこしいことを言っ ておりますが、産業医の場合は産業医活動を事業としてやるというのは、医療の側面と いうのは出てこないというか、色彩が薄くなるので、この35ページの枠組みだとフィ ールドなんですが、何ていいますか、医療というのは既知の知識なり技術なりを適用し て、人の健康の維持、回復に役立てるということで、既知の知識が一応、あるかないか で研究か事業活動かが区分されると思うんですね。  そうしますと、産業医活動、産業衛生活動、産業保健活動というんですかね、につい ても既知の知識に基づいて実施される活動については、医療であれば臨床の側面が強く 出てくる。逆に言うと、研究の側面が弱くなるんじゃないかと思うんで、この臨床、フ ィールドという基準による区分けを産業衛生なり、学校衛生なりにそのまま持ち込むと いうのは、研究か事業活動といいますか、研究はまだ未知のものを研究して新たな知識 を得るというところにあり、事業というのは既知の情報を使って患者なり、検診を受け る人なり、労働者なり、学生なり、生徒なりに役に立てるという色分けをすると、必ず しも臨床、フィールドという区分けがすべての場合に使えるということにはならないん じゃないか。診療と研究の区分けには有効な区分けの基準となるんですけれども、繰り 返しになりますが、産業衛生についてはちょっと留保があっていいんじゃないかなと思 うんですが、そのあたり、ご意見をいただければと思うんですが。 【川村委員】  よろしいでしょうか。診療と研究、あるいは産業医の事業と研究につ いては全く同じ考えです。既に、有効性なり知見がある程度得られているものについて、 よかれと思って実行するのは事業なり診療ですし、未知だから確認しようということは 研究という、基本的なスタンスは全く同感です。  それは医療の場、病院の中の業務においても同じような問題が生じまして、これは医 療であるか、新しい知見を得るための研究であるかというのは、かなり連続的なスペク トルも持っておりますし、産業医学においてもアプライする内容が違いますけれども、 やはり連続的なもので法律に定められて産業医がやらなければならない業務から、企業 内におけるいろんな集計作業から全国で統一して何かを介入するところまで、同じよう に連続的なスペクトルを持っておりますので、事業か研究かというのはどこかで切り分 けるか、あるいは切り分けないで、ある程度、入りまじることを容認するかはこの後の 議論だろうと思います。  私の感覚では、病院の中の、いわゆる典型的な医療行為と産業医学の現場、あるいは 学校医学の現場、それから地域医療でもそうです。保健所でおやりになるいろいろな保 健事業があります。何とか教室というのをよくやっていらっしゃいますけれども、そう いうのも含めて地域、学校、職域、そういうのをフィールドと言っているわけで、そう いったものにおいて行われるものについても、一方では法律に基づいてやらねばならぬ ことから、産業医の独自の判断で妥当性があればやってよしというものから、ほんとう にまだ試み的なことまでさまざまなスペクトルを持っているかと思います。 【矢崎座長】  私が最初に述べたことがちょっと誤解を招いているかもしれませんが、 今、ご議論をいただいているのは臨床かフィールドかということではなくて、今のご質 問は業務である、あるいは診療と研究の区分け、それは次のところで今の趣旨の議論は したいと思いますので、この1点目は、この趣旨は臨床、フィールドの区分けというこ とではなくて、臨床の場で行われる研究のうち、疫学研究指針に従うべきものが臨床研 究指針ではなくて、疫学研究指針でやっていい研究があるんではないかということで、 今、ご提案をしたので、臨床の場にあったものがすべて臨床研究指針ではないんではな いかと。中に、疫学指針に基づいて研究を行うところがあるんではないかということを 1番目に議論をさせていただいたんですが。  ですから、丸山先生の事業、あるいは診療と研究の区分けは次の、2番目でもう少し 具体的に川村先生がお答えになったことに従って、ちょっと議論を進めたいと思います。  そうしますと、1番目は臨床の場にあって進められている研究のうち、川村先生の図 で、いわゆる量的な研究である疫学研究の範疇に入るもので、例えば予後調査等などは 臨床研究指針よりはむしろ疫学研究指針に従って進めていただいてよろしいんではない かというまとめでございます。そういうふうに、臨床の場で行う研究で臨床研究指針で はなくて、疫学研究指針で従うものはどういうものかということを考えたときに、ここ に例示があるんではないかということです。  具体的には、次のページの適用範囲に関する細則で、1例として下のような事象を挙 げていますが、これは論点のポイント2とある程度、関連がありますので、これについ てはポイント2と一緒に議論したいと思いますが。そういうまとめにさせていただいて よろしいでしょうか。はい、どうぞ。 【森崎委員】  次の議論にちょっとかかわるので、ここでお話ししていいのかどうか 迷っておるんですけれども。論点1で、疫学研究指針と臨床研究指針の見直しというか、 区切り方の見直しを、この分け方を参考にしながら今、議論が進められていると理解し ますが、そのときに現場で混乱をしないように、どのように書き出すのがいいのか、ち ょっと今、わからないのでコメントさせていただきます。  次の事象にかかわるんですが、事業、医療、診療という言葉が出てまいりましたが、 35ページにある臨床という平面に書かれているわけですけれども、この平面はすべて 研究に関してのものが書かれていると私は理解します。そうしますと、次に議論をする 診療と疫学研究と申しますか、診療と研究についてという区分けで、3つの要件が出さ れていますけれども、これを裏返しますと、診療とは有効性や予後等の知見がわかって いる、既知であって、対象は受益者、通常は患者さんだと思いますけれども、患者さん 本人であると。ほかの人を含めた検討をするような量的ではなく、その個人の質的なこ とを取り扱う事業であるという理解をして、そういうふうに限定すると、35ページ目 の、今は2段構造ですが、その上に、真ん中の上に飛び出るような形で何か診療という ものが位置するんではないかと。実は平面ではなくてほんとうは連続があるんでしょう けれども、そこで区切られた形のものが36ページ目に、平面というよりは立体的な三 次元のものが出ているんではないかと感じます。  そうなったときに、振り返って疫学研究と臨床研究の区別というのを、確かに4つで マトリックに分けられ、また診療との定義の違いによって分けることができるように考 えながら、なおかつ、量的な疫学研究というのをどこで線を引くように周知するのかと いうのがなかなか難しいような気がします。  具体的には、予後調査、副作用研究という名前がつきますと、疫学研究指針の対象の 中でしかるべきという考えは比較的了解を得られやすいと思いますけれども、先ほどち ょっと進んでしまって言うのがはばかられますが、現在、医学研究指針のところで対象 外とされている医療機関内で、対応するところで複数の医療機関に依頼しというような 記述を考えると、量的というのを例えば院内であって、ある主治医が、あるいはグルー プの診療医が症例について検討するというのを疫学とするのか、臨床研究とするのかと いうことをある程度示すことができないと、むしろ混乱を招くのではないかと感じまし たので、あえて2に踏み込むわけですけれども、疫学研究と臨床研究指針の違いについ ての説明たる細則、あるいは事例の示し方というところは工夫、あるいは検討が結構必 要ではないかと思って、コメントさせていただきました。 【矢崎座長】  どうもありがとうございました。全くおっしゃるとおりで、川村先生 のこの資料は臨床の場の研究、その中で疫学研究指針がどうあるべきかということを整 理されたものであって、今、森崎先生がお話しになったことは、どうしてもポイント2 の診療と疫学研究についてちょっと議論を進めないと、なかなか結論が得られないので、 大変恐縮ですが、一応、先ほど申し上げましたように、疫学研究と臨床研究というのは 臨床の現場で、数はともかくとして、量的研究であって、観察研究に該当するものが一 応、対象とするというまとめにさせていただいて、それでは今、お話しになった業務と して行われているもの、あるいは診療として行われているものと、研究とどう区分けす るかというのが、まさに今、森崎委員の提案されたそのものではないかと思うんですが。  先ほど、事務局から説明が、37ページの3つの丸に示しておりますが、疫学研究指 針の適用範囲と、厳密な区分けはなかなか難しいんですが、最低限の要件としては3つ の黒丸で示したものであるのではないかという考え方なんですけれども。厳密に今のお 話を区切るのはなかなか難しくて、ミニマムリクワイアメント的なことがここでまとめ られておりますが、この点についていかがでしょうか。 【川村委員】  どうして、こういう迷う問題が生ずるかというと、どうしても医療と いうのは1対1の、人と人との関係が原点でありまして、我々、医学部の教育の中で 「患者から学べ」とか、「日々、研鑽である」とか、そういうことをトレーニングされ てきているわけで、1例、1例が医療行為であると同時に、また学びの場でもあるわけ ですよね。ですので、あらゆる行為に診療なり、保健事業としての側面と、研究との側 面がどうしても同居する、共存するように思えます。  ですから、前回、永井先生がおっしゃったように、聴診器1つ当てる行為だって研究 になり得るんだと。耳をそばだてて聞けば、それである程度の例数を集めれば、既に研 究であるということまで言えるわけですので、どちらかに切り分けるということが難し いと。考えれば考えるほど、悩ましい問題であると思います。  私はあらゆる行為に程度の差こそあれ、両方の側面を持つものだと思っておりますの で、指針の適用については事務局のほうでご用意されたように、ある種のこういう要素 を持ったものが研究を含むものであると。すべてが研究と申し上げわけではなくて、こ ういうものがあれば一応、研究的な要素を持っているのだというような考え方をして、 その要素に対して指針を適用するということでどうかと思います。  ただ、用意していただいた3項目、非常によくまとっておりますが、中には、例えば 医療評価で行う術後の患者さんの予後、5年後の生存率を出しなさいというようなもの が、ここにまさに該当してしまいますので、もしこれは病院に義務づけて、やらねばな らぬことであって、あえて特別な研究ではないのだというのは、それぞれごとに規定を 設けて、例外扱いをする必要があるかもしれないと思いました。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。今、いろいろ医療の標準化というのがございます よね。これはある診療科で診療した結果をまとめて検討して、こういう方向で診療しよ うというのも一種の研究に入るかもしれませんね。だから、そういう意味で、なかなか ここまでが指針に従いなさい。ここまでは対象外の研究ですよという……、いやそれは 研究じゃなくて、研究的な色彩があるんだけれども診療の中に入りますというような区 分けが、具体的に1つ1つ述べるのはなかなか難しいと思いますが、できる限りQ&A みたいなもので少し疑問があるたびに答えを出していくような方式でこれをまとめない 限り、全部網羅して見直しの方向性だけで片づく問題ではないので、少しそういうもの を加えて……。  このQ&Aというのは、見直しのたびではなくて、途中でも加えることはできるんで すか。 【吉川課長補佐】  はい、適宜追加をしていくということは可能です。また、これは 厚生労働省、文部科学省のホームページからもアクセスできますので、逐次、更新した 情報をごらんになれるということになっております。 【位田委員】  今、川村委員がおっしゃった要素について、これは疫学研究の要素で あって、こっちは、例えば診療だ、もしくは臨床だと、そういう分け方ができるとおそ らく一番いいんでしょうけれども、疫学研究指針にしろ、臨床研究指針にしろ、もしく はゲノムの指針にしろ、オール・オア・ナッシングで適用する、しないというやり方を してあると思うんですね。ですから、川村先生がおっしゃったようなことがもしできる とすると、ある1つの行為に2つの指針が重なって関係する。そういうやり方でもよけ れば、今のご提案はできると思うんですけれども。ただ、そうなると、それでは、ここ の部分は疫学であって、こっちはそうじゃないというのを、これまた切り分ける必要が 出てくるので、同じ困難さが出てこないかなという気はするんですけれども。  今のやり方だと、この指針が適用される場合には、別の指針は適用されないという、 完全に100%、疫学に入るのか、100%臨床に入るのか、そういう分け方ですから、 ちょっと今のお考えはこれまでの考え方とは少し違うかなと思いますけれども。 【矢崎座長】  おっしゃるとおりで、なかなかきっちり区分けするのはできないんで すが、これはやっぱり指針から言うと、オール・オア・ナッシングなんですね。この指 針でやる研究……、ですよね。 【吉川課長補佐】  その指針が適用されますということになりますと、当然、この指 針の中に入ってくるんですが、事務局のほうから資料で今回、ひとつご意見をいただき たいと思いましたのは、むしろこの指針に入ってしまうとまずいということがあれば、 それは指針に入りません、この指針が適用されませんということを示しておいて、いわ ゆるこの指針の適用範囲ではないということで周知をしていったらという整理の仕方の 考え方をご提案させていただいたものです。 【矢崎座長】  今、おっしゃられたのは、ポイントの1の臨床研究か疫学研究かにつ いては、ある程度、区分けさせていただいたんですが、今度、ポイント2は今、事務局 の説明があるように、疫学指針……、むしろ対象外を明確にしたほうが研究者にとって は不利益ではないかということで……。  