06/12/25 厚生科学審議会科学技術部会 第35回議事録 第35回 厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録 厚生科学審議会科学技術部会 議事次第 ○ 日  時  平成18年12月25日(月)15:00〜17:00 ○ 場  所  厚生労働省 省議室 (9階) ○ 出 席 者 【委 員】矢崎部会長 井村委員 岩谷委員 垣添委員 加藤委員 北村委員  木下委員 黒川委員 笹月委員 竹中委員 永井委員  西島委員 長谷川委員 南委員 宮村委員 【議 題】 1.研究活動の不正行為への対応に関する指針について 2.戦略研究基盤整備委員会(仮称)について 3.新健康フロンティア戦略について 4.イノベーション25(医薬)について 5.平成19年度科学技術関係予算(案)について 6.遺伝子治療臨床研究について 7.研究開発機関の評価結果等について  8.その他 【配布資料】 1.研究活動の不正行為への対応に関する指針について(案) 2.戦略研究基盤整備委員会(仮称)について 3.新健康フロンティア戦略賢人会議(第1回)資料 4.イノベーション25(医薬)について 5.平成19年度科学技術関係予算(案)について 6−1.国内で実施が承認されているレトロウイルスベクターを用いて血液細胞 系列に外来遺伝子を導入する遺伝子治療臨床研究の経過について 6−2.遺伝子治療臨床研究実施計画の終了報告について (信州大学医学部附属病院、神戸大学医学部附属病院) 7−1.国立精神・神経センター神経研究所及び精神保健研究所の評価結果等に ついて 7−2.国立成育医療センター研究所の評価結果等について 参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 参考資料2.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針 ○林研究企画官  ただいまから、第35回厚生科学審議会科学技術部会を開催します。まず、傍聴の皆様に お願いですが、傍聴に当たっては、既にお配りしています注意事項をお守りくださるよう お願いします。  先生方には、ご多忙の中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。本日 は今井委員、金澤委員、岸委員、中尾委員、松本委員からご欠席のご連絡をいただいてい ます。委員20名のうち、出席委員は過半数を超えていますので、会議が成立しますことを ご報告します。 本日の会議資料の確認をします。お手元の「第35回厚生科学審議会科学技術部会」の議 事次第に、配布資料の一覧があります。1は「研究活動の不正行為への対応に関する指針 について(案)」、2は「戦略研究基盤整備委員会(仮称)について」、3は「新健康フ ロンティア戦略賢人会議(第1回)資料」、4は「イノベーション25(医薬)について」、 5は「平成19年度科学技術関係予算(案)について」、6−1は「国内で実施が承認され ているレトロウイルスベクターを用いて血液細胞系列に外来遺伝子を導入する遺伝子治療 臨床研究の経過について」、6−2は「遺伝子治療臨床研究実施計画の終了報告について (信州大学医学部附属病院、神戸大学医学部附属病院)」、7−1は「国立精神・神経セ ンター神経研究所及び精神保健研究所の評価結果等について」、7−2は「国立成育医療 センター研究所の評価結果等について」、あと参考資料1と2があります。もし、資料の 欠落等がありましたら手を挙げてお知らせいただければと思います。 それでは矢崎部会長、以降の議事進行をよろしくお願いします。 ○矢崎部会長  科学技術部会を始めます。年末のお忙しい中、委員の皆様にはお集まりいただきまして ありがとうございました。本日の議題の審議事項は1だけですが、報告を含めて7題と盛 り沢山あります。1から4は、黒川委員がメインにこれに関わっておられますが、黒川委 員は途中で退席されるということですので、できれば4まで審議を進めれば大変ありがた く思いますので、よろしくお願いします。  それでは議題1の「不正行為への対応」について、事務局からお願いします。 ○藤井厚生科学課長  資料1に基づきましてご説明をします。「研究活動の不正行為への対応」については、 Iの「経緯及び目的」にもありますように、今年の2月28日に総合科学技術会議から「適 切な対応について」という意見書が出ています。それに基づきまして、厚生労働省を含め て他の省庁も、各々で対応についての検討をしてきています。何回か科学技術部会では、 厚生労働省としてこの件に関して検討を進めているというご報告をしてまいりましたが、 今日は案ができましたのでご審議をいただきたいと思っています。  資料1に頁を振っていませんが、2枚目の「研究活動の不正行為への対応に関する指針 について(案)」からが本文になります。トータルで17頁です。これは、基本的には文部 科学省がこの件に関しましていろいろと指針を整備されているところですが、それとほぼ 整合性をとったものになっています。本文ではかなり大部になりますので、要点は2枚目 に付いているシェーマに基づいてご説明します。  「対象とする不正行為」は、捏造、改ざん、盗用の3つを考えています。「対象となる 資金」は厚生労働省の指針ですので、厚生労働省の研究費、厚生労働省所管の国立高度専 門医療センターの委託費及び助成金を考えています。「調査機関」は、厚労省が最初から 調査を実施するというのではありませんで、告発された研究者が所属をしておられる機関 で、まずは調査を実施していただくことを考えています。  具体的な流れは、「告発等の受付」の右側に書いてありますように、各研究者が属する ような研究機関または研究資金を配分する機関は、厚労省関係で言いますと厚労省本省、 すべてのナショナルセンターと一部の国立試験研究機関ですが、告発の受付窓口を設置し ていただくことを指針の中で言っています。告発については、悪意でもってされる場合を 除外するという趣旨から、できるだけ名前をきちんと名乗った形でしていただいて、併せ て、科学的合理的な理由を明示をしていただくことにしたいと思っています。ただ、匿名 の場合もあろうかと思いますので、匿名の場合は、その内容をよく吟味をして、それを踏 まえて対応することにしたいと思っています。  まず、告発がされた場合には「予備調査」とありますが、これは、その研究者が所属す る機関において告発内容の合理性等を調査して、実際に告発内容が、それ以降調査をする 必要があるのかどうかを検討していただきます。そこで、さらに本格的な調査を実施すべ きだろうということになりますと、「本調査」に移行します。本調査は、やはり調査委員 会というのを研究者が所属をする機関に設置をしていただきますが、委員については、い わゆる第三者も含めて構成をしていただくことでお願いしたいと思っています。そして、 その調査をする段階では、告発をされた方がきちんと意見を言う機会を保障することも定 めたいと思っています。  その右側を見ていただきますと、「調査中における被告発者に対する一時的措置」と書 いておりますが、一時的措置としまして研究費の使用停止を指導したり、研究費の交付を 停止する、または、応募されているようなものについては採択決定の保留等をすることを 考えています。  「認定」ですが、本調査によって不正行為が実際に行われたかどうかを認定していただ きます。その場合に2つ目の●に書いてありますように、説明責任は告発された方に存在 すると考えていまして、告発された方がきちんとした説明をできない場合には、原則とし て不正行為とみなそうかと考えています。委員会で不正行為と認定されましても、不服申 立てをする機会を可能にしたいと考えています。  そこまでが、告発された研究者が所属する機関での調査でありますが、そこの調査で明 らかに不正行為があったと判断されました場合は、下の認定をされた方に対する措置を取 る段階にまいります。その場合には、いちばん上の四角の中にも、「厚生労働省に『措置 を検討する委員会』を設置」とありますが、具体的にはこの科学技術部会の下に委員会を 設置したいと考えています。設置された委員会におきまして、どのような措置を取るかと いうものを検討して、その結果に基づいて資金配分機関、いわゆる研究費を配っている機 関が具体的な措置を実施ということになります。  右側を見ていただきますと、「資金配分機関が行う措置」ということで、「措置の対象 者」は、不正行為があったと認定をされた方、それだけではなくて、関与をしたと認定さ れている方、論文等については、内容について責任を負う方についても措置の対象に含め ています。  下の「措置の内容」は、具体的に4つ●で書いていますが、それの一部またはすべてを 措置の内容とすることができるということで決めさせていただきたいと思っています。ま ずは、競争的資金の打ち切り、申請の不採択、不正行為に係る資金の一部または全部を返 還、今後の研究費の申請制限。申請制限については、上に書いてある措置の対象者の(1)・ (2)と(3)によって、若干その重さを変えてはどうかということで書いています。  いちばん左の「研究機関が行う対処等」としては、研究機関各々に内部規程を持ってお られる、またはこれに基づいて新たに付け加えていただくことになろうかと思いますが、 それに基づいた対処ならびに不正行為と認定された論文等の取り下げの勧告を考えていま す。  1枚目のいちばん下の「今後の予定」をご覧ください。本日、この指針についてご審議 をいただいた後、来年1月からはパブリックコメントに付し、それを踏まえて2月には、 「案」を取った「指針」という形で確定をしたいと思っています。その指針は、平成19 年度の補助金の取扱規程等に反映をさせてまいりたいと考えています。説明は以上です。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。この対応については、科学技術部会が審議するということで すが、黒川委員からご意見はありませんか。 ○黒川委員  まだ最後のを出しているところですし、去年の時点で、予算案が通ってから厚生科学研 究費は研究者の手元にいつごろ執行されましたか。一昨年は8月で、たしか55%と言って いたような気がします。その前の年は3%と言っていました。この遅れが研究者にとって は迷惑なので、どのぐらいになりましたか。 ○藤井厚生科学課長  いまの黒川委員からのご指摘というのは、いろいろな意味で研究費の執行が遅れること が不正の温床にもつながりかねないことから、厚生労働省関係の研究費については早期執 行しろというのが、研究者または総合科学技術会議等々からご指摘を受けています。それ については、今年度分はまだ若干集計が終わっていませんが、昨年度分の集計が終わって いるところで申し上げますと、昨年の9月の時点で6割の研究費が執行されていました。 おそらく今年度は、それと同レベルまたは少しいいぐらいを目指してやってきていました ので、結果としてはそういうことになるのではないかと考えています。 ○黒川委員  現場の人はとても困っているのではないかという気がして、例えば2、3年だと、その 4月から9月の間は誰が立替払いするかという話になってしまうと、どうしても経理にい ろいろな問題が出てくるので、少なくとも予算が通ったときに予定されている分の半分ぐ らいはなんとか届けてもらうよう、将来頑張ってもらいたいです。 ○宮村委員  このスキームによりますと、「不正行為の告発から認定まで」という枠の中で、該当す る研究機関で結論を出して、それで不正行為の認定が出て初めて下の措置へ行くというこ とですが、例えば1つの解決が出たときに、世の中で、それが揉み消しではないかという 余計なアイマンドが入りかねません。このスキームは、必ず1つのルールでやるというこ とですよね。 ○藤井厚生科学課長  一応、もし指針としてできましたら、きちんと世の中に公表することになりますので、 公表した手続に則ってやっていただくのが原則になろうかと思います。 ○北村委員  黒川委員のと関係するかもしれませんが、大体上の枠のあたりで、最長どのぐらいの期 間を。というのは、来年度の研究費の申請とか停止にも関係してくることになります。そ れから、上の枠で済ませた正式な報告書はどこに届けることになるのか。そして、それは 公文書になって開示が求められたら、マスコミ等にはどの時点で出すことになるのか。詳 しく読めば書いてあるのかもしれませんが。 ○藤井厚生科学課長  指針の中身をあとでご覧いただければと思いますが、例えば予備調査の段階は30日以内 に結論を出すとか、各々について結論を出す期限を一応お示ししています。公表も、きち んと結論が出た時点で公表をする。ただし、不正行為があったと認定された場合は公表し ますが、認定をされなかった場合は公表を特に求めない形になっています。 ○北村委員  厚生科学課に届けることになるのでしょうか。 ○藤井厚生科学課長  各機関で委員会等を作って審議をしていただいたものは、資金配分機関と厚生労働省に お届けいただくことになっています。 ○岩谷委員  この研究機関ですが現在、日本整形外科学会は学会として厚労科研費をいただいている と思いますが、そういう場合はどういうことになるのでしょうか。学会が委員会を作るこ とになるのでしょうか。 ○矢崎部会長  いまのお話は、主体が学会というお話ですか。 ○岩谷委員  主任研究者は、もちろん大学などに所属していますが、学会全体として研究グループを 作って受けています。例えば私が受けてるとすれば、私の所属する組織の委員会が受付窓 口になるのか、学会が委員会を組織することになるのでしょうかという質問です。 ○藤井厚生科学課長  確かに、学会等でお受けいただいている研究費は、一部ですが、厚生労働省関係もあり ます。その場合は、学会で受けてもその中に研究者がおられるはずですから、その方また は分担をしておられる方の不正に関する告発という形になろうかと思います。ほとんどの 学会は法人格をお持ちだと思いますが、そういうしっかりした任意団体でない学会につい ては、学会として委員会を設立していただいて、審議をしていただくことを考えています。 ○垣添委員  これは、調査委員会を作るときに外部委員の数とか、そういうものは規定されていない のですか。 ○藤井厚生科学課長  いま、お手元にお配りしている指針の中には、そこまで具体的には。 ○垣添委員  それは、各機関の判断に委ねるということですね。 ○藤井厚生科学課長  はい。 ○垣添委員  もう1点は、厚生労働省以外の、例えば文部科学省の研究費などを頂いていることが多 々あると思いますが、その場合はどうですか。 ○藤井厚生科学課長  いまのご質問は、告発をされた案件が文科省の研究費に関する告発だった場合どうする かということかと思います。それは、今年になってから文科省も、ほぼこの内容と同じも ので指針を提出しておられます。それに従ってということになりますので、おそらく、そ の研究者が所属する機関で委員会を設立していただいて、ご検討審議をいただくことにな ろうかと思います。 ○長谷川委員  告発するほうの立場に関することですが。雇われているポスドクの人とかが告発しよう とすると非常に立場が弱いので、そのことが原因で解雇されたりとか、これまで世界各国 のいろいろなところで起こっていますので、何らかの形で告発した人の身分的なことが、 「そのことによって不利益を得ない」とかと書いておくべきなのか、それはここの話では ないのかを聞きたいのです。 ○藤井厚生科学課長  確かに、その点は大変大きな問題だと思っています。ご説明はしませんでしたが、指針 の中には、告発をした方が身分的なことで不利益を受けないように、各々の機関で対応し てくださいということはお示しをしています。具体的に言いますと、指針の4頁の3の(5) で、若干お示しをしています。 ○黒川委員  これは指針ですから、いろいろなことがあって、確かに対象になっているのは、明らか に盗用、捏造、改ざんです。先ほど言った厚労省の話についても、研究費の不正な使用と いう話が、どうしてもいまの行政で難しいのがあるので、これも指針だからだんだんいろ いろなケースが出て変わってくるとは思いますが、そういうことでいいのではないかと思 います。是非、厚労省にも、3年度につながるようなものは2年目も半分は執行していた だきたい、これとは違った面で。新聞になると、そういうものが結構新聞沙汰になってし まうので、よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがですか。先ほど黒川委員がご指摘の、研究費が年度末に急に配分され たときの当初の主要目的と、実際の支出の間の乖離がみられることがしばしばあるので、 それも大きな課題ですよね。  先ほどご指摘のように、不正行為の告発から認定までのプロセスがこの研究機関の中で 行われるということで、その透明性を高めるため、垣添委員が言われたように、認定する 委員に原則として外部の方が入るような仕組みを考えられたほうがいいのではないかと思 いました。  それでは、パブリックコメントを経て最終的な案を科学技術部会で決定するということ で、またよろしくお願いします。  この審議事項を終わりまして、あとは報告事項です。議題2の「戦略研究基盤について」、 事務局からお願いします。 ○藤井厚生科学課長  資料2に基づいて、ご報告します。「背景」の1番目の○にありますように、戦略研究 というのは、予防・治療介入及び診療の質改善介入等、国民の健康政策に関連するエビデ ンスを生み出すために実施される大型の臨床介入研究です。3つ目の○にありますように、 これは平成17年度から開始をされ、毎年2課題ずつ増やしてきています。通常の厚生労働 省の研究費ですと、長くても期間が3年ということでしたが、戦略研究については大型の 臨床介入研究ということで、期間を5年までと、2年長くしています。いままでは、どう いう課題を選定するか、どういうプロトコールを作っていくか等々については、科学技術 部会の委員でもあります黒川委員が主任研究者として、特別研究の枠組みでやっていただ いていました。しかし、「背景」の4つ目の○にありますように、以前の科学技術部会で も、きちんとした委員会を設置すべきではないかというご指摘がありましたので、平成19 年度からは仮称ですが、「戦略研究基盤整備委員会」を発足させたいと考えています。  次の頁です。平成17年度から戦略研究を開始しています。平成17年度が糖尿病・自殺、 平成18年度からがん・エイズが加わり、来年度は腎臓・感覚器が開始予定になっています。 5年間の研究期間と申し上げましたが、平成17年度から開始をした2つについては、ちょ うど来年度が中間年に当たりまして、中間評価をする時期です。その他、こういう課題の 選定とかモニタリング、最後の事後評価というものを系統的に、継続的にやっていただく ために、先ほど申し上げましたように研究班という形ではなく、その下の組織体制をご覧 いただきますと、本科学技術部会の下に戦略研究基盤整備委員会(仮称)を設けて、進行 管理をしていったらどうかということです。現在、財務省からの来年度予算の内示をいた だいている中でも、この委員会設置についての一応予算案ということで確保ができたとこ ろです。以上です。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○垣添委員  戦略研究という非常に大型の研究がスタートしたこと自体は大変ありがたいことだと思 いますが、第二次研究としてがん・エイズが平成18年、もう既に12月ですね。研究費が 実際に平成18年は付いているということですと、先ほどの不正使用ではありませんが、研 究費が使える期間は本当に限られていることになりますが、この研究費の扱いに関しては どうお考えでしょうか。 ○藤井厚生科学課長  確かに、平成18年度からがん・エイズの2つの課題について開始をすることになってい ます。がんについては、受け皿になる財団について随分決まらずに来たために、現在、最 終的に何人かの応募者の中で選定をする作業を黒川委員会でやっていただいています。