06/12/14 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 第23回議事録 第23回 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成18年12月14日(木) 10:00〜 2 厚生労働省専用第19、20会議室(17階) 3 出席者  〔委員〕   公益代表  西村委員(部会長)、石岡委員、稲葉委員、岩村委員   労働者代表 佐藤委員、高松委員、寺田委員、内藤委員、長谷川委員、真島委員   使用者代表 筧委員、下永吉委員、松井委員、横山委員、 4 議題 (1)労働福祉事業の見直しについて (2)船員保険の見直しについて 5 議事 ○部会長(西村)  ただいまから、第23回労災保険部会を開催いたします。本日は早川委員、 平山委員がご欠席でございます。議事に入ります前に、事務局で人事異動があ ったとのことですので、自己紹介をお願いいたします。  ○労災保険業務室長(蕎原屋)  12月1日付で労災保険業務室長を拝命いたしました蕎原屋と申します。出 身は大阪の岸和田でございます。ひとつよろしくお願いいたします。 ○部会長  それでは本日の議事に入ります。まず本日は「労働福祉事業の見直しについ て」、前回までの議論を踏まえまして、当部会としての検討結果のとりまとめ に向けたご議論をお願いしたいと思います。なお、とりまとめられた報告につ きましては、私から労働条件分科会の会長に報告し、労働条件分科会会長から 労働政策審議会会長に報告された後、労働政策審議会の会長から厚生労働大臣 に対し建議されることになっております。それでは報告案を事務局に読み上げ ていただきます。 ○労災管理課長補佐(原田)  読み上げさせていただきます。資料1ですが、労働福祉事業の見直しについ て(報告)(案)。労働者災害補償保険制度における労働福祉事業については、 「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)や「簡素で効率的な 政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」において、特別会計改革 の一環として「廃止も含め徹底的な見直し」を行うこととされた。  このため、労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会においては、労災保 険制度の費用負担者である事業主の団体の参画による検討会報告を中心とし て、労働福祉事業の見直しについて検討を行った結果、下記のとおり意見の一 致を見たのでこの旨報告する。  この報告を受けて、厚生労働省においては、次期通常国会における労働者災 害補償保険法の改正をはじめ所要の措置を講ずることが望まれる。  なお、未払賃金立替払事業の在り方について検討すべきであるとの意見が示 されたことから、今後とも、本部会等において議論を行うとともに、その結果 に基づき、所要の措置を講ずることが望まれる。  記。1.新たな事業を、(1)被災労働者の社会復帰を促進するために必要 な事業、(2)被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業、(3) 保険給付事業の健全な運営のために必要な事業(労災保険給付の抑制に資する 労働災害の防止、職場環境の改善等の事業)と位置付けること。なお未払賃金 立替払事業については、(3)の事業と位置付けること。  2.新たな事業については、「労働福祉事業」という事業名を用いないこと とし、より事業内容を反映する事業名とすること。  3.個別の事業については、PDCAサイクルで不断のチェックを行い、そ の事業評価の結果に基づき、予算を毎年精査するとともに、合目的性と効率性 を確保するため、各事業の必要性についての徹底した精査を継続的に実施する こと。 ○部会長  それではこの案文について、ご意見ご質問等があればお願いいたします。 ○松井委員  1点目、質問をさせていただきたいと思います。使用者側からは、年来未払 賃金立替払事業について、ここの労働福祉事業に位置付けることはいかがなも のかということを主張してまいりました。質問は今回新たな事業をということ で、未払賃金立替払事業を(3)の事業と位置付けることとなっていますが、 まずここの部分について、(3)に書かれているような表現ぶりにどのように 考えたらフィットするのか、その説明を事務局にお願いいたします。 ○労災管理課長(勝田)  この点に関しては前回の審議会でも議論になったと思いますが、基本的に未 払賃金の立替払事業について(3)に位置付けるに際しては、特に倒産した企 業において働いていた方々が、倒産後賃金について未払いのままですと、無理 をして、例えば、複数の事業所において長時間労働をしなくてはならないとか、 あるいは慣れない無理な仕事をしなくてはならないということに伴って、事故 を誘発する等の可能性もあることから、今回のご議論においては(3)の中に 保険給付事業の健全な運営に資するものとして位置付けることで考えており ます。 ○松井委員  次に、もう1点確認の質問をさせていただきます。この立替払事業について は、2002年の改正において、総合雇用対策の一環として、失業者の生活の安 定と就業の促進を目的に、上限額の拡大が行われたと記憶しています。その際 の労働条件分科会で諮問された説明の中に、セーフティネットの充実の一環と して、未払賃金立替払制度における上限額を引き上げて、失業者の生活の安定 に資することとするという説明があったと聞いています。いまのご説明ですと、 失業者ということでなくて、働いている方の労災がなくなるという説明があっ たと思うのですが、その点といまのご説明との繋がりについて、もう少し私ど もが理解できるようにご説明をお願いしたいと思います。 ○労災管理課長  2003年当時の状況の中で申し上げるとすれば、非常に高い失業率がまだ当 時続いていた時代です。この状況の中ではまだ就職をしていないで仕事を探し ている方たちの中で、どのような仕事に就くかということで、無理に就くかど うかということを考えていかざるを得ない。その部分での失業者の生活の安定 という面があった。それが次の仕事を見つけて無理に働きだすと、その部分で の災害防止に繋がるという側面がありますので、その2つはいわば連続して起 こっていることとお考えいただければいいのではないかと思っています。 ○松井委員  何度聞いてもなかなか私の理解不足というか能力不足があるのかもしれま せん。そういう点からすると、私どももこの特別会計の見直しというのは、国 民的課題だと考えている中で、やはり本事業を新たな枠組みの1の(3)に位 置付けることについては、記より上に書いてあるなお書きのことを併せて読み ますと、やはり当分の間とか、当面位置付けるということにしか理解できない ということは申し添えておきたいと思います。 ○長谷川委員  いま使側の松井委員から未払賃金立替払制度について前回に引き続きご指 摘があったのですが、労側から言わせると、この制度の見直しは労側は入れて もらえないでやっているわけです。それで自分たちで納得した話だから、なん でいまさらそういうことを言うのかは、私はむしろ解せないと思います。労側 として未払賃金立替払制度についてもっと言いたいというのを第1点に申し 上げておきます。  それと倒産だとか未払いがある限りは、何らかの制度が必要なわけで、未払 賃金立替払制度そのものを否定するわけではないでしょうから、もしご指摘が あるのだったら、そういう制度をどういうふうに構築していくのかというのを 併せて言ってもらわないと、あたかもこの制度がいらないように聞こえるので すが、そうではないのですか。 ○松井委員  まず使側だけの懇談会でのまとめについては、未払賃金立替払事業について は別途検討するという形になっていまして、ここに位置付けるということには なっていませんでした。そこの事実認識については、まず違うという指摘をさ せていただきます。  もう1点、前回の改正の段階で、2001年に答申をされたときの文言として は、「将来的には未払賃金立替払制度の財源に関する検討を行うことを考慮さ れたいとの意見が出された。厚生労働省においては、このような意見が出され たことについて『適切に配慮されたい』」という文言が付されています。私ど もとしまして、それ以降、厚生労働省がこの文言に基づいて適切に何らかの配 慮をされたということは1つも見えないというから、私どもとしては意見を申 し上げている次第です。ここについては公労使のまとめのものとして答申をさ れたと理解をしていますので、労側は全く知らないということではないと私ど もは理解をしています。 ○長谷川委員  私が聞いているのは、未払賃金立替払制度がいらないということではないで すねと、賃金に未払いがあったりとか、倒産のときの賃金未払いがあったとき は、この制度が必要かどうかですねということを聞いているだけです。 ○佐藤委員  いま長谷川委員が言われたように、労働の対価として本来支払われるべき賃 金が、倒産等の理由で支払われない場合に、これをカバーするというのは、本 来当然あったわけです。今回の表現が妥当なのかどうかということはさておい て、この制度は継続するのだと前回もそういう議論でまとめられたと私は思っ ていますので、あえてこの解釈の中から、これが何か取って付けたような制度 として将来廃止も含めて検討をするという結論には至っていないという理解 でいいのでしょうか。 ○労災管理課長  佐藤委員のご質問ですが、お答えいたします。事務局の立場としては、この 文言にあるとおりです。この制度について前回もたしか松井委員と長谷川委員 との間でご議論が交わされて、引き続き議論すべきであるということと、それ に関して議論はいたしましょうという長谷川委員のご発言があったことを踏 まえて、この文言をまとめました。どうなるかということについては、今後の 議論にすべては待たれるということだけだと思っています。 ○松井委員  長谷川委員のご質問について回答をいたしますと、もしこの報告を認めると いう立場であるならば、この事業についていま廃止ということを私どもとして は申し上げているつもりはございません。ただ、記より上の所のなお書きを見 ていただいたように、この在り方については、今後きちんと議論しなければな らないと、年来申し上げているわけですし、先ほど事務局のご説明を今回伺っ た場合でも、書かれているもののような合目的性があるのかどうかというのは、 十分理解しかねるということは、申し上げておかなければいけません。  さらに記の3の所にPCDAサイクルを回して、その合目的性と効率性を確 保するために徹底した精査を継続的に実施していくという文言からすると、本 当に合目的性があるのかどうか。これはやはり不断の見直しを行い、なおかつ 記の上のなお書きの中で、きちんとした見直しの場を設けて、あるべき姿をで きる限り早く結論を出していただければと思う次第です。 ○佐藤委員  言われていることはよくわかるのですが、労働側としては長谷川委員が代表 して言われているわけですが、この制度の重要性については、何ら変わらない わけで、いまの松井委員の発言は、将来かなりこの事業の見直しを急ぐような、 そういうふうに聞こえてしまうわけです。その必要性は依然として高まってい ると言いますか、そういう認識で私たちはこの案に賛成をしたいなと思います。 ○部会長  この見直しについての報告のなお書きの所にありますように、この点につい ては本部会において議論を行うということです、その結果に基づいて必要があ れば所要の措置を講ずることになっていますから、その点を踏まえてまとめて はいかがでしょうか。 ○長谷川委員  議事録にも残ることですから、もう少しきっちりします。この未払賃金立替 払制度が持つ役割というのは皆さん認識していると思うし、またこれ以降も非 常に重要であると思っています。いま労側委員の2人が発言をしましたように、 労働者が安心して働くことができる環境の整備は大変重要です。そのような意 味では、松井委員が言われているように効果的で適正な制度運営を前提とする ことは当然だと思っています。その上で実施を継続するべきであると考えてい ますし、「今後検討すべき」というご意見もありますので、前回私もそのこと は申し述べていますので、当該事業の在り方を検討するに当たっては、労災保 険の適用事業主を対象として、労働者の救済制度として十分に機能できるよう なものとすべきであると考えていることを、労側としては意見を述べたいと思 います。 ○部会長  そのほかに何かございませんか。 ○長谷川委員  2点ほどお話したいと思います。1つは今回この案が示されまして、その中 で労働福祉事業のことにも触られているわけですが、労働福祉事業というのは、 そもそも業務災害だとか通勤災害による傷病を受けた労働者に対する被災労 働者の社会復帰の促進だとか、被災労働者、その家族の援護だとか、適正な労 働条件の確保を図るということで、労働者の福祉の増進を図ることを目的とし て実施されてきたと思います。今回の労働福祉事業の見直しに当たって、労災 行政が後退することのないように、そのことについては、十分にお願いしたい と思います。  もう1点は小規模事業の廃止、整理の中に、じん肺予防対策調査研究の事業 が含まれていますが、じん肺は現在でも対策が非常に重要なことですし、職業 病であると認識していますので、この件についてもご配慮をお願いしたいと思 います。 ○横山委員  1点質問です。なお書きの所ですが、未払賃金立替払事業の在り方について 検討すべきと。先ほどから労働側委員のお2人のお話であれば、これはあるの は当然であると、それを前提にというふうに聞こえるのですが、在り方につい て検討するというのは、それがあるべきか、それともいらないのかということ を含めて検討していいのか。必要性があるとしたら、それは(3)の事業の中 に入れるのか、それとも別の所で決めるべきかと、こういうことで分ける話に なると思うのですが、これは必ず必要だというのは前提ということになってい るわけですか。立替払事業そのもののこの表現というのは。立替払事業の在り 方について検討するというのは、抜本的に検討するということなのか、それと も労働側委員の言われるように、そのことはありきで検討をするのか。 ○労災管理課長  事務局に対するご質問としてお答えするとすれば、前回のご議論の際に、い まの状況の中では何らかの手当が必要ですというのは、松井委員からもご発言 があったと理解しています。その点では現時点においては、何らかの制度は必 要だということの前提の中でのご議論です。ただ、それが未来永劫そうかどう かという問題は、また別の問題ですが、今回の表現の中ではそういうことだと 理解します。 ○横山委員  確認したかったのはそういうことです。現在の状況ではという前提付きです よね。 ○労災管理課長  はい。 ○横山委員  これは議事録の中にきっちり留めておいていただきたい。以上です。 ○部会長  特にほかにご意見等がございませんでしたら、この内容で合意が得られたと いうことで、当部会としての検討結果をとりまとめることとして、この内容を 厚生労働大臣に建議すべきである旨を労働条件分科会長に報告したいと考え ますが、いかがでしょうか。                   (異議なし) ○部会長  それではそのようにさせていただきます。なお、労災補償部長よりご挨拶が あるとのことですので、よろしくお願いいたします。 ○労災補償部長(石井)  一言お礼のご挨拶を申し上げさせていただきます。この度の労働福祉事業の 見直しにつきまして、大変ご熱心にご議論ご討議を賜りましたことを大変感謝 申し上げたいと思います。とりわけ先ほども中心となっておりましたように、 未払賃金立替払事業につきましては、大変熱心なご議論があったところでござ いますが、本日報告書としてとりまとめいただきましたこと、本当にありがた く思っています。今後はいただきました報告が、いずれ建議になるわけですが、 この報告に基づきまして労災保険法等を改正する法律案要綱を作成いたしま して、年明け早々、改めてお諮りをした上で、次期通常国会に法案として提出 をしてまいりたいと考えています。今後とも労災保険制度の発展を含め、厚生 労働行政に対しまして一層のご支援ご協力を賜りますようお願いを申し上げ ます。ありがとうございました。  ○部会長  次の議題に移ります。「船員保険の見直しについて」事務局から説明をお願 いいたします。 ○労災管理課長  船員保険の見直しの状況についての報告を申し上げます。資料2、これは 11月30日に行われました船員保険事業運営懇談会において提出された資料で す。その会合で議論が若干まとまりませんで、まだ持ち越しの状態ではありま すが、12月21日に次回の船員保険事業運営懇談会が行われるということで、 そこにおけるとりまとめに向けて関係者間のさまざまな取組みが行われてい るところです。実は私ども自身も労災保険の関係について、労使の方々といろ いろな説明なり話し合いなりをさせていただいているところです。ただ、現時 点において、公開できる資料がこれしかありませんので、これで説明させてい ただきます。主に議論になっているところは、私どもの労災保険に関係する部 分以外の部分なので、この場での報告にあまり影響がないところです。ここで ご報告させていただくものは、ほぼその方向になっていくのかなと思っている ということでお聞きいただければと思います。  まず、船員保険制度改正の背景で、1頁から2頁にかけて、船員保険制度の 在り方に関する検討会において、船員の減少等を踏まえた検討が行われたとい うこと、2頁で特別会計の見直しという新たな要請が出てきていること、同じ く社会保険庁の組織改革という要請が出てきているといったことが、改正の背 景になっているということが説明されています。  4頁以降に基本的な方向性が打ち出されていますが、4頁の1の○の2つ目 の所にあるように、船員保険の職務上疾病・年金部門、労災に相当する部分で すが、これは労災保険制度に統合するという形で打ち出されています。船員保 険の労災保険と雇用保険に相当する部分以外については、国以外の公法人にお いて実施するということになっていまして、船員独自の給付等については、国 以外の公法人で実施する方向性が出てきています。  2に、移換金等の支払いというのが出てきます。これは私どもと非常に関係 の深いところですが、実は船員保険の職業上の疾病・年金部門の統合に当たり ましては、労災保険との統合前の方々についても、私どものほうに来て一緒に 支払うことがこの中で予定されています。このために充足賦課方式によって計 算すると、約2,100億円の移換金が必要になるというのが5頁の頭の所に書い てあります。この部分について積立金が現在700億ありますので、1,400億円 を解消する必要性が書かれています。  次の段落、この差額については、基本的に船舶所有者が耐えられる水準にな るようにある程度長い償還期間を設定する。