ですから、事務局でこの3つのポイント、最低限の要件として述べましたが、その最 低限の条件を満たす中でも、指針の対象外と……、そういうものがあるかどうかという ことですかね。 【山縣委員】  大方のお話は私もそのとおりだと思うんですが、治療の定義ってある と思うんです。その医療行為というのは当然、定義されているものでしょうが、例えば 治療といったときに、同じ運動療法でも医療機関の中でやるものと、外でやるものが同 じことをやるにしても、それは運動療法や食事療法は治療と言うのか言わないのかとい う話も出てきて、そういう意味では35ページの図に戻ってしまいますが、臨床、フィ ールドのこの場の分け方というのはまず1つ重要で、それに基づいて36ページの研究 事例のところの疫学研究指針の対象外の臨床研究と疫学研究に関しても場が入ってこな いと混乱を起こすのかなという気がするんですが、そのあたりはどうなんでしょうか。 【川村委員】  実際にその臨床というのを場で分けるのか、行為の内容で分けるのか というのは、私も随分悩みました。実は、それのきっかけになったのが38ページの表 の中の、上から2つ目の説明の中で、特定の食品という事例が出ています。食品を扱う 場合はいわゆる臨床指針には入れないで、こちらのフィールド扱いをしているわけです ね。右側に、医薬品をどうのこうのという場合は臨床の場に入れて、これを敷衍して、 運動療法も食品と同列に今、置いていますけれども、病院の中と外という場所、ほんと うにクリニカルセッティングで分けるのか、それとも内容によって外でやってもかなり 医療行為に準ずることであれば入れるのかとか、そのあたりはなかなか難しいなという か、はっきりと決め切れないので、私自身、まだここはあいまいにしたままであります。 【矢崎座長】  37ページの3つのポイントのまとめの中で、これを適用範囲として いるわけですが、それがあるために、あるいは実際の診療として行うことができなくな るような、何か事例、ございますかね、そういう……。 【丸山委員】  よろしいですか。今、矢崎座長のおっしゃったのは、37ページの上 から6行目、7行目の問題だろうと思うんですが。これまででしたら、研究として扱わ れれば研究計画を立てて、倫理委員会の承認を得るということが定められておりました ので、診療で行おうと思っていたものについて、倫理審査が必要になるという点で問題 が出てくる可能性があるのかなと、この上から2つの目の○を見て思っていたんですが。 この後、今回の検討では研究であっても倫理審査にかけなくていいカテゴリーをつくろ うということも検討されるようですので、そうなってくると境界を設ける必要性自体が 弱まってくることになるのかと考えましたね。 【矢崎座長】  そうしますと、37ページに挙げました3つのポイントが最低限の要 件として挙げられるものとしますけれども、その当該の3つのポイントに該当するもの であっても、診療の一貫として位置づけられて、疫学研究指針の対象外と整理すべきも のというような事例が生じた場合には、Q&Aで随時、お示しするということでまとめ させていただきたいと思うんです。  それから、先ほど事務局からありました指針の適用範囲に関する細則の中で、診療と 研究の項の、先ほど説明していましたように、ちょっと混乱を起こす可能性があるとい うことで、下の2番目の事例は削除させていただいて、Q&Aで対応していきたいとい うことであります。  それから、ポイント2の議論を終わったところで、ポイント1の臨床研究と、今は疫 学研究と診療との区分けですが、今度は臨床研究と疫学研究の指針の対象例として、事 例として36ページの中ごろに研究事例として具体的に挙げさせていただきましたが… …。 【祖父江委員】  診療と疫学研究というところのポイントで、37ページの一番上の 3つの要件に関しては、これは疫学研究というよりも研究全般に関しての要件のような 気がするんです。ですから、疫学研究指針の対象とか、臨床研究指針の対象とかという 区別ではなく、研究と診療とか、研究と業務とか、そういう切り分けの定義だと理解し ていいですか。  というのは、先ほど森崎先生がおっしゃられたように、36ページの一番下の図が平 面的になっていて、35ページの図と多少オーバーラップすることとして考えると、診 療と研究というのが同じ平面にあって、それがちょっと混乱を来すんではないかと思わ れて、研究というのと診療、あるいは業務というものは違う平面……、立体的にといい ますか、三次元的に考えたほうが混乱が少ないのではないかというように思うんですけ れども。 【矢崎座長】  臨床研究と診療は、川村先生からお話があったように、要素が随分違 って、今、診療と疫学研究の領域がいろんな事例があって少しぼやけるので、そこを今、 議論しているわけですけれども。ですから、先生がおっしゃるように、研究は研究なん ですけれども、その中でいわゆる量的研究がこの診療指針に入るというふうにまとめさ せていただいたんですけれども。 【川村委員】  これは多分、行政の都合もあるかと思うんですが、要するに臨床研究 の指針はこの委員会の所管外で……。 【祖父江委員】  そういう意味ですね。 【川村委員】  疫学研究ではない質的研究も指針の管轄外なので、あえて疫学研究と いう、2番目のタイトルに書いてあって、先生が気になるところは……。 【祖父江委員】  そうであれば、大体わかるんですが。 【森崎委員】  あんまり混乱させないで先に進みたいんですけれども。今、3つの要 素が満たされた場合にということで、私自身、疫学研究に関する要件というのはほぼ妥 当かなと。ただ、それで不具合の生ずることがあり得るかもしれないとも思って、ちょ っとコメントさせていただきます。  といいますのは、疫学研究とみなしてもいいけれども、指針に含まれると何が困るか というと、先ほど丸山委員からも言われたように、計画を立てて倫理審査を受けなけれ ばならないという点ではないかと、現状は思います。  今回、10のところで議論をする、審査を受けなくてもいい要件を決めるといたしま しても、このような疫学研究とみなして、計画を立てて、機関の長にそれを知らせると いうか、判断を求める必要があろうかと思います。  ひょっとすると、的外れかもしれませんが、現在、混乱を来すかもしれないとして削 除される項目の中に、1つの医療機関の中でという書き振りがあって、対象に入るもの として複数の機関というのがございます。疫学研究が量的研究といたしましても、医療 施設によっては多くの症例を扱って、ある診療といいますか、医療行為が妥当かどうか を既知であっても検証することは通常、日常、含まれていることだと思いますし、その ことが対象となる患者ではなくて、これから受診される患者さんに対しての検討だとい うことも、当然、しばしばといいますか、通常行われていることだと思います。  その辺を見ますと、そういったものも個人としては疫学研究とみなすことは別に差し 支えないと思うんですけれども、指針の中にもし入るとなると、それが倫理審査が必要 でないとしても計画を受理しなければならないといったふぐあいが生じるのではないか と考えて、そういう例については少なくとも指針の中である必要はございませんけれど も、何らかの形で明示する必要があるんではないかと感じました。 【矢崎座長】  まさにおっしゃるとおりで、それをQ&Aで明示していきたいと思っ ているわけですが。  それでは、大変恐縮ですが、ポイント3番目ですね、単に症例数等の……。 【祖父江委員】  もう1つ、ポイント1のほうで、疫学研究指針、臨床研究指針の適 用を考える際に、一番問題となるのが、この場合でいきますと、介入研究で、疫学研究 というか、左上の部分ですね。それの臨床、フィールドはどちらになるかによって、疫 学研究指針になるか、臨床研究指針になるかが分かれると。同じ介入研究でもこの部分 が臨床、フィールドという区別を明確にしないと適用が分かれるという部分だと思うん ですけれども、そのフィールドで医療行為をした場合というのが一体どっちになるのか。 検診などが、こういう場合に当たると思うんですけれども、それは一体、フィールドで 疫学研究倫理指針なのか、医療行為だから臨床研究指針なのか、ちょっとあいまいにな っていると思うんですが、その辺はどう考えたらいいんでしょうか。 【川村委員】  実はちょっと答えに窮します。先ほど、ご質問にお答えしたとおり、 明確に臨床というのを医療機関の中の行為という、場所で規定するのか、それとも内容 で規定するのか。どちらかというと、おそらく内容で規定すべきなんでしょうけれども、 その検診というのが広くフィールドで行われていると。一応、医師が検診項目は指示す ることにはなっていますよね。だから、医師がいないところでやった検診機関が摘発さ れたりしているので、医療行為には違いないとは思うんですけれども、基本的には法律 に基づいて医師の意思とは関係なくどんどん進んでいってしまうようなところがあって、 そういったものを通常の病院で医師が高度な、プロフェッショナルな判断に基づいてや ることを決めるものと同列かどうかという問題もあるので、逆に皆さんのご意見を少し 集約する必要があるかとも思います、というかよくわかりません。 【辻委員】  きょうは遅れまして、申しわけありませんでした。議論が途中からなの でわかっていない部分があるんですが。この疫学研究と臨床研究の区別というのは、な かなかつきがたい部分があるし、現実にも現場で困っていることがあるわけです。やは り、もう一度、考えなければいけないのは、ほんとうに分ける必要があるんだろうかと いう、根本的な議論をした方がよいと思います。 【矢崎座長】  臨床研究は……、明確な臨床研究ってあるわけですよね。明確な疫学 研究ってあるわけですよね。もう1つは、通常の業務の診療というのがある。3分野が あって、今、問題になっているのは、その境界の領域をどう線引きするかという……。 【祖父江委員】  いや、もう1分野あると思うんですけれども。業務としてやってい る予防的な行為と、診療というか、医学とはちょっと線を引くような、教育ですとか… …。 【矢崎座長】  それは川村先生の図からいうと、フィールドの中の疫学研究に入るん じゃないかなと。 【祖父江委員】  いや、研究じゃなくて住民サービスとしてやっているものです。で すから、医療行為でサービスとしてやっているようなものと同じような意味での行政サ ービスというようなものだと思うんですけれども。 【山縣委員】  あと、もう1つ。先ほどの運動療法でも、医療機関ではちゃんと保険 の適用になって、医療行為として認められていながら、同じことをフィールドでやると きにはそうではないという、現実問題はやはりそういうことがあるわけですよね。しか も、対象者が両方とも、例えば対等の障害の人だったりして、患者かどうかという定義 に関しても一緒であると。ただ、やる場所とやる人が違う。でも、人もひょっとしたら 医療従事者かもしれないとなってくると、今のあたりの議論というのは確かに非常に区 分けができなくて、私の限界としてはそれは倫理委員会なり、そこの施設で、どちらの 指針でやるかということを判断してやると。従来もそうしていたと思いますが、そうい うことになってしまうのかなと。おっしゃるように、辻先生が言われたように議論とい うのはとても重要だと思います。 【矢崎座長】  次の課題に入りますけれども、そうなってくると、ほんとうに倫理委 員会が大変な仕事の量になるので、1つは倫理委員会は大事だけれども、きっちりやる 臨床研究と、ルーズにやるという意味ではありませんけれども、ある程度、プライオリ ティーを決めて、倫理審査委員会をやる必要があるんではないかということで、疫学研 究に関してはやはりインフォームド・コンセントのとり方とか、随分違うので、その辺 はある程度、明確にしておかないとなかなか難しいかなというのが、感覚ですが。実際 に、研究をやっている先生方のご意見と倫理審査をやっている先生方のご意見とでうま く折り合えば、すべて倫理委員会にかけておやりなさいということもあり得ると思いま す。 【位田委員】  倫理審査のときに出てくるのが、これは疫学研究ですから疫学研究と して審査をしてくださいと。普通はそういう形で出てくるんだろうと思うんですね。研 究計画を書かれるときに、研究者が疫学研究だと思っていれば、疫学研究指針にのっと って、これこれの要件をクリアしているから大丈夫だと思って審査にかけられるわけで すね。ところが、それが疫学研究じゃなくて、例えば臨床研究であるとすれば、今度は 臨床研究の指針に従って全部項目をチェックしないといけない。だから、最初の段階か らやっぱり違うと思うんですね。それを倫理審査委員会に全部投げてしまうと、倫理審 査委員会としても疫学研究で持ってきているのか、そうじゃない、例えば臨床研究で持 ってきているのかというのは困ると思うんですね。疫学研究で出してきているけれども、 これは疫学研究じゃないよと、そういう例も幾つかあると思うんですが。そうすると、 その場合には差し戻して、もう1回、書いていただくという……。でも、どちらにして も最初に出てくるのはどちらかで出てきますので、そこはやっぱり最初の出発点ははっ きりさせておかないと、研究者のほうがむしろお困りになるんじゃないかなという気が しますけれども。 【矢崎座長】  なかなかきっちり区分けというのは難しい……。疫学研究指針と臨床 研究指針というのは、基本は変わらないんで、疫学的研究に極めて特徴的な、量的な研 究を進めるときはこういうことがあるし、データだけを解析するような業務も臨床研究 とは違ってありますので、そういうことで、ちょっとそういう部分が違うんですが、基 本的には倫理的なモラルをしっかりさせた立場でやりましょうということはどちらも同 じなんです。だから、疫学研究として指針に従ってやる明確な部分というのは極めてあ って、それを臨床研究指針に持っていくことはないと思うんですけれども。  今、議論になっている中間のものをどちらに持っていくかというのが極めて大きな部 分で、細かく規定することは不可能なので、先ほどの繰り返しになりますが、申し上げ たように、臨床研究との差はいわゆる量的研究であって、観察研究に該当するものを一 応、疫学研究にしましょう。臨床研究とはそういうところがちょっと違いますよという ことで、あとは具体的にQ&Aで分けていくというまとめにさせていただきたいんです が。なかなか、憲法みたいにうまくはいかないと思いますので、その辺はご容赦をお願 いしたいと思うんですが。  大切なポイントで、単に症例数の集計を行う調査の取り扱いでございますが、これは 単に症例数のみを行うとしても、やはり疫学研究指針の対象範囲と整理したほうがよろ しいんではないかということですけれども、何か不都合なことがあるかどうかというこ とで、ちょっとご意見をお伺いしたいんですが。 【森崎委員】  よろしいでしょうか。先ほどちょっと申し上げたこととダブりますが、 疫学研究の中に含めるということがよろしいと思うんですけれども、指針の対象とする ことでたとえ倫理審査の対象としない項目に該当するとしても、集計をすることで、そ れについて逐一、計画を立てるということは現実には問題がひょっとしたらあるんじゃ ないかと。私、あまりその分野をやっておりませんので、その辺、いかがかなのかとい うのを近い方にちょっとお尋ねしたいんですけれども。 【川村委員】  いいでしょうか。ここで想定されているのは、例えば特定疾患の疫学 研究班がいろいろな難病について全国的な集計をやっています。それ以外にも、いろん な疾患で全国調査が行われているかと思います。そういうのをイメージしている文言だ と思います。  ただ、こういう全国的なものではなくて、地域のみとか、一部の有志のみとかという のはよくあるかと思います。東京でも、例えばCCUネットワークというのがあって、 急性心筋梗塞の患者さんの集計や何かをやっているわけですけれども。どこまでこうい うのを対象にするか、あるいは院内であればどうなのかというようなことが非常に境目 は難しいと思います。  ですから、研究的側面は確かにあるんですけれども、倫理審査を必要としないように しておくと、多分、申請もされないのがたくさん出てくると思うんです。多分、ここで 想定されているのは、他施設にまたがって集計を行って、公表するというものが前提に なっていると思います。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。そういう意味合いにご理解いただければ……。 【森崎委員】  イメージはわかるといいますか、最初に示されましたお話しいただい た例は、医学研究として、おそらくは倫理審査を要さないかもしれませんけれども、そ ういうことがあるという事実が機関で確認されるというのはよくわかります。  私、ちょっと思いましたのは、1施設であってもそういうことを始めて、今、言われ た有志というようなことも地域、あるいは単に二、三の病院でということもあろうかと 思いますし、院内ということもあると考えて、そういった例を除外する必要はないのか もしれませんけれども、全部、指針の対象ですよと言うのがほんとうに適切かどうか、 多少疑問に思って、ただそれを除外すると、この項目自体がすごく甘くなるといいます か、そのことも同じじゃないかというような議論になりかねなかったので、ちょっとコ メントをさせていただきました。  逆に言うと、先ほどと一緒ですけれども、量的なものをどこまでをもって量的とする かとか、既に文言として混乱を来すので、医療機関内という言葉は省かれるという方向 が一応あるわけなので、そうした場合に複数であればもともとの考え方からすると含ま れるわけですけれども、ちょっとその辺について確認、あるいはひょっとすると補足が 必要なのかなと思いました。 【川村委員】  そのときに、多分、押さえておいたほうがいい問題として、集めるデ ータの中身なんですが、いわゆる、通常、ほかの分析的な研究では、個人、個人のレベ ルのデータを集約します。この患者数の集計なんかですと、多分施設ごとのナンバーし か出てこない。いわゆる集計データであると。個別のデータではなくて、集計したデー タのみであって、要するに個人に訴求することはもとから全然できませんし、Nが1と いうこともあって、もう特定されてしまう場合がないとは言えないんですけれども、集 計済みのデータでやるんで、ほかのいわゆる通常の監察研究で行う個別の、個人が同定 できる、できないにかかわらず、1人ワンレコードになった個別のデータと、ここで集 めるのは多分、最初から集約済みのデータなんで、データの質は大きく違うと思います。 ですから、入れるか入れないかというのはこの委員会として判断してよろしいのではな いかと思います。 【矢崎座長】  どうもありがとうございました。それでは、そのようなことでこのポ イント3はまとめさせていただくということで……。大変、前回から指針の適用範囲と 一番難しい問題、明確には区切りづけられないけれども、ある程度の見直しの方向性を 今、まとめさせていただいた方向でやっていただいて、具体的にはQ&Aでお答えする ということです。また、まとめたポイントの方向性というのを委員の方々にお送りしま すので、コメントをいただければ大変ありがたいと思います。 【丸山委員】  1つ。先ほどの、少し勇み足で早く出してしまった産業保健とか、地 域保健の問題の切り分けはこれで終わりということなんでしょうか。それとも、37ペ ージの最初の○の研究はこれに当たらないものは事業ということで説明するのでしょう かというので、ちょっと産業保健の事例など、具体的なものを検討しておいたほうがい いんじゃないかと思うんですが。同じようにもうできるということですか。診療と臨床 研究、疫学研究の区分については、今、かなり意見が出ましたし、議論をしたと思うん ですが、ほかのものについてはいかがでしょうか。 【川村委員】  丸山先生及び祖父江先生からご指摘のあったことで、地域であれ、事 業所でありましても、36ページの下の図のマークの、1枚前の2階の部分の話だと思 います。これ、1階部分におろしますと、臨床研究指針は全く消えて、診療ではなくて 保健事業という言葉に置きかわって、疫学研究指針との境目が出てくると思います。先 ほど、3階が必要ではないかというご指摘があったように、ちょっと2階建ての各層を エクステンドしますと、36ページの下の部分は2階の臨床のフロアの部分の話であっ て、1階の部分では臨床指針は関係がなくなるので、臨床指針の部分は消えて、診療と いう言葉にかわって保健事業とでもいう事業が入ってくると思います。保健事業と疫学 研究との境目が、丸山先生がおっしゃるように、あいまいなものが確かに出てくると思 います。出てくるので、それは今、事務局のほうからご提示された3つの要素を持つか、 持たないかということで切り分けて、多分、大きな問題は発生しないと思っております が。 【丸山委員】  1つだけ確認いただけますか。そうすると、ある事業所で今後の当該 事業所での産業保健活動に役立てるために、その事業所内での特定の産業疾患というん でしょうか、そういうものの発生、あるいは予後の収集、集計というのは、これはわか らないから調べているんだけれども、その目的が将来の産業保健活動だから疫学研究指 針外という整理になりますか。 【川村委員】  そうではなくて、それは研究に入ります。私も実際、働き盛りの突然 死の研究をやりました。そのときは事業所の検診データを集めて症例対象研究をやりま したけれども、それはちゃんとした研究として扱っております。もちろん、我々の研究 自身、人を対象とした研究自身がすべて現場に還元することを念頭に置いてやっている ので、あらゆる研究が事業に関係するんですけれども、しかし突然死の研究自身は既知 のことではないので、未知のことを調べるのだし、その人たちはもう亡くなっているわ けですから、何にも還元のしようがなくて、次の従業員のためにやっているわけです。 それで、たくさん扱っているので、疫学研究だということで、まさに三要素とも兼ね備 えていますから、これは疫学研究の指針の対象になると考えています。 【丸山委員】  もう1つ、すみません。となると、先ほど、川村先生がおっしゃいま した、35ページから36ページにかけての整理というのは、場とその行為と両側面を 取り入れて、切り分けるという性格のものだと思うんです。それに比べて、これまでの 指針の考え方というのは、その行為を行う人で切り分けていたところが結構多いんです ね。  ですから、35ページの上の臨床の場での観察研究……、量的観察研究で、ここは、 これからは疫学研究と性格づけようとするものなんですが、これまでの経緯を踏まえる と臨床の疫学研究、観察研究のところは、私はその機関の医師がすれば臨床研究で、そ の機関に医師として従事していない者が、公衆衛生専門家、疫学専門家がすれば疫学研 究だと説明していたんですが、そういう事業なり、行為をする者による区別はやめにし て、先ほどおっしゃったフィールド、臨床という場と行為の性格、ここでは質的なもの か、量的なものかというところをあわせて、これからは判断していこうということで、 先ほどの37ページのけいの中の右側の5行が消されたというのも説明は一貫すると思 うんですね。そういう整理というふうに理解してよろしいですか。 【川村委員】  従来も人による区別は意識したことはありませんでした。だれがやる かということは全然問題ではなくて、あくまでも内容だったり、場だったりしておりま すので、従来もだれによって違うかというのは区別したことはないんですけれども。 【丸山委員】  私は逆に何回かそういう趣旨で物を書き、説明してきたものですから、 ここでそういうのはおかしいんだと。先ほどの場と行為で整理するんだということで明 らかに定めていただいたら、それはそれでいいんじゃないかと思います。 【新保委員】  現状では、倫理指針に入っているのは臨床の現場での介入研究という ことで、私の印象ではむしろ危険度といいますか、有害性の可能性というようなことで 分かれているのではないかなという印象を持っていました。例えば、手術や投薬等の医 療行為を伴う介入研究というのが臨床研究の倫理指針に入っているわけで、場というよ りはむしろそういう介入行為の危険度とか、そういったものによって2つの倫理指針が あるということは妥当ではないのかなと感じてはいたんですけれども。 【丸山委員】  臨床研究指針の対象に観察研究も含まれるというのはあると思うんで すが。検査数値を検討して、疾病との関係を把握するとか、そういうようなもの……。 ですから、臨床研究の適用対象が介入研究だけということはないと思うんですが。 【川村委員】  しかし、38ページの細則のところの枠囲みで、右のカラムの一番上 の2つ目のところ、今回消したところですけれども、そこがよりどころとなって観察研 究は……、間違いました、左側ですね。診療と研究のところで、介入を伴わないような 情報を調べると、観察研究は指針の適用ということだったので、普通の観察研究は疫学 指針の対象に入ってしまうと。臨床研究はそれ以外ということで、しかも個別のインフ ォームド・コンセントをすべて必要とするのが原則でしたから、主に介入を伴うものが 残ってしまうと理解していたんですが。 【丸山委員】  そうではないんじゃないかと思うんですけれども。病院内で得られた 検体の検査結果と、その病気の関係を調べるとかというようなものは臨床研究指針の適 用だと思うんです。まさにフィールドが病院……、今の整理だと数的なので疫学なんで しょうかね。いや、臨床研究だと思うんですが。介入の有無で臨床、疫学と分けたこと はなかったんじゃないかと思うんですが。 【山縣委員】  私も丸山先生と同じような形で、私の施設ではやっておりまして、だ から非常にあいまいであったと。一番大きな点は、そのインフォームド・コンセントを 個別にとらなければいけないか、そうではないかという点だけが違っていて、あとは全 部同じという研究は結構あるんですね。それはまさにカルテの研究がそうで、それは臨 床の先生から出されるときは、大概、臨床研究として出されているので、全員にちゃん とインフォームド・コンセントをとってデータを集めてくださいということになってい たと思いますし、疫学研究として出されたときにはそうではない形で審査をしたという のが具体的な例としては挙がっていたと思いますので、観察研究もまさに臨床研究の範 疇の中で審議は行われていたと私も思います。 【川村委員】  ほんとうは、臨床研究の指針とフィールド研究の指針と分けてくれれ ば非常に単純明快になると思います。望ましくは、辻先生がおっしゃったように、一体 にできればそれが一番いいでしょうけれども、そうでなかったら2階部分と1階部分に 分けたほうが多分、臨床家の方にはわかりやすい。臨床家というか、研究者にとっては わかりやすいと思います。  ただ、疫学研究が先にできて、後から臨床研究の指針が追加された段階で、適用と適 用外ということが言われて、適用の条文を読んでいると何か介入研究しか当てはまらな いと読めてしまうんですけれども、そこはつくられた側の意図があるのか、それとも 我々がちょっと理解に及ばないのか、そのあたりが不明確です。  ですから、もし臨床研究とフィールド研究という分け方をするなら、むしろそのほう が明快なんですけれども、ただ臨床研究の指針のほうとの兼ね合いもありましょうし、 従来のいきさつもありましょうから、今すぐ私の意見だけにはよらないと思いますので、 ご存じの方がいらっしゃいましたらご説明いただければと思うところです。 【辻委員】  これは私がかかわっている事例ですけれども、小児の疾病の研究班がご ざいまして、患者さんを全国的に登録をして、その予後を追跡調査しようというプロジ ェクトが進んでいます。研究班の先生たちは皆さん臨床医なので、これは臨床研究だと いう理解です。臨床研究だとガイドラインによると同意が必要だという話に当然なりま す。しかし、同意も得られない患者さんもいる。そこでなかなか登録が進んでいないと いう問題があります。  今の議論を伺っていますと、もしかすると、「これは疫学研究だ」と宣言すれば疫学 研究になって、同意の要件も変わってくるのでしょうか。それならそれでいいんですが、 そういうことを臨床の先生たちにお伝えいただきたいと思います。私はこの委員会のご 議論でよろしいかと思うんですが、その辺を現場は知らないがゆえに研究は進んでいな いということがたくさんありますので、そこはぜひお願いしたいと思います。  もう1つは、37ページの一番上の疫学研究指針の適用範囲として考えられる最低限 の要件ということなんですが。1番目はいいのですけれども、2番目の「受益者は」と いうことですが、疫学研究では将来の患者というよりも、むしろ将来の人々だと思うん ですね。患者と書いたら臨床研究を想定した話になってしまいます。  もう1つは、対象者保護よりも将来の患者に比重を置くということは、研究者にとっ ては非常によくわかる話なんですが、この言葉がそのまま外に出たら、一般国民は動揺 しないかという気がします。つまり、疫学研究の対象者というのは、将来の人々のため にモルモット扱いされるのかという誤解です。これは基本的に誤解なんですが、そうい う誤解をする人は必ずいますし、それによって批判される可能性もあるのではないかと いうことで、この表現は注意が必要ではないかと思います。  3つ目に疫学研究と書いています。しかし、疫学研究の最低限の要件が疫学研究であ るというのは、論理的にあり得ない話ではないでしょうか。この3行を見直してみると、 やっぱり臨床研究もこれと同じなんじゃないのかと。これだけで疫学と臨床を切り分け ることは、おそらく無理だろうと思います。  それともう1つ。長くて申しわけないですが、最初の私の立場に戻りますが、基本的 に今のEBMの時代においては、あらゆる臨床研究というのは基本的には疫学を使わざ るを得ない。典型的な臨床研究がある、典型的な疫学研究がある、グレーゾーンがある という議論自身がグローバルスタンダードから遅れているんのではないか。むしろ、症 例報告以外の臨床研究はすべて疫学研究と定義することは十分可能なわけでありまして、 そこのところをもう一度、教えていただければと思います。 【矢崎座長】  先ほど、疫学研究だとインフォームド・コンセントは要らないという ことではなくて、これは疫学研究指針においても研究対象者に対して研究の目的、意義、 及び方法、機関についてインフォームド・コンセントを得るということが大前提になっ て、その中でなかなかインフォームド・コンセントを文書でとれないケースを規定して、 今まで細かく指針を築いてきたのであって、疫学研究に区分するからインフォームド・ コンセントを少し柔らかくてという切り口ではなくて、研究の本質で分けているわけで す。  ですから、今のご議論は堂々めぐりになってしまうので、川村先生の35ページのフ ィールド研究と臨床の場での研究という中で、観察研究というものが、しかも量的なも のは臨床の場で行われるけれども、疫学研究に入るんではないかという切り分けで、こ れをさらに細かく切り刻んでいくと、なかなかまたその結論はつかないので、先ほど申 し上げましたように、大体の方針はそういうことで具体的にはQ&Aで対応していきた いと考えていますので、よろしくお願いしたいと思います。  先ほどの量的な区分けについては、やはり1つの医療機関内で行われるのか、複数の 施設にわたってデータを収集するのかによっては随分、問題が違いますので、これにつ いては少し検討を要しますので、Q&Aで対応していきたいと思っています。よろしく お願いしたいと思います。  延々と議論すると、大変でございますので、大変恐縮ですが、また後ほどご意見を事 務局のほうにお寄せいただければ、私どものほうで検討したいと思います。  次の倫理審査委員会への付議を必要としない疫学研究について、これについてちょっ と事務局からお願いします。 【二階堂専門官】  それでは、論点10.倫理審査委員会の付議を必要としない疫学 研究について、に関しご説明いたします。  本論点のうち、一部につきましては以前ご議論いただきましたが、論点9を明確にし た上で議論するほうがより深いものになろうということで、改めて論点9の後に本論点 を提示させていただきました。  それでは、最初に本論点の背景にあります事例及び問題点です。第1といたしまして は、疫学研究はヒトゲノムに関する研究や臨床研究に比較して、非常に実施件数が多い。 したがいまして、機関の倫理審査委員会の負荷が非常に大きいということが挙げられま す。  第2に、疫学研究により得られたデータの統計処理という行為は、倫理的な観点から の配慮事項というのは少ないのではないかということが挙げられます。  こうした中、現行の疫学研究倫理指針の規定ですが、疫学研究を実施するときには、 機関の長の許可を受けなさいということ。そして、この機関の長は倫理審査委員会の意 見を聞きなさいということが定められております。  それでは、検討のポイントです。最初に疫学研究の中で、ある基準を満たすものにつ いては倫理審査委員会の付議の是非については、機関の長が判断してはどうかというも のです。そして、この基準についてですが、研究計画、この研究計画といいますのは、 倫理的及び科学的な基準により審査されるものですから、やはり倫理的及び科学的な配 慮が少なくてよいものはどういったものか。こういったことから基準を策定すべきと考 えまして、事務局といたしまして、(1)から(5)に掲げますこれらを基準として提示させて いただきました。  まず、(1)でございます。これは個人情報を取り扱わないもの。具体的には、既に連結 可能匿名化されている情報を収集する場合ですとか、無記名調査といったものでござい ます。次、(2)といたしまして、ヒト由来試料を用いないもの。(3)といたしまして、観察 研究。(4)といたしまして、人体への負荷・介入を伴わないもの。そして、(5)といたしま して、研究対象者の意思に回答がゆだねられているものであって、その質問内容により 研究対象者の心理的苦痛をもたらすことが想定されないものでございます。  検討のポイントの最後ですけれども、これは一連の研究の流れに直接タッチしない。 データの統計処理等を行うような機関については、必ずしも倫理審査委員会の付議を必 要としないのではということでございます。  以上でございます。 【矢崎座長】 いかがでしょうか。この5つの項目と、それから実際に研究の立案にか かわらない、データの統計処理のみを請け負う機関についてでございます。何かご議論、 ございますでしょうか。この(1)から(5)まで要件をすべて満たす研究計画にあっては、機 関長が判断……、倫理委員会をパスしていいというのではなくて、機関長が倫理委員会 の意見を聞くかどうかについて判断すると。  位田先生、どうですか。 【位田委員】  少し厳しめの意見を申し上げたいと思うんですが、議論のためだと思 っていただいたほうがいいと思いますが。基本的に人を対象にして、介入するかしない かは別として、何らかの研究を行うときには、やはり倫理審査が要るというのが大原則 だろうと思うんですね。  それで、例えば事例・問題点のところに書いてある倫理審査委員会の負担が大きいと いうのは、これは付議しなくていいという理由にはならない。もし、負担が大きいので あれば、それなりの審査の簡便化とか、簡略化ということで対処するべき話なんだろう と思います。  それから、同じことは事例・問題点の2つの目の○のところで、統計処理のみを請け 負う機関であっても審査をしないといけないので、これも大変だという話なので、ここ はそういうものを疫学研究の範疇に入れて審査をするのか、しないのかという基準さえ つくればいい話なので、本来、入るんだけれども付議を必要としないという話ではおそ らくないんだろうと思います。  それから、(1)から(5)まで、これをすべて満たす場合には倫理的及び科学的……、それ ほど配慮を要しない研究計画という言い方ができるのかどうかというのは、ちょっと疑 問に思うんですけれども。つまり、倫理的に何らかの要素があれば、倫理的に低いとか 高いとかという話ではおそらくないので、そこは審査でどこを審査するかという話だろ うと思いますので、こういう書き方は適切ではないんじゃないかと思います。  それから、(1)ですが、すみません、言うだけ言ってしまいたいと思いますが。既に連 結可能匿名化されている情報なんでしょうか、連結不可能匿名化なんでしょうか。これ は連結不可能匿名化の話ではないかなと思って聞いていたんですが、これは連結可能で いいんですか。 【吉川課長補佐】  40ページの注というところ、(1)の下のところに書かせていただ いているんですが、既に連結不可能匿名化をされている場合につきましては、これはも とからこの疫学研究指針の対象外となっています。今、ご議論いただいていますのは、 疫学研究指針の対象内に取り込まれているものということになりますので、そうなりま すと、ここでは連結可能匿名化ということで提案をさせていただいております。 【位田委員】  その連結可能匿名化というのが、個人情報保護法及びその関連の指針 の範囲内では、1つの機関の中で対応表があれば、例えば大学なら大学の中で対応表が あれば、それは個人遺伝情報という取り扱いなので、こういう形で整理をされると少し そごがあるかなと思います。  それから、確かに無記名調査で個人情報を取り扱わないとはいうものの、名前だけを 書かないで、住んでいる地域と、年齢と男女の性別を書くという調査をやりますと、か なり特定される可能性があるので、無記名調査だからといっても、調査の仕方によって は必ずしも外れないんじゃないかなという気がしていますけれども。  それと、(5)のところで研究対象者が心理的苦痛を味わうかどうかというのは、これは 非常に主観的なものですから、だれが判断するかというと、これはやっぱり対象者が判 断するしかないんだろうと思うので、例えば機関の長が判断するというのは、実は違う んだろうと思うんですね。  最後に、機関の長が付議するかどうかを判断するというのは、基本的に倫理審査委員 会というのは中立、独立というのが基本的な地位だと思うので、それを機関の長が判断 するというのは、別に機関の長が悪気があるとは思いませんけれども、やはり中立性、 独立性というのは疑われますから、そこはむしろ倫理的にまずいやり方なんじゃないか なという気はします。  そういう意味で、確かに全部を完全に倫理審査委員会を開いて審査するというのは大 変だろうと思いますから、何らかの簡略の方式もしくは簡便制度を導入しておやりにな るのが一番いいかなとは思いますが。  つけ加えますと、人文社会科学の研究だって倫理審査が要るという傾向が今、出てき ていますので、もちろん必ずしもすべての研究ではないにしても、そういうことも考え ると、やはり付議しないというのが少し行き過ぎかなという気はしていますけれども。 【矢崎座長】  そのほかいかがでしょうか。はい、どうぞ。 【川村委員】  今の位田委員がおっしゃったことの中で、(1)ですけれども、これは既 に連結可能匿名化ではなくて、新たに連結不可能匿名化するものだと思います。つまり、 最初から連結不可能なものはもちろん指針の適用外だし、連結可能匿名化は実質的には 匿名化ではない扱いをしているかと思いますので、それは略せないと思いますから、新 たに研究のために連結不可能匿名化状態にして収集するものという意味だと思います。 つまり、研究者レベルでは匿名情報しか持てないという意味だったら通ると思いますが。 【吉川課長補佐】  今の点、位田委員と川村委員の補足をさせていただきます。事務 局で、(1)で想定しておりましたのが、位田委員よりご指摘がありましたとおり、当然、 機関内のものであれば個人情報となってしまいますので、機関外から既に連結可能匿名 化されている情報を収集する場合といったようなことを想定しておりました。  そして、また川村委員からこれから連結可能匿名化をするものではないかということ で、今ご意見がございましたが、事務局として考えておりましたのが、新たに連結可能 匿名化する場合は当然、研究のスタート時点で個人情報を取り扱うと。いわゆる、診療 情報みたいなところから匿名化をする作業からスタートしますので、そういったような 場合は当然、個人情報を取り扱うという中で整理されるのかなと考えておりまして、そ こは当然、どのような匿名化を行うかということも研究計画の中で出てくるのかなと思 いましたので、このような整理をご提案させていただきました。 【川村委員】  私が申し上げたのは、連結不可能匿名化にすると言ったんです。連結 可能匿名化にすると言ったんではなくて、連結不可能匿名化にするとさっき申し上げた んです。 【吉川課長補佐】  その点も全く同じでして、個人情報がスタート時点では存在する というところは連結不可能であろうと可能であろうと、そこは同じところからスタート しますので、研究の開始時点では個人情報を取り扱いという中で整理をされるのかなと 考えております。 【川村委員】  そうではなくて、医療機関では個人情報を持っているので、研究者に 提供する段階で連結不可能にするという意味なんです。だから、結局、同じことだと思 うんです。最初から匿名化しているわけではなくて、研究のために連結不可能匿名化情 報を集めるんだけれども、各医療機関ではカルテの情報がそのままあるわけだから、連 結不可能匿名化にして送るということです。だから、連結不可能匿名化にして送ると。 不可能というのは研究者のレベルで不可能という意味ですから、研究者として入手する 段階では最初から連結不可能です。だけど、医療機関では連結ができてしまうので、研 究に当たって同定情報を切り離してしまって送るという意味ですが。 【吉川課長補佐】  おそらく連結不可能、可能の考え方というところだと思うんです が。連結不可能匿名化というのが個人情報の中でもいろいろと検討するときに整理をさ せていただいたんですが、いわゆる対応表がどこにもない場合ですので、もう二度と対 応できないと。どこにその対応表があるかどうかは別としまして、自分のところにない ので連結不可能という考え方ではなくて、どこか別の機関で対応表があれば、それは連 結可能匿名化のカテゴリーに入ると。ですから、連結不可能匿名化というのはどこにも 対応表がないという状況を我々として整理をしていましたので……。 【川村委員】  それはあり得ないと。連結不可能というのは、主治医の頭の中には絶 対対応表が残るので、完全であれ、不完全であれ。だから、連結不可能匿名化というの は研究者レベルで持っているか持っていないかにしないと定義ができない。 【山縣委員】  連結可能匿名化のコードしたものをまた別のコードにして、その対応 表がなければ連結不可能匿名化で、要するにもう二度ともとには戻れないという話と僕 は理解をしているんですが。そのコード化されたものをまた新たに、今度は連結不可能 として存在するので、そこはそのコードされたものとの対応表はどこにもないという、 それが連結不可能匿名化という2段階の匿名化という理解なんですが、それはおかしい でしょうか。 【川村委員】  各医療機関で連結表というのは紙に書いたものであれ、主治医の頭で あれ、これをなくすことはできないので、提供を受けた研究者のレベルでは個人にはど うやってもさかのぼれないというものでないと、定義ができないんじゃないかと思うわ けです。 【山縣委員】  研究者だけではなくて、それを返したときに医療の現場でもだれかに は戻れないということになると思いますが。連結不可能匿名化というのは、今、事務局 からあったように、対応表がどこにも存在しないということで、それは連結可能匿名化 されたものを、さらに連結不可能匿名化することは可能であるというのが私の認識です。 【丸山委員】  川村先生のお考えの研究協力者というのは、医療にかかっている人で、 医療にかかっていない協力者を、あるいは協力者からのサンプルを使った研究だと、医 療者がいないので頭に対応表が残るということもないんじゃないかと思うんですが。 【川村委員】  おっしゃるとおり、全部が頭にあるというわけではないです。ですか ら、医療機関ベースの研究とか、事業所ベースの研究だと番号だけで返しても、もらっ たほうはだれだというのはわかってしまうので、厳密な意味での連結不可能はあり得な いだろうということで、それではどこのレベルのことを連結不可能と言うんだろうなと。 定義できるとしていたら、研究者しかないんじゃないかということで、自分はそういう ふうに最近は理解していたんですけれども、それが適切でないということであれば、あ らゆるところに連結表がない、紙というか、電子媒体とか、いわゆる第三者に見せられ る形でないというんだったら、それをどこかに書いていただけると、そのような認識も できるかと思います。 【吉川課長補佐】  一応、現行の指針の定義の中で、連結可能匿名化、連結不可能匿 名化というところもございまして、参考資料に指針をファイリングしてございますが、 その指針の中の19、20ページに連結可能匿名化と連結不可能匿名化の定義をお示し しております。その中で、連結可能匿名化というのが、いわゆる新たに付された符号と か番号の対応表を起こす方法による匿名化で、20ページのほうに連結不可能匿名化と いうのがありまして、個人を識別できないように、その人と新たに付された符号または 番号の対応表を残さない方法による匿名化と定義をしております。この残さないという のが、研究者の頭に残さないというところまでは、実のところ考えておりません。いわ ゆる、何らかの記録媒体というようなものの範疇でということで考えております。 【川村委員】  どこに残さないかというのがわからなかったので、これは研究者のこ としか書いていない指針だったので、それで研究者としか理解できなかったんですけれ ども。要するに、情報発生源、つまり研究者の範囲を超えて主治医なり、事業者なり、 情報の発生源においても残さないと理解すればよいということですね。わかりました。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。 【丸山委員】  1つ、よろしいですか。今の定義を踏まえると、連結可能匿名化され ている情報で個人情報を取り扱わないということですから、連結可能匿名化して個人情 報でなくなった場合ということなんですね。ですから、2004年の改定の際の整理だ と、当該研究者が属する研究機関に対応表がない場合ということでよろしいんですね。 それを書いておかないと、既に連結可能匿名化されているとだけ記されていると、ちょ っとわかりにくいじゃないかなと思いましたけれども。 【位田委員】  さっきの事務局のご説明で、既に連結可能匿名化されている情報を収 集する場合というのは、機関外からの収集ということに限定して考えられているわけで すね。つまり、機関内は当然、連結可能匿名化のままですから……。 【吉川課長補佐】  当然、個人情報という扱いですから……。 【位田委員】  そういうことですね。それから、山縣先生のおっしゃったケースは今 まであんまり議論されていなかったように思うんですけれども。Aさんイコール123 番というのがあって、これは普通の対応表ですよね。それがダブルコーディングしても、 とにかくダブルコードした後も続いていれば連結可能ですが、例えば123番イコール ABCというコードをつけて、123番とABCの間で対応表をなくして、連結が切れ ている。そういう趣旨ですよね。そうすると、ABCとAさんというのはどうやっても 結びつかないから連結不可能匿名化。おそらく、それは妥当な考え方だろうと思うんで すけれども、ゲノム指針のときはそういうことまではしなかった記憶があるんで。私が 忘れているだけかもしれませんけれども。 【矢崎座長】  そうしますと、先ほどの事例問題点で少し文言を変えて、倫理審査委 員会に案件を上げるときに、プライオリティーを、優先順位を決めるとか、そういうこ とで各大学とか、そういうところは決めてあると思いますので、あんまり直接的にこう いう表現は妥当ではないという位田先生の話で、そこは修文させていただくということ ですけれども、位田先生のご意見ではありますが、研究機関長がある程度、しっかり把 握、グリップしておくというのが重要であって、今まで責任の所在が明確でない場合が 多いので、この場合は機関長がしっかり把握していただきたいということでございます。  それで、コメントとしては機関長のみで倫理委員会に諮問するかどうか決めるという のがなかなか透明性、公平性が保てない可能性があるんではないかというご疑問があっ たと思います。  それと、心理的苦痛をもたらすというのは当然、研究者ではなくて、対象者という意 味にとっていただければ大変ありがたいと思います。  それで、どうしますかね。今までずっと機関の長が判断するということで来ましたけ れども、透明性を保つ意味で何か特別に付議することはありますでしょうかね。 【丸山委員】  位田先生の発言は正論だと思うんですね。ですから、というか、これ まで迅速審査が多くの研究機関ではあまり使われてこなかったんですが、迅速審査に関 する規定で指針の6ページから7ページなんですが、7ページの上のほうに研究対象者 に対して最小限の危険を超える危険を含まないという二重の否定のまずい文言がまだ残 っているんですが、ともかく最小限の危険ぐらいしかない研究計画の審査については、 迅速審査でよろしいというのが当初から入っておりますので、今、提案されました40 ページから41ページの要件を満たすものについては最小限の危険以下のものしか、そ の研究にはリスクが含まれていないということで、倫理委員会の少なくとも1人の委員 の判断は受けておくほうが全体的な格好というか、制度的整合性は保てるんじゃないか なと考えますが。 【矢崎座長】  わかりました。そもそも疫学研究というのは侵襲とかそういうものを 与えないのが前提ですけれども、やはり今のご意見をいただいて、審議ではなくて何か 修文をして、ちょっと方向性のポイントをお示ししたいというふうに、今のご意見を十 分斟酌して行いたいと思います。 【森崎委員】  今、幾つか言われた意見は正論だと思いますが、特に共同研究で請け 負う機関が含まれている場合に、そこの機関でなくて、特定の決められた機関で審査を してもいいということが今回議論されていますのでよろしいのですけれども、機関の長 が判断をするかわりに、条件についても倫理審査委員会で議論をした上で、それに合致 する場合には判断をするというような項目もあってもいいんではないかと。特に、5項 目以外に3番目の○にあるような事例を、付議を必要としないとここで決めるかどうか についても、その機関あるいは倫理審査委員会であらかじめ規定をするということでも、 事実上は倫理的な問題が生ずる恐れが少ないのではないかと思いますけれども、いかが でしょうか。 【矢崎座長】  そのデータの統計処理のみを請け負う機関についても、そういうこと なんでしょうか。 【森崎委員】  それは両方、議論をされていると思ったんですけれども、そうではな いんでしょうか。今の5項目だけの話という理解を……。 【矢崎座長】  5項目だけの話で。 【森崎委員】  ああ、そういう意味ですか。 【位田委員】  基本的に倫理委員会が大変なのはよく理解していますので、どうやっ てスクリーニングするかという話だと思うんですね。今、森崎委員がおっしゃったよう に、幾つかの基準を設けて、この基準に該当する場合には倫理審査委員会に付議しない とか、付議するとかという話よりも、むしろ基準は何か立てていただいて、その上でこ の基準に合致しているかどうかを、例えば倫理委員会の委員長なり、倫理委員で担当の 委員がいて、そこでスクリーニングすると。スクリーニングされて、これは、例えば3 人の審査で済むとか、それともプリナリーの委員会でやるとか、その辺の切り分けをす れば倫理委員会の負担が大き過ぎるということにはならないんじゃないかなと思います。  それから、場合によっては、倫理委員会の下にスクリーニング委員会のようなものを 置いて、倫理委員でない人が倫理委員会の業務を請け負って、それなりの専門家である 必要はあると思いますけれども、スクリーニングをするかどうか。それは倫理委員会の 中の組織としてやるべきなんだろうと思うんですね。それを機関の長に投げてしまうと、 どこからどう言われても、やはり不公平さというイメージはつきまといますので、そう いう意味では倫理委員会の中で全部、手続はやっていただきたい、そういうことです。 【矢崎座長】  それでは、そういうことで。倫理審査委員会の審議となりますと、定 足数とか、いろんな問題があって難しいので、そういう意味で意見を聞くかどうかとい うのは審査をするんではなくて、今、おっしゃられたようなスクリーニング的な意見を 聞いて、研究機関の長が判断するということにさせていただければと思います。よろし いでしょうか。  次のデータの統計処理のみを請け負っている機関については、上の5項目の縛りがな くても、倫理委員会への付議は要らないのではないかという問なんですが。全く、論文 の執筆とか、公表とか、分析などには直接かかわらないで、請け負う機関については… …。 【川村委員】  1つの考え方としては、前回、少しご紹介しましたように、第三者委 託の扱いをすると。外注で入力を頼むと同じ扱いで、契約書を結んで、守秘義務とかそ の他の情報の取り扱いを含めた上で扱って、一部の業務を受託ということならほかのも のと整合性を失わないんじゃないかと思います。 【矢崎座長】  それでは、そういう方向でまとめさせていただきたいと思います。  続いて、教育を目的とした疫学研究について、お願いします。 【二階度専門官】  それでは、論点11.教育を目的とした疫学研究についてご説明 いたします。本論点は学生実習など、教育を目的とした疫学研究の位置づけをどうする のかというものでございます。現行の指針には、こうした研究について特段の規定はご ざいません。  それでは、検討のポイントです。最初に、教育を目的とした疫学実習は同じカリキュ ラムで実施されるのが通例であり、答えも既にわかっている。そして、その答えに至る プロセスを経験することが目的であると考えられます。すなわち、教育を目的とした疫 学実習は新規性などに欠けていると考えられて、「研究」に該当しない。よって、疫学 研究倫理指針の対象とならないのではないかというものでございます。  次に、しかしながら学部生、大学院生、ドクター生と、学生のレベルを問わずに、指 針の対象とすべき研究を実施する場合には、やはり現行指針と同様の措置でありますイ ンフォームド・コンセントの取得ですとか、倫理審査委員会の付議、こういったものが 必要となるのではということでございます。  最後に、学部生などやはり研究のスキルが未熟と考えられる者がございますので、こ うした者に対して指導者の責務について規定するべきではないかというものがございま す。なお、仮に教育を目的とした疫学実習がこの指針の対象から外れるとなった場合に おきましても、ここの参考に掲げております、これは21世紀における医学・歯学教育 の改善方法と呼ばれる、いわゆるモデルコアカリキュラムがございまして、このモデル コアカリキュラムにおいて、一定の倫理的な配慮がなされるものと考えております。  以上でございます。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。以前、議論になったのは学生実習のときに行う研 究は、実習についてはもう結論もわかっているし、正論に達するまでの訓練をすると。 しかし、大学院の学生などが研究を進める場合には、やはり通常の倫理指針に従ってや るべきであり、教育というのが広い意味の教育ではなくて、実習を行う場合にはこの倫 理規定は必ずしも指針に従わなくて、演習として行う場合には対象外にしていいのでは ないかということですが。よしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) 【矢崎座長】  それでは、そういうことにさせていただきまして、12番目の研究対 象者の保護について、よろしくお願いします。 【吉川課長補佐】  資料の44ページでございます。研究対象者の保護ということで、 研究対象者の保護について、疫学研究指針においてどの程度言及すべきという論点を提 案させていただきました。  この論点の背景といたしまして、今年度スタートいたしました第3期科学技術基本計 画に基づき、定められました分野別推進戦略におきまして、その中で臨床研究の推進と いうことが取り上げられております。そのための取り組みの1つとして、研究の被験者 の参加の促進ということが挙げられておりまして、そのための方策の1つとして、被験 者の保護ということが提起をされております。ただし、これはいわゆる創薬とか、そう いったような研究を促進するということを目的としております臨床研究ということの促 進の背景の中で出てきたものですので、必ずしも疫学研究に該当するということではご ざいませんが、このような昨今の情勢もございまして、今、まさに指針の見直しを行っ ている中で、この疫学研究の中ではどういったようなご議論をしておいてもらうべきか ということで、ご提案をさせていただきました。  現行というところにもございますとおり、既に現在でもインフォームド・コンセント をとっていただきまして、その中に例えば研究に参加をすることによって起こり得る危 険、それからまたは不快な状態ということがあれば、それは説明をしてくださいという ことを求めておりますし、また研究対象者に危険、または不利益が生じた場合につきま しては、研究責任者が研究機関の長を通じて倫理審査委員会に報告をするということを 規定してございます。  すなわち、疫学研究という中で、手術、投薬といったような比較的リスクの高い介入 はこの指針の対象ではございませんけれども、いわゆる臨床研究では被験者の保護とい うことが昨今、うたわれてきておりまして、どの程度、この指針で言及すべきかという ことを検討のポイントの中に書かせていただいております。  検討のポイントの2番目の○でございますが、1つ案といたしまして、現行、疫学研 究指針にはなくて、臨床研究指針の中で規定をされているものがございまして、それが 研究計画書及びインフォームド・コンセントの説明事項の1例として提起されておりま す、「当該研究に伴う補償の有無(当該研究に伴う補償がある場合にあっては、当該補 償の内容を含む)」という事項を臨床研究の中では規定をしているところでございます。  したがいまして、疫学研究の中で必ずしも補償が必要というような研究ばかりではご ざいませんので、仮にもそういったような研究対象者に危険や不利益が生じる可能性が 考えられるといった場合については、あわせてこのような内容をインフォームド・コン セントで説明をしていただくような必要があるということを今回、追加をしてはどうか と考えてございます。  また、3番目の○でございます。この点につきましては、第1回目にも少し触れさせ ていただきましたが、厚労科研費の特別研究におきまして、指針の運用、遵守状況とい ったことを現在調査をしております。それで、第4回目ぐらいには何らかのものがお示 しできるかというふうに、当初、考えておりましたが、回答の収集に相当時間がかかっ ております。と申し上げますのは、回答の締め切り以降にも大分、皆さんからたくさん の回答を寄せられているというような状況でして、収集したデータをお示しするという ことにまだ至っておりません。  それで、私のほうが粗集計的に今、上がっているものを確認させていただきまして、 大体、皆さん、運用遵守内において、比較的よく運用していただいているという結果は 出てきているんですが、ひとつこの指針の規定にもないということもございまして、結 果があまりよろしくないというものがございました。  これが3番目の○にありますように、有害事象が生じた場合の対応手順というのをあ らかじめ定めているかどうかということをお聞きいたしましたところ、約半数近くの機 関において、こういったような定めがない。一方で言えば、指針に規定はないけれども、 半数ぐらいの機関についてはこういったような規定を定めて、答えをいただいていると いう状況でございます。  したがいまして、疫学研究でどれほどの有害事象というのが生じるかということは、 なかなか臨床研究とは違うという側面もございますので、すべからく義務づけるという のは難しいと私どもは考えておりまして、ここでは例えば実施される疫学研究の内容を 踏まえて、必要に応じて機関の長があらかじめ手順を定めておくということを規定して はどうかと考えてございます。  もちろん、現行の指針の中でも、倫理審査委員会に何かが起これば報告しろというこ とは規定されておりますが、重ねて何かあったときに漏れることがないように、そこは あらかじめ倫理審査委員会に報告するなり、機関の長に報告するなり、またはその後ど ういったような手順をとるのかといったようなことを定めておく必要もあるではないか と考えて、このようなご提案をさせていただいた次第です  以上でございます。 【矢崎座長】  この課題は、そもそも侵襲の大きな手術とか、投薬などの医療行為の 介入を行わない疫学研究ではありますけれども、やはり研究対象者、被験者の保護の立 場から、臨床研究の指針に書き込みがあります補償の有無などについて、疫学研究にも そういう条文を入れたほうがいいんではないかということでございますが、それによっ て疫学研究はなかなか進まなくなるんではないかとか、そういうことはございますでし ょうか。 【辻委員】  例えば私どもが行っている研究では、高齢者の介護予防の運動トレーニ ングなどを介入研究としてやった場合は、トレーニングの前後に転んで骨折するとか、 あるいは血圧が上がり過ぎるとか、そういった可能性は常にあるわけです。もちろん、 リスク管理をした上でのことで、発症率はそんなに高くないかもしれないけれども、な いわけではない。そういった意味では、このような補償について明記するということは 非常に重要なことと思いました。  以上です。 【矢崎座長】  補償といいましても、医師主導の治験のときにもすごく大きな課題に なったんですが、補償する主体とか、どういう経済的な基盤があるかとか、そういうの がなかなか難しい課題だと思うんですが。 【山縣委員】  実際に今、辻委員が言われたように、私たち、そういうのをやるとき には、いわゆる保険に入るというのが実際にあって、その機関の中で、少なくとも医療 行為なり、それを指導するときに、参加者の方に何かあったときに補償できるような保 険に入っているということは実際に多くの研究ではされているんですが、そういうこと を明記するかどうかということも含めてだと思うんです。  私は、あえて、ないものに対してないということまで言う必要があるかどうかという 点に関しては、それによってもしも研究が滞るようなことがあるのであれば書く必要は ない。つまり、どういう場合にそういう保険に入る、入らないかというところが非常に あいまいであるために、すべてにするということがなかなか難しいのではないかなと現 実的には思っております。  ただ、実際には今、辻委員が言われたみたいな、保険に入って、そして私たちはイン フォームド・コンセントに何か事故があったときにこういう形で補償されていますとい うことを記載したりはしていることがあります。 【矢崎座長】  そのほか、いかがでしょうか。 【中村委員】  具体的には、補償の有無の話とか、それから最後の項目の健康被害が 出たときどうするかという話については、これは介入研究しか該当しないような気がす るんですね。観察研究というのはあくまでも対象者を疫学者が観察をさせていただくと いうことなんで、例えば少し採血なんかをするといったこともあって、そのときに不測 の事態が起こるという可能性もないわけじゃないんですけれども、あまり大きな問題は 起こらないだろうと。  そういう意味では、辻先生がおっしゃったような形で、介入をしたときに不測の事態 が起こるかもしれない。それに対して、これだけの備えをしていますということ。ある いは、それが起こったときに組織としてどう対応するかということをあらかじめ定めて おく。こういったことについてはむしろあってしかるべきではなかろうかと私自身は思 っております。 【矢崎座長】  それでは、すべての疫学研究にこの補償云々というのを書く必要はな いかと思いますので、臨床研究指針の規定を踏まえまして、研究対象者に危険とか不利 益が生じる可能性が考えられる場合には、研究計画書及びインフォームド・コンセント の説明事項として当該研究に伴う補償の有無を追加するということを項目に入れると。  それから、後段の、やはりそういう事態が起こったときに、研究機関長は有害事象が 生じた場合の対応手順などをあらかじめ、もちろん疫学研究の内容を踏まえて、必要に 応じてそういう手順をあらかじめ定めておくというような指針に加えさせていただきた いと思います。  いかがでしょか。 【位田委員】  この場合の危険とか不利益というのは健康被害のみを指すんでしょう か。例えば、疫学研究で個人情報が漏れるとか、疫学研究に参加しているということが わかった場合に、何らかの差別を受けるとか、社会的に不利益な取り扱いがあって、そ の結果、何らかの損害が発生する。そこは考えなくていいんでしょうか。臨床研究は確 実に健康被害だと思いますけれども、疫学研究はそうではないので。 【矢崎座長】  ですから、研究対象者に危険や不利益が生じる可能性ということの中 に、健康被害と、もちろん今おっしゃられたような不利益を含めた、広い範囲で……。 【位田委員】  そうですね。 【矢崎座長】  とっていただければありがたいと思うんです。 【位田委員】  それが起これば補償しますという形ですね。 【矢崎座長】  そうですね。 【丸山委員】  リスクが予測できる場合にということであれば、要件としては一律に 課しておいて、リスクがないものについては、その予測が正しければ現実に有害事象は 被験者に起きないでしょうから、補償の必要は出てこないんですね。場合によって分け るんじゃなくて、一般的にインフォームド・コンセントにおいて補償の用意がどういう ものであるかということを説明するとしたほうが、この臨床研究の指針のこの部分につ いてはヘルシンキ宣言の規定などを参照にして取り込まれたかと思うんですが、その後、 新しいCIOMSのガイドラインでもインフォームド・コンセントの説明事項として、 この補償、コンペンセイション(compensation)の内容、あるいは有無について説明 すべきということになっていますので、場合には分けずに一般的な要件とされるほうが 国際的な整合性というか、いいんじゃないかなと考えます。  CIOMSの現在、パブリックコメント募集中の疫学のガイドラインにはコンペンセ イションの事項が上がっていないんですが、CIOMSのガイドラインは疫学研究も含 めて一般的なガイドラインがすべての研究に適用され、プラス疫学研究については疫学 のガイドラインが追加的に適用されるということで、日本の指針のつくりとちょっと違 って、基本的にすべての研究が一般的な2002年のガイドラインの適用を受けますの で、そのあたりも踏まえると、場合に分けずに一般的に説明要件を課して、それによっ て実際、研究者側に負担が増えるということはないと思われますので、そちらのほうを お考えいただきたいと思うんですが、いかがでしょか。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。実際に大規模なフィールドのときに、位田先生が 言われたような広い意味の不利益で何かあったときに補償しますということが現実的に 可能かどうかですね。 【丸山委員】  起こらないという想定ですので、可能な……。 【矢崎座長】  いえいえ、ですから……。 【丸山委員】  逆に起こる場合を想定しないといけないと思うんですね。 【矢崎座長】  我が国では、ボランティアで疫学研究を進めるというのはなかなか難 しい部分もあるので、私がこれを全部書くということによって、研究がやりづらく……、 フィールド研究の先生方、どうですかね、それについて。 【川村委員】  私どものところでは、研究計画書に書くべき内容の中に、研究によっ て新たに加わる侵襲と予想される有害事象という項目を、計画書と対象者への説明文書 に書くことを求めていますので、書いたからといって……、書き方に工夫が要るのはた しかですけれども、そのために研究が実施しにくいということはないと思います。 【矢崎座長】  有害事象はいいんですか。補償という……。 【川村委員】  補償も多くの場合、さっき辻委員が言われたように、骨折とか起こり 得るんですけれども、そういうときは保険に入るか、健康保険で対応しますという書き 方をしてあるのも結構あります。ただ、情報漏洩とか、そういうものになると、補償の 仕方がよくわかりませんので、どういうのが解決策かわかりませんが、身体的な障害が 生じた場合はわりと形が目に見えるので、損害保険に加入するか、あらかじめ対象者の 了解が得られれば、健康保険で対応しますということで、大体、今のところはそのどち らかになっているかと思います。 【辻委員】  繰り返しの部分がありますが、基本的には介入研究に限って補償を明記 するというところでいいと思います。  観察研究につきましては、先ほど川村先生がおっしゃったような、個人情報の漏洩と いうことはあり得るわけです。例えばコホート研究では数万人の方についてフィールド 調査をして、その後、10年以上もの長期にわたって、追跡しているわけです。万一、 データが流出したときどうするかということですが、どのようなリアクションが対象者 から来るのか。訴訟ということもあり得ると思いますが、どのようなことが起きるのか が想定できない以上は、そしてそのために長期間、保険に加入し続けるというのは、現 実的には難しい状況だと思います。観察研究については厳密に考えずに、介入研究では 補償を明確にする方がいいと思います。 【丸山委員】  ちょっと異論があるんですが。今のおっしゃりようだと、研究者の負 担が考えられないから書けないということですが、それなら協力を求める研究対象者の ほうの被害はどういうふうに対応せよということになるのか。それでは、やっぱり研究 対象者はかわいそうじゃないかと思うんですが。それよりは、むしろ率直に書いて、で きるだけのことを研究者がなさるほうが研究の推進になるんじゃないかと思うんですが、 いかがですか。 【辻委員】  いや、全くおっしゃるとおりなんですが、実際に例えば5万人、10万 人の人にアンケートに答えていただいて、その後、長期間追跡する場合、その情報が漏 洩したときに、どういうふうに補償をするのかということが、私にはイメージできない ので、むしろその辺を教えていただきたいのですが。 【丸山委員】  以前から、国立がんセンターとかの先生は「保険が確保できないため に、補償のことが明確にできない」とおっしゃるんですが、国のナショナルセンターと か、あるいは国立大学法人が経営するところというのは、生半可な保険会社よりも資金 では安定したものを持っていると思いますから、自己で対応するというのが、特に国立 機関だったら国で対応するというのが社会的な公平に合致していると思うんですね。で すから、東北大学も大学としてやれることをなされば、それだけで非常に大きな社会的 非難を受けるということはないんじゃないかと思うんですけれども。民間の小規模な、 資金力の小さな方がなさるんであれば、その点、心配なんですが、大きな大学の場合、 実施機関として、特に個人情報保護法の考えでは、機関としての責任ということを表に 出していますから、そこで対応できるんじゃないかと私は考えておりますが。 【矢崎座長】  なかなか具体的には困難な場合が……、補償ありと書いたときですね、 私たちの機関を信用してくださいということになってしまうかもしれません。 【丸山委員】  ありなしのどちらを書けというのは、指示はないんですね。現実の姿 を書いてくださいというのがこのヘルシンキ宣言なり、臨床研究指針なりの精神ですか ら、それを率直に研究協力者になってくれそうな人に示してほしいという考えなんです が。 【中村委員】  実際にそういう事故が起こったときには、丸山先生がおっしゃるよう な対応だと思うんですけれども、委員長がおっしゃるように、あらかじめそれを示すと いうことはかなり難しい話じゃなかろうかと思っております。  それと、もう1つは、例えば先ほど辻先生がおっしゃったように、介入して、転倒し て、骨折したような事故と、それからデータの流出。そういったものは、やっぱり分け て考えなければいけないんじゃなかろうかと思っています。  実際に介入によって起こるようなものについては、一定の確率で起こり得るというこ とで、保険を掛けていますというような話が出てくると思うんですけれども、データの 流出については事故で起こるのか、それとも犯罪行為で起こるのかわかりませんけれど も、それについてはむしろ対象者保護というよりはデータのセキュリティーをこうやっ て確保していますということを、あらかじめ研究計画書に書くべき話だと思うんですね。  例えば、うちの大学でやらせているのは、基本的にはスタンドアローンのコンピュー ターでデータ処理をするように、外部に接続しないものでやるようにと。あるいは、デ ータについてはきちんと施錠をしたところに保管するといったようなことをさせていて、 それでも何か起こったときにはこれはある意味で仕方がないですねというような、むし ろ起こらないようにこれだけのことをやっていますということをきちっと事前に、対象 者に示すほうが大切じゃなかろうかと私自身は思っております。  実際に、そこでそういう事故が起こったときには、丸山先生がおっしゃるように、組 織として誠心誠意対応するということしかないんじゃなかろうかと思います。 【位田委員】  個人情報が漏洩するというセキュリティーの話と、それから介入研究 でなるべくそういう危険を避ける、ないし不利益を与えないようにする、健康被害を起 こさないようにするというのは、同じ質の問題だと思うんですけれども。体に傷が行く のか、もしくは情報が漏洩して、社会的な不利益を受けるのか。不利益に差があるだけ で、それでは体のほうはセキュリティーというよりもむしろセーフティーかもしれませ んが、そういうことをやらないのかというと、やるわけですよね。それはそれで書くわ けですよね。セキュリティーだって書きますから、そうするとどこが違うのかというの は、私はそんなに違わないと思うんです。セキュリティーを幾ら頑張っていても漏洩す る可能性はありますから、当然、保険に掛かろうと思えば掛けられるわけですね。別に 私は保険屋をもうけさせようと思っているわけではありませんが。  要するに、疫学研究に参加する人が、この研究であれば補償のことまで書いてあるの で、安心して入りましょうと思うか、もしくは何も書いていないけれども起こったら裁 判で賠償を取ろうと思うか、ちょっと極端な言い方をしましたけれども。どういうやり 方をとっていても、最後は訴訟が起きるということは、当然、あり得るわけですよね。 むしろ、そういうことが起こらないように、安心して入っていただくように、補償とい うのを一般的に書いておくということのほうが私は疫学研究をやりやすいんじゃないか なと思います。  それから、非常に大規模な疫学研究をやるというのは、それはそれなりにお金もかか って大変でしょうけれども、だからといって補償をやらなくていいという話には、おそ らくならないと思うんですね。その点では、私は丸山先生のご意見に賛成いたします。 【中村委員】  同じレベルで考えるということについては、そういう考え方もあるか なと思うんですけれども、補償するときに、例えば介入によって起こった身体の事故と いうのはどの程度までということがあらかじめ予想がつく話だと思うんですね。例えば、 治療費は全部面倒を見ます。そのために休んだ休業補償もします。若干の慰謝料も出し ます。したがって、そこで保険という考え方が成り立つと思うんですけれども。  データが流出したときにどういうことになるのかというのは、これはある意味で想像 がつかない。そういう意味で、保険といった形で成り立つのかしらという感じがするわ けですね。そうすると、最終的には先生がおっしゃるように、裁判という形にならざる を得ないと思うんですけれども、そこまで書けるのかという話、あるいは対象者に伝え ることができるのか。最終的には裁判を起こしてくださいなんていうことを言うのは何 となく変ですし、その辺でちょっとレベルが違うのかなという気が私自身はしておりま す。 【矢崎座長】  補償のアプローチの仕方がちょっと違うかもしれませんですね。事務 局……。 【吉川課長補佐】  今、補償の観点、個人情報保護の観点、それからあとは介入によ る健康被害の観点、この2つ、ご意見をちょうだいしているところですが、ひとつ個人 情報保護の補償の観点というのはこの疫学研究だけではなくて、いわゆる研究だけの世 界ではなくて、この世の中、ありとあらゆる個人情報が取り扱われていますし、また個 人情報保護法というのが施行されているというところであります。  昨今、研究の分野ではございませんが、個人情報の漏洩といったようなこともアンケ ート調査のようなものがインターネットを介して漏れてしまったとか、多々、皆さん、 目にしているところだと思うんですが。ただ、補償のあり方の統一した見解というのが 現行では正直、お示しされていない。ケースバイケースでそれぞれの会社なりが対応し ているという現状でございます。そういったような、社会的な整合性というんでしょう か、今、個人情報保護における補償というものが置かれている現状を考えまして、疫学 研究では特別にそこについても補償ということをきちんと、何らかの手当てをし、それ を説明しておくべきかどうかといったところをお考えいただければどうかと思っており ますが。 【矢崎座長】  ほかの領域でそういう問題に対する補償の手立てというのは考えられ ているんですか。厚生労働省以外の、あるいは企業とか、あるいはそういう調査会社と か……。 【吉川課長補佐】  国のほうから幾つか業態に関してのガイドラインというのをお示 ししているものがございますけれども、それは保護に主眼を置いていまして、補償した 場合はこういうことをしなさいというようなことまではたしか求めというか、規定がな かった。要するに、金銭的に処理をするとか、何らかのものをするとか、そういったよ うなことの規定までは現行ないですので、個々、それは会社がどのような対応するか。 例えば、何らかのプリペイドカードを配って補償をするとか、それぞれご対応をされて いるという現状であるということを申し伝えます。 【矢崎座長】  臨床研究指針でこういう補償が変わったんですが、今、お話しのよう な介入試験的のところの何か問題が起こったときの補償というのは議論されていると思 うんですが、臨床研究も同じように個人情報の漏洩による不利益、特にゲノム指針なん かはそうだと思いますが、そういうものに対してはどういうディスカッションがあった んでしょうか。わかりますか。 【吉川課長補佐】  実際のところ、平成16年の際に、個人情報保護に主眼を置いて、 各指針の改正のご議論をいただきましたが、その際に個人情報の安全、とにかく漏れな いようにするということが前提ですので、漏れてどうするかというところまでの議論と いうのは、やはり保護法にも特段、そこまでの言及はございませんでしたので、議論は していないというのが現状です。 【位田委員】  私も最初にゲノム指針をつくるときと改正と、両方に加わっておりま したが、特に補償の問題で詳しい議論をした……、この場合にはこうするという議論は した記憶がありません。いずれにしても、個人情報保護法には、補償なり、賠償なりの 規定がありませんので、漏洩して何らかの損害が発生すれば、それは民法の損害賠償の 原則に戻って、場合によって訴訟が発生する。そういうやり方だと思うんですね。  ですから、そういうトラックに乗るから書かなくていいんだというのであれば、それ はそれで1つの選択肢かなとは思いますが。ただ、先ほど申し上げましたように、補償 しますと書いておいて、何らかの措置をあらかじめ考えていただくほうが研究参加者に とっては安心ができるというか、信頼ができるのではないかなという、そういう感覚で 申し上げました。 【矢崎座長】  そうしますと、疫学研究の内容を考えてということではなくて、一律 にそういう計画書に書き込んだほうがいいと。ただ、補償ありの場合に「当該の内容を 含む」と書いてありますけれども、これはなかなかちょっと具体的には考えようがない ですね。 【丸山委員】  医薬品の新薬の治験の際に用いられる文言は、最近はよく考えられて、 書かれていると思うんですが。ああいうところに倣われたらいかがかなと思うんですが。 すべてを補償するとは書いてないんですが、できるところがフェアに表現されていると 思うんですが。 【矢崎座長】  そのほか、どうですか。すべてそれを書くということについて。 【辻委員】  誤解がないようにもう一度申し上げたいんですが。私は決して個人情報 漏洩に対して補償が不必要だとか、そういったことは言っているわけではございません。 そういうことが起こったならば、補償をするのは当然だろうと考えております。ただ、 例えば介入研究で、運動トレーニングで事故が起こったら、転んで骨折したら、保険が ありますよという話はもちろん明記するわけですが、そのときは当然、それに付随して 研究費の予算の中で、そういった保険料も盛り込むわけです。制度的にそれが必要にな ります。では実際に、観察研究で個人情報が漏洩したときの対応について何か書いた場 合、それをするために保険に入って、保険料を研究費から当てなければいけない。ある いは先ほどプリペイドカードという話がありましたが、それに備えてプリペイドカード を買わなければいけないという議論になると思います。それが現実になじむのかという ことが、最大の疑問だったわけで、そこのところをご確認いただきたいと思います。 【中村委員】  情報の流出等については、先ほど位田先生がおっしゃった対象者が安 心して研究に参加できるということについては補償ではなくて、やはりこういう予防策 をとっていますということをきちんと示すほうが重要じゃないかと私は思います。 【矢崎座長】  なかなか難しいですね。疫学研究で補償の有無ということを書きます と、補償がどういう形でイメージできるかということがはっきりしないと、安易に補償 の有無では言えないと思うので、これは補償よりもインフォームド・コンセントでしっ かりそこについては責任を持って研究を進めますということを、誠意をもって示すと。 そして、ほんとうに何か起こった場合には……、起こらないという前提で疫学研究はや ると思うんですね。ただ、万一、起こる可能性があるのと、個人情報を除けばそういう ことが全くないものと、ある程度、あると思うんですよね。  ですから、そういう意味では研究内容を吟味して、補償の有無を追加するということ で、個人情報に関しましては、まだ我が国でしっかりした補償の方針もありませんので、 今、罰則のほうがどんどん進んでいますけれども、被害者に対しての救済というのはま だ具体的に進んでいないんではないかと思いますので、ここで補償の有無をすべて書き ますとおそらく厚生労働省側も何か対応……、何かありますかね、そういう……、個人 情報の漏洩に対する厚生労働省としての、研究対象者に対する何か考え方とか、そうい うものはありますでしょうか。補償にこだわらなくてもいいんですけれども。 【藤井厚生科学課長】  個人情報の漏洩について、いろいろご議論をいただきました けれども、法律的にも漏洩をした方については罰則があるんですが、事象に対して個々 の個人の方に補償ということになると、全く規定がありません。いろんな厚生労働省の 関係で個人情報を取り扱う事業等もありますが、その段階でもしも漏洩をした場合にど ういう補償をするという議論がなされたことは、今のところ私の自身の記憶ではござい ません。 【矢崎委員】  今の段階は患者さんの情報が流れた場合はその施設長が誠意をもって、 個別的に謝罪をするという程度で、そういう対応しかまだないので、今後はやっぱり、 位田先生が言われるように、その問題で漏洩した側だけではなくて、対象者をどう救済 するかということをぜひ今後は我が国でも煮詰めていかないとならないということで、 このディスカッションは……。 【丸山委員】  一言だけ。臨床研究倫理指針にこの規定を入れる際に、同じことを申 したんですが。もし、入れないということであれば、こういう話題を出しておきながら、 この点では我が国の指針の、この部分はグローバルスタンダードにもとるということに なるんですが。その理解を踏まえて、そういうことをなさるということの意味をよく考 えて、なさることが必要だと思います。 【矢崎座長】  これは……、困ったな。すべての疫学研究にそういう項目を……。 【丸山委員】  ですから、いろいろ考えられるから難しくなるんで、一般原則をその まま取り込まれるということを……。 【森崎委員】  ここに具体的に補償の有無(内容を含む)ということになる……、そ れではこれをとればよろしいですか。 【丸山委員】  ヘルシンキ宣言、そのままなんですよ。そのときに高久先生が「国際 的にそうなら入れるほうがよろしい」ということで、私と珠玖先生が泥沼のような論戦 をやっていたのを、高久先生に拾っていただいたという次第なんですが。 【矢崎座長】  それは個人情報を含めた……。 【丸山委員】  いや、個人情報はまだ念頭にない……。 【矢崎座長】  ないですよね。だから、……。 【丸山委員】  2004年の会議ではなくて、それ以前の……。 【矢崎座長】  だから、そういう意味では辻先生、中村先生が言われて……。 【丸山委員】  具体的に、今、おっしゃっているのはイメージがないんですね。 【矢崎座長】  ええ。ですから、臨床研究で議論された範囲内のものであれば絶対入 れないといけないと思うんです。 【丸山委員】  だけど、欧米の指針というのは医学研究すべてに適用される一般的な 指針なんですね。だから、疫学研究についてこのような要件が免除されるということに はなっていないというところなんですが。あとはもう水かけ論になってしまうと思いま す。 【川村委員】  各先生方のおっしゃること、ほんとうにそのとおりだと思うんですが、 現実に書くことを求めると。それで、実行を求めるとなると、やはり具体的に起こるこ とが十分予想されるもの。先ほど、議論にもありましたように、骨折とか、採血時のト ラブルというのは過失の有無にかかわらず一定の確率で起こりますので、そういうもの は十分に起こり得ることとして、予測される有害事象だと思います。  ですから、情報の漏洩そのものは一定の確率で起こるのかもしれませんけれども、多 分、今のところ我々の研究者のレベルではちょっと想定するのがなかなか難しい話です から、十分に起こり得る有害事象とか不利益について記載して、それに対する補償とは 書かないで、対応ということで、きちんと対応するということを、補償という具体的な ことを書くとなかなか大変かもしれないので、もう少し大まかな表現で、何らかの対応 をとることをわかっている範囲で書くということを求めることでいかがでしょうか。 【矢崎座長】  あらかじめ予想された場合には、対応とることというのは書くんです ね。だけど、臨床研究指針に補償というのがあるわけで、だからそれを疫学研究に、臨 床研究指針に基づいた補償の考え方で入れるということであればいいんですけれども、 今のような広い範囲の個人情報漏洩までを含めた補償という議論になりますと、なかな か難しいかなと。だから、臨床研究指針に準じて疫学研究もインフォームド・コンセン トに補償の問題を入れると、そういうことなんですけれども。 【位田委員】  すみません、何度も発言して申しわけないんですけれども。この資料 のCIOMSのガイドラインがちゃんとありまして、それはエピデミオロジーにアプラ イされるエシカルプリンシプルズというのがありまして、そこでコンペンセイションと いうのが出ているわけですね。  何ページかなかなか言いにくいんですけれども。後ろのほうに英語のものが2つあり まして、その2つ目の英語のものの、その後ろに日本語のものもついておりますので。 英語では17ページの47番、日本語では22ページの一番上の47番で、疫学研究に もその周囲から害を引き起こし得ると。これは別に健康被害とか、そういうふうには言 っておりませんで、守秘義務違反、または研究結果の心ない公表がグループの信望の失 墜、かなりかたい訳ですけれども、または尊厳の喪失に通じる場合は回復が困難かもし れないと。むしろ、英語を見ていただいたほうが中身はわかりやすいかもしれないんで すが。  要するに、レメディーは非常に難しいかもしれないけれども、でもやらなくていい、 もしくはやらなくていいという話ではなくて、例えばパブリックアポロジーとか、レパ レーションで対応することもできますという規定がありますので、私も丸山先生の意見 に賛成ですが、書いておいたほうがいいのではないか。具体的な補償の方法としては、 例えば陳謝をするとか、何らかの形で補償をするとか、そういうたぐいの話だと思うん ですね。日本では差別禁止法というのがないので、個人情報を漏洩して差別されたらど うするかというのは、これは損害賠償しかないんですね。 【矢崎座長】  現状は、先ほど申し上げましたように、個人情報が漏洩したときは補 償というのは責任者が誠意をもって被害者に陳謝するというのがコンペンセイションだ と思うんですが。  臨床研究の補償というのはそういうところまで含めた補償なんですかね。広い意味の 補償であれば……。 【位田委員】  補償という場合に、必ずしも金銭的補償とは限らないと思うんですね。 だから、いろんな形の補償があるので、それこそプリペイドカードも、あれ、ほんとう に金銭で補償しているかというと、おそらくそうじゃなくて、むしろいわゆるお見舞金 をいただいて、それで精神的に満足をしてくださいと。精神的な満足がたまたま500 円だというケースもあり得るわけですね。だから、少し広い範囲で考えていただければ 補償というのはそんなに難しい話ではないのではないかと思いますが。 【矢崎座長】  補償という言葉ですよね。これがどういう意味を持っているかと、一 般的な……。要するに、疫学研究は一般の方々に対するアプローチですから、患者さん に対する介入試験とか、そういうのとはちょっと違うので、補償という意味をどういう ふうに一般的にとられるか、なかなか難しいところがあります。  どうしましょうか。もう定刻を過ぎてしまいましたが。何かご意見、ございますでし ょうか。【中村委員】  自分で将来、こういう形になったときに、研究計画書を書く としたときに、対象者に対して情報漏洩について補償の有無と書いたときに、ありだと 「当該補償の内容を含む」と書かれているんで、それではどうしますと書かなければい けないわけですよね。ところが、それは想像がつかないんで、そうすると「情報漏洩に ついては補償はありません」と言って説明するのが正直かなという気もするんですね。 そうすると、むしろ候補者としては、「えっ、そうなの」ということで、むしろ研究か ら引いてしまうような恐れがあるんじゃないかという気がしております。そういう意味 で、情報の漏洩については特段の措置がないと、疫学研究はうまくいかなくなってしま うかなという気がしております。  以上です。 【新保委員】  やはり、ある程度、不利益等が生じる可能性があるのであれば、補償 というようなことに関して考えて記載する必要はあるかと思うんです、特に介入研究な どでは。ただ、観察研究等で情報の漏洩という問題は別にして、あまり健康上の被害が ないということであれば、そこまで求めなくてもいいのではないかという気がしており ます。  それから、情報の漏洩ということに関しては、これはもう研究だけの問題ではなくて、 診療情報全般に関する問題ですので、研究という枠組みだけ特別に切り出して補償のこ とを議論しなくても、一般論として漏れたときに対処するというような形でもいいので はないかという気がしています。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。まだ、個人情報漏洩に対する補償の具体的な対応 というのが今のところ誠意をもって陳謝するという段階なんで、それが補償になるのか どうかという、ちょっと疑問もありまして、やはりこれは臨床研究指針で議論された不 利益、その範囲に準じて補償の有無を記載するということにさせていただいて、個人情 報の漏洩に関しましては、漏洩された側の救済についてある程度の方向性が打ち出され た段階でこれを入れるということで、とりあえずは臨床研究指針の規定を踏まえて、補 償の有無を記載するということで……。 【森崎委員】  一言だけ。今の議論されている事項が不要だという意見ではありませ んが、あえてインフォームド・コンセントを受ける際の説明文書に明記するかというこ とは、今はできないのではないかということについては、私は賛同するというか、現状 はまだ熟していない。ただ、日本がそのスタンダードを出していないかどうかというの は、逆に指針の中で触れることは別に不可能ではないのではないかと。つまり、機関は 準備をすべきであるとか、研究者はそのことに留意すべきだという事項を指針の中に書 き込むことはできるのかなという意見であります。 【矢崎座長】  ありがとうございました。森崎先生に提案いただいたように、研究計 画書及びインフォームド・コンセントの説明事項として、それを明記するのは臨床研究 指針に基づいて行いますが、個人情報漏洩による不利益に関しては、やはりきっちり対 応すべきであるということをこの中に盛り込んで、今の議論に決着をつけないと思いま すので、よろしく……。後で、事務局と相談して、またご提案しますのでよろしくお願 いします。  ちょっと、大変恐縮ですが、保留になっているところがあるので、そのご確認だけを お願いしたいんですが。資料の保存及び廃棄、15ページなんですが。15ページにち ょっとご意見があって、事務局が示した項目に加えた部分がありますので、説明をお願 いします。 【吉川課長補佐】  資料16ページにあらかじめ見直しの方向性(案)ということで まとめさせていただいております。前回のご議論の中でペンディングになりましたのは この(3)でございまして、当初、事務局よりは資料の保存期限を定めずに保存を行う場合 は、資料の保管場所のみを研究機関の長に報告するということとしてご提案をさせてい ただきましたが、そのほかにやはり責任者であるとか、他の要件というのも必要であろ うというご意見がございまして、改めましてその要件を4つほど提案させていただきま した。  1つ目が資料の名称と、それから資料の保管場所、管理責任者、あとは当初、研究対 象者から取得をしております同意の内容。例えば、こういうことに使います。もしくは、 こういうことには使わないでくれと、いろいろなことがございますので、そういった同 意の内容もあわせて情報として取りまとめて研究機関の長に報告するということとして はどうかと。  それから、あとは責任者が変更することもあるということでご意見をちょうだいして いまして、またこれらの情報が変更したという場合は、逐次またご報告をいただくとい うことでどうかというふうにまとめさせていただきました。 【矢崎座長】  よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) 【矢崎座長】  それでは、お認めいただいたということで、一応、もう時間をオーバ ーしましたが、おかげさまで指針において見直すべき論点について一応、議論ができた と思います。この後、すべての論点について見直しの方向性、今まで議論された、終わ ったところは二重枠の中に記入してございますけれども、今回、いただいた論点9から 12までにつきましては、見直しの方向性を文書にして、委員の方々にお送りさせてい ただきますので、またそこでご意見をいただければ大変ありがたいと思います。  今後の進め方について事務局からお願いできますか。 【林研究企画官】  大変長時間、熱心なご議論をいただきまして、どうもありがとう ございました。次回の委員会ですが、1回目の委員会でお配りをしたスケジュールでは 当初1月ということでお示しをしておりましたが、1月に厚生労働省も文部科学省も審 議会の委員の改選がございまして、その関係で開催が難しくなりましたので、3月に開 かせていただきたいと考えております。具体的な日程につきましては、後日、事務局か らご連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  以上でございます。どうもありがとうございます。 【矢崎座長】  それでは、指針の改正案については最終的にご議論いただく機会が改 選後あるわけですね。 【吉川課長補佐】  はい。次回の委員会では規定の文書にした形でお示しをしたいと 考えてございますので、またご検討のほうをよろしくお願いいたします。 【矢崎座長】  以上のことで、きょう議論いただいたものをまとめさせていただいて、 それでご議論いただいた後、最終的には文書の形でお認めいただくということでござい ますので、また大変なスケジュールでご迷惑をおかけするかと存じますが、ぜひまたよ ろしくお願いしたいと思います。  大変、多くの課題を詳しくご議論いただきまして、大変ありがとうございました。そ れでは、今回の検討会はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございまし た。 ── 了 ── 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:情報企画係(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111  (直通)03-3595-2171 -5-