来 年度も腎臓・感覚器というものが始まりますが、あまりに研究開始が遅くならないように ということで、そこは受け皿になる機関を早めに選定をしまして、研究費が早急に執行で きるようにということを考えてまいりたいと思っています。 ○黒川委員  矢崎部会長もよくご存じだと思いますが、実際にはその前の年から検討に入っていて、 腎臓とか感覚器も平成18年度に随分議論しました。どういうヒアリングをして、それまで どんな研究がされていて、アウトカムはどうなっていてどこが問題なのか、という話も行 政当局と打ち合わせて、いまのところはどういうデータが5年経過でいちばんやりやすい だろうかというヒアリングをやっているところです。腎臓・感覚器もヒアリングが1ラウ ンド終わったところですので、そういう意味ではだんだん慣れてくると予算の付け方と対 応の仕方、こうやっていただかないと、実際に旅費や何かも全然ない状況だったので、そ ういう意味では一歩前進させていただけるのではないかなという気がしています。 ○笹月委員  1頁目の下に、「戦略研究基盤整備委員会の役割・機能」という表があります。5項目 の機能が書いてあり、下の4つはこれでいいと思いますが、課題の選定というのは、一旦 課題が選定されると、2番以下のプロトコールの作成、モニタリング、評価ができると思 います。課題の選定は、むしろ広いものの中から何かを決めようというので、委員の職種 というか何か種類が違うような気がしますが、いかがでしょうか。 ○藤井厚生科学課長  いちばん最初の「課題の提案」の右側を見ると、科学技術調整官会議等から戦略研究課 題の提案を受け、それを審議し、採択課題案の絞り込みを行うということで、非常に行政 ニーズが高いものについて、本省の内部からそういう課題を抽出してくる。それをいくつ かのものの中からある程度委員会で絞り込みをしていただいて、備考のところにあります ように、科学技術部会で最終的に決めていただく手続を取らせていただきたいと考えてい ます。 ○笹月委員  プロトコールの作成やモニタリング、あるいは評価というのは、著しく専門性を要求す ると思いますが、いちばん上の「課題の提案」というのはむしろ幅広い話で、分野がどう かなという気がします。委員は、それに相当する人それぞれに入ってもらっていればいい のかもしれませんが、これは課題別にこういうプラットホームができるわけではないので しょう。1つのプラットホームができて、それが取り仕切るということだと思いますが。 ○黒川委員  課題はここにかかっていると思いますが、いろいろな行政的なものは、1回目が自殺と いうのは、行政としては非常にニーズがあると言っているので、ここに出てきていろいろ 検討したあとで認めていただく。私たちは何も知りませんよね。そうすると、自殺関係の 人たちがいままでやっている研究、それからどんな人たちがいるかを調べて、いろいろな 人たちにものすごくヒアリングします。糖尿病のときもそうですが、何十時間といろいろ な人たちからヒアリングをする。私どもは対応に従ってそれぞれの分野の専門の方を、む しろこちら側でいろいろやってコーディネートしていただく方を必ず選んでいます。そう しないと、その都度専門家を集めてしまうと、専門家ばかりになってしまって、これもま たうまくいかないな、という話で運営しているプロセスになっているということですので、 また何かありましたら言っていただければいいと思います。 ○矢崎部会長  これは戦略研究基盤整備委員会ですから、幅広い領域の方に集まっていただいて、実際 の課題が決まった個別的なプロトコールあるいはモニタリングといった場合には、さらに 絞ったメンバーあるいはWGを作っていただいて検討していただく仕組みになるのではな いかと思います。 ○黒川委員  もしそうであれば、いままでこのテーマについてはどういうグループのヒアリングをど のぐらいやったかというリストとか、そのプロセスを簡単にサマリーにして出していただ けると、その辺の誤解というか、お互いにポジティブなフィードバックをいただけるので はないかと思います。 ○矢崎部会長  よろしいですか。それでは、戦略研究についてはご議論をいただきましたので、続きま して、「新健康フロンティア戦略について」、よろしくお願いします。 ○藤井厚生科学課長  資料3に基づいてご説明します。3頁に「新健康フロンティア戦略賢人会議の開催につ いて」というのがあります。この新健康フロンティア戦略と申しますのは、安倍総理が所 信表明演説の中で用いられた言葉です。委員の先生方はご存じのように、現在、平成17 年度から「健康フロンティア戦略」というものが動いています。それに「新」が付いてい ますが、何が新しくなる可能性があるのか、「趣旨」のところでご説明したいと思います。  従来の健康フロンティア戦略というのは、健康寿命の延伸を目的に、2行目にあります ように「健康づくりを国民運動として展開する」という内容になっていました。今回新し く加わりましたのが、それ以降の「イノベーションを通じて、病気を患った人や障害のあ る人も持っている能力をフルに活用して充実した人生を送ることができるよう支援する」 という部分です。その具体的な戦略を策定するために「賢人会議」というものが設置をさ れ、開催をされることになりました。  3の「構成」にありますように、内閣官房長官が開催をする形で、関係大臣も有識者と ともに参加をすることになっています。4では、必要に応じて分科会を設けることができ る。  名前が「新健康フロンティア」ということで、省庁としては厚生労働省が最も関係が深 いだろうということで、5では「会議の庶務は、厚生労働省の協力を得て、内閣官房にお いて処理する」という形になっています。  4頁に賢人会議のメンバーが出ています。座長は、本部会の委員もお務めをいただいて います黒川内閣特別顧問です。  7頁からご覧いただきますと、4つの分科会が設置されることになっています。1つが 「子どもを守り育てる分科会」、2が「女性を応援する分科会」、8頁にいきまして、3 が「働き盛りと高齢者の健康安心分科会」、4つ目が新しく加わった「人間活動領域の拡 張分科会」です。  9頁の真ん中から少し上を見ていただきますと、「戦略の実施期間」として平成19年か ら平成28年までの10年間になっています。この賢人会議の黒川座長を中心に、大体、来 年3月を目処に新たな戦略を策定されるということを聞いています。特に科学技術部会と の関係で言いますと、いろいろな面で新しい科学技術の応用・活用が出てまいります。具 体的には12頁の下をご覧いただきますと、1つの検討項目として『健康寿命を伸ばす科学 技術の振興』というものが出てきます。その中には基盤技術の話、臨床研究の話、その他 個別のメタボリックシンドローム、がん等の研究の話が出てきます。  13頁の3の「身体機能の補完・強化等による人間の活動領域の拡張」は最初の○にあり ますように、『有病者・障害者・高齢者・介護者支援のための健康科学技術の振興』、次 は『人間活動領域を拡張する健康科学技術の振興』等、当科学技術部会と関連が深いテー マもこの賢人会議の中で議論がされていくであろうということを考えています。以上です。 ○矢崎部会長  ただいまの報告に、何かご質問、ご意見はありますか。 ○黒川委員  私も、とんでもなく降って湧いたような声が降りかかってくるので大変困っていまして、 久し振りに会った方々は、私がいかにやつれているかという感じではないかと思っていま す。  安倍総理は、幹事長代理のときに「メディカルフロンティア」というのを立ち上げられ たそうで、「健康フロンティア」を幹事長のときに立ち上げられた。非常に思い込みがあ るようで、最初の挨拶のときも、役所が作った3、4頁のペーパーがあったような気がし ますが、全然見ないで3、4分喋られました。厚労省としては「健康日本21」というの があるわけで、そのほかに「メディカルフロンティア」、「健康フロンティア」、2年後 の「新健康」などで更に足されていますので、いままでの政策というか、やっていたこと とある程度整合性をつけながら、新しいところをどうするのかなという話をしなければい けないのではないかというので、事務局はこちらですから、そういう意味ではある程度私 も安心しています。そんなことですので、いろいろご支援をいただければと思っています。  例えば、ここに女性の乳がんの話が出ていますが、たまたま今度のがんについても、先 ほどの戦略的アウトカムも、がんという話を決めたのはこちらではなくて、そちらから振 ってきたのです。いままでにやっているがんの研究、第三次の対がんのいろいろな問題を ずっとサーベイしていくなかで、特に40代の女性の乳がんの検診の普及をどのようにやっ たらいいかという話を議論しています。こちら側のアドバイザーというか実際の窓口で調 整されているのは、いまはがんセンターの土屋病院長にお願いしていますが、そういう意 味では、外から見てコンフリクトがなくて、しかも専門家が全体に乗るようにしています ので、そういうプロセスがわかってくるといいかなと思っています。少し話がずれました が、「新健康フロンティア」も急に降ってきたので、皆さんのご支援をいただければと思 っていますのでよろしくお願いします。 ○笹月委員  このフレームワークは子ども、女性、働き盛り、高齢者層の4つで、女性を応援すると いうことですが、私は男性を応援するというのがないのが不思議です。寿命も女性よりは 短い、成人病はどれも頻度が高い、自殺の件数も高い。どうして男性が出てこなかったの かを黒川委員にお伺いしたいのです。 ○黒川委員  これは総理が決めたことですから、はいと言っていただければと思います。 ○矢崎部会長  よろしいですか。それでは、事務局が厚生科学課ということですので、いままでの流れ に沿って乖離しないように、是非調整しながら、また新しい視点で進めていただければと 思います。  次は「イノベーション25(医薬)について」の報告をお願いします。 ○新木研究開発振興課長  お手元に資料4「イノベーション25(医薬)について」という資料をお配りしていま す。