また後のほうにも出てきますが、 この部分については、船舶所有者において償還するという原則で現在の報告が 出ています。  5頁の福祉事業については、基本的に労災保険に入ってくるものですから、 船員保険でいま福祉事業として行っているものも労災保険の労働福祉事業、今 回また変わってまいりますが、この枠組みの中でのみ、それぞれ行うというこ とになっています。  7頁は具体的な見直しの方向です。労災保険の適用範囲については、基本的 に現在の船員保険で適用されている船員の方々が、すべて適用になるような形 でやっていくことで整理をされています。ただし、いまの労災保険よりも幅広 く、あるいは上積みをもって給付されている、上乗せ横出しの部分については、 労災保険ではなくて新しく出来る新船員保険において支給する形で出てまい ります。9頁以降は雇用保険のことなので話は省略させていただきます。  13頁ですが、徴収の関係についても、いままで実は船員保険については、 それぞれの標準報酬に基づいて徴収する方式になっていましたが、これについ ても労働保険が賃金総額方式になっていることから、こちらに合わせる形での 整理になってまいります。  14頁以降、今度は細かい給付の話が少し出てまいります。先ほどのように 基本的に労災保険の給付に相当する部分は統合後の労災保険から給付、それ以 外の部分は新船員保険から給付することになっています。「ただし」というこ とで、1の(1)の3つ目の○ですが、船員の場合には乗船期間中と乗船以外 の時期と、賃金が非常に大きく変動する事例が多くて、労災保険の現在の過去 3カ月のみの平均賃金の算定方式においては問題が生ずる可能性があること から、この部分については平均賃金の算定について特例を設けることを予定し ています。  15頁以降各論の話が出てきますが、これは非常に細かいのですが、どちら かというと基本的には法律事項というよりも運営事項を中心として制度の実 施まで、あるいは途中の期間においてもそうですが、関係者間で話し合って詰 めていくような話かなと思っています。  21頁、労働福祉事業について、先ほど申したように、基本的に現在の船員 の方及びその遺族の方については、援護事業等の対象にするとともに、労働福 祉事業について、いまの労働福祉事業の枠組みの中へ船員の福祉事業も持って くるという形での整理です。  31頁、経過措置ということで、ここ以降に移換金の話が出てまいります。 負担の在り方が32頁の真ん中の所に出てきますが、労災保険料率の上乗せに よって償却していくことが適当であると謳われています。即ち船舶所有者が負 担し、通常の災害発生に係る保険料率に労災保険で償却の部分を上乗せして償 却していく。ただし償却期間と償却率については33頁の上から3分の1ぐら いの所に書いてありますが、船舶所有者の料率、保険料の負担の軽減をする観 点から、まずほかの部門の積立金、船員保険にあるものの取扱いによって、そ れの圧縮を図った上で、労災保険の財政方式の切替えの際の例に倣って償却期 間を長期間に設定する等により、統合の際には船舶所有者の全体の保険料率が 現在よりも増加しないような措置を講ずるという表現になっています。※の所 に書いてあるように、労災保険の際には30年とされていて、その後35年にな ったという部分が注のような形で出てきまして、下のほうの四角に参考となる 現在の経済情勢で計算した場合の料率が出てまいります。ただ、いずれにして も基本的にこの充足賦課方式にした場合に、船員保険で現在持っている積立金 との差額については、船主側で負担いただいて償却していく形での謳われ方に なっています。  先ほど12月21日に次の船員保険事業運営懇談会が予定されていると申し上 げましたが、いずれにしても早い機会にまとまれば、年明けに際しては先ほど の労働福祉事業の見直しの労災保険の改正について、法案要綱等を部会でご検 討をいただきます際に、この部分についてまとまっていれば、併せてお願いす ることになろうかと考えています。私からの説明は以上です。   ○部会長  ただいまの説明につきまして、ご意見ご質問等があればお願いいたします。 ○長谷川委員  船員保険事業の運営懇談会が開催されているということは存じ上げていま す。そうすると、ここでの結論を受けて、この部会での扱い方なのですが、そ の結論をどういうふうに扱うのかということと、いま事務局から説明があった ように、これはなるとすればおそらく予算関連の法案になるでしょうから、1 月の早い時期に法案要綱の議論になりますね。すると、ここでの議論の仕方は どういうふうになるのでしょうか。 ○労災管理課長  お答えさせていただきます。基本的には船員の方々を入れるとしても、いま 懇談会で議論されている中身も基本的にはいまの労災保険を前提として、ほと んどの制度については現在の労災保険制度に合わせる形で、ただ範囲のみが通 常のいままでの一般の船員以外の労働者の方に加えて船員が加わってくる形 になっています。そういう点で、こちらの労災保険の制度を大幅に直しましょ うという規定は全くない予定なので、今回の報告において船員を入れることに ついて皆さんのおおむねのご理解を、私ども前回の報告でもいただいていたと 思っていますが、それを踏まえた上での法案要綱を出しましてご議論いただけ ればと思っています。  1つだけ説明を落とした部分があります。1つはいま長谷川委員から言われ て気がついたことですが、実は船員の場合には、労働基準監督とか安全衛生の 問題が厚生労働省ではなく国土交通省において行われていますので、この部分 について連携の規定を設けるとこの報告の中に書かれています。そういった部 分がありますが、基本的に労災保険のいまの制度の中、いまの事業の在り方の 中へ来ていただく方法、その部分、先ほどの連携規定と賃金の算定だけのみ特 例というつもりで、いま話が進んでいますので、あまり大きなこちらの制度の 変更になるようなことはないという形でご理解ご了解いただければと思って います。 ○松井委員  まずいつ移換をするのかということのご説明をお願いしたいと思います。 ○労災管理課長  移換時期、移行時期については、平成22年度までということになっていま す。ですから最も遅いケースで平成22年4月1日という形になってきます。 正直申しますと、実務的にはこの制度を移換する場合に結構コンピュータシス テムの手直し等が必要になっているので、決して短期間のうちに、3カ月でや れと言われて出来るようなものではありませんので、相当期間は出てくると思 います。ですから、先ほど長谷川委員のお話にありましたが、船員保険との統 合自体は来年度の予算に直ちに関係してくるということではありませんが、特 別会計改革との関係もありますので、私としてはできれば一緒にご議論いただ いて、一緒にご承認いただければと思っています。 ○松井委員  移換時期は、それなりにまだ実務レベルでの対応もあるということで、わり とあると思うのですが、そのときにまず1点、この14頁の所の平均賃金の算 定について特例を設けるということが書かれています。船員の実態を知らない わけではないのですが、仮に特例を設けると言われて、ではどういう特例かと いうのを説明もなく勝手に要綱を見ろと言われても、それはいかがなものかと いう気がいたします。それと別の言い方をすると、これは労働側が言うべきこ とかもしれませんが、給料の下がる方は船員ではなくてもいまどこでもあると か言われると、では一般制度も何かやるのかやらないのかということは、本当 は議論しないで、はい、特例でどうぞ、いいですよとも言えないので、いま考 えておられる中身は、まずどのようなものなのかということです。先ほどとり あえずまとめた労働福祉事業の見直しがありますが、船員の中での労働福祉事 業について、この部会では十分承知した形でなく、はい、全部引き受けますよ っていうことが、本当にいいのかどうかというのは、もう少し丁寧な説明があ った上で議論しなくてはいけないのではないかと思いますが、いかがでしょう か。 ○労災管理課長  1つは平均賃金の算定の問題については、松井委員もご承知のとおりですが、 船員の場合、乗っている期間と乗っていない期間と非常に賃金の差があること もあり、例えば3カ月間ずっと乗っていなかったのだけれども、最後に乗って 事故が起こってしまったというケースを含めて、賃金の在り方、平均賃金、補 償額の算定の在り方については、何らかの手当が必要だと思っています。ただ、 いまそれをどうするかについては船舶事業主あるいは労働組合と関係者の 方々と話し合った上で、方向性を定めていかなければいけないと思っています が、現在直ちに「ではこれをどういう形にします」ということを申し上げるだ けの決めはいま持っていません。ただ、例えば過去半年とか例えば1年間とか いった賃金を見ながら決めていく方式について、法律時点かあるいは法律施行 後までの省令等において対応するのか、いつかの時点までと決めて、こちらの 部会にお諮りした上で決定していきたいと思っています。  2点目ですが、労働福祉事業の問題について、基本的に例えば船員の事業に ついても、実は船員でやっている福祉事業の中で、私どもの労働福祉事業に相 当するものがないようなものもいくつかあります。そういったものについて労 災保険の労働福祉事業の中で一緒にやってくださいという話には全くなって いません。そういったものについては新船員保険の事業として必要なものはや っていくという整理になっています。例えば私どもの持っている中で遺族への 援護の事業が労働福祉事業の中にある。その部分は船員がきた場合にはいまの 労災保険の遺族の援護の事業の中に船員の遺族の方々も一緒にみていただけ ますねという話だけなので、基本的にいまの労働福祉事業の範囲を広げるとか、 変えるということではなく、その範囲内で一緒にみていくだけということで、 ご理解いただければいいと思っています。  あとは災害防止についても同じような形で、いま私どもは災害防止について 労災保険の被保険者、事業主の方々について行っている災害防止の事業につい て、船員保険の方がくることによって、いま我々が労災保険の関係者について やっているのと同じような形での災害防止事業が入ってくる形でご理解いた だければと思います。 ○松井委員  大枠はまず理解するのですが、労働福祉事業のところについては、おそらく 船員独自の労働福祉事業として、本来統合された中に本当に位置付けるべきか どうかというものも、若干あるだろうと思うのです。例えば建設は別でやって いるということもありますし、林業もあまり多くないですが、別に行っている というケースもあります。そういうものはいつどこで今後整理をしていくこと になるのか。船員の懇談会で決めたものをそのまま私どもは認めなければいけ ないのか、その辺、まずどうなるのかということです。  船員だけについての賃金の算定の特例を設けることについて、ここの考え方 としてその部分は船舶所有者が保険料を負担しているから変動していても構 わないという考え方と、やはりそこの部分だけの事務を特別にみるという事務 処理の問題ということも本来考えなくてはいけない。別の言い方をすると、上 乗せ横出しの別の所でやるという議論もあり得ると思うのですが、これはこう しなければいけないという決まりということなのでしょうか。 ○労災管理課長  最初に労働福祉事業の関係について結構端折ってしまいましたが、21頁、 22頁に少し載っています。基本的にIVの部分については労災と同じレベルな いし労災とやっていることとの横並びでやる形での整理だと思っています。で すから、例えばいま建設や陸上荷物、林業等については中災防以外に災害防止 団体を設けられたと同じように、船員についての災害防止団体があることによ って、その活動については同じようなレベルでやっていただく部分があります から、その部分についてやっている。ただ、それを違うレベルでやりましょう ということではないということで、ご理解いただければと思います。   おっしゃったとおり、賃金の特例についてどう考えるかという問題はあると 思います。実は私どもが平均賃金等を、いずれの形で算定したとしても、この 検討会のご議論として従前の船員保険の補償との差額が出た場合については、 新しい船員保険においてその差額分を支給するという議論も行われています。 ただ、船員の業務あるいは賃金の実態からいって、あまりに変動が大きいのを そのままにして労災補償としてやっていけるかということになると、そこは若 干見ないとあまりにも差がといいますか、ほかのこととも差が出てきてしまう のではないかということです。  松井委員が言われたとおり、基本的には業種別に出ているお金との関係で災 害発生率や料率が決まってくるので、基本的に船員の部分について給付が増え れば、その部分が船舶関係の災害料率に反映してくる形になるので、確かに事 務の負担が全くないかと言えば、全くないことはありませんが、その部分につ いて一般の産業に大きく影響する形にはならないとは思っています。ただ正直 言ってあまり変動差が大きいものについて、いまの3カ月だけでいいともなか なか言えないというのが現実のところではないかと思っています。 ○労災補償部長  私から一言補足をさせていただきます。現行の労災保険法の中におきまして も、ご案内のとおりかと思いますが、第8条の給付基礎日額の第2項に、労基 法の第12条の平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でない と認められるときには、その規定に関わらずという形で、特例規定がそもそも 労災保険法自体に置かれているわけです。現実にじん肺とか何かでそういう例 があるわけです。いまの枠組みの中での議論ということに変わりがないのでは ないかというように考えていますことを一言申し上げさせていただきます。 ○部会長  ほかにご意見ご質問がございませんか。ございませんでしたら本日の部会は これをもって終了したいと思います。本日の署名委員は労働者代表の長谷川委 員、使用者代表の筧委員にお願いいたします。本日はお忙しい中ありがとうご ざいました。 照会先 労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係     03−5253−1111(内線5436,5437)