これも先ほどの「新健康フロンティア」と同様に、安倍総理の所信表明演説を受けて 発足しているプロジェクトです。少し読みます。「成長に貢献するイノベーションの創造 に向け、医薬、工学、情報技術などの各分野ごとに、2025年までを視野に入れた、長 期の戦略指針「イノベーション25」を取りまとめ、実行します。」という所信表明演説 を受けまして、現在、黒川委員に座長をお務めいただいて、高市大臣の下で行われている ものです。これを受けまして、10月5日に内閣府に「イノベーション特命室」が設置され ています。  さらにその後、黒川座長の下で4回のイノベーション戦略会議が開催されています。段 取りから申しますと、2月末までに「2025年に目指すべき社会のかたちとイノベーシ ョン」を取りまとめる予定で、さらにその後、総合科学技術会議等を活用し、来年の5月 から6月ぐらいには実現のための具体的なロードマップを作成するとされています。なお、 第1回から第4回までの簡単な会議の概要をここにまとめています。  4ですが、厚生労働省としては、高齢化や激化する国際競争の下で安定した成長を実現 していくためには、我が国の社会経済に新たな活力を取り入れる必要があると思っていま して、このイノベーションというのは大変重要なものであると考えています。したがいま して、イノベーション戦略会議と連携しまして、薬、医療機器に関する成長と競争力の源 泉であるとともに、健康寿命の伸長と社会参加を可能にする、いわばヒューマン・ヘルス に係る全体をイノベーションとして取り組んでまいりたいと考えています。  2頁は、「イノベーション25戦略会議」の全体の設置要綱を記載したものを引用して います。「趣旨」から「進め方」、先ほどご説明させていただいたことがここに記載され ています。なお、3頁にありますように、イノベーション25の戦略会議と日本学術会議 が密に連携を取って検討を進めると伺っています。いずれにしましても、「新健康フロン ティア」と同様、大変我が省として関係の深い分野ですので、厚生労働省の位置づけは若 干違っていますが、積極的にこれに対応していきたいと考えていますので、委員の先生方 の引き続きのご指導をよろしくお願いします。以上です。 ○矢崎部会長  ただいまの報告はいかがでしょうか。 ○黒川委員  私も、ますますやつれているというところが本音ですね。そういうことで、これも総理 の所信表明演説についてなぜ20年後かと質問されますが、それは私が言ったことではない ので聞いてくださいと言っています。  そのほかに「医薬、工学、情報技術など」というところで、なぜ医薬が出てくるのかと いうのも、20年先を見ると不思議な感じがするかもしれませんが、そういう意気込みが伝 わってきますので、厚労省あるいは関係するところといろいろなご相談をしながらやって いければなと思っています。これについても、小泉総理になってからの毎年6月に出てい る「骨太の政策」とか、いろいろなところも考慮しながら、ほかのいろいろな委員会もあ りますから、これをどうやって出していくかなということを、事務局あるいは官邸と連絡 をよくしなければいけないというのが1つ。  それから総理に申し上げているのは、学術会議でやったときは気にしなかったのですが、 一応総理の所信表明演説とか予算委員会での答弁を聞いてチェックしていますよというこ とはお伝えしてあります。あくまでも、総理からのご下命ですので、そこを全く無視して 言いたいことを言うわけにはいかないなということは気にしていますので、また応援いた だければと思っています。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。事務局は大臣官房のほうで、それと研発課が密にコミュニケーショ ンしながらということですか。 ○黒川委員  官房の下に、一応内閣府のスタッフが出てやっていることになっています。あまり陳情 を受けているのはいけないので、例えば学術会議を代表するような若手の人たちとの懇談 とか重層的ないろいろなヒアリングとか、ご意見を伺っているセッションをやっています。 ○竹中委員  黒川委員、1つ教えてください。これは日本学術会議からのインプットがあるわけです が、産業界からのインプットはどんな形になるのでしょうか。 ○黒川委員  ここに経団連の岡村委員が入っているのは、経団連のほうに委員の推薦をお願いした形 になっていまして、この間、御手洗会長その他とも懇談しましたが、そちらのほうから意 見を出していただけるといちばんいいのではないかという気がします。それから学のほう も、個別のいろいろな意見は無きにしも非ずですが、できるだけそれは学術会議の委員会 を通して言ってくださいとお願いしています。 ○竹中委員  どうもありがとうございました。 ○笹月委員  この間、何かの会で高市イノベーション担当大臣の所信表明みたいなものを伺ったので すが、わりとバラ色の社会をつくるみたいな感じのお話でしたが、医薬というのも1つあ りますので、言葉では「創薬、創薬、ゲノム創薬」と言われていますが、それだけでは決 してうまくいかないので、本当にそれができるような組織づくりを是非考えていただけれ ばと思います。 ○黒川委員  おっしゃるとおりで、確かに総理は予算委員会の答弁を見ていると、日経も所信を出し たときにすぐに夕刊のヘッドラインで「技術革新」と訳されていました。それはちょっと おかしいのではないかという話で、それから日経もいろいろなところで、これは技術革新 ということだけではなくて、むしろそういうことを生み出す社会の制度、さらにそういう ことを生み出していく人材をつくること、そういう人材が活躍できるような社会にするこ とだ、ということをはっきりおっしゃっていますので、確かにそういうことだろうと思い ます。総理もそうおっしゃっているので非常に心強いというか、私のほうも、少し返事を 増やすのが大事だよという話はちょいちょいしていますので、だんだんそれは浸透してき ているような気がしますが、そんなことをメインにしてポンと出すと、それが適切かどう かはまた別の話かなと思っています。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。黒川委員には、大変ないろいろ な課題を担っておられてご苦労が多いと思いますが、科学技術振興のために是非頑張って いただきたいと思います。よろしくお願いします。どうもありがとうございました。  次の報告事項は「平成19年度科学技術関係予算(案)について」です。よろしくお願 いします。 ○藤井厚生科学課長  資料5に基づいてご説明します。1枚開けますと、「平成19年度の厚生労働省の科学 技術研究の推進の基本的考え方」とあります。そのいちばん右肩に、財務省から内示があ りました予算(案)についてお示しをしています。厚労省関係と科学技術関係トータルの 予算は1,315億円と、平成18年度に比べて0.6%のプラスになります。その中の厚生労働 科学研究費補助金は428億円と、ほぼ同額ということで、残念ながらここが増えることに はなりませんでした。  主にどういうところがメリハリとして増えているのかご説明をしますと、まず左上の「健 康安心の推進」の分野です。いろいろと書いていますが、(2)「がん予防・診断・治療 法の開発」がこの中では最も増えています。右側の「先端医療の実現」では、(2)「臨 床研究基盤の整備の推進」というところで、本年度32億円が来年度は41億円と、9億円 余りが増加しています。いちばん右下の「健康安全の確保」という分野では、新型インフ ルエンザ、肝炎等も含めた「新興・再興感染症対策」に係る研究費が54億円から59億円 に増加しています。  次からは若干細かい数字です。2頁が厚生労働省関係の科学技術関係予算総体について です。その3頁目が、この中でも厚生労働科学研究費補助金の部分について、若干細かい ところまで示しています。具体的には、この中では項目等では出てきませんが、先ほど説 明いたしました戦略研究の関係の基盤整備委員会の予算はこの中に盛り込まれています。 簡単ですが、以上です。 ○矢崎部会長  予算(案)の概要ですが、いかがでしょうか。大枠は前年度並みということです。細か い数字については後でご覧いただいて、もし何かご質問がありましたら、事務局にお願い していただきたいと思います。  次の「遺伝子治療臨床研究について」、事務局からお願いいたします。 ○林研究企画官  まず、資料6−1です。「国内で実施が承認されているレトロウイルスベクターを用い て血液細胞系列に外来遺伝子を導入する遺伝子治療臨床研究の経過について」ということ です。これに対する遺伝子治療臨床研究作業委員会でのご審議の結果を報告させていただ きます。  1の「経緯」にありますように、フランスで実施されていたX連鎖重症複合免疫不全症、 いわゆるX-SCIDという病気に対するレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療におい て、これまで11例中3例に遺伝子治療に起因する白血病が報告されています。  その3例目が平成17年1月に報告されたのを受けて、同年3月に我が国のがん遺伝子治 療臨床研究作業委員会と小児免疫不全疾患遺伝子治療臨床研究作業委員会の合同会議が開 催されまして、当時フランスと同様にレトロウイルスベクターを用いて血液細胞系列に外 来遺伝子を導入する遺伝子治療臨床研究で、我が国内で実施が承認されているものが4施 設4件ありましたので、それらの現状の確認とその取扱いについて審議が行われました。 具体的な施設の名称は1頁のいちばん下に記載しています。  「1.経緯」の3番目のパラグラフですが、遺伝子治療を受けた各症例の臨床経過の詳 細の他、遺伝子が導入された細胞の異常増殖の有無、染色体へのベクター組込み部位の検 索等を各施設で実施してもらい、結果を作業委員会に報告することとされました。  今般、この4施設から合同会議以後の臨床経過や染色体へのベクター組込み部位の解析 結果、さらに海外の状況等について報告されたことから、今年の11月10日に再度合同会 議を開催させていただき、それらについての審議が行われまして、その結果を本日ご報告 するものです。  資料2頁です。11月の合同会議では、まず2番目のパラグラフですが、レトロウイルス ベクター(RV)遺伝子治療に対するICHの遺伝子治療専門家会合の見解が国立医薬品 食品衛生研究所の山口生物薬品部長から報告され、続いて各施設の報告内容について説明 を受けた上で審議が行われています。  主な審議結果は、(1)〜(3)にまとめてあります。まず(1)ではX-SCIDに対するRV遺伝子治 療が、フランスのほか英国や米国でも行われていますが、そちらでは特段安全性上の問題 はみられていないこと、さらに、RVを用いた遺伝子治療は全世界で280件以上実施され ていますが、フランス以外に、白血病などの重篤な副作用が報告されている例はないこと が確認されています。  ここには記載していませんが、フランスの白血病が発現した3例は、1例目は骨髄移植 を受けたけれども白血病の再発で死亡されています。一方、残り2例は完全寛解状態にあ り、T細胞機能も回復し、うち1例は白血病の治療は終了しているということです。  資料3頁です。(2)では、国内の4件の遺伝子治療臨床研究では、既に治療が実施された 症例の解析は適切に行われており、現在までのところ遺伝子治療に起因する安全性上の問 題は認められていないということでした。なお、被験者の追跡調査体制は現時点で十分で すが、今後も長期にわたって被験者の追跡調査を行うとともに、それぞれの遺伝子治療の 臨床研究のリスク/ベネフィットに関する評価を最新の知見に基づいて定期的に実施する よう各施設を指導することとされています。  また、国内での新規の安全な遺伝子治療用ベクターの開発が積極的に実施されることが 重要であるということも、併せてご指摘いただいています。  (3)は、東北大学病院はフランスのX-SCID遺伝子治療と同一のベクター、同一の実施計画 を採用しているので、今後も試験の開始を保留するという報告が出されていましたが、そ の報告で妥当であると。  他の3施設は、今後とも継続して実施をするという報告、こちらも妥当であるという判 断をいただいています。  資料の4頁から7頁にかけて、各施設の遺伝子治療臨床研究のもう少し詳しい概要、さ らにその後ろに参考資料として各施設からの報告の抜粋等を付けています。報告は以上で す。 ○矢崎部会長  ただいまの報告について何かコメントがございますか。 ○笹月委員  いまご報告がありましたように、イギリスでも実は11例行われているのですが、全くそ ういうアドバースイベントは起こってない。いちばん最近はイギリスのグループとフラン スのグループが一緒になって、新しいプロトコールを作成して、それで行おうという計画 をしています。東北大学は、実はフランスのプロトコールでやろうとしたのですが、それ はサスペンドしています。イギリスとフランスのプロトコールが決定次第、それに従って やりたいというのが東北大学のいまのスタンスです。追加しておきます。 ○垣添委員  そのイギリスとフランスのプロトコールの違いは何なのですか。 ○笹月委員  ベクターが少し違うのではないかという話もありますが、調査に行った人たちの話では、 実際にはほとんど意味があるような差はないということなのです。イギリスは、逆に言え ばフランスと同じようなことをやっているにもかかわらずなぜ起こらなかったのか、これ もわからない。イギリスが、フランスで事件が起こったので、ではサスペンドするかとい うと、彼らは決してそうではなくて、世界中の多くの国は、一時中断したのですが、イギ リスはそのまま続けて、リスク/ベネフィットという観点からやってよろしいということ で、続けて、何も幸いに事件は起こっていないということです。 ○矢崎部会長  そのほかはいかがでしょうか。 ○笹月委員  大変予後不良の遺伝病なので、可能であれば是非持続したほうがいいと思っています。 そのことによって日本における遺伝子治療が少しステップダウンするようなことがあって はいけないということを皆さん危惧していて、東北大学の結果と言いますか、彼らの決断 がどうなるのかということを、いま見守っているところです。  北大のADAに関しては、これまでは酵素療法をしていたのを、それをせずに済むよう になったということで、小学校に入学して普通の子どもたちと同じように生活していると いうことで、これは非常にうまくいった例だと思います。 ○矢崎部会長  それでは、私どもとしては注意深く見守っていくということです。どうもありがとうご ざいました。  続きまして「終了報告」です。 ○林研究企画官  資料6−2です。遺伝子治療臨床研究の終了報告が2件出てきています。まず1つ目は 1頁、課題名「正電荷多重膜リポソーム包埋ヒトβ型インターフェロン遺伝子を用いる進 行性悪性黒色腫の遺伝子治療臨床研究」ということで、総括責任者は信州大学医学部皮膚 科学講座の斎田教授です。  2頁、研究の実施期間は平成15年7月1日から平成18年6月30日までということでし た。  4頁、「研究の目的」の2行目からですが、本研究の目的は、難治性の進行期の悪性黒 色腫、具体的には同じ頁の下の「実施方法」の所にありますが、第4期の患者、または他 の治療法が不可能と判定された他の病気の患者に対して正電荷リポソームに、インターフ ェロンβ遺伝子を搭載したプラスミドを埋め込んだものを皮膚などの転移病巣に注入し て、安全性と効果を見る第I/II相試験として実施されたものです。  この遺伝子治療薬は、「研究の目的」の下半分辺りにありますが、名古屋大学附属病院 の施設を使って、信州大学附属病院の研究者らが製造したものです。同じ遺伝子治療薬を 使って名古屋大学附属病院では、悪性グリオーマを対象とした遺伝子治療臨床研究を実施 中ということです。この名古屋大学の研究については、以前の本部会でも報告をさせてい ただいております。  7頁の「研究結果の概要及び考察」の欄の「概要」と書いた所のすぐ下にありますが、 5症例が登録されて、治療終了4週後の結果は、MR(ミックスド・レスポンス)1例、 NC(不変)1例、PD(進行)3例であったということで、この結果の概要が表になっ たものが9頁にあります。  9頁の患者でいきますと、いちばん上の63歳、男性のMRというのは、投与部位の腫瘍 は完全に消失したのだけれども、その他の転移巣には効果がなかったということです。全 体として、遺伝子治療薬の投与によると思われる有害事象は、いずれの症例についても認 められなかったということです。これが1つ目の報告です。  もう1つは資料6−2の17頁からです。遺伝子治療臨床研究の課題名は「前立腺癌転移 巣及び局所再発巣に対する臓器特異性オステオカルシンプロモーターを組み込んだアデノ ウイルスベクター及びバラシクロビルを用いた遺伝子治療臨床研究」。総括責任者は神戸 大学医学部の白川助教授です。  20頁、「研究の目的」の上から11行目。本研究は、内分泌療法抵抗性前立腺癌の骨転 移、リンパ節転移及び、局所再発例に対し、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺 伝子を搭載した、非増殖性のアデノウイルスベクターを骨転移巣、リンパ節転移巣又は局 所再発巣に局所投与した後に、抗ウイルス薬のバラシクロビルを3週間経口投与するとい うものです。先ほどの信州大学の試験と同じく、安全性と効果を検討するための第I/II 相試験として実施されたものです。  22頁の「研究結果の概要及び考察」の欄の1行目、低用量3例、高用量3例の計6症例 に治療が実施されています。遺伝子治療後、他の治療を導入するまでの血清PSAの推移 により効果が判定されていますが、結果はPR(部分寛解)1例、SD(不変)1例、P D(進行)4例でした。この結果の概要は、この資料の40頁の別表に一覧表としてまとめ られています。症例番号の2番目がPRということでしたが、この方は低用量群で遺伝子 治療実施後34カ月も生存されているということです。  死亡例が4例ありますが、これらはいずれも原疾患の進行と推定されています。それか ら全例において、重篤な副作用は認められなかったということです。報告は以上です。 ○矢崎部会長  ただいまの遺伝子治療の終了報告ですが、どなたかコメント、あるいは質問がございま すか。 ○笹月委員  一般にがんの遺伝子治療の場合には、やはり進行がんに対して行われますので、なかな か治癒というところは難しいと思うのですが、それでも、この最後の前立腺癌のように1 例非常に効果があったようにみえるものがある。もう1つは、少なくとも非常にシリアス な有害事象はなかった、安全性の確認ということはきちんとできたということであろうと 思います。  もう1つのメッセージは、HLAのClassIを発現した腫瘍に関しては、治療効果が期 待できた、免疫応答を惹起することができたということで、安全性の確認といくつかのポ ジティブな成果を得たということだと思います。 ○矢崎部会長  これが一応終了した後、次のステップとしてはどういうことが考えられるのでしょうか。 ○笹月委員  これは一般に、日本における遺伝子治療の問題だと私は思うのですが、あるグループが 何年もかけて準備して、それから審査にも時間をかけて、かなりの費用をかけて実施した にもかかわらず、ある程度の数でもう終ってしまう。では、それで結論的に、統計学的に 何が言えるのか。これのように1例は確かに効いたように見えるというのがありますが、 本当にそれをスタンダードな治療法にもっていくためには、やはりもっともっと症例を増 やさなければいけない、しかしながら、それだけの時間をかけてやっているうちに、また 新たなベクターが開発されて、より良い治療法が出た、そうするとみんなそちらへ移って しまうということで、1つの方法で決定的なものを言えるだけの症例が、国内では集まっ ていないというのがいちばん問題だと思います。それを今後どのようにしていくのか、必 ず何例はやりますというマキシマムな症例を示したものを承認するのかと、委員会とかい ろいろな作業部会がそのようなことをいま検討しています。 ○矢崎部会長  よろしくお願いいたします。それでは次の議題に移らせていただきます。次の報告は「研 究開発機関の評価結果について」、報告をお受けしたいと思います。まず初めは、国立精 神・神経センター神経研究所・精神保健研究所及び、その次、国立成育医療センター研究 所の評価報告です。よろしくお願いいたします。 ○林研究企画官  研究開発機関の評価については、いつも申し上げていることですが、参考資料2として 本日お配りしている「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」において、各研究開 発機関は、機関活動全般を評価対象とする研究開発機関の評価を定期的に実施することと されています。それに沿って行われた評価の結果が本部会に報告されるということです。  今回は、いま矢崎部会長からお話がございました国立精神・神経センター神経研究所及 び精神保健研究所と、国立成育医療センター研究所の2つのセンターの評価結果と、その 対応方針についてご報告をいただくものです。本日は国立精神・神経センターからは橋爪 運営局長、高坂神経研究所長、北井精神保健研究所長に、国立成育センターからは倉辻研 究所長、藤本副所長にご出席いただいていますので、それぞれの施設からご報告をお願い したいと思います。まず国立精神・神経センターから両研究所を合わせて10分程度でご説 明をお願いできますでしょうか。 ○橋爪運営局長(国立精神・神経センター)  国立精神・神経センターの2つの研究所、神経研究所と精神保健研究所の機関評価に関 してご報告申し上げます。ただ、両研究所それぞれ設立目的が異なりますから、機関評価 に関しても評価の視点等に若干の差異が出てまいりますので、まず最初に私、国立精神・ 神経センター運営局長から両研究所の概要について、資料はありませんが、極々簡単にご 説明申し上げて、その上で、本日の提出資料に基づいて機間評価の内容及び今後の方向性 に関して報告いたします。  神経研究所の目的ですが、精神疾患・神経疾患・筋疾患・発達障害の病態や病因の解明 及び治療法の開発を目指して、特に分子細胞生物学的研究を中心に研究を推進してまいり ました。研究体制は、疾病に着目した部門と横断的な基盤研究部門とからなり、14部35 室に管理室体制となっています。  次に精神保健研究所ですが、精神疾患及び精神保健について、精神医学・心理学・社会 学・社会福祉学等各分野による総合的・包括的な研究を行うとともに、精神保健業務に従 事する者に対する研修を行っており、11部27室から構成されています。精神保健研究所 は平成17年3月に市川市から、神経研究所と武蔵病院の所在する小平市に移転しましたの で、目下、研究所相互間の連携並びに研究所と武蔵病院との連携を促進しながら、斬新で 新たな研究所への発展を目指しているところです。なお、今回の機関評価は、平成14年4 月から平成17年3月までの評価となっていますので、精神保健研究所の移転直前までの機 関評価となります。  今回の機関評価について説明いたします。資料7−1の18頁以降の「研究所評価委員会 概要」をご覧ください。19頁に委員名簿がありますが、評価委員は院長の柳澤信夫先生を はじめ、12名の先生方にお願いいたしました。先生方には事前に書面評価をしていただき、 その評価表を基にして、20頁にありますように、6月29日に研究所評価委員会を開催し ました。当日は施設見学、両研究所の概要説明を行い、その後、評価の各視点ごとに意見 交換をしていただきました。  その際にいただきました貴重なご意見を委員長にまとめていただいたものが、4頁から 10頁までの「評価報告書」です。評価報告書には各評価項目について、総じて両研究所と も高い評価をいただいていますが、少し問題点があるというご指摘もあります。ご指摘事 項への対処方針を記したものが11頁から17頁までの「評価結果に係る対処方針」です。 本日は時間的制約もありますので仔細に説明することはできませんが、指摘事項と対処方 針を要約版として、1頁から3頁に図表としてまとめてみましたので、この1頁から3頁 の資料を用いていくつかの項目をさらにピックアップして説明させていただきます。  1頁、「研究・調査の運営状況と成果について」です。ほかの評価項目でも同様の指摘 がなされているところでもありますが、まず、代表的な精神疾患の病因・病態の解明と治 療法の開発に関する臨床研究が不十分であるというご指摘をいただきました。対処方針と しては、ナショナルセンターとして、我が国全体の治験やコホート研究、RCT(Randomized Controlled Trial)等の推進に資する臨床研究基盤整備を図ってまいりたいと考えていま す。  また、研究所と病院との連携を強化し、新しい治療法を人に対して応用する体制づくり を進めるべきではないかというご指摘をいただいています。研究所で得られた研究成果を 速やかに臨床に応用することを目的として、武蔵病院と両研究所とを橋渡しするセンター 内部組織「トランスレーションナルメディカルセンター(TMC)構想」を一昨年度、委 員会を設けて策定していますので、この実現に向けて検討をさらに進めていきたく思って います。  次に「研究分野の課題について」、1頁のいちばん下のほうの指摘事項です。精神保健 研究所に対して、提言や調査結果が厚生省の政策決定プロセスにどのように反映されたの か明らかにすべきであるというご指摘をいただいています。これに対しては、研究成果の 政策への反映状況をわかりやすく示すような資料、また書式を整えて、ホームページ等を 通じて市民への広報活動を推進してまいりたいと考えています。  2頁、「研究資金等の研究開発資源の取得について」です。かなり建設的なご意見をい くつかいただいています。まず、独立行政法人化に向けた課題として国立大学法人を参考 に外部資金の導入を図るべきではないか。ご指摘のとおり先駆的な取組みについては積極 的に取り組んでまいりたいと考えています。トランスレーショナルリサーチに関する莫大 な研究費の調達をどうやって進めるのかというご指摘をいただきました。これは、研究組 織の効率化によって必要な研究費の総額を圧縮したうえで、独法化を視野に、民間企業と も協調して資金の調達を進めてまいりたいと考えています。  次に「組織・施設整備・情報基盤・研究及び知的財産権所得の支援体制について」です。 特に精神保健研究所に対し、神経研究所との共同研究、それから武蔵病院をフィールドと した共同研究等を今後進めるべきであるという指摘をいただきました。これも先ほどのト ランスレーショナルメディカルセンター講想の中の臨床研究支援機能として、臨床疫学専 門家、医療/生物統計家、データマネージメント、研究倫理専門家などによる組織の機能 のあり方を検討しているところです。  次に「疫学・生物統計学の専門家が関与する組織の支援体制について」「共同研究の導 入状況、産官学の連携、国際協力等の外部との交流について」のご指摘事項もありました が、これも同じくTMC構想の実現に向けた取組みの中で対応してまいりたく思っていま す。  3頁の「研究者の養成・確保・流動性の促進について」です。現在、私どもの室長と研 究については任期5年間付きの研究員制度を採用しているわけですが、これについて短す ぎるのではないかというご指摘がありました。当センター研究所は我が国の中核的研究機 関であることから5年間のうちに一定以上の業績を示すことを求めているものです。です から、5年間というタームで1つの研究達成をしようと思っています。任期内に優秀な業 績を修めた者については再雇用の道が開けていますので、この任期付研究員の制度は、現 時点で私どもはこの制度をもとに研究を推進してまいりたいと考えています。  次に「専門性を生かした社会貢献に対する取り組みについて」。webを通じた研究者情 報等の情報提供を推進すべきではないかというご指摘がありました。研究者情報の開示に ついては、国立大学法人の例を参考にしつつ推進をしてまいりたいと考えています。また、 ご指摘に、一般市民向けに、神経・筋疾患等の研究の進捗状況や未来への展望をweb上で 示してはどうかというご指摘をいただきました。これも情報を咀嚼して、平易な内容にし たうえで公開する方向で検討をしたいと考えています。  その他、精神保健研究所が研修事業を行っているわけですが、研修事業の負担が多く研 究活動に支障が出るのではないかというご指摘をいただきましたが、これは、研究の成果 を研修事業をツールに社会にフィードバックしていますので、精神保健福祉分野の均てん 化に貢献できる精神保健研究所の重要な活動であると考えております。  以上、かいつまんだ説明ではございましたが、国立精神・神経センター神経研究所・精 神保健研究所の機関評価についてご説明申し上げました。本日は両研究所長も同席してい ますので、私の説明の不十分な点、その他専門的な事項につきましては、ご質問いただけ ましたら、両研究所長よりご説明申し上げますので、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。ただいまの報告について何かご質問、ご意見がございますか。 これから独法化に向けての研究所のあり方というのは、大変議論の多いところですが、永 井委員も、大学としてもう既に独法化していますが、何か助言とかコメントはございます か。 ○永井委員  いろいろな補助金が減っていくわけですから、その分を補う体制をどうするのだという ことを考えていないと、身動きとれなくなってくると思うのです。あまり公的機関が経営 経営と言うものでないというのはわかるのですが、ではどうするかということを合意をと りながら、かなり考えていかないといけないと思います。 ○北村委員  先ほど財団の部分での寄付部門等々の強化を独法化を踏まえてやれと書いてありました が、実際、精神・神経センターに何財団があるのか名前は正確に覚えていませんが、財団 での寄付分野の強化はすでに始めているような活動があるのですか。  いちばん最後に意見として書いてありますが、FA機能も、いま総合科学技術会議の意 見もあって、厚生科学課は、これ以上の推進を控ようという意向もあるみたいです。この がんセンターと精神・神経センターの2つについてのFA機能は、続行する予定にされて いるのですか。 ○林研究企画官  FA機能に関しては、確かに前回、試行的な期間を、NCの独法化の議論も出てきまし たので延長するということを申し上げましたが、基本的には、いま総合科学技術会議から 指摘を受けているのは、研究費を配分する所と受け取る所が重なっているのは利益相反の 疑いを招く恐れがあるのではないかという点ですので、そこは評価の際に内部の方はかか わらないようにする等のルールをきちんと定めることによって回避をした上で、従前の方 針どおりに進めさせていただきたいと思っています。 ○北村委員  是非、前向きの検討をお願いしたいと思うのです。非常に消極的な意見もあるみたいな ので、またご検討をしていただきたいと思いますし、はっきりとintramuralとextramural を分けてはどうかという意見も世間にあるということは、やはり検討するに値するのでは ないかと私は思っているのです。 ○橋爪運営局長(国立精神・神経センター)  主に研究資源の獲得を念頭に置いた財団の機能についてのご質問がございました。私ど もは外部資金として想定できるものに、臨床治験の財源などを想定しています。何とか臨 床治験の基盤、または試験研究の基盤をさらに拡大しようと、精神・神経センター全体で 考えています。基盤拡大で、私どもの武蔵病院及び両研究所との中で完結する体制の整備 というものは、やはり何らかの形で国の補助金または交付金等を基に、限られた財源の中 で体制整備をやっていますが、その後、その体制が整備できたら外部資金の導入体制がか なり整うと思っています。ただ、私どもの使命は、この閉ざされた武蔵キャンパスの中で そういう体制を整備するだけではなくて、中核の医療機関、外部の機関への均てん化、ま たは外部の機関と連携しての治験体制の推進という役割りを負っていますので、そこのと ころが私どもの限られた人員・予算で推進するところに、もう1つ財団を活用した知恵が ないかということで、財団と一緒になって検討に着手しているところです。 ○竹中委員  私はニューロサイエンスの専門家ではなくて、質問です。この過去3、4年というのは、 ニューロサイエンスでは遺伝子あるいは分子レベルの研究がいちばん進まれたのではない かと思うのですが、それからトランスレーショナルリサーチに移行したような具体例とい うのが何かございましたら、お話を聞かせていただけますか。 ○高坂神経研究所長(国立精神・神経センター)  いちばんのいい例が、私どもの研究所で最も強いと言っても過言ではないのですが、筋 ジストロフィーの研究があります。これは人でジストロフィー遺伝子が見つかって以来、 私どもの研究所でも4つを含めてミューテーションを見つけています。したがって、これ に対してどういう治療をやるかということがトランスレーションリサーチとしてイヌと か、マウスはもちろんですが、いまは霊長類といったもので遺伝子治療の研究をやってい ます。もう1つは再生医療の研究をやっています。もう1つは創薬です。その三本柱で筋 ジスの治療に対してのトランスレーショナルリサーチをやっています。ここではまだ申し 上げられませんが、間もなくいきそうなムードをしています。したがって、本当に私も大 変期待をしていまして、中でも特にモリホルノをアンタイセンスを使った仕事は、かなり 希望を持てる段階になっています。 ○矢崎部会長  そのほかにいかがでしょうか。 ○永井委員  知財管理のことで両研究所の対処方針の所に書いてありますが、これはヒューマンサイ エンス振興財団のTLOで十分対応できるのか、あるいはもう少しこの領域に特化した人 を養成すべきなのか。 ○高坂神経研究所長(国立精神・神経センター)  これは私の意見ですが、TLOは本当によくやってくださっていると思います。ただし、 はっきり申し上げて外国に出すときに弁理士さん等、本当にこれ英語の達者な方がいると もっといいなということを思いましたし、また、必ずしも維持するお金が十分ではないよ うにも見受けられます。やはりナショセン等で自前で持つのは変ですが、やはりもう少し 充実させたシステムがあってもいいかなと思っています。 ○竹中委員  任期が5年ということですが、ここで研究者のターンオーバーは、入って来る人、それ から出て行く人というのは、どのような形のバックグラウンドから、あるいはいくつぐら いの方が入って来て、そして出て行くときにはどんな所に、外に出てどんな研究者になっ ていかれるかという、ターンオーバーについてお話いただければと思います。 ○高坂神経研究所長(国立精神・神経センター)  神経研究所の例を挙げますと、室長レベルではもう半分以上、この3年間で交替してい ます。したがって、この任期制を導入してから、ちょうど半分ぐらいの室長がそれに置き 換わってきたということになります。それから大多数の室長、外に出られる方は、うまく いけば教授、まずくても助教授レベルです。そういった所に就職させていただいていまし て、そういう意味では私としては非常に満足しています。部長クラスは、100%教授で出ら れています。採っている方の年齢層については、室長ですからもちろん31、32から、年を とっていても35、36の方が応募していらっしゃいます。フィールドとしてはMDが3分の 1、PhDが3分の2です。 ○永井委員  まさにそういう時に、そこで発明されたもの、発見されたものを研究者が持って行って しまってセンターに何も残らないということはないのでしょうか。その辺の知財管理はど うなっているのですか。 ○高坂神経研究所長(国立精神・神経センター)  私どもは国立ですので、知財というのは全部、国立精神・神経センターが所有していま す。場合によっては半分半分で出願しますし、ヒューマンサイエンス振興財団を使う場合 は、一旦ヒューマンサイエンスのほうに100%譲渡して、そこで企業化した場合には、追 って別途協議という形になっていますので、研究者個人が持っていくということは現在で はあり得ません。 ○宮村委員  また元へ戻りますけど、いまこの研究所で室長さんたちの回転がと言いますか、任期付 きの採用によっていいというお話でしたが、部長さんの定年と部長さんの交替ということ を考えたときに、独法化していったときにそこがもう少しフレキシブルになるかという、 そういう可能性はあるのでしょうか。 ○高坂神経研究所長(国立精神・神経センター)  たぶん、その可能性が高いのではないかと、逆に期待をしています。我々を含めてきち んと評価を受けて、5年なら5年、10年なら10年という単位で1つの成果を挙げるとい うのがベストだと思っています。本当のことを申し上げますと室長だけではなくて、部長 レベルも任期制の導入を図ろうと実は思ったのですが、これは厚生労働省のほうで、いま のところは部長は差し控えていただきたいという指導がありましたので、いまそれについ てはやっていません。ただ、独法化の際にはどうなるかまだ、希望的な観測は持っていま すが。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。北井先生、何か一言ございますか。 ○北井精神保健研究所長(国立精神・神経センター)  ご指名ありがとうございます。任期付研究員のお話ですが、私ども精神保健研究所では、 やっと平成15年度に導入したばかりです。その任期途中で社会学的な研究を進めているス タッフが多いのですが、国連の機関に途中で採用になってしまったりとか、関係の大学の 講師・助教授というようなステップは踏みつつありますが、これからというところです。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。続きまして国立成育医療センターから10分程度でお願 いいたします。 ○倉辻研究所長(国立成育医療センター)  国立成育医療センター研究所の倉辻と副所長の藤本です。お手元の資料7−2に沿って 説明いたします。まず前半に評価、それをまとめた報告が1頁から9頁まであります。10 頁から、それに対する対処方針です。  まず評価のほうで、総論的、研究所全体の評価、もう1つは個別の各研究部に関する評 価の2つからなっています。評価委員に関しては鴨下重彦国際医療センターの名誉総長が 委員長で、以下、9頁の後半に書いてある9人、全体で10人の先生方にお願いしています。  成育医療センターはほかのナショナルセンターと少し違いまして、母性あるいは周産期 の受精の瞬間、そこから個体へ成育していく、それが病気を持ったまま大人になっていく キャリーオーバー、そういう時間軸でとらえた病態あるいは病気、そういうものが研究の 対象になっています。がんセンターなどのように疾患に特化した研究ではありません。と は言いましても、その特徴とするものは、生殖医療あるいは先天異常、再生医療というも のです。  まず、2002年の3月にナショナルセンターとして始まりまして、2002年3月、要するに 年度末ですので今回が第4回目の評価でした。前半のほうでその総論的にいくつかの問題 点が指摘されています。1つはナショナルセンターとして出発する時点で「成育推進10 か年計画」を発表しています。それに沿いまして研究を展開しているわけですが、そこで 予定されている未開設部というものが、まだ当時3つの部と2つの部屋がありました。そ れの開設が急務であるという指摘を受けています。それから、部によりまして非常に落差 が大きい、成果が挙がっている所、あまり挙がっていない所、そういうものをきちんと認 識して対処しなさいということが挙げられています。  研究の支援室、これはRIの管理とか動物舎、そういうことに関する研究支援室の評価 の仕方をもう少し検討したほうがいいのではないか、ということが全体的な評価として挙 がっています。  全体的な評価の中で組織・人員についてですが、まず人事の停滞、先ほども少しありま したが、人事が停滞しないように効率的な計画推進のための組織の再構築をするようにと いうことで、ここでも、先ほど問題になりました任期付研究員制度が提示されています。  基盤整備については、現在、遺伝子治療のグループとしての準備、それからヒトES細 胞を中心として再生医療というものに対して、組織的な機関としての整備、それに対する 倫理的な教育が、現在、着々となされているという評価をいただいています。  研究費については、国からくる人当研究費、それ以外に、その数倍の競争的資金を獲得 しているわけですが、成育医療の推進のために必要なものを個人が取るのではなく、機関 としてきちんと考えて取っていったらいいのではないかという提案をいただいています。  それからプロジェクトの妥当性ですが、これは各研究部室の任務がありますが、それを 各研究部室を越えた1つのプロジェクト、先ほどの推進10か年計画の中にあるプログラム を展開するために、複数の研究部室を統合したプロジェクトチームを作っています。そう いうものに対する評価に対しては、将来を期待したいということでした。  そういう評価に対して対処方針が10頁以降に書いてあります。そういうことで疾患に特 に特化したものではなく、主に母性、周産期、生殖、先天異常が中心になりますが、組織 について、今年の10月に「周産期病態研究部」が初めて認められまして、そこに部長が就 任しています。そこに2つの研究室が付きまして、それも概算要求・組織要求のトップに ランクさせていただきまして、それも獲得して、来年2月に赴任することになっています。 そういうことで、周産期の非常に大切な分野である周産期病態の研究体制を整えたという ことです。  念願でありました実験動物、これもいままでそれを管理する部署がありませんでしたが、 それも研究室としてはっきりと位置付け、これは省令研究室ですが、動物管理、それによ る基礎的な動物実験のできる環境を整えると同時に、それの規則も整備したということで 報告してあります。  共同研究体制を作るため、いままで各研究部室、それの壁を乗り越えたプロジェクトの スペース、それを物理的に確保して、チームを作って、それで研究体制を作ると同時に、 それを支える基礎的な規約、あるいは倫理審査委員会の規約も作りまして、実際に倫理審 査委員会も開始しています。さらに、ヒトES細胞の自立に関して、文部科学大臣の申請 も今年確認が取れました。それから、ヒトES細胞を使った妊婦あるいは乳幼児にも使え る薬の安全性の試験、システムをヒトES細胞を使ってする研究、それに対しても文部科 学大臣の確認が取れる、そういう方向に着々と進んでいます。  そういうことから、研究グループを作るための基盤、場所、設備、それからその規約、 それの人的な教育研修システムをしっかりと組んで実施しています。  研究費については、いままでの研究成果をもとに、あるいは新聞、ラジオ、あるいは社 会からの要請により、必要と思われる少子化対策において、どういう研究が必要であるか ということを実際に母子保健課などと話し合いまして、研究課題を提案しています。それ に基づく研究を競争的資金として獲得する体制を整えています。  研究プロジェクトの妥当性ですが、これは、いままで小児慢性特定疾患というものがあ りました。これに関して法制化されて、現在、登録システム、それを基にしたデータベー スの構築、それを用いた分析によって、社会還元していくということ。そのほか小児のが ん。これはいままで亡くなっていた病気ですが、現在、治療ができる、それによる長期予 防の問題のためのフォローアップシステム、あるいはショウ疾患である先天異常のデータ ベースも構築するプロジェクトチームを立ち上げて対処しています。  省令研究室の役割ですが、これは特にRIの管理室、あるいは共同研究管理室、どちら かというと支援が主体になってしまいますが、そういうものに対しての改正は、各研究プ ロジェクトの中において、その役割を分担し、研究員の無駄な配置をなくすような方針で やっています。以上が、大体総論的な評価に対する対処方針です。  あと各研究部室の評価に関しては、2つの部でかなり厳しい評価をいただいています。 1つはアクティビティが非常に低いということ、もう1つは、他の研究部室、あるいは他 のナショナルセンター、具体的には精神・神経センターですが、そういう所と研究の重複 があるのではないかという批判がありました。これに関しては十分にお互いに話し合い、 重複のないよう、その協力体制をとり、あるいは役割分担という方向で臨む所存でござい ます。以上でございます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。何かご質問等ありましたらどうぞ。 ○笹月委員  委員会の時にも議論をして、倉辻所長もその勢いを示されたと思うのですが、指摘事項 に対する対処方針、12頁の(4)研究プロジェクト、この中に遺伝子治療は項目としては出て いるのですが、多因子疾患の遺伝子治療ではない、単因子のまさに遺伝子病の遺伝子治療 は、先生の所が日本の拠点となってやられるのが適当なのではないかという議論がたしか あったと思うのですが、それに対していろいろな指針も整って、研究費も獲得し推進する と書いてあるのですが、やはり組織づくりと言いますか、本当にベクターを開発し、どこ で検定するのかも含めて、私は是非、成育医療センターが単因子遺伝子病の遺伝子治療に 関する拠点になっていただきたいと思うのです。先生ご自身もそういう希望をお持ちでは ないかと思うのです。ここに書かれているのは少し物足りない気もするのです。 ○倉辻研究所長(国立成育医療センター)  このときは2月、3月の段階でした。現在は私どもの所を中心として、東京大学の医科 学研究所、北海道大学の小児科、筑波大学の小児科、自治医大の血液内科、宮崎大学の小 児科などと連携をしまして、先天異常、特に単因子遺伝の中で先天代謝異常、まず第1例 目は慢性肉芽腫症ということをはっきりと目標を定めて、現在もう前臨床試験が始まって おります。  もう1つ、ベクターの開発に関しては、医科学研究所と共同しながらやっていますが、 第1例目に関しては、一緒に共同研究をしていますドイツのフランクフルト大学及びスイ スの小児病院、そこで実際に使われたベクターの安全性が確認されていますので、それを 使った全臨床試験を私どもが中心となったグループを作り、それで1つの疾患だけではな く、次にも展開できるシステムを現在構築中です。 ○垣添委員  いま世の中を騒がせている小児科医とか産科医のリクルートの件ですが、質の良い人を どのように選んでおられるか、あるいはどのような苦労をしておられるか、その辺りの実 情を聞かせていただけませんか。 ○倉辻研究所長(国立成育医療センター)  それは主に病院部で検討をしていますが、一応こちらの政策科学も一緒に考えまして、 いろいろな都道府県にある小児科医院、あるいは大きな基幹病院、そこからの臨床研修シ ステムを作りまして、今年は医者だけではなく看護師、コメディカルのワーカーを含めた、 別口な課題ですが、中央研修システムを作っています。それが1つです。  もう1つはホームページを展開して、いろいろなケーエムベーあるいは専門家に直接に 相談し対応できるシステムを作っていますが、まだEメディシンとかそこまではいってい ませんが、現在は研修システムということで対応しています。 ○永井委員  小児の臨床試験や治験はなかなか難しいと思いますし、これらのセンターで担うべき重 要な役割だと思うのですが、そういう研究はどうなのでしょうか。 ○倉辻研究所長(国立成育医療センター)  特に小児の治験は、極端な場合、大人で使えても子どもでは安全性が確かめられていな いとか、使用経験がないということで、非売になっていますが、そういう物に対する治験 システムを、成育医療センターの治験管理室が中心になって展開しています。それが1つ です。  もう1つは基礎疾患などに関する薬ではなく、いろいろな細胞療法とかそういうものに 関しても、今年、基盤研究で臨床研究センターの教育システムに対する研究費を獲得しま して、その研究デザインから推進、あるいは分析、データマネジメントを含める専門家を、 現在数人養成していまして、近い将来それを全国展開できるようなシステムに、いま立ち 上げているところです。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。時間も過ぎましたので、この辺で議論を打ち切りたいと思います。 両ナショナルセンターの研究所長の先生方、お忙しいところをご出席いただきましてあり がとうございました。独法化をむかえて、研究所としてこれからご苦労も多々あるかと存 じますが、いままでのように、また活発な活動をされて発展されますように、よろしくお 願い申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。  それでは本日の部会は終了いたしましたが、事務局から何かございますか。 ○林研究企画官  委員の先生方には、いろいろと熱心なご議論をどうもありがとうございました。平成17 年にこの部会の委員にご就任をいただいてから、間もなく2年が経過しまして、一応今期 の任期は満了ということになります。先生方には、2年間にわたり、本当にいろいろとご 助言をいただきましてありがとうございました。本日の部会が今期としては最後の開催と なりますので、この場を借りましてお礼を申し上げたいと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。私自身も任期満了ということで、退任させていただき ます。本当に長い間この部会の運営にご尽力いただきました委員の先生方に、心より厚く 御礼申し上げます。どうもありがとうございました。それでは、本日の部会はこれで終了 させていただきます。                                